説明

ハードコート付き反射性偏光フィルム

【課題】 プリズムシートとを重ねて使用する場合にもプリズムシートによる傷つきを防止することができ、反射性偏光フィルムとハードコート層との接着性に優れた、ハードコート付き反射性偏光フィルムを提供することができる。
【解決手段】 正の応力光学係数を有する熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層とを交互に合計501層以上含んでなる1軸延伸多層積層フィルム、このうえに設けられたガラス転移点50〜100℃のポリエステル樹脂50〜95重量%およびガラス転移点−50〜50℃のアクリル樹脂5〜30重量%を含む易接着層、ならびに易接着層のうえに設けられたハードコート層からなることを特徴とするハードコート付き反射性偏光フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイなどの各種画像表示装置に使用する、ハードコート付き反射性偏光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸収性偏光フィルムは液晶表示装置に多く使用されており、その需要は急激に増加している。さらに、近年では、光学補償機能を付加した吸収性偏光フィルムのように、付加価値の高いものが使用されてきており、例えば、色相、輝度、コントラスト、広視野角等の点で表示品位に対する要求がより一層強く要求される傾向にある。
【0003】
表示品位の中でも特に輝度向上を目的として、反射性偏光フィルムが前記吸収性偏光フィルムと共に使用されている。前記反射性偏光フィルムは、通常、液晶表示装置におけるバックライトユニットと偏光フィルムとの間に配置され、本来なら前記偏光フィルムに吸収されてしまう光を反射して再利用することによって、表示画面の輝度を向上させるものである。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、複屈折を有するポリマーの多層積層フィルム、コレステリック液晶フィルム等が知られており、一般に、前記ポリマーフィルムの積層体は直線偏光を反射し、前記コレステリック液晶フィルムは円偏光を反射する。前記コレステリック液晶フィルムは、円偏光を反射するため、1/4波長板を組み合わせて直線偏光を反射させる。
【0004】
例えば、バックライトからの光を、反射偏光フィルムにおいて、P偏光、S偏光とを分離して、いずれか一方の直線偏光を透過させ、透過した直線偏光を吸収性偏光フィルムに供給する。一方、反射偏光フィルムにおいて反射された光は、例えば、前記バックライトの裏側に配置された反射板によって偏光状態が変化され、再度、反射偏光フィルムに戻り、ここでさらに分離されるのである。
【0005】
ところで、多層積層フィルムは、屈折率の低い層と高い層とを交互に多数積層したものであり、層間の構造的な光干渉によって、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。特開平04−268505号公報に示されているように、一方の層に正の応力光学係数をもった樹脂使用することで、1軸方向に延伸により複屈折に異方性を持たせ、特定の偏光成分のみを反射することができる。この原理を使用して、例えば、P偏光を反射し、S偏光を透過するといった反射偏光フィルムを設計することができる。
【0006】
他方、輝度向上を目的として、特開平07−174910号公報に示されるような基材となるフィルム上にプリズム列を形成したプリズムシートが実用化されている。このようなプリズムシートをバックライトの発光面上におくことで、バックライトより発せられる光の指向性が変化し、正面輝度が増す効果が得られる。
【0007】
【特許文献1】特開平04−268505号公報
【特許文献2】特開平07−174910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような反射偏光フィルムとプリズムシートとを重ねて使用することによって、液晶表示装置の輝度特性を飛躍的に向上できる。しかし、上記のようなプリズムシートは、耐熱性を確保するために、アクリル樹脂などを用いるが、プリズム列の頂角により、主にポリエステルからなる反射偏光フィルムにキズが入り液晶ディスプレイの欠点となってしまう。
【0009】
そこで、反射偏光フィルムの表面にハードコート処理などを行われてきたが、反射性偏光フィルムとハードコート層との間の十分な接着性を備えるものは得られていなかった。
【0010】
本発明は上述の問題点を克服し、プリズムシートとを重ねて使用する場合にもプリズムシートによる傷つきを防止することができ、反射性偏光フィルムとハードコート層との接着性に優れた、ハードコート付き反射性偏光フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、正の応力光学係数を有する熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層とを交互に合計501層以上含んでなる1軸延伸多層積層フィルム、このうえに設けられたガラス転移点50〜100℃のポリエステル樹脂50〜95重量%およびガラス転移点−50〜50℃のアクリル樹脂5〜30重量%を含む易接着層、ならびに易接着層のうえに設けられたハードコート層からなることを特徴とするハードコート付き反射性偏光フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリズムシートとを重ねて使用する場合にもプリズムシートによる傷つきを防止することができ、反射性偏光フィルムとハードコート層との接着性に優れた、ハードコート付き反射性偏光フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[1軸延伸多層積層フィルム]
本発明において、第1の層を構成する樹脂は、正の応力複屈折(応力光学係数と同義である)を有する熱可塑性樹脂であることが必要である。正の応力複屈折を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および2,3-PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート ポリブチレンテレフタレート、およびポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4-メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、およびポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびネオプレン)、ならびにポリウレタンなどがある。
【0014】
その中でも、応力複屈折の大きいポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および2,3-PEN)や、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート ポリブチレンテレフタレート、およびポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)などが好ましい。とりわけポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および2,3-PEN)が好適である。
【0015】
第2の層を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であればよい。例えば上記に挙げた熱可塑性樹脂に加え、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、およびポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレートおよびポリメチルアクリレート)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、シンジオタクチックポリ-α-メチルスチレン、シンジオタクチックポリジクロロスチレン、これらの任意のポリスチレンから成るコポリマーおよびブレンド、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、およびニトロセルロース)などが挙げられる。
【0016】
特に第2の層として、正の応力複屈折(応力光学係数と同義である)を有する熱可塑性樹脂を使用する場合には、第1の層を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも15〜60℃低いことが好ましい。その中でも、層間密着性の観点から第1の層にとりわけ好適なポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および2,3-PEN)の融点よりも15〜60℃低いPENのコポリマー(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および/または2,3-ナフタレンジカルボン酸もしくはそれらのエステルと、(a)テレフタル酸もしくはそのエスデル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えば、テレフタル酸もしくはそのエステルと、(a)ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、スチレンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、ならびに4,4’−二安息香酸とエチレングリコールとのコポリマーなど、のコポリマーなどが挙げられる。
【0017】
第1の層は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなることが好ましい。第2の層は、イソフタル酸成分またはテレフタル酸成分を1.5〜20モル%共重合した共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。
【0018】
以下、さらに本発明における1軸延伸多層積層フィルムの好適な例について詳述する。
本発明のもっとも好適な例において、第1の層を構成する樹脂は、主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなるポリエステルである。好ましくは、後述の第2の層を構成するポリエステルよりも融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートまたは繰返し単位の95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなる共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の95モル%未満だと、融点が低下し、後述の第2の層を構成するポリエステルとの融点差が得られがたく、結果として、多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与しがたい。これらの中でも、融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。
【0019】
ところで、第1の層を構成する樹脂の融点は、260〜270℃の範囲であることが、後述の第2の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから必要である。第1の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低いと、第2の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。なお、共重合していないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの融点は、通常267℃近傍である。
【0020】
本発明の好適な例において、第2の層を構成する樹脂は、融点が210〜255℃である主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなるポリエステルである。特に2軸延伸における製膜性の観点から、結晶性ポリエステルであることが必要である。また、前述の第1の層を構成するポリエステルよりも融点を低くできることから、繰返し単位の75〜97モル%がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなり、3〜25モル%がそれ以外の共重合成分からなる共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の75モル%未満であるか共重合成分のモル数が25モル%を超えると、実質的にポリマーが非晶性を示し、2軸延伸での製膜性が低下し、かつ前述の第1の層を構成するポリエステルとの組成が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。他方、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の97モル%を超えるか共重合成分のモル数が3モル%未満だと、前述の第1の層を構成するポリエステルとの融点差が小さくなり、結果として、多層延伸フィルムに十分な反射率を付与することが困難となる。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。これらの中でも、比較的、延伸性を維持しながら融点を低下させやすいことからテレフタル酸またはイソフタル酸が好ましい。
【0021】
ところで、第2の層を構成する樹脂の融点は、210〜255℃の範囲であることが、前述の第1の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから好ましい。第2の層を構成する樹脂の融点が上限よりも高いと、第1の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。一方、第2の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低くするには、第1の層を構成する樹脂との組成が大きく変更することになり、得られる1軸延伸多層積層フィルムに十分な層間の密着性を付与することが困難になる。なお、第2の層を構成する樹脂の融点は、フィルムにする前の段階から低い必要はなく、延伸処理後に低くなっていれば良い。例えば、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとそれ以外の他のポリエステルとを用意し、これらを溶融混練時にエステル交換させたものであってもよい。
【0022】
第1の層および第2の層は、層間の光干渉によって選択的に光を反射するために、それぞれ1層の厚みが0.05〜0.5μmである。多層光学フィルムの反射特性は、層数、屈折率差、層の厚みで決定する。本発明における1軸延伸多層積層フィルムが示す反射波長帯は、可視光域から近赤外線領域であることから、上記層厚の範囲とすることが必要である。層厚みが0.5μmを越えると反射帯域が赤外線領域になり反射偏光フィルムとして有用性が得られない。他方0.05μm未満であると反射光は、反射帯域が紫外線領域になり、実質的に性能が得られなくなる。
【0023】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムでは、積層数は、少なくとも501層必要である。層数が501層未満であると、波長400〜800nmにわたり、上記の目的とする光学特性を満足するすることができない。積層数の上限は、生産性およびフィルムのハンドリング性など観点から、高々2001層であることが好ましい。
【0024】
この1軸延伸多層積層フィルムでは、第1の層の平均厚みに対する第2の層の平均厚みの比率は、好ましくは0.5〜5.0、さらに好ましくは1.0〜4.0、特に好ましくは1.5〜3.5である。第1の層と第2の層の厚み比を変化させることにより層間の密着性を維持したまま、また使用する樹脂を変更することなく、1軸延伸多層積層フィルムの機械特性を調整することができる。第1の層の平均厚みに対する第2の層の平均厚みの比率が0.5未満であると1軸延伸多層積層フィルムの延伸方向に裂け易くなる。他方、第1の層の平均厚みに対する第2の層の平均厚みの比率が5.0を超えると熱処理による配向緩和の差異に1軸延伸多層積層フィルムの厚みの変動が大きくなる。
【0025】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムでは、第1の層および第2の層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率は、好ましくは1.5〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは2.5〜3.5である。第1の層および第2の層は、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1の層および第2の層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。第1の層および第2の層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率が1.5未満であると、400〜800nmの波長域に渡り前述の目的となる反射特性をカバーできない。他方、第1の層および第2の層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率が5.0を超えると反射帯域が広がりすぎ、反射率が低下するために、前述の目的となる反射特性が得られない。また、このとき、積層構造として、段階的または、連続的に変化する多層構造の表層または、内部に0.5um以上の層が1層以上存在してもよい。
【0026】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、1軸延伸フィルムの延伸方向とフィルム面内方向を基準とする平面に対して平行な偏光成分について、波長400〜800nmの平均反射率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上であり、同平面に対して垂直な偏光成分について、波長400〜800nmの平均反射率が好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。1軸延伸フィルムの延伸方向とフィルム面内方向を基準とする平面に対して平行な偏光成分について、波長400〜800nmの平均反射率が90%未満であると反射偏光フィルムとしての偏光反射性能が不十分であり、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムのとして十分な性能を発現しない。また、同平面に対して垂直な偏光成分について、波長400〜800nmの平均反射率が10%を超えると反射偏光フィルムとしての偏光透過率が低下するため、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムのとして性能が劣る。
【0027】
この1軸延伸多層積層フィルムでは、1軸延伸フィルムの延伸方向とフィルム面内方向を基準とする平面に対して平行な偏光成分について、波長400〜800nmの各波長における最大反射率と最小反射率の差が10%以内であり、かつ、同平面に対して垂直な偏光成分について、波長400〜800nmの各波長における最大反射率と最小反射率の差が10%以内であることが好ましい。上記偏光成分の最大反射率と最小反射率の差が10%を超えると、反射または透過する光の色相のずれが生じるために液晶ディスプレイなどに使用に問題が生じることがある。
【0028】
図1に、本発明における1軸延伸多層積層フィルムの反射率曲線の一例を示す。P偏光とは、フィルムの延伸方向とフィルム面と垂直方向を含む面内に平行な偏光成分であり、S偏光とは、フィルムの延伸方向とフィルム面と垂直方向を含む面内に垂直な変更成分を示す。
【0029】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムでは、第1の層および第2の層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率が1.5〜5.0であることが好ましい。第1の層および第2の層は、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1の層および第2の層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。また、積層体の表層や中間層に0.5μm以上の厚膜層が存在してもよい。
【0030】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムにおける、多層構造を積層する方法は特に限定されないが、例えば、第1の層用ポリエステルを251層、第2の層用ポリエステルを250層に分岐させた第1の層と第2の層が交互に積層され、その流路が連続的に1〜3倍までに変化する多層フィードブロック装置を使用する方法や、多層フィードブロック装置により、201層の均一な層を積層しておき、その積層された流動体をさらに1.0:1.3:2.0の比で積層された面に垂直に3分岐したのち再び積層して601層にするといった方法もある。また、両者を組み合わせた方法を用いることもできる。
【0031】
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1の層および第2の層を、交互に少なくとも合計501層積層したものである。なお、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、前述のとおり、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を満足するために1軸方向に延伸されている。このとき、延伸方向は、縦方向であっても、横方向であってもよい。また、光学特性を満足される範囲で多段延伸を付与してもよい。また、延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
【0032】
特に、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、層間の密着性及び延伸加工の製膜性を確保する観点から、第1の層、第2の層ともに、正の応力光係数を示す結晶性樹脂を使用し、かつ第2の層の樹脂は、延伸後には、少なくとも部分的に溶融されて配向が緩和されていることが好ましい。このようにして得られた1軸延伸多層積層フィルムは、DSC(示差走査熱量計)で測定される融点が2つ以上存在し、かつそれらの融点か5℃以上異なることが好ましい。ここで、測定される融点は、高融点側が高屈折率を示す第1の層であり、低融点側は、低屈折率を示す第2の層であることは容易に想像がつくであろう。また、さらに好ましくは、延伸後に第2の層は少なくとも部分的に溶融されているために、DSCで測定される結晶化ピークが150℃〜220℃の範囲に存在することが好ましい。結晶化ピークが150℃以下であると、フィルムの延伸時に一方の層が急激に結晶化するために製膜時の製膜性が低下したり、膜質の均質性が低下しやすく、結果として、色相の斑などが発生することがある。一方で結晶化ピークが220℃以上であると、熱固定処理で第二の層を融解するときに、結晶化が同時に起こり、十分な屈折率差を発現させ難くなる。
【0033】
このように、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、ともに結晶性を示す第一の層の樹脂と第二の層の樹脂を延伸することによって、均質な膜質のフィルムが得られ、かつ延伸工程の後に第二の層を融解することで、層間密着性を向上させることと同時に反射性能を向上させることができる。従って、本発明における1軸延伸多層積層フィルムでは、DSCによる結晶ピークが150℃〜220℃に存在し、融点差が5℃以上異なる2つ以上の融解ピークが観測される1軸延伸多層積層フィルムが好ましい。
【0034】
また、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、延伸処理された方向の破断強度は、それぞれ100MPa以上であることが好ましい。破断強度が100MPa未満だと、多層延伸フィルムの加工時における取り扱い性が低下したり、製品にしたときの耐久性が低下したりする。また、破断強度が100MPa以上であると、フィルムの腰が強くなり、巻取り性が向上するという利点もある。好ましい破断強度は、縦方向が150MPa以上、特に200MPa以上で、横方向が150MPa以上、特に200MPa以上である。また、縦方向と横方向の強度比は、3以下であることが耐引裂き性を十分に具備できることから好ましい。特に縦方向と横方向の強度比が2以下であると、さらに耐引裂き性を向上できることから好ましい。破断強度の上限は、特に限定はされないが、延伸工程の安定性を維持する観点から、高々500MPaであることが好ましい。
【0035】
また、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とすることから、特に熱寸法安定性が高いことが特徴であり、とりわけ加工プロセスにおいて、160℃以上の高温を必要とする場合にも十分に対応することができる。本フィルムの延伸処理された方向(製膜方向および幅方向のいずれか)の150℃で30分間処理したときの熱収縮率が、好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下、とくに好ましくは1.0%以下である。また、本発明における1軸延伸多層積層フィルムの200℃で10分間処理したときの製膜方向および幅方向のいずれかの熱収縮率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0036】
また、本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1の層および第2の層を構成する樹脂が、ともに結晶性樹脂であることが好ましい。第1の層および第2の層を構成する樹脂がともに結晶性樹脂であると、延伸などの処理が不均一になりがたく、結果としてフィルムの厚み斑を小さくすることができる。厚み斑の範囲は、下記式で示される厚み変動率が、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、特に好ましくは3.0%未満である。フィルム厚みの変動幅が10%以上になると、光学特性のずれが大きくなり色相ずれなどから目的とする光学特性が得られない。
厚み変動率(%)=(Tmax−Tmin)/(TAve
ここで、上記式中のTmaxは最大厚み、Tminは最小厚み、およびTAveは庭訓厚みである。
【0037】
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、フィルムの巻取り性を向上させるため、第1の層または第2の層の少なくとも一方に不活性粒子を1軸延伸多層積層フィルムの重量を基準として、好ましくは0.001重量%〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.2重量%含有する。不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.3μmである。平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ないと、1軸延伸多層積層フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、粒子による多層延伸フィルムの光学特性の悪化が顕著になり好ましくない。
【0038】
つぎに、本発明における1軸延伸多層積層フィルム製造方法の最も好ましい例について、詳述する。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、融点が260〜270℃のエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステル(第1の層用)と、該第1の層を構成するポリエステルよりも、延伸処理後の融点が少なくとも10℃以上低い、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステル(第2の層用)とを、溶融状態で交互に少なくとも501層以上重ね合わせた状態で、押出し、多層未延伸フィルム(シート状物とする工程)とする。このとき、積層された501層以上の積層物は、その層厚が段階的または、連続的に1.5倍〜5.0倍の範囲で変化するように積層される。
【0039】
なお、第1の層および第2の層を構成するポリエステルは、前述の第1の層および第2の層で説明したのと、同様である。第1の層用ポリエステルの融点が260℃未満だと、第2の層用ポリエステルとの融点差が十分につかず、結果として、得られる多層延伸フィルムの層間に十分な屈折率差が付与できない。一方、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの融点が267℃近傍であることから、第1の層用ポリエステルの融点の上限は高々270℃程度である。また、第2の層用ポリエステルの融点が、第1の層用ポリエステルよりも15℃以上低くないときは、第2の層用ポリエステルとの融点差が十分につかず、結果として、得られる多層延伸フィルムの層間に十分な屈折率差が付与できない。第1の層用ポリエステルの融点と第2の層用ポリエステルの融点差の上限は、両者の密着性を維持する観点から、高々50℃であることが好ましい。
【0040】
このようにして得られた多層未延伸フィルムは、製膜方向、またはそれに直交する幅方向のいずれか1軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1の層のポリエステルのガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。このときの面積倍率は2〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層における個々の層における面方向のバラツキが、延伸による薄層化により小さくなる、すなわち、多層延伸フィルムの光干渉が面方向に均一になるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
【0041】
本発明の最大の特徴は、このようにして延伸された多層フィルムを、第2の層用ポリエステルの融点よりも10℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも15℃低い温度の範囲で熱処理して、第2の層内の分子鎖の配向を緩和させ、第2の層の屈折率を低下させることにある。熱処理の温度が、第2の層用ポリエステルの融点よりも10℃を超えて低いと、第2の層内の分子鎖の配向を緩和させて屈折率を低下させる効果が不十分となり、得られる1軸延伸多層積層フィルムに十分な屈折率差を付与できない。一方、熱処理の温度が、第1の層用ポリエステルの融点よりも10℃以上低い温度でないと、第1の層内の分子鎖の配向も緩和されて屈折率が低下し、得られる1軸延伸多層積層フィルムに十分な屈折率差を付与できない。好ましい熱処理の温度は、第2の層用ポリエステルの融点よりも6℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも16℃低い温度、さらには第2の層用ポリエステルの融点よりも2℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも18℃低い温度である。なお、熱処理の時間は、1〜60秒が好ましい。
【0042】
また、この熱処理の温度や時間を変化させることにより、樹脂の組成を変化させることなく、第2の層の屈折率を調整することができる、すなわち樹脂の組成を変化させることなく、1軸延伸多層積層フィルムの反射特性を変化させることができる。
【0043】
[易接着層]
易接着層は、ガラス転移点50〜100℃のポリエステル樹脂50〜95重量%およびガラス転移点−50〜50℃のアクリル樹脂5〜30重量%を含む。この層を設けることにより、ハードコート層をさらにこのうえに設けたときに高い接着性を得ることができる。
【0044】
本発明で用いる易接着層のポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50〜100℃、更に好ましくは60〜90℃のものである。このポリエステル樹脂は、水に可溶性または分散性のポリエステルが好ましいが、多少の有機溶剤を含有しても良い。
【0045】
かかるポリエステル樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体から成る。すなわち、多塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6ーナフタレンジカルボン酸、1、4ーシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これら酸成分を2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量ながら不飽和多塩基酸成分のマレイン酸、イタコン酸等及びp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1、4ーブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6ーヘキサンジオール、1、4ーシクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が挙げられる。また、これらモノマーが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明で用いる易接着層のアクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−50〜50℃、好ましくは−50〜25℃のものである。このアクリル樹脂は、水に可溶性または分散性のアクリルが好ましいが、多少の有機溶剤を含有しても良い。
【0047】
かかるアクリル樹脂としては以下のようなアクリルモノマーから共重合できる。このアクリルモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2ーヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシエチルメタクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、Nーアルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N、N−ジアルコキシアクリルアミド、N、N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、 N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。また、これらモノマーを挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0048】
易接着層を形成するガラス転移点(Tg)が50〜100℃のポリエステル樹脂は、易接着層中に50〜95重量%含、好ましくは60〜90重量%含有される。そして、易接着層を形成するガラス転移点(Tg)が−50〜50℃の範囲であるアクリル樹脂は易接着層中に5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%含有される。ポリエステル樹脂が95重量%を超えるかアクリル樹脂が5重量%未満であると接着性が不十分となる場合がある。アクリル樹脂が30重量%を超えるかポリエステル樹脂が50重量%未満であると透明性が悪くなる場合がある。
【0049】
易接着層は、微粒子を含有することができ、塗膜表面の中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜250nmの範囲にあることが、フィルムの耐ブロッキング性や搬送性が良好となるため好ましい。このようなRaを有する塗膜は、例えば塗膜成分として微粒子を用いることにより得ることができる。
【0050】
易接着層を形成に用いる水性塗液の固形分濃度は、好ましくは1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。1重量%未満であると1軸多層積層延伸フィルムへの塗れ性が不足して好ましくなく、20重量%を越えると塗剤の安定性や塗布外観が悪化することがあり好ましくない。
【0051】
水性塗液の1軸多層積層延伸フィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、1軸多層積層延伸フィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のフィルムに塗布するのが好ましい。
【0052】
ここで、結晶配向が完了する前のフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の一軸延伸フィルム)等を含むものである。
なかでも、未延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0053】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0054】
かかる界面活性剤は、1軸多層積層延伸フィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0055】
塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.02〜0.3μm、好ましくは0.07〜0.25μmの範囲となるような量であるのが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
【0056】
塗布方法としては、公知の任意の塗布法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。塗布量は走行しているフイルム1m2 当り0.5〜20g、更に1〜10gが好ましい。水性液は水分散液又は乳化液として用いるのが好ましい。
【0057】
[ハードコート層]
本発明においては、易接着層のえうにハードコート層を設ける。ハードコート層の厚さは、好ましくは1〜15μmである。これによって反射性偏光フィルムの表層の耐擦傷性を向上することができ、プリズムシート付近に配置しときに、プリズムシートによるによる傷つき防止できる。
【0058】
ハードコート層としては、放射線硬化系、シラン系など通常用いられるハードコート層が用いることができる。特に放射線硬化系のハードコート層が好ましく、なかでも紫外線硬化系のハードコート層が好ましい。
【0059】
ハードコート層の形成に用いられるUV硬化系組成物としては、例えばウレタン−アクリレート系、エポキシ−アクリレート系、ポリエステル−アクリレート系の紫外線硬化性組成物を例示することができる。
【0060】
易接着層のうえにハードコート層を設けるには、易接着層のうえにハードコート組成物を塗布し、例えば加熱、放射線(例えば紫外線)照射により該組成物を硬化させればよい。
【実施例】
【0061】
実施例をもって、本発明をさらに説明する。なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
(1)ポリエステル樹脂の融点
ポリエステル樹脂試料を10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/min.の昇温速度で、融点を測定した。
【0062】
(2)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。表1中に示した層厚の定義を下記の示す。
層厚比:第一の層のうち0.05〜0.5にある範囲の層の平均厚み
【0063】
(3)反射率、反射波長
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、光源側に偏光フィルタを装着し、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長400nmから800nmの範囲で測定した。このとき、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と合わせるように配置した場合の測定値をP偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をS偏光とした。それぞれの偏光成分について、400−800nmの範囲での反射率の平均値を平均反射率とし、測定された反射率の中で最大のものを、最大反射率とし、最小のものを最小反射率とした。表1中の最大反射率差は下記の式で表される。
最大反射率差(%)=最大反射率(%)−最小反射率(%)
【0064】
(4)ヘーズ値
日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH―20)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。なお、フィルムのヘーズは下記の基準で評価した。
◎: ヘーズ値≦0.5% ……フィルムのヘーズ極めて良好
○:0.5%<ヘーズ値≦1.0% ……フィルムのヘーズ良好
×:1.0%<ヘーズ値 ……フィルムのヘーズ不良
【0065】
(5)中心線平均表面粗さ(Ra)
JIS B0601に準じ、(株)小坂研究所製の高精度表面粗さ計 SE―3FATを使用して、針の半径2μm、荷重30mgで拡大倍率20万倍、カットオフ0.08mmの条件下にチャートを描かせ、表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向とY軸として、粗さ曲線をY=f(x)で表わした時、次の式で与えられた値をnm単位で表わした。また、この測定は、基準長を1.25mmとして4個測定し、平均値で表わした。
【0066】
(6)摩擦係数(μs)
ASTM D1894―63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、塗膜形成面とポリエチレンテレフタレートフィルム(塗膜非形成面)との静摩擦係数(μs)を測定した。但し、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。尚、フィルムの滑り性を下記の基準で評価した。
◎: 摩擦係数(μs)≦0.5 ……滑り性極めて良好
○:0.5<摩擦係数(μs)≦0.8 ……滑り性良好
×:0.8<摩擦係数(μs) ……滑り性不良
【0067】
(7)接着性
・ハードコート
フィルムの易接着層形成面に厚さ10μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満 ……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満 ……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満 ……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満 ……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの ……接着力極めて不良
【0068】
(8)耐ブロッキング性
2枚のフィルムを、易接着層形成面と非形成面が接するように重ね合せ、これに、60℃、80%RHの雰囲気下で17時間にわたって0.6kg/cm2の圧力をかけ、その後、剥離して、その剥離力により耐ブロッキング性を下記の基準で評価した。
◎: 剥離力<98mN/5cm ……耐ブロッキング性極めて良好
○:98mN/5cm≦剥離力<147mN/5cm ……耐ブロッキング性良好
△:147mN/5cm≦剥離力<196mN/5cm……耐ブロッキング性やや良好
×:196mN/5cm≦剥離力 ……耐ブロッキング性不良
【0069】
(9)耐傷性
スチールウール#0000でハードコートの表面を摩擦して傷が付くかどうかを目視で観察して下記の基準で評価した。
○:傷が付かないもの
×:傷が付くもの
【0070】
[実施例1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下「PEN」と略記することがある)を第1の層用ポリエステルとし、第2の層用ポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のテレフタル酸10mol%共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下「TA10PEN」略記することがある)を準備した。そして、第1の層用ポリエステルおよび第2の層用ポリエステルを、それぞれ170℃で5時間乾燥後、押出し機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを301層、第2の層用ポリエステルを300層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層され、かつ層厚が最大/最小で3倍まで、連続的に変化するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして第1の層と第2の層の各層の厚みが1.0:2.0になるように調整し、第1の層と第2の層が交互に積層された総数601層の未延伸多層積層フィルムを作成した。
【0071】
次に該多層未延伸フイルムの片面に表1記載の塗膜用組成物の濃度8%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。
表1において、各成分は以下のとおりである。
【0072】
ポリエステル1:
酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸70モル%/イソフタル酸24モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=85℃)。
【0073】
ポリエステル2:
酸成分がテレフタル酸40モル%/イソフタル酸54モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%、グリコール成分がエチレングリコール70モル%/ジエチレングリコール30モル%で構成されている(Tg=35℃)。
【0074】
アクリル1:
メチルメタクリレート15モル%/エチルアクリレート75モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%/2−ヒドロキシエチルメタクリレート5モル%で構成されている(Tg=0℃)。
アクリル2:メチルメタクリレート80モル%/エチルアクリレート10モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%/2−ヒドロキシエチルメタクリレート5モル%で構成されている(Tg=80℃)。
【0075】
添加剤1:
シリカフィラー(100nm)
添加剤2:
カルナバワックス
濡れ剤:
ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル
【0076】
【表1】

【0077】
塗液を塗布したあと、多層未延伸フイルムを乾燥しつつ、135℃の温度で機械方向に5.2倍に延伸し、245℃で3秒間熱固定処理を行った。得られたフィルムの厚みは、55μmであった。得られた1軸延伸多層積層フィルムの製造条件を表2にまとめる。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0078】
得られたフィルムの片面の塗膜のうえに、下記組成からなるUV硬化系組成物をロールコータを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。
[UV硬化組成物]
ペンタエリスリトールアクリレート 45重量%
N−メチロールアクリルアミド 40重量%
N−ビニルピロリドン 10重量%
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量%
【0079】
その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で30秒間紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
得られたハードコート付きフィルムの耐傷性を評した。結果を表3に示す。
【0080】
[実施例2〜3、比較例1〜4]
塗布する塗液を表1のように変更する以外は実施例1と同様にしてハードコート付きフィルムを評価した。結果を表3にまとめる。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のハードコート付き反射性偏光フィルムは、プリズムシートと併用して、液晶表示装置の部材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のハードコート付き反射性偏光フィルムを構成する1軸延伸多層積層フィルムの光の偏光成分の波長に対する反射率のグラフの一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の応力光学係数を有する熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層とを交互に合計501層以上含んでなる1軸延伸多層積層フィルム、このうえに設けられたガラス転移点50〜100℃のポリエステル樹脂50〜95重量%およびガラス転移点−50〜50℃のアクリル樹脂5〜30重量%を含む易接着層、ならびに易接着層のうえに設けられたハードコート層からなることを特徴とするハードコート付き反射性偏光フィルム。
【請求項2】
第1の層は融点が260〜270℃のポリエステルからなり、第2の層は融点が210〜255℃のポリエステルからなり、かつ第2の層のポリエステルの融点は第1の層のポリエステルの融点より15〜50℃低い、請求項1記載のハードコート付き反射性偏光フィルム。
【請求項3】
第1の最大厚みと最小厚みとの比率が1.5〜5.0、または第2の層の最大厚みと最小厚みとの比率が1.5〜5.0である、請求項1記載のハードコート付き反射性偏光フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−215174(P2006−215174A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26382(P2005−26382)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】