説明

バイアス回路、LNA、およびLNB

【課題】バイアスの供給のオン・オフを切り替える際の、過剰な貫通電流の発生を防止する。
【解決手段】ソース端子が接地されたHEMT1にバイアスを供給するHEMTバイアス回路10であって、オペアンプAMP1と、抵抗素子RIと、スイッチSWgと、スイッチSWdと、基準電圧源VREFと、基準電圧源VDRAINと、負電源電圧源VNEGとを備え、オペアンプAMP1は、正入力端子がHEMT1のドレイン端子に接続され、負入力端子が基準電圧源VDRAINに接続され、出力端子がHEMT1のゲート端子に接続され、負電源端子がスイッチSWgの切り替えにより負電源電圧源VNEGまたはグランドに接続可能とされ、抵抗素子RIは、第1端子および第2端子を有し、該第1端子がHEMT1のドレイン端子に接続され、該第2端子がスイッチSWdの切り替えにより基準電圧源VREFまたはグランドに接続可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FET(Field Effect Transistor)に供給するバイアスのオン・オフを切り替えることが可能なバイアス回路、LNA(Low Noise Amplifier)、およびLNB(Low Noise Block converter)に関するものであり、特に、衛星放送受信用LNBのLNAに用いられるHEMT(High Electron Mobility Transistor)を、バイアスのオン・オフ切替の際に保護するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星放送では、Kuバンド(12GHz〜18GHz)の微小な信号が、通信衛星から個々の家庭などの受信側に向けて送信されている。受信側では、通信衛星からの信号をアンテナによって受信した後、LNBにて増幅およびダウンコンバートし、チューナに伝送している。
【0003】
ここで、微小な信号を良好に受信するためには、LNBにおいて、アンテナにより受信された信号を増幅するLNAに、低いNF(Noise Figure)が要求される。このため、LNAには、HEMTが用いられることが一般的である。HEMTは、Kuバンド受信に対応でき、かつ、NFが低いことを特徴としている。HEMTを用いたLNAの利得およびNFを所望の値に設計するためには、HEMTのドレイン電圧およびドレイン電流を最適に設計する必要がある。
【0004】
HEMTのドレイン電流特性について説明する。図9は、HEMTのバイアスを説明するための回路図である。図10は、HEMTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【0005】
HEMTは、ゲート電圧VGの電圧値に対してドレイン電流IDの電流値が決まる特性を有している。それゆえ、例えば、最適なドレイン電圧VDが2V、最適なドレイン電流IDが8mAと設計した場合には、図10に示すように、ゲート電圧VGは−0.4V程度とならなければならない。このようにLNAに用いるHEMTには、所望のドレイン電圧VDと所望のドレイン電流IDとが同時に得られるように所定のバイアスをかける必要があるため、バイアス回路を用いて供給している。バイアス回路は、VD=2V、ID=8mAを同時に満たすような−0.4V程度のゲート電圧VGを、自動的に探索し、決定している。
【0006】
上記のような、所望のドレイン電圧と所望のドレイン電流とを同時に決定づけるようにゲート電圧を自動制御して供給するバイアス回路は、過去から複数提案されてきている。そのうち、基本となる回路として、特許文献1に開示されたバイアス回路がある。
【0007】
図11は、特許文献1に開示された従来のHEMTバイアス回路500の構成を示す回路図である。HEMTバイアス回路500は、ソース端子が接地されたHEMT501のためのバイアス回路である。図11に示すように、HEMTバイアス回路500は、バイポーラトランジスタBIP501、エミッタ側抵抗素子RE、コレクタ側抵抗素子RC、抵抗素子R501、および抵抗素子R502を備えている。
【0008】
バイポーラトランジスタBIP501のエミッタ端子は、HEMT501のドレイン端子に接続されるとともに、エミッタ側抵抗素子REを介して電源電圧VDDに接続されている。バイポーラトランジスタBIP501のコレクタ端子は、HEMT501のゲート端子に接続されるとともに、コレクタ側抵抗素子RCを介して負電源電圧VNEGに接続されている。バイポーラトランジスタBIP501のベース端子は、抵抗素子R501を介してHEMT501のソース端子に接続されるとともに、抵抗素子R502を介して電源電圧VDDに接続されている。
【0009】
HEMTバイアス回路500では、HEMT501を負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、HEMT501のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(1)および式(2)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0010】
【数1】

【0011】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
:ベース電圧VBの電圧値
BE:ベース・エミッタ間電圧VBEの電圧値
VDD:電源電圧VDDの電圧値
:エミッタ側抵抗素子REの抵抗値
:抵抗素子R501の抵抗値
:抵抗素子R502の抵抗値。
【0012】
しかしながら、上記従来のHEMTバイアス回路500は、温度依存性、電源電圧依存性、電源電圧および負電源電圧からの雑音、並びに、製造プロセスの限定、という4つの問題点を有している。HEMTバイアス回路500では、周囲温度または電源電圧が変動しても、所望のドレイン電圧および所望のドレイン電流を維持する必要がある。また、電源に重畳している雑音を、HEMT501のドレイン端子およびゲート端子に伝えないようにする必要がある。
【0013】
ここで、上記4つの問題点は、特願2010−040887に記載された技術によって既に解決されている。上記技術により提供されるHEMTバイアス回路では、HEMTのドレイン電流およびドレイン電圧を同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性および電源電圧依存性を排除し、かつ非常に高い雑音除去率を得ることが可能となっている。また、特殊な製造プロセスを必要としないので、製造プロセスの選定自由度を向上することが可能となっている。
【0014】
なお、特願2010−040887に記載された技術は、この出願の発明に関連する先行技術である。
【0015】
ところで、衛星放送からの信号電波は、周波数資源の有効利用のために、水平偏波および垂直偏波、あるいは、左旋円偏波および右旋円偏波が使われている。そして、これらの偏波を受信するLNBには、水平偏波(左旋円偏波)アンテナと、当該アンテナに接続された水平偏波(左旋円偏波)用LNAと、垂直偏波(右旋円偏波)アンテナと、当該アンテナに接続された垂直偏波(右旋円偏波)用LNAとが備えられている。
【0016】
図12は、一般的なLNB100の構成を示すブロック図である。図12に示すように、LNB100は、水平偏波アンテナ102(第1偏波アンテナ)および垂直偏波アンテナ103(第2偏波アンテナ)を有するフィードホーン101、水平偏波用LNA104(第1偏波用増幅器)、垂直偏波用LNA105(第2偏波用増幅器)、LNA106、イメージ除去フィルタ107、Kuバンド用増幅器108、ミキサ109、局部発振器110、IF用増幅器111、周波数選択器112、偏波選択器113、電源レギュレータ114、並びに、コネクタ115を備えている。
【0017】
LNB100は、フィードホーン101によって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして、同軸ケーブル116で接続された後段のTVセット117やビデオセット118に伝送する。なお、LNB100は、水平偏波および垂直偏波を受信するための構成を備えているが、勿論、左旋円偏波および右旋円偏波を受信するための構成を備えていてもよい。すなわち、水平偏波アンテナ102および水平偏波用LNA104を、左旋円偏波用の構成とし、垂直偏波アンテナ103および垂直偏波用LNA105を、右旋円偏波用の構成とすればよい。
【0018】
通信衛星からKuバンドのキャリアで送信された電波(水平偏波(第1偏波)および垂直偏波(第2偏波))は、フィードホーン101内部の水平偏波アンテナ102または垂直偏波アンテナ103によって、それぞれ受信され、電流信号に変換される。水平偏波アンテナ102で変換された電流信号(第1偏波信号)は、水平偏波用LNA104に出力される。垂直偏波アンテナ103で変換された電流信号(第2偏波信号)は、垂直偏波用LNA105に出力される。
【0019】
上記各アンテナからの電流信号は、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105によって電圧信号に変換された後、増幅される。そして、増幅された信号は、LNA106によってさらに増幅された後、イメージ除去フィルタ107に出力される。イメージ除去フィルタ107では、イメージ帯域にある信号などの不要な信号が除去される。そして、イメージ除去フィルタ107からの信号は、Kuバンド用増幅器108によってさらに増幅された後、ミキサ109に出力される。
【0020】
ミキサ109では、Kuバンド用増幅器108からの信号が、局部発振器110から出力されるローカル信号と乗算されることで、IF(1〜2GHz帯域)の信号へと変換される。そして、変換された信号は、IF用増幅器111により増幅され出力される。IF用増幅器111は、結合容量を介してコネクタ115に接続されており、同軸ケーブル116を駆動するために75Ωでマッチングを行う。
【0021】
LNB100は、コネクタ115に接続された同軸ケーブル116を介して、TVセット117やビデオセット118と接続されている。これにより、LNB100で受信した信号が、TVセット117やビデオセット118に伝送される。
【0022】
また、TVセット117やビデオセット118は、同軸ケーブル116を介して、LNB100に電力や信号を伝送する。LNB100内において、コネクタ115は、インダクタを介して、周波数選択器112、偏波選択器113、および電源レギュレータ114に接続されている。
【0023】
例えば、同軸ケーブル116を介して、TVセット117やビデオセット118側から、LNB100を駆動するための電力がLNB100に伝送される。伝送された電力は、電源レギュレータ114に供給される。LNB100を駆動するための電力伝送は、通常18V程度と高いため、電源レギュレータ114によって降圧した後に、安定化された電源電圧がLNB100内の各ブロックへ供給される。
【0024】
また、受信信号の帯域を切り替えるために、同軸ケーブル116を介して、TVセット117やビデオセット118側から、局部発振器110の周波数を切り替えるための切替信号がLNB100に伝送される。伝送された切替信号は、周波数選択器112に供給される。周波数選択器112は、上記切替信号を判別して選択したローカル周波数となるように、局部発振器110の発振周波数の切り替えを行う。
【0025】
さらに、水平偏波および垂直偏波のいずれを受信するかを選択するために、同軸ケーブル116を介して、TVセット117やビデオセット118側から、受信する偏波を選択するための偏波選択信号がLNB100に伝送される。伝送された偏波選択信号は、偏波選択器113に供給される。
【0026】
ここで、一般的なLNBシステムでは、LNB100への電力供給は、TVセット117やビデオセット118側から同軸ケーブル116に電圧を印加することによって行われている。上記偏波選択信号は、この電圧の高低を利用して実現されており、当該電圧の高低によっていずれの偏波を受信するのかの指令が行われている。偏波選択器113は、上記電圧の高低を判断し、受信する偏波を選択する。受信する偏波の選択方法としては、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105のうち、受信する方のLNAの電源をオンにし、受信しない方のLNAの電源をオフにする方法が簡単である。
【0027】
図13に、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105の一例であるLNA200の概略構成を示す。LNA200は、HEMT201、HEMTバイアス回路202、並びに、スイッチ203・204を備えている。水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105には、非常に低いNFが要求されるため、HEMT201が用いられる。そして、このHEMT201のためのHEMTバイアス回路202としては、例えば、特願2010−040887に記載された技術によるHEMTバイアス回路が用いられる。
【0028】
HEMT201のゲート端子は、スイッチ203がオンのとき、スイッチ203を介してHEMTバイアス回路202に接続され、スイッチ203がオフのときはグランドに接続される。スイッチ203は、偏波選択器113から出力される偏波選択信号に応じてオンまたはオフとなり、HEMT201のゲート端子とHEMTバイアス回路202との間を導通または遮断する。HEMT201のドレイン端子は、スイッチ204がオンのとき、スイッチ204を介してHEMTバイアス回路202に接続され、スイッチ204がオフのときはグランドに接続される。スイッチ204は、上記偏波選択信号に応じてオンまたはオフとなり、HEMT201のドレイン端子とHEMTバイアス回路202との間を導通または遮断する。これにより、HEMT201へのバイアスをオンまたはオフにすることによって、LNA200をオン(動作)またはオフ(停止)にさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開昭59−194522号公報(1984年11月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、LNA200では、バイアスをオンからオフ、また、オフからオンへ切り替える際に、ドレイン電圧VDの動作とゲート電圧VGの動作とが重なるため、大きな貫通電流がHEMT201に流れるという問題がある。
【0031】
図14に、HEMT201のバイアスのオン・オフを切り替えるときのタイミングチャートを示す。図14に示すように、HEMT201のバイアスのオン・オフを切り替えるために、偏波選択信号がローレベル(OFF)からハイレベル(ON)、また、ハイレベル(ON)からローレベル(OFF)になると同時に、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGが変化し始める。ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGが変化してから安定するまでの間、すなわち両者が動作している間は、大きな貫通電流(ドレイン電流ID)がHEMT201に流れる。過剰な貫通電流は、HEMT201への物理的ダメージとなり、長期信頼性を損なう原因となる。
【0032】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、バイアスの供給のオン・オフを切り替える際の、過剰な貫通電流の発生を防止することができるバイアス回路、LNA、およびLNBを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明のバイアス切替回路は、上記課題を解決するために、入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETに、バイアスを供給するバイアス回路であって、両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、負電源端子が上記第1スイッチの切り替えにより上記負電源電圧源またはグランドに接続可能とされ、上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2スイッチの切り替えにより上記第1基準電圧源またはグランドに接続可能とされていることを特徴としている。
【0034】
上記の構成によれば、第1スイッチおよび第2スイッチの切り替えのタイミングによって、増幅用FETに対し、ゲート端子に電圧を印加および消去するタイミングと、ドレイン端子に電圧を印加および消去するタイミングとを、大きな貫通電流が流れないように制御することが可能となる。
【0035】
例えば、バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、第1スイッチを切り替えることにより差動増幅器の負電源端子の接続先をグランドから負電源電圧源に切り替えた後に、第2スイッチを切り替えることにより第1抵抗素子の第2端子の接続先をグランドから第1基準電圧源に切り替える。これによれば、増幅用FETのゲート端子に電圧を印加してから、増幅用FETのドレイン端子に電圧を印加するシーケンスとなる。よって、増幅用FETのゲート端子に電圧を印加してから、増幅用FETのドレイン端子に電圧を印加するまでの期間、増幅用FETのチャネルに存在するキャリアが減少するので、貫通電極を流れにくくすることが可能となる。
【0036】
また、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、第2スイッチを切り替えることにより第1抵抗素子の第2端子の接続先を第1基準電圧源からグランドに切り替えた後に、第1スイッチを切り替えることにより差動増幅器の負電源端子の接続先を負電源電圧源からグランドに切り替える。これによれば、増幅用FETのドレイン端子の電圧を消去してから、増幅用FETのゲート端子の電圧を消去するシーケンスとなる。よって、増幅用FETのドレイン端子の電圧を消去してから、増幅用FETのゲート端子の電圧を消去するまでの期間、増幅用FETのゲート端子が負電圧に残留しているので、過剰なドレイン電流が流れることを防止することが可能となる。
【0037】
したがって、バイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、バイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することが可能となる。
【0038】
なお、本発明のバイアス回路は、バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記差動増幅器の負電源端子の接続先をグランドから上記負電源電圧源に切り替えた後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第1抵抗素子の第2端子の接続先をグランドから上記第1基準電圧源に切り替え、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第1抵抗素子の第2端子の接続先を上記第1基準電圧源からグランドに切り替えた後に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記差動増幅器の負電源端子の接続先を上記負電源電圧源からグランドに切り替えることが望ましい。
【0039】
また、本発明のバイアス回路は、上記増幅用FETは、HEMTであることが望ましい。
【0040】
本発明のバイアス切替回路は、上記課題を解決するために、入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETに、バイアスを供給するバイアス回路であって、単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子をこの順番に介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介してグランドに接続され、上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、上記第2抵抗素子は、第3端子および第4端子を有し、該第3端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第4端子が上記負電源電圧源に接続され、上記第1スイッチは、上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第1スイッチの切り替えにより上記増幅用FETのゲート端子はグランドに接続可能とされており、上記第2スイッチは、上記第2トランジスタの制御端子に接続され、該第2スイッチの切り替えにより上記第2トランジスタの制御端子は該第2トランジスタの第1導通端子に接続可能とされていることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、第1スイッチおよび第2スイッチの切り替えのタイミングによって、増幅用FETに対し、ゲート端子に電圧を印加および消去するタイミングと、ドレイン端子に電圧を印加および消去するタイミングとを、大きな貫通電流が流れないように制御することが可能となる。
【0042】
例えば、バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、第1スイッチを切り替えることにより増幅用FETのゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、第2スイッチを切り替えることにより第2トランジスタの制御端子と第2トランジスタの第1導通端子との接続を遮断する。これによれば、増幅用FETのゲート端子に電圧を印加してから、増幅用FETのドレイン端子に電圧を印加するシーケンスとなる。よって、増幅用FETのゲート端子に電圧を印加してから、増幅用FETのドレイン端子に電圧を印加するまでの期間、増幅用FETのチャネルに存在するキャリアが減少するので、貫通電極を流れにくくすることが可能となる。
【0043】
また、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、第2スイッチを切り替えることにより第2トランジスタの制御端子を第2トランジスタの第1導通端子に接続した後に、第1スイッチを切り替えることにより増幅用FETのゲート端子をグランドに接続する。これによれば、増幅用FETのドレイン端子の電圧を消去してから、増幅用FETのゲート端子の電圧を消去するシーケンスとなる。よって、増幅用FETのドレイン端子の電圧を消去してから、増幅用FETのゲート端子の電圧を消去するまでの期間、増幅用FETのゲート端子が負電圧に残留しているので、過剰なドレイン電流が流れることを防止することが可能となる。
【0044】
したがって、バイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、バイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することが可能となる。
【0045】
なお、本発明のバイアス回路は、バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子と上記第2トランジスタの第1導通端子との接続を遮断し、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子を上記第2トランジスタの第1導通端子に接続した後に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子をグランドに接続することが望ましい。
【0046】
また、本発明のバイアス回路は、第1コンデンサおよび第2コンデンサをさらに備え、上記第1コンデンサは、第5端子および第6端子を有し、該第5端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第6端子がグランドに接続され、上記第2コンデンサは、第7端子および第8端子を有し、該第7端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第8端子が上記増幅用FETのソース端子に接続されていることが好ましい。
【0047】
上記の構成によれば、第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えていることにより、バイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、増幅用FETのドレイン電圧の放電に要する時間と、増幅用FETのゲート電圧の充電に要する時間とを制御することが可能となる。
【0048】
それゆえ、ゲート電圧の充電時間をドレイン電圧の放電時間よりも長く設定することによって、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、第1スイッチおよび第2スイッチを同時に切り替えても、増幅用FETのドレイン端子の電圧を消去してから、増幅用FETのゲート端子の電圧を消去するシーケンスとすることが可能となる。
【0049】
なお、本発明のバイアス回路は、バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子と上記第2トランジスタの第1導通端子との接続を遮断し、バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子を上記第2トランジスタの第1導通端子に接続した後に、または同時に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子をグランドに接続することが望ましい。
【0050】
また、本発明のバイアス回路は、上記増幅用FETは、HEMTであることが望ましい。
【0051】
さらに、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、該Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、上記第2トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、該Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることが望ましい。
【0052】
また、本発明のバイアス回路は、第6抵抗素子をさらに備え、上記第6抵抗素子は、上記第1トランジスタの第2導通端子と上記増幅用FETのゲート端子とを電気的に接続する経路に設けられていることが好ましい。
【0053】
上記の構成によれば、第1トランジスタの許容耐圧内で、第1トランジスタを駆動させることが可能となる。それゆえ、優れた信頼性を具備することが可能となる。
【0054】
本発明のLNAは、上記課題を解決するために、入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETと、上記バイアス回路とを備え、上記増幅用FETのゲート端子に入力端子が設けられ、上記増幅用FETのドレイン端子に出力端子が設けられていることを特徴としている。
【0055】
上記の構成によれば、上記バイアス回路を備えることによって、増幅用FETを適切な動作点で駆動させることが可能になるとともに、バイアス回路で奏する効果を得ることが可能となる。
【0056】
本発明のLNBは、上記課題を解決するために、アンテナによって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして後段に伝送するLNBであって、第1偏波を受信し、該第1偏波を第1偏波信号に変換する第1偏波アンテナと、第2偏波を受信し、該第2偏波を第2偏波信号に変換する第2偏波アンテナと、上記第1偏波信号を増幅する第1偏波用増幅器と、上記第2偏波信号を増幅する第2偏波用増幅器と、上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを選択する偏波選択器とを備え、上記第1偏波および上記第2偏波はそれぞれ、水平偏波および垂直偏波、または、左旋円偏波および右旋円偏波であり、上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、上記LNAであり、上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、上記偏波選択器から出力される上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを示す偏波選択信号に応じて、上記第1スイッチおよび上記第2スイッチをそれぞれ切り替えることを特徴としている。
【0057】
上記の構成によれば、上記LNAを備えることによって、第1偏波用増幅器および第2偏波用増幅器の利得およびNFを最適化することが可能となるので、第1偏波アンテナおよび第2偏波アンテナにより受信された微小な信号を良好に受信することが可能となる。
【0058】
また、本発明のLNBは、部分的に集積化されていることが好ましい。
【0059】
上記の構成によれば、部品の実装面積と実装コストとが削減され、LNBにおいて小型化・低コスト化の実現を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0060】
以上のように、本発明のバイアス回路は、両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、負電源端子が上記第1スイッチの切り替えにより上記負電源電圧源またはグランドに接続可能とされ、上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2スイッチの切り替えにより上記第1基準電圧源またはグランドに接続可能とされている構成である。
【0061】
また、本発明のバイアス回路は、単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子をこの順番に介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介してグランドに接続され、上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、上記第2抵抗素子は、第3端子および第4端子を有し、該第3端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第4端子が上記負電源電圧源に接続され、上記第1スイッチは、上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第1スイッチの切り替えにより上記増幅用FETのゲート端子はグランドに接続可能とされており、上記第2スイッチは、上記第2トランジスタの制御端子に接続され、該第2スイッチの切り替えにより上記第2トランジスタの制御端子は該第2トランジスタの第1導通端子に接続可能とされている構成である。
【0062】
それゆえ、第1スイッチおよび第2スイッチの切り替えのタイミングによって、増幅用FETに対し、ゲート端子に電圧を印加および消去するタイミングと、ドレイン端子に電圧を印加および消去するタイミングとを、大きな貫通電流が流れないように制御することができる。したがって、バイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、バイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0063】
本発明のLNAは、入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETと、上記バイアス回路とを備え、上記増幅用FETのゲート端子に入力端子が設けられ、上記増幅用FETのドレイン端子に出力端子が設けられている構成である。
【0064】
それゆえ、上記バイアス回路を備えることによって、増幅用FETを適切な動作点で駆動させることができるとともに、バイアス回路で奏する効果を得ることができるという効果を奏する。
【0065】
本発明のLNBは、第1偏波を受信し、該第1偏波を第1偏波信号に変換する第1偏波アンテナと、第2偏波を受信し、該第2偏波を第2偏波信号に変換する第2偏波アンテナと、上記第1偏波信号を増幅する第1偏波用増幅器と、上記第2偏波信号を増幅する第2偏波用増幅器と、上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを選択する偏波選択器とを備え、上記第1偏波および上記第2偏波はそれぞれ、水平偏波および垂直偏波、または、左旋円偏波および右旋円偏波であり、上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、上記LNAであり、上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、上記偏波選択器から出力される上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを示す偏波選択信号に応じて、上記第1スイッチおよび上記第2スイッチをそれぞれ切り替える構成である。
【0066】
それゆえ、上記LNAを備えることによって、第1偏波用増幅器および第2偏波用増幅器の利得およびNFを最適化することが可能となるので、第1偏波アンテナおよび第2偏波アンテナにより受信された微小な信号を良好に受信することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明におけるバイアス回路の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】図1のバイアス回路に制御信号を供給する制御信号生成回路の一構成例を示す回路図である。
【図3】図1のバイアス回路を備えたLNAにおける、バイアスのオン・オフを切り替えるときの各信号波形を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明におけるバイアス回路の第2実施形態を示す回路図である。
【図5】図2のバイアス回路に制御信号を供給する制御信号生成回路の一構成例を示す回路図である。
【図6】図2のバイアス回路を備えたLNAにおける、バイアスのオン・オフを切り替えるときの各信号波形を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明におけるバイアス回路の第3実施形態を示す回路図である。
【図8】本発明におけるLNAの実施の一形態を示す回路ブロック図である。
【図9】HEMTのバイアスを説明するための回路図である。
【図10】HEMTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【図11】従来のHEMTバイアス回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来のLNBの構成を示す回路ブロック図である。
【図13】上記従来のLNBにおいて用いられるLNAの概略構成を示す回路ブロック図である。
【図14】図13のLNAにおける、バイアスのオン・オフを切り替えるときの各信号波形を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の各実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、各実施の形態において説明すること以外の構成は、前述の実施の形態と同じである。また、説明の便宜上、各実施の形態においては、前述の実施の形態の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
〔実施の形態1〕
(HEMTバイアス回路の構成)
図1は、本実施の形態のHEMTバイアス回路10の一構成例を示す回路図である。
【0070】
本実施の形態のHEMTバイアス回路10(バイアス回路)は、ソース端子が接地されたHEMT1(増幅用FET)のためのバイアス回路である。HEMT1は入力信号を増幅する。HEMTバイアス回路10は、図1に示すように、オペアンプAMP1(両電源型の差動増幅器)、抵抗素子RI(第1抵抗素子)、スイッチSWg(第1スイッチ)、スイッチSWd(第2スイッチ)、負電源電圧源VNEG、基準電圧源VDRAIN(第2基準電圧源)、および基準電圧源VREF(第1基準電圧源)を備えている。
【0071】
オペアンプAMP1は、両電源型のオペアンプであり、差動増幅器として構成されている。オペアンプAMP1の正電源端子は、電源電圧VDDに接続されている。オペアンプAMP1の負電源端子は、スイッチSWgに接続されている。スイッチSWgの切替によって、オペアンプAMP1の負電源端子は、負電源電圧源VNEGに接続されるか、接地される。オペアンプAMP1の正入力端子(非反転入力端子)は、HEMT1のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP1の負入力端子(反転入力端子)は、基準電圧源VDRAINに接続されている。オペアンプAMP1の出力端子は、HEMT1のゲート端子に接続されている。
【0072】
抵抗素子RIは、2つの端子を有しており、一方の端子(第1端子)がHEMT1のドレイン端子に接続され、他方の端子(第2端子)がスイッチSWdに接続されている。スイッチSWdの切替によって、抵抗素子RIの他方の端子は、基準電圧源VREFに接続されるか、接地される。
【0073】
スイッチSWgは、制御信号SG、および、制御信号SGを反転した反転制御信号/SG(SGバー)に応じて、オペアンプAMP1の負電源端子の接続先を、負電源電圧源VNEGとグランドとの間で切り替えるものである。スイッチSWgは、制御信号SGがハイレベルかつ反転制御信号/SGがローレベルのとき、オペアンプAMP1の負電源端子を負電源電圧源VNEGに接続させる。スイッチSWgは、制御信号SGがローレベルかつ反転制御信号/SGがハイレベルのとき、オペアンプAMP1の負電源端子を接地させる。
【0074】
スイッチSWdは、制御信号SD、および、制御信号SDを反転した反転制御信号/SD(SDバー)に応じて、抵抗素子RIすなわちHEMT1のドレイン端子の接続先を、基準電圧源VREFとグランドとの間で切り替えるものである。スイッチSWdは、制御信号SDがハイレベルかつ反転制御信号/SDがローレベルのとき、HEMT1のドレイン端子を基準電圧源VREFに接続させる。スイッチSWdは、制御信号SDがローレベルかつ反転制御信号/SDがハイレベルのとき、HEMT1のドレイン端子を接地させる。
【0075】
なお、制御信号SG、反転制御信号/SG、制御信号SD、および反転制御信号/SDは、制御信号生成回路により生成され、制御信号生成回路からスイッチSWgおよびスイッチSWdにそれぞれ供給される。制御信号生成回路については後述する。
【0076】
負電源電圧源VNEGは、オペアンプAMP1の負電源端子に対し、負の電源電圧(負電源電圧VNEGとも呼ぶ)を発生する。基準電圧源VDRAINは、オペアンプAMP1の負入力端子に対し、正の電圧(基準電圧VDRAINとも呼ぶ)を発生する。基準電圧源VREFは、HEMT1のドレイン端子に対し、正の電圧(基準電圧VREFとも呼ぶ)を発生する。基準電圧源VDRAINおよび基準電圧源VREFは、温度Tや電源電圧VDDの変動に全く影響を受けない。なお、電源電圧VDDは正の電源電圧であり、外部の他の部材と共用することができる。
【0077】
(ドレイン電圧VDおよびドレイン電流ID)
HEMTバイアス回路10では、HEMT1を、オペアンプAMP1の負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、オペアンプAMP1の負電源端子が負電源電圧源VNEGに接続されるとともに、HEMT1のドレイン端子が基準電圧源VREFに接続されている間は、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(3)および式(4)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0078】
【数2】

【0079】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
DRAIN:基準電圧源VDRAINの電圧値
REF:基準電圧源VREFの電圧値
RI:抵抗素子RIの抵抗値。
【0080】
すなわち、基準電圧源VDRAINの基準電圧VDRAINをオペアンプAMP1の入力に印加することで、HEMT1のドレイン端子では所定の電圧(=基準電圧VDRAIN)を得る。また、基準電圧源VREFとHEMT1のドレイン端子との間に抵抗素子RIを挿入することによって、基準電圧VREFと基準電圧VDRAINとの電位差が抵抗素子RIの両端に生じるため、所望のドレイン電流IDを得る。
【0081】
式(3)および式(4)は、温度Tや電源電圧VDDの関数ではないので、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、これらの変動を受けない。よって、HEMTバイアス回路10では、温度依存性および電源電圧依存性を排除することが可能となる。
【0082】
また、電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEGからHEMT1のゲート端子へのPSRR(Power Supply Rejection Ratio)は、オペアンプAMP1のPSRRと等しくなるので、非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。PSRRは、ある電源電圧(ここでは電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEG)からの雑音が、注目する端子においてどれだけ減衰するかを示す指標である。
【0083】
さらに、オペアンプAMP1は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができる。それゆえ、図11に示した従来のHEMTバイアス回路500では、PNP型バイポーラトランジスタが必須であったが、HEMTバイアス回路10では、トランジスタの種類は問われない。よって、HEMTバイアス回路10では、製造プロセスの選定の自由度が高くなり、CMOSプロセスや、MOSプロセス、バイポーラプロセス、BiCMOSプロセスなど、様々なプロセスでの集積回路の製造が可能となる。
【0084】
但し、近年のオペアンプ(差動増幅器)は、単一電源が主流である。また、図1に示すオペアンプAMP1は、GNDレベルを挟んだ正負の両電源を必要とするというデメリットがある。
【0085】
(LNAおよびLNB)
上述したHEMTバイアス回路10は、HEMTが用いられるLNA(Low Noise Amplifier)に適用することができる。よって、LNAは、少なくともHEMT1およびHEMTバイアス回路10を備えるLNAとして実現することができる。
【0086】
図8は、LNA70の一構成例を示す回路ブロック図である。LNA70は、HEMT1およびHEMTバイアス回路10を備えている。LNA70では、HEMT1のゲート端子に入力部71が設けられ、HEMT1のドレイン端子に出力部72が設けられる。
【0087】
このようなHEMTバイアス回路10を備えるLNA70では、HEMT1を適切な動作点で駆動させることが可能になるとともに、上述したHEMTバイアス回路10で奏する効果を得ることが可能となる。
【0088】
また、LNA70は、衛星放送受信用などのLNB(Low Noise Block converter)に適用することができる。LNBとしては、例えば、上述した図12のLNB100がある。LNB100に適用する場合、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105として、LNA70が用いられる。LNB100では、LNA70を備えることによって、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105の利得およびNFを最適化することが可能となるので、フィードホーン101(水平偏波アンテナ102および垂直偏波アンテナ103)により受信された微小な信号を良好に受信することが可能となる。
【0089】
また、LNB100には複数の機能ブロックが存在する。それゆえ、各機能ブロックのいずれかを組み合わせて集積化してもよいし、全ての機能ブロックを集積化してもよい。LNB100を、部分的に集積化または全体的に集積化することにより、部品の実装面積と実装コストとが削減され、LNB100において小型化・低コスト化の実現を図ることが可能となる。
【0090】
ここで、HEMTバイアス回路10は、スイッチSWgおよびスイッチSWdを切り替えることにより、HEMT1へ供給するバイアスのオン・オフを切り替えることができる。すなわち、LNA70のオン・オフを切り替えることができる。
【0091】
図12に示したLNB100では、衛星放送からの信号電波として、水平偏波(左旋円偏波)と垂直偏波(右旋円偏波)とを選択して受信する仕様となっている。偏波選択器113から出力される偏波選択信号に応じて、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105のうち、受信する方のLNAをオンにし、受信しない方のLNAをオフにすることで、受信する偏波を選択する。
【0092】
よって、HEMT1とHEMTバイアス回路10とを備えるLNA70を、偏波選択信号に応じてスイッチSWgおよびスイッチSWdを切り替えるように構成することによって、容易に、上記受信する偏波の選択を実施することが可能となる。
【0093】
但し、偏波選択信号は、2値(ハイレベルおよびローレベル)の信号であるため、偏波選択信号から、制御信号SG、反転制御信号/SG、制御信号SD、および反転制御信号/SDを生成する制御信号生成回路が必要である。それゆえ、LNB100では、例えば、図8に示すように、HEMTバイアス回路10に接続される制御信号生成回路50が設けられる。制御信号生成回路50は、LNA毎(水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105)にそれぞれ設けられる。
【0094】
(制御信号生成回路)
次に、制御信号生成回路50について説明する。
【0095】
図2は、制御信号生成回路50の一構成例を示す回路図である。図2に示すように、制御信号生成回路50は、NOTゲート51・52・55・57、コンデンサ53、NORゲート54、並びにNANDゲート56を備えている。
【0096】
また、制御信号生成回路50は、偏波選択信号が入力される入力部58、制御信号SGが出力される出力部59、反転制御信号/SGが出力される出力部60、制御信号SDが出力される出力部61、および反転制御信号/SDが出力される出力部62を備えている。入力部58は偏波選択器113に接続される。出力部59および出力部60は、HEMTバイアス回路10のスイッチSWgに接続される。出力部61および出力部62は、HEMTバイアス回路10のスイッチSWdに接続される。
【0097】
NOTゲート51・52・55・57は、NOT演算を行う1入力1出力の論理回路であり、インバータとも呼ばれる。NORゲート54は、NOR演算を行う2入力1出力の論理回路である。NANDゲート56は、NAND演算を行う2入力1出力の論理回路である。NOTゲート51の入力部は入力部58に接続され、NOTゲート51の出力部はNOTゲート52の入力部に接続されている。NOTゲート52の出力部は、NORゲート54の第1入力部およびNANDゲート56の第1入力部に接続されている。コンデンサ53は、2つの端子を有し、一方の端子がNOTゲート52の出力部に接続され、他方の端子が接地されている。NORゲート54の第2入力部およびNANDゲート56の第2入力部は、入力部58に接続されている。NORゲート54の出力部は、NOTゲート55の入力部に接続されるとともに、出力部60に接続されている。NOTゲート55の出力部は出力部59に接続されている。NANDゲート56の出力部は、NOTゲート57の入力部に接続されるとともに、出力部62に接続されている。NOTゲート57の出力部は出力部61に接続されている。
【0098】
制御信号生成回路50では、偏波選択信号がハイレベルのとき、制御信号SGおよび制御信号SDはハイレベルとなり、反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDはローレベルとなる。一方、偏波選択信号がローレベルのとき、制御信号SGおよび制御信号SDはローレベルとなり、反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDはハイレベルとなる。よって、偏波選択信号のハイレベルおよびローレベルに応じて、LNA70をオンまたはオフにすることが可能となる。
【0099】
但し、制御信号生成回路50では、NOTゲート51・52、並びにコンデンサ53により、遅延素子63が構成されている。これにより、制御信号SDおよび反転制御信号/SDのレベル変化と、制御信号SGおよび反転制御信号/SGのレベル変化とは、所定の時間ずれる(遅延する)ようになっている。
【0100】
(オン・オフの切替タイミング)
次に、HEMT1とHEMTバイアス回路10とを備えるLNA70における、バイアスのオン・オフの切替タイミングについて説明する。
【0101】
図3は、上記LNA70における、バイアスのオン・オフを切り替えるときの各信号波形を示すタイミングチャートである。
【0102】
<時間t1>
偏波選択信号がローレベルからハイレベルに変化すると、NORゲート54の第2入力部およびNANDゲート56の第2入力部がハイレベルに変化する一方、遅延素子63によってNORゲート54の第1入力部およびNANDゲート56の第1入力部はローレベルが維持されたままであるので、NORゲート54の出力部はローレベルに変化し、NANDゲート56の出力部はハイレベルを維持する。これにより、制御信号SGはハイレベルとなり、制御信号SDはローレベルとなる。
【0103】
<時間t2>
偏波選択信号がローレベルからハイレベルに変化してから所定の時間(期間A)が経過すると、NORゲート54の第1入力部およびNANDゲート56の第1入力部がハイレベルに変化するので、NORゲート54の出力部はローレベルを維持し、NANDゲート56の出力部はローレベルに変化する。これにより、制御信号SGおよび制御信号SDは共にハイレベルとなる。
【0104】
<時間t3>
偏波選択信号がハイレベルからローレベルに変化すると、NORゲート54の第2入力部およびNANDゲート56の第2入力部がローレベルに変化する一方、遅延素子によってNORゲート54の第1入力部およびNANDゲート56の第1入力部はハイレベルが維持されたままであるので、NORゲート54の出力部はローレベルを維持し、NANDゲート56の出力部はハイレベルに変化する。これにより、制御信号SGはハイレベルとなり、制御信号SDはローレベルとなる。
【0105】
<時間t4>
偏波選択信号がハイレベルからローレベルに変化してから所定の時間(期間B)が経過すると、NORゲート54の第1入力部およびNANDゲート56の第1入力部がローレベルに変化するので、NORゲート54の出力部はハイレベルに変化し、NANDゲート56の出力部はハイレベルを維持する。これにより、制御信号SGおよび制御信号SDは共にローレベルとなる。
【0106】
このように、LNA70をオフからオンに切り替えるために偏波選択信号をローレベルからハイレベルに変化させると、制御信号SGはハイレベル、かつ、反転制御信号/SDはハイレベルとなり、ドレイン電圧VDはゼロのままで、先にHEMT1にゲート電圧VGが印加される期間Aが設けられている。この期間Aによって、HEMT1のチャネルに存在するキャリアが減少し、貫通電極が流れにくくなる。
【0107】
よって、期間Aを、十分な時間、または、HEMT1がピンチオフに達するまでの時間に設定することによって、期間Aを経過した後に制御信号SDがハイレベルとなり、HEMT1にドレイン電圧VDが印加されても、過剰なドレイン電流IDが流れることを防止することが可能となる。
【0108】
一方、LNA70をオンからオフに切り替えるために偏波選択信号をハイレベルからローレベルに変化させると、制御信号SGはハイレベル、かつ、反転制御信号/SDはハイレベルとなり、HEMT1にゲート電圧VGが印加されるままで、先にドレイン電圧VDがゼロとなる期間Bが設けられている。期間Bでは、ゲート電圧VGが負の電源電圧に残留しているので、過剰なドレイン電流IDが流れない。よって、過剰なドレイン電流IDが流れることを防止することが可能となる。
【0109】
なお、期間Aおよび期間Bは、遅延素子63の構成によって設定することができる。
【0110】
以上のように、HEMTバイアス回路10は、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、スイッチSWgを切り替えることによりオペアンプAMP1の負電源端子の接続先をグランドから負電源電圧源VNEGに切り替えた後に、スイッチSWdを切り替えることにより抵抗素子RIの第2端子の接続先をグランドから基準電圧源VREFに切り替え、また、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、スイッチSWdを切り替えることにより抵抗素子RIの第2端子の接続先を基準電圧源VREFからグランドに切り替えた後に、スイッチSWgを切り替えることによりオペアンプAMP1の負電源端子の接続先を負電源電圧源VNEGからグランドに切り替える構成を有している。
【0111】
これにより、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、HEMT1のゲート端子を先に負電圧状態にバイアスした後に、HEMT1のドレイン端子にドレイン電圧を印加するシーケンスとなる。すなわち、HEMT1のゲート端子に電圧を印加してから、HEMT1のドレイン端子に電圧を印加するシーケンスとなる。よって、HEMT1のゲート端子に電圧を印加してから、HEMT1のドレイン端子に電圧を印加するまでの期間、HEMT1のチャネルに存在するキャリアが減少するので、貫通電極を流れにくくすることが可能となる。
【0112】
一方、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、HEMT1のドレイン電圧をゼロにした後に、HEMT1のゲート電圧をゼロにするシーケンスとなる。すなわち、HEMT1のドレイン端子の電圧を消去してから、HEMT1のゲート端子の電圧を消去するシーケンスとなる。よって、HEMT1のドレイン端子の電圧を消去してから、HEMT1のゲート端子の電圧を消去するまでの期間、HEMT1のゲート端子が負電圧に残留しているので、過剰なドレイン電流が流れることを防止することが可能となる。
【0113】
つまりは、HEMTバイアス回路10では、スイッチSWgおよびスイッチSWdの切り替えのタイミングによって、HEMT1に対し、ゲート端子に電圧を印加および消去するタイミングと、ドレイン端子に電圧を印加および消去するタイミングとを、大きな貫通電流が流れないように制御することが可能となる。
【0114】
したがって、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することが可能となる。
【0115】
〔実施の形態2〕
(HEMTバイアス回路の構成)
図4は、本実施の形態のHEMTバイアス回路20の一構成例を示す回路図である。
【0116】
本実施の形態のHEMTバイアス回路20は、ソース端子が接地されたHEMT1のためのバイアス回路である。HEMTバイアス回路20は、図4に示すように、オペアンプAMP2(第1差動増幅器)、オペアンプAMP3(第2差動増幅器)、抵抗素子RI、抵抗素子RG(第2抵抗素子)、抵抗素子RGG(第6抵抗素子)、抵抗素子RR(第3抵抗素子)、抵抗素子R1(第4抵抗素子)、抵抗素子R2(第5抵抗素子)、コンデンサCD(第1コンデンサ)、コンデンサCG(第2コンデンサ)、Nチャネル型MOSFET(以下、NMOSトランジスタと称する)21(第1トランジスタ)、Pチャネル型MOSFET(以下、PMOSトランジスタと称する)22(第2トランジスタ)、スイッチSWg、スイッチSWd、負電源電圧源VNEG、および基準電圧源VREFを備えている。
【0117】
HEMTバイアス回路20では、前記実施の形態1において用いられていた基準電圧源VDRAINおよび基準電圧源VREFからの電圧が、オペアンプAMP3、PMOSトランジスタ22、抵抗素子R2、抵抗素子R1、抵抗素子RR、および基準電圧源VREFからなる回路により生成されている。
【0118】
オペアンプAMP2は、単一電源型のオペアンプであり、差動増幅器として構成されている。オペアンプAMP2の正入力端子(第2入力端子)は、HEMT1のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP2の負入力端子(第1入力端子)は、抵抗素子R2を介してPMOSトランジスタ22のドレイン端子に接続されている。また、オペアンプAMP2の負入力端子は、抵抗素子R1を介してオペアンプAMP3の正入力端子に接続されている。オペアンプAMP2の出力端子は、NMOSトランジスタ21のゲート端子(制御端子)に接続されている。
【0119】
オペアンプAMP3は、単一電源型のオペアンプであり、差動増幅器として構成されている。オペアンプAMP3の正入力端子(第1入力端子)は、抵抗素子R1および抵抗素子R2を介してPMOSトランジスタ22のドレイン端子に接続されている。また、オペアンプAMP3の正入力端子は、抵抗素子RRを介して接地されている。オペアンプAMP3の負入力端子(第2入力端子)は、基準電圧源VREFに接続されている。オペアンプAMP3の出力端子は、PMOSトランジスタ22のゲート端子(制御端子)に接続されている。PMOSトランジスタ22、抵抗素子R2、および抵抗素子R1は、オペアンプAMP3の負帰還ループに中に組み込まれている。
【0120】
NMOSトランジスタ21のドレイン端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。NMOSトランジスタ21のソース端子(第2導通端子)は、抵抗素子RGGを介してHEMT1のゲート端子に接続されている。また、NMOSトランジスタ21のソース端子は、抵抗素子RGを介して負電源電圧源VNEGに接続されている。すなわち、抵抗素子RGの一方の端子(第3端子)はHEMT1のゲート端子に接続され、他方の端子(第4端子)は負電源電圧源VNEGに接続されている。
【0121】
PMOSトランジスタ22のソース端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。PMOSトランジスタ22のドレイン端子(第2導通端子)は、抵抗素子R2、抵抗素子R1、および抵抗素子RRをこの順番に介して接地されている。また、PMOSトランジスタ22のドレイン端子は、抵抗素子RIを介してHEMT1のドレイン端子に接続されている。
【0122】
コンデンサCDは、2つの端子を有しており、一方の端子(第5端子)がHEMT1のドレイン端子に接続され、他方の端子(第6端子)が接地されている。コンデンサCGは、2つの端子を有しており、一方の端子(第7端子)がHEMT1のゲート端子に接続され、他方の端子(第8端子)がHEMT1のソース端子に接続されている。
【0123】
スイッチSWgは、本実施例では2つの端子を有しており、一方の端子が、抵抗素子RGGと抵抗素子RGとが電気的に接続される経路上の一点に接続され、他方の端子が接地されている。スイッチSWgは、反転制御信号/SGに応じてオン・オフが切り替えられる。スイッチSWgは、反転制御信号/SGがハイレベルのときにオンとなり、反転制御信号/SGがローレベルのときにオフとなる。スイッチSWgの切替によって、HEMT1のゲート端子は、負電源電圧源VNEGに接続されるか、接地される。
【0124】
スイッチSWdは、本実施例では2つの端子を有しており、一方の端子がオペアンプAMP3の出力端子に接続され、他方の端子が電源電圧VDDに接続されている。スイッチSWdは、反転制御信号/SDに応じてオン・オフが切り替えられる。スイッチSWdは、反転制御信号/SDがハイレベルのときにオンとなり、反転制御信号/SDがローレベルのときにオフとなる。スイッチSWdの切替によって、PMOSトランジスタ22のゲート端子は、オペアンプAMP3の出力端子に接続されるか、電源電圧VDDに接続される。
【0125】
負電源電圧源VNEGは、本実施例では、HEMT1のゲート端子に対し、負の電源電圧(負電源電圧VNEG)を発生する。基準電圧源VREFは、本実施例では、オペアンプAMP3の負入力端子に対し、正の電圧(基準電圧VREF)を発生する。
【0126】
(ドレイン電圧VDおよびドレイン電流ID)
HEMTバイアス回路20では、オペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループと、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループとが形成されている。そして、HEMT1を第2の負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、スイッチSWgおよびスイッチSWdがオンの間は、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(5)および、式(6)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0127】
【数3】

【0128】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
REF:基準電圧源VREFの電圧値
:抵抗素子RIの抵抗値
:抵抗素子RRの抵抗値
:抵抗素子R1の抵抗値
:抵抗素子R2の抵抗値。
【0129】
ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度係数は、式(5)および式(6)を温度Tで微分することで求められ、ゼロとなる。よって、HEMTバイアス回路20では、温度依存性を完全に排除することが可能となる。
【0130】
また、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの、電源電圧VDDに対する変動の係数は、式(5)および式(6)を電源電圧VDDで微分することで求められ、ゼロとなる。よって、HEMTバイアス回路20では、電源電圧依存性を完全に排除することが可能となる。
【0131】
(LNAおよびLNB)
上述したHEMTバイアス回路20は、前記実施の形態のHEMTバイアス回路10と同様に、LNAおよびLNBに適用することができる。そして、HEMT1およびHEMTバイアス回路20を備えるLNAを、偏波選択信号に応じてスイッチSWgおよびスイッチSWdを切り替えるように構成することによって、容易に、上記受信する偏波の選択を実施することが可能となる。偏波選択信号から反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDの生成は、制御信号生成回路により行われる。
【0132】
(制御信号生成回路)
次に、制御信号生成回路の一例について説明する。
【0133】
図5は、制御信号生成回路50aの一構成例を示す回路図である。図5に示すように、制御信号生成回路50aは、NOTゲート51・52・57、コンデンサ53、並びにNANDゲート56を備えている。すなわち、制御信号生成回路50aは、図2に示した制御信号生成回路50の構成のうち、NORゲート54およびNOTゲート55を除いた構成を備えている。
【0134】
NOTゲート51の入力部は入力部58に接続されている。NOTゲート51の出力部は、NOTゲート52の入力部に接続されるとともに、出力部60に接続されている。NOTゲート52の出力部は、NANDゲート56の第1入力部に接続されている。NANDゲート56の第2入力部は、入力部58に接続されている。NANDゲート56の出力部は、NOTゲート57の入力部に接続されるとともに、出力部62に接続されている。NOTゲート57の出力部は出力部61に接続されている。出力部59は、入力部58に接続されている。
【0135】
また、反転制御信号/SGが出力される出力部60は、HEMTバイアス回路20のスイッチSWgに接続される。反転制御信号/SDが出力される出力部62は、HEMTバイアス回路20のスイッチSWdに接続される。制御信号SGが出力される出力部59、および、制御信号SDが出力される出力部61は、HEMTバイアス回路20には接続されない。
【0136】
制御信号生成回路50aでは、偏波選択信号がハイレベルのとき、制御信号SGおよび制御信号SDはハイレベルとなり、反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDはローレベルとなる。一方、偏波選択信号がローレベルのとき、制御信号SGおよび制御信号SDはローレベルとなり、反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDはハイレベルとなる。よって、偏波選択信号のハイレベルおよびローレベルに応じて、LNAをオンまたはオフにすることが可能となる。
【0137】
但し、制御信号生成回路50aでは、NOTゲート51・52、並びにコンデンサ53により、遅延素子63が構成されている。これにより、制御信号SDおよび反転制御信号/SDのレベル変化と、制御信号SGおよび反転制御信号/SGのレベル変化とは、所定の時間ずれる(遅延する)ようになっている。
【0138】
なお、HEMTバイアス回路20においては、反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDが必要であり、制御信号SGおよび制御信号SDは不要である。それゆえ、制御信号生成回路50aでは、出力部59および出力部61を必ずしも設けなくてもよい。けれども、制御信号生成回路50aは、HEMTバイアス回路10に対し用いることもできるので、HEMTバイアス回路10に用いる場合は、出力部59および出力部61は必要である。
【0139】
(オン・オフの切替タイミング)
次に、HEMT1とHEMTバイアス回路20とを備えるLNAにおける、バイアスのオン・オフの切替タイミングについて説明する。
【0140】
図6は、上記LNAにおける、バイアスのオン・オフを切り替えるときの各信号波形を示すタイミングチャートである。
【0141】
<時間t1>
偏波選択信号がローレベルからハイレベルに変化すると、制御信号SGはハイレベルに変化する。また、NANDゲート56の第2入力部がハイレベルに変化する一方、遅延素子63によってNANDゲート56の第1入力部はローレベルが維持されたままであるので、NANDゲート56の出力部はハイレベルを維持する。これにより、制御信号SGはハイレベルとなり、制御信号SDはローレベルとなる。
【0142】
<時間t2>
偏波選択信号がローレベルからハイレベルに変化してから所定の時間(期間A)が経過すると、NANDゲート56の第1入力部がハイレベルに変化するので、NANDゲート56の出力部はローレベルに変化する。これにより、制御信号SGおよび制御信号SDは共にハイレベルとなる。
【0143】
<時間t3>
偏波選択信号がハイレベルからローレベルに変化すると、制御信号SGはローレベルに変化する。また、遅延素子63によってNANDゲート56の第1入力部はハイレベルが維持されたままである一方、NANDゲート56の第2入力部はローレベルに変化するので、NANDゲート56の出力部はハイレベルに変化する。これにより、制御信号SGおよび制御信号SDは共にローレベルとなる。
【0144】
<時間t4>
偏波選択信号がハイレベルからローレベルに変化してから所定の時間(期間B)が経過すると、NANDゲート56の第1入力部がローレベルに変化するので、NANDゲート56の出力部はハイレベルを維持する。これにより、制御信号SGおよび制御信号SDは共にローレベルを維持する。
【0145】
このように、LNAをオフからオンに切り替えるために偏波選択信号をローレベルからハイレベルに変化させると、反転制御信号/SGはローレベル、かつ、反転制御信号/SDはハイレベルとなり、ドレイン電圧VDはゼロのままで、先にHEMT1にゲート電圧VGが印加される期間Aが設けられている。この期間Aによって、HEMT1のチャネルに存在するキャリアが減少し、貫通電極が流れにくくなる。
【0146】
よって、期間Aを、十分な時間、または、HEMT1がピンチオフに達するまでの時間に設定することによって、期間Aを経過した後に反転制御信号/SDがローレベルとなり、HEMT1にドレイン電圧VDが印加されても、過剰なドレイン電流IDが流れることを防止することが可能となる。
【0147】
一方、LNAをオンからオフに切り替えるために偏波選択信号をハイレベルからローレベルに変化させるとともに、反転制御信号/SGはハイレベル、かつ、反転制御信号/SDはハイレベルとなる。このとき、HEMT1のドレイン電圧VDは、コンデンサCDに電荷として蓄積されている。それゆえ、LNAがオフになった瞬間から、コンデンサCDの電荷は、抵抗素子RI、抵抗素子R2、抵抗素子R1、および抵抗素子RRをこの順番に通過して、GNDレベルに放電していく。
【0148】
また、HEMT1のゲート電圧は、コンデンサCGに電荷として蓄積されている。それゆえ、LNAがオフになった瞬間から、コンデンサCGの負電圧は、GNDからスイッチSWgおよび抵抗素子RGGを介して充電されていき、GNDレベルに達する。
【0149】
ドレイン電圧の放電に要する時間tD、および、ゲート電圧の充電に要する時間tGは、下記の式(7)および式(8)で示される。
【0150】
【数4】

【0151】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
ON:スイッチSWgのオン抵抗
GG:抵抗素子RGGの抵抗値
:コンデンサCDの容量値
:コンデンサCGの容量値。
【0152】
HEMT1とHEMTバイアス回路20とを備えるLNAでは、「tD<tG」となるように各値が設定される。これにより、先にドレイン電圧VDがGNDレベルになり、ゲート電圧VGが印加された状態にある、期間Bを生じることが可能となる。期間Bでは、ゲート電圧VGが負の電源電圧に残留しているので、過剰なドレイン電流IDが流れることを防止することが可能となる。
【0153】
なお、本実施例では、期間Aは、遅延素子63の構成によって設定することができ、期間Bは、設定した時間tGで決まる。
【0154】
以上のように、HEMTバイアス回路20は、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、スイッチSWgを切り替えることによりHEMT1のゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、スイッチSWdを切り替えることによりPMOSトランジスタ22のゲート端子とソース端子との接続を遮断し、また、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、スイッチSWdを切り替えることによりPMOSトランジスタ22のゲート端子をソース端子に接続すると同時に、スイッチSWgを切り替えることによりHEMT1のゲート端子をグランドに接続する構成を有している。
【0155】
これにより、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、HEMT1のゲート端子を先に負電圧状態にバイアスした後に、HEMT1のドレイン端子にドレイン電圧を印加するシーケンスとなる。すなわち、HEMT1のゲート端子に電圧を印加してから、HEMT1のドレイン端子に電圧を印加するシーケンスとなる。よって、HEMT1のゲート端子に電圧を印加してから、HEMT1のドレイン端子に電圧を印加するまでの期間、HEMT1のチャネルに存在するキャリアが減少するので、貫通電極を流れにくくすることが可能となる。
【0156】
一方、HEMTバイアス回路20では、コンデンサCDおよびコンデンサCGを備えているので、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、HEMT1のドレイン電圧の放電に要する時間と、HEMT1のゲート電圧の充電に要する時間とを制御することが可能となる。
【0157】
それゆえ、ゲート電圧の充電時間をドレイン電圧の放電時間よりも長く設定することによって、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、スイッチSWgおよびスイッチSWdを同時に切り替えても、HEMT1のドレイン電圧をゼロにした後に、HEMT1のゲート電圧をゼロにするシーケンスとすることが可能となり、過剰なドレイン電流が流れることを防止することが可能となる。
【0158】
したがって、HEMTバイアス回路20では、上述したHEMTバイアス回路10と同様に、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0159】
なお、HEMTバイアス回路20に用いる制御信号生成回路としては、制御信号生成回路50aに限らず、制御信号生成回路50を用いてもよい。制御信号生成回路50を用いる場合、HEMTバイアス回路20は、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、スイッチSWdを切り替えることによりPMOSトランジスタ22のゲート端子をソース端子に接続した後に、スイッチSWgを切り替えることによりHEMT1のゲート端子をグランドに接続する構成とすることができる。
【0160】
また、制御信号生成回路50を用いる場合、HEMTバイアス回路20は、コンデンサCDおよびコンデンサCGを必ずしも備える必要はない。
【0161】
いずれの構成においても、HEMT1へのバイアスの供給をオフからオンに切り替える際、および、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替える際における、過剰な貫通電流の発生を防止することが可能となる。
【0162】
このように、HEMTバイアス回路20では、HEMT1へのバイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、スイッチSWgの切り換えとスイッチSWdの切り換えとを、同時に行うシーケンスやずらして行うシーケンスが可能となり、切り換え制御の幅を拡げることが可能となる。
【0163】
また、上述した制御信号生成回路50・50aは一例であり、これに限るものではない。制御信号生成回路としては、図3および図6に示したレベル変化を行う、制御信号SD、反転制御信号/SD、制御信号SG、および反転制御信号/SGを生成可能な回路であればよい。
【0164】
ところで、HEMTバイアス回路20を集積化する際に、NMOSトランジスタ21の耐圧が問題となることがある。これは、NMOSトランジスタ21には、スイッチSWgがオフのときにVDD−VG間の電圧が掛かるためである。ゲート電圧VGは負電圧のため、VDD−VG間の電位差は、VDD−GND間の電位差よりも高くなる。よって、VDD−GND間の電位差しか保証されていない製造プロセスで集積化するのであれば、信頼性の面で問題となる。
【0165】
また、回路の初期起動時や、回路動作の切替時などを想定すると、NMOSトランジスタ21には、過渡的に、VDD−VNEG間の電圧が掛かることも想定される。この場合も、負電源電圧VNEGは負電圧のため、素子の信頼性の面で問題となる場合がある。それゆえ、HEMTバイアス回路では、これらの問題を解決することが望まれる。
【0166】
これに対し、HEMTバイアス回路20は、NMOSトランジスタ21のソース端子とHEMT1のゲート端子との間に挿入された抵抗素子RGGを備えている。これにより、NMOSトランジスタ21の許容耐圧内で、NMOSトランジスタ21を駆動させることが可能となる。それゆえ、HEMTバイアス回路20は、優れた信頼性を具備することが可能となる。
【0167】
〔実施の形態3〕
図7は、本実施の形態のHEMTバイアス回路30の一構成例を示す回路図である。図7に示すように、本実施の形態のHEMTバイアス回路30は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路20の構成のうち抵抗素子RGGを除いた構成を備えている。
【0168】
HEMTバイアス回路30は、前記実施の形態のHEMTバイアス回路20と同様に、LNAおよびLNBに適用することができる。そして、HEMT1およびHEMTバイアス回路30を備えるLNAを、偏波選択信号に応じてスイッチSWgおよびスイッチSWdを切り替えるように構成することによって、容易に、受信する偏波の選択を実施することが可能となる。偏波選択信号から反転制御信号/SGおよび反転制御信号/SDの生成は、制御信号生成回路により行われる。
【0169】
制御信号生成回路としては、例えば、図2に示した制御信号生成回路50、または、図5に示した制御信号生成回路50aなどを用いることができる。いずれを用いる場合であっても、出力部60から出力される反転制御信号/SGをスイッチSWgに供給し、出力部62から出力される反転制御信号/SDをスイッチSWdに供給すればよい。オン・オフ切り替え時のHEMT1のドレイン電圧およびゲート電圧の変化は、上述のとおりである。
【0170】
HEMTバイアス回路30では、上述したHEMTバイアス回路10・20と同様の効果を奏することができる。また、NMOSトランジスタ21の耐圧の問題を特に気にしなくてもよい場合は、HEMTバイアス回路30でも問題なく動作することが可能であり、HEMTバイアス回路30の構成によれば、回路面積の削減を図ることが可能となる。
【0171】
最後に、上述した各実施の形態1〜3では、HEMTのためのHEMTバイアス回路を説明した。しかしながら、上記HEMTバイアス回路は、必ずしもHEMTに限定されず、HEMT以外のトランジスタでも適用可能である。例えば、JFETや、MOSFET、バイポーラトランジスタなどのトランジスタ一般を用いることができ、これのためのバイアス回路として使用することができる。HEMTを用いた場合が特に効果が大きいことは言うまでもないが、他のトランジスタであってもほぼ同様の効果を得ることができる。
【0172】
また、各実施形態のHEMTバイアス回路では、正論理が用いられていたが、負論理を用いても同様の観点で実現することができる。さらには、以下のように変形することもできる。
【0173】
HEMTバイアス回路20・30においては、NMOSトランジスタ21およびPMOSトランジスタ22を備えているが、これに限らない。例えば、NMOSトランジスタ21に替えてPMOSトランジスタを備えてもよいし、PMOSトランジスタ22に替えてNMOSトランジスタを備えてもよい。さらには、PNP型バイポーラトランジスタおよびNPN型バイポーラトランジスタなどを用いることもできる。
【0174】
NMOSトランジスタ21に替えて、PMOSトランジスタまたはPNP型バイポーラトランジスタを備える場合は、オペアンプAMP2の正入力端子と負入力端子とを入れ替えればよい(オペアンプAMP2の正入力端子が抵抗素子R1に接続され、負入力端子がHEMT1のドレイン端子に接続される)。PMOSトランジスタ22に替えて、NMOSトランジスタまたはNPN型バイポーラトランジスタを備える場合は、オペアンプAMP3の正入力端子と負入力端子を入れ替えればよい(オペアンプAMP3の正入力端子が基準電圧源VREFに接続され、負入力端子が抵抗素子R1に接続される)。
【0175】
また、HEMTバイアス回路20・30においては、抵抗素子RRに替えて、定電流源を用いてもよい。この場合、ドレイン電流IDは「I=(R/R)×IB」となり、抵抗値の比となるので、電流ばらつきを小さくすることが可能となる。
【0176】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、バイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0178】
1 HEMT(増幅用FET)
10,20,30 HEMTバイアス回路(バイアス回路)
21 NMOSトランジスタ(第1トランジスタ)
22 PMOSトランジスタ(第2トランジスタ)
50,50a 制御信号生成回路
100 LNB
102 水平偏波アンテナ(第1偏波アンテナ)
103 垂直偏波アンテナ(第2偏波アンテナ)
104 水平偏波用LNA(第1偏波用増幅器)
105 垂直偏波用LNA(第2偏波用増幅器)
113 偏波選択器
116 同軸ケーブル
117 TVセット
118 ビデオセット
VD ドレイン電圧
ID ドレイン電流
AMP1 オペアンプ(両電源型の差動増幅器)
AMP2 オペアンプ(第1差動増幅器)
AMP3 オペアンプ(第2差動増幅器)
RI 抵抗素子(第1抵抗素子)
RG 抵抗素子(第2抵抗素子)
RR 抵抗素子(第3抵抗素子)
R1 抵抗素子(第4抵抗素子)
R2 抵抗素子(第5抵抗素子)
RGG 抵抗素子(第6抵抗素子)
SWg スイッチ(第1スイッチ)
SWd スイッチ(第2スイッチ)
CD コンデンサ(第1コンデンサ)
CG コンデンサ(第2コンデンサ)
VDD 電源電圧
VNEG 負電源電圧源
VREF 基準電圧源(第1基準電圧源)
VDRAIN 基準電圧源(第2基準電圧源)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETに、バイアスを供給するバイアス回路であって、
両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、
上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、負電源端子が上記第1スイッチの切り替えにより上記負電源電圧源またはグランドに接続可能とされ、
上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2スイッチの切り替えにより上記第1基準電圧源またはグランドに接続可能とされていることを特徴とするバイアス回路。
【請求項2】
バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記差動増幅器の負電源端子の接続先をグランドから上記負電源電圧源に切り替えた後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第1抵抗素子の第2端子の接続先をグランドから上記第1基準電圧源に切り替え、
バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第1抵抗素子の第2端子の接続先を上記第1基準電圧源からグランドに切り替えた後に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記差動増幅器の負電源端子の接続先を上記負電源電圧源からグランドに切り替えることを特徴とする請求項1に記載のバイアス回路。
【請求項3】
上記増幅用FETは、HEMTであることを特徴とする請求項1または2に記載のバイアス回路。
【請求項4】
入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETに、バイアスを供給するバイアス回路であって、
単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、第1スイッチと、第2スイッチと、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、
上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、
上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、
上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、
上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子をこの順番に介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、
上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、
上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介してグランドに接続され、
上記第1抵抗素子は、第1端子および第2端子を有し、該第1端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第2端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、
上記第2抵抗素子は、第3端子および第4端子を有し、該第3端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第4端子が上記負電源電圧源に接続され、
上記第1スイッチは、上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第1スイッチの切り替えにより上記増幅用FETのゲート端子はグランドに接続可能とされており、
上記第2スイッチは、上記第2トランジスタの制御端子に接続され、該第2スイッチの切り替えにより上記第2トランジスタの制御端子は該第2トランジスタの第1導通端子に接続可能とされていることを特徴とするバイアス回路。
【請求項5】
バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子と上記第2トランジスタの第1導通端子との接続を遮断し、
バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子を上記第2トランジスタの第1導通端子に接続した後に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子をグランドに接続することを特徴とする請求項4に記載のバイアス回路。
【請求項6】
第1コンデンサおよび第2コンデンサをさらに備え、
上記第1コンデンサは、第5端子および第6端子を有し、該第5端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、該第6端子がグランドに接続され、
上記第2コンデンサは、第7端子および第8端子を有し、該第7端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、該第8端子が上記増幅用FETのソース端子に接続されていることを特徴とする請求項4に記載のバイアス回路。
【請求項7】
バイアスの供給をオフからオンに切り替えるときは、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子とグランドとの接続を遮断した後に、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子と上記第2トランジスタの第1導通端子との接続を遮断し、
バイアスの供給をオンからオフに切り替えるときは、上記第2スイッチを切り替えることにより上記第2トランジスタの制御端子を上記第2トランジスタの第1導通端子に接続した後に、または同時に、上記第1スイッチを切り替えることにより上記増幅用FETのゲート端子をグランドに接続することを特徴とする請求項6に記載のバイアス回路。
【請求項8】
上記増幅用FETは、HEMTであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項9】
上記第1トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、該Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、
上記第2トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、該Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、
上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、
上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項10】
第6抵抗素子をさらに備え、
上記第6抵抗素子は、上記第1トランジスタの第2導通端子と上記増幅用FETのゲート端子とを電気的に接続する経路に設けられていることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項11】
入力信号を増幅するソース端子が接地された増幅用FETと、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のバイアス回路とを備え、
上記増幅用FETのゲート端子に入力端子が設けられ、
上記増幅用FETのドレイン端子に出力端子が設けられていることを特徴とするLNA。
【請求項12】
アンテナによって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして後段に伝送するLNBであって、
第1偏波を受信し、該第1偏波を第1偏波信号に変換する第1偏波アンテナと、
第2偏波を受信し、該第2偏波を第2偏波信号に変換する第2偏波アンテナと、
上記第1偏波信号を増幅する第1偏波用増幅器と、
上記第2偏波信号を増幅する第2偏波用増幅器と、
上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを選択する偏波選択器とを備え、
上記第1偏波および上記第2偏波はそれぞれ、水平偏波および垂直偏波、または、左旋円偏波および右旋円偏波であり、
上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、請求項11に記載のLNAであり、
上記第1偏波用増幅器および上記第2偏波用増幅器は、上記偏波選択器から出力される上記第1偏波および上記第2偏波のいずれを受信するかを示す偏波選択信号に応じて、上記第1スイッチおよび上記第2スイッチをそれぞれ切り替えることを特徴とするLNB。
【請求項13】
部分的に集積化されていることを特徴とする請求項12に記載のLNB。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−49905(P2012−49905A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191220(P2010−191220)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【特許番号】特許第4800433号(P4800433)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】