説明

バイオディーゼル燃料添加剤

本発明は、一般に、バイオディーゼルを含む燃料の燃焼からの放出物を低減するための組成物および方法に関し、上記組成物は、少なくとも1種の添加促進剤と、少なくとも1種の植物抽出物または植物抽出物の成分と同様な合成成分とを含有する。点火促進剤は、好ましくは、過酸化物、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシドである。上記組成物は、任意構成成分として、メドウフォーム油またはホホバ油を含み得る。また、上記組成物は、バイオディーゼルを含有する燃料の潤滑性を増強させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、少なくとも幾分かのバイオディーゼルを成分として含有するディーゼル燃料の燃焼からの放出物を低減するための組成物および方法に関する。
(背景技術)
燃料効率の改善における興味は、天然資源が減少し燃料コストが上昇し続けているので、最重要事項となってきている。燃料効率は、燃料添加剤を添加することによって改善できる。数種の現存する燃料添加剤は、燃料効率を増大させることが知られている;例えば、米国特許第4,274,835号、第5,826,369号および第6,193,766号は、燃焼を改善する燃料添加剤を記載している。これらの発明の成功にもかかわらず、燃焼を改善する燃料添加剤が依然として求められている。
炭化水素燃料は、典型的には、炭化水素(種々の形態の水素と炭素原子を含有する分子)類の複雑な混合物を含有する。また、炭化水素燃料は、清浄剤、氷結防止剤、乳化剤、腐蝕抑制剤、染料、沈着物改質剤および非炭化水素(例えば、酸素化物)のような種々の添加剤も含有し得る。
そのような炭化水素燃料を燃焼させたとき、種々の汚染物が発生する。これらの燃焼生成物としては、オゾン、粒状物、一酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO2およぶN2O;集合的にNOxとして知られている)、二酸化イオウ、および鉛がある。U.S. Environmental Protection Agency (EPA)およびCalifornia Air Resources Board (CARB)は、共に、これらの汚染物に関する環境大気質基準を採択している。両当局は、低放出物ガソリンについての規格も採択している。第二期カリフォルニア改質ガソリン(Phase 2 California Reformulated Gasoline;CaRFG2)条例は、1996年3月1日に発効した。Davis州知事は、カリフォルニアのガソリンにおけるメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)の2002年12月31日までの段階的廃止に関する1999年3月25日付きのExecutive Order D-5-99に署名した。第三期カリフォルニア改質ガソリン(Phase 3 California Reformulated Gasoline;CaRFG3)条例は、2000年8月3日に承認され、2000年9月2日に発効した。
【0002】
ディーゼルエンジンは、希薄燃料条件下で稼動する。結果として、炭化水素および一酸化炭素の放出は、通常低い。しかしながら、ディーゼル排気は、比較的高量の窒素酸化物と粒状物を含有する。窒素酸化物および粒状物の放出を低める放出基準が、米国およびヨーロッパにおいては採択されている。テキサスおよびカリフォルニア州は、ディーゼル放出物について独自の厳しい制約を制定している。
バイオディーゼルは、天然の遊離脂肪酸をモノアルキルエステルに、最も一般的には、メチルエステルに転換している植物油系または動物油脂系燃料である。バイオディーゼルは、一般に、石油系ディーゼルとブレンドして最終燃料を製造している。最も一般的なブレンドは、B20と一般に称する20%のバイオディーゼル、80%の石油系ディーゼルであり、Bの後の数字は、ブレンド中の%バイオディーゼルを示す。純粋バイオディーゼルはB100である。バイオディーゼルは、石油系ディーゼルと任意のレベルで、例えば、限定するものではないが、5%、10%、15%等でブレンドし得る。
純粋なバイオディーゼルおよびバイオディーゼルブレンドの燃焼からの放出物は、一般に、石油系ディーゼルの燃焼からよりも低い。例えば、www.epa.gov/otag/models/biodsl.htmにおいて利用できる“A Comprehensive Analysis of Biodiesel Impacts on Exhaust Emissions”と題するEPAの報告を参照されたい。通常のディーゼルと比較したバイオディーゼルの燃焼からの規制放出物における低減は、B20における粒状物の12%の低減からB100における総未燃焼炭化水素の67%の低減の範囲であった。B100の燃焼におけるNOx放出物は、通常のディーゼルの燃焼におけるよりも10%高かった。B20の燃焼におけるNOx放出物は、通常のディーゼルの燃焼におけるよりも2%高かった。より最近のデータは、B20におけるNOx放出の増分が幾分か高めで、通常のディーゼルの燃焼におけるよりも2.4〜3%高いことを示唆している。
ディーゼル燃料型車両からの放出物に関する政府規制は、将来一層厳しくなるであろう。さらに、バイオディーゼルおよびバイオディーゼル混合物を燃料とする車両からのNOx放出物は、通常のディーゼル燃料を燃料とする車両におけるよりも僅かに高い。バイオディーゼルを含有するディーゼル燃料と混合して放出物、とりわけ、NOx放出物を低減することのできる添加剤が求められている。
【0003】
(発明の開示)
本発明の1つの局面は、バイオディーゼルを含む燃料の燃焼中に発生した汚染物放出を低減する燃料添加剤に関する。1つの実施態様においては、バイオディーゼル燃料用の燃料添加剤があり、該燃料添加剤は、点火促進剤を含む第1成分;および、植物抽出物、植物抽出物の合成形、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分を含む。ある実施態様においては、上記点火促進剤は、過酸化物を含む。ある実施態様においては、上記過酸化物は、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-オレアルペルオキシド、大豆ヒドロペルオキシド、ジ-エチルペルオキシドおよびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる。ある実施態様においては、上記過酸化物は、ジ-tert-ブチルペルオキシドを含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は第3成分をさらに含み、該第3成分は、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、およびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる化合物を含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、合成長鎖脂肪酸、合成長鎖脂肪酸エステル、または合成長鎖脂肪酸と合成長鎖脂肪酸エステルの双方を含む。ある実施態様においては、上記第3成分は、メドウフォーム油、ホホバ油、およびこれらの組合せからなる群から選ばれるオイルをさらに含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、溶媒をさらに含む。ある実施態様においては、上記溶媒は、芳香族溶媒を含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、硝酸アルキルをさらに含む。硝酸アルキルを含むある実施態様においては、該硝酸アルキルは、硝酸2-エチルヘキシルを含む。ある実施態様においては、上記植物抽出物は、植物の緑色抽出物を含む。緑色抽出物を含む実施態様においては、該緑色抽出物は、クロロフィルである。ある実施態様においては、上記植物抽出物は、マメ科植物の抽出物を含む。ある実施態様においては、上記第2成分は、ベータ-カロテン、アルファ-カロテン、カロテノイド、クロロフィル、カラーボディー、イソミックステン、およびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる。ある実施態様においては、上記植物抽出物は、1種以上のクロロフィルを含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、約0.1〜約80のクロロフィルa対クロロフィルbの比を有する。ある実施態様においては、上記第2成分は、クロロフィルとカロテノイドを含む。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、約0.1〜約100のクロロフィル対カロテノイドの比を有する。ある実施態様においては、上記燃料添加剤は、安定化用成分をさらに含む。安定化用化合物を含む実施態様においては、該安定化用成分は、2,2,4-トリメチル-6-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、エトキシキノリン、2-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2.2'-メチレン-ビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、n-オクタデシル 3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジ-n-オクタデシル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N'-ジフェニルフェニレンジアミン、p-オクチルジフェニルアミン、p,p-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N-(p-ドデシル)フェニル-2-ナフチルアミン、ジ-1-ナフチルアミン、およびジ-2-ナフチルアミン、フェノタジン(phenothazine)類、N-アルキルフェノチアジン類、イミノ(ビスベンジル)、6-(t-ブチル)フェノール、2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4-メチル-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4,4'-メチレンビス(-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール)、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン、およびフェニルナフチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0004】
本発明のもう1つの局面においては、バイオディーゼルを含む燃料3.785リットル(1ガロン)当り、約0.32〜約799gの点火促進剤;約0.001〜約60gの植物抽出物、植物抽出物の合成形またはこれらの混合物を含む燃料組成物がある。ある実施態様においては、該燃料組成物は、硝酸2-エチルヘキシルをさらに含む。硝酸2-エチルヘキシルを含むある実施態様においては、硝酸2-エチルヘキシルの量は、約1ppm〜約5000ppmである。
本発明のもう1つの局面においては、バイオディーゼル燃料を燃料添加剤と混合した燃料を燃焼させることを含み、上記燃料添加剤が、点火促進剤を含む第1成分;並びに、植物抽出物、植物抽出物の合成形およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分含むことを特徴とするバイオディーゼル燃料の燃焼における汚染物放出の低減方法がある。
本発明のもう1つの局面においては、添加剤を、バイオディーゼル燃料を含む燃料に添加することを含み、該添加剤が、点火促進剤を含む第1成分;植物抽出物、植物抽出物の合成形およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分;並びに、メドウフォーム油、ホホバ油、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のオイルを含むことを特徴とする、バイオディーゼル燃料を含む燃料の潤滑性の増強方法がある。
上記は、以下の発明の詳細な説明をより良好に理解し得るように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広範囲に概略している。本発明の特許請求の範囲の主題を構成する本発明のさらなる特徴および利点を以下に説明する。開示する概念および特定の実施態様は、本発明の同じ目的を実施するに当たっての他の構成を修正するまたは設計する根拠として容易に利用し得ることを認識すべきである。また、そのような等価の構成は、特許請求の範囲に示しているような本発明から逸脱するものではないことも理解すべきである。本発明の構成および操作方法の双方に関して本発明の特徴であると信じている新規な特徴は、さらなる目的および利点と一緒に、以下の説明から、添付図面と関連して検討するときに一層良好に理解し得るであろう。しかしながら、図面の各々は、単に例示および説明目的のために提示するものであり、本発明の限定の定義を意図しないことを明確に理解すべきである。
【0005】
(発明を実施するための最良の形態)
序文
以下の説明および実施例は、本発明の好ましい実施態様を詳細に説明している。当業者であれば、本発明の範囲に属する本発明の多くの変更および修正が存在することは、承知していることであろう。従って、好ましい実施態様の説明は、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
バイオディーゼルを含み得るディーゼル燃料の燃焼からの放出物を低減する添加剤および方法に関連して説明するけれども、本発明の各実施態様に従う添加剤および方法は、他の炭化水素燃料、例えば、石油に由来するディーゼル燃料またはバイオディーゼルを含み得ない代替燃料にも応用し得る。また、該添加剤および方法は、ガソリン燃料、残留燃料および他の炭化水素燃料に対する用途も有し得る。バイオディーゼルを含む燃料に対する用途は、好ましい実施態様である。
【0006】
ディーゼル燃料
石油に由来するディーゼル燃料は、ガソリンの沸点範囲よりも高いおよそ150℃〜370℃(698°F)の温度範囲内で留出するその割合の原油を含む。また、ディーゼル燃料は、シェール油、合成ガスに由来するフィッシャー・トロプッシュ燃料、石炭液化生成物等のような合成燃料からも得ることができる。あらゆるディーゼル燃料源が、バイオディーゼルと混合するためのベース燃料として潜在的に適し得ている。
ディーゼル燃料は、内燃エンジンシリンダー内で、高圧下での空気の加熱によって点火する(電気スパークによって点火するモーターガソリンとは対照的)。この点火方式故に、高セタン価が良好なディーゼル燃料においては一般に好ましい。ディーゼル燃料は、沸点範囲および組成において、より軽量の加熱用オイルに近い。一般に、ASTMによって規定された2つの等級のディーゼル燃料、即ち、ディーゼル1およびディーゼル2が存在する。ディーゼル1は、ディーゼル2よりも軽量で揮発性のより清浄に燃焼する灯油タイプの燃料である。ディーゼル1は、速度および荷重において頻繁な変動のあるエンジン用途において使用される。ディーゼル2は、産業用および重量移動サービスにおいて使用される。
適切なディーゼル燃料としては、高および低イオウ燃料の双方があり得る。低イオウ燃料としては、一般に、500ppm(質量基準で)またはそれ以下のイオウを含有する燃料があり、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、20もしくは5ppmまたはそれ以下の低量のイオウを、或いは、例えば、合成ディーゼル燃料の場合の0ppmのイオウでさえも含有し得る。高イオウディーゼル燃料としては、典型的に、500ppmよりも多いイオウ、例えば、1、2、3、4もしくは5質量%またはそれ以上の高量のイオウを含有する燃料がある。低量のイオウを含有するディーゼル燃料は、高量のイオウを含有するディーゼル燃料よりも低い潤滑度を与え得る。
およそ150℃〜330℃の範囲で沸騰する燃料が、燃焼中に完全に消費され燃料の浪費および過剰の放出物のないことから、ディーゼルエンジン内で最良に稼動する。パラフィン類は、最良のセタン価を提供し、ディーゼル混合において一般に好ましい。燃料のパラフィン含有量が高いほど、燃料は容易に燃焼し、より迅速な暖機運転および完全な燃焼をもたらす。より高めの範囲で沸騰するより重質の粗成分も、あまり望ましくはないが使用し得る。ナフテン類は次に最軽質の成分であり、芳香族類は、ディーゼル燃料において見出される最重質画分である。これらの重質成分の使用は、ディーゼル燃料のワックス化を最小にする助けとなる。低温においては、パラフィン類は、固化して、燃料フィルターを閉塞する傾向を有する。
【0007】
バイオディーゼル
例えば、National Biodiesel Boardのウェブサイト(www.biodiesel.org)において説明されているように、バイオディーゼルは、植物油または動物油脂に由来する長鎖脂肪酸のモノアルキルエステルを含み得る生成物である。バイオディーゼルは、上記オイルとアルコールとの酸または塩基触媒エステル交換によって製造し得る。メタノールがアルコールとして一般的に使用されているが、他のアルコール類も適し得る。
ある種の古いディーゼルエンジンは、エステル化していない植物油または動物油脂を燃焼し得る可能性がある。本明細書において使用するときの用語バイオディーゼルは、バイオディーゼル(エステル化油または油脂)および非エステル化油または油脂の双方を包含する。本明細書において使用するときの用語バイオディーゼルは、一般に、エステル化および非エステル化の油および油脂に及び、通常の用語よりも広い。
用語バイオディーゼルをエステル化油および油脂のみを含む通常の意味に限定すべきときには、用語“通常のバイオディーゼル”または“エステル化バイオディーゼル”を使用し得る。
通常のバイオディーゼルおよび非エステル化バイオディーゼルは、自動車において使用する石油ディーゼルとブレンドし得る。ブレンド類は、一般に、“BXX”と記され、XXは、ブレンド中のパーセントバイオディーゼルである。例えば、B20は、20%のバイオディーゼル、80%の通常のディーゼルである。B100は、100%バイオディーゼルである。用語バイオディーゼルは、技術的には、エステル交換法によって製造した純粋燃料であり、そのバイオディーゼルは、通常のバイオディーゼルである。ブレンド類は、より適切には、BXXと記す。B20は、一般的に、“バイオディーゼル”として説明されているものの、用語B20は、純粋バイオディーゼルのB100と区別するのに好ましくあり得る。
通常のエステル化バイオディーゼル燃料は、ブレンドしてまたはブレンドしないで、ディーゼル車両において使用し得る。例えば、B100は、最も一般的なディーゼル車両において受入可能な燃料である。非エステル化バイオディーゼル燃料の粘度は、ブレンドなしで使用するには一般に高過ぎる。非エステル化バイオディーゼル燃料をブレンドすることによって、粘度を低下し得る。非エステル化バイオディーゼル燃料のブレンドは、一般に好ましい。バイオディーゼルは、石油系ディーゼルと、任意の量で、例えば、限定するものではないが、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%等でブレンドし得る。
【0008】
下記の表1は、通常のディーゼルと比較しての通常のバイオディーゼル(B100)および通常のB20双方における放出データを示している。該データは、National Biodiesel Boardのウェブサイト(www.biodiesel.org)において、“A Comprehensive Analysis of Biodiesel Impacts on Exhaust Emissions”と題するEPAのレポートに基づき報告されたものである。非エステル化バイオディーゼルに関するデータは、報告されていない。

表1:通常のディーゼルと比較した平均バイオディーゼル放出物

バイオディーゼル(B100)およびB20の燃焼からの炭化水素、一酸化炭素および粒状物の放出は、通常のディーゼル燃料の燃焼からの相応する放出物よりも有意に低い。バイオディーゼルおよびバイオディーゼルブレンドにおけるNOx放出は通常のディーゼルにおけるよりも僅かに高くあり得るけれども、NOx放出は、エンジン群および試験手順によって変動し得る。
【0009】
下記の実施例において示しているように、バイオディーゼルおよび本発明の各実施態様に従う添加剤を含む燃料の燃焼からの放出物は、本発明の各実施態様に従う添加剤を含まない同じ燃料を含む燃料の燃焼からの放出物よりも低くあり得る。
表1の最後の欄の“添加剤を含むB20”は、本発明の各実施態様に従う添加剤を含むB20についての実施例1からの放出データを示している。本発明の各実施態様に従う添加剤を含むB20についての表1の全ての放出物タイプの放出は、B20単独における放出物よりも低かった。
B20単独と比較した本発明の各実施態様に従う添加剤を含むB20における放出物の低減は、粒状物放出における6%の低下から炭化水素放出における13%の低下の範囲である。本発明の各実施態様に従う添加剤は、B20単独と比較して、放出物タイプの4つ全てを低下させるのに有効であった。通常のディーゼルと比較した放出物の減少は、5〜37%であった。
B20におけるNOx放出は、通常のディーゼルにおけるNOx放出よりも2%高かった。本発明の各実施態様に従う添加剤を含むB20におけるNOx放出は、通常のディーゼル燃料からのNOx放出よりも5%低く、B20におけるNOx放出よりも7%低かった。
本発明の各実施態様に従う添加剤は、通常のディーゼルおよびB20の双方と比較して、バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の放出物を低下させるのに有効である。
【0010】
添加剤
本発明の各実施態様に従う添加剤は、少なくとも1種の点火促進剤を含む第1成分と、植物抽出物、植物抽出物の合成形およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を含む少なくとも1種の第2成分とを含み得る。植物抽出物の合成形とは、この表現を本明細書において使用する場合、1以上の合成的に製造した、植物抽出物中に自然産生している組成物を称する。合成組成物としては、例えば、カロテノイド類、キサントフィル類、クロロフィル類、または色素体(color body)がある。
上記添加剤は、限定するものではないが、長鎖脂肪酸またはエステルおよび/または溶媒のようなさらなる成分もさらに含み得る。本明細書において使用するとき、用語“長鎖”とは、約16個またはそれ以上の炭素原子の炭素鎖を有する分子を称する。長鎖脂肪酸またはエステルは、例えば、メドウフォーム油、ホホバ油またはこれらの混合物を含み得る。また、長鎖脂肪酸またはエステルを含み得る他のオイル類も適し得る。合成長鎖脂肪酸またはエステル類も適し得る。セタン改良剤、安定化用化合物または他の成分のような他の成分を、さらなる成分として添加してもよい。
長鎖脂肪酸またはエステルおよび溶媒は、本発明の各実施態様に従う添加剤の任意構成成分である。上記第1成分および第2成分に加えて長鎖脂肪酸またはエステルを含み得る添加剤は、好ましい実施態様である。
【0011】
点火促進剤
本発明の各実施態様に従う添加剤は、第1成分として少なくとも1種の点火促進剤を含み得る。点火促進剤は、有機硝酸エステルまたは過酸化物であり得る。過酸化物が、本発明の各実施態様に従う添加剤中の点火促進剤として一般的に好ましい。
有機硝酸エステル点火促進剤
点火促進剤が有機硝酸エステルである場合、好ましい有機硝酸エステルは、約10個までの炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する置換されたまたは置換されていないアルキルまたはシクロアルキル硝酸エステルである。アルキル基は、線状または枝分れのいずれであってもよい。好ましい実施態様において使用するのに適する硝酸エステル化合物の特定の例としては、限定するものではないが、以下がある:硝酸メチル、硝酸エチル、硝酸n-プロピル、硝酸イソプロピル、硝酸アリル、硝酸n-ブチル、硝酸イソブチル、硝酸sec-ブチル、硝酸tert-ブチル、硝酸n-アミル、硝酸イソアミル、硝酸2-アミル、硝酸3-アミル、硝酸tert-アミル、硝酸n-ヘキシル、硝酸2-エチルヘキシル、硝酸n-ヘプチル、硝酸sec-ヘプチル、硝酸n-オクチル、硝酸sec-オクチル、硝酸n-ノニル、硝酸n-デシル、硝酸n-ドデシル、硝酸シクロペンチル、硝酸シクロヘキシル、硝酸メチルシクロヘキシル、硝酸イソプロピルシクロヘキシル、並びに、1-メトキシプロピル-2-ニトレート、1-エトキシプロピル-2 ニトレート、1-イソプロポキシブチルニトレート、1-エトキシブチルニトレート等のよなアルコキシ置換脂肪族アルコールのエステルがある。好ましい硝酸アルキルは、硝酸エチル、硝酸プロピル、硝酸アミルおよび硝酸ヘキシルである。他の好ましい硝酸アルキルは、第一級硝酸アミルまたは第一級硝酸ヘキシルの混合物である。第一級とは、硝酸根官能基が2個の水素原子に結合している炭素原子に結合していることを意味する。第一級硝酸ヘキシルの例としては、硝酸n-ヘキシル、硝酸2-エチルヘキシル(2-EHN)、硝酸4-メチル-n-ペンチル等がある。硝酸エステル類の製造は、例えば、適切なアルコールのエステル化または適切なアルキルハライドと硝酸銀との反応のような任意の一般的に使用される方法によって行い得る。
有機硝酸エステル点火促進剤の硝酸2-エチルヘキシルが、典型的な有機硝酸エステル点火促進剤である。他の量も有用であり本発明の範囲内にあるけれども、有機硝酸エステル点火促進剤は、好ましくは、燃料組成物中で、1〜5000ppmの最終濃度で使用する。
通常の点火促進剤
好ましい実施態様においては、通常の点火促進剤を、本発明の各実施態様に従う添加剤中の第1成分点火促進剤として使用し得る。通常の点火促進剤としては、例えば、限定するものではないが、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)、クメンヒドロペルオキシド、ジ-オレアルペルオキシド、大豆ヒドロペルオキシド、およびジエチルペルオキシドがある。他の有機過酸化物およびヒドロペルオキシド類も適し得る。DTBPが、典型的な点火促進剤である。
1つの実施態様においては、本発明の各実施態様に従う添加剤は、通常の点火促進剤に加えて、有機硝酸エステル点火促進剤を含み得る。1つの実施態様においては、本発明の各実施態様に従う添加剤は、ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)と硝酸2-エチルヘキシル(2-EHN)の双方を含み得る。2-EHNは、上記添加剤とは別個に、ディーゼル燃料に二者択一的に添加し得る。
【0012】
第2成分の植物抽出物
本発明の各実施態様に従う添加剤の第2成分は、植物抽出物、植物抽出物の成分と同様である合成組成物、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を含み得る。植物抽出物または植物抽出物と同様である合成組成物は、少なくとも1種のカロテノイドおよび/または少なくとも1種のクロロフィル成分を含み得る。該第2成分は、合成カロテノイドまたはクロロフィル類並びに天然カロテノイドまたはクロロフィル類を含み得る。
カロテノイドは、40炭素のポリエン鎖に由来する脂溶性色素である。その鎖は、環で終端し得、また、酸素含有基も含み得る。炭化水素カロテノイドはカロテンとして知られており、カロテノイドの酸素化誘導体はキサントフィルとして知られている。
ベータ-カロテンは、ニンジン、ホウレンソウ、モモ、アンズおよびサツマイモのような多くの果物および野菜中に存在する天然カロテノイドである。
“Iso-Mixtene”、即ち、DSM Chemicals社(前のRoche Vitamins社)の製品は、純粋トランス-ベータ-カロテン合成における中間体である。Iso-Mixteneは、約89〜98%のトランスβカロテンと約1.4〜約11%のシスβカロテンの異性体形の混合物である。Iso-Mixteneは、本発明の各実施態様に従う添加剤中の第2成分として適し得る。
カロテノイド類は、生物学的酸化防止剤であり、細胞および組織をフリーラジカルから保護し得る。
【0013】
植物抽出物
用語“植物抽出物”または“植物油抽出物”は、本明細書において使用するとき、広い用語であり、限定するものではないが、n-ヘキサン、他の適切な非極性溶媒または極性溶媒中で抽出可能である植物物質中に存在する成分のようなその通常の意味において使用する。用語“抽出可能”とは、“可溶性”よりも広い用語である。ある種の植物物質は、その成分が溶媒中で可溶性であり得ない場合でさえも、溶媒中で抽出可能である。
植物抽出物は、例えば、色素体または色素体の成分を含有し得る。色素体は、系に色を付与する分子の集合体である。植物学的意味においては、古典的な色素体は、葉緑体(文字通りに色素体と言換えている)、即ち、クロロフィル、タンパク質並びに光合成過程において必要な他の色素および構造体を含有する細胞小器官である。小器官全体を存在物として輸送し得る。
植物抽出物は、好ましくは、植物の緑色部分からの抽出物を含み得る。緑色でない植物の部分の抽出物は、植物の緑色部分の抽出物よりもあまり望ましくない植物抽出物であり得る。例えば、樹皮または緑色でない他の部分からの抽出物は、本発明の各実施態様に従う添加剤中の植物抽出物として使用するには、植物の緑色部分からの抽出物よりも一般にあまり適切ではあり得ない。
クロロフィルは、植物抽出物の全部または1部の代替物として或いは植物抽出物に加えて使用し得る。植物抽出物は、クロロフィルを含み得る。クロロフィルは、光合成、即ち、二酸化炭素と水が結合してグルコースと酸素を生成させる過程を達成する植物中の緑色色素である。また、植物抽出物は、限定するものではないが、有機金属類、酸化防止剤、オイル類、脂質類、熱安定剤、またはこれらのタイプの生成物の出発物質、並びに主として低乃至高分子量の酸化防止剤を含むおよそ300種の他の化合物のような多くの他の化合物も典型的に含有する。
【0014】
好ましい実施態様においては、第2成分は、例えば、ベッチ(vetch;マメ科ソラマメ属の植物)、ホップ類、オオムギまたはアルファルファからの植物抽出物を含み得る。ベッチからの植物抽出物は多くの実施態様において好ましいが、他の実施態様においては、全体または1部を、限定するものではないが、アルファルファ、ホップ抽出物、ウシノケグサ抽出物、オオムギ抽出物、グリーンクローバー抽出物、コムギ抽出物、穀物の緑色部分の抽出物、緑色食材抽出物、緑色生垣または緑葉または緑草の抽出物、緑色部分を含むあらゆる花卉類、マメ科の任意のメンバーの植物の葉または緑色部分、クロロフィルまたはクロロフィル含有抽出物、またはこれらの組合せもしくは混合物のような他の植物抽出物で置換えることが望ましくあり得る。適切なマメ類としては、ライマメ、ベニバナインゲン(kidney bean)、インゲンマメ(pinto bean)、アカインゲンマメ、ダイズ、シロインゲンマメ(great northern bean)、レンズマメ、シロインゲンマメ(navy bean)、ブラックタートルビーン、エンドウマメ、ヒヨコマメおよびササゲマメからなる群から選ばれるマメがある。適切な穀類としては、ウシノケグサ、クローバー、コムギ、オートムギ、オオムギ、ライムギ、モロコシ、アマニ、ライコムギ(tritcale)、コメ、トウモロコシ、スペルトコムギ、キビ、アマランス、ソバ、キヌア、カムートおよびテフがある。
とりわけ好ましい植物抽出物は、一般にマメ科(pulse family)さらにまたマメ科(peaまたはlegume family)とも称されるマメ科(Fabaceae (Leguminosae))植物科のメンバーである植物に由来する抽出物である。マメ科には、潅木類、木本類および草本類を含む700属および17,000種以上がある。この科は、次の3つの亜科に分類される:主として熱帯の木本および潅木であるムネノキ亜科(Mimosoideae);熱帯および亜熱帯の潅木を含むジャケツイバラ亜科(Caesalpinioideae);および、エンドウマメおよびマメ類を含むマメ亜科(Papilioniodeae)。マメ科の殆どのメンバーの共通する特徴は、窒素固定性根粒菌を含む根粒の存在である。また、マメ科の多くのメンバーは、その種子内に高量の植物油を蓄積する。マメ科には、数例挙げると、レッドプラント(lead-plant)、アメリカヤブマメ、アメリカホドイモ、カナダレンゲ、インジゴ、ダイズ、パールレンリソウ(pale vetchling)、マーシュレンリソウ(marsh vetchling)、ベイニーピー(veiny pea)、丸頭ブッシュクローバー、多年生ルピナス、ホップクローバー、アルファルファ、ホワイトスウィートクローバー、イエロースウィートクローバー、ホワイトプレーリークローバー、パープルプレーリークローバー、コモンローカスト(common locust)、野生アズキ、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、カラスノエンドウ、ヘアリーベッチ、エンドウマメ、ヒヨコマメ、インゲンマメ(string green)、ベニバナインゲン、ミドリマメ、ライマメ、ソラマメ、レンズマメ、ピーナッツまたは落花生、およびカウピーがある。
【0015】
植物抽出物は、当業者にとって周知の抽出方法を使用して得ることができる。溶媒抽出法が一般に好ましい。植物材料料から油および油溶性画分を分離することのできる任意の適切な抽出溶媒を使用し得る。極性または非極性溶媒を使用し得る。非極性抽出溶媒を最も頻繁に一般的に使用し得る。極性溶媒は、代替的実施態様において使用し得る。溶媒としては、単一溶媒または2種以上の溶媒の混合物があり得る。植物抽出物は、植物抽出物が溶媒に可溶性であり得ない場合でさえも、溶媒中で抽出可能であり得る。
適切な非極性溶媒としては、限定するものではないが、約5個以下から12個以上までの炭素原子を含有する環式、直鎖および枝分れ鎖のアルカン類がある。非環式アルカン抽出剤の特定の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、混合ヘキサン、混合ヘプタン、混合オクタン、イソオクタン等がある。シクロアルカン抽出剤の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン等がある。ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネンおよびデセン類のようなアルケン類も、ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素と同様に、使用するのに適している。クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタンおよびトリクロロトリフルオロエタンのようなハロゲン化炭化水素類も使用し得る。一般に好ましい非極性溶媒は、C6〜C12アルカン類、とりわけn-ヘキサンである。
適切な極性溶媒としては、限定するものではないが、アセトン、メチルエチルケトン、他のケトン類、メタノール、エタノール、他のアルコール類、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、または任意の他の適切な極性溶媒がある。
【0016】
ヘキサン抽出は、種子から油分を抽出するための最も一般的に使用される方法である。ヘキサン抽出は、植物材料中の実質的に全ての油溶性画分を抽出する高度に有効な抽出法である。典型的なヘキサン抽出においては、植物材料を細分する。草本類および緑葉植物は、小片に切断し得る。種子類は、典型的には、粉砕またはフレーク化する。植物材料は、典型的には、ヘキサンに昇温下に暴露する。ヘキサンは、植物材料の抽出可能成分を抽出し、典型的には、油分を溶かし出して、残留植物材料中に僅かに数質量パーセントの油分しか残存させない高可燃性の無色で揮発性の溶媒である。植物抽出物/溶媒混合物は、例えば、水蒸気浴または他の適切な加熱手段により加熱して、ヘキサンをフラッシングし得る。また、ヘキサンは、加熱してまたは加熱しないで減圧下に蒸発させることによっても除去し得る。得られる抽出物は、好ましい実施態様の配合物において使用するのに適し得る。
食用品または化粧品において使用する植物油抽出物は、外観、貯蔵安定性、風味等に影響を与え得る不純物を除去して精製油を得るためのさらなる処理工程を典型的に受ける。これらの不純物としては、リン脂質、粘着性ガム類、遊離脂肪酸、着色顔料および微細植物粒子があり得る。これらの副生成物を除去するには、水沈降または有機酸水溶液による沈降のような種々の方法を使用する。着色化合物は、典型的に油を珪藻土のような吸着剤に通す漂白によって典型的に除去する。また、脱臭も、典型的には水蒸気蒸留により行い得る。そのような追加の処理工程は、一般的には必要でない。しかしながら、そのような処理に供した油類は、好ましい実施態様に従う添加剤中の植物抽出物として使用するのに適し得る。
他の好ましい抽出方法としては、限定するものではないが、典型的には二酸化炭素による超臨界流体抽出がある。ヘリウム、アルゴン、キセノンおよび窒素のような他のガス類も、超臨界流体抽出法における溶媒として使用するのに適し得る。
限定するものではないが、機械圧搾のような任意の他の適切な方法を使用しても、所望の植物抽出物画分を得ることができる。圧搾機圧搾法としても知られている機械圧搾法は、種子または油含有物質を押潰してパルプとし、このパルプから油を圧搾する連続駆動スクリューを使用することによって油分を取出している。この過程で生じた摩擦は約50℃〜90℃の温度を発生させ得、或いは、外部熱を加えてもよい。低温圧搾法は、一般に、40℃以下の温度で実施する機械圧搾法を称し、外部熱は加えない。
【0017】
植物材料から得ることのできる植物抽出物または植物油抽出物の収率は、かなり多くの要因によるが、基本的には植物材料の油含有量により得る。例えば、ベッチの典型的油含有量(ヘキサン抽出、乾燥基準)はおよそ4〜5質量%であり、一方、オオムギの油含有量はおよそ6〜7.5質量%であり、アルファルファの油含有量はおよそ2〜4.2質量%である。
最も好ましい形の溶媒抽出物質は、抽出後にペーストまたは泥状コンシステンシーを有する物質、即ち、抽出後に液体よりはむしろ固体または半固体を含む。そのようなペーストは、抽出物中で高い濃度比のクロロフィルa対クロロフィルbを典型的に含有する。そのような物質の色合は、一般に、物質全体に亘ってある程度の蛍光を伴う深黒緑色である。そのような物質は、マメ科において列挙される多くの或いは全部の植物源から回収し得る。そのような形態は殆どの実施態様において一般的に好ましいけれども、ある他の実施態様においては、液体またはある種の他の形態が好ましくあり得る。
数種の形のクロロフィルが存在する。光合成を行う全ての植物、藻類および藍色細菌は、クロロフィルaを含有する。クロロフィルbは、緑色の藻類および植物においてのみ産生する。クロロフィルcは、クロミスタ界の光合成メンバーおよび渦鞭毛藻類においてのみ見出される。クロロフィルcは、位置17と18において不飽和である点で他のクロロフィルと異なる。さらに、クロロフィルcは、位置17に遊離酸を有する。多くのクロロフィルは、位置17にエステル基を有する。
クロロフィルaとbは、異なる側鎖を有する点で互いに異なる。クロロフィルaの位置7の側鎖が-CH3であるのに対し、クロロフィルbの側鎖は-CHOである。クロロフィルaとbの吸収スペクトルは、異なる波長で日光を吸収する点で互いに補完しあっている。いずれのクロロフィルも、緑色領域の500〜600mmの極めて僅かな光しか吸収しない。これが、植物が緑色である理由である。
【0018】
高級植物は、一般に、約1.3〜1.4のクロロフィルa/b比を有し、一方、緑色藻LHC IIは、0.7〜2.7のクロロフィルa/b比を有する。プロクロロコッカス マリヌス(Prochlorococcus marinus)は、クロロフィルaおよびbのジビニル誘導体(DV-Chl aおよびb)を含有する光合成性原核生物である。MED4株は、11.4〜15.0の範囲のDV-Chl a/b比を有し、一方、SS120株は、1.1〜2.2の範囲のDV-Chl a/b比を有する(F. Partensky, J. La Roche, K. Wyman, and P.G. Falkowski, Photosynthesis Research 51, 109 (1997))。従って、クロロフィルa/b比は、とりわけプロクロロコッカス マリヌスに含まれるジビニルクロロフィル誘導体においては、かなりの範囲に亘って変動し得る。
クロロフィルa/b比およびクロロフィル対カロテノイド種の比は、植物がストレスを受けたとき、単一の植物種において変動し得る。植物の葉中のクロロフィル濃度は、脱水、冠水、凍結、オゾン、除草剤、競争、病気、昆虫および外生菌性不全のようなストレスに応答して低下し得る(G. A. Carter and A. K. Knapp, Am. J. of Botany 88, 677 (2001))。
例えば、クロロフィル濃度並びにクロロフィルaおよびbの濃度は、植物が受ける光強度によって変動し得る。一般に、クロロフィル濃度は、日光に晒される植物において低めである。日光に晒したマホガニー植物における総クロロフィル濃度(クロロフィルaおよびb)は、約1.78μモル.g-1であったのに対し、日陰に置いたマホガニー植物における総クロロフィル濃度は、3.15μモル.g-1であった(J. F. de Carvalho Goncalves, R. A. Marenco, and G. Vieira, R. Bras. Fisiol. Veg. 13, 149 (2001))。日陰に置いたマホガニー植物における総クロロフィル濃度は、日光に晒したマホガニー植物における総クロロフィル濃度よりも約75%高かった。日光および日陰に晒したトンカマメ植物における相応する濃度は、それぞれ、2.45および3.93μモル.g-1、60%の違いであった。
日光および日陰に置いたマホガニー植物におけるクロロフィルa/b比は、それぞれ、1.87および1.62であった。日光または日陰において産生したトンカマメ植物における相応する比は、2.6および2.85であった。
【0019】
また、クロロフィル/カロテノイド比も、日光および日陰で産生する植物によって変動する。日光中で産生したマホガニー植物が2.06のクロロフィル/カロテノイド比を有していたのに対し、日陰で産生したマホガニー植物は3.89のクロロフィル/カロテノイド比を有していた。日光および日陰内で産生したトンカマメ植物におけるクロロフィル/カロテノイド比は、それぞれ、2.97および3.25であった(de Carvalho Goncalves等)。Gonvalves等によれば、クロロフィルまたはカロテノイド合成のいずれかは、高めの照射に対する順化を増強し得る。マホガニーにおけるクロロフィル/カロテノイド比の変化は、トンカマメ植物における変化よりも大きかった。Gonvalves等の文献は、トンカマメ植物は、日光順化においてマホガニーとは異なる対応を有することを示唆していた。トンカマメ植物は、マホガニーの薄くて柔らかい葉とは対照的に、厚くて硬い葉を有する。
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料からの放出物低減における植物抽出物の効果は、総クロロフィル濃度および/またはクロロフィルa/b比に依存すると信じている。ストレス条件下で繁殖する植物からの植物抽出物の方が良好な放出物削減をもたらすと信じている。
約0.7〜約15の範囲のクロロフィルa/b比を有する植物抽出物は、本発明の各実施態様に従う添加剤中の植物抽出物として適し得ており、該クロロフィルa/b比は、クロロフィルaとbのジビニル誘導体およびクロロフィルaとbにおける比を含む。
クロロフィルa/b比は、より好ましくは約0.1〜約80の範囲内、さらにより好ましくは0.7〜約5の範囲内、最も好ましくは約1.3〜約3の比内にあり得る。
クロロフィル/カロテノイド比は、約0.1〜100の範囲内、より好ましくは約0.5〜約50の範囲内、さらにより好ましくは約2〜約20の範囲内にあり得る。
植物抽出物の合成成分、例えば、合成カロテノイド、クロロフィルまたはキサントフィルは、天然植物抽出物に代えて或いは加えて使用し得る。
【0020】
β-カロテン
β-カロテンは、上記添加剤に必要に応じての別個の成分として添加し得、或いは、例えば、植物抽出物の各成分の1つのような他のベース成分の1つ中に存在するかまたは自然産生し得る。β-カロテンは、高分子量の酸化防止剤である。植物中で、β-カロテンは、酸素ラジカルのスカベンジャーとして機能し、クロロフィルを酸化から保護する。何ら特定のメカニズムに限定することは望まないけれども、好ましい実施態様の配合物中のβ-カロテンは、燃焼過程における酸素ラジカルを除去し得、或いは燃焼用の空気/燃料流中に存在する利用可能な酸素に対する酸素溶解剤または酸素獲得剤として作用し得るものと信じている。
β-カロテンは、天然または合成物であり得る。好ましい実施態様においては、β-カロテンは、1,600,000単位のビタミンA活性の純度を有するビタミンAに等価の形で使用する。また、それより低い純度のビタミンAも、使用量を等価の活性を得るように調整することを条件として使用するのに適し得る。例えば、純度が800,000単位のビタミンA活性である場合、使用量を二倍にして所望の活性を得る。
β-カロテンは、好ましい実施態様においては、セタン改良剤として存在し得る。β-カロテンは、燃料配合物に、分離した成分として添加し得、或いは、例えば、植物油抽出物のような別の成分中に存在するかまたは自然産生し得る。β-カロテンは、燃料に対する単なるセタン改良添加剤であり得、或いは燃料添加剤パッケージの1部として存在し得る。β-カロテンは、高分子量の酸化防止剤である。植物中で、β-カロテンは、酸素ラジカルのスカベンジャーとして機能し、クロロフィルを酸化から保護する。また、β-カロテンは、本発明の各実施態様に従う燃料添加剤中で第2成分として存在し得る。
β-カロテンは、天然または合成物であり得る。好ましい実施態様においては、β-カロテンは、1,600,000単位のビタミンA活性の純度を有するビタミンAに等価の形で使用する。また、それより低い純度のビタミンAも、使用量を等価の活性を得るように調整することを条件として使用するのに適し得る。例えば、純度が800,000単位のビタミンA活性である場合、使用量を二倍にして所望の活性を得る。
β-カロテンのプレカーサーまたは誘導体、例えば、ビタミンAは、好ましい実施態様において使用するのに適し得る。何ら特定のメカニズムに限定することは望まないけれども、好ましい実施態様の配合物中のβ-カロテンまたはカロテンもしくはカロテノイドのプレカーサーもしくは誘導体は、燃焼過程における酸素ラジカルを除去し得、或いは燃焼用の空気/燃料流中に存在する利用可能な酸素に対する酸素溶解剤または酸素獲得剤として作用し得るものと信じている。
【0021】
β-カロテンは多くの実施態様において好ましいけれども、他の実施態様においては、β-カロテンを、別のカロテンまたはカロテノイド或いは別のカロテンまたはカロテノイドのプレカーサーまたは誘導体、例えば、以下で説明するようなα-カロテンまたはカロテノイドで置換えることも望ましくあり得る。また、限定するものではないが、α-カロテンまたは藻キセアキサブチン(xeaxabthin)由来のさらなるカロテノイド類、クリポトキサンチン、リコペン、ルテイン、ブロッコリー濃縮物、ホウレンソウ濃縮物、トマト濃縮物、ケール濃縮物、キャベツ濃縮物、芽キャベツ濃縮物およびリン脂質、緑茶抽出物、オオアザミ抽出物、クルクミン抽出物、ケルセチン、ブロメライン、クランベリーおよびクランベリー粉末抽出物、パイナップル抽出物、パイナップル葉抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウの種抽出物、イチョウ抽出物、ポリフェノール類、フラボノイド類、根ショウガ抽出物、サンザシ液果抽出物、ビルベリー抽出物、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、マリーゴールドの油抽出物;ニンジン、果物、野菜、花、草、天然穀類、木本の葉、潅木、干し草、あらゆる生植物または木本の葉のいずれかのまたは全ての油抽出物;および、これらの組合せまたは混合物のような別の成分は、β-カロテンを補完し得る。
リコペン、ルテイン、α-カロテンを含有するカロテノイド類、ニンジンまたは藻類由来の他のカロテノイド類、ベタテン(betatene)、および天然ニンジン抽出物のような担保された力価を有する植物カロテノイド類は、とりわけ好ましい。ある種のとりわけ好ましい実施態様においては、β-カロテンの代替物は、β-カロテンの好ましい量に関して等価のビタミンA活性を与えるに十分な量で存在する。しかしながら、他の実施態様においては、ビタミンA活性は代替物の量を決定する好ましい方法ではあり得ないか、或いは代替物は等価のビタミンA活性を有し得ない。
【0022】
液体形のβ-カロテンを燃料配合物に添加する以外に、β-カロテン(または他のカロテンもしくはカロテノイド、またはカロテンもしくはカロテノイドのプレカーサーもしくは誘導体)は、固体形で、例えば、脱水形或いはカプセル化液体または固体の形でも添加し得る。β-カロテンまたは他の植物系物質の溶液または懸濁液の保存または貯蔵は、重量および貯蔵スペースの軽減、安定性および耐酸化性の増強のような多大な利益を有する。脱水形のβ-カロテンは、凍結乾燥(freeze-drying)、真空または空気乾燥、凍結乾燥(lyophilization)、スプレー乾燥、流動床乾燥のような方法並びに当該技術において既知の他の保存および脱水方法によって製造し得る。脱水形のβ-カロテンは、燃料に、脱水形で添加してもよく、或いは適切な溶媒中の再構成液体として添加してもよい。好ましい実施態様においては、β-カロテンを含有する固体を、添加処理すべき燃料に添加する。適切な固体形としては、限定するものではないが、錠剤、粒状物、粉末、カプセル化固体および/またはカプセル化液体等がある。また、さらなる成分も固体形中に存在し得る。任意の適切なカプセル化用物質、好ましくは、添加処理すべき燃料中で可溶性である高分子または他の物質を使用し得る。カプセル化用物質は、燃料中で溶解して封入物質を放出する。錠剤は、好ましくは、燃料または希釈剤中に許容し得る時間で溶解する。溶解助剤を錠剤中に含ませ得る、例えば、活性成分の小顆粒または粒子を、燃料中での高溶解性を有するマトリックス中に存在させ得る。固体添加法と液体添加法の組合せを使用し得、固体は、燃料または希釈剤中に任意の好ましい時間で添加し得る。
【0023】
次の成分は、好ましい実施態様のセタン改良剤中のβ-カロテンと組合せて使用し得る:ブチル化ヒドロキシトルエン、リコペン、ルテイン、カロテノイドの全てのタイプ;ニンジン、ビート、ホップ、ブドウ、マリーゴールド、果物、野菜からの油抽出物;ヤシ油、パーム核油、パーム樹木油、ピーマン、綿実油、コメヌカ油;自然に繁殖している色が天然のオレンジ、赤、紫または黄色である任意の植物;または、天然の酸素スカベンジャーであるが本質的に有機性を残している任意の他の物質。ある種の実施態様においては、β-カロテンを全部または1部においてこれらの成分の1種以上と置換えることが好ましくあり得る。
また、次の生成物から抽出した油も、β-カロテンと組合せて使用し得る:α-カロテンおよび藻キセアキサブチン(xeaxabthin)由来のさらなるカロテノイド類、クリポトキサンチン、リコペン、ルテイン、ブロッコリー濃縮物、ホウレンソウ濃縮物、トマト濃縮物、ケール濃縮物、キャベツ濃縮物、芽キャベツ濃縮物およびリン脂質。さらに、緑茶抽出物、オオアザミ抽出物、クルクミン抽出物、ケルセチン、ブロメライン、クランベリーおよびクランベリー粉末抽出物、パイナップル抽出物、パイナップル葉抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウの種抽出物、イチョウ抽出物、ポリフェノール類、フラボノイド類、根ショウガ抽出物、サンザシ液果抽出物、ビルベリー抽出物からの油抽出物;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、マリーゴールドの油抽出物、ホップの油、ホホバの油抽出物;ニンジン、果物、野菜、花、草、天然穀類、木本の葉、潅木の葉、干し草、ヒトおよび動物用の供給原料および雑草のいずれかのまたは全ての油抽出物;または、限定するものではないがスクアレン、スクアランを含むサメのようなあらゆる淡水または海水魚の油抽出物、全ての淡水および海水魚の油、および魚油抽出物、またはクジラのような動物の油抽出物。
ある種の実施態様においては、セタン改良剤カロテンまたはカロテノイド、或いはカロテンまたはカロテノイドのプレカーサーまたは誘導体は、1種以上の通常のセタン改良剤、例えば、硝酸アルキルと組合せて存在する。さらなるセタン改良剤が存在する場合は、硝酸2-エチルヘキシルがとりわけ好ましい。しかしながら、純粋硝酸2-エチルヘキシルが望ましいけれども、他の硝酸アルキルまたは他の等級の硝酸2-エチルヘキシルも適切であることを理解すべきである。さらに、当業者であれば、上述したような他の硝酸アルキルまたは通常のセタン改良剤または点火促進剤が硝酸2-エチルヘキシルと同様に機能し、従って、置換え得ることも承知であろう。望ましいことに、セタン改良剤の多くの種々の配合物を製造でき、各々が、異なる硝酸アルキルまたは2種以上の硝酸アルキルおよび/またはβ-カロテンに対する硝酸アルキルの割合を有する。
【0024】
安定化用化合物または酸化防止剤
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の上記植物抽出物、カロテン、カロテノイド、iso-Mixtene、クロロフィル、ディーゼル、バイオディーゼルまたは他の成分は、酸化に対して感受性であり得る。酸化は、燃料の性能を劣化させ得る。
少なくとも1種の安定化用化合物または酸化防止剤を、バイオディーゼルを含むディーゼル燃料に添加して、各成分を酸化に対して安定化させ得る。例えば、米国特許第6,630,324号(その全体を参考として本明細書に合体させる)は、β-カロテンを、溶媒中で、窒素、ヘリウムまたはアルゴンのような不活性雰囲気下に溶解または調製することを開示している。不活性雰囲気下で溶解または調製したβ-カロテンは、“非酸素化β-カロテン”と称している。不活性雰囲気は、β-カロテンおよび/または他の成分を酸化から保護し得る。また、2001年4月12日に出願された同時継続PCT公報WO01/79398号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,602号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,603号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,237号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,835号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,601号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,836号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,579号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,243号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,833号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,236号、2002年2月26日に出願された米国特許出願第10/084,831号、2002年2月26日に出願されたPCT出願US02/06137号、および2002年2月26日に出願されたカナダ出願第2,273,327号も参照されたい;これらの出願は、全て、その全体を参考として本明細書に合体させる。
好ましい実施態様においては、カロテンを含むセタン改良剤は、以下の方法によって配合し得る。不活性雰囲気(例えば、窒素、ヘリウムまたはアルゴン)下に、3グラムのβ-カロテン(グラム当り1,600,000国際単位のビタミンA活性)を、トルエンを含む200mlの炭化水素担体に溶解させる。β-カロテンは、加熱し撹拌しながら溶解させるのが好ましい。不活性雰囲気下で溶解または調製したβ-カロテンは、“非酸素化β-カロテン”と称する。他のカロテンまたはカロテノイド或いはカロテンまたはカロテノイドのプレカーサーまたは誘導体のようなβ-カロテンに対する代替物または補完物は、“非酸素化カロテンまたはカロテノイド或いはカロテンまたはカロテノイドのプレカーサーまたは誘導体”と称する。次に、約946ミリリットルの硝酸2-エチルヘキシル100%溶液を混合物に加え、トルエンを添加して、3.785リットルの総容量を得る。
【0025】
広い意味においては、不活性雰囲気は、諸成分を酸化に対して安定化させる安定化用化合物または酸化防止剤とみなし得る。他のより一般的な安定化用化合物を、以下で説明する。
他の安定化用化合物または酸化防止剤は、例えば、2003年6月10日に出願された公開番号 US 2005/0160662 A1号、米国特許出願第10/517,901号に開示されている;その全体を参考として本明細書に合体させる。好ましい実施態様においては、上記901号出願の安定化用化合物は、キノリン成分、好ましくは、一般的にはエチオキシキンと称される2,2,4-トリメチル-6-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリンを含有する。この化合物は、ミズーリ州セントルイスのSolutia社から商品名SANTOQUINRとして販売されている。SANTOQUINRは、動物の供給物および飼料用の酸化防止剤として広く使用されている。
本発明の各実施態様に従うバイオディーゼルを含むディーゼル燃料のβ-カロテン、カロテン類、カロテノイド類、ディーゼル、バイオディーゼルまたは他の成分に対する他の適切な安定化用化合物としては、限定するものではないが、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン;没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルおよび没食子酸プロピルのような没食子酸エステル類;限定するものではないが、リノレン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチルのような脂肪酸エステル類、およびアスコルビン酸パルミテートのような他のエステル類;ジスルフラム;ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロールおよびアルファ-トコフェロールのようなトコフェロール類、並びにトコフェロール誘導体およびプレカーサー;ローズマリーの脱臭抽出物;チオジプロピオン酸ラウリルまたはチオジプロピオン酸ジラウリルのようなプロピオン酸エステルおよびチオプロピオン酸エステル類;ベータ-ラクトグロブリン;アスコルビン酸;フェニルアラニン、システイン、トリプトファン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、ロイシン、チロシン、リシン、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アスパラギン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン、バリンおよびアラニンのようなアミノ酸類;タナン(tanan)とも称する2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ;タノール(tanol)とも称する2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル;ジメチル-p-フェニルアミノフェノキシアシラン;ジ-p‐アニシルアゾキシド類;2,2,4-トリメチル-6-エトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン;ジヒドロサントキン;サントキン;p-ヒドロキシジフェニルアミン、並びにその炭酸エステル、フタル酸エステルおよびアジピン酸エステル;および、ジルジン(diludin)、即ち、1,4-ジヒドロピリジン誘導体がある。
【0026】
何ら特定のメカニズムまたは理論に拘束することは望まないけれども、上記安定化用化合物は、バイオディーゼルおよび本発明の各実施態様に従う添加剤を含む燃料のカロテン、カロテノイド類、ディーゼル、バイオディーゼル、植物抽出物、点火抑制剤または他の成分の酸化を抑制することにより、保存剤または安定剤として作用し得るものと信じている。エチオキシキンのような安定化用化合物がベータ-カロテンと組合せて存在する場合、例えば、2004年2月27日に出願された出願第10/789,836号に記載されているように、カロテンを含み得る燃料添加剤を不活性雰囲気下で製造する必要はあり得ない。また、該836号出願にも記載されているように、エチオキシキンのような安定化用化合物とベータ-カロテンのようなセタン改良剤と一緒の組合せは、セタン価の相乗的上昇をもたらし得る。
本出願において別途列挙しているようなフェノール系酸化防止剤、アミン酸化防止剤、硫化フェノール化合物、有機ホスファイト類等を含む酸化防止特性を有する他の物質も、好ましい実施態様の配合物において、β-カロテンの代替物またはさらなる成分のいずれかとして使用するのに適し得る。好ましくは、酸化防止剤は、油溶性である。酸化防止剤が水溶液中で不溶性かまたはほんの僅かしか溶解性でない場合は、界面活性剤を使用してその溶解性を改善することが望ましい。
当該技術において知られている適切な熱安定剤としては、中間留分燃料用の安定剤として使用するのに適する2-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールおよび2,6-ジ- tert-ブチル-4-n-ブチルフェノールのようなアルキルフェノール類の液体混合物がある(Hanlon等に付与された米国特許第5,076,814号および米国特許第5,024,775号)。熱安定性効果も示す他の商業的に入手可能なヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2.2'-メチレン-ビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、n-オクタデシル 3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジ-n-オクタデシル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン、およびトリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートがある(米国特許第4,007,157号、米国特許第3,920,661号)。熱安定剤なる用語は、“安定剤”または“酸化防止剤”よりも広い用語であり得る。酸化に対する耐性は、熱安定性の形であり得る。
【0027】
他の熱安定剤としては、酸化的および/または熱的劣化を通常受けやすい有機物質の安定剤として有用である、ペンタエリスリトール、(3-アルキル-4-ヒドロキシフェノール)-アルカン酸およびアルキルチオアルカン酸またはそのような酸の低級アルキルエステルから誘導されたペンタエリスリトールコ-エステル(Dunski等に付与された米国特許第4,806,675号および米国特許第4,734,519号);マロン酸、ドデシルアルデヒドおよび獣脂アミンの反応生成物(Nelson等に付与された米国特許第4,670,021号);ヒンダードフェニルホスファイト類(Spivackに付与された米国特許第4,207,229号);ヒンダードピペリジンカルボン酸およびその金属塩(Ramey等に付与された米国特許米国特許第4,191,829号および米国特許第4,191,682号);2,6-ジヒドロキシ-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナンのアシル化誘導体(Stephenに付与された米国特許第4,000,113号);二環式ヒンダードアミン類(Ramey等に付与された米国特許第3,991,012号);ジアルキル-4-ヒドロキシフェニルトリアジンのイオウ含有誘導体(Dexter等に付与された米国特許第3,941,745号);二環式ヒンダードアミノ酸およびその金属塩(Ramey等に付与された米国特許第4,051,102号);トリアルキル置換ヒドロキシベンジルマロネート類(Spivackに付与された米国特許第4,081,475号);ヒンダードピペラジンカルボン酸およびその金属塩(Ramey等に付与された米国特許第4,089,842号);ピロリジンジカルボン酸およびエステル類(Stephenに付与された米国特許第4,093,586号);N,N-ジ置換β-アラニンの金属塩(Stephen等に付与された米国特許第4,077,941号);ヒドロカルビルチオアルキレンホスファイト類(米国特許第3,524,909号);ヒドロキシベンジルチオアルキレンホスファイト類(米国特許第3,655,833号)等がある。
【0028】
ある種の化合物は、酸化防止剤および熱安定剤の双方として機能し得る。従って、ある種の実施態様においては、疎水性植物油抽出物を、2種の異なる化合物、即ち、熱安定性を与える1つの化合物と酸化防止活性を与えるもう1つの化合物とよりはむしろ熱安定性と酸化防止作用の双方を与える単一の化合物と組合せて含有する配合物を製造することが好ましくあり得る。ある程度の耐酸化性と熱安定性の双方を与えることが当該技術において知られている化合物の例としては、置換されたまたは置換されていないジフェニルアミン類、ジナフチルアミン類およびフェニルナフチルアミン類、例えば、N,N'-ジフェニルフェニレンジアミン、p-オクチルジフェニルアミン、p,p-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N-(p-ドデシル)フェニル-2-ナフチルアミン、ジ-1-ナフチルアミンおよびジ-2-ナフチルアミン;N-アルキルフェノチアジンのようなフェノタジン類;イミノ(ビスベンジル);6-(t-ブチル)フェノール、2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4-メチル-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4,4'-メチレンビス(-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール)のようなヒンダードフェノール類等がある。
ある種の潤滑性流体ベースストックは、当該技術において高熱安定性を示すことが知られている。そのようなベースストックは、好ましい実施態様の配合物に熱安定性を付与し得、そのようなものとして、ホホバ油を全部または1部置換え得る。適切なベースストックとしては、ポリアルファオレフィン類、二塩基性酸エステル類、ポリオールエステル類、アルキル化芳香族類、ポリアルキレングリコール類およびリン酸エステル類がある。
【0029】
酸化防止剤
酸化抑制剤としての用途について知られている種々の化合物を、種々の実施態様の燃料配合物において使用し得る。これらの化合物としては、とりわけ、フェノール系酸化防止剤、アミン酸化防止剤、硫化フェノール化合物および有機ホスファイト類がある。最良の結果のためには、酸化防止剤は、主としてまたは全体的に、(1) 2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)および混合メチレンブリッジ型ポリアルキルフェノールのようなヒンダードフェノール酸化防止剤、または(2) シクロアルキル-ジ-低級アルキルアミンおよびフェニレンジアミンのような芳香族アミン酸化防止剤のいずれか、または1種以上のそのようなフェノール酸化防止剤と1種以上のそのようなアミン酸化防止剤の組合せを含む。とりわけ好ましいのは、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールおよびo-tert-ブチルフェノールのようなターシャリーブチルフェノール類の組合せである。また、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンおよびそのアナログンのようなN,N'-ジ-低級アルキルフェニレンジアミン類、並びにそのようなフェニレンジアミンとそのようなターシャリーブチルフェノールとの組合せも有用である。
一般にエチオキシキンと称される化合物2,2,4-トリメチル-6-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリンは、熱安定剤、安定化用化合物または酸化防止剤の好ましい実施態様である。この化合物は、ミズーリ州セントルイスのSolutia社から商品名SANTOQUINRとして販売されている。
用語熱安定剤、安定化用化合物および酸化防止剤は、密接に関連している。本明細書において使用するとき、用語“安定化用化合物”は、熱安定剤、安定化用化合物および酸化防止剤を包含することを意味する。
【0030】
本発明の各実施態様に従う添加剤の任意構成成分
本発明の各実施態様に従う添加剤は、少なくとも1種の点火促進剤第1成分並びに植物抽出物、植物抽出物と同様である合成組成物およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の第2成分以外に、さらなる成分を含み得る。
例えば、上記添加剤は、長鎖脂肪酸またはエステル類またはこれらの混合物、例えば、限定するものではないが、メドウフォーム油、ホホバ油またはこれらの混合物を含む成分をさらに含む。合成長鎖脂肪酸またはエステル類も、長鎖脂肪酸またはエステル類を含む任意構成成分として使用し得る。
また、上記添加剤は、さらなる成分として溶媒もさらに含み得る。長鎖脂肪酸またはエステル類を含む成分および溶媒を含む成分は、共に任意構成成分である。両任意構成成分は、本発明の各実施態様に従う添加剤の好ましい成分である。
安定化用化合物は、上記添加剤のもう1つの任意構成成分である。任意成分としての安定化用化合物は、本発明の各実施態様に従う燃料添加剤とは別個に、燃料に添加することもできる。
メドウフォーム油
メドウフォームは、米国北西部原産の1年生植物である。この植物の植物学名は、リムナンテス アルバ(Limnanthes alba)である。この植物は、開花している植物の白い花の畑が牧草地(meadow)に似ているので“メドウフォーム(meadow foam)”と呼ばれている。
メドウフォームの種子は、約20〜30%の油を含み得る。油は、種子を押潰し溶媒抽出法を使用することによって取出し得る。メドウフォーム油は、98%を越える長鎖脂肪酸を含み得る。該長鎖脂肪酸は、極めて高量のモノ不飽和と極めて低量のポリ不飽和を有する。メドウフォーム油は、知られている最も安定な植物油の1つである。メドウフォームは、高ユール酸ナタネ油に最も類似している(Dan Burden, Ag Marketing Resource Center, Iowa State University, November 2003)。ナタネ油は、メドウフォーム油よりの僅かに飽和である(E.A. Oelke, E.S. Oplinger, C.V. Hanson, K.A., Kelling, Alternative Field Crops Manual, University of Wisconsin-Extension, Cooperative Extension, University of Minnesota, Center for Alternative Plant & Animal Products and the Minnesota Extension Service)。
【0031】
メドウフォーム油の安定性は、一般的な酸化防止剤によるものではなさそうである。メドウフォーム油の酸化的安定性についての1つの可能性ある説明は、その異常な脂肪酸塑性であり得る。メドウフォーム油由来の主要脂肪酸は、5-エイコセン酸であり、酸化に対し、最も一般的な脂肪酸のオレイン酸よりもほぼ5倍安定であり、そして、他のモノ不飽和脂肪酸よりも16倍安定であることが判明している。“Oxidative Stability Index of Vegetable Oils in Binary Mixtures with Meadowfoam Oil,” Terry, et al., United States Department of Agriculture, Agricultural Research Service, 1997を参照されたい。
メドウフォーム油の典型的な脂肪酸組成は、約58-64%のC20:1 (Δ5)、3〜6%のC22:1 (Δ5)、10〜14%のC22:1 (Δ13)および15〜21%のC22:2 (Δ5Δ13)である。
油安定性指数(OSI)は、脂質物質の安定性を評価する最も広く使用される方法になっている。OSI分析は、油を特定温度の空気流に暴露することを含む。最終結果は、油の抵抗に上記特定温度で打勝つのに要する時間数として記録する。
メドウフォーム油のOSI値は、他の油のOSI値よりも高かった。meadowfoam.comウェブサイトにおいては、メドウフォーム実油の高安定性は、自然産生トコフェロール(酸化防止剤)の存在および酸化を受け易いであろうポリ不飽和脂肪酸の不存在によることを示唆していた。トコフェロールは、安定化用化合物とみなし得、メドウフォーム油を酸化に対して安定にしている。
また、メドウフォーム油は、メドウフォーム油を他の油とブレンドすることによって、他の油の安定性を増強させるのにも使用し得る。
【0032】
ホホバ油
1つの実施態様においては、本発明の各実施態様に従う添加剤は、任意構成成分の長鎖成分としてのメドウフォーム油に加えてまたは代えて、ホホバ油も含み得る。ホホバ油は、酸化防止特性を有し、その酸化防止能力を喪失することなく極めて高温に耐えることのできる液体である。ホホバ油は、アリゾナ、カリフォルニアおよび北部メキシコ原産の潅木由来の粉砕または破砕種子から抽出した液体ワックスエステル混合物である。ホホバ油源は、一般にホホバ植物と称するシモンドシア キネンシス(Simmondsia chinensis)潅木種である。該植物は、厚くて硬い青緑色の葉および黒褐色のナッツ様果実を有する木質の常緑潅木である。ホホバ油は、果実から、通常の圧搾法または溶媒抽出法によって抽出し得る。油は、透明で黄金色である。ホホバ油は、高分子量(C16〜C26)を有するモノ不飽和の直鎖酸とアルコールのワックスエステルからほぼ完全になる。ホホバ油は、典型的には、一般式RCOOR”を有する液体ワックスエステルと定義され、式中、RCOは、オレイン酸(CIS)、エイコサン酸(C20)および/またはエルカ酸(C22)を示し、-OR”は、エイコセニルアルコール(C20)、ドコセニルアルコール(C22)および/またはテトラセニルアルコール(C24)成分を示す。式RCOOR”(式中、Rは、C20〜C22アルキル(アルケニル)基であり、R”は、C20〜C22アルキル(アルケニル)基である)を有する純粋エステルまたは混合エステルは、ホホバ油の全体または1部の適切な代替物であり得る。モノ不飽和の直鎖アルケニル基を含む酸およびアルコールが最も好ましい。
何ら特定のメカニズムに限定することは望まないけれども、ホホバ油は、燃焼前の配合物の植物油抽出物および/またはβ-カロテン成分の事前酸化を、配合物に熱安定性を付与することによって阻止または遅延するように作用し得るものと信じている。ホホバ油は、一般に、燃料中のセタンを低下させる。高めのセタン価が好ましい配合物においては、配合物中のホホバ油の含有量を低めることが一般に好ましくあり得る。
【0033】
メドウフォーム油またはホホバ油は、潤滑剤中で使用し得る。本発明の実施態様に従う1つの実施態様においては、メドウフォーム油またはホホバ油を含む添加剤は、ディーゼル燃料の潤滑性を増強し得る。例えば、メドウフォーム油および/またはホホバ油を含む添加剤は、燃料ポンプのようなエンジンコンポーネントの寿命を増強し得る。
メドウフォーム油を含む添加剤の潤滑性は、低放出物ディーゼル燃料が低イオウ量を一般に有し得るという事実に照らして重要であり得る。低イオウディーゼルは、一般に、乏しい潤滑性に苦慮している。バイオディーゼルは、極めて低イオウのディーゼル燃料である。1つの実施態様においては、本発明の各実施態様に従う添加剤中の任意構成成分としてのメドウフォーム油は、バイオディーゼルを含むディーゼル燃料に潤滑性の付加をもたらし得る。
メドウフォーム油またはホホバ油は本発明の各実施態様に従う添加剤の好ましい任意構成成分であるけれども、長鎖脂肪酸またはエステル類を含む他の油も適し得る。長鎖脂肪酸またはエステル類を含む任意構成成分は、メドウフォーム油、ホホバ油、天然または合成長鎖脂肪酸、天然または合成長鎖脂肪酸エステル、およびこれらの混合物からなる群から選択し得る。長鎖脂肪酸および/またはエステル類は、純粋化合物または混合物であり得る。
【0034】
溶媒
好ましい実施態様の配合物と一緒に使用するのに適する溶媒は、配合物の1以上の成分と混和性または相溶性である。好ましい溶媒としては、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等のような芳香族溶媒、並びにシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等のような非極性溶媒がある。また、適切な溶媒としては、ベース燃料、例えば、ディーゼル1、ディーゼル2、バイオディーゼル等もあり得る。溶媒和させる物質次第では、酸素化物、担体流体或いは本明細書に列挙したような添加剤でさえのような他の液体も、溶媒として使用するのに適し得る。芳香族溶媒または担体流体が一般に好ましくあり得る。
Aromatic 100およびAromatic 150は、適切な溶媒の例である;但し、他の溶媒も適し得る。ExxonMobil Chemical Sales Specification Rev 11 (03/01)によれば、Aromatic 100は、最低98.0容量%の芳香族物を含有し、154℃の最低IBPおよび174℃の最高DPを有する。Aromatic 150は、最低98.0容量%の芳香族物を含有し、179℃のIBPおよび213℃の最高DPを有する。
Aromatic 100およびAromatic 150の溶媒としての例は、単なる典型的な例であって、限定することを意味しない。
溶媒量は、好ましくは、燃料中に溶解させた成分を保持するに十分な量であり得る。溶媒の最適量は、各成分、燃料ブレンドおよび溶媒のコストにより得る。溶媒のコストは、他の燃料成分よりも高くあり得る。有利には、溶媒量を最小限にして、コストを最少にし得る。溶媒のコストは、溶媒がディーゼルまたはバイオディーゼルである場合には要因とはなり得ない。
【0035】
本発明の各実施態様に従う添加剤成分の量
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の燃焼からの放出物削減用の添加剤は、点火促進剤と、植物抽出物、植物抽出物の成分と同様である合成組成物およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質とを含み得る。点火促進剤は、好ましくは、有機過酸化物または有機ヒドロペルオキシドであり得る。1つの実施態様においては、有機硝酸エステル点火促進剤も使用し得る。
点火促進剤がジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)である場合、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り、約0.32〜約799gのDTBPおよび約0.001〜約60gの植物抽出物または植物抽出物と同様な合成組成物を含み得、ディーゼル燃料の容量は、ディーゼル燃料とバイオディーゼルの双方を含むディーゼル燃料の総容量である。さらに好ましくは、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り、約0.32〜約80gのDTBPおよび約0.001〜約6gの植物抽出物または植物抽出物と同様な合成組成物を含み得る。最も好ましくは、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り、約9.5〜約30gのDTBPおよび約0.002〜約0.6gの植物抽出物または植物抽出物と同様な合成組成物を含み得る。
他の点火促進剤を使用する場合、添加剤中のその量は、当業者であれば、決定し得ることであろう。量は、DTBPの上記量と同様であり得る。
【0036】
メドウフォーム油、ホホバ油および/または溶媒は、本発明の各実施態様に従う添加剤の任意構成成分である。メドウフォーム油、ホホバ油、またはメドウフォーム油とホホバ油の混合物が本発明の各実施態様に従う添加剤中に存在する場合、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.001〜約0.544gのメドウフォーム油および/またはホホバ油、より好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.001〜約0.05gのメドウフォーム油および/またはホホバ油、最も好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.002〜約0.03gのメドウフォーム油および/またはホホバ油を含み得る。
溶媒が本発明の各実施態様に従う添加剤中に存在する場合、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.12〜約106gの溶媒、より好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.12〜約10.6gの溶媒、最も好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.23〜約10.6gの溶媒を含み得る。
上記添加剤中の植物抽出物は、その全部または1部を合成植物抽出物で置換え得ることを理解すべきである。メドウフォーム油および/またはホホバ油も、その全部または1部を合成長鎖脂肪酸またはエステルで置換え得る。
上記添加剤が硝酸2-エチルヘキシル(2-EHN)を含む場合、上記添加剤は、ディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.025〜約19gの2-EHN、より好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.075〜約15.2gの2-EHN、最も好ましくはディーゼル燃料の3.785リットル(1ガロン)当り約0.12〜約11.4gの2-EHNを含み得る。
1つの実施態様においては、上記添加剤は、バイオディーゼルを含む燃料中で約1ppm〜約5000ppmの2-EHN、より好ましくは約2ppm〜約4000ppmの2-EHN、最も好ましくはバイオディーゼルを含む燃料中で約5ppm〜約3000ppmの2-EHNを与えるに十分な2-EHNを含み得る。
1つの実施態様においては、任意構成成分としての2-EHNは、ディーゼル燃料に、上記添加剤とは別個に添加し得る。
【0037】
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の燃焼における汚染放出物の低減方法
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の燃焼における汚染放出物の低減方法は、バイオディーゼルおよび本発明の各実施態様に従う添加剤を含むディーゼル燃料を自動車内で燃焼させることを含む。該方法は、上記添加剤を上記ディーゼル燃料に添加することをさらに含み得、上記添加剤を、上記ディーゼル燃料を燃焼させる前の上記ディーゼル燃料に添加する。
バイオディーゼルおよび本発明の各実施態様に従う添加剤を含むディーゼル燃料を燃焼させる自動車からの放出物は、下記の実施例において示すように、本発明の各実施態様に従う添加剤を含まない同じ燃料を燃焼させる自動車からの放出物と比較して低減し得る。
上記添加剤は、少なくとも1種の点火促進剤と、植物抽出物、植物抽出物の成分と同様である合成組成物およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を含む少なくとも1種の第2成分とを含み得る。
【0038】
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の潤滑性の増強方法
バイオディーゼルを含むディーゼル燃料の潤滑性の増強方法を提供する。バイオディーゼル燃料は、低イオウレベルを有し得る。低イオウレベルを有するディーゼル燃料は、低潤滑性を有し得る。該方法は、添加剤を上記ディーゼル燃料に添加することを含み、該添加剤は、少なくとも1種の点火促進剤;植物抽出物、植物抽出物の成分と同様である合成組成物およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を含む少なくとも1種の第2成分;および、メドウフォーム油、ホホバ油、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の油を含む。
点火促進剤は、有機硝酸エステルまたは過酸化物を含み得る、点火促進剤は、好ましくは、過酸化物である。典型的な実施態様においては、点火促進剤は、ジ-t-ブチルペルオキシドを含み得る。他の有機過酸化物も適し得る。
上記添加剤中のメドウフォーム油またはホホバ油は、ディーゼル燃料の潤滑性を増強し得る。
【0039】
(実施例)
以下、実施例により、本発明の種々の局面の実施態様を具体的に説明する。これらの実施例は、特許請求の範囲を限定することを意味しない。
実施例1
ウシノケグサ抽出物とメドウフォーム油を含有する溶液を、995mLのAromatic 150、5mLのメドウフォーム油および5.1gのウシノケグサ抽出物(ヘキサン抽出)を混合することによって調製した。該溶液を、以下の実施例においては、“添加剤2”または“ウシノケグサ抽出物メドウフォーム油原溶液”または“抽出物添加剤”と称する。
下記の表2は、製造した処理混合物の目録である:

表2:処理混合物

【0040】
下記の表3は、上記ウシノケグサ/メドウフォーム添加剤(添加剤2または抽出物添加剤)により製造した上記処理物を使用しての各種汚染物の放出結果を示している。非添加処理B20バイオディーゼルのベースラインは、1日目で測定した。このベースラインを、添加処理サンプルにおける放出物低減を判定する参照として使用した。表3の秤量平均値は、低温スタート結果において1/7、高温スタート結果においては6/7の秤量係数を使用して算出した。表は、総炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)および粒状物(PM)についてのデータを示している。単位は、PM以外は、ppmである。粒状物の単位は、g/BHp-hr (ブレーキ馬力・時当りのグラム数)である。

表3















【0041】
下記の表4は、ベースラインB20データとの比較における各種処理物の放出物変化を示す。変化は、B20ベースライン試験における平均放出物と比較しての各処理物における放出物間の差異である。放出物変化表(表4)における最初の数値は、B20ベース燃料における平均放出物についての各処理物における放出物とベースライン放出物間の差(Δ)である。二番目の数値は、各処理物における放出物とベースラインB20放出物間のパーセント差(%Δ)である。

表4

【0042】
全ての処理物が規制汚染物全ての放出を低下させていた。純B20ベースの場合を上回るCO2放出の僅かな上昇はあったものの、ディーゼル排気ガスにおける二酸化炭素放出は、現在のところ、規制を受けていない。
本発明の各実施態様に従う添加剤による放出物低減は、処理物4、5および6において示されている。総炭化水素放出は、本発明の添加剤により、ベースラインB20と比較して、27〜20%低下した。CO放出は6.01〜8.03%、NOxは3.40〜4.73%、そして、粒状物は4.59〜8.16%、本発明の各実施態様に従う添加剤を含まないベースB20と比較して低下した。本発明の各実施態様に従う添加剤は、総炭化水素、一酸化炭素、NOxおよび粒状物の放出を、ベースB20燃料と比較して低下させるのに有効であった。
【0043】
上記の説明は、本発明の数種の方法および材料を開示している。本発明は、ベース燃料の選択、ベース配合物用に選定した成分、並びに燃料および添加剤混合物の配合の変更のような方法および材料における修正を受け易い。そのような修正は、当業者にとっては、本開示を検討し本明細書において開示された発明を実施することによって明白となるであろう。従って、本発明を本明細書に開示された特定の実施態様に限定するつもりはなく、本発明は、特許請求の範囲に具現されているような本発明の真の範囲および精神内に属する全ての修正および変更に及ぶものとする。本明細書に引用した文献は、全て、その全体を参考として本明細書に合体させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むことを特徴とする、バイオディーゼル燃料用の燃料添加剤:
点火促進剤を含む第1成分;および、
植物抽出物、植物抽出物の合成形、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分。
【請求項2】
前記点火促進剤が、過酸化物を含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項3】
前記過酸化物が、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-オレアルペルオキシド、大豆ヒドロペルオキシド、ジ-エチルペルオキシドおよびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる、請求項2記載の燃料添加剤。
【請求項4】
前記過酸化物が、ジ-tert-ブチルペルオキシドを含む、請求項2記載の燃料添加剤。
【請求項5】
第3成分をさらに含み、該第3成分が、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、およびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項6】
合成長鎖脂肪酸、合成長鎖脂肪酸エステル、または合成長鎖脂肪酸と合成長鎖脂肪酸エステルの双方を含む、請求項5記載の燃料添加剤。
【請求項7】
前記第3成分が、メドウフォーム油、ホホバ油、およびこれらの組合せからなる群から選ばれるオイルをさらに含む、請求項5記載の燃料添加剤。
【請求項8】
溶媒をさらに含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項9】
前記溶媒が、芳香族溶媒を含む、請求項8記載の燃料添加剤。
【請求項10】
硝酸アルキルをさらに含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項11】
前記硝酸アルキルが、硝酸2-エチルヘキシルを含む、請求項10記載の燃料添加剤。
【請求項12】
前記植物抽出物が、植物の緑色抽出物を含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項13】
前記緑色抽出物が、クロロフィルである、請求項12記載の燃料添加剤。
【請求項14】
前記植物抽出物が、マメ科植物の抽出物を含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項15】
前記第2成分が、ベータ-カロテン、アルファ-カロテン、カロテノイド、クロロフィル、色素体、イソミックステン、およびこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項16】
前記植物抽出物が、1種以上のクロロフィルを含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項17】
前記燃料添加剤が、約0.1〜約80のクロロフィルa対クロロフィルbの比を有する、請求項16記載の燃料添加剤。
【請求項18】
前記第2成分が、クロロフィルとカロテノイドを含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項19】
前記燃料添加剤が、約0.1〜約100のクロロフィル対カロテノイドの比を有する、請求項18記載の燃料添加剤。
【請求項20】
安定化用成分をさらに含む、請求項1記載の燃料添加剤。
【請求項21】
前記安定化用成分が、2,2,4-トリメチル-6-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、エトキシキノリン、2-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2.2'-メチレン-ビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、n-オクタデシル 3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジ-n-オクタデシル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N'-ジフェニルフェニレンジアミン、p-オクチルジフェニルアミン、p,p-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N-(p-ドデシル)フェニル-2-ナフチルアミン、ジ-1-ナフチルアミン、およびジ-2-ナフチルアミン、フェノタジン類、N-アルキルフェノチアジン類、イミノ(ビスベンジル)、6-(t-ブチル)フェノール、2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4-メチル-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4,4'-メチレンビス(-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール)、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン、およびフェニルナフチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項19記載の燃料添加剤。
【請求項23】
バイオディーゼルを含む燃料3.785リットル(1ガロン)当り、約0.32〜約799gの点火促進剤;約0.001〜約60gの植物抽出物、植物抽出物の合成形またはこれらの混合物を含むことを特徴とする燃料組成物。
【請求項24】
硝酸2-エチルヘキシルをさらに含む、請求項22記載の燃料組成物。
【請求項25】
前記硝酸2-エチルヘキシルの量が、約1ppm〜約5000ppmである、請求項23記載の燃料組成物。
【請求項26】
バイオディーゼル燃料を燃料添加剤と混合した燃料を燃焼させることを含み、前記燃料添加剤が下記を含むことを特徴とする、バイオディーゼル燃料の燃焼における汚染物放出の低減方法:
点火促進剤を含む第1成分;および、
植物抽出物、植物抽出物の合成形、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分。
【請求項27】
添加剤を、バイオディーゼル燃料を含む燃料に添加することを含み、該添加剤が下記を含むことを特徴とする、バイオディーゼル燃料を含む燃料の潤滑性の増大方法:
点火促進剤を含む第1成分;
植物抽出物、植物抽出物の合成形、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる第2成分;および、
メドウフォーム油、ホホバ油、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のオイル。

【公表番号】特表2009−524733(P2009−524733A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552465(P2008−552465)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002270
【国際公開番号】WO2007/089645
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508188536)オリックス エナジー インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】