説明

バイオフィルム除去用抗菌性組成物およびその使用

本発明は、(a)硫酸プロタミンと、(b)塩化ベンザルコニウムまたは銀含有粒子;および(a)メタ過ヨウ素酸ナトリウムと、(b)5−フルオロウラシルまたはクロルヘキシジンとを含む新規組成物、ならびにバイオフィルム形成細菌によるコロニー形成の影響を受けやすいデバイス、特に医療用デバイスの調製でのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれている、2009年1月23日出願の米国特許出願第61/146,852号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、バイオフィルムに包埋された微生物の成長および増殖を阻害する新規抗菌性組成物、ならびにその方法/使用に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオフィルムは、多種多様な基材に蓄積することができ、抗菌剤および洗浄剤に対して耐性を示すので、医学的および工業的に重要である。微生物が表面に付着し、付着を容易にする細胞外ポリマーを産生し、構造マトリックスを形成するときに、微生物バイオフィルムは発生する。したがって、表面への付着を阻害することは重要である。この表面は、不活性の非生物材料または生物組織であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】MakiおよびTambyah、Emerg.Infect.Dis.、7巻:1〜6頁、2001年
【非特許文献2】Tunnyら、Rev.Med.Microbiol、74巻:195〜205頁、1996年
【非特許文献3】Schierholzら、Biomaterials、18巻:839〜844頁、1997年
【非特許文献4】Mertz、Wounds、15巻:1〜9頁、2003年
【非特許文献5】Steedら、J.Am.Coll.Surg、183巻:61〜64頁、1996年
【非特許文献6】Travisら、Trends Microbiol.、3巻:405〜407頁、1995年
【非特許文献7】Falangaら、J Invest Dermatol.、1巻:125〜127頁、1994年
【非特許文献8】Devulapalleら、Carbohydr.Res.、339巻:1029〜1034頁、2004年
【非特許文献9】Brownら、J.Dent.Res.、75巻:672〜683頁、1996年
【非特許文献10】Amsterdam,D、1996年、In:V.Loman編、「Antibiotics in laboratory medicine」、52〜111頁、Williams and Wilkins,Baltimore,M.D.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオフィルム形成を長期に予防する方法が必要とされている。使用者または患者に対する毒性または他の副作用を低減するのに有効に使用される低量の組成物を可能にする組成物も必要とされている。生物医学装置でのバイオフィルム形成を低減するのに、医学的に許容でき、より低い濃度で有効であり、耐性がなく、かつ工業規模で製造することが比較的経済的である組成物も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態には、(a)カチオン性ペプチドと、(b)第四級アンモニウム化合物、銀含有粒子、または5−フルオロウラシルとを含む微生物バイオフィルム阻害用組成物が含まれる。
【0007】
カチオン性ペプチドとしては、オミガナン、プロタミン、セクロピンA、またはそれらの組合せが挙げられる。カチオン性ペプチドは、硫酸プロタミンなどのプロタミンの低分子量誘導体または塩とすることができる。硫酸プロタミンを含む組成物は、約100μg/ml〜約1000μg/mlの硫酸プロタミンを含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0008】
第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウムなどのベンザルコニウムの誘導体または塩とすることができる。組成物中に含まれる塩化ベンザルコニウムの量は、約20μg/ml〜約200μg/mlとすることができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0009】
組成物中に含まれる5−フルオロウラシルの量は、約50μg/ml〜約5000μg/mlの5−フルオロウラシルを含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0010】
銀含有粒子としては、銀ナノ粒子またはスルファジアジン銀が挙げられる。組成物中に含まれる銀の量は、約1μg/ml〜約1000μg/mlの銀を含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0011】
本発明の一実施形態には、(a)メタ過ヨウ素酸塩と、(b)5−フルオロウラシル、銀含有粒子、クロルヘキシジン、またはトリクロサンとを含む微生物バイオフィルム阻害用組成物が含まれる。
【0012】
組成物中に含まれるクロルヘキシジンの量は、約1μg/ml〜約100μg/mlのクロルヘキシジンを含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0013】
メタ過ヨウ素酸塩は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムまたはカリウムとすることができる。組成物中に含まれるメタ過ヨウ素酸ナトリウムの量は、約20μg/ml〜約2000μg/mlのメタ過ヨウ素酸塩を含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0014】
本発明による組成物は、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、フェカリス菌(E.faecalis)、大腸菌(E.coli)、ミラビリス菌(P.mirabilis)、緑膿菌(P.aeruginosa)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑色連鎖球菌(S.viridans)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、腐性ブドウ球菌(S.saprophyticus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マイコバクテリウム属菌種(Mycobacterium spp.)、シトロバクター・フレウンディイ(Citrobacter freundii)、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Vancomycin resistant Enterococcus faecalis)(VRE)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アクチノミセス・ネスルンディイ(Actinomyces naeslundii)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、またはそれらの組合せを含めて微生物種によって生成されたバイオフィルムに対して有効であり得る。本発明のさらなる実施形態において、組成物は、グラム陰性菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効である。
【0015】
本発明の別の一実施形態において、組成物は、グラム陽性菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効であり得る。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態において、組成物は、C.アルビカンス(C.albicans)を含めて真菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効であり得る。
【0017】
別の実施形態において、方法は、歯科器械、医療器械、医療装置、表面(例えば、テーブル上面、調理台、浴槽、タイルなど)、チュービングなど物品を消毒するのに本発明の組成物を投与することを含む。本発明の組成物は、本発明の化合物および普通の家庭用消毒剤を含むことができる。
【0018】
本発明の方法は、表面をすすぎ、コーティングし、または少なくとも1つの表面を有する物体の表面を含浸することを含む。物体としては、ディスポーザブルまたは永久もしくは留置カテーテル、長期型泌尿器用デバイス、組織接着性泌尿器用デバイス、創部用ドレーンチューブ、脳室カテーテル、気管内チューブ、呼吸管、栄養管、乳製品用ライン、および飲料水用ラインを含めて医療用デバイスを挙げることができる。さらに、本発明の方法は、食品および飲料工業、製紙工場、冷却塔、ならびにガスおよび石油工業などの工業におけるパイプラインを清浄することを含む。
【0019】
さらに別の実施形態において、方法は、本発明の組成物を投与することによって創傷を治療することを含み、創傷としては、皮下膿瘍、手術創、縫合された裂傷、汚染された裂傷、中間層熱傷や全層性熱傷などの熱傷創、褥瘡性潰瘍、うっ血性潰瘍、下腿潰瘍、足部潰瘍、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、虚血性潰瘍、および圧迫潰瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施形態は、非吸収性ガーゼ/海綿被覆材、親水性創傷被覆材、密封性創傷被覆材、ヒドロゲル創傷および熱傷被覆材などの創傷ケアデバイスにおいて組成物をコーティング処理または含浸することを含む方法を含む。本発明は、創傷ケアデバイスとして本発明の組成物が入れてあるスプレー・アプリケーターの使用も含む。
【0021】
本発明の方法は、本発明の組成物を投与することによって微生物感染患者を治療することも含み、組成物を物体の表面に被覆または含浸する。物体は、非吸収性ガーゼ/海綿被覆材、親水性創傷被覆材、密封性創傷被覆材、ヒドロゲル創傷および熱傷被覆材などの創傷ケアデバイスとすることができる。本発明は、創傷ケアデバイスとして本発明の組成物が入れてあるスプレー・アプリケーターの使用も含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】対照(活性成分を含まない溶液)、12μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、6μg/mlの塩化ベンザルコニウム(BZK)、および12μg/mlの硫酸プロタミンと6μg/mlの塩化ベンザルコニウムとの組合せ(PS+BZK)が大腸菌(Escherichia coli)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図2】対照(活性成分を含まない溶液)、25μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlの塩化ベンザルコニウム(BZK)、および25μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlの塩化ベンザルコニウムとの組合せ(PS+BZK)が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図3】対照(活性成分を含まない溶液)、1.5μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、0.8μg/mlの塩化ベンザルコニウム(BZK)、および1.5μg/mlの硫酸プロタミンと0.8μg/mlの塩化ベンザルコニウムとの組合せ(PS+BZK)が表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図4】対照(活性成分を含まない溶液)、250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、6.25μg/mlの5−フルオロウラシル(FU)、および250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと6.25μg/mlの5−フルオロウラシルとの組合せ(SMP+FU)が大腸菌(Escherichia coli)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図5】対照(活性成分を含まない溶液)、250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、3.75μg/mlの5−フルオロウラシル(FU)、および250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと3.75μg/mlの5−フルオロウラシルとの組合せ(SMP+FU)が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図6】対照(活性成分を含まない溶液)、250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、20μg/mlの5−フルオロウラシル(FU)、および250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと20μg/mlの5−フルオロウラシルとの組合せ(SMP+FU)が表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図7】対照(活性成分を含まない溶液)、250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、1μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと1μg/mlのクロルヘキシジンとの組合せ(SMP+CHX)が大腸菌(Escherichia coli)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図8】対照(活性成分を含まない溶液)、125μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、6μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および125μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと6μg/mlのクロルヘキシジンとの組合せ(SMP+CHX)が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【図9】対照(活性成分を含まない溶液)、250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)、0.5μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および250μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0.5μg/mlのクロルヘキシジンとの組合せ(SMP+CHX)が表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
抗菌性組成物は、商業および民生用途が増加しつつある。バイオフィルムに包埋された微生物の成長および増殖を阻害する組成物など有効な抗菌性組成物は、極めて多くの用途で有用である。このような抗菌性組成物は、単独で使用することも、消耗品に組み込むことも、または細菌を含まないことが望ましい表面に組み込むこともできる。
【0024】
定義
「抗菌性」という用語は、細菌および酵母を含むが、これらに限定されるものではない微生物を殺し、またはそれらの増殖を遅延/停止させる化合物または組成物を指す。
【0025】
「バイオフィルムに包埋された微生物」という用語は、コロニー形成および増殖時に表面上にバイオフィルムを形成する任意の微生物を指し、グラム陽性細菌(例えば、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis))、グラム陰性細菌(例えば、緑膿菌(P.aeruginosa))、および/または真菌(例えば、C.アルビカンス(C.albicans))を含むが、これらに限定されない。
【0026】
「バイオフィルム形成」という用語は、微生物の表面への付着、およびその後の多層細胞の発達を指す。
【0027】
「阻害」または「阻害する」という用語は、バイオフィルム関連微生物形成および/または増殖の低下を指す。微生物には、細菌(例えば、連鎖球菌)または真菌(例えば、カンジダ属菌種(Candida spp.))を含めることができる。
【0028】
「剥離を調節する」は、バイオフィルムからの細菌または真菌細胞の細菌または真菌バイオフィルムの剥離または放出を増減することを指す。さらに、「剥離を調節する」は、細菌または真菌がバイオフィルムとして付着する能力の変化も包含する。
【0029】
治療の目的において「哺乳動物」という用語は、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジなど、ヒト、家畜、農場動物、スポーツ用動物および動物園の動物、または愛玩動物を含めて哺乳動物と分類される任意の動物を指す。
【0030】
「治療有効量」という用語は、対象または哺乳動物において疾患または障害を「軽減」または「治療」するのに有効な量の本発明の組成物を指す。本明細書では「治療有効量」は、静菌作用または殺菌作用を示す量、例えばそれぞれ、バイオフィルム関連細菌の増殖を阻害するのに有効な量またはバイオフィルム関連細菌を殺すのに有効な量も包含する。
【0031】
本明細書では「治療有効量」は、静真菌作用または殺真菌作用を示す量、例えばそれぞれ、バイオフィルム関連真菌のさらなる増殖を阻害するのに有効な量またはバイオフィルム関連真菌を殺すのに有効な量も包含する。本発明の方法での使用に適した組成物を抗菌性化合物と同時に投与することによって、その治療用抗菌性化合物は、治療用抗菌性化合物を単一活性成分として投与するとき必要とされる投与量より少ない投与量で投与することができる。それに応じて、より少ない投与量の活性成分を投与することによって、その関連副作用が低減されるはずである。
【0032】
本明細書では「予防有効量」は、感染疾患およびその症状を予防またそれらから保護するのに有効な量、ならびに感染疾患、その関連疾患、およびそれらの症状を軽減または治療するのに有効な量を包含する。
【0033】
「治療」、「治療する」、または「軽減する」という用語は、障害の病態を変更または抑制する意図で行われる処置を指す。
【0034】
「予防する」または「予防」という用語は、疾患、病態、および/または症状を予防することを指す。
【0035】
「齲蝕」という用語は、細菌による発酵性糖の分解によって産生された酸により歯牙組織が局所的に破壊されることを指す。齲蝕の主な原因菌は、S.ミュータンス(S.mutans)である。歯牙表面において、S.ミュータンス(S.mutans)によって発酵性糖が分解されると、酸が産生され、口腔組織、さらに詳細にはエナメル質および象牙質が破壊される。
【0036】
「歯垢」という用語は、細菌および唾液由来のポリマーマトリックスに包埋された、歯牙表面で見られる多様な微生物群集(主に細菌)の一般用語である。さらに、「歯垢関連S.ミュータンス(S.mutans)」という用語は、歯垢の構成要素であるS.ミュータンス(S.mutans)を指す。
【0037】
「心内膜炎」という用語は、1つもしくは複数の心臓弁、壁心内膜、または中隔欠損を含むことがある、心臓の心内膜表面の感染を指す。
【0038】
「歯肉炎」という用語は、結合組織の喪失を伴わない歯肉組織の炎症を指す。
【0039】
「口腔疾患」という用語は、口腔に影響を及ぼす疾患および障害、または関連している医学的病態を指す。口腔疾患としては、齲蝕;歯周病(例えば、歯肉炎、成人性歯周炎、早期発症型歯周炎など);粘膜感染症(例えば、口腔カンジダ症、単純ヘルペスウイルス感染症、再発性アフタ性潰瘍など);口腔および咽頭がん;ならびに前がん病変が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
「歯周病」という用語は、深い歯肉溝を生じ、おそらく歯周ポケットを形成し、歯槽骨を喪失する、歯牙の歯肉組織および/または歯周病歯根膜の炎症過程を指す。
【0041】
「歯周炎」という用語は、付着が損なわれる、歯牙の支持または周辺構造の結合組織の炎症および喪失を指す。
【0042】
「慢性創傷」という用語は、秩序ある時宜を得た順序の修復を経て進行することができない創傷、または治療に応答しない創傷、および/あるいは治療の要求が患者の身体的健康、耐性、またはスタミナを超えていることを指す。最初は急性創傷と考えられる多くの創傷は、まだよく理解されていない因子のため最終的には慢性創傷になる。一つの重要な因子は、創傷内の浮遊性細菌のバイオフィルム形成への移行である。
【0043】
創傷治療に関連して、「バイオフィルム破壊」または「バイオフィルム再構成の阻害」は、慢性もしくは急性創傷からのバイオフィルムの排除、またはデブリードマン後に残留する残遺物からのバイオフィルム塊の再構成を阻害し、それによって創傷治癒を促進するためのバイオフィルムの排除を指す。
【0044】
組成物
本発明の実施形態には、微生物バイオフィルムを阻害または破壊する組成物であって、(a)カチオン性ペプチドと、(b)第四級アンモニウム化合物、銀含有粒子、または抗悪性腫瘍剤とを含む組成物が含まれる。カチオン性ペプチドとしては、オミガナン、プロタミン、セクロピンA、またはそれらの組合せが挙げられる。カチオン性ペプチドは、硫酸プロタミンなどのプロタミンの低分子量誘導体または塩とすることもできる。
【0045】
第四級アンモニウム化合物としては、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、サッカリン酸ベンザルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セテアルコニウム、水素化塩化タローアルコニウム(tallowalkonium chloride)、塩化タローアルコニウム(tallowalkonium chloride)、サッカリン酸ジデシルジメチルアンモニウム、サッカリン酸ヘキサデシルピリジニウム、アセスルファミン酸ベンザルコニウム、アセスルファミン酸ジデシルジメチルアンモニウム、アセスルファミン酸ヘキサデシルピリジニウム、アセスルファミン酸3−ヒドロキシ−1−オクチルオキシメチルピリジニウム、サッカリン酸3−ヒドロキシ−1−オクチルオキシメチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の一実施形態において、第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウムを含む。
【0046】
銀含有粒子は、銀ナノ粒子またはスルファジアジン銀とすることができる。
【0047】
本発明の実施形態には、微生物バイオフィルムを阻害または分散する組成物であって、(a)抗バイオフィルム化合物と、(b)抗悪性腫瘍剤、銀含有粒子、ビスグアニド、またはトリクロサンとを含む組成物も含まれる。抗バイオフィルム化合物としては、硫酸プロタミン、メタ過ヨウ素酸塩、N-アセチルシステイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、オボトランスフェリン、ラクトフェリン、タンパク質分解および多糖分解酵素、RNAIII阻害ペプチド(RNAIII inhibitory peptide)(RIP)、またはガリウムが挙げられる。本発明の一実施形態において、抗バイオフィルム化合物はメタ過ヨウ素酸ナトリウムまたはカリウムを含む。
【0048】
抗悪性腫瘍剤は、マイトマイシンc、5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、ドキソルビシン、またはそれらの組合せとすることができる。好ましい実施形態において、抗悪性腫瘍剤は5−フルオロウラシルである。
【0049】
ビスグアニド化合物は、クロルヘキシジン(その塩基または塩)、アレキシジン、またはポリヘキサメチレンビグアニドとすることができる。
【0050】
塩化ベンザルコニウムを含む組成物は、例えば20μg/ml〜200μg/mlの塩化ベンザルコニウムを含む。この記載範囲の高い方の端点を使用して、濃縮された生成物を調製することができ、これを使用前に希釈することになる。
【0051】
組成物中に含まれる5−フルオロウラシルの量は、約50μg/ml〜約5000μg/mlの5−フルオロウラシルを含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0052】
組成物中に含まれるクロルヘキシジンの量は、約1μg/ml〜約100μg/mlのクロルヘキシジンを含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0053】
銀含有粒子としては、銀ナノ粒子またはスルファジアジン銀を挙げることができる。組成物中に含まれる銀の量は、約1μg/ml〜約1000μg/mlの銀を含むことができる。一実施形態において、組成物を濃縮し、次いで使用前に希釈することができる。
【0054】
メタ過ヨウ素酸塩は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムまたはカリウムとすることができる。組成物中に含まれるメタ過ヨウ素酸ナトリウムの量は、約20μg/mlから約2000μg/mlのメタ過ヨウ素酸塩を含むことができる。この記載範囲の高い方の端点を使用して、濃縮された生成物を調製することができ、これを使用前に希釈することになる。
【0055】
本発明の一実施形態において、本発明による組成物は、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、フェカリス菌(E.faecalis)、大腸菌(E.coli)、ミラビリス菌(P.mirabilis)、緑膿菌(P.aeruginosa)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑色連鎖球菌(S.viridans)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、腐性ブドウ球菌(S.saprophyticus)、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)、マイコバクテリウム属菌種(Mycobacterium spp.)、C.フレウンディイ(C.freundii)、A.ヒドロフィラ(A.hydrophila)、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)、A.ネスルンディイ(A.naeslundii)、P.スチュアルティイ(P.stuartii)、S.マルセッセンス(S.marcescens)、またはそれらの組合せなどの微生物種によって生成されたバイオフィルムに対して有効であり得る。本発明のさらなる実施形態において、組成物は、グラム陰性菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効である。
【0056】
本発明の別の実施形態において、組成物は、グラム陽性菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効である。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態において、組成物は、C.アルビカンス(C.albicans)を含めて真菌種によって生成されたバイオフィルムに対して有効である。
【0058】
本明細書に記載される組成物は、組み合わされると抗バイオフィルム活性が増強される。抗バイオフィルム活性の増強は、これら化合物をそれぞれ、いずれかの化合物を単独で使用するとすれば必要とされるはずの量より少ない少量使用して、有効な抗菌性組成物を生成できることによって証明される。活性化合物または成分が低濃度であり、その有効性が増大することによって、本発明は製造するのに非常に望ましく、かつ比較的経済的になる。したがって、抗生物質に対する典型的な菌耐性が生じない可能性がある。
【0059】
より高い濃度のこれら化合物を、ある種の用途に望ましい場合に使用することができ、標的とする細菌および処理対象のデバイスによって決まることになる。より低い濃度の化合物も、ある種の状況で使用することができる。
【0060】
本明細書で論じられる活性成分は、本発明の組成物のうちの100%であってもよいが、組成物には、使用される本発明の組成物の全重量に対して少なくとも約1重量%〜約50重量%の活性成分を含有させることができる。一実施形態において、組成物は少なくとも約0.5重量%〜約25重量%の活性成分を含む。
【0061】
本発明の組成物は、いくつもの周知活性成分および基材を含むことができる。組成物は、水やエタノールなどの好適な溶媒;抗細菌剤や抗真菌剤などの抗菌剤;結合、接着、カップリング剤もしくは架橋剤;またはpH調整剤などの材料をさらに含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
組成物の他の可能な成分としては、緩衝溶液、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、水、ポリビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン(例えば、シリコーンエラストマーおよびシリコーン接着剤)、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ−(マレイン酸モノエステル)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アギニックアシッド(aginic acid)またはペクチミックアシッド(pectimic acid))、ポリカルボン酸無水物(例えば、ポリマレイン酸無水物、ポリメタクリル酸無水物、またはポリアクリル酸無水物)、ポリアミン、ポリアミンイオン(例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリリシン、ポリ-(ジアルキルアミンオエチルメタクリラート)、ポリ−(ジアルキルアミノメチルスチレン)またはポリ−(ビニルピリジン))、ポリアンモニウムイオン(例えば、ポリ−(2−メタクリルオキシエチルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ−(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ-(N.N.-アルキリピリジニウムイオン)またはポリ−(ジアルキルオクタメチレンアンモニウムイオン)、およびポリスルホナート(例えば、ポリ−(ビニルスルホナート)またはポリ−(スチレンスルホナート))、コロジオン、ナイロン、ゴム、プラスチック、ポリエステル、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタラート)(ゼラチン、コラーゲン、またはアルブミンで場合によってはシールされたもの)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、およびそれらの誘導体、エラストマー、シアノアクリラート、メタクリラート、多孔質バリアフィルム付き紙、接着剤、例えばホットメルト接着剤、溶剤型接着剤、および接着剤ヒドロゲル、布地、ならびに架橋および非架橋ヒドロゲル、ならびに活性成分の分散および医療用デバイスの少なくとも1つの表面へのバイオフィルム浸透性コーティングの付着を促進する他の何らかのポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の例示されたポリマーの構成要素であるモノマーを含有する線状コポリマー、架橋コポリマー、グラフトポリマー、およびブロックポリマーを使用してもよい。
【0063】
別の実施形態において、組成物は、1つまたは複数の消毒剤をさらに含むことができる。消毒剤は、アルコール(エタノールまたはイソプロパノールなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、クロラミン、過酸化水素、ヨウ素、過酢酸、過ギ酸、過マンガン酸カリウム、およびペルオキシ一硫酸カリウムなど)、フェノール類(フェノール、O−フェニルフェノール、クロロキシレノール、ヘキサクロロフェン、およびチモールなど)を含むことができる。消毒剤は、スプレー剤または液剤とすることができる。消毒剤は、濃縮されているものでも、すぐに使えるものでもよい。消毒剤は、商業用途のものでも、家庭用途のものでもよい。本発明の組成物を家庭用消毒剤、洗濯洗剤、および家庭用清浄溶液に組み込むこともできる。
【0064】
表面上のバイオフィルム
バイオフィルムは、様々な種類の医療用デバイス、チュービング、パイプライン、調理台/テーブル上面、フィルター、水ライン、およびタイルなどの様々な物体の表面に蓄積する。
【0065】
留置している医療用デバイス上のバイオフィルムは、グラム陽性またはグラム陰性の細菌または酵母から構成されることがある。これらのデバイスからよく単離される細菌としては、(a)グラム陽性エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Vancomycin resistant Enterococcus faecalis)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium);(b)グラム陰性大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);(c)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの真菌種が挙げられる。尿道カテーテルのバイオフィルムからよく単離される有機体は、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、フェカリス菌(E.faecalis)、大腸菌(E.coli)、ミラビリス属(mirabilis)、緑膿菌(P.aeruginosa)、および肺炎桿菌(K.pneumoniae)である。血管カテーテルの場合は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)と表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)が感染性有機体全体のほぼ70〜80%を占め、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)は最もよく見られる有機体である。C.アルビカンス(C.albicans)は、カテーテル感染の約10〜15%を占める。尿路感染症例のうち、グラム陰性桿菌はほぼ60〜70%、腸球菌は約25%、およびC.アルビカンス(C.albicans)は約10%を占める。カテーテル関連尿路感染症は、非常によく見られる院内感染である(米国の病院において毎年約100万人の患者)。これは、院内感染の2番目に最も多い原因である(MakiおよびTambyah、Emerg.Infect.Dis.、7巻:1〜6頁、2001年)。
【0066】
本発明の組成物は、チュービングなど、微生物によってバイオフィルムが形成される表面を除染し、そこでの増殖を阻害または防止するのに有用であり得る。本発明の方法は、表面と本発明の組成物を接触させることによって、表面をすすぎまたは除染することを含む。さらに、本発明の方法は、本発明の組成物を表面に組み込むことによって、バイオフィルムの成長を阻害し、またはバイオフィルムの成長を防止することを含む。本発明の組成物は、物体の表面をコーティングまたは含浸することによって表面に組み込むことができる。
【0067】
本発明の組成物は、チュービングまたは医療用デバイス、特に挿入可能な医療用デバイスの表面をコーティングし、含浸し、フラッシングし、またはすすぐことができる。チュービングとしては、ディスポーザブル、永久、および留置カテーテル、長期型泌尿器用デバイス、組織接着性泌尿器用デバイス、創部用ドレーンチューブ、脳室カテーテル、気管内チューブ、呼吸管、栄養管、乳製品用ライン、石油およびガス用パイプラインおよび飲料水用ラインが挙げられるが、これらに限定されるものではない。何らかのチュービングも、医療用デバイスとみなすことができる。挿入可能な医療用デバイスとしては、内視鏡検査などの侵襲性技法を用いることなく検査することができるカテーテルが挙げられる。医療用デバイスは、当業者に公知である適切な任意の金属性材料または非金属性材料で形成されているものでもよい。金属性材料の例としては、チバニウム、チタン、およびステンレス鋼、およびそれらの誘導体または組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非金属性材料の例としては、ゴム、プラスチック、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタラート)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、エラストマー、およびゼラチン、コラーゲン、またはアルブミンでシールされたDacron(登録商標)、ならびにそれらの誘導体または組合せなどの熱可塑性またはポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。医療用デバイスは、本発明の組成物を塗布するための少なくとも1つの表面を含む。好ましくは、本発明の組成物は医療用デバイス全体に塗布される。カテーテルなどのデバイスを形成するのに使用されるポリマーに、含浸または薬物−ポリマー接合により組成物を組み込むこともできる。
【0068】
さらに、本発明の組成物を使用して、バイオフィルムが成長している表面と接触させることによって、食品および飲料工業、製紙工場、冷却塔、ならびにガスおよび石油工業などの工業におけるパイプラインを清浄することもできる。
【0069】
本発明の組成物を、真空系統および真空フィルター、塗料および壁カバーリング、加湿器および加湿器フィルター、ならびに真空掃除機、玩具に組み込むこともでき、また洗濯機の内側および外側、皿洗い機、動物用水飲み皿、浴室用タイルおよび備品、シーラントおよびグラウト、タオル、Tupperware(登録商標)、皿、まな板、皿乾燥用トレー、浴槽(渦流浴槽およびジャクージ浴槽を含む)、養魚池、スイミングプール、小鳥用水盤、園芸用ホース、プランター、および温水浴槽を含めて、種々の家庭用品用プラスチックに組み込むこともできる。
【0070】
抗菌性化合物の工業用途としては、乳製品用ラインで、このようなラインのフラッシング液もしくは洗浄液としての使用、または例えばコーティングとしてライン内に組み込まれての使用;食品および飲料製造または調合における液体分配ラインで、例えば清涼飲料製造における高糖質またはシロップ分配用フィーダラインのコーティングとしての使用;(生物付着のため)パルプおよび製紙工場での使用;生産ライン設備から最終消耗品に至るまでの化粧品の製造および格納において、化粧品に組み込まれての使用、または化粧品を入れるビンにコーティングされての使用;水処理施設での使用;採鉱において使用されるリーチング工程での使用;石油およびガスのパイプラインで、油田の酸性化において、また冷却塔で、有機体によって引き起こされるまたは加速される腐食を防止するための使用が挙げられる。
【0071】
抗菌剤の民生および小型商業用途としては、一般家庭用消毒剤;洗濯洗剤;清浄用必需品;リーチング工程または採鉱に関与する設備;創傷ケア;真空系統;HVAC系統;真空掃除機用袋;塗料カバーリング;壁カバーリング;窓枠;ドア;ドアフレーム;冷却塔;加湿器;真空掃除機;真空フィルター、加湿器フィルター、温水浴槽フィルター、またはスイミングプールフィルターなどのフィルター;玩具;化粧品容器;プラスチックビン;水差し;蛇口および水吐出し口への組込み;洗濯機および皿洗い機の内側および外側;動物用水飲み皿;浴室用タイルおよび備品;シンク;シャワー;シャワーヘッド;便器;便器の蓋;便座;シーラントおよびグラウト;タオル;Tupperware(登録商標);皿;カップ;フォーク、スプーン、ナイフ、ヘラなどの台所用品;ボウル;食品貯蔵容器;飲料貯蔵容器;まな板;皿乾燥用トレー;ごみ袋;浴槽(渦流浴槽およびジャクージ浴槽を含む);シンク;シャワー;養魚池;スイミングプール;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー;池のライナー;小鳥用水盤;園芸用ホース;散水ライン;プランター;ならびに温水浴槽を含めて、種々の家庭用品用プラスチックへの組込みが挙げられる。別の態様において、本発明は、耐微生物性であることが望ましい物体をコーティングするのに適した組成物、例えば塗料、壁カバーリング、または保護プラスチックコーティングを提供する。物体は、家庭用製品、工業用製品、医療用製品または医療用デバイス、衣料品またはテキスタイル、建築用製品など、耐微生物性であることが望ましいものであればいずれの物体でもよい。
【0072】
一実施形態には、微生物バイオフィルムを低減、阻害、または防止する方法であって、本発明の組成物と消毒剤との組合せを表面と接触させることによって、前記表面を消毒、清浄、またはすすぐことを含む方法が含まれる。本発明の組成物と消毒剤との組合せは、親水性ポリマーも含むことができる。好ましくは、親水性ポリマーは表面改質性を有する含窒素ポリマーである。本方法は、表面上の沈着物を低減、阻害、または防止することもできる。沈着物は、水垢、石鹸かす、および有機物で覆われているまたは凝集している他の沈着物とすることができる。表面は、硬質の表面、好ましくはシリコーン表面、より好ましくはガラスもしくはセラミック表面または金属表面とすることができる。
【0073】
本発明の組成物を物体の表面に組み込む方法は、薬物ポリマー結合体を浸漬またはフラッシング、コーティング、および含浸することを含む(Tunnyら、Rev.Med.Microbiol、74巻:195〜205頁、1996年)。臨床現場では、好適なカテーテルを、留置する直前に浸漬処理することができ、これによってある種の状況で臨床医に柔軟性および制御がもたらされる。
【0074】
本発明の組成物を医療用デバイスのポリマーマトリックスにポリマー合成段階またはデバイス製造段階で直接組み込むことも可能である(Schierholzら、Biomaterials、18巻:839〜844頁、1997年)。
【0075】
好ましい実施形態において、医療用デバイスなどの物体を組成物に少なくとも5分間浸す。あるいは、物体を組成物でフラッシングしてもよい。物体がチュービング(例えば、歯科用ユニットの水ライン、乳製品用ライン、食品および飲料加工ラインなど)であるとき、本発明の組成物をチュービングに注ぎ込み、チュービングの両端を組成物がチュービングの内腔内に保持されるように留めることができる。次いで、物体の少なくとも1つの表面から微生物のすべてを実質的に除去するのに十分な時間、通常少なくとも約1分から約48時間、チュービングを組成物で充填したままにしておく。あるいは、バイオフィルムに包埋されたすべての微生物の実質的な増殖を防止するのに十分な時間、本発明の組成物をチュービングの内腔に注ぎ込むことによって、チュービングをフラッシングしてもよい。このようなフラッシングは、1回しか必要とされないこともあり、またはチュービングの使用期間にわたって一定期間ごとに必要とされることもある。組成物が医療用デバイスと接触している時間を低減するため、所望または必要に応じて組成物中の活性成分の濃度は異なることがある。
【0076】
別の態様において、本発明の方法は、医療用デバイスをコーティングすることを含む。概して、医療用デバイスをコーティングすることは、医療用デバイスの少なくとも1つの表面に、医療用デバイスの少なくとも1つの表面上でのバイオフィルム微生物の成長、増殖、またはコロニー形成を実質的に低減するのに十分な量の組成物コーティングを塗布することを含む。
【0077】
特定の一実施形態において、医療用デバイスの少なくとも1つの表面と本発明の組成物を、本発明の組成物が医療用デバイスの少なくとも1つの表面を覆う条件下で接触させる。「接触させる」は、含浸する、配合する、混合する、統合する、コーティングする、噴霧する、および浸漬することを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0078】
医療用デバイスをコーティングする別の実施形態において、活性成分および基材を室温で組み合わせ、本発明の組成物を、活性剤が組成物中に均等に分散されるのに十分な時間混合した後、組成物をデバイスの表面に塗布すると、組成物コーティングが形成される。医療用デバイスと本発明の組成物を、組成物がデバイスの少なくとも1つの表面に付着するのに十分な時間接触させることができる。本発明の組成物がデバイスの表面に塗布された後、乾燥させておく。
【0079】
組成物の1つの層またはコーティングが、所望の組成物コーティングを形成すると考えられるが、複数の層またはコーティングを塗布することができる。上記のステップを繰り返すことによって、本発明の組成物の複数の層を医療用デバイスの少なくとも1つの表面に塗布することができる。例えば、医療用デバイスと本発明の組成物を3回接触させ、組成物を医療用デバイスの少なくとも1つの表面上で乾燥させておいた後、医療用デバイスとその後の各層用の組成物を接触させる。言い換えれば、医療用デバイスには、組成物の3つのコートまたは層が医療用デバイスの少なくとも1つの表面上に設けられている。さらに、複数のコーティングまたは層も可能である。
【0080】
別の実施形態において、医療用デバイスを本発明の組成物でコーティングする方法は、医療用デバイスの形成時に、組成物を医療用デバイス形成材料に組み込むことを含む。例えば、組成物を医療用デバイス形成材料、例えばシリコーン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))、ポリエチレンテレフタラート、および/またはポリプロピレンと組み合わせ、医療用デバイス形成材料と共に押し出し、それによって組成物を医療用デバイス形成材料に組み込むことができる。この実施形態において、組成物をセプタムまたは接着剤に組み込むことができ、これは医療用デバイス挿入または移植部位に留置される。
【0081】
本発明の組成物を使用してコーティングすることができるデバイスの例としては、尿道カテーテル、粘膜摘出カテーテル、吸引カテーテル、臍カニューレ、コンタクトレンズ、子宮内避妊器具、膣内および腸内器具、気管内チューブ、気管支鏡、義歯および歯科矯正器具、手術器械、歯科用器械、チュービング、歯科用水ライン、歯科用ドレーンチューブ、布地、紙、インジケータストリップ(例えば、紙製インジケータストリップまたはプラスチック製インジケータストリップ)、接着剤(例えば、ヒドロゲル接着剤、ホットメルト接着剤、または溶剤型接着剤)、包帯、組織被覆材または治癒用デバイス、および閉塞パッチ、ならびに医療分野で使用される他の何らかの表面デバイスなど、チュービングおよび他の表面医療用デバイスが挙げられる。デバイスとしては、様々なタイプの電極、外部人工器官、固定テープ、圧迫包帯、およびモニターを挙げることができる。医療用デバイスには、挿入または移植部位付近の皮膚などの挿入または移植部位に留置することができ、バイオフィルムに包埋された微生物によるコロニー形成の影響を受けやすい少なくとも1つの表面を含む任意のデバイスも含まれる。特定の一実施形態において、本発明の組成物はテープなどの接着剤に統合され、それによって接着剤の少なくとも1つの表面上で、バイオフィルムに包埋された微生物の成長または増殖を防止することができる接着剤が提供される。本発明の医療用デバイスは、手術室、救急室、病室、診察室、および浴室における設備の表面を含む。
【0082】
別の態様において、本発明は、バイオフィルム微生物を医療用デバイスの少なくとも1つの表面から低減させる方法を提供する。特定の一実施形態において、バイオフィルム形成を医療用デバイスの少なくとも1つの表面から低減させる方法は、医療用デバイスと本発明の組成物を接触させることを含む。「接触させる」は、浸漬する、すすぐ、フラッシングする、浸す、および洗浄することを包含するが、これらに限定されるものではない。医療用デバイスと本発明の組成物を、医療用デバイスの少なくとも1つの表面からバイオフィルムを実質的に低減させるのに十分な時間接触させるべきである。特定の一実施形態において、医療用デバイスを組成物に少なくとも5分間浸す。あるいは、医療用デバイスを組成物でフラッシングしてもよい。歯科用ドレーンチュービング(歯科用水ライン)などのチュービングの例では、本発明の組成物を歯科用ドレーンチュービングに注ぎ込み、チュービングの両端を組成物がチュービングの内腔内に保持されるように留めることができる。次いで、医療用デバイスの少なくとも1つの表面から微生物のすべてを実質的に低減または除去するのに十分な時間、通常少なくとも約1分から約48時間、チュービングを組成物で充填したままにしておく。あるいは、バイオフィルムの成長をすべて実質的に低減または除去するのに十分な時間、組成物をチュービングの内腔に注ぎ込むことによって、チュービングをフラッシングしてもよい。
【0083】
組成物が医療用デバイスと接触している時間を低減するため、所望または必要に応じて本発明の組成物中の活性成分濃度は異なることがある。
【0084】
本発明の実施形態において、本発明の組成物を形成するステップは、医療用デバイスの表面と組成物との反応性を高めるために、有機溶媒、医療用デバイス材料浸透剤、またはアルカリ化剤を組成物に添加する1つまたは複数のステップも含むことができる。医療用デバイスをコーティングする一実施形態において、有機溶媒、医療用デバイス材料浸透剤、および/またはアルカリ化剤は、本発明の組成物の医療用デバイスの少なくとも1つの表面への付着を容易にすることが好ましい。
【0085】
一実施形態において、デバイスを組成物に約35℃から約65℃の温度で約30分間から約120分間浸すことによって、デバイスを本発明の組成物と接触している状態で配置する。デバイスを組成物に約45℃の温度で約120分間浸すことによって、デバイスを本発明の組成物と接触している状態で配置することもできる。次いで、デバイスを組成物から取り出し、デバイスの表面上の組成物を乾燥させておく。医療用デバイスを、組成物が乾燥するのに十分な時間、オーブンまたは他の加熱された環境に配置することができる。
【0086】
別の実施形態において、医療用デバイスを本発明の組成物でコーティングする方法は、活性成分を有機溶媒に溶解し、医療用デバイス材料浸透剤を活性成分および有機溶媒に組み合わせ、アルカリ化剤を組み合わせて、医療用デバイスの表面の反応性を改善することによって、医療用デバイスの少なくとも1つの表面上でのバイオフィルム微生物の成長、増殖、またはコロニー形成を実質的に低減するのに有効な濃度のコーティングを形成することを含む。次いで、組成物を約35℃〜約65℃の温度に加熱して、デバイスの少なくとも1つの表面への組成物の付着を増強する。例えば、本発明の組成物のコーティングを医療用デバイスの少なくとも1つの表面に、組成物コーティングが医療用デバイスの少なくとも1つの表面に付着するのに十分な時間接触させて、組成物コーティングを医療用デバイスの少なくとも1つの表面に塗布する。医療用デバイスを組成物コーティングから取り出し、室温で少なくとも8時間、好ましくは終夜乾燥させておく。次いで、医療用デバイスを水などの液体ですすぎ、滅菌する前に少なくとも2時間、好ましくは8時間乾燥させておくことができる。組成物を医療用デバイスの表面上に乾燥させることを容易にするために、オーブンなどの加熱された環境に医療用デバイスを置くことができる。
【0087】
創傷ケア
創傷は、治癒をはばむ複数の障壁がある場合が多い。創傷治癒および感染は、細菌が創傷環境内に安定で繁栄した集落を作る能力と宿主が細菌の集落を制御する能力との関係の影響を受ける。細菌は表面に付着した後、自分自身の保護的微小環境(バイオフィルム)を急速に形成することができるので、宿主がこれらの有機体を制御する能力は、バイオフィルム集落が成熟するにつれて低下する可能性がある。安定なバイオフィルム集落内では、好気性細菌と嫌気性細菌との相互作用が、それらの最終の病原性効果を増大させる可能性があり、それらが感染を引き起こし、治癒を遅延させる可能性が高まる。バイオフィルムは慢性創傷と関連付けられている。慢性創傷の顕微鏡的評価により、慢性創傷の少なくとも60%において、細胞外ポリマー物質がコロニー細菌周囲に付着している、高度に組織化されたバイオフィルムが見られた(Mertz、Wounds、15巻:1〜9頁、2003年)。
【0088】
破壊酵素および毒素の産生が創傷治癒に直接及ぼす効果に加えて、混合された微生物集落は、慢性炎症状態を促進することによって、治癒に間接的にも影響を及ぼすことがある。慢性創傷内で細菌に長期に曝露されると、長期炎症反応が生じ、創傷治癒に関与する細胞プロセスに有害効果をもたらすことがあるフリーラジカルおよび多数の溶菌酵素の放出が起こる。いくつかの細菌、特に緑膿菌(P.aeruginosa)から放出されるタンパク質分解酵素は、創傷治癒プロセスにとって必要である成長因子および他の多くの組織タンパク質に影響を及ぼすことが知られている(Steedら、J.Am.Coll.Surg、183巻:61〜64頁、1996年;Travisら、Trends Microbiol.、3巻:405〜407頁、1995年)。微生物負荷の増大にしばしば伴う滲出液産生の増大は、成長因子およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の分解に関連するものであり、引き続いて細胞増殖および創傷治癒に影響が及ぶ(Falangaら、J Invest Dermatol.、1巻:125〜127頁、1994年)。
【0089】
本発明の方法は、本発明の組成物を投与することによって、創傷を治療、清浄、消毒することを含む。本発明の方法は、創傷と本発明の創傷ケアデバイスを接触させることによって、創傷を治療、清浄、消毒することも含み、創傷ケアデバイスは本発明の組成物を含む。このような創傷としては、慢性創傷、急性創傷、手術創、手術部位、第2度および第3度熱傷、うっ血性潰瘍、熱帯性病変、褥瘡性潰瘍、重度切創、および擦過傷が挙げられる。創傷ケアデバイスとしては、被覆材および包帯が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物は、ゲル剤または軟膏剤として製剤化することもできる。
【0090】
齲蝕/歯周病
齲蝕と歯周病は、ヒトに影響を及ぼす最もよく見られる慢性感染疾患のうちの2つであり、歯牙表面上のバイオフィルムである歯垢に関連するものである。連鎖球菌は唾液細菌の約20%を占め、これには、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)などの連鎖球菌属菌種(Streptococcus spp.)が含まれる。S.ミュータンス(S.mutans)、S.ソブリナス(S.sobrinus)、S.サンギス(S.sanguis)、およびS.オラリス(S.oralis)の4つの連鎖球菌は、齲蝕の開始に直接関与しているが、S.ミュータンス(S.mutans)は齲蝕の主な原因菌であると考えられる(Devulapalleら、Carbohydr.Res.、339巻:1029〜1034頁、2004年)。歯周病は、慢性細菌感染、すなわち歯垢のため、歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、および歯槽骨)の炎症性病態の集合体を含む。米国では人口の90%超が歯周病に冒されている(Brownら、J.Dent.Res.、75巻:672〜683頁、1996年)。
【0091】
一実施形態において、本発明の組成物は、練り歯磨き、洗口剤、チューインガム、ブレスミント(breath mint)、デンタルフロス、義歯、マウスガード、および同様の消耗品などの口腔用消耗品に組み込むことができる。
【0092】
一実施形態において、方法は、本発明の組成物を対象に投与することを含む、対象における齲蝕または歯周病を治療または予防することを含む。さらなる実施形態において、方法は、本発明の組成物を含む口腔用消耗品とバイオフィルムを接触させることによって、対象における齲蝕または歯周病を治療または予防することを含む。歯周病としては、歯肉炎、歯周炎、および急性壊死性潰瘍性歯肉炎が挙げられる。
【0093】
本発明を例示的実施形態に関して記載してきたが、本発明はこれらの詳細な実施形態に限定されるものではなく、様々な変更および修正は添付の特許請求の範囲に包含されるよう意図されているものであることを理解されたい。
【実施例1】
【0094】
硫酸プロタミン(PS)および塩化ベンザルコニウム(BZK)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
大腸菌(E.coli)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(PSまたはBZK)および一緒に存在している状態(PSおよびBZK)、ならびに存在していない状態でコロニー形成抗原培地(グラム陽性種の場合)が入っている96ウェルマイクロプレートに播種し、26℃で24時間インキュベートした。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。PSとBZKとを含む組成物は、単独のPSまたはBZKに比べて、バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図1;表1)。
【0095】
表1:硫酸プロタミン(PS;12μg/ml)および塩化ベンザルコニウム(BZK;6μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表1】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例2】
【0096】
硫酸プロタミン(PS)および塩化ベンザルコニウム(BZK)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
緑膿菌(P.aeruginosa)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(PSまたはBZK)および一緒に存在している状態(PSおよびBZK)、ならびに存在していない状態でコロニー形成抗原培地(グラム陽性種の場合)が入っている96ウェルマイクロプレートに播種し、26℃で24時間インキュベートした。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。PSとBZKとを含む組成物は、単独のPSまたはBZKに比べて、バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図2;表2)。
【0097】
表2:硫酸プロタミン(PS、25μg/ml)および塩化ベンザルコニウム(BZK、12.5μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表2】


*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例3】
【0098】
硫酸プロタミン(PS)および塩化ベンザルコニウム(BZK)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(PSまたはBZK)および一緒に存在している状態(PSおよびBZK)、ならびに存在していない状態でTSB(グラム陽性種の場合)が入っている96ウェルマイクロプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。PSとBZKとを含む組成物は、単独のPSまたはBZKに比べて、バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図3;表3)。
【0099】
表3:硫酸プロタミン(PS;1.5μg/ml)および塩化ベンザルコニウム(BZK;0.8μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表3】


*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例4】
【0100】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)および5−フルオロウラシル(FU)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
大腸菌(E.coli)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはFU)および一緒に存在している状態(SMP+FU)、ならびに存在していない状態でTSBが入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとFUとを含む組成物は、単独のSMPまたはFUに比べて、大腸菌(E.coli)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図4;表4)。
【0101】
表4:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;250μg/ml)および5−フルオロウラシル(FU;6.25μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表4】


*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例5】
【0102】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)および5−フルオロウラシル(FU)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
緑膿菌(P.aeruginosa)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはFU)および一緒に存在している状態(SMP+FU)、ならびに存在していない状態でTSBが入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとFUとを含む組成物は、単独のSMPまたはFUに比べて、緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図5;表5)。
【0103】
表5:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;250μg/ml)および5−フルオロウラシル(FU;3.75μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表5】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例6】
【0104】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)および5−フルオロウラシル(FU)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはFU)および一緒に存在している状態(SMP+FU)、ならびに存在していない状態でTSBが入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとFUとを含む組成物は、単独のSMPまたはFUに比べて、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図6;表6)。
【0105】
表6:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;250μg/ml)および5−フルオロウラシル(FU;20μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表6】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例7】
【0106】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)およびクロルヘキシジン(CHX)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
大腸菌(E.coli)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはCHX)および一緒に存在している状態(SMP+CHX)、ならびに存在していない状態でTSBが入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとCHXとを含む組成物は、単独のSMPまたはCHXに比べて、大腸菌(E.coli)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図7;表7)。
【0107】
表7:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;250μg/ml)およびクロルヘキシジン(CHX;1μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の大腸菌(Escherichia coli)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表7】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例8】
【0108】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)およびクロルヘキシジン(CHX)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
細菌および酵母の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはCHX)および一緒に存在している状態(SMP+CHX)、ならびに存在していない状態でTSB(グラム陽性種および酵母の場合)およびコロニー形成単位抗原培地(グラム陰性細菌の場合)が入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃(グラム陽性細菌および酵母の場合)および26℃(グラム陰性細菌の場合)で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとCHXとを含む組成物は、単独のSMPまたはCHXに比べて、緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図8;表8)。
【0109】
表8:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;125μg/ml)およびクロルヘキシジン(CHX;6μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表8】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例9】
【0110】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP)およびクロルヘキシジン(CHX)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)増殖およびバイオフィルム形成に及ぼす効果
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の終夜肉汁培養物をTSB中で増殖させ、接種物として使用した。各化合物が別々に存在している状態(SMPまたはCHX)および一緒に存在している状態(SMP+CHX)、ならびに存在していない状態でTSBが入っている96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。37℃で24時間インキュベートすることによって、バイオフィルムを成長させた。浮遊性細胞の増殖は、Labsystems Multiskan Ascentマイクロプレートリーダーを使用して、600nmにおいて測定された吸光度に基づいて決定された。ウェル中の培地を捨て、ウェルを水で3回すすぎ、結合している細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって、バイオフィルムを測定した。次いで、色素を33%酢酸で可溶化し、マイクロタイタープレートリーダーを使用して、630nmにおける吸光度を決定した。SMPとCHXとを含む組成物は、単独のSMPまたはCHXに比べて、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)バイオフィルム形成に及ぼす阻害効果が増大していることを示した(図9;表9)。
【0111】
表9:メタ過ヨウ素酸ナトリウム(SMP;250μg/ml)およびクロルヘキシジン(CHX;0.5μg/ml)を単独および組合せで用いた場合の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)バイオフィルムに及ぼす阻害効果*
【表9】

*バイオフィルム形成の低下を630nmにおける光学密度(OD)で表して決定。
【実施例10】
【0112】
硫酸プロタミン(PS)および銀ナノ粒子(SNP)を単独および組合せで用いた場合の医療用デバイス関連病原体に対する抗菌活性
菌株をトリプシンダイズブロス(TSB)中、100rpmで振盪させながら、終夜37℃で増殖させ、約10CFU/mlに希釈した。前述のように、最小生育阻止濃度(MIC)方法により、96ウェルマイクロタイタープレートでアッセイを行った(Amsterdam,D、1996年、In:V.Loman編、「Antibiotics in laboratory medicine」、52〜111頁、Williams and Wilkins,Baltimore,M.D.)。抗菌剤PSとSNPは両方とも、単独および一緒にTSB(100μl)中で連続希釈され、100μlの細菌懸濁液を各ウェルに添加した。プレートを37℃で24時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(Multiskan Ascent、Labsystems、Helsinki、Finland)を使用して、600nmにおいて読み取った。表10に示されるように、PSとSNPとを含む組成物は、上記のPSまたはSNPに比べて、細菌増殖に及ぼす阻害効果が増大していることを示した。
【0113】
表10:医療用デバイス関連病原体に対して硫酸プロタミン(PS)、銀ナノ粒子(SNP)を単独および組合せで用いた場合の最小生育阻止濃度(MIC)
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)カチオン性ペプチドと、(b)第四級アンモニウム化合物、銀含有粒子、または5−フルオロウラシルとを含む組成物。
【請求項2】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)メタ過ヨウ素酸塩と、(b)銀含有粒子、5−フルオロウラシル、クロルヘキシジン、またはトリクロサンとを含む組成物。
【請求項3】
カチオン性ペプチドが、オミガナン、プロタミン、セクロピンA、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
カチオン性ペプチドが硫酸プロタミンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
第四級アンモニウムが、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、サッカリン酸ベンザルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セタルコニウム、水素化塩化タローアルコニウム(tallowalkonium chloride)、塩化タローアルコニウム(tallowalkonium chloride)、サッカリン酸ジデシルジメチルアンモニウム、サッカリン酸ヘキサデシルピリジニウム、アセスルファミン酸ベンザルコニウム、アセスルファミン酸ジデシルジメチルアンモニウム、アセスルファミン酸ヘキサデシルピリジニウム、アセスルファミン酸3−ヒドロキシ−1−オクチルオキシメチルピリジニウム、サッカリン酸3−ヒドロキシ−1−オクチルオキシメチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
第四級アンモニウム化合物が塩化ベンザルコニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
銀粒子が、銀ナノ粒子またはスルファジアジン銀である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
メタ過ヨウ素酸塩が、メタ過ヨウ素酸ナトリウムまたはメタ過ヨウ素酸カリウムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)硫酸プロタミンと、(b)塩化ベンザルコニウムとを含む組成物。
【請求項10】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)メタ過ヨウ素酸塩と、(b)5−フルオロウラシルとを含む組成物。
【請求項11】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)メタ過ヨウ素酸塩と、(b)クロルヘキシジンを含む組成物。
【請求項12】
微生物バイオフィルムを阻害する組成物であって、(a)硫酸プロタミンと、(b)銀含有粒子とを含む組成物。
【請求項13】
メタ過ヨウ素酸塩がメタ過ヨウ素酸ナトリウムである、請求項2、8、10、または11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
硫酸プロタミンが、約100μg/ml〜約1000μg/mlの硫酸プロタミンからなる、請求項4、9、または12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
塩化ベンザルコニウムが、約20μg/ml〜約200μg/mlの塩化ベンザルコニウムからなる、請求項6または9に記載の組成物。
【請求項16】
銀粒子が、約1μg/ml〜約1000μg/mlの銀粒子からなる、請求項7または12に記載の組成物。
【請求項17】
メタ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度が、約20μg/ml〜約2000μg/mlのメタ過ヨウ素酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
5−フルオロウラシルの濃度が、約50μg/ml〜約5000μg/mlの5−フルオロウラシルを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項19】
クロルヘキシジン塩基または塩が、約1μg/ml〜約100μg/mlのクロルヘキシジンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
細菌と真菌の両方に対して有効である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項21】
水、エタノール、漂白剤構成成分もしくは酸化剤構成成分、結合もしくは接着もしくはカップリング剤、湿潤化剤、臭気吸着剤、レベリング剤、被着剤、粘稠化剤、帯電防止剤、蛍光増白化合物、乳白剤、核剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、充填剤、パーマネントプレス加工剤、軟化剤、滑沢剤、硬化促進剤、接着剤、ビス−フェノール、ビグアニド、銀化合物、5−フルオロウラシル、ビスホスホナート、ガリウム化合物、ビスムチオール、キレート剤、カチオン性ポリペプチド、第四級アンモニウム化合物、マレイミド、抗生物質、pH調整剤、緩衝溶液、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、ポリビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン(例えば、シリコーンエラストマーおよびシリコーン接着剤)、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ−(マレイン酸モノエステル)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アギニックアシッドまたはペクチミックアシッド)、ポリカルボン酸無水物(例えば、ポリマレイン酸無水物、ポリメタクリル酸無水物またはポリアクリル酸無水物)、ポリアミン、ポリアミンイオン(例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリリシン、ポリ-(ジアルキルアミンオエチルメタクリラート)、ポリ−(ジアルキルアミノメチルスチレン)またはポリ−(ビニルピリジン))、ポリアンモニウムイオン(例えば、ポリ−(2−メタクリルオキシエチルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ−(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ-(N.N.-アルキリピリジニウムイオン)またはポリ−(ジアルキルオクタメチレンアンモニウムイオン)、およびポリスルホナート(例えばポリ−(ビニルスルホナート)またはポリ−(スチレンスルホナート))、コロジオン、ナイロン、ゴム、プラスチック、ポリエステル、Dacron(商標)(ポリエチレンテトラフタラート)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、およびそれらの誘導体、エラストマー、Dacron(ゼラチン、コラーゲン、またはアルブミンでシールされたもの)、シアノアクリラート、メタクリラート、多孔質バリアフィルム付き紙、接着剤(例えば、ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤、および接着剤ヒドロゲル、布地、ならびに架橋および非架橋ヒドロゲル)、線状コポリマー、架橋コポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
微生物バイオフィルムを低減、阻害、または防止する方法であって、本発明の組成物と消毒剤との組合せを表面と接触させることによって、前記表面を消毒、清浄、またはすすぐことを含む方法。
【請求項23】
表面上の沈着物も低減、阻害、または防止し、沈着物は、水垢、石鹸かす、または有機物で覆われているもしくは凝集している他の沈着物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組合せが親水性ポリマーをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
表面が硬質表面である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
硬質表面が、シリコーン表面、ガラス表面、セラミック表面、または金属表面である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
歯ブラシ;デンタルフロス;義歯、マウスガード;乳製品用ライン;乳製品用ラインのフィルター;水ライン;食品および飲料製造で使用されるライン;一般家庭用消毒剤;洗濯洗剤;清浄用必需品;リーチング工程または採鉱に関与する設備;創傷ケア;真空系統;HVAC系統;真空掃除機用袋;塗料カバーリング;壁カバーリング;窓枠;ドア;ドアフレーム;冷却塔;加湿器;真空掃除機;フィルター;玩具;化粧品容器;プラスチックビン;水差し;蛇口および水吐出し口;洗濯機;皿洗い機;動物用水飲み皿;浴室用タイル;浴室用備品;シンク;シャワー;シャワーヘッド;便器;便器の蓋;便座;シーラント;グラウト;タオル;Tupperware(登録商標);皿;カップ;台所用品;ボウル;食品貯蔵容器;飲料貯蔵容器;まな板;皿乾燥用トレー;ごみ袋;浴槽;渦流浴槽;ジャクージ浴槽;シンク;シャワー;養魚池;スイミングプール;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー;池のライナー;小鳥用水盤;園芸用ホース;散水ライン;プランター;および温水浴槽に組み込まれている、請求項1乃至26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
創傷の消毒方法であって、請求項1乃至26のいずれか1項に記載の組成物を創傷に投与することを含む方法。
【請求項29】
消毒対象の物体に噴霧、浸漬、上塗り、またはコーティングする方法であって、前記物体と請求項1乃至26のいずれか1項に記載の組成物を接触させることを含む方法。
【請求項30】
義歯;マウスガード;乳製品用ライン;水用ライン;絆創膏;HVAC系統の構成要素;水処理施設の構成要素;真空装置または真空掃除機の構成要素;真空掃除機用袋;真空掃除機フィルター;エアフィルター;冷却塔の構成要素;玩具;窓;ドア;窓枠;ドアフレーム;医療器械;歯科器械;浴室用タイル;台所用タイル;食品工業用処理器械;病院用テーブルおよびベッド;動物用水飲み皿;洗濯機;皿洗い機;タオル;皿;ボウル;台所用品;カップ;ガラス;まな板;皿乾燥用トレー;渦流浴槽;シンク;便器;便座;スイミングプール;小鳥用水盤;プランター;園芸用ホース;養魚池;油管;ガス管;乳製品用ラインのフィルター;食品および飲料製造で使用されるライン;化粧品容器;屋外の池のライナー;蛇口および水吐出し口;加湿器;加湿器フィルター;浴室用タイル;浴室用備品;便器の蓋;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー;スイミングプールのフィルター;温水浴槽ライン;温水浴槽のフィルター;洗濯機のライナー;皿洗い機のライナー;動物用水飲み皿;食品貯蔵容器;飲料貯蔵容器;プレート;カップ;フォーク;ナイフ;スプーン;ごみ袋;および調理台からなる群から選択される、請求項29に記載の物体。
【請求項31】
前記物体が医療用デバイスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
デバイスが、カテーテル、留置カテーテル、中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、動脈カテーテル、腹膜カテーテル、血液透析カテーテル、臍カテーテル、経皮的非トンネル型シリコーン製カテーテル、カフ付きトンネル型中心静脈カテーテル、気管内チューブ、皮下型中心静脈ポート、尿道カテーテル、腹膜カテーテル、末梢静脈カテーテル、中心静脈カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、音声人工器官、コンタクトレンズ、スタント、心臓弁、陰茎インプラント、小型または一時的関節置換物、泌尿器用ダイレータ、カニューレ、エラストマー、カテーテルロック、針、Leur−Lokコネクタ、無針コネクタ、クランプ、鉗子、ハサミ、皮膚鉤、チュービング、針、開創器、スケーラー、ドリル、のみ、やすり、手術器械、歯科器械、チューブ、静脈管、呼吸管、歯科用水ライン、歯科用ドレーンチューブ、栄養管、包帯、電極、外部人工器官、固定テープ、圧迫包帯、手術室表面、救急室表面、病室表面、浴室表面、創傷被覆材、布地、紙、インジケータストリップ、接着剤、整形外科インプラント、手術用鋸、膣内器具、腸内器具、臍カニューレ、気管支鏡、義歯、歯科矯正器具、潰瘍被覆材、火傷被覆材、肉芽組織被覆材、接着剤パッチ、吸引カテーテル、粘膜摘出カテーテル、電極、外部人工器官、固定テープ、圧迫包帯、縫合糸、または子宮内避妊器具である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
創傷が、水疱創、軟部組織創傷、皮下膿瘍、手術創、縫合された裂傷、汚染された裂傷、熱傷創、褥瘡性潰瘍、うっ血性潰瘍、下腿潰瘍、足部潰瘍、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、虚血性潰瘍、圧迫潰瘍、口腔感染症、歯周病、中間層熱傷、または全層性熱傷である、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−515726(P2012−515726A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546547(P2011−546547)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000067
【国際公開番号】WO2010/083589
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511178658)ケーン バイオテク インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】