説明

バイオマスを循環再生した海草礁、並びに装置

【課題】 巷にあふれるバイオマスを再生して海草礁をつくり、海底に沈座せしめる。
【解決手段】 まずカキ殻を高温焼成して生石灰状とする。それに特殊腐植物質サクドと米糠・梅酢液・低温破砕籾殻の処理剤とフライアッシュと木炭を特殊腐植物質抽出希釈液で混練し成型して水和反応固化し、プランクトンの湧く含浸作用機能のある海草礁に仕上げる。
構造体中央の搾孔を脚基部とし、竹材の如き複数の脚と開脚抵抗板を組み合わせた脚装置で海底に沈座固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各分野の廃棄物化したバイオマスを循環再生して組み合わせ複合生態系機能に富む海草礁に再生する技術、装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カキ殻は海中にあってCaとCOを大量に生化学反応合成した環境機能性に優れたバイオマスで、引く手あまたの貴重な資源となる。
【非特許文献1】 カキ殻の科学組成−広島県水試 研究報告第8号(1977)
【0003】
カキ殻は610℃の加熱で数%が減量するのみで、58%の炭酸ガスは解離エネルギーが極めて大きくガス化には膨大な加熱量を要する。それを克服してCaOとするには遠赤外線放射、窒素ガス雰囲気、過熱蒸気雰囲気等の相乗作用が働く乾留加熱が効率よくガス化を促進する木材炭化事例がある。又通例による木炭に蒸気を吹き込みながら1000℃で乾留過熱する賦活によって活性炭をつくることが試みられる等、物質の改質操作はその条件整備によって左右することが知られバイオマス再生技術が競われている。
【特許文献1】 自然植物素材遠赤外線乾留炭化装置−特願2004−90516
【非特許文献2】炭のかがく−柳沼力夫−誠分堂新光社(2003)
【特許文献2】 機能性セラミックスの製造法−特願2005−
【0004】
高温焼成されたカキ殻は古来漆喰の原料として珍重される程度であるが,内容的には有機セメントと呼ぶべき働きが有り、その試用結果を改めて見直すと、純度の高い石灰岩に有意の粘土を加えて混合焼成した歴史のあるセメントと、カキ殻のCaと多くのミネラルが同居する組成と水和反応の化学変化が重なって見える。
【非特許文献3】 コンクリートのはなし−技術出版社(1993)
【特許文献3】 環境機能性再生構造物の製造法−特願2004−163851
【0005】
甲殻類のキチン質は地球上で微生物が生合成した物質でセルロースに次ぐ生成量と言われる。カニ、オキアミに代表される生物を海洋が生み出すメカニズムは何なのか。
【非特許文献4】 微生物によるキトサンの生産−島根大学農学部研究報告−松田英幸
【0006】
長崎県に産出する特殊腐植物質は数百万年前に生成された純腐植態の泥状として存在する。特性も分子量も大きく異なる異種物質が自然界で一体化して同居する稀有としか表現し得ないもので、古代地球が現代に遺してくれた貴重な資源である。
2年有余月を要する掘出しから利用までの経緯を示す。
【特許文献4】 特殊腐植物質の特性を活かした環境保全型燃焼法−特願2002−353098
【0007】
梅酢液は梅果実と塩等との生化学反応によってつくり出されたエキスであって、人の食べものの消化に至大の関与の関係が知られる外に、クエン酸主体の有機酸機能が各種の活用技術を生み出すことが知られて来た。
【特許文献5】 梅酢液並びにカキ殻を高機能性資源に再生する方法−特願2005−43087
【0008】
成熟した玄米を包む籾殻は、硬い組織と珪酸と発芽抑制酵素アブジジン酸を含み低温破砕すると酵素が活性化し有機質の融合反応を珪酸と共に先導する。
【特許文献6】 食品の健康機能性を高める成熟植物性有機肥料−特願2003−436730
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
食文化の発達に伴い生産現場に発生するバイオマス資源は増え続け環境負荷は危機的状況にあるが、本発明者等はそれらが持っている特性を解明してみると貴重な資質を保持していることが明らかになって来た(背景技術)ことに力を得て、それ等資源を循環再生し、その輪を生産現場まで還元拡大しようとするものである。
【0010】
本発明が目標とする海草礁は、文字通り海草増殖の基盤を確保して海草林を育成し(東北大−谷口氏)海水の栄養負荷汚染を改善(陸上植物の数倍)しながら直接海草や魚介類の増殖まで生態系機能富化への輪を進めようとするものである。
【0011】
その為に本発明者等は厄介物扱いされているバイオマスの多様な資質を活用とする手段を積み重ね、海草増殖の源となるプランクトン発生源となる資質を持つ海草基盤を作成し海底に沈座せしめる手段を組み立てようとするものである。
【0012】
本発明手段について本項では総論項目的に述べる。
▲1▼類まれな資質を持つバイオマスであるカキ殻のCaCOに、強固に生合成されているCOを、本発明者等が今まで積み重ねてきた技術を駆使して完全なCaOとすることからスタートする。近代セメントが160年かけて今日の品質に到達した歴史にあやかり、生合成の強固な結合力に似た水和反応を目指す。
▲2▼有機セメントとも呼べるカキ殻CaOの特性をベースにして有為の資材を組合わせ、有意の手段を積み重ねてプランクトンの発生源となる資質を持ち、有意に成型され、有為の含浸作用を持つに至る水和構造物に仕上げる。
▲3▼その上で構造物中央に設けられた搾孔に、開脚抵抗版と組み合わせた脚を装着して、海底に沈座させる機構として海草礁が完成する。
▲4▼海草礁は多数の点として海底に設置されるがことが求められるので、構造体資質と共に設置までのコストが問われるが本願はそれに耐えうるバイオマス再生システムを組み立てる。
【0013】
カキ殻は110℃で加熱しても微量要素が1.2%存在し、さらに500℃の過熱でも1.5%の減量で57%のCOは微動だにしない。その強大な活性化エネルギーの丘越えと解離エネルギーを与えて完全なCaOとすることがスタートとなる。その上で海洋触媒機能の働く生合成に似たCaOの吸引力を活かした水和反応を発象させる為、資材の組み合わせや手段を積み重ねて目指す構造体を造成する。高純度CaO化する手段については別願で種々提案しているので詳しい説明は割愛する。
【0014】
特殊腐植物質近似土マリネックスサクドは長崎県に産出する。真正のマリネックスの表層土でフルボ酸含有比量が多い。このことは実施事象でフルボ酸の電位吸着作用の顕著なことが認められたことからの判断で、分析値が無いので、真正のマリネックスの特徴に基ずいて検証する。
マリネックスは長崎県に産出する純腐植態に止まる水分60%の泥として存在する。掘り出し後2ヵ年に及ぶ天日培養して水分29%(構造水)の熟成土とし、そのままか、6ヶ月に及ぶ操作による抽出液(PH2.5程度)として用いるが、フルボ酸を含み硬い鉱石粉を溶かす程物質の溶解度は抜群で、複数物質の融合に果たす特異な性質への期待が高い。
【0015】
フルボ酸は自然循環系の有機と無機の接点と言われる森林の腐植土層から溶出されて海に注ぐが、海洋生物が自然界の鉄分をフルボ酸鉄として吸収を可能となることによって、海洋生態系の富化に貢献することが知られて“森は海の恋人”との願望を挙げられる(畠山氏)程、生産と環境に深く関与するとの認識が深まって来た。
腐植物質はカルボレキシル基やフェノール性水酸基を多量に持っているので、金属イオンとキレート結合し、これ等の沈殿を可溶化する働きがある。鉄イオンの環境科学的働きについては、特にフルボ酸の鉄キレート生成の可能性と考えられるが、他の複数の金属元素との融合反応に有為の働きが期待される。
【0016】
梅酢液は古来食品機能性に優れた梅漬けのエキスで、クエン酸を中核とした有機酸が強く、食べ物の消化に深くかかわるクエン酸サイクルによって健康に貢献する。本願では構成資材のイオン化促進として水和反応の進行に役立つ事象が確認されたので期待されている。
又本発明の特徴の海中における含浸作用即ちプランクトンの発生を促す栄養放出を目指して炭化物による微生物増殖を期待するが、梅の種子を程よく炭化し、中の核からクエン酸等がしみでると炭化物の微生物の増殖が期待され含浸作用に重みが増す。
その根拠は、梅果実と白砂糖によるシロップ作りに当って、梅果実に繰り返して白砂糖の抽出を重ねると3回目は酸っぱくてそのままでは飲めなくなった事例からの示唆である。
【0017】
現代セメントの幕開けの時期、水硬性と海水に強いセメントの開発者(英国ストーミン)が粘土を含んだ石灰岩とイタリヤ産の火山灰度を組み合わせて、その目的に近づいたとの文献−非特許文献3−の教示は本願にとって重要なものである。その文献が教えるフライアッシュ(二酸化珪素45%以上酸化アルミニウム含有)や、シリカフェーム(非昌質の二酸化珪素90%以上)の如きは資源再生と本願構造体の体質改善を再立せしめる期待が高い。
【0018】
0012項以降の技術目標に向けて構成素材の特性を組み合わせ、イオン化手段を加えて水和反応を進行せしめ、含浸作用という積極的海洋環境富化機能を持つ構造体に仕上げる根拠を詳述した。
【発明の効果】
【0019】
本発明を構成するバイオマス資源を再生する技術手段と、それによる海洋生物資源の回復により、その生態系機能の富化に至る輪廻の食生活を豊かにすることは、人ともなり、広く人々や社会の雇用拡大や環境負荷軽減から積極的環境機能富化へと進んで大きく社会に貢献する。
【発明を実施するための最良の型態】
【0020】
本願は単一の物理的事象に終わるものではない。バイオマス資源の再生については多くの地域、人々の分担に頼らなければ成り立たない。出来上がった構造体の設置についても海洋生産地現場の人々の活かし方にかかる。あまりにも大きな輪としての因果関係であるからバイオマス再生と海洋生産振興の視点を共有する多くの方々の積極的協力が望まれる。
【実施例】
【0021】
以下、構造体の製造に掛かる実施例と、海底設置機構を図面によって説明する。
A、構造体について
カキ殻生石灰化装置については先特願2005−43087により行う。
a、原素材
▲1▼カキ殻生石灰 ▲2▼マリネクスサクド ▲3▼米糠・梅酢液・モミガラ
▲4▼混和材−フライアッシュ ▲5▼木炭
b、混合比並びに処理
▲1▼カキ殻生石灰−40% ▲2▼マリネックスサクド−20%
▲3▼米糠に15〜20%の梅酢液を混和し、更にモミガラ等量混合物15%
▲4▼フライアッシュ 20% ▲5▼木炭 5%
充分混和後マリネックス500倍液を重量比70%加えて混練
c、養生
型枠充填後30℃に保温養生し,水和反応を完結する。
【0022】
B、沈座安定装置
図によって沈座安定装置を説明する。
図1は海草礁の縦断面図である。
図2は脚部と開脚抵抗板との組み合わせ図である。
図3は開脚し沈座した鳥瞰図である。
1−は海草礁、2−は脚基部穴、3−脚部、4−開脚着床抵抗板
着床抵抗板の穴が脚の開拡を誘導する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明を側面から眺めると、生産の結果に取り残された残り物となった物が次の生産の為の元資となる図式と言える。食品として優れた牡蠣を育てた殻は外観に似ず海洋環境で優れた生合成を営んで結果も残していたことを知らされた。その因果がわかればその後は人間の知恵の技術の出番となる。
0020項で述べた様に一見環境負荷物質(廃棄物)と見えるものでも、その資質が理解され、それを活かす技術が伴えば、負の処理費が所を換えたバイオマス活用の生産費となって新たな価値を創出する。
世情言われるバイオマスと名のつく未利用資源は数億トンという情報があるにもかかわらず思いのほか効果的技術が少なく環境負荷のみ増え続けているように見える。本発明がたどり着いたバイオマスの再生という手法は、どこでも誰でもが実施できることなので、0020項に述べたように、各地域の各分野の方々が共通できる目標に向けたネットワーク作りが成れば、多くの人々の利益ともなり環境保全の実も莫大なものとなろう。産業的規模での波及効果は決して小さいものではない。
あの外見のカキ殻が半分以上も炭酸ガスを取り込んで石灰質も捕集したと言う海洋生物の生態系としての営みに感謝し、その反対の水和反応現象を通じてプランクトンを生み出す含浸作用機能を作り出しえた本発明は今の環境産業の一端の地位を許されるのではないだろうか。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】−海草礁の縦断面図
【図2】−脚部と開脚誘導板との組み合わせ図
【図3】−開脚鎮座した鳥瞰図
【符号の説明】
【0025】
1−海草礁、2−脚基部穴、3−脚部、4−開脚着床抵抗板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温焼成したカキ殻生石灰と、特殊腐植物質近似土と、米糠・梅酢液・低温破砕モミガラと、フライアッシュ或いはシリカフェームと木炭とを特殊腐植物質抽出希釈液で充分に混練し、有意の型枠に充填して、有意の温度帯で養生しながら水和反応を進行させて、成型固化する構成になる構造であることを特徴とする バイオマスを循環再生した海草礁、並びに装置。
【請求項2】
請求項1の構造体中央に搾孔して脚基部とし、それを基点として下方に複数で有意の長さの柔軟材の脚を固定し、脚基部直径より一回り大きい直径の双対穴を備えた抵抗版を組み合わせて装着する。海草礁が海底床に向けて下げられ、抵抗板が海底面に着床すると脚は抵抗板の穴に誘導されて開脚され有意の位置に海底面に沈座固定される構造であることを特徴とする請求項1記載の バイオマスを再生した海草礁、並びに装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−246878(P2006−246878A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135359(P2005−135359)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(397057555)株式会社エスシーアクト (3)
【出願人】(500222630)
【出願人】(504038826)
【Fターム(参考)】