説明

バイオマスミル

【課題】
バイオマスミルに於いて、木質系バイオマスの粉砕テーブル上での移動を円滑にし、又ミルからの粉体の排出を促進し、粉砕容量の増大を図る。
【解決手段】
上面に断面円弧状の凹溝6がリング状に形成され、回転可能な粉砕テーブル5と、前記凹溝に押圧される加圧ローラ9と、前記粉砕テーブルの周囲から空気を吹出す吹出し口16と、前記粉砕テーブルの中心に木質系バイオマスを供給するシュートとを具備し、該シュートより木質系バイオマスを供給し、前記粉砕テーブルと前記加圧ローラ間で前記木質系バイオマスを粉砕し、粉砕した木質系バイオマスを前記吹出し口からの空気の噴出で搬送する様にしたバイオマスミルであって、前記凹溝の外周縁から前記吹出し口迄を平面とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質チップ、木質ペレット等の木質系バイオマスをボイラ燃料として粉砕するバイオマスミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在ボイラの固形燃料として使用されているのは、主に石炭であるが、CO2 の削減対策として、環境負荷の少ない燃料として木質系バイオマスを燃料とすることが検討されている。
【0003】
木質系バイオマスをボイラの燃料とするには、木質チップ、木質ペレット等の木質系バイオマスをバーナ燃焼可能な様に粉砕する必要がある。
【0004】
石炭に木質系バイオマスを混合して燃料とする場合、木質系バイオマスの混合量が少ない場合は、既存の石炭ミルにより混合粉砕することも可能であるが、木質系バイオマスの使用量が多くなると、単独で粉砕する必要がある。
【0005】
又、木質系バイオマスを粉砕する装置として石炭粉砕用の石炭ローラミルを基本とした粉砕装置とすることが、大きな改良、大きな設備変更をすることなく低コストで可能となる。
【0006】
先ず、図4により石炭粉砕用の竪型ミル1について概略を説明する。
【0007】
基台2に立設されたケーシング3によって密閉された空間が形成され、該空間の下部にテーブル駆動装置4を介して粉砕テーブル5が立設され、該粉砕テーブル5は前記テーブル駆動装置4によって定速で回転される。前記粉砕テーブル5の上面には断面が円弧状である凹溝6を有するテーブルセグメント7が設けられている。
【0008】
前記粉砕テーブル5の回転中心から放射状に所要数組、例えば3組の加圧ローラユニット8が設けられている。該加圧ローラユニット8は、加圧ローラ9を有し、水平支持軸11を中心に傾動自在となっている。又、前記ケーシング3の下部には、放射状に貫通する3組のローラ加圧装置12が設けられ、該ローラ加圧装置12によって前記加圧ローラ9を前記凹溝6に押圧する様になっている。
【0009】
前記粉砕テーブル5の下方は1次空気室13が形成され、前記ケーシング3内部の前記粉砕テーブル5より上方は、分級室14となっている。
【0010】
前記ケーシング3の下部には1次空気供給口15が取付けられ、該1次空気供給口15は前記1次空気室13に連通している。前記粉砕テーブル5の周囲には間隙が形成され、該間隙は1次空気の吹出し口16となっている。
【0011】
前記ケーシング3の上側には石炭給排部17が設けられており、該石炭給排部17の中心部を貫通する様にパイプ状のシュート18が設けられ、該シュート18は前記ケーシング3の内部に延出している。前記シュート18には石炭が供給され、供給された石炭は前記粉砕テーブル5上に落下する様になっている。
【0012】
前記シュート18の中途部に分級器19が回転自在に設けられ、該分級器19は円周方向に所要ピッチで配設された短冊状のブレード21を有し、前記分級器19は回転駆動部22によって回転される様になっている。
【0013】
前記石炭給排部17にはボイラのバーナに粉砕された微粉炭を送給する微粉炭送給管23が接続されている。
【0014】
前記竪型ミル1に於ける石炭の粉砕について説明する。
【0015】
前記粉砕テーブル5が回転され、前記1次空気供給口15より1次空気が導入された状態で、前記シュート18より塊状の石炭が投入される。塊状の石炭は前記シュート18の下端より前記粉砕テーブル5の中心に流落し、該粉砕テーブル5上に供給される。
【0016】
該粉砕テーブル5上の石炭は、遠心力で外周方向に移動し、前記加圧ローラ9に噛込まれ粉砕され粉状となり、更に遠心力により前記テーブルセグメント7から外周に溢れ、溢れた粉砕炭が前記吹出し口16を吹上がる1次空気に乗って上昇する。
【0017】
又、前記テーブルセグメント7の周囲には、石炭を所要時間前記テーブルセグメント7に留めて粉砕効率を上昇させる為のダムリング24又は内部縁部26aが設けられており、前記テーブルセグメント7の上面に所要厚みの石炭層が形成される様になっている。
【0018】
上記した竪型ミル1、又は同等の構造を有するミルに木質チップ、木質ペレット等の木質系バイオマス(以下木質系バイオマスと称す)を供給して粉砕した場合、以下に述べる様に、石炭とは異なった挙動を呈し、充分な粉砕効率が得られないことが分った。
【0019】
石炭を粉砕した場合、石炭は粘結性がなく、比重も大きいことから、前記粉砕テーブル5のテーブルの回転による遠心力による移動も円滑で、所望の粉砕効率が得られる。又、木質系バイオマスの混合率が5%以下の場合も同様に充分な粉砕効率が得られる。
【0020】
ところが、木質系バイオマスを単独で粉砕した場合、軽量の繊維質であり、テーブルでの移動量が石炭に比べて円滑でない。従って、前記加圧ローラ9への噛込みの頻度が少なく、粉砕が効果的に進行しない。
【0021】
更に、前記粉砕テーブル5の外周への移動が円滑に行われない場合は、粉砕後の粉体がミル外に排出されず、ミル内に滞留してミル内の差圧上昇、前記テーブル駆動装置4の動力増大により、粉砕容量が制限されることになる。
【0022】
【特許文献1】特開平11−207200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は斯かる実情に鑑み、木質系バイオマスの粉砕テーブル上での移動を円滑にし、又ミルから粉体の排出を促進し、粉砕容量の増大を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上面に断面円弧状の凹溝がリング状に形成され、回転可能な粉砕テーブルと、前記凹溝に押圧される加圧ローラと、前記粉砕テーブルの周囲から空気を吹出す吹出し口と、前記粉砕テーブルの中心に木質系バイオマスを供給するシュートとを具備し、該シュートより木質系バイオマスを供給し、前記粉砕テーブルと前記加圧ローラ間で前記木質系バイオマスを粉砕し、粉砕した木質系バイオマスを前記吹出し口からの空気の噴出で搬送する様にしたバイオマスミルであって、前記凹溝の外周縁から前記吹出し口迄を平面としたバイオマスミルに係るものである。
【0025】
又本発明は、前記凹溝の少なくとも外周側溝幅角度を0°〜35°としたバイオマスミルに係り、又前記凹溝の外周側溝幅角度を内周側溝幅角度より小さくしたバイオマスミルに係るものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上面に断面円弧状の凹溝がリング状に形成され、回転可能な粉砕テーブルと、前記凹溝に押圧される加圧ローラと、前記粉砕テーブルの周囲から空気を吹出す吹出し口と、前記粉砕テーブルの中心に木質系バイオマスを供給するシュートとを具備し、該シュートより木質系バイオマスを供給し、前記粉砕テーブルと前記加圧ローラ間で前記木質系バイオマスを粉砕し、粉砕した木質系バイオマスを前記吹出し口からの空気の噴出で搬送する様にしたバイオマスミルであって、前記凹溝の外周縁から前記吹出し口迄を平面としたので木質系バイオマスの外周方向への移動が容易となり、粉砕容量の増大が図れる。又前記凹溝の外周側溝幅角度を内周側溝幅角度より小さくしたので木質系バイオマスの外周方向への移動が容易となり、粉砕容量の増大が図れるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0028】
先ず、本発明を明確にする為、図2に於いて従来のテーブルセグメント7と加圧ローラ9の関係について説明する。
【0029】
前記テーブルセグメント7の外周にエアポートリング26が設けられ、該エアポートリング26には所要間隔で吹出し口16が穿設され、該吹出し口16より1次空気が上方に向って吹出す様になっている。前記エアポートリング26の内部縁部26aは中心に向って下り傾斜するテーパとなっており、該内部縁部26aは凹溝6の外縁端での接線と略近似した傾斜で粉砕炭が前記凹溝6から前記内部縁部26aに円滑に移動できる様になっている。
【0030】
前記エアポートリング26の上面、内周側にはダムリング24又は内部縁部26aが設けられている。該ダムリング24は前記内部縁部26aの外周縁から前記吹出し口16との間に位置し、前記ダムリング24の内周面は垂直であり、前記内部縁部26aとは不連続に屈曲した面となっている。
【0031】
図2中、27は石炭が粉砕された粉砕炭層を示し、矢印28は前記粉砕炭層27の流れを示している。
【0032】
前記テーブルセグメント7の周囲に前記ダムリング24が設けられることで、前記粉砕炭層27の流れが堰止められ、該粉砕炭層27の厚みが確保される。前記ダムリング24又は内部縁部26aを超えた粉炭が前記吹出し口16を吹出す1次空気により上方に吹上げられる。
【0033】
上記した様に、石炭は粘結性がなく、比重も大きいことから、粉砕テーブル5のテーブルの回転による遠心力による前記粉砕炭層27の移動も円滑である。従って、前記加圧ローラ9による加圧時間を確保し、所望の粉砕効率を得るには、前記粉砕炭層27の流れを抑制する為の前記ダムリング24又は内部縁部26aが必要である。
【0034】
これに対し、木質系バイオマスは、軽量の繊維質であり、テーブルでの移動量が石炭に比べて円滑ではないので、前記ダムリング24又は内部縁部26aが設けられていると、前記粉砕テーブル5での移動が更に妨げられる。
【0035】
従って、木質系バイオマスでは、前記加圧ローラ9への噛込みの頻度が少なく、粉砕が効果的に進行しない。又、粉砕後の粉体(以下バイオマス粉)がミル外に排出され難くなり、ミル内の差圧上昇、テーブル駆動装置4の動力増大により、粉砕容量が制限されることになる。
【0036】
石炭では燃焼を考慮すると、微粉炭の平均粒子径は、40μm程度迄粉砕する必要があるが、木質系バイオマスでは揮発分量が多く、燃焼が良好であることから、最大サイズを1mm以下とする程度の粉砕でよい。
【0037】
本発明は、斯かるバイオマス粉の移動、粒子径を考慮してなしたものである。
【0038】
以下、図1を参照して図2で示した従来例との比較により本発明を説明する。
【0039】
従来例ではダムリング24が設けられる場合に於いて前記凹溝6の形状は、溝の中心を通る鉛直線に対して対称(図示では左右対称)となっており、前記凹溝6の曲率半径をrとし、溝幅の角度(中心線から溝縁迄の角度、以下溝幅角度)をθ2 とすると、前記凹溝6の深さD2は(r−rcosθ2 )であり、該凹溝6の最深位置から前記ダムリング24の上面迄の深さは、前記内部縁部26a、前記ダムリング24の高さが加わる。尚、従来では、前記溝幅角度θ2 は、40°以上となっている。
【0040】
本発明では、前記ダムリング24、前記内部縁部26aを省略し、前記凹溝6の外周縁から前記吹出し口16に至る迄を水平な平面とし、更に溝中心から内周側の溝幅角度(以下、内周側溝幅角度θ2 )と外周側の溝幅角度(以下、外周側溝幅角度θ1 )とを個別に設定し、内周側溝幅角度θ2 と外周側溝幅角度θ1 とを同一(θ1 =θ2 )に設定するか、或は外周側溝幅角度θ1 を内周側溝幅角度θ2 より小さく(θ1 <θ2 )設定する。
而して、θ2 =45°〜30°、θ1 =35°〜0°とする。
【0041】
尚、前記平面は水平としてもよく、或は外方に向って上がり傾斜とするか、或は下り傾斜としてもよい。前記平面を水平にするか、或は上がり傾斜とするか、或は下り傾斜とするかは、木質系バイオマスの粉砕状態、半径方向の移動状態に応じて決定する。
【0042】
本発明での前記凹溝6の外周側の深さD1は(r−rcosθ1 )(<D2)となり、従来に比べ溝の深さはh2 分だけ浅くなり、更に前記内部縁部26aと前記ダムリング24の高さ分h1 だけ浅くなる。
【0043】
従って、本発明では従来より外周側の溝の深さが(h1 +h2 )だけ浅くなり、バイオマス粉は前記粉砕テーブル5の外周側に移動し易くなる。更に、前記ダムリング24の省略により、バイオマス粉の前記凹溝6内での滞留がなくなり、外周側への移動が早くなる。
【0044】
尚、外周側溝角度θ1 =0とすると外周側の溝の深さは0となり、h1 +D2分溝が浅くなる。
【0045】
次に、前記凹溝6の幅は、従来2rsinθ2 であったのが、rsinθ1 +rsinθ2 (θ1 <θ2 ;rsinθ1 <rsinθ2 )となり、前記加圧ローラ9で加圧される領域が小さくなり、粉砕粒子径は、従来より大きくなる。
【0046】
而して、本発明に於いて、バイオマス粉の最大粒子径を1mm程度とし、更に前記ダムリング24、前記内部縁部26aを省略し、前記凹溝6の深さ、幅を小さくすることで、粉砕容量を大幅に増大することができる。
【0047】
次に、具体例を説明する。尚、以下に示す具体例では、内周側溝幅角度θ2 と外周側溝幅角度θ1 とを同一(θ1 =θ2 )に設定している。
【0048】
前記凹溝6中心の回転半径Rを675mm、該凹溝6の曲率半径rを189mmとし、本発明の外周側溝幅角度θ1 =31゜、外周側溝幅角度θ1 =31゜の時の外周側の溝の深さはD=27mmとなり、従来の溝幅角度θ1 =40゜とし、前記ダムリング24、前記内部縁部26aが設けられた状態と比較すると、本発明では従来例に比べ、深さは38mm低くなる。
【0049】
又、図3に於いて、従来の石炭ミルをバイオマスミルとして使用し、木質チップ、木質ペレットを単独で粉砕した場合と、本発明に係るバイオマスミルにより粉砕した場合の結果を示す。
【0050】
図3に示される様に、ミルモータ電力(駆動力)を略同一とした状態で、木質チップでは供給量が200kg/hから300kg/hに増大し、又木質ペレットでは400kg/hから500kg/hに増大しており、本発明による効果が確認できる。
【0051】
尚、バイオマス粉の外周側への移動を容易にすることは、外周溝幅角度θ1 を内周側溝幅角度θ2 より小さくすることでだけも実現できる。更に、外周溝幅角度θ1 =0°又は≒0、即ち外周側の溝幅を0、略0とすれば、バイオマス粉の外周側への移動を積極的に促進することができる。従って、粉砕するバイオマスの性質、性状に合わせて少なくとも外周溝幅角度θ1 =35°〜0°の範囲で選択することで、バイオマスの粉砕に最適な状態での粉砕が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の要部を示す説明図である。
【図2】従来例の要部を示す説明図である。
【図3】本発明により木質系バイオマスを単独で粉砕した場合と、従来例で木質系バイオマスを単独で粉砕した場合の比較を示す表である。
【図4】竪型ミルの概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 竪型ミル
5 粉砕テーブル
6 凹溝
7 テーブルセグメント
9 加圧ローラ
16 吹出し口
18 シュート
22 回転駆動部
24 ダムリング
26 エアポートリング
26a 内部縁部
27 粉砕炭層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に断面円弧状の凹溝がリング状に形成され、回転可能な粉砕テーブルと、前記凹溝に押圧される加圧ローラと、前記粉砕テーブルの周囲から空気を吹出す吹出し口と、前記粉砕テーブルの中心に木質系バイオマスを供給するシュートとを具備し、該シュートより木質系バイオマスを供給し、前記粉砕テーブルと前記加圧ローラ間で前記木質系バイオマスを粉砕し、粉砕した木質系バイオマスを前記吹出し口からの空気の噴出で搬送する様にしたバイオマスミルであって、前記凹溝の外周縁から前記吹出し口迄を平面としたことを特徴とするバイオマスミル。
【請求項2】
前記凹溝の少なくとも外周側溝幅角度を0°〜35°とした請求項1のバイオマスミル。
【請求項3】
前記凹溝の外周側溝幅角度を内周側溝幅角度より小さくした請求項1のバイオマスミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−119923(P2010−119923A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293770(P2008−293770)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】