説明

バイオマス利活用システム

【課題】 施設園芸用設備と炭化ガス化処理設備とを組み合わせることにより、施設園芸における課題を解決し、同時に二酸化炭素の排出抑制による温暖化防止、資源の有効利用及び廃棄物の減量化を可能としたバイオマスの利活用システムを提供する。
【解決手段】 木質系バイオマス10を炭化ガス化処理して炭化物14と分解ガス15を生成する炭化炉13と、前記分解ガス15を燃焼して熱エネルギを回収する廃熱ボイラ16と、外部から区画されて栽培環境が制御された条件下で植物の栽培を行なう施設園芸用設備50と、を備えたシステムであって、前記廃熱ボイラ16から排出される燃焼排ガス39を前記施設園芸用設備50に導入するようにし、好適には前記施設園芸用設備内のCO濃度を検出し、検出したCO濃度に基づき燃焼排ガス導入量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バイオマスを炭化ガス化処理して炭化物又は熱エネルギ等の有価物を回収し、これらの有価物を施設園芸用設備で有効利用するバイオマス利活用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策やエネルギの安定供給の確保、地域分散型電源の確保といった観点からバイオマスエネルギという再生可能でクリーンなエネルギ源が注目されている。また、廃棄物処理問題の顕在化に伴い、資源を有効利用し循環型社会を構築することにより環境保全及び省資源化を図ることが推奨されており、生物由来の有機性資源であるバイオマスを、エネルギ源や工業原料として総合的に利活用する技術が要望されている。
【0003】
一般にバイオマスとは、エネルギ源又は工業原料として利用することのできる生物体(例えば農業生産物又は副生成物、植物等)をいい、太陽エネルギ、空気、水、土壌等の作用により生成されるので無限に再生可能である。
このバイオマスを炭化ガス化処理することで熱、電力、炭化物等の有価物の回収が可能となり、また廃棄物としてのバイオマスを処理できるので、環境の浄化にも役立つ。さらに、新規に生産されるバイオマスも光合成によるCOの固定により生育されるので、大気中の二酸化炭素を減少させる機能を有する。近年、大気中の二酸化炭素濃度上昇による地球温度化の進行が問題となっているためバイオマスの利活用が要望されているが、それには多くの問題点を抱えており、実現化は難航しているのが現状である。
【0004】
これは、収集したバイオマスをエネルギ等の有価物に転換するシステム及び転換したエネルギを経済的合理性のもとに利用するシステムが未確立であることが原因となっている。即ち、バイオマスの収集、原料調達にコストがかかり、発電や炭化物販売から得られる収入だけでは事業採算が採れないこと、炭化物等の安定的需要先の確保が考えられていないこと、廃熱利用されておらず事業採算性向上に寄与していないこと、などが原因として考えられる。
【0005】
従来、木質系バイオマスをエネルギに転換する技術として、直接燃焼発電方式、炭化ガス化発電方式等が普及している。ここで一例として炭化ガス化発電方式を用いたシステムにつき説明すると、100t/日の木質系バイオマスを炭化炉で炭化処理することにより、約15t/日の炭化物が得られる。さらに炭化炉で発生した分解ガスを廃熱ボイラにて燃焼させ、この燃焼熱で蒸気を発生させて蒸気タービンに送給し、蒸気タービンに連結された発電機にて発電を行なうと、約1700kwの電力が得られるとともに、約6300Mcal/Hの廃熱が生じる。このようなエネルギ生産物の中で、従来は電力利用が中心であり、その他、炭化物の一部が固形燃料や融雪材、住宅用湿度調整材等に利用される場合もあるが、上記した原因からこれらの実用化実績も極めて少ないのが実状である。
【0006】
そこで、特許文献1(特開2003−23887号公報)では、バイオマスから回収した有価物を有効利用する方法として、前記有価物を植物の栽培施設で利用する循環型施設栽培方法を提案している。これは、植物工場にて発生した栽培残渣をメタン発酵し、発生したバイオガスを燃料として熱併給型発電装置で発電するか、若しくはバイオガスを燃料としてボイラ燃焼し、発電装置若しくはボイラにて回収された電気、熱、炭酸ガスを前記栽培施設にて利用するものである。これにより、植物工場で発生した栽培残渣から必要な資源を回収し、植物の栽培に利用するという工場内循環サイクルが達成できる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−23887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、近年、二酸化炭素の排出抑制による温暖化防止、資源の有効利用及び廃棄物の減量化を目的として、バイオマスの利活用が要望されており、特許文献1記載のように植物栽培施設での回収資源の利用が効果的な方法として提案されている。
しかし、特許文献1は植物工場内での閉サイクルとなっており植物の栽培に必要なだけの資源を調達することは困難である。従って、外部からバイオマスを供給する方法も考えられるが、メタン発酵処理は長時間を要するため、広域的に排出される大量のバイオマスを処理することは困難である。特に、木質系バイオマスはメタン発酵にて分解され難い成分を含有しているため、大量の木質系バイオマス処理には不適当である。
【0009】
一方、植物を栽培する施設園芸においては、以下の点に留意する必要があった。
即ち、温度調整用の熱源、特に冬季における熱源の確保、及び高品質な土壌改良剤の確保が重要とされる。また、同一作物を続けて栽培することが多いため、土壌病害虫が増加して連作障害が問題となるが、従来はこの対策として臭化メチル等の農薬による土壌殺菌法が用いられていた。しかし、臭化メチルは地球温暖化ガスであるため全廃することが要求されており、この臭化メチルに替わる土壌殺菌法が求められている。
さらに、植物生長促進を目的とした二酸化炭素施用が重要な課題の一つとして挙げられる。二酸化炭素施用の効果は様々な作物で認められており、栽培空間を適正な二酸化炭素濃度とすることにより植物成長促進、増収が達成できる。
【0010】
従って、本発明では施設園芸用設備とエネルギ転換設備とを組み合わせることにより、上記施設園芸における課題を解決し、同時に二酸化炭素の排出抑制による温暖化防止、資源の有効利用及び廃棄物の減量化を可能としたバイオマスの利活用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、木質系バイオマスを炭化ガス化処理して炭化物と分解ガスを生成する炭化炉と、前記分解ガスを燃焼して熱エネルギを回収する廃熱ボイラとを備え、前記木質系バイオマスを炭化物又は熱エネルギ等の有価物に転換するエネルギ転換設備と、外部から区画されて栽培環境が制御された条件下で植物の栽培を行なう施設園芸用設備と、を備えたシステムであって、
前記廃熱ボイラから排出される燃焼排ガスを前記施設園芸用設備に導入し、該施設園芸用設備内の栽培植物の成長を促進することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、エネルギ転換設備の生産物である二酸化炭素を施設園芸用設備に導入することで、植物成長が促進され、作物の増産、増収が見込める。また、二酸化炭素を植物に転換することになるため、温暖化対策にも貢献できる。
尚、前記施設園芸用設備とは、資材を利用して作り出した人工的な環境で植物を生産する設備であり、ガラス室やプラスチックハウス等で外部から区画した閉鎖的又は半閉鎖的な空間で、保温、暖房などの温度調整や換気などにより栽培環境がある程度制御されるものである。
【0013】
前記発明において、前記施設園芸用設備における栽培空間の二酸化炭素濃度を検出するCO濃度検出手段と、該CO濃度検出手段にて検出された二酸化炭素濃度に基づき、前記燃焼排ガスの導入量を制御するガス導入量制御手段を設けることが好ましく、また前記ガス導入量制御手段が、前記栽培空間で栽培される植物の種類に応じて燃焼排ガスの導入量を調整することがさらに好ましい。
従来、植物への二酸化炭素施用の効果は様々な植物で認められているが、供給する二酸化炭素量は少なすぎると効果が発揮されず、また過剰であると成長の阻害となる惧れがある。従って、前記栽培空間の二酸化酸素濃度を正確に把握し、これに基づき燃焼排ガス導入量を制御することによりこれらの問題を防止できる。
また、その適正量は植物によって異なるため、予め前記ガス導入量制御手段に植物の種類を入力しておくことによってその適正量を導き、燃焼排ガス導入量を調整することにより、最適な栽培環境で植物を栽培することができる。
【0014】
また、前記炭化炉で生成した炭化物を含む土壌改良剤又は改良土壌を製造する改良資材製造手段を設け、該製造した土壌改良剤又は改良土壌を前記施設園芸用設備で利用することを特徴とする。
このように、前記炭化炉で生産される炭化物を、施設園芸の土壌に作用させることにより、土壌改良剤としての活用ができ、また該炭化物を混合した土壌は改良土壌として利用できる。また、炭化物は二酸化炭素の半永久的固定であるため、温暖化対策にも貢献できる。
【0015】
さらに、前記廃熱ボイラで生成した水蒸気を前記施設園芸用設備、若しくは前記炭化物を混合した改良土壌を製造する改良資材製造手段に送給し、該水蒸気を土壌と接触させて土壌の殺菌を行なうようにしたことを特徴とする。
これは、前記廃熱ボイラで生成した水蒸気を施設園芸用設備内の土壌殺菌に活用することにより、従来、土壌殺菌剤として利用していた臭化メチルの代替とすることができ、温暖化対策に貢献でき、無害で環境に優しく且つ低コストな土壌殺菌法が確立できる。
また、炭化物を混合した改良土壌に熱を作用・殺菌することで、臭化メチルを使用しない付加価値の高い土壌改良効果が得られる。
【0016】
また、前記廃熱ボイラで回収した熱エネルギにより温水又は水蒸気からなる温ブラインを生成し、該温ブラインを前記施設園芸用設備に供給して栽培空間の温度調整を行なう温度調節手段を設けたことを特徴とする。このとき、前記施設園芸用設備の栽培空間の温度を検出する温度検出手段を設け、検出温度に基づき温ブラインの供給を制御すると良い。
さらに、前記エネルギ転換設備が、前記廃熱ボイラにて生成した水蒸気を利用して発電を行なう蒸気タービン発電機を備え、該蒸気タービン発電機により発電した電力を前記施設園芸用設備に供給するようにしたことを特徴とする。
エネルギ転換設備の生成物である熱又は電気を、施設園芸用設備の温度調整用熱源又は照明等の電力源として活用することにより、熱・電力供給先の確保ができる。前記施設園芸用設備側からみると、従来施設園芸の温度調整用に使用していた化石燃料又は電気が不要となり、安価な熱源、電力を導入できるばかりでなく温暖化ガス削減にも貢献できる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、炭化炉及び廃熱ボイラを備えたエネルギ転換設備と施設園芸用設備とを組み合わせて、木質系バイオマスを原料としてエネルギ転換設備にて得られた熱、電力、炭化物、二酸化炭素を施設園芸用設備にて有効利用することにより、良好な植物の栽培環境を提供でき、同時に資源の循環サイクルが形成され、資源の有効利用及び廃棄物の減量化が達成できるとともに、二酸化炭素を炭化物或いは植物に転換できるため温暖化対策にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係るバイオマス利活用システムの全体構成図、図2は図1に示した改良土壌製造装置の構成図である。
本実施例における処理対象は木質系バイオマスで、例えば間伐材、伐採木材、剪定枝、製材廃材、建築廃材、稲わら等が挙げられる。
【実施例】
【0019】
本実施例に係るバイオマス利活用システムは、木質系バイオマスを有価物に転換するエネルギ転換設備と、植物を栽培する施設園芸用設備とを組み合わせたシステムである。
図1に示されるように、本実施例のバイオマス利活用システムは、木質系バイオマスを炭化ガス化処理する炭化炉13と、炭化炉にて発生した分解ガス15を燃焼して蒸気を生成するボイラ16と、ボイラ16にて生成した蒸気を利用して発電する蒸気タービン21及び発電機22と、ボイラ16から排出される燃焼排ガスを処理する集塵機28等の排ガス処理設備と、前記炭化炉13にて発生した炭化物14を原料として改良土壌を製造する改良土壌製造装置40と、野菜、花、果樹等を生産する施設園芸用設備50と、を主要構成とする。
【0020】
前記炭化炉13は、木質系バイオマス10を無酸素雰囲気若しくは低酸素雰囲気下で加熱し、一酸化炭素、水素、炭化水素ガスを主成分とする分解ガス15と炭化物14を生成する装置であり、公知の各種装置を採用可能であって特に限定されるものではないが、特に外部加熱式のロータリーキルンが好ましい。この場合ロータリーキルンは、バイオマスが供給されて熱分解反応がなされる熱分解ドラムと、その周囲に加熱ガスが導入される外殻とを有し、間接加熱により炉内を300〜800℃、好ましくは400〜550℃に維持し、バイオマスを熱分解し、炭化物14と分解ガス15を生成する。具体的には、前記炭化炉13ではCからなる木質系セルローズを酸素不足下で加熱することにより、炭化水素系の分解ガス15と炭化物14に分解する。
【0021】
前記ボイラ16は、前記分解ガス15を燃料とした燃焼室を備え、燃焼熱若しくは前記分解ガス15の廃熱を利用して水蒸気を生成する装置である。該ボイラ16の蒸気送出口は流路を介して前記蒸気タービン21に接続され、該蒸気タービン21の駆動軸には前記発電機22が連結されている。また、前記蒸気タービン21から排出した水蒸気20は復水器23、復水タンク24を経てボイラ16に返送される。
また、前記ボイラ16の後段には該ボイラ16から排出された燃焼排ガス25の廃熱を空気32と熱交換する空気予熱器26が設けられている。
【0022】
前記改良土壌製造装置40は、土壌51に炭化物14を添加して作物の生育に適した土壌に改良する装置であり、その概略構成を図2に示す。
図2に示されるように、前記改良土壌製造装置40は、土壌51を貯留する土壌貯留ホッパ41と、前記炭化炉13で生成した炭化物14を貯留する炭化物貯留ホッパ42と、これらを搬送するコンベア43と、撹拌機を有する撹拌装置44と、前記ボイラ16で生成した水蒸気(若しくは前記蒸気タービンから排出した水蒸気36)を導入して土壌を蒸気により殺菌する蒸気殺菌槽45と、から構成される。
前記改良土壌製造装置40では、前記土壌貯留ホッパ41及び前記炭化物貯留ホッパ42からコンベアを介して所定量ずつ土壌51及び炭化物14が撹拌装置44に供給され、該撹拌装置44内で撹拌されて均質に混合した土壌は、前記蒸気殺菌層45に送給され、ここで水蒸気36の導入により約80〜100℃の温度に加熱され、高温殺菌される。
【0023】
前記施設園芸用設備50とは、資材を利用して作り出した人工的な環境で作物を生産する設備であり、ガラス室やプラスチックハウス等で外部から区画した閉鎖的又は半閉鎖的な栽培空間で、保温、暖房などの温度調整や換気などにより栽培環境をある程度制御して、野菜、花、果樹等の植物を栽培する設備をいう。該施設園芸用設備50には、室内温度調節手段、換気手段、光供給手段等が備えられている。
さらに本実施例では、施設園芸用設備50に前記ボイラ16から排出された燃焼排ガス39が導入されるようになっている。これにより、燃焼排ガス中の二酸化炭素により植物の成長促進、増収が期待できる。このとき、前記施設園芸用設備50に栽培空間の二酸化炭素濃度を検出するCO濃度検出センサ55を設置し、該センサ55により検出された二酸化炭素濃度に基づき燃焼排ガス39の導入量を制御するガス導入量制御手段57を設けることが好ましい。該ガス導入量制御手段57により燃焼排ガス管路に設けられたバルブ56を開度調整し、燃焼排ガス導入量を調整する。
【0024】
次に、本実施例に係るシステムの作用を説明する。
木質系バイオマス10は投入ホッパ11に投入され、スクリューフィーダ12により定量的に炭化炉13内に供給される。該炭化炉13内で木質系バイオマス10は熱分解し、炭化物14と分解ガス15を生成する。炭化物14は、前記改良土壌製造装置40に送給されて土壌改良剤として用いられ、ここで製造された改良土壌51’は施設園芸用設備50にて利用される。また、前記改良土壌51’又は前記炭化物は販売するようにしても良い。
前記炭化炉13で発生した分解ガス15は前記ボイラ16に送給され、燃焼される。また、前記ボイラ16には空気押込ファン31により加熱空気32が導入され、前記燃焼により昇温された後に加熱用ガス17として前記炭化炉13に送給され、炭化炉16を間接加熱する。尚、前記加熱空気32は、前記空気予熱器26により予熱されているものである。前記炭化炉13から排出された加熱用ガス18はボイラ16に返送される。
【0025】
一方、前記ボイラ16で生成された水蒸気20は、蒸気タービン21に送られて該タービンを回転させ、発電機22を駆動させることにより発電が行なわれる。蒸気タービン21から排出された蒸気は、復水器23に送給され、ここで水に戻された後復水タンク24に貯留され、再びボイラ16に供給される。前記発電機22により発電した電気は、システム内のファン、照明等の機器、或いは施設園芸用設備50の照明等の電力源として利用できる。
また、前記蒸気タービン抽気の一部を抜き出し、この抜き出した温度約200〜250度の水蒸気35を施設園芸用設備50に送給し、土壌中に埋設した水蒸気供給管52により噴出させ、土壌の殺菌を行なうようにすることが好ましい。また、前記水蒸気の他の一部を分岐させ、該水蒸気36を前記改良土壌製造装置40に送給して蒸気殺菌槽45に導入し、土壌の殺菌を行なうようにしても良い。
【0026】
前記ボイラ16から排出される燃焼排ガス25は、空気予熱器26に送給される。該空気予熱器26では、前記燃焼排ガス25と空気32とを熱交換して加熱空気32を生成するとともに、給水ポンプ37から供給される水を加熱して温水38(若しくは水蒸気)を生成する。ここで生成された温水38は、前記施設園芸用設備50に送給され、設備内の温度調整用として用いられる。
さらに、前記空気予熱器26を経て降温された燃焼排ガスは集塵機28に導入され、ガス中の煤塵、飛灰を捕集除去された後、誘引ファン29により煙突から大気放出される。
【0027】
一方、前記集塵機28から排出されたクリーンな排ガス39の一部は前記施設園芸用設備50に導入される。これにより植物の成長促進及び増収を目的とした二酸化炭素施用の効果を得ることができる。
このとき、前記燃焼排ガス39の導入量は、前記CO濃度検出センサにより検出された栽培空間の二酸化炭素濃度に基づき、前記ガス導入量制御装置57によってバルブ56を開閉制御し、設備内の二酸化炭素濃度が栽培植物に適した濃度となるように調整される。勿論、このとき排ガス中の二酸化炭素濃度をCO濃度検出センサにより検出するなどして、必要な二酸化炭素濃度に対応する燃焼排ガス量を送給するようにする。
【0028】
また、前記施設園芸用設備50に送給する燃焼排ガス導入量は、栽培する植物種類に応じて調節することが好ましい。
例えば、葉菜類(レタス、ほうれん草、シュンギク等)では750〜950ppmの二酸化炭素施用により50〜100%の増収が見込まれ、野菜類(トマト、ナス、ピーマン、キュウリ等)では750〜1500ppmの施用で30%の増収が見込まれ、根菜類では、ダイコンで750ppmで2倍、ハツカダイコンで2000ppmで3倍、コカブで1500ppmで10倍の増収が夫々見込まれる。従って、750ppm〜2000ppmの範囲内で、且つ設備内の空気中の二酸化炭素濃度が栽培植物に応じた濃度となるように前記ガス導入量制御装置57により燃焼排ガス導入量を制御する。
【0029】
本実施例のごとく、前記施設栽培用設備50内における栽培空間の二酸化酸素濃度を正確に把握し、これに基づき燃焼排ガス導入量を制御することにより適正な二酸化炭素量を施用することができ、植物の成長促進、増収に効果的である。また、植物種類に応じた燃焼排ガス導入量の適正量を導き、これに応じて燃焼排ガス導入量を調整することにより、最適な栽培環境で植物を栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係るバイオマス利活用システムの全体構成図である。
【図2】図1に示した改良土壌製造装置の構成図である。
【符号の説明】
【0031】
10 バイオマス
13 炭化炉
14 炭化物
15 分解ガス
16 ボイラ
17 加熱用ガス
20、35、36 水蒸気
21 蒸気タービン
22 発電機
25 燃焼排ガス
26 空気予熱器
28 集塵機
32 加熱空気
40 改良土壌製造装置
41 土壌貯留ホッパ
42 炭化物貯留ホッパ
43 コンベア
44 撹拌装置
45 蒸気殺菌槽
50 施設園芸用設備
55 CO濃度検出センサ
56 バルブ
57 ガス導入量制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系バイオマスを炭化ガス化処理して炭化物と分解ガスを生成する炭化炉と、前記分解ガスを燃焼して熱エネルギを回収する廃熱ボイラとを備え、前記木質系バイオマスを炭化物又は熱エネルギ等の有価物に転換するエネルギ転換設備と、外部から区画されて栽培環境が制御された条件下で植物の栽培を行なう施設園芸用設備と、を備えたシステムであって、
前記廃熱ボイラから排出される燃焼排ガスを前記施設園芸用設備に導入し、該施設園芸用設備内の栽培植物の成長を促進することを特徴とするバイオマス利活用システム。
【請求項2】
前記施設園芸用設備における栽培空間の二酸化炭素濃度を検出するCO濃度検出手段と、該CO濃度検出手段にて検出された二酸化炭素濃度に基づき、前記燃焼排ガスの導入量を制御するガス導入量制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1記載のバイオマス利活用システム。
【請求項3】
前記ガス導入量制御手段が、前記栽培空間で栽培される植物の種類に応じて燃焼排ガスの導入量を調整するようにしたことを特徴とする請求項2記載のバイオマス利活用システム。
【請求項4】
前記炭化炉で生成した炭化物を含む土壌改良剤又は改良土壌を製造する改良資材製造手段を設け、該製造した土壌改良剤又は改良土壌を前記施設園芸用設備で利用することを特徴とする請求項1記載のバイオマス利活用システム。
【請求項5】
前記廃熱ボイラで生成した水蒸気を前記施設園芸用設備、若しくは前記炭化物を混合した改良土壌を製造する改良資材製造手段に送給し、該水蒸気を土壌と接触させて土壌の殺菌を行なうようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオマス利活用システム。
【請求項6】
前記廃熱ボイラで回収した熱エネルギにより温水又は水蒸気からなる温ブラインを生成し、該温ブラインを前記施設園芸用設備に供給して栽培空間の温度調整を行なう温度調節手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のバイオマス利活用システム。
【請求項7】
前記エネルギ転換設備が、前記廃熱ボイラにて生成した水蒸気を利用して発電を行なう蒸気タービン発電機を備え、該蒸気タービン発電機により発電した電力を前記施設園芸用設備に供給するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオマス利活用システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−191876(P2006−191876A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7968(P2005−7968)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】