説明

バイオマス粉砕装置、及び該装置の制御方法

【課題】装置内に吹き込む空気量を適正に設定することにより分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼を可能とした。
【解決手段】円筒型ハウジング2内にて回転駆動する粉砕テーブル3上に供給されたバイオマス固形物100を、テーブルの回転と連動して作動するローラ5により押圧して粉砕し、ハウジング下部から供給した一次空気にて生成された吹き上げ気流によりバイオマス粉砕物を上方に搬送して粗粉と微粉とに分級するバイオマス粉砕装置1において、ハウジング2内の上方に、吹き上げ気流の気流通路Aが拡縮する絞り部を設け、該絞り部を通過する吹き上げ気流が所定の空塔速度の範囲内となるように絞り部の断面積を設定し、好適には前記絞り部の空塔速度が0.5〜2.0m/sの範囲内となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス固形物を粉砕して微粉化するバイオマス粉砕装置、及び該装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
再生可能エネルギであるバイオマスの高効率利用の観点から、バイオマスを燃料として用いることが行われている。燃料として用いる方法の一つに、バイオマス固形物を粉砕して微粉化し、微粉炭焚きボイラに供給して燃料として用いるものがある。これは、石炭とバイオマスとをそれぞれを単独で粉砕する単独粉砕方式と、石炭とバイオマスとを混合してから粉砕する混合粉砕方式とが知られている。何れの方式においても、バイオマス固形物を粉砕するためのバイオマス粉砕装置が必要であるが、従来の石炭焚きボイラで用いられている既設ミルを用いようとした場合、既設ミルの能力制約から最大でも3cal/%程度に留まっていた。そこで、既設ミルとは異なり、バイオマスを効率的に且つ安定的に運転できるバイオマスの粉砕装置が望まれていた。
【0004】
特許文献1(特開2004−347241号公報)には、石炭を粉砕する粉砕機と、石炭を粉砕機に供給する石炭供給管及び石炭バンカを備えた石炭供給装置と、前記石炭供給管にバイオマスを定量的に供給するバイオマス定量供給手段とを備えて、バイオマス定量供給手段からのバイオマスの供給を調整してバイオマス粉砕装置の運転状態を安定化する構成が開示されている。バイオマス粉砕装置は、例えば図5に示される装置が用いられる。バイオマス供給管201より粉砕テーブル202上に供給されたバイオマス固形物を粉砕ローラ203により粉砕し、バイオマス粉砕物を粉砕テーブル202の外周に排出し、テーブル202外周下方から噴出される空気によって上方に搬送されて、バイオマス粉砕物を微粉と粗粉に分級する。
また、特許文献2(特開2005−113125号公報)には、木質燃料を粉砕テーブル上に供給し、粉砕ローラで粉砕する竪型粉砕機を用いて、テーブル外周下方からの空気流により被粉砕物を上方に搬送し、微粉と粗紛とに分級するようにした構成が開示されており、ここでは空気流の流量と粉砕テーブルの直径或いはテーブル外周開口部面積との関係を設定することにより分級性能を向上させるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−347241号公報
【特許文献2】特開2005−113125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイオマス固形物を粉砕してボイラへ気流搬送して燃焼するシステムでは、バイオマスの粉砕性、乾燥能力、搬送性の観点からは、バイオマスの状態、即ちバイオマスの水分、大きさ、材種に応じて、適宜バイオマス粉砕装置の運転状態を調整する必要があり、特許文献1、2等に記載されるようなバイオマス粉砕装置の空気量は多いほど運用範囲が広がるが、ボイラでの燃焼の観点からは、空気量が過剰となると燃料の燃焼性が悪化し、NOの発生、未燃分増加等の問題が発生してしまう。一方、空気量が少なすぎると、過粉砕となり動力コストが増大し、装置の振動が大きくなり、動力ハンチングなどの不安定運転状態となってしまう。
【0007】
そこで、バイオマス粉砕物を、バイオマス粉砕装置から直接ボイラへ気流搬送するシステムではなく、バイオマス粉砕装置から気流搬送して排出したバイオマス粉砕物を気流から分離回収して一旦貯留部に貯めて、適宜貯留部からボイラへ搬送するシステムが考えられるが、このシステムでは、構成機器点数が増加してしまい、安定運転への信頼性の低いシステムとなってしまう。
また、微粉炭などに比べてバイオマス粉砕物は水分変動が大きく、バイオマス粉砕物を搬送する搬送管等に付着して搬送を阻害する惧れがあったり、バイオマス粉砕物は可燃性が高いため、粉砕装置内或いは搬送管等で発火する惧れがあったりし、安全に且つ安定して粉砕、搬送を行うことが難しかった。
【0008】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、装置内に吹き込む空気量を適正に設定することにより分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼を可能としたバイオマス粉砕装置を提供することを目的とする。また、水分変動が大きいバイオマスに対しても安定運転が可能で且つ安全性の高いバイオマス粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、円筒型ハウジング内にて回転駆動する粉砕テーブル上に供給されたバイオマス固形物を、前記テーブルの回転と連動して作動するローラにより押圧して粉砕し、前記ハウジングの下部から供給した一次空気により吹き上げ気流を形成し、該吹き上げ気流によりバイオマス粉砕物を上方に搬送して粗粉と微粉とに分級するバイオマス粉砕装置において、
前記ハウジング内の上方に、前記吹き上げ気流の気流通路が拡縮する絞り部を設け、該絞り部を通過する吹き上げ気流が所定の空塔速度の範囲内となるように、該絞り部の断面積を設定したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、装置内に吹き込む空気量を適正に設定することができ、分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼が可能である。即ち、バイオマス粉砕装置上部に絞り部を形成することにより、過剰に一次空気を供給することなく一次空気の吹き上げ気流の速度(空塔速度)を維持することができ、安定した分級が可能となる。
【0011】
また、前記絞り部の空塔速度が、0.5〜2.0m/sの範囲内であることを特徴とする。
このように、絞り部の空塔速度を上記範囲内に設定することにより、バイオマス粉砕装置の分級性能を維持し、安定運転が可能となるとともに、一次空気の供給量が過剰となることを防止できる。即ち、空塔速度が0.5m/s以下であると、空気量が少なすぎて過粉砕、装置振動の増大、動力ハンチング、動力コスト増大等の問題が生じ、空塔速度が2.0m/s以上であると、粉砕物中に粗粉が多く混入し、燃焼性が悪くなる。従って、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0012】
さらに、前記ハウジングの上部から下方に向けて延設される漏斗状のファンネルを備えており、
前記ファンネルの外面と前記ハウジングの内面とで形成された吹き上げ気流通路と、前記ファンネル上部の空気通過口を介して前記吹き上げ気流通路に連通し、該ファンネル内面で形成された下降気流通路とを備え、
前記ファンネルの傾斜により前記吹き上げ気流通路に前記絞り部が形成されていることを特徴とする。
このように、ファンネルにより絞り部を形成することにより、簡単な構成で以って絞り部を形成することができ、既存の設備にも適用可能である。また、ファンネルを備えることにより、装置内の吹き上げ気流と下降気流とが衝突して乱流が発生することを防止可能であるとともに、必要な空塔速度を維持することができる。
【0013】
さらにまた、前記バイオマス粉砕装置が、搬送管によりボイラの燃焼設備に直接接続されていることを特徴とする。
このように、本発明によれば、一次空気に搬送されたバイオマス粉砕物を直接燃焼設備に導入する場合に、燃焼設備にて必要とされる空気量の範囲内で、バイオマス粉砕装置を安定して運転することが可能である。
【0014】
また、円筒型ハウジング内にて回転駆動する粉砕テーブル上に供給されたバイオマス固形物を、前記テーブルの回転と連動して作動するローラにより押圧して粉砕し、前記ハウジングの下部から供給した一次空気により吹き上げ気流を形成し、該吹き上げ気流によりバイオマス粉砕物を上方に搬送して粗粉と微粉とに分級するバイオマス粉砕装置の制御方法において、
前記ハウジングに供給される一次空気の入口温度を250℃以下、前記バイオマス粉砕物を搬送した一次空気の出口相対湿度を40%以下、出口温度と露点の温度差を20℃以上となるように制御することを特徴とする。
【0015】
このように、一次空気の入口温度と、出口相対湿度と、出口温度と、露点温度の差とを夫々適正な値に設定することにより、水分変動が大きいバイオマスに対しても安定運転が可能で且つ安全性の高い運転が可能となる。
さらに、前記バイオマス粉砕物を搬送した一次空気が、搬送管を介してボイラの燃焼設備に直接導入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、装置内に吹き込む空気量を適正に設定することができ、分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼が可能である。
バイオマス粉砕装置上部に絞り部を形成することにより、過剰に一次空気を供給することなく一次空気の吹き上げ気流の速度を維持することができ、安定した分級が可能となる。また、ファンネルにより絞り部を形成することにより、簡単な構成で以って絞り部を形成することができ、既存の設備にも適用可能である。さらに、ファンネルを備えることにより、装置内の吹き上げ気流と下降気流とが衝突して乱流が発生することを防止可能であるとともに、必要な空塔速度を維持することができる。
また、一次空気の入口温度と、出口相対湿度と、出口温度と、露点温度の差とを夫々適正な値に設定することにより、水分変動が大きいバイオマスに対しても安定運転が可能で且つ安全性の高い運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1実施形態に係るバイオマス粉砕装置の概略構成を示す側断面図、図2は本発明のバイオマス粉砕装置をボイラ火炉設備に適用した例を示す構成図、図3は本発明の第2実施形態に係るバイオマス粉砕装置の概略構成を示す側断面図、図4は本発明の第2実施形態に係るバイオマス粉砕装置の各性能に関する解析結果を示す図である。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るバイオマス粉砕装置1は、円筒型のハウジング2を有しており、該ハウジング2内下部に略円形台状の粉砕テーブル3が設けられ、該粉砕テーブル3の上方に粉砕ローラ5が設けられているとともに、前記ハウジング2内上部に、バイオマス固形物の供給管7と、気流搬送されたバイオマス粉砕物を分級する分給器6とが設けられている。また、ハウジング2の下部には一次空気供給手段が設けられており、ここから供給された一次空気が粉砕テーブル3より下方から上昇流を形成するようになっている。さらに、粉砕テーブル3の上方には、漏斗形状を有するファンネル8が設けられており、該ファンネル8により一次空気の吹き上げ気流通路Aと下降気流通路Bを隔離している。
【0019】
前記粉砕テーブル3は略円形台状に形成され、該粉砕テーブル3の上面は、該テーブル上に載置されたバイオマス固形物がこぼれ落ちないように凹状に形成されている。該粉砕テーブル3は、テーブル下側から延設される駆動軸にモータ4が接続され、該モータ4によって粉砕テーブル3が回転駆動するようになっている。
前記粉砕ローラ5は、粉砕テーブル3の中心より外側にずれた位置の上方に設けられている。該粉砕ローラ5は、粉砕テーブル3の回転と連動して回転しながら、テーブル上に載置されたバイオマス固形物100に押圧力を作用せしめてこれを粉砕する。このとき、前記モータ4には、変速機、インバータ、ホールチェンジが、前記粉砕ローラ5には粉砕荷重を変化させる可変油圧源又はスプリングが接続されており、粉砕テーブル3の周速の増減と、粉砕ローラ5の粉砕荷重を無段階若しくは段階的に減増させ、粉砕動力が定格範囲内、好ましくはほぼ一定になるように制御装置(不図示)で制御可能に構成されている。
【0020】
前記供給管7は、ハウジング2の天板に垂直に貫挿され、バイオマス固形物100を粉砕テーブル3上に落下させるように設置される。
前記分給器6は、一次空気により風力分級(一次分級)を通過した後のやや細かな粉粒体を二次分級するものであり、固定式分給器(サイクロンセパレータ)或いは回転式分給器(ロータリーセパレータ)等が用いられる。
前記一次空気供給手段は、所定流量で且つ所定温度の一次空気をハウジング2内に供給するものであり、空気流量の調整には誘引ファン又はバルブ等が用いられる。また、必要に応じて温度調整手段を備える。空気流量或いは温度は、不図示の制御装置により適宜制御される。
【0021】
前記粉砕テーブル3の外周縁とハウジング2の内周面との間には隙間9が設けられており、前記一次空気供給手段から供給された一次空気は、この隙間から粉砕テーブル3上方に吹き抜けるようになっている。好ましくは、前記隙間9に偏流ベーン10を設ける。該偏流ベーン10は、一次空気の吹き出し方向を調整するものであり、さらに好適には、偏流ベーン10の角度を任意に制御可能とする。
前記ファンネル(整流板)8は、ハウジング2上部に固定され、下方に向けて延設されている。該ファンネル8は漏斗状に形成され、上部から下部に向けて拡縮している。該ファンネル8の下端は粉砕テーブル3の上方まで延びている。該ファンネル下端は、前記隙間9より内側に位置させるようにし、該隙間9より吹き上げられた一次空気がファンネル8の外側、即ちファンネル8とハウジング2の間の吹き上げ気流通路Aを通るようにする。
前記ファンネル8の上部には空気通過口11が設けられ、該空気通過口11には偏流ベーン12が配設されている。該偏流ベーン12は、吹き上げ気流通路Aを通った一次空気をファンネル8の内側に送り込む際に、一次空気の吹き出し方向を調整するものであり、好適には、偏流ベーン10の角度を任意に制御可能とする。偏流ベーン12を通過した一次空気は、ファンケル8内側に形成された下降気流通路Bに送られる。
【0022】
また、本実施形態では、吹き上げ気流通路A内における空塔速度が、0.5〜2.0m/sとなるように、ハウジング2の胴径、一次空気量、及び吹き上げ気流通路Aの開口面積(断面積)を設定する。
さらにファンネル8を設けない別の形態として、ハウジング2の側壁を上方に向けて拡縮させ、ハウジング2自体により上方に絞り部を形成させるようにしてもよい。
吹き上げ気流通路Aでは、上方にいくに従って一次空気の風速が増大し、分級に必要とされる空塔速度が十分に確保され、安定した分級が行われる。
【0023】
上記した構成を備えたバイオマス粉砕装置において、バイオマス固形物100は供給管7を介して粉砕テーブル3の中央部に供給され、該粉砕テーブル3上において遠心力によって外周方向に移動して、粉砕テーブル3と粉砕ローラ5との間にかみこまれ、粉砕される。ハウジング2の下部からは一次空気供給手段を介して一次空気が供給され、該一次空気は隙間9を通ってハウジング2内に吹き上げ気流が形成される。粉砕されたバイオマス粉体は、この吹き上げ気流によってファンネル8外側の吹き上げ気流通路Aを通ってハウジング上部に搬送される。吹き上げ気流通路Aはファンネル8により絞り部が形成されているため、少ない一次空気量でも分級に必要とされる空塔速度が確保され、安定的に分級が行われる。
ハウジング2の上部に搬送された粉体のうち粗いもの(粗粉)は重力で粉砕テーブル3上に落下して再度粉砕される。一方、微粉は、ハウジング2の上部の分級機6により再度分級される。所定の粒径より小さい微粉は吹き上げ気流によって搬出される。分級機6を貫通しなかった所定粒径より大きい粗粉は、粉砕テーブル3上に落下して再度粉砕される。
【0024】
ここで、一例として、ボイラ火炉を備えたシステムに上記したバイオマス粉砕装置を適用した場合について図2に示す。
図2に示すように、本実施例に係るシステムは、必要に応じて所定粒径以下まで一次破砕(粗破砕)、乾燥されたバイオマス固形物100が貯蔵されるバイオマス貯蔵設備20と、バイオマス固形物100が供給されるホッパ21を備えたバイオマス粉砕装置1と、石炭を受け入れるホッパ25、26を備えた石炭粉砕装置27、28と、バイオマス粉砕装置1にて得られたバイオマス粉体及び石炭粉砕装置27、28にて得られた石炭粉末が供給されるボイラ火炉30と、を備える。
木屑等のバイオマス固形物100はある程度大きさを揃えバイオマスチップとしてバイオマス貯蔵設備20に貯蔵され、その後、バイオマスホッパ21に供給される。バイオマスチップは、バイオマスホッパ21から粉砕装置1に供給され、粉砕テーブル3と粉砕ローら5により粉砕される。粉砕後のバイオマス粉砕物および石炭粉砕物はボイラ火炉30に供給され、ボイラ火炉30内でバイオマス粉体と石炭粉体が混合して燃焼するようになっている。
【0025】
ボイラ火炉30の炉本体31には、燃料供給ノズルとこれに共働するバーナが配設されている。燃焼により発生した燃焼排ガスは、炉内に配設された伝熱管32を加熱して煙道へ送られる。炉本体31の炉出口に設けた煙道の途中には空気加熱器(AH)33が配置され、空気加熱器33を通った燃焼排ガスは、灰捕集装置等の排ガス処理設備を経て大気放出される。空気加熱器33によって外気34を加熱して生成した高温空気35は石炭粉砕装置27、28に供給され、石炭の乾燥に用いられる。また燃焼排ガスの一部37は、誘引ファン36によりバイオマス粉砕装置1に供給され、バイオマスの分級、乾燥に用いられる。
【0026】
このように第1実施形態によれば、装置内に吹き込む空気量を適正に設定することができ、分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼が可能である。即ち、バイオマス粉砕装置上部に絞り部を形成することにより、過剰に一次空気を供給することなく一次空気の吹き上げ気流の速度(空塔速度)を維持することができ、安定した分級が可能となる。特に、ファンネル8により絞り部を形成することにより、装置内の吹き上げ気流と下降気流とが衝突して乱流が発生することを防止可能であるとともに、必要な空塔速度を維持することができる。
さらに、一次空気に搬送されたバイオマス粉砕物を直接燃焼設備に導入する場合に、燃焼設備にて必要とされる空気量の範囲内で、バイオマス粉砕装置を安定して運転することが可能である。
【0027】
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態を示す。尚、本実施形態では一例として図3に示すバイオマス粉砕装置の制御方法につき説明するが、バイオマス粉砕装置の構成はこれに限定されるものではなく、他の構成を有する装置にも適用できる。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
バイオマス粉砕装置1は、円筒型ハウジング2と、該ハウジング2の下部に設けられた粉砕テーブル3と、該粉砕テーブル3の上方に設けられた粉砕ローラ5と、ハウジング2内上部に設けられたバイオマス固形物の供給管7と、気流搬送されたバイオマス粉砕物を分級する分給器6と、漏斗形状を有するファンネル8と、ハウジング2下部に設けられた一次空気供給手段と、を備えている。
【0028】
前記一次空気供給手段は、一次空気を加熱する空気加熱器18と、該加熱した空気をハウジング2内に供給する誘引ファン19とを備える。
さらに、バイオマス粉砕装置1に一次空気を供給する一次空気供給手段の入口温度を測定する温度測定手段15と、バイオマス粉砕物を搬送した一次空気の排出部である出口温度を測定する温度測定手段16と、該出口の相対湿度を測定する湿度測定手段17とを備え、これらの測定手段15、16、17に基づいて空気加熱器18を制御し、一次空気の温度調整を行う制御装置14とを備える。
【0029】
本第2実施形態では、上記構成を備えるバイオマス粉砕装置1において、温度測定手段15で測定される温度が、250℃以下となるように空気加熱器18を制御し、一次空気の温度調整を行うとともに、湿度測定手段17で測定される出口相対湿度が40%以下となるように設定する。さらに、温度測定手段16で測定される出口温度と、露点温度の差が20℃以上になるように設定する。
【0030】
上記した運転条件は、図4に示すグラフから設定されることが好ましい。図4(a)はバイオマス全水分と一次空気温度の関係を示すグラフ、(b)バイオマス全水分と出口空気相対湿度の関係を示すグラフ、(c)バイオマス全水分と出口温度−露点の関係を示すグラフである。各性能に関して、出口温度70℃、75℃、80℃、85℃について、夫々求めている。空気流量は一定とした。図4(a)に示すように、一次空気の入口温度は、バイオマス固形物の全水分に対応して比例的に高くなる。そして、出口温度が高くなるほど入口温度も高くなっている。逆に、図4(b)に示すように、一次空気の出口温度が高くなるほど出口空気相対湿度は下がっている。また、図4(c)に示すように、一次空気の出口温度が高くなるほど出口温度と露点の差は高くなっている。また、グラフ中、破線で示した値以下が夫々適正運転範囲であり、この範囲内で装置を運転する。一次空気の入口温度閾値は250℃であり、これは発火温度より低く、安全に運転できる温度である。出口空気関係湿度、及び出口温度と露点の差の閾値は、夫々付着性に基づき設定される値である。この閾値より大きいと、バイオマス粉砕物が搬送管等の壁面に付着し易くなり、運転に支障をきたす。
【0031】
このように第2実施形態によれば、一次空気の入口温度と、出口相対湿度と、出口温度と、露点温度の差とを夫々適正な値に設定することにより、水分変動が大きいバイオマスに対しても安定運転が可能で且つ安全性の高い運転が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のバイオマス砕装置は、装置内に吹き込む空気量を適正に設定することにより分級性能を維持して安定運転を可能とするとともに、バイオマス粉砕物を燃焼装置に直接導入して燃焼させる場合においても、燃焼性能を低下させることなく安定燃焼を可能とし、また、水分変動が大きいバイオマスに対しても安定運転が可能で且つ安全性が高いため、微粉炭焚きボイラ等の燃焼装置のような既存の設備へ適用する際にも有益である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバイオマス粉砕装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2】本発明のバイオマス粉砕装置をボイラ火炉設備に適用した例を示す構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るバイオマス粉砕装置の概略構成を示す側断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るバイオマス粉砕装置の各性能に関する解析結果を示す図で、(a)バイオマス全水分と一次空気温度の関係を示すグラフ、(b)バイオマス全水分と出口空気相対湿度の関係を示すグラフ、(c)バイオマス全水分と出口温度−露点の関係を示すグラフである。
【図5】従来のバイオマス粉砕装置の概略構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 バイオマス粉砕装置
2 ハウジング
3 粉砕テーブル
5 粉砕ローラ
6 分給器
7 供給管
8 ファンネル(整流板)
10、12 偏流ベーン
14 制御装置
15 入口温度測定手段
16 出口温度測定手段
17 出口湿度測定手段
18 空気加熱器
19 誘引ファン
21、25、26 ホッパ
30 ボイラ火炉
100 バイオマス固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型ハウジング内にて回転駆動する粉砕テーブル上に供給されたバイオマス固形物を、前記テーブルの回転と連動して作動するローラにより押圧して粉砕し、前記ハウジングの下部から供給した一次空気により吹き上げ気流を形成し、該吹き上げ気流によりバイオマス粉砕物を上方に搬送して粗粉と微粉とに分級するバイオマス粉砕装置において、
前記ハウジング内の上方に、前記吹き上げ気流の気流通路が拡縮する絞り部を設け、該絞り部を通過する吹き上げ気流が所定の空塔速度の範囲内となるように、該絞り部の断面積を設定したことを特徴とするバイオマス粉砕装置。
【請求項2】
前記絞り部の空塔速度が、0.5〜2.0m/sの範囲内であることを特徴とする請求項1記載のバイオマス粉砕装置。
【請求項3】
前記ハウジングの上部から下方に向けて延設される漏斗状のファンネルを備えており、
前記ファンネルの外面と前記ハウジングの内面とで形成された吹き上げ気流通路と、前記ファンネル上部の空気通過口を介して前記吹き上げ気流通路に連通し、該ファンネル内面で形成された下降気流通路とを備え、
前記ファンネルの傾斜により前記吹き上げ気流通路に前記絞り部が形成されていることを特徴とする請求項1及び2記載のバイオマス粉砕装置。
【請求項4】
前記バイオマス粉砕装置が、搬送管によりボイラの燃焼設備に直接接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のバイオマス粉砕装置。
【請求項5】
円筒型ハウジング内にて回転駆動する粉砕テーブル上に供給されたバイオマス固形物を、前記テーブルの回転と連動して作動するローラにより押圧して粉砕し、前記ハウジングの下部から供給した一次空気により吹き上げ気流を形成し、該吹き上げ気流によりバイオマス粉砕物を上方に搬送して粗粉と微粉とに分級するバイオマス粉砕装置の制御方法において、
前記ハウジングに供給される一次空気の入口温度を250℃以下、前記バイオマス粉砕物を搬送した一次空気の出口相対湿度を40%以下、出口温度と露点の温度差を20℃以上となるように制御することを特徴とするバイオマス粉砕装置の制御方法。
【請求項6】
前記バイオマス粉砕物を搬送した一次空気が、搬送管を介してボイラの燃焼設備に直接導入されることを特徴とする請求項5記載のバイオマス粉砕装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291692(P2009−291692A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146344(P2008−146344)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】