説明

バイパスバルブ及び過給機

【課題】圧力損失の低減及び異物のバイパス流路への混入を抑制することができ、運転効率を改善することができるバイパスバルブ及び過給機を提供する。
【解決手段】開状態でスクロール部32内の圧縮空気の一部をスクロール部32の上流側にバイパス流路3bを介して分流させ、閉状態でスクロール部32内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブ4を有し、バイパスバルブ4は、スクロール部32とバイパス流路3bとを連通する分流孔3cに嵌合可能に構成された弁体41と、弁体41を分流孔3cに嵌合した閉状態と分流孔3cから離隔した開状態との間で移動させるアクチュエータ42と、を有し、弁体41は、閉状態でスクロール部32の内壁32aに沿った内面41aを形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイパスバルブ及び過給機に関し、特に、圧力損失の低減を抑制することができるバイパスバルブ及び該バイパスバルブを使用した過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機(例えば、ターボチャージャ)は、エンジンの排気エネルギーでタービンを駆動し、その回転軸と同軸に連結されたコンプレッサを駆動させて空気を圧縮し、エンジンに高密度の圧縮空気を供給することにより、エンジンの出力を増大させる装置である。かかる過給機は、一般に、タービンの外殻を構成するタービンハウジングと、回転軸(又はシャフト)を枢支するセンターハウジング(又は軸受ハウジング)と、コンプレッサの外殻を構成するコンプレッサハウジングと、を有する。また、コンプレッサハウジングは、コンプレッサの羽根車の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部を有する。そして、コンプレッサは、軸方向から吸入した空気を圧縮し、羽根車の周方向端面からスクロール部に圧縮空気を供給し、スクロール部から圧縮空気を外部に排出している。
【0003】
ところで、自動車等の車両に搭載された過給機(いわゆるターボチャージャ)は、車両が高速状態から急減速する場合に、エンジン側はアクセルオフの信号で低回転状態に移行しているため、スクロール内の圧縮空気がエンジン側に移送され難くなる。また、吸気量は、スクロール内に残る圧縮空気のために減少する。しかしながら、過給機は慣性により回り続けているため、コンプレッサはサージ状態となる。かかるサージ状態を抑制するために、一部の過給機は、コンプレッサハウジングのスクロール部内とコンプレッサの吸気口を接続するバイパス流路と、バイパス流路の開閉を行うバイパスバルブ(バイパス弁)と、を有し、車両の急減速時には、バイパスバルブを開いて、コンプレッサハウジングのスクロール部内の圧縮空気をコンプレッサの吸気口に戻すように構成されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1には、バイパス通路を介して迂回可能であるターボチャージャのケーシングに弁座が配置されており、弁ユニットが弁座上に下降されると、バイパス通路はシールリップによって閉じられ、高い圧力が支配しているターボチャージャの吐出側は低い圧力が支配する吸込側から分離されるバイパス弁が記載されている。
【0005】
また、特許文献2の背景技術の欄には、過給機のコンプレッサの下流側の吸気管と上流側の吸気管とを接続するバイパス管と、過給機のタービンの下流側の排気管と過給機のコンプレッサの上流側の吸気管とを接続する低圧EGR(Exhaust Gas Recirculation)システムと、が配置された構成が記載されている。バイパス管には、バイパス管の開閉を行うバイパス弁が配置され、低圧EGRシステムには、排気管と吸気管とを接続するEGR管と、その開閉を行うEGR弁と、EGRクーラと、が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−71207号公報
【特許文献2】特開2010−265854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたようなバイパス弁では、コンプレッサハウジングのスクロール部に配置されていることが多く、スクロール部の一部に貫通する流路を形成し、そのケーシングの外側でバイパス弁を開閉させるようにしている。したがって、バイパス弁を有する過給機では、スクロール部の一部(バイパス弁の内側)に窪んだ空間が存在し、圧縮空気の流れが阻害されて圧力損失が生じ、過給機の運転効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、上述した特許文献2に記載されたようなEGRシステムを有する過給機では、コンプレッサの上流の吸気管には、エアクリーナで塵等が除去された清浄な空気だけではなく、ブローバイガスやEGRガスのように異物を含有するガスも含まれている。ブローバイガスは、エンジン本体からオイルセパレータを介して吸気管に流入するガスであり、オイルミストや金属粉を含有する。EGRガスは、排気管から低圧EGRシステムを通過して吸気管に流入するガスであり、煤や未燃ガスを含有する。したがって、バイパス弁を有する過給機では、スクロール部の一部(バイパス弁の内側)に窪んだ空間が存在していることから、上述したガスに含まれる異物が溜まり易く、バイパス流路に異物が混入し易いという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、圧力損失の低減及び異物のバイパス流路への混入を抑制することができ、運転効率を改善することができるバイパスバルブ及び過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、開状態でスクロール部内の圧縮空気の一部を前記スクロール部の上流側にバイパス流路を介して分流させ、閉状態で前記スクロール部内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブであって、前記スクロール部と前記バイパス流路とを連通する分流孔に嵌合可能に構成された弁体と、前記弁体を前記分流孔に嵌合した閉状態と前記分流孔から離隔した開状態との間で移動させるアクチュエータと、を有し、前記弁体は、前記閉状態で前記スクロール部の内壁に沿った内面を形成するように構成されている、ことを特徴とするバイパスバルブが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、エンジンから排気ガスが供給されて動翼を回転させるガスタービンと、前記動翼と同軸に連結された羽根車により空気を吸入するコンプレッサと、を備え、前記コンプレッサの外殻を構成するコンプレッサハウジングが前記羽根車の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部を有する過給機であって、開状態で前記スクロール部内の圧縮空気の一部を前記スクロール部の上流側にバイパス流路を介して分流させ、閉状態で前記スクロール部内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブを有し、該バイパスバルブは、前記スクロール部と前記バイパス流路とを連通する分流孔に嵌合可能に構成された弁体と、前記弁体を前記分流孔に嵌合した閉状態と前記分流孔から離隔した開状態との間で移動させるアクチュエータと、を有し、前記弁体は、前記閉状態で前記スクロール部の内壁に沿った内面を形成するように構成されている、ことを特徴とする過給機が提供される。
【0012】
上述したバイパスバルブ及び過給機において、前記弁体の内面は、前記閉状態で、前記スクロール部の内壁と共に一曲面を形成するように、又は、前記スクロール部の内壁に沿った平面を形成するように構成されていてもよい。また、前記弁体は、前記閉状態で前記スクロール部の外壁に係止するフランジ部を有していてもよい。
【0013】
前記分流孔は、前記スクロール部の内壁から外壁に向かって拡径した円錐面を有し、前記弁体は、前記円錐面に対応した傾斜面を有していてもよい。また、前記分流孔は、前記スクロール部の内壁から外壁に向かって延伸した円形又は矩形の柱状面を有し、前記弁体は、前記柱状面に対応した側面を有していてもよい。
【0014】
前記弁体は、前記アクチュエータの駆動軸から外縁部に向かって拡径したテーパ部を背面に有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るバイパスバルブ及び過給機によれば、バイパス流路の閉状態において、弁体が分流孔内に嵌合されており、スクロール部の内壁に沿った流路面を形成するように構成されていることから、圧力損失及び異物滞留の原因となるスクロール部内の窪んだ空間を埋設することができ、圧力損失の低減及び異物のバイパス流路への混入を抑制することができ、運転効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係る過給機の断面図である。
【図2】図1に示した過給機を含むエンジン駆動システムの構成図である。
【図3】図1に示したバイパスバルブの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は閉状態の断面図、(c)は開状態の断面図、を示している。
【図4】図1に示した過給機の流量に対する効率と従来技術の過給機の流量に対する効率との比較図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るバイパスバルブの説明図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、(d)は第五実施形態、を示している。
【図6】本発明の第六実施形態に係るバイパスバルブ及び過給機の説明図であり、(a)は過給機を含むエンジン駆動システムの構成図、(b)はバイパスバルブの断面図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る過給機の断面図である。図2は、図1に示した過給機を含むエンジン駆動システムの構成図である。図3は、図1に示したバイパスバルブの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は閉状態の断面図、(c)は開状態の断面図、を示している。図4は、図1に示した過給機の流量に対する効率と従来技術の過給機の流量に対する効率との比較図である。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る過給機1は、図1及び図2に示したように、エンジン102から排気ガスが供給されて動翼21を回転させるガスタービン2と、動翼21と同軸に連結された羽根車31により空気を吸入するコンプレッサ3と、を備え、コンプレッサ3の外殻を構成するコンプレッサハウジング3aが羽根車31の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部32を有し、開状態でスクロール部32内の圧縮空気の一部をスクロール部32の上流側にバイパス流路3bを介して分流させ、閉状態でスクロール部32内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブ4を有し、バイパスバルブ4は、スクロール部32とバイパス流路3bとを連通する分流孔3cに嵌合可能に構成された弁体41と、弁体41を分流孔3cに嵌合した閉状態と分流孔3cから離隔した開状態との間で移動させるアクチュエータ42と、を有し、弁体41は、閉状態でスクロール部32の内壁32aに沿った内面41aを形成するように構成されている。
【0019】
図1に示した過給機1は、流体機械の一例である。過給機1は、ガスタービン2の外殻を構成するタービンハウジング2aと、ロータ軸5を枢支する軸受ハウジング5aと、コンプレッサ3の外殻を構成するコンプレッサハウジング3aと、を有している。なお、過給機1の構成は、例えば、従来の車両用過給機(いわゆるターボチャージャ)と同じ構成を有している。
【0020】
ガスタービン2は、遠心式タービンであり、複数の動翼21を有する翼車22の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部23と、スクロール部23に排気ガスを供給する排気ガス入口24と、翼車22に供給された排気ガスをロータ軸5の延伸方向に排出する排気ガス出口25と、を有している。
【0021】
コンプレッサ3は、いわゆる遠心式圧縮機であり、羽根車31の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部32と、ロータ軸5の延伸方向から空気を供給する空気入口33と、羽根車31により圧縮された空気をスクロール部32から外部に排出する空気出口34と、を有している。また、羽根車31の表面には、複数のコンプレッサインペラ35が精密鋳造等により一体に形成されている。また、スクロール部32の一部には、バイパスバルブ4が付属しており、バイパスバルブ4が開いた時は、スクロール部32内の圧縮空気の一部が空気入口33に分流するように構成されている。
【0022】
ロータ軸5は、大径部分51及び小径部分52を有し、従来と同様に、仕上加工、硬化処理及び外径研削が施された後、大径部分51の一端が翼車22に接合され、動翼21と一体化されている。また、大径部分51と小径部分52との間には、スラストカラー53等が配置され、スラスト軸受けが構成されている。そして、ロータ軸5の小径部分52には、羽根車31が嵌合され、軸端ナット54により固定される。
【0023】
また、図1に示した過給機1は、図2に示したエンジン駆動システム100に組み込まれている。エンジン駆動システム100は、図2に示したように、吸気した空気中の微細な異物を取り除くエアクリーナ101と、吸気した空気を圧縮する過給機1と、圧縮空気及び燃料によって駆動されるエンジン102と、エンジン102の燃焼室内で生成及び排出された有害成分を取り除く後処理装置103と、過給機1及びエンジン102を制御する電子制御ユニット(ECU)104と、を有する。
【0024】
過給機1は、排気ガスのエネルギーをガスタービン2で回収してコンプレッサ3を作動させ、圧縮空気をエンジン102に供給して出力増大を図る。また、コンプレッサ3のスクロール部32に配置されたバイパスバルブ4は、電子制御ユニット104により開閉が制御される。例えば、電子制御ユニット104は、エンジン駆動システム100を搭載した車両が高速走行時から急減速する場合に、サージ状態を抑制するためにバイパスバルブ4を開き、スクロール部32内の圧縮空気の一部を空気入口33側に戻す。通常状態においては、バイパスバルブ4は閉じられており、スクロール部32内の全ての圧縮空気は空気出口34からエンジン102に供給される。
【0025】
エンジン102は、例えば、車両に搭載されたディーゼルエンジンやガソリンエンジンである。エンジン102は、運転状況に応じて圧縮空気や燃料の供給量が制御される。かかる制御は、電子制御ユニット104により行われる。エンジン102の制御は、空燃比(空気質量/燃料質量)によって制御される。なお、エアクリーナ101は、外部より吸気された空気中の微細な異物を取り除いて清浄な空気を過給機1に供給する機器であり、後処理装置103は、エンジン102の燃焼室内で生成及び排出された有害成分を無害化して外部に排出する機器である。
【0026】
図1及び図3(a)に示したように、コンプレッサハウジング3aにはバイパス流路3bが形成されており、バイパス流路3bとスクロール部32とを連通するように分流孔3cが形成されている。バイパスバルブ4は、バイパス流路3bに臨むようにコンプレッサハウジング3aに接続されている。
【0027】
バイパスバルブ4は、アクチュエータ42により、図3(b)に示したように、弁体41を分流孔3cに嵌合させるように挿入したり、図3(c)に示したように、弁体41を分流孔3cから離隔させて分流孔3cとバイパス流路3bとを連通させたりすることができるように配置されている。本実施形態において、弁体41を分流孔3cに嵌合させた状態を閉状態、弁体41を分流孔3cから離隔させた状態を開状態と称する。なお、アクチュエータ42は、弁体41を駆動軸42aで支持し、電子制御ユニット104の制御に基づいて弁体41を駆動軸42aの長手方向に移動可能に構成されている。
【0028】
そして、弁体41(図3の斜線で示した部品)は、例えば、閉状態でスクロール部32の内壁32aと共に一曲面を形成するように内面41aが構成されている。すなわち、弁体41の内面41aは、閉状態でスクロール部32の内壁32aと連続した曲面を構成するように形成されている。このように、閉状態でスクロール部32の内壁32aに沿った内面41aを形成することにより、圧力損失及び異物滞留の原因となるスクロール部32内の窪んだ空間を埋設することができ、圧力損失の低減及び異物のバイパス流路への混入を抑制することができる。
【0029】
ここで、図4は、第一実施形態に係る過給機1と従来技術における過給機との効率の差異を示す比較図である。図4において、横軸はコンプレッサ3の流量、縦軸は過給機1の効率を示している。また、実線は本実施形態、破線は従来技術を示している。図4に示したように、本実施形態に係る過給機1によれば、流量の大小に関わらず、従来技術における過給機よりも効率が向上していることが容易に理解できる。特に、流量が比較的少ない場合に、より効果を発揮する。これは、スクロール部32に窪みを有する場合には、流量が少ない方が窪みによる圧力損失が大きいためであり、本実施形態により圧力損失が改善されていることを的確に表現している。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。ここで、図5は、本発明の他の実施形態に係るバイパスバルブの説明図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、(d)は第五実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るバイパスバルブ4と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0031】
第二実施形態に係るバイパスバルブ4は、図5(a)に示したように、弁体41の内面41aが、閉状態でスクロール部32の内壁に沿った平面を形成するように構成されたものである。かかる第二実施形態によっても第一実施形態と略同様の効果を有するとともに、弁体41を作成する際の加工が容易になり、コストを低減することができる。
【0032】
第三実施形態に係るバイパスバルブ4は、図5(b)に示したように、弁体41が閉状態でスクロール部32の外壁32bに係止するフランジ部41bを有するものである。第一実施形態に係るバイパスバルブ4では、開状態と閉状態を適切に切り替えるために、駆動軸42aのストローク量を予め設定しておく必要がある。それに対し、第三実施形態に係るバイパスバルブ4によれば、フランジ部41bをスクロール部32の外壁32bに当接させて係止させることによって閉状態にすることができる。
【0033】
したがって、バイパスバルブ4に圧力センサや荷重センサを配置することにより、弁体41のフランジ部41bがスクロール部32の外壁32bに当接したことを検知してアクチュエータ42を停止させることができ、容易に駆動軸42aのストローク量を制御することができる。
【0034】
第四実施形態に係るバイパスバルブ4は、図5(c)に示したように、分流孔3cがスクロール部32の内壁32aから外壁32bに向かって拡径した円錐面を有し、弁体41が円錐面に対応した傾斜面41cを有するものである。傾斜面41cは、分流孔3cの形状に適合するように同様の円錐面により形成される。かかる第四実施形態に係るバイパスバルブ4によれば、弁体41の少ない移動量で弁体41と分流孔3cとの間に十分な隙間を形成することができ、開状態と閉状態との切り替え時における駆動軸42aのストローク量を低減することができ、応答速度を向上させることができる。
【0035】
また、第四実施形態に係るバイパスバルブ4によれば、分流孔3cの円錐面と弁体41の傾斜面41cとを当接させることによって、弁体41が誤ってスクロール部32内に突出しないようにすることができ、上述したフランジ部41bと同様の効果も発揮する。
【0036】
第五実施形態に係るバイパスバルブ4は、図5(d)に示したように、スクロール部32の内壁32aから外壁32bに向かって延伸した矩形の柱状面を有し、弁体41が柱状面に対応した側面41dを有するものである。なお、図5(d)はスクロール部32の内側から分流孔3cと弁体41とを眺めた状態を図示している。
【0037】
図3に示した第一実施形態に係るバイパスバルブ4は、分流孔3cがスクロール部32の内壁32aから外壁32bに向かって延伸した円形の柱状面を有し、弁体41が柱状面に対応した側面を有していた。かかる第一実施形態では、弁体41が駆動軸42aの回りに回転してしまった場合には、内面41aの位相がずれてしまい、スクロール部32の内壁32aと連続する曲面とならないこともあり得る。したがって、曲面の連続性を担保するために弁体41の位相を制御する又は弁体41が駆動軸42aの回りに回転しないように構成することが好ましい。
【0038】
一方、上述した第五実施形態に係るバイパスバルブ4によれば、分流孔3cが矩形断面を有することから、弁体41が分流孔3cに嵌合されれば強制的に位相を一致させることができ、スクロール部32の内壁32aと連続する曲面を容易に形成することができる。また、弁体41が分流孔3cに確実に嵌合されるために、弁体41の先端部を縮径させたテーパ状に形成してもよいし、第四実施形態に示した分流孔3cと同様に分流孔3cに角錐面を形成して弁体41を角錐面に対応した形状に形成するようにしてもよい。なお、分流孔3cは、矩形断面の替わりに楕円形断面の場合であっても、バイパスバルブ4を同様の構成とすることにより、第五実施形態と同様の効果を発揮する。
【0039】
次に、本発明の第六実施形態について説明する。ここで、図6は、本発明の第六実施形態に係るバイパスバルブ及び過給機の説明図であり、(a)は過給機を含むエンジン駆動システムの構成図、(b)はバイパスバルブの断面図、を示している。なお、図1〜図3に示した構成部品と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
本発明の第六実施形態に係る過給機1を含むエンジン駆動システム100は、EGRシステム200を搭載したものであり、図6(a)に示すように、吸気した空気中の微細な異物を取り除くエアクリーナ101と、吸気した空気を圧縮する過給機1と、圧縮空気及び燃料によって駆動されるエンジン102と、エンジンの燃焼室内で生成及び排出された有害成分を取り除く後処理装置103と、過給機1、エンジン102及びEGRシステム200を制御する電子制御ユニット(ECU)104と、を有する。
【0041】
また、EGRシステム200は、排気ガスの温度を下げるEGRクーラ201と、エンジン102から排出される排出ガスの一部をコンプレッサ3の空気入口33側に戻すEGRバルブ202と、を有する。EGRバルブ202は、電子制御ユニット104の制御に基づいて開閉される。なお、EGRシステム200の構成及び作用は、従来技術におけるEGRシステムと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0042】
第六施形態に係るバイパスバルブ4は、図5(d)に示したように、弁体41が、アクチュエータ42の駆動軸42aから外縁部に向かって拡径したテーパ部41eを背面に有するものである。上述したように、EGRシステム200等を有する場合、コンプレッサ3の上流の吸気管には、エアクリーナ101で塵等が除去された清浄な空気だけではなく、ブローバイガスやEGRガスのように異物を含有するガスも含まれている。ブローバイガスは、エンジン本体からオイルセパレータを介して吸気管に流入するガスであり、オイルミストや金属粉を含有する。EGRガスは、排気管からEGRシステムを通過して吸気管に流入するガスであり、煤や未燃ガスを含有する。
【0043】
このように、コンプレッサ3に吸気される空気には種々の異物や水分が含まれており、バイパスバルブ4を作動させた場合には、バイパス流路3bにも異物や水分を含有する空気が流通することとなる。その結果、弁体41の背面に異物が固着したり、水分が氷結して付着したりすることがあり得る。かかる状態でバイパスバルブ4を作動させた場合には、異物が邪魔をして十分に弁体41を開くことができなかったり、弁体41の開閉時に異物が破砕又は脱落してバイパス流路3bに流入したりする可能性がある。かかる異物が比較的大きな塊になっている場合には、コンプレッサ3の羽根車31を損傷させてしまうおそれもある。
【0044】
そこで、弁体41の平面にテーパ部41eを形成することによって、異物が堆積したり、水分が滞留したりしないようにすることができ、異物や氷の固着を容易に抑制することができる。また、弁体41の閉状態において、弁体41と分流孔3cとの隙間に異物が詰まって固着し、弁体41の開閉を阻害するような場合には、閉状態で弁体41を駆動軸42aの周りに回転できるように構成し、弁体41の固着を物理的に解除してから弁体41を開閉させるようにしてもよい。
【0045】
本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい等。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 過給機
2 ガスタービン
3 コンプレッサ
3a コンプレッサハウジング
3b バイパス流路
3c 分流孔
4 バイパスバルブ
21 動翼
31 羽根車
32 スクロール部
32a 内壁
32b 外壁
41 弁体
41a 内面
41b フランジ部
41c 傾斜面
41d 側面
41e テーパ部
42 アクチュエータ
42a 駆動軸
102 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開状態でスクロール部内の圧縮空気の一部を前記スクロール部の上流側にバイパス流路を介して分流させ、閉状態で前記スクロール部内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブであって、
前記スクロール部と前記バイパス流路とを連通する分流孔に嵌合可能に構成された弁体と、
前記弁体を前記分流孔に嵌合した閉状態と前記分流孔から離隔した開状態との間で移動させるアクチュエータと、を有し、
前記弁体は、前記閉状態で前記スクロール部の内壁に沿った内面を形成するように構成されている、ことを特徴とするバイパスバルブ。
【請求項2】
前記弁体の内面は、前記閉状態で、前記スクロール部の内壁と共に一曲面を形成するように、又は、前記スクロール部の内壁に沿った平面を形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスバルブ。
【請求項3】
前記弁体は、前記閉状態で前記スクロール部の外壁に係止するフランジ部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスバルブ。
【請求項4】
前記分流孔は、前記スクロール部の内壁から外壁に向かって拡径した円錐面を有し、前記弁体は、前記円錐面に対応した傾斜面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスバルブ。
【請求項5】
前記分流孔は、前記スクロール部の内壁から外壁に向かって延伸した円形又は矩形の柱状面を有し、前記弁体は、前記柱状面に対応した側面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスバルブ。
【請求項6】
前記弁体は、前記アクチュエータの駆動軸から外縁部に向かって拡径したテーパ部を背面に有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスバルブ。
【請求項7】
エンジンから排気ガスが供給されて動翼を回転させるガスタービンと、前記動翼と同軸に連結された羽根車により空気を吸入するコンプレッサと、を備え、前記コンプレッサの外殻を構成するコンプレッサハウジングが前記羽根車の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部を有する過給機であって、
開状態で前記スクロール部内の圧縮空気の一部を前記スクロール部の上流側にバイパス流路を介して分流させ、閉状態で前記スクロール部内の圧縮空気を下流側に送流するバイパスバルブを有し、該バイパスバルブは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のバイパスバルブである、ことを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241558(P2012−241558A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110296(P2011−110296)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】