説明

バイポーラ電池

【課題】バイポーラ電池の電池要素の寿命特性を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15がこの順に積層されてなる単電池19が、集電体11を介してさらに積層され、最外層集電体11a,11bにタブ25,27が接合されてなる電池要素21を有するバイポーラ電池10であって、前記最外層集電体と前記タブとの接合部から、前記最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って、前記最外層集電体の平面方向の電気抵抗が増加するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ電池に関する。詳細には、本発明は、バイポーラ電池の劣化を抑制する手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電源の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用電源としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。なかでも、高出力で放電可能なものとして、バイポーラ型リチウムイオン二次電池(いわゆるバイポーラ電池)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
バイポーラ電池は、片面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成されたバイポーラ電極が、電解質層を介して複数積層されてなる構成を有する。そして、両側の最外層に位置する集電体(最外層集電体)に正極タブおよび負極タブをそれぞれ接合して電池要素を構成し、この電池要素をラミネートシートのような外装を用いてタブを外部に引き出すように封止することにより、バイポーラ電池が完成する。
【0005】
バイポーラ電池においては、発電要素内部を、集電体の面に垂直な方向に電流が流れる。また、隣接する単電池(セル)どうしの界面における内部抵抗は無視されうるほど小さい。かような構成を有することから、バイポーラ電池によれば、高出力密度での放電が可能である。
【0006】
従って、バイポーラ電池は、特に高い出力密度が要求される自動車等のモータ駆動用電源として搭載される場合に、特に有用である。
【特許文献1】特開平11−204136号公報(第3頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、従来のバイポーラ電池に対して高出力条件下で充放電を行うと、最外層集電体を流れる電流は、タブの接合部周辺に集中する。また、電池要素内部においても、タブの接合部の位置に応じて、流れる電流の多い部位と少ない部位とが生じる。例えば、前記特許文献1に記載のバイポーラ電池では、タブが設置されている電池要素の長手方向の両側を流れる電流が比較的多く、タブから離れた電池要素の中央部を流れる電流は比較的少ない。
【0008】
電池要素内部においてかような電流密度の不均一な分布が生じると、流れる電流の多い部位において優先的に、活物質の消耗や熱の発生などによって劣化が進行する。電池の寿命特性は劣化部位の影響を大きく受けることから、電池要素の一部において劣化が進行してしまえば、たとえほとんど劣化していない部位が残っていたとしても、電池の寿命特性は低下してしまう。この問題は電池要素を流れる電流が大きくなるほど顕著になることから、出力密度の向上を図る一方で、上記のような課題を解決する手段の開発が強く求められているのが現状である。
【0009】
よって、本発明は、バイポーラ電池の電池要素の寿命特性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバイポーラ電池は、正極活物質層、電解質層、および負極活物質層がこの順に積層されてなる単電池が、集電体を介してさらに積層され、最外層集電体にタブが接合されてなる電池要素を有し、前記最外層集電体と前記タブとの接合部から、前記最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って、前記最外層集電体の平面方向の電気抵抗が増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバイポーラ電池によれば、高出力条件下において充放電を行った場合に生じる、電池要素内部を流れる電流の不均一な密度分布が緩和されうる。このため、バイポーラ電池の寿命特性の向上に寄与しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1は、正極活物質層、電解質層、および負極活物質層がこの順に積層されてなる単電池が、集電体を介してさらに積層され、最外層集電体にタブが接合されてなる電池要素を有するバイポーラ電池であって、前記最外層集電体と前記タブとの接合部から、前記最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って、前記最外層集電体の平面方向の電気抵抗が増加することを特徴とする、バイポーラ電池である。
【0014】
図1は、本実施形態(第1実施形態)のバイポーラ電池を示す断面図である。
【0015】
図1に示す本実施形態のバイポーラ電池10は、実際に充放電反応が進行する電池要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、ラミネートシート29および電池要素21の平面形状は、略矩形である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のバイポーラ電池10は、集電体11の一方の面に正極活物質層13が形成され他方の面に負極活物質層15が形成された複数のバイポーラ電極を有する。各バイポーラ電極は、電解質層17を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一のバイポーラ電極の正極活物質層13と前記一のバイポーラ電極に隣接する他のバイポーラ電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各バイポーラ電極および電解質層17が積層されている。
【0017】
そして、隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。従って、バイポーラ電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体11間を絶縁するための絶縁層31が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(11a、11b)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体11a)または負極活物質層15(負極側最外層集電体11b)のいずれか一方が形成されている。
【0018】
さらに、図1に示すバイポーラ電池10では、正極側最外層集電体11aに正極タブ25が接合されており、この正極タブ25は、外装であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bには負極タブ27が接合されており、この負極タブ27も同様に、ラミネートシート29から導出している。
【0019】
本実施形態において、正極タブ25と正極側最外層集電体11aとの接合部25’は、略矩形の正極側最外層集電体11aの一の辺(図1の右側に位置する、紙面に垂直な方向に沿った辺)に位置する。一方、負極タブ27と負極側最外層集電体11bとの接合部27’は、同じく略矩形の負極側最外層集電体11bの一の辺(図1の左側に位置する、紙面に垂直な方向に沿った辺)に位置する。
【0020】
以下、本実施形態の特徴的な構成の一つである最外層集電体(11a、11b)について詳細に説明する。なお、本実施形態においては、負極側最外層集電体11bを例に挙げて説明するが、正極側最外層集電体11aも同様の構成を有する。このことは、後述する他の形態においても同様である。
【0021】
本実施形態のバイポーラ電池10は、負極側最外層集電体11bの厚さが、負極タブ27との接合部27’から、最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って単調に減少している点に特徴を有する。具体的には、最外層集電体の厚さは、図1に示すように、タブとの接合部が位置する一の辺から、前記一の辺に対向する辺に向かうに従って減少している。すなわち、負極側最外層集電体11bの厚さは、負極タブ27との接合部27’が位置する一の辺(図1の左側に位置する、紙面に垂直な方向に沿った辺)から、前記一の辺に対向する辺(図1の右側に位置する、紙面に垂直な方向に沿った辺)に向かうに従って減少している。図1に示す形態において、負極側最外層集電体27の厚さは、負極タブとの接合部27’から遠ざかるに従って直線的に減少している。ただし、かような形態のみには制限されず、場合によっては、曲線的(例えば、指数関数的または対数関数的)に減少してもよい。
【0022】
なお、本願において、「平面方向に遠ざかるに従って厚さが単調に減少する」とは、平面方向に遠ざかるに従って厚さが減少する部位が少なくとも一つ存在し、かつ、平面方向に遠ざかるに従って減少した厚さは増加しないことを意味する。なお、最外層集電体の厚さが減少する場合、その減少は図1に示すように連続的であってもよく、段階的であってもよい。
【0023】
最外層集電体(11a、11b)は、均質な材質から構成されるが、最外層集電体の構成材料などの形態については、一般的なバイポーラ電池の場合と同様であるため、その説明は後述する。
【0024】
(製造方法)
続いて、本実施形態のバイポーラ電池10の製造方法について説明する。
【0025】
本実施形態のバイポーラ電池10を製造する際には、まず、集電体11の一方の面に正極活物質層13を形成し、他方の面に負極活物質層15を形成して、バイポーラ電極を作製する。最外層集電体については、正極側最外層集電体11aの一方の面に正極活物質層13のみを形成し、負極側最外層集電体11bの一方の面に負極活物質層15のみを形成する。なお、最外層集電体(11a、11b)としては、略矩形であって、長手方向に厚さが直線的に減少しているものを用いる。
【0026】
次に、バイポーラ電極に形成された正極活物質層13が電解質層17を介して他のバイポーラ電極に形成された負極活物質層15と向き合う向きに、上記で作製したバイポーラ電極と電解質層17とを積層する。この際、積層体の最上面および最下面には、活物質が形成されていない面が露出するように最外層集電体(11a、11b)を積層する。また、最外層集電体(11a、11b)については、正極側最外層集電体11aと負極側最外層集電体11bとで厚さが減少する方向が逆向きとなるように配置する。
【0027】
さらに、積層中には、正極活物質層13、電解質層17および負極活物質層15からなる単電池層19を包囲するように、隣接する集電体11の間に絶縁層31を挟み込む。積層後、積層体の縁部をホットプレスして絶縁層31を集電体11と熱融着させることにより、積層された状態のバイポーラ電池の電池要素21が完成する。
【0028】
その後、正極タブ25および負極タブ27を最外層集電体(11a、11b)に接合し、正極タブ25および負極タブ27が導出するように電池要素21をラミネートシート29により封止する。タブ(25、27)を接合する際には、略矩形の正極側最外層集電体11aの厚さの厚い側の辺の縁部に正極タブ25を接合し、同様に、負極側最外層集電体11bの厚さの厚い側の辺の縁部に負極タブ27を接合する。最外層集電体とタブとを接合する手法は特に制限されず従来公知の溶接方法などが用いられうる。溶接方法としては、例えば、超音波溶接、スポット溶接などが例示される。なかでも、低温での接合が可能であることから、超音波溶接が好ましく用いられる。
【0029】
ラミネートシート29は、例えば、ヒートシール、インパルスシール、超音波融着、高周波融着などによる熱融着によって、封止されうる。
【0030】
以上の工程により、複数の単電池層19を有する本実施形態のバイポーラ電池10が完成する。なお、電解質層17へ電解液を注入する必要がある場合、電解液の注入は、絶縁層31のホットプレス前に行ってもよいし、ホットプレス後に行ってもよい。また、絶縁層31のホットプレスの前または後に、電池要素21を加熱することなどによって、電解液に含まれるポリマー前駆体(単量体)を架橋させてもよい。
【0031】
(作用)
次に、本実施形態のバイポーラ電池の作用について説明する。
【0032】
本実施形態のバイポーラ電池の電池としての作用については、一般的なバイポーラ電池の作用と同様であるため、ここでは説明を省略する。以下では、最外層集電体(11a、11b)の構成に基づく作用について、主に説明する。具体的には、最外層集電体(11a、11b)と、隣接する活物質層(13、15)との界面を電池要素21の積層方向に流れる電流について、負極側最外層集電体11bを例に挙げて、従来のバイポーラ電池の場合と比較しながら説明する。
【0033】
まず、従来のバイポーラ電池の場合について説明する。
【0034】
図2は、従来のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bにおいて電流が流れる様子を説明するための概念図である。
【0035】
ここで、図2に示すように、負極タブ27との接合部27’からの距離が遠ざかる方向(図2に示すX方向)に沿って、負極タブ27から流入した電流の流れの分岐点を等間隔に9箇所想定する(図2中の点A〜点Iを参照)。各分岐点において、電流は、負極タブ27との接合部27’から遠ざかる方向(図2に示すX方向)、および電池要素21の積層方向(図2に示すY方向)に分岐するものとし、さらに、これらの各分岐点においてのみ負極活物質層15へ流入しうるものと仮定する。なお、図2においては、説明の便宜上、最外層集電体11bの全体にわたって分岐点を想定したが、以下の説明は、分岐点間の間隔を小さくすることによって、最外層集電体11bの一部のみについても成立する。
【0036】
一般に、電気抵抗Rは、下記数式1で表される:
【0037】
【数1】

【0038】
(式中、ρは電気抵抗率(Ω・m)、Lは長さ(m)、Aは断面積(m)をそれぞれ示す。)
なお、前記数式1において、電気抵抗率ρは物質に固有の値であり、均質な材質から構成される部材においては一定の値を示す。
【0039】
ここで、各分岐点におけるX方向の長さを微小な一定値ΔLに固定すると、前記数式1から、各分岐点におけるX方向の電気抵抗はX方向の断面積Aに反比例することがわかる。よって、X方向の断面積が常に一定である従来のバイポーラ電池の最外層集電体11bにおいて、集電体11bの平面方向(X方向)の電気抵抗は、負極タブ27との接合部27’からの距離とは無関係に常に一定の値となる。
【0040】
一方、各分岐点が等間隔に配置されていることから、各分岐点におけるY方向の電気抵抗についても、接合部27’からの距離とは無関係に常に一定の値であると近似できる。
【0041】
各分岐点において分岐した後にX方向およびY方向に流れるそれぞれの電流は、各分岐点における、X方向およびY方向の電気抵抗に依存する。すなわち、ある分岐点に流入する電流をI、当該分岐点におけるX方向の電気抵抗をR、当該分岐点におけるY方向の電気抵抗をR、分岐後にX方向に流れる電流をI、分岐後にY方向に流れる電流をIとすれば、これらは下記の数式2および数式3を満たす:
【0042】
【数2】

【0043】
ここで、上述したように、各分岐点におけるX方向の電気抵抗およびY方向の電気抵抗は、それぞれ一定の値である。従って、R/Rは一定値であり、前記数式3によれば、I/Iも一定値である。
【0044】
以上より、従来のバイポーラ電池の最外層集電体11bにおいて、各分岐点に流入した電流は、常に一定の比でX方向およびY方向に分岐すると考えられる。ここで、仮にこの比の値(I/I)をI/I=9と仮定し、負極タブ27から流入する電流を10Aと仮定すれば、各分岐点において分岐する電流は、下記の表1に示す値となる。なお、これらの仮定はあくまでも計算の便宜上のものに過ぎず、実際の値とは異なる。また、最外層集電体11bの有する内部抵抗による電流の減衰についても、考慮はなされていない。
【0045】
各分岐点においてY方向に流れる電流の相対値を、図2には矢印の長さで示し、図4にはグラフとして示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1、図2および図4に示す結果から、従来のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bにおいてY方向に分岐する電流は、負極タブ27の接合部27’から遠ざかるに従って、底が0.9の指数関数状に減少することがわかる。
【0048】
続いて、本実施形態のバイポーラ電池の場合について説明する。図3は、本実施形態(第1実施形態)のバイポーラ電池10の負極側最外層集電体11bにおいて電流が流れる様子を説明するための概念図である。
【0049】
図3に示す本実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bは、均質な材質から構成されている点は従来の最外層集電体と同様である。しかしながら、上述したように、負極タブ27との接合部27’から遠ざかるに従ってその厚さが直線的に減少している点で、従来のバイポーラ電池の最外層集電体とは異なる。
【0050】
ここで、本実施形態においても、従来のバイポーラ電池の最外層集電体について上記で説明したのと同様に、9箇所の分岐点を想定する(図3中の点a〜点iを参照)。また、本実施形態においても上記と同様に、電流と電気抵抗との間には前記数式2および前記数式3の関係が成立する。
【0051】
図3に示すように、本実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bの厚さは、負極タブ27との接合部27’から遠ざかるに従って直線的に減少しており、これに伴って集電体11bのX方向の断面積Aも、直線的に減少している。従って、前記数式1によれば、負極側最外層集電体11bの平面方向(X方向)の電気抵抗(R)は、負極タブ27との接合部27’から遠ざかるに従って、直線的に増加することになる。なお、本実施形態においても、各分岐点におけるY方向の電気抵抗については上記と同様に、負極タブ27との接合部27’からの距離とは無関係に常に一定の値であるものと仮定できる。
【0052】
以上より、各分岐点におけるR/Rの値は、タブとの接合部から遠ざかるに従って(分岐点a→i方向に進むに従って)、直線的に減少する。よって、前記数式3によれば、I/Iの値も、タブとの接合部から遠ざかるに従って、直線的に減少する。
【0053】
ここで、本実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bが、図2に示す従来の形態の負極側最外層集電体11bと同質量の同一材料から構成されると仮定し、さらに、分岐点をX方向に1つ進むに従ってR/Rの値が0.2ずつ直線的に減少するものと仮定する。すると、中央の分岐点である分岐点Eの厚さが集電体の厚さの平均値となることから、分岐点EにおけるR/Rの値が従来の場合と同一の9.0となり、他の分岐点におけるR/Rの値は下記の表2に示す値となる。また、同一材料から構成されることから、本実施形態と従来の形態とではRの値が同一となる。さらに、各分岐点におけるX方向の電気抵抗(R)の比はそのまま各分岐点における集電体11bの厚さの比となることから、本実施形態の各分岐点における厚さ(図2に示す形態の集電体の厚さに対する相対値)は下記の表2に示す値となる。
【0054】
上記と同様に、負極タブ27から流入する電流を10Aと仮定すれば、各分岐点において分岐する電流は、下記の表2に示す値となる。また、各分岐点においてY方向に流れる電流を、図3には矢印の長さで示し、図4にはグラフとして示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2、図3、および図4に示す結果から、本実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体11bの各分岐部においてY方向に分岐する電流は、従来のバイポーラ電池の場合と比較して、負極タブ27の接合部27’に近い側では減少しているが、接合部27’から遠ざかるに従ってその差は縮まり、さらに遠ざかると逆転して増加に転じることがわかる。換言すれば、従来のバイポーラ電池の場合には指数関数的な減少を示していたY方向への電流密度分布が、本実施形態の構成とすることでより直線的な減少を示すようになることがわかる。このことから、本実施形態の構成とすることで、従来のバイポーラ電池では負極タブ27との接合部27’側に偏っていたY方向への電流が最外層集電体の全面に分散され、Y方向への電流密度分布が緩和されることがわかる。
【0057】
従って、本実施形態のバイポーラ電池によれば、従来のバイポーラ電池における最外層集電体を構成する材料の量を増加させることなく、電池要素21の積層方向へ流れる電流の特定の部位への集中が緩和され、特定部位における活物質の消耗や熱の発生などによる電池要素の劣化が抑制されうる。その結果、バイポーラ電池の寿命特性の向上に大きく寄与しうる。
【0058】
以上、最外層集電体と、隣接する活物質層との界面を電池要素21の積層方向に流れる電流について、負極側最外層集電体11bを例に挙げて説明したが、正極側最外層集電体11aについては、電流の流れが逆向き(正極活物質層13→正極側最外層集電体11a)となること以外は、同様の理論が成立しうる。従って、正極側および負極側の双方の最外層集電体(11a、11b)が、図1に示す本実施形態のような構成を有することが好ましい。ただし、いずれか一方の最外層集電体のみが本実施形態の構成を有する形態であっても、本発明の効果を奏する限り本発明の技術的範囲に包含される。
【0059】
また、本実施形態においては、略矩形のバイポーラ電池の対向する辺から正極タブ25および負極タブ27が導出している。換言すれば、正極側最外層集電体11aの厚さが減少する方向と負極側最外層集電体11bの厚さが減少する方向が逆向きである。従って、本実施形態のバイポーラ電池によれば、ラミネートシート29により封止される電池要素21の全面の厚さが均一に維持されうる。その結果、スペース効率にも優れるバイポーラ電池が提供されうる。ただし、場合によっては、略矩形のバイポーラ電池の同一の辺から正極タブ25および負極タブ27の双方が導出する形態が採用されてもよい。
【0060】
以下、本実施形態のバイポーラ電池10を構成する部材について簡単に説明するが、下記の形態のみに制限されることはなく、従来公知の形態が同様に採用されうる。
【0061】
[集電体(最外層集電体を含む)]
集電体13および最外層集電体(11a、11b)は、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔など、導電性の材料から構成される。最外層集電体以外の集電体の一般的な厚さは、1〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。本実施形態のように最外層集電体の厚さが変化する場合、最も厚い部位における厚さは、好ましくは10〜1000μm程度であり、最も薄い部位における厚さは、好ましくは1〜100μm程度である。
【0062】
集電体の大きさは、バイポーラ電池10の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0063】
[活物質層]
正極活物質層15は、正極活物質を含む。正極活物質としては、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物やLiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0064】
負極活物質層17は、負極活物質を含む。負極活物質としては、上記のリチウム遷移金属−複合酸化物や、カーボンが好ましい。カーボンとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材料、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。
【0065】
正極活物質層15および負極活物質層17には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、バインダ、導電助剤、リチウム塩(支持電解質)、イオン伝導性ポリマー等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0066】
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。
【0067】
導電助剤とは、正極活物質層13または負極活物質層15の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、グラファイトなどのカーボン粉末が挙げられる。
【0068】
リチウム塩(支持電解質)としては、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0069】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記イオン伝導性ポリマーは、バイポーラ電池10の電解質層17において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0070】
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
【0071】
正極活物質層13および負極活物質層15中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0072】
[電解質層]
電解質層17を構成する電解質としては、一般に、液体電解質またはポリマー電解質が挙げられる。本発明においては、好ましくはポリマー電解質が用いられる。ポリマー電解質を用いることにより、電解質などの液漏れが防止され、バイポーラ電池10の安全性が向上しうる。
【0073】
ポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーから構成され、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。優れた機械的強度を発現させることが可能である点で、高分子電解質形成用の重合性ポリマーを熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合により架橋構造を形成することにより作製されるものが好適に用いられる。かかる高分子電解質により形成される電解質層では、液漏れが起こらないため、電池の信頼性が向上し、かつ簡易な構成で出力特性に優れたバイポーラ電池10が形成される。
【0074】
ポリマー電解質としては、真性ポリマー電解質、およびゲルポリマー電解質が挙げられる。
【0075】
真性ポリマー電解質としては、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。また、これらの高分子は、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。本発明においては、電極特性をより向上させるために、全固体高分子電解質が正極活物質層13および負極活物質層15の双方に含まれることが好ましい。
【0076】
また、ゲルポリマー電解質とは、一般的に、イオン伝導性を有する全固体高分子電解質に、電解液を保持させたものをいう。なお、本願では、リチウムイオン伝導性を有しない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも、高分子ゲル電解質に含まれるものとする。用いられる電解液(電解質塩および可塑剤)の種類等は特に制限されない。電解質塩としては、例えば、LiBETI、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO等のリチウム塩が例示される。また、可塑剤としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類などが例示される。
【0077】
また、電解質層がゲルポリマー電解質からなる場合、前記電解質層は、高分子ゲル原料溶液を不織布などのセパレータに含浸させた後、上記の種々の方法を用いて重合することにより形成されたものであってもよい。セパレータを用いることにより、電解液の充填量を高めることができるとともに、電池内部の熱伝導性が確保される。
【0078】
[絶縁層]
バイポーラ電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁層31が設けられる。この絶縁層31は、電池内で隣り合う集電体13同士が接触したり、電池要素21における単電池層19の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で設けられる。かような絶縁層31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質のバイポーラ電池10が提供されうる。
【0079】
絶縁層31としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0080】
[タブ]
バイポーラ電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、タブ(正極タブ25および負極タブ27)が最外層集電体(11a、11b)に接続される。具体的には、正極タブ25が正極用最外層集電体11aに接続され、負極タブ27が負極用最外層集電体11bに接続される。
【0081】
タブ(正極タブ25および負極タブ27)の材質は、特に制限されず、バイポーラ電池用のタブとして従来用いられている公知の材質が用いられうる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極端子25と負極端子27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、場合によっては、最外層集電体(11a、11b)を延長することによりタブ(25、27)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0082】
[外装]
バイポーラ電池10においては、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、電池要素21は、好ましくはラミネートシート29などの外装内に収容される。外装としては特に制限されず、従来公知の外装が用いられうる。自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を迅速に電池動作温度まで加熱しうる点で、好ましくは、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートシート等が用いられうる。
【0083】
(第2実施形態)
第2実施形態のバイポーラ電池は、上記の第1実施形態と比較して、最外層集電体の形状およびタブの接合位置が異なるのみであり、その他の構成は上記の第1実施形態と同様である。従って、第1実施形態と同一の部材には同一の参照番号を付し、第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。このことは、後述する他の形態についても同様である。
【0084】
図5は、本実施形態(第2実施形態)のバイポーラ電池10の負極側最外層集電体11bの模式斜視図であり、図6は、図5に示す6−6線に沿った断面図であり、図7は、本実施形態(第2実施形態)のバイポーラ電池10を示す断面図である。なお、図5に示す6−6線に沿った面と、図7の断面とは、対応している。
【0085】
本実施形態において、負極側最外層集電体11bは略矩形であり、負極タブ27の接合部27’は矩形の中心部に位置する(図5中の斜線部を参照)。そして、負極タブ27との接合部27’から、集電体11bの平面方向に遠ざかるに従って、具体的には、負極タブ27との接合部27’から矩形の4辺に向かって、負極側最外層集電体11bの厚さが直線的に減少している。なお、図7に示すように、タブ(25、27)は、耐熱絶縁性の樹脂33により被覆されている。これにより、接合部(25’、27’)以外の箇所におけるタブ(25、27)と最外層集電体(11a、11b)との短絡が防止されうる。
【0086】
上記のような構成を有することにより、本実施形態のバイポーラ電池10は、上記の第1実施形態のバイポーラ電池と同様の作用および効果を示す。すなわち、上述したような負極側最外層集電体11bの厚さの減少に伴い、厚さが減少する方向の電気抵抗が直線的に増加する。これにより、上記の第1実施形態において説明したのと同様のメカニズムによって、負極側最外層集電体11bから電池要素21の積層方向へ流れる電流の密度分布の偏りが緩和される。その結果、特定部位における活物質の消耗や熱の発生などによる電池要素の劣化が抑制され、バイポーラ電池の寿命特性が向上しうる。
【0087】
(第3実施形態)
第3実施形態のバイポーラ電池は、上記の第1実施形態と比較して、最外層集電体の構成が異なるのみであり、その他の構成は上記の第1実施形態と同様である。
【0088】
図8は、本実施形態(第3実施形態)のバイポーラ電池10の負極側最外層集電体11bの、負極タブ27が接合される面の側から見た平面図であり、図9は、図8に示すA方向から見た側面図である。
【0089】
本実施形態において、負極側最外層集電体11bは略矩形であり、負極タブ27の接合部27’は矩形の一の辺の縁部に位置する(図8中の斜線部を参照)。そして、負極タブ27が接合される面には、接合部27’の位置する辺からこの辺に対向する辺に向かって、換言すれば、集電体11bの長手方向に沿って、4本の溝部35が形成されている。各溝部35の深さおよび幅は、接合部27’の位置する辺からこの辺に対向する辺に向かうに従って増加している。すなわち、各溝部35は、三角錐形である。なお、溝部35の寸法および本数は図8および図9に示す形態に特に制限されず、適宜変更されうる。また、溝部35の形成方法についても特に制限はなく、例えば、電動カッターなどを用いる方法が例示される。
【0090】
上記のような構成を有する本実施形態のバイポーラ電池10によっても、上記の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0091】
(第4実施形態)
第4実施形態のバイポーラ電池は、上記の第3実施形態と比較して、最外層集電体の有する溝部の構成が異なるのみであり、その他の構成は上記の第3実施形態と同様である。
【0092】
図10は、本実施形態(第4実施形態)のバイポーラ電池10の負極側最外層集電体11bの、負極タブ27が接合される面の側から見た平面図であり、図11は、図10に示すB方向から見た側面図である。
【0093】
本実施形態において、負極側最外層集電体11bは略矩形であり、負極タブ27の接合部27’は矩形の一の辺の縁部に位置する(図10中の斜線部を参照)。そして、負極タブ27が接合される面には、接合部27’の位置する辺からこの辺に対向する辺に向かって等間隔に、5本の平行な溝部35が形成されている。そして、各溝部35の深さは、接合部27’の位置する辺に近い溝部35ほど浅く、接合部27’の位置する辺から遠い溝部35ほど深い。
【0094】
なお、上述したように、図11に示す形態において、各溝部35は、等間隔に形成されている。ただし、場合によっては、隣接する溝部35の間隔を異ならせてもよい。例えば、接合部27’の位置する辺からこの辺に対向する辺に向かうに従って、隣接する溝部35の間隔を狭くしてもよい。
【0095】
上記のような構成を有する本実施形態のバイポーラ電池10によっても、上記の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0096】
(第5実施形態)
第5実施形態のバイポーラ電池は、上記の第4実施形態と比較して、最外層集電体の構成が異なるのみであり、その他の構成は上記の第4実施形態と同様である。
【0097】
図12は、本実施形態(第5実施形態)のバイポーラ電池10の負極側最外層集電体11bの負極タブ27が接合される面の側から見た平面図であり、図13は、図12に示すC方向から見た側面図である。
【0098】
本実施形態において、負極側最外層集電体11bは略矩形であり、負極タブ27の接合部27’は矩形の一の辺の縁部に位置する(図12の斜線部を参照)。そして、負極タブ27が接合される面には、接合部27’の位置する辺に平行に、6本の切欠き部37が形成されている。各切欠き部37は、集電体11bの矩形の長手方向の対向する2辺から交互に切り欠かれている。また、接合部27’の位置する辺から、この辺に対向する辺に向かうに従って、各切欠き部37の長さは増加しており、さらに、隣接する切欠き部37の間隔は狭まっている。
【0099】
なお、図13に示す形態においては、各切欠き部37の深さは全ての切欠き部37において一定である。ただし、場合によっては各切欠き部37の深さを異ならせてもよい。かような形態としては、例えば、接合部27’の位置する辺に近い切欠き部37ほど浅く、接合部27’の位置する辺から遠い切欠き部37ほど深い形態が例示される。かような形態によれば、図12および図13に示すような各切欠き部37が一定の深さを有する形態よりも、負極タブ27の接合部27’から遠ざかるに従って集電体11bの平面方向の電気抵抗が増加する際の増加率が増大しうる。
【0100】
負極タブ27が接合される面に切欠き部37が設けられる形態は上記の形態のみに制限されず、負極タブ27との接合部27’から遠ざかるに従って、集電体11bの平面方向の電気抵抗が増加しうる形態であればよい。切欠き部37が設けられる他の形態としては、例えば図14に示す形態が挙げられる。図14に示す形態において、各切欠き部37は、集電体11bの長手方向の対向する2辺の双方から等間隔に切り欠かれている。また、接合部27’の位置する辺から、この辺に対向する辺に向かうに従って、各切欠き部37の長さは増加している。
【0101】
切欠き部37の形成方法については特に制限はなく、溝部35の形成について上述したような電動カッターなどを用いる方法が例示される。
【0102】
上記のような構成を有する本実施形態のバイポーラ電池10によっても、上記の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0103】
(第6実施形態)
第6実施形態では、上記の第1〜第5実施形態のバイポーラ電池を複数個、並列および/または直列に接続して、組電池を構成する。
【0104】
図15は、本実施形態(第6実施形態)の組電池を示す斜視図である。
【0105】
図15に示すように、組電池40は、上記の第1〜第5実施形態のいずれかに記載のバイポーラ電池が複数個接続されることにより構成される。各バイポーラ電池10の正極タブ25および負極タブ27がバスバーを用いて接続されることにより、各バイポーラ電池10が接続されている。組電池40の一の側面には、組電池40全体の電極として、電極ターミナル(42、43)が設けられている。
【0106】
組電池40を構成する複数個のバイポーラ電池10を接続する際の接続方法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。例えば、超音波溶接、スポット溶接などの溶接を用いる手法や、リベット、カシメなどを用いて固定する手法が採用されうる。かような接続方法によれば、組電池40の長期信頼性が向上しうる。
【0107】
本実施形態の組電池40によれば、上記の第1〜第5実施形態のバイポーラ電池10を用いて組電池化することにより、高容量および/または高出力の電池が提供されうる。しかも、組電池40を構成する個々のバイポーラ電池10が耐久性に優れることから、本実施形態の組電池40によれば、耐久性に優れる電池もまた、提供されうる。
【0108】
なお、組電池40を構成するバイポーラ電池10の接続は、複数個全て並列に接続してもよく、また、複数個全て直列に接続してもよく、さらに、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。
【0109】
(第7実施形態)
第7実施形態では、上記の第1〜第5実施形態のバイポーラ電池10、または第6実施形態の組電池40をモータ駆動用電源として搭載して、車両を構成する。バイポーラ電池10または組電池40をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、および燃料電池自動車などの、車輪をモータによって駆動する自動車が挙げられる。
【0110】
参考までに、図16に、組電池40を搭載する自動車50の概略図を示す。自動車50に搭載される組電池40は、上記で説明したような特性を有する。このため、組電池40を搭載する自動車50は耐久性に優れ、長期間に渡って使用した後であっても充分な出力を提供しうる。
【0111】
以上のように、本発明の幾つかの好適な実施の形態について示したが、本発明は、以上の実施の形態に限られるものではなく、当業者によって種々の変更、省略、および追加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1実施形態のバイポーラ電池を示す断面図である。
【図2】従来のバイポーラ電池の負極側最外層集電体において電流が流れる様子を説明するための概念図である。各分岐点におけるY方向の電流の相対値を矢印の長さで示す。
【図3】第1実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体において電流が流れる様子を説明するための概念図である。各分岐点におけるY方向の電流の相対値を矢印の長さで示す。
【図4】従来のバイポーラ電池および第1実施形態のバイポーラ電池の各分岐点におけるY方向の電流の相対値を示すグラフである。
【図5】第2実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体の模式斜視図である。
【図6】図5に示す6−6線に沿った断面図である。
【図7】第2実施形態のバイポーラ電池を示す断面図である。
【図8】第3実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体の、負極タブが接合される面の側から見た平面図である。
【図9】図8に示すA方向から見た側面図である。
【図10】第4実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体の、負極タブが接合される面の側から見た平面図である。
【図11】図10に示すB方向から見た側面図である。
【図12】第5実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体の、負極タブが接合される面の側から見た平面図である。
【図13】図12に示すC方向から見た側面図である。
【図14】第5実施形態のバイポーラ電池の負極側最外層集電体の変形例を示す平面図である。
【図15】第6実施形態の組電池を示す斜視図である。
【図16】第7実施形態の自動車を示す概略図である。
【符号の説明】
【0113】
10 バイポーラ電池、
11 集電体、
11a 正極側最外層集電体、
11b 負極側最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 電池要素、
25 正極タブ、
25’ 正極タブと正極側最外層集電体との接合部、
27 負極タブ、
27’ 負極タブと負極側最外層集電体との接合部、
29 ラミネートシート、
31 絶縁層、
33 樹脂、
35 溝部、
37 切欠き部、
40 組電池、
50 自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層、電解質層、および負極活物質層がこの順に積層されてなる単電池が、集電体を介してさらに積層され、最外層集電体にタブが接合されてなるバイポーラ電池であって、
前記最外層集電体と前記タブとの接合部から、前記最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って、前記最外層集電体の平面方向の電気抵抗が増加することを特徴とする、バイポーラ電池。
【請求項2】
前記最外層集電体と前記タブとの接合部から、前記最外層集電体の平面方向に遠ざかるに従って、前記最外層集電体の厚さが単調に減少することを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項3】
前記最外層集電体は略矩形であり、
前記タブと前記最外層集電体との接合部は前記最外層集電体の一の辺に位置し、
前記最外層集電体の厚さは、前記接合部が位置する前記一の辺から対向する辺に向かって減少している、請求項2に記載のバイポーラ電池。
【請求項4】
ゲルポリマー電池または真性ポリマー電池である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイポーラ電池を用いた組電池。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイポーラ電池、または請求項5に記載の組電池を搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−85921(P2006−85921A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266547(P2004−266547)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】