説明

バスバー及び電気部品ケース及び電気部品の実装方法並びに端子接続構造

【課題】 バスバーの接続端子をレーザー溶接する際に、金属屑が発生することを防止できるようにする。
【解決手段】 バスバー20の部品側接続端子25の先端から所定の長さ範囲に、反対側両角部24b(電子部品19の接続端子27との接合予定面25aと反対側の両角部)が中心側に後退した形状の接合予定部29を形成しておき、このバスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士を接触させて並べた状態で両接続端子25,27の先端の略中心位置にレーザーを照射することで、両接続端子25,27の先端を溶融させて接合する。このようにすれば、部品側接続端子25に形成した接合予定部29の全体にほぼ均等に熱を伝えて接合予定部29全体を溶融させることができ、未溶融部によって形成される金属屑の発生を未然に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶接で他の接続端子と電気的に接続されるバスバー及びバスバーが一体的に設けられた電気部品ケース及び電気部品ケースに一体的に設けられたバスバーと電気部品とを電気的に接続する電気部品の実装方法等に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のECU(電子制御回路)を収容するECUケースは、導電金属板(例えば銅板)で所定の形状に形成されたバスバーをケース内に配設し、このバスバーによってECUを構成する制御基板や電子部品を接続するようにしたものがある。このようなバスバーと他部品とを電気的に接続する技術として、例えば、特許文献1(特開平11−297372号公報)に記載されているように、バスバーとタブ端子とをレーザー溶接して電気的に接続する技術が知られている。
【特許文献1】特開平11−297372号公報(第2頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、レーザー溶接を利用してバスバーと他部品とを電気的に接続する方法として、図8に示すように、バスバー1の接続端子2と他部品3の接続端子4の先端同士を揃えて並べた状態で、両接続端子2,4の先端にレーザーを照射して両接続端子2,4の先端を溶融させて接合することで、バスバー1と他部品3とを電気的に接続する技術を研究している。
【0004】
しかし、一般にバスバー1は導電金属板を所定の形状に打ち抜き加工して生産するため、バスバー1の接続端子2は横断面略四角形状に形成されている。このため、図9に示すように、バスバー1の接続端子2と他部品3の接続端子4の先端同士をレーザー溶接する際に両接続端子2,4の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、横断面略四角形状に形成されたバスバー1の接続端子2のうち接合予定面2aと反対側の両角部2bには他の部分に比べて熱が伝わり難くいという傾向がある。これにより、前記両角部2bに十分に溶融しない未溶融部が残ることがあり、この未溶融部によって細長い金属屑(いわゆる「ひげ」)が形成されることがある。この金属屑が飛び散って周辺の基板や電気部品等の導電部分に付着すると、電気回路のショートや絶縁抵抗低下等の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、バスバーの接続端子をレーザー溶接する際に、金属屑が発生することを未然に防止することができ、電気回路の信頼性を高めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、横断面略四角形状の接続端子を有して該接続端子の先端部分を他の接続端子と並べてレーザー溶接することで他の接続端子と電気的に接続される導電金属製のバスバーであって、このバスバーの接続端子に、その先端から所定の長さ範囲に他の接続端子との接合予定面と反対側の両角部(以下これらを単に「反対側両角部」という)が中心側に後退した形状の接合予定部を形成するようにしたものである。
【0007】
このようにすれば、バスバーの接続端子と他の接続端子の先端同士をレーザー溶接する際に両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、バスバーの接続端子は、反対側両角部が中心側に後退した接合予定部の全体にほぼ均等に熱を伝えて接合予定部全体を溶融させることができる。これにより、未溶融部によって形成される金属屑の発生を未然に防止することができ、この金属屑による電気回路のショート等の不具合を防止して電気回路の信頼性を高めることができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、接合予定部は、反対側両角部を略平面形状に成形して略六角柱形状に形成するようにすると良い。このようにすれば、接合予定部を容易に形成することができる。
【0009】
或は、請求項3のように、接合予定部は、反対側両角部を略曲面形状に成形して略半円柱形状に形成するようにしても良い。このようにすれば、両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、接合予定部の全体に確実に熱を伝えて接合予定部全体を確実に溶融させることができ、金属屑の発生防止効果を高めることができる。
【0010】
また、請求項4のように、接合予定部は、接続端子の先端から1mm以上5mm以下の長さ範囲に形成するようにすると良い。このようにすれば、接合予定部の長さが必要以上に長くならない範囲内で、金属屑の発生を防止するのに十分な長さの接合予定部を形成することができる。
【0011】
更に、請求項5のように、接合予定部は、反対側両角部が接続端子の厚さの1/3以上後退した形状に形成するようにすると良い。このようにすれば、レーザー溶接の際に、接合予定部全体を確実に溶融させることができ、金属屑の発生をより確実に防止することができる。
【0012】
また、請求項6のように、バスバーは、銅又は銅合金で形成して接合予定部の少なくとも一部に錫メッキを施すようにしても良い。このようにすれば、バスバーを形成する銅よりも融点の低い錫メッキで接合予定部を被覆することができ、接合予定部の錆を防止しながら、レーザー溶接の際に接合予定部を容易に溶融させることができる。
【0013】
また、請求項7のように、接合予定部は、反対側両角部を塑性加工及び/又は切削加工して形成するようにすると良い。このようにすれば、一般的な塑性加工や切削加工で接合予定部を形成することができる。
【0014】
また、請求項8のように、接合予定部は、レーザーの照射方向に見た場合に接続端子の先端部の面積と他の接続端子の先端部の面積とがほぼ等しくなるように形成すると良い。このようにすればレーザー溶接の際に、両接続端子の先端部にほぼ均等に熱を伝えることができる。
【0015】
また、本発明のバスバーは、請求項9のように、電気部品及び/又は電子部品(以下これらを単に「電気部品」という)を収容する電気部品ケースに一体的に設けたバスバーに適用しても良い。この場合、請求項12のように、電気部品ケース内に電気部品を固定してバスバーの接続端子と電気部品の接続端子の先端同士を接触させて並べた状態で両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射することで両接続端子の先端を溶融させて接合するようにすると良い。このようにすれば、電気部品ケースに一体的に設けたバスバーの接続端子と、そのケースに収容する電気部品の接続端子とをレーザー溶接する際に、金属屑が発生することを防止することができ、電気部品ケース内の電気回路の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、請求項10のように、電気部品が収容されたときにバスバーの接続端子が該電気部品の接続端子と平行になるようにすると良い。このようにすれば、バスバーの接続端子と電気部品の接続端子との接触面積を広くすることができ、両者の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0017】
更に、請求項11のように、電気部品が収容されたときにバスバーの接続端子が該電気部品の接続端子と当接又は近接するようにしても良い。このようにすれば、電気部品ケースに電気部品を収容するだけでバスバーの接続端子と電気部品の接続端子とを接触状態又は近接状態にすることができ、両者をレーザー溶接する際の作業性を向上させることができる。
【0018】
また、請求項13のように、両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射する際に、バスバーの接続端子側から両接続端子の先端の略中心位置に向かって斜め方向にレーザーを照射するようにしても良い。このようにすれば、バスバーの接続端子側から電気部品の接続端子側に向かってレーザーを照射することができるため、電気部品の接続端子先端の全体に熱を伝えて電気部品の接続端子先端の全体を溶融させることができ、電気部品の接続端子側に金属屑が発生することを防止することができる。
【0019】
また、請求項14のように、電気部品ケースとバスバーは、電気部品ケースの射出成形型内にバスバーをセットした状態で該射出成形型内に樹脂材料を充填して電気部品ケースを成形することで一体化するようにすると良い。このようにすれば、バスバーを一体化した電気部品ケースを効率良く生産することができる。
【0020】
また、本発明の適用範囲は、バスバーの接続端子のみに限定されず、請求項15のように、バスバーの接続端子と他の接続端子の少なくとも一方に、反対側両角部が中心側に後退した形状の接合予定部を形成するようにしても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を2つの実施例1,2を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1を図1乃至図6に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、自動車のECU11(電子制御回路)を収容するECUケース12(電気部品ケース)は、箱状に形成された樹脂製のケース本体13の開口部13a側に、該開口部13aを塞ぐための樹脂製のケース蓋14がビスの締め付け又は接着等により取り付けられ、ケース本体13の開口部13aと反対側には、金属製のヒートシンク15(放熱板)がビス16の締め付け又は接着等により取り付けられている。また、ケース本体13の側面には、ECU11を自動車の電子制御部品(例えば、燃料噴射弁、点火装置等)やバッテリ電源等と電気的に接続するためのコネクタ17が一体的に設けられている。
【0023】
ケース本体13とケース蓋14は、例えば、ガラス繊維入りのPBT(ポリブチレンテレフタレート)、ガラス繊維入りのPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)等の耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性に優れた絶縁性樹脂により形成されている。また、ヒートシンク15は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性(放熱性)に優れた金属により形成されている。
【0024】
図2に示すように、ECUケース12内には、ECU11を構成する制御基板18やトランジスタ、IC等の電子部品19が収容され、これらの制御基板18と電子部品19とが、ケース本体13に一体的に設けられた導電金属製のバスバー20によって電気的に接続されている。制御基板18は、ケース本体13に一体成形された支持ボス21にビス22で締め付け固定されている。また、ヒートシンク15には、ケース本体13に形成された放熱窓23に対応して部品近接面24が設けられ、この部品近接面24に電子部品19が接触するように又は熱伝導性の良い接着剤やペースト状のグリス等を介して配置されている。
【0025】
また、バスバー20は、銅又は銅合金で形成された導電金属板を所定の形状に打ち抜き加工することで、電子部品19に接続するための部品側接続端子25や制御基板18に接続するための基板側接続端子26が一体的に設けられ、これらの接続端子25,26がバスバー20の本体部に対してほぼ直角方向に延びるように折り曲げ加工されている。これにより、バスバー20の本体部がケース本体13に埋設固定された状態で接続端子25,26がケース本体13の内部空間に突出するようになっている。
【0026】
このバスバー20の部品側接続端子25は、電子部品19がヒートシンク15の部品近接面24に取り付けられたときに、部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とがほぼ平行になると共に、部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とがその先端同士を揃えて並んだ状態で当接又は近接するように形成されている。そして、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士をレーザー溶接することでバスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とが電気的に接続されている。
【0027】
更に、バスバー20の基板側接続端子26は、制御基板18がケース本体13の支持ボス21に取り付けられたときに、基板側接続端子26の先端部が制御基板18のスルーホール28に差し込まれるように形成されている。そして、バスバー20の基板側接続端子26の先端部を制御基板18のスルーホール28に差し込んだ状態で半田付けすることでバスバー20の基板側接続端子26と制御基板18の配線パターン(図示せず)とが電気的に接続されている。
【0028】
前述したように、バスバー20は導電金属板を所定の形状に打ち抜き加工して形成されているため、バスバー20の接続端子25,26は横断面略四角形状に形成されているが、図3及び図4Aに示すように、バスバー20の部品側接続端子25の先端部には、電子部品19の接続端子27との接合予定面25aと反対側の両角部25b(以下これらを単に「反対側両角部」という)が中心側に後退した形状の接合予定部29が形成されている。この接合予定部29は、反対側両角部25bが略平面形状になるように塑性加工や切削加工することで略六角柱形状に形成されている。
【0029】
これにより、図5に示すように、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士をレーザー溶接する際に両接続端子25,26の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、部品側接続端子25に形成した接合予定部29の全体にほぼ均等に熱を伝えて接合予定部29全体を溶融させて、未溶融部による金属屑の発生を防止するようにしている。
【0030】
また、図3に示すように、接合予定部29は、部品側接続端子25の先端からの長さ寸法Lが1mm以上5mm以下の範囲(より好ましくは3mm)になるように形成されている。これにより、接合予定部29の長さが必要以上に長くならない範囲内で、金属屑の発生を防止するのに十分な長さの接合予定部29を形成するようにしている。
【0031】
更に、接合予定部29は、反対側両角部25bの面取り寸法C(部品側接続端子25の厚さ寸法tと接合予定部29の側面の厚さ寸法t1との差)が部品側接続端子25の厚さ寸法tの1/3以上になるように反対側両角部25bが後退した形状に形成されている。つまり、接合予定部29の側面の厚さ寸法t1が部品側接続端子25の厚さ寸法tの2/3以下になるように反対側両角部25bが後退した形状に形成されている。これにより、レーザー溶接の際に接合予定部29全体を確実に溶融させるようにしている。
【0032】
更に、接合予定部29は、レーザーの照射方向に見た場合に部品側接続端子25の先端部の面積と電子部品19の接続端子27の先端部の面積とがほぼ等しくなるように形成され、レーザー溶接の際に、両接続端子25,27の先端部にほぼ均等に熱を伝えることができるようになっている。
【0033】
また、図4Aに示すように、接合予定部29の反対側両角部25b側の根元部には、傾斜面部30が部品側接続端子25の中心側から外側に向かって下り傾斜するように形成されている。或は、図4Bに示すように、傾斜面部30を部品側接続端子25の接合予定面25a側から反対側両角部25b側に向かって下り傾斜するように形成しても良い。この傾斜面部30は、後述するカメラ31で部品側接続端子25の先端部を撮影する際に、部品側接続端子25の先端面を認識し易くするためのものである。
【0034】
また、バスバー20は、少なくとも部品側接続端子25の先端部(接合予定部29)と基板側接続端子26の先端部に、錫メッキが施されている。これにより、バスバー20を形成する銅(又は銅合金)よりも融点の低い錫メッキで部品側接続端子25の接合予定部29を被覆して接合予定部29の錆を防止しながら、レーザー溶接の際に接合予定部29を容易に溶融させることができるようにしている。尚、各接続端子25,26全体又はバスバー20全体に錫メッキを施すようにしても良い。
【0035】
次に、ECU11を収納したECUケース12の製造方法について説明する。
まず、ケース本体13とケース蓋14を、それぞれ絶縁製樹脂の射出成形により成形する。その際、ケース本体13の成形工程で、ケース本体13の射出成形型内にバスバー20をセットした状態で該射出成形型内に樹脂材料を充填してケース本体13を成形することで、ケース本体13とバスバー20とを一体化する。
【0036】
この後、ケース本体13の開口部13aと反対側に、ヒートシンク15をビス16の締め付け又は接着等により取り付けて、ケース本体13の開口部13aは開放した状態にしておく。
【0037】
この後、ケース本体13の開口部13aからECU11の構成部品である電子部品19をヒートシンク15の部品近接面24にセットして、該部品近接面24に電子部品19を配置する。このときに、バスバー20の部品側接続端子25と電気部品19の接続端子27とがその先端同士を揃えて並んだ状態で当接又は近接するようになっているため、ケース本体13に電子部品19を収容するだけでバスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士を接触状態又は近接状態にすることができ、両者をレーザー溶接する際の作業性を向上させることができる。しかも、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とがほぼ平行になるようになっているため、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27との接触面積を広くすることができ、両者の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0038】
この後、次のようにしてバスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士をレーザー溶接する。図3に示すように、まず、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士が接触して並んだ状態のケース本体13を、レーザー溶接装置の可動テーブル(図示せず)にセットし、その上方に設置したカメラ31で両接続端子25,27の先端部を撮影する。そして、カメラ31で撮影した映像によって両接続端子25,27の先端の中心位置を確認しながら、ケース本体13をセットした可動テーブルを移動させて、両接続端子25,27の先端の略中心位置とレーザーの照射位置とを一致させる。この際、レーザーの照射装置を可動するようにしても良い。
【0039】
両接続端子25,27の先端の略中心位置とレーザーの照射位置とを一致させた後、バスバー20の部品側接続端子25側から両接続端子25,27の先端の略中心位置に向かって斜め方向にレーザーを照射する。このようにして、両接続端子25,27の先端同士を接触させて並べた状態で両接続端子25,27の先端の略中心位置にレーザーを照射することで、図6に示すように、両接続端子25,27の先端を溶融させて接合して、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とを電気的に接合する。
【0040】
この後、ケース本体13の開口部13aからECU11の構成部品である制御基板18をケース本体13の支持ボス21にセットして、該支持ボス21に制御基板18をビス22で締め付け固定する。このときに、バスバー20の基板側接続端子26の先端部が制御基板18のスルーホール28に差し込まれる。
【0041】
この後、バスバー20の基板側接続端子26の先端部を制御基板18のスルーホール28に差し込んだ状態で半田付けすることでバスバー20の基板側接続端子26と制御基板18の配線パターン(図示せず)とを電気的に接続する。
【0042】
このようにしてケース本体13内にECU11を収納した後、ケース本体13の開口部13a側に、ケース蓋14をビスの締め付け又は接着等により取り付けて、ECUケース12を密閉する。尚、ケース蓋14を省略して、ケース本体13内にエポキシ樹脂等を充填するようにしても良い。以上により、ECU11を収納したECUケース12の製造が完了する。
【0043】
以上説明した本実施例1では、バスバー20の部品側接続端子25の先端部に、反対側両角部24b(電子部品19の接続端子27との接合予定面25aと反対側の両角部)が中心側に後退した形状の接合予定部29を形成するようにしたので、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士をレーザー溶接する際に両接続端子25,27の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、部品側接続端子25に形成した接合予定部29の全体にほぼ均等に熱を伝えて接合予定部29全体を溶融させることができる。これにより、未溶融部によって形成される金属屑の発生を未然に防止することができ、金属屑によるECU11の電気回路のショートや絶縁抵抗低下等の不具合を防止してECU11の電気回路の信頼性を高めることができる。
【0044】
しかも、本実施例1では、接合予定部29を、反対側両角部25bが略平面形状になるように塑性加工や切削加工することで略六角柱形状に形成するようにしたので、接合予定部29を容易に形成することができる。
【0045】
また、本実施例1では、接合予定部29を、部品側接続端子25の先端からの長さ寸法Lが1mm以上5mm以下の範囲(より好ましくは3mm)になるように形成したので、接合予定部29の長さが必要以上に長くならない範囲内で、金属屑の発生を防止するのに十分な長さの接合予定部29を形成することができる。
【0046】
更に、本実施例1では、接合予定部29を、反対側両角部25bの面取り寸法C(部品側接続端子25の厚さ寸法tと接合予定部29の側面の厚さ寸法t1との差)が部品側接続端子25の厚さ寸法tの1/3以上になるように形成にしたので、レーザー溶接の際に、接合予定部29全体を確実に溶融させることができ、金属屑の発生をより確実に防止することができる。また、レーザーの照射方向から見た場合のバスバー20の部品側接続端子25先端部の面積と他の電子部品19の接続端子27先端部の面積とがほぼ等しくなるようにすることができ、両者にほぼ均等に熱を伝えることができる。
【0047】
また、本実施例1では、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27とをレーザー溶接する際に、バスバー20の部品側接続端子25側から両接続端子25,27の先端の略中心位置に向かって斜め方向にレーザーを照射するようにしたので、バスバー20の部品側接続端子25側から電子部品19の接続端子27側に向かってレーザーを照射することができて、電子部品19の接続端子27先端の全体に熱を伝えて電子部品19の接続端子27先端の全体を溶融させることができ、電子部品19の接続端子27側に金属屑が発生することを防止することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、図7を用いて本発明の実施例2を説明する。
前記実施例1では、部品側接続端子25の反対側両角部25bが略平面形状になるように塑性加工や切削加工することで接合予定部29を略六角柱形状に形成するようにしたが、本実施例2では、図7に示すように、部品側接続端子25の反対側両角部25bが略曲面形状になるように塑性加工や切削加工することで接合予定部32を略半円柱形状に形成するようにしている。
【0049】
このようにすれば、バスバー20の部品側接続端子25と電子部品19の接続端子27の先端同士を接触させて並べた状態で両接続端子25,27の先端の略中心位置にレーザーを照射したときに、部品側接続端子25の接合予定部32の全体に確実に熱を伝えて接合予定部32全体を確実に溶融させることができ、金属屑の発生防止効果を高めることができる。
【0050】
尚、上記各実施例1,2では、接合予定部を、接続端子の先端から1mm以上5mm以下の長さ範囲に形成したが、これに限定されず、接合予定部を、接続端子の先端から1mm以下の長さ範囲に形成するようにしても良い。或は、接合予定部を、接続端子の先端面から少しだけ根元側に離れた位置に形成するようにしても良い。
【0051】
また、上記各実施例1,2では、自動車のECU11を収容するECUケース12に一体的に設けたバスバー20に本発明を適用したが、これに限定されず、他の電気部品や電子部品を収容する電気部品ケースに一体的に設けたバスバーに本発明を適用しても良い。更に、本発明は、電気部品ケースに一体的に設けたバスバーに限定されず、レーザー溶接で他の接続端子と電気的に接続されるバスバーに広く適用して実施できる。
【0052】
また、上記各実施例1,2では、バスバーの接続端子に接合予定部を形成するようにしたが、バスバーの接続端子には接合予定部を形成せずに、バスバーの接続端子とレーザー溶接される接続端子に接合予定部を形成するようにしても良い。或は、バスバーの接続端子と、該バスバーの接続端子とレーザー溶接される接続端子との両方に接合予定部を形成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1におけるECUケースの外観斜視図である。
【図2】ECUケースの断面図である。
【図3】実施例1のバスバーの部品側接続端子と電子部品の接続端子の接合前の状態を示す拡大図である。
【図4A】実施例1の接合予定部の外観斜視図である。
【図4B】実施例1の変形例における接合予定部の外観斜視図である。
【図5】実施例1のバスバーの部品側接続端子と電子部品の接続端子を接合する際の溶融状態を示す外観斜視図である。
【図6】実施例1のバスバーの部品側接続端子と電子部品の接続端子の接合後の状態を示す拡大図である。
【図7】実施例2の接合予定部の外観斜視図である。
【図8】比較例におけるバスバーの接続端子と他部品の接続端子の接合前の状態を示す拡大図である。
【図9】比較例におけるバスバーの接続端子と他部品の接続端子を接合する際の溶融状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
11…ECU、12…ECUケース(電気部品ケース)、13…ケース本体、14…ケース蓋、15…ヒートシンク、18…制御基板、19…電子部品、20…バスバー、25…部品側接続端子、26…基板側接続端子、27…接続端子、29…接合予定部、30…傾斜面部、32…接合予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面略四角形状の接続端子を有して該接続端子の先端部分を他の接続端子と並べてレーザー溶接することで前記他の接続端子と電気的に接続される導電金属製のバスバーであって、
前記バスバーの接続端子には、その先端から所定の長さ範囲に前記他の接続端子との接合予定面と反対側の両角部(以下これらを単に「反対側両角部」という)が中心側に後退した形状の接合予定部が形成されていることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記接合予定部は、前記反対側両角部が略平面形状に成形されて略六角柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記接合予定部は、前記反対側両角部が略曲面形状に成形されて略半円柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー。
【請求項4】
前記接合予定部は、前記接続端子の先端から1mm以上5mm以下の長さ範囲に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバスバー。
【請求項5】
前記接合予定部は、前記反対側両角部が前記接続端子の厚さの1/3以上後退した形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のバスバー。
【請求項6】
前記バスバーは、銅又は銅合金で形成されて前記接合予定部の少なくとも一部に錫メッキが施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のバスバー。
【請求項7】
前記接合予定部は、前記反対側両角部が塑性加工及び/又は切削加工されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のバスバー。
【請求項8】
前記接合予定部は、レーザーの照射方向に見た場合に前記接続端子の先端部の面積と前記他の接続端子の先端部の面積とがほぼ等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のバスバー。
【請求項9】
電気部品及び/又は電子部品(以下これらを単に「電気部品」という)を収容可能に形成される共に、横断面略四角形状の接続端子を有して該接続端子の先端部分を前記電気部品の接続端子と並べてレーザー溶接することで前記電気部品と電気的に接続される導電金属製のバスバーが一体的に設けられた電気部品ケースであって、
前記バスバーの接続端子には、その先端から所定の長さ範囲に前記電気部品の接続端子との接合予定面と反対側の両角部(以下これらを単に「反対側両角部」という)が中心側に後退した形状の接合予定部が形成されていることを特徴とする電気部品ケース。
【請求項10】
前記電気部品が収容されたときに前記バスバーの接続端子が該電気部品の接続端子とほぼ平行になるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の電気部品ケース。
【請求項11】
前記電気部品が収容されたときに前記バスバーの接続端子が該電気部品の接続端子と当接又は近接するように構成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の電気部品ケース。
【請求項12】
電気部品及び/又は電子部品(以下これらを単に「電気部品」という)を収容可能に形成された絶縁樹脂製の電気部品ケースに導電金属製のバスバーを一体的に設け、このバスバーに形成された横断面略四角形状の接続端子の先端部分を前記電気部品の接続端子と並べてレーザー溶接することで前記バスバーと前記電気部品とを電気的に接続する電気部品の実装方法であって、
前記バスバーの接続端子には、その先端から所定の長さ範囲に前記電気部品の接続端子との接合予定面と反対側の両角部(以下これらを単に「反対側両角部」という)が中心側に後退した形状の接合予定部が形成され、
前記電気部品ケース内に前記電気部品を固定して前記バスバーの接続端子と前記電気部品の接続端子の先端同士を接触させて並べた状態で両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射することで両接続端子の先端を溶融させて接合することを特徴とする電気部品の実装方法。
【請求項13】
前記両接続端子の先端の略中心位置にレーザーを照射する際に、前記バスバーの接続端子側から前記両接続端子の先端の略中心位置に向かって斜め方向にレーザーを照射することを特徴とする請求項12に記載の電気部品の実装方法。
【請求項14】
前記電気部品ケースと前記バスバーは、前記電気部品ケースの射出成形型内に前記バスバーをセットした状態で該射出成形型内に樹脂材料を充填して前記電気部品ケースを成形することで一体化されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の電気部品の実装方法。
【請求項15】
導電金属製のバスバーに形成された横断面略四角形状の接続端子と横断面略四角形状の他の接続端子の先端同士を並べてレーザー溶接することで前記バスバーの接続端子と前記他の接続端子とが電気的に接続される端子接続構造であって、
前記バスバーの接続端子及び/又は前記他の接続端子には、その先端から所定の長さ範囲に相手側の接続端子との接合予定面と反対側の両角部が中心側に後退した形状の接合予定部が形成されていることを特徴とする端子接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−302543(P2006−302543A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119053(P2005−119053)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】