説明

バックコンタクト太陽電池

第1の導電型の半導体材料を含み、第1の受光表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有するウエハ;ウエハの第1の表面の上に配置されている第1のパッシベーション層;ウエハの第2の表面の上に配置され、ウエハのものとは反対の導電型を有する点接触を含む第1の電気接点;ウエハの第2の表面の上に配置され、第1の電気接点から電気的に分離されており、ウエハのものと同じ導電型を有する点接触を含む第2の電気接点;を含む太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月16日出願の米国仮特許出願60/751,168の利益を主張する。
本発明は、新規な太陽電池に関する。より詳しくは、本発明は、光エネルギー、特に太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するのに非常に効率的であり、裏表面上に電気接点を有する太陽電池に関する。本発明は、また、かかる電池を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の最も重要な特性の一つは、太陽からの光エネルギーを電気エネルギーに変換するその効率である。他の重要な特性は、大規模製造プロセスに適用できる方法でかかる電池を製造する能力である。而して、当該技術においては、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池の効率を向上させるだけでなく、安全で環境的に適合しうる大規模製造プロセスを用いてそれらを製造するために、努力が続けられている。
【0003】
太陽電池は種々の半導体材料から製造することができるが、妥当なコストで容易に入手することができるために、且つ太陽電池を製造するのに用いるための電気的、物理的及び化学的特性の適当なバランスを有しているために、シリコンが一般に用いられる。選択された半導体材料としてシリコンを用いて太陽電池を製造する典型的な方法においては、シリコンに、正又は負のいずれかの導電型のドーパントをドープし、単結晶シリコンのインゴットに形成するか、又は当該技術において多結晶シリコンと呼ばれているもののブロック又は「ブリック」に成形し、これらのインゴット又はブロックを、当該技術において公知の種々のスライス又はソーイング方法によってウエハとも呼ばれる薄い基材に切断する。これらのウエハを用いて太陽電池を製造する。しかしながら、これらは、太陽電池を製造するための好適な半導体ウエハを得るのに用いられる唯一の方法ではない。
【0004】
慣例により、正の導電型は通常「p」又は「p型」と表され、負の導電型は「n」又は「n型」と表される。したがって、「p」と「n」とは、反対の導電型である。
ウエハが太陽電池に形成された際に入射光に面するように意図されたウエハの表面は、本明細書において前面又は前表面と呼び、前面と反対側のウエハの表面は、本明細書において裏面又は裏表面と呼ぶ。
【0005】
例えば、p型シリコンウエハを用いて太陽電池を製造する典型的で一般的な方法においては、ウエハを好適なn−ドーパントに曝露して、ウエハの前面又は受光面上にエミッタ層及びp−n接合を形成する。典型的には、n型層又はエミッタ層は、まず、化学析出又は物理析出のような当該技術において通常用いられている技術を用いて、p型ウエハの前表面の上にn−ドーパントを堆積し、かかる堆積の後に、n−ドーパント、例えばリンを、シリコンウエハの前表面中に打ち込んで、n−ドーパントをウエハ表面中に更に拡散させる。この「打ち込み」工程は、通常、ウエハを高温に曝露することによって行われる。これによって、n型層とp型シリコンウエハ基材との間の境界領域においてp−n接合が形成される。ウエハ表面は、リン又は他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前に、テクスチャ加工することができる。
【0006】
p−n接合を光エネルギーに曝露することによって生成する電位を用いるために、太陽電池には、通常、ウエハの前面上の導電性の前面電気接点、及びウエハの裏面上の導電性の裏面電気接点が与えられている。かかる接点は、通常、1種類以上の高度に導電性の金属でできており、したがって通常は不透明である。前面接点は、太陽電池の太陽又は他の光エネルギー源に面する側の上に配されているので、前面接点は、電池の前表面の可能な限り少ない面積を占め、それにも拘わらず電池と相互作用する入射光によって生成する電荷を捕捉することが、一般に望ましい。前面接点は、接点によって被覆又は遮蔽される電池の前表面の面積が最小になるように施されるが、それでもなお、前面接点は、それがなければ電気エネルギーを生成するのに用いることができる太陽電池の表面積の量を減少させる。上記の方法は、また、多数の高温処理工程を用いて太陽電池を形成している。高温を用いると、太陽電池を製造するのに必要な時間の量が増大し、エネルギーを消費し、高価な高温炉、又は高温で太陽電池を処理するための他の装置を使用することが必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概略:
従って、当該技術においては、高い効率を有し、大規模製造法を用いて、且つ好ましくは高温処理工程を用いないか、或いは少なくとも最小の高温処理工程を用いる方法によって製造することができ、電池が、効率を増大するために、ウエハの前面又は前表面上に電気接点を有さず、それによって光を電流に変換するための電池の前表面の利用可能な領域が最大になっている太陽電池が必要とされている。本発明は、かかる太陽電池を提供する。本発明の太陽電池を用いて、太陽電池を太陽に曝露することによって電気エネルギーを効率的に生成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の導電型の半導体材料、第1の受光表面、及び第1の表面の反対側の第2の表面を含むウエハ;ウエハの第1の表面の上に配置されている第1のパッシベーション層;ウエハの第2の表面の上に配置され、ウエハのものとは反対の導電型を有する点接触を含む第1の電気接点;ウエハの第2の表面の上に配置され、第1の電気接点から電気的に分離されており、ウエハのものと同じ導電型を有する点接触を含む第2の電気接点;を含む太陽電池に関する。
【0009】
本発明は、また、かかる太陽電池の製造方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の詳細な説明:
太陽電池を製造するための本発明方法において有用な半導体ウエハは、好ましくはシリコンを含み、通常、薄い平坦な形状の形態である。シリコンは、所望の場合には、1種類以上の半導体材料、例えばゲルマニウムのような1種類以上の更なる材料を含むことができる。p型ウエハに関しては、ホウ素がp型ドーパントとして広く用いられているが、他のp型ドーパント、例えばアルミニウム、ガリウム、又はインジウムもまた十分である。ホウ素が好ましいp型ドーパントである。かかるドーパントの組み合わせもまた好適である。而して、p型ウエハに関するドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウムの1以上を含むことができ、好ましくはホウ素を含む。n型シリコンウエハを用いる場合には、ドーパントは、例えば、リン、ヒ素、アンチモン、又はビスマスの1以上であってよい。好適なウエハは、通常、単結晶シリコンのインゴットのようなシリコンインゴットをスライス又はソーイングして、所謂チョクラルスキー(Cz)シリコンウエハのような単結晶ウエハを形成することによって得られる。好適なウエハは、また、成形された多結晶シリコンのブロックをスライス又はソーイングすることによっても製造することができる。シリコンウエハは、また、端面画定膜供給成長法(Edge-defined Film-fed Growth technology, EFG)又は同様の方法のようなプロセスを用いて溶融シリコンから垂直に引き上げることもできる。ウエハは任意の形状であってよいが、ウエハは、通常は、円形、正方形、又は擬正方形の形状である。「擬正方形」とは、通常は丸みのある角部を有するほぼ正方形形状のウエハを意味する。本発明の太陽電池において用いるウエハは、好適には薄いものである。例えば、本発明において有用なウエハは、厚さ約10ミクロン〜厚さ約300ミクロンであってよい。例えば、それらは厚さ約10ミクロン〜約200ミクロンであってよい。それらは、厚さ約10ミクロン〜約30ミクロンであってよい。円形の場合には、ウエハは、約100〜約180mm、例えば102〜178mmの直径を有することができる。正方形又は擬正方形の場合には、約100mm〜約150mmの幅を有することができ、約127〜約178mmの直径を有する丸みのある角部を有することができる。本発明方法において有用なウエハ、及びしたがって本発明方法によって製造される太陽電池は、例えば、約100〜約250cm2の表面積を有することができる。本発明方法において有用な第1のドーパントでドープされたウエハは、約0.1〜約20オーム・cm、通常は約0.5〜約5.0オーム・cmの抵抗率を有することができる。
【0011】
本発明の太陽電池において用いるウエハは、好ましくは、ウエハ厚さ(t)よりも大きな拡散距離(Lp)を有する。例えば、tに対するLpの比は、好適には1より大きい。これは、例えば、約1.1より大きくてよく、或いは約2よりも大きくてよい。この比は約3以下又はそれより大きくてもよい。拡散距離は、少数キャリア(例えばp型材料における電子)が多数キャリア(p型材料における正孔)と再結合する前に拡散できる平均距離である。Lpは、関係式:Lp=(Dτ)1/2(式中、Dは拡散定数である)によって少数キャリア寿命τと相関する。拡散距離は、光子線誘導電流法又は表面光電圧法のような多数の技術によって測定することができる。例えば、どのようにして拡散距離を測定できるかが記載されている、A. Fahrenbruch及びR. Bubeによる”Fundamentals of Solar Cells”, Academic Press, 1983, p.90-102(参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0012】
本明細書において用いるウエハという用語は、記載した方法によって、特に単結晶又は多結晶シリコンのインゴット又はブロックをソーイング又は切断することによって得られるウエハを包含するが、ウエハという用語は、また、本発明方法によって太陽電池を製造するのに有用な任意の他の好適な半導体基材又は層も包含することができることを理解すべきである。
【0013】
ウエハの前表面は、好ましくはテクスチャ加工する。テクスチャ加工は、一般に、光吸収を増加することによって、得られる太陽電池の効率を増大させる。例えば、ウエハを、化学エッチング、プラズマエッチング、レーザー又は機械的スクライビングを用いて好適にテクスチャ加工することができる。単結晶ウエハを用いる場合には、ウエハを、水酸化ナトリウムのような塩基の水溶液中、昇温温度、例えば約70℃〜約90℃で、約10〜約120分処理することによって、ウエハをエッチングして、異方的にテクスチャ加工された表面を形成することができる。水溶液は、イソプロパノールのようなアルコールを含むことができる。多結晶ウエハは、傾斜ダイスブレード又は輪郭テクスチャ加工ホイールを用いた機械的ダイシングによってテクスチャ加工することができる。好ましい方法においては、フッ化水素酸、硝酸及び水の溶液を用いて、単結晶ウエハをテクスチャ加工する。かかるテクスチャ加工法は、Hauser, Melnyk, Fath, Narayanan, Roberts及びBrutonによる「第3回光発電エネルギー変換世界会議」、5月11〜18日、大阪、日本からの彼らの論文"A Simplified Process for Isotropic Texturing of MC-Si", Hauserら(この記載の全てを参照として本明細書中に包含する)において記載されている。テクスチャ加工されたウエハは、通常、その後、例えば、フッ化水素酸中、次に中間段階として塩酸中に浸漬し、最後に脱イオン水中ですすぎ、乾燥することによって、清浄化される。ウエハの裏表面は、ウエハの厚さ及び用いる光捕捉構造に応じてテクスチャ加工してもしなくてもよい。
【0014】
ウエハをテクスチャ加工する前に、ウエハを、リン及びアルミニウムのゲッタリングにかけることができる。例えば、ゲッタリングは、例えばウエハの一面又は両面上にリンを拡散させることにより高濃度n−ドープ層を形成することによって行うことができる。これは、例えば、ウエハを、POCl3のようなガスに、900℃〜1000℃において30分曝露することによって行うことができる。かかるゲッタリングによって、ウエハの拡散距離が増大する。一つ又は複数の高濃度n−ドープ層を形成した後に、これらは、例えば、フッ化水素酸(HF)及び硝酸(HNO3)又はこれらの混合物のような酸、或いは水酸化ナトリウム(NaOH)のような強塩基を用いてエッチングすることによって除去することができる。本発明の一態様は、ウエハの前面上に高濃度n−ドープ層を形成して不純物をゲッタリングし、次に上記のように前表面のテクスチャ加工エッチング中にそれを除去することを含む。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、太陽電池は、好ましくは反射防止被覆としても機能することができる層である第1のパッシベーション層をウエハの前表面上に有する。ウエハがテクスチャ加工されている場合には、かかる層は、好ましくはかかるテクスチャ加工の後に加える。かかる第1のパッシベーション層は、例えば、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、低圧化学気相成長法(LPCVD)、熱酸化、ペースト、インク又はゾルゲルのスクリーン印刷などのような当該技術において公知の方法によって形成することのできる、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、又は窒化ケイ素のような誘電体の層であってよい。窒化ケイ素の層及び二酸化ケイ素の層のような、2以上のかかる層の組み合わせを用いて第1のパッシベーション層を形成することもできる。1つより多い層を用いる場合には、少なくとも一つの層は、好ましくは、例えば窒化ケイ素を含むパッシベーション層である。好ましくは、パッシベーション層は、窒化ケイ素が水素を含むようにPECVDのような方法によってウエハの表面上に直接形成された窒化ケイ素の層を含む。組み合わせられた層が前表面からの350〜1100ナノメートル(nm)の波長範囲の光の反射を減少し、シリコン表面上に堆積された第1の層がパッシベーション層として機能するように、2以上の層の組み合わせを選択することができる。用いられる全てのかかる層の合計は、厚さ約120nm以下、例えば厚さ約70〜約100nmであってよい。水素化窒化ケイ素は、シラン及びアンモニアの雰囲気中でのPECVDを用いて、約200℃〜約450℃、例えば約350℃〜約400℃の温度で堆積させることができる。
【0016】
好適な第1のパッシベーション層は、また、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)の層、水素化微結晶シリコンの層、又はa−Si:Hと水素化微結晶シリコンの混合物の層を含むことができ、特に、かかる層がウエハ上に直接堆積しているか又は他の方法で形成されている層を含むこともできる。好ましくは、かかる層は、ケイ素に加えて窒素を含む。かかる層は、また、窒素と共に又は窒素を含まずに、ホウ素を含んでいてよい。幾つかの場合においては、かかる層が、リンのような他のドーパントを含むか、或いは炭素、窒素、又は酸素のような他の元素で合金化されていることが好ましい可能性がある。a−Si:H、水素化微結晶シリコン、又はこれらの混合物を含む第1のパッシベーション層中に窒素を含ませる場合には、窒素の量又は濃度は、層中の窒素の量が、ウエハに隣接する箇所では最小、例えば窒素を含まない状態であり、ウエハとの界面から最も離れた箇所では層が窒化ケイ素になるようなレベルに到達するように、傾斜分布させることができる。アンモニアを窒素の好適な源として用いることができる。ホウ素又はリンを用いる場合には、ホウ素又はリンの濃度は、同じように、ウエハに隣接するか又は最も近接する箇所ではホウ素又はリンは存在せず、層中のケイ素及び存在する場合には窒素の全量を基準として約1原子%以下の最大ホウ素又はリン濃度に到達するように、傾斜分布させることができる。窒素を含むか又は含まず、ホウ素又はリンのようなドーパントを含むか又は含まない、a−Si:H、水素化微結晶シリコン、又はこれらの混合物を含むかかる層を施す場合には、それは、約40nm以下の厚さを有することができる。それは、例えば、厚さ約3〜約30nmであってよい。かかるa−Si:H層は、例えばシランの雰囲気中でのPECVDによるような任意の好適な方法によって施すことができる。最も好ましくは、それは、水素中約10%のシランを含む雰囲気中でのPECVDによって施し、最も好適には、それは、例えば約100℃〜約250℃のような低温で施す。動作理論に縛られることは意図しないが、第1のパッシベーション層は、ウエハ表面の再結合速度を<100cm/sに低下させるように機能することができる(<100cm/sの低表面再結合速度は、表面における低密度の欠陥状態の指標である)。第1のパッシベーション層は、また、窒化ケイ素層において通常見られるような、固定電荷を有することができ、その電場によってウエハ表面に近接する半導体ウエハの領域においてバンド曲がりが誘導される。窒化ケイ素における固定電荷は、通常、正であるので、このバンド曲がりは、ウエハの表面領域からの少数キャリアを押し返すように作用することができ、而してウエハがn型である場合には表面再結合を減少させることもできる。ウエハがp型である場合には、正の電荷は、蓄積層を生成するように作用することができ、表面再結合は、表面上の欠陥の密度が低い場合には低いままであることができる。而して、かかる機能を与えることができ、シリコンウエハに施すことができる任意の材料が、好適な第1のパッシベーション層であることができる。かかる層は、上に記載したように、複数の層を含むことができ、かかる層の一部又は全部は、例えば上に記載した材料から選択される異なる材料である。
【0017】
窒化ケイ素層は、厚さ約120nm以下、例えば厚さ約70〜約100nmの厚さで、ウエハの第1の表面上の第1のパッシベーション層及び反射防止層の両方として機能することができる。窒化ケイ素は、シラン及びアンモニア中、約350℃〜400℃の堆積温度において、PECVDによって堆積させることができる。
【0018】
他の態様においては、かかる窒化ケイ素層の窒素含量は、傾斜分布している。例えば、窒素含量は、シリコンウエハの表面に最も近接する窒化ケイ素層の部分におけるゼロから、約10nm以下の厚さに亘ってほぼSi34に見られるレベルまで上昇し、層の残りの厚さ、例えば残り約70nmに亘って一定となるようにすることができる。
【0019】
好ましくは、本発明の太陽電池は、ウエハの第2の表面上に、好ましくは窒化ケイ素の層を含む第2のパッシベーション層を含む。好ましくは、ウエハの第2の表面上の窒化ケイ素のかかる層は、ウエハと直接接触しているが、a−Si:H、又は微結晶シリコン、或いはa−Si:H及び微結晶シリコンの混合物を含む層を、窒化ケイ素の層とウエハの裏表面との間に配置することができる。ウエハの裏表面上の窒化ケイ素の層は、ウエハの前表面上の窒化ケイ素の層に関して上に記載したように形成することができ、同様の組成を有することができる。これは、ウエハの第1の表面上の窒化ケイ素層に関して記載したものと同等の厚さを有することができる。かかる窒化ケイ素の層は、窒化ケイ素の第1の層をウエハの第1の表面上に形成する場合と同様の方法で形成することができる。かかる窒化ケイ素の層は、アンチモン、リン、又はこれらの組み合わせのようなドーパントを含んでいてよい。かかるドーパントが存在する場合には、それは、窒化ケイ素層の約0.1〜約1.0原子%であってよい。a−Si:H、又は微結晶シリコン、或いはa−Si:H及び微結晶シリコンの混合物を含む層は、窒化ケイ素の層とウエハの裏表面との間に配置する場合、或いは第2のパッシベーション層としての窒化ケイ素層を用いない場合には、ウエハの第1の表面上のパッシベーション層に関して上に記載したように形成することができ、同様の組成を有することができる。
【0020】
本発明の太陽電池におけるウエハの裏表面又は第2の表面は、好ましくはそれぞれが1種類以上の金属を含む二つの電気接点を含む。接点の一方は、金属、或いはシリコン中でn導電型ドーパントとして機能することができる他の金属を含む金属を含んでいてよい。例えば、金属は、ケイ素と等電性のスズであってよく、或いは、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、又はこれらの組み合わせによって合金化されたスズであってよい。スズを用い、例えばそれをアンチモンのような元素によって合金化する場合には、かかる合金元素の量は、約0.1〜約20原子%であってよい。かかる接点は、任意の好適な手段によって、例えばマグネトロンスパッタリング装置を用いて好適なターゲットをスパッタリングすることによって、まずは層として堆積させることができる。かかる電気接点は、好ましくは、点接触、より好ましくはレーザー照射プロセスによって形成された点接触を含む。n型接点は、例えばレーザー照射プロセスを用いてシリコンウエハへの点接触を形成する前に、第2のパッシベーション層、例えば約700nmの窒化ケイ素の頂部に、まず例えば厚さ約10〜約200nmのアンチモンの薄層を堆積させ、次に例えば厚さ約500〜約10,000nmのスズのより厚い層を堆積させることによって形成することができる。スズ及びアンチモンの層は、例えば、スパッタリング、熱蒸着、又は電子ビーム蒸着によって堆積させることができる。他の態様は、スズ及びアンチモンの合金、例えばスズ中約5原子%のアンチモンを、約0.5〜約10ミクロンの全層厚さで堆積させるように、窒化ケイ素の第2のパッシベーション層の上にスズ及びアンチモンを同時に共スパッタリング又は共蒸着することである。もう一方の接点は、金属、又はシリコン中でp型ドーパントとして機能することのできる他の金属を含む金属、例えばアルミニウム又はインジウムを含んでいてよい。他の態様は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、又はインジウムの1種類以上のような0.1〜20原子%のp型ドーパントを含むスズ合金である。かかる接点は、任意の好適な手段によって、例えばマグネトロンスパッタリング装置を用いて好適なターゲットをスパッタリングすることによって、まずは層として堆積させることができる。かかる電気接点は、好ましくは、点接触、より好ましくはレーザー照射プロセスによって形成された点接触を含む。かかる点接触、及びこれを形成するレーザー照射プロセスについて、以下により詳細に説明する。
【0021】
第1の接点及び第2の接点は、例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、又はオキシ窒化ケイ素の1種類以上のような好適な絶縁材料の層によって互いに電気的に分離されている。かかる絶縁層について窒化ケイ素を用いる場合には、これは、窒化ケイ素の他の層に関して上に記載したものと同様の組成を有していてよく、同様のプロセスによって形成することができる。絶縁層は、ピンホールが無いか又は実質的に無いように形成しなければならず、太陽電池の運転中に層の絶縁破壊がないように十分に厚くなければならない。かかる層は、厚さ約1ミクロン以下、例えば厚さ約0.1〜約1ミクロンであってよい。上に記載したように、本発明の太陽電池における電気接点は、主として、且つ好ましくはウエハの裏表面上のみに存在し、したがって、ウエハの前面の受光表面を遮蔽又は妨害しない。この結果、光エネルギーを電気エネルギーに変換する点でより効率的な太陽電池が得られる。
【0022】
ここで、図面に関連して本発明の幾つかの態様を説明する。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、図中に示される種々の金属、半導体及び他の層の厚さは、必ずしも、互いに同じ縮尺ではない。
【0023】
図1は、本発明の一態様による太陽電池1の一部分の三次元部分切除図を示す。図1においては、電池の裏表面が上向きになっている。太陽電池1は、p型結晶シリコンのウエハ5を有する。ウエハ5の前表面又は受光表面は、テクスチャ線10によって示されるように、テクスチャ加工されている。ウエハ5は、前表面上に、窒化ケイ素の層15で形成される第1のパッシベーション層を有する。太陽電池1は、窒化ケイ素の第2のパッシベーション層25を有し、ウエハ5と接触して配置されている。電池1は、層部分33及び点接触35を含む第1の電気接点30を有する。(明確にするために、一つの点接触35しか示していない。)第1の電気接点30は、例えば、スズのような金属、或いはアンチモン、リン、又はこれらの組み合わせによって合金化されたスズを含む。電池1は、第1の電気接点30から第2の電気接点45を電気的に分離する例えば窒化ケイ素を含む絶縁層40を有する。第2の電気接点は、層部分48及び点接触50を含む。第2の電気接点は、例えばアルミニウムのような金属を含む。明確にするために、図1においては一つの点接触50しか示していない。図1においては、絶縁層40がどのようにして電気接点層30を層45から分離且つ電気的に絶縁しているかが示されており、また、42において絶縁層がどのようにして点接触50の周りに伸長し、それによって点接触50を第1の接点30から電気的に絶縁しているかが示されている。本発明のこの態様及び他の態様において、絶縁層42の厚さは、約100ミクロン以下、例えば厚さ約5ミクロン〜厚さ約100ミクロンであってよい。また、図1においては、第2の接点45内の凹み又は凹部60が示されている。かかる凹部は、接点層48をレーザー照射して点接触50を形成することによって形成される。かかる点接触を形成するためのレーザー照射プロセスについて、以下により詳細に説明する。また、図1においては、第1の電気接点層30が曝露されてかかる電気接点に対する電気接続が行われる電池1の端部に沿った領域65が示されている。かかる電気接続は、層30にハンダ付けされているか又は他の方法で電気的に接続されている母線(bus bar)の形態であってよい。
【0024】
図2は、図1に示されるものと同じ太陽電池の一部分の、太陽電池の裏表面に面する平面図である。図1に示されるものと同じ図2において示される部品は、同じ番号を付している。図2においては、点接触が太陽電池の裏面上の配列パターンの形態であってよいことが示されている。図2においては、凹部60(明確にするために数個のみ)が示され、また、第1の電気接点層30からウエハに伸長する点接触35が破線として示されている。外側の破線部分42(明確にするために数個のみ)は、点接触50の周りの絶縁層42の周縁を示す。
【0025】
図3は、図2に示される太陽電池の横断面図を示す。横断面は、図2において3として示されている。図1及び2における同じ部品に相当する図3における電池1の全ての部品は、同じ番号を付している。
【0026】
また、図3においては、第1の電気点接点30の点接触35がウエハ5に接触又は侵入する個所に位置する一連の「n+」として表されているn+エミッタ領域65も示されている。また、図3においては、一連のp+として、第2の電気接点45の点接触50がウエハ5に接触又は侵入している位置のベース又はオーム接触領域70も示されている。p+領域は、また、裏面電界(BSF)領域として機能することもできる。これらの点接触領域は、以下により詳細に議論するように、例えば点接触を形成するためのレーザー照射プロセスによって形成することができる。記号「p+」及び「n+」は、これらの領域内におけるシリコン中のそれぞれp型及びn型ドーパントの高い濃度を表すように用いる。
【0027】
動作理論に縛られることは意図しないが、ウエハがp型ウエハであり、第1の電気接点及び対応する点接触がn導電型であり、第2の電気接点及び対応する点接触がp導電型である、図1〜3に示される本発明の態様においては、第1の電気接点の一部分である点接触35が光生成電子を集め、第2の電気接点の点接触50が光生成正孔を集める。光生成電子及び正孔は、光が前表面10上に入射し、結晶シリコンウエハ5中に吸収されると生成する。その埋め込み電場を有するp−n接合が、n型点接触35とウエハとの界面に形成され、光生成電子を集めるのを補助する。点接触50は、p型ウエハ5に対するオーム接触を形成し、光生成正孔を効率的に集める。他の態様においては、図1〜3に示されるような第1の電気接点はp型の導電型を有することができ、第2の電気接点はn型の導電型を有することができる。同様に、ウエハがn型の導電型を有する場合には、第1の電気接点及び対応する点接触はn型又はp型の導電型であってよく、第2の電気接点及びその対応する点接触は第1の電気接点の導電型と反対の導電型を有する。
【0028】
上に記載したように、本発明の太陽電池における電気接点は、金属又は合金の層を含んでいてよく、金属層から半導体ウエハへ伸長する点接触を含んでいてよい。金属層は、約0.5〜約10.0ミクロン、好ましくは約1.0〜約3.0ミクロンの厚さを有していてよい。好ましくは、金属層の厚さは、太陽電池における全ての有意な直列抵抗を排除するように選択する。
【0029】
それぞれの層に関する点接触は、電池の裏表面に沿って行及び列のような任意の好適なパターンであってよい。しかしながら、好ましくは、これらは、例えば図2に示されているように等間隔の行及び列のパターンである。好ましくは、p型ウエハに対するn+接触領域(又はn型ウエハに対するp+接触)を有するエミッタ点接触は、エミッタ点接触の間の距離が少数キャリア拡散距離よりも小さくなるように離隔させる。而して、500ミクロンの少数キャリア拡散距離については、エミッタ点接触の間の間隔は、一つの点接触の中心から他のものの中心まで測定して約250ミクロン以下離隔させる。例えば、それぞれの電気接点についての点接触の数は、電池表面1cm2あたり約102〜約104であってよい。好ましくは、ベース材料に対するオーム領域を有する点接触(例えば、p型ウエハに対するp+接触)の寸法及び間隔は、太陽電池の直列抵抗を最小にし、電池性能を最大にするように調節する。
【0030】
図面においては、円形の水平横断面形状を有する円筒形のシャフト又はカラムとして点接触を示しているが、かかる点接触は任意の好適な形状であってよいことを理解すべきである。例えば、円形の水平横断面形状を有する円筒形のシャフト又はカラムの代わりに、かかる点接触は、半球状であってもよく、楕円若しくはより細長い横断面形状を有するシャフト又はカラムであってもよく、或いは任意の他の幾何学形状若しくはパターンのものであってよい。これらは、線の形態であってよい。点接触の幅、例えば円筒形若しくはカラム形状の点接触の直径、或いは楕円若しくはより細長い横断面形状を有する点接触の幅は、約100ミクロン以下、例えば約5ミクロン〜約100ミクロンであってよい。図に示す点接触は、金属層から、それがウエハの表面中に接触する点まで伸長するのに十分な長さを有する。これらは、表面からウエハ中に約1〜約10ミクロン伸長していてよい。
【0031】
点接触は、かかる点接触に関して本明細書中に記載するような構造を形成するのに好適な任意の手段によって形成することができる。例えば、これらは、まず所望の直径の開口又は孔を一つ又は複数の層中に形成してそれを通して点接触を貫通させ、次にかかる孔又は開口に、接点に用いる金属のような材料を充填することによって形成することができる。かかる孔又は開口は、点接触の直径又は幅に対応して約5〜約100ミクロンの直径又は幅を有していてよい。孔又は開口は、機械的穿孔によるか、或いはフォトリソグラフィーマスキング及びエッチングプロセスを用いることによるか、或いはそれを通して点接触を貫通させる一つ又は複数の層を切除又は除去するのに十分なレーザービーム密度を有するエキシマレーザー又はNd−YAGレーザーのようなレーザーを用いて材料を切除することによるような任意の好適な方法によって形成することができる。レーザーを用いて孔又は開口を形成する場合には、ウエハの表面がレーザーによって曝露され損傷を受けている場合には、例えば水素プラズマ又は原子状水素によって処理して、ウエハのレーザー損傷領域を除去するか又は回復させ、任意の残りの欠陥を不動態化(パッシベート)することができる。パッシベーション層(例えば窒化ケイ素)中の孔又は開口を接点材料で充填する方法によって点接触を形成する場合には、急速熱アニールプロセスを用いて、点接触がウエハに接触する個所に隣接する高度にドープされた領域又は層を形成することが望ましい。このエミッタ又はオーム接触領域又は層は、点接触を形成する成分によってドープされているウエハの領域又は層である。例えば、点接触がアルミニウムを含む場合には、n型ウエハ中のエミッタ領域はアルミニウムによってドープする。p型ドープの量及びドープされた層又は領域の深さは、主として、加熱処理の時間及び温度によって制御する。急速熱アニールによるかかるエミッタ及びベース領域の形成は、例えば、接点層を、高温及び所望の接触領域を形成するのに十分な時間加熱することによって行うことができる。例えば、約800℃〜約1000℃の温度で約5秒〜約2分である。アルミニウムの場合には、例えば、約900℃で1分である。本発明の太陽電池のための点接触並びに対応するエミッタ及びオーム領域を形成するための他のより好ましい方法は、例えばレーザーを用いる照射プロセスを用いることである。レーザー照射プロセスにおいては、金属の層のような接点に用いた材料の表面を、レーザービームを用いて加熱する。加熱された金属のような材料は、下層を通してウエハ中に溶融する。また、加熱された金属又は他の材料は、ウエハと接触すると、上に記載したようなエミッタ又はオーム接触領域を形成する。レーザー照射プロセスは、例えば約10〜100ナノ秒(ns)のパルス幅を有するQスイッチNd−YAGレーザーを用いて行うことができる。レーザーを用いることに加えて、点接触を形成するためのかかる照射プロセスは、例えば電子ビーム又はイオンビーム照射を用いて接点材料を加熱して、照射接点を形成することによって行うことができる。
【0032】
第1及び第2の接点の間に配置され、接点を電気的に分離する絶縁層は、約70〜約2000nmの厚さを有していてよい。上記に記載したように、かかる絶縁層は、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、又は二酸化ケイ素の1種類以上を含んでいてよい。これは、幾つかの他の好適な誘電体を含んでいてよい。この絶縁層は、第1及び第2の接点層の間に有意な漏洩がないように、ピンホールを有さないものでなければならない。
【0033】
ここで、本発明に従う図1〜3に示すような構造を有する太陽電池の製造方法を説明するが、これはかかる太陽電池を製造するための唯一の方法ではないことが理解される。このプロセスを、図4を参照して説明する。図4において、図1〜3におけるものと同じ番号が付された部材は、図1〜3におけるものと同じ部材である。
【0034】
プロセスは、太陽電池の受光側になるウエハの表面上に例えば窒化ケイ素の層15を有するテクスチャ加工されたp型シリコンウエハ5から出発する。上に記載したように、この層は、反射防止被覆及び表面パッシベーション層として機能する。このウエハを図4Aに示す。次の工程においては、図4Bに示されているように、例えば窒化ケイ素25の第2のパッシベーション層を、PECVDによって、ウエハの第2の側の上に、ウエハ表面上に直接堆積させる。図4Cにおいて示される次の工程においては、例えばアンチモンによって合金化されたスズを含む第1の金属接点層30を、マグネトロンスパッタリングによって付加する。図4Dにおいて示される次の工程においては、例えばNd−YAGレーザーからのレーザービームを金属層30の外表面上に向けることによって、金属層30内に複数のレーザー照射接点35を形成する。レーザーが金属層上に配される領域において、レーザーによって金属層がスポットで加熱されて、金属層が溶融する。このプロセスは、加熱された金属が、層25を貫通してシリコンウエハ中に溶融してレーザー照射接点35を形成するように行う。図4Dにおいて示されるように、レーザービームが配されてレーザー照射接点を形成する金属層30の表面上に、凹部又は凹み38が形成される。図4Eにおいて示されるプロセスの次の工程においては、複数の孔又は開口39を、少なくとも金属層30を貫通して、且つ好ましくは図4Eにおいて示されるようにパッシベーション層25を貫通して、ウエハまで形成する。本発明の電池の加工においては、かかる孔又は開口は任意の好適な形状にすることができる。好ましくはこれらは円形であるが、これらは例えば楕円、又は細長い、例えば直線上の形状であってもよい。かかる孔又は開口の直径又は幅は、約5〜約100ミクロンであってよい。図4Fにおいて示されるプロセスの次の工程においては、例えば窒化ケイ素の絶縁層40を、PECVDを用いて第1の金属接点層30の上に堆積させる。この絶縁層によって孔又は開口39を充填する。図4Gにおいて示される次の工程においては、例えばアルミニウムの第2の金属接点層48を、スパッタリングによって絶縁層40の上に堆積させる。図4Hにおいて示される次の工程においては、金属層48の外表面上に例えばNd−YAGレーザーからのレーザービームを向けることによって、金属層48中に複数のレーザー照射接点50を形成する。レーザーが金属層上に配される領域において、レーザーによって金属層がスポットで加熱され、金属層が溶融する。このプロセスは、加熱された金属が開口39中に堆積された絶縁層40を貫通してシリコンウエハ中に溶融してレーザー照射接点50が形成されるように行う。金属層48を加熱するプロセスは、加熱された金属が絶縁層40を貫通して溶融しながら、絶縁層40の領域42が点接触50の周りに残留し、それによって点接触50が電気的に絶縁されるように行う。図4Hは、それぞれの電気接点がシリコンウエハとの点接触を有するウエハの裏面の両方の電気接点を有する完成電池を示す。図4に示さない他のプロセス工程においては、第1のパッシベーション層及び絶縁層を貫通して接点を照射するのではなく、第2のパッシベーション層及び絶縁層中に孔又は開口を形成することができ、金属層を堆積させると、金属は孔又は開口に充填されて点接触が形成される。例えば、図4Fを参照すると、絶縁層40が孔39に充填されている領域において、孔又は開口を層40内に形成する。これは図4Iに示されており、ここでは、図4Iにおいて示されるように、孔又は開口80を、絶縁層40を貫通して、好ましくはウエハ5まで、更にはその中へと形成する。次に、金属層48を堆積させると、孔80は金属で充填されてウエハ5との点接触50が形成される。続いて、急速熱アニールプロセスを用いて、ドーパントを金属層48からウエハ中に拡散させて、高度にドープされたエミッタ又はベース接触領域を形成する。
【0035】
図5は、本発明の他の好ましい態様を示し、ここでは、太陽電池2は、点接触50の周りでシリコンウエハ5と絶縁層42との間に配置された例えばホウ素がドープされたa−Si:Hのバッファー層81を有する。このバッファー層は、約40nm以下、例えば約3nm〜約40nmの厚さを有していてよい。図1〜4において示される部材と同じ番号が付された図5における部材は、全て同じ番号を付している。
【0036】
図5においては、点接触50の近傍で絶縁領域42とウエハ5との間に配置されている、例えばホウ素がドープされたa−Si:Hのバッファー層81(或いは、非ドープa−Si:Hの層及びホウ素がドープされたa−Si:Hの層)が示されている。以下に説明する理由のために、図5に示す太陽電池2は、接点層30の頂部の上に層82を有する。図5においては、また、p型ウエハ5中に一連の「−」として示されている反転層85も示されている。理論に縛られることは意図しないが、窒化ケイ素層25中の一連の「+」によって示される正電荷によってかかる絶縁層を形成することができ、これが少数キャリアを集めるのに役立つと考えられる。ホウ素がドープされたa−Si:Hのような材料のバッファー層81は、反転層が点接触50の近傍に形成されるのを防ぐように機能する。かかる層81が存在しないと、少数キャリアが絶縁層を通して点接触50に漏洩して、太陽電池の短絡を引き起こす可能性がある。
【0037】
図5において示される構造を有する太陽電池は、図4において示されるプロセスに更なる工程を付加することによって形成することができる。具体的には、図4Eにおいて示されるプロセス工程の後に、例えばホウ素がドープされたa−Si:Hの層(或いは非ドープa−Si:Hの層及びホウ素がドープされたa−Si:Hの層)を堆積させ、かかる層を開口39内に形成して、層81と、層30上の層82を形成する。その後、プロセスの残りの工程を同様に行う。かかるプロセス工程を用いて太陽電池を形成することによって、図5に示される構造が形成される。ホウ素がドープされたa−Si:Hの層は、a−Si:Hを形成するための上記の1種類以上の方法により、更にドーパントガスとして例えばB26を加えることによって堆積させることができる。ホウ素がドープされた層の厚さは、約30nm以下、例えば約5〜約30nmであってよく、ドーパントの量は、好適には、反転層と点接触50との間に起こる可能性のある全ての電流漏洩を最小にするように選択する。而して、ホウ素がドープされた層の厚さ及び層中のホウ素の濃度は、好ましくは、層81に隣接するシリコン層中において起こる有意量のバンド曲がりを阻止するように調節する。ホウ素がドープされた層とa−Si:Hの層との組み合わせを用いる場合には、a−Si:Hは、約30nm以下、例えば約3〜約30nmの厚さを有していてよく、ホウ素がドープされた層の厚さ及びその中のホウ素の濃度は、好適には上記の電流漏洩を最小にするように選択する。a−Si:Hに加えて、上に記載したもののような、微結晶シリコン、又は炭素によって合金化された水素化アモルファスシリコン、或いはホウ素又はリンがドープされた水素化アモルファスシリコン、並びにこれらの1以上の混合物をバッファー層81として用いて、点接触50の近傍に反転層が形成されるのを抑止することができる。
【0038】
ここで他の層又はウエハの上に配置された層を参照すると、これは、かかる層が、かかる他の層又はウエハの上に直接且つ接触して配置されることを必ずしも意味してはいない。他の材料の層は、かかる層の間か又はかかる層とウエハとの間に存在してもよい。
【0039】
他に示さない限り、窒化ケイ素は、好ましくは水素化窒化ケイ素を意味する。例えば、これは、約5〜約20原子%の水素を有していてよい。かかる窒化ケイ素は、PECVDによって形成することができる。PECVDによって形成されるかかる窒化ケイ素は、通常、Si34に近接する化学量論を有する。リン又はホウ素のようなドーパント或いは窒素又は炭素のような他の元素を含むか又は含まないa−Si:Hの層を堆積させる方法は、当該技術において周知である。しかしながら、水素中のシランの混合物を用いてPECVDによってかかる層を堆積させるための一般的な条件は、約100℃〜約250℃の基材温度、及び約0.05〜約5Torrの圧力である。また、窒化ケイ素の層を堆積させる方法も周知である。しかしながら、シラン及びアンモニアの混合物を用いてPECVDによってかかる層を堆積させるための一般的な条件は、約200℃〜約450℃の基材温度、及び約0.05〜約2Torrの圧力である。
【0040】
本発明の太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する高い効率を有する。好ましくは約100〜約250cm2の面積の単結晶シリコンウエハを用いて製造される本発明の太陽電池は、少なくとも約20%の効率を有することができ、約23%以下又は少なくとも約23%の効率を有することができる。本明細書において用いる本発明方法によって製造される太陽電池の効率は、25℃においてAM1.5Gの標準試験条件を用い、1000W/m2(1平方メートルあたり1000ワット)の照明を用いて測定し、効率は、パーセントで表した光エネルギー入力に対する電池の電気エネルギー出力である。
【0041】
本発明の太陽電池を用いて、例えば複数のかかる電池が所望の配列で電気的に接続されて、ガラス又は他の好適な材料の区域のような好適な支持基材の上又はその間に取り付けられているモジュールを形成することができる。太陽電池からモジュールを形成する方法は、当業者に周知である。
【0042】
本明細書においては、本発明の幾つかの態様のみが説明され示されていることを理解すべきである。他の態様及び種々の変更は、上の記載から当業者には明らかであろう。これらの及び他の変法は、本発明と等価であり、本発明の精神及び範囲内であると考えられる。
【0043】
2005年12月16日に出願の米国仮特許出願60/751,168の全文を参照として本明細書中に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一態様による太陽電池の一部分の三次元部分切除図である。
【図2】図2は、図1の太陽電池の一部分の平面図である。
【図3】図3は、図1の太陽電池の一部分の横断面図である。
【図4】図4は、本発明の一態様による方法のダイアグラムである。
【図5】図5は、本発明の一態様による太陽電池の一部分の横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の半導体材料を含み、第1の受光表面及び該第1の表面の反対側の第2の表面を有するウエハ;
ウエハの第1の表面の上に配置されている第1のパッシベーション層;
ウエハの第2の表面の上に配置されている第2のパッシベーション層;
ウエハの第2の表面の上に配置され、ウエハのものとは反対の導電型を有する点接触を含む第1の電気接点;
ウエハの第2の表面の上に配置され、第1の電気接点から電気的に分離されている点接触を含む第2の電気接点;
を含む太陽電池。
【請求項2】
半導体ウエハが、ドープされた結晶又は多結晶シリコンを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
第1のパッシベーション層が、窒化ケイ素、水素化アモルファスシリコン、水素化微結晶シリコン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
第1のパッシベーション層が窒化ケイ素を含む、請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
電気接点の点接触に隣接するエミッタ領域を含み、ここで点接触がウエハの表面に侵入している、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
電気接点の点接触に隣接するオーム領域を含み、ここで点接触がウエハの表面に侵入している、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
点接触の一つに近接する反転層を含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
点接触がレーザー照射によって形成される、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
接点の一つが、アンチモン、リン、又はこれらの組み合わせの1以上と合金化されたスズを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
ウエハが拡散距離を有し、ウエハの厚さに対する拡散距離の比が1.1より大きい、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
第1の導電型を有し、第1の受光表面、及び該第1の表面の反対側の第2の表面を有する半導体ウエハから太陽電池を製造する方法であって、
ウエハの第1の表面の上に配置された第1のパッシベーション層を形成し;
ウエハの第2の表面の上に配置された第2のパッシベーション層を形成し;
第2のパッシベーション層の上に電気接点材料の第1の層を形成し;
電気接点材料の第1の層から第2のパッシベーション層を貫通してウエハ中へと、複数の点接触を形成し;
電気接点材料の第1の層中に第2のパッシベーション層を貫通して、複数の開口を形成し;
電気接点材料の第1の層の上で且つ複数の開口中に絶縁材料の層を形成して、充填された開口を形成し;
絶縁材料の層の上に電気接点材料の第2の層を形成し;
電気接点材料の第2の層から充填された開口を貫通してウエハ中へと、複数の点接触を形成する;
ことを含む上記方法。
【請求項12】
点接触をレーザー照射によって形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1及び第2のパッシベーション層が窒化ケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
電気接点の一つがスズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
半導体ウエハが、ドープされた結晶シリコン又は多結晶シリコンを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520369(P2009−520369A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545917(P2008−545917)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/061725
【国際公開番号】WO2007/126441
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】