説明

バックフォーカス調整機構を具えた撮像装置

【課題】撮像装置において日中撮影モードから夜間撮影モードに切り換えたときに実施すべきバックフォーカスの調整に要する時間を従来よりも短縮する。
【解決手段】本発明に係る撮像装置は、撮像素子が内蔵された装置本体とレンズユニットとを具え、装置本体には、バックフォーカス調整機構と、撮像素子の光軸に直交する方向へスライド可能なスライド部材が配備され、該スライド部材には、赤外線カットフィルター671とダミーガラス板672とが並置され、撮像素子の光軸上に赤外線カットフィルター671を配置したデイ撮影モードと、撮像素子の光軸上にダミーガラス板672を配置したナイト撮影モードとの間で、モードの切り換えが可能であり、ダミーガラス板672は、赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2よりも、大きな厚さt3に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を具えた撮像装置に関し、特に、レンズから撮像素子までの距離(バックフォーカス)を調整するバックフォーカス調整機構を具えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換タイプ(CSマウント)の監視用カメラにおいては、CMOSイメージセンサ等の撮像素子が内蔵されたカメラ本体のレンズマウント部に、レンズを具えたレンズユニットが脱着可能に取り付けられており、レンズユニットの交換が可能となっている。
この様なカメラにおいては、レンズユニットの交換時などにバックフォーカスを調整するために、バックフォーカス調整機構が装備されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、カメラを用いた日中の撮影では、レンズを経て取り込まれる光に可視光と近赤外線とが含まれており、近赤外線成分によって赤みがかった画像となるため、レンズを経て取り込まれる光から近赤外線成分を除去する必要がある。これに対し、夜間における撮影では、レンズを経て取り込まれる光には可視光が殆ど含まれなくなるので、近赤外線成分を取り込んで感度を高める必要がある。
【0004】
そこで、撮像素子の前方位置に、撮像素子の光軸に直交する方向へスライド可能なスライド部材を配備し、該スライド部材には、スライド方向に沿って赤外線カットフィルターとダミーガラス板とを並置して、日中の撮影時には、撮像素子の光軸上に赤外線カットフィルターを配置したデイ撮影位置にスライド部材を移動させ、夜間の撮影時には、撮像素子の光軸上にダミーガラス板を配置したナイト撮影位置にスライド部材を移動させることが行なわれている(特許文献2参照)。
【0005】
この様な昼夜切り換え式のカメラにおいては、日中の撮影時には、レンズを経て取り込まれた光が赤外線カットフィルターを通過して撮像素子へ入射するのに対し、夜間の撮影時には、レンズを経て取り込まれた光がダミーガラス板を通過して撮像素子へ入射することになるが、日中と夜間では光の波長が異なるため、日中の撮影時と夜間の撮影時でレンズの合焦点に差が生じ、ピントずれが発生する。そこで、ダミーガラス板については、赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さに設計することが行なわれている(特許文献3)。
【0006】
例えば、厚さ2.78mmの赤外線カットフィルターを採用する一方で厚さ2.88mmのダミーガラス板を採用した場合、赤外線カットフィルターによる光路長の伸びλ′は、屈折率n1を1.5443として、
λ′=(1−1/n1)×2.78=0.9798mm
であるのに対し、ダミーガラス板による光路長の伸びλd′は、屈折率n2を1.5163として、
λd′=(1−1/n2)×2.88=0.980mm
となる。従って、光路中に赤外線カットフィルターを介在させた場合の光路長と、光路中にダミーガラス板を介在させた場合の光路長とは同等となり、撮影モードの切り換えによる像面位置のずれは無視し得るものとなる。
【0007】
図17(a)に示す様に、日中の撮影時にはレンズ(20)を通過した光が更に赤外線カットフィルター(671)を通過し、撮像面B1上に結像するのに対し、夜間の撮影時には、図17(b)に示す様に、レンズ(20)を通過した光が更にダミーガラス板(672)を通過し、撮像面B2上に結像するが、前述の如くダミーガラス板(672)の厚さが調整されることによって、夜間撮影モードにおける撮像面B2は、日中撮影モードにおける撮像面B1と略同一の位置に設定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−184262号公報
【特許文献2】特開2005−318237号公報
【特許文献3】特開2000−162668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の如く、夜間撮影モードにおける撮像面B2は、日中撮影モードにおける撮像面B1と略同一の位置に設定されるが、実際のカメラには組立誤差等が存在するため、日中撮影モードから夜間撮影モードに切り換えたときに、日中撮影モードにおけるバックフォーカスとのずれ(光路長のずれ)を補正するべく、バックフォーカス調整機構によるバックフォーカスの調整が行なわれている。
【0010】
従来のカメラにおけるモード切り換え時のバックフォーカスの調整においては、例えば図16に示す如く、先ずステップS11にて、バックフォーカスを変化させることによって像面位置を、原点位置(日中撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている像面位置)からFAR側端点(バックフォーカスの可変範囲においてレンズから遠い方の端点)まで移動させ、その過程で一定周期でAF評価値(CMOSイメージセンサから出力される画像信号の高周波成分)を駆動モータの回転角度と関連付けてサンプリングする。
次にステップS12にて、バックフォーカスを変化させることによって像面位置をFAR側端点から原点位置を経てNEAR側端点(バックフォーカスの可変範囲においてレンズから近い方の端点)まで移動させ、その過程で一定周期でAF評価値を駆動モータの回転角度と関連付けてサンプリングする。
そして、ステップS13では、バックフォーカスを変化させることによって像面位置をNEAR側端点から、サンプリングされたAF評価値の中で最大のAF評価値が得られた像面位置に移動させて、バックフォーカス調整手続きを終了する。
【0011】
しかしながら、FAR側端点からNEAR側端点までの距離が例えば1mm、像面位置の移動速度が例えば0.1mm/秒の場合、図16のステップ11の完了までに5秒間、ステップS12の完了までに15秒間、ステップS13の完了までに約20秒間が必要となって、バックフォーカスの調整に約20秒間という長い時間が必要となる問題があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、日中撮影モードから夜間撮影モードへの切り換え時に実施すべきバックフォーカスの調整に要する時間を従来よりも短縮することが出来る撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子が内蔵された装置本体と、該装置本体の前面に開口する開口部に脱着可能に取り付けられるレンズユニットとを具え、装置本体には、バックフォーカス調整機構と、前記開口部と撮像素子との間に介在して撮像素子の光軸に直交する方向へスライド可能なスライド部材が配備され、該スライド部材には、スライド方向に沿って赤外線カットフィルターとダミーガラス板とが並置され、撮像素子の光軸上に赤外線カットフィルターを配置したデイ撮影モードと、撮像素子の光軸上にダミーガラス板を配置したナイト撮影モードとの間で、モードの切り換えが可能となっている。
ここで、前記ダミーガラス板は、所定の厚さt1を有する赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2よりも、大きな厚さt3に形成されている。
【0014】
具体的態様において、前記バックフォーカス調整機構は、モータを動力源としてバックフォーカスを自動的に変化させるものである。
【0015】
上記本発明の撮像装置においてナイト撮影モードを設定した場合、レンズユニットのレンズから取り込まれた光は、ダミーガラス板を通過した後、撮像素子の撮像面へ入射する。
ここで、ダミーガラス板は、所定の厚さt1を有する赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2よりも、大きな厚さt3に形成されているので、所定の厚さt1を有する赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2に形成されている場合の像面位置よりも、レンズから遠い位置に像面が形成されることになる。
【0016】
従って、上記本発明の撮像装置において、デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカス調整機構によるバックフォーカスの調整は、光路中に前記厚さt3を有するダミーガラス板を介在させた場合の理論的な(計算上の)像面位置を含む検索範囲の一方の端点から他方の端点へ像面位置を移動させる過程で、最大のフォーカス評価値が得られる像面位置を検索する手続きによって実施することが出来る。
【0017】
より具体的には、前記バックフォーカスの調整は、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置(原点位置)を前記一方の端点として、レンズから離れる方向へ他方の端点まで像面位置を移動させることで実施される。
この移動過程で、最大のフォーカス評価値が得られる最適の像面位置が得られることになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る撮像装置によれば、デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカス調整機構によるバックフォーカスの調整は、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置から一方向へ像面位置を移動させることで実施されるので、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置を中心として遠近双方向へ像面位置を往復移動させる従来の撮像装置に比べて、より短い時間でバックフォーカスを調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、カメラ本体からレンズユニットを取り外した状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、カメラ本体のアセンブリを前面側から見た正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図4は、カメラ本体のアセンブリを前面側から見た分解斜視図である。
【図5】図5は、カメラ本体のアセンブリを背面側から見た分解斜視図である。
【図6】図6は、カメラ本体のアセンブリに配備されるバックフォーカス調整機構の一部破断斜視図である。
【図7】図7は、バックフォーカス調整機構においてリング部材が前進した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、バックフォーカス調整機構においてリング部材が後退した状態を示す断面図である。
【図9】図9は、カメラ本体のアセンブリをデイ撮影モードに設定した状態を示す斜視図である。
【図10】図10は、デイ撮影モードにてカメラ本体のアセンブリからレンズマウント部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、カメラ本体のアセンブリをナイト撮影モードに設定した状態を示す斜視図である。
【図12】図12は、ナイト撮影モードにてカメラ本体のアセンブリからレンズマウント部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図13】図13は、カメラ本体のアセンブリをアオリ調整モードに設定した状態を示す斜視図である。
【図14】図14は、アオリ調整モードにてカメラ本体のアセンブリからレンズマウント部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明におけるバックフォーカス調整手続きを示すフローチャートである。
【図16】図16は、従来におけるバックフォーカス調整手続きを示すフローチャートである。
【図17】図17は、デイ撮影モード(a)における撮像面の位置とナイト撮影モード(b)における撮像面の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をレンズ交換タイプ(CSマウント)の監視用カメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1に示す如く本発明に係る監視用カメラ(10)は、CMOSイメージセンサ(3)が内蔵されたカメラ本体(1)と、レンズ交換のためのレンズユニット(2)とから構成される。
【0021】
カメラ本体(1)には、その前面側にレンズユニット(2)を取り付けるためのマウント部(4)が配備され、該マウント部(4)には、図3に示す如く、これを前面(4a)から背面(4b)まで貫通する貫通孔(43)が開設されており、該貫通孔(43)の内面壁には雌ネジ(44)が形成されている。
【0022】
一方、レンズユニット(2)には、図1に示す様に、マウント部(4)の雌ネジ(44)にマウント部(4)の前面(4a)側から螺合する雄ネジ部(21)が形成されている。該雄ネジ部(21)は、雌ネジ(44)の前面(4a)側の一部の領域にのみ螺合する長さを有しており、該雌ネジ(44)には、マウント部(4)へのレンズユニット(2)の装着時においてレンズユニット(2)の雄ネジ部(21)が螺合することのない領域が存在している。
【0023】
斯くして、マウント部(4)の雌ネジ(44)は、レンズユニット(2)の雄ネジ部(21)が螺合する領域を形成する雌ネジ部(41)と、レンズユニット(2)の雄ネジ部(21)が螺合することのない領域を形成すると共に前記雌ネジ部(41)と連続する第2の雌ネジ部(42)とから構成されている。
【0024】
マウント部(4)の背面側には、図3〜図5に示す如く、レンズの光軸(91)周りに回転可能なリング部材(5)が配備されている。該リング部材(5)は、光軸(91)周りに回転する平歯車によって構成されており、該リング部材(5)の前面側には、第2の雌ネジ部(42)に螺合する第2の雄ネジ部(51)が形成されている。
【0025】
従って、第2の雄ネジ部(51)が第2の雌ネジ部(42)にねじ込まれる回転方向にリング部材(5)を回転させることにより、リング部材(5)は、図7に示す如く前進することになる。一方、前記回転方向とは逆の回転方向にリング部材(5)を回転させることにより、リング部材(5)は、図8に示す如く後退することになる。
【0026】
リング部材(5)の背面側には、図3〜図5に示す如く、光軸(91)に沿って移動可能なシャーシ(61)が配備され、該シャーシ(61)は、カメラ本体(1)に固定されるべきプレート(63)に支持された複数の圧縮バネ(62)によってリング部材(5)へ向けて付勢されている。
【0027】
CMOSイメージセンサ(3)は、光軸(91)上の位置にて基板(31)上に搭載されており、該基板(31)には、2つの板金部材(67)(68)が固定されて、後述するアオリ調整時に一体となって移動するセンサーユニットを構成している。一方の板金部材(68)の外周部には、背面側から3本のビス(69)が貫通して、各ビス(69)の先端部がシャーシ(61)に螺合している。又、該板金部材(68)とシャーシ(61)との間には3つのバネ(60)が介在している。
尚、2つの板金部材(67)(68)は1つの板金部材として構成することも可能である。
【0028】
従って、3本のビス(69)のシャーシ(61)に対するねじ込み量を加減することによって、CMOSイメージセンサ(3)の姿勢を調整することが出来る。
斯くして、シャーシ(61)、センサーユニット、3本のビス(69)、及び3つのバネ(60)によって、CMOSイメージセンサ(3)のアオリ角度を調整するためのアオリ調整機構(81)が構成される。
【0029】
リング部材(5)の背面には、図3及び図5に示す如く光軸(91)を中心とする円筒状の係合部(52)が突設される一方、シャーシ(61)の前面には、図3及び図4に示す如くリング部材(5)の係合部(52)が係合する係合受け部(64)が凹設されており、図3に示す様に該係合受け部(64)の内周面は、係合部(52)の外周面に摺接している。
従って、リング部材(5)の係合部(52)とシャーシ(61)の係合受け部(64)は、互いに係合した状態で、光軸(91)周りに相対回転することが可能である。
【0030】
上述の如くシャーシ(61)は、圧縮バネ(62)によってリング部材(5)へ向けて付勢されているので、リング部材(5)の回転によって該リング部材(5)が前進又は後退する何れの場合であっても、リング部材(5)の係合部(52)とシャーシ(61)の係合受け部(64)との係合が、圧縮バネ(62)の付勢力により維持されることになる。従って、リング部材(5)に対するシャーシ(61)の相対位置は変わることがなく、その結果、シャーシ(61)に搭載されているCMOSイメージセンサ(3)は、リング部材(5)から一定の距離だけ背面側に後退した位置に保持されることとなる。
【0031】
斯くして、上述したシャーシ(61)と複数の圧縮バネ(62)とによって、リング部材(5)から一定の距離だけ背面側に後退した位置にCMOSイメージセンサ(3)を保持する保持機構(6)が構成されている。
そして、図3及び図6に示す様に、マウント部(4)の背面側に形成されている第2の雌ネジ部(42)、リング部材(5)及び保持機構(6)によって、バックフォーカス調整機構が構成されている。
【0032】
上記バックフォーカス調整機構においては、上述の如く、リング部材(5)を回転させることにより、リング部材(5)が、図7に示す如く前進し、又は図8に示す如く後退する。一方、CMOSイメージセンサ(3)は、保持機構(6)によってリング部材(5)から一定の距離だけ背面側に後退した位置に保持されているので、リング部材(5)の前進又は後退に追従してCMOSイメージセンサ(3)は前進又は後進することになる。
従って、リング部材(5)を回転させることにより、レンズユニット(2)を構成するレンズとCMOSイメージセンサ(3)との間の距離、即ちバックフォーカスを調整することが出来る。
【0033】
CMOSイメージセンサ(3)が搭載されているシャーシ(61)には更に、図6に示す如く、モータ(7)と、リング部材(5)を構成している平歯車にモータ(7)の回転力を伝達する歯車機構(71)とが搭載されている。
【0034】
この様にリング部材(5)をモータ(7)によって駆動する構成においては、モータ(7)の回転角度に応じてリング部材(5)の光軸(91)に沿う位置が変化し、その結果、CMOSイメージセンサ(3)の光軸(91)に沿う位置も変化することになる。即ち、CMOSイメージセンサ(3)の光軸(91)に沿う位置は、モータ(7)の回転角度に応じて変化することになる。従って、モータ(7)の回転角度を調整することにより、バックフォーカスを調整することが出来る。
【0035】
又、シャーシ(61)の前面には更に、図4に示す如く、係合受け部(64)と重なってガイド溝(65)が形成されており、該ガイド溝(65)は、係合受け部(64)にリング部材(5)の係合部(52)が係合したとき、該係合部(52)とガイド溝(65)の底面との間に隙間が形成されるような深さ寸法を有している。
【0036】
そして、図3に示す様に、ガイド溝(65)には、その底面と係合部(52)との間に形成される上記隙間に、スライド部材(66)が配備されており、該スライド部材(66)は、ガイド溝(65)に沿って光軸(91)に垂直な方向へスライドすることが可能である。
【0037】
スライド部材(66)には、図4に示す様に、そのスライド方向に沿って、赤外線カットフィルタ(671)とダミーガラス板(672)とが並設されると共に、ダミーガラス板(672)の側方には、光通過窓(673)が開設されている。
シャーシ(61)には、モータ(72)を動力源としてスライド部材(66)をガイド溝(65)に沿って往復駆動するスライド駆動機構(8)が配備されている。
【0038】
スライド駆動機構(8)の駆動によって、スライド部材(66)は、CMOSイメージセンサ(3)の光軸(91)上に赤外線カットフィルター(671)を配置したデイ撮影位置と、CMOSイメージセンサ(3)の光軸(91)上にダミーガラス板(672)を配置したナイト撮影位置と、CMOSイメージセンサ(3)の光軸(91)上に光通過窓(673)を配置したアオリ調整位置の3つの位置の間を往復移動し、3つの位置に選択的に設定される。
【0039】
上記監視用カメラ(10)を用いた日中の撮影時には、レンズユニット(2)から取り込まれる光には可視光と近赤外線が含まれているため、その光をそのままCMOSイメージセンサ(3)に与えると、赤みがかった画像となる。そこで、日中の撮影時においては、図9及び図10に示す如くスライド部材(66)はデイ撮影位置に設定され、光軸(91)上に赤外線カットフィルタ(671)が配置される。これにより、デイ撮影モードが設定されて、レンズユニット(2)から取り込まれた光は、赤外線カットフィルタ(671)によって近赤外線成分が除去されてCMOSイメージセンサ(3)に入射することになる。その結果、良好な画像の取得が可能となる。
【0040】
一方、夜間の撮影時には、レンズユニット(2)から取り込まれる光には可視光が殆ど含まれなくなるので、感度を高める必要がある。そこで、夜間の撮影においては、図11及び図12に示す如くスライド部材(66)はナイト撮影位置に設定され、光軸(91)上にダミーガラス板(672)が配置される。これにより、ナイト撮影モードが設定されて、レンズユニット(2)から取り込まれた光は、ダミーガラス板(672)を通過して、近赤外線成分が除去されることなく、CMOSイメージセンサ(3)に入射することになる。その結果、暗い環境での撮影が可能となる。
【0041】
上記監視用カメラ(10)において、ダミーガラス板(672)の厚さt3は、図17(b)に破線で示す様に、所定の厚さt1を有する赤外線カットフィルター(671)による光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2よりも、大きな厚さt3に形成されている。
従って、厚さt3を有するダミーガラス板(672)が光路中に介在することにより、図17(b)の如く、撮像面は、厚さt2を有する従来のダミーガラス板が光路中に介在する場合の撮像面の位置B2よりも、所定距離だけレンズ(20)から離間した位置B3に後退することになる。
【0042】
例えば、赤外線カットフィルター(671)が人工水晶板とフィルター板の2層から構成されており、人工水晶板の厚さが0.72mm、屈折率が1.548、フィルター板の厚さが0.5mm、屈折率が1.523の場合、ダミーガラス板(672)の厚さt3は、該赤外線カットフィルター(671)による光路長の伸び0.426584mmと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2=1.25mmよりも大きく、1.45mmに形成されている。
これによって、該ダミーガラス板(672)による光路長さの伸びは0.493977mmとなり、赤外線カットフィルター(671)とダミーガラス板(672)による光路差(図17(b)に示す撮像面の位置B2からB3までの距離)は、約0.07mmとなる。
【0043】
そこで、上記監視用カメラ(10)において、デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカスの調整は、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置B1を出発点として、レンズから離れる方向へ像面位置を移動させることで実施され、この像面位置の移動過程で、厚さt3を有するダミーガラス板(672)による実際の像面位置(結像位置)を通過することになり、その時点で最適なバックフォーカス調整値が得られることになる。
【0044】
図15は、上記監視用カメラ(10)におけるバックフォーカスの調整手続きを示している。先ずステップS1にて、バックフォーカスを変化させることによって像面位置を、原点位置(日中撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている像面位置)からFAR側端点(バックフォーカスの可変範囲においてレンズから遠い方の端点)まで移動させ、その過程で一定周期でAF評価値をモータ(7)の回転角度と関連付けてサンプリングする。
次にステップS2では、サンプリングされたAF評価値の中で最大のAF評価値が得られた像面位置に撮像面を移動させて、バックフォーカス調整手続きを終了する。
【0045】
例えば基準位置からFAR側端点までの距離が0.5mm、像面位置の移動速度が例えば0.1mm/秒の場合、図11のステップ1の完了までに5秒間、ステップS2の完了までに約10秒間が必要となり、バックフォーカスの調整に約10秒間の時間が必要となるが、図16に示す従来のバックフォーカスの調整に要する時間の約半分の時間で調整が完了することなる。
【0046】
上記監視用カメラ(10)によれば、デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカスの調整は、上述の如くデイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置から一方向へ像面位置を移動させることで実施されるので、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置を中心として遠近双方向へ像面位置を往復移動させる従来のカメラに比べて、より短い時間でバックフォーカスを調整することが出来る。
【0047】
本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、CMOSイメージセンサ(3)を撮像素子として採用したが、これに限らず、CCDイメージセンサ等の種々の撮像素子を採用することが出来る。
【符号の説明】
【0048】
(10) 監視用カメラ
(1) カメラ本体
(11) アセンブリ
(2) レンズユニット
(3) CMOSイメージセンサ
(4) マウント部
(5) リング部材
(6) 保持機構
(61) シャーシ
(66) スライド部材
(671) 赤外線カットフィルター
(672) ダミーガラス板
(673) 光通過窓
(72) モータ
(8) スライド駆動機構
(81) アオリ調整機構
(91) 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子が内蔵された装置本体と、該装置本体の前面に開口する開口部に脱着可能に取り付けられるレンズユニットとを具え、装置本体には、バックフォーカス調整機構と、前記開口部と撮像素子との間に介在して撮像素子の光軸に直交する方向へスライド可能なスライド部材が配備され、該スライド部材には、スライド方向に沿って赤外線カットフィルターとダミーガラス板とが並置され、撮像素子の光軸上に赤外線カットフィルターを配置したデイ撮影モードと、撮像素子の光軸上にダミーガラス板を配置したナイト撮影モードとの間で、モードの切り換えが可能な撮像装置において、
前記ダミーガラス板は、所定の厚さt1を有する赤外線カットフィルターによる光路長の伸びと同等の光路長の伸びが得られることとなる厚さt2よりも、大きな厚さt3に形成されていることを特徴とするバックフォーカス調整機構を具えた撮像装置。
【請求項2】
デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカス調整機構によるバックフォーカスの調整は、光路中に前記厚さt3を有するダミーガラス板を介在させた場合の理論的な像面位置を含む検索範囲の一方の端点から他方の端点へ像面位置を移動させる過程で、最大のフォーカス評価値が得られる像面位置を検索する手続きによって実施される請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
デイ撮影モードからナイト撮影モードに切り換えたときのバックフォーカス調整機構によるバックフォーカスの調整は、デイ撮影モードにおけるバックフォーカスの調整によって設定されている撮像面の位置を前記一方の端点として、他方の端点へ像面位置を移動させることで実施される請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記バックフォーカス調整機構は、モータを動力源としてバックフォーカスを自動的に変化させるものである請求項1乃至請求項3の何れかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−61372(P2011−61372A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207223(P2009−207223)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】