説明

バッテリ温調用モジュール

【課題】効率よく熱交換可能なバッテリ温調用モジュールを提供する。
【解決手段】複数のラミネート型バッテリセル1を積層した際に形成される空隙の断面形状に合わせて熱伝導材7を挟み込む構成である。これにより傾斜部3においてバッテリセルと伝熱部10との間の熱通過断面積を大きくする。熱伝導材はアルミ等で形成し、芯材8aの内部にウオータジャケット7a、7bを有する。熱伝導材は伝熱部と一体成形されている。このため、各部品を組み合わせる必要がなく、部品点数の削減及び組立工数の低減ができる。またバッテリセルと熱伝導材の間に、熱伝導性及び粘弾性を有する粘着部8bを有し、バッテリセルの振動や端部形状にバラツキがあっても、熱伝導性、密着性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの温度を調節可能なバッテリ温調用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリセルの間に伝熱板を設け、この伝熱板の下に設けた熱交換部にロウ付けすることで、バッテリの熱を外部へ放出させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−23703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術にあっては、薄肉の伝熱板を用いて伝熱基盤に熱伝導させているため、熱通過断面積が小さいことから熱抵抗が大きく、バッテリセルで発生した熱を効率よく熱交換部へ伝達することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、効率よく熱交換可能なバッテリ温調用モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のバッテリ温調用モジュールにあっては、複数のバッテリを積層した際に形成される隙間形状に沿って熱伝導材を配置し、この熱伝導材と密着して内部で冷媒を流動させることで熱交換を行なう熱交換部を備えた。
【発明の効果】
【0007】
隙間形状に合わせた熱伝導材を設けたため、熱通過断面積を大きくすることができ、熱抵抗を小さくすることでバッテリにおいて発生した熱を効率よく熱交換部に伝達することができ、効率よくバッテリを温調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のバッテリ温調モジュールを備えたモジュール缶の外観図である。
【図2】実施例1の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。
【図3】実施例1の伝熱性能と比較例の伝熱性能とを表す特性図である。
【図4】実施例2のバッテリパックの構成を表す概略図である。
【図5】実施例2の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。
【図6】実施例3の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。
【図7】実施例4のバッテリパックの構成を表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1のバッテリ温調モジュールを備えた車両の温調システムを表す概略図である。実施例1の車両はバッテリとモータを駆動源とする電気自動車である。この車両には、車両用空調システム13と、複数のバッテリセル1が収装され駆動源となる車両駆動用電池5と、車両駆動用電池5を温調するのに必要な流体を生成する温調機構20とを有する。
【0010】
車両用空調システム13は、コンデンサ14と、冷媒圧縮機15と、コンデンサ14から熱を放出するために必要なファン16と、減圧手段を有する冷媒蒸発器18と、これらを接続する冷媒配管等から構成されている。流路切替バルブ17は、車両用空調システム13内に組み込まれており、冷流体生成装置21の下流に設けられている。流路切替バルブ17は、コンデンサ14で冷却された冷媒の流れを冷媒蒸発器18もしくは冷流体生成装置21に切り替える。
【0011】
冷媒停止バルブ19は、車両用空調システム13に組み込まれており、冷流体生成装置21の下流に設けられている。流路切替バルブ17により冷媒蒸発器18に冷媒が流れているときに作動し、冷媒蒸発器18の出口から冷流体生成装置21への冷媒が逆流するのを防止する。
【0012】
冷流体生成装置21は、車両用空調システム13及び温調機構20の両方に跨って組み込まれており、それぞれ独立した回路構成とされている。車両用空調システム13側は冷媒が流れており、温調機構20側は流体が流れている。冷流体生成装置21内部には、図示しない熱交換器が設けられており、コンデンサ14で冷却された冷媒と、温調機構20内を流れる液流体とで熱交換が行なわれ、温調機構20内を流れる流体を冷却可能としている。
【0013】
温調機構20は、バッテリセル1を冷却するために必要な冷流体生成装置21、バッテリセル1を加温するために必要な電気ヒータ22、温調機構20内を流れる流体の温度を検出する流体温検出手段23、流体を輸送するための流体輸送ポンプ24及びこれらを接続する冷媒配管等から構成されている。冷媒配管は車両駆動用電池5の伝熱部10に設けられた配管12と接続されている。
【0014】
電気ヒータ22は、温調機構20内に組み込まれており、バッテリセル1を加温するために温調機構20内を流れる流体の温度を上昇させる。流体輸送ポンプ24は、バッテリセル1を温調するために必要な流体を伝熱部10に輸送する機能を有する。温度検出手段25は、バッテリセル1に設けられており、バッテリセル1の温度を検出する。
【0015】
制御装置100は、温度検出手段25により検出されたバッテリセル1の温度に基づいて冷却もしくは加温を判断し、上述の各種要素に対して制御信号を出力する。具体的には、冷却が必要な場合、車両用空調システム13にて生成された冷媒と、温調機構20内に流れる流体とを冷流体生成装置21内にて熱交換し、温調機構20内の流体を冷却する。そして、流体輸送ポンプ24によって冷やされた流体を車両駆動用電池5に内包されるバッテリセル1の伝熱部10に供給する。一方、加温が必要な場合、流体温検出手段23にて検出された流体温に基づいて、温調機構20内に組み込まれた電気ヒータ22により流体を加温する。そして、加温された流体を流体輸送ポンプ24によって車両駆動用電池5に内包される伝熱部10に供給する。
【0016】
図2は実施例1の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。バッテリセル1は、内蔵物である電極材4及び電解液をラミネートパックしたラミネート型電池である。バッテリセル1の周辺部には、ラミネート溶着するための溶着代2を有する。また、バッテリセル1の中央には、電解液等が充填され板状であって厚肉の中心部2aを有する。また、電極材4を積層した端部には、溶着代2と中心部2aとの間に形成された傾斜部3を有する。車両駆動用電池5は、このラミネート型のバッテリセル1を積層したバッテリパックを収装したものであり、バッテリセル1の積層時に溶着代2と傾斜部3によって形成される空隙6の断面形状に合わせて熱伝導材7を挟み込む構成とされている。これにより、傾斜部3においてバッテリセル1と伝熱部10との間の熱通過断面積を大きくしている。
【0017】
熱伝導材7は熱伝導性の良好なアルミ材料等で形成され、板状に延在される基材70と、基材70から上方に突出形成される芯材8aと、芯材8aの外側に設けられ、バッテリセル1の表面と熱伝導材7との密着性を向上させるために熱伝導性シリコン等をコーティングした粘着部8bとを有する。粘着部8bは、絶縁材であることから、電極材の周囲にも設置することができ、放熱効果を更に高めている。熱伝導材7は、芯材8aの内部にウォータージャケット7a,7bを有し、これにより冷却性能を向上している。矢視Aに示すように、実施例1では、基材70内に形成されたウォータージャケット7aと芯材8aの内部にまで形成されたウォータージャケット7bとを備えたタイプPT1と、基材70内にのみウォータージャケット7aを形成したタイプPT2とが考えられる。これらは要求性能,強度及びコスト等に応じて適宜設定可能である。
【0018】
図3は実施例1の伝熱性能と比較例の伝熱性能とを表す特性図である。尚、比較例とは、実施例1のような熱伝導材7を備えていないタイプである。バッテリセル1は、充放電時に10%程度の収縮があり、その影響により伝熱部10とバッテリセル1との間に空気層が生じる。この場合、熱伝導は空気層を介してしか行なわれないため、熱抵抗も高くなる。一方、実施例1では粘着部8bにより収縮に伴う変形に追従して密着するため、熱伝導を確保でき、熱抵抗も小さくなる。以上から、バッテリセル1と伝熱部10との間の密着度の関係を考慮すると、熱伝導材7を備えたことで20%程度の性能向上を図ることが可能となる。また、絶縁材で構成していることから電極部付近にも設置することができ、更に性能向上を図ることができる。
【0019】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記の作用効果が得られる。
(1)複数のバッテリセル1(バッテリ)を積層した車両駆動用電池5(バッテリモジュール)と、バッテリセル1を積層した際に形成される隙間形状に沿って配置された熱伝導材7と、熱伝導材7と密着し、内部で冷媒を流動させることで熱交換を行なう伝熱部10(熱交換部)と、を備えた。
よって、空間形状に合わせた熱伝導材を設けたため、熱通過断面積を大きくすることができ、熱抵抗を小さくすることでバッテリセル1において発生した熱を効率よく伝熱部10に伝達することができ、効率よくバッテリセル1を温調することができる。
【0020】
(2)バッテリセル1は、外縁に薄肉の溶着代2(周辺部)と、厚肉の中心部と、溶着代2と中心部2aとを接続する傾斜部3と、を有するラミネート型のバッテリセルであり、熱伝導材7は、バッテリセル1を積層した際に溶着代2と傾斜部3との間に形成される空間内であって傾斜部3に接するように配置することとした。
よって、バッテリセル1の傾斜部3を用いて熱伝導させるため、熱通過断面積を大きく撮ることができ、熱伝導における熱抵抗を小さくすることで効率よくバッテリセル1を温調することができる。また、バッテリセル1の中央部2a間に熱伝導材を備えていないため、バッテリパックを大型化することなく、温調効率を高めることができる。
【0021】
(3)熱伝導材7は、伝熱部10と一体成形されている。よって、各部品を組み合わせる必要がなく、部品点数の削減及び組み立て工数の低減を図ることができる。また、芯材8a内部にウォータージャケット7bを形成することができ、更に温調性能の向上を図ることができる。
【0022】
(4)バッテリセル1と熱伝導材7との間に、熱伝導性及び粘弾性を有する粘着部8b(弾性層)を有する。よって、バッテリセル1が振動したとしても密着状態を確保でき、バッテリセル1と熱伝導材7との間の熱伝導性を維持することができる。また、バッテリセル1の端部形状(電極材4等の形状)にばらつきがあったとしても、それらばらつきを変形により吸収することができ、密着性を確保できる。
【0023】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図4は実施例2のバッテリパックの構成を表す概略図、図5は実施例2の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。実施例2のバッテリパックは、バッテリセル1を積層し、その周囲を枠体9によって覆う構成としたものである。枠体9は実施例1の熱伝導材7と同様の役割を果たすものであり、熱伝導性の良好なアルミ材料等で形成されている。枠体9の内周には、バッテリセル1の外周全体に形成された空隙6にそれぞれ挟み込まれる芯材8aと、粘着部8bとが設けられ、バッテリセル1の周辺全体に亘って熱伝導を可能としている。枠体9は伝熱部10と密着して取り付けられている。これにより、実施例1のようにバッテリセル1の一辺のみに熱伝導材7を設けた構成に比べて更に良好な熱伝導性能を得ることができ、効率的なバッテリ温調を達成することができる。
【0024】
以上説明したように、実施例2にあっては下記の作用効果が得られる。
(5)熱伝導材は、バッテリセル1の全周を囲むように形成された枠体である。よって、バッテリセル1の一辺のみに熱伝導材を形成した場合に比べて熱伝導効率を向上することができる。
【0025】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例2と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。図6は実施例3の車両駆動用電池の構成を表す概略斜視図である。実施例2では、枠体9を伝熱部10と密着して取り付けたが、実施例3では、枠体9の一辺を延在させた延在部9aを形成し、この延在部9aに配管12が貫通する貫通孔11を形成した点が異なる。このように、全ての枠体9に貫通するように配管12を貫通孔11に通すことで、実施例2のように伝熱部10を別途構成することなく、簡易な構成で枠体9と冷媒との間の熱交換を達成できる。
【0026】
以上説明したように、実施例3にあっては下記の作用効果が得られる。
(6)枠体9の一辺に、冷媒を流動させる配管を保持する貫通孔11(配管保持部)を形成した。よって、簡易な構成で枠体9と冷媒との間の熱交換を達成できる。
【0027】
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。基本的な構成は実施例3と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。図7は実施例4のバッテリパックの構成を表す概略斜視図である。実施例3では、延在部9aに貫通孔11を形成し、これに配管12を通す構成としたが、実施例4では、貫通孔11に代えて切り欠き11'(配管保持部)を形成し、切り欠き11'と配管12とを密着させることで熱伝導を行なう点が異なる。これにより、実施例2のように伝熱部10を別途構成することなく、簡易な構成で枠体9と冷媒との間の熱交換を達成できる。
【0028】
以上、実施例及び変形例に基づいて本発明を説明したが、上記実施形態に限らず、他の構成であっても本発明に含まれる。例えば、実施例では、バッテリセル1の冷却をメインに説明したが、冷却に限らず、加温する場合であっても同様に適用可能である。また、実施例ではラミネート型のバッテリセルを例に挙げて説明したが、他の形状もしくはタイプのバッテリセルを複数積み重ねる構成であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 バッテリセル
2 溶着代
2a 中心部
3 傾斜部
4 電極材
5 車両駆動用電池
6 空隙
7 熱伝導材
7a,7b ウォータージャケット
8a 芯材
8b 粘着部
9 枠体
9a 延在部
10 伝熱部
11 貫通孔
12 配管
20 温調機構
21 冷流体生成装置
22 電気ヒータ
23 流体温検出手段
24 流体輸送ポンプ
25 温度検出手段
70 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリを積層したバッテリモジュールと、
前記バッテリを積層した際に形成される隙間形状に沿って配置された熱伝導材と、
前記熱伝導材と密着し、内部で冷媒を流動させることで熱交換を行なう熱交換部と、
を備えたことを特徴とするバッテリ温調用モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温調用モジュールにおいて、
前記バッテリは、外縁に薄肉の周辺部と、厚肉の中心部と、前記周辺部と前記中心部とを接続する傾斜部と、を有するラミネート型のバッテリセルであり、
前記熱伝導材は、前記ラミネートセルを積層した際に前記周辺部と前記傾斜部との間に形成される空間内であって前記傾斜部に接するように配置することを特徴とするバッテリ温調用モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリ温調用モジュールにおいて、
前記熱伝導材は、前記熱交換部と一体成形されていることを特徴とするバッテリ温調用モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1つに記載のバッテリ温調用モジュールにおいて、
前記バッテリと前記熱伝導材との間に、熱伝導性及び粘弾性を有する弾性層を有することを特徴とするバッテリ温調用モジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一つに記載のバッテリ温調用モジュールにおいて、
前記熱伝導材は、前記バッテリの全周を囲むように形成された枠体であることを特徴とするバッテリ温調用モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリ温調用モジュールにおいて、
前記枠体の一辺に、冷媒を流動させる配管を保持する配管保持部を形成したことを特徴とするバッテリ温調用モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−51099(P2013−51099A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188122(P2011−188122)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】