説明

バッファカセット

【課題】大型の、ガラス基板及び工程途中のガラス基板を一時的に収納、保管するための、ロボットによるランダムアクセス可能で、且つ、収納効率の高いバッファカセットを提供する。
【解決手段】後壁部材と両側壁部材の内側の多段の収納部のそれぞれが、両側壁部材に片側が拘持されて内側方向に相対向して張り出し、先端部が離間して配置された複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する側壁側の支持フレームと、後壁部材に片側が拘持されて前記側壁側の支持フレームの離間部に張り出した複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する後壁側の支持フレームとを有し、それぞれの前記支持フレームの先端部と前記側壁部材及び前記後壁部材のそれぞれの拘持部との間に金属ワイヤーが張架されていて、前記基板支持フレームの先端部が基板質量による下側への撓みに対抗する張力を受けながらガラス基板を担持する構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の表示パネルを形成するために用いられるカラーフィルタなどの、大型の、ガラス基板及び工程途中のガラス基板を一時的に収納、保管するための基板用バッファカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置及びカラープラズマディスプレイ等の表示パネルを作製する際、製造ラインの各工程は自動化されており、製造ラインの各工程では、ガラス基板及び工程途中のガラス基板を工程内に設置されたバッファカセットから製造ラインの各工程に効率よく供給したり、処理の終わったガラス基板を工程内に設置された基板用バッファカセットに効率よく収納することが行われている。この工程内に設置されたバッファカセットを用いることにより、人手を介さずに、ガラス基板及び工程途中のガラス基板の各工程間移動をスムーズに行うことが出来るようになっている。
【0003】
現在一般的に用いられている工程内基板用バッファカセットは、クロスバー(棚式)タイプ、バックサポート(片持ち)タイプ及びワイヤーカセットタイプの3種類である。これらバッファカセットに共通して求められる重要なポイントは、ガラス基板の収納効率が良いことと、ガラス基板をバッファカセットの自由な位置へ収納すること及びバッファカセットから自由な位置でガラス基板を取り出すことのできるランダムアクセス性である。
【0004】
近年、各種の表示パネルには、0.7mm以下の薄さのガラス基板が使用されるようになっている。また、特に、大型液晶テレビの普及に伴い、使用されるガラス基板は、最近では第6世代(G6:1500mm×1800mm)、第8世代(G8:2160mm×2400mm)、あるいは第10世代(G10:2850mm×3050mm)と呼ばれる様に年々大型化している。このようなカラーフィルタにおける基板サイズの大型化に伴い、バッファカセット形状も、バックサポートタイプから、クロスバータイプに移行している。これは基板重量の増加により、支点が一つである片持ちタイプでは基板を支えるだけの支持部材の剛性が得られないので、支点の二つある棚式タイプを採用しているのである。また、片持ちタイプの場合、支持部材の強度を増やせない場合、フレームの撓みを考慮して段ピッチを広くする必要があり、収納効率が悪くなる問題もある。
【0005】
しかしながら、ロボットアームをバッファカセットにアクセスする際、ロボットアームのアクセス可能エリアは、バックサポートタイプの場合、支持部材の厚みと支持ピンの長さを合計した範囲であるのに対し、クロスバータイプの場合、その形状により基板支持ピンの長さのみの範囲でロボットをアクセスする必要がある。そのため、支持部材の厚み分だけ収納効率が悪くなり、クロスバータイプのバッファカセットを使用すると、バックサポートタイプのバッファカセットと比較して同じ枚数のガラスを保管する場合、バッファカセットサイズが大きくなることになる。一例として、上記したG6サイズのガラス基板の場合、クロスバータイプの各カセットの段ピッチは、片持ちタイプと比較して1.44倍となるので、バッファカセットサイズも1.44倍となる。
【0006】
また、バッファカセットの種類の中には、基板支持ピンを使用せず、平行にワイヤーを並べ、その上部にガラス基板を保管するワイヤーカセットタイプがある。ワイヤーカセットタイプのバッファカセットの特徴としては、段ピッチを狭くすることができ、収納効率が高い。しかし、基板へのアクセスがロボットではなくコンベア搬送となる。コンベア搬送でバッファカセット内にガラス基板を収納する際は、例えば一基のカセットを上昇させてガラス基板を収納し、また次のカセットを上昇させてガラス基板を収納することを繰り
返し行う。反対にガラス基板を排出する際は収納の逆動作となり、一枚目に収納したガラス基板が最後に排出され、所謂ファーストインラストアウトとなる。製造工程のライン上に存在するバッファカセットではファーストインラストアウトは品質上好ましくなく、ファーストインファーストアウトが可能か、もしくは、ロボットのランダムアクセスが可能で、且つ、収納効率の高いバッファカセットが要求されている。
【0007】
大型で薄いガラス基板は撓み易いため、バッファカセット内に複数枚のガラス基板が収納されていると、各ガラス基板が撓んで隣接するガラス基板同士が接触することによって破損するおそれがある。このために、例えば特許文献1では、バッファカセット内のガラス基板同士が接触しないように、基板用カセットの受け側フレームに、受け板を設けることにより、基板の撓み量を最低限に留めることが可能な基板用カセットが開示されている。しかし、G6サイズ以上の大型ガラス基板への適用では、受け板を設けた受け側フレームを厚くして剛性を上げる必要があり、結果として収納効率が上がらない問題があった。
【0008】
また、特許文献2には、ガラス基板を効率よく、かつランダムに収納できるバッファ装置として、ガラス基板収納トレイにロボットがアクセスするガラス基板アクセスユニットと、ガラス基板が収納されたトレイを保管するためのガラス基板保管ユニットから構成されるバッファ装置が開示されている。しかし、このバッファ装置では、ガラス基板アクセスユニットの空間・面積が別に必要で、アクセス用ロボット以外に、ガラス基板が収納されたトレイをガラス基板アクセスユニットとガラス基板保管ユニット間で移動し、かつガラス基板保管ユニット内での位置を制御する機構が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−203584号公報
【特許文献2】特開2008−204996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、大型の、ガラス基板及び工程途中のガラス基板を一時的に収納、保管するための、ロボットによるランダムアクセス可能で、且つ、収納効率の高いバッファカセットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、後壁部材と両側壁部材の内側の多段の収納部の任意の段の収納部にガラス基板を一枚づつ一時的に収納・保管し、また取り出すバッファカセットであって、前記多段の収納部のそれぞれが、両側壁部材に片側が拘持されて内側方向に相対向して張り出し、先端部が離間して配置された複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する側壁側の支持フレームと、後壁部材に片側が拘持されて前記側壁側の支持フレームの離間部に張り出した複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する後壁側の支持フレームとを有するバッファカセットにおいて、それぞれの前記支持フレームの先端部と前記側壁部材及び前記後壁部材のそれぞれの拘持部との間に金属ワイヤーが張架されていて、前記基板支持フレームの先端部が基板質量による下側への撓みに対抗する張力を受けながら前記ガラス基板を担持する構造を有することを特徴とするバッファカセットである。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記基板支持フレームが予め凹型に湾曲した形状に成形され、前記金属ワイヤーが弓の弦状に前記基板支持フレームの先端部と前記側壁
部材及び前記後壁部材との間に張架されていることを特徴とする請求項1に記載するバッファカセットである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッファカセットは、基板支持フレームの先端部と側壁部材及び後壁部材との間に金属ワイヤーが張架されていることで、基板支持フレーム先端部にかかる荷重を軽減し、基板支持フレームの撓みを抑制することで、収納部の段ピッチを極力狭くすることが可能となり、バッファカセット内により多くのガラス基板が収納できる。
【0014】
また、予め凹型に湾曲した形状に成形された基板支持フレームを使用することで、ワイヤーを連結することによる撓み抑制効果が高まり、基板支持フレーム自体の剛性を必要以上に高めなくてよいので、材料コストの低下につながる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の、クロスバータイプのバッファカセットの一例を示す概略図。
【図2】本発明に係る、バックサポートタイプのバッファカセットの一例を示す概略図。
【図3】本発明のバッファカセットの基板支持フレームの撓み抑制効果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のバッファカセットについて、一実施形態に基づいて説明する。なお、従来のバッファカセットと本発明のバッファカセットで同一の機能を担う部分には同一の符号を用いて説明する。
【0017】
図1は、従来のクロスバー(棚式)タイプのバッファカセットの一例を示すもので、(a)は断面概略図、(b)は上面概略図である。図1に示すように、上部に所定の間隔で設けられた支持ピン3を有する分割された基板支持フレーム2が、両側の側壁部材4,5に、図示しないL字型金具等でクランプされた構造となっており、基板支持フレーム2を両側で保持したものである。このクロスバータイプのバッファカセットへのガラス基板1の収納は、図示しないロボットのアームに載置されたガラス基板1を、アームとガラス基板ごと上下の基板支持フレーム間に挿入して、ガラス基板1を支持ピン3に載置したところで、アームを引き出すことで行われる。また、クロスバータイプのバッファカセットからガラス基板を取り出す場合は、ロボットのアームがガラス基板に接触しないように、アームをガラス基板と基板支持フレームとの間のロボットアームアクセス可能エリア8、すなわち基板支持ピンの高さ間隔内に挿入し、アームを持ち上げてアーム上にガラス基板を載置して、アームを引き出すことにより行われる。
【0018】
これに対して、本発明のバッファカセットは、バックサポート(片持ち)タイプを採用している。図2は、本発明のバッファカセットの一例を示すもので、(a)は断面概略図、(b)は上面概略図である。図2に示すように、両側壁部材4,5に、片側が図示しないL字型金具等でクランプされ拘持されて内側方向に相対向して張り出し、先端部が離間して配置された複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピン3を有する側壁側の基板支持フレーム2と、後壁部材6に片側が図示しないL字型金具等でクランプされ拘持されて前記側壁側の基板支持フレーム2の離間部に張り出した複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピン3を有する後壁側の基板支持フレーム20とを有し、基板支持フレーム2及び20を片持ちで保持した構造となっている。
【0019】
そして、それぞれの支持フレーム2の先端部と側壁部材4,5、及び支持フレーム20
の先端部と後壁部材6のそれぞれの拘持部との間に金属ワイヤー7が張架されていて、基板支持フレームの先端部が基板質量による下側への撓みに対抗する張力を受けながらガラス基板1を担持する構造となっている。
【0020】
さらに、本発明のバッファカセットにおいては、図3(a)に示すように、基板支持フレーム2,20が予め凹型に湾曲した形状に成形され、金属ワイヤー7が弓の弦状にそれぞれの基板支持フレームの先端部と側壁部材及び後壁部材との間に張架されている。この金属ワイヤーによる張力と、予め凹型に湾曲した形状に成形された基板支持フレームとの撓み抑止効果によって、図3(b)、(c)に示すように、従来の片持ちタイプで発生した基板支持フレームの撓みが抑止されて、各収納部の高さピッチ9を小さくすることができる。
【0021】
本発明のバッファカセットへのガラス基板の収納は、ロボットのアームに載置されたガラス基板を、アームとガラス基板ごと上下の基板支持フレームと左右の支持部材間に挿入して、ガラス基板を支持ピンに載置したところで、アームを引き出すことで行われる。また、本発明のバッファカセットからガラス基板を取り出す場合は、ロボットのアームがガラス基板に接触しないように、アームを上下のガラス基板と左右の支持部材との間のロボットアームアクセス可能エリア8に挿入し、アームを持ち上げてアーム上にガラス基板を載置して、アームを引き出すことにより行われる。
【0022】
上記したように、ロボットアームをバッファカセットにアクセスする際、ロボットアームのアクセス可能エリア8は、本発明に係るバックサポート(片持ち)タイプのバッファカセットの場合、基板支持フレームの厚みと支持ピンの長さを合計した範囲であるのに対し、従来のクロスバー(棚式)タイプの場合、基板支持ピンの長さのみの範囲でロボットをアクセスする必要があり、基板支持フレームの厚み分だけ収納効率が悪くなる。本発明の、バッファカセットを使用すると、基板支持フレームの厚みを増加さぜずにバックサポートタイプの収納効率を最大限活かして、多くの枚数のガラスを保管することが可能となる。また、バッファカセットサイズが大きくなることなく、ロボットアームのアクセス可能エリアを高くすることができ、ロボットのランダムアクセスによる任意の収納段のガラス基板の挿入、取り出しが容易となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・ガラス基板 2、20・・・基板支持フレーム 3・・・基板支持ピン 4、5・・・側壁部材 6・・・後壁部材 7・・・金属ワイヤー
8・・・ロボットアームのアクセス可能エリア 9・・・段ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後壁部材と両側壁部材の内側の多段の収納部の任意の段の収納部にガラス基板を一枚づつ一時的に収納・保管し、また取り出すバッファカセットであって、前記多段の収納部のそれぞれが、両側壁部材に片側が拘持されて内側方向に相対向して張り出し、先端部が離間して配置された複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する側壁側の支持フレームと、後壁部材に片側が拘持されて前記側壁側の支持フレームの離間部に張り出した複数本の上部に所定の間隔で設けられた支持ピンを有する後壁側の支持フレームとを有するバッファカセットにおいて、それぞれの前記支持フレームの先端部と前記側壁部材及び前記後壁部材のそれぞれの拘持部との間に金属ワイヤーが張架されていて、前記基板支持フレームの先端部が基板質量による下側への撓みに対抗する張力を受けながら前記ガラス基板を担持する構造を有することを特徴とするバッファカセット。
【請求項2】
前記基板支持フレームが予め凹型に湾曲した形状に成形され、前記金属ワイヤーが弓の弦状に前記基板支持フレームの先端部と前記側壁部材及び前記後壁部材との間に張架されていることを特徴とする請求項1に記載するバッファカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16564(P2011−16564A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163559(P2009−163559)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】