説明

バナジウムイオン電池

【課題】レドックスフロー電池の原理を応用しつつも、電解液を循環させる循環ポンプを不要として小型化できると共に、メンテナンス性を向上させることができるバナジウムイオン電池を提供する。
【解決手段】耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陽極電極11と、オキソ硫酸バナジウムを電解した陽極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし、固めた陽極電解質部12と、オキソ硫酸バナジウムを電解した陰極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし、固めた陰極電解質部14と、陽極電解質部12と陰極電解質部13との間に設けられ、水素イオンを交換する耐酸性の隔膜13と、耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陰極電極15と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウム系レドックスフロー電池の原理を応用した固形電池のバナジウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや電気自動車のバッテリとして、リチウムイオン電池が使用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
その一方、バナジュウムイオン電池のような電極の化学反応を利用しない二次電池として、レドックスフロー電池が開発されている。レドックスフロー電池は、例えば、正極液に4価のバナジウムの硫酸溶液を使用する一方、負極液に3価のバナジウムの硫酸溶液を使用して、タンクに貯蔵した両極液を循環ポンプによりセルに送液して循環させることにより、充放電を行っている(例えば、特許文献4〜6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−135272号公報
【特許文献2】特開2010−111096号公報
【特許文献3】特開2010−033937号公報
【特許文献4】特開2010−170782号公報
【特許文献5】特開2010−086935号公報
【特許文献6】特開2009−016217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1〜3に記載のリチウムイオン電池は、電極の化学反応を利用して蓄電するため、充放電の繰り返しにより電極が劣化して、いわゆるメモリー効果により充電効率が低下したり、電極反応を調整するため詳細な充電コントロールが必要であったり、コントロールの不具合による急激な電極反応により発熱等したり、さらには、製造ライン等に高度な技術が必要である、等のリチウムイオン電池固有の種々の課題がある。
【0006】
その一方、前記特許文献4〜6等に記載のレドックスフロー電池では、前述のようなリチウムイオン電池の欠点はないものの、バナジウムの硫酸溶液等の電解液を循環させる循環ポンプが必要であり、電池が大型化したり、循環ポンプのメンテナンス等が必要である、という課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、レドックスフロー電池の原理を応用しつつも、電解液を循環させる循環ポンプを不要として小型化できると共に、メンテナンス性を向上させることができるバナジウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のバナジウムイオン電池は、耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陽極電極と、オキソ硫酸バナジウム(VOSO)を電解した陽極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし固めた陽極電解質部と、オキソ硫酸バナジウム(VOSO)を電解した陰極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし固めた陰極電解質部と、前記陽極電解質部と前記陰極電解質部との間に設けられ、選択的に水素イオン(H)を透過する耐酸性の隔膜と、耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陰極電極と、を有することを特徴とするバナジウムイオン電池である。
ここで、前記バナジウムイオン電池において、さらに、前記陽極電極および前記陰極電極は、電気抵抗が1[Ω]以下であり、かつ、その厚さが0.2〜0.5[mm]であることを特徴とする。
また、前記バナジウムイオン電池において、前記陽極電解液のORP(酸化還元電位)値は、1000〜1200[mV]であり、400メッシュ以上の炭素粉末である一方、前記陰極電解液のORP(酸化還元電位)値は、(−)250〜(−)350[mV]である、ことを特徴とする。
また、前記バナジウムイオン電池において、さらに、前記隔膜は、水素イオン(H)を選択的に透過させる耐酸性の隔膜で、その厚さが0.2〜0.5[mm]である、ことを特徴とする。
また、前記バナジウムイオン電池において、前記陽極電解質部と前記陰極電解質部の周囲を、1.0〜5.0[mm]厚のセルフレームにより囲み補強し、前記陽極電極と、前記陽極電解質部を有する陽極側セルフレームと、前記隔膜と、前記陰極電解質部を有する陰極側セルフレームと、前記陰極電極とを積層したフレーム積層型に構成した、ことを特徴とする。
また、前記バナジウムイオン電池において、前記陽極電解質部を中心に丸めことにより円筒状電池とした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバナジウムイオン電池では、従来のレドックスフロー電池では必要であった、陽極液および陰極液を循環させる循環ポンプが不要となり、小型化できると共に、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1のバナジウムイオン電池1(1セル基本構成)の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1のバナジウムイオン電池1を積層した一例を示す構成図である。
【図3】実施形態2のバナジウムイオン電池2(1セル基本構成)の構成例を示す分解斜視図である。
【図4】実施形態2のバナジウムイオン電池2を積層した一例を示す構成図である。
【図5】本実施形態2のバナジウムイオン電池2を、陽極電極を内側にして丸めた筒状電池の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るバナジウムイオン電池の一実施形態1,2を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態1のバナジウムイオン電池1では、セルフレームを使用した例について説明し、実施形態2のバナジウムイオン電池2では、セルフレームを使用しない例について説明する。
【0012】
実施形態1
まずは、実施形態1のバナジウムイオン電池1について説明する。
【0013】
図1は、実施形態1のバナジウムイオン電池1の1セル基本構成例の分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、実施形態1のバナジウムイオン電池1は、図上、下から、陽極電極11と、陽極電解質部12の周囲を補強した陽極セルフレーム12と、隔膜13と、陰極電解質部14の周囲を補強した陰極セルフレーム14と、陰極電極15とを重ねて1セル基本構成例としたものであり、図1に示す1セル基本構成例、または、図2に示すように1セル基本構成例を積層した複数セルから構成する。
【0015】
次に、図1に示すバナジウムイオン電池1の各構成について説明する。
【0016】
<陽極電極11>
陽極電極11は、例えば、AuやPt等の耐酸性金属や、金メッキ等を施した金属、炭素等の耐酸皮膜を施した銅やアルミ等の金属、もしくは導電性の良好な非液透過性を有する炭素シート(グラフォイル等)であって、電気抵抗が1[Ω]以下で、0.1〜0.5[mm]程度の電極を使用する。なお、抵抗値は、より小さいものが好ましい。
【0017】
<陽極電解質部12および陽極セルフレーム121>
陽極電解質部12は、例えば、クラスタの小さい純水等にオキソ硫酸バナジウム(硫酸バナジルともいう。)(VOSO)を1〜6[mol/L]、より好ましくは3〜6[mol/L]溶かした水溶液を専用電解装置にて電解し、ORP(酸化還元電位)値を1000〜1200[mV]とした陽極電解液を、高通電性を有する400メッシュ以上のふるいをかけた炭素粉末、さらにはかかる炭素粉末に、例えば、吸水性ポリマー等の安定材を添加したものに混練して、ペースト状にしたものを、約5°〜30°の温度で固めて使用する。なお、この電解は、専用電解装置以外の通常の一般の電解装置でも良い。また、オキソ硫酸バナジウム(VOSO)も、通常のバナジウム系のレドックスフロー電池で使用されているオキソ硫酸バナジウム(VOSO)でも良い。
【0018】
そして、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、上記のように構成した陽極電解質部12の周囲を、1.0[mm]〜5.0[mm]程度の厚さ、主に、1.5[mm]厚の陽極セルフレーム121により補強している。
【0019】
ここで、陽極セルフレーム121の材質は、AuやPt等の金属製や導電性の材質、あるいは塩ビやPP(ポリプロピレン)等の樹脂等の絶縁体により構成する。なお、陽極セルフレーム121により陽極電解質部12の周囲を補強などしたとしても、水素イオン(H)、電子(e)の移動を確保する必要があるため、原則として、陽極電解質部12は、陽極電極11および隔膜13に接触するように配置する。
【0020】
ここで、陽極セルフレーム121の水平方向の幅を変えることにより、陽極電解質部12の面積を変更して、出力電流値などを変更することができる。
【0021】
また、陽極セルフレーム121の材質をAuやPt等の金属製や導電性の材質により構成した場合でも、水素イオン(H)の移動を確保する必要があるため、陽極電解質部12は隔膜13に接触させる必要がある。
【0022】
ただし、陽極セルフレーム121の材質を塩ビやPP(ポリプロピレン)等の樹脂等の絶縁体により構成した場合、電子(e)は陽極セルフレーム121を流れないため、、陽極電解質部12が陽極電極11および隔膜13に接触するように配置する。そして、陽極セルフレーム121の水平方向の幅を変えることにより、陽極電解質部12の面積を変更して、出力電流値などを変更することができる。
【0023】
<隔膜13>
隔膜13は、陽極電解質部12の周囲を補強した陽極セルフレーム12と、陰極電解質部14の周囲を補強した陰極セルフレーム14との間に設けられ、充放電時に、プロトン(陽イオン)である水素イオン(H)等を陽極電解質部12と陰極電解質部14との間で選択的に透過させるものである。隔膜13は、例えば、イオン交換膜等の耐酸性の隔膜を使用し、0.2〜0.5[mm]程度の高効率の隔膜を使用する。
【0024】
<陰極電解質部14および陰極セルフレーム141>
陰極電解質部14は、例えば、クラスタの小さい純水等にオキソ硫酸バナジウム(VOSO)を1〜6[mol/L]、より好ましくは3〜6[mol/L]溶かした水溶液を専用電解装置にて電解し、ORP(酸化還元電位)値を、(−)250〜(−)350[mV]とした陰極電解液を、高通電性を有する400メッシュ以上のふるいをかけた炭素粉末、さらにはかかる炭素粉末に吸水性ポリマー等の安定材を添加したものに混練して、ペースト状にしたものを、約5°〜30°で固めて使用する。なお、この電解も、専用電解装置以外の通常の一般の電解装置でも良い。また、オキソ硫酸バナジウム(VOSO)も、通常のバナジウム系のレドックスフロー電池で使用されているオキソ硫酸バナジウム(VOSO)でも良い。
【0025】
ここで、陰極セルフレーム141の材質は、陽極セルフレーム121と同様に、AuやPt等の金属製や導電性の材質、あるいは塩ビやPP(ポリプロピレン)等の樹脂等の絶縁体により構成する。なお、陰極セルフレーム141により陰極電解質部14の周囲を補強などしたとしても、陰極電解質部14は、陰極電極15および隔膜13に接触するように配置する。
【0026】
また、陰極セルフレーム141を陽極フレームと同一に水平方向の幅を変えることにより、陰極電解質部14の面積を変更して、出力電流値などを変更することができる。
【0027】
また、陰極セルフレーム141の材質を、AuやPt等の金属製や導電性の材質により構成した場合、水素イオン(H)の移動を確保する必要があるため、陰極電解質部14は隔膜13に接触させる必要があるものの、電子(e)は金属製や導電性の陰極セルフレーム141を介して移動可能であるため、必ずしも、陰極電解質部14は陰極電極15に接触させる必要はない。ただし、陰極セルフレーム141の材質を、塩ビやPP(ポリプロピレン)等の樹脂等の絶縁体により構成した場合、電子(e)は陰極セルフレーム141を流れないため、陰極電解質部14が陰極電極15および隔膜13に接触するように配置する。ただし、陰極セルフレーム141を陽極セルフレーム121と同一に水平方向の幅を変えることにより、陰極電解質部14の面積を変更して、出力電流値などを変更することができる。
【0028】
<陰極電極15>
陰極電極15は、陽極電極11と同様に、例えば、AuやPt等の耐酸性金属、または炭素等の耐酸皮膜を施した銅やアルミ等の金属、もしくは導電性の良好な非液透過性を有する炭素シート(グラフォイル等)で、電気抵抗が1[Ω]以下で、0.1〜0.5[mm]程度の電極を使用する。なお、抵抗値は、より小さいものが好ましい。
【0029】
以上が、実施形態1のバナジウムイオン電池1の1セル基本構成である。
【0030】
次に、上記のように構成された1の基本セルに加えるセル電圧と、出力電流値について説明する。
<セル電圧>
ここで、図1に示すように構成された実施形態1のバナジウムイオン電池1の基本セルに加えるセル電圧は、バナジウムイオンの酸化還元電位に起因するため、例えば、1.4[V]〜1.59[V]の範囲に設定し、おおむね1.45[V]程度に設定する。
【0031】
<出力電流値>
図1に示すように構成された実施形態1のバナジウムイオン電池1の1の基本セルの出力電流値は、隔膜13の面積や、水素イオン(H)の交換効率にも起因するが、現行では、例えば、30[mA/cm]〜120[mA/cm]の範囲であり、おおむね50[mA/cm]である。
【0032】
本実施形態1では、以上のように構成された陽極電極11、陽極電解質部12の周囲を補強した陽極セルフレーム12と、隔膜13と、陰極電解質部14の周囲を補強した陰極セルフレーム14と、陰極電極15とを重ねて1セル基本構成例としたものである。そして、本実施形態1のでは、補強用の陽極セルフレーム12と陰極セルフレーム14とを使用して堅固に構成しているので、1層で使用するだけでなく、次に説明する図2に示すように、1セル基本構成例を4層以上積層して使用する場合に最適である。
【0033】
図2(a),(b)は、それぞれ、図1に示す1セル基本構成の本実施形態1のバナジウムイオン電池1を、4層積層する前と、4層積層した後とを示している。なお、4層積層は、あくまで、一例であり、5層以上積層して、出力電圧を増大するようにしても良い。
【0034】
つまり、図2(a),(b)では、図1に示す1セル基本構成の本実施形態1のバナジウムイオン電池1を、4層積層、すなわち4個直列に接続し、出力電圧を約4倍にしている。
【0035】
そして、図2(a)に示すように1セル基本構成の本実施形態1のバナジウムイオン電池1を4層積層したものを、図2(b)に示すように、絶縁性ケーシング2に収納して、電池パック等として使用する。
【0036】
なお、4層積層は、あくまで一例であり、実際の電池パックは、図1に示すセル構造を、目的とする電圧に応じて、通常は、1〜10セル程度積層して用いる。
【0037】
従って、本実施形態1のバナジウムイオン電池1によれば、レドックスフロー電池と同様に、バナジウム元素の原子価の変化のみを利用した二次電池であるため、反応熱やガスの発生がなく、従来のリチウムイオン電池等と較べ安全である。
【0038】
また、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、レドックスフロー電池と同様に、電極の化学変化がないため、充放電の繰り返しによる電極の劣化が生じないと共に、電解質も化学反応がないため、劣化が生じなく、充放電の繰り返しによる、いわゆるメモリー効果も生じなく、長期間、繰り返し使用可能となる。
【0039】
また、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、効率よく充電するには、CC−CV(定電流定電圧)方式が望ましいが、CV(定電圧)方式でも充電可能なため、充電コントロールが容易である。
【0040】
また、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、陽極電解質部12および陰極電解質部14を、オキソ硫酸バナジウム(VOSO)の1〜6[mol/L]、より好ましくは3〜6[mol/L]を専用電解装置にて電解した高濃度のイオン溶液を、上述のような特殊な炭素粉末に混練しペースト状にして固めてあるため、重量が軽量になる。
【0041】
さらに、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、従来のレドックスフロー電池と比較しても、従来のレドックスフロー電池では必要であった、陽極電解液および陰極電解液を循環させる循環ポンプが不要となるので、電池全体を小型化できると共に、メンテナンス性を向上させることができる。
【0042】
特に、本実施形態1のバナジウムイオン電池1では、陽極電解質部12および陰極電解質部14の周囲を、それぞれ、陽極セルフレーム12または陰極セルフレーム13により補強しているので、1層の基本セル構成を4層以上重ねて、絶縁性ケーシング2に収納して、主に蓄電容量の大きいものに使用することが可能となる。
【0043】
実施形態2.
次に、シート積層型の実施形態2のバナジウムイオン電池2について説明する。前記実施形態1では、本発明にかかるバナジウムイオン電池を、セルフレームを使用したフレーム積層型により構成して説明したが、本実施形態2では、セルフレームを使用しないシート積層型により構成した場合について説明する。
【0044】
図3は、実施形態2のバナジウムイオン電池2の構成例を示す構成図である。
【0045】
実施形態2のバナジウムイオン電池2では、図3に示すように、シート状の陽極電極11、陽極電解質部12、隔膜13、陰極電解質部14、陰極電極15を積層し、1セルを構成する。
【0046】
つまり、実施形態2のバナジウムイオン電池2は、図1に示す実施形態1のバナジウムイオン電池1と比較すると明らかだが、図3に示すように、陽極電解質部12および陰極電解質部14の周囲を、それぞれ、陽極セルフレーム12または陰極セルフレーム13により補強しないだけで、それ以外の構成は、図1に示す実施形態1のバナジウムイオン電池1と同じである。
【0047】
ここで、本実施形態2のバナジウムイオン電池では、セルフレームを使用せずに、0.3[mm]〜0.5[mm]程度の陽極電解質部12および陰極電解質部14を、それぞれ直接、陽極電極11または陰極電極15に均等に貼り付けて、さらにそれらを、隔膜14に張り付ける。
【0048】
図4(a),(b)は、それぞれ、図3に示す構成の実施形態2のバナジウムイオン電池2を、例えば、3層積層する前と、3層積層した後とを示している。
【0049】
つまり、図4(a),(b)では、図3に示す1セル基本構成の本実施形態1のバナジウムイオン電池1を、3層積層、すなわち3個直列に接続している。ここで、3層積層した理由は、実施形態2のバナジウムイオン電池2では、陽極電解質部12および陰極電解質部14の周囲を、それぞれ、陽極セルフレーム12または陰極セルフレーム13により補強してなく、実施形態1のバナジウムイオン電池1より強度がないからである。なお、3層はあくまで一例であり、実際の電池パックは、図3に示すセル構造を、目的とする電圧に応じて、通常は、1層や、2層程度積層して用いる。
【0050】
そして、本実施形態2のバナジウムイオン電池2では、セルフレームを使用しないシート積層型であるので、図4(a)に示すように1セル基本構成を3層程度積層し、図4(b)に示すように絶縁シート41等により包み折り込んだ後、絶縁性ケーシング42に収納して、電池パックとして使用する。そのため、本実施形態2のバナジウムイオン電池は、4.5[V]以下の二次電池として使用することができる。
【0051】
従って、本実施形態2のバナジウムイオン電池2によれば、実施形態1のバナジウムイオン電池2と同様と同様の効果が得られる。
【0052】
特に、本実施形態2のバナジウムイオン電池2では、セルフレームを使用しないシート積層型であるので、軽量になると共に、変形することが容易になる。例えば、図3に示す1セル基本構成の実施形態2のバナジウムイオン電池2を、図5(a)に示すように、プラスの電極となる炭素棒10を中心(芯)にしてその周りに、図3に示す本実施形態2のバナジウムイオン電池2の陽極電極11を内側にして丸めたり、さらには、図5(b)に示すように、プラスの電極となる炭素棒10を使用せずに、陽極電極11を他の陽極電解質部12や隔膜13、陰極電解質部14、陰極電極15より長めに形成しておいて、陽極電極11自体を中心(芯)にして内側に丸めて、陽極電極11を直接プラスの電極として使用して、既存の乾電池のように円筒状電池とすることも可能である。このようにすれば、さらに小型化することが可能となると共に、レドックスフロー電池を既存の充電式乾電池に置き換えることも可能となり、レドックスフロー電池の適用範囲が今まで以上に非常に拡大する。
【0053】
なお、上記実施の形態1,2の説明では、陽極電極、陽極電解質部、隔膜、陰極電解質部、陰極電極の特性ないしはパラメータを限定して説明したが、本発明では、これに限らない。つまり、本発明の主眼は、電解液の循環ポンプを必要としないレドックスフロー電池であるバナジウムイオン電池またはその構造を提供することが第1であり、電解液である既存のレドックスフロー電池で使用されているオキソ硫酸バナジウム(VOSO)液等の電解液を使用して、陽極電極、陽極電解質部、隔膜、陰極電解質部、陰極電極という電解液の循環ポンプを必要としない構造のレドックスフロー電池であるバナジウムイオン電池またはその構造を提供することができれば、それらでも勿論よい。
【符号の説明】
【0054】
1,2 バナジウムイオン電池
11 陽極電極
12 陽極電解質部
13 隔膜
14 陰極電解質部
15 陰極電極
121 陽極セルフレーム
141 陰極セルフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陽極電極と、
オキソ硫酸バナジウム(VOSO)を電解した陽極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし固めた陽極電解質部と、
オキソ硫酸バナジウム(VOSO)を電解した陰極電解液を、高通電性を有する炭素粉末に混練してペースト状にし固めた陰極電解質部と、
前記陽極電解質部と前記陰極電解質部との間に設けられ、選択的に水素イオン(H)を透過する耐酸性の隔膜と、
耐酸性金属または耐酸皮膜を施した金属、もしくは導電性で非液透過性を有する炭素シートからなる陰極電極と、
を有することを特徴とするバナジウムイオン電池。
【請求項2】
請求項1記載のバナジウムイオン電池において、
前記陽極電極および前記陰極電極は、
電気抵抗が1[Ω]以下であり、かつ、その厚さが0.1〜0.5[mm]である、
ことを特徴とするバナジウムイオン電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のバナジウムイオン電池において、
請求項1記載のバナジウムイオン電池において、
前記陽極電解液のORP(酸化還元電位)値は、1000〜1200[mV]であり、400メッシュ以上の炭素粉末である一方、
前記陰極電解液のORP(酸化還元電位)値は、(−)250〜(−)350[mV]である、
ことを特徴とするバナジウムイオン電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載のバナジウムイオン電池において、
前記隔膜は、
陽イオンを選択的に透過させる耐酸性の隔膜で、その厚さが0.1〜0.5[mm]である、
ことを特徴とするバナジウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一の請求項に記載のバナジウムイオン電池において、
前記陽極電解質部と前記陰極電解質部の周囲を、
1.0〜5.0[mm]厚のセルフレームにより囲み補強し、
前記陽極電極と、前記陽極電解質部を有する陽極側セルフレームと、前記隔膜と、前記陰極電解質部を有する陰極側セルフレームと、前記陰極電極とを積層したフレーム積層型に構成した、
ことを特徴とするバナジウムイオン電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一の請求項に記載のバナジウムイオン電池において、
前記陽極電解質部を中心に丸めことにより円筒状電池とした、
ことを特徴とするバナジウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−54035(P2012−54035A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194228(P2010−194228)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(510235268)
【Fターム(参考)】