説明

バリア層を含む多層構造物および流体を搬送するためのそれらの使用

本発明は、燃料を搬送するために特に適している多層構造物の分野に関する。前記多層構造物が、a)1つまたは複数の半芳香族コポリアミドを含むポリアミド組成物から製造されたポリアミド層とb)エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)から製造されたバリア層とを含み、前記ポリアミド層が前記バリア層に直接に付着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド層とバリア層とを含む多層構造物の分野に関し、より詳しくは、燃料を搬送するために特に適している多層構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料から製造された中空構造物は、例えば、建築工業において給水管、ラジエータパイプまたは床暖房パイプのためにまたは多くの異なった流体または液体媒体を搬送するための自動車用導管においてなど、様々な用途において公知であり、熱的、機械的および耐薬品性質などの性質のバランスを示すことが望ましい。例えば自動車工業において、特に、熱可塑性材料から製造されて流体を搬送するために使用される構造物について、このような構造物(パイプ、ダクト、導管、チューブ、チュービング等)は搬送されている流体に対して良い機械的性質、可撓性、不透過性および耐薬品性を示すことが望ましい。
【0003】
このような構造物は容易に設置および使用できるように可撓性である必要があり、しばしば、ねじれなしに固定位置に既に設置された構成部品を接続するために、曲線および屈曲状態に造形されなければならない。
【0004】
このような構造物は、それらが離層を起こさず、および/または搬送されている流体が漏れないように搬送されている流体の耐透過性を有する必要がある。
【0005】
ポリアミドはホースまたはパイプに使用するために望ましい材料であり、良い耐薬品性、良い物理的性質を有し、様々な直径を有する中空構造物に形成され得ると共に多層構造物に組み込み可能であるのが便利である。長鎖ポリアミド、特にポリアミド12およびポリアミド11は、それらの機械的強度および靭性、それらの高い耐熱性および塩および他の環境要因に対する耐薬品性のために、中空構造物において一般に使用される。しかしながら、ポリアミド11およびポリアミド12は、ガソリン、含酸素およびアルコール含有ガソリンおよびディーゼルなどの自動車燃料に対して十分な不透過性を提供しない。このような不十分なバリア性質は、使用時におよび経時的に構造物の劣化をもたらし、含有された燃料の望ましくない損失につながる。
【0006】
このような問題を克服するために多層構造物が開発されている。このような構造物の層はしばしば、異なった材料を含み、異なった材料を構造物中の最も適切な位置に置くことによって特定の性能基準を満たす。例えば、ポリアミド11またはポリアミド12から製造された外層とバリア層とを含む多層構造物が開発されている。フルオロポリマーがバリア層として使用されてもよいが、それらは高価である。燃料、無極性溶剤、極性溶剤および酸素に対するその不透過性のために、エチレンビニルアルコール(EVOH)が非常に有効なバリア層として使用されている。
【0007】
ドイツ特許第4001126号明細書には、ポリアミド11およびポリアミド12から製造された外層、EVOHから製造されたバリア層およびポリアミド6から製造された内層を含む自動車パイプラインが開示されている。一切の定着剤を用いずにポリアミド6がEVOHに付着されている間、EVOHはポリアミド11およびポリアミド12と不相溶性である。この理由のために、無水マレイン酸官能化ポリエチレンまたはポリプロピレンから製造された接着促進層(タイ層とも呼ばれる)が必要とされ、外層とバリア層との間で使用される。
【0008】
上述のように、EVOHに対するその高い接着性のために、ポリアミド6は、EVOHから製造されたバリア層を含む多層構造物の外層として使用されるが、しかしながら、ポリアミド6は、塩化亜鉛などの塩と接触する場合に応力亀裂のその受けやすさのために自動車用途において使用されるのは適さないと考えられる。
【0009】
残念なことに、流体(例えばガスまたは液体)、特に燃料を搬送するために使用される既存の技術は、ポリアミドから製造された外層とバリア層との間に少なくとも1つのタイ層が存在することを必要とする。このようなタイ層の使用は、多層構造物の製造プロセス全体の複雑さおよびコストを増加させ、また、官能化ポリオレフィンから製造されたタイ層は低い耐熱性を有するので、構造物の熱安定性を低下させる。
【0010】
流体、特に燃料を搬送するための、EVOHから製造されたバリア層に直接に付着されたポリアミド層を含む多層構造物が必要とされており、それは、可撓性、搬送されている流体に対する不透過性およびタイ層を使用しない、ポリアミド層とEVOH層との間の十分な接着性に関する性質の良いバランスを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
A)ポリアミド組成物から製造されたポリアミド層と、
B)エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)から製造されたバリア層とを含む多層構造物が開示され、
ポリアミド層がバリア層に直接に付着され、
ポリアミド組成物が、
a)
i)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
ii)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜20個の炭素原子を有する芳香族ジアミン、または
iii)7〜20個の炭素原子を有する芳香族アミノカルボン酸から選択されたグループAのモノマーと、
b)
iv)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
v)4〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/または脂肪族アミノカルボン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドから選択された1つまたは複数の半芳香族コポリアミドを含み、
グループAのモノマーが、コポリアミドに基づいて大体10モルパーセント〜大体40モルパーセントの量において存在し、グループBのモノマーが、コポリアミドに基づいて大体60モルパーセント〜大体90モルパーセントの量において存在する。
【0012】
流体、特に燃料を搬送するための上述の多層構造物の使用が本明細書にさらに記載される。
【0013】
流体、特に燃料を搬送するための方法が本明細書にさらに記載され、前記方法は、燃料を上述の多層構造物を通過させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
明細書全体にわたって使用されるとき、語句「約(about)」および「大体(at or about)」は、量、サイズ、調合、パラメーター、および他の分量および特性が厳密ではなくまた厳密である必要がなく、必要に応じておおよそ、および/またはより大きいかもしくはより小さくてもよいことを意味し、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差等、および当業者に公知の他の係数を反映してもよいことを意図する。一般的には、量、サイズ、調合、パラメーターまたは他の分量または特性は、このようなものであると明白に言明されるかどうかにかかわらず、「約」または「おおよそ(approximate)」である。
【0015】
用語「パイプ」、「ダクト」、「導管」、「チューブ」および「チュービング」は、中空体、すなわち、流体を搬送するために使用される空のまたは凹形の内部部分を有する一切の構造物を示すために交換可能に使用される。
【0016】
用語「流体」は、流動してその容器の輪郭に適合する物質を指し、流体は液体またはガスでありうる。
【0017】
層に用いられるとき、「直接に付着された」は、タイ層、接着剤層、または接着促進層のいずれも介在させずに、層の1つが別の層へ接着することを指す。
【0018】
多層構造物に用いられるとき、「バリア」および「バリア層」は、構造物または層が流体(例えばガスまたは液体)に対するバリアとして役立ちうることを指す。
【0019】
本発明による多層構造物はポリアミド層とバリア層とを含み、2つの層は互いに直接に付着される。
【0020】
「EVOH」はエチレンビニルアルコールコポリマーを指す。好ましくは、本発明による多層構造物において使用されたEVOHは、大体15モルパーセント〜大体60モルパーセント、より好ましくは大体20モルパーセント〜大体50モルパーセントおよびさらにより好ましくは大体20モルパーセント〜大体35モルパーセントのエチレン含有量を有する。本発明による多層構造物において使用するために適したEVOHポリマーは、株式会社クラレから商標EVAL(登録商標)樹脂としてまたは日本合成化学工業株式会社から商標SOARNOL(登録商標)として入手可能である。
【0021】
本明細書に記載されたポリアミド組成物に含まれる1つまたは複数の半芳香族コポリアミドは、
a)
i)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
ii)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜20個の炭素原子を有する芳香族ジアミン、または
iii)7〜20個の炭素原子を有する芳香族アミノカルボン酸から選択されたグループAのモノマーと、
b)
iv)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
v)4〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/または脂肪族アミノカルボン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドから選択され、そこにおいてグループAのモノマーは、コポリアミドに基づいて大体10モルパーセント〜大体40モルパーセント、好ましくは大体15モルパーセント〜大体35モルパーセントの量において存在し、グループBのモノマーは、コポリアミドに基づいて大体60モルパーセント〜大体90モルパーセント、好ましくは大体65モルパーセント〜大体85モルパーセントの量において存在する。
【0022】
適した8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ジフェン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸などがあり、1,5−ナフタレン(nathphalene)ジカルボン酸、2,6−ナフタレン(nathphalene)ジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましい。
【0023】
適した6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸には、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、デカン二酸(C10)、ウンデカン二酸(C11)、ドデカン二酸(C12)、トリデカン二酸(C13)、テトラデカン二酸(C14)、およびペンタデカン二酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、オクタデカン酸(C18)およびエイコサン酸(C20)などがある。
【0024】
適した4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、およびビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンなどが含まれる。
【0025】
6〜20個の炭素原子を有する適した芳香族ジアミンには、m−キシリレンジアミンおよびp−キシリレンジアミンなどがある。
【0026】
7〜20個の炭素原子を有する適した芳香族アミノカルボン酸には、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、アントラニル酸6−アミノ−2−ナフトエ酸などがある。
【0027】
適したラクタムにはカプロラクタムおよびラウロラクタムなどがある。
【0028】
適した脂肪族アミノカルボン酸にはアミノデカン酸などがある。
【0029】
好ましくは、本明細書に記載されたポリアミド組成物に含まれる1つまたは複数の半芳香族コポリアミドは、a)テレフタル酸および/またはイソフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループAのモノマーと、(b)アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミン、デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ウンデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、トリデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、テトラデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、カプロラクタム、ラウロラクタム、および11−アミノウンデカン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドから選択される。
【0030】
好ましくは、本明細書に記載されたポリアミド組成物に含まれる1つまたは複数の半芳香族コポリアミドは、a)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループAのモノマーと、(b)アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミン、デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ウンデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、トリデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、テトラデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、カプロラクタム、ラウロラクタム、および11−アミノウンデカン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドのグループから選択される。
【0031】
さらにより好ましくは、本明細書に記載されたポリアミド組成物に含まれる1つまたは複数の半芳香族コポリアミドは、a)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループAのモノマーと、(b)デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、およびドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミド、すなわちポリ(ヘキサメチレンデカンジアミン/ヘキサメチレンテレフタルアミド)およびポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミン/ヘキサメチレンテレフタルアミド)から選択される。
【0032】
本明細書に記載されたコポリアミドは、当業者に公知の任意の手段、例えば、オートクレーブを使用する回分法においてまたは連続法を使用して調製されてもよい。例えば、Kohan,M.I.編、Nylon Plastics Handbook,Hanser: Munich、1995年、13〜32ページを参照のこと。一般に、モノマーを反応させて、連結されたモノマーのランダム鎖を形成する。
【0033】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、1つまたは複数の官能化ポリオレフィンをさらに含んでもよい。1つまたは複数の官能化ポリオレフィンは単独でまたは以下に記載された1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンと組合せて用いられてもよい。用語「官能化ポリオレフィン」はアルキルカルボキシル置換ポリオレフィンを指し、それは、ポリオレフィン主鎖それ自体または側鎖のどちらかにそれに結合したカルボキシル部分を有するポリオレフィンである。用語「カルボキシル部分」は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物およびカルボン酸塩などのカルボキシル基を指す。
【0034】
官能化ポリオレフィンは、直接合成によるかまたはグラフト化によって調製されてもよい。直接合成の例は、エチレンおよび/または少なくとも1つのアルファ−オレフィンとカルボキシル部分を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーとの重合である。グラフト化法の例は、少なくとも1つのカルボキシル部分を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーをポリオレフィン主鎖に付加することである。少なくとも1つのカルボキシル部分を有するエチレン性不飽和モノマーは、例えば、モノ−、ジ−、またはポリカルボン酸および/またはエステル、無水物、塩、アミド、イミド等のそれらの誘導体であってもよい。適したエチレン性不飽和モノマーには、メタクリル酸、アクリル酸、エタクリル酸、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチルマレエート、モノエチルマレエート、ジ−n−ブチルマレエート、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸一ナトリウムおよびマレイン酸二ナトリウム、アクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、これらのジカルボン酸のモノエステル、ドデセニルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−無水物、ナド酸無水物(3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物)、ナド酸メチル無水物等がある。ポリオレフィンはポリアミドと不相溶性であるので、ポリアミドポリマーの酸またはアミン末端と反応しうる官能基でそれらを改質することが必要である。無水物とアミンとの反応は非常に速いという事実のために、無水物は好ましいグラフト化剤であり、より好ましくは無水マレイン酸が選択される。
【0035】
好ましくは、1つまたは複数の官能化ポリオレフィンは1つまたは複数のグラフト化ポリオレフィンである。グラフト化剤、すなわち少なくとも1つのカルボキシル部分を有する少なくとも1つのモノマーは好ましくは、1つまたは複数の官能化ポリオレフィン中に大体0.05〜大体6重量パーセント、好ましくは大体0.1〜大体2.0重量パーセントの量において存在し、重量パーセントは、1つまたは複数の官能化ポリオレフィンの全重量に基づいている。
【0036】
グラフト化ポリオレフィンは好ましくは、少なくとも1つのカルボキシル部分を有する少なくとも1つのモノマーをポリオレフィン、エチレンアルファ−オレフィンまたは少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導されたコポリマーにグラフトすることによって誘導される。好ましくは、本明細書に記載されたポリアミド組成物は、グラフト化ポリエチレン、グラフト化ポリプロピレン、グラフト化エチレンアルファ−オレフィンコポリマー、少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導されたグラフト化コポリマーおよびそれらの混合物から選択されたグラフト化ポリオレフィンを含む。より好ましくは、本明細書に記載されたポリアミド組成物は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト化エチレンアルファ−オレフィンコポリマー、少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導された無水マレイン酸グラフト化コポリマーおよびそれらの混合物から選択された無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンを含む。
【0037】
無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン(MAH−g−PE)を調製するために用いられたポリエチレンは、HDPE(0.94g/cm3より高い密度)、LLDPE(0.915〜0.925g/cm3の密度)またはLDPE(0.91〜0.94g/cm3の密度)から選択された一般に入手可能なポリエチレン樹脂である。無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)を調製するために用いられたポリプロピレンは、一般に入手可能なコポリマーまたはホモポリマーポリプロピレン樹脂である。
【0038】
エチレンアルファ−オレフィンコポリマーは、エチレンおよび1つまたは複数のアルファ−オレフィンを含み、好ましくは1つまたは複数のアルファ−オレフィンは、3〜12個の炭素原子を有する。アルファ−オレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン−1、4−メチル1−ペンテン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセンおよびドデセンなどが含まれるがそれらに限定されない。好ましくはエチレンアルファ−オレフィンコポリマーはエチレンを大体20〜大体96重量パーセント、より好ましくは大体25〜大体85重量パーセントで含み、1つまたは複数のアルファ−オレフィンを大体4〜大体80重量パーセント、より好ましくは大体15〜大体75重量パーセントで含み、重量パーセントはエチレンアルファ−オレフィンコポリマーの全重量に基づいている。好ましいエチレンアルファ−オレフィンコポリマーはエチレン−プロピレンコポリマーおよびエチレン−オクテンコポリマーである。
【0039】
少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導されたコポリマーは、好ましくは3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンから誘導されるのが好ましい。少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導された好ましいコポリマーは、エチレンプロピレンジエンエラストマーである。用語「エチレンプロピレンジエンエラストマー(EPDM)」は、エチレンと、少なくとも1つのアルファ−オレフィンと、共重合性非共役ジエン、例えばノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタエジン、1,4−ヘキサジエン等とのターポリマーである任意のエラストマーを指す。官能化エチレンプロピレンジエンエラストマーが、本明細書に記載されたポリアミド組成物において使用されるとき、エチレンプロピレンジエンポリマーは好ましくは、大体50〜大体80重量パーセントのエチレン、大体10〜大体50重量パーセントのプロピレンおよび大体0.5〜大体10重量パーセントの少なくとも1つのジエンを含み、重量パーセントはエチレンプロピレンジエンエラストマーの全重量に基づいている。
【0040】
1つまたは複数の官能化ポリオレフィンは、存在しているとき、本明細書に記載されたポリアミド組成物中に好ましくは大体5〜大体40重量パーセントおよびより好ましくは大体10〜大体30重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。
【0041】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンをさらに含んでもよい。1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンは単独でまたは上述の1つまたは複数の官能化ポリオレフィンと組合せて使用されてもよい。好ましくは、1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンは上述の1つまたは複数の官能化ポリオレフィンと組合せて使用される。好ましくは、1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンは、非官能化ポリエチレン、非官能化ポリプロピレン、上述したような非官能化エチレンアルファ−オレフィンコポリマー、上述したような非官能化エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)およびそれらの混合物から選択される。1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンは、存在しているとき、本明細書に記載されたポリアミド組成物中に好ましくは大体5〜大体40重量パーセントおよびより好ましくは大体10〜大体30重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。
【0042】
本明細書に記載された樹脂組成物は、1つまたは複数のイオノマーをさらに含んでもよい。イオノマーは、例えば、エチレンなどのオレフィンと部分的に中和された(10〜99.9%)アルファ,ベータ−不飽和C3〜C8カルボン酸とのイオン性コポリマーなどのポリマーの有機主鎖の他に金属イオンを含有する熱可塑性樹脂である。好ましいアルファ,ベータ−不飽和C3〜C8カルボン酸は、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)またはマレイン酸モノエチルエステル(MAME)である。中和剤は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属またはマンガンまたは亜鉛のような遷移金属である。1つまたは複数のイオノマーは、存在しているとき、本明細書に記載されたポリアミド組成物中に好ましくは大体5〜大体40重量パーセントおよびより好ましくは大体10〜大体30重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。本発明において使用するために適したイオノマーは、商標Surlyn(登録商標)としてE. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から市販されている。
【0043】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、1つまたは複数の可塑剤をさらに含んでもよい。好ましくは、1つまたは複数の可塑剤は、スルホンアミド、ヒドロキシ安息香酸のエステル、テトラヒドロフルフリルアルコールエステルまたはエーテル、クエン酸のエスエルまたはヒドロキシマロン酸のエステルおよびそれらの混合物から選択される。可塑剤の例には、限定しないが、スルホンアミド、ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えばエチルp−ヒドロキシベンゾエート、2−エチルヘキシルパラ−ヒドロキシベンゾエート、オクチルp−ヒドロキシベンゾエート、2−デシルヘキシルパラ−ヒドロキシベンゾエートまたはイソヘキサデシルp−ヒドロキシベンゾエート、テトラヒドロフルフリルアルコールエステルまたはエーテル、例えばオリゴエトキシ化テトラヒドロフルフリルアルコール、クエン酸のエスエルまたはヒドロキシマロン酸のエステル、例えばオリゴエトキシ化マロネートなどがある。また、デシルヘキシルパラ−ヒドロキシベンゾエートおよびエチルヘキシルパラ−ヒドロキシベンゾエートにも言及されてもよい。好ましくは、1つまたは複数の可塑剤は、スルホンアミドおよびより好ましくは芳香族スルホンアミド、例えばベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスルホンアミドである。適した芳香族スルホンアミドの例には、N−アルキルベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスホンアミド(sufonamides)、例えばN−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド、N−n−オクチルトルエンスルホンアミド、N−2−エチルヘキシルベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等がある。好ましい芳香族スルホンアミドは、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、およびN−エチル−p−トルエンスルホンアミドであり、N−ブチルベンゼンスルホンアミドが特に好ましい。1つまたは複数の可塑剤は、存在しているとき、本明細書に記載されたポリアミド組成物中に好ましくは大体1〜大体20重量パーセントおよびより好ましくは大体5〜大体15重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。可塑剤は、ポリマーを可塑剤と、任意選択により、他の成分と、または重合の間に溶融ブレンドすることによってポリアミド組成物中に混入されてもよい。可塑剤が重合の間に混入される場合、ポリアミドモノマーは重合サイクルを開始する前に1つまたは複数の可塑剤とブレンドされ、ブレンドが重合反応器に導入される。あるいは、可塑剤を重合サイクルの間に反応器に添加することができる。
【0044】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、1つまたは複数の熱安定剤をさらに含んでもよい。好ましくは、1つまたは複数の熱安定剤は、例えば銅ハロゲン化物または銅酢酸塩などの銅塩および/または銅塩誘導体、二価マンガン塩および/またはそれらの誘導体およびそれらの混合物から選択される。好ましくは、銅塩は、ハロゲン化物化合物および/またはリン化合物と組合せて使用され、より好ましくは銅塩は、ヨウ化物または臭化物化合物、およびさらにより好ましくは、ヨウ化カリウムまたは臭化カリウムと組合せて使用される。1つまたは複数の熱安定剤は、存在しているとき本明細書に記載されたポリアミド組成物中に、好ましくは約0.1〜約3重量パーセントおよび好ましくは大体0.1〜大体1重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。
【0045】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、1つまたは複数の酸化防止剤をさらに含んでもよく、例えばリン安定剤(例えばホスフェートまたはホスホニト安定剤)、ヒンダードフェノール安定剤、ヒンダードアミン安定剤、芳香族アミン安定剤、チオエステルの他、高温が適用される場合にポリマーの熱誘導酸化を妨げるフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。好ましくは、1つまたは複数の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール安定剤、ヒンダードアミン安定剤、リン酸化防止剤およびそれらの混合物から選択される。1つまたは複数の酸化防止剤は、存在しているとき、本明細書に記載されたポリアミド組成物中に好ましくは大体0.1〜大体3重量パーセントおよび好ましくは大体0.1〜大体1重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージはポリアミド組成物の全重量に基づいている。
【0046】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は、改質剤および他の成分、例えば、限定しないが、潤滑剤および離型剤(ステアリン酸、ステアリルアルコールおよびステアルアミド等)、難燃剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料、カーボンブラック等)、成核剤およびポリマー配合技術において公知の他の加工助剤をさらに含んでもよい。
【0047】
ポリアミド組成物は、充填剤および補強剤、例えば無機充填剤、ガラス繊維、ナノ微粒子の他、電気導電率を与えるかまたは使用中に構造物中に発生する場合がある静電荷を放電する能力を与える導電性充填剤、例えばカーボンブラックまたは炭素繊維、金属繊維および金属被覆繊維をさらに含んでもよい。
【0048】
上述の改質剤および他の成分は、ポリアミド組成物中に本技術分野に公知の量および形態で、例えば粒子の寸法の少なくとも1つが1〜1000nmの範囲であるいわゆるナノ材料の形態で存在してもよい。
【0049】
本明細書に記載されたポリアミド組成物は好ましくは、溶融混合されたブレンドであり、そこにおいてポリマー成分の全てが互いの中に十分に分散され、非ポリマー成分の全てがポリマー母材中に十分に分散され、結合され、その結果、ブレンドが統一された全体を形成する。任意の溶融混合方法を用いて、本発明のポリマー成分および非ポリマー成分を配合してもよい。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分を例えば一軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、一軸または二軸スクリューニーダー、またはバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに単一工程の添加によってすべて同時に、または段階的のどちらかで添加し、次いで溶融混合してもよい。ポリマー成分および非ポリマー成分を段階的に添加するとき、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部を最初に添加して溶融混合し、残りのポリマー成分および非ポリマー成分を次いで添加して、十分に混合された組成物が得られるまでさらに溶融混合する。
【0050】
本発明による多層構造物は、タイ層を必要としないポリアミド層とバリア層との間の十分な接着性、可撓性と、良いバリア性と良い機械的性質との良い組み合わせを示し、多層構造物が流体と接触し、より詳しくはガソリン、含酸素およびアルコール含有ガソリンおよびディーゼルなどの自動車燃料と接触する用途において特に適している。本発明による多層構造物は、多層フィルム、多層シート、多層中空体または多層容器の形態を有することができる。好ましくは、本発明による多層構造物は中空体の形態を有し、より好ましくは、ホース、パイプ、ダクト、チューブ、チュービングまたは導管の形態を有し、好ましくはEVOHから製造されたバリア層をポリアミド層の内側に有する。
【0051】
上述の利点のために、中空体の形態を有する多層構造物は、流体、特に燃料およびより詳しくは自動車燃料を搬送することを必要とする用途において使用するために特に適している。燃料の例は、ガソリン、含酸素およびアルコール含有ガソリンおよびディーゼルなどの自動車燃料である。
【0052】
多くの用途について本明細書に記載された中空体の形態を有する多層構造物は横断面が円形でありうるが、楕円または他の円形でない形状を含めて他の形状もまた、考えられる。本発明の多層構造物の壁は平滑であってもよく、または平滑な領域が割り込む波形領域(以下、「部分的に波形の多層構造物」と呼ばれる)を含んでもよく、もしくはその長さに沿ってすべて波形でありうる(以下、「連続的に波形の多層構造物」と呼ばれる)。本発明による連続的または部分的に波形の多層構造物は、自動車および他の車のアンダーフード領域において利用可能な空間などの制限された空間内の構造物の複雑なルーチングを可能にする。
【0053】
本発明による多層構造物は同時押出、吹込成形または射出成形などの任意の溶融押出法によって製造されてもよく、同時押出が好ましい。多層同時押出法において、別個の押出機を用いて、個々のタイプのポリマー組成物を押出す。押出機のための温度設定および他の加工条件は、押し出される組成物に適切であるように定められる。これは、より高温溶融のポリマー組成物を適した温度において押出すことを可能にしながら、押出工程の間により低温溶融のポリマー組成物を通常の加工温度よりも高い温度に暴露しなければならないことを回避する。押出ストリームからの個々の溶融物は好適に設計されたダイ内で一緒に組み合わせられ、所望の多層配列に配置される。同時押出法の例には異形押出および波形押出などがある。異形押出および波形押出は、中空プラスチック体を任意の長い全長に製造するために使用された従来の技術である。異形押出および波形押出の間、組成物は、高温成形可能な状態において押出ヘッドのピンとダイとの間の間隙を通して押出される。「異形押出」とは、長い全長にわたって同じ横断面を有する中空品を製造するために使用された技術を意味する。ピンおよびダイは、所望の横断面を生じるように造形され、例えば同心円状のピンとダイとの間の環状ダイ間隙を用いてチューブおよびパイプを製造する。集成ダイを出た後、溶融体をエアギャップを通してより薄い横断面に延伸してもよい。次に、溶融体を冷却し、その形状を維持する。「波形押出」とは、平滑な領域が割り込んでもよい波形領域を含む中空品を製造するために使用された技術を意味する。この場合、ピンおよびダイは装置の型ブロックの2つの半割内に置かれる。押出ヘッドから出る溶融材料が型ブロックに達するとき、それは、熱気または真空膨張のどちらかによって型キャビティの表面に接して型物品の形状に延伸される。このような方法は例えば米国特許第6,764,627号明細書および米国特許第,319,872号明細書および国際出願国際公開第03/055664号パンフレットに記載されている。
【0054】
多層構造物の全厚さは、最終用途に応じて選択されてもよい。本発明による多層構造物のポリアミド層とバリア層との厚さの比は、例えば可撓性、機械的性質、および/またはバリア性などの機能的な要求条件を最適なコストにおいて満たすように決定される。本発明の多層構造物のポリアミド層は、大体50〜大体95パーセント、好ましくは大体50〜大体パーセント80%の範囲の壁厚さを有し、バリア層は、大体5〜大体50パーセント、好ましくは大体20〜大体50パーセントの範囲の壁厚さを有することが好ましく、パーセンテージは、多層構造物の全壁厚さに基づいている。
【0055】
本発明による多層構造物は、1つまたは複数の付加的な層をさらに含んでもよい。付加的な層の例には、導電性ポリマーの層、製造廃棄物から回収されるかまたは再利用される粉砕再生材料の層、および多数のバリア層などがある。EVOHから製造されたバリア層は、(含有された流体と直接に接触する)最内側層を形成してもよく、または多層構造物は、他の最内側層をさらに含んでもよい。本明細書に記載されたポリアミド層は、(環境と直接に接触する)最外側層を形成してもよく、または多層構造物が他の最外側層を含んでもよい。
【0056】
他の最内側層の例には、限定しないが、上述の半芳香族コポリアミドを含むポリアミド材料、PA6、PA66などのポリアミド材料およびPBTおよびTEEなどのポリエステルなどがあり、静電荷散逸のためにさらに改質されてもよい。
【0057】
他の最外側層の例には、エラストマー層、機能層および/またはそれらの組合せなどが含まれる。好ましいエラストマー材料は、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、塩素化ポリエチレン、アクリレートゴム、水素化ブタジエンアクリロニトリルゴム(HNBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、可塑化PVCおよびそれらの混合物から選択される。
【0058】
機能層には、編組、強化層、熱シールドおよびより軟質な被覆層などが含まれるがそれらに限定されない。編組の例は、ポリアミド、アラミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)または金属フィラメントを有するフィラメント編組およびこれらの材料の織布であってもよい。熱シールドの例は、アルミニウム箔などの金属箔であってもよい。より軟質な被覆層の例は、ゴムからまたは熱可塑性エラストマーから)製造された層であってもよい)。
【0059】
1つの態様において、本発明は、流体、好ましくは燃料を搬送するための本明細書に記載された多層構造物の使用に関する。
【0060】
別の態様において、本発明は、流体、好ましくは燃料を本明細書に記載された多層構造物を通過させる工程を含む、流体、好ましくは燃料を搬送するための方法に関する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本明細書に記載された組成物、使用および方法についてのより詳細な内容を提供する。
【0062】
以下の材料が本発明および比較例の多層構造物を作製するために使用された。
【0063】
材料
EVOH:約32モルパーセントのエチレン含有量を有するエチレンビニルアルコールコポリマーであり、クラレ株式会社.によって名称EVAL(登録商標)F171214として供給されている。
【0064】
ポリアミドPA612/6T1:A)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンからなるグループAのモノマーと、b)ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミンからなるグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドであり、グループAのモノマーが25モルパーセントの量において存在し、グループBのモノマーが75モルパーセントの量において存在し、モルパーセントがコポリアミドに基づいている。
【0065】
ポリアミドPA612/6T2:A)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンからなるグループAのモノマーと、b)ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミンからなるグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドであり、グループAのモノマーが30モルパーセントの量において存在し、グループBのモノマーが70モルパーセントの量において存在し、モルパーセントがコポリアミドに基づいている。
【0066】
ポリアミドPA12:EMS(Sumter,SC,USA)によって商品名Grilamid L25FVS40として供給された可塑化PA12。
【0067】
ポリアミドPA612:E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware,USA)によって商品名Zytel(登録商標)として供給された。
【0068】
MAH−g−エチレンオクテンコポリマー:72重量パーセントのエチレン、28重量パーセントのオクテンおよび約0.6重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を含むエチレンオクテンコポリマー。
【0069】
エチレン−オクテンポリマー:Dow Chemicalsから名称EngageTMとして供給された、72重量パーセントのエチレン、28重量パーセントのオクテンを含むポリマー。
【0070】
MAH−g−EPDM1:70重量パーセントのエチレンおよび0.5重量パーセントのノルボルネンおよび約0.9重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を含む、エチレン、プロピレンおよびノルボルネンのターポリマー。
【0071】
MAH−g−EPDM2:70重量パーセントのエチレンおよび0.5重量パーセントのノルボルネンおよび約0.4重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を含む、エチレン、プロピレンおよびノルボルネンのターポリマー。
【0072】
LLDPE:Borealisによって供給された、0.919g/cm3の密度および190℃において1.2g/10分のMFRを有するLLDPE。
【0073】
官能化LLDPE:0.918g/cm3の密度および190℃において2g/10分のMFRを有するMAH−グラフト化LLDPE。
【0074】
可塑剤:Unitex Chemical Corportation(Greensboro,NC,USA)によって名称Uniplex214として供給されたN−ブチルベンゼンスルホンアミド。
【0075】
酸化防止剤1:Chemtura Corporation(Middlebury,Conn.,USA)によって商品名Naugard(登録商標)445として供給された4.4’−ビス(a.a−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン。
【0076】
酸化防止剤2:Akron Chemicals(Akron,Ohio,USA)によって酸化防止剤383−SWPという名称で供給された4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)]。
【0077】
酸化防止剤3:Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York,USA)によって商品名Irgafox(登録商標)168として供給されたトリス(2,4−ditert−ブチルフェニル)ホスフィット。
【0078】
熱安定剤:7:1:1比のヨウ化カリウム、ヨウ化銅およびジステアリン酸アルミニウムの混合物。
【0079】
カーボンブラックマスターバッチ:エチレンメチルアクリル酸樹脂中に45重量パーセントのカーボンブラックを含むマスターバッチ。
【0080】
組成物の配合。実施例E1、E2、E3およびE4および比較例C3およびC4の組成物を調製するために、表1に示された成分を約260℃および約15kg/hの処理量において運転するZSK25mm二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドした。比較例C1およびC2の組成物およびEVOH樹脂は、それらの供給元から入手可能なままで使用された。表1に示された成分の分量は、ポリアミド組成物の全重量に基づいた重量パーセントで示されている。配合された混合物をレースまたはストランドの形態で押出し、水槽中で冷却し、粒体に細断し、湿分の吸収を防ぐために密封されたアルミニウムで裏打ちされたバッグ内に置いた。さらなる使用の前に、除湿された乾燥機内で全ての材料を70℃において一晩乾燥させた。
【0081】
試験片の作製。二層構造物を同時押出法によって製造した。壁厚さは公称で25パーセントの内側層材料および75パーセントの外側層材料からなった(全厚さ:0.65mm)。
【0082】
押出装置は、三層チューブダイに接続された3つの個別の一軸スクリュー押出機からなった。Polysystemsから入手可能な30mmの単一スクリューを有する押出機およびRandcastleから入手可能な15mmの単一スクリューを有する押出機の両方を多層構造物の外側層のポリアミド材料を供給するために使用した。Bramagから入手可能な25mmの単一スクリューを内側層の(「材料」の欄に記載された)EVOH材料を供給するために使用した。押出ラインは、14mm(0.55インチ)のダイ本体および11.4mm(0.45インチ)のピンを有するダイを提供された。ライン速度は、5.5〜6m/分(18〜20ft/分)の範囲であった。8.8mm(0.348インチ)のサイザーおよび330mmHg(13インチ)の真空を用いて押出チューブを真空下で、必要な寸法にサイズを定めた。ポリアミド組成物を比較例1および2(C1およびC2)および実施例1および2(E1およびE2)の外側層のために用いられた組成物について210〜230℃の温度プロファイルにおいて押出し、実施例3および4(E3およびE4)の外側層のために用いられた組成物について210〜250℃、および比較例1〜4(C1〜C4)全ての内側層および実施例1〜4(E1〜E4)の内側層のために用いられたEVOHについて190〜225℃の温度プロファイルにおいて押出した。
【0083】
実施例の組成物(表において「E」と省略した)および比較例の組成物(表において「C」と省略した)を表1に記載する。
【0084】
測定
最初に、ポリアミド層とEVOHバリア層との間の接着を検査するために、矩形の細片を二層構造物から切り分け、層を引き離した。表1に示された「0」の値は、接着を示さないかまたは構造物を切り分けた時に2つの層が離れているという感触を与えた試験片に相当する。
【0085】
接着は、SAE J 2260規格に記載された手順と同様な手順に従って剥離強さの測定によって定量化された。125mm×6.25mmの大きさの長さ方向の矩形の細片をダイカッターを用いて二層構造物から切り分け、真直ぐな、平行でかつ欠陥のない端縁を有する試験片を得た。2つの層を手作業で引き離すことを容易にするために細片の一方の端部を尖った先端に切断した。層を37.5mmの長さに引き離し、Instron引張試験機内で把持されうるタブを提供した。初期の把持分離は25mmであった。次に、層を50mm/分の一定のクロスヘッド速度において125mmの全クロスヘッド変位まで剥離した。平均剥離力を12.5mm〜100mmの変位範囲において測定し、剥離強さを細片の単位幅当たりの力(N/mm)として計算した。5つの試験片から得られた剥離強さの平均値を表1に示した。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示されるように、(燃料を搬送するために使用された多層構造物において通常に使用されているポリアミドに相当する)PA12から製造されたポリアミド層を含む比較用の多層構造物(C1)は、ポリアミド層とEVOHバリア層との間の接着を示さなかった。別の脂肪族ポリアミド、すなわちPA612(C2)から製造されたポリアミド層を含む多層構造物について同様な不十分な性能が観察された。比較用の構造物C3およびC4のポリアミド層の組成物中に1つまたは複数の官能化ポリオレフィン(耐衝撃性改良剤)が存在することによってEVOHバリア層に対するポリアミド層の接着をわずかに改良したが、しかしながら、耐衝撃性改良PA612(C3およびC4)を含むこれらの多層構造物は、MAH−g−ポリオレフィンが23.6重量パーセントで存在するときでも容認できないほど不十分な接着を示すという難点があった。不十分な接着は、通常の使用条件下での多層構造物の劣化またはその離層をもたらし、機械的性質の低下につながる。
【0088】
対照的に、本発明による多層構造物、すなわち、半芳香族コポリアミドから製造されたポリアミド層とEVOHバリア層とを含む多層構造物は、層間の強い接着を示す。表1に示されたデータは、試料E1〜E4が、比較用の試料C1〜C4の場合よりも強いEVOHバリア層に対する接着を提供したことを示す。特に、本発明による多層構造物(E1〜E4)の層を剥離するためには1.2〜2.3N/mmの比較的高い力が必要とされるが、比較用の多層構造物(C1〜C4)の層を剥離するためには0〜0.6N/mmの比較的弱い力で十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリアミド組成物から製造されたポリアミド層と、
B)エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)から製造されたバリア層とを含む多層構造物であって、
ポリアミド層がバリア層に直接に付着され、
ポリアミド組成物が、
a)
i)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
ii)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および6〜20個の炭素原子を有する芳香族ジアミン、または
iii)7〜20個の炭素原子を有する芳香族アミノカルボン酸から選択されたグループAのモノマーと、
b)
iv)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、または
v)4〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/または脂肪族アミノカルボン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドから選択された1つまたは複数の半芳香族コポリアミドを含み、
グループAの前記モノマーが、前記コポリアミドに基づいて大体10モルパーセント〜大体40モルパーセントの量において存在し、グループBの前記モノマーが、前記コポリアミドに基づいて大体60モルパーセント〜大体90モルパーセントの量において存在する、多層構造物。
【請求項2】
前記1つまたは複数の半芳香族コポリアミドが、a)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループAのモノマーと、(b)アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミン、デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ウンデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、トリデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、テトラデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、カプロラクタム、ラウロラクタム、および11−アミノウンデカン酸から選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドから選択される、請求項1に記載の多層構造物。
【請求項3】
1つまたは複数の半芳香族が、a)テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループAのモノマーと、(b)デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン、およびドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミンから選択されたグループBのモノマーとから製造されたコポリアミドからである、請求項1に記載の多層構造物。
【請求項4】
前記ポリアミド組成物が、1つまたは複数の官能化ポリオレフィンをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項5】
前記1つまたは複数の官能化ポリオレフィンが、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト化エチレンアルファ−オレフィンコポリマー、少なくとも1つのアルファ−オレフィンとジエンとから誘導された無水マレイン酸グラフト化コポリマーおよびそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の多層構造物。
【請求項6】
前記1つまたは複数の官能化ポリオレフィンが大体10〜大体30重量パーセントの量において存在し、重量パーセンテージが前記ポリアミド組成物の全重量に基づいている、請求項4または5に記載の多層構造物。
【請求項7】
前記ポリアミド組成物が、非官能化ポリエチレン、非官能化ポリプロピレン、非官能化エチレンアルファ−オレフィンコポリマー、非官能化エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)およびそれらの混合物から選択された1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項8】
前記1つまたは複数の非官能化ポリオレフィンが大体10〜大体30重量パーセントにおいて存在し、重量パーセンテージが前記ポリアミド組成物の全重量に基づいている、請求項7に記載の多層構造物。
【請求項9】
前記ポリアミド組成物が、スルホンアミド、ヒドロキシ安息香酸のエステル、テトラヒドロフルフリルアルコールエステルまたはエーテル、クエン酸のエステルまたはヒドロキシマロン酸のエステルおよびそれらの混合物から選択された1つまたは複数の可塑剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項10】
中空体の形態である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項11】
前記中空体がホース、パイプ、ダクト、チューブ、チュービングまたは導管である、請求項10に記載の多層構造物。
【請求項12】
流体を搬送するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層構造物の,
、使用。
【請求項13】
前記流体が燃料である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記流体を請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層構造物を通過させる工程を含む、流体を搬送するための方法。
【請求項15】
前記流体が燃料である、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514212(P2013−514212A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544713(P2012−544713)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060299
【国際公開番号】WO2011/084423
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】