説明

バリア性積層体および太陽電池用保護シート

【課題】高温下および低温下で繰り返し交互に用いられても、ガスバリア性が劣化しにくいバリア性積層体を提供する。
【解決手段】ポリエステル基材フィルム2の表面に設けられた有機層3と、該有機層3の表面に設けられた無機層4が順次積層された構造を有し、有機層3がガラス転移温度40℃以上の高分子材料を主成分とするバリア性積層体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体及びこれを用いた太陽電池用保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池用保護シートが広く検討されている。例えば、特許文献1には、耐候性基材とプライマー層と蒸着層とを含む太陽電池用バックシートが開示されている。また、特許文献2には、耐候性および耐加水分解性を有する基材フィルムと、透明プライマー層と、無機化合物からなる蒸着層とを含む太陽電池用保護シートとが開示されている。さらに、特許文献3には、接着性コート剤を設けた基材フィルム上に、透明プライマー層と、無機化合物からなる蒸着層と、オーバーコート層を有する太陽電池用バックシートが開示されている。
このように、基材フィルムの上に、有機層と、無機層を連続して設けた構造を有する太陽電池用保護シートが知られている。しかしながら、太陽電池用保護シートは、高温下および低温下が交互に繰り返される環境下で用いられるため、ガスバリア性能の劣化が深刻である。すなわち、かかる環境下でのガスバリア性能の劣化の抑制が求められている。
加えて、太陽電池は環境保護の観点から利用されるため、環境にやさしい製造工程で製造できることが強く求められる。しかしながら、従来の太陽電池用保護シートは、透明プライマー層等の有機層を有機溶媒溶液を基材フィルム上に塗布することによって設けられるケースが多く、環境にやさしいものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38236号公報
【特許文献2】特開2008−227203号公報
【特許文献2】特開2009−10269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するものであって、高温下および低温下で繰り返し交互に用いられても、ガスバリア性が劣化しにくいバリア性積層体を提供することを目的とする。さらに、該バリア性積層体を用いた、高温下および低温下で繰り返し交互に用いられても、ガスバリア性が劣化しにくい太陽電池用保護シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者が検討したところ、安価に高性能の太陽電池用保護シートを作成するには、プラスチック基材フィルム/有機層/無機層の3層からなるバリア性積層体を有する太陽電池用保護シートが適切であることが分かった。そして、バリア層である、無機層の厚みを薄く(例えば、100nm以下)にすればさらに製品のコストダウンが図れる。しかしながら、無機層の厚みを薄くすれば太陽電池用保護シートのバリア性能に影響がでやすい。この点の改良するために、有機層の組成を代えることが考えられる。しかしながら、太陽電池は日中の高温と夜間の低温に繰り返し晒される。そこで、ヒートサイクルテスト(IEC61215/61646準拠)で耐久性を調べたところ、前述の3層積層構造のバリア性積層体を有する太陽電池用バックシートでは、有機層の組成のコントロールだけでは、充分な耐久性が得られず、ガスバリア性能が著しく劣化することが判った。そこで、本願発明者がさらに検討を行った結果、基材フィルムにポリエステルを用い、有機層の主成分をガラス転移温度40℃以上の高分子材料とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決するに至った。具体的には、以下の手段により達成された。
【0006】
(1)ポリエステル基材フィルムの表面に設けられた有機層と、該有機層の表面に設けられた無機層が順次積層された構造を有し、有機層がガラス転移温度40℃以上の高分子材料を主成分とするバリア性積層体。
(2)(1)に記載のバリア性積層体を有する太陽電池用保護シート。
(3)前記高分子材料がポリエステルである(2)に記載の太陽電池用保護シート。
(4)前記高分子材料が芳香族ポリエステルである(2)に記載の太陽電池用保護シート。
(5)ポリエステル基材フィルムが、芳香族ポリエステルを含む、(2)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(6)無機層が酸化珪素、酸化アルミニウムまたはその混合物を主成分とする、(2)〜(5)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(7)ポリエステル基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含む、(2)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(8)有機層の厚みが0.1〜3μmである、(2)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(9)無機層の厚みが30〜200nmである、(2)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(10)(2)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートであって、ポリエステル基材フィルム、有機層、無機層を該順に連続して有する第一のバリア性積層体と、高分子基材フィルム、有機層、無機層を該順に連続して有する第二のバリア性積層体とが、無機層同士が対向するように配置されている(2)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(11)高分子基材フィルムがポリエステル基材フィルムである、(10)の太陽電池用保護シート。
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。
(13)基材フィルムの上に、有機層用組成物を適用して硬化させる工程を含み、かつ、前記有機層用組成物は、水系分散物である、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートの製造方法。
(14)前記無機層を真空蒸着により設けることを含む、(13)に記載の太陽電池用保護シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高温下および低温下が繰り返される環境下に置かれた場合であっても、バリア性能の劣化が著しく少ないバリア性積層体および太陽電池用保護シートの提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のバリア性積層体の実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明のバリア性積層体の実施形態の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の太陽電池用保護シートの実施形態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明のバリア性積層体は、ポリエステル基材フィルムの表面に設けられた有機層と、該有機層の表面に設けられた無機層が順次積層された構造を有し、有機層がガラス転移温度40℃以上の高分子材料を主成分とすることを特徴とする。
図1は、本発明のバリア性積層体1の一例を示したものであって、ポリエステル基材フィルム2と、該ポリエステル基材フィルムの表面に設けられた有機層3と、該有機層の表面に設けられた無機層4とからなる。本発明のバリア性積層体は、有機層および無機層が一層ずつでもよいが、図2に示すように、有機層と無機層がそれぞれ2層づつ設けられていてもよい。もちろん、3層ずつであってもよい。上限は特に定めるものではないが、通常は20層以下である。
このようなバリア性積層体は、太陽電池用保護シートに好ましく用いられる。図3は、本発明のバリア性積層体1(第一のバリア性積層体)と、バリア性積層体11(第二のバリア性積層体)を用いた太陽電池用保護シートを示したものである。図3中、21は高分子基材フィルムを、31は有機層を、41は無機層をそれぞれ示している。第一のバリア性積層体1と第二のバリア性積層体11は、無機層側が対向するように接着層5によって貼り合わされている。第二のバリア性積層体11は、公知のバリア性積積層体であってもよいし、本発明のバリア性積層体であってもよい。好ましくは、本発明のバリア性積層体である。
以下これらの構成についてさらに詳細に説明する。
【0011】
ポリエステル基材フィルム
本発明では、基材フィルムとして、ポリエステルフィルムを用いる。従来、基材フィルムとしては、種々のプラスチックフィルムが採用され、その種類は特に限定されていなかった。しかしながら、本発明においては、ポリエステル基材フィルムを用いることにより、バリア性能の向上を達成したものである。
ポリエステル基材フィルムに用いられるポリエステルの種類は特に定めるものではないが、芳香族ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)がさらに好ましく、PETまたはPENがさらに好ましい。また、2種類以上のポリエステルの混合物であってもよい。
ポリエステルの数平均分子量は、13,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。
ポリエステル基材フィルムの厚みは50μm〜200μmが好ましく、100μm〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、寸法安定性の向上とフィルムのクニックが起こりにくくなり、バリア能の安定したバリアフィルムを供給できるようになる。
【0012】
本発明の太陽電池用保護シートを太陽電池用バックシートとして用いる場合、白色化剤を含めることができる。白色化剤としては、酸化チタンや酸化ケイ素等の無機白色材料、有機白色顔料、有機白色染料などを適用することができ、無機白色材料が好ましく、酸化ケイ素がさらに好ましい。
本発明では、白色化剤の含量は、ポリエステル基材フィルムに対し、0.5〜60.0g/m2であることが好ましく、1.0〜50.0g/m2であることがより好ましい。白色化剤は、粒子状であることが好ましく、平均粒子径が100nm〜30μmnmであることが好ましい。
【0013】
有機層
本発明では、ガラス転移温度40℃以上の高分子材料を主成分とする有機層をポリエステル基材フィルムの表面に設ける。ここで、「主成分」とは有機層において最も含有量が多い成分をいい、通常は、有機層の90質量%以上を占める成分をいい、好ましくは、97質量%以上を占める成分をいう。
ガラス転移温度40℃以上の高分子材料は、好ましくはガラス転移温度40〜150℃の高分子材料であり、より好ましくはガラス転移温度60〜120℃の高分子材料である。本発明で好ましく用いることができる高分子材料としては、アクリル、ポリエステル、ポリエステルウレタン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられ、ポリエステルであることが好ましく、芳香族ポリエステルであることがより好ましい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)がさらに好ましい。
特に、本発明では、基材フィルムと、有機層に用いる高分子材料の両方に芳香族ポリエステルを用いることが好ましい。この場合、基材フィルムに用いる芳香族ポリエステルと、有機層に用いる芳香族ポリエステルは同一であってもよいし、異なっていても良い。
高分子材料は1種類のみであってもよいし、2種類以上の併用であってもよい。
【0014】
有機層は公知の方法で設けることができる。例えば、光重合性モノマーを含む組成物をポリエステル基材フィルム上に塗布し、紫外線照射して設けてもよいし、樹脂を溶剤に分散させて塗布し、乾燥させて設けてもよい。特に、本発明では、高分子材料を水系分散媒に分散させた水性ラテックスを、100℃以上の温度で加熱乾燥して水系分散媒を蒸発除去して形成することが好ましい。このような態様とすることにより、環境に優しい状態で製造することができる。水系ラテックス層を形成するための組成物は、高分子材料20〜50重量%と、水系分散媒80〜50重量%からなることが好ましい。また、これ以外の成分を含んでいてもよい。例えば、架橋剤を含んでいても良い。架橋剤を含めることにより、架橋された高分子材料の層を形成できる。架橋剤としては、アクリレートや多官能イソシアネート、カルボジイミドが挙げられる。
有機層の厚さは、0.1〜3.0μmが好ましく、0.5〜2.0μmであることがさらに好ましく、0.6〜1.2μmであることがよりさらに好ましい。
【0015】
無機層
本発明では、有機層の表面に無機層を設ける。無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。生産性ならびにコストの観点で蒸着法、特に、真空蒸着法が好ましい。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Mg、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、SiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物がさらに好ましく、SiまたはAlの金属酸化物が特に好ましく、酸化珪素が最も好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
無機酸化物の平均表面粗さ(Ra)は0.05〜10nmの範囲が好ましく、0.1〜5nmがより好ましく、0.1〜3nmが最も好ましい。無機酸化物層のRaは、平滑な基材や平滑なアンダーコート層を用いることで達成することが可能である。基材の入手性、ハンドリング性から平滑なアンダーコート層を設置することが好ましい。平滑な下地層は有機材料のコーティングによって得ることができる。
【0016】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、30〜200nmの範囲内であり、好ましくは50〜150nmであり、さらに好ましくは60〜100nmである。膜厚を30nm以上とすることにより、より均一な膜とすることができ、ガスバリア性層としての機能を向上させることができる。また、膜厚を200nm以下とすることにより、薄膜の柔軟性を十分に保つことができ、曲げや引張りなどの外力の要因により薄膜が破壊するのをより効果的に抑制することができる。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。
【0017】
接着層
本発明では、第一のバリア性積層体と第二のバリア性積層体が、無機層同士が対向するように接着層を介して配置されている。ここで、接着層は、接着剤を主成分とする層であり、通常、接着層の70重量%以上が、接着剤であることをいい、接着層の80重量%以上が接着剤であることが好ましい。接着剤の種類は特に定めるものではないが、ウェットラミネーション用接着剤、ホットメルトラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤、ノンソルベント接着剤などが好ましく、ウェットラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤が好ましい接着層の厚みを得る観点から好ましく、フィルム中の残留溶媒量を低くする観点から、ドライラミネーション用接着剤が好ましい。
ドライラミネーション用接着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル樹脂系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリビニルアセタール系、非晶性ポリエステル系などの熱可塑性樹脂を用いるもの、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム・エラストマーを用いるもの、ポリウレタン系のように架橋反応を用いるものなどがある。材料の入手性、使いやすさ、接着性能の観点からポリウレタン系接着剤が好ましい。
ポリウレタン系接着剤には一液反応型と二液反応型があるが、接着強度の安定性やポットライフの観点、ならびに炭酸ガスなどの発泡による影響の少なさから二液混合型が好ましい。二液ポリウレタン型接着剤は、ポリエステルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプ、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプを例示することができ、いずれも好ましい。
太陽電池は屋外で用いられるため、接着剤は耐候性材料であることが好ましい。接着剤は初期接着力だけでなく環境試験後の接着力を保持できることが望ましい。太陽電池用保護シートは通常促進評価として85℃、85%相対湿度(RH)の環境で2000時間以上の保存が必要とされるが、105℃、100%RH、168時間の保存の物性値に相当することが知られている。
接着層の厚さは、2μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましく、4〜6μmがさらに好ましい。
【0018】
他の構成層
本発明の太陽電池用保護シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の構成層を含んでいても良い。例えば、他の樹脂フィルムを積層して用いてもよい。このような樹脂フィルムは、例えば、太陽電池用保護シートとしての絶縁性、特に部分放電圧を確保するために用いられる。このような用途に用いられる樹脂フィルムの層厚は、例えば、部分放電圧1000V以上の仕様であれば合計300μm以上となるように構成することが好ましい。
また、他の構成層としては、無機層と有機層とからなるガスバリアユニットや、他の機能性層などが挙げられる。例えば、図3におけるバリア性積層体1・11と接着層5の間に、易接着層等を設けることもできる。
【0019】
第一のバリア性積層体と第二のバリア性積層体の貼り合わせ方法は公知の方法を採用できるが、通常、接着剤を、第一の積層ユニット側に塗布し、ニップロール等で貼り合わせる。
【0020】
水蒸気透過率
本発明における太陽電池用保護シートは、MOCON社製AQUATRANを用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した水蒸気透過率が、それぞれ、0.05g/m2・day以下であることが好ましく、0.005g/m2・day以下であることがより好ましい。
【0021】
(太陽電池)
本発明の太陽電池用保護シートは、太陽電池に用いる。好ましくは、太陽電池用バックシートに用いる。太陽電池素子は通常、一対の基板の間に、太陽電池として働くアクテイブ部分が設けられた構成をしているが、この一対の基板の保護シート側に用いることができる。
本発明の太陽電池用保護シートが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、特開2009−38236号公報等の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0023】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
有機層を採取し、示差走査熱量計(DSC6200、セイコー(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分の条件のTgを測定した。
【0024】
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率測定装置として、MOCON社製AQUATRANを用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。
【0025】
<ヒートサイクルテスト(HC)>
IEC61215/61646に従って行った。具体的には、試料を環境試験器(エスペック製PSL−2K)に入れ、90℃で20分間および−40℃で20分間、温度変化率87℃/時間で200サイクルの環境下で保管した後、水蒸気透過率測定を測定した。
【0026】
実施例1
125μm厚のPETフィルム(東レ製ルミラーX10S)上に、アクリレート(ダイセルサイテック社製、Ebecryl EB3702)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907)とを含む40%エタノール溶液を乾燥膜厚が1000nmとなるようにメチルエチルケトンで調整して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。この有機層上に、EB+イオンガン方式でプラズマアシスト可能な蒸着装置(シンクロン製、ACE1350IAD)を用い、イオンアシスト電圧:900V、酸素ガス流量:50sccm、アルゴンガス流量:8sccm)の条件でSiO(大阪チタニウムテクノロジーズ製)を蒸着源にして蒸着膜を形成し、表面に珪素酸化物の薄膜(無機層)が形成されたフィルムA−1を作製した。成膜速度は5nm/secで、無機層の厚みは50nmであった。
【0027】
次に、フィルムA−1同士を各々の蒸着層が対向するようにドライラミネーションを行った。接着剤として大日精化製セイカボンドE−372(主剤)とC−76−2.0(硬化剤)を用いた。両者を配合比(質量)で17:2となるよう秤量し、酢酸エチルで10倍希釈した均一塗布液をスピンコーターで塗布した。接着剤濃度を変えるための希釈溶媒には酢酸エチルを用いた。90℃、5分で溶剤を乾燥したのち、70℃のニップロールを通過させラミネートし、40℃、48時間のエージングを行った。このようにして太陽電池用バックシート試料BS−1を作製した。接着層の厚さは5μmであった。
【0028】
実施例2
実施例1の有機層の代わりに、有機溶剤可溶性ポリエステル樹脂(バイロン103、東洋紡製、Tg=47℃)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、ワイヤーバーで塗布して90℃、5分の送風乾燥をした以外は実施例1と同じ方法でフィルムA−2およびバックシートBS−2を作製した。有機層の厚みは0.5μmであった。
【0029】
実施例3
実施例1の有機層の代わりに、ポリエステルA(バイロナールMD−1100、東洋紡製、Tg=40℃)をワイヤーバーで塗布し、160℃、5分の送風乾燥した以外は実施例1と同じ方法でフィルムA−3およびバックシートBS−3を作製した。有機層厚みは約0.5μmであった。
【0030】
実施例4
基材フィルムおよび/または有機層を表1に記載のとおり変えた以外は実施例3と同じ方法にて、フィルムA−4〜13、バックシートBS−4〜13を作製した。
【0031】
実施例5
フィルムA−1、A−2、A−5において、基材フィルムを125μm厚の白色PET(東レ製E20)に代えた以外は、同様に行って、フィルムB−1〜3を作製し、A−1とB−1、A−2とB−2、A−5とB−5をそれぞれ蒸着層が対向するように実施例1に記載の方法でドライラミネーションを行い、BS−21、BS−22、BS−25を作製した。
【0032】
比較例1
実施例2の有機層の代わりに、ポリエステルD(ポリエステル系水分散物、バイロナール MD−1480、東洋紡製、Tg=20℃)を用いた以外は実施例2と同じ方法でフィルムRA−1およびバックシートBS−1を作製した。
【0033】
比較例2
ガラス転移温度(Tg)=7℃のポリエステルポリオールとTg=85℃のアクリルポリオールとイソシアネート(IPDIのアダクト体)を1:3:1となるようにプライマー組成物(溶媒は酢酸エチル)を用いた以外は実施例2と同じ方法にてフィルムRA−2、バックシートRBS−2を作製した。プライマー層のTgは約10℃であった。
【0034】
比較例3
Tg=7℃のポリエステルポリオールとTg=85℃のアクリルポリオールとイソシアネート(IPDIのアダクト体)を3:1:4の比率でプライマー層1を設置したのち、Tg=62℃のアクリルポリオールとイソシアネート(IPDIのアダクト体)を5:1(固形分比)となるようにプライマー組成物からなるプライマー層2を設置した以外は実施例2と同じ方法にてフィルムRA−3、バックシートRBS−3を作製した。プライマー層のTgは約15℃、プライマー層2のTgは35℃であった。
【0035】
実施例6
実施例1のPETフィルムの代わりに、特開平7−205278号公報に記載の方法で作製したポリ乳酸フィルム(125μm厚)を用いた以外は実施例1と同じ方法でフィルムA-14、バックシートBS−14を作製した。
【0036】
実施例7
実施例4のA-5の代わりに上記ポリ乳酸フィルム(125μm厚)を用いた以外は実施例4と同じ方法にて、フィルムA-15、バックシートBS-15を作製した。
【0037】
実施例8
実施例2の有機層の代わりに、芳香環をもたないポリエステルとしてポリ乳酸(アルドリッチ製)を、塩化メチレン溶液にして塗設した以外は実施例2と同じ方法でフィルムA-16、バックシートBS-16を作製した。有機層厚みは0.5μmであった。
【0038】
(使用ベース)
PENフイルム: 帝人デュポン テオネックスQ65FA、
PMMAフイルム: 三菱レイヨン アクリプレン HEXN47、
PSフイルム: 旭化成ケミカルズ OPSフイルム
PCフイルム: 帝人化成 ピュアエース
厚みはいずれも100μm前後をA4サイズに裁断し、酸素/アルゴン比10/2で圧力2.5Pa雰囲気で、100W、15秒間、表面をプラズマ処理したものを使用した。
【0039】
ポリエステルA:バイロナールMD1100(Tg=40)、東洋紡
ポリエステルB:バイロナールMD1200(Tg=67)、東洋紡
ポリエステルC:プラスコートZ−687(Tg=110)、瓦応化学工業、PEN型
アクリルA:ダイアナール、三菱レイヨン
アクリルB:ジュリマーET−410(Tg=44)、東亜合成
SBR A:日本ゼオンLX433C(Tg=50)、日本ゼオン
ポリエステルD:バイロナールMD1480(Tg=20)、東洋紡
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
上記表において、*のものは、対向する第二基材は白色PETであることを示している。
上記結果から明らかなとおり、有機層を構成する主たる高分子材料のTgが40℃以上の場合、温湿度変化に対する耐性が高いことが明らかとなった。但し、有機層を構成する主たる高分子材料のTgが40℃以上であっても、PMMA、PS、PCの上に積層した場合には温湿度変化の耐性が不足することがわかった。すなわち、本発明の太陽電池用保護シートは、ヒートサイクルテストを行った後でも、ガスバリア性能の劣化が著しく少ないことが分かった。
また有機層は水系ラテックスと溶剤系ではほぼ共通の効果があり、環境負荷や防爆設備等を不要とする観点から、水系ラテックスを活用できることがわかった。
特に、基材フィルムと有機層の両方に、芳香族基を有するポリエステルを用いることにより、さらに優れたガスバリア性能と耐久性が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明では、高分子材料を含む水系分散液を用いて有機層を形成しても、高温下および低温化に交互に繰り返し晒されても、十分なバリア性能を維持できる太陽電池用保護シートが得られる。従来の太陽電池用保護シートでは、有機ポリマーを有機溶媒に溶解した塗布液で設けないと十分なバリア性が維持できなかった。すなわち、本発明は、VOC対策および防爆対策にも沿った環境にやさしい技術である。
さらに、本発明では、ポリエステル基材と有機層に含まれる高分子材料に同じ系統のポリマーを用いることで、高温下および低温したで繰り返し使用した場合の耐久性を向上させることができる。
また、本発明の太陽電池用保護シートは、低コスト、かつ、低環境負荷で製造することができる。加えて、本発明では、紫外線照射工程なしに製造できると言う点からも極めて有利である。
【符号の説明】
【0044】
1 バリア性積層体
2 ポリエステル基材フィルム
3 有機層
4 無機層
5 接着層
11 バリア性積層体
21 高分子基材フィルム
31 有機層
41 無機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル基材フィルムの表面に設けられた有機層と、該有機層の表面に設けられた無機層が順次積層された構造を有し、有機層がガラス転移温度40℃以上の高分子材料を主成分とするバリア性積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のバリア性積層体を有する太陽電池用保護シート。
【請求項3】
前記高分子材料がポリエステルである請求項2に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項4】
前記高分子材料が芳香族ポリエステルである請求項2に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項5】
ポリエステル基材フィルムが、芳香族ポリエステルを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項6】
無機層が酸化珪素、酸化アルミニウムまたはその混合物を主成分とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項7】
ポリエステル基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項8】
有機層の厚みが0.1〜3μmである、請求項2〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項9】
無機層の厚みが30〜200nmである、請求項2〜8のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートであって、ポリエステル基材フィルム、有機層、無機層を該順に連続して有する第一のバリア性積層体と、高分子基材フィルム、有機層、無機層を該順に連続して有する第二のバリア性積層体とが、無機層同士が対向するように配置されている請求項2〜9のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項11】
高分子基材フィルムがポリエステル基材フィルムである、請求項10の太陽電池用保護シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。
【請求項13】
基材フィルムの上に、有機層用組成物を適用して硬化させる工程を含み、かつ、前記有機層用組成物は、水系分散物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートの製造方法。
【請求項14】
前記無機層を真空蒸着により設けることを含む、請求項13に記載の太陽電池用保護シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−167882(P2011−167882A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32167(P2010−32167)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】