説明

バリヤー層及びその製造方法

本発明は、バリヤー層を含む物品を製造する方法に関し、上記方法は、イオン性液体及び金属のイオン又は半金属のイオンを含んでいるめっき液を使用して、有機電気活性物質を含む基体の表面に電着により金属の層又は半金属の層を備えること、ここで該金属のイオン又は半金属のイオンは上記電着の間に還元されそして析出されて金属の層又は半金属の層を形成する、を含み、かつ好ましくは上記金属の層又は半金属の層を少なくとも部分的に酸化することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にバリヤー層を付与する方法及び当該方法により得られ得る物品に関する。
【0002】
酸素及び/又は水に対する低い透過性を有するバリヤーフィルムが、酸素及び/又は水の有害な効果から製品を保護するために種々の用途において使用されている。例えば、食品加工梱包においては、フォイルが無機物質の1以上の薄層を付与されて該フォイルを通しての水及び/又は酸素の透過を減少させている。
【0003】
酸素及び/又は水(湿気)に対する保護は、有機電子デバイス、例えば光−電子デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)もしくは有機光電池(organic photo-voltaic cells)(OPV)において非常に重要である。古典的には、そのようなデバイスは、基体(その上に機能性層が施与される)としての金属又はガラスのシート、及び金属又はガラスの蓋を使用してカプセル化される。しかし、アクチュエーター及び/又は光電子デバイスにとって、薄い厚さ及び/又は高い柔軟性が望ましいのに、上記の設計上の欠点は、(最小の厚さが相対的に高いという)形状に関する制限及びデバイスの制限された柔軟性を包含する。酸素及び/又は水に対する保護のためには、当該デバイスは酸素及び/又は水に対して実質的に不透過である保護キャップでシールされていてもよい。当該キャップは、デバイスの体積を増加させる。さらに、当該キャップを接着させるのに適する接着剤は水及び/又は酸素に対して透過性であり得るので、当該キャップを十分に接着させることは難題である。特に、光−エレクトロニクスに関しては、低下された透明性は、古典的なカプセル化を使用することの欠点であり得る。
【0004】
柔軟性を維持しながら酸素及び/又は水に対する保護を付与するために、物品、特に光電子デバイスに無機物質の薄いフィルムのバリヤーコーティングを付与することが提案されてきた。
【0005】
例えば、無機バリヤーコーティング、例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸化ケイ素コーティングが十分に薄い層で施与されることができて、デバイスが十分に柔軟であり続けることを許す。しかし、そのようなバリヤー物質の層は、層構造にピンホールとして知られる欠陥を一般的に有する。これらのピンホールは、酸素及び/又は水の増大された透過性をもたらし得、酸素及び/又は水の存在は該コーティングにより被覆された物質の機能に有害な効果を有し得る。特に、ピンホールはデバイス中の黒点の発生の重要な原因であり、デバイスのより劣る品質、たとえばLEDの場合には低下された光強度、又はデバイスが画像を表示するためのデバイスである場合には画像の解像度の損失をもたらす。
【背景技術】
【0006】
国際公開第2004/079781号は、ケイ素をベースとするバリヤーコーティング、例えば炭化ケイ素を含む有機LEDに関する。バリヤーコーティングは典型的には蒸着技術を用いて施与される。そのような技術は、高価であり、複雑であり、そして、柔軟なデバイス、例えば有機電子デバイス、特にそのようなフォイル形状のデバイスにとって、一般的には適用可能ではないか、又は少なくともそのような技術は工業スケールで使用されるには実際的ではない。
【0007】
多数のバリヤー層がバリヤーの積み重ねを付与するために使用され得る。すなわち、該積み重ねの特定の層のピンホールは、隣接する層により、少なくとも部分的に被覆され得、そのことは透過性に恩恵のある効果を有し得る。しかし、ピンホールの成長は、相対的に短時間後に、増加された透過性をやはりもたらし得、即ち短い時間のずれをもたらす。
【0008】
国際公開第2005/015655号は、マイクロ構造を有するデバイス、例えばOLED、に薄いフィルムのバリヤーの積み重ねを施与する方法であって、ピンホールの連続する成長を防ぐために、有機層が2つの無機層の間の中間層として使用される方法に関する。上記刊行物に従うと、バリヤー層は真空蒸着技術により施与されるが、該真空蒸着技術は高価であり、複雑であり、そして、柔軟なデバイス、例えば有機電子デバイス、にとって一般的には適用可能ではないか、又は少なくともそのような技術は工業スケールで使用されるには実際的ではない。その上、無機層及び有機層の積み重ねを製造する必要性は製品の製造を複雑にするさらなる要因である。
【0009】
国際公開第2005/006441号は、表示デバイスのカプセル化構造であって、少なくとも1の誘電性の封入構造、例えば窒化ケイ素又は酸化アルミニウム層、及び封入構造を安定化させるため及び保護するための安定化層を含む構造に関する。本発明者らは、ピンホールの数は、窒化物が相対的に低い温度、例えば有機電子デバイスにおいて有機電気活性物質の機能に有害でない温度、特に約100℃より下の温度又は約50℃より下の温度、より特に室温(25℃)又は室温近傍の温度において析出された場合に、特に相対的に高いと考える。国際公開第2005/006441号は、ピンホールを覆うために、第二の無機物質、例えば特定の酸化物の層、の使用を提案する。該層は、窒化物のように、酸素/水のための重要な拡散バリヤーを付与しないと記載されている。この刊行物は、層を施与するための蒸着技術の使用についてもまた言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
有機電子デバイスを製造する新規な方法であって、公知の方法の代替法として使える方法を提供することが本発明の目的である。
【0011】
有機電子デバイスを製造する新規な方法であって、工業的スケールで、特に連続的に実施されるのに相対的に簡単である方法を提供することが、さらなる目的である。
【0012】
有機電子デバイスを製造するための新規な方法に、黒点形成の低い傾向、特に黒点形成の低減された傾向、を付与することが、さらなる目的である。
【0013】
バリヤー層を付与された新規なデバイス、特に新規な有機電子デバイスを提供することが、さらなる目的である。
【0014】
本発明に従って満たされることができる1以上の他の目的は、本明細書の残余及び/又は特許請求の範囲から結果として生じるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特定の方法で物品にバリヤー層を付与することにより、1以上の目的が満たされることが今発見された。
【0016】
そこで、本発明は、バリヤー層を含む物品を製造するための方法において、
イオン性液体及び金属のイオン又は半金属(metalloid)のイオンを含んでいるめっき液を使用して、基体の表面に電着により金属の層又は半金属の層を備えること、ここで該金属のイオン又は半金属のイオンは還元されそして析出されて金属の層又は半金属の層を形成する、
を含み、かつ
任意的に、金属の層又は半金属の層を少なくとも部分的に酸化すること
を含んでいてもよい上記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電流及び/又は電位が印加されることができる多数の様式を示す概略図である。
【図2】本発明の(有機)電子デバイスを示す概略図である。
【図3】電磁放射が使用される本発明の実施態様の構成を示す概略図である。
【図4】物質のバンドギャップ及び価電子ギャップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
透明なバリヤー層を付与するためには特に、金属又は半金属層が酸化されて透明な層(例えば透明な酸化物)を与えることが好ましい。すなわち、光電子デバイスの場合、透明(酸化物)層が、該デバイスの領域であって、そこから光が放出される領域に少なくとも(LEDの場合)、又はそこを通って該デバイスの中へと光が通過する領域に少なくとも、付与される得る。
【0019】
本明細書で使用される「又は」、「もしくは」の語は、別様に特定されない限り「及び/又は」、「及び/もしくは」を意味する。
【0020】
本明細書で使用される「1の(a又はan)」の語は、別様に特定されない限り「少なくとも1の」を意味する。
【0021】
単数形の部分(moiety)(たとえば、1の化合物、1のイオン、1の添加剤等)に言及するときには、その複数形も包含されることが意図される。したがって、特定の部分、たとえば「イオン」に言及するときは、これは、別様に特定されない限りその部分の「少なくとも1」、たとえば「少なくとも1のイオン」を意味する。
【0022】
用語バリヤー層は、本明細書においては、物品が暴露され得る気体又は液体により起こされ得る有害な効果、特に、物品の寿命を減少させる有害な効果、から物品を保護する層のために使用される。典型的には、バリヤー層は、そのような気体及び/又は液体に対して低い透過性を有するか又は(本質的に)不透過である。特に、バリヤー層は、酸素又は水(湿気)に対するバリヤー層であり得る。
【0023】
すなわち、バリヤー層は特に、物品の寿命がそれにより延ばされる層である。具体的な実施態様において、そのような有害な効果は、LED又は他の光学デバイスにおいて(光顕微鏡で又は少なくともある環境においては裸眼で測定され得る)黒点の(過剰な)形成及び/又は成長をもたらす効果である。
【0024】
驚いたことに、本発明の方法はまた、有機電気活性物質を含む基体をバリヤー層が付与される表面において及び/又は該表面から離れて使用して用いられ得ることが見出された。そのような有機電気活性物質を含む基体が、該有機電気活性物質に悪影響を及ぼすことなく、又は少なくとも、該有機電気活性物質が受け入れられない程度にまで有害に影響を及ぼされずに、電着を使用してバリヤー層を付与されることができることは特に驚きである。
【0025】
用語「電気活性」は本明細書では、非電気形態のエネルギーを電気エネルギーに変換する能力がある物質又はその逆の能力がある物質を表すために使用される。したがって、電気活性物質は、力学的エネルギーもしくは電磁放射(たとえば、紫外線、可視光線もしくは赤外線)を電気エネルギーに変換することができ、又は電気エネルギーを力学的エネルギーもしくは電磁放射に変えることができる。特に、電気活性物質は電気エネルギーの(半)導電体として作用する能力がある。
【0026】
原則として、本発明の方法は、任意の基体にバリヤー層を付与するために使用され得る。特に、基体が有効な電着にとって十分に導電性であるというわけではない場合には、処理されるべき表面は、導電性の物質、特に金属、例えば金又はアルミニウムのシード層を施与することにより、より導電性にされ得る。適切な技術は、一般的に当該技術分野において公知であり、(シード層の)印刷、コーティング等を含む。さらに、有機電気活性物質を含む電子デバイスがバリヤー物質を付与される場合には、該バリヤー層は導電性電極、通常は金属電極、であって有機電気活性物質上に析出されているものの表面に施与され得る。そのような電極は、イオン性液体からの導電性物質の電着により特に形成され得る。
【0027】
本発明の方法は、薄い物品、例えばフォイル形状の物品の製造に特に使用され得る。該物品はフォイル、シート、フィルム、板、細片(strip)、及び一の方向におけるそのサイズ(厚さ)が他の方向のサイズ(長さ、幅)よりかなり小さいその他の物品、例えば少なくとも10倍小さい、少なくとも100倍小さい、又は少なくとも1000倍小さい物品の群から特に選択され得る。例えばフォイルは10〜200μmの厚さ及び/又は1cm以上、例えば1,2,5又は10mまでの幅を有し得る。長さはずっと長くてもよい。
【0028】
本発明の方法は、複雑な形状、例えば1以上の凸状の表面及び/又は1以上の凹状の表面を有する物品にもまた特に適する。
【0029】
好ましい方法において、該物品は有機ダイオード、例えば有機LED、有機光電池;力学的エネルギーを電気エネルギーに又はその逆に変換するための有機アクチュエーター;有機電気回路、有機トランジスター、有機太陽電池、他の有機電子デバイス;鋼板;及び包装用フォイル、例えばアルミニウムの包装用フォイル又はプラスチックの包装用フォイル、の群から選択される。
【0030】
本発明に従う方法は、電子デバイスの電極、より特にカソード、にバリヤー層を付与するために特に適する。本発明は、多孔性の電極、例えば微小孔及び/又はメソ細孔を含む物質、に効果的なバリヤー層の形成を許す点でもまた特に有利であると考えられる。慣用の技術により有機半導体物質に沈着された金属又は半金属は、孔を含み得、該孔は湿気に対する感度を増大させ、従って、該電極及び半導体物質が一部を構成するデバイスの寿命を減じる可能性がある。この問題は、例えば、有機LED又は他の有機半導体デバイスにおいて、例えばアルミニウム又は銀のカソードが使用される場合に起きることが周知である。本発明は、デバイスを水及び/又は酸素の有害な効果から保護するための適切なバリヤー層を付与する効果的な方法を提供する。そうすることにより、黒点形成及び/又は成長の傾向は減少される。
【0031】
図2は、本発明に従う方法において得られ得る有機電子デバイスの概略図である。本明細書において用いられる有機電子デバイスは、通常、第一電極2(通常アノード)、第二電極5(通常、カソード)、及び電極の間に通常設置されている1以上の電気活性層3を含み、それらの中で、少なくとも電気活性層が電気活性有機化合物、例えば電気活性ポリマーを含むところのデバイスである。該化合物は光活性であり得、電気エネルギーを力学的エネルギーに、及び/又は力学的エネルギーを電気エネルギーに変換することができ得る。
【0032】
電極及び電気活性有機化合物を含む電気活性層は、キャリアー基体1の上に通常施与される。バリヤー層0は、通常、電極2、5及び電気活性化合物3の組み立て品を覆うために少なくとも施与され、これらは、基体とバリヤー層との間に本質的にシールされる(カプセル化される)。好ましくは、バリヤー層は、キャリヤー基体1と、電極及び電気活性化合物の組み立て品との間、即ち、キャリアー基体1と電極2との間にもまた付与される。透明であるべきである少なくとも1の層が透明な層を形成するように酸化されることが特に好ましい。
【0033】
1以上の他の層、例えば(有機)導電性層(バッファー層ともまたいう)が、電極、特にカソード、と有機電気活性物質との間に存在してもよい。その例は、図2における任意的な層4である。適する導電層は、例えばポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)又はポリ(スチレンスルホネート)(PSS)又はそれらの組合せ、例えばPEDOT+PSSでドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)である。
【0034】
電子デバイスのための1以上のさらなる機能性層、例えば1以上の平坦化層など、が施与されていてもよい。該層は、例えば米国特許出願公開第2002/0113548号、国際公開第2005/001945号、国際公開第2005/015173号,国際公開第03/026011号,国際公開第03/022581号又は国際公開第02/082561号に記載されているように、少なくとも1の電極、好ましくは少なくとも1のカソード、が本発明に従う電着により施与されるのであれば、それ自体公知である方法で実行され得る。
【0035】
1の実施態様では、電気活性デバイスは有機フォトダイオード、たとえばポリマー性のフォトダイオードである。有機/ポリマー性のフォトダイオードとは、本明細書においてはフォトダイオードであって、その活性層が少なくとも1の(半)導電性有機化合物(その組成物を包含する。)及び少なくとも1の(半)導電性有機ポリマー(その組成物を包含する。)をそれぞれ含んでいるものを意味すると理解される。フォトダイオードは、好ましくは電子供与性有機物質(p型物質)及び電子受容性有機物質(n型物質)を含んでいる。フォトダイオードは、電位下にあるときに光伝導を示す物質(たとえば、伝導性ポリマー)を活性層として含んでいることができる。
【0036】
フォトダイオードは光起電力電池であることができ、これは電位が存在しなくても光伝導を示し、光子エネルギーを電気エネルギーに変換する能力がある。そのような電池には、電子供与性物質として及び好ましくは電子受容性物質としても、有機化合物、より好ましくは有機ポリマーが存在する。電子供与性及び電子受容性物質は混合されることができ、又は別々の層中に存在することができる。
【0037】
1の実施態様では、電気活性物質はポリアリーレン化合物、ポリ(パラフェニレンビニレン)化合物、ポリフルオレン化合物、ポリアセチレン化合物、ポリチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアニリン、及びこれらのポリマーの誘導体(特に、アルキル、アリール及びアルコキシ誘導体)、これらのポリマーのコポリマーならびに染料によって誘導体化されたこれらのポリマーの群から選択されたポリマーである。光起電力電池中で、このようなポリマーは電子供与性化合物として非常に適していることが発見された。光活性層は、電子受容性化合物としてフラーレン及び/又はフラーレン誘導体(好ましくは、PCBM)を含んでいる。
【0038】
有機発光ダイオード(OLED)の場合、電気活性層はエレクトロルミネセント化合物を含んでいる。有機発光ダイオード(以後、OLED)とは、本明細書においてはその光活性層が少なくとも1の(半)導電性エレクトロルミネセント有機化合物又は組成物から少なくとも実質的に成るところの発光ダイオードを意味すると理解される。ポリマー性発光ダイオード(以後、PLEDと呼ばれる。)とは、本明細書においてはその光活性層が少なくとも1の(半)導電性エレクトロルミネセント有機ポリマー(ポリマー混合物を包含する。)又は少なくとも1の(半)導電性有機ポリマー(ポリマー混合物を包含する。)及び少なくとも1の他の有機化合物(たとえば、単一化合物)であってエレクトロルミネセントであるものから少なくとも実質的に成るところの発光ダイオードを意味すると理解される。
【0039】
好まれるエレクトロルミネセント化合物はポリアリーレン、より好ましくはポリ(パラフェニレンビニレン)化合物(PPV化合物)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリピロール、ポリアニリン、及びこれらのポリマーの誘導体(特に、アルキル、アリール及びアルコキシ誘導体)、これらのポリマーのコポリマーならびにこれらの混合物である。
【0040】
ポリマー(本明細書で使用されるこの語は「オリゴマー」を包含する。)の他に、非ポリマー性エレクトロルミネセント化合物、たとえば非ポリマー性エレクトロルミネセント染料が使用されることができる。このような化合物の例は、モノマー、及び共役結合を有する他の重合されていない分子である。しばしば、このような化合物はポリマーと比較して相対的に低い分子量、たとえば100〜20,000g/モルの分子量を有する。
【0041】
非ポリマー性染料に関しては、とりわけ式1に従う化合物が使用されることができる。
【0042】
【化1】

【0043】
上記式中、各R、R、R及びRは、
− H、
− 式−C2a+1の分枝状及び非分枝状アルキル基、
− 式−O−C2a+1の分枝状及び非分枝状アルコキシ基、
− (任意的に1以上のアルキル基及び/又は1以上のアルコキシアルキル基、好ましくはそれぞれ上記の式−C2a+1及びO−C2a+1のもの、で置換されていてもよい)アリール基、好ましくは環構造中に6〜12の炭素原子を有するアリール基、及び
− C≡N、
の群から好ましくはそれぞれ独立に選択される。
【0044】
ここで、「a」は好ましくは1〜20の範囲において、より好ましくは2〜10の範囲において選択される。
【0045】
好まれる実施態様では、OLEDは少なくとも二つの最大値を有する。従って、一の最大値における又はその近傍における波長の光は例えば参照信号として機能することができ、もう一つの最大値における波長の光は検出信号として機能することができる。二つ以上の最大値を有するOLEDは、該OLEDが少なくとも2の異なったエレクトロルミネセント官能基を含んでいる少なくとも1のエレクトロルミネセント活性層を有するという点において、提供されることができる。したがって、たとえば光活性層は2の異なったエレクトロルミネセント化合物の混合物を有することができる。その例は、本明細書で挙げられたポリマーの混合物、本明細書で挙げられたポリマーと他のエレクトロルミネセント化合物、たとえば単独の共役化合物との混合物、及び様々なエレクトロルミネセントセグメントを有するコポリマーを含む。これらの好適な例は国際公開第2005/001945号に記載されており、好適なエレクトロルミネセント化合物に関するその内容、特に10ページ第10行〜14ページ第17行の部分は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0046】
1の実施態様では、電子デバイスは、電気エネルギーと力学的エネルギーとの間を変換するためのアクチュエータである。その好適な例は、たとえばこれから公表される欧州特許出願第06076435.4号及びこれから公表される欧州特許出願第06075808.3号に記載されている。アクチュエータは特にポリ塩化ビニル、多糖、芳香族ウレタン、芳香族ウレタンアクリレート、(アルキル)アクリレート、(アルキル)メタクリレート、アクリロニトリルポリマー、多糖誘導体(たとえば、デンプンアセテート、セルロース(トリ)アセテート)、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン及びポリフッ化ビニリデンの群から選択された少なくとも1のポリマーを含んでいることができる。
【0047】
1の実施態様では、アクチュエータは、鎖中に芳香族部分及び鎖中に可撓性部分を含んでいる電気活性ポリマーを含んでおり、該電気活性ポリマーは鎖に結合された側基をさらに含んでおり、該側基は極性の側基及び芳香族部分を含んでいる側基から成る群から選択される。当該ポリマーの可撓性部分は特に、(環状)脂肪族エーテル部分、(環状)脂肪族エステル部分、(環状)脂肪族チオエーテル部分及び(環状)脂肪族チオエステル部分の群から選択されることができる。当該鎖中の及び(存在するときには)側基中の芳香族部分は特に、6〜20の炭素原子を有する非置換の及び置換された芳香族部分から選択されることができ、ならびに/又は該側基は−OH、−CN、−NH、−NO、アリールオキシ、フェニル、ハロゲン、−COOH、NHR、NRR、−(CO)(NH)、−(CO)(NHR)及び(CO)(NRR)から成る群から選択された部分を含んでいることができ、これらの式中、各Rは同じ又は異なったC1〜C6の置換された又は非置換のアルキル基である。
【0048】
1の実施態様では、アクチュエータは、芳香族ウレタン単位及び(アルキル)アクリレート単位を含んでいる電気活性ポリウレタン−(メタ)アクリレートコポリマーを含んでおり、この場合に好ましくは(アルキル)アクリレート単位の少なくとも一部は式IIによって表されたモノマーに基づいており、
【0049】
【化2】

【0050】
上記式中、Rは水素、任意的に置換されていてもよいアルキル(特にメチル)又は極性部分であり、
は極性部分、芳香族部分(特にフェニルを含んでいる部分)、任意的に置換されていてもよいアルキル又はハロゲンであり、
但し、R及びRのうちの少なくとも1は極性部分又は芳香族部分であり、
ならびに/又は、鎖中の芳香族部分の好ましくは少なくとも一部は、トルエンジイソシアネート及びメチレンジフェニルイソシアネートの群から選択される。
【0051】
金属及び半金属ならびにこれらの合金の電気化学的析出(電着又は電気めっきとも呼ばれる。)は、電解溶液からのイオンの還元を含む。該技術は様々な金属及び半金属の析出について周知である。電着では、基体は析出されるべき金属のイオン又は半金属のイオンを含有する適当な電解液中に置かれる。基体は、電源の負の端子に接続されたカソードを形成する電子伝導層を有さなければならない。正の端子は適当なアノードに接続される。析出される層の厚さは、電着プロセスにおいて使用された電子の数(電荷)の関数である。
【0052】
驚いたことに、不動態化性(passivating)バリヤー層を、任意的には少なくとも部分酸化後に、形成するところの金属又は半金属層を付与するために、電着が使用されることができる。該層は、バリヤー層を付与された物質を酸素、別の気体、水及び/又は他の液体に対して保護することができる。
【0053】
本発明の方法は可撓性のある物品を与えるために使用されることができるが、剛直な物品もまた製造されることができる。
【0054】
特に、本発明は10−3g水/m/日未満、10−4g水/m/日未満、10−5g水/m/日未満又は10−6g水/m/日未満の水透過性を有するバリヤー層を付与することを許す。透過性は米国特許出願公開第2006/147346号に記載されたように測定され得る。
【0055】
特に、本発明のバリヤー層は、下地表面の低いピンポール密度、より特に(SEMにより決定できるとき)1m当たり10ピンホール未満、又は1m当たり10ピンホール未満の低いピンホール密度、均一な厚さ及び/又は高度に連続する被覆を有し得る。
【0056】
さらに驚いたことに、電着の間に起こることを期待し得る逆電気化学プロセスに起因するところの、有機電気活性物質への受け入れ不可能な有害な効果なしに、電着を使用して、有機電子デバイス上に無機バリヤー層を付与することが可能である。そのようなデバイスにおける低いピンホール密度は、酸素及び/又は水に対して電気活性物質を保護することに関して及び/又は黒点形成の低い傾向に関して特に有利である。
【0057】
本発明の方法は、温和な条件下、例えば相対的に低い温度、で有利に用いられ、電極が温度に敏感な物質に使用されることを許す。
【0058】
本発明の方法は、真空で行われる必要はない。電着は、不活性ガス雰囲気において特に、適切に行われ得る。不活性ガスの例は、窒素及び貴ガス(例えばヘリウム、ネオン、アルゴン)であり、窒素と1以上の貴ガスの混合物を含む。
【0059】
さらに、本発明の方法は、塵の粒子がピンホール形成へ寄与し得るところの例えば真空沈着をベースとする方法と比較して、ピンホール形成への低い感度を一般的に示す。
【0060】
さらに、本方法は、高度に熟練した者により操作されることを一般的に必要としない。相対的に簡単な方法で行われることができる。特に、本発明の方法は、特に真空蒸着技術に比較して相対的に簡単な装置を使用して高い投資を必要とすることなく行われ得る。
【0061】
本発明に従う方法の利点は、電極が例えばロール―ツ―ロール(roll-to-roll)析出法により広い面積に施与されることができることである。そのような方法は、該方法が、特に大規模生産において有利であるところの連続式で行われることを許す。ロール―ツ―ロール法は、基体がフォイル、フィルム等である場合に特に適する。
【0062】
金属及び半金属ならびにこれらの合金の電気化学的析出(電着又は電気めっきとも呼ばれる。)は、電解溶液からのイオンの還元を含む。該技術は様々な金属及び半金属の析出について周知である。電着では、基体は析出されるべき金属のイオン又は半金属のイオンを含有する適当な電解液中に置かれる。基体は、カソードを形成する電子伝導層を有さなければならず、これは電源の負の端子に接続される。正の端子は適当なアノードに接続される。析出される層の厚さは、電着プロセスにおいて使用された電子の数(電荷)の関数である。
【0063】
水性溶液からの電着は、十分に高い標準電位(ネルンスト電位としても知られている。)を有する金属又は半金属の層を設ける場合にのみ可能である。該金属又は半金属の標準電位は、水から水素への標準電位よりも高くなければならない。又は、金属又は半金属の表面における水素への水の還元の反応速度が非常に遅くて、金属の標準電位がたとえ0ボルト未満であっても該金属が析出されることができるようなものでなければならない。たとえば、貴金属及び銅は第一の範疇の例であり、他方、亜鉛、クロム及びカドミウムは水性溶液からめっきされることができる金属の第二の範疇内にある。
【0064】
しかし、水性溶液は一般に、低い標準電位を有する金属又は半金属、たとえばアルカリ土類金属(たとえば、バリウムもしくはカルシウム)又はアルミニウムの析出には適しておらず、又は少なくとも実用的でない。本発明は非水性系の使用を許し、したがってこのような金属の1以上を含んでいる電極をもたらすために電着を使用することも許す。バリヤー層をもたらすために、水及び/又は気体の有利に低い透過性を達成して、特に良好なバリヤー機能を有する層をもたらすために、基本的に水を含まない条件下で層を析出させることが非常に好ましい。
【0065】
めっきをする前に、その上に電極が形成されるべき物質は、電気めっきについての従来技術で知られた様式で予備処理されることができる。特に、汚染物質及び/又は膜が基体から除かれることができる。予備処理は特に化学的洗浄段階、たとえば電気化学的洗浄段階及び/又は物理的洗浄段階を含む。好適な予備処理段階は従来技術で知られており、たとえばM.Schlesinger、M.Paunovic(編)、「Modern Electroplating(最近の電気めっき)」、Electrochemical Society Series、第4版、2000年、米国、ニューヨーク州、John Wiley & Sons社刊中のDexter,D.Snyder、「Preparation for Deposition(析出の準備)」、第23章に記載されている。
【0066】
バリヤー層が付与されるべき基体の表面が、電着法で使用されるのに十分に電気的に導電性がない場合には、導電性物質、例えば金属、例えば金又はアルミニウム、のシード層が電着の前に施与され得る。そのような層をもたらすための適する方法は、一般的に先行技術において公知であり、印刷及びコーティングを含む。
【0067】
電着プロセスの間の電圧/電流は、定電流制御(電流制御)、定電位制御(基体及び参照電極上の電位差を使用する電位制御)、又はセル電圧制御(すなわち、この場合基体及びアノード(対向電極)上の電位が制御される。)において実施されることができる。
【0068】
形成される層の1以上の特性を調整するために制御されることができるパラメータは、セル電圧、カソード電位、及び電流条件を含む。もっと具体的には、電着の持続時間及び電着の持続時間中に印加された総電荷(クーロン)を選択することによって、ならびに特に、印加される電流及び/又は電位を選択することによって、1以上の特性が影響を及ぼされることができる。
【0069】
1の実施態様では、電着は、その上に金属もしくは半金属が析出される物質及び参照電極上に、本質的に一定の電流、本質的に一定の電位を、又は一定のセル電圧を使用して達成される。
【0070】
しかし、電流及び/又は電位を、少なくとも一つの第一の値(A)と当該第一の値と異なった少なくとも一つの第二の値(B)との間で複数回変えることが、バリヤー層に改良された特性、たとえば改良された平滑性、改良された(水及び/又は他の気体、蒸気又は液状成分に対する)不透過性、及び/又は均一性を備えさせることに関して好都合であることができる。
【0071】
本発明の方法において、最初に値Aを印加しそしてその後に値Bを印加することが可能であり、又はその逆も同様であることが観察される。
【0072】
典型的には、値A、場合により、値Bのうちの少なくとも一つは、還元されそして析出されて電極を形成すべき金属イオン/半金属イオンの標準電位に等しいか又はそれよりも高い。
【0073】
したがって、電位及び/又は電流は、
A) 金属イオン及び/又は半金属イオンの(非イオン状態までの)還元を引き起こすのに十分である電位、場合により、電流(すなわち、還元電位/電流)から、
B) 金属イオン及び/又は半金属イオンの還元を引き起こすには不十分である電位、場合により、電流(すなわち、非還元電位/電流)であって、該非還元電位/電流が酸化電位/電流であってもよい電位、場合により、電流へ、
変えられることができる。
【0074】
また、電位及び/又は電流を、
A) 高い絶対値を有して金属イオン又は半金属イオンの還元を引き起こすのに十分な電位、場合により、高い絶対値を有して金属イオン又は半金属イオンの還元を引き起こすのに十分な、基体を通る電流から、
B) 低い絶対値を有するが、金属又は半金属を含んでいる核の成長を引き起こすにはまだ十分な電位、場合により、低い絶対値を有するが、金属又は半金属を含んでいる核の成長を引き起こすにはまだ十分な、基体を通る電流へ、
変えることも可能である。
【0075】
段階A、場合により、段階Bについての好適な電位/電流は、それから層が形成されるところの金属イオン及び/又は半金属イオン、その上に層が形成されるところの物質、及び条件、たとえば温度に依存する。
【0076】
非還元電位及び還元電位、場合により、非還元電流及び還元電流は、特定の金属又は半金属の標準電位に基づいてルーチンに、任意的に特定のルーチン実験と組み合わされて決定され得る。
【0077】
非還元電位/電流は、酸化電位/電流、すなわち析出された金属/半金属の一部が酸化されることを引き起こすのに十分な電位/電流であることができる。酸化電位/電流は、析出された金属/半金属の表面をエッチングし又は研磨するのに有用であることができる。これは最終層の特性に有益であることができる。
【0078】
それによって電流/電位が変えられるところの頻度(周波数)、段階A、場合により、段階Bの持続時間、段階A、場合により、段階Bにおける電流/電位の(絶対最大)値及び/又はそれによって電圧/電流が変えられるところの傾きを選択することによって、形成されるべきバリヤー層の1以上の特性が影響を及ぼされることができる。
【0079】
(段階Bにおける)非還元電圧/電流は0であることができる。そうすると、セルは一時期、開放セル電圧下に又は残留電位下に置かれることができる。
【0080】
(段階Bにおける)非還元電圧/電流は、標準電位(における電流)とは異符号の電荷を有することができる。これによって、析出された金属/半金属の一部は再酸化されそして任意的に溶解されることができる。したがって、このような電圧/電流は(平均して)還元及び析出が酸化及び溶解よりも大きいようなものでなければならない。
【0081】
電流/電圧が複数回変えられる本発明の方法では、段階Bにおける電流の絶対値:段階Aにおける電流の絶対値の比は1未満である。通常、当該比は0.9未満である。好ましくは当該比は0.8まで、特には0.6まで、より特には0.5までである。
【0082】
段階Bにおける電流:段階Aにおける電流の比(絶対値)は少なくとも0である。
【0083】
段階Bにおける電流は、平均して、再溶解される金属又は半金属の量が析出される金属又は半金属の量よりも少ない限り、(析出された金属又は半金属の一部を再溶解する)酸化電流であることができる。高い還元電流と低い還元電流との間で切り変えることも可能であり、その場合に低い還元電流は金属又は半金属の核の成長を許すのに有利なものであることができる。
【0084】
電位/電流を変える周波数は、広い限度内で選択されることができる。該周波数は本質的に一定であることができ、又は変えられることができる。
【0085】
通常、(第一の還元電位/電流から次の還元電位/電流に至る)変化の平均周波数は、少なくとも0.01Hz、特に少なくとも0.1Hz又は少なくとも1Hzである。変化の平均周波数は、普通10kHzまで、特に1kHzまで、又は500Hzまでである。
【0086】
変化の数(段階Aから次の段階Aまでのサイクル数、又は段階Bから次の段階Bまでのサイクル数)は、諸因子、たとえば所望の析出量(たとえば、所望の層厚さ)、印加される電流密度、周波数、析出効率、エッチング電位/電流の任意的な使用に応じて、広い限度内で選択されることができる。本明細書に開示された情報、一般常識及び任意的な特定のルーチン試験に基づいて、当業者は好適な数を決定することができるだろう。電流/電位が複数回変えられる方法が使用される場合には、AからBへ又はBからAへの変化の数は通常2より多く、特にこれは少なくとも5、少なくとも10、又は少なくとも25であることができる。
【0087】
目標の析出量に到達すること(たとえば、電極の特定の厚さに到達すること)によって、上限は決定される。これは、たとえば1000まで、100000まで、又は1000000までであることができる。しかし、より高い数の変化は原則として、特に、変化の周波数が高い場合に許される。
【0088】
図1A〜Cは、それによって電流/電位が変えられることができるところの多数の様式を示す。他の可能性が採用されることができることは理解されるだろう。たとえば、変化の2以上の様式が組み合わされることができる。これらの図において、レベルIIはそこで析出が起きる還元電流/電位である。レベルIは、a)0電流又は残留電位(開放電位);b)既に析出された金属又は半金属の一部がそこで(酸化されそして)溶解されることができるアノード電流/電位;c)前のレベルIIの電流/電位において形成された金属/半金属の核を成長させるために使用されることができる(レベルIIと比較して)相対的に低い還元電流/電位、であることができる。これらの図において、tは第一のレベルIから次までのサイクル時間(周波数の逆数)であり、tはレベルIIにある電流/電位の持続時間であり、tはレベルIにある持続時間であり、及びt、場合により、tは電流/電圧変化が特定の傾きをもって実施される場合に、一方のレベルから他方のレベルまで(一番端の)電流/電位から変化する時間である。t/tの比は、広い限度内で選択されることができる。処理時間の観点から、比較的高い比が好都合であることができる。比t/tは、特に少なくとも0.001、少なくとも0.01、又は少なくとも1であることができる。比t/tは、特に1000まで、100まで、又は10までであることができる。
【0089】
本発明の実施態様では、変化は電流/電位のパルスを、たとえば図1Aに示されたように印加することを含む。ここで、電流/電位は本質的に瞬間的に変えられる。
【0090】
1の実施態様では、第一の電流/電位から他方までの変化は特定の速度で、たとえば図1Bに示されたように起きる。
【0091】
1の実施態様では、変化は電流/電位を波形の様式で、たとえば正弦波の変化によって、たとえば図1Cに示されたように印加することを含む。
【0092】
さらに、温度が調整されることができる。典型的には、温度はイオン性液体/塩系の融解温度よりも少なくとも高い。実用的な理由から、温度は好ましくは少なくとも環境温度、たとえば少なくとも20℃、又は少なくとも25℃にある。使用されるべきめっき液が環境温度において十分に液状でない場合には、高められた温度、たとえば少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃の高められた温度が選択されることができる。めっき液の比較的低い粘度及び/又は改良された電気伝導度を達成するために、比較的高い温度が普通、好都合である。
【0093】
通常、温度は200℃までである。実用的な理由から、温度は100℃まで、70℃まで、又は50℃までであることが、特にその上に金属又は半金属層が析出される物質が、より高い温度においては十分に熱安定性でない化合物を含んでいる場合には好まれることがある。
【0094】
さらに、電着は、めっき液の対流とともに又は対流なしで、たとえば撹拌とともに又は撹拌なしで実施されることができる。カソードに析出されるべきイオンのおそらくは弊害をもたらす濃度勾配の発生を避け又は少なくとも低減するために、対流は好都合と考えられる。
【0095】
めっき液はイオン性液体を含んでいる。イオン性液体とは、プロセス条件下に液状である塩、たとえば塩の溶融物(melt)から形成された液体である、つまり、プロセス条件下の温度及び圧力が、塩それ自体が液状の物質状態にあるようなものである。一般に、本発明の方法に使用されるイオン性液体は200℃未満の融点、好ましくは100℃以下、特に50℃以下の融点を有する。イオン性液体は約20℃において、又は約25℃において液状であることが特に好まれる。このような液体は室温液状塩と呼ばれることがある。
【0096】
イオン性液体を形成する塩は従来技術で知られている。たとえば、米国特許第4,764,440号は、金属ハロゲン化物とヒドロカルビル飽和オニウム塩との混合物を含んでいる組成物を開示しており、該ヒドロカルビル基のうちの少なくとも1は芳香族ヒドロカルビル基である。好適なイオン性液体の記載に関するこの刊行物の内容、特にその特許請求の範囲において特定されたものは、引用によって本明細書に取り込まれる。米国特許第5,731,101号は、金属ハロゲン化物と式RN・HXのアルキル含有アミンハロゲン化水素酸塩との混合物を含んでいるイオン性液体組成物を開示しており、この式中、少なくとも1のRはアルキルであり、Xはハロゲンであり、このアミンハロゲン化水素酸塩はその中に1かあるいは2のアルキル基を有している。好適なイオン性液体の記載に関するこの刊行物の内容、特にその特許請求の範囲において特定されたものは、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0097】
米国特許第5,892,124号は、一般式Qの液状塩を開示しており、該式中、Qは4級のアンモニウム又はホスホニウムを表し、Aは各種のアニオン、たとえばテトラクロロアルミネート及びトリクロロジンケートを表す。好適なイオン性液体の記載に関するこの刊行物の内容、特にその特許請求の範囲において特定されたものは、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0098】
特に好適なのは、国際公開第02/26381号に記載されたイオン性液体から選択されたイオン性液体であり、その好適なイオン性液体の記載に関するこの刊行物の内容、特にその特許請求の範囲において特定されたものは、引用によって本明細書に取り込まれる。このようなイオン化合物は、式(I)Rの少なくとも1のアミン塩と少なくとも1の水和された塩との反応によって形成されることができ、該水和された塩はLi、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、Bi、La又はCeの塩化物、硝酸塩、硫酸塩又は酢酸塩であり、該式中、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜CアルキルもしくはC〜C10シクロアルキル基であり、又は、R及びRは一緒になってC〜C10アルキレン基を表し、それによって式(I)のN原子とともに5〜11員複素環を形成し、Rは水素、又はフェニル、又はC〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基であり、OH、Cl、Br、F、I、フェニル、NH、CN、NO、COOR、CHO、COR及びORから選択された少なくとも1の基で任意的に置換されていてもよく、RはC〜C10アルキル又はシクロアルキル基であり、かつXは当該水和された塩によって錯化される能力があるアニオン、たとえばCl又はBrのようなハロゲンイオンである。
【0099】
1の実施態様では、イオン性液体は以下のカチオン及び/又はアニオンの塩を含んでいる。
− 一置換のイミダゾリウム化合物、二置換のイミダゾリウム化合物、三置換のイミダゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、ピロリジニウム化合物、ホスホニウム化合物、アンモニウム化合物、グアニジニウム化合物及びイソウロニウム化合物、ならびにこれらの組み合わせの群から選択されたカチオン。置換基は、特に式(I)Rのアミン塩中のR〜Rについて言及したときの上記の置換基から選択されることができる。
− 塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン、イミドイオン、アミドイオン、ホウ酸イオン、トシル酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、チオシアン酸イオン、オクチル硫酸イオン、ヘキシル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、ジシアナミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、ビス(トリフルオロメチル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、ビストリフルオロスルホンイミドイオン、トリフレートイオン及びジシアナミドイオンならびにこれらの組み合わせの群から選択されたアニオン。
【0100】
めっき液は溶媒を含んでいることができ、溶媒とは、本発明の方法が実施される条件下で液状であるところの、液状塩以外の物質である。特に、溶媒は水以外の無機溶媒及び有機溶媒、たとえばベンゼン又はアルコールから選択されることができる。
【0101】
溶媒濃度は総液状塩に基づいて、通常25重量%未満、特に20重量%以下、より特に15重量%以下である。好ましくは、溶媒濃度は総液状塩に基づいて2重量%まで、より好ましくは1重量%未満である。
【0102】
一般に、めっき液は水及び/又は他の溶媒を本質的に含んでいないことが好まれる。めっき液は特に、溶媒の濃度が総液状塩に基づいて0.5重量%未満、より特に0.1重量%未満、又は0.01重量%未満であれば、その溶媒を本質的に含んでいないと考えられる。特に、めっきをする間に水が(本質的に)存在しないことは、物品の寿命に有益であることができると考えられる。
【0103】
(効率及び/又は有効性の観点から)最大の所望の水レベルは、析出されるべき金属によって決まる。標準電位が水素への水の標準電位よりも高い(たとえば、Ag、Au、Cuの)場合には、水濃度は好ましくは0.1重量%以下である。特に、標準電位が水素への水の標準電位以下である(たとえば、Al、Ba、Liの)場合には、10ppm未満、特に1ppm以下の水含有量が望まれる。
【0104】
析出されるべきイオンはすべて同じ金属又は半金属イオンであることができる。異なった金属/半金属からイオンを析出することも可能である。特に、析出されるべきイオンは、稠密な(dense)酸化物を形成する金属又は半金属から選択され得る。特に、該酸化物は、酸素及び/又は水に対して低い透過性を有するべきであり、その結果該酸化物は、該酸化物の層により被覆された金属を腐食から保護する。その酸化物が密な層を形成する金属もまた、バルブ金属として先行技術において公知である。
【0105】
本明細書で使用される金属層は1以上の金属を含んでいる層であり、したがってこの語は金属合金の層を包含する。特に層が金属の電気伝導度を示すならば、該層は金属性と考えられる。
【0106】
半金属とは、一般的には真の金属とはみなされないが、1以上の特定の側面において多かれ少なかれ金属的挙動を示す元素である。特に、半金属は、それが金属導電体よりもむしろ半導体である程度まで電気を伝導する能力がある。特に、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)は半金属の例である。
【0107】
本発明で使用される半金属層は、1以上の半金属を含んでいる層であり、したがってこの語は半金属合金を含んでいる層を包含する。特に層が半金属の電気伝導度を示す(すなわち、半導電特性を示す、たとえば半金属(semi-metal)である)ならば、それは半金属層とみなされる。
【0108】
好ましくは、アルミニウム、ケイ素、タンタル、チタン、クロム、ビスマス、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、ニオブ、及び亜鉛の群から選択された1以上のイオンが本発明に従う方法で還元され、析出されて、バリヤー層を形成する。該形成は、任意的に少なくとも部分的な酸化の後であってもよい。
【0109】
析出に使用される金属イオン又は半金属イオンの対イオンは、イオン性液体のカチオンと同じ又は異なっていることができる。特に、対イオンは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン、イミドイオン、アミドイオン、ホウ酸イオン、トシル酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、チオシアン酸イオン、オクチル硫酸イオン、ヘキシル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、ジシアナミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、ビス(トリフルオロメチル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、ビストリフルオロスルホンイミドイオン、トリフレートイオン及びジシアナミドイオンならびにこれらの組み合わせの群から選択されることができる。
【0110】
本発明の1の実施態様では、共析出を使用することによって、合金の層が形成される。これは、基体上に析出されるべき1より多い種類のイオンを含んでいる単一のめっき液を使用して、単一の電着プロセスにおいて共析出が起きることを許すことによって、達成されることができる。
【0111】
1の実施態様では、析出されるべき異なったイオンが別々のめっき液中に溶解され、それらと基体とがめっき条件下に逐次的に接触される。これは互いの表面上に異なった層の形成を許す。
【0112】
電極を形成するためのイオンを含んでいる塩の総濃度は、好ましくは少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも1モル%、さらにより好ましくは少なくとも5モル%、又は少なくとも10モル%である。高い析出速度を許すために、比較的高い濃度が特に好都合である。
【0113】
めっき液を液体状態に維持するための最大許容濃度(飽和レベル)によって、上限は特に決定される。高い析出速度のためには、比較的高い濃度が普通好都合である。また、めっき液の消耗が顕著になりうる前に、通常、大量のイオンが還元されそして析出されることができる。また、改良された流動性(めっき液の低減された粘度、低減された融解温度)及び/又は改良された電気伝導度のために、析出されるべきイオンが比較的高い濃度において存在することが好都合であることができる。
【0114】
電着により層を形成するための金属/半金属イオンの塩の総濃度は、好ましくは70モル%まで、より好ましくは65モル%まで、特に60モル%までである。実用的な理由、たとえばめっき液中で飽和に達することという理由から、より低い濃度、たとえば40モル%まで、20モル%まで、10モル%まで、又は5モル%以下が選択されることができる。
【0115】
1の有利な実施態様では、「犠牲電極」が対向電極(アノード)として使用される。このような電極の少なくとも表面は、析出されることになる金属又は半金属と同じ金属又は半金属を含んでいる。電着の間、金属又は半金属が基体上に析出される一方で、犠牲電極の表面にある金属/半金属は酸化されそしてめっき液中に溶解されることになる。このようにして、めっき液の組成は長時間ほぼ同じ濃度に維持されることができ、又は少なくとも金属/半金属イオンについてのめっき液の消耗を遅らせることができる。このような電極は、たとえば析出されるべき金属/半金属の板、箔又は糸であることができ、たとえば基体上にアルミニウムを析出させるときには、アルミニウム対向電極が使用されてアルミニウムイオン含有イオン性液体電解質を形成することができる。
【0116】
1の有利な実施態様では、電着の少なくとも一部は、金属又は半金属層が形成される表面又はその一部が、電磁放射にさらされる間に、実施される。電磁放射の波長は典型的には、その上に金属又は半金属が析出されるところの物質(例えば有機半導電性物質)のバンドギャップを乗り超えるのに十分なほど高いエネルギーのものである。これによって析出は援助され、析出を達成するためにより小さい電位が要求される。これによって有機電気活性物質の特性に有害な影響を与える危険が低減される。さらに、このような照射は、(照射された表面上に形成される析出物内の)より均一な析出及び/又はより緻密な析出をもたらすために、特に有用であると本発明者らは想定する。さらにその上、このような照射はピンホールの発生を低減するのに役立つことができると予想される。
【0117】
この実施態様は、図3及び4に概略図として示される。図3はその方法の概略図を示す。半導体層を有する基体6が、析出されることになる金属イオン又は半金属イオンMn+(たとえば、Al3+)を含有するイオン性液体7中でドープされる。対向電極8は任意の好適な物質、たとえば本明細書に記載されたものからつくられることができ、特にこれは、少なくともその表面が金属又は半金属Mを含んでいる電極であることができる。金属を析出するために、半導体層は電磁放射(hν)を照射される。該半導体に小さい逆電位を印加することによって、光子によって生起された電子−正孔の対は分離されることができる。価電子バンド(VB)にある正孔は基体上の背面接点に引かれ、他方、伝導バンド(CB)にある電子はイオン性液体との接触面に運ばれることになる(図2)。接触面において電子は溶液中の金属イオン又は半金属イオンを還元するために使用されることができる。このようにして、金属層又は半金属層が半導体層上に析出されることができる。
【0118】
照射は半導体層上の全体に均一に実施されることができ、又は照射は局所的に施与されて局所的金属析出を達成することができる。電磁照射を局所的に施与することによって、所望の形状を有する、模様つきの電極(patterned electrode)がもたらされることができる。この目的を達成するためにレーザー及び/又はマスクが使用されることができる。
【0119】
電磁放射の波長は通常、赤外線、可視光又は紫外線の領域内で選択されることができる。特定の金属又は半金属の析出に適した電磁放射の波長及び強度は、特定の物質のバンドギャップについての既知の値に基づいて決定されることができ、ならびに/又は一般常識及び本明細書に開示された情報を利用して経験的に決定されることができる。
【0120】
めっき液はさらに、1以上の添加物、たとえば増白剤(例えば滑らかな表面を得ることを助けるため)及び/又は界面活性剤(例えば改良された密着性のため)を含んでいることができる。1以上の添加物は任意的に析出されることもできる。添加物に適した条件は、たとえばM.Schlesinger、M.Paunovic(編)、「Fundamentals of Electrochemical Deposition(電気化学析出の基礎)」、Electrochemical Society Series、第2版、2006年、米国、ニューヨーク州、John Wiley & Sons社刊中の「Effect of additives(添加物の効果)」、第10章に記載されており、この章の内容は引用によって取り込まれる。
【0121】
本発明は、幅広い厚さの範囲の中で、満足できる性質を有するバリヤー層の形成を許す。所望される厚さは、例えば所望されるバリヤー性、(所望される又は所望されない)透明性、物品の(所望される又は所望されない)柔軟性を考慮して決定され得る。
【0122】
厚さは、特に少なくとも1nm,少なくとも10nm,少なくとも100nm,少なくとも1μm,少なくとも10μm又は少なくとも100μmである。厚さは特に1mmまで,400μmまで、100μmまで、10μmまで、1μmまで、100nmまで、又は10nmまでであり得る。
【0123】
層を形成した後、デバイスは1以上のポスト処理ステップに付され得る。例えば、過剰のイオン性液体が除去され得る。採用され得る1以上のさらなるステップ、例えば1以上の他の機能性層の付与、は本明細書において識別された先行技術に記載されている。
【0124】
バリヤー層は、金属又は完全な半金属であってもよい。1の実施態様において、析出された金属又は半金属は、少なくとも部分的に酸化されて、金属酸化物又は半金属酸化物のバリヤー層を形成する。適切な酸化技術は、熱酸化及び化学酸化を含み、特に電気化学酸化を含む。
【0125】
(電気)化学酸化は、水性液体(通常総液体に基づいて50重量%超の水及び該液体に伝導性を与える電解質を含む)中における酸化により達成され得る。当業者は、酸化されるべき金属又は半金属に依存して、適切な条件、例えば適切なpH、温度及び試薬、を選択する方法を知っている。例えば、アルミニウムの場合、中性のpHにおけるpH又はその近傍のpH(中性pH+1pH)が特に適切であると考えられる。好ましくは、酸化はpHモジュレーター、特に、(弱い)酸又は塩基、より特にpHバッファーを形成する酸及び塩基の存在下において行われる。
【0126】
熱酸化は酸素又は酸素を含む気体、例えば空気、の存在下、層を加熱することにより行われ得る。
【0127】
1の実施態様において、バリヤー層は単独の金属層、単独の半金属層、単独の金属酸化物層又は単独の半金属酸化物層からなる。
【0128】
さらなる実施態様において、金属層、半金属層、金属酸化物の層、及び半金属酸化物の層の群から選択された複数(少なくとも2)の層が施与される。そのような実施態様においては、好ましくは、中間層が2つの続く層の間に施与される。そのような層は、特に金属/半金属/金属酸化物/半金属酸化物の層における(それでもなお、限られた程度まで存在し得る)ピンホールを分離させる(decouple)こと、及び/又はそのような層を平坦化することに役立つ。そのような層は、バリヤー層の弾性力、クラッキングに対する耐性、及び/又は脱積層化に対する耐性を改良し得る。そのような中間層のために柔軟な物質(好ましくは弾性のある物質)が使用される場合、そのような層はバリヤー層の柔軟性を全体として改良し得る。
【0129】
そのような中間層は、特に国際公開第2005/015655号,国際公開第03/094256号又は米国特許出願公開第2003/0203210号に記載されているような有機層であり得、これらの層に関する該公報の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0130】
適切には、そのような層はポリマー、特にアクリレートポリマー、エポキシポリマー、フルオロポリマー、ポリp−キシレン(ppx)及びオルガノシリコーンから選択されるポリマーを含み得る。中間層は特に有機化合物を含む液体として例えばスピンコーティング、スプレーコーティング、含浸、縮合、印刷(例えばインクジェット、スクリーン、グラビア、フレクソ)、ウェッジコーティング、キスコーティング、スロットダイコーティングにより施与され得る。
【0131】
任意的には、金属/半金属層は、最初に、少なくとも部分的に酸化され、次に中間層が施与され、そして次の金属/半金属層が析出される。特に、中間層が相対的に薄い場合には、該層が電気的に絶縁性の物質で出来ている場合も、電子は該層を通過して漏れ得、したがって中間層の表面の前処理なしにさらなる電着を許す。あるいは、導電性シード層が、更なる電着の前に、中間層の表面に施与されてもよい。
【0132】
その後、金属/半金属を施与する手順、任意的に酸化する手順、及び中間層を施与する手順は、所望される層の積み重ねを得るために、所望されるだけ、何度も繰り返されてもよい。
【0133】
中間層の厚さは、幅広い範囲で選択されることができ、該厚さは特に10μmまで、1μmまで、又は500nmまでであることができる。通常、もし存在するならば、該厚さは少なくとも50nm、特に少なくとも100nmである。無機中間層の場合、50〜200nmの厚さが特に適する。有機(例えば有機高分子状の)中間層の場合、500nm〜10μmの層が特に適する。
【0134】
任意的に、最も外部の金属、半金属、金属酸化物又は半金属酸化物の層の上にトップ層が施与されてもよい。そのような層は、該中間層のために上記された方法で、該中間層のために上記された物質から施与され得、及び/又は該中間層のために上記された厚さを有し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリヤー層、特に酸素バリヤー層及び/又は水バリヤー層、を含む物品を製造する方法において、
イオン性液体及び金属のイオン又は半金属のイオンを含んでいるめっき液を使用して、有機電気活性物質を含む基体の表面に電着により金属の層又は半金属の層を備えること、ここで該金属のイオン又は半金属のイオンは上記電着の間に還元されそして析出されて金属の層又は半金属の層を形成する、を含み、かつ
好ましくは、上記金属の層又は半金属の層を少なくとも部分的に酸化すること
を含む上記方法。
【請求項2】
該金属の層又は半金属の層が、ロール―ツ―ロール法を用いて電着される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該金属のイオン又は半金属のイオンが、アルミニウム、ケイ素、タンタル、チタン、クロム、ビスマス、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、ニオブ、及び亜鉛の群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数の金属の、半金属の、酸化された金属の又は酸化された半金属の層を含む積み重ねが備えられ、上記層の少なくとも2が中間層により隔てられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該イオン性液体が、
− 一置換のイミダゾリウム誘導体、二置換のイミダゾリウム誘導体、三置換のイミダゾリウム誘導体、ピリジニウム誘導体、ピロリジニウム誘導体、ホスホニウム誘導体、アンモニウム誘導体、グアニジニウム誘導体及びイソウロニウム誘導体の群からのカチオンの少なくとも1及び
− 塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン、イミドイオン、アミドイオン、ホウ酸イオン、トシル酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、チオシアン酸イオン、オクチル硫酸イオン、ヘキシル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、ジシアナミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸イオン、ビス(トリフルオロメチル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、ビストリフルオロスルホンイミドイオン、トリフレートイオン及びジシアナミドイオンの群からの少なくとも1のアニオン
から形成された塩から選択された塩であって、プロセス条件下で液状である塩を含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該イオン性液体が、式R(I)の少なくとも1のアミン塩と少なくとも1の水和された塩との反応によって形成された塩から選択された塩であって、プロセス条件下で液状である塩を含んでおり、該水和された塩はLi、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、Bi、La又はCeの塩化物、硝酸塩、硫酸塩又は酢酸塩であり、該式中、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜CアルキルもしくはC〜C10シクロアルキル基であり、又はR及びRは一緒になってC〜C10アルキレン基を表し、それによって式(I)のN原子とともに5〜11員複素環を形成し、Rは水素、又はフェニル、又はC〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基であり、OH、Cl、Br、F、I、フェニル、NH、CN、NO、COOR、CHO、COR及びORから選択された少なくとも1の基で任意的に置換されていてもよく、RはC〜C10アルキル又はシクロアルキル基であり、かつXは当該水和された塩によって錯化されることができるアニオンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
電位及び/又は電流が、少なくとも1の第一の値(A)と該第一の値とは異なる少なくとも1の第二の値(B)との間で複数回変化され、該値の少なくとも1が析出を起こすのに十分である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該電着が電流制御される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該めっき液が本質的に水を含まない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該基体が箔、フィルム、及びシートの群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該金属の層又は半金属の層が、熱酸化又は電気化学酸化により少なくとも部分的に酸化される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該金属の層又は半金属の層が酸化されて、金属酸化物の層又は半金属酸化物の層を形成する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
物品が、有機ダイオード、例えば有機LED、有機光電池、力学的エネルギーを電気エネルギーに又はその逆に変換するための有機アクチュエーター、有機電気回路、有機トランジスター、及び有機太陽電池の群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該表面が、カソード、特に有機半導体物質を含むカソード又は有機半導体物質上に析出された無機の導電性又は半導電性物質を含むカソード、の表面である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該表面が多孔性である、特に微孔性又はメソ細孔性である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該表面の少なくとも一部が、電磁放射に曝される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法により得られる物品。
【請求項18】
水の透過性が10−3g水/m/日未満、好ましくは10−5g水/m/日未満である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
該バリヤー層が、単独の金属層、単独の半金属層、単独の金属酸化物層又は単独の半金属酸化物層からなる、請求項17又は18に記載の物品。
【請求項20】
該バリヤー層が、単独の金属又は半金属層と単独の金属又は半金属酸化物層との組合せからなり、該金属層は該金属又は半金属酸化物層と物品のコアとの間に存在する、請求項17又は18に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525161(P2010−525161A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504002(P2010−504002)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050220
【国際公開番号】WO2008/127110
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】