説明

バリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法

【課題】アイスブラストを応用したバリ取り洗浄において、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを対象とする場合にあっても、効率の良いバリ取り洗浄を実現することができるバリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法を提供する。
【解決手段】実装用の樹脂基板を個片に切断した後の切断面のバリ取り洗浄において、ウォータジェットノズル20から噴射された高圧のジェット噴流21によって付着強度の大きい面バリ18aをまず除去し、次いで、ラバールノズルを応用したアイスブラストノズル22によって水の凍結粒子23a、過冷却の液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群を洗浄媒体23として噴射し、残留した髭バリ18bを液滴23bが凍結固化した氷結体23cによって包み込んだ固形物27とすることによって樹脂基板8から剥離させる。これにより、ウォータジェットとアイスブラストの長所を組み合わせた効率の良いバリ取り洗浄が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装用の樹脂基板などのワークを機械的に加工した加工部位に発生するバリを除去して加工部位を洗浄するバリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる実装基板のうち、小型機器に用いられる小サイズの基板は複数の基板が作り込まれたいわゆる多面取り基板の形態で取り扱われ、スクリーン印刷や電子部品の搭載などの部品実装作業は複数の基板を対象として一括して行われる。部品実装が完了した多面取り基板は、基板切断工程において個片の基板に分割されて完成品となる。この基板切断は、従来より軸状の切断工具であるルータや円板状の回転工具であるダイシングブレードを回転させて基板を機械的に切削することにより行われる場合が多い。
【0003】
電子部品の実装に用いられる基板には、一般にガラスエポキシ樹脂などの樹脂基板に銅などの導電性金属の膜によって回路電極を形成したものが用いられ、基板の厚さ方向を貫通して回路を形成する必要がある場合には、基板の表面のみならず基板を貫通して設けられたスルーホールの内面にも銅などの金属膜が箔状に形成される。そして多面取り基板を個片基板に分割するための基板切断においては、基板表面の回路電極やスルーホール内面の銅膜が、基板材質である樹脂と同時に機械的に切断され、この切断時において切断部には銅などの金属性の微細なバリが発生する。
【0004】
このようなバリが残留したまま製品として用いられると、脱落したバリによる回路電極の短絡などの不具合を要因となるため、基板切断過程で発生したバリは極力除去する必要がある。ところが銅など回路電極に用いられる金属は延性に富んで屈曲容易であることから、機械的外力によって折り取って効率よく除去することが難しく、以前はブラシなどを用いた人手によるバリ除去作業に依存せざるを得ない実情にあった。
【0005】
このような除去難度の高い微細なバリを対象とする洗浄技術として、アイスブラスト応用のバリ取り洗浄技術が知られている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1に示す先行技術においては、過冷却水製氷装置によって製造した氷を氷スラリーの状態でバリ洗浄取り対象となる部位に噴射するようにしている。また特許文献2に示す例においては、ラバールノズルを用いて洗浄液の凍結粒子および過冷却状態の液滴を形成するようにしている。
【特許文献1】特開2001−25968号公報
【特許文献2】特開2007−73615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、除去対象となるバリの発生態様は様々であり、特に上述の電子部品実装用の基板のように、基板の主材質である樹脂に銅などの金属膜が形成された複合材の切断面を対象とする場合には、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリが発生し、切断後のバリ取り洗浄工程においてはこれら種々の形態のバリを対象として除去作業を行うことが求められる。しかしながら上述のアイスブラストを応用したバリ取り洗浄においてこのようなバリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを全て除去しようとすれば、噴射量や処理時間などの作業パラメータを除去難易度が最大のバリに合わせて設定する必要があり、作業効率の観点からは必ずしも最適なバリ取り洗浄条件で作業を行うことができなかった。
【0007】
このように、従来のアイスブラストを応用したバリ取り洗浄においては、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを対象とする場合には、効率の良いバリ取り洗浄を実現することができなかった。そしてこのような課題は、電子部品実装用の基板を機械的に切断する分野に限られず、ワークを機械的に加工した加工部位に除去し難い微細なバリが発生する場合においても共通するものであった。
【0008】
そこで本発明は、アイスブラストを応用したバリ取り洗浄において、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを対象とする場合にあっても、効率の良いバリ取り洗浄を実現することができるバリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバリ取り洗浄装置は、ワークを機械的に加工した加工部位に発生したバリを除去して洗浄するバリ取り洗浄装置であって、前記ワークを保持するワーク保持部と、洗浄液を少なくとも2MPa以上の圧力で前記加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射手段と、洗浄液の凍結粒子を含む洗浄媒体を前記加工部位に対して洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射手段と、前記噴射ノズルおよび洗浄ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させる移動手段とを備えた。
【0010】
本発明のバリ取り洗浄方法は、ワークを機械的に加工した加工部位に発生したバリを除去して洗浄するバリ取り洗浄方法であって、前記ワークをワーク保持部に保持させるワーク保持工程と、噴射ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させながら、洗浄液を少なくとも2Mpa以上の圧力で前記加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射工程と、前記洗浄液の噴射によって前記加工部位に生じた前記バリを除去またはバリの付着強度を低下させる第1のバリ取り洗浄工程と、洗浄ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させながら、洗浄液の凍結粒子およびまたは過冷却状態の液滴を含む洗浄媒体を前記加工部位に対して前記洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射工程と、前記洗浄媒体によって前記第1のバリ取り洗浄工程後においてもなお加工部位に残留する前記バリを除去して洗浄する第2のバリ取り洗浄工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄液を少なくとも2MPa以上の圧力で加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射手段と、洗浄液の凍結粒子を含む洗浄媒体を加工部位に対して洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射手段とを併せて備えることにより、加圧された洗浄液の衝撃力により除去可能なバリを予め除去し、またはバリ除去を容易にした状態で凍結粒子を含む洗浄媒体をバリに対して作用させることができ、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを対象とする場合においても、効率の良いバリ取り洗浄を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置のワーク保持部の斜視図、図3は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置によるバリ取り洗浄対象となる樹脂基板の説明図、図4は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置におけるノズルヘッドの構成説明図、図5は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置における作動流体供給部の配管系統図、図6は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置における洗浄液の噴射ノズルの説明図、図7は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置に使用されるラバールノズルの構造説明図、図8は本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄方法の工程説明図である。
【0013】
まず図1を参照して、バリ取り洗浄装置1の全体構成を説明する。バリ取り洗浄装置1は、ワークを機械的に加工した加工部位に発生したバリを除去して洗浄する機能を有するものである。本実施の形態においては、ワークとして電子部品実装用の樹脂基板を対象としており、この樹脂基板の表面に電極として形成された銅膜や、樹脂基板の厚み方向を貫通して設けられたスルーホール(貫通孔)の内面に形成された銅膜のいずれか一方または双方を機械的に切断することによって生じたバリを対象として、バリ取り洗浄を行う例を示している。
【0014】
図1において、基台1aの上面には、バリ取り洗浄のための洗浄処理室1bを閉囲するカバー部材2が設けられており、洗浄処理室1b内には、以下に説明するバリ取り洗浄機構が配置されている。基台1aの上面には、Xテーブル3X、Yテーブル3Yを組み合わせたXYロボット3が配設されており、Yテーブル3Yに結合された水平な移動テーブル4の上面には、ワークである樹脂基板8を保持するワーク保持部5が装着されている。ワーク保持部5の上方には、バリ取り洗浄のためのノズルヘッド6が保持ブラケット(図示省略)によって保持されている。
【0015】
ノズルヘッド6(図4参照)には、作動流体供給部7から供給される高圧水を樹脂基板8に対して噴射するウォータジェットノズル(噴射ノズル)とともに、同様に作動流体供給部7から供給される洗浄水(洗浄液)および圧縮空気により微細な氷の粒子や水滴をワーク保持部5に保持されたバリ取り洗浄対象の樹脂基板8に対して噴射して洗浄するアイスブラストノズル(洗浄ノズル)が装備されている。XYロボット3を駆動することにより、ワーク保持部5はX方向、Y方向に移動し、これによりワーク保持部5に保持された樹脂基板8をノズルヘッド6に対して相対的に移動させることができる。
【0016】
したがってXYロボット3は、噴射ノズルであるウォータジェットノズルおよび洗浄ノズルであるアイスブラストノズルをワーク保持部5に対して相対移動させる移動手段となっている。なおここでは、ノズルヘッド6を固定配置し、樹脂基板8を水平移動させる構成を採用しているが、ワーク保持部5を固定配置し、ノズルヘッド6をXYロボットによって移動させる構成であってもよい。
【0017】
カバー部材2の前面には、ワーク保持部5の移動範囲に対応して開口部2aが設けられており、開口部2aにはカバー扉9が水平動自在に装着されている。カバー扉9は扉開閉シリンダ9aによって駆動され、これにより開口部2aは開閉する。洗浄処理室1b内への樹脂基板8の搬入・搬出は、開口部2aの前面に設けられた基板搬送アーム10によって行われる。
【0018】
次に図2を参照して、ワーク保持部5の構造を説明する。ワーク保持部5は、冷却ユニット12の上面に樹脂基板8が載置される保持テーブル11を積層した構成となっている。保持テーブル11の上面には、ガイド部材13が設けられており、保持テーブル11上に載置された樹脂基板8はガイド部材13によって位置決めされる。さらに保持テーブル11の上面には、樹脂基板8を構成する個片基板8aの配列に対応して、吸着孔11aが形成されており、保持テーブル11の内部には、吸着孔11aから真空吸引するための内部吸引孔11b(図4参照)が設けられている。
【0019】
樹脂基板8が保持テーブル11に載置された状態で、真空吸引源29(図5参照)によって内部吸引孔11bから真空吸引することにより、樹脂基板8のそれぞれの個片基板8aを真空吸着によって保持することができるようになっている。冷却ユニット12の内部には、冷媒循環孔12aが設けられており、冷媒循環孔12a内に不凍液などの冷媒を循環させることにより、保持テーブル11に保持された樹脂基板8は予め設定された所定温度に冷却される。
【0020】
次に図3を参照して、バリ取り洗浄対象の樹脂基板8および樹脂基板8におけるバリの発生状態について説明する。ここで示す樹脂基板8は、小型機器に用いられる小サイズの回路基板が同一の親基板に作り込まれたいわゆる多面取り基板であり、ガラスエポキシ樹脂などの樹脂を材質としている。ここでは、部品実装作業の前工程において必要に応じて行われる基板切断、またはスクリーン印刷や電子部品の搭載などの部品実装作業が完了した後、完成品としての個片基板8aに分割するための基板切断を終えた状態のものが対象となっている。
【0021】
この基板切断はダイシングブレードやルータなどの切削工具を用いて行われ、ここに示す例では、取り扱いの便宜のため、それぞれの個片基板8aを完全には分離させず、部分的に繋がった状態としている。すなわち図3に示すように、樹脂基板8において横方向には連続した連続切断溝14が加工され、縦方向には各個片基板8a毎に断続した断続切断溝15が加工されており、複数の個片基板8aを樹脂基板8の全体形状を保ったまま一体として搬送して、ワーク保持部5に保持させることが可能となっている。
【0022】
図3(a)の拡大図に示すように連続切断溝14は、樹脂基板8の表面に形成された電極17とともに、樹脂基板8を貫通して設けられたスルーホール16を切断する形態で加工されている。この溝加工によって形成された切断面14aにおいて、スルーホール16の内面に電極17と一体に形成された導電性金属の膜(ここでは銅膜)が、ガラスエポキシ樹脂などの樹脂を材質とする樹脂基板8の本体とともに切断されることによってバリが発生する。
【0023】
このバリは、切削工具による切断加工時に切削断面17aが切断方向に金属の延性により引き伸ばされて延出し、面的な拡がりを有する形で薄膜状に形成された面積的に大きなバリ(以下「面バリ18a」と略称する。)とともに、電極17の一部が微細な髭状に引き伸ばされた幅細のバリ(以下「髭バリ18b」と略称する。)など、バリ発生形態(発生部位、大きさ、付着強度など)の異なる多様なバリが発生する。さらにこのようなバリが断片として飛散して切断部近傍に付着した場合には、付着バリ18cとして残留する。
【0024】
このようなバリが残留したまま製品として用いられると、脱落したバリによる回路電極の短絡などの不具合を要因となるため、基板切断過程で発生したバリは極力除去する必要があるが、銅など回路電極に用いられる金属は延性に富んで屈曲容易であり、単純に機械的に外力を作用させて折り取る形で効率よく除去することが難しい。本実施の形態においては、このようなバリ発生形態や付着特性が異り、完全な除去が難しいバリを対象として、以下に説明する方法によってバリ取り洗浄を行うようにしている。
【0025】
図4は、このバリ取り洗浄に使用されるノズルヘッド6の構成およびワーク保持部5における樹脂基板8の保持形態を示している。前述のように、ワーク保持部5の保持テーブル11上に載置された樹脂基板8は、個片基板8a毎に設けられた吸着孔11aによって保持テーブル11に吸着保持されており、冷却ユニット12に設けられた冷媒循環孔12a内で冷却媒体を循環させることにより、樹脂基板8は保持テーブル11を介して冷却される。この冷却効果により、バリ取り洗浄動作に先立って、樹脂基板8の温度を極力低下させ、以下に説明するアイスブラストによるバリ取り洗浄を効率よく行うことができる。なお対象となるワークの種類によっては予冷が不要の場合もあり、冷却ユニット12は必須構成要件ではない。
【0026】
ノズルヘッド6は、ノズルブロック6aにウォータジェットノズル20およびアイスブラストノズル22を装着した構成となっている。ウォータジェットノズル20は、作動流体供給部7から供給される高圧水をジェット噴流21として噴射する。またアイスブラストノズル22は、同様に作動流体供給部7から供給される洗浄液としての洗浄水と圧縮空気から発生した凍結粒子23aおよび液滴23bを含んだ洗浄媒体23を、ワーク保持部5に保持された樹脂基板8に対して噴射する。
【0027】
ここでウォータジェットノズル20およびジェット噴流21は、ノズルヘッド6に対して所定姿勢、すなわちそれぞれから噴射されるジェット噴流21、洗浄媒体23の樹脂基板8の表面8bへの入射角度がそれぞれ角度α1、α2となるように保持される。角度α1、α2は、一般には30度〜60度の範囲であるが、詳細の角度は個別の樹脂基板8を対象として実際にバリ取り洗浄テストを行った試行結果に基づいて設定される。
【0028】
次に、図5を参照して、作動流体供給部7などの配管系の構成を説明する。図5において、真空吸引源29は保持テーブル11に接続されており、真空吸引源29を作動させることにより、樹脂基板8は保持テーブル11に吸着保持される。冷媒循環部30は、冷媒供給管30a・戻り管30bを介して冷却ユニット12に接続されており、不凍液などの冷媒を冷却して冷却対象部に循環させる機能を有している。冷媒供給管30aに介設された開閉バルブ31を開閉することにより、冷却ユニット12による樹脂基板8の冷却動作が制御される。
【0029】
作動流体供給部7には、洗浄水供給源32およびエア供給源33から、洗浄液として使用される洗浄水および噴射媒体として使用される圧縮空気がそれぞれ供給される。まず、ウォータジェットノズル20にジェット噴流21を噴射させるための配管系について説明する。高圧水を発生するための第1のポンプ37は、洗浄水供給配管32aを介して洗浄水供給源32に接続されており、洗浄水供給配管32aに介設された開閉バルブ34を操作することにより、第1のポンプ37への水の供給が断接される。
【0030】
第1のポンプ37は電動モータにより駆動され、開閉バルブ34を開にした状態で第1のポンプ37を駆動することにより、第1のポンプ37は高圧水を発生する。第1のポンプ37は高圧水供給配管37aを介してウォータジェットノズル20に接続されており、高圧水供給配管37aには開閉バルブ39、フィルタ40が介設されている。開閉バルブ39を開閉制御することにより、ウォータジェットノズル20からのジェット噴流21の噴射のオンオフが制御され、ジェット噴流21は、ワーク保持部5に保持された樹脂基板8に対して噴射される。フィルタ40は噴射される高圧水の異物を除去する。
【0031】
第1のポンプ37によって発生した高圧水の圧力は圧力センサ38によって検出され、この検出結果に基づいて制御部(図示省略)によって第1のポンプ37を制御することにより、第1のポンプ37によって発生する高圧水の圧力を所定の圧力に設定することができる。なお本実施の形態においては、ジェット噴流21は衝撃力によってバリを除去することを目的としていることから、少なくとも2MPa以上の圧力としており、樹脂基板8のような樹脂基板を対象とする場合には、15Mpa程度の圧力とすることが望ましい。上記構成において、ウォータジェットノズル20および第1のポンプ37は、洗浄水を少なくとも2MPa以上の圧力で、樹脂基板8を切断加工した加工部位に対してウォータジェットノズル20を介して噴射する洗浄液噴射手段となっている。なお本実施の形態においては、第1のポンプ37として電動モータ駆動形式のものを用いているが、用途によっては、第1のポンプ37としてエア駆動形式のものを用いてもよい。
【0032】
次に、アイスブラストノズル22に洗浄水と圧縮空気を供給する配管系について説明する。エア供給源33に接続されたエア供給管33aはアイスブラストノズル22に接続されており、エア供給管33aにはレギュレータ41、フィルタ42、冷凍式エアドライヤ43、および開閉バルブ45が介設されている。開閉バルブ45を開閉制御することにより、アイスブラストノズル22に供給される圧縮空気がオンオフ制御される。レギュレータ41はエア供給配管33aに供給される圧縮空気の圧力を調整し、フィルタ42は供給される圧縮空気の異物を濾過して除去する。冷凍式エアドライヤ43は圧縮空気を冷却することにより水分を凍結させて除去する。エア供給配管33aに接続された温度センサ44は、供給される圧縮空気の温度を検出する。レギュレータ41を操作することにより、アイスブラストノズル22に供給される圧力を所定の圧力に設定することができる。
【0033】
洗浄水供給配管32aが分岐した洗浄水供給配管32bは、定量吐出型の第2のポンプ46に接続されており、第2のポンプ46は洗浄水供給配管32bを介して供給された洗浄水を定量吐出する。吐出された洗浄水は、吐出水配管46aを介して冷却ユニット50に送給される。吐出水配管46aには流量センサ47、逆止弁48、フィルタ49が介設されている。流量センサ47は吐出水配管46aを流れる洗浄水の流量を検出する。逆止弁48は洗浄水の逆流を防止し、フィルタ49は洗浄水中の異物を濾過して除去する。
【0034】
冷却ユニット50に備えられた冷媒容器50aには冷媒供給管30a、戻り管30bが開閉バルブ52を介して繋ぎ込まれており、開閉バルブ52を開状態にすることにより、冷媒容器50a内には冷媒循環部30によって冷却される不凍液などの冷媒51が循環する。冷媒容器50a内には吐出水配管46aと連通した冷却管50bが配置されており、冷却管50bは冷媒51に浸漬された状態にあって常に冷媒51によって冷却されている。
【0035】
上記構成により、吐出水配管46aから送給された洗浄水は、冷却管50b内を通過することによって所定の設定温度(本実施の形態においては、約5℃)に冷却され、この状態で冷水供給配管50cを介してアイスブラストノズル22に供給される。このとき、流量センサ47の検出結果に基づいて制御部(図示省略)によって第2のポンプ46の駆動を制御することにより、アイスブラストノズル22には常に予め設定された規定流量の冷水が供給される。
【0036】
次に図6を参照して、ウォータジェットノズル20の構造およびウォータジェットノズル20によるジェット噴流21の噴射態様について説明する。図6(a)に示すように、ウォータジェットノズル20の本体部であるノズル本体20aには、流路孔20bが設けられており、流路孔20bに供給された高圧水はさらに2つに分岐して噴射間隔bで配置された2つのノズルチップ20cから噴射される。2つのノズルチップ20cから噴射されたジェット噴流21は、図6(b)に示すように、切断幅Bの連続切断溝14の両側の切断面14aに発生したバリ(図3に示す面バリ18a)を狙い撃ちして噴射される。
【0037】
この面バリ18aの狙い撃ちを正確に行うためには、ウォータジェットノズル20における噴射間隔bおよびウォータジェットノズル20の軸方向の回転角度θを、連続切断溝14の切断幅Bに応じて適切に設定する。このとき、ジェット噴流21の切断面14aへの入射角度は、0度〜30度程度の範囲で試行結果により決定される。図6に示す例では、単一のノズル本体20aによって2つのジェット噴流21を噴射する例を示したが、もちろん2つの切断面14aをより正確に狙い撃ちするために、2つの独立したウォータジェットノズル20を噴射狙い位置調整可能に装備して、バリ取り洗浄のための狙い撃ち位置調整をより精緻に行えるような構成としてもよい。
【0038】
次に図7を参照して、アイスブラストノズル22の構造およびアイスブラストノズル22による洗浄媒体23の噴射態様について説明する。図7(a)に示すように、アイスブラストノズル22は、円筒形状のノズル本体部22aを主体としており、ノズル本体部22aには長手方向に貫通して内部流路孔24が形成されている。内部流路孔24の上流側は、エア供給配管33bが接続されて圧縮空気(矢印a)が導入される導入部24aとなっている。導入部24aの下流側には、内部流路孔24の流路径が流れ方向に沿って絞られた縮径部24b、流路径が最も小さく絞られた喉部24c、流路径が拡大する拡径部24dおよび流路径が漸増する加速冷却部24eが圧縮空気の流れ方向に順次設けられている。
【0039】
すなわち、上述構成のアイスブラストノズル22は、縮径部24b、喉部24cおよび拡径部24dを有するラバールノズルを形成している。縮径部24b、喉部24cおよび拡径部24dの形状は、供給される圧縮空気が断熱膨張により低温に冷却されるように設定される。喉部24cの上流側には、洗浄液を圧縮空気の流れと同方向に導入する液滴供給管25が設けられており、冷水供給配管50cから予め設定された規定量で供給される冷却された洗浄水は、液滴供給管25の先端部から微細な液滴26の状態で下流側へ放出される。
【0040】
導入部24aに0.2Mpa〜1MPa程度の圧力で供給された圧縮空気の流れは、縮径部24bによって加速され(矢印b)、音速程度の流速で喉部24cを通過する。そして拡径部24dを通過して拡径部24d内に移動することにより圧力が低下してさらに加速され(矢印c)、断熱膨張により−110℃程度まで温度が低下する。そして液滴供給管25の先端部から流出して圧縮空気の流れによって微粒化した液滴26は、温度が低下した圧縮空気によって急激に冷却され、液滴26が凍結した凍結粒子23aおよび液滴26が過冷却のまま液滴の状態で存在する液滴23bが生成される。すなわち、ここでは凍結粒子23aおよび液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群が形成される。
【0041】
そしてこのような固液2相の噴霧粒子群を含む圧縮空気の流れである洗浄媒体23は、徐々に拡径する加速冷却部24e内で加速されながら下流側へ高速で流動し(矢印d)、アイスブラストノズル22の先端部から噴射される。このとき、洗浄媒体23によってバリ取り洗浄作用を有する有効径として、図7(c)に示す必要処理幅W、すなわち樹脂基板8の切断幅Bに、付着バリ18c(図3参照)などによるバリ付着が発生する洗浄対象範囲を加えた幅Wを十分カバーすることが可能な有効径D1が得られるように、アイスブラストノズル22の各部寸法が設定される。
【0042】
上記構成において、アイスブラストノズル22およびアイスブラストノズル22に洗浄水、圧縮空気をそれぞれ供給する第2のポンプ46、エア供給源33は、洗浄液としての洗浄水の凍結粒子23aを含む洗浄媒体を樹脂基板8を切断加工した加工部位に対してアイスブラストノズル22を介して噴射する凍結洗浄媒体噴射手段を構成する。そして、図6に示す例においては、凍結洗浄媒体噴射手段は、ラバールノズルを用いることにより洗浄水を微粒化するとともに、断熱膨張による急冷効果により洗浄水の凍結粒子23aおよび過冷却状態の液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群を形成するようにしている。このようなアイスブラストノズル22は既に公知のものであり、その構成は特開2007−73615号公報に詳述されている。
【0043】
なお、ラバールノズルを用いた凍結洗浄媒体噴射手段の構成としては、図7(a)に示す構成例以外にも、図7(b)に示す構成例のものを用いることもできる(特開平10−223587号公報参照)。すなわち図7(b)に示すアイスブラストノズル122は、ノズル本体部122aを長手方向に貫通して、内部流路孔124を形成した構成となっている。内部流路孔124の上流側は、エア供給配管33bが接続されて圧縮空気(矢印e)が導入される導入部124aとなっている。導入部124aの下流側には、内部流路孔124の流路径が流れ方向に沿って絞られた縮径部124b、流路径が最も小さく絞られた喉部124c、流路径が拡大する拡径部124dおよび流路径が漸増する加速冷却部124eが圧縮空気の流れ方向に順次設けられている。縮径部124b、喉部124cおよび拡径部124dの形状は、アイスブラストノズル22の場合と同様に、供給される圧縮空気が断熱膨張により低温に冷却されるように設定される。
【0044】
すなわち導入部124aに供給された圧縮空気の流れは、縮径部124bによって加速され(矢印f)、音速程度の流速で喉部124cを通過する。そして拡径部124dを通過して拡径部24d内に移動することにより圧力が低下してさらに加速され(矢印g)、断熱膨張により−110℃程度まで温度が低下する。喉部124cの上流側には、洗浄液を圧縮空気の流れと同方向に導入する液滴供給路125が開口した開口部125aが縮径部124bの内側面に設けられており、冷水供給配管50cから供給される洗浄液は開口部125aから微細な液滴26の状態で放出される。
【0045】
そして圧縮空気の流れによって微粒化した液滴26は、温度が低下した圧縮空気によって急激に冷却され、アイスブラストノズル22と同様に凍結粒子23aおよび過冷却状態の液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群が形成される。このような噴霧粒子を含む圧縮空気の流れである洗浄媒体23は、徐々に拡径する加速冷却部124e内で加速されながら下流側へ高速で流動し(矢印h)、アイスブラストノズル122の先端部から噴射される。この構成例においても、図7(c)に示す必要処理幅Wを十分カバーすることが可能な有効径D2が得られるように、アイスブラストノズル122の各部寸法が設定される。
【0046】
なお図5,図6,図7に示す例においては、バリ取り洗浄に用いる洗浄液として、もっとも安価で使用しやすい水(洗浄水)を用いる例を示したが、水以外の洗浄に適した液体を洗浄液として用いてもよい。また、ウォータジェットノズル20によって高圧で噴射される洗浄液と、アイスブラストノズル22によって凍結粒子とされる洗浄液との種類が異なってもよい。
【0047】
次に、図8を参照して、切断加工後の樹脂基板8に発生したバリを除去して洗浄するバリ取り洗浄方法について説明する。まず、図3に示す切断加工後の樹脂基板8をワーク保持部5に保持させ(ワーク保持工程)、この後ノズルヘッド6による樹脂基板8を対象としたバリ取り洗浄動作が行われる。まず、ウォータジェットノズル20をワーク保持部5に対して相対移動させながら、洗浄水を少なくとも2Mpa以上の圧力(ここでは例えば15MPa)で、切断加工でバリが発生した加工部位に対してウォータジェットノズル20を介して噴射する(洗浄液噴射工程)。
【0048】
すなわち、図8(a)に示すように、樹脂基板8を矢印方向に移動させることにより、ウォータジェットノズル20を樹脂基板8の切断部位に対して相対移動させ、ジェット噴流21を面バリ18aや髭バリ18bに作用させる。このとき、面積的に大きい面バリ18aにはジェット噴流21の狙い位置が外れることなく必ずヒットすることから、ジェット噴流21の衝撃力が大きなバリ取り外力として作用し、これにより面バリ18aは容易に除去される。これに対し、髭バリ18bのように細長形状で面積が小さい微細なバリには、ジェット噴流21が有効にヒットする確率は小さい。
【0049】
しかもジェット噴流21がこのようなバリにヒットした場合においても、図8(b)に示すように、細長形状で箔状の髭バリ18bのようなバリの場合には、ジェット噴流21の衝撃力は髭バリ18bを屈曲させて付着力を低下させるのみで、完全に除去されるまでには至らない場合が多い。すなわちここでは、ウォータジェットノズル20による洗浄水の噴射によって加工部位に生じた面バリ18aや髭バリ18bなどのバリを、除去またはバリの付着強度を低下させるようにしている(第1のバリ取り洗浄工程)。
【0050】
次いで、図8(c)に示すように、樹脂基板8を矢印方向に移動させることにより、アイスブラストノズル22をワーク保持部5に対して相対移動させながら、洗浄水の凍結粒子23aおよびまたは過冷却状態の液滴23bを含む洗浄媒体23を、加工部位に対してアイスブラストノズル22を介して噴射する(凍結洗浄媒体噴射工程)。この凍結洗浄媒体噴射工程においては、前述のようにラバールノズルを用いることにより、洗浄水を微粒化するとともに断熱膨張による急冷効果により、洗浄水の凍結粒子23aおよび過冷却状態の液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群が圧縮空気によって流動する形態の洗浄媒体23を形成して噴射し、洗浄媒体23によって第1のバリ取り洗浄工程後においてもなお加工部位に残留するバリを除去して洗浄する(第2のバリ取り洗浄工程)。
【0051】
この第2のバリ取り洗浄工程におけるバリ除去のメカニズムについて説明する。図8(c)に示すように、アイスブラストノズル22から噴射された洗浄媒体23中の液滴23bは過冷却されていることから、微細な髭バリ18bに接触すると急速に凍結固化する。そして複数の液滴23bが髭バリ18bに付着堆積することにより、髭バリ18bは液滴23bが凍結固化した氷結体23cによって包み込まれ、固形物27が生成される。このような固形物27は面的な拡がりを有することから、髭バリ18bそのもののサイズと比較して大きい面積を有しており、洗浄媒体23の噴射による外力によって、図8(d)に示すように、容易にバリ発生部位から剥離脱落し、これにより髭バリ18bが樹脂基板8から除去される。
【0052】
これとともに、図3(b)に示すように、樹脂基板8の上面に付着した付着バリ18cなど、基板切断における加工部位の近傍に存在する微細異物も同様に、液滴23bが凍結固化した氷結体23cに包み込まれて除去される。すなわち、ここでは、樹脂基板8に生成した微細な髭バリ18bなどの微細異物の除去において、髭バリ18bなどの微細異物を包み込んだ過冷却の液滴23bが凍結固化することによって生成した固形物27を、樹脂基板8のバリ発生部位から剥離させるようにしている。
【0053】
上記説明したように、樹脂基板8の切断後のバリ取り洗浄のように、バリ発生形態やバリ除去特性の異なる多様な種類のバリを対象とするバリ取り洗浄装置において、洗浄液としての洗浄水を少なくとも2MPa以上の圧力で加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射手段と、洗浄水の凍結粒子を含む洗浄媒体を加工部位に対して洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射手段とを併せて備えた構成を採用することにより、以下に述べるような優れた効果を得る。
【0054】
すなわち、既存のバリ取り技術として旧知のウオータージェットは、高圧水の衝撃力を局所的に集中的に作用させることにより、強固に付着したバリに対しても強い物理力を作用させてバリを折り取り、または壊食により破壊して除去することができるという優れたバリ除去能力を有している。この反面、サイズが微細で狙い撃ち位置から外れる確率が高いバリや、銅のように延性に富む金属が微細な箔状となった形態のバリに対しては、有効な打撃力を確実に与えることが困難で、完全なバリ除去結果を得ることが難しいという欠点がある。
【0055】
これに対して、前述のラバールノズル応用のアイスブラストなど、洗浄水の凍結粒子を含んだ洗浄媒体をバリに対して噴射するバリ取り洗浄方法においては、洗浄媒体中に微細な凍結粒子や液滴が多数含まれていることから、微細なバリに対しても確実にこれら凍結粒子や水滴を作用させて、確実なバリ除去を行うことができるという長所を有している。しかしながら、これらの凍結粒子や水滴は分散状態で噴射されることから、図4に示す面バリ18aなど強固な付着力を保ったまま発生しているバリに対しては、バリ除去のための十分な打撃力という観点からは必ずしも有効ではない。このため、このようなバリまでを除去可能範囲に含めてバリ取り条件を設定しようとすれば、噴射量・圧力を高めに設定するとともに、処理速度を低く設定する必要があり、結果としてバリ取り作業コストの上昇と作業効率の低下を招く結果となる。
【0056】
本発明のバリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法は、このようなウォータジェット技術、アイスブラスト技術の各要素を同一装置内において適切に組み合わせることにより、一方の短所を他方の長所によって補完することを狙ったものである。すなわち、高圧の洗浄水を噴射するウオータジェット技術は構成が極めて簡略であり、圧力・流量の組み合わせによってバリ取り効果に寄与する衝撃力を自由自在に設定することが可能であることから、組み合わされるアイスブラストが不得手とするようなバリの特性が特定されれば、このようなバリを対象として条件出し作業を行うことにより、求められるバリ取り条件を容易に設定することができる。これにより、アイスブラストによるバリ取りの条件出しにおいては、このような不得手なバリを対象から外すことができ、条件出し結果のオーバースペック化を招くことなく、適正なバリ取り条件を設定することが可能となる。
【0057】
なお上述の実施の形態においては、凍結洗浄媒体噴射手段としてラバールノズルを用いて凍結粒子23a、過冷却状態の液滴23bを含む固液2相の噴霧粒子群を形成する構成を示したが、本発明における凍結洗浄媒体噴射手段はこのようなラバールノズルを用いた構成に限定されるものではなく、以下に示すように、各種の洗浄液の凍結粒子を含む洗浄媒体を噴射する機能を備え、微細なバリを除去するのに適した特性を有するものであれば、本発明の適用対象となる。
【0058】
例えば、特開2005−209884号公報の(0029)〜(0035)に開示されているように、公知のボルテックス効果を利用して圧縮空気を熱気と冷気とに分離することにより発生した冷気によって、凍結粒子を形成する方式を用いることも可能である。すなわち供給された圧縮空気を回転室内で高速回転させて接線方向に吐出させることにより、この圧縮空気は膨張するとともに高速回転する渦流となって熱気吐出口へ移動する。そしてこの渦流に働く遠心力により圧力・密度が急上昇するとともに、温度が上昇した熱気となって外部に放出される。一方放出されない残留空気は渦流れの遠心力によって形成された中心部の空洞内を断熱膨張によって温度が低下した冷気となって移動して冷気吐出口から排出される。この方式によれば、−60℃程度の冷気を得ることが可能であり、この冷気の流れ内に水滴を放出することにより、水の凍結粒子を含んだ凍結洗浄媒体が得られる。
【0059】
また凍結洗浄媒体噴射手段として、特開2001−25968号公報に開示されているように、過冷却水製氷装置により凍結粒子としての氷粒を製造する方式を用いることも可能である。すなわち、過冷却水を落下衝突させることにより微細な氷粒を製造し、これらの氷粒を氷スラリーの状態で噴射する。
【0060】
また凍結洗浄媒体噴射手段として、特開2003−151942号公報に開示されているように、水と水より凝固点の低い有機化合物を過冷却状態で混合させることにより、前記凍結粒子としての氷粒子を発生させる方式を用いてもよい。すなわち、水と水より凝固点の低いイソプロピルアルコールとの混合液を、冷凍機により水の凝固点以下に冷却することにより、氷粒子を含む個液共存のシャーベット状の洗浄媒体を得ることができる。
【0061】
さらに凍結洗浄媒体噴射手段として、特開2005−313060号公報に開示されているように、洗浄液としての液体2酸化炭素を凍結粒子としてのドライアイスまたはドライスノーにして噴射する構成を用いてもよい。この場合には、洗浄液としての液体2酸化炭素を加圧された2酸化炭素ガスによってドライアイスまたはドライスノーの状態でバリ取り洗浄対象に噴射する。
【0062】
なお上述の実施の形態においては、ワークとして電子部品実装後の実装基板をルータなどによって切断した状態の樹脂基板8を示したが、本発明の適用対象はこのような樹脂基板8には限定されず、ワークを機械的に加工した加工部位に単一のバリ取り技術では除去しがたい微細なバリが発生する場合にも一般化して適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のバリ取り洗浄装置およびバリ取り洗浄方法は、アイスブラストを応用したバリ取り洗浄において、バリ取り難易度の異なる種々の形態のバリを対象とする場合においても、効率の良いバリ取り洗浄を実現することができるという効果を有し、樹脂基板を機械的に切断することによって生じた銅膜のバリなど除去困難なバリを対象とするバリ取り洗浄の分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置のワーク保持部の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置によるバリ取り洗浄対象となる樹脂基板の説明図
【図4】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置におけるノズルヘッドの構成説明図
【図5】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置における作動流体供給部の配管系統図
【図6】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置における洗浄液の噴射ノズルの説明図
【図7】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄装置に使用されるラバールノズルの構造説明図
【図8】本発明の一実施の形態のバリ取り洗浄方法の工程説明図
【符号の説明】
【0065】
1 バリ取り洗浄装置
3 XYロボット
5 ワーク保持部
6 ノズルヘッド
7 作動流体供給部
8 実装基板
8a 個片基板
11 保持テーブル
12 冷却ユニット
16 スルーホール
17 電極
18a 面バリ
18b 髭バリ
20 ウォータジェットノズル(噴射ノズル)
21 高圧ジェット
22 アイスブラストノズル(洗浄ノズル)
23 洗浄媒体
23a 凍結粒子
23b 液滴
27 固形物
32 洗浄水供給源
33 エア供給源
37 第1のポンプ
46 第2のポンプ
50 冷却ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを機械的に加工した加工部位に発生したバリを除去して洗浄するバリ取り洗浄装置であって、
前記ワークを保持するワーク保持部と、洗浄液を少なくとも2MPa以上の圧力で前記加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射手段と、洗浄液の凍結粒子を含む洗浄媒体を前記加工部位に対して洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射手段と、前記噴射ノズルおよび洗浄ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させる移動手段とを備えたことを特徴とするバリ取り洗浄装置。
【請求項2】
前記ワークは電子部品実装用の樹脂基板であり、前記バリは前記樹脂基板の表面およびまたは貫通孔の内面に形成された銅膜を機械的に切断することによって生じたものであることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項3】
前記凍結洗浄媒体噴射手段は、ラバールノズルを用いることにより前記洗浄液を微粒化するとともに断熱膨張による急冷効果により前記洗浄液の凍結粒子および過冷却状態の液滴を含む固液2相の噴霧粒子群を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項4】
前記凍結洗浄媒体噴射手段は、ボルテックス効果を利用して圧縮空気を熱気と冷気とに分離することにより発生した冷気によって前記凍結粒子を形成することを特徴とすることを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項5】
前記凍結洗浄媒体噴射手段は、過冷却水製氷装置により前記凍結粒子としての氷粒を製造することを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項6】
前記凍結洗浄媒体噴射手段は、水と水より凝固点の低い有機化合物を過冷却状態で混合させることにより、前記凍結粒子としての氷結晶を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項7】
前記凍結洗浄媒体噴射手段は、洗浄液としての液体2酸化炭素を凍結粒子としてのドライアイスまたはドライスノーにして噴射することを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り洗浄装置。
【請求項8】
ワークを機械的に加工した加工部位に発生したバリを除去して洗浄するバリ取り洗浄方法であって、
前記ワークをワーク保持部に保持させるワーク保持工程と、噴射ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させながら、洗浄液を少なくとも2Mpa以上の圧力で前記加工部位に対して噴射ノズルを介して噴射する洗浄液噴射工程と、前記洗浄液の噴射によって前記加工部位に生じた前記バリを除去またはバリの付着強度を低下させる第1のバリ取り洗浄工程と、洗浄ノズルを前記ワーク保持部に対して相対移動させながら、洗浄液の凍結粒子およびまたは過冷却状態の液滴を含む洗浄媒体を前記加工部位に対して前記洗浄ノズルを介して噴射する凍結洗浄媒体噴射工程と、前記洗浄媒体によって前記第1のバリ取り洗浄工程後においてもなお加工部位に残留する前記バリを除去して洗浄する第2のバリ取り洗浄工程とを含むことを特徴とするバリ取り洗浄方法。
【請求項9】
前記ワークは電子部品実装用の樹脂基板であり、前記バリは前記樹脂基板の表面およびまたは貫通孔の内面に形成された銅膜を機械的に切断することによって生じたものであることを特徴とする請求項8に記載のバリ取り洗浄方法。
【請求項10】
前記凍結洗浄媒体噴射工程において、ラバールノズルを用いることにより前記洗浄液を微粒化するとともに断熱膨張による急冷効果により前記洗浄液の凍結粒子および過冷却状態の液滴を含む固液2相の噴霧粒子群を形成することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載のバリ取り洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264926(P2008−264926A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111143(P2007−111143)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】