説明

バルブのシール構造

【課題】バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造において、シール要素にはみ出し現象が発生するのを抑え、もってその破損を防止することが可能なバルブのシール構造を提供する。
【解決手段】一対のシール要素を、金属等の剛性部品と、合成樹脂よりなる平板との組み合わせとし、または、金属等の剛性部品と、表面にゴム膜14を被着した金属よりなる12平板との組み合わせとする。表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12は、弁閉時に板バネ性を発揮するよう立体化された状態で、保持部材に設けた装着溝13bに装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造に関するものである。本発明のシール構造は例えば、燃料電池用高圧ガスバルブの開閉作動部に用いられる。
【背景技術】
【0002】
図6に示す従来のバルブ装置51においてはその閉弁作動時、図7(A)に示すように一方のシール要素である金属部品よりなる弁体52が、他方のシール要素であるゴムリップ(外側シール部)53および金属部(内側シール部)54に順次当接するように構成され、すなわち先ずゴムリップ53に当接してから金属部54に当接するように構成されている。
【0003】
しかしながらこの構造によると、シールすべきガス圧力の高圧化に伴ってゴムリップ53が圧力に押されて変形し、はみ出し現象を生じることから、図7(B)に示すようにゴムリップ53が弁体52と金属部54との間に挟まれて破損してしまうことがある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−150728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、シール要素にはみ出し現象が発生するのを抑えることができ、もってその破損を防止することが可能なバルブのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるシール構造は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造において、前記一対のシール要素は、金属等の剛性部品と、合成樹脂よりなる平板との組み合わせとされていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2によるシール構造は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造において、前記一対のシール要素は、金属等の剛性部品と、表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板との組み合わせとされていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項3によるシール構造は、上記した請求項2記載のシール構造において、表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板は、弁閉時に板バネ性を発揮するよう立体化された状態で、保持部材に設けた装着溝に装着されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成を有する本発明の請求項1によるシール構造のように、金属等の剛性部品と組み合わされるシール要素として従来のゴムリップに代えて合成樹脂よりなる平板を使用すると、この合成樹脂よりなる平板はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても大きく変形せず、よってはみ出し現象を生じることがない。態様としては、弾性のある樹脂、例えばテフロン(登録商標)を保持部材に貼り付けるのが好適である。
【0010】
また、上記構成を有する本発明の請求項2によるシール構造のように、金属等の剛性部品と組み合わされるシール要素として従来のゴムリップに代えて表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板を使用すると、この表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても大きく変形せず、よってはみ出し現象を生じることがない。平板の表面に被着したゴム膜は薄い膜状であることから、これもはみ出し現象を生じることがない。態様としては、薄い鉄板、ステンレス板またはアルミニウム板などの表面に合成ゴムをコーティングしたものを保持部材に貼り付けるのが好適である。
【0011】
またこれに加えて、本発明の請求項3によるシール構造のように、表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板を、弁閉時に板バネ性を発揮するよう立体化した状態で、保持部材に設けた装着溝に装着するようにすると、弁閉時に作用するバネ反発力によって、優れたシール性を発揮することが可能となる。また、使用環境による極低温時にゴムシールの圧力はなくなるが、金属の弾性は低温時の影響を受けないことから、安定したシール性を維持することが可能である。上記平板の立体化は、平板の塑性変形によるが、平板を弾性変形させるものであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明の請求項1によるシール構造においては上記したように、金属等の剛性部品と組み合わされるシール要素として従来のゴムリップに代えて合成樹脂よりなる平板を使用するようにしたために、この合成樹脂よりなる平板はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても大きく変形せず、はみ出し現象を生じることがない。したがって、従来生じていたシール要素のはみ出し現象を抑えることができ、もってその破損を防止することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2によるシール構造においては上記したように、金属等の剛性部品と組み合わされるシール要素として従来のゴムリップに代えて表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板を使用するようにしたために、この表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても大きく変形せず、はみ出し現象を生じることがない。平板の表面に被着したゴム膜は薄い膜状であることから、これもはみ出し現象を生じることがない。したがって、従来生じていたシール要素のはみ出し現象を抑えることができ、もってその破損を防止することができる。
【0015】
またこれに加えて、本発明の請求項3によるシール構造においては上記したように、表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板を、弁閉時に板バネ性を発揮するように立体化した状態で、保持部材に設けた装着溝に装着するようにしたために、弁閉時に作用するバネ反発力によって、優れたシール性を発揮することが可能とされている。金属板バネによるシール性は、使用環境が極低温時にも失われることがない。したがって、上記請求項2によりはみ出し破損を防止し、なおかつ当該請求項3により優れたシール性を発揮する高性能のバルブシール構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るバルブのシール構造を示している。
【0018】
当該実施例に係るシール構造は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離するものであって、一対のシール要素が、金属等の剛性部品である弁体1と、弁座側の、合成樹脂よりなる平板(樹脂板)2との組み合わせにより構成されている。
【0019】
平板2は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の弾性のある樹脂を成形材料として環状の平板状に成形されており、その一面に軸直角平面状の当接面2aを有している。平板2の厚みは、耐変形性を確保するよう薄く設定されている。また、この平板2はその他面側の貼着面2bをもって保持部材であるバルブボディ3の保持面3aに貼着されており、貼着部の密着性を確保するため、金属よりなるバルブボディ3の保持面3aには凹凸形状(凹凸面)3bが形成されている。
【0020】
弁体1は、金属または硬質樹脂等の剛材によって成形されており、その一部に軸直角平面状の当接面1aを有している。
【0021】
図1(A)はバルブの弁開状態を示しており、高圧側空間Hから低圧側空間Lへ高圧ガスが流れている。この弁開状態からバルブが閉弁作動して弁体1がバルブボディ3に近付く方向に移動すると、図1(B)に示すように弁体1の当接面1aが平板2の当接面2aに密接し、弁閉のシール状態が実現される。
【0022】
上記構成のシール構造においては、金属等の剛性部品よりなる弁体1と組み合わされる弁座側のシール要素が従来のようにゴムリップではなく合成樹脂よりなる平板2とされているために、この合成樹脂よりなる平板2はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても変形することがなく、よってはみ出し現象を生じることがない。したがって、シール要素にはみ出し現象が発生するのを抑えることができ、もってその破損を防止することができる。また、一対のシール要素が剛性部品同士の組み合わせではなく、剛性部品と樹脂との組み合わせであることから、必要とされるシール性を確保することができる。
【0023】
第二実施例・・・
図2は、本発明の第二実施例に係るバルブのシール構造を示している。
【0024】
当該実施例に係るシール構造は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離するものであって、この一対のシール要素が、金属等の剛性部品である弁体11と、弁座側の、表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板(金属板)12との組み合わせにより構成されている。
【0025】
平板12は、鉄板、ステンレス板またはアルミニウム板等の金属板によって環状の平板状に成形されており、その一面12aに合成ゴムよりなる薄膜状のゴム膜14が全面に亙ってコーティングされている。したがってこのゴム膜14の表面が軸直角平面状の当接面14aとされている。また、この平板12はその他面側の貼着面12bをもって保持部材であるバルブボディ13の保持面13aに貼着されている。
【0026】
一方の弁体11は、金属または硬質樹脂等の剛材によって成形されており、その一部に軸直角平面状の当接面11aを有している。
【0027】
図2(A)はバルブの弁開状態を示しており、高圧側空間Hから低圧側空間Lへ高圧ガスが流れている。この弁開状態からバルブが閉弁作動して弁体11がバルブボディ13に近付く方向に移動すると、図2(B)に示すように弁体11の当接面11aが平板12におけるゴム膜14の当接面14aに密接し、弁閉のシール状態が実現される。
【0028】
上記構成のシール構造においては、金属等の剛性部品よりなる弁体11と組み合わされる弁座側のシール要素が従来のようにゴムリップではなく表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12とされているために、この表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても変形することがなく、よってはみ出し現象を生じることがない。平板12の表面にコーティングされたゴム膜14は薄い膜状であることから、これもはみ出し現象を生じることがない。したがって、シール要素にはみ出し現象が発生するのを抑えることができ、もってその破損を防止することができる。また、一対のシール要素が剛性部品同士の組み合わせではなく、剛性部品とゴムとの組み合わせであることから、必要とされるシール性を確保することができる。
【0029】
第三実施例・・・
図3は、本発明の第三実施例に係るバルブのシール構造を示している。
【0030】
当該実施例に係るシール構造は、バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離するものであって、この一対のシール要素が、金属等の剛性部品である弁体11と、弁座側の、表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板(金属板)12との組み合わせにより構成されている。また、表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12は、弁閉時、弁体11に押圧されたときに板バネ性を発揮するように立体化された状態で、保持部材であるバルブボディ13に設けた装着溝13bに装着されている。
【0031】
平板12は、鉄板またはステンレス板等の金属板によって環状の平板状に成形されるとともに図示するように断面略円弧形の立体状に設定されており、その凸側の一面12aに合成ゴムよりなる薄膜状のゴム膜14が全面に亙ってコーティングされている。装着溝13bに装着された状態で平板12は上記円弧形の凸側が装着溝13bの外部へ突出するので、この凸側突出部の頂端部位に弁体11が接離することになり、よって該部位におけるゴム膜14が当接部14bとされている。
【0032】
一方、弁体11は、金属または硬質樹脂等の剛材によって成形されており、その一部に軸直角平面状の当接面11aを有している。
【0033】
図3(A)はバルブの弁開状態を示しており、高圧側空間Hから低圧側空間Lへ高圧ガスが流れている。この弁開状態からバルブが閉弁作動して弁体11がバルブボディ13に近付く方向に移動すると、図3(B)に示すように弁体11の当接面11aが平板12におけるゴム膜14の当接部14bに当接し、平板12を撓ませ、弁閉のシール状態が実現される。撓んだ平板12はそのバネ反発力によってゴム膜14を弁体11に強く押し付けることになる。
【0034】
上記構成のシール構造においては、金属等の剛性部品よりなる弁体11と組み合わされる弁座側のシール要素が従来のようにゴムリップではなく表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12とされているために、この表面にゴム膜14を被着した金属よりなる平板12はその材質および形状的な特徴から圧力に押されても変形することがなく、よってはみ出し現象を生じることがない。平板12の表面にコーティングされたゴム膜14は薄い膜状であることから、これもはみ出し現象を生じることがない。したがって、シール要素にはみ出し現象が発生するのを抑えることができ、もってその破損を防止することができる。
【0035】
また、上記したように表面にゴム膜14をコーティングした金属よりなる平板12が、弁閉時に板バネ性を発揮するように立体化された状態でバルブボディ13の装着溝13bに装着されているために、弁閉時この平板12に弁体11が押し付けられると、平板12は弾性変形してバネ反発力を発生し、これによりゴム膜14を弁体11に強く押し付ける。したがって、優れたシール性が発揮されることになる。また、この金属板バネによるシール性は、使用環境が極低温時にも失われることがないことから、優れたシール性を維持することができる。
また当該実施例では、平板12の全面にゴム膜14がコーティングされているために、ゴム膜14は上記円弧形の脚部近傍において装着溝13内部の側面13cに密接する。したがって、平板12およびバルブボディ13間のシール性を確保することもできる。
【0036】
尚、上記第三実施例では、立体化された平板12が断面略円弧形を呈して1条のシールビードをなすように設定されているが、設定するシールビードの数は複数とすることも可能であって、例えば図4の例では円弧形が径方向に2つ並べられてシールビードが2条設定されている。このようにシールビードの数が複数であると弁閉時複数段のシール構造が形成されることから、シール性を一層向上させることができる。
【0037】
また、上記第三実施例では、保持部材であるバルブボディに設ける装着溝を断面矩形の矩形溝としているが、図5に示すように蟻溝(あり溝)とすることによって抜け防止効果を得ることができる。
【0038】
更にまた、上記各実施例では、金属等の剛性部品がバルブの弁体を形成し、合成樹脂または金属等よりなる平板がバルブの弁座側を形成しているが、反対に金属等の剛性部品がバルブの弁座側を形成し、合成樹脂または金属等よりなる平板がバルブの弁体側を形成することにしても良い。この場合は、合成樹脂または金属等よりなる平板が金属等の剛性部品に対して進退することになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一実施例に係るシール構造を示す図で、(A)はその弁開状態の断面図、(B)はその弁閉状態の断面図
【図2】本発明の第二実施例に係るシール構造を示す図で、(A)はその弁開状態の断面図、(B)はその弁閉状態の断面図
【図3】本発明の第三実施例に係るシール構造を示す図で、(A)はその弁開状態の断面図、(B)はその弁閉状態の断面図
【図4】平板立体化構造の他の例を示す断面図
【図5】装着溝断面形状の他の例を示す断面図
【図6】従来例に係るバルブ装置の断面図
【図7】同バルブ装置に備えられるシール構造の断面図
【符号の説明】
【0040】
1,11 弁体(剛性部品)
1a,2a,11a,14a 当接面
2,12 平板
2b,12b 貼着面
3,13 バルブボディ
3a,13a 保持面
3b 凹凸形状
12a 一面
13b 装着溝
13c 側面
14 ゴム膜
14b 当接部
H 高圧側空間
L 低圧側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造において、
前記一対のシール要素は、金属等の剛性部品と、合成樹脂よりなる平板との組み合わせとされていることを特徴とするバルブのシール構造。
【請求項2】
バルブの開閉作動に合わせて一対のシール要素が互いに接離する構造のバルブのシール構造において、
前記一対のシール要素は、金属等の剛性部品と、表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板との組み合わせとされていることを特徴とするバルブのシール構造。
【請求項3】
請求項2記載のシール構造において、
表面にゴム膜を被着した金属よりなる平板は、弁閉時に板バネ性を発揮するよう立体化された状態で、保持部材に設けた装着溝に装着されていることを特徴とするバルブのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−333018(P2007−333018A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163206(P2006−163206)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】