説明

バルブ装置

【課題】 コイルスプリングとバルブ孔との干渉を回避して弁体のスムーズな移動を確保したバルブ構造を提供する。
【解決手段】 バルブ孔に形成され、弁体の内周面が摺動保持される本体部と、バルブ孔に形成され、コイルスプリングの他端部の径方向位置決めを行い、本体部よりも径方向寸法が小さく形成された小径部と、バルブ孔に形成され、本体部と小径部とを接続する中間部とを有し、コイルスプリングのうち中間部の軸方向範囲内に存在する部分であって、弁体の軸方向移動によって小径部内に移動する部分を出没部とし、小径部のコイルスプリングの一端側端部の内径は、弁体がコイルスプリングの一端側方向に最も移動した際における出没部の外径よりも大きいこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブ構造に関し、特に可変容量型ベーンポンプに用いられるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される可変容量型ポンプに設けられたリリーフバルブにあっては、油路を閉塞するボールと、このボールを保持する保持部とから構成される弁体と、この弁体を付勢するコイルスプリングが制御弁体に形成されたバルブ孔に収容される構造となっている。バルブ孔は、コイルスプリングの弁体とは反対側の端部の径方向位置を規定するため、一部が小径に形成されている。
【特許文献1】特開2005−42675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術にあっては、上述のようにバルブ孔の一部が小径に設けられているため、コイルスプリングがストロークして撓みが生じた際にコイルスプリングが小径部の内周面と干渉し、弁体がスムーズに移動しないおそれがあった。
【0004】
また、コイルスプリングが樽型形状を有する場合はコイルスプリングの撓みは抑制されるが、コイルスプリングの大径部分が小径部に入り込むことにより、コイルスプリングの大径部分とバルブ孔の小径部の内周面とが干渉し、弁体がスムーズに移動しないおそれもある。
【0005】
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、コイルスプリングとバルブ孔との干渉を回避して弁体のスムーズな移動を確保したバルブ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、バルブ孔に形成され、弁体の外周面が摺動保持される本体部と、バルブ孔に形成され、コイルスプリングの他端部の径方向位置決めを行い、本体部よりも径方向寸法が小さく形成された小径部と、バルブ孔に形成され、本体部と小径部とを接続する中間部とを有し、コイルスプリングのうち中間部の軸方向範囲内に存在する部分であって、弁体の軸方向移動によって小径部内に移動する部分を出没部とし、小径部のコイルスプリングの一端側端部の内径は、弁体がコイルスプリングの一端側方向に最も移動した際における出没部の外径よりも大きいこととした。
【0007】
よって、コイルスプリングとバルブ孔との干渉を回避して弁体のスムーズな移動を確保したバルブ構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
[ベーンポンプの概要]
実施例1につき説明する。実施例1のベーンポンプ1は、y軸正方向側の第2流体圧室A2に吸入圧を導入し、y軸負方向側の第1流体圧室A1に制御圧を導入するベーンポンプである。
【0010】
図1はベーンポンプ1の軸方向断面図、図2は径方向断面図、図3は制御バルブ200付近の拡大断面図である。図2ではカムリング4が最もy軸負方向に位置する場合(偏心量最大)を示す。なお、駆動軸2の軸方向をx軸とし、第1、第2ハウジング11,12へ駆動軸が挿入される方向を正とする。
【0011】
また、カムリング4の揺動を規制するスプリング71(図2参照)の軸方向カムリング4側をy軸負方向、x軸およびy軸と直交する軸であって吸入、吐出口IN,OUT側をz軸正方向とする。
【0012】
ベーンポンプ1は、駆動軸2、ロータ3、カムリング4、アダプタリング5、およびポンプボディ10を有する。駆動軸2はプーリを介して図外のエンジンと接続され、ロータ3と一体回転する。
【0013】
ロータ3の外周には軸方向溝である複数のスロット31が放射状に形成され、各スロット31にベーン32が径方向に出没可能に挿入される。また、各スロット31の内径側端部には背圧室33が設けられ、吐出圧が供給されてベーン32を径方向外側に付勢する。背圧室33への吐出圧の供給は、プレッシャープレート6のx軸正方向側面61、および第2ハウジング12のx軸負方向側面120に設けられた背圧導入溝64,124によって行う。
【0014】
ポンプボディ10は第1ハウジング11および第2ハウジング12から形成される。第1ハウジング11はx軸正方向側に開口する有底カップ形状であり、底部111には円盤状のプレッシャープレート6が収装される。第1ハウジング11内周部であるポンプ要素収容部112であってプレッシャープレート6のx軸正方向側には、アダプタリング5、カムリング4、およびロータ3が収装される。
【0015】
第2ハウジング12はx軸正方向側からアダプタリング5、カムリング4、およびロータ3と液密に当接し、アダプタリング5、カムリング4、およびロータ3はプレッシャープレート6および第2ハウジング12に挟持されることとなる。
【0016】
また、第2ハウジング12のx軸負方向側面120には高圧導入溝9が設けられている。この高圧導入溝9はx軸負方向側面120上であってカムリング4と常時摺動する位置に設けられ、吐出ポート122と接続してカムリング4と第2ハウジング12との摺接面に吐出圧を導入する。摺接面のほぼ全周にわたって吐出圧を導入することで、摺接面にかかる圧力を均一化させる。
【0017】
プレッシャープレート6のx軸正方向側面61および第2ハウジング12のx軸負方向側面120にはそれぞれ吸入ポート62,121および吐出ポート63,122が設けられ、ロータ3とカムリング4の間に形成されるポンプ室Bへの作動油の給排を行う。
【0018】
吸入ポート62,121および吐出ポート63,122は第1ハウジング11のz軸正方向側に設けられた吸入口IN(ポンプ吸入側)、吐出口OUT(ポンプ吐出側)とそれぞれ接続し、作動油の給排が行われる。
【0019】
アダプタリング5はy軸側を長軸、z軸側を短軸とする略楕円状の円環部材であり、外周側において第1ハウジング11に収装されるとともに、内周側においてカムリング4を収装する。ポンプ駆動時に第1ハウジング11内で回転しないよう、アダプタリング5の外周は第1ハウジング11に対し回転を規制されて嵌合される。
【0020】
カムリング4は略真円の円環部材であり、外周はアダプタリング5の短軸とほぼ同径に設けられている。したがって、略楕円状のアダプタリング5に収装されることにより、アダプタリング5内周とカムリング4外周の間には流体圧室Aが形成され、カムリング4はアダプタリング5内においてy軸方向に揺動可能となる。
【0021】
また、アダプタリング5の内周面53のz軸正、負方向端部には、それぞれシール部材50およびピン40が設けられている。このピン40とシール部材50により、カムリング4とアダプタリング5との間の流体圧室Aはy軸負、正方向に画成されて第1、第2流体圧室A1,A2を形成する。
【0022】
ロータ3の外径はカムリング内周面41よりも小径に設けられ、カムリング4内周側に収装される。カムリング4が揺動し、ロータ3とカムリング4の相対位置が変化した場合であっても、ロータ3の外周はカムリング内周面41と当接しないよう設けられている。
【0023】
また、揺動によりカムリング4が最もy軸正方向に位置する場合、カムリング内周面41とロータ3外周との距離Lはy軸負方向側において最大となる。カムリング4が最もy軸負方向に位置する場合は、距離Lはy軸正方向側において最大となる。
【0024】
ここで、ベーン32の径方向長さは距離Lの最大値よりも大きく設けられており、そのためベーン32は、カムリング4とロータ3との相対位置によらず、常にスロット31に挿入されつつカムリング内周面41に当接した状態を維持することとなる。これにより、ベーン32は常時背圧室33から背圧を受け、カムリング内周面41と液密に当接する。
【0025】
したがって、カムリング4とロータ3との間の領域は、隣り合うベーン32によって常時液密に画成されてポンプ室Bを形成する。揺動によりロータ3とカムリング4が偏心状態にあれば、ロータ3の回転に伴って各ポンプ室Bの容積が変化する。
【0026】
プレッシャープレート6および第2ハウジング12に設けられた吸入ポート62,121および吐出ポート63,122はロータ3の外周に沿って設けられ、各ポンプ室Bの容積変化により作動油の給排が行われる。
【0027】
また、プレッシャープレート6のx軸正方向側面61には吸入ポート63と第2流体圧室A2とを連通する吸入圧導入溝65が設けられ、第2流体圧室A2に吸入圧Pinを導入する。
【0028】
アダプタリング5のy軸正方向端部には径方向貫通孔51が設けられている。また、第1ハウジング11のy軸正方向端部にはプラグ部材挿入孔114が設けられ、有底カップ形状のプラグ部材70が挿入されてポンプボディ11、リアボディ12外部との液密を保つ。
【0029】
このプラグ部材70の内周にはスプリング71がy軸方向に伸縮可能に挿入され、アダプタリング5の径方向貫通孔51を貫通してカムリング4に当接し、y軸負方向へ付勢する。
【0030】
スプリング71は揺動量が最大となる方向にカムリング4を付勢し、圧力の安定しないポンプ始動時において吐出量(カムリング4揺動位置)を安定させるものである。
【0031】
カムリング4の偏倚量はy軸負方向側に向かって大きくなるため、スプリング71の付勢方向は偏倚量が最大となる方向となる。
【0032】
[制御バルブ]
制御バルブ200はスプール210およびリリーフバルブ220から形成されて第1ハウジング11内の制御バルブ収装孔115に収装される。
【0033】
スプール210はy軸正方向に開口する有底カップ形状であり、弁体付勢スプリング230によりy軸負方向に付勢される。内周211にはリリーフバルブ220が収装され、外周212は第1、第2摺動部213,214において制御バルブ収装孔115に対し液密に摺動可能に設けられている。
【0034】
第1、第2摺動部213,214は外周212において他の部分よりも大径に設けられ、第1、第2摺動部213,214の間には凹部215が形成される。これにより制御バルブ収装孔115は、第1摺動部213よりもy軸負方向側の第1油室D1、第2摺動部214よりもy軸正方向側の第2油室D2、および第1、第2摺動部213,214と凹部215により形成された第3油室D3、の3つの油室D1〜D3に隔成される。
【0035】
第1油室D1は油路21を介して吐出ポート63,122と接続し、第2油室D2は油路22を介して吐出ポート63,122と接続する。したがって第1油室D1には吐出圧Poutが導入される。油路22にはオリフィス8が設けられており、第2油室D2にはオリフィス下流圧Pfbが導入される。オリフィス下流圧Pfbは、オリフィス8の圧力降下分だけ吐出圧Poutよりも低圧となる。
【0036】
第3油室D3は油路23を介して吸入口INと接続して吸入圧Pinが導入され、凹部215に設けられた径方向孔216によりスプール内周211と連通する。スプール内周211にはリリーフバルブ220が収装され、第2、第3油室D2,D3はこのリリーフバルブ220により隔成される。
【0037】
第1ハウジング11およびアダプタリング5のz軸正方向側であってシール部材50のy軸負方向側には、第1油室油路113および第1流体圧室連通孔52が設けられている。
【0038】
この第1油室油路113のバルブ孔側開口部113aは、ポンプ非駆動時においてスプール210の凹部215とy軸方向に対し重複する位置に開口し、第3油室D3と連通する。スプール210のy軸正方向移動に伴って第1摺動部213が開口部113aよりもy軸正方向に移動すると、第1油室油路113は第1油室D1と連通する。
【0039】
ここで、スプール210には第1油室D1からのy軸正方向側への力Fv1、第2油室D2からのy軸負方向側への力Fv2、弁体付勢スプリング230のy軸負方向への付勢力Fc1が作用し、バランス条件は
Fv1=Fv2+Fc1
である。
【0040】
したがって、
Fv1≦Fv2+Fc1・・・(a)
であれば、スプール210はy軸負方向に移動し、開口部113aは第1摺動部213よりもy軸正方向に位置する。これにより第1油室油路113と第3油室D3とが連通する。
一方、
Fv1>Fv2+Fc1・・・(b)
であれば、開口部113aは第1摺動部213よりもy軸負方向に位置し、第1油室D1と連通する。
したがって、弁体付勢スプリング230の付勢力Fc1を変更することにより、第1油室油路113と第1、第3油室D1,D3の連通条件を変更可能である。
【0041】
[リリーフバルブ]
図4はリリーフバルブ220の拡大断面図である。リリーフバルブ220はy軸正方向から順に弁座221、ボール弁222、弁体223、およびコイルスプリング224から形成される。
【0042】
弁座221は制御バルブ200のスプール210に対し軸方向摺動可能に収装され、第2油室D2とスプール内周211を液密に隔成する。また、弁座221には軸方向貫通孔221aが設けられ、第2油室D2の液圧による力Fv2がボール弁222に作用する。
【0043】
コイルスプリング224はスプール210の底部217にy軸負方向側を係止される。このコイルスプリング224は樽型スプリングであって、両端部よりも中央部が大径に設けられている。両端部の径をBとすると、中央部の径はA(A>B)である。
【0044】
樽型とすることにより、コイルスプリング224はストロークして収縮した場合であっても、コイルスプリング224自身の撓みを抑制し、常に本体部211cとスプリング外周部の隙間を確保することができる。
【0045】
ボール弁222は弁体223を介してコイルスプリング224にy軸正方向に付勢される。したがって、ボール弁222にはy軸正方向側から第2油室D2の液圧による力Fv2が作用するとともに、y軸負方向側からコイルスプリング224の付勢力Fc2が作用する。
【0046】
これにより、
Fv2≦Fc2・・・(c)
であれば、ボール弁222は弁座221に当接して軸方向貫通孔221aを閉塞し、リリーフバルブ220は第2、第3油室D2,D3を遮断する。
一方、
Fv2>Fc2・・・(d)
であれば、ボール弁222は弁座221から離間して第2、第3油室D2,D3が連通される。このため第3油室D3は吸入口INおよび第2油室D2と連通する。
したがって、コイルスプリング224の付勢力Fc2を変更することによりリリーフバルブ220の開弁条件を変更可能となっている。
【0047】
[制御バルブと第1流体圧室の連通関係]
(i).第1油室D1と第1油室油路113が連通する場合(上記(a)式)
この場合、第1流体圧室A1には第1油室油路113および第1流体圧室連通孔52を介して常時第1油室D1から吐出圧Pout(オリフィス8の上流側圧力)が導入される。
【0048】
(ii).第3油室D3と第1油室油路113が連通する場合(上記(b)式)
この場合、リリーフバルブ220が連通/遮断いずれであるかによって第3油室D3の圧力が変化し、第1流体圧室A1へ導入される圧力が異なる。
(ii)−1.リリーフバルブ220が遮断状態の場合(上記(c)式)
第2、第3油室D2,D3が遮断され、第1流体圧室A1には油路23、第3油室D3を介して吸入圧Pinが導入される。
(ii)−2.リリーフバルブ220が連通状態の場合(上記(d)式)
第3油室D3は油路23に加え第2油室D2とも連通し、第3油室D3の圧力は吸入圧Pinと第2油室D2のオリフィス下流圧Pfbとの混合圧Pm(吐出圧Pout>Pm>吸入圧Pin)として第1流体圧室A1に導入される。
【0049】
このように、制御バルブ200から第1流体圧室A1に供給される制御バルブ圧Pvは、上記(i)の場合はPv=吐出圧Pout、(ii)−1の場合はPv=吸入圧Pin、(ii)−2の場合はPv=混合圧Pmとなる。
【0050】
すなわち、制御バルブ200には第1油室D1に吐出圧Poutが導入され、第2油室D2にオリフィス8の下流圧Pfbが導入される。また、第3油室D3には吸入圧Pinが導入され、この3種の圧力Pout,Pfb,Pinの差圧によって制御バルブ圧Pvを生成して第1流体圧室A1の圧力P1を制御する。
【0051】
制御バルブ圧Pvは弁体付勢スプリング230の付勢力Fc1およびコイルスプリング224の付勢力Fc2に拘束されるため、Fc1,Fc2を適宜変更することにより、第1油室油路113と第1、第3油室D1,D3の連通条件およびリリーフバルブ220の開弁条件を変更して制御バルブ圧Pvを変更することが可能となっている。
【0052】
なお、実施例1では制御バルブ200の圧力を第1流体圧室A1に導入することとしたが、第2流体圧室A2に導入することとしてもよく特に限定しない。
【0053】
[カムリングの揺動]
カムリング4が第1流体圧室A1の圧力P1から受けるy軸正方向の付勢力F1が、第2流体圧室A2の油圧P2とスプリング71から受けるy軸負方向の付勢力の和F2よりも大きくなれば、カムリング4はピン40を回転中心としてy軸正方向に揺動する。揺動によりy軸正方向側のポンプ室By+は容積が拡大し、y軸負方向側のポンプ室By-は容積が減少する。
【0054】
y軸負方向側のポンプ室By-の容積が減少すると、単位時間あたりに吸入ポート62,121から吐出ポート63,122へ供給される油量が減少し、吐出圧が低下する。これに伴い吐出圧が導入されている第1流体圧室A1の圧力P1も低下し、y軸負方向への付勢力の和F2に抗し切れなくなると、カムリング4はy軸負方向側に揺動する。
【0055】
y軸正、負方向の付勢力F1,F2がほぼ等しくなると、カムリング4に作用するy軸方向の力が釣り合ってカムリング4は静止する。吐出圧がさらに低下すると、カムリング4はさらにy軸負方向に揺動してロータ3と同一軸心となり、y軸正、負方向側のポンプ室By+,By-の容積が等しくなって吸入圧=吐出圧=0となる。
【0056】
これに伴い第1流体圧室A1の圧力P1も0となり、カムリング4はスプリング71の付勢力Fによりy軸負方向に付勢される。このように、吐出オリフィス前後の差圧が一定となるように、カムリング4の偏心量を調整する。
【0057】
[コイルスプリングの干渉防止]
図5はスプール210の内周211であって底部217付近の拡大図である。スプール内周211は、y軸負方向側から順に小径部211a、中間部211b、および本体部211cから構成される。小径部211aはコイルスプリング224のy軸負方向側端部225を収容し、中間部211bを介してスプール内周211の本体部211cに至る。
【0058】
小径部211aおよび本体部211cはy軸に対し平行に設けられている。小径部211aは本体部211cよりも小径に設けられており、y軸正方向側に向かって徐々に拡径するテーパ状の中間部211bによって本体部211cと接続する。この小径部211aは、コイルスプリング224が収縮した際であっても、コイルスプリング224の外周と干渉しない径に設けられている。
【0059】
コイルスプリング224のy軸負方向側端部225は、収縮していない際にも小径部211aに収容される収容部225aと、コイルスプリング224が収縮した際のみ小径部211aに収容される出没部225bから構成される。コイルスプリング224は樽型スプリングであるため、収容部225aよりも中央側(y軸正方向側)の出没部225bは大径となる。
【0060】
したがって、小径部211aの径Rをコイルスプリング出没部225bの径rよりも大径に設けることで(R>r)、コイルスプリング224が収縮した場合であっても、小径部211aとコイルスプリング224の干渉を確実に回避してコイルスプリング224のスムーズなストロークを確保する。
【0061】
また、コイルスプリング224のy軸負方向側端面225cは平面加工処理されており、コイルスプリング224はz−x平面に対し略垂直に設けられる。したがって、コイルスプリング224がy軸に対し略平行を保ってスプール210の底部217に当接するため、コイルスプリング224の倒れがさらに防止される。
【0062】
また、弁体223は軸方向断面凸形状であり、y軸負方向側に延在する延在部223aおよびコイルスプリング224の台座となる台座部223bを有する。延在部223aは台座部223bよりも小径に設けられてコイルスプリング224の内周に挿入され、コイルスプリング224は延在部223aの付け根であって台座部223bのy軸負方向側面に形成された係止部223cにおいてy軸負方向側を係止される。
【0063】
台座部223bはy軸正方向側においてボール弁222を係止する。また、台座部223bの外周部223dはスプール内周211に対し摺動可能に支持される。弁体223が支持される箇所はこの外周部223dのみであり、これにより弁体223は外周部223dにおける片持ち支持となる。
【0064】
y軸に対し弁体223が倒れにくくするためには外周部223dのみならず複数の支持点を設ければよいが、支持点が複数となるとフリクションが増大するため、支持点は外周部223dのみとしている。そのため、あえて弁体223をy軸に対し倒れやすい形状とし、フリクションを低減している。
【0065】
コイルスプリング224は延在部223aおよび係止部223cによって弁体223に支持されるため、弁体223自身がy軸に対し倒れやすい片持ち支持となっている。弁体223が倒れると、コイルスプリング224も倒れてコイルスプリングy軸負方向側端部225とスプール内周211とが干渉しやすくなるが、本願では干渉を回避する構成がとられているため、本願の効果がより顕著となる。
【0066】
[実施例1の効果]
(1)スプール内周211と、
このスプール内周211に接続される油路21,22(油通路)を有する第1ハウジング11と、
スプール内周211内にy軸方向移動可能に設けられた弁体223と、
スプール内周211内に設けられ、一端側が弁体223に当接し、この弁体223をy軸方向正方向側(一方側)に付勢するコイルスプリング224と、
スプール内周211に形成され、弁体223の外周面223dが摺動保持される本体部211cと、
スプール内周211に形成され、コイルスプリング224のy軸負方向側端面225c(他端部)の径方向位置決めを行い、本体部211cよりも径方向寸法が小さく形成された小径部211aと、
スプール内周211に形成され、本体部211cと小径部211aとを接続する中間部211bを有し、
コイルスプリング224のうち中間部211bの軸方向範囲内に存在する部分であって、弁体223の軸方向移動によって小径部211a内に移動する部分を出没部225bとし、
小径部211aのy軸負方向側端部(コイルスプリング224の一端側端部)の内径Rは、弁体223がy軸負方向側(コイルスプリング224の一端側方向)に最も移動した際における出没部225bの外径rよりも大きいこととした。
【0067】
コイルスプリング224がストロークした際、このコイルスプリング224の大径部分が中間部211bに入り込むことにより、コイルスプリング224の外周面が小径部211aの内周面と接近する。
ここで、上記の構成によりコイルスプリング224が小径部211aの内周面と最も接近した状態においても、コイルスプリング224と小径部211aとの間にクリアランスが確保される。
よって、コイルスプリング224がスプール内周211と干渉することがなく、スムーズな弁体の移動を確保することができる。
【0068】
(2)スプール内周211内に設けられ、y軸方向中間部211bにおける径方向寸法Aがy軸方向両端部の径方向寸法Bよりも大きく形成され、y軸正方向側(一端側)が弁体223に当接し、この弁体223をy軸方向負方向側(一方側)に付勢するコイルスプリング224を用いた。
【0069】
コイルスプリング224がストロークした際、コイルスプリング224の大径部分が中間部211bに入り込むことにより、コイルスプリング224の外周面が小径部211aの内周面と接近する。
ここで、コイルスプリング224が小径部211aの内周面と最も接近した状態においても、コイルスプリング224が小径部211aとの間にクリアランスが確保される。
よって、コイルスプリング224がスプール内周211と干渉することなく、スムーズな弁体223の移動を確保することができる。
【0070】
(7)コイルスプリング224であって小径部211a側の端面225cは、平面加工されることとした。これにより、コイルスプリング224の倒れをさらに防止することができる。
【0071】
(8)弁体223は、リリーフバルブ220のスプリング受けであって、コイルスプリング224を片持ち支持することとした。弁体223が片持ち構造であるため、上記(1)の効果がより顕著に得られる。
【実施例2】
【0072】
実施例2につき説明する。基本構成は実施例1と同様である。実施例1では小径部211aはy軸に対し平行であってテーパ形状の中間部211bにより本体部211cと接続していたが、実施例2では中間部211bを省略し、小径部211a自体をテーパ形状とする点で異なる。
【0073】
図6は実施例2におけるコイルスプリング224のy軸負方向側端部225付近の拡大断面図である。上述のように実施例2では中間部211bが省略され、小径部211aはy軸正方向側に向かって拡径するテーパ形状となっている。そのため、実施例1のようにy軸負方向側端部225と出没部225bはいずれも小径部211aと干渉することはない。
【0074】
[実施例2の効果]
(3)小径部211aは、テーパ形状であることとした。これにより、小径部211aによるコイルスプリング224のセンタリング効果が得られる。
【0075】
(4)小径部211aと本体部211cは、テーパ状に接続されることとした。これにより小径部211aと本体部211cとの間に明確な段差が存在しないこととなり、コイルスプリング224の干渉がより防止される。
【実施例3】
【0076】
実施例3につき説明する。実施例1では中間部211bをテーパ形状としていたが、実施例3ではy軸に対して平行とし、中間部211bと本体部211cとの間にテーパ部211dを設ける点で異なる。
【0077】
図7は実施例3におけるコイルスプリング224のy軸負方向側端部225付近の拡大断面図である。上述のように実施例3では中間部211bをy軸に平行とし、中間部211bと本体部211cとの間にテーパ部211dを設けて中間部211bと本体部211cとを接続する。
【0078】
[実施例3の効果]
(5)中間部211bは、本体部211cよりも小径に設けられ、この小径部211aとテーパ状に接続されることとした。これにより、上記(4)と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0079】
実施例4につき説明する。実施例4では、小径部211aのy軸方向長さを、コイルスプリング224の巻き線幅の最小値よりも小さく設ける。
【0080】
図8は実施例4におけるコイルスプリング224のy軸負方向側端部225付近の拡大断面図である。コイルスプリング224は平面加工されてy軸負方向側端部225の線径は薄くなっており、y軸負方向側端部225におけるy軸方向の巻き線幅はL1である。
【0081】
実施例4では小径部211aのy軸方向深さはL2であり、コイルスプリングy軸負方向側端部225のy軸方向線形幅L1よりも小さく設けられる。小径部211aの深さが小さいため、コイルスプリングy軸負方向側端部225と干渉する可能性が小さくなり、コイルスプリング224をスムーズにストロークさせる。
【0082】
[実施例4の効果]
(6)小径部211aのy軸方向深さは、コイルスプリング224の巻き線幅の最小値よりも短いこととした。これにより、コイルスプリングy軸負方向側端部225と小径部211aとが干渉する可能性が小さくなり、上記(1)と同様の効果が得られる。
【0083】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を各実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ベーンポンプの軸方向断面図である。
【図2】ベーンポンプの径方向断面図(最大揺動時)である。
【図3】制御バルブの拡大断面図である。
【図4】実施例1におけるリリーフバルブの拡大断面図である。
【図5】スプールの内周であって底部付近の拡大図である。
【図6】実施例2におけるコイルスプリングのy軸負方向側端部付近の拡大断面図である。
【図7】実施例3におけるコイルスプリングのy軸負方向側端部付近の拡大断面図である。
【図8】実施例4におけるコイルスプリングのy軸負方向側端部付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0085】
11 第1ハウジング
21,22 油路(油通路)
211 スプール内周
211a 小径部
211b 中間部
211c 本体部
220 リリーフバルブ
223 弁体
223d 外周面
224 コイルスプリング
225b 出没部
225c y軸負方向側端面(他端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ孔と、
このバルブ孔に接続される油通路を有するハウジングと、
前記バルブ孔内に軸方向移動可能に設けられた弁体と、
前記バルブ孔内に設けられ、一端側が前記弁体に当接し、この弁体を軸方向一方側に付勢するコイルスプリングと、
前記バルブ孔に形成され、前記弁体の外周面が摺動保持される本体部と、
前記バルブ孔に形成され、前記コイルスプリングの他端部の径方向位置決めを行い、前記本体部よりも径方向寸法が小さく形成された小径部と、
前記バルブ孔に形成され、前記本体部と前記小径部とを接続する中間部と
を有し、
前記コイルスプリングのうち前記中間部の軸方向範囲内に存在する部分であって、前記弁体の軸方向移動によって前記小径部内に移動する部分を出没部とし、
前記小径部の前記コイルスプリングの一端側端部の内径は、前記弁体が前記コイルスプリングの一端側方向に最も移動した際における前記出没部の外径よりも大きいこと
を特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
バルブ孔と、
このバルブ孔に接続される油通路を有するハウジングと、
前記バルブ孔内に軸方向移動可能に設けられた弁体と、
前記バルブ孔内に設けられ、軸方向中間部における径方向寸法が軸方向両端部よりも大きく形成され、一端側が前記弁体に当接し、この弁体を軸方向一方側に付勢するコイルスプリングと、
前記バルブ孔に形成され、前記弁体の外周面が摺動保持される本体部と、
前記バルブ孔に形成され、前記コイルスプリングの他端部の径方向位置決めを行い、前記本体部よりも径方向寸法が小さく形成された小径部と、
前記バルブ孔に形成され、前記本体部と前記小径部とを接続する中間部と
を有し、
前記コイルスプリングのうち前記中間部の軸方向範囲内に存在する部分であって、前記弁体の軸方向移動によって前記小径部内に移動する部分を出没部とし、
前記小径部の前記コイルスプリングの一端側端部の内径は、前記弁体が前記コイルスプリングの一端側方向に最も移動した際における前記出没部の外径よりも大きいこと
を特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ装置において、
前記小径部は、テーパ形状であること
を特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のバルブ装置において、
前記小径部と前記本体部は、テーパ状に接続されること
を特徴とするバルブ構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のバルブ構造において、
前記中間部は、前記本体部よりも小径に設けられ、この小径部とテーパ状に接続されること
を特徴とするバルブ構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のバルブ構造において、
前記小径部の軸方向深さは、前記コイルスプリングの巻き線幅最小値よりも短いこと
を特徴とするバルブ構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のバルブ構造において、
前記コイルスプリングであって前記小径部側の端面は、平面加工されること
を特徴とするバルブ構造。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のバルブ構造において、
前記弁体は、リリーフバルブのスプリング受けであって、前記コイルスプリングを片持ち支持すること
を特徴とするバルブ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−293416(P2009−293416A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145531(P2008−145531)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】