説明

パウダースラッシュ成形方法及び装置

【課題】インストルメントパネルの表皮材等の成形において、部分的な厚みのコントロールが容易に可能で、厚み偏差をなくし、助手席側は所定の肉厚を確保して、運転席側の肉厚を薄肉化でき、またブロッキングパウダーの除去作業を簡略化できるようにする。
【解決手段】金型10の開口側に対向して樹脂パウダーRを収容する材料箱20を固定しておき、この金型10と材料箱20を回転させて、材料箱20内の樹脂パウダーRを金型10に供給して内表面13に付着させて表皮成形品を成形する場合に、材料箱20の開口部22に金網30を付設しておいて、樹脂パウダーRの金型10内への落下供給を制限しながら成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の内表面に対し樹脂パウダーを付着させて所定形状の表皮成形品を成形するパウダースラッシュ成形方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル50は、図9に示すように、例えばポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂成形体よりなる表皮材51と、裏面側の基材樹脂52との間にポリウレタン発泡体等の発泡樹脂層53を介在させた積層構造をなしている。
【0003】
このインストルメントパネル50において、助手席側の内方に助手席用のエアバッグ装置を備えている場合、エアバック装置のケースと対応する部分がドア部55として形成され、前記ケース内に折り畳まれて収容されるバッグ本体がインフレータにより膨張展開する際に、前記ドア部が他部分との境界部分で破断して開口するようになっている。
【0004】
一般に、前記表皮材51は、図10に示すように、成形用凹部112の内表面113が合成樹脂成形体よりなる前記表皮材51と対応した形状をなしている金型110と、前記金型110の開口側に対向して固定される材料箱120とからなる成形装置を用いて成形される。その成形は、下方向きの前記金型110の開口側に原材料である樹脂パウダーRを収容した材料箱120を締結固定しておき、予備的な加熱状態下で、前記金型110を図11のように回転、例えば1回転ずつ往復回転させることにより、前記材料箱120内の樹脂パウダーRを回転に伴って前記金型110内に落下供給させて内表面113に付着させるとともに、付着した樹脂パウダーRを半溶融状態にした後、前記材料箱120を取り外して金型110を所定温度に加熱して溶融させた後、冷却することによって成形品を硬化させ、その後、脱型して取り出す。この成型品が後の発泡工程に供給されて発泡成形される。
【0005】
ところで、前記従来のパウダースラッシュ成形法による場合、成形される表皮材の厚みについては、金型回転速度と金型温度によってコントロールするのが一般的であり、そのため、表皮材全体としての厚みしかコントロールできないものであり、部分的な厚みのコントロールは困難なものであった。
【0006】
例えば、金型回転による成形時には、その回転に伴って前記材料箱120内の樹脂パウダー120が金型110内に落下供給されるが、一度に大量に落下供給されると、金型内において部分的に大きなパウダー荷重が生じ、その結果、パウダー荷重の大きな部分で内表面113に付着する樹脂パウダー量が増し、成形時の金型回転方向で、成形される表皮材に厚み偏差が生じることになり、成形性(精度や品質)を損なう虞があった。
【0007】
さらに、前記従来のパウダースラッシュ成形法では、基本的に成形品の全体を略同じ厚みに成形するものであって、部分的に厚みを薄くするためのコントロールが難しく、助手席用エアバッグ装置を備えるインストルメントパネルの表皮材の成形法としては、充分に満足できるものではなかった。
【0008】
すなわち、エアバック装置を備えるインストルメントパネルは、エアバッグの膨張展開時に前記ドア部の周囲で破断させるために、通常、前記表皮材における前記エアバッグ装置と対応するドア部と他部分との間に、前記破断を容易にするための破断用溝が形成され、さらに薄肉加工が施されているが、前記ドア部周辺の厚みが不足していると、破断方向が定まらず、破断がその周辺にまで及んだり、エアバッグの膨張展開に影響することもある。したがって、エアバック装置を備えるインストルメントパネルの表皮材としては、エアバッグのドア部を備える助手席側の領域については、一定以上の厚みを保有することが求められている。一方、運転席側の領域では、光劣化や耐熱劣化に対して効果があれば、助手席側よりも厚みを薄くすることができるもので、使用樹脂量の低減や車両の軽量化等の点から、運転席側の領域を薄肉化することが望まれている。しかしながら、前記従来の成形法では、全体が略同一の厚みで成形されることになり、前記のように運転席側と助手席側との厚みに差をつけることができないものであり、そのため、表皮材全体を助手席側の厚みに合わせて成形しているのが実情である。
【0009】
また、前記従来のパウダースラッシュ成形法では、成形の繰り返しによって材料箱120内に生じる樹脂パウダーRの塊(所謂ブロッキングパウダー)Bが、そのまま金型110内に供給されることになるため(図11)、このブロッキングパウダーBが金型110の内表面113に付着して、部分的に裏面に凸となる部分Cが形成されることになる。このように裏面に凸となる部分Cが形成されると、図12に示すように、成形された表皮成形品Fを発泡型Gにセットして発泡成形する場合において、発泡樹脂液Hの流れを阻害し、発泡成形に不具合が生じる虞がある。そのため、定期的に別の工程で、前記ブロッキングパウダーBを除去または小粉に分解する作業を必要とするといった問題もある。
【0010】
なお、特許文献1(特開2000−102938号公報)には、パウダースラッシュ成型において、金型における成形用凹部内の所定の個所に間隔を存して金網等よりなる樹脂パウダーの遮蔽部材を設置し、樹脂パウダーの付着を部分的に制限するようにしたものが示されている。
【0011】
しかし、この文献1の場合、前記成形用凹部の表面近傍に局部的な障害物として、表面から5〜20mmの間隔をおいて前記遮蔽部材を設置しているものであり、そのため、金型の回転による樹脂パウダーの流れ(回転方向の流れ)を阻害し、部分的に欠肉や極度の薄肉等の成形上の不具合が発生するおそれがあるうえ、金型回転方向の厚み偏差を解消することはできないものである。また、ブロッキングパウダーの定期的な除去作業も従来と同様に必要とする。
【特許文献1】特開2000−102938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を解決すべくなしたものであり、金型回転による樹脂パウダーの供給を分散できて、部分的な厚み偏差の発生を抑え、また成形品の厚みのコントロールが容易に可能で、その成形性や品質を高め、またブロッキングパウダーの除去作業の工数低減にも寄与でき、特にエアバックを備えるインストルメントパネルの表皮材の成形に好適に利用できる、パウダースラッシュ成形方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金型の開口側に対向して樹脂パウダーを収容する材料箱を固定しておき、この金型と材料箱を回転させて、材料箱内の樹脂パウダーを前記金型に供給して内表面に付着させ、これを溶融し硬化させて、金型内表面に沿う表皮成形品を成形するパウダースラッシュ成形方法において、前記材料箱の開口部に金網を付設しておいて、樹脂パウダーの金型内への落下供給速度を制限しながら成形することを特徴とする。
【0014】
これにより、金型回転に伴う樹脂パウダーの金型内への落下供給を前記金網により制限して、金網を有さない場合よりも樹脂パウダーの落下速度を遅くすることで、一度に大量の樹脂パウダーが供給されるのを抑制して、金型内に適度に分散供給でき、そのため成形品の厚み偏差の発生を防止できる。また、厚みのコントロールも容易に可能になり、成形精度を高めることができ、表皮成形品の品質が安定する。また、前記のように金網を付設したことにより、成形の繰り返しによって生じるブロッキングパウダーが金型内に落下供給されるのを規制でき、また一部のブロッキングパウダーを金網との接触により小粉化できることになり、以て、ブロッキングパウダーが金型内表面に付着するのを防止あるいは大幅に低減できる。特に、前記金網が材料箱の開口部全面を遮蔽するように設けられている場合、前記の厚み偏差の解消、及びブロックキングパウダーの付着防止の効果が大きくなる。
【0015】
また、前記のパウダースラッシュ成形方法において、前記金網を、前記表皮成形品における薄肉化が可能な領域に対応する部分に付設して、前記薄肉化可能領域への樹脂パウダーの落下供給量を他部分より少なくして成形することができる。これにより、部分的に薄肉化した領域を有する表皮成形品を容易に成形でき、その厚みを金網を利用して容易にコントロールできる。
【0016】
前記のパウダースラッシュ成形方法において、前記金網を前記材料箱の開口部の全面を遮蔽するように付設するとともに、該金網において前記表皮成形品の薄肉化が可能な領域に対応する部分の目開きを他部分の目開きより小さく形成しておき、金型内の前記薄肉化可能領域の成形部分への樹脂パウダーの落下供給量を他部分よりも制限するようにして成形することもできる。この場合、前記金網による樹脂パウダーの落下供給の分散化と、それによる厚み偏差の解消、及び金網によるブロックキングパウダーの落下防止の効果を良好に発揮できることに加えて、前記表皮成形品の薄肉化が可能な領域とそれ以外の領域とで肉厚が異なるように成形でき、しかもその厚みを金網の目開きによって容易に調整できる。
【0017】
前記のパウダースラッシュ成形方法において、成形対象の前記表皮成形品がインストルメントパネルの表皮材であり、前記金網において該表皮材の運転席側の領域に対応する部分の目開きを、助手席側の領域に対応する部分の目開きより小さくして、前記金型における前記運転席側領域の成形部分への樹脂パウダーの落下供給量を、助手席側領域の成形部分への落下供給量より少なくして成形することができる。これにより、助手席側の領域においては一定の肉厚を確保しなから、薄肉化が可能な運転席側の領域の肉厚を他部分より低減した、インストルメントパネルの表皮材を容易に成形できる。
【0018】
また、本発明は、金型の開口側に対向して樹脂パウダーを収容する材料箱を固定しておき、この金型と材料箱を回転させて、材料箱内の樹脂パウダーを前記金型に供給して内表面に付着させ、これを溶融、硬化させて、金型内表面に沿う表皮成形品を成形する、上記のパウダースラッシュ成形方法に使用する成形装置において、前記材料箱の開口部に、樹脂パウダーの金型内への落下供給速度を制限する金網を付設してなることを特徴とする。前記金網は、前記材料箱の開口部の一部に設けておくこともできるが、実施上は、前記開口部の全面を遮蔽するように設けられてなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパウダースラッシュ成形方法及び装置によれば、金型回転による樹脂パウダーの供給を分散できて、部分的な厚み偏差の発生を抑え、また成形品の厚みのコントロールが容易に可能で、その成形性や品質を高め、またブロッキングパウダーの除去作業の工数低減にも寄与できる。また、本発明は、エアバックを備えるインストルメントパネルの表皮材の成形に好適に利用でき、助手席側では所定の肉厚を確保しながら運転席側の肉厚を薄肉化でき、ひいては樹脂パウダーの使用量を低減できるとともに、インストルメントパネルの軽量化にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施に使用する成形装置の1実施例の概略を示す金型と材料箱の合体時の略示断面図、図2及び図3は金型回転による成形途中の略示断面図である。
【0022】
図において、符号10は、その成形用凹部12による内表面13が成形対象の表皮成形品、例えば図9に示すインストルメントパネル50の表皮材51に対応した形状をなす金型であり、14は前記成形用凹部12の開口部を示している。符号20は、原材料の樹脂パウダーRを収容する材料箱であり、前記金型10の開口側に対向して適宜締結手段(図示省略)により、前記金型10に対し例えばフランジ状の周縁部11,21で結合可能に設けられており、成形時に図のように締結固定され合体される。この材料箱20の開口部22は前記金型10の開口部14との対応形状なしている。
【0023】
符号30は、前記材料箱20の開口部22に、その半部等の少なくとも一部、好ましくは全面を遮蔽するように付設した金網であり、後述する金型10の回転による成形時に、材料箱20から金型10内への樹脂パウダーRの落下供給速度を制限して、樹脂パウダーRの落下供給を分散化するように設けている。
【0024】
前記金網30における樹脂パウダーRの通過量は、前記金網30を構成する線材の線径dや網目31の目開きA(図4参照)によって異なり、例えば、線径dが同じであれば、前記目開きAが小さいものほど樹脂パウダーRの通過量(単位時間当たり)は少なくなる。また、前記目開きAが同じであれば、前記線径dが小さいものほど樹脂パウダーRの通過量(単位時間当たり)は多くなる。
【0025】
例えば、前記金網30による樹脂パウダーの落下(通過)試験によれば、金網の線径dが0.5mm、目開きAが2.0mmの場合、落下時間は金網を有さない場合の約4倍、つまり単位時間当たりの通過量は約1/4になる。また、金網の線径dが0.63mm、目開きAが3.0mmの場合、落下時間は金網を有さない場合の約1.7倍、つまり単位時間当たりの通過量は約10/17になる。
【0026】
従って、前記金網30における前記線径d及び目開きAを適宜選択し調整することにより、金型回転による成形時の前記樹脂パウダーRの落下供給量を分散化でき、さらには、成形される表皮成形品の厚みが最適な厚みになるようにコントロールすることもできることになる。
【0027】
すなわち、上記の成形装置を用いて、インストルメントパネルの表皮材等の表皮成形品を成形する場合、図1のように、下方向きの前記金型10の開口側に樹脂パウダーRを収容した材料箱20を締結固定しておき、予備的な加熱状態下で、前記金型10を図2及び図3のように回転させ(白抜き矢印)、好ましくは1回転ずつ往復回転させることにより、材料箱20内の樹脂パウダーRが回転に伴って金型10内に落下供給される。
【0028】
この際、記材料箱20の開口部22に付設された前記金網30により、前記樹脂パウダーRの落下供給量が制限されて、金網を有さない場合よりも落下速度が遅くなることで、一度に大量の樹脂パウダーが供給されることがなく、図2及び図3のように金型10内に適度に分散供給されることになり、金型内表面13におけるパウダー荷重を分散できる。その結果、前記内表面13に対する樹脂パウダーRの付着量を均一化でき、成形される表皮成形品において厚み偏差を生じさせないように成形できることになる。
【0029】
すなわち、前記のように内表面13に付着した樹脂パウダーRを半溶融状態にした後、前記材料箱20を取り外して金型10を所定温度に加熱して溶融させ、その後、冷却することによって成形品を硬化させて成形を完了するが、こうして得られる表皮成形品には厚み偏差が生じないものになる。特に、前記金網30が前記材料箱20の開口部22の全面に設けられている場合に、表皮成形体全体の厚み偏差を解消できることはもちろんであるが、前記開口部22の半部等の一部に金網30が設けられている場合にも、少なくとも表皮成形体の金網に対応する成形部分での厚み偏差をなくすことができる。
【0030】
また、前記のように金網30を付設することにより、成形の繰り返しによって生じるブロッキングパウダーBが金型内に落下供給されるのを規制でき(図2)、また一部のブロッキングパウダーBを金網30との接触により小粉化できることになり、ブロッキングパウダーBが金型内表面13に付着するのを防止あるいは大幅に低減できることになる。
【0031】
図5及び図6は、前記材料箱20の開口部22に付設する前記金網30を前記開口部22の一部に設ける場合において、特に、前記開口部22のうち、成形対象の表皮成形品の薄肉化が可能な領域に対応する部分22aを遮蔽するように金網30を付設して、該部分22aにおける樹脂パウダーRの落下供給量を制限することにより、表皮成形品における前記領域の厚みを他の部分より小さくするようにした場合を示している。
【0032】
例えば、成形対象の表皮成形品が図9に示すインストルメントパネル50の表皮材51である場合において、図5及び図6に示すように、前記開口部22のうち、金型内表面13において前記表皮材の運転席側の領域の成形部分13aに対応する部分22aに前記金網30を設け、該金網30による樹脂パウダーRの通過制限により、前記運転席側の領域の成形部分13aへの樹脂パウダーRの落下供給量、つまりは付着量を、金網を有さない他部分22bを通過する助手席側の領域の成形部分13bでの落下供給量より少なくなるようにしている。
【0033】
すなわち、この実施例の成形装置による成形において、上記と同様に金型10の回転による成形時に(図2および図3参照)、材料箱20内の樹脂パウダーRが回転に伴って金型10内に落下供給される際、前記金網30の付設部分では前記樹脂パウダーRの落下速度が金網を有さない部分よりも遅くなることで、該樹脂パウダーRの落下供給量が制限されて少なくなり、パウダー付着時のパウダー荷重を低減でき、その結果として、前記内表面13に対する樹脂パウダーRの付着量が少なくなる。そのため、前記表皮成形品の薄肉化が可能な領域と、それ以外の領域とで肉厚が異なるように成形でき、前記薄肉化可能領域の厚みを他部分より小さくでき、しかもその厚みを金網30の目開き等によって容易に調整できる。
【0034】
そのため、例えば、インストルメントパネルの表皮材の成形において、助手席側の成形領域では一定の肉厚を確保しなから、運転席側の成形領域の肉厚を低減でき、ひいては樹脂パウダーの使用量を低減でき、且つ軽量化にも寄与できることになる。
【0035】
図7及び図8は、前記の金網30を、前記材料箱20の開口部22の全面を遮蔽するように付設する場合において、前記薄肉化が可能な領域に対応する部分22aと、それ以外の他部分22bの網目の目開きを、大小異にして実施する場合を示している。
【0036】
例えば、成形対象の表皮成形品が図9に示すインストルメントパネルの表皮材である場合において、金型10の内表面13における薄肉化が可能な領域、すなわち運転席側の領域の成形部分13aに対応する前記開口部22の部分22aの網目31aの目開きを、助手席側の領域の成形部分13bに対応する他部分22bの網目31bの目開きより小さく設定して、前記運転席側の領域の成形部分13aへの樹脂パウダーRの落下供給量を、助手席側の領域の成形部分13bへの落下供給量よりも制限するように設けて実施する。
【0037】
この実施例の成形装置による成形において、上記と同様に、金型10の回転による成形時に(図2および図3参照)、材料箱20内の樹脂パウダーRが回転に伴って金型10内に落下供給されるが、この際、目開きの小さい網目31aによる前記部分22aにおける樹脂パウダーRの落下供給量が、他部分22bに比して少なくなる。そのため、前記金網30の目開きの小さい部分に対応する前記成形部分13aの樹脂パウダーRの付着量が、目開きの大きい部分に対応する前記成形部分13bよりも少なくなり、成形される表皮成形品の肉厚が低減される。その結果、インストルメントパネルの表皮材の成形において、運転席側の領域と助手席側の領域とで厚みに差をつけ、助手席側の領域では一定の肉厚を確保しなから、運転席側の領域の肉厚を小さくできることになる。しかも、その厚みは、前記金網の目開き等を適宜調整し設定することにより、最適なように容易にコントロールできる。
【0038】
また、前記金網30の存在により、成形の繰り返しによって樹脂パウダーRの落下供給を防止でき、ブロッキングパウダーの定期的な除去作業の回数を少なくでき、その作業に要する工数を削減できることにもなる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、主にエアバックを備えるインストルメントパネルの表皮材の成形に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施に使用する成形装置の1実施例の概略を示す金型と材料箱の合体時の略示断面図である。
【図2】同上成形装置による成形時の回転途中の略示断面図である。
【図3】同上成形装置による成形時の半回転した状態の略示断面図である。
【図4】金網の網目の拡大図である。
【図5】金網を開口部の一部に付設する場合の他の実施例の成形装置の縦断面図である。
【図6】同上成形装置の金型内表面に対する金網付設状態の説明図である。
【図7】金網を開口部の全面に付設する場合の他の実施例の成形装置の縦断面図である。
【図8】同上成形装置の金型内表面に対する金網付設状態の説明図である。
【図9】成形対象の表皮成形品である表皮材を含むインストルメントパネルの斜視図である。
【図10】従来の成形装置の概略を示す金型と材料箱の合体時の略示断面図である。
【図11】同上成形装置による成形時の回転途中の略示断面図である。
【図12】同上成形装置により成形された表皮成形体を使用する発泡成形状態の断面説明図である。
【符号の説明】
【0041】
A 目開き
R 樹脂パウダー
d 線径
10 金型
12 成形用凹部
13 内表面
13a 運転席側の領域の成形部分
13b 助手席側の領域の成形部分
14 開口部
20 材料箱
22 開口部
22a 開口部のうちの薄肉化領域に対応する部分
22b 他部分
30 金網
31,31a,31b 網目
50 インストルメントパネル
51 表皮材
52 基材樹脂
53 合成樹脂発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の開口側に対向して樹脂パウダーを収容する材料箱を固定しておき、この金型と材料箱を回転させて、材料箱内の樹脂パウダーを前記金型に供給して内表面に付着させ、これを溶融し硬化させて、金型内表面に沿う表皮成形品を成形するパウダースラッシュ成形方法において、
前記材料箱の開口部に金網を付設しておいて、樹脂パウダーの金型内への落下供給を制限しながら成形することを特徴とするパウダースラッシュ成形方法。
【請求項2】
前記金網を、前記表皮成形品における薄肉化が可能な領域に対応する部分に付設して、前記薄肉化可能領域への樹脂パウダーの落下供給量を他部分より少なくして成形する請求項1に記載のパウダースラッシュ成形方法。
【請求項3】
前記金網を前記材料箱の開口部の全面を遮蔽するように付設するとともに、該金網において前記表皮成形品の薄肉化が可能な領域に対応する部分の目開きを他部分の目開きより小さく形成しておき、金型内の前記薄肉化可能領域の成形部分への樹脂パウダーの落下供給量を他部分よりも制限するようにした請求項1に記載のパウダースラッシュ成形方法。
【請求項4】
成形対象の前記表皮成形品がインストルメントパネルの表皮材であり、前記金網において該表皮材の運転席側の領域に対応する部分の目開きを、助手席側の領域に対応する部分の目開きより小さくして、前記金型における前記運転席側領域の成形部分への樹脂パウダーの落下供給量を、助手席側領域の成形部分への落下供給量より少なくして成形する請求項3に記載のパウダースラッシュ成形方法。
【請求項5】
金型の開口側に対向して樹脂パウダーを収容する材料箱を固定しておき、この金型と材料箱を回転させて、材料箱内の樹脂パウダーを前記金型に供給して内表面に付着させ、これを溶融、硬化させて、金型内表面に沿う表皮成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、
前記材料箱の開口部に、樹脂パウダーの金型内への落下供給速度を制限する金網を付設してなることを特徴とするパウダースラッシュ成形装置。
【請求項6】
前記金網が前記材料箱の開口部の全面を遮蔽するように設けられてなる請求項5に記載のパウダースラッシュ成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−256068(P2006−256068A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75921(P2005−75921)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】