説明

パケット伝送システムおよび方法

【課題】ジッタが存在する可能性のある伝送路を経由したMPEG2−TSパケットの送受信において、外部GPSを用いずに送信機とのクロック同期をとり、1台の受信機で複数台の送信機から個別に送信されるパケットのPCRジッタを抑制する。
【解決手段】受信機から同期に必要なパイロットパターンを複数台の送信機全てに向けて送信する。送信機は、受信したパイロットパターンを基にしてTTSを付与したパケット(MPEG2−TTSパケット)を送出する。受信機側において受信したMPEG2−TTSパケットを、パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSとして送出することにより、クロック同期をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット伝送システム及び方法に係り、特に、高い転送レートを必要とする、MPEG2−TS(Transport Stream)などの動画情報のパケットやインターネットプロトコル(IP:Internet Protocol)などを用いて、ジッタが存在する伝送路を経由してパケットを送受信するための送信機及び受信機(パケット伝送装置という)におけるクロック同期に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送では、映像と音声を多重化したMPEG2−TSが使用されている。映像及び音声を含むデジタル放送を電波で送信する場合、送信機側はMPEG2−TSにPCR(Program Clock Reference)を付加して一定のレートで信号を送信する。受信機側では、MPEG2−TSパケットに含まれるPCRパケットを参照してクロック同期を行っている。
【0003】
然るに、インターネットプロトコルを用いる伝送方式では、回線揺ぎが生じ、一定レートでの信号の送受信が保証されないため、送信PCRパケットを参照するのみでは、安定したクロック同期を行えない。その解決のために、特許文献1には、GPSクロックをパケットの送受信共通のシステムクロックとして用い、クロック同期をとり、回線揺ぎを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においてシステムクロックを生成するためには、外部GPSが必要であり、GPSの電波を受信できない環境下では、複数台の送信機から個別に送信されるパケットについて、PCRジッッタを抑制して受信するのは困難である。
【0006】
本発明の目的は、ジッタが存在する可能性のある伝送路を経由したMPEG2−TSパケットの送受信において、外部GPSを用いずに複数台の送信機とのクロック同期をとり、1台の受信機で複数台の送信機から個別に送信されるパケットのPCRジッタを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の係るパケット伝送システムは、好ましくは、送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送システムにおいて、
該受信機は、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して送信機に向けて送信する同期信号送出手段と、送信機から送信されるMPEG2−TTSパケットを受信して、パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSとして送出する手段を有し、
該送信機は、該受信機から送信された、同期に必要なパイロットパターンを受信する同期信号受信手段と、該パイロットパターンを基にTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するTTS付加手段を有する、ことを特徴とするパケット伝送システムとして構成される。
【0008】
本発明の係るパケット伝送方法は、好ましくは、送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送方法において、
受信機において、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して送信機に向けて送信する同期信号送出ステップと、
送信機において、受信機から送信された該パイロットパターンを受信する同期信号受信ステップと、
送信機において、該パイロットパターンを基にしたタイミングでTTSカウンタを用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
受信機において、送信機から送信された該パケットを受信して、該パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSパケットを送出するステップを有することを特徴とするパケット伝送方法として構成される。
【0009】
本発明の係るパケット伝送方法は、好ましくは、GPS機能付き送信機とGPS機能無し送信機が混在する複数台の送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送方法において、
受信機において、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して、全ての送信機に向けて送信する同期信号送出ステップと、
GPS機能無し送信機において、受信機から送信された該パイロットパターンを受信する同期信号受信ステップと、
GPS機能無し送信機において、該パイロットパターンを基にしたタイミングでTTSカウンタを用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
GPS機能付き送信機において、GPS受信クロックから生成される同期信号を用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
受信機において、GPS機能付き送信機及びGPS機能無し送信機から送信された該パケットを受信して、該パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSパケットを送出するステップを有することを特徴とするパケット伝送方法として構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部GPSを用いずに1台の受信機に対して複数台の送信機との同期をとることができるため、GPSの電波を受信できない環境下でも、1台の受信機で複数台の送信機から個別に送信されるパケットのPCRジッタを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】パケット伝送装置システムの概略図である。
【図2】一実施形態における送信機及び受信機の構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態による送信機ブロックの動作フローである。
【図4】一実施形態による受信機ブロックの動作フローである。
【図5】一実施形態による送信機のタイムチャートである。
【図6】一実施形態による受信機のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、パケット伝送システムの概略を示す。
パケット伝送システムは、1台の受信機(パケット伝送装置)2と、受信器2に接続される複数台の送信機(パケット伝送装置)1により構成される。複数台の送信機1には、GPS信号の受信機能を備え、受信したGPSクロックをパケットの送受信共通のシステムクロックに用いてクロック同期をとる送信機(GPS機能付き送信機)101と、GPS信号の受信機能を備えず、受信機2から送信される同期に必要な同期信号を受信して同期をとる送信機(GPS機能無し送信機)102が含まれる。前者の送信機101は特許文献1に開示された送信機と同様である。
【0013】
受信機2は、送信機1との同期に必要な信号(パイロットパターンA1)を生成して、全ての送信機1に向けて送信する。GPS機能付き送信機101は、送信されたパイロットパターンA1を無視して、自らのGPSクロックを用いて同期をとる。一方、GPS機能無し送信機102は、送信機102は、受信したパイロットパターンA1を基にして、MPEG2−TSパケットB1をTTSタイムスタンプ化し、MPEG2−TTSパケットB2として、受信機2へ送信する。MPEG2−TTSパケットB2を受信した受信機2は、自身が生成したパイロットパターンに従ったタイミングでMPEG2−TSパケットB3として送出する。
【0014】
図2は、一実施形態による受信機及びGPS機能無し送信機102の構成を示す。
GPS機能無し送信機102(以下単に送信機102という)は、同期信号受信ブロック110と、送信機ブロック120を有して構成される。
受信機2は、同期信号送出ブロック210と、受信機ブロック220を有して構成される。受信機2の同期信号送出ブロック210は、PLL(Phase Locked Loop)部211と、同期信号送出部212を有しており、PLL部211において生成したパイロットパターンA1を、同期信号送出部212を介して全ての送信機1に向けて送出する。
【0015】
送信機102の同期信号受信ブロック110は同期信号受信部111を有しており、この同期信号受信部111は、受信機2の同期信号送出部212から送出されたパイロットパターンA1を受信して、送信機ブロック120にパイロットパターンA2を伝達する。
送信機ブロック120は、TTSカウンタ部121とTTS付加部122を備えており、TTS付加部122に入力されるMPEG2−TSパケットB1は、TTSカウンタ部121においてパイロットパターンA2を用いて生成されたTTSタイムスタンプを付加され、MPEG2−TTSパケットB2として送出される。
【0016】
受信機ブロック220は、受信制御部221と受信バッファ222を備えている。受信制御部221は、同期信号送出部212から伝達されたパイロットパターンA3に従ったタイミングで、受信バッファ222からMPEG2−TTSパケットを取り出し、MPEG2−TSパケットB3として送出する。
このように、受信機2からパイロットパターンA1を送出して、それを基にしたTTSカウンタ値を使用して送受信を行うことにより、送受信間でMPEG2−TSパケットの同期を実現することができる。
なお、GPS機能付き送信機101とGPS機能無し送信機102とは、同期信号の生成の仕方が異なるものの、結果的に生成されるTTSタイムスタンプが付加されたMPEG2−TTSパケットB2は同様である。受信機2における受信動作は、送信先の送信機1のGPS機能の有無に拘わらず、同様である。
【0017】
図3は、一実施形態による送信機ブロックの動作フローである。
送信機102の送信機ブロック120において、同期信号A2が入力されると、送信パケットとして送信TTSを生成する(S302)。そしてTSS付加部122において送信TTSを付加してMPEG−2TSSパケットB2を生成し(S303)、この生成されたMPEG−2TSSパケットB2を送出する(S304)。
【0018】
図4は、一実施形態による受信機ブロックの動作フローである。
受信機ブロック220において、パイロットパターンA3が入力され、MPEG2−TTSパケットが受信される度に(S402)、受信カウンタが制御され(S403)、パケットが受信バッファに書き込まれる(S404)。
そして、受信したパケットからTTS値が抽出され(S405)、受信バッファに格納されたパケットTTS値と受信TTSカウンタ値を比較する(S406)。比較の結果、TTSカウンタ値が一致した場合、受信バッファに格納された、MPEG2−TSパケットを読み出し、MPEG2−TSパケットが取り出される(S407)。
【0019】
図5は、一実施形態における送信機のタイムチャート図である。
受信機の同期信号送出ブロックのPLL部より、27MHzのシステムクロックを生成し、同期信号として送出する。
送信機102では、受信した同期信号からシステムクロックを抽出し、抽出したシステムクロックをTTSカウンタ値としてMPEG2−TSパケットにタイムスタンプ付加し、MPEG2−TTSパケットとして、送出する。
また、送信機101では、GPSクロックからシステムクロックを抽出し、抽出したシステムクロックをTTSカウンタ値としてMPEG2−TSパケットにタイムスタンプ付加し、MPEG2−TTSパケットとして、送出する。
【0020】
図6は、一実施形態における受信機のタイムチャート図である。
受信機2では、入力された同期信号からTTSカウンタ値を抽出する。MPEG2−TTSパケットを受信する度に、受信バッファにパケットを格納する。入力された同期信号に従ったタイミングで、受信バッファに格納したMPEG2−TTSパケットのTTS値とTTSカウンタ値を比較して、一致する場合に受信バッファからMPEG2−TSパケットを取り出し、MPEG2−TSパケットを送出する。
受信バッファに格納したMPEG2−TTSパケットのTTS値とTTSカウンタ値が不一致の場合、例えばTSSカウンタ値が「2」のとき、受信バッファ内のTSSカウンタ値が「3」のTS1は取り残されて、次のTSSカウンタ値「3」のときにはTSSカウンタ値が一致するので、カウンタ値が「3」のTS1,TS2パケットが取りだされる
【符号の説明】
【0021】
1:送信機 101:GPS機能付き送信機 102:GPS機能無し送信機
110:同期信号受信ブロック 111:同期信号受信部 120:送信機ブロック
121:TTSカウンタ部 122:TTS付加部 2:受信機 210:同期信号送出ブロック 211:PLL部 212:同期信号送出部 220:受信機ブロック 221:受信制御部 222:受信バッファ
A1:パイロットパターン A2:パイロットパターン A3:パイロットパターンB1:MPEG2−TSパケット B2:MPEG2−TTSパケット B3:MPEG2−TSパケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送システムにおいて、
該受信機は、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して送信機に向けて送信する同期信号送出手段と、送信機から送信されるMPEG2−TTSパケットを受信して、パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSとして送出する手段を有し、
該送信機は、該受信機から送信された、同期に必要なパイロットパターンを受信する同期信号受信手段と、該パイロットパターンを基にTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するTTS付加手段を有する、
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項2】
送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送方法において、
受信機において、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して送信機に向けて送信する同期信号送出ステップと、
送信機において、受信機から送信された該パイロットパターンを受信する同期信号受信ステップと、
送信機において、該パイロットパターンを基にしたタイミングでTTSカウンタを用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
受信機において、送信機から送信された該パケットを受信して、該パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSパケットを送出するステップと
を有することを特徴とするパケット伝送方法。
【請求項3】
GPS機能付き送信機とGPS機能無し送信機が混在する複数台の送信機と受信機の間で、タイムスタンプ付きMPEG2−TS(MPEG2−TTS)パケットを送受信するパケット伝送方法において、
受信機において、送信機との同期に必要なパイロットパターンを生成して、全ての送信機に向けて送信する同期信号送出ステップと、
GPS機能無し送信機において、受信機から送信された該パイロットパターンを受信する同期信号受信ステップと、
GPS機能無し送信機において、該パイロットパターンを基にしたタイミングでTTSカウンタを用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
GPS機能付き送信機において、GPS受信クロックから生成される同期信号を用いてTTSを生成して、該TTSを付加したMPEG2−TTSパケットを送出するステップと、
受信機において、GPS機能付き送信機及びGPS機能無し送信機から送信された該パケットを受信して、該パイロットパターンを基にしたタイミングでMPEG2−TSパケットを送出するステップと
を有することを特徴とするパケット伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65958(P2013−65958A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202238(P2011−202238)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】