説明

パターン修正装置およびそれに用いられる加湿ユニット

【課題】基板表面が帯電している場合でも、簡単な構成で欠陥部を正確に修正することが可能なパターン修正装置を提供する。
【解決手段】このパターン修正装置の加湿ユニット8は、インクジェットノズル1の先端部が挿入される円筒状の中空容器9と、中空容器9の内壁に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な加湿部材10とを含む。加湿部材10から放出された水の蒸気は、欠陥部7aおよびその近傍に供給される。したがって、基板5表面が帯電している場合でも、欠陥部7aおよびその近傍の静電気を局部的に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパターン修正装置およびそれに用いられる加湿ユニットに関し、特に、基板の表面に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正装置と、それに用いられる加湿ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット装置を用いて基板の表面にパターンを描画する方法は、他の描画方法に比べてインクの利用効率が高く、作業工程を簡素化できるので、最近では様々な分野で利用されている。また、インクジェット装置には、圧電型、加熱型、静電吸引型などがある。静電吸引型のインクジェット装置は、より微細なパターンを描画できるので、従来から種々の装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの分野では、近年における画面の大型化、高精細化に伴い、ガラス基板上に形成された配線(電極)や液晶カラーフィルタなどに欠陥が存在する確率が高くなっており、歩留まりの向上を図るためにインクジェット装置を用いたパターン修正方法が多数提案されている。
【0004】
たとえば、液晶ディスプレイのガラス基板の表面には微細な配線が形成されている。その配線に断線箇所(オープン欠陥部)が存在する場合には、インクジェットノズルから断線箇所に導電性インク(修正液)を吐出して断線箇所を修正する(たとえば、特許文献2,3参照)。
【0005】
また、静電吸引型のインクジェット装置から吐出されたインクは帯電しているので、基板表面が静電気を帯びている場合は、基板とインクとが反発してインクが発散(飛散)し、修正部の周りに飛散物が多く発生する。このため、インクジェット装置および基板を恒温槽に収容し、恒温室内を高湿度雰囲気に維持して基板表面に溜まった電荷を放電させる方法がある(たとえば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−225052号公報
【特許文献2】特開平11−233009号公報
【特許文献3】特許第4248840号公報
【特許文献4】特許第4372101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、最近のフラットパネルディスプレイの製造工程では、3m×3mを超える大きさの基板が存在し、そのような大型の基板全体を恒温槽内に入れることは装置の大型化を招き、また恒温槽の制御も煩雑になるため好ましくない。また、パターン修正装置全体を恒温槽内に収容して高湿度雰囲気中に置くと、パターン修正装置に含まれる位置決めステージなどの精密機器に悪影響が発生することも懸念される。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、基板表面が帯電している場合でも、簡単な構成で欠陥部を正確に修正することが可能なパターン修正装置と、それに用いられる加湿ユニットとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るパターン修正装置は、基板の表面に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、欠陥部およびその近傍の湿度を局部的に高め、欠陥部およびその近傍の静電気を除去する加湿ユニットと、加湿ユニットによって静電気が除去された欠陥部に修正液の液滴を吐出する静電吸引型のインクジェットノズルとを備えたものである。加湿ユニットは、インクジェットノズルの先端部が挿入される貫通孔を有する中空部材と、中空部材内に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な水吸収部材とを含み、水吸収部材から放出された水の蒸気は、貫通孔を介して欠陥部およびその近傍に供給される。
【0010】
好ましくは、中空部材は筒部材を含み、水吸収部材は筒部材の内壁に設けられている。
また好ましくは、インクジェットノズルの先端は、筒部材の端面よりも予め定められた距離だけ基板側に突出する。
【0011】
また好ましくは、筒部材の基板側の端部には、筒部材の外側から欠陥部を観察するための切り欠き部が形成されている。
【0012】
また好ましくは、さらに、インクジェットノズルの基端部を固定する固定部材を備え、加湿ユニットは、固定部材に対して着脱可能に設けられている。
【0013】
また好ましくは、さらに、インクジェットノズルと筒部材との間でインクジェットノズルの長手方向に移動可能に設けられた筒状の保護カバーと、加湿ユニットの着脱時は、保護カバーを第1の位置に保持して保護カバーによってインクジェットノズルの先端部を覆い、加湿ユニットを使用する場合は、保護カバーを第2の位置に保持してインクジェットノズルの先端部を保護カバーから露出させる保持部材とを備える。
【0014】
また好ましくは、中空部材は、その底面が基板の表面に対して予め定められた隙間を開けて配置され、その底に第1の孔が形成された容器と、第2の孔が形成され、容器の開口部を閉じる蓋とを含む。貫通孔は第1および第2の孔を含み、水吸収部材は容器内に設けられる。
【0015】
また好ましくは、インクジェットノズルの先端は、容器の底面よりも予め定められた距離だけ基板側に突出する。
【0016】
また好ましくは、第1の孔の内径は第2の孔の内径と同じである。
また好ましくは、第1の孔の内径は第2の孔の内径よりも大きい。
【0017】
また好ましくは、容器および蓋には、第1および第2の孔に連通し、欠陥部を観察するための切り欠き部が形成されている。
【0018】
また好ましくは、加湿ユニットは交換可能に設けられている。
また好ましくは、さらに、インクジェットノズルによって捨て打ちされた吐出インクを受ける捨て打ち板と、修正インクの捨て打ちを行なう捨て打ち動作時は、インクジェットノズルと基板の間に捨て打ち板を挿入し、捨て打ち動作の終了後は、インクジェットノズルと基板の間から捨て打ち板を退避させる第1の駆動手段と、インクジェットノズルと基板の間に捨て打ち板が挿入されるに従ってインクジェットノズルを上昇させ、インクジェトノズルと基板の間から捨て打ち板が退避されるに従ってインクジェットノズルを下降させる倣い機構とを備える。
【0019】
また好ましくは、加湿ユニットと基板との間を遮蔽するための遮蔽板と、欠陥部およびその近傍の湿度を高める場合は、加湿ユニットと基板の間から外れた位置に遮蔽板を退避させ、欠陥部およびその近傍の湿度を高める必要がない場合は、加湿ユニットと基板の間に遮蔽板を挿入する第2の駆動手段とを備える。
【0020】
また、この発明に係る加湿ユニットは、基板の表面に形成されたパターンの欠陥部に修正液の液滴を吐出する静電吸引型のインクジェットノズルを備えたパターン修正装置において、欠陥部およびその近傍の湿度を局部的に高め、欠陥部およびその近傍の静電気を除去する加湿ユニットであって、インクジェットノズルの先端部が挿入される貫通孔を有する中空部材と、中空部材内に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な水吸収部材とを含むものである。水吸収部材から放出された水の蒸気は、貫通孔を介して欠陥部およびその近傍に供給される。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係るパターン修正装置および加湿ユニットでは、インクジェットノズルの先端部が挿入される貫通孔を有する中空部材と、中空部材内に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な水吸収部材とが設けられ、水吸収部材から放出された水の蒸気は、貫通孔を介して欠陥部およびその近傍に供給される。したがって、基板表面が帯電している場合でも、欠陥部およびその近傍の静電気を局部的に除去することができ、簡単な構成で欠陥部を正確に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の基礎となるパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図2】修正対象の基板を例示する図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図4】実施の形態1の変更例を示す図である。
【図5】実施の形態1の他の変更例を示す断面図である。
【図6】図5に示した保護カバーの使用方法を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図8】図7に示したパターン修正装置の動作を示す断面図である。
【図9】図7に示した塗布装置の詳細な構成を示す図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】図10のB矢視図である。
【図12】図8に示した塗布装置の詳細な構成を示す図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】図13のC矢視図である。
【図15】図7〜図14に示した塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態3によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図17】図16に示したパターン修正装置の動作を示す断面図である。
【図18】図16に示した加湿ユニットの構成を示す図である。
【図19】実施の形態3の変更例を示す断面図である。
【図20】実施の形態3の他の変更例を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態4によるパターン修正装置の全体構成を示す図である。
【図22】実施の形態4の変更例を示す図である。
【図23】実施の形態4の他の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本願発明の基礎となるパターン修正装置の要部を示す断面図である。図1において、このパターン修正装置は、静電吸引型のインクジェットノズル1を備える。ノズル1内には修正インク2が注入される。またノズル1内には電極3が設けられ、ノズル1の先端から所定の距離だけ離れた位置に対向電極4が設けられ、対向電極4のノズル1側の表面上に修正対象の基板5が配置される。電極3,4間にパルス電圧を印加すると、ノズル1の先端から修正インク2の液滴2aが吐出され、帯電した液滴2aが空間を飛翔して基板5の表面に付着(着弾)する。
【0024】
図2(a)は、基板5の構成を例示する図である。図2(a)において、基板5は、ガラス基板のような絶縁基板6を含む。絶縁基板6の表面には、複数の導電性パターン(配線)7が所定の間隔で平行に形成されている。複数の導電性パターン7のうちの1本の導電性パターン7には、オープン欠陥部7aが存在するものとする。
【0025】
オープン欠陥部7aの一方側(図では上側)および他方側(図では下側)には、正常な導電性パターン7が存在する。ノズル1の先端を一方側の導電性パターン7の端部からオープン欠陥部7aを介して他方側の導電性パターン7の端部まで移動させながら修正インク2の液滴2aを吐出すると、図2(b)に示すように、オープン欠陥部7aを覆うように帯状の修正インク層2Aが形成される。修正インク2としては、たとえば、金、銀などの金属ナノ粒子を含む導電性ナノインクを用いる。修正インク層2Aを焼成すると、修正インク層2Aは導電性を示し、オープン欠陥部7aの一方側の導電性パターン7と他方側の導電性パターン7とが電気的に接続される。このようにして、オープン欠陥部7aが修正される。
【0026】
ところで、このようなパターン修正装置は、クリーンルーム内に設置される。クリーンルーム内は、室温20℃前後、湿度50%以下に管理されるので、乾燥して静電気を発生し易い環境となる。このような低湿度の環境下で、静電吸引型のインクジェットノズル1を用いて表面抵抗が高くて静電気を帯び易い絶縁性の高い材質(たとえば、ガラスや樹脂)で形成された絶縁基板6の表面に修正インク2を吐出する場合には、静電気の影響で良好な修正インク層2Aを得るのが難しくなる。
【0027】
また、絶縁基板6上に導電性パターン7が形成された基板5の場合には、絶縁基板6の表面が露出した部分と導電性パターン7の表面では静電気の発生状況が異なる。すなわち、導電性パターン7が存在しない位置や導電性パターン7が欠損して絶縁基板6が露出した部分は表面抵抗が高くて静電気を帯び易い。逆に、導電性パターン7の表面は抵抗が低く、帯電した静電気を大気中に放電し易くなるため、静電気の影響を受け難い。
【0028】
たとえば、静電吸引型のインクジェットノズル1からオープン欠陥部7aに修正インク2の液滴2aを吐出すると、露出した絶縁基板6の表面に溜まった静電気によって液滴2aが弾かれてノズル1の直下には着弾せず、周りの導電性パターン7に吸引されて、導電性パターン7の表面または導電性パターン7と絶縁基板6の境界部(図2(a)の領域A1〜A4)に修正インク2の液滴2aが付着(着弾)する。あるいは、液滴2aが発散し、霧状になって基板5表面に飛散する現象も発生する。このように、乾燥した環境下では、高抵抗の絶縁材質を含む基板6に対して修正インク2を吐出すると、安定した描画性が得られず、オープン欠陥部7aの修正が困難になる可能性が高くなる。
【0029】
特許文献4では、この問題を解決するために、基板5とインクジェット装置全体を恒温槽内に収容し、恒温室内を高湿度雰囲気に維持して基板5の表面に溜まった電荷を放電させている。しかし、この方法では、上述したように、装置の大型化、複雑化を招くなどの問題がある。また、そのような大型の恒温槽をクリーンルーム内に設置することは好ましくない。また、インクジェットノズル1などを搭載して修正位置に移動させる位置決めステージなどの精密機器が恒温槽内に配置され、高湿度雰囲気下に置かれると、位置決めステージに含まれるセンサ、モータ、軸受部などの精密機器への悪影響が懸念される。また、基板5の種類によってはパターンへの悪影響の発生も考えられる。
【0030】
また、近年では、フラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い導電性パターン7の微細化が進み、線幅5μm以下の導電性パターン7もある。そのような導電性パターン7のオープン欠陥部7aを修正するためには、ノズル1の噴射口の内径を小さくして液滴2aを小さくする必要がある。ノズル1の噴射口の内径を小さくすると、圧力や熱を利用して修正インク2を押し出す吐出方法ではインクの吐出が難しくなる。したがって、静電吸引型のインクジェットノズル1を使用することが必要である。本願発明は、このようなパターン修正装置の問題点を解決するものである。
【0031】
[実施の形態1]
図3は、この発明の実施の形態1によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。図3において、このパターン修正装置は、インクジェットノズル1と加湿ユニット8を備える。加湿ユニット8は、円筒状の中空容器9の内側に水を吸収した円筒状の加湿部材(水吸収部材)10を設けたものである。加湿部材10としては、加湿用の水の吸収および放出が可能な多孔室シートなどを用いる。
【0032】
中空容器9の上端面9aはインクジェットノズル1を固定する固定部材11の下端面11aに対して着脱可能な方法で固定される。固定方法としては、図示しない磁石の吸引力を利用する方法や、ネジによる固定方法であってもよく、方法は問わない。
【0033】
インクジェットノズル1の基端部は、固定部材11の下端面11aの中央部に形成された穴に挿嵌されている。インクジェットノズル1の先端部は、中空容器9の孔を貫通し、その先端は中空容器9の下端面9bよりも基板5側に予め定められた距離W2−W1だけ突出している。
【0034】
インクジェットノズル1からオープン欠陥部7aに修正インク2を吐出する際には、インクジェットノズル1の先端と基板5とが微小な隙間W1を保つよう固定部材11を下降させる。隙間W1は、たとえば100μmである。このとき、中空容器9の下端面9bと基板5とは、微小な隙間W2(たとえば200μm)を持って対峙する。これにより、基板5表面のうちのオープン欠陥部7aおよびその近傍と中空容器9によって囲まれる空間は、ほぼ密閉された状態となる。このため、加湿部材10から放出された水蒸気によって空間内の湿度が局部的に高くなり、オープン欠陥部7aおよびその近傍の静電気が除去される。この状態で、修正インク2を吐出すると、修正インク2の液滴2aは静電気の影響を受けることなくオープン欠陥部7aに正確に着弾する。したがって、オープン欠陥部7aを正確に修正することができる。
【0035】
この実施の形態1では、中空容器9および加湿部材10からなる加湿ユニット8によってオープン欠陥部7aおよびその近傍を局部的に加湿するので、パターン修正装置および基板5全体を恒温槽に収容していた従来に比べ、簡単な構成でオープン欠陥部7aを正確に修正することができる。
【0036】
図4(a)は、実施の形態1の変更例を示す断面図であって、図3と対比される図である。また図4(b)は、図4(a)のA矢視図である。図4(a)(b)において、この変更例では、中空容器9の下端部に切り欠き部9cが形成されている。この切り欠き部9cは、中空容器9の外側からオープン欠陥部7aに対する修正インク2の吐出状況および塗布状況を観察するために形成されている。
【0037】
インクジェットノズル1から修正インク2が吐出される状態を常時観察するためには、マイクロレンズを装着したカメラと照明が必要となるが、インクジェットノズル1の先端を覆う加湿ユニット8が存在する場合には加湿ユニット8が観察の障害になる。
【0038】
そのため、図4(a)に示すように、中空容器9に2つの切り欠き部9cを設け、一方の切り欠き部9cを介してオープン欠陥部7aに照明光を照射し、他方の切り欠き部9cからオープン欠陥部7aに対する修正インク2の吐出状況および塗布状況を観察する。
【0039】
この変更例では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、オープン欠陥部7aに対する修正インク2の吐出状況および塗布状況を観察しながら、オープン欠陥部7aを正確に修正することができる。
【0040】
なお、カメラ側に落射照明の機能があり、落射照明でも十分観察可能であれば、切り欠き部9cは1つでもよい。
【0041】
図5は、実施の形態1の他の変更例を示す断面図であって、図3と対比される図である。図5において、この変更例では、加湿ユニット8は固定部材11に対して着脱可能に設けられている。インクジェットノズル1として先端先細りのガラスキャピラリーチューブを用いている場合、その先端は繊細であるので、加湿ユニット8を着脱する際にノズル1の先端を損傷しないように保護することが望ましい。そこで、この変更例では、インクジェットノズル1の先端を保護する保護カバー12を固定部材11内に備える。
【0042】
図5では、保護カバー12を下降させてインクジェットノズル1の先端を保護した状態が示されている。また図6は、加湿ユニット8を装着した後、保護カバー12を上昇させてノズル1の先端をオープン欠陥部7aに対峙させた状態を示し、修正インク2の吐出が可能な状態を示す。
【0043】
保護カバー12は筒状に形成されており、保護カバー12内にノズル1が挿入されている。保護カバー12は、固定部材11の下端面の中央部に形成された穴11bに内挿される。ノズル1の基端部は、固定部材11の穴11bの底の中央部の孔に挿嵌される。固定部材11には磁石(図示せず)が固着され、その磁石の磁気吸引力によって固定部材11は着脱自在とされ、たとえば基板5に対して垂直方向に進退可能なZテーブル(図示せず)に装着される。
【0044】
保護カバー12の側面にはレバー13が固定されている。このレバー13は、固定部材11の穴11bの側壁に形成された長孔11cに挿入されている。レバー13は、長孔11c内において上下方向に移動可能に設けられている。レバー13を手で上下方向に移動させると、保護カバー12は固定部材11に対して長孔11cの範囲内で上下方向に移動する。
【0045】
保護カバー12の上端部の外周には環状の溝12bが形成され、保護カバー12の下端部の外周には環状の溝12cが形成される。固定部材11の穴11bの下端部の側壁にはプランジャ14が設けられる。プランジャ14の球14a(またはシリンダ)は、スプリング14bによって保護カバー12の外周面に対して垂直方向に付勢される。球14aが溝12bまたは12cに入ることにより、保護カバー12は上側の位置または下側の位置に固定される。
【0046】
溝12bに球14aが入ると、図5に示すように、保護カバー12は下側の位置で固定され、ノズル1の先端は保護カバー12で覆われて保護される。溝12cに球14aが入ると、図6に示すように、保護カバー12は上側の位置で固定され、ノズル1の先端が露出して修正インク2の吐出が可能となる。
【0047】
インクジェットノズル1に対して保護カバー12を上下に進退させることでノズル1の先端を保護することができるので、加湿ユニット8の着脱時、あるいは、ノズル1が装着された固定部材11を図示しないZ軸に着脱するときにノズル1が損傷するのを防止することができる。
【0048】
なお、ノズル1の下側から独立したキャップを被せて保護することも考えられるが、その場合には、キャップをノズル1の先端に衝突させる場合が想定される。これに対して、保護カバー12を上下方向に移動するだけで、ノズル1を保護できるため、ノズル1と保護カバー12の衝突が生じることもなく、操作性は良好となる。
【0049】
[実施の形態2]
図7は、この発明の実施の形態2によるパターン修正装置の要部を示す断面図であって、図6と対比される図である。図7において、このパターン修正装置では、固定部材11に加湿ユニット8を装着した状態で、ノズル1と円板状の捨て打ち板15とが対峙する。また、捨て打ち板15を所定角度ずつ回転駆動させるモータ16が備えられる。
【0050】
図7では、インクジェットノズル1の先端と捨て打ち板15の上面が一定の隙間を持って対峙した状態が示されている。この状態で、ノズル1の先端から捨て打ち板15の表面に修正インク2を吐出することにより、基板5が修正インク2で汚染されるのを防止するとともに、ノズル1の先端が詰まらないようにしてインク塗布を安定化させる。通常、修正インク2の捨て打ちは、修正インク2を基板5の表面に吐出する直前に行なうのが好ましい。
【0051】
捨て打ち板15を金属で形成して接地すれば、捨て打ち板15に静電気は発生せず、吐出されたインク2の液滴2aが発散することはないので、捨て打ち板15の表面を加湿する必要はない。また、捨て打ち板15の表面がガラスのような絶縁体である場合には、その表面抵抗を下げるために静電気防止剤を塗布しておくことが好ましい。たとえばシロキサン系の静電気防止剤を捨て打ち板15の表面に塗布すると、ガラス様物質の薄膜が形成される。その薄膜は大気中の水分を吸着するので、捨て打ち板15の表面抵抗が低下して帯電が防止される。
【0052】
なお、捨て打ち板15の帯電防止が不十分な場合でも、捨て打ち板15と加湿ユニット8とは微小な隙間を持って対峙しており、加湿ユニット8はノズル1の下方にある捨て打ち板15の表面を局部的に加湿している。このため、捨て打ちの修正インク2は発散することなく、捨て打ち板15の表面に着弾する。
【0053】
また、修正を行なわない待機時には、図7に示す状態が保持され、加湿ユニット8の中空容器9の下端面9bは捨て打ち板15と微小隙間を持って対峙することになるため、加湿ユニット8内の加湿部材10の乾燥が抑制される。
【0054】
修正インク2の捨て打ちを行なった後に、図8に示すように、捨て打ち板15を横方向に退避させるとともにインクジェットノズル1を下降させ、ノズル1の先端と基板5の表面との間の隙間を所定値に設定する。この状態で、ノズル1の先端から修正インク2の液滴2aを吐出するとともに、ノズル1と基板5とを相対移動しながら修正インク層2Aを形成する。
【0055】
なお、ノズル1を下降して基板5と対峙した状態で少し待機時間を置いて、欠陥部7aを含む基板5の表面湿度が高くなってから(安定してから)吐出を行なうようにしてもよい。
【0056】
次に、パターン修正装置の塗布装置をより詳細に説明する。図9から図11はパターン修正装置の塗布装置の詳細な構成を示す図であり、特に、図9は塗布装置の正面図であり、図10は図9のX−X線断面図であり、図11は図10のB矢視図である。図9から図11では、修正インク2を塗布するインクジェットノズル1の直下に捨て打ち板が隙間W3を開けて対峙しており、捨て打ち動作が可能な状態が示されている。なお、隙間W3は前述の隙間W1と同程度とされる。
【0057】
また、図12から図14では、捨て打ち板15が横に退避するとともに、インクジェットノズル1が下降して、ノズル1と基板5とが隙間W1を開けて対峙した状態が示されている。この状態で基板5に対して修正インク2の塗布が可能となる。図12はパターン修正装置の塗布装置の正面図であり、図13は図12のXIII−XIII線断面図であり、図14は図13のC矢視図である。
【0058】
まず、図9から図11を用いて塗布装置の構成について説明する。塗布装置全体を支持するベース板17は垂直に設けられており、ベース板17の表面に直動案内軸受18のスライド部18aが固定され、ベース板17の裏面に直動案内軸受19のスライド部19aが固定されている。直動案内軸受18のスライド部18aは垂直に配置され、直動案内軸受19のスライド部19aは水平に配置されている。
【0059】
直動案内軸受18のレール部18bには、断面L字型のZテーブル20が固定される。したがって、Zテーブル20は、直動案内軸受18によってベース板17に対して上下方向に進退可能に支持される。また、Zテーブル20の突出した端部にはローラ21が固定され、その一側面には複数の磁石22が埋設されている。直動案内軸受19のレール部19bには、Xテーブル23が固定される。したがって、Xテーブル23は、直動案内軸受19によってベース板17に対して水平方向に進退可能に支持される。
【0060】
インクジェットノズル1の基端部は、固定部材11に保持される。固定部材11の一端面には複数の磁石24が埋設されている。固定部材11は、磁石22と磁石24の吸引力によりZテーブル20に装着される。磁石22と磁石24とは中心をずらして配置してあるため、固定部材11をZテーブル20に装着する際には固定部材11は下方に吸引されて、その端面11cがZテーブル20の上面20aに押し付けられて位置決めされる。
【0061】
Xテーブル23の下端にはモータ16が固定され、モータ16の回転軸は円板状の捨て打ち板15の中央に固定される。モータ16によって捨て打ち板15を所定角度ずつ回転させることにより、インク2の捨て打ち位置を少しずつ変えることが可能となる。ノズル1の直下に一定の隙間W3を開けて捨て打ち板15が対峙しており、捨て打ちの際には捨て打ち板15の表面に捨て打ちが行なわれる。捨て打ちされたインク2が積層されてノズル1と接触してノズル1の先端を損傷しないように、予め捨て打ち前に捨て打ち板15を所定角度だけ回転させておく。
【0062】
Zテーブル20に固定されたローラ21は、Xテーブル23の上端部に当接している。Xテーブル23の上端部には、水平部23aと傾斜部23bを持つ倣い面(カム面)が形成されている。このため、ノズル1の垂直方向の高さ位置は、ローラ21とXテーブル23との当接位置で決定される。Xテーブル23を水平方向に移動させて、ローラ21とXテーブル23との当接位置を変えることで、捨て打ち板15の退避とノズル1の下降を同時に行なうことが可能となる。Xテーブル23を移動させる駆動装置25(たとえばエアシリンダや直動ソレノイドアクチュエータ)はベース板17に固定されており、その出力軸はXテーブル23に連結されている。駆動装置25の出力軸は水平方向に伸縮する。
【0063】
図9の状態でノズル1がインク2の捨て打ちを行なうと、インク2が捨て打ち板15上に着弾する。捨て打ち終了後、モータ16の回転軸を所定角度だけ回転させて捨て打ち板15を所定角度だけ回転させて、次回の捨て打ちに備える。仮に捨て打ち板15を回転させず常に同じ位置に捨て打ちを実行すると、捨て打ちされたインク2の液滴2aが堆積してノズル1の先端に接触し、ノズル1の損傷が懸念される。しかし、捨て打ち板15を回転させる機能を備えたことでその懸念が払拭される。捨て打ちが完了し、捨て打ち板15の所定角度の回転が終了した時点で、捨て打ち板15の退避とノズル1の下降を駆動装置25の操作により実行する。なお、捨て打ち後に捨て打ち板15を回転させる代わりに、欠陥部7aへの描画が完了した時点で捨て打ち板15を回転させるようにして、捨て打ちから描画開始までの時間を短縮するようにしてもよい。
【0064】
次にXテーブル23の移動に伴ってZテーブル20が下降する工程について説明する。駆動装置25の操作によりXテーブル23が水平移動すると、初期はローラ21とXテーブル23の水平部23aとが当接した状態にあるため、Zテーブル20は下降せず、Xテーブル23のみが水平方向に移動する。この状態はノズル1の直下から捨て打ち板15が外れるまで続く。その後、ローラ21がXテーブル23の傾斜部23bに当接し始めると、Zテーブル20は直動案内軸受18によってその自重で下降を始め、Zテーブル20の突出部がベース板17の上部に接触した時点で下降が停止する。図12から図14はZテーブル20が下降して停止した状態を示す。
【0065】
このような構成にすることで、1つの駆動装置25であっても水平方向と垂直方向の2軸駆動が可能となり、装置の簡略化を実現することができる。また、それにより、捨て打ち板15の退避とノズル1の下降を短時間で行なうことができ、ノズル1内でインク2の粘度が高くなって吐出不能になることを防止することができる。また、捨て打ち板15の退避とノズル1の下降を一連動作で行なうため、ノズル1と捨て打ち板15とが衝突する操作ミスを回避できる。
【0066】
なお、固定部材11の端面11cからノズル1の先端までの距離を拡大鏡などの観察光学系を用いて基準値に設定してから固定部材11を設置すれば、固定部材11の端面11cと捨て打ち板15までの距離は一定となり、ノズル1の先端と捨て打ち板15の表面との隙間を所定値に設定することができる。そのため、ノズル1の先端が捨て打ち板15に接触して損傷されるのを防止することができる。
【0067】
図15は、このパターン修正装置の動作を示すフローチャートである。基板5への描画指令を受け付けると、描画位置に塗布装置を移動させ(S1)、修正インク2の捨て打ちを行なう(S2)。次に、捨て打ち板15を退避させるとともに、ノズル1を下降させる(S3)。その後、基板5表面のうちの欠陥部7aおよびその近傍が加湿されるまで待機する(S4)。湿度が安定した状態で修正インク2を吐出して修正インク層2Aを描画する(S5)。修正インク層2Aの描画が終了したら、捨て打ち板15を微小角度だけ回転させ(S6)、捨て打ち板15をノズル1の下方に復帰させる(S7)。これにより、1回の塗布動作を終了する。
【0068】
基板5に生成された修正インク層2Aには、塗布工程の終了後に硬化処理あるいは焼成処理が施される。その後、基板5の水洗浄を行なうような用途であれば、基板5に対する局部加湿の影響は無視できる程度となる。また、加湿する期間はインク塗布(描画)時のみであり、待機時には基板5の表面への局部加湿は行なわないので、基板5への影響を最小限に留めることができる。
【0069】
[実施の形態3]
図16および図17は、この発明の実施の形態2によるパターン修正装置の要部を示す図であって、それぞれ図9および図12と対比される図である。図16は待機状態を示し、図17は描画可能状態を示す。図16および図17において、このパターン修正装置が実施の形態2と異なる点は、加湿ユニット8が加湿ユニット26で置換されている点である。
【0070】
図18(a)(b)は加湿ユニット26の構成を示す図であり、図18(b)は図18(a)のXVIIIB−XVIIIB線断面図である。図18(a)(b)において、加湿ユニット26は、薄い有底の直方体状の容器30と、長方形状の蓋31と、加湿のための水を吸収した直方体状の加湿部材32とを含む。加湿部材32は容器30内に収容され、容器30の開口部は蓋31によって閉蓋されている。蓋31の中央部、加湿部材32の中央部、および容器30の中央部には、それぞれ孔31a,32a,30aが形成されている。孔31a,32a,30aの中心線は一致しており、孔31a,32a,30aは1つの貫通孔を構成している。この貫通孔には、インクジェットノズル1の先端部が挿抜される。また、蓋31の隅には、ネジ孔33が形成されている。
【0071】
加湿ユニット26は、塗布装置のベース板17に固定された支持板28に着脱可能なように固定される。図16および図17では、手で回すことが可能なボルト29を加湿ユニット26に設けたネジ孔33に螺合することで固定している。なお、磁石の吸引力を利用して加湿ユニット26を着脱可能に設けてもよく、加湿ユニット26の固定方法は問わない。
【0072】
加湿ユニット26は、基板5に常時近接して配置される。容器30の底面と基板5の表面との隙間は、たとえば1〜5mm程度に設定される。ノズル1が欠陥部7aの上方に位置合わせされた段階で欠陥部7aおよびその近傍が局部的に加湿されるため、捨て打ち板15を退避してノズル1を下降した際には既に欠陥部7aおよびその近傍は適度に加湿され、基板5の表面に溜まった静電気は既に放電されている。そのため、図15に示したフローチャートの待機工程(S4)を省略してもよい。この実施の形態3でも、実施の形態1,2と同じ効果が得られる。
【0073】
なお、加湿能力を向上させるため、図19に示すように、容器30の底の孔30aを他の孔31a,32aよりも大きく形成して、基板5と加湿部材32とが直接対峙する領域を設けてもよい。
【0074】
また、本実施の形態3では、図4(a)(b)で示したような斜め観察を行なうためには孔30a,31a,32aの直径を大きくする必要がある。しかし、孔30a,31a,32aの直径を大きくすると、欠陥部7aおよびその近傍を局部加湿するのが難しくなる。そこで、図20の変更例では、容器30の側面から孔30a,31a,32aに連通する直線状の切り欠き部34が容器30、蓋31、および加湿部材32に形成される。この切り欠き部34がカメラや照明の光路となり、欠陥部7aに対する修正インク2の吐出状況や塗布状況を観察することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態3では、待機時にも加湿ユニット26が基板5に近接対峙している場合があり、この場合、正常な基板5表面を局部的に加湿し続けることになる。加湿時間が長くなると、基板5表面に局部的に結露が発生し、基板5に悪影響が発生することも想定される。そこで、図16および図17に示すように、加湿ユニット26の底面と基板5との間に遮蔽板35を設けてもよい。遮蔽板35は、基板5の表面を加湿する必要がない場合は、加湿ユニット26と基板5の間に挿入され、基板5の表面を加湿する必要がある場合は、加湿ユニット26と基板5の間から外れた位置に退避される。たとえば、遮蔽板35は捨て打ち板15の退避動作と共に移動可能とされ、図16および図17に示すように、遮蔽板35はXテーブル23に連結される。
【0076】
[実施の形態4]
図21は、この発明の実施の形態4によるパターン修正装置40の全体構成を示す斜視図である。図21において、このパターン修正装置40では、定盤41の中央部にチャック42が設けられ、チャック42には修正対象の基板5が固定される。
【0077】
また、定盤41には、ガントリ型のXYステージ43が搭載されている。XYステージ43は、X軸ステージ43aと門型のY軸ステージ43bとを含む。Y軸ステージ43bは、チャック42を跨ぐように設けられ、図中のY軸方向に移動する。X軸ステージ43aは、Y軸ステージ43bに搭載され、図中のX方向に移動する。
【0078】
X軸ステージ43aには、上下方向に移動可能なZ軸ステージ44が搭載される。Z軸ステージ44には、観察光学系45、対物レンズ46、レーザ47、塗布装置48、および焼成装置50が搭載されている。X軸ステージ43a、Y軸ステージ43b、およびZ軸ステージ44を制御することにより、観察光学系45、レーザ47、塗布装置48、焼成装置50の各々を基板5表面の所望の位置の上方に移動させることが可能となっている。
【0079】
観察光学系45は、対物レンズ46を介して、基板5上のパターンの欠陥部7aなどを観察するために用いられる。レーザ47は、観察光学系45および対物レンズ46を介して基板5上の欠陥にレーザ光を照射し、レーザアブレーションによってその欠陥形状を整形したり、欠陥およびその周囲に余分に付着した修正インク2を除去するために用いられる。塗布装置48は、修正インク2を吐出するインクジェットノズル1と、基板5表面を局部的に加湿し、容易に着脱可能な加湿ユニット8とを含む。
【0080】
また、必要に応じて塗布装置48内にノズル1によって捨て打ちされた修正インク2を受ける捨て打ち板15を設けてもよい。この例では、塗布装置48は上下方向に進退可能なZ軸ステージ49を介してZ軸ステージ44に固定されている。塗布装置48は、Z軸ステージ44に直接固定してあってもよいし、Z軸ステージ44以外のものに固定してもよい。また、焼成装置50は、基板5に塗布された修正インク2を焼成するために使用される。
【0081】
次に、このパターン修正装置の動作について説明する。まずステージ43a,43b,44を制御して、観察光学系45および対物レンズ46の光軸をオープン欠陥部7aに位置決めし、オープン欠陥部7aを観察する。欠陥部7aの形状の整形が必要である場合は、レーザ47から欠陥部7aにレーザ光を照射して欠陥部7aを修正し易い形状に整形する。
【0082】
次に、ステージ43a,43b,44を制御して、インクジェットノズル1の先端を欠陥部7aの上方に位置決めし、実施の形態1〜3で説明したように、欠陥部7aおよびその近傍を加湿した状態で修正インク2の液滴2aを欠陥部7aに吐出し、欠陥部7aに修正インク層2Aを形成する。
【0083】
次いで、ステージ43a,43b,44を制御して、焼成装置50を修正インク層2Aの上方に位置決めし、修正インク層2Aを焼成して導電性の導電性パターンを生成する。
【0084】
図22は、パターン修正装置の変更例を示す図である。この変更例では、Z軸ステージ49がXYZステージ51で置換される。XYZステージ51は、X軸ステージ52、Z軸ステージ53およびY軸ステージ54を含む。X軸ステージ52は、塗布装置48をX軸方向に移動させる。Z軸ステージ53は、X軸ステージ52をZ軸方向に移動させる。Y軸ステージ54は、Z軸ステージ53をY軸方向に移動させる。
【0085】
この場合、観察光学系45を用いてオープン欠陥部7aを観察しながら、XYZステージ51を操作して、対物レンズ46と基板5との間に塗布装置48を挿入し、欠陥部7aに修正インク2を塗布することも可能であり、塗布時には大型のXYステージ43の相対移動が省略される。
【0086】
なお、塗布装置48を対物レンズ46の直下に入れずに、観察光学系45で観察した欠陥部7aを相対移動させて塗布装置48の下方に位置決めしてから、XYZステージ51を制御して修正インク2を塗布する方式であってもよい。
【0087】
図23は、パターン修正装置の他の変更例を示す図である。この変更例では、対物レンズ46の倍率の切り換えを行なう対物レンズ切換器(XYステージ)55に塗布装置48が固定される。対物レンズ切換器55は、たとえば図21のZ軸ステージ44に搭載される。対物レンズ切換器55は、水平方向(XY方向)に移動可能な可動板56を含む。可動板56の下面には、互いに倍率の異なる複数の対物レンズ46が搭載されている。可動板56には、各対物レンズ46に対応して貫通孔56aが開口されている。各対物レンズ46の光軸は、孔56aの中心を垂直に貫通している。対物レンズ切換器55を制御して、所望の倍率の対物レンズ46の光軸を観察光学系45の光軸に一致させることにより、所望の倍率で欠陥部7aを観察することができる。
【0088】
塗布装置48は、可動板56の下面に複数の対物レンズ46とともに搭載される。したがって、対物レンズ切換器55を制御することにより、塗布装置48を欠陥部7aの上方に移動させることができる。塗布装置48を用いた修正インク2の塗布方法は、前述の方法と同じであるので、その説明は繰り返さない。この変更例では、図22の変更例にあったXYZステージ51を省略できるので、装置構成が簡素化される。また、対物レンズ46で欠陥部7aを観察している位置から近い位置に塗布装置48が配置されるため、塗布装置48の移動時間が短縮され、修正タクトタイムが短縮される。
【0089】
さらに、対物レンズ切換器55と基板5との距離を測定する距離センサ(高さセンサ)57を対物レンズ切換器55に搭載してあってもよい。通常、観察光学系45で観察している画像が焦点(フォーカス)位置にあるZ軸ステージ44の位置を基準として、この状態(フォーカス状態)で捨て打ち板15の退避およびノズル1を下降した際に、ノズル1と基板5との隙間が一定値になるように塗布装置48の位置が固定される。
【0090】
しかし、基板5が大型化するのに従って基板5を水平に維持するのが難しくなり、その表面の平坦度は悪くなるため、捨て打ち板15の移動に伴ってノズル1がストッパ位置まで下降する場合に、ノズル1の先端が基板5に接触する場合が想定される。また、互いに倍率が異なる複数の対物レンズ46のZ軸フォーカス位置には差があるため、フォーカス位置を基準にする場合でも塗布を開始する際に選択されている対物レンズ46の倍率によって、ノズル1の先端から基板5までの距離はわずかに異なる。このため、ノズル1の先端と基板5が接触する可能性が高まる。あるいは、人為的にデフォーカス状態で捨て打ち板15の移動とノズル1の下降を行なった場合にも、同様にノズル1と基板5が接触する可能性があって好ましくない。
【0091】
そこで、基板5とノズル1との接触あるいは衝突を回避するため、対物レンズ切換器55に、基板5までの距離を非接触で測定する距離センサ57を設ける。ノズル1の下降を伴う操作を行なう前に、距離センサ57で測定した基板5までの距離に基づいてZ軸ステージ44を制御し、対物レンズ切換器55の上下方向の位置を微調整する。
【0092】
このように、塗布装置48の近傍に精密機器、たとえば距離センサ57、対物レンズ46、対物レンズ切換器55などがあっても、欠陥修正の際に加湿する領域は欠陥部7aを含む微小範囲に限定されるため、精密機器への影響を最小限に留めることが可能となる。また、加湿ユニット8(26)は着脱容易に塗布装置48内に装着されるため、定期的な交換が可能となり、メンテナンス時間の短縮につながる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェットノズル、2 修正インク、2a 液滴、2A 修正インク層、3 電極、4 対向電極、5 基板、6 絶縁基板、7 導電性パターン、7a オープン欠陥部、8,26 加湿ユニット、9 中空容器、9a 上端面、9b 下端面、9c,34 切り欠き部、10,32 加湿部材、11 固定部材、11a 下端面、11b 穴、11c 長孔、12 保護カバー、12b,12c 溝、13 レバー、14 プランジャ、14a 球、14b スプリング、15 捨て打ち板、16 モータ、17 ベース板、18,19 直動案内軸受、18a,19a スライド部、18b,19b レール部、20 Zテーブル、20a 上面、21 ローラ、22,24 磁石、23 Xテーブル、23a 水平部、23b 傾斜部、25 駆動装置、28 支持板、29 ボルト、30 容器、30a,31a,32a 孔、31 蓋、33 ネジ孔、35 遮蔽板、40 パターン修正装置、41 定盤、42 チャック、43 XYステージ、43a,52 X軸ステージ、43b,54 Y軸ステージ、44,46,53 Z軸ステージ、45 観察光学系、46 対物レンズ、47 レーザ、48 塗布装置、50 焼成装置、51 XYZステージ、55 対物レンズ切換器、56 可動板、56a 貫通孔、57 距離センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
前記欠陥部およびその近傍の湿度を局部的に高め、前記欠陥部およびその近傍の静電気を除去する加湿ユニットと、
前記加湿ユニットによって静電気が除去された前記欠陥部に修正液の液滴を吐出する静電吸引型のインクジェットノズルとを備え、
前記加湿ユニットは、
前記インクジェットノズルの先端部が挿入される貫通孔を有する中空部材と、
前記中空部材内に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な水吸収部材とを含み、
前記水吸収部材から放出された前記水の蒸気は、前記貫通孔を介して前記欠陥部およびその近傍に供給される、パターン修正装置。
【請求項2】
前記中空部材は筒部材を含み、
前記水吸収部材は前記筒部材の内壁に設けられている、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項3】
前記インクジェットノズルの先端は、前記筒部材の端面よりも予め定められた距離だけ前記基板側に突出する、請求項2に記載のパターン修正装置。
【請求項4】
前記筒部材の前記基板側の端部には、前記筒部材の外側から前記欠陥部を観察するための切り欠き部が形成されている、請求項2または請求項3に記載のパターン修正装置。
【請求項5】
さらに、前記インクジェットノズルの基端部を固定する固定部材を備え、
前記加湿ユニットは、前記固定部材に対して着脱可能に設けられている、請求項2から請求項4までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項6】
さらに、前記インクジェットノズルと前記筒部材との間で前記インクジェットノズルの長手方向に移動可能に設けられた筒状の保護カバーと、
前記加湿ユニットの着脱時は、前記保護カバーを第1の位置に保持して前記保護カバーによって前記インクジェットノズルの先端部を覆い、前記加湿ユニットを使用する場合は、前記保護カバーを第2の位置に保持して前記インクジェットノズルの先端部を前記保護カバーから露出させる保持部材とを備える、請求項5に記載のパターン修正装置。
【請求項7】
前記中空部材は、
その底面が前記基板の表面に対して予め定められた隙間を開けて配置され、その底に第1の孔が形成された容器と、
第2の孔が形成され、前記容器の開口部を閉じる蓋とを含み、
前記貫通孔は前記第1および第2の孔を含み、
前記水吸収部材は前記容器内に設けられる、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項8】
前記インクジェットノズルの先端は、前記容器の底面よりも予め定められた距離だけ前記基板側に突出する、請求項7に記載のパターン修正装置。
【請求項9】
前記第1の孔の内径は前記第2の孔の内径と同じである、請求項7または請求項8に記載のパターン修正装置。
【請求項10】
前記第1の孔の内径は前記第2の孔の内径よりも大きい、請求項7または請求項8に記載のパターン修正装置。
【請求項11】
前記容器および前記蓋には、前記第1および第2の孔に連通し、前記欠陥部を観察するための切り欠き部が形成されている、請求項7から請求項10までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項12】
前記加湿ユニットは交換可能に設けられている、請求項1から請求項11までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項13】
さらに、前記インクジェットノズルによって捨て打ちされた吐出インクを受ける捨て打ち板と、
前記修正インクの捨て打ちを行なう捨て打ち動作時は、前記インクジェットノズルと前記基板の間に前記捨て打ち板を挿入し、前記捨て打ち動作の終了後は、前記インクジェットノズルと前記基板の間から前記捨て打ち板を退避させる第1の駆動手段と、
前記インクジェットノズルと前記基板の間に前記捨て打ち板が挿入されるに従って前記インクジェットノズルを上昇させ、前記インクジェトノズルと前記基板の間から前記捨て打ち板が退避されるに従って前記インクジェットノズルを下降させる倣い機構とを備える、請求項1から請求項12までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項14】
前記加湿ユニットと前記基板との間を遮蔽するための遮蔽板と、
前記欠陥部およびその近傍の湿度を高める場合は、前記加湿ユニットと前記基板の間から外れた位置に前記遮蔽板を退避させ、前記欠陥部およびその近傍の湿度を高める必要がない場合は、前記加湿ユニットと前記基板の間に前記遮蔽板を挿入する第2の駆動手段とを備える、請求項1から請求項13までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項15】
基板の表面に形成されたパターンの欠陥部に修正液の液滴を吐出する静電吸引型のインクジェットノズルを備えたパターン修正装置において、前記欠陥部およびその近傍の湿度を局部的に高め、前記欠陥部およびその近傍の静電気を除去する加湿ユニットであって、
前記インクジェットノズルの先端部が挿入される貫通孔を有する中空部材と、
前記中空部材内に設けられ、加湿用の水の吸収および放出が可能な水吸収部材とを含み、
前記水吸収部材から放出された前記水の蒸気は、前記貫通孔を介して前記欠陥部およびその近傍に供給される、加湿ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−109445(P2012−109445A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257955(P2010−257955)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】