説明

パターン修正装置

【課題】修正作業開始の可否の判断を容易に行なうことが可能なパターン修正装置を提供する。
【解決手段】このパターン修正装置では、噴霧部15における修正液20の霧化の開始時に、マスフローコントローラ51から噴霧ノズル21に流れるアトマイズガスの圧力を圧力センサ52で検出し、その検出値の変化率が基準値以下になったことを検出することにより、塗布ノズル30から霧状の修正液20が噴射され始めたことを検出する。したがって、修正作業開始の可否の判断を容易に行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパターン修正装置に関し、特に、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置に関する。より特定的には、この発明は、フラットパネルディスプレイの製造工程において発生する電極のオープン欠陥、プラズマディスプレイのリブ(隔壁)欠損などを修正するパターン修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い、ガラス基板上の電極やリブなどに欠陥が存在する確率が高くなっており、歩留まりの向上を図るため欠陥を修正する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、プラズマディスプレイの背面ガラス基板上には、高さが150μm程度で幅が60〜100μm程度のリブが数百μmピッチで形成されている。このリブの一部が欠けている場合、塗布針に修正用ペーストを付着させて欠損部に塗布し、修正用ペーストが垂れないように修正用ペーストを焼成しながら積層し、リブ幅方向にはみ出た部分はレーザカットとスクラッチ針によって削り取り、リブの正常な高さよりも高く盛り上がった部分はスキージ機能により平らにならしてリブを修正する(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、液晶ディスプレイのガラス基板の表面には電極が形成されている。この電極が断線している場合、塗布針先端に付着させた導電性ペーストを断線部に塗布し、電極の長さ方向に塗布位置をずらしながら複数回塗布して電極を修正する(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−299059号公報
【特許文献2】特開平8−292442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リブを修正する方法では、塗布針がリブの欠損部とペーストタンクとの間を何度も往復してリブ欠損部を修正用ペーストで埋めるので、欠損部が大きいほど塗布時間が長くなるという問題がある。また、リブ幅からはみ出した修正用ペーストを除去するカット用レーザ部とスクラッチ機構、これにより生じる異物を吸引する機構、正常部より盛り上がった修正部をスキージ機構により再整形する機構などが必要となり装置構成が複雑になる。
【0006】
また、電極を修正する方法では、電極の断線部とペーストタンクとの間を何度も往復させて塗布針に導電性ペーストを補充しながら塗布するので、断線部が長いほど修正にかかる時間が長くなる。また、円形の塗布部を1列に配置した形状にペーストが塗布されるので、電極の幅からはみ出た部分は塗布後にレーザカット処理する必要があった。
【0007】
そこで、本願発明者は、少なくとも欠陥部を含む範囲で基板を加熱した状態で、微粒子堆積装置で修正液を霧状にして塗布ノズルを介して欠陥部に噴射し、修正液を欠陥部に堆積させて修正するパターン修正方法を提案した(たとえば特願2005−50766号参照)。この方法では、修正液を補充しながら噴出することができるので、塗布針が欠陥部とペーストタンクとの間を何度も往復していた従来に比べ、欠陥部を迅速に修正することができる。
【0008】
しかし、このパターン修正装置では、微粒子堆積装置の各流量設定を行っても直ぐには塗布ノズルから霧粒子が噴射されないので、修正作業開始の可否の判断が困難になることも想定される。目視で噴射を確認してから作業を開始することも考えられるが、正確さに欠ける。また、常時、噴射状態とすることも考えられるが、塗布ノズルの詰まりが早期に発生し易くなり、微粒子堆積装置の洗浄メンテナンスまでの時間が短くなる問題がある。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、修正作業開始の可否の判断を容易に行なうことが可能なパターン修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るパターン修正装置は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、少なくとも欠陥部を含む範囲で基板を加熱する加熱装置と、修正液を霧状にして欠陥部に噴射し、修正液を欠陥部に堆積させて欠陥部を修正する堆積装置とを備え、堆積装置は、修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液を収束して塗布ノズルから噴射するヘッド部とを含み、噴霧部は、修正液が注入された容器と、アトマイズガスと容器から吸い上げた修正液とを噴出する噴霧ノズルと有し、パターン修正装置は、さらに、所定の流量のアトマイズガスを噴霧ノズルに流すガス流量制御装置と、噴霧部において修正液の霧化が開始されたことに応じてガス流量制御装置から噴霧ノズルに流れるアトマイズガスの圧力を検出し、その検出結果に基づいて塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めたことを検出する検出手段を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、検出手段は、アトマイズガスの圧力の変化率が基準値以下になったことを検出することにより、塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めたことを検出する。
【0012】
また、この発明に係るパターン修正装置は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、少なくとも欠陥部を含む範囲で基板を加熱する加熱装置と、修正液を霧状にして欠陥部に噴射し、修正液を欠陥部に堆積させて欠陥部を修正する堆積装置とを備え、堆積装置は、修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液を収束して塗布ノズルから噴射するヘッド部とを含み、さらに、噴霧部で修正液の霧化が開始され、塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めるまでの予め測定された時間に基づいて、塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始める時刻を求める演算手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るパターン修正装置では、噴霧部において修正液の霧化が開始されたことに応じてガス流量制御装置から噴霧ノズルに流れるアトマイズガスの圧力を検出し、その検出結果に基づいて塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めたことを検出する検出手段が設けられる。したがって、修正作業開始の可否の判断を容易に行なうことができる。
【0014】
また、この発明に係るパターン修正装置は、噴霧部で修正液の霧化が開始され、塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めるまでの予め測定された時間に基づいて、塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始める時刻を求める演算手段が設けられる。したがって、修正作業開始の可否の判断を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について説明する前に、まず、この発明が適用されるパターン修正装置の基本構成およびその動作について説明する。
【0016】
図1は、この発明が適用されるパターン修正装置の全体構成を示す図である。図1において、パターン修正装置1は、基板の表面を観察する観察光学系2と、観察された画像を映し出すモニタ3と、観察光学系2を介してレーザ光を照射し不要部をカットするカット用レーザ部4と、欠陥修正用の修正材料を数μm以下の微粒子にして溶媒中に分散させた修正液を霧状にして欠陥部に噴出し、微粒子を欠陥部に堆積させる微粒子堆積装置5と、欠陥部を加熱して霧状の修正液中の溶媒を気化させる基板加熱部6と、欠陥部を認識する画像処理部7と、装置全体を制御するホストコンピュータ8と、装置機構部の動作を制御する制御用コンピュータ9とを備える。さらに、その他に欠陥部を持つ基板をXY方向(水平方向)に移動させるXYステージ10と、XYステージ10上で基板を保持するチャック部11と、観察光学系2や微粒子堆積装置5をZ方向(垂直方向)に移動させるZステージ12などが設けられている。
【0017】
図2は、図1に示したパターン修正装置の要部を示す断面図である。たとえば欠陥部13aがある電極13が形成された基板14は、チャック部11に固定され、そのチャック部11はXYステージ10によりXY方向に移動される。なお、基板14全体を加熱するヒータをチャック部11に内蔵して、基板14の上側から欠陥部13aを含む範囲を部分加熱可能な基板加熱部6と併用することも可能である。基板14が大型になる場合には、チャック部11内にヒータを内蔵して基板14全体を加熱することは大掛かりになるため、このような場合には基板加熱部6のみの構成にする方が好ましい。基板加熱部6としては、LD光源やCOレーザなどを用いることが可能である。
【0018】
微粒子堆積装置5は、修正に用いる修正材料を数μm以下の微粒子にし、それを溶媒中に均一に分散して液状化した修正液を霧状にする噴霧部15と、霧状にされた修正液の流れの圧力を減じる減圧部16と、減圧された霧状の修正液を加熱する加熱部17と、加熱された霧状の修正液を収束して欠陥部13aに噴出し、欠陥部13aに微粒子を堆積するヘッド部18とを含む。
【0019】
図3に示すように、噴霧部15の容器19内には修正液20が注入されている。電極13の欠陥部13aを修正する場合には、修正液20として、金属ナノ粒子を用いた、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、あるいは透明電極材料の微粒子を溶媒中に分散したものが使用される。または、修正液20として、中心金属の周りにイオンや分子が結合した化合物を含む金属錯体溶液や金属コロイドを用いてもよい。また、プラズマディスプレイの欠陥部(リブ欠け欠陥)を修正する場合には、修正液20として、リブの材料である低融点ガラス粉末を溶媒中に均一に分散させたものが使用される。
【0020】
容器19の中央には噴霧ノズル21が設けられている。噴霧ノズル21の下部は修正液20に浸けられている。容器19の外部から噴霧ノズル21にアトマイズガス(たとえば窒素ガス)を供給すると、アトマイズガスは噴霧ノズル21の上部の小径(0.3mm程度)の貫通孔21aおよび噴出口21bを介して容器19内に噴出される。このとき、噴出口21bにおけるアトマイズガスの流速が速くなって周囲よりも気圧が下がるため、噴霧ノズル21下端の吸入口21cから修正液20が吸い上げられ、アトマイズガスが噴出口21bから噴出するときに修正液20も噴出口21bの周囲に飛び散り霧化される。この原理は普通の霧吹きの原理と同じでありベルヌーイの原理を応用したものである。大きな霧粒子は容器19内に落下、あるいは、容器19の内壁面に衝突して容器19内に留まり、微細な霧粒子だけが減圧部16に送られる。
【0021】
なお、アトマイズガスとしては、修正液20が酸化しないように窒素ガスのような不活性ガスを用いることが好ましいが、酸化しない修正液20であれば空気でも構わない。また、修正液20を霧状にするためにアトマイズガスを用いたが、修正液20中の修正材料がサブミクロンのような超微粒子であれば、超音波振動子による霧化装置を用いても構わない。また、修正液20中の修正材料の微粒子が時間の経過により沈殿し易い場合には、撹拌子を容器19内に入れ、容器19の底にマグネチックスターラを設置して修正液20を常時撹拌しても良い。
【0022】
図2に戻って、減圧部16は、一般的に知られているバーチャルインパクタと同じものであり、修正液20の霧粒子を分級するものである。小さな霧粒子はここで除去され、霧粒子の流れの圧力が減じられる。減圧部16は、ノズル部22と集気部23と排気管24と外管25から構成される。ノズル部22と集気部23とは一定の隙間26を保って対峙している。ノズル部22から噴出された霧粒子のうちの流速が速い霧粒子や重い霧粒子は集気部23を介して次段に供給されるが、流速が遅い霧粒子や軽い霧粒子などは排気管24を介して排気ポンプ(図示せず)により排出される。
【0023】
加熱部17は、集気部23と次段を結ぶパイプ27を含む。パイプ27の外周部にはヒータ28と温度センサ29が取り付けられ、パイプ27が設定温度になるように制御され、霧粒子を加熱する機能を持つ。霧粒子を加熱することで、欠陥部13aに霧粒子が付着した時の流れや飛散を抑制する。なお、ヒータ28の周りは断熱部材(図示せず)で覆われている。また、修正液20によっては、図4に示すように加熱部17を省略することも可能である。
【0024】
図2に戻って、ヘッド部18は、霧粒子の周りをシースガス(たとえば窒素ガス)で覆いこみ、霧粒子の流れを収束させてヘッド部18下端の塗布ノズル30から欠陥部13aに向けて霧粒子を噴出する。塗布ノズル30の噴出口の内径は100〜200μm程度であり、シースガスによって噴出口の内径の1/10程度まで霧粒子の流れを収束させることが可能である。
【0025】
シャッタ31は、欠陥修正を行う前に基板14上に霧粒子が噴出されないように塗布ノズル30から噴出される霧粒子を受けるものである。修正開始時にシャッタ31を開放して欠陥修正を行ない、修正完了と同時にシャッタ31を塗布ノズル30の先端と基板14の間に移動させ、シャッタ31で霧粒子を受ける。なお、シャッタ31に、塗布ノズル30から噴出された霧粒子を吸引する機能を持たせてもよい。
【0026】
次に、このパターン修正装置の使用方法について説明する。図5(a)は、基板14の表面に形成された電極13のオープン欠陥部13aを示す図であり、図5(b)はオープン欠陥部13aを修正する途中経過を示す図である。XYステージ10を駆動させて塗布ノズル30と基板14を相対的に移動させ、欠陥部13aの一方端から他方端に向けて修正材料の微粒子を堆積させていく。このとき、塗布ノズル30の先端と基板14の表面の間隔を一定の距離(5mm前後)に保って非接触で修正することができる。
【0027】
微粒子の堆積層の線幅を一定に保つためには、欠陥部13aを含む範囲で基板14の一部分または基板14全体を最適な温度に保つとともに、噴霧部15に供給するアトマイズガスの流量、減圧部16の排気流量、ヘッド部18のシースガスの流量などを最適値に管理する必要がある。なお、塗布ノズル30の先端と基板14の表面の間隔が微粒子の堆積層の線幅に及ぼす影響は小さい。
【0028】
図5(c)は、欠陥部13aの修理が完了した状態を示す図である。微粒子の堆積層からなる修正部32は基板加熱部6によりさらに本焼成しても良いし、基板14全体を別工程の炉で再焼成しても構わない。なお、修正膜厚が不足する場合は、複数の微粒子層を積層すれば良い。また、修正部32の線幅が電極13の線幅よりも太くなったり、修正部32以外の部分に微粒子が付着した場合は、レーザ部4を用いて不要部をレーザカットしてもよい。
【0029】
また、図6(a)〜(c)に示すように、プラズマディスプレイの背面ガラス基板34の表面に形成されているリブ35の一部が欠落したリブ欠け欠陥部35aを修正することも可能である。
【0030】
図6(a)において、プラズマディスプレイの背面ガラス基板34の表面に形成されたリブ35の一部が欠落したリブ欠け欠陥部35aの位置を検出する。次に、そのリブ欠け欠陥部35aの上方の所定位置に塗布ノズル30の先端を配置し、図6(b)に示すように、基板加熱部6を用いて欠陥部35aを加熱しながらシャッタ31を開けて塗布ノズル30から欠陥部35aに霧状の修正液20を噴出し、かつ、XYステージ10を移動させて欠陥部35aに微粒子の堆積層36_1を形成する。基板加熱部6の温度は修正液20の溶媒が蒸発して乾燥する程度の温度でよく、たとえば、基板表面の温度が150℃から200℃程度になるように調整される。
【0031】
引き続き、XYステージ10を往復移動させて複数の堆積層36_2〜36_nを積層し、最終的には図6(c)に示すように、欠陥部35aがリブ35のトップ面、あるいはそれ以上になるまで積層する。積層の終了後、修正部を基板加熱部6を用いて本焼成しても良いし、背面ガラス基板34を炉で焼成しても構わない。図6(a)〜(c)の例では、欠陥部35aの長さ以上に修正液20の堆積層を形成しており、リブトップ面よりも突出した堆積層は、焼成後に研磨テープ等により除去される。
【0032】
以上のように、このパターン修正装置では、加熱した欠陥部13a,35aに霧状の修正液20を噴出し、欠陥部13a,35aに修正材料の微粒子を堆積させ、堆積層を欠陥部13a,35aに描画するので、塗布針を用いていた従来に比べ、修正時間の短縮化を図ることができる。
【0033】
なお、このパターン修正装置では、XYステージ10により基板14,34を移動させて堆積層を描画したが、基板14,34を動かさずに微粒子堆積装置5を移動するようにして堆積層を描画してもよい。
【0034】
また、XYステージ10としては、一軸ステージをXY方向に重ねたものや、基板を固定してX軸とY軸とを分離して駆動するガントリー方式など多種ステージ形式が考えられ、ここに示したステージには限定されない。
【0035】
さて、上記パターン修正装置1で欠陥部を修正する際には、まず、微粒子堆積装置5が停止した状態から、アトマイズガス流量、排気ガス流量、シースガス流量を設定する。その後、塗布ノズル30から修正液20の霧粒子が噴射するのを待ち、噴射が確認されてから修正を行なう必要があるが、噴射されたかどうかを判断する方法として目視して確認するか、あるいは、常時噴射状態として、その確認をしなくても済む方法を取っていた。
【0036】
しかし、常時、塗布ノズル30から修正液の霧粒子を噴射していると、塗布ノズル30が早期に詰まることが危惧されるため、修正しない間は極力、霧粒子の噴射を停止した方が好ましい。また、目視で確認する方法は、不正確であるし、修正作業を自動化できないので、噴射されたかどうかを自動検出できることが望ましい。以下の実施の形態では、この問題の解決が図られる。
【0037】
図7は、この発明の一実施の形態によるパターン修正装置の要部を示す図である。図7において、このパターン修正装置では、アトマイズガスのガス供給源と噴霧ノズル21の間のガス配管に電磁バルブ(V)50、マスフローコントローラ(MFC)51、および圧力センサ(S)52が順に介挿されている。ガス供給源は、ガスを所定の圧力に調整して電磁バルブ50に与える。電磁バルブ50は、噴霧部15で修正液20の霧粒子を生成する霧化期間に開けられてガスを通過させ、それ以外の期間は閉じられてガスを遮断する。マスフローコントローラ51はガス流量を制御する装置であり、霧化期間に所定流量のアトマイズガスを流す。
【0038】
圧力センサ52は、霧化期間にガス配管内のアトマイズガスの圧力を検出する。マスフローコントローラ51によってアトマイズガスの供給が開始されるとガス配管内の圧力が徐々に上昇し、一定値に飽和する。ガス配管内の圧力が飽和したときに、塗布ノズル30から修正液20の霧粒子が噴射され始めることが実験的に分かっている。したがって、圧力センサ52によって検出したガス配管内の圧力が一定値に飽和したこと、すなわちガス圧力の変化率が基準値以下になったことを検出することにより、塗布ノズル30から修正液20の霧粒子が噴射され始めたことを検出することができる。また、噴霧ノズル21の貫通孔21aが詰まってくるとガス配管内のアトマイズガスの圧力が上昇するので、圧力センサ52の検出結果に基づいて噴霧ノズル21の貫通孔21aの詰まり具合を検出することができる。
【0039】
また、噴霧部15の容器19の上部に圧力検出孔が開口され、その孔にはフィルタ53、圧力センサ54、および電磁バルブ55がガス配管を介して順に接続されている。圧力センサ54は、霧化期間に容器19内の圧力を検出する。電磁バルブ55は、通常は閉じられ、容器19内のガスを排気する場合に開けられる。塗布ノズル30が詰まってくると、容器19内のガスの圧力が上昇するので、圧力センサ54の検出結果に基づいて塗布ノズル30の詰まりを検出することができる。
【0040】
また、減圧部16の排気管24の下流には、フィルタ56、圧力センサ57、マスフローコントローラ58および吸引ポンプ(P)59がガス配管を介して順に接続されている。フィルタ56は、修正液20の霧粒子を遮断し、ガスを通過させる。圧力センサ57は、霧化期間に排気管24内の圧力、すなわち減圧部16の外管25内の圧力を検出する。マスフローコントローラ58は、ガス流量を制御する装置であり、霧化期間に所定流量のガスを排気する。吸引ポンプ59は、減圧部16からガスを排気するもので、吸引ポンプ59としては、一般的なポンプ以外に真空発生源を用いても良い。塗布ノズル30が詰まってくると外管25内の圧力が上昇するので、圧力センサ57の検出結果に基づいて塗布ノズル30の詰まり具合を検出することができる。
【0041】
また、シースガスのガス供給源とヘッド部18の間のガス配管に電磁バルブ60、マスフローコントローラ61および圧力センサ62が順に介挿されている。ガス供給源は、ガスを所定の圧力に調整して電磁バルブ60に与える。電磁バルブ60は、霧化期間に開けられてシースガスを通過させ、それ以外の期間は閉じられてシースガスを遮断する。マスフローコントローラ61は、ガス流量を制御する装置であり、霧化期間に所定流量のシースガスを流す。なお、塗布ノズル30の詰まりを防止する目的で、霧化期間外であてもシースガスを流し続ける場合もある。圧力センサ62は、霧化期間にガス配管内のシースガスの圧力を検出する。塗布ノズル30が詰まってくるとガス配管内のシースガスの圧力が上昇するので、圧力センサ62の検出結果に基づいて塗布ノズル30の詰まり具合を検出することができる。
【0042】
図8は、微粒子堆積装置5が停止した状態から、アトマイズガス、排気ガス、シースガスの各々の流量を設定した場合における、各流量の時間変化を表している。各流量は、マスフローコントローラ51,58,61内に内蔵される流量センサの値を検出することで把握可能である。アトマイズガス、排気ガス、シースガスの流量が同時に設定されると、アトマイズガス流量、排気ガス流量、シースガス流量はオーバーシュートを起こし、一瞬の間、設定値以上の値になるが、時間経過と共に設定値に到達する。
【0043】
アトマイズガス流量は、排気ガス流量よりもQ1だけ大きく設定され、この差分流量Q1がヘッド部18に送られる。シースガスは流量Q1の1〜2倍程度の流量Q2に設定される。なお、ここに示した流量Q1,Q2は、修正液20の粘度やその特性、また基板の加熱条件などにより変えられる。
【0044】
図9は、微粒子堆積装置5が停止した状態から、アトマイズガス、排気ガス、シースガスの各々の流量を設定した場合における、圧力センサ52,57,62の検出値の時間変化を表している。シースガス圧力や排気ガス圧力は、緩やかに上昇した後、一定値に安定する。図9では分かりやすくするため、シースガス圧力と排気ガス圧力を離して表示しているが、実測ではほぼ同じ圧力値を取る。シースガス圧力や排気ガス圧力は、各流量設定値や、塗布ノズル30の詰まり具合で変わってくる。一例を挙げれば、塗布ノズル30に詰まりがなければ、5〜7kPa前後で推移している。
【0045】
アトマイズガス圧力は、始めは時間と共に上昇し、やがて変化率が少なくなって一定値に安定する傾向がある。安定期のアトマイズガス圧力は、修正液20の粘度、アトマイズガス流量、噴霧ノズル21の貫通孔21aの詰まり具合によって変わってくるが、一例を挙げれば、50〜60kPa前後で推移する。
【0046】
塗布ノズル30から霧粒子が噴射されるタイミングを観察すると、図8に示した流量変化から判断することはできないが、図9に示す圧力変化から判断することが可能であることが分かった。アトマイズガス圧力が安定したA点、つまり、霧化を開始してからt秒後に塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めることが観察された。したがって、アトマイズガス圧力が安定したこと、すなわちアトマイズガス圧力の変化率が基準値以下になったことを検出することにより、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたことを検出することができる。変化率は、アトマイズガス圧力の傾きに相当し、たとえば単位時間Δtの間のアトマイズガス圧力の変化、(圧力(t+Δt)−圧力(t))/Δtで表される。なお、圧力にはふらつきがあるので平均化処理を行なうことが好ましい。基準値は、たとえば0.01である。また、アトマイズガス圧力の変化率が基準値以下になったことは、圧力センサ52の出力信号に基いてホストコンピュータ8によって検出され、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたことを示す画像がホストコンピュータ8のモニタに表示される。ホストコンピュータ8は、作業者からの指示に応答して、あるいは自動的に修正作業を開始する。
【0047】
なお、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたことをアトマイズガス圧力の到達値で判断することはできない。前述したように、アトマイズガス圧力は修正液20の粘度、アトマイズガス流量設定、噴霧ノズル21の貫通孔21aの詰まり具合によって到達圧力が変わるからである。
【0048】
霧化開始点から塗布ノズル30から霧粒子が噴射するまでの時間tは、修正液20の粘度、材料、アトマイズガス流量、噴霧部15の容器19のサイズ、噴霧部15と減圧部16とを接続するホース長などの条件で変わってくるが、一例を挙げれば10秒前後となる。
【0049】
ここで、アトマイズガス圧力の変化率が一定値以下になったA点から修正を始めてもよいが、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたときは、霧粒子の量が少ないため、A点から一定の時間待機してから、実際の修正作業に入ることが好ましい。なお、微粒子堆積装置5の各流量設定を行って実際に修正作業に入るまでの間は、シャタ31は閉じた状態にあるため、塗布ノズル30から霧粒子が噴射されても、基板14の汚染は防止される。また、シャッタ31に吸引機構が備わっていれば、吸引状態にしておけばよい。
【0050】
この実施の形態では、霧化の開始時に実際に塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたことを圧力センサ52の検出結果に基いて検出するので、修正作業が可能になったことを容易に判断することができる。また、修正を行わない間は微粒子堆積装置5を停止することができるため、塗布ノズル30が詰まるまでの時間を延ばすことができる。
【0051】
なお、霧化を始めて塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めるまでの時間は、毎回ほぼ同じである。そのため、予め、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めるまでの時間tを計測しておき、それに安全を考えた時間t+αを定め、霧化を始めてからt+α後の時刻に塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めると判断してもよい。ホストコンピュータ8は、入力された時間t+αを記憶しておき、霧化の開始からt+α後の時刻に、塗布ノズル30から霧粒子が噴射され始めたことを示す画像をモニタに表示する。ホストコンピュータ8は、作業者からの指示に応答して、あるいは自動的に修正作業を開始する。この場合でも、修正作業が可能になったことを容易に判断することができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明が適用されるパターン修正装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した微粒子堆積装置の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示した噴霧部の構成を示す断面図である。
【図4】図2に示した微粒子堆積装置の他の構成を示す断面図である。
【図5】図1に示したパターン修正装置の使用方法を示す図である。
【図6】図1に示したパターン修正装置の使用方法を示す他の図である。
【図7】この発明の一実施の形態によるパターン修正装置の要部を示す図である。
【図8】図7に示したパターン修正装置におけるガス流量の時間変化を示すタイムチャートである。
【図9】図7に示したパターン修正装置におけるガス圧力の時間変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 パターン修正装置、2 観察光学系、3 モニタ、4 カット用レーザ部、5 微粒子堆積装置、6 基板加熱部、7 画像処理部、8 ホストコンピュータ、9 制御用コンピュータ、10 XYステージ、11 チャック部、12 Zステージ、13 電極、13a オープン欠陥部、14 基板、15 噴霧部、16 減圧部、17 加熱部、18 ヘッド部、19 容器、20 修正液、21 噴霧ノズル、21a 貫通孔、21b 噴出口、21c 吸入口、22 ノズル部、23 集気部、24 排気管、25 外管、26 隙間、27 パイプ、28 ヒータ、29 温度センサ、30 塗布ノズル、31 シャッタ、32 修正部、34 背面ガラス基板、35 リブ、35a リブ欠け欠陥部、36_1〜36_n 堆積層、50,55,60 電磁バルブ、51,58,61 マスフローコントローラ、52,54,57,62 圧力センサ、53,56 フィルタ、59 ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
少なくとも前記欠陥部を含む範囲で前記基板を加熱する加熱装置と、
修正液を霧状にして前記欠陥部に噴射し、前記修正液を前記欠陥部に堆積させて前記欠陥部を修正する堆積装置とを備え、
前記堆積装置は、前記修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液を収束して塗布ノズルから噴射するヘッド部とを含み、
前記噴霧部は、前記修正液が注入された容器と、アトマイズガスと前記容器から吸い上げた前記修正液とを噴出する噴霧ノズルと有し、
さらに、所定の流量のアトマイズガスを前記噴霧ノズルに流すガス流量制御装置と、
前記噴霧部において前記修正液の霧化が開始されたことに応じて前記ガス流量制御装置から前記噴霧ノズルに流れるアトマイズガスの圧力を検出し、その検出結果に基づいて前記塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めたことを検出する検出手段を備えることを特徴とする、パターン修正装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記アトマイズガスの圧力の変化率が基準値以下になったことを検出することにより、前記塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めたことを検出することを特徴とする、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項3】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
少なくとも前記欠陥部を含む範囲で前記基板を加熱する加熱装置と、
修正液を霧状にして前記欠陥部に噴射し、前記修正液を前記欠陥部に堆積させて前記欠陥部を修正する堆積装置とを備え、
前記堆積装置は、前記修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液を収束して塗布ノズルから噴射するヘッド部とを含み、
さらに、前記噴霧部で前記修正液の霧化が開始され、前記塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始めるまでの予め測定された時間に基づいて、前記塗布ノズルから霧状の修正液が噴射され始める時刻を求める演算手段を備えることを特徴とする、パターン修正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−144280(P2007−144280A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340337(P2005−340337)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】