説明

パターン形成体の製造方法および製造装置、カラーフィルタの製造方法、インクジェット印刷装置

【課題】インクジェット印刷装置を用いて画素が平坦な、むらのないパターン形成体を製造する際に、大型な装置を用いることなく、かつ生産性に優れた製造方法および製造装置を提供することである。
【解決手段】多数の領域に区分けする隔壁を有する基板にインクジェット印刷装置にて隔壁内にインクを塗工することにより画素を形成する際に、基板の加熱とUV露光による初期インク硬化工程をインクジェット塗工の間にはさむことで画素が平坦となる。また、初期インク硬化工程後に画素検査工程を用い、その情報に応じてインクジェット塗工量を調整することでむら不良のないパターン形成体が製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置によるパターン形成体の製造方法に関する。より具体的には色むらの少ないかつ画素が平坦な高品質なカラーフィルタの製造方法に関する。また、本発明のカラーフィルタの製造方法を有機エレクトロルミネッセンス素子、有機TFT、回路基板等の形成に用いることも可能である。
【背景技術】
【0002】
例えば、カラーフィルタの製造方法としてはフォトリソグラフィー法、エッチング法等が知られている。フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタの製造方法は、基板全体に各色の感光性樹脂層の塗布膜を形成し、パターン状に露光した後に塗布膜の不要な部分を取り除き、残ったパターンを各画素とする。この方法では塗布膜の多くが現像除去されるため、大量の材料が無駄になる。さらに、画素ごとに露光、現像工程を行うため、工程数が多くなる。このフォトリソグラフィー方式は、カラーフィルタに限らず、有機エレクトロルミネッセンス素子等、種々の光学素子や電気素子の製造に利用されている。
【0003】
そして、フォトリソグラフィー方式の上記問題は、基板の大型化に伴い顕著となり、コスト、環境面ともに問題を露呈するようになった。この問題を克服する方法として、インクジェット方式によるカラーフィルタを製造する方法が注目されている。例えば、インクジェット方式によってカラーフィルタを製造する場合、透明基板に撥インク性を持った遮光部を形成し、その遮光部を隔壁としてその間にR、G、Bの3色のインクを塗工して画素を形成する。このため、フォトリソグラフィー法と比べ、インクの無駄もほとんど発生せず、また、同時に3色画素を形成することができ工程が短縮されるため、環境負荷の低減と大幅なコストダウンが期待できるため、有機エレクトロルミネッセンス素子やカラーフィルタといった光学素子への製造に応用されている(特許文献1〜4)。
【0004】
ところで、カラーフィルタに求められる特性としては、耐熱性、耐薬品性、バリア性の他に透明性、カラーフィルタ層との密着性、封止材との接着性等が挙げられる。また、近年、液晶表示装置の最大の欠点である見る角度によって表示画像が変化してしまうという視野角特性の改善が試みられているが、表示機能の安定化のため、画素の膜厚均一性も要求されるようになった。
【0005】
インクジェット印刷装置を用いたカラーフィルタの製造方法における膜厚均一性を確保する手段として、インクジェット印刷装置による塗工後に一定間隔の時間を空ける等(特許文献5)や、塗工最中にインクを乾燥させる等(特許文献6)があるが、どれも膜厚均一性としては十分なものではない。
【0006】
また、インクジェット法により画素を形成する場合、各インクジェットノズルから塗工される塗工液量にはバラツキがあるため、ノズル毎の塗工量の調整が必要であり、ノズル毎の塗工量の調整方法はさまざまなものが提案されている(特許文献7)。しかし、ノズルからの塗工量を調整したとしても、カラーフィルタ製造中にノズル内のインク温度変化やエア等の影響でノズル毎のインク塗工量が変化し、むら不良が発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献3】特開平7−35917号公報
【特許文献4】特開平7−248413号公報
【特許文献5】特開2008−076690号公報
【特許文献6】特開2004−111278号公報
【特許文献7】特開平10−278314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット法によるパターン形成体の作製方法について、カラーフィルタを例に説明する。インクジェット法によりカラーフィルタを作製する場合、図1に示すように透明基板1に撥インク性をもった隔壁である遮光部(ブラックマトリックス)2を付与し、その隔壁にインク3を塗工するのが一般的である。このような隔壁の内部にインクを塗工すると、液体の表面張力による、いわゆるメニスカス表面状態4が形成される。このメニスカス表面形状のまま溶媒が蒸発して乾燥すれば、インク状態でのメニスカス表面形状がそのまま反映されるため、図2に示すように画素内での膜厚が不均一となってしまい5、液晶パネルにした際に光漏れや配向不良等の不具合が起こる。
【0009】
またむら不良低減のため、ノズルからのインク塗工量を調整したとしても、カラーフィルタ製造中にノズル内のインク温度変化やエア等の影響でノズル毎のインク塗工量が変化し、むら不良が発生する等の問題があった。
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、その課題とするところは、インクジェット方式におい画素が平坦なかつむら不良のないパターン形成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、多数の領域に区分けする隔壁を有する基板に、インクジェット印刷装置にて隔壁内にインクを塗工することにより画素を形成するパターン形成体の製造する方法であって、少なくともインクの一部を隔壁内に塗工する工程と、前記インクを硬化する初期インク硬化工程と、残りのインクを隔壁内に塗工する工程と、全インクを硬化する最終インク硬化工程と、を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法である。
【0012】
請求項2の発明は、前記初期インク硬化工程が、全インク塗工量に対する割合が10%から50%を塗工した際に行われることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法である。
【0013】
請求項3の発明は、前記初期インク硬化工程が、インクジェット印刷装置にて塗工する際の基板を支持するステージを加熱することにより行われることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法である。
【0014】
請求項4の発明は、前記初期インク硬化工程が、UV照射により硬化することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法である。
【0015】
請求項5の発明は、前記初期インク硬化工程が、インクジェット印刷装置にて塗工する際の基板を支持するステージの加熱とUV照射を同時に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法である。
【0016】
請求項6の発明は、前記初期インク硬化工程の後に、少なくとも前記多数の隔壁内の画
素の検査を行う画素検査工程と、前記検査工程の結果に応じてインクジェット印刷装置により多数の前記領域に画素を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のパターン形成体の製造方法である。
【0017】
請求項7の発明は、前記画素検査工程が、画素ごとの輝度を測定する工程であり、前記検査工程の結果に基づいてインクジェット印刷装置の塗工量を調整することを特徴とする請求項6に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0018】
請求項8の発明は、基板を支持するステージと、そのステージに同期してインクジェットヘッドよりインクの塗工を行うインクジェット印刷装置において、ステージに加熱温度制御機構を備え、ステージの上部にUV露光装置を付与することを特徴とするインクジェット印刷装置である。
【発明の効果】
【0019】
従来、インクジェット法によるパターン形成体の作製、おもには、カラーフィルタの作製において、画素が平坦でなく、むら不良が発生していたが、本発明によれば係る問題を解消することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】隔壁内にインクを塗工した図である。
【図2】隔壁内に塗工したインクが乾燥して画素内で膜厚が不均一となっている図である。
【図3】インクジェット印刷装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0022】
なお、本発明ではインクジェット印刷装置を用いてカラーフィルタを製造しているが、本発明は対象をカラーフィルタに限定するものではなく、この他の表示ディスプレイの表示画面を構成する光学部品として好適に利用できる。この場合には、多数の前記領域は表示画面を構成する画素に相当する。また、隔壁には黒色遮光部材を混合して遮光層としての機能を併せ持つことができる。
【0023】
カラーフィルタ以外の光学部品として、有機エレクトロルミネセンス素子を例示することもでき、この場合は、画素は有機発光材料層を構成する。また、前記領域ごとに異なる色彩を有する複数色の有機発光材料層である。
【0024】
なお、この外、本発明を利用して、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を製造することができる。
【0025】
(基板の準備)
本発明での基板は、主として透明基板のことであり、硝子基板、石英基板、プラスチック基板等、公知の透明基板材料を使用することができるが、透明性、強度、耐熱性、対候性において優れた硝子基板を使うのが望ましい。
【0026】
(隔壁の作製)
次に、隔壁について説明する。本発明の隔壁は、基板上にライン状や、本発明においては特にマトリクス状等のパターンに設けられ、基板の表面を多数の領域に区分けすると共に、この多数の領域のそれぞれに塗工されたインクの混色を防止する機能を有するものである。カラーフィルタの場合、隔壁は、樹脂組成物、樹脂バインダーを含有する隔壁材料
を含む。さらに、隔壁材料に黒色の顔料を加え、隔壁に遮光性を付与すると、表示画面のコントラストを向上することができる。
【0027】
樹脂組成物は、隔壁を例えば、フォトリソグラフィー法によって形成する場合には、感光性を付与した感光性樹脂組成物を用い、また、印刷法で形成する場合には熱硬化性樹脂組成物を用いる。必要によって、さらに隔壁材料に、レベリング剤、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤、カップリング剤等を加えることができる。
【0028】
樹脂バインダーは、隔壁を基板に固着して固定すると共に、隔壁に耐インク性を付与するものである。バインダー樹脂としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を含有しているものがあり、これらの樹脂バインダーは単独で用いても、2種類以上混合してもよい。
【0029】
また、隔壁材料に含フッ素化合物や含ケイ素化合物等の撥インク剤を適量添加することで、適度な撥インク性を持たせることができる。
【0030】
(インクの調整)
カラーフィルタの画素を形成するインクには溶剤に加え着色剤を含有する着色組成物を用いる。着色剤としては従来のカラーフィルタ製造に使用されている公知の顔料や染料のいずれも用いることができる。また、カラーフィルタの分光調整のために、複数の着色剤を組み合わせて用いることもできるが、溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に締める割合が3から70質量%であることが好ましい。インクに含まれる溶剤の含有量はインクに締める全固形分濃度が5から40質量%となるように調整するとよい。たとえば、インクに銀、銅等の金属粒子、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基を有する樹脂を挙げることができる。
【0031】
顔料としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0032】
赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、C.I.Pigment Yellow1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0033】
また緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用できる。黄色顔料としては、赤色着色組成物のところで挙げた顔料と同様のものが使用可能である。
【0034】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用できる。紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0035】
また、顔料として無機顔料を用いることも可能であり、具体的には黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。
【0036】
溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。また、後述するUV感光性を持たせるため、エポキシアクリレート等のUV硬化型オリゴマーや、ベンゾフェノン系の光重合開始剤などを添加するが、UV硬化性を有するインクであれば、何を用いても良い。
【0037】
(インクジェット印刷装置の構成)
以下、インクジェット印刷装置の構成について、水頭差を用いたインクジェット印刷装置の構成の一例を図3にて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
図3において、インク供給タンク6に入っているインク7は、インク供給用チューブ8を通してサブタンク9に供給される。このとき、サブタンク9におけるインク10の高さが同じになるようにインク供給タンク6への加圧11によりインク供給タンク6からの供給量を調整する。また、サブタンク9の大気開放部12により大気に開放されており、大気圧となる。サブタンクは、インク供給用チューブ13でマニホールド14へ繋がり、マニホールドから複数のインクチューブ15が分岐して複数のインクジェットヘッド16に接続されている。
【0039】
インクジェットヘッド16とテーブル17とは相対的に位置が固定されており、また、基板18は、可動ステージ19に固定され、前記可動ステージ19は、前記テーブル21の上を縦方向のYまたはY’の方向に動くことができる。また、インクジェットヘッドは横方向のXまたは、X’の方向に動くことができる。
【0040】
可動ステージ19は、加熱による温度制御することができ、後述の塗工したインクを加熱乾燥することができる。加熱の方法としては、熱線等を用いたヒーター等があるが温度を制御することができればどのようなものでも構わない。また、ステージの上部にはUV露光装置20を配置しておき、ステージの動きにあわせてUVを基板に照射することで、UV硬化型のインクを硬化することができる。UVの種類は、使用するUV硬化型インクの硬化波長にあわせて選定を行うことが必要である。
【0041】
あわせて、可動ステージ19上部にはむら調整を行うための輝度計測用のカメラ21を備えていることで、後述する画素検査工程を行うことができ、従来の塗工完了後に検査する場合に比べて、無駄な基板を作製する必要がなく効率的にむら調整を行うことができる

【0042】
可動ステージの加熱により、可動ステージの上部にあるヘッドユニットにおいても温度が上昇することで、インクジェットヘッド内のノズル近傍のインクが乾燥しノズル詰まりを起こす可能性がある。ノズルの乾燥を防ぐため、インクジェットヘッド自体をチラー水等で冷却した方がよい。
【0043】
(インク塗工工程)
前記可動ステージの位置情報などにより可動ステージの移動と前記インクの塗工とが制御装置22によって同期して制御される。これらの制御により、基板上の前記隔壁の間に前記インクが精度良く塗工され、画素が形成される。
【0044】
上述したように、インクジェット法によるカラーフィルタの作製の際には、隔壁にインクを塗工した際にメニスカス表面状態となる。メニスカス表面状態は、インクの塗工量によって変わり、塗工量が隔壁の高さよりも大きいときは一般的に凸形状となる。インクの塗工量は液晶パネルを作製した際に必要な色を出すための液量を塗工する必要があるが、顔料の色濃度、インクジェットヘッドの塗工性を考慮すると、隔壁の高さに比べて極端に大きくなるため凸形状となる。
【0045】
(初期インク硬化工程)
筆者らは、インク塗工工程の間に初期インク硬化工程をはさむことで画素を平坦化できることを見出した。さらに、インクの塗工量としては、インクの塗工を全必要液量の10%から50%を塗工することで、隔壁に比べてインクの塗工量が少ないため、凹形状となる。凹形状のまま初期インク硬化工程を行い、残りの必要液量を塗工することで画素がより平坦となる。初期インク硬化工程での塗工量が、全必要液量の10%より少ないと後述する初期インク硬化工程後のインク塗工工程での液量が多くなり凸形状となり、50%より多いと初期インク硬化工程での画素形状が凹形状とならず凸形状となる。また、塗工回数を3回以上に分割して塗工した際にも、本特許と同様の画素が平坦となる条件があるが、塗工回数が増えることでコスト的に割に合わない。初期インク硬化工程は、ステージより基板を取り出して実施することも可能であるが、生産性を考慮すると塗工ステージ上で硬化を行う方が望ましい。
【0046】
塗工間の初期インク硬化工程としては、加熱による乾燥とUV照射どちらでも単独で使用できるが、加熱ではインクの乾燥に時間がかかるのに対して、UV硬化だけでは、インクの粘度が高くなるため、インクジェットヘッドからの塗工性が悪くなる。よって、加熱による乾燥とUV照射器21によるUV照射による硬化を併用するのがもっともよい。上記ステージを加熱温調することで、インク中に含まれる溶剤を蒸発する。加熱温調だけでは、溶剤分が蒸発し硬化するのに相当な時間を要する。そこで、乾燥途中でUV照射を行うことでより効率よく画素を硬化させることができる。加熱は、高いほど乾燥が進むが、温度が高いとステージの吸着穴やピンとの間でできるむらが発生するため、基板温度が100℃から150℃までが良い。また、UVの積算照射量は、UV硬化が起こる照射量であれば良いが一般的には、1000から1500mJ/cm2が硬化スピード等を考慮すると望ましい。
【0047】
(画素検査工程)
インクジェットにおいてカラーフィルタを作製する際、上述したようにインクジェットノズルからのインク塗工量を調整することが一般的である。しかし、インクジェット塗工を繰り返し行うと、インクジェットヘッド内のインク温度が上昇したり、ノズル内にエアが混入したりすることで、ノズルからの塗工量が変化する。その塗工量が変化することでむら不良が発生するが、初期インク硬化工程後に画素を検査し、塗工量の調整を行うこと
で、むら不良基板が発生しないため、効率よくむら調整を行うことができる。
【0048】
画素検査工程は、画素の特性を検査することが可能であれば、その方法は特に限定されるものではない。本工程に用いられる画素の特性を検査する方法としては、例えば触針式膜厚計により測定する方法や、非接触膜厚計により画素の膜厚を測定する方法や、画素内の輝度を測定する方法等が挙げられる。触針式の膜厚計とは針先を画素に接触させたまま移動させ、針先の上下動の推移にて膜厚を計測する手段である。非接触膜厚計とは、画素に光をあて、その反射光との干渉縞を利用して膜厚を算出する方法である。画素の膜厚が大きい場合には、後述するようにその箇所のインク塗工量を少なく調整することで、画素の膜厚を均一にすることができる。
【0049】
しかし、上述した触針式膜厚計や非接触膜厚計は、装置面積が大きかったり、測定に時間がかかったりする問題があるため、輝度計を用いた方がより効率的である。本工程に用いられる画素の輝度を検査する方法としては、蛍光灯、LED等の光源を用いて、画素形成領域をCCDカメラ等で撮影し画像として記録する。その後、この画像の濃淡分布を解析し、輝度分布として算出する方法等を用いる。画素内の輝度が大きい場合には、画素の膜厚が厚くなっており、後述するようにその箇所のインク塗工量を少なく調整することで、カラーフィルタの膜厚を均一にすることができる。
【0050】
画素を形成するための隔壁を検査する工程において、その後のインクジェット法での塗工条件が最適でないと判断される場合には、検査結果をその直後のインクジェットノズルの塗工条件に反映させ塗工条件を調整することで、画素の色相のバラツキを小さくし、色むらのないカラーフィルタを作製することができる。例えばインク量が適切な量よりも多い画素に対しては、次回の塗工で比較的少ない量のインクを付与することが考えられる。
【0051】
(初期インク硬化工程後のインク塗工工程)
初期インク硬化後も上述したインク塗工工程と同様に、残りの必要量のインク塗工を行うことで画素が平坦なカラーフィルタを作製することができる。その際、画素検査工程の結果をインクジェットノズルからのインク塗工量に反映させることで、むら不良のないカラーフィルタを作製することができる。
【実施例1】
【0052】
ここでは、本発明についてインクジェット方式を用いたカラーフィルタの製造方法での実施例をあげるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の実施例として、本発明による基板の加熱とUV露光を備えた印刷装置によりカラーフィルタを作製した。また、比較例として、本発明のインクジェット印刷装置を組み込まないインクジェット印刷装置でカラーフィルタを作製して、それぞれの画素の平坦性、色むらの発生の状態を比較して、本発明の効果を評価した。
【0054】
隔壁となるブラックマトリックスはフォトリソグラフィー法を用いて作製した。基板として無アルカリガラスを用いた。基板上に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を全面に、膜厚2μmの薄膜状に塗布した。その後、格子状のパターンを有するフォトマスクを用いて露光、その後、アルカリにて現像を行い、この基板をオーブンに入れ熱硬化処理を行うことで、ブラックマトリックスを作製した。このブラックマトリックスのOD値(光学濃度)を測定したところ、充分な遮光性を有することから、いずれも光遮光層として使用できることを確認した。
【0055】
インクとして、溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に占める顔料の割合が50質量%で必要な分光特性となるように調整し、溶剤をインクに締める全固形分濃度が30質量
%となるように調整した。また、UV硬化性を付与するため、インクにエポキシアクリレート等のUV硬化型オリゴマーを付与した。
【0056】
インクジェット印刷装置で使用されるインクは、インク供給タンクに入っており、インク供給用チューブを通してサブタンクに供給される。このとき、サブタンクにおけるインクの液面高さがインクジェットヘッドのノズル開口部と同じ高さになるように、インク供給タンクへの加圧によりインク供給タンクからの供給量を調整する。また、サブタンクは大気開放部により大気に開放されており、大気圧となる。サブタンクは、インク供給用チューブでマニホールドへ繋がり、マニホールドからインクチューブが分岐して20個のインクジェットヘッドに接続されている。
【0057】
インクジェットヘッドとテーブルとは相対的に位置が固定されており、また、基板は、可動ステージに固定され、前記可動ステージは、前記テーブルの上を縦方向のYまたはY’の方向に動くことができる。また、インクジェットヘッドは横方向のXまたは、X’の方向に動くことができ、インクジェットヘッドとステージは精度よく動くよう同期されていて、ステージ上の基板の動きにあわせて塗工することができる。
【0058】
可動ステージは、加熱による温度制御することができ、加熱によりステージ上に配置された基板の温度を上昇させ、塗工されたインクを乾燥させることができる。また、ステージの上部にはUV露光装置を配置し、ステージの動きにあわせてUVを基板に照射することで、UV硬化型のインクを硬化することができる。
【0059】
また、可動ステージ上部には、画素の濃度分布を測定できる蛍光灯を光源としたCCDカメラを備えていて、ステージにはカメラからの基板の濃度分布を受光するための受光部を備えている。
【0060】
上記作製したブラックマトリックス基板をステージ上に配置し、ステージをインクジェットヘッド上で移動するのに合わせて、赤、青、緑からなる着色インクの塗工を行った。インクの塗工量は必要な色を得るための液量の30%である300plを塗工した。
【0061】
その際、ステージの温調を150℃に設定しておくことで、塗工したインクの溶剤成分が蒸発していく。同時に、ステージ上部に配置したUV照射機でインクが塗工された基板をUV照射することで、画素を硬化させた。また、ステージが移動する際、硬化させた画素をCCDカメラにより撮影し画像として記録することで、画素の濃度分布を測定した。
【0062】
その後、この画像の濃淡分布を解析し、輝度分布として算出し、画素形成領域の輝度が大きい場合には、その箇所のインク塗工量を少なく調整し、残りの必要液量の700plの塗工を実施した。
【0063】
塗工された基板を240℃、20分オーブンで熱処理することにより最終硬化工程を行い、むら不良の無いカラーフィルタを得た。
【実施例2】
【0064】
(比較例)
本特許で用いた、初期インク硬化工程を塗工間に入れなった場合、メニスカス表面状態が形成され、このメニスカス表面形状のまま溶媒が蒸発して乾燥するため、平坦な画素を得ることができなかった。また、初期インク硬化工程で画像検査工程を用いなかった場合、むらのあるカラーフィルタを作製したため、再度むら調整が必要となった。
【符号の説明】
【0065】
1・・・透明基板
2・・・隔壁
3・・・隔壁に塗工されたインク
4・・・メニスカス表面状態
5・・・画素内の膜厚が不均一になった状態
6・・・インク供給タンクのインク
7・・・インク
8・・・インク供給タンクとサブタンクをつなぐチューブ
9・・・サブタンク
10・・・サブタンクのインク
11・・・インク供給タンクの加圧
12・・・サブタンクの大気開放部
13・・・サブタンクとマニホールドをつなぐチューブ
14・・・マニホールド
15・・・マニホールドとインクジェットヘッドをつなぐチューブ
16・・・インクジェットヘッド
17・・・テーブル
18・・・基板
19・・・可動ステージ
20・・・UV露光装置
21・・・輝度計測用のカメラ
22・・・制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の領域に区分けする隔壁を有する基板に、インクジェット印刷装置にて隔壁内にインクを塗工することにより画素を形成するパターン形成体の製造する方法であって、少なくとも
インクの一部を隔壁内に塗工する工程と、
前記インクを硬化する初期インク硬化工程と、
残りのインクを隔壁内に塗工する工程と、
全インクを硬化する最終インク硬化工程と、を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
【請求項2】
前記初期インク硬化工程が、全インク塗工量に対する割合が10%から50%を塗工した際に行われることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項3】
前記初期インク硬化工程が、インクジェット印刷装置にて塗工する際の基板を支持するステージを加熱することにより行われることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項4】
前記初期インク硬化工程が、UV照射により硬化することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項5】
前記初期インク硬化工程が、インクジェット印刷装置にて塗工する際の基板を支持するステージの加熱とUV照射を同時に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項6】
前記初期インク硬化工程の後に、少なくとも前記多数の隔壁内の画素の検査を行う画素検査工程と、前記検査工程の結果に応じてインクジェット印刷装置により多数の前記領域に画素を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項7】
前記画素検査工程が、画素ごとの輝度を測定する工程であり、前記検査工程の結果に基づいてインクジェット印刷装置の塗工量を調整することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成体の製造方法によるカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
基板を支持するステージと、そのステージに同期してインクジェットヘッドよりインクの塗工を行うインクジェット印刷装置において、
ステージに加熱温度制御機構を備え、ステージの上部にUV露光装置を付与することを特徴とするインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−231001(P2010−231001A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78814(P2009−78814)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】