説明

パターン照合システム、パターン照合方法およびパターン照合用プログラム

【課題】パターンを高い精度で照合すること。
【解決手段】特徴抽出部は、入力パターンの特徴を抽出する。照合部は、入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、テンプレートパターンと照合する第一の照合と、第一の照合とは異なる照合であって、入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行う。経時変化特徴補正手段は、その第二の特徴から、その第一の特徴とその第二の特徴とに共通に表われる影響を取り除くための補正データを、その第一の照合による照合結果に基づいて生成し、その共通に表われる影響として、入力パターンの回転による影響、入力パターンの平行移動による影響、入力パターンの変形による影響、輝度の相違による影響、又は、濃度の相違による影響のうち、少なくとも一つの影響を取り除くための補正データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン照合システム、パターン照合方法およびパターン照合用プログラムに関し、特に時間の経過と共に変化する特徴と、変化しない特徴の両方を含むパターンを照合するパターン照合システム、パターン照合方法およびパターン照合用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二つのパターンが同一か否かを判定するパターン照合において、照合の対象となるパターンが、時間の経過と共に変化する特徴と、変化しない特徴との両方を含む場合がある。このような時間の経過と共に変化する特徴と、変化しない特徴の両方を含むパターンを照合する場合において、二つのパターンが相当の時間をおいて得られたパターンであるときには、時間と共に変化する特徴が変わってしまうので、照合を難しくするという問題がある。
【0003】
例えば、指表面パターンの照合の場合では、照合対象である指表面パターンには、時間が経過しても変化しない指紋隆線という特徴と、時間の経過と共に変化する指表面の皺や傷、荒れという特徴の両方が含まれる。本人確認のために、ある時点の指表面パターンをテンプレートとして登録しておき、後日照会のために、その時点で採取した指表面パターンをテンプレートと比較する場合がある。しかし、登録と照会の間の時間間隔が広いと、皺や傷、荒れという特徴が変わってしまっているため、同じ人の指であるにもかかわらず、照会時の指表面パターンがテンプレートの指表面パターンとは異なるパターンであると判定される危険がある。逆に、時間の経過と共に変化する特徴を同一と判定するようにするために、許容される誤差を大きく設定しておくと、他人の指表面パターンを誤ってテンプレートと同じパターンであると判定する危険が高くなる。
【0004】
この問題の対処方法として、経時変化しない特徴だけを評価に利用するという方法がある。例えば、特開平09−167230号公報記載の指掌紋画像処理装置では、経時変化しない隆線特徴だけを抽出するようにしている。このように、経時変化しない特徴だけを照合に利用すれば、特徴の経時変化を気にする必要はなくなり、時間をあけて採取したパターンを照合することが可能となる。しかし、経時変化を含むパターンを高い精度で照合することが困難になる。すなわち、特開平09−167230号公報記載のように、経時変化する特徴の影響を受けないようにするために、照合に利用する特徴を経時変化しないものに限定すると、照合に利用できる情報量が減少する。経時変化する特徴と、経時変化しない特徴とを合わせると、照合を行うのに十分な情報量を持ち、かつ、経時変化しない特徴だけでは情報量が不足する場合もある。この場合には、経時変化しない特徴を照合するだけでは、精度の高い照合を行うことはできない。例えば、特開平09−167230号公報記載の方法を用いて、照合に使用する特徴は隆線特徴に限ると、皺や傷等の影響で隆線が抽出できる領域が少なければ、照合に十分な隆線が得られず、照合精度が低下する。
【0005】
パターンの経時変化に対応する他の方法としては、ある時点で登録したテンプレートを、時間が経過したあとも使うのではなく、一定間隔や照合毎にテンプレートを更新する方法がある。例えば、特開2006−092491号公報記載の本人認証装置では、前回認証時点で撮像した撮像画像データから得られたデータとの照合結果を用いることで、パターンが経時変化しても認証可能にしている。ところが、特開2006−092491号公報記載の方法では、安全に照合することが困難になる。すなわち、特開2006−092491号公報記載のように、経時変化によるパターンの変化の影響を受けないようにするため、比較対象のテンプレートを更新する方法では、異なったパターンをテンプレートとして登録してしまう危険がある。一度誤って異なったパターンを同じパターンであると誤認証してしまうと、テンプレート更新時に誤認証されたパターンがテンプレートとして登録されてしまう。例えば、特開2006−092491号公報記載の方法では、前回認証に成功した画像と照合するため、一度誤認証があると、次回以降は誤認証されたパターンを正しい登録パターンとして扱うことになる。これでは、誤ってテンプレートを更新してしまう危険があり、安全に照合を行うことは困難である。
【0006】
特開2004−110839号公報記載の指紋による個人認証システムでは、最初に登録した指紋と、最後に照合した指紋を保存する。そして、それぞれと照合することで、パターンが経時変化しても照合可能にしている。特開2004−110839号公報記載の方法では、最初に登録した指紋と最後に照合した指紋のそれぞれと比較することで、パターンの変化への頑強さと、照合の安全さを両立しようとしている。しかし、パターンが変化すると、最初に登録した指紋とはそのままでは照合できなくなる。そのため、最初に登録した指紋と照合できなければ一致と判定しない場合、パターンの変化に頑強ではなくなる。パターンの変化に頑強にするため最後に照合した指紋との照合結果だけを用いると、特開2006−092491号公報と同様に、誤ったパターンを登録してしまう危険がある。特開2004−110839号公報記載の方法でも、経時変化を含むパターンを高い精度で照合することと、安全に照合することの両立はやはり困難である。
【0007】
特開平11−025268号公報には、特徴情報主記憶部と特徴情報副記憶部とに、別々に特徴量を記憶する指紋照合装置の発明が記載されている。この指紋照合装置では、よりよい特徴を記憶し、照合性能を向上させるために更新を行う。特徴を二つの記憶部に記憶しているのは、特定の条件を満たした場合に、主記憶部に記憶された情報の更新を行うためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−167230号公報
【特許文献2】特開2006−092491号公報
【特許文献3】特開2004−110839号公報
【特許文献4】特開平11−025268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、経時変化を含むパターンを高い精度で、かつ安全に照合できるパターン照合システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つ目のアスペクトによるパターン照合システムは、テンプレート記憶部と、特徴抽出部と、照合部とを備える。テンプレート記憶部は、テンプレートパターンを記憶する。特徴抽出部は、入力パターンの特徴を抽出する。照合部は、入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、テンプレートパターンと照合する第一の照合と、第一の照合とは異なる照合であって、入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行う。
【0011】
本発明の二つ目のアスペクトによるパターン照合方法は、記憶することと、抽出することと、照合することとを備える。記憶することにおいては、テンプレートパターンを記憶する。抽出することにおいては、入力パターンの特徴を抽出する。照合することにおいては、入力パターンの特徴をテンプレートパターンと照合する。照合することは、入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、テンプレートパターンと照合する第一の照合と、第一の照合とは異なる照合であって、入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行うことを含む。
【0012】
本発明の三つ目のアスペクトによるパターン照合用プログラムは、特徴抽出部と、照合部とをコンピュータに実現する。特徴抽出部は、入力パターンの特徴を抽出する。照合部は、入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、テンプレート記憶部に記憶されたテンプレートパターンと照合する第一の照合と、第一の照合とは異なる照合であって、入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、経時変化を含むパターンを高い精度で、かつ安全に照合できるパターン照合システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の本発明を実施するための最良の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の本発明を実施するための最良の形態における動作を示す流れ図である。
【図3】第2の本発明を実施するための最良の形態の構成を示すブロック図である。
【図4】第2の本発明を実施するための最良の形態における動作を示す流れ図である。
【図5】第3の本発明を実施するための最良の形態の構成を示すブロック図である。
【図6】第3の本発明を実施するための最良の形態における動作を示す流れ図である。
【図7】第4の本発明を実施するための最良の形態の構成を示すブロック図である。
【図8】第4の本発明を実施するための最良の形態における動作を示す流れ図である。
【図9】第5の本発明を実施するための最良の形態の構成を示すブロック図である。
【図10】第5の本発明を実施するための最良の形態における動作を示す流れ図である。
【図11】本発明による実施例1の構成を示す図である。
【図12】特徴抽出部の一例を説明する図である。
【図13】指表面パターンの一例を示す図である。
【図14】特徴抽出方法の一例を説明する図である。
【図15】特徴抽出部の別の例を説明する図である。
【図16】テンプレートを記憶するデータベースの一例を示す図である。
【図17】特徴の経時変化の一例を説明する図である。
【図18】テンプレートパターンの一例を示す図である。
【図19】更新されたテンプレートパターンの一例を示す図である。
【図20】入力パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施の形態》
本発明を実施するための最良の形態の一つについて、図1及び図2を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、1つ目の本発明を実施するための最良の形態におけるパターン照合システム280は、テンプレート記憶部390と、特徴抽出部210と、照合部290とを含む。特徴抽出部210と、照合部290とは、パターン照合用プログラムのプログラム制御により動作するコンピュータに実現することができる。パターン照合システム280は、パターン入力装置100に接続されている。
【0016】
パターン入力装置100は、照合したいパターンを入力する。テンプレート記憶部390は、テンプレートパターンの特徴を、経時変化する可能性がある特徴か、経時変化しない特徴かを区別できる形で記憶する。特徴抽出部210は、パターン入力装置100が入力した入力パターンから、照合に用いる特徴を抽出する。照合部290は、入力パターンをテンプレートパターンと照合する。照合部290は、入力パターンの特徴を、テンプレートパターンの特徴と照合する場合に、経時変化する可能性がある特徴か、経時変化しない特徴かに応じて別々に照合を行う。
【0017】
図1の構成図、及び図2のフローチャートを参照して、第1の実施の形態におけるパターン照合システムの全体の動作について詳細に説明する。パターン入力装置100が、照合したいパターンを入力すると(図2のステップA1)、特徴抽出部210は、入力パターンから照合に用いる特徴を抽出する(図2のステップA2)。照合部290は、入力パターンの特徴を、テンプレート記憶部390に記憶されているテンプレートパターンの特徴と照合する。このとき、経時変化する可能性がある特徴か、経時変化しない特徴かに分けて、入力パターンをテンプレートパターンと照合する。(図2のステップE3)。
【0018】
第1の実施の形態の効果について説明する。第1の実施の形態では、テンプレート記憶部390が、テンプレートパターンの特徴を、経時変化する可能性がある特徴か、経時変化しない特徴かを区別できる形で記憶している。照合部290は、経時変化する可能性のある特徴か経時変化しない特徴かに応じて別々に、入力パターンをテンプレートパターンと照合している。そのため、パターンが経時変化するものであっても、経時変化に対応するために精度を落としたり、テンプレートを誤って更新する危険性無く、照合を行うことができる。
【0019】
《第2の実施の形態》
次に、本発明を実施するための最良の形態の別の一つについて、図3及び図4を参照して詳細に説明する。2つ目の本発明を実施するための最良の形態におけるパターン照合システム200は、図3を参照すると、テンプレート記憶部300と、特徴抽出部210と、経時不変特徴照合部220と、経時変化特徴照合部230と、照合結果判定部240とを含んでいる。テンプレート記憶部300は、経時不変テンプレート記憶部310と、経時変化テンプレート記憶部320とを含む。特徴抽出部210と、経時不変特徴照合部220と、経時変化特徴照合部230と、照合結果判定部240とは、パターン照合用プログラムのプログラム制御により動作するコンピュータに実現することができる。パターン照合システム200は、パターン入力装置100に接続されている。
【0020】
経時不変テンプレート記憶部310は、テンプレートパターンの特徴のうち、経時変化しない特徴を記憶する。経時変化テンプレート記憶部320は、テンプレートパターンの特徴のうち、経時変化する特徴を記憶する。経時不変特徴照合部220は、入力パターンの特徴と、経時不変テンプレート記憶部310に記憶されているテンプレートパターンの経時不変特徴とを照合する。経時変化特徴照合部230は、入力パターンの特徴と、経時変化テンプレート記憶部320に記憶されているテンプレートの経時変化特徴とを照合する。照合結果判定部240は、経時不変特徴照合部220の照合結果と、経時変化特徴照合部230の照合結果から、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有するか否かを判定する。
【0021】
図3の構成図、及び図4のフローチャートを参照して、第2の実施の形態の全体の動作について詳細に説明する。パターン入力装置100が、照合したいパターンを入力すると(図4のステップA1)、特徴抽出部210は、入力パターンから照合に用いる特徴を抽出する(図4のステップA2)。経時不変特徴照合部220は、入力パターンの特徴と、経時不変テンプレート記憶部310に記憶されているテンプレートの経時不変特徴とを照合する(図4のステップA3)。経時変化特徴照合部230は、入力パターンの特徴と、経時変化テンプレート記憶部320に記憶されているテンプレートの経時変化特徴とを照合する(図4のステップA4)。照合結果判定部240は、経時不変特徴照合部220の照合結果と、経時変化特徴照合部230の照合結果とに基づいて、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有するか否かを判定する(図4のステップA5)。なお、図4の例では、ステップA3の後にステップA4を行っているが、ステップA3の前にステップA4を行っても良く、ステップA3とステップA4とを並行して行っても良い。
【0022】
第2の実施の形態の効果について説明する。第2の実施の形態では、経時変化しない特徴を経時不変テンプレート記憶部310に記憶し、経時不変特徴照合部220で経時変化しない特徴を照合する。また、経時変化する特徴を経時変化テンプレート記憶部320に記憶し、経時変化特徴照合部230で経時変化する特徴を照合する。そして、照合結果判定部240で、経時変化しない特徴の照合結果と経時変化する特徴の照合結果とから、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有するものであるか否かを求めている。このように、経時変化しない特徴と経時変化する特徴とを別々に扱うようにしているため、経時変化する特徴、経時変化しない特徴それぞれに適した特徴の表現、保存、評価等を行うことができるようになっている。
【0023】
《第3の実施の形態》
次に、本発明を実施するための最良の形態の更に別の一つについて、図5及び図6を参照して詳細に説明する。3つ目の本発明を実施するための最良の形態におけるパターン照合システム201は、図5を参照すると、第2の実施の形態におけるパターン照合システム200に、テンプレート更新部250を追加した構成を備えている。テンプレート更新部250は、照合結果判定部240で入力パターンがテンプレートパターンと同一性を有すると判定された場合に、テンプレート記憶部302における経時変化テンプレート記憶部322に記憶されている経時変化テンプレートを、照合に用いた入力パターンの経時変化特徴で更新する。
【0024】
図5の構成図、及び図6のフローチャートを参照して、第3の実施の形態の全体の動作について詳細に説明する。図6のフローチャートを参照すると、第3の実施の形態の全体の動作は、図4のフローチャートに、テンプレートを更新するステップB1を追加したものとなっている。図6のステップA5において、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有すると判定された場合、第3の実施の形態では、経時変化テンプレート記憶部322に記憶されている経時変化テンプレートを、照合に用いた入力パターンの経時変化特徴で更新する(図6のステップB1)。なお、第2の実施の形態の場合と同様に、図6のステップA3とステップA4の順序関係は、図6と異なっていても良い。
【0025】
第3の実施の形態の効果について説明する。第3の実施の形態では、テンプレート更新部250で、経時変化テンプレート記憶部322に記憶しているテンプレートの経時変化特徴を更新するようにしている。そのため、パターンが時間の経過と共に変化し、最初のパターンと大きく変わってしまうような場合でも、高い精度で照合を行うことができる。
【0026】
《第4の実施の形態》
次に、本発明を実施するための最良の形態の更に別の一つについて、図7及び図8を参照して詳細に説明する。4つ目の本発明を実施するための最良の形態におけるパターン照合システム202は、図7を参照すると、第2の実施の形態におけるパターン照合システム200に、経時変化特徴補正部260を追加した構成を備えている。経時変化特徴補正部260は、経時不変特徴照合部220での経時不変特徴の照合結果から、パターンの移動や変形等のパターン全体に共通して表われる影響を抽出し、パターン全体に共通して表われる影響に合わせて、経時変化特徴を補正する補正データを生成している。
【0027】
図7の構成図、及び図8のフローチャートを参照して、第4の実施の形態の全体の動作について詳細に説明する。図8のフローチャートを参照すると、第4の実施の形態の全体の動作は、図4のフローチャートに、経時変化特徴を補正するステップC1を挿入したものとなっている。図8のステップA3において、経時不変特徴の照合結果が得られると、第4の実施の形態では、パターンの移動や変形等のパターン全体に共通して表われる影響や、経時変化特徴と経時不変特徴の両方に共通して表われる影響を抽出し、これらに共通して表われる影響に合わせて経時変化特徴を補正する(図8のステップC1)。
【0028】
第4の実施の形態の効果について説明する。第4の実施の形態では、経時不変特徴照合部220が経時不変特徴を照合すると、その照合結果から、経時変化特徴補正部260が、パターンの移動や変形等のパターン全体に共通して表われる影響や、経時変化特徴と経時不変特徴の両方に共通して表われる影響を抽出すると共に、これらに合わせて経時変化特徴を補正する補正データを生成している。そのため、経時変化特徴照合部230では、概ね、経時変化による特徴の変化のみを扱い、パターン全体に共通して表われる影響を受けることなく、照合を行うことができるようになる。
【0029】
《第5の実施の形態》
次に、本発明を実施するための最良の形態の更に別の一つについて、図9及び図10を参照して詳細に説明する。5つ目の本発明を実施するための最良の形態におけるパターン照合システム204は、図9を参照すると、テンプレート記憶部304と、特徴記憶部404と、特徴抽出部214と、経時不変特徴照合部224と、経時変化特徴照合部234と、照合結果判定部244と、特徴判定部274と、テンプレート更新部254とを備えている。テンプレート記憶部304は、経時不変テンプレート記憶部314と、経時変化テンプレート記憶部324とを含む。特徴抽出部214と、経時不変特徴照合部224と、経時変化特徴照合部234と、照合結果判定部244と、特徴判定部274と、テンプレート更新部254とは、パターン照合用プログラムのプログラム制御により動作するコンピュータに実現することができる。テンプレート記憶部304と、特徴記憶部404とは、このコンピュータに接続される記憶装置に設けることができる。図9に示すように、パターン照合システム204には、パターン入力装置100が接続されている。
【0030】
図9において、経時不変テンプレート記憶部314は、テンプレートパターンの特徴のうち、経時変化しない特徴を記憶する。経時変化テンプレート記憶部324は、テンプレートパターンの特徴のうち、経時変化する特徴を記憶すると共に、経時変化する可能性のある特徴も記憶する。特徴記憶部404は、照合結果判定部244で同一性を有すると判定された入力パターンの特徴を記憶する。特徴判定部274は、入力パターンが照合結果判定部244で同一性を有すると判定されたときに、特徴記憶部404を参照し、テンプレートパターンにおけるそれぞれ特徴が、経時変化しない特徴か、経時変化する特徴か、どちらとも判断できないかを判定する。テンプレート更新部254は、特徴判定部274で、経時変化しない特徴であると判定された特徴があった場合に、この特徴を、経時変化テンプレート記憶部324から経時不変テンプレート記憶部314へ移動し、テンプレート記憶部304を更新する。
【0031】
図9の構成図、及び図10のフローチャートを参照して、第5の実施の形態の全体の動作について詳細に説明する。まず、パターン入力装置100が、照合したいパターンを入力すると(図10のステップD1)、特徴抽出部214は、照合に用いる入力パターンの特徴を抽出する(図10のステップD2)。経時不変特徴照合部224は、抽出された特徴を、経時不変テンプレート記憶部314に記憶されているテンプレートパターンの経時不変特徴と照合する(図10のステップD3)。経時変化特徴照合部234は、抽出された特徴を、経時変化テンプレート記憶部324に記憶されているテンプレートの経時変化特徴と照合する (図10のステップD4)。照合結果判定部244は、経時不変特徴照合部224の照合結果と、経時変化特徴照合部234の照合結果とから、入力パターンがテンプレートパターンと同一性を有するか否かを判定する(図10のステップD5)。
【0032】
入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有すると判定された場合、特徴判定部274は、特徴記憶部404に記憶された特徴の履歴から、テンプレートパターンのそれぞれの特徴が経時変化しない特徴か、経時変化する特徴か、どちらとも判断できないかを判定する(図10のステップD6)。テンプレート更新部254は、特徴判定部274で、経時変化しない特徴であると新たに判定された特徴があった場合、テンプレート記憶部304を更新する(図10のステップD7)。一方で、照合結果判定部244が、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有すると判定したとき、特徴記憶部404は、その入力パターンを取得し、追加記憶する。なお、第2の実施の形態の場合と同様に、図10のステップD3とステップD4の順序関係は、図10と異なっていても良い。
【0033】
第5の実施の形態の効果について説明する。第5の実施の形態では、照合を繰り返すうちに、特徴記憶部404に入力パターンの特徴が蓄積される。特徴判定部274がこれらの入力パターンの特徴に基づいて、経時変化しない特徴を判定する。そして、テンプレート更新部254が、テンプレートの特徴を、経時変化する特徴と経時変化しない特徴とに自動的に振り分けるようにしている。そのため、特徴抽出部214で、事前知識により経時変化する特徴か、経時変化しない特徴かを判断できなくとも、経時変化する特徴と経時変化しない特徴とを分けて照合することができる。
【0034】
[実施例1]
具体的な実施例を用いて、本発明の詳細な説明を行う。まず、図11〜図16を用いて、第2の実施の形態に対応する実施例1について説明する。実施例1は、登録されている指表面パターンのテンプレートデータと、入力された指表面パターンの入力データとが、同じ指のものかどうかを照合する指認証装置に本発明によるパターン照合システムを適用するものである。指表面パターンは、指紋隆線からなるパターンや、皺、傷のパターン、手荒れによりできるパターン等が組み合わさったパターンである。これらのうち、指紋隆線からなるパターンは時間の経過に因らず変化しないと考えられるが、皺、傷のパターン、手荒れによりできるパターン等は、時間の経過と共に変化すると考えられる。実施例1では、指表面パターンの特徴のうち、指紋隆線に由来する特徴を経時変化しない経時不変特徴として扱い、それ以外の特徴を経時変化する可能性のある経時変化特徴として扱うこととする。
【0035】
図11に示すように、実施例1のパターン照合システムは、コンピュータ205と、ハードディスク305とを備えている。コンピュータ205では、パターン照合用プログラムが動作している。このパターン照合用プログラムは、コンピュータ205に、特徴抽出部215と、経時不変特徴照合部225と、経時変化特徴照合部235と、照合結果判定部245とを実現している。ハードディスク305は、テンプレートパターンを記憶するテンプレート記憶部として機能していて、経時不変テンプレート記憶部315と、経時変化テンプレート記憶部325とを備えている。経時不変テンプレート記憶部315には、テンプレートの指の指紋隆線に由来する経時変化しない特徴が記憶されている。一方、経時変化テンプレート記憶部325には、傷や皺、手荒れ等に由来する経時変化する特徴が記憶されている。図示するように、コンピュータ205には、光学カメラセンサ105と、ハードディスク305とが接続されている。光学カメラセンサ105は、パターン入力装置として機能する。
【0036】
図11において、光学カメラセンサ105から、登録されている指と同じ指か否かを判定する指の指表面パターンを入力する。特徴抽出部215は、入力された指表面パターンから、指紋隆線に由来する経時不変特徴と、傷や皺、手荒れ等に由来する経時変化特徴とをそれぞれ抽出する。経時不変特徴照合部225では、入力された指表面パターンの経時不変特徴と、経時不変テンプレート記憶部315に記憶されているテンプレートの指表面パターンの経時不変特徴とを照合する。経時変化特徴照合部235では、入力された指表面パターンの経時変化特徴と、経時変化テンプレート記憶部325に記憶されているテンプレートの指表面パターンの経時変化特徴とを照合する。照合結果判定部245では、経時不変特徴の一致度合いと、経時変化特徴の一致度合いとから、入力された指表面パターンと登録されているテンプレートの指表面パターンとが同じ指表面パターンか否かを判定する。
【0037】
実施例1の特徴抽出部215について詳述する。図12に示すように、特徴抽出部215は、まず、入力パターンから全ての特徴データを抽出し、その後、特徴データを、経時不変特徴データと経時変化特徴データとに振り分けるように動作することができる。
【0038】
例えば、図13に示すような指表面パターンが入力パターンとして与えられたとする。この入力パターンは、経時不変特徴である指紋隆線と、経時変化特徴である傷とを含んでいる。図14に示すように、特徴抽出部215は、まず、入力された指表面パターン全体からエッジ特徴を抽出する。その後、各エッジ特徴が指紋隆線のエッジ特徴なのか、それ以外のエッジ特徴なのかを判定し、特徴データを分類するようにすることができる。
【0039】
特徴抽出部215の変形例を図15に示す。図15の特徴抽出部215aは、経時不変特徴や経時変化特徴の事前知識を用い、入力パターンから直接、経時不変特徴と経時変化特徴とを抽出する。例えば、図15の矢印のように、まず、入力された指表面パターンから、特開平09−167230号公報記載の方法を用いて指紋隆線の特徴を抽出し、その後、この指表面パターンから、指紋隆線以外の特徴を抽出するようにすることができる。
【0040】
経時不変特徴照合部225と、経時変化特徴照合部235とは、特徴の表現方法を同じにすることもできるし、異なる表現とすることもできる。経時不変特徴と経時変化特徴とは、必ずしも同一の表現方法を使用して表現する必要は無い。例えば、経時不変特徴である指紋隆線の特徴も、経時変化特徴である皺や傷、手荒れのパターンの特徴も、どちらも線分として共通に表現することもできるし、指紋隆線の特徴は隆線の端点、分岐点としてシンボル化して表現し、皺や傷、手荒れのパターンは画像情報としてそのまま表現することもできる。同様に、照合結果判定部240では、経時不変特徴照合部225による照合結果と、経時変化特徴照合部235による照合結果とを判定するときに、照合結果の判定方法を同じにすることもできるし、異なるようにすることもできる。例えば、指紋隆線の情報を隆線の分岐点や端点の点情報としてシンボル化して判定することで判定の安定度を高め、経時変化する特徴は、多彩な特徴を含むため、シンボル化せずに、そのまま判定するというふうにすることもできる。
【0041】
照合結果判定部240は、同一性の範囲を定めるパラメータを使用して判定を行うことができる。このとき、経時不変特徴照合部225による照合結果と、経時変化特徴照合部235による照合結果とを、同じパラメータで判定することもできるし、異なるパラメータで判定するようにすることもできる。例えば、経時変化しない特徴は、入力毎に安定しているため、厳しい閾値のパラメータで厳密に判定するようにする。一方、経時変化する特徴は、時間と共に変化した分を見込む必要があるため、経時不変特徴の照合よりも緩い閾値のパラメータで判定するようにすることができる。
【0042】
更に、照合結果判定部240は、パラメータを、テンプレート作成時から照合時までの経過時間に応じて決めるようにすることもできる。テンプレート作成時から照合時までほとんど時間が経過していなければ、経時変化特徴もほとんど変化しないため、経時不変特徴と同じ厳しい閾値のパラメータで判定し、テンプレート作成時から照合時まで長い時間が経過していれば、経時変化特徴の変化は大きくなるため、緩い閾値のパラメータで判定するようにする。テンプレート作成時から照合時までの時間の長さが長いほど、閾値を大きく緩めるパラメータを使用するようにすることで、経時変化特徴の変化度合いに応じて判定を行うようにすることができる。
【0043】
実施例1では、特徴抽出部215で経時不変特徴と経時変化特徴のそれぞれを抽出したが、特徴抽出部215では照合に用いる特徴を抽出するのみで、経時不変特徴と経時変化特徴とを区別することを行わないようにすることもできる。特徴抽出部215で経時不変特徴と経時変化特徴とを区別しない場合、経時不変特徴照合部225で、照合に用いる特徴全てと経時不変テンプレート記憶部315の経時不変特徴とを比較して、合致するものがあれば経時不変特徴とする。また、経時変化特徴照合部235で、照合に用いる特徴全てと経時変化テンプレート記憶部325の経時変化特徴とを比較して、合致するものがあれば経時変化特徴とするようにすることもできる。
【0044】
照合結果判定部245では、例えば、経時不変特徴照合部225で求めた経時不変特徴の一致度合いと経時変化特徴照合部235で求めた経時変化特徴の一致度合いの両方が予め定められた所定の値以上の場合に一致と判定するというふうに判定する。或いは、経時不変特徴の一致度合いと経時変化特徴の一致度合いをかけたり足したりした値や、これらを所定の判定式の引き数として代入し、得られた値を用いて判定することもできる。
【0045】
照合する二つのパターンが同じパターンであれば、経時不変特徴の一致度合いは高いはずであるので、経時不変特徴照合部225で求めた経時不変特徴の一致度合いが予め定められた所定の値よりも低い場合、経時変化特徴照合部235で経時変化特徴の一致度合いを求めることなく、異なったパターンであると判定することもできる。
【0046】
異なるパターンでは経時不変特徴の一致度合いが非常に高くなることはないため、経時不変特徴照合部225で求めた経時不変特徴の一致度合いが予め定められた所定の値よりも高い場合、経時変化特徴照合部235で経時変化特徴の一致度合いを求めることなく、同じパターンであると判定することもできる。
【0047】
実施例1では、パターン入力装置として光学カメラセンサ105を用いたが、静電容量センサ、圧力センサ、感熱センサ、磁気センサ等の任意のセンサを用いることができる。
【0048】
実施例1では、テンプレート記憶部をハードディスク305に設けたが、メモリやICカード等任意の記憶装置に設けることができる。また、実施例1では、ハードディスク305を、コンピュータ205の外部に設けたが、コンピュータ205の内部に内蔵することもでき、更に、ICカードのように取り外し可能な可搬な媒体とすることもできる。
【0049】
実施例1では、パターンを直接入力して、特徴抽出をコンピュータ205内の特徴抽出部215で行ったが、別の装置でパターンの入力から特徴抽出までを行い、抽出された特徴を直接入力するようにすることもできる。その場合、コンピュータ205内の特徴抽出部215は、入力された特徴を経時不変特徴照合部225と経時変化特徴照合部235へ送付するだけとし、特に処理を行う必要はないようにすることもできる。
【0050】
実施例1では、照合するパターンとして、指表面パターンを用いたが、他のパターンとすることもできる。例えば、顔のパターンや静脈のパターン等の他の生体パターンや、航空写真等の地理パターンとすることもできる。顔パターンを用いる場合、経時不変特徴として、頬骨の位置や鼻先等の骨格由来の特徴を用い、経時変化特徴として、ほくろや皺等の表皮の特徴を用いることができる。静脈パターンを用いる場合、経時不変特徴として、太い静脈を用い、経時変化特徴として、太い静脈から分岐している細い静脈を用いることができる。地理パターンを用いる場合、経時不変特徴として、幹線道路等の変化しないものを用いることができ、経時変化特徴として、木々等変化するものを用いることができる。
【0051】
実施例1によれば、経時変化しない指紋隆線の特徴と、経時変化する傷や皺、手荒れによる特徴をそれぞれ別々に照合するため、指表面パターンが経時変化しても安定して照合を行うことができる。
【0052】
実施例1では、経時不変特徴と経時変化特徴を経時不変テンプレート記憶部315と経時変化テンプレート記憶部325に別々に記憶したが、図16に示すように経時変化するか経時変化しないかを示す属性を付けた一つのデータベースとして、一つの記憶部に記憶することもできる。
【0053】
更に、実施例1では、経時不変特徴と経時変化特徴とを、経時不変特徴照合部225と経時変化特徴照合部235との別々のブロックを用いて照合したが、経時変化するかどうかの属性に応じて、一つの照合部がモード等を変更することで、二つの照合機能を切り替えるようにすることもできる。
【0054】
経時変化するか経時変化しないかを示す属性をつけた一つのデータベースとして、一つの記憶部に記憶し、経時変化するかどうかの属性に応じて、一つの照合部が照合モード等を変更することでその照合機能を切り替えるようにした場合、第1の実施の形態に対応する実施例となる。すなわち、第1の実施の形態に対応する実施例では、図16のテンプレート記憶部に示すように、テンプレートパターンの線分特徴を記憶する。図中、各レコードは、特徴を識別する特徴番号、線分の始点座標の位置と終点座標の位置、経時変化するかしないかを示す属性を記録している。照合部では、経時変化の属性に応じたモードで照合を行う。
【0055】
[実施例2]
次に、図17〜図20を用いて、第3の実施の形態に対応する実施例2について説明する。第3の実施の形態は、図5に示したように、テンプレート記憶部302を更新するテンプレート更新部250を備えている。テンプレート更新部250は、照合を行う毎に、経時変化テンプレート記憶部322に記憶されたテンプレートパターンの経時変化特徴を、入力パターンの経時変化特徴で更新する。
【0056】
経時不変特徴として指紋の隆線特徴を用い、経時変化特徴として指表面の荒れによる特徴を用いる場合を考える。このとき、図17の矢印で示すように、時間が経過しても隆線特徴は変化しないが、荒れや傷による特徴は時間の経過と共に変化する。最初に登録されたテンプレートの経時不変特徴と経時変化特徴とが図18のようであったとする。照合・判定を行って、パターンが一致することとなった場合に、テンプレート更新部250は、図19のように、経時変化特徴だけ、テンプレートを更新する。その後、図20のようなパターンが入力された場合、最初に登録した図18のテンプレートとは、経時変化特徴が大きく変わってしまっているため、経時変化特徴を同じと判定できない。しかし、図19のように、経時変化特徴だけテンプレートが更新されていると、経時変化特徴を同じと判定できる。
【0057】
テンプレートの更新は、照合毎に行うようにしてもよく、所定の回数毎としてもよい。また、照合結果判定部245が二つのパターンの一致を判定した場合において、その判定の際に求めた一致度が所定の値よりも大きい場合のみ更新するようにして、誤って異なったパターンに更新してしまう危険を小さくするようにすることもできる。
【0058】
実施例2によれば、テンプレートのうち経時変化する特徴を更新することから、経時変化により強い照合を行うことができる。
【0059】
更に、経時変化テンプレートの更新の過程を記録し、次の照合時の経時変化特徴を予測するようにすることもできる。例えば、経時変化特徴が図18から図19へと、上の線分が短くなる変化があった場合、次の照合時は更に短くなると予測することができる。その後、図20のパターンが入力された場合に、図19よりも短くなると予測できていれば、より小さな許容誤差で照合・判定を行うことができ、予測を行わない場合に比べて照合精度を向上させることができる。
【0060】
更に、経時変化の予測に前回のテンプレート更新時からの経過時間を用いるようにすることができる。経時変化の度合いは、経過時間に強く関係するため、前回のテンプレート更新時からの経過時間を用いることで、精度良く予測を行うことができる。
【0061】
[実施例3]
次に、第4の実施の形態に対応する実施例3について説明する。第4の実施の形態は、図7に示したように、経時変化特徴補正部260を備えている。経時変化特徴補正部260は、経時不変特徴照合部225での経時不変特徴の照合結果から、パターンの回転、移動や変形等のパターン全体に共通に表われる影響を抽出し、パターン全体に共通に表われる影響に合わせて経時変化特徴を補正する。
【0062】
例えば、指表面パターンを考える。指表面パターンは、センサへの入力毎に位置がずれたり、センサへの入力時に指の押しつけ方によって変形したりする。位置ずれはパターン全体の回転や平行移動として表現でき、指紋隆線特徴等の経時不変特徴と皺、傷、手荒れによる特徴等の経時変化特徴の両方に等しく影響する。入力時の指の変形も、指紋隆線特徴等の経時不変特徴と皺、傷、手荒れによる特徴等の経時変化特徴の両方に等しく影響する。
【0063】
二つのパターンにおける経時不変特徴の差は、回転や平行移動、変形による差や、特徴抽出の誤差等のランダムな差となる。一方、経時変化特徴の差は、回転や平行移動、変形による差や、特徴抽出の誤差等のランダムな差に、経時変化による差が加わったものとなる。そのため、経時変化特徴の差は経時不変特徴の差より大きくなる傾向にある。これらの差の全てを誤差として含めてしまうと、判定時に許容誤差として許す幅が大きくなりすぎ、誤って異なったパターンを同一であると判定してしまう危険性が高くなる。
【0064】
実施例3では、経時変化特徴補正部260が、経時不変特徴照合部220による経時不変特徴の照合結果を取得する。そして、二つのパターンにおける経時不変特徴の対応関係から、回転や平行移動、変形といった経時不変特徴と経時変化特徴の両方に等しく表われる影響を補正するための補正データを求める。補正データが得られれば、経時変化特徴を補正し、経時変化特徴から回転や平行移動、変形といった経時不変特徴と経時変化特徴の両方に等しく表われる影響による誤差等を取り除くことができる。経時変化特徴補正部260は、補正データを経時変化特徴照合部230に与え、経時変化特徴照合部230は、補正した経時変化特徴を用いて照合を行う。
【0065】
実施例3では、経時変化特徴そのものを補正する補正データを生成したが、補正データは、経時変化特徴の補正量を表す補正量パラメータであっても良い。経時変化特徴補正部260は、経時変化特徴照合部230に補正量パラメータを付与し、経時変化特徴照合部230は、この補正量パラメータを考慮して照合を行うようにすることもできる。
【0066】
実施例3によれば、経時不変特徴の照合結果に基づいて、経時変化特徴の照合を、回転や平行移動、変形といった経時不変特徴と経時変化特徴の両方に等しく表われる影響を取り除いて行うことができる。そのため、経時変化特徴をより厳密に照合することが可能となる。経時不変特徴と経時変化特徴の両方に等しく表われる影響としては、回転や平行移動、変形の他に、輝度や濃度の変化、光源の影響等も挙げることができる。
【0067】
[実施例4]
次に、第5の実施の形態に対応する実施例4について説明する。第1〜第4の実施の形態では、テンプレート記憶部にテンプレートパターンを記憶する場合や、特徴抽出部210が入力パターンから照合に用いる特徴を抽出する場合に、特徴が経時不変特徴であるのか経時変化特徴であるのかを求める必要があった。
【0068】
例えば、特徴抽出部210が、入力される指表面パターンからエッジ特徴を抽出する場合、そのエッジ特徴が指紋隆線に由来する経時変化しないエッジ特徴なのか、皺や傷、手荒れ等による経時変化するエッジ特徴なのか、わからない場合がある。実施例1では、このような経時変化するかしないかを判断できない特徴は、利用することができなかった。実施例4では、経時変化するかしないかを判断できない特徴も取り扱うようにする。
【0069】
実施例4においては、テンプレートパターンを登録するときに、経時変化するかどうかを判断できない特徴は、経時変化テンプレート記憶部324に記憶する。続いて、照合を繰り返す。すなわち、特徴抽出部214が特徴を抽出し、経時不変特徴照合部224と経時変化特徴照合部234とがテンプレートとの照合を行う。特徴記憶部404は、照合の結果、同一性を有するとされた入力パターンを記憶する。
【0070】
特徴判定部274は、所定のタイミングで、特徴記憶部404を参照し、同一性を有するとされた一連の入力パターンを調べる。そして、各特徴が、経時変化するかどうかを調べる。例えば、所定の期間以上変化しないことが確認された特徴は、経時不変特徴と判定し、その旨テンプレート更新部254へ通知する。テンプレート更新部254は、経時不変特徴であると新たにわかった特徴を、経時変化テンプレート記憶部324から、経時不変テンプレート記憶部314へと移動し、テンプレート記憶部304を更新する。
【0071】
実施例4における特徴記憶部404は、入力バターンの特徴を記憶するようにしたが、その入力パターンの照合結果や、その入力パターンそのものを記憶するようにしても良い。この場合でも、特徴判定部274は、特徴記憶部404に相当するものを参照することにより、テンプレートパターンのそれぞれの特徴が、経時変化するものか否かを判定することができる。
【0072】
実施例4によれば、特徴が経時変化するか経時変化しないかをテンプレート登録時に判断できない場合でも、照合を重ねるうちに適切に判断することができるようになる。
【0073】
以上、実施の形態や実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、請求の範囲に記載された本願発明の技術的思想の範囲内において、当業者が適宜、様々な変形又は変更を加えることが可能である。
【0074】
この出願は、2008年1月21日に出願された特許出願番号2008−010818号の日本特許出願に基づいている。本願は、この基礎出願により生じた優先権の利益を享受しており、この基礎出願における開示の内容の全てを、引用により、そっくりそのままここに取り込んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプレートパターンを記憶するテンプレート記憶手段と、
入力パターンの特徴を抽出する特徴抽出手段と、
前記入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、前記テンプレートパターンと照合する第一の照合と、前記第一の照合とは異なる照合であって、前記入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、前記テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行う照合手段と、
前記第二の特徴から、前記第一の特徴と前記第二の特徴とに共通に表われる影響を取り除くための補正データを、前記第一の照合による照合結果に基づいて生成する経時変化特徴補正手段とを備え、
前記経時変化特徴補正手段は、前記共通に表われる影響として、入力パターンの回転による影響、入力パターンの平行移動による影響、入力パターンの変形による影響、輝度の相違による影響、又は、濃度の相違による影響のうち、少なくとも一つの影響を取り除くための補正データを生成する
パターン照合システム。
【請求項2】
前記テンプレート記憶手段は、
前記テンプレートパターンの特徴の中で経時変化しない特徴を記憶する経時不変テンプレート記憶手段と、
前記テンプレートパターンの特徴の中で経時変化する特徴を記憶する経時変化テンプレート記憶手段とを有し、
前記照合手段は、
前記第一の照合を行うときに、前記第一の特徴を、前記経時不変テンプレート記憶手段に記憶された特徴と照合すると共に、前記第二の照合を行うときに、前記第二の特徴を、前記経時変化テンプレート記憶手段に記憶された特徴と照合する
請求項1記載のパターン照合システム。
【請求項3】
前記第一の照合による第一の照合結果と、前記第二の照合による第二の照合結果とに基づいて、前記入力パターンが、前記テンプレートパターンと同一性を有するか否かを判定する照合結果判定手段を更に備える
請求項2記載のパターン照合システム。
【請求項4】
前記照合結果判定手段は、
同一性の範囲を定める第一のパラメータを用いて、前記第一の照合結果を判定すると共に、前記第一のパラメータとは異なるパラメータであって、同一性の範囲を定める第二のパラメータを用いて、前記第二の照合結果を判定する
請求項3記載のパターン照合システム。
【請求項5】
前記照合結果判定手段が、入力パターンとテンプレートパターンとが同一性を有すると判定したときに、この入力パターンに基づいて、前記経時変化テンプレート記憶手段に記憶された当該テンプレートパターンの特徴を更新するテンプレート更新手段を更に備える
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン照合システム。
【請求項6】
テンプレートパターンと同一性を有すると判定された入力パターンに関する情報を記憶する特徴記憶手段と、
前記特徴記憶手段を参照し、一の入力パターンに関する情報と、他の入力パターンに関する情報とに基づいて、前記テンプレートパターンの特徴が経時変化するか経時変化しないかを判定する特徴判定手段と、
前記特徴判定手段の判定結果に基づいて、前記テンプレート記憶手段を更新するテンプレート更新手段とを更に備え、
前記特徴記憶手段は、
入力パターンに関する情報として、同一性を有すると判定された照合結果、又は、同一性を有すると判定された入力パターンの特徴を記憶する
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン照合システム。
【請求項7】
前記照合手段は、
前記第二の照合を行うときに、テンプレートパターンと同一性を有すると過去に判定された入力パターンに基づいて、前記テンプレートパターンの経時的変化を推定し、前記第二の特徴を、推定される経時的変化を伴うテンプレートパターンと照合すると共に、
前記テンプレート記憶手段は、
前記テンプレートパターンとして、指表面パターンを記憶し、
前記特徴抽出手段は、
指表面から得られる入力パターンの特徴を抽出し、
前記照合手段は、
前記第一の特徴を、指紋の隆線に由来する特徴として前記第一の照合を行うと共に、前記第二の特徴を、指紋の隆線に由来しない特徴として前記第二の照合を行い、若しくは、
前記テンプレート記憶手段は、
前記テンプレートパターンとして、顔パターンを記憶し、
前記特徴抽出手段は、
顔から得られる入力パターンの特徴を抽出し、
前記照合手段は、
前記第一の特徴を、骨格に由来する特徴として前記第一の照合を行うと共に、前記第二の特徴を、表皮に由来する特徴として前記第二の照合を行う
請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン照合システム。
【請求項8】
テンプレートパターンを記憶することと、
入力パターンの特徴を抽出することと、
前記入力パターンの特徴を前記テンプレートパターンと照合することとを備え、
前記照合することは、
前記入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、前記テンプレートパターンと照合する第一の照合と、前記第一の照合とは異なる照合であって、前記入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、前記テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行うことを含み、
さらに、
前記第二の特徴から、前記第一の特徴と前記第二の特徴とに共通に表われる影響を取り除くための補正データを、前記第一の照合による照合結果に基づいて生成することと、
前記共通に表われる影響として、入力パターンの回転による影響、入力パターンの平行移動による影響、入力パターンの変形による影響、輝度の相違による影響、又は、濃度の相違による影響のうち、少なくとも一つの影響を取り除くための補正データを生成することとを備える
パターン照合方法。
【請求項9】
前記記憶することは、
前記テンプレートパターンの特徴の中で経時変化しない特徴の記憶をすることと、
前記テンプレートパターンの特徴の中で経時変化する特徴の記憶をすることとを含み、
前記照合することは、
前記第一の照合を行うときに、前記第一の特徴と、前記経時変化しない特徴との照合を行うと共に、前記第二の照合を行うときに、前記第二の特徴と、前記経時変化する特徴との照合を行うことを更に含む
請求項8記載のパターン照合方法。
【請求項10】
前記第一の照合による第一の照合結果と、前記第二の照合による第二の照合結果とに基づいて、前記入力パターンが、前記テンプレートパターンと同一性を有するか否かを判定することを更に備え、
前記判定することは、
同一性の範囲を定める第一のパラメータを用いて、前記第一の照合結果の判定をすると共に、前記第一のパラメータとは異なるパラメータであって、同一性の範囲を定める第二のパラメータを用いて、前記第二の照合結果の判定をすることを含む
請求項9記載のパターン照合方法。
【請求項11】
入力パターンの特徴を抽出する特徴抽出手段と、
前記入力パターンの特徴の中で経時変化しない第一の特徴を、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートパターンと照合する第一の照合と、前記第一の照合とは異なる照合であって、前記入力パターンの特徴の中で経時変化する第二の特徴を、前記テンプレートパターンと照合する第二の照合とを行う照合手段と、
前記第二の特徴から、前記第一の特徴と前記第二の特徴とに共通に表われる影響を取り除くための補正データを、前記第一の照合による照合結果に基づいて生成する経時変化特徴補正手段とをコンピュータに実現するためのパターン照合用プログラムであり、
前記経時変化特徴補正手段は、前記共通に表われる影響として、入力パターンの回転による影響、入力パターンの平行移動による影響、入力パターンの変形による影響、輝度の相違による影響、又は、濃度の相違による影響のうち、少なくとも一つの影響を取り除くための補正データを生成する
パターン照合用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−69150(P2012−69150A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262335(P2011−262335)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2009−550432(P2009−550432)の分割
【原出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】