説明

パッキン付き逆止弁

【課題】パッキンが逆止弁本体のフランジに対して面ズレを起こすことのない、安価に製造できるパッキン付き逆止弁を提供する。
【解決手段】中心部に流体の通過を許す中心孔を有する円環状の弁座部21を備えた弁箱本体と弁箱本体から外方へ広がるフランジとを備えた弁箱5と、該弁箱内に配置された弁体29と、該弁体を弁座へ向けて付勢する付勢部材31とを備えた逆止弁本体3と、弁箱のフランジに被着される、内周側に円周溝を備えたリング型の弾性材料製のパッキン35とを備えたパッキン付き逆止弁において、弁箱のフランジの側面に、パッキンに対する滑り止め手段、34a、34b、34c、34d、34eを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はパッキン付き逆止弁に関し、さらに詳細に言えば、水道などの配管の接続部に使用されるパッキン付き逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
水道の配管等において、例えば断水時に二次側(下流側)から一次側(上流側)へ汚水が逆流するのを防止する目的で逆止弁を使用する。その際、その接続部での両配管の間のシールを行うパッキンをその逆止弁に取付け、そのパッキンを両配管の端部間に配置して圧縮するようにしたパッキン付き逆止弁が使用されることがある。
【0003】
従来のこの種の逆止弁においては、逆止弁本体側に外側へ広がるフランジが設けられ、このフランジ外周側に、内周に円周溝を備えたリング型のパッキンを被せている。そしてこのパッキンを接続する二つの配管、例えばメータの下流側の流出口となる筒部とそれに接続される配管の相互に対面する端面の間に配置し、配管側に被せた袋ナットをメータの筒部外周に形成されたネジに螺合させて締め付け、両端面でパッキンを圧縮してシールするようにしている。この場合、逆止弁本体は配管側に収受される。
【0004】
ところが、このようにして取付けたパッキン付き逆止弁では、パッキンを圧縮した際にパッキンがフランジの側面に対して所謂面ズレを起こし、大きく変形して袋ナットのネジ部に食込んでしまい、配管の保守などの際に配管の接続を外そうとしてもかなり困難となる。袋ナットを強引に回すことにより接続は外せても、逆止弁本体が配管内に収受され、パッキンが袋ナットのネジ部に食込んだままとなっており、この配管から逆止弁を取り外すことができない場合がある。工具などを使用して取り外すことは可能であるが、パッキンがネジ部に食込むことによりパッキンは傷つけられ、さらに工具等で取り外す際にさらに傷つけられて再使用ができない。さらには逆止弁本体自体も損傷してしまう可能性がある。
【0005】
このようなパッキンの面ズレを防止できるパッキン一体型逆止弁の一例が実用新案第2590603号に開示されている。この逆止弁では、パッキンを金属など剛性あるリング状の芯体とインサートモールドして一体化し、その芯体を逆止弁にネジ結合している。しかしこのような構成ではパッキンが芯体に面ズレを起こすことは防止できるが、部品の製造などに工数が掛かり、コスト高となる。
【特許文献1】実用新案登録第2590603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、より安価に実施可能な構成によりパッキンの逆止弁に対する面ズレを防止できるパッキン付き逆止弁を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明においては、パッキンが被着される逆止弁本体のフランジに滑り止め手段を構成した。その滑り止め手段は、例えばフランジの両側面を小さな凹凸を備えた梨地状に形成すること、或いは両側面に穴、円周方向に伸びる突条、溝を形成したり、或いは放射状に伸びる溝又は突起を形成することにより構成できる。
【発明の効果】
【0008】
上記の如く構成した本願発明のパッキン付き逆止弁においては、逆止弁を取付けてパッキンを二つの配管の端面間で圧縮しても、パッキンが逆止弁のフランジに対して面ズレを起こすことが防止され、パッキンが袋ナットのネジ部に食込んで、取り外しが困難になる、或いはパッキンが損傷するような不都合が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明のパッキン付き逆止弁1(以下単に「逆止弁」という。)を使用してメータ51と下流側配管61とを接続した状態を示す断面図である。図は逆止弁1が開いて水がメータ51側から配管61側へ流れている状態を示している。
【0010】
図において、逆止弁1は逆止弁本体3を備え、該逆止弁本体3は非閉鎖型の弁箱5を備えている。弁箱5は、後述の弁座パッキン21が取付けられる円環状の開口部7と、該開口部から図において後方(右側)へ延びる複数のリブ9と、該リブ9の端部に一体的に形成された円盤状の底部11と、リブ9の内側で底部11から前方へ筒状に延びるバネ収納部13と、底部11の中央から前方に延びるガイド軸15とを備えている。隣合うリブ5の間には隙間17が形成され、開口部7から流入した水はこの隙間17を通って下流の配管61側へと流れる。開口部7の前端部には径方向外方へ広がるフランジ19が形成されている。
【0011】
開口部7の内周側には弁座パッキン21が弁座押さえ23を用いて取付けられている。弁座パッキン21は後面側に図示の通り円周方向に延びる溝22が形成され、この溝に開口部7の内周側に形成された前方向へ突出する円環状の短い突起10が嵌っている。弁座押さえ23は筒部25と筒部25の前端部から径方向外方へ広がるフランジ27とを備え、筒部25の外周に形成された円周方向に延びる溝26に弁箱5の開口部7内周に形成された小さい突起8が嵌ることにより、図示のように弁箱5に取付けられ、筒部25の後端面により弁座パッキン21を図において右向きに押圧し、そのフランジ27は弁箱5のフランジ19に重なっている。フランジ19、27の外径は等しくなっている。そしてフランジ19とフランジ27とで逆止弁本体3のフランジ34を構成している。
【0012】
弁箱5内には公知のキノコ型の弁体29がガイド軸15に案内されて図において左右方向に移動可能に配置され、バネ収容部13内に配置された圧縮バネ31により弁座パッキン21に向けて常時付勢されている。
【0013】
符号35はパッキンであり、このパッキン35には従来例と同じようにその内周側に円周方向に延びる溝37が形成され、この溝37が逆止弁本体3のフランジ34に嵌ることにより逆止弁本体3に取付けられている。その際、接着などは施されていない。
【0014】
図示の通り、逆止弁本体3はフランジ34を除いて配管61内に収受され、パッキンはメータ51の筒部52の端面53と配管61の端面62との間において圧縮されている。内向きフランジ72を備えた袋ナット71に配管61が挿通され、袋ナット71の雌ねじがメータ51の筒部52の外周に形成された雄ねじに螺合し、袋ナット71を締めることによりパッキン35は筒部52の端面53と配管61の端面62との間で圧縮されている。なお、パッキン35の右側の部分は配管61の端面63から円環状に突出している載置部73に嵌り、袋ナット71のフランジ72は配管61の端面62の後側に形成された肩部63に当接している。
【0015】
ところで、逆止弁本体3のフランジ19と弁座押さえ23のフランジ27が重なって構成するフランジ34の両側面には、パッキン35がフランジ34に対して面ズレを起こすのを防止する滑り防止機構が設けられている。この滑り防止機構により、パッキンを圧縮しても、パッキン35がフランジ34に対して面ズレを起こすことが防止され、袋ナット71の雌ねじ内へ食込むことが防止される。
【0016】
図2は滑り防止機構の具体的な例を示す図であり、(イ)は第1の例を示す部分断面図である。この例では、フランジ34の両側面が梨地状に仕上げられている。即ち、両側面には小さな凹凸34aが多数形成されて梨地状になっている。弁箱5、弁座押さえ23はプラスチック製であり、この梨地は、成形用の金型の対応する面に例えばショットブラスト処理を施して梨地状に仕上げておくことにより得られる。
【0017】
図2の(ロ)は第2の例を示す部分断面図であり、フランジ34の両側面に有底の小さな穴34bが形成されている。(ハ)は第3の例を示す部分断面図であり、この例ではフランジ34の両側面に円周方向に延びる複数の断面V字状の突状34cが同心円状に形成されている。(ニ)は第4の例を示す部分断面図であり、この例ではフランジ34の両側面に円周方向に延びる複数の断面V字状の溝34dが同心円状に形成されている。(ホ)は第5の例を示す部分側面図であり、この例では、フランジ34の両側面に放射状に延びる溝又は突起34eが形成されている。
【0018】
本願発明においては上記のようにフランジ34に梨地などの滑り止めを形成したので、従来生じていた面ズレを確実に防止することができる。しかも、逆止弁本体3、弁座押さえ23をプラスチック製とし、これらを成形する際に同時に梨地などの滑り止めを形成することができるので、パッキンをフランジに接着、或いは芯体を用いてその芯体にパッキンを接着したり或いは芯体と一緒にインサートモールドする従来例に比しても安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るパッキン付き逆止弁の使用状態を示す断面図である。
【図2】滑り止めの例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1:パッキン付き逆止弁 3:逆止弁本体 5:弁箱 19:フランジ 21:弁座パッキン 23:弁座押さえ 27:フランジ 29:弁体 31:バネ 34:フランジ 35:パッキン 34a, 34b, 34c, 34d, 34e:滑り止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に流体の通過を許す中心孔を有する円環状の弁座部を備えた弁箱本体部と該弁箱本体部から外方へ広がるフランジとを備えた弁箱と、該弁箱内に配置された弁体と、該弁体を前記弁座へ向けて付勢する付勢部材とを備えた逆止弁本体と、内周側に円周溝を備え、該円周溝において前記フランジに被着されたリング型の弾性材料製のパッキンとを備えたパッキン付き逆止弁において、前記フランジの側面に、前記パッキンに対する滑り止め手段が構成されていることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。
【請求項2】
請求項1記載の逆止弁において、前記滑り止め手段は、前記側面に梨地状に形成された小さな凹凸からなることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。
【請求項3】
請求項1記載のパッキン付き逆止弁において、前記滑り止め手段は、前記側面に形成された孔により構成されていることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。
【請求項4】
請求項1記載のパッキン付き逆止弁において、前記滑り止め手段は、前記側面に形成された円周方向に延びる溝により構成されていることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。
【請求項5】
請求項1記載のパッキン付き逆止弁において、前記滑り止め手段は、前記側面に形成された円周方向に延びる突起により構成されていることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。
【請求項6】
請求項1記載のパッキン付き逆止弁において、前記滑り止め手段は、前記側面に形成された放射状に延びる溝又は突起により構成されていることを特徴とする、パッキン付き逆止弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−90939(P2010−90939A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259646(P2008−259646)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(390006736)株式会社日邦バルブ (14)
【Fターム(参考)】