説明

パッケージトレイの吸音構造

【課題】吸音材の吸音性能を維持しつつランプ交換や吸音材の貼り合わせなどの作業性を改善する。
【解決手段】本発明は、車両におけるパッケージトレイ1の裏面のほぼ全面を覆うサイレンサーパッド30が設けられたパッケージトレイ1の吸音構造であって、パッケージトレイ1は、トレイ本体部10と、ハイマウントストップランプ20とを備え、サイレンサーパッド30においてハイマウントストップランプ20と対応する位置には、サイレンサーパッド30を切断することにより形成された切断面32同士を突き合わせ状態で配置してなるスリット部31が設けられている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるパッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆う吸音材が設けられたパッケージトレイの吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両におけるパッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆う吸音材が設けられたパッケージトレイの吸音構造として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。また、このようなパッケージトレイにおいては、パッケージトレイの裏面中央にストップランプ部が取り付けられる場合がある。
【特許文献1】特開平7−89395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の場合においてパッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆うようにして吸音材が構成されていると、例えばランプ交換する際に、吸音材を引き剥がしてストップランプ部を露出させる必要がある。このような剥がし作業をなくしてランプ交換し易くするためには、ストップランプ部に対応する部分の吸音材を左右両側の吸音材よりも小さめに形成し別体で設ける方法も考えられる。
【0004】
しかしながら、このような方法によると、ストップランプ部に対応する部分の吸音材の面積が小さくなるため、吸音性能が低下してしまう。また、吸音材が、ストップランプ部の左側に対応する部分と、ストップランプ部に対応する部分と、ストップランプ部の右側に対応する部分とに3分割されるため、吸音材が1部品で構成されている場合よりも吸音材をパッケージトレイの裏面に貼り合わせる作業に要する時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、吸音材の吸音性能を維持しつつランプ交換や吸音材の貼り合わせなどの作業性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両におけるパッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆う吸音材が設けられたパッケージトレイの吸音構造であって、パッケージトレイは、トレイ本体部と、ストップランプ部とを備え、吸音材においてストップランプ部と対応する位置には、吸音材を切断することにより形成された切断面同士を突き合わせ状態で配置してなるスリット部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、スリット部における切断面同士をずらすことにより開口を設け、この開口を通じてストップランプ部をパッケージトレイの裏面側に露出させることができる。したがって、吸音材を引き剥がす必要がなく、ランプ交換することができる。また、パッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆うようにして吸音材を設けることができるから、パッケージトレイの裏面に吸音材を貼り合わせる作業が容易になると共に、吸音性能を維持することができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
スリット部は、両切断面の一方を切り欠くことにより同他方をパッケージトレイの裏面側に露出させる凹部を備えている構成としてもよい。
このような構成によると、凹部に指を入れて切断面に指を押し当てることにより、切断面同士をずらす作業が容易になる。
【0009】
吸音材は、黒色の吸音材としてもよい。
このようにすると、吸音材を遮光部材として機能させることによりストップランプ部から車両前方に漏れる光を遮光することができる。ここで、黒色の吸音材を用いることによりストップランプ部からの光を吸収することができるから、光漏れを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸音材の吸音性能を維持しつつランプ交換や吸音材の貼り合わせなどの作業性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3の図面を参照しながら説明する。図1は、パッケージトレイ1を裏面から見た状態を示しており、図2は、パッケージトレイ1の中央断面を側方から見た状態を示しており、図3は、図1における凹部2の拡大図である。
【0012】
パッケージトレイ1は、車室内における後部シート(図示せず)の後方上部に配設されている。パッケージトレイ1は、図1に示すように、車幅方向に幅広でボード状に形成されたトレイ本体部10と、そのトレイ本体部10の車幅方向中央に配置されたハイマウントストップランプ(本発明の「ストップランプ部」に相当する)20とを備えている。一方、パッケージトレイ1の下方(裏面)には、本発明の吸音材として機能するサイレンサーパッド30が取り付けられている。
【0013】
パッケージトレイ1は、所定形状に成形加工された熱可塑性樹脂に必要に応じて表皮材が貼着されたものである。サイレンサーパッド30は、所定形状に成形加工された黒色のフェルト材からなり、パッケージトレイ1に接着剤などにより取り付けられてなるものである。ハイマウントストップランプ20は、ブレーキランプであって、運転手のブレーキペダルの操作に伴って点灯するものである。
【0014】
パッケージトレイ1の上方には、図2に示すように、リアウィンドウWが斜め前方に延びる形態で覆い被さるように配置されている。一方、パッケージトレイ1の下方には、ボディを構成するパネル4が配置されており、このパネル4には、リアウィンドウWから差し込む光を遮光するためのシェード部材5及びこのシェード部材5を開閉動作するユニット部材6を備えたサンシェード装置7が直結されている。
【0015】
トレイ本体部10の車幅方向中央部は、図2に示すように、略前半部10Fと略後半部10Rとに分断されている。トレイ本体部10の略前半部10Fは、車両後方に向かうにつれて上方に盛り上がる形状をなしており、その後端部には車両後方に開口する開口部11が設けられている。すなわち、開口部11は、上下方向に配置されたトレイ本体部10の略前半部10Fと略後半部10Rとの間に形成されている。ハイマウントストップランプ20は開口部11内に配置され、略後半部10Rの前端部上面に固定されている。
【0016】
サイレンサーパッド30は、トレイ本体部10の裏面のほぼ全面を覆うようにして配置され、1部品で構成されている。サイレンサーパッド30においてハイマウントストップランプ20と対応する位置には、スリットを入れて切断することによりスリット部31が設けられている。スリット部31は、通常は、サイレンサーパッド30を切断することにより形成された切断面32同士が突き合わせ状態で配置されているため、ハイマウントストップランプ20がパッケージトレイ1の下面側に露出しない構成である。したがって、ハイマウントストップランプ20から車両前方に漏れ出した光をサイレンサーパッド30によって遮光することができ、サイレンサーパッド30とは別に遮光部材などを設けなくてもよい。
【0017】
スリット部31は、詳細には、全体として車幅方向に横長の略門形をなしており、車幅方向に延びる横スリット部31Aと、横スリット部31Aの両端から車両前方に延びる一対の縦スリット部31Bとから構成されている。また、サイレンサーパッド30においてスリット部31で囲まれた部分(蓋部材33という)は、その前端部のみがトレイ本体部10の略前半部10Fに接着されており、その他の部分が非接着状態となっている。このため、蓋部材33は、図2の2点破線で示すように、その前端部を基端部として後端部(横スリット部31A)を下方に変位可能である。
【0018】
これにより、横スリット部31Aにおける両切断面32を上下にずらすことが可能となり、上下にずらされた両切断面32間に開口Sを形成することができる。そして、この開口Sを通じてパッケージトレイ1の下面側からハイマウントストップランプ20のランプ交換をしたり、その他のメンテナンス作業などを行うことが可能である。
【0019】
横スリット部31Aの端部には、蓋部材33側の切断面32と対向する切断面32を一部切り欠くことによって蓋部材33側の切断面32をパッケージトレイ1の下面側に露出させる凹部2が形成されている。この凹部2に指を入れて蓋部材33側の切断面32に指を押し当てることにより蓋部材33を下方に捲りやすくなる。
【0020】
凹部2には、図3に示すように、一端側がハイマウントストップランプ20に接続されたワイヤハーネスW/Hが蓋部材33の上面側から引き出されている。また、凹部2に露出したパッケージトレイ1の下面には、ワイヤハーネスW/Hの他端側に接続されたコネクタ34を支持するクランプ35が設けられている。尚、スリット部31における両切断面32同士の摩擦力は、ハイマウントストップランプ20からコネクタ34に至るワイヤハーネスW/Hの途中部分を蓋部材33の上面によって支持することができる程度に設定されている。
【0021】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。蓋部材33は、通常は、閉じた状態で使用される。この状態では、パッケージトレイ1の下面のほぼ全面がサイレンサーパッド30によって覆われているため、高い吸音性能を発揮することができる。また、ハイマウントストップランプ20から車両前方に漏れた光をサイレンサーパッド30により遮光することができる。
【0022】
次に、ハイマウントストップランプ20のランプ交換をしたり、その他のメンテナンスなどの作業を行う場合には、蓋部材33を下方に捲って開口Sを形成する。そして、開口Sを通じてパッケージトレイ1の下面側からランプの着脱やメンテナンスなどの作業を行うことができる。また、作業終了後は、蓋部材33を閉じることによりサイレンサーパッド30を元の状態に復帰させることができる。
【0023】
以上のように本実施形態では、スリット部31における切断面32同士をずらすことにより開口Sを設け、この開口Sを通じてハイマウントストップランプ20をパッケージトレイ1の下面側に露出させることができる。したがって、サイレンサーパッド30を引き剥がす必要がなく、ランプ交換などをすることができる。また、パッケージトレイ1の下面のほぼ全面を覆うようにしてサイレンサーパッド30を設けることができるから、パッケージトレイ1の下面にサイレンサーパッド30を貼り合わせる作業が容易になると共に、高い吸音性能を維持することができる。
【0024】
また、凹部2に指を入れて蓋部材33側の切断面32に指を押し当てることにより、切断面32同士をずらして蓋部材33を捲る作業が容易になる。さらに、サイレンサーパッド30を遮光部材として機能させることによりハイマウントストップランプ20から車両前方に漏れる光を遮光することができる。特に本願では、黒色のサイレンサーパッド30を用いたからハイマウントストップランプ20からの光を吸収し、光漏れを確実に防ぐことができる。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態ではスリット部31が横スリット部31Aと一対の縦スリット部31Bとから構成されているものの、本発明によると、スリット部31を横スリット部31Aのみで構成してもよいし、横スリット部31Aと縦スリット部31Bとからなる略L字状に構成してもよい。
【0026】
(2)本実施形態では吸音材としてフェルト材からなるサイレンサーパッド30を例示しているものの、本発明によると、吸音材としてウレタン材やスポンジ材などを用いてもよい。
【0027】
(3)本実施形態では蓋部材33と反対側の切断面32を切り欠くことにより凹部2を形成しているものの、本発明によると、蓋部材33側の切断面32を切り欠くことにより凹部2を形成してもよい。
【0028】
(4)本実施形態では吸音材として黒色のサイレンサーパッド30を用いているものの、本発明によると、吸音材として黒色以外のサイレンサーパッド30を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】パッケージトレイの底面図
【図2】図1におけるII-II線断面図
【図3】図1における凹部の拡大底面図
【符号の説明】
【0030】
1…パッケージトレイ
2…凹部
10…トレイ本体部
20…ハイマウントストップランプ(ストップランプ部)
30…サイレンサーパッド(吸音材)
31…スリット部
32…切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるパッケージトレイの裏面のほぼ全面を覆う吸音材が設けられたパッケージトレイの吸音構造であって、
前記パッケージトレイは、トレイ本体部と、ストップランプ部とを備え、
前記吸音材において前記ストップランプ部と対応する位置には、前記吸音材を切断することにより形成された切断面同士を突き合わせ状態で配置してなるスリット部が設けられていることを特徴とするパッケージトレイの吸音構造。
【請求項2】
前記スリット部は、前記両切断面の一方を切り欠くことにより同他方を前記パッケージトレイの裏面側に露出させる凹部を備えている請求項1に記載のパッケージトレイの吸音構造。
【請求項3】
前記吸音材は、黒色の吸音材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパッケージトレイの吸音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−173132(P2009−173132A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12916(P2008−12916)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】