説明

パッケージ及び圧電デバイス

【課題】圧電振動素子の角部の欠けが生じることを低減することができるパッケージ及び圧電デバイスを提供することを課題とする。
【解決手段】上面に搭載パッド111を有したベース110aと、搭載パッド111を囲むようにしてベース110a上に取着され、内側に圧電振動素子が配置される枠体110と、搭載パッド111と枠体110b内壁との間に設けられた弾性部材112と、によってパッケージ110を構成する。その目的は、パッケージ110に圧電振動素子120を搭載する際に圧電振動素子120が破損する可能性を低減することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動素子等を収容するのに用いられるパッケージ及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電デバイスとして、パッケージの凹部空間内に圧電振動素子を配置し、これを蓋体で気密封止した構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
パッケージは、ベースの上面に枠体を取着してなり、枠体に囲まれたベースの上面には圧電振動素子をパッケージの内部配線に接続するための搭載パッドが設けられている。このようなパッケージに搭載される圧電振動素子は、水晶素板の両面に励振用電極を被着形成した構造を有し、外部からの交番電圧が励振用電極を介して水晶素板に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−297620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の圧電デバイスを組み立てるにあたり、パッケージに圧電振動素子を搭載する際、圧電振動素子がパッケージの枠体の内壁と接触すると、圧電振動素子に欠け等の破損を招来することがある。そのため、圧電デバイスの組み立てに際して圧電振動素子の搭載精度を高く維持する必要があり、特に圧電デバイスを小型化する場合には極めて高度の搭載技術が求められることとなる。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッケージに圧電振動素子を搭載する際に圧電振動素子が破損する可能性を低減することができるパッケージ及び圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパッケージは、上面に搭載パッドを有したベースと、搭載パッドを囲むようにしてベース上に取着され、内側に圧電振動素子が配置される枠体と、搭載パッドと枠体の内壁との間に設けられた弾性部材と、を備える。
【0008】
また、本発明の圧電デバイスは、上述したパッケージと、枠体の内側に配置され、搭載パッドに接続された圧電振動素子と、パッケージに接合されて圧電振動素子を気密封止する蓋体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッケージの搭載パッドと枠体の内壁との間に弾性部材を設けたことにより、圧電振動素子をパッケージの凹部空間内に搭載する際、圧電振動素子の搭載位置が所望の位置から枠体側へずれたとしても、圧電振動素子と枠体との間には弾性部材が介在する形となり、この弾性部材が緩衝材となって圧電振動素子に欠け等の破損が生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す部分拡大図である。
【図4】本実施形態に係る圧電デバイスの蓋体を外した状態を示す平面図である。
【図5】本実施形態に係る圧電デバイスの他の一例を示す分解斜視図である。
【図6】本実施形態に係る圧電デバイスの他の一例を示す部分拡大図である。
【図7】本実施形態に係る圧電デバイスの蓋体を外した状態の他の一例を示す平面図で
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の圧電デバイスは、図1及び図2に示すように、パッケージ110と、圧電振動素子としての水晶振動素子120と、蓋体130とで主に構成されている。
【0013】
パッケージ110は、四角形状をなす平板状のベース110aの第1主面(上面)に、その外周にそって枠体110bを取着させるとともに、該枠体110bの内側部位に弾性部材112を環状に設けた構造を有している。
【0014】
ベース110aは、第1主面で枠体110bおよび水晶振動素子120等を支持するための支持部材として機能するものであり、第1主面には、外周縁部に沿って枠体110bを接合するための環状の導体膜HBと、該導体膜HBの内側に水晶振動素子120を接合するための搭載パッド111とが設けられ、第2主面(下面)には、四隅に入力端子、出力端子、グランド端子等の外部接続用電極端子Gが設けられている。
【0015】
このようなベース110aは、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミックス等のセラミック材料からなる絶縁層を1層または複数層積層することによって形成されており、ベース110aの表面および内部には、第1主面の搭載パッド111および導体膜HBと第2主面の外部接続用電極端子Gとを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)およびビア導体(図示せず)が設けられている。
【0016】
なお、ベース110aは、アルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートを準備し、次にセラミックグリーンシートの表面および該セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内に従来周知のスクリーン印刷等によって所定の導体ペーストを塗布し、これらのグリーンシートを積層してプレス成形した後、高温で焼成し、最後に導体パターンの所定部位、具体的には、搭載パッド111および外部接続用電極端子Gとなる部位にニッケルメッキ、金メッキ等を施すことにより製作される。
【0017】
一方、枠体110bは、Ag−Cu等のロウ材を介してベース110aの導体膜HBに接合されている。
【0018】
枠体110bは、ベース110a上に水晶振動素子120を収容するための凹部空間K1を形成するためのスペーサとして機能するものであり、例えば、Fe−Ni−Co合金などの金属によって環状をなすように形成され、導体膜HBやベース110aの配線パターン等を介して外部接続用電極端子Gの1つであるグランド端子と電気的に接続されている。
【0019】
なお、枠体110bは、金属板を従来周知の打ち抜き加工することによって製作され、これをAg−Cu等のロウ材を介してベース110aの導体膜HB上に載置させ、しかる後、ロウ材を700℃〜900℃の温度で加熱・溶融させることによりベース110aの第1主面にロウ付け・接合される。
【0020】
そして、弾性部材112は、図4に示すように搭載パッド111と枠体110bの内壁との間に、後述する水晶振動素子120を取り囲むようにして環状に設けられている。
【0021】
弾性部材112は、枠体110bよりも弾性率が小さな電気絶縁性材料、例えば、ヤング率が0.05〜0.20GPaの樹脂材料によって形成されており、図3に示すように、頂部の高さは水晶振動素子120の下面よりも上方に位置し、外周部は枠体110bの内壁と接するようにしてベース110aの第1主面に取着されている。
【0022】
この弾性部材112は、枠体110bを形成する金属等と比較して十分に小さなヤング率を有した弾性材料、例えば、枠体110bがFe−Ni−Co合金から成る場合、Fe−Ni−Co合金のヤング率(159GPa)の100分の1以下に相当する0.05〜0.20GPaのヤング率を有した弾性材料により形成されている。このため、圧電デバイスの組み立て時等に水晶振動素子120が所望の位置より枠体110b側にずれて配置されたとしても、水晶振動素子120と枠体110bとの間には弾性部材112が介在し、この弾性部材112によって水晶振動素子120がパッケージ110と接触したときの衝撃を良好に緩和することができる。したがって、水晶振動素子120に欠け等の破損が生じる可能性を低減することができる。
【0023】
また、このような弾性部材112は、上端を水晶振動素子120の下面よりも上方に位置させておくことにより、水晶振動素子120をパッケージ110に搭載する際、水晶振動素子120が枠体110b側へずれたときに水晶振動素子120をより確実に弾性部材112に接触させることができる。したがって、弾性部材112の上端を水晶振動素子120の下面よりも上方に位置させておくことが好ましい。
【0024】
さらに、弾性部材112は、外側端部を枠体110bに接着させ、内側端部を搭載パッド111より外方に位置させておくことにより、パッケージ110に対する水晶振動素子120の接合面積を十分に広く確保しつつ全体構造の小型化にも適した構成となすことができる。したがって、弾性部材112の外側端部を枠体110bに接着させ、弾性部材112の内側端部を搭載パッド111より外方に位置させておくことが好ましい。
【0025】
ここで弾性部材112のヤング率を0.05GPa以上に設定しておくことにより、水晶振動素子120が弾性部材112に接触した場合に弾性部材112が水晶振動素子120との接触に起因した変形によってパッケージ110から剥離するのを抑制することができ、また弾性部材112のヤング率を0.20GPa以下に設定しておくことにより、弾性部材112の一部が水晶振動素子120との接触により削り取られて水晶振動素子120の表面に異物として付着する可能性を低減することができる。したがって、弾性部材112のヤング率は0.05GPa〜0.20GPaに設定しておくことが好ましい。
【0026】
このような弾性部材112のヤング率を測定するための方法としては、例えば、ナノインデンテーション法を用いることができる。測定装置としては、例えば、ナノインスツルメント社製の「ナノインデンターII」が用いられる。
【0027】
なお、弾性部材112は、例えば、シリコーン樹脂の前駆体を従来周知のディスペンス法等によってベース110aの第1主面上に環状に塗布し、これに加熱・重合させることにより形成される。
【0028】
そして、上述したパッケージ110の凹部空間K1には水晶振動素子120が収容されている。
【0029】
水晶振動素子120は、長方形状をなす水晶素板121の両主面にと励振用電極122および引き出し電極123を被着させた構造を有しており、パッケージ110のベース110aに設けられている搭載パッド111に導電性接着剤DSを介して接続されている。本形態においては、水晶振動素子120の長辺方向の一端側を固定端とし、他端側を自由端とした片保持構造にて水晶振動素子120がパッケージ110のベース110a上に固定されている。
【0030】
このような水晶振動素子120は、外部からの交番電圧が引き出し電極123および励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、励振用電極122間に位置する水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こす。
【0031】
なお、水晶振動素子120は、例えば、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施すことによって水晶素板121を得、その両主面に従来周知のスパッタリング技術等によって金属膜を被着させることにより、励振用電極122および引き出し電極123を形成することにより製作される。
【0032】
そして、水晶振動素子120をパッケージ110に搭載する際は、搭載パッド111に導電性接着剤DSをディスペンサ等によって塗布し、しかる後、上述のようにして得た水晶振動素子120を治具等で固定されたパッケージ110の凹部空間K1内の導電性接着剤上に搬送し、これを加熱・硬化させることによって行われる。導電性接着剤DSとしては、シリコーン樹脂等から成るバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末を含有させたもの等が用いられ、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられる。
【0033】
また、上述した水晶振動素子120の搬送には画像認識システムを備えたマウント装置が用いられ、画像認識システムに予め記憶させておいた位置情報に基づいて水晶振動素子120の搭載位置を平面方向に微調整して水晶振動素子112の位置決めがなされる。このとき、水晶振動素子120の位置が外側に若干ずれたとしても、先に述べたようにパッケージ110の搭載パッド111と枠体112bの内壁との間には弾性部材112が設けられており、弾性部材112が緩衝材として機能することから、水晶振動素子120が枠体112bと接触して破損するといった不都合が有効に抑制され、圧電デバイスの生産性を良好に維持することができる。
【0034】
そして、このようなパッケージ110の上部には、凹部空間K1を塞ぐようにして蓋体130が取着されている。
【0035】
蓋体130は、例えば、Fe−Ni合金やFe−Ni−Co合金等の金属から成り、枠体110bの上面と接合されることによって水晶振動素子120が収容されている凹部空間K1を気密封止している。
【0036】
なお、蓋体130はFe−Ni合金等から成る板状体を所定形状に打ち抜くことによって製作され、得られた蓋体130をパッケージ110の枠体110b上に載置した上、これらを真空雰囲気中もしくは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中でシーム溶接し、枠体110bと蓋体130の一部とを溶接することにより蓋体130がパッケージ110に接合される。
【0037】
以上のような本形態の圧電デバイスによれば、パッケージ110の搭載パッド111と枠体110bの内壁との間に弾性部材112を設けたことにより、水晶振動素子120をパッケージ110の凹部空間K1内に搭載する際、水晶振動素子120の搭載位置が所望の位置からずれて枠体110bと接触しようとしても、水晶振動素子120と枠体110bとの間には弾性部材112が介在する形となり、水晶振動素子に欠け等の破損が生じる可能性を低減することができる。これにより、信頼性および生産性に優れた圧電デバイスを得ることができる。
【0038】
また、本形態のように枠体110bが金属から成る場合、弾性部材112の上端を水晶振動素子120の下面よりも上方に位置させておくことにより、パッケージ110の表面をプラズマ洗浄した際などに、搭載パッド111等の表面が一部削れることで金属屑が飛散しても、枠体110bと搭載パッド111とが金属屑によってショートする可能性が著しく低減される。したがって、弾性部材112の上端は水晶振動素子120の下面よりも上方に位置させておくことが好ましい。
【0039】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、上述した実施形態においては、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶振動素子を用いた圧電デバイスを説明したが、圧電素材としては、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを用いたものであっても構わない。
【0040】
また、上述した実施形態では、枠体110bの内側部位に弾性部材112を環状に設けるようにしたが、これに代えて、
図5及び図7に示すように、圧電振動素子120の引き出し電極123側にのみ、弾性部材112をU字状に設けても構わない。
【0041】
さらに、上述した実施形態では、弾性部材112の外側端部を枠体110bに接着させ、内側端部を搭載パッド111より外方に位置させるように構成したが、これに代えて、図6に示すように、弾性部材112の外側端部を枠体110bの内壁より離間させて設けるようにしても構わない。
【0042】
またさらに、上述した実施形態では、パッケージ110を、セラミック材料から成るベース110aと金属から成る枠体110bとで構成するようにしたが、これに代えて、パッケージを、セラミック材料から成るベースとセラミック材料から成る枠体とで一体的に構成するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0043】
110・・・パッケージ
110a・・・ベース
110b・・・枠体
111・・・搭載パッド
112・・・弾性部材
120・・・水晶振動素子(圧電振動素子)
121・・・水晶素板
122・・・励振用電極
123・・・引き出し電極
130・・・蓋体
K1・・・凹部空間
G・・・外部接続用電極端子
DS・・・導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に搭載パッドを有したベースと、
前記搭載パッドを囲むようにして前記ベース上に取着され、内側に圧電振動素子が配置される枠体と、
前記搭載パッドと前記枠体の内壁との間に設けられた弾性部材と、を備えたパッケージ。
【請求項2】
前記枠体が金属からなり、前記弾性部材が電気絶縁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記枠体の内周に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記弾性部材は、外側端部が前記枠体に接着され、内側端部が前記搭載パッドより外方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記弾性部材は、ヤング率0.05〜0.20GPaの樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のパッケージと、
前記枠体の内側に配置され、前記搭載パッドに接続された圧電振動素子と、
前記パッケージに接合されて前記圧電振動素子を気密封止する蓋体と、を備えた圧電デバイス。
【請求項7】
前記弾性部材の上端は、前記圧電振動素子の下面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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