説明

パッシブコヒーレント探索アプリケーションにおいて測定領域データを関連付けるシステムおよび方法

【課題】パッシブコヒーレント探索システムにおいて測定領域データを関連付けるシステムおよび方法を開示する。
【解決手段】検出レポートは、パッシブコヒーレント探索システムにおいて受信したターゲット信号と関係がある。検出レポートの測定値はターゲット信号のデータと関連がある。ライントラック状態推定機能部が、新しい検出レポートをライントラックと関連付け、ライントラックの更新状態を推定する。信号タイプを判定する。この信号タイプに応じて測定値についてカルマンフィルタを選択する。このカルマンフィルタに応じて検出レポートの測定値の誤差を計算する。この誤差に応じてライントラックに関連付ける検出レポートを選択する。ライントラックは、所定基準に従って更新中に合成するか、あるいは終了させることができる。さらに、新しいターゲットが検出されると新しいライントラックを初期化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
発明の分野
本発明は、パッシブコヒーレント探索(「PCL」)レーダシステムおよび方法に関し、より詳細には、PCLレーダアプリケーションのための、測定領域データを関連付ける、ライン追跡とも呼ばれるシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第60/288,450号「System and Method for Measurement Domain Data Association for PCL Applications」(2001年5月10日出願、本明細書中に参照により援用する)の利益を主張する。
【0003】
関連技術の説明
PCLレーダシステムは、マルチスタティックレーダシステムに代表されることできる。マルチスタティックレーダシステムは、1つまたは複数の送信機から離れた多数の受信機を有する。送信機からの放射信号は、2つの別個の経路を介して受信機に到達する。一方の経路は送信機から受信機への直接経路であり、他方の経路は、送信機からターゲットを介して受信機までの間接経路を含むターゲット経路である可能性がある。測定値は、ターゲット経路信号の全経路長すなわち通過時間、ターゲット経路信号の到来角度、ならびに直接経路信号およびターゲット経路信号の周波数を含んでよい。ターゲットが動いている場合、ドップラー効果によって、周波数の差を検出することができる。
【0004】
ターゲット経路信号から情報を抽出する場合、受信機において送信信号がわかっていることが望ましい。ドップラー周波数シフトを求めるのには送信周波数が望ましい。全散乱経路長を求める場合、時間または位相基準もまた望まれる。周波数基準は直接信号から得ることができる。送信機と受信機の間の距離が既知であれば、時間基準もまた直接信号から得ることができる。
【0005】
マルチスタティックレーダシステムは、レーダの到達範囲内にあるターゲットの存在、ターゲットの場所、および、レーダに対する速度成分すなわちドップラーを確定可能であり得る。ターゲット位置を探索するプロセスは、距離と到来角度を測定することを含んでもよい。受信サイトに対する距離の測定値の確定は、受信サイトでの到来角度ならびに送信機と受信機の間の距離の両方を必要とし得る。直接信号を利用できる場合、直接信号を基準信号として用いて、ドップラー周波数シフトを抽出することができる。
【0006】
PCLレーダシステムにおいて、送信機は放射器(illuminator)として知られている。放射器は、商用周波数変調(「FM」)放送送信機および/またはリピータ、商用高品位テレビジョン(「HDTV」)放送送信機および/またはリピータなどを含む広帯域オポチュニティ源(sources of opportunities)であってよい。広帯域信号事前検出処理および同一チャネル干渉緩和のための効率的な技法が存在している。既知の手法には、主放射器などの利用されるオポチュニティ源、および環境に存在する任意の他の同一チャネル信号を受信するのに用いられるアンテナアレイが含まれる。
【0007】
種々の信号およびそれらの測定データは、適当なターゲットと関連付けられるはずである。ターゲットの関連付けが存在しない場合、ターゲットに対して、新たな追尾が実施されなければならないであろう。逆に、更新がもはや受信されていない場合、古い追尾はシステムから削除されるはずである。より効率がよく、かつ当を得た測定データの関連付けによって、PCLシステムにおけるターゲット追尾が改善される可能性がある。
【0008】
[発明の概要]
したがって、本発明はPCLアプリケーションおよび信号処理を対象とする。
【0009】
一実施形態によれば、測定値を有する検出レポートをライントラックに関連付ける方法が開示される。ライントラックは、パッシブコヒーレント探索システムにより検出されたターゲットから反射される信号と関係がある。本方法は、カルマンフィルタのセットを用いて測定値からライントラックの状態ベクトルを推定することを含む。本方法はまた、ライントラックを初期化することも含む。
【0010】
別の実施形態によれば、ターゲットと関係があるライントラックに測定データを関連付ける方法が開示される。ターゲット信号がターゲットから反射され、パッシブコヒーレント探索システムにより受信される。本方法は、信号の信号タイプを判定することを含む。本方法はまた、信号タイプに応じて測定データをフィルタデータに変換することも含む。本方法はまた、信号タイプに応じてフィルタデータについてカルマンフィルタのセットを選択することも含む。本方法はまた、ライントラックを伝搬することも含む。本方法はまた、測定データに応じてライントラックの検出レポートを特定することも含む。本方法はまた、カルマンフィルタに応じて検出レポートの測定値の誤差および誤差分散を計算することも含む。本方法はまた、誤差に応じてライントラックと関連付ける検出レポートを選択することを含む。
【0011】
一実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システム内で検出レポートの測定データをライントラックと関連付けるシステムが開示される。検出レポートは、パッシブコヒーレント探索システムにおいて受信されたターゲット信号と関係がある。本システムは、新しい検出レポートを存在するライントラックと関連付け、ライントラックを延長する更新状態を推定する状態推定手段を含む。本システムはまた、ライントラックを合成するライントラック合成手段も含む。本方法はまた、特定基準に従ってライントラックを終了させるライントラック終了手段も含む。本システムはまた、関連付けられていない検出レポートについて新しいライントラックを開始するライントラック初期化手段も含む。
【0012】
別の実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システムにおける検出の関連付けを用いてライントラックの状態を推定する方法が開示される。パッシブコヒーレント探索システムは、ターゲットから反射されたターゲット信号を受信する。ターゲット信号は測定値を有する。本方法は、可能性のある検出レポートのセットを特定することを含む。検出レポートは測定値を含む。本方法はまた、測定値について測定値の誤差および誤差分散を計算することも含む。本方法はまた、測定値の誤差に応じて可能性のある検出レポートのセットからライントラックの候補レポートを選択することも含む。本方法はまた、候補検出レポートに対して閾値を適用することも含む。本方法はまた、閾値を越える候補検出レポートをライントラックに関連付けることも含む。
【0013】
一実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システムにおいて新しい検出レポートを存在するライントラックと関連付ける方法が開示される。本方法はまた、検出レポート−ライントラック対をゲーティングすることも含む。本方法はまた、検出レポート−ライントラック対のスコアを計算することも含む。本方法はまた、スコアに応じて検出レポート−ライントラック対の検出レポートを検出レポート−ライントラック対のライントラックに割り当てることも含む。
【0014】
一実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システム内でライントラックを合成する方法が開示される。ライントラックはターゲットと関係がある。本方法はまた、ライントラックおよびライントラック対のリストを決定することも含む。本方法はまた、リスト中の各ライントラック対について測定値の誤差を計算することも含む。本方法はまた、各ライントラック対について合成基準を決定することも含む。本方法はまた、合成基準と関係があるゲートと測定値の誤差を比較することも含む。本方法はまた、可能なライントラック対から合成基準を満たすライントラックを除去することも含む。
【0015】
一実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システム内でライントラックを終了させる方法が開示される。本方法はまた、終了基準を決定することも含む。本方法はまた、ライントラックが終了基準に達するとライントラックを終了させることも含む。
【0016】
一実施形態によれば、パッシブコヒーレント探索システム内で新しいライントラックを初期化する方法が開示される。本方法はまた、新しいライントラックの構成パラメータを決定することも含む。本方法はまた、構成パラメータに応じて初期化プロセスを選択することも含む。本方法はまた、初期化プロセスを行うことも含む。本方法はまた、新しいライントラックのフィルタの状態を初期化することも含む。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかとなるか、あるいは本発明を実施することで分かる。本発明の目的および他の利点は、本明細書の説明文および特許請求の範囲ならびに添付図面において特に指示される構成により実現および達成される。
【0018】
上記の概要および以下の詳細な説明はともに例示的かつ説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供するものであることが理解されるべきである。
【0019】
本発明のさらなる理解を図るために含まれる、本明細書に援用されてその一部を構成する添付図面は本発明の実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0020】
[好適な実施形態の詳細な説明]
ここで、本発明の好ましい実施形態に対し詳細にわたって参照を行うが、実施形態の例は添付図面に示す。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による、レーダシステム、ターゲットおよび送信機のブロック図を示す。レーダ検出システム10は、PCLシステム100と、1つまたは複数の対象のターゲット150と、および複数の送信機110、112および114を含む。PCLシステム100は、同一系統のマルチスタティック広域ターゲット監視センサを表す。PCLシステム100は、往々にして、他の目的で動作することができるオポチュニティ源からの、連続波(「CW」)電磁エネルギーを利用する。オポチュニティ源は、テレビジョン放送局およびFMラジオ局を含んでもよい。PCLシステム100は、オポチュニティ源110、112、および114としても知られている、複数の統制されていない送信機からの送波(transmission)を受信できるのが好ましい。より好ましくは、送信機110、112、および114は、商用FM放送送信機および/またはリピータ、ならびに、商用HDTV TV放送送信機および/またはリピータを含む広帯域オポチュニティ源であってよい。しかし、送信機110、112、および114は、これらのオポチュニティ源に限定されず、統制されていない信号を送信する、任意のデバイス、システムまたは手段を含んでよい。
【0022】
送信機110、112、および114は、広帯域電磁エネルギー送波を全方向に送信することができる。これらの送波のいくつかは、1つまたは複数の対象のターゲット150によって反射され、PCLシステム100によって受信される。たとえば、反射した送波130は、ターゲット150によって反射され、PCLシステム100によって受信される場合がある。さらに、送信機114に関して、基準送波140は、PCLシステム100によって直接受信される。PCLシステム100は、基準送波140と反射した送波130を比較して、1つまたは複数の対象のターゲット150についての位置情報が求められる。基準送波140は直接経路信号としても知られている。反射した送波130はまたターゲット経路信号としても知られている。位置情報は、到達時間差(「TDOA」)、到達周波数差(「FDOA」)、および到来角度(「AOA」)を求めることによる、場所、速度、および加速度を含む、ターゲット150の位置に関する任意の情報を含んでもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施形態による、パッシブコヒーレント探索システムのブロック図を示す。PCLシステム100は、アンテナサブシステム200、アナログ−デジタル変換器(「ADC」)サブシステム220、処理サブシステム240、および出力デバイス260を含み得る。アンテナサブシステム200は、少なくとも1つのアンテナによって、図1の反射した送波130および基準送波140を含む電磁エネルギー送波を受信する。アンテナサブシステム200はアンテナアレイであるのが好ましい。ADCサブシステム220は、アンテナサブシステム200の信号出力を受け取り、その入力部で、あるサンプリングレートで信号をサンプリングし、各サンプリング区間におけるアナログ信号についての大きさを用いてデジタル波形を形成することによって、デジタルの信号サンプルを出力する。処理サブシステム240は、アセンブリサブシステム220の出力を受け取り、測定データ、追尾、ターゲットの更新などのために信号を処理する。出力デバイス260は、処理結果を受け取り、処理サブシステム230の出力を表示する。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態による、測定領域データを関連付けるライントラック処理サブシステム300のブロック図を示す。ライントラック処理サブシステム300は図2の処理サブシステム240に組み込まれ得る。代替的に、ライントラック処理システム300はADCサブシステム220に組み込まれ得る。ライントラック処理サブシステム300は、複数のコヒーレント処理区間(「CPI」)にわたる連続した検出の特定、および測定空間のターゲット(例えば図1のターゲット150)のトラックの生成を担当する。ターゲットが空間を移動する間に、多くの信号が反射されPCLシステム100によって受信され得る。これらの異なる信号を追尾して、それらの信号が正しいターゲットと関係すること、および検出されたターゲットについて存在するトラックが更新されていることを確認することができる。ライントラック処理サブシステム300は、信号処理機能部から検出レポートを受け取り、限定された(qualified)ライントラックを処理サブシステム240の(with)ライントラック関連付けおよびターゲット追尾機能部に出力することによって、このアクションを容易にしようとする。
【0025】
各処理サイクルは、検出および特徴抽出機能部からライントラック処理サブシステム300への入力である入力ブロック306で開始し得る。入力ブロック306は、送信機、ブロック中のレポート数、ブロックの時間タグ、および他のパラメータを特定する入力データブロックヘッダを含み得る。入力ブロック306はまた、検出および特徴抽出機能部によって作成された検出レポートも含む。個々の検出レポートは、測定値ならびに測定値それぞれの分散を含み得る。これらの測定値には、遅延(FM)、ドップラー(FM)、相対周波数(TV)、到来角度、信号電力、レポートのタイプ等が含まれ得る。「レポートのタイプ」は、既知のリンク、未分解の放射器(illuminator unresolved)、テレビジョン搬送波等であり得る。他の入力測定値または入力値は、各検出レポート、放射器および受信機の雑音フロア、またはリンク、識別(identification)、アンテナ識別等であり得る。
【0026】
検出レポートの測定値および分散は必要であれば、ライントラック処理サブシステム300において所望の量に変換することができる。遅延測定値は、直接経路信号とターゲット信号の間の到達時間差(「TDOA」)(秒)であり得る。この遅延測定値はバイスタティックレンジ(メートル)に変換することができる。ドップラー測定値は、直接経路信号とターゲット信号の間の到達周波数差(「FDOA」)(ヘルツ(「Hz」))であり得る。このドップラー測定値はバイスタティックレンジレート(メートル/秒)に変換することができる。
【0027】
他の測定量は変更しなくてもよい。上述のように、到来角度(「AOA」)は、ターゲットと、アンテナサブシステム200内の線状アンテナアレイに垂直な平面との間の角度(ラジアン)であり得る。信号電力測定値は、ターゲットのアンテナ端子(antenna terminals)を基準とするターゲット信号の電力であり、dBmを単位として測定され得る。
【0028】
ライントラック処理サブシステム300は処理機能部も含む。この処理機能部は、追尾機能部について高レベルの処理を行う。状態推定機能部308は、入力ブロック306の測定データを受け取り、適時に存在するトラックを現在の測定時間に伝搬する。このアクションにより、トラックを入力ブロック306中のデータと同期させることができる。状態推定機能部308はまた、延びているトラックの更新状態も推定する。
【0029】
ライントラック合成機能部310は、同一のターゲットから延びる類似の(comparable)ライントラックを合成する。ライントラック終了機能部312は、古い(stale)トラックを終了させる。ライントラック初期化機能部314は、特定の関連付けられていない検出レポートを用いてターゲットの新しいトラックを開始する。構成データ316は、PCLシステム100、または既知の放射器、または送信機に関する関連構成情報を供給することができ、この構成情報は、機能部308〜314が入力ブロック306中の検出レポートの測定データを処理して関連付けることを可能にする。
【0030】
ライントラック処理サブシステム300は、ライントラックレコードブロック320をターゲットトラッカ(tracker)322のターゲット追尾機能部へ出力する。好ましくは、追尾した検出レポートの未処理の測定値ならびにそれらの測定値の分散およびライン追尾パラメータがターゲットトラッカ322に転送され得る。それらの測定値のフィルタリングまたは平滑化された値は転送しなくてもよい。ライントラックメトリックは、ターゲットトラッカ322に転送するトラックが特定用途向けであり、測定、フィルタリングおよび導出されたトラック属性の機能部であるかどうかを示し得る。
【0031】
以下のデータは出力ブロック320に含まれ得る。このデータは、各データドウェル(dwell of data)の処理後に作成され得る。出力ブロック320中のデータは、各放射器、すなわち送信機のピーク検出数を含み得る。このデータはまた、各放射器について処理されるビーム数も含み得る。データはまた、関連付けられた現在の更新時間、各放射器の搬送波周波数、および各放射器の基準信号の平均RMS帯域幅も含み得る。
【0032】
出力データはまた、各放射器について処理される各ビームのシステム雑音指数も含み得る。さらに、出力データはまた、入力ブロック306において受信した測定データの更新された存在するライントラック数、中断されたライントラック数、および新しいライントラック数も含み得る。
【0033】
出力ブロック320はまた、ピークライントラックと関係がある検出レポートも含み得る。この検出レポートは次のデータを含み得る。
【0034】
【表1】

【0035】
図4は、本発明の一実施形態による、ライントラックを処理するフローチャートを示す。図4は、以下に開示するように、ライントラック処理アルゴリズムに関連し得る様々な機能部を示す。図4に示すステップは、好ましい実施順序のライン追尾処理アルゴリズムを開示する。ステップ400は、線形カルマンフィルタによる状態推定を用いてライントラックの状態ベクトルを推定することによって実行される。ステップ500は、同一ターゲットに関連付けられたライントラックを合成することによって実行される。ステップ600は、特定の条件を満たすライントラックを終了させることによって実行される。ステップ700は、ターゲットトラッカ322に転送されるように選択されたライントラックを初期化することによって実行される。ステップ800は、テレビジョン(「TV」)搬送波(該当する場合)を追尾することによって実行される。
【0036】
図5Aは、本発明の一実施形態による、ライントラックの状態を推測するフローチャートを示す。ライントラックの状態の推定では、別個のカルマンフィルタを用いて測定空間のレンジデータおよび到来角度データを追尾することができる。さらに、単純な平滑化器(smoother)を用いてTV搬送波を追尾し信号電力を推定することができる。ステップ502は、図4のステップ500で開示したプロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ500は、図5Aおよび図5Bを参照して開示される実施形態に限定されない。
【0037】
ステップ504は、どのタイプの放射器が利用されているかを特定することによって実行される。放射器がFM局である場合、PCLシステム100は、ターゲットから反射されたFM信号を関連付けることができる。放射器がTV局である場合、PCLシステム100は、ターゲットから反射されたテレビジョン信号を関連付けることができる。ステップ506は、FMカルマンフィルタを用いることによって実行される。FM放射器の場合、レンジおよび到来角度のカルマンフィルタの状態ベクトルはそれぞれ次の式によって与えられる。
【0038】
【数1】

【0039】
このベクトル中、rbは差分(differential)バイスタティックレンジ(メートル)であり、
【数2】

はバイスタティックレンジレート(メートル/秒)であり、θは到来角度(ラジアン)であり得る。バイスタティックレンジおよびレンジレートの状態と、基本的な実測量であるtd(「TDOA」)すなわち「遅延」(測定単位は秒)、およびfd(「FDOA」)すなわちドップラー(測定単位はヘルツ)との間の関係は次の式によって与えられる。
【0040】
【数3】

【0041】
ここで、cは真空中の光速すなわち299792458メートル/秒であり、λ=c/fcは放射器の搬送波(すなわち中心)周波数の波長(メートル)である。
【0042】
ステップ508は、TVカルマンフィルタを用いることによって実行される。TV放射器の場合、到来角度の状態ベクトルはFMの場合と同一であり得るが、レンジフィルタは周波数フィルタに置き換えられる。この置き換えは、周波数ライントラックと関連付けられた放射器が処理のこの時点ではあいまいである可能性があるために望ましい。したがって、周波数ライントラックとそれに関連する搬送波ライントラックからのドップラーの構築は不確かである可能性がある。この問題に対処するために、ドップラーの構築を先送りにし、フィルタが周波数トラックのみを扱うようにすることができる。周波数および角度フィルタの状態ベクトルはそれぞれ次の式によって与えられる。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、fr=f−fLOは同調LO周波数に対する相対周波数である。この周波数ライントラックに関連する搬送波が特定された後、上記で開示したバイスタティックレンジレートと相対周波数との間の関係は次式によって与えられる。
【0045】
【数5】

【0046】
ここで、fcは搬送波周波数であり、λcは搬送波波長である。
【0047】
FM信号またはTV信号のいずれの場合も、検出器から角度データが入手できる場合は角度フィルタが存在し得る。角度フィルタは別個のフィルタであるが、ライントラック処理機能部のいくつかの点、例えばライントラックの誕生および終了機能部、ライントラック合成機能部、ならびに関連付けプロセス機能部における性能指数(「FOM」)およびスコアのゲーティングおよび計算においてレンジまたは周波数フィルタのいずれかに結合される。
【0048】
ステップ510は、全てのライントラックの状態推定値を現在のタイムドウェル(time dwell)に次式を用いて前方伝搬することによって実行される。
【0049】
【数6】

【0050】
ここで、
【数7】

表記を簡略化するために、Xは、ステップ506および508に関して開示される3つのフィルタタイプのいずれをも示し得る。
【0051】
ライントラック処理サブシステム300において信号電力を追尾するために用いられるフィルタは、以下のように開示される指数フィルタであり、ここでps,kは、時間tkにおけるフィルタリングされた信号電力測定値(dBm)である。
【0052】
【数8】

【0053】
ここで、
【数9】

【0054】
構成可能なパラメータ
【数10】

はそれぞれ、バイスタティックレンジレート−レート(range rate-rate)およびクロスレンジ加速度のプロセス雑音シグマ(sigmas)である。これらのパラメータは、上記のそれぞれのプロセス雑音行列Qにおいて用いることができる。到来角度のQ行列中のパラメータRRTは、受信機からターゲットまでの推定レンジであり、次式によって与えられる。
【0055】
【数11】

【0056】
ここで、RRIは受信機から放射器までのレンジ(メートル)であり、
bはライントラック状態からのバイスタティックレンジであり、
γは、受信機において測定した放射器方位とライントラック状態からの到来角度との間の角度(rad)である。
TVの場合、周波数フィルタのQはレンジレート−レートQから次式により導き出され、
【0057】
【数12】

【0058】
角度フィルタのRRTパラメータは、構成パラメータRRTTVにより設定される。
【0059】
ステップ512は、新しい検出レポートを存在するライントラックと関連付けることによって実行される。このプロセスは図5Bを参照してより詳細に開示する。ステップ516は、フィルタの状態を更新することによって実行される。現在のドウェルすなわちプロセスにおいて検出の更新と関連付けられたライントラックについては、これに関連するカルマンフィルタが、検出レポートの測定値を用いて次のように更新される。
【0060】
【数13】

【0061】
ここで、
k=時間tkにおけるカルマンゲイン行列であり、
k=時間tkにおける新しい測定ベクトルであり、
k=測定値の共分散行列であり、
H=測定値の行列であり、
【数14】

角度フィルタの場合も同様の式を用いる。ステップ516は、ライン追尾処理機能部に戻ることによって実行される。
【0062】
図5Bは、本発明の一実施形態による、ライントラックの状態を推定する際に検出を関連付けるフローチャートを示す。ステップ530は、図5のステップ512で開示したプロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ512は、図5Bを参照して開示される実施形態に限定されない。新しい検出レポートを存在するライントラックと関連付けることができる。各検出レポート−ライントラック対について性能指数(「FOM」)を計算し、ありそうもない組み合わせを排除するために用いることができる。残った各対について計算されたスコアを求めて、最終的な関連付けを形成する対を特定することができる。構成された閾値を超える信号対雑音比を有する検出レポートが関連付け機能部に関与し得る。
【0063】
ステップ532は、検出のSNRを、伝搬した各ライントラックの構成された閾値と比較することによって関連付ける、可能性のある検出レポートのリストを特定することによって実行される。検出のSNRを比較するための式はSNRi≧γLTE(i=1,...,Q)とすることができ、ここでγLTE=ライントラックの延長限界である。
【0064】
ステップ534は、検出レポート中の各測定値の適切な測定値の誤差を計算し、対応する概算的な誤差分散を計算することによって実行される。この計算は、以下の式を用いて行われ得る。FM信号はバイスタティックレンジ、バイスタティックレンジレートおよび角度測定値を有し得る一方、TV信号は相対的な周波数測定値を有し得ることに留意されたい。どちらのタイプの信号も信号電力測定値を有し得る。
【0065】
以下の式は、各測定値について適切な測定値の誤差を計算するために用いることができる。
【0066】
【数15】

【0067】
以下の式は、対応する概算的な誤差分散を計算するために用いることができる。
【0068】
【数16】

(構成可能な入力)
【0069】
ここで(m)の上付きは、検出レポートおよび
【数17】

からの測定値とその分散を指し、現在の測地時間tkにおける予測されたカルマンフィルタの状態および共分散行列から引き出され得る。
【0070】
ステップ536は、ライントラック候補に対する検出レポートとして誤差が全てのゲートを通過する対を選択することによって実行される。例えば、ある角度測定値を有するFMライントラックについて次の関係は真でなければならない:
【数18】

はそれぞれ、バイスタティックレンジ、レンジレートおよび角度の構成可能な誤差ゲート(residue gates)であり得る。他のタイプのライントラックに類似のテストを行うこともできる。
【0071】
ステップ538は、適切なFOMを計算しゲートを適用することによって実行される。ゲートテスト用のFOMは次のグループから選択することができる:
【数19】

これらのFOMは次のように定めることができる。
【0072】
【数20】

【0073】
他の1−D FOMと同様の定義が用いられる。検出レポートが後の関連付け処理の対象となるには、FOMが図3の構成データ316にある対応する閾値を通過しなければならない。様々なFOMに対するゲートは次の通りとすることができる。
【0074】
【数21】

【0075】
適切な閾値が満たされた場合、その検出レポートは、テスト中のライントラックと関連付けられる候補であり、そのスコアが計算されて後の関連付け処理に用いられ得る。例えば、ある角度を有するFM信号のスコアは次の式によって与えられる。
【0076】
【数22】

【0077】
ここでAは1.0に初期設定される外部入力である。ある角度を有するTV信号の場合、スコアは次の式によって与えられる。
【0078】
【数23】

【0079】
角度が与えられない場合、プロセスは、上記の式中の対応する角度の項を削除することができる。
【0080】
【数24】

【0081】
ステップ540は、検出レポートを昇順に割り当てることによって実行される。割り当てを昇順で行うことによって、新しく割り当てられた検出レポートまたはライントラックを使用するスコアの高い組み合わせが排除される。割り当てられた検出レポートは、ステップ514に開示されるフィルタ状態の更新プロセスにおいて使用される。ステップ542は、割り当てられた検出レポートを受け取っていないライントラックのフィルタリングされた状態ベクトルを設定することによって実行される。具体的に言えば、フィルタリングされた状態ベクトルおよび共分散行列は、伝搬したものと等しく設定されるか、あるいは
【数25】

である。ステップ544は、ライントラック推定機能部にリターンすることによって実行される。
【0082】
図6は、本発明の一実施形態による、ライントラックを合成するフローチャートを示す。ライントラック合成プロセスは、単一のターゲットから発生した可能性のある検出レポートを有する複数のライントラックを結合するために望ましい。合成アクションは、現在のドウェル更新についてステップ514のカルマンフィルタの更新が行われた後に行われ得る。ライントラック合成機能部の要素、例えばライントラック合成機能部310は、構成スイッチLTmergeにより使用可能とされ得る。ステップ502は、図4のステップ600で開示したライントラック合成プロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ600は、図6を参照して開示される実施形態に限定されない。
【0083】
ステップ604は、現在のドウェル更新におけるライントラックのリストを決定することによって実行される。ライントラックのリストは、{LTi i=1,...,L}として与えられる。ステップ606は、リスト{LTi,LTj}(ここでi≠j)中の可能なライントラック対の各々について入手可能な測定値の誤差の各々を計算することによって実行される。入手可能な測定値の誤差は次式によって計算することができる。
δz(i,j)=|z(i)−z(j)|
ここでz(i)はLT(i)の任意の測定値を表す。
【0084】
ステップ608は、ライントラックの合成基準が満たされたかどうかを判定することによって実行される。全ての測定値の差がその対応するゲートよりも小さい場合、合成基準は満たされる。例えばFM信号の場合に、
【0085】
【数26】

【0086】
(ここで
【数27】

はそれぞれ、遅延、ドップラーおよび到来角度の構成可能な合成ゲートであり得る)であれば、合成基準は満たされ得る。したがって、ステップ610は、アクティブなライントラックのリストから1つのライントラックを除去することによって実行される。好ましくは、2つのライントラックのうち若いほう(the younger)を除去する。2つのライントラックの古さが同じ場合、初期SNRが小さいほうのライントラックを除去することができる。TV放射器からのTV信号にも同様の処理を行うことができる。ステップ612は、ライントラック処理機能部にリターンすることによって実行される。
【0087】
図7は、本発明の一実施形態による、ライントラックを終了させるフローチャートを示す。ステップ702は、図4のステップ700で開示したライントラック終了プロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ700は、図7を参照して開示される実施形態に限定されない。
【0088】
ステップ704は、終了基準が存在するかどうかを判定することによって実行される。ライントラックの終了は次の基準で起こり得る。第1に、ライントラックがtidle秒間更新されていない。第2に、ライントラックがUmisses回の連続するドウェル更新オポチュニティにわたって更新されていない。第3に、現在のドウェル更新におけるライントラックのフィルタリングされたレンジレートレートが
【数28】

を超える。第4に、ライントラックの関連付けられたドップラー測定値がUZDE回よりも多い連続するフィルタ更新にわたって
【数29】

未満である。同様の処理をいずれかの搬送波に近いfrにも適用することができる。同一の構成可能なパラメータを用いることができる。第5に、ライントラックのフィルタ更新回数がUmatureよりも少なく、γM_Nを上回るトラック更新オポチュニティとトラック更新との比がρsparseよりも大きい。最後の基準は、以下で開示するように、ライントラック初期化機能部314がN回中M回の検出を行っている場合にのみ当てはまる。
【0089】
ステップ706は、上記基準によって特定されたライントラックを終了させる。ライントラックの終了は、老いた(old)すなわち古いライントラックをメモリから除去し、処理資源を解放する。ステップ708は、ライン追尾処理機能部にリターンすることによって実行される。
【0090】
図8Aは、本発明の一実施形態による、ライントラックを初期化するフローチャートを示す。ライントラックの初期化には2つのプロセスが存在し得る。一方のプロセスは、いくつかのドウェルにわたって検出表面の画定された領域において見出されたエネルギーを統合し、成熟したトラックを実現することによって、当該領域においてターゲットエコーを見つけ出そうとするものである。他方のプロセスは、成熟度を主張するために、初期検出からの所定閾値を上回る未成熟のライントラックを処理し、以降のドウェルにおいて所定の数およびタイプの関連付けを必要とする。
【0091】
ステップ802は、図4のステップ800で開示したライントラックの初期化プロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ800は、図8A、図8Bおよび図8Cを参照して開示される実施形態に限定されない。ステップ804は、ライントラックの初期化に用いるプロセスの構成パラメータを求めることによって実行される。構成パラメータMLTIが、ライントラックの初期化を制御するために用いられ得る。好ましくは、この構成パラメータは、上記で開示した2つのプロセスのうちの1つを示す。ステップ806は、構成パラメータが自動検出プロセスを示すかどうかを判定することによって実行される。自動検出プロセスを示す場合、自動検出プロセスを行うことによってステップ808が実行される。自動検出プロセスは、ターゲットのエコーエネルギーを一定期間にわたり所定の検出セルに蓄えることによって、可能なターゲットの初期検出を行う。自動検出プロセスは、図8Bを参照してより詳細に開示される。
【0092】
ステップ806が自動検出プロセスを示さない場合、「N回中M回」の検出プロセスを行うことによってステップ810が実行される。「N回中M回」の検出器がこのプロセスで実施され得る。N回中M回の検出器が、図7を参照して開示される終了基準を用いて、どのライントラックが最終的に成熟したトラックとなるかを制御し得る。γLTIよりも大きいSNRと、
【数30】

よりも大きい絶対ドップラーとを有する割り当てられていないピーク検出では新しいライントラックが開始され得る。
【0093】
ステップ812は、フィルタの状態を初期化することによって実行される。最初にターゲットの検出に用いたプロセスに関係なく、ライントラックカルマンフィルタの初期化を行うことができる。各ドウェル更新時間の新しいライントラックの数は、構成可能なパラメータLによって制限することができる。一意なライントラックの識別とそれに続くトラックフィルタを、SNRが減少していく順番に並べた場合に最初のL回の検出すなわちL個のターゲットについて初期化することができる。
【0094】
FM信号のバイスタティックレンジフィルタの場合、フィルタリングされた状態ベクトルおよび共分散行列はそれぞれ次のように初期化することができる。
【0095】
【数31】

【0096】
TV信号の場合、周波数フィルタの共分散行列は次のように初期化することができる。
【0097】
【数32】

【0098】
到来角度レートフィルタの場合、フィルタリングされた状態ベクトルおよび共分散は次のように初期化することができる。
【0099】
【数33】

【0100】
周波数フィルタも同様に初期化することができる。
【0101】
ステップ814は、ライン追尾処理機能部にリターンすることによって実施される。
【0102】
図8Bは、本発明の一実施形態による、自動検出プロセスを用いてライントラックを初期化するフローチャートを示す。上記で開示したように、自動検出プロセスは、ターゲットのエコーエネルギーを一定期間にわたり所定の検出セルに蓄えることによって、可能なターゲットの初期検出を行う。現在のドウェル更新におけるアクティブなライントラックに関連しないピーク検出は、自動検出プロセスに送られ得る。
【0103】
ステップ820は、図4のステップ808で開示した自動検出プロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ808は、図8Bおよび図8Cを参照して開示される実施形態に限定されない。ステップ822は、セルエネルギーの加齢因子(aging factor)を計算することによって実行される。この加齢因子は、
【数34】

として計算することができ、ここで、Δt=ドウェル間の時間差であり、τauto_det=自動検出フィルタの時定数である。ステップ824は、MおよびKを定義することによって実行される。Mは自動検出グリッドにおける所定数のドップラーセルであり得る。Kは所定数の遅延セルであり得る。
【0104】
ステップ826は、各セルのエネルギーを経時変化させる(aging)ことによって実行される。これらのエネルギーは各セルにおいて、次の式によって経時変化する。
χ1(m,k)=αχ1(m,k) m=1,...,M;k=1,...,K
χ2(m,k)=αχ2(m,k) m=1,...,M;k=1,...,K
【0105】
ステップ828は、現在のドウェルにおけるピーク検出にライントラックが関連付けられているかどうかを判定することによって実行される。ライントラックが関連付けられていない場合、自動検出グリッド1のドップラーおよび遅延セルインデクックスを
【数35】

として計算することによってステップ830が実行される。ここで、NINTは最も近い整数関数であり、tdおよびfdはピーク検出の遅延値(メートル)およびドップラー値(メートル/秒)であり、
【数36】

は遅延およびドップラーにおける自動検出グリッドのセル幅である。
【0106】
ステップ832は、グリッド1のセルのSNRがこのドウェルに現在関連付けられているセルよりも大きい場合、そのピーク検出に、グリッド1のセルに関連付けられたものとしてフラグを立てることによって実行される。グリッド1のセルのSNRがこのドウェルに現在関連付けられているセルよりも大きい場合、ステップ830に戻る。グリッド1のセルのSNRがこのドウェルに現在関連付けられているセル以下である場合、ステップ834に進む。ステップ834は、自動検出グリッド2のドップラーおよび遅延セルインデックスを
【数37】

として計算することによって実行される。ステップ836は、グリッド2のセルのSNRがこのドウェルに現在関連付けられているセルよりも大きい場合、そのピーク検出に、グリッド2のセルに関連付けられたものとしてフラグを立てることによって実行される。ステップ838は、検出リストが完成したかどうかを判定することによって実行される。検出リストが完成していない場合はステップ830に戻る。検出リストが完成した場合はステップ840に進む。さらに、ステップ828でライントラックが関連付けられている場合、ステップ840が、上で生成した各自動検出グリッドの各セルについてセルオペレーションを行うことによって実行される。図8Cは、このプロセスをより詳細に以下で開示する。ステップ842は、ライントラックの初期化にリターンすることによって実行される。
【0107】
図8Cは、本発明の一実施形態による、自動検出グリッド内のセルに対してセルオペレーションを行うフローチャートを示す。ステップ850は、図4のステップ840で開示したセルオペレーションプロセスを開始することによって実行される。しかしながら、ステップ840は、図8Cを参照して開示される実施形態に限定されない。ステップ852は、各セルのピークSNRを設定することによって実行される。SNRpeakは、現在のドウェルのセル(存在する場合)に関連付けられたピークのSNRであり得る。ステップ854は、セルのエネルギーの上昇を計算することによって実行される。エネルギーの上昇はξm,k=(1−α)SNRpeakとして計算することができる。最大上昇は、ξm,kmaxの場合ξm,k=ξmaxという性質によって制限することができ、ここでξmax=ドウェルのセルにおける最大のエネルギー上昇である。
【0108】
ステップ856は、χ(m,k)=χ(m,k)+ξm,kによりセルエネルギーを更新することによって実行される。ステップ858は、新しいターゲット検出を決定することによって実行される。新しいターゲット検出は、セルエネルギーをライントラックの開始閾値と比較することによって決定することができる。χ(m,k)>γauto_detの場合、新しいライントラックを開始することができ、セルのエネルギーはゼロ設定、すなわちχ(m,k)=0.0にすることができ、ここでγauto-det=ライントラックの初期化閾値である。ステップ860は、自動検出プロセスにリターンすることによって実行される。
【0109】
図3を再び参照すると、ステップ900は、TV放射器に関連するTV信号の搬送波の追尾を開示する。検出レポートのストリームがTV信号のビデオ搬送波信号により特定され得る。これらのレポートは、TV放射器の基準ビームから発生しており、測定された相対的な周波数が搬送波の規定の窓内にあるので、検出処理においてレポートとしてタグ付けされている。搬送波の追尾を望まない場合、検出レポートにはレポートしてのタグ付けがされず、搬送波トラックは初期値または構成可能な入力のままとすることができる。
【0110】
各搬送波について平滑化フィルタは次のように定義することができる。
【0111】
【数38】

【0112】
ここで、
fc,0=(構成入力)であり、
【数39】

であり、
tm=搬送波トラックについて存在する前の時間測定値であり、
τc=平滑化フィルタの時定数である。
選択される測定値は、SNRが搬送波追尾閾値を超える測定値であり、搬送波探索窓内にあり、測定値の誤差が最小である。
【0113】
したがって、開示した実施形態によれば、測定領域データを関連付けるシステムおよび方法が開示される。本システムおよび方法は別名をライン追尾とすることができる。開示した実施形態は、検出レポートを入力として受け取り、この検出レポートを存在するライントラックと関連付け、検出レポート中のデータに応じて新しいライントラックを作成するか、あるいはライントラックを終了させる。検出レポートは、PCLシステムが追跡している、可能性のあるターゲットから反射される信号のデータを含む。開示される方法、プロセスおよびアルゴリズムは、ライン追尾を改良し、ライントラックデータをターゲット追尾機能部に出力する。したがって、ターゲットをより効率的に特定および追尾することができる。
【0114】
当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の開示された実施形態に様々な修正および変更が成され得ることが明らかであろう。したがって本発明は、本発明の修正および変形が特許請求項のいずれかとその等価物の範囲内にある限り、当該の修正および変形を実現することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態によるレーダーシステム、ターゲット、および送信機のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるパッシブコヒーレント探索システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による、測定領域データを関連付けるライントラック処理サブシステムのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による、ライントラックを処理するフローチャートである。
【図5A】本発明の一実施形態による、ライントラックの状態を推定するフローチャートである。
【図5B】本発明の一実施形態による、ライントラックの状態を推定する際に検出を関連付けるフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による、ライントラックを合成するフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、ライントラックを終了させるフローチャートである。
【図8A】本発明の一実施形態による、ライントラックを初期化するフローチャートである。
【図8B】本発明の一実施形態による、自動検出プロセスを用いてライントラックを初期化するフローチャートである。
【図8C】本発明の一実施形態による、自動検出グリッド内のセルに対してセルオペレーションを行うフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブコヒーレント探索システム内でライントラックを合成する方法であって、前記ライントラックはターゲットと関係があり、
ライントラックおよびライントラック対のリストを決定する工程、
前記リスト中の各ライントラック対について測定値の誤差を計算する工程、
前記各ライントラック対について合成基準を決定する工程、
前記合成基準に関係があるゲートと、前記測定値との誤差を比較する工程、および
前記各ライントラック対から前記合成基準を満たすライントラックを除去する工程、
を備える方法。
【請求項2】
前記除去されるライントラックは、可能な前記各ライントラック対のもう一方のライントラックよりも若い請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去されるライントラックは、可能な前記各ライントラック対のもう一方のライントラックよりも初期信号対雑音比が低い請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パッシブコヒーレント探索システム内でライントラックを終了させる方法であって、
終了基準を決定する工程、および
前記ライントラックが前記終了基準に達すると該ライントラックを終了させる工程、を備える方法。
【請求項5】
パッシブコヒーレント探索システム内で新しいライントラックを初期化する方法であって、
新しいライントラックの構成パラメータを決定する工程、
前記構成パラメータに応じて初期化プロセスを選択する工程、
前記初期化プロセスを行う工程、
前記新しいライントラックのフィルタの状態を初期化する工程、
を備える方法。
【請求項6】
前記行う工程は、ターゲットのエコーエネルギーを、前記新しいライントラックと関係がある所定の検出セルに蓄えることによって自動検出プロセスを行う工程を備える請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記行う工程は、前記新しいライントラックが所定基準を満たす場合に、該新しいライントラックを成熟させることによって、N回中M回の検出プロセスを行う工程を備える請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公開番号】特開2008−122407(P2008−122407A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337686(P2007−337686)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2002−588222(P2002−588222)の分割
【原出願日】平成14年5月6日(2002.5.6)
【出願人】(503148122)ロッキード・マーティン・コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】700 N. Frederick Avenue, Gaithersburg, MD 20879, U.S.A.
【Fターム(参考)】