説明

パネルの連結構造

【課題】パネルの連結部分の目地切れを防止する柔軟性と高い気密性を有するパネルの連結構造を提供すること。
【解決手段】連結するパネル1の側端面の枠材20はパネル1の面材表面側に延在されるジョイント部30と面材10の折曲片11が挿入可能な挿入溝21を有する。上記ジョイント部30は、パネル1の面材表面側に延在されると共に隣接する同士が当接する接合部31と、接合部31同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部32とを有する。目地底部32と挿入溝21に挿入される折曲片11とで形成される凹溝41内に目地材40を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冷蔵庫やクリーンルーム等を構成するパネルの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫やクリーンルーム等の間仕切や壁は、表面に面材を具備すると共に側端面に枠材を具備し、かつ、両面板と枠材とで形成される空間内に例えば発泡ポリウレタン等の断熱材やハニカムコア材等の心材が充填されたパネルを連結した構造となっている。その連結部には変形やずれ等の外力に対応し得る柔軟性や高い気密性が要求されている。
【0003】
このように構成されるパネル同士を連結する構造として、パネルの雄枠材に形成された嵌合凸部と、そのパネルと隣接するパネルの雌枠材に形成された嵌合凹部を嵌合し、両枠材と面板の折曲片とから形成される目地空間にコーキング材を充填する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、側端面の枠材から延設されるジョイント部を設け、隣接するパネルのジョイント部同士を接合することにより嵌合部位を形成し、その嵌合部位に一対の嵌合脚部を有するコの字形状の目地材を嵌合する構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−60141号公報特開(段落0022、図1,図2)
【特許文献2】特開2008−115553号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の連結構造においては、両枠材と面板の折曲片とから形成される目地空間にコーキング材を充填する構造のため、目地幅を広く取り過ぎると目地底が平面でないことから気密性の確保に懸念がある。また、その構造から折曲片と枠材の間の溝に目地材を充填する必要が生じることがあり施工に手間がかかると共に、目地材の使用量が増加するためコストがかかる懸念がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の連結構造においては、パネルの連結構造に使用される目地材は一対の嵌合脚部を有するコの字形状の部材であって、その目地材を枠材から延設されたジョイント部に嵌合する構造のため、目地幅を広く取り過ぎると嵌合する目地材のみでは気密性の確保に懸念がある。また、合成樹脂部材にて形成されるジョイント部の延設は、その長さと比例して連結部の破損リスクが高まる懸念がある。
【0008】
その一方、目地材は連結パネルの柔軟性を確保する役割も有しているため、目地幅が狭く形成されるとパネルの連結部の柔軟性は低下し、パネルの連結部分の目地が切れる懸念に対して十分に対応できないという問題がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、パネルの連結部分の目地切れを防止する柔軟性と高い気密性を有するパネルの連結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、表面に面材を具備すると共に側端面に枠材を具備するパネル同士の連結構造であって、 互いに隣接するパネルの側端面の枠材は、この枠材からパネルの面材表面側に延在されるジョイント部と、上記面材の折曲片が挿入可能な挿入溝を有し、 上記ジョイント部は、パネルの面材表面側に延在されると共に隣接する同士が当接する接合部と、この接合部のパネル表面側に形成され、接合部同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部とを有し、 上記目地底部と上記挿入溝に挿入される上記折曲片とで形成される凹溝内に目地材を充填してなる、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、ジョイント部の目地底部の長さを調整することにより目地幅の広さを決定することができる。このため、目地材を広い範囲に充填することができる。また、パネル面材は、折曲片を挿入溝に挿入するため、目地材を充填する前に折曲片が凹溝内に傾倒するのを防止することができる。
【0012】
この発明において、上記挿入溝は、枠材の面材側垂直片とジョイント部の目地底部とで形成する方がよい(請求項2)。
【0013】
このように構成することにより、折曲片の挿入溝への挿入を確実にすることができ、折曲片が凹溝内に傾倒するのを確実に防止することができる。
【0014】
また、この発明において、上記ジョイント部を、上記接合部と目地底部とが直交する断面が略L字形状に形成し、隣接するジョイント部の接合部が当接した状態で両ジョイント部の接合断面を略T字形状に形成する方がよい(請求項3)。
【0015】
このように構成することにより、接合部と目地底部の肉厚を薄く形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0017】
(1)請求項1記載の発明によれば、目地幅を広くすることができ、目地材を広い範囲で充填できるので、パネルの連結部分の位置ずれに対して柔軟に対応できると共に、気密性の向上が図れる。また、面材の折曲片が凹溝内に傾倒するのを防止することができるので、目地材の充填が容易になる。
【0018】
(2)請求項2記載の発明によれば、折曲片が凹溝の内側に傾倒するのを確実に防止することができるので、上記(1)に加えて、更に目地材の充填作業が容易となり、施工性の向上が図れる。
【0019】
(3)請求項3記載の発明によれば、接合部と目地底部の肉厚を薄く形成することができるため、枠材の材料を削減し製造コストを低くすることができると共に、軽量化をすることができるので、上記(1),(2)に加えて、生産性が向上すると共に、現場への運搬やパネル同士の連結等の作業が容易になり、更に施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係るパネルの連結構造の第1実施形態の断面図である。
【図2】第1実施形態のパネルを連結する前の状態を示す断面図である。
【図3】第1実施形態における枠材を示す斜視図である。
【図4】この発明に係るパネルの連結構造の第2実施形態の断面図である。
【図5】第2実施形態における枠材を示す斜視図である。
【図6】この発明に係るパネルの連結構造の第3実施形態の断面図である。
【図7】第3実施形態における枠材を示す斜視図である。
【図8】この発明に係るパネルの連結構造の第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明における第1実施形態である断面が略L字形状のジョイント部を有する枠材を使用したパネルの連結構造について説明する。
【0022】
この発明に係るパネルの連結構造は、図1に示すように、表面に面材10を具備すると共に側端面に枠材20を具備するパネル1同士を連結するもので、枠材20に設けられたジョイント部30の接合部31同士を当接し、当接された接合部31のパネル表面側に形成される目地底部32と、挿入溝21内に挿入される面材10の折曲片11とで形成される凹溝41内に目地材40を充填して、パネル1同士を連結するものである。
【0023】
この場合、上記パネル1は、図1,図2に示すように、一対の面材10の側辺部間に枠材20を介在し、両面材10と枠材20とで形成された空間部内に例えば発泡ポリウレタン等の断熱材からなる発泡断熱材12が充填されている。なお、面材10の端部に形成される折曲片11は、枠材20に設けられた後述する挿入溝21内に挿入された状態で、一対の面材10の測辺部間に枠材20が装着される。
【0024】
上記枠材20は、例えば耐熱性を有する塩化ビニル等の合成樹脂製部材にて形成されている。この枠材20は、図1,図2及び図3に示すように、垂直片23の上下端に対向する水平片24を折曲し、垂直片23の中心部に外方に開口し連結部材29が挿入される連結用溝22を有する枠材基部25と、この枠材基部25の上下水平片24の先端から面材側に向かって直交状に折曲される面材側垂直片26と、面材側垂直片26の先端からパネル内方側に直交状に折曲される面材受片27とからなる枠材本体28と、枠材本体28の枠材基部25の垂直片23の上下端から面材表面側に延在される一対のジョイント部30を具備している。
【0025】
上記ジョイント部30は、枠材基部25の垂直片23の上下端から面材表面側に延在されると共に隣接する同士が当接する接合面31aを有する接合部31と、この接合部31のパネル表面側端部からパネル内方側直交状に折曲され、接合部31同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部32とからなる。
【0026】
この目地底部32を長くすることにより、目地幅を広くすることができ、目地材40を広い範囲で充填できるので、パネルの連結部分の位置ずれに対して柔軟性に対応できると共に、気密性の向上が図れる。
【0027】
図3に示すように、ジョイント部30の接合部31と目地底部32とが直交し、断面が略L字形状に形成されることにより、接合部31と目地底部32の肉厚を薄く形成することができるため製造コストを低くすることができると共に、枠材20の材料を削減し軽量化をすることができるので、生産性が向上すると共に、現場への運搬やパネル同士の連結等の作業が容易になり施工性が向上する。
【0028】
挿入溝21は、枠材20の面材側垂直片26とパネルの面材表面側に延在されるジョイント部30の目地底部32との間に形成される溝からなる。挿入溝21には、面材10の折曲片11が挿入されると共に、折曲片11が目地底部32と接合する。この構造により、折曲片11が凹溝41の内側に傾倒するのを確実に防止することができるので、目地材40の充填作業が容易となり施工性の向上が図れる。
【0029】
一方、目地材40は、可撓性を有する素材、例えばシリコーン系、変性シリコーン系などの合成ゴム製のシーリング材からなる。図1に示すように、目地材40は目地底部32と挿入溝21に挿入される折曲片11とで形成される凹溝41内に充填される。このように、目地材40が目地底部32と折曲片11に接合しているため、高い気密性を持たせることができる。
【0030】
上記のように構成されるパネル1を連結するには、まず、一方のパネル1の枠材20に設けられた連結用溝22内に連結部材29の半分を挿入する。この状態で連結される両パネル1の側端面に設けられた枠材20同士を近接して、両枠材20から延在されたジョイント部30の接合部31の接合面31aを当接すると共に、連結部材29の残りの半分を他方のパネル1の枠材20に設けられた連結用溝22内に挿入する。このように隣接するジョイント部30の接合部31が当接した状態での接合断面は略T字形状に形成される。そして、接合部31同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部32と、挿入溝21に挿入される折曲片11とで形成される凹溝41内に目地材40を充填することにより、パネル1を連結することができる。
【0031】
なお、第1実施形態は断面が略L字形状のジョイント部30を有する枠材20を使用したパネル1の連結構造について説明したが、パネル1の連結構造は上記ジョイント部30について少なくとも隣接する同士が当接する接合面31aを形成する接合部31と、接合部31同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部32と、を有していればよい。
【0032】
例えば、図4,図5に示すように、第2実施形態における枠材20Aは、肉厚を厚く形成した垂直片23Aの上下端に対向する水平片24を折曲し、垂直片23Aの中心部に外方に開口し連結部材29が挿入される連結用溝22を有する枠材基部25Aと、この枠材基部25Aの上下水平片の先端から面材側に向かって直交状に折曲される面材側垂直片26と、面材側垂直片26の先端からパネル内方側に直交状に折曲される面材受片27とからなる枠材本体28Aと、枠材本体28Aの枠材基部25Aの垂直片23Aの上下端から面材表面側に延在される一対のジョイント部30Aを具備している。
【0033】
上記ジョイント部30Aは、断面が略矩形状に形成され、枠材基部25Aの垂直片23Aの上下端から面材表面側に延在されると共に隣接する同士が当接する接合面31aを有する接合部31Aと、接合部31A同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部32Aとからなる。
【0034】
挿入溝21Aは、枠材20Aの面材側垂直片26とパネルの面材表面側に延在されるジョイント部30Aの目地底部32Aとで形成されるU字型の溝からなる。第2実施形態のパネルの連結構造において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
上記のように構成される第2実施形態のパネル連結構造においても、目地幅を広くすることができ、目地材40を広い範囲で充填できるので、パネルの連結部分の位置ずれに対して柔軟に対応できると共に、気密性の向上が図れる。また、折曲片11が凹溝41の内側に傾倒するのを確実に防止することができるので、目地材40の充填作業が容易となり、施工性の向上が図れる。
【0036】
また、図6,図7に示すように、第3実施形態における枠材20Bは、第2実施形態における枠材20Aに代えて肉厚が薄く形成された垂直片23Bと目地底部32Bとを有し、断面略矩形状のジョイント部30Bの内部に発泡断熱材12が注入・充填されるパネル空間を形成している。第3実施形態のパネルの連結構造において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
上記のように構成される第3実施形態のパネル連結構造においても、目地幅を広くすることができ、目地材40を広い範囲で充填できるので、パネルの連結部分の位置ずれに対して柔軟に対応できると共に、気密性の向上が図れる。また、折曲片11が凹溝41の内側に傾倒するのを確実に防止することができるので、目地材40の充填作業が容易となり、施工性の向上が図れる。
【0038】
上記第1実施形態では、図1に示すように、目地材40の接着は両パネルの折曲片11と目地底部32との3面接着のパネルの連結構造の場合について説明したが、目地材40の接着形態を2面接着とすることにより、パネル同士の連結に自由度を持たせることができる。すなわち、図8に示す第4実施形態のように、目地材40と目地底部32の間にテープまたはフィルム状であって目地材40と接着しないボンドブレーカー42を挿入し、目地底部32と接着することで、目地材40の接着は両パネルの折曲片11との2面接着となる。なお、第4実施形態のパネルの連結構造において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
上記のように構成される第4実施形態のパネル連結構造においても、目地幅を広くすることができ、目地材40を広い範囲で充填できるので、パネルの連結部分の位置ずれに対して柔軟に対応できると共に、気密性の向上が図れる。また、折曲片11が凹溝41の内側に傾倒するのを確実に防止することができるので、目地材40の充填作業が容易となり、施工性の向上が図れる。更に、2面接着の連結構造であるため、水平方向の荷重への対応を図ることができる。
【0040】
以上のように、気密性の確保に加えて水平方向の荷重への対応を要求されるパネルの連結構造については2面接着の連結構造を、より強固な気密性の確保を要求されるパネルの連結構造については3面接着の連結構造を、場合に応じて使い分けることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 パネル
10 面材
11 折曲片
20,20A,20B 枠材
21,21A,21B 挿入溝
26 面材側垂直片
30,30A,30B ジョイント部
31,31A,31B 接合部
32,32A,32B 目地底部
40 目地材
41 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に面材を具備すると共に側端面に枠材を具備するパネル同士の連結構造であって、
互いに隣接するパネルの側端面の枠材は、この枠材からパネルの面材表面側に延在されるジョイント部と、上記面材の折曲片が挿入可能な挿入溝を有し、
上記ジョイント部は、パネルの面材表面側に延在されると共に隣接する同士が当接する接合部と、この接合部のパネル表面側に形成され、接合部同士が当接した状態で目地幅を形成する目地底部とを有し、
上記目地底部と上記挿入溝に挿入される上記折曲片とで形成される凹溝内に目地材を充填してなる、
ことを特徴とするパネルの連結構造。
【請求項2】
請求項1記載のパネルの連結構造において、
上記挿入溝は、枠材の面材側垂直片とジョイント部の目地底部とで形成される、
ことを特徴とするパネルの連結構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパネルの連結構造において、
上記ジョイント部は、上記接合部と目地底部とが直交する断面が略L字形状に形成され、隣接するジョイント部の接合部が当接した状態で両ジョイント部の接合断面が略T字形状に形成される、
ことを特徴とするパネルの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38244(P2011−38244A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183457(P2009−183457)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】