説明

パネル及びその制御方法、表示装置、並びに電子機器

【課題】パネルの画面の表示品位を保つ。
【解決手段】電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、発光素子に電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを備える画素が行列状に配置されて、有機ELパネルが構成されている。有機ELパネルにおいては、同一行に存在する画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、電源線を複数本集合させたユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の電源線の電位が一斉に切り替えられる。ユニットに属する前記電源線の本数であるユニットライン数が、列方向における外周部から中心部から外周部に向けて少なくなるように、即ち、Na > Nb > Nc > Ndの関係を満たすように構成される。本発明は、例えば、パネル、表示装置、電子機器などに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル及びその制御方法、表示装置、並びに電子機器に関し、特に、例えば、パネルの画面の表示品位を保つことができるようになったパネル及びその制御方法、表示装置、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として有機EL(Electro Luminescent)素子を用いた平面自発光型のパネル(以下、有機ELパネルと称する)の開発が近年盛んになっている(例えば、特許文献1乃至5参照)。有機EL素子は、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した発光素子である。有機EL素子は、印加電圧が10V以下で駆動するため低消費電力という特徴を有している。また有機EL素子は、自ら光を発する自発光素子であるため、照明部材を必要とせず軽量化及び薄型化が容易にできるという特徴を有している。さらに有機EL素子は、その応答速度が数μs程度と非常に高速であるので、動画表示時の残像が発生しないという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−255856号公報
【特許文献2】特開2003−271095号公報
【特許文献3】特開2004−133240号公報
【特許文献4】特開2004−029791号公報
【特許文献5】特開2004−093682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の有機ELパネルでは、その画面内での発光輝度が不均一となることがあり、その結果として、画面の表示品位を損なうことがあった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、パネルの画面の表示品位を保つことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面のパネルは、電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを備える画素が行列状に配置されており、同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、前記電源線を複数本集合させたユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位を一斉に切換える電源線電位制御手段を備え、ユニットに属する前記電源線の本数であるユニットライン数が、少なくとも、列方向における中心部と外周部とで異なっている。
【0007】
前記中心部のユニットライン数は、前記外周部のユニットライン数よりも少ない。
【0008】
本発明の一側面のパネルの制御方法、表示装置、および電子機器は、上述した本発明の一側面のパネルの制御方法である。本発明の一側面の表示装置および電子機器は、上述した本発明の一側面のパネルを含む表示装置および電子機器である。
【0009】
本発明の一側面においては、電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを備える画素が行列状に配置されており、同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、前記電源線を複数本集合させたユニットのうち、少なくとも、列方向における中心部と外周部のユニットにおいて、前記電源線の本数であるユニットライン数が異なっている構成を有しているパネルによって、前記ユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位が一斉に切換えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パネルの画面の表示品位を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基本駆動手法が適用される有機ELパネルの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のゲートドライバの構成例を示す図である。
【図3】本発明が適用される有機ELパネルの構成例を示す図である。
【図4】図3の画素の詳細な構成例を示す図である。
【図5】図3の画素の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図6】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図7】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図8】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図9】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図10】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図11】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図12】図3の画素の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図13】図3の画素の動作例を説明するための図である。
【図14】図3の有機ELパネルの画面の表示例を示す図である。
【図15】図3の有機ELパネルのカソード配線の配置例を示している。
【図16】ユニットライン数可変手法が適用された場合の図3の有機ELパネルのユニット分割の一例を示している。
【図17】ユニットライン数可変手法が適用された場合の図3の有機ELパネルのユニット分割の一例であって、図16とは異なる例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を適用したパネルの実施形態について説明する。
【0013】
<基本駆動手法が適用される有機ELパネルの構成例>
【0014】
まず、本発明の理解を容易にし、且つ、背景を明らかにするため、基本となる駆動手法(以下、基本駆動手法と称する)が適用される有機ELパネルについて、図1を参照して説明する。
【0015】
図1は、基本駆動手法が適用された有機ELパネルの構成例を示すブロック図である。
【0016】
図1の例の有機ELパネル11は、アクティブマトリクス型の有機ELパネルである。この有機ELパネル11には、画素部21が設けられている。画素部21には、N×M個の画素31−(1, 1)乃至31−(N, M)が行列状に配置されている。なお、N,Mは、相互に独立した1以上の整数値である。有機ELパネル11にはまた、画素部21を駆動する駆動部として、データドライバ41およびゲートドライバ42が設けられている。データドライバ41およびゲートドライバ42は、例えば、ドライバIC(Integrated Circuit)で構成される。この例では、ゲートドライバ42は、画素部21の外部の片側に配置されている。ただし、ゲートドライバ42の配置は特に限定されず、例えば、画素部21の外部の両側に配置されてもよい。
【0017】
図2は、基本駆動手法が適用された有機ELパネル11のゲートドライバ42の構成例を示す図である。
【0018】
ゲートドライバ42には、DSドライバ51−1乃至51−NおよびWSドライバ52−1乃至52−Nが設けられている。なお、図2に示されるQやKの符号は、図3に対応させるための符号であるため、図3の説明の際に併せて説明する。
【0019】
また、有機ELパネル11は、N本の走査線WSL−1乃至WSL−N、N本の電源線DSL−1乃至DSL−N、およびM本の映像信号線DTL−1乃至DTL−Mも有している。
【0020】
なお、走査線WSL−1乃至WSL−N、映像信号線DTL−1乃至DTL−M、電源線DSL−1乃至DSL−Nのそれぞれを特に区別する必要がない場合、以下、単に、走査線WSL、映像信号線DTL、電源線DSLのそれぞれと称する。また、以下、画素31−(1, 1)乃至31−(N, M)、DSドライバ51−1乃至51−N、WSドライバ52−1乃至52−Nのそれぞれを特に区別する必要がない場合、単に、画素31、DSドライバ51、WSドライバ52のそれぞれと称する。
【0021】
図1に示されるように、1行目の画素31−(1,1)乃至31−(1,M)は、走査線WSL−1でWSドライバ52−1と、電源線DSL−1でDSドライバ51−1と、それぞれ接続されている。N行目の画素31−(N,1)乃至31−(N,M)は、走査線WSL−NでWSドライバ52−Nと、電源線DSL−NでDSドライバ51−Nと、それぞれ接続されている。他の行の画素31についても同様な接続がなされている。
【0022】
また、1列目の画素31−(1,1)乃至31−(N,1)は、映像信号線DTL−1でデータドライバ41と接続されている。2列目の画素31−(1,2)乃至31−(N,2)は、映像信号線DTL−2でデータドライバ41と接続されている。M列目の画素31−(1,M)乃至31−(N,M)は、映像信号線DTL−Mでデータドライバ41と接続されている。他の列の画素31についても同様な接続がなされている。
【0023】
ゲートドライバ42は、WSドライバ52−1乃至52−Nを順次駆動することで、走査線WSL−1乃至WSL−Nの電位を水平期間(以下、1Hと称する)で順次切換えて画素31を行単位で線順次走査する。ゲートドライバ42はまた、DSドライバ51−1乃至51−Nを駆動することで、この線順次走査に合わせて電源線DSL−1乃至DSL−Nの電位を高電位または低電位に切換える。データドライバ41は、線順次走査に合わせて各1H内で、映像信号線DTL−1乃至DTL−Mの電位を、映像信号の信号電圧Vsigと基準電圧Vofsとに切換える。
【0024】
<本発明が適用される有機ELパネルの構成例>
【0025】
このような基本駆動手法に対して、ユニットスキャン駆動手法が本発明に適用されている。ユニットスキャン駆動手法とは、複数の電源線DSLのDSドライバを共通化した駆動手法をいう。
【0026】
ユニットスキャン駆動手法では、共通化されたDSドライバに接続された全ての画素の集合、または共通化されたDSドライバに接続された全ての電源線DSLの集合が、ユニットと称されている。ユニットスキャン駆動手法を採用することにより、DSドライバ数を抑制することが可能となる。例えば、有機ELパネルの画面の垂直方向(V方向)の画素数が540である場合、基本駆動手法では、DSドライバは540個必要である。これに対して、ユニットスキャン駆動手法では、例えば、30本の電源線DSLの集合を1ユニットとする場合、基本駆動手法の1/30の18(=540/30)個のDSドライバを設ければよい。このように、ユニットスキャン駆動手法では、DSドライバ数を抑制できるので、大幅なコストダウンが可能となる。
【0027】
図3は、本発明が適用された有機ELパネル、即ち、ユニットスキャン駆動手法が適用された有機ELパネルの構成例を示すブロック図である。
【0028】
図3の例の有機ELパネル61は、アクティブマトリクス型の有機ELパネルである。この有機ELパネル61には、図1の例と同様の画素部21が設けられている。
【0029】
有機ELパネル61にはまた、画素部21を駆動する駆動部として、図1の例と同様の構成のデータドライバ41と、図1のゲートドライバ42とは異なる構成のゲートドライバ71が設けられている。即ち、図3の例の有機ELパネル61は、図1の例の有機ELパネル11の構成に対して、図2の例の構成のゲートドライバ42の代わりに、図3の構成のゲートドライバ71を採用した構成を有している。ゲートドライバ71は、例えば、ドライバICで構成される。この例では、ゲートドライバ71は、画素部21の外部の片側に配置されている。ただし、ゲートドライバ71の配置は特に限定されず、例えば、画素部21の外部の両側に配置されてもよい。
【0030】
ゲートドライバ71には、K+1個のDSドライバ81−1乃至81−(K+1)、およびWSドライバ82−1乃至82−Nが設けられている。Kは、K+1=N/Qを満たす整数値である。Qは、1ユニットに属する電源線DSLの本数を示す値であって、2以上の値を示している。即ち、DSドライバ81−1乃至81−(K+1)のそれぞれは、Q本の電源線DSLによって共有化されたDSドライバである。換言すると、DSドライバ81−1乃至81−(K+1)のそれぞれは、第1乃至第K+1ユニットのそれぞれに対して設けられたDSドライバである。即ち、第Rユニットでは(Rは1乃至K+1のうちの何れかの整数値)、1つのDSドライバ81−RがQ本の電源線DSL−RQ+1乃至DSL−(R+1)Qによって共有化されている。なお、以下、ユニットを特に考慮する必要がない場合、DSドライバ81−Rを、DSドライバ81と単に称する。
【0031】
なお、WSドライバ82−1乃至82−Nの接続形態自体は、図2のWSドライバ52−1乃至52−Nの接続形態と同様である。よって、その説明については省略する。
【0032】
次に、有機ELパネル61を構成する各画素31の詳細例について説明していく。
【0033】
<画素31の詳細な構成例>
【0034】
図4は、画素31の詳細な構成例を示す図である。
【0035】
なお、図4において、図3における対応する部分には同じ符号が付してあり、その説明を、以下、適宜省略する。
【0036】
図4には、図3の有機ELパネル61に含まれるN×M個の画素31のうちの1つが拡大されて描画されている。
【0037】
画素31は、サンプリング用トランジスタ91、駆動用トランジスタ92、保持容量93、有機EL素子である発光素子94、および補助容量95を含むように構成されている。図4の例では、サンプリング用トランジスタ91と駆動用トランジスタ92とはそれぞれ、Nチャネル型トランジスタから構成される。サンプリング用トランジスタ91のゲートは走査線WSLに接続されている。サンプリング用トランジスタ91のドレインは、映像信号線DTLに接続されている。サンプリング用トランジスタ91のソースは、駆動用トランジスタ92のゲートGに接続されている。
【0038】
図4の例では、画素31は、サンプリング用トランジスタ91および駆動用トランジスタ92の2個のトランジスタから構成される。かかる構成の画素回路は、2Tr(トランジスタ)画素回路と称される。なお、画素31は、2Tr画素回路に限定されるわけではない点に留意すべきである。
【0039】
駆動用トランジスタ92のドレインは、電源線DSLに接続されている。駆動用トランジスタ92のソースSは、発光素子94のアノードに接続されている。保持容量93は、駆動用トランジスタ92のゲートGとソースSの間に接続されている。この保持容量93の容量値を、以下、Csと記述する。発光素子94のカソードは、配線96に接続されている。従って、発光素子94のカソードの電位の値は、配線96の電位Vcathとなる。
【0040】
補助容量95は、発光素子94のアノード(駆動用トランジスタ92のソースS)と配線96の間に接続されている。補助容量95の容量値を、以下、Csubと記述する。
【0041】
発光素子94は、電流発光素子であるため、その電流値を制御することで、発光輝度の階調を可変させることができる。図4の例の画素31では、駆動用トランジスタ92のゲートGの電位(以下、ゲート電位と称する)を変化させることで、発光素子94の電流値が制御され、その結果、発光輝度の階調が可変する。
【0042】
駆動用トランジスタ92は、飽和領域で動作するように設計されている。即ち、駆動用トランジスタ92のドレインは電源線DSLに接続されており、この電源線DSLの電位を高電位にすることで、駆動用トランジスタ92は飽和領域で動作する。なお、飽和領域とは、Vgs−Vth<Vdsが満たされる領域をいう。Vgsは、駆動用トランジスタ92のドレインとソースSの間の電圧(以下、ドレインソース間電圧と称する)を示す。Vthは、駆動用トランジスタ92の閾値電圧を示す。Vgsは、駆動用トランジスタ92のゲートGとソースSの間の電圧(以下、ゲートソース間電圧と称する)を示す。飽和領域で動作中の駆動用トランジスタ92は、ドレインとソースSの間に一定の電流を流す定電流源として機能する。なお、この駆動用トランジスタ92のドレインとソースSの間に流れる電流を、以下、ドレインソース間電流と称し、その電流値をIdsと記述する。このドレインソース間電流Idsは、次式(1)で示すことができる。
【0043】
【数1】

・・・(1)
【0044】
式(1)において、μは移動度を、Wはゲート幅を、Lはゲート長を、Coxは単位面積あたりのゲート酸化膜容量を、それぞれ示している。
【0045】
サンプリング用トランジスタ91は、走査線WSLを介してWSドライバ82から供給される制御信号の電位に応じてオン(導通)する。サンプリング用トランジスタ91がオンされると、保持容量93は、映像信号線DTLを介してデータドライバ41から供給される映像信号の信号電位Vsigを保持する。駆動用トランジスタ92は、高電位となっている電源線DSLから電流の供給を受け、保持容量93に保持された信号電位Vsigに応じたドレインソース間電流を発光素子94に流す。この発光素子94に流されるドレインソース間電流を、以下、駆動電流とも適宜称する。発光素子94に一定以上の駆動電流が流れることにより、発光素子94(画素31)が発光する。
【0046】
また、画素31は、閾値補正機能を有している。この閾値補正機能とは、駆動用トランジスタ92の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量93に保持させる機能である。この閾値補正機能により、駆動用トランジスタ92の閾値電圧Vthのばらつきの影響をキャンセルすることができる。この駆動用トランジスタ92の閾値電圧Vthのばらつきは、画素31毎の発光輝度のばらつきの原因の一つとなっている。従って、閾値補正機能により、画素31毎の発光輝度のばらつきをある程度抑えることが可能となる。
【0047】
画素31は、上述した閾値補正機能に加え、さらに移動度補正機能も有している。移動度補正機能とは、信号電位Vsigを保持容量93に保持させる際に、信号電位Vsigに対して、駆動用トランジスタ92の移動度μについての補正を加える機能である。
【0048】
画素31は、さらにブートストラップ機能も有している。ブートストラップ機能とは、駆動用トランジスタ92のソースSの電位の変動にゲートGの電位を連動させる機能である。換言すると、ブートストラップ機能は、駆動用トランジスタ92のゲートソース間電圧を一定に維持させる機能である。
【0049】
次に、ユニットスキャン駆動手法のうちの基本的な手法(以下、基本ユニットスキャン駆動手法と称する)について、図5乃至図17を参照して説明する。
【0050】
<基本ユニットスキャン駆動手法で駆動されている画素31の動作例>
【0051】
図5は、基本ユニットスキャン駆動手法で駆動されている画素31の動作例について説明するタイミングチャートである。なお、この例では、後述する第1ユニットの1行目の画素31の動作例が示されている。
【0052】
図6乃至図11は、それぞれ、後述する発光期間T1、消光期間T2、閾値補正準備期間T3、閾値補正待ち期間T4、閾値補正期間T5、および書き込み+移動度補正期間T11における駆動用トランジスタ92の各端子の電位の一例を示す図である。
【0053】
図5には、図中横方向の時間軸に対する、電源線DSLの電位DS、映像信号線の電位、走査線WSLの電位WS、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vg、および駆動用トランジスタ92のソース電位Vsの変化の一例が示されている。
【0054】
図5の時刻t1までの期間は、発光素子94が発光される発光期間T1である。発光期間T1では、図6に示されるように、電源線電位DSは、例えばVcc(=20V)とされている。発光期間T1における定常発光時のソース電位Vsは、8Vとなっている。なお、以下、かかるソース電位Vsを、EL駆動電圧Vsと適宜称する。また、ゲート電位Vgは、18Vとなっている。
【0055】
時刻t1からt3までの期間は、発光素子94が消光される消光期間T2である。時刻t1は、映像信号線電位が信号電位Vsigから消去電位Versに切換えられた後のタイミングを示す時刻である。時刻t1において、WSドライバ82は、走査線電位WSを低電位から高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオンさせる。これにより、ゲート電位Vgが消去電位Versに低下する。この際、保持容量93を介したカップリングにより、ソース電位Vsも低下する。これにより、駆動用トランジスタ92がカットオフされ、発光素子94の発光が停止する。即ち、発光素子94が消光する。
【0056】
時刻t2は、映像信号線電位が基準電位Vofsに切換えられる前のタイミングを示す時刻である。時刻t2において、WSドライバ82は、走査線電位WSを低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲートGの状態がフローティング状態となる。時刻t2からt3までの期間において、図7に示されるように、ソース電位Vsは、Vthel+Vcath(この例では4V)まで低下する。Vthelは、発光素子94のEL閾値電圧を示す。また、この期間において、ゲート電位Vgも低下する。
【0057】
時刻t3から時刻t4までの期間は、閾値補正の準備が行われる閾値補正準備期間T3である。閾値補正を行うためには、駆動用トランジスタ92のゲートソース間電圧Vgsを閾値電圧Vth以上にする必要がある。従って、閾値補正準備期間T3では、駆動用トランジスタ92のゲートソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth以上となるように閾値補正の準備が行われる。時刻t3において、図8に示されるように、DSドライバ81は、電源線電位DSを低電位Vss(=−15V)に切換える。これにより、ソース電位Vsおよびゲート電位Vgが低下する。駆動用トランジスタ92のドレインがソースとして機能し、駆動用トランジスタ92のソースSがドレインとして機能するようになる。この結果、駆動用トランジスタ92のソースSからドレインに電流Iが流れ、駆動用トランジスタ92のドレイン(ソースとして機能中)とゲートGとの間の電圧がVth(=4V)となるように閾値補正(以下、逆閾値補正と称する)が行われる。これにより、ゲート電位Vgは低下する。低下後のゲート電位Vgは、Vss+Vthとなる。例えば、低電位Vssを−15Vとし、閾値電圧Vthを4Vとすると、低下後のゲート電位Vgは、−11V(=−15V+4V)となる。ソース電位Vsも低下する。低下後のソース電位Vsは、−10Vとなる。
【0058】
時刻t4から時刻t5までの期間は、閾値補正までの待ち時間としての閾値補正待ち期間T4ある。時刻t4において、DSドライバ81は、電源線電位DSを高電位Vccに切換える。これにより、図9に示されるように、ゲート電位Vgが−11Vから−10Vに上昇する。ソース電位Vsは−10Vでほぼ変化しない。従って、ゲートソース間電圧Vgsは、1Vからほぼ0Vに変化する。時刻t4から時刻t5までの期間では、Vgs<Vth(=4V)が満たされているため、閾値補正は開始されない。
【0059】
時刻t5から時刻t6までの期間は、閾値補正が行われる閾値補正期間T5ある。時刻t5は、映像信号線電位が基準電位Vofsに切換えられた後のタイミングを示す時刻である。時刻t5において、WSドライバ82は、走査線電位WSを高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオンさせる。これにより、図10に示されるように、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vgが−10Vから基準電位Vofs(=1V)になる。このゲート電位Vgの変動に伴う保持容量93を介したカップリングにより、ソース電位Vsは1.5V程度上昇し、−10Vから−8.5Vになる。この結果、ゲートソース間電圧Vgsは、9.5V(=1−(−8.5))となり、Vgs>Vth(=4V)が満たされる。これにより、閾値補正が開始される。閾値補正が開始されると、駆動用トランジスタ92のドレインからソースSに電流が流れ、ソース電位Vsが上昇する。この間、ゲート電位Vgは一定である。これにより、ゲートソース間電圧Vgsが低下し、保持容量93への閾値電圧Vthの書き込みが行われる。
【0060】
この例では、閾値補正は、1フレームが表示される1フレーム期間(以下、1Fと称する)内で3回行われている。ただし、1F内における閾値補正回数は、3回に限定されるわけではない。即ち、1F内における閾値補正回数は、1回,2回,4回以上などでもよい。なお、時刻t5から時刻t6までの期間における閾値補正を、以下、1回目の閾値補正と称する。
【0061】
時刻t6から時刻t7までの期間は、閾値補正が休止される閾値補正休止期間T6である。時刻t6は、映像信号線電位が基準電位Vofsから信号電位Vsigに切換えられる前のタイミングを示す時刻である。時刻t6において、WSドライバ82は、走査線電位WSを低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲートGの状態はフローティング状態となる。この例では、1回目の閾値補正が不十分となっている。即ち、時刻t6の時点で、Vgs>Vthとなっている。この場合、時刻t6から時刻t7までの期間において、ドレインからソースSに電流が流れ、ゲート電位Vgおよびソース電位Vsが上昇する。この期間において、ゲートソース間電圧Vgsは保持される。
【0062】
時刻t7から時刻t8までの期間は、閾値補正が行われる閾値補正期間T7である。この閾値補正を、以下、2回目の閾値補正と称する。時刻t7は、映像信号線電位が基準電位Vofsに切換えられた後のタイミングを示す時刻である。時刻t7において、WSドライバ82は、走査線電位WSを高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vgが基準電位Vofsとなる。また、駆動用トランジスタ92のドレインからソースSに電流が流れ、ソース電位Vsが上昇する。これにより、ゲートソース間電圧Vgsが低下し、保持容量93への書き込みが行われる。
【0063】
時刻t8から時刻t9までの期間は、閾値補正が休止される閾値補正休止期間T8である。時刻t8は、映像信号線電位が信号電位Vsigに切換えられる前のタイミングである。この時刻t8において、WSドライバ52は、走査線電位WSを低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲートGの状態はフローティング状態となる。この例では、2回目の閾値補正が不十分となっている。即ち、時刻t8の時点で、Vgs>Vthとなっている。この場合、時刻t8から時刻t9までの期間において、ドレインからソースSに電流が流れ、ゲート電位Vgおよびソース電位Vsが上昇する。この期間において、ゲートソース間電圧Vgsは保持される。
【0064】
なお、時刻t5から時刻t7までの期間および時刻t7から時刻t9までの期間が、水平期間(1H)に相当する。
【0065】
時刻t9から時刻t10までの期間は、閾値補正が行われる閾値補正期間T9である。この閾値補正を、以下、3回目の閾値補正と称する。時刻t9は、映像信号線電位が基準電位Vofsに切換えられた後のタイミングを示す時刻である。時刻t9において、WSドライバ82は、走査線電位WSを高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vgが基準電位Vofsとなる。また、駆動用トランジスタ92のドレインからソースSに電流が流れ、ソース電位Vsが上昇する。これにより、ゲートソース間電圧Vgsが低下し、保持容量93への書き込みが行われる。この書き込みは、駆動用トランジスタ92がカットオフするまで、即ち、Vgs=Vthが満たされるまで行われる。図5の例では、時刻t9から時刻t10の間でVgs=Vthが満たされている。
【0066】
時刻t10から時刻t11までの期間は、映像信号の書き込みと移動度補正についての準備が行われる書き込み+移動度補正準備期間T10である。時刻t10は、映像信号線電位が信号電位Vsigに切換えられる前のタイミングを示す時刻である。時刻t10において、WSドライバ82は、走査線電位WSを低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲートの状態はフローティング状態となる。また、時刻t10から時刻t11までの期間において、データドライバ41は、映像信号線電位を信号電位Vsigに切換える。
【0067】
時刻t11から時刻t12までの期間は、映像信号の書き込みと移動度補正が行われる書き込み+移動度補正期間T11である。時刻t11において、WSドライバ82は、走査線電位WSを高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオンさせる。これにより、図11に示されるように、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vgが、基準電位Vofs(=1V)から信号電位Vsigまで上昇する。この結果、信号電位Vsigが閾値電圧Vthに足し込まれる形で保持容量93に書き込まれると共に、移動度補正用の電圧ΔVμが差し引かれる形で保持容量93に書き込まれる。即ち、保持容量93には、Vsig+Vth−ΔVμが書き込まれることになる。駆動用トランジスタ92のソース電位Vsは、−3V+ΔVμまで上昇する。
【0068】
時刻t12以降は、発光素子94が発光される発光期間T12である。時刻t12は、映像信号線電位が消光電位Versに切換えられる前のタイミングを示す時刻である。時刻t12において、WSドライバ82は、走査線電位WSを低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ91をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ92のゲートGの状態はフローティング状態になる。すると、ブートストラップ動作が行われ、保持容量93に書き込まれた電圧(Vsig+Vth−ΔVμ)が維持されたまま、駆動用トランジスタ92のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇する。
【0069】
発光期間T12における画素31の動作はより詳細には次のようになる。即ち、駆動用トランジスタ92は、保持容量93に書き込まれた電圧(Vsig+Vth−ΔVμ)に応じた一定の駆動電流Ids’を発光素子94に供給する。発光素子94のアノードの電位(以下、アノード電位と称する)の値Velは、発光素子94に駆動電流Ids’が流れる電圧Vxまで上昇し、発光素子94の状態は発光状態に移行する。
【0070】
なお、上述したように、ユニットスキャン駆動手法では、複数の電源線DSLのDSドライバ81を1つで共通化しているため、電源線電位DSを用いて、発光と消光についての制御(以下、デューティ(Duty)制御と称する)を行うことができない。このため、ユニットスキャン駆動手法では、走査線電位WSを用いて、デューティ制御を行っている。
【0071】
<基本ユニットスキャン駆動手法における各行の画素31の動作例>
【0072】
以上、基本ユニットスキャン駆動手法における、1つの画素31についての動作例について説明した。
【0073】
次に、基本ユニットスキャン駆動手法における、各行の画素31の動作例の関係について説明する。
【0074】
図12は、基本ユニットスキャン駆動手法における各行の画素31の動作例の関係を説明するタイミングチャートである。
【0075】
図12には、第1ユニットと第2ユニットについての電源線電位DSおよび各行の走査線電位WSの変化が示されている。
【0076】
なお、第Rユニットの電源線DSLに共通の電位DSを、以下、電源線電位DS(R)と称する。また、図3の例の有機ELパネル61の上からP本目(Pは1乃至Nのうちの何れかの整数値)の走査線WSL−Pについての電位WSを、以下、走査線電位WS(P)と称する。
【0077】
図12の例では、時刻t31乃至時刻t41の期間が、閾値補正準備期間T31とされている。このため、時刻t31において、第1ユニットのDSドライバ81−1は、電源線電位DS(1)を高電位Vccから低電位Vssに切換える。時刻t41において、第1ユニットのDSドライバ81−1は、電源線電位DS(1)を高電位Vccに切換える。
【0078】
また、図12の例では、時刻t32乃至時刻t42の期間が、閾値補正準備期間T32とされている。このため、時刻t32において、第2ユニットのDSドライバ81−2は、電源線電位DS(2)を高電位Vccから低電位Vssに切換える。時刻t42において、第2ユニットのDSドライバ81−2は、電源線電位DS(2)を高電位Vccに切換える。
【0079】
図12に示されるように、第1ユニットにおいて、1行目の電源線DSL-1乃至Q行目の電源線DSL-Qに対しては、1つのDSドライバ81−1により、共通の電源線電位DS(1)が与えられる。このため、1行目乃至Q行目における閾値補正準備期間T31は共通の期間になる。
【0080】
一方、1行目の走査線WSL−1乃至Q行目の走査線WSL―Qのそれぞれに対しては、WSドライバ82−1乃至82−Qのそれぞれにより、走査線電位WS(1)乃至WS(Q)が別々に与えられる。即ち、ゲートドライバ71は、WSドライバ82−1乃至82−Qを順次駆動することで、1行目の走査線電位WS(1)乃至Q行目の走査線電位WS(Q)を水平期間(1H)で順次切換えて画素31を行単位で線順次走査する。
【0081】
このため、第1ユニットにおいて、1乃至Q行の各消光期間T21乃至T2Qは、1行目から下位の行になるに従って、1H分ずつ短くなっている。なお、このことは、第2乃至第K+1ユニットについても同様である。また、この例では、第1ユニットのQ行目における消光の開始から1H後に第2ユニットの1行目(全体のQ+1行目)における消光が開始されている。
【0082】
また、第1ユニットにおいて、1乃至Q行の閾値補正待ち期間T41乃至T4Qは、1行目から下位の行になるに従って、1H分ずつ長くなっている。なお、このことは、第2乃至第K+1ユニットについても同様である。また、この例では、第1ユニットのQ行目における閾値補正の開始から1H後に第2ユニットの1行目(全体のQ+1行目)における閾値補正が開始されている。
【0083】
なお、図12において、「閾値補正」と記述されている期間は、各行についての、図5でいう閾値補正期間T5,T7,またはT9を示している。「書き込み」と記述されている期間は、各行についての、図5でいう書き込み+移動度補正期間T11を示している。
【0084】
このように駆動される基本ユニットスキャン駆動手法が適用された有機ELパネル61では、「カソード揺れスジ」が視認されることがあり、表示品位を損なう場合があった。このため、本発明人は、「カソード揺れスジ」を抑制して、表示品位を保つことができる手法を発明した。そこで、以下、「カソード揺れスジ」について説明した後、かかる手法について説明する。
【0085】
<「カソード揺れスジ」の説明>
【0086】
上述したように、基本ユニットスキャン駆動手法では、ユニットを構成する複数本の電源線DSLの電位DSが同一タイミングでまとめて、高電位Vccと低電位Vssのうち一方から他方に切換えられる。このため、例えば、高電位Vccから低電位Vssに切り替わるとき、即ち、電源線電位DSの立ち下り時に、共通化した1ユニット分のDSカップリングにより、電源線電位DSの電位の揺れが、発光素子94のカソードに入る。このことで、カソード電位Vcathの揺れが発生する。DSカップリングとは、電源線DSLと発光素子94のカソードと間に生じる寄生容量によるカップリングをいう。
【0087】
図13は、電源線電位DSの立ち下り時におけるカソード電位Vcathの揺れを示すタイミングチャートである。
【0088】
図13のAのタイミングチャートは、16.67msの周期で電源線電位DSを高電位Vccから低電位Vssに繰り返し切換えた場合のタイミングチャートを示している。図13のBは、図13のAのタイミングチャートのうち、2回目の切換えのタイミング付近の期間101、即ち、電源線電位DSの立ち下り付近の期間101の拡大図である。
【0089】
なお、図13の16.67msの周期とは、1フレーム期間(1F)に相当する期間を意味している。
【0090】
図13のBに示されるように、電源線電位DSの立ち下り時の揺れは、DSカップリングにより、カソード電位Vcathの揺れとなって現れている。
【0091】
このようなカソード電位Vcathの揺れが発生している間に閾値補正や移動度補正が行われた場合、換言すると、図5でいう閾値補正期間T5乃至書き込み+移動度補正期間T11の間にカソード電位Vcathの揺れが発生した場合、ゲートソース間電圧Vgsが変化して、閾値補正や移動度補正が正常に行われないこともある。その結果として、画素31の発光輝度が変化してしまうことから、発光状態の有機ELパネル61の画面の水平方向には、ユニット毎に帯状のスジが視認され、表示品位を損なってしまうのである。
【0092】
このように、ユニット毎の帯状のスジは、カソード電位Vcathの揺れに起因して発生する。そこで、本明細書では、かかる帯状のスジを、「カソード揺れスジ」と称しているのである。
【0093】
図14は、「カソード揺れスジ」が生じている有機ELパネル61の画面の表示例を示す図である。ただし、図14の例では、ユニットごとに共通する電源線DSLの本数は同一本数とされている。
【0094】
図14の画面における濃淡は、発光輝度の階調を示している。即ち、図14の画面においては、薄くなる(白に近づく)ほど発光輝度が高くなっており、逆に濃くなる(黒に近づく)ほど発光輝度が低くなっている。なお、図14の画面において、点線は、ユニットの区切りを示している。即ち、2つの点線間の部分が、1ユニットを示している。
【0095】
図14の画面の各ユニットのそれぞれの水平方向に表示されている暗い帯状のスジが、「カソード揺れスジ」の一例である。
【0096】
図14に示されるように、ユニット毎の「カソード揺れスジ」は、画面中央のユニットにおいて一番濃く視認され(輝度が一番暗くなり)、垂直上方向または下方向に向かうにつれ、徐々に薄くなるように視認される(輝度が明るくなっていく)。このことを、図15を参照して、説明する。
【0097】
図15は、発光素子94のカソード配線の配置例を示している。
【0098】
図15のAには、有機ELパネル61全体のカソード配置例が示されている。図15のBには、有機ELパネル61のうち1つの画素31分のカソード配置例が示されている。
【0099】
図15において、白い長方形部分は、発光素子94の発光領域を示している。カソード配線111は、この発光領域の周囲に格子状に配置されている。カソード配線111の抵抗値は、配線抵抗112があるため、有機ELパネル61の外周部で一番低く、中心部にいくほど大きくなっていく。具体的な抵抗値の違いは、パネルサイズ、カソード配線シート抵抗、配線幅、長さ等の各種要因によって異なるが、例えば中心部の抵抗値は外周部のカソード電位(0Ω)に比べて、数Ω乃至数十Ωとなる。
【0100】
このため、有機ELパネル61の外周部は、電源線電位DSの立ち下り時におけるカソード電位Vcathの揺れに強い領域であり、たとえ揺れたとしても速い時定数で本来のカソード電位Vcathに収束する領域になる。これに対して、有機ELパネル61の中心部に向かうにつれ、カソード電位Vcathの揺れに対して弱くなり、揺れの振幅が大きくなっていき、また、本来のカソード電位Vcathに収束する時定数も遅くなっていく。
【0101】
このことが、ユニット毎の「カソード揺れスジ」の濃淡の差異が現れる現象、即ち、有機ELパネル61の中央部の「カソード揺れスジ」が濃く、外周部に向かうほど薄くなっていくという現象が生じる原因である。なお、以下、かかる現象を、「カソード揺れスジ濃淡差異現象」と称する。
【0102】
<ユニットライン数可変手法の説明>
【0103】
そこで、本発明人は、「カソード揺れスジ濃淡差異現象」の発生を抑えるべく、即ち、中央部の濃い「カソード揺れスジ」を抑制して、表示品位を保つべく、次のような手法を発明した。即ち、ユニットごとに共通する電源線DSLの本数(以下、ユニットライン数と称する)を可変する、という手法を本発明人は発明した。以下、かかる手法を、ユニットライン数可変手法と称する。
【0104】
ユニットライン数可変手法を適用した場合における各ユニットのユニットライン数自体は、特に限定されない。ただし、カソード揺れスジ濃淡差異現象」の発生を抑えるという観点、即ち、中央部の濃い「カソード揺れスジ」を抑制して、表示品位を保つという観点から、次のようにユニットライン数を決定すると好適である。
【0105】
即ち、上述の如く、有機ELパネル61の外周部に近いほど、カソード電位Vcathの揺れに対して強く、DSカップリングの影響を受けにくい。よって、有機ELパネル61の外周部に近づくほど、ユニットライン数を多くしていくと好適である。
【0106】
換言すると、有機ELパネル61の中心部に近いほど、カソード電位Vcathの揺れに対して弱く、DSカップリングの影響を受け易い。よって、有機ELパネル61の中心部に近づくほど、ユニットライン数を少なくしていくと好適である。
【0107】
以上まとめると、ユニットライン数可変手法を適用して、有機ELパネル61の中心部のユニットライン数を少なくし、外周部のユニットライン数を多くすることで、カソード揺れスジ濃淡差異現象」の発生を抑えることができる。即ち、中央部の濃い「カソード揺れスジ」を抑制し、表示品位を保つことができるようになる。
【0108】
具体的には例えば、ユニットライン数は、図16や図17に示されるように決定することができる。
【0109】
図16は、ユニットライン数可変手法が適用された場合の有機ELパネル61のユニット分割の一例を示している。
【0110】
図16の画面において、点線は、ユニットの区切りを示している。即ち、2つの点線間の部分が、1ユニットを示している。また、図16において、Na乃至Ndは、ユニットライン数を示している。
【0111】
図16の例では、Na > Nb > Nc > Ndの関係を満たしている。即ち、図16の例では、有機ELパネル61の中心部から外周部に向かう程、ユニットライン数は多くなっている。
【0112】
図17は、ユニットライン数可変手法が適用された場合の有機ELパネル61のユニット分割の一例であって、図16の例とは異なる例を示している。
【0113】
図17の画面において、点線は、ユニットの区切りを示している。即ち、2つの点線間の部分が、1ユニットを示している。また、図17において、N1,N2は、ユニットライン数を示している。
【0114】
図17の例では、N1 > N2の関係を満たしている。即ち、図17の例では、有機ELパネル61は、垂直方向に、中心部を含む第1領域と、外周部を含む第2領域とに区分されている。そして、第1領域に属する各ユニットのユニットライン数は何れもNαとなっている。一方、第2領域に属する各ユニットのユニットライン数は何れもNβとなっている。
【0115】
なお、図示はしないが、有機ELパネル61を、垂直方向にさらに多くの領域に区分することも当然可能である。即ち、中心部を含む第1領域、第1領域の上方または下方に存在する第2領域、第2領域の上方または下方に存在する第3領域・・・第(k-1)領域の上方または下方に存在する第k領域(kは、2以上の整数値)といったように、有機ELパネル61を垂直方向に区分することもできる。この場合、N1 > N2 > ・・・Nk-1 > Nkの関係が満たすユニットライン数を定義し、第i領域(iは1乃至kの整数値)に属する各ユニットのユニットライン数を何れもNiとするように、有機ELパネル61を構成させることもできる。
【0116】
このようなユニットライン数可変手を適用することで、カソード揺れスジ濃淡差異現象」の発生を抑えることができる。即ち、中央部の濃い「カソード揺れスジ」を抑制し、表示品位を保つことができる。
【0117】
<本発明が適用される電子機器>
【0118】
ところで、以上説明した有機ELパネル61は、パネルモジュールとも称される。このパネルモジュールに、さらに、電源回路、画像LSI(Large Scale Integration)などが付加されて、表示装置が構成される。
【0119】
有機ELパネルを用いた表示装置は、様々な電子機器のディスプレイに適用することが可能である。電子機器としては、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、テレビジョン受像機などが存在する。即ち、これらの電子機器に入力された、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器のディスプレイに本発明を適用することが可能である。以下この様な表示装置が適用された電子機器の例を示す。
【0120】
例えば、本発明は、電子機器の一例であるテレビジョン受像機に適用できる。このテレビジョン受像機は、フロントパネル、フィルターガラス等から構成される映像表示画面を含み、本発明の表示装置をその映像表示画面に用いることにより作製される。
【0121】
例えば、本発明は、電子機器の一例であるデジタルスチルカメラに適用できる。このデジタルカメラは、撮像レンズ、表示部、コントロールスイッチ、メニュースイッチ、シャッター等を含み、本発明の表示装置をその表示部に用いることにより作製される。
【0122】
例えば、本発明は、電子機器の一例であるノート型パーソナルコンピュータに適用できる。このノート型パーソナルコンピュータにおいて、その本体には文字等を入力するとき操作されるキーボードを含み、その本体カバーには画像を表示する表示部を含む。このノート型パーソナルコンピュータは、本発明の表示装置をその表示部に用いることにより作製される。
【0123】
例えば、本発明は、電子機器の一例である携帯端末装置に適用できる。この携帯端末装置は、上部筺体と下部筺体とを有している。この携帯端末装置の状態としては、それらの2つの筺体が開いた状態と、閉じた状態とが存在する。この携帯端末装置は、上述した上側筐体と下側筐体との他、連結部(ここではヒンジ部)、ディスプレイ、サブディスプレイ、ピクチャーライト、カメラ等を含み、本発明の表示装置をそのディスプレイやサブディスプレイに用いることにより作製される。
【0124】
例えば、本発明は、電子機器の一例であるデジタルビデオカメラに適用可能である。デジタルビデオカメラは、本体部、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ、撮影時のスタート/ストップスイッチ、モニター等を含み、本発明の表示装置をそのモニターに用いることにより作製される。
【0125】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
21 画素部, 31 画素, 41 データドライバ, 61 有機ELパネル, 71 ゲートドライバ, 81 DSドライバ, 82 WSドライバ, 91 サンプリング用トランジスタ, 92 駆動用トランジスタ, 93 保持容量, 94 発光素子, 95 補助容量, 96 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを備える画素が行列状に配置されており、
同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、
前記電源線を複数本集合させたユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位を一斉に切換える電源線電位制御手段を備え、
ユニットに属する前記電源線の本数であるユニットライン数が、少なくとも、列方向における中心部と外周部とで異なっている
パネル。
【請求項2】
前記中心部のユニットライン数は、前記外周部のユニットライン数よりも少ない
請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを備える画素が行列状に配置されており、
同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、
前記電源線を複数本集合させたユニットのうち、少なくとも、列方向における中心部と外周部のユニットにおいて、前記電源線の本数であるユニットライン数が異なっている構成を有しているパネルが、
前記ユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位を一斉に切換える
ステップを含むパネルの制御方法。
【請求項4】
映像信号に応じた階調で各画素を発光させて画像を表示するパネルを備え、
前記パネルは、
電流に応じて発光する発光素子と、前記映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを有する画素が行列状に配置されており、
同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、
前記電源線を複数本集合させたユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位を一斉に切換える電源線電位制御手段を備え、
ユニットに属する前記電源線の本数であるユニットライン数が、少なくとも、列方向における中心部と外周部とで異なっている
表示装置。
【請求項5】
映像信号に応じた階調で各画素を発光させて画像を表示するパネルを有する表示部を備え、
前記パネルは、
電流に応じて発光する発光素子と、前記映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記発光素子に前記電流を供給する駆動用トランジスタと、所定の電位を保持する保持容量とを有する画素が行列状に配置されており、
同一行に存在する前記画素に対して電源の信号を伝搬する電源線が各行毎に配置されており、
前記電源線を複数本集合させたユニット毎に、同一ユニットに属する複数本の前記電源線の電位を一斉に切換える電源線電位制御手段を備え、
ユニットに属する前記電源線の本数であるユニットライン数が、少なくとも、列方向における中心部と外周部とで異なっている
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−237359(P2010−237359A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84181(P2009−84181)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】