説明

パラレルリンクステージの制御方法およびパラレルリンクステージ

【課題】パラレルリンクステージにおいて、必要以上に大きな信号線の引き回しスペースを必要とすることなく、信号線の摩擦による損傷を確実に防止する技術を提供する。
【解決手段】エンドエフェクタ1とベース6との間に設けられたパラレルリンク機構pのサーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々を、サーボドライバ群20にて個別に閉ループ制御することでエンドエフェクタ1の変位を制御するパラレルリンクステージ7において、複数のサーボモータ5a〜サーボモータ5fに対応して設けられたスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fと、サーボドライバ群20に接続されたマスタモジュール23との間をシリアル通信ケーブル10で接続し、サーボモータ5a〜サーボモータ5fからサーボドライバ群20へのモータ位置情報等のフィードバックをシリアル通信で行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルリンクステージの制御方法およびパラレルリンクステージに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1等に開示されているように、剛性が高く、自由度の高い高精度の動きを可能にするパラレルリンク機構を備えたパラレルリンクステージは、工作機械や観察装置の台座、ロボット、乗り物等のシミュレータを初めとして広範な応用分野で使用されている。
【0003】
ところで、このパラレルリンクステージでは、ベースとエンドエフェクタとの間の比較的限られた空間に複数のサーボモータ等のアクチュエータを実装するため、このアクチュエータを制御するために外部から接続される多数のケーブルの引き回しの効率化が重要な技術的課題となる。
【0004】
たとえば、従来の特許文献1では、パラレルリンクステージ107の配線ケーブルと機械構成部との擦れを防止すべく、図4に示されるような参考技術の方法が開示されている。
【0005】
まず、エンドエフェクタ101の下方に位置するベース106の中央に、ケーブルクランプ部材111を配置し、各サーボモータ105a〜105fや各サーボモータに配線している。このケーブルクランプ部材111は90度屈曲した2つの面で形成され、一方の面はベース106への取付け面とされ、他方の面は配線ケーブル110の固定面とされている。
【0006】
配線ケーブル110は1カ所からベース106に引き込まれた後、ベース106の面に対して90度に曲げられ、ケーブルクランプ部材111にクランプされ、サーボモータ105a〜105fへ接続される。各配線ケーブル110は、サーボモータ105a〜105fの動きの障害とならないように遊びを持たせて、それぞれ各サーボモータ105a〜105fに接続される。
【0007】
この配線ケーブル110は、ケーブルクランプ部材111でクランプされた後、ベース106の面から垂直方向に立ち上がり、上端部側が放射状に分散するようにガイドされ、サーボモータ105a〜105fが移動して配線ケーブル110もそれにつれて移動しても、ケーブルクランプ部材111で固定された配線ケーブル110はベース106等に接することがない。
【0008】
すなわち、配線ケーブル110は他の構成部材とは接触することがないため擦れることはなく、摩擦によってケーブルの被覆が破れ、ショートや断線が生じることを防止することができる。また、配線ケーブル110は、サーボドライバ120を介してコントローラ121に接続されている。
【0009】
上述の参考技術ではケーブルクランプを用いることにより、機械構成部と配線ケーブルとの擦れを防止しているが、ベース106にケーブルクランプ部材111を配置するスペースが必要であり、このスペースの余裕がない場合は、上述の対策は実現できない。
【0010】
また、個々のサーボモータ毎に別個に配線ケーブルを敷設する構成であるため、各サー
ボモータ間にスペースがない時は、配線ケーブルがリンク機構103等に接触したり、さらには配線そのものが困難となることが懸念される。
【特許文献1】特開2000−126954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、パラレルリンクステージにおいて、必要以上に大きな信号線の引き回しスペースを必要とすることなく、信号線の摩擦による損傷を確実に防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、
ベースと、
エンドエフェクタと、
前記ベースと前記エンドエフェクタとの間に介在し、複数のアクチュエータを備えたパラレルリンク機構と、
を含むパラレルリンクステージの制御方法であって、
複数の前記アクチュエータに共通に設けられた信号線を用いて制御信号のシリアル通信を行うことにより、個々の前記アクチュエータの動作を制御するパラレルリンクステージの制御方法を提供する。
【0013】
本発明の第2の観点は、
ベースと、
エンドエフェクタと、
前記ベースと前記エンドエフェクタとの間に介在し、複数のアクチュエータを備えたパラレルリンク機構と、
複数の前記アクチュエータに共通に設けられた信号線と、
前記信号線を用いて制御信号のシリアル通信を行うことにより、個々の前記アクチュエータの動作を制御するシリアル通信制御手段と、
を含むパラレルリンクステージを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パラレルリンクステージにおいて、必要以上に大きな信号線の引き回しスペースを必要とすることなく、信号線の摩擦による損傷を確実に防止する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施の形態のパラレルリンクステージでは、一例として、以下のようにして各サーボモータとサーボドライバ間の信号配線数を削減する。
すなわち、本実施の形態の第1態様では、パラレルリンクステージを移動させるためのサーボモータと、前記サーボモータを駆動するためのサーボドライバと、機械位置を検出するためのエンコーダやセンサと、前記サーボドライバを制御するためのコントローラを具備する。
【0016】
前記サーボモータ付近にはスレーブモジュールが前記サーボモータと等しい数だけ具備されており、前記エンコーダからの信号や前記センサからの信号を取り込み、パラレル/シリアル変換し、共通の信号線を用いて、シリアル信号として送信する。
【0017】
サーボドライバ付近にはマスタモジュールが具備されており、スレーブモジュールから前記シリアル信号を受信し、シリアル/パラレル変換し、各サーボドライバへエンコーダ
信号、センサ信号を送信する。
【0018】
また、本実施の形態の第2態様にかかるシリアル通信の方法では、前記各サーボモータ側には、シリアル通信を送信するスレーブモジュールをサーボモータの数だけ備えており、前記マスタモジュールから送信される送信要求を受信した前記スレーブモジュールのみ信号を送信する。
【0019】
本実施の形態における各態様のパラレルリンクステージの作用を以下に説明する。
本実施の形態では、各サーボモータのエンコーダからの信号やセンサからの信号を各スレーブモジュールにて取り込み、取り込んだ信号をパラレル/シリアル変換し送出する。各スレーブモジュールが信号を送出するタイミングは、ドライバ側に設置されているマスタモジュールが管理し、マスタモジュールが、送信要求を送り、その送信要求を受け取ったスレーブモジュールのみが前記シリアル信号の送信を開始する。
【0020】
シリアル信号を受信したマスタモジュールは、シリアル/パラレル変換し各サーボドライバへエンコーダ信号、センサ信号を送信する。このように時分割多重化方式を用いることで、物理的に配線数を大幅に削減させることで、機械構成部との接触を避けることが可能になる。
【0021】
すなわち、各サーボモータに設置されているスレーブモジュール、即ち複数個のスレーブモジュールとサーボドライバ付近に設置されている一つのマスタモジュール間において、各サーボモータのエンコーダ信号やセンサ信号の送信に共通の信号線を用いた時分割多重化方式を用いることで、従来では多数必要だった配線ケーブルを論理的に一本の配線ケーブルで実現できる。
【0022】
このように配線ケーブルの数を大きく削減することで、必要以上に大きな引き回しスペースを必要とすることなく、配線ケーブルと機械構成部との接触を避けることが可能になるとともに、配線の引き回しが容易となる。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(構成)
図1は、本発明の一実施の形態であるパラレルリンクステージの制御方法を実施するパラレルリンクステージの構成の一例を示す側面図である。
【0024】
図2は、本実施の形態のパラレルリンクステージにおける制御系の構成例を示す概念図である。
図3は、本実施の形態のパラレルリンクステージにおける制御系のシリアル通信の一例を示す概念図である。
【0025】
本実施の形態では、一例として、並進の3自由度と回転の3自由度、の合計で6自由度の相対運動が可能なパラレルリンク機構pを備えたパラレルリンクステージ7について説明する。
【0026】
図1に例示されるように、本実施の形態のパラレルリンクステージ7は、6自由度に移動するステージであるエンドエフェクタ1と、ベース6と、エンドエフェクタ1とベース6の間に配置されたパラレルリンク機構pと、このパラレルリンク機構pを制御するためのサーボドライバ群20(サーボドライバ20a〜サーボドライバ20f)およびコントローラ21を備えている。
【0027】
コントローラ21は、サーボドライバ群20を介して後述のようにパラレルリンク機構
pの動作を制御することにより、エンドエフェクタ1に所望の変位を実現する。
パラレルリンク機構pには、エンドエフェクタ1に連結された可動リンク2a、可動リンク2b、可動リンク2c、可動リンク2d、可動リンク2e、可動リンク2fが備えられている。
【0028】
また、パラレルリンク機構pには、ベース6に固定されたサーボモータ5a、サーボモータ5b、サーボモータ5c、サーボモータ5d、サーボモータ5e、サーボモータ5f(アクチュエータ)を備えた駆動リンク4a、駆動リンク4b、駆動リンク4c、駆動リンク4d、駆動リンク4e、駆動リンク4fが設けられている。
【0029】
駆動リンク4a〜駆動リンク4fは、たとえばボールねじからなり、サーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々の回動変位を、軸方向の伸縮変位に変換する。
さらに、パラレルリンク機構pは、一端が駆動リンク4a〜4fの各々に、他端が可動リンク2a〜2fの各々と連結された複数のリンク3a、リンク3b、リンク3c、リンク3d、リンク3e、リンク3fを有している。
【0030】
また、パラレルリンク機構pの個々のサーボモータ5a,5b,5c,5d,5e,5fには、位置検出用のエンコーダ30a,30b,30c,30d,30e,30fを備えている。
【0031】
エンコーダ30a〜エンコーダ30fは、対応するサーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々の回転位置をエンコーダ信号SEとして出力する。
サーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々は、動力信号ケーブル9を介して、対応するサーボドライバ20a〜サーボドライバ20fの各々によって駆動される。
【0032】
特に図示しないが、パラレルリンク機構pには、サーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々によって駆動されるリンク3a〜リンク3fの各々の伸縮位置や変位量、速度、加速度等の情報を検出するセンサが設けられ、センサ信号S1〜S3として出力する。
【0033】
本実施の形態の場合、パラレルリンク機構pと、サーボドライバ群20との間におけるエンコーダ信号SEやセンサ信号S1〜S3等の制御信号を、共通の1本のシリアル通信ケーブル10(信号線)を介したシリアル通信によって行う。
【0034】
すなわち、本実施の形態の場合、個々のサーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々には、スレーブモジュール8a,8b,8c,8d,8e,8fが設けられ、サーボドライバ群20の側には、シリアル通信ケーブル10を介してこれらに共通に接続されるマスタモジュール23(シリアル通信制御手段)が設けられている。
【0035】
シリアル通信ケーブル10は、制御信号のシリアル通信に用いられるデータ線10aと、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8f(シリアル通信制御手段)への電力供給を行うための電源線10bを1本に束ねた構成となっている。
【0036】
このスレーブモジュール8a,8b,8c,8d,8e,8fは、前記エンコーダ30a,30b,30c,30d,30e,30fからのエンコーダ信号SEやセンサ信号S1〜S3を受信し、受信した信号のシリアル通信化を行い、シリアル通信ケーブル10を介してマスタモジュール23に送出する。
【0037】
マスタモジュール23は、パラレル通信ケーブル22を介して、サーボドライバ群20のサーボドライバ20a〜サーボドライバ20fに接続されており、スレーブモジュール8a,8b,8c,8d,8e,8fの各々からの制御信号を、対応するサーボドライバ
20a〜サーボドライバ20fの各々に振り分けて伝達する。
【0038】
図2を参照して、本実施の形態のパラレルリンクステージ7におけるシリアル通信による制御系の構成をより詳細に説明する。
図2に例示されるように、サーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々に対応した設けられたスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々は、信号保持回路31a〜f、タイミング信号生成回路32a〜f、パラレル/シリアル変換回路33a〜f、自局ID検出回路34a〜f、シリアル/パラレル変換回路35a〜f、ラインドライバ36a〜f、ラインレシーバー37a〜f、電源回路38a〜fを備えている。
【0039】
なお、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fは同一の構成なので、図2では、スレーブモジュール8a以外は簡略化して図示されている。以下では、スレーブモジュール8aに着目して内部構成を説明する。
【0040】
信号保持回路31aは、前記エンコーダ30aからのエンコーダ信号SEやセンサ信号S1〜S3を規定のタイミングで保持する。
パラレル/シリアル変換回路33aは、前記信号保持回路31aからの信号をパラレル/シリアル変換を行う。
【0041】
ラインドライバ36aは、前記パラレル/シリアル変換回路33aからのシリアル信号を送出する。
ラインレシーバー37aは、前記マスタモジュール23からの送信要求信号を受信する。
【0042】
シリアル/パラレル変換回路35aは、前記ラインレシーバー37aで受信したシリアル通信信号をパラレル通信信号に変換するシリアル/パラレル変換を行う。
自局ID検出回路34aは、前記シリアル/パラレル変換回路35aからのパラレル信号が自局のID(シリアル通信ケーブル10上におけるスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの識別情報)を持つか否かを検出する。
【0043】
タイミング信号生成回路32aは、スレーブモジュール8a内の上述の各回路ブロックで必要なタイミング信号を生成する。
電源回路38aは、電源線10bを介してマスタモジュール23の側から受電した電力を、上述の各回路ブロックに供給する。
【0044】
一方、サーボドライバ群20の側に設けられたマスタモジュール23は、ラインレシーバー50、ラインドライバ51、シリアル/パラレル変換回路52、信号保持回路53、ID生成回路54、タイミング信号生成回路55、電源回路56を備えている。
【0045】
ラインレシーバー50は、シリアル通信ケーブル10のデータ線10aに接続され、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々のラインドライバ36a〜fから送出されるシリアル通信信号を受信する。
【0046】
シリアル/パラレル変換回路52は、前記ラインレシーバー50からのシリアル通信信号をパラレル通信信号に変換するシリアル/パラレル変換を行う。
信号保持回路53は、前記シリアル/パラレル変換回路52から到来するスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々に対応したパラレル信号を規定のタイミングで保持する。
【0047】
この信号保持回路53は、パラレル通信ケーブル22を介して、上位のサーボドライバ
群20のサーボドライバ20a〜サーボドライバ20fの各々に接続されている。
そして、信号保持回路53に保持されているスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々に対応したパラレル通信信号が、対応するサーボドライバ20a〜サーボドライバ20fの各々に並列に伝達される。
【0048】
ID生成回路54は、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々に対して後述のように送出される送信要求72に含まれるサーボモータ5aからサーボモータ5fの中の一つの識別情報(後述のサーボモータ識別情報74b)を生成する。
【0049】
ラインドライバ51は、前記ID生成回路54から出力されたサーボモータ識別情報74bを含む送信要求72をシリアル通信ケーブル10のデータ線10aに送出する。
タイミング信号生成回路55は、マスタモジュール23内の上述の各回路ブロックで必要なタイミング信号を生成する。
【0050】
電源回路56は、マスタモジュール23内における上述の各回路ブロックに対する電力の供給を行うとともに、シリアル通信ケーブル10の電源線10bを介してスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々に対する電力の供給を行う。
【0051】
図3は、本実施の形態のパラレルリンクステージ7におけるシリアル通信ケーブル10を介したマスタモジュール23と、複数のスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々との間に置けるシリアル通信の送受信タイミングの一例を示すタイミング図である。
【0052】
送信要求72では、送信要求信号70a、送信要求信号70b、送信要求信号70c、送信要求信号70d、送信要求信号70e、送信要求信号70fを用いてマスタモジュール23からスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々への後述の応答フレーム74(制御信号)の送信要求行う。
【0053】
送信要求信号70a〜送信要求信号70fの各々は、制御対象のサーボモータ5a〜サーボモータ5fのサーボモータ識別情報74bを含んでいる。
一方、応答73はスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々からからマスタモジュール23への応答信号71a、応答信号71b、応答信号71c、応答信号71d、応答信号71e、応答信号71fを示している。
【0054】
なお、図示の都合上、図3には、送信要求信号70aから送信要求信号70cと、対応する応答信号71aから応答信号71cが示されている。
本実施の形態の場合、応答信号71a〜応答信号71fの各々は、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々で生成される応答フレーム74で構成されている。
【0055】
この応答フレーム74は、先頭側から、順に、ヘッダ部74a、サーボモータ識別情報74b、エンコーダ値74c、センサ信号74d、エラー訂正符号部74eで構成されている。
【0056】
ヘッダ部74aには、応答フレーム74の開始位置を示す情報が設定されている。
サーボモータ識別情報74bには、サーボモータ5a〜サーボモータ5fのいずれかを識別する情報が設定されている。
【0057】
エンコーダ値74cには、サーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々のエンコーダ30a〜エンコーダ30fの各々から出力されたエンコーダ信号SEの値が設定される。
センサ信号74dには、上述のセンサ信号S1〜S3が設定される。
【0058】
エラー訂正符号部74eには、応答フレーム74の全体の信頼性を高めるための巡回冗長符号(CRC)等の情報が設定されている。
そして、送信要求信号70a〜送信要求信号70fの各々は、前記スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々に対する送信要求信号を示し、それに対応して、応答信号71a〜応答信号71fの各々は前記スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々から、前記マスタモジュール23へ送出される応答フレーム74を示している。
(作用)
本実施の形態のパラレルリンクステージ7の作用の一例について説明する。
【0059】
まず、パラレルリンクステージ7の全体の動作ついて簡単に説明する。
コントローラ21は、パラレルリンクステージ7のエンドエフェクタ1を所定の位置に変位させるため、サーボドライバ群20に指令して必要なサーボモータ5a〜サーボモータ5fを作動させ、リンク3a〜リンク3fを適宜伸縮変位させる。
【0060】
このサーボドライバ群20のサーボドライバ20a〜サーボドライバ20fの各々では、対応するサーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々に対して、動力信号ケーブル9を介して作動指令(駆動電流)を与えるとともに、実際のサーボモータ5a〜サーボモータ5fや、リンク3a〜リンク3f等の機構部の変位を、エンコーダ30a〜エンコーダ30fの出力であるエンコーダ信号SEや、センサ信号S1〜S3にて検出する閉ループ制御を行う。
【0061】
この閉ループ制御において、たとえば、サーボモータ5aに対応して設けられた一つのスレーブモジュール8aに着目すると、エンコーダ30aからのエンコーダ信号SEやセンサ信号S1〜S3を、信号保持回路31aにおいて、タイミング信号生成回路32aで生成された規定のタイミングにて保持する。
【0062】
次に、保持した信号をパラレル/シリアル変換回路33aにてパラレル/シリアル変換し、応答フレーム74を生成する。
次に、シリアル変換した応答フレーム74をラインドライバ36aにて、マスタモジュール23のラインレシーバー50へ送出する。
【0063】
この時、ラインドライバ36aはイネーブル/ディセーブルの機能を持っており、自局ID検出回路34aから与えられるイネーブルが有効でないとラインドライバ36aからのシリアル信号は出力されない。
【0064】
自局ID検出回路34aからのイネーブルが有効になる条件は、マスタモジュール23のID生成回路54で生成され、ラインドライバ51で送信された送信要求72のうち、自分のサーボモータ5aに対応したサーボモータ識別情報74bを含む送信要求信号70aを受け取った場合のみである。
【0065】
また、送信要求72(送信要求信号70a)はラインレシーバー37aで受信し、シリアル/パラレル変換回路35aでシリアルパラレル変換された後に自局ID検出回路34aにて検出する。
【0066】
また、前記イネーブル/ディセーブルの機能により、スレーブモジュール8aのラインドライバ36aから出力されるシリアル信号である応答信号71a(応答フレーム74)はマスタモジュール23のラインレシーバー50で受信され、シリアル/パラレル変換回路52にてシリアルパラレル変換され、信号保持回路53にて保持され、スレーブモジュ
ール8aに対応するサーボドライバ20aに出力される。
【0067】
他のスレーブモジュール8b〜スレーブモジュール8fでも同様の動作が行われる。
これにより、一つのスレーブモジュール8aから出力される応答信号71aと、その他のスレーブモジュール8b,8c,8d,8e,8fから出力される応答信号71b〜応答信号71fとが衝突することなく、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々と、サーボドライバ群20のサーボドライバ20aないとサーボドライバ20fの各々との間でのシリアル通信が可能となる。
【0068】
また、シリアル通信ケーブル10のデータ線10aの通信周波数を十分に大きくすることにより、スレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fの各々からの応答フレーム74(応答信号71a〜応答信号71f)の送信遅延が生じることもなく、実時間によるパラレルリンクステージ7の閉ループ制御が可能である。
【0069】
このように、複数のサーボモータ5a〜サーボモータ5fの各々に設けられたスレーブモジュール8a〜スレーブモジュール8fからの複数の出力を、お互いの出力するタイミングをずらすことで、マスタモジュール23に対して、1本の論理回線上(シリアル通信ケーブル10)で多対一の通信を可能にし、パラレルリンクステージ7のパラレルリンク機構pとサーボドライバ群20との間における配線ケーブル数を大幅に削減できる。
【0070】
すなわち、パラレルリンクステージ7において、必要以上に大きなシリアル通信ケーブル10等の信号線の引き回しスペースを必要とすることなく、信号線の摩擦による損傷を確実に防止することが可能となる。
【0071】
すなわち、以上のような本発明の実施の形態のパラレルリンクステージ7によれば、サーボモータ5a〜サーボモータ5fをパラレルリンク機構pの中心に集中的に配置する構成において、サーボモータ5a〜サーボモータ5fとサーボドライバ群20との間における配線ケーブルの引き回しを困難にしているパラレルリンク構造のケーブル配線数を削減し、機械構成部との接触によるシリアル通信ケーブル10の損傷を防止するとともに、シリアル通信ケーブル10の引き回しを容易化することができる。
【0072】
さらに、信号ケーブルの数の削減により、パラレルリンクステージ7の小型化、設置スペースおよび製造コストの削減を実現できる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0073】
たとえば、アクチュエータとしては、サーボモータに限らず、たとえば、流体圧シリンダやソレノイド、圧電素子等の他の変位発生手段を用いてもよい。
(付記1)
ベースと、エンドエフェクタと、前記ベースに固定されたサーボモータを備える駆動リンクと、前記エンドエフェクタに連結された可動リンクと、一端が駆動リンクに、他端が可動リンクと連結された少なくとも3本のリンクを有するパラレルリンクステージにおいて、各サーボモータとサーボドライバ間のエンコーダ信号やセンサ信号をシリアル通信化し、論理的に1本の線で通信を行うことを特徴とするパラレルリンクステージ。
【0074】
(付記2)
付記1記載のパラレルリンクステージにおいて、
シリアル通信の手段として、サーボドライバ側にはパラレルリンクステージ機械構成部側の情報をシリアル通信にて受信するマスタモジュールを備え、各サーボモータ側には、パラレルリンクステージ機械構成部側の情報をシリアル通信にて送信するスレーブモジュ
ールをサーボモータの数だけ備えており、前記マスタモジュールの送信要求を受信した前記スレーブモジュールのみ信号を送信することを特徴とするパラレルリンクステージ。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態であるパラレルリンクステージの制御方法を実施するパラレルリンクステージの構成の一例を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるパラレルリンクステージにおける制御系の構成例を示す概念図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるパラレルリンクステージにおける制御系のシリアル通信の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の参考技術のパラレルリンクステージを示す側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 エンドエフェクタ
2a〜2f 可動リンク
3a〜3f リンク
4a〜4f 駆動リンク
5a〜5f サーボモータ
6 ベース
7 パラレルリンクステージ
8a〜8f スレーブモジュール
9 動力信号ケーブル
10 シリアル通信ケーブル
10a データ線
10b 電源線
20 サーボドライバ群
20a〜20f サーボドライバ
21 コントローラ
22 パラレル通信ケーブル
23 マスタモジュール
30 エンコーダ
30a〜30f エンコーダ
31a〜f 信号保持回路
32a〜f タイミング信号生成回路
33a〜f パラレル/シリアル変換回路
34a〜f 自局ID検出回路
35a〜f シリアル/パラレル変換回路
36a〜f ラインドライバ
37a〜f ラインレシーバー
38a〜f 電源回路
50 ラインレシーバー
51 ラインドライバ
52 シリアル/パラレル変換回路
53 信号保持回路
54 ID生成回路
55 タイミング信号生成回路
56 電源回路
70a〜70f 送信要求信号
71a〜71f 応答信号
72 送信要求
73 応答
74 応答フレーム
74a ヘッダ部
74b サーボモータ識別情報
74c エンコーダ値
74d センサ信号
74e エラー訂正符号部
S1〜S3 センサ信号
SE 回転位置信号
p パラレルリンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
エンドエフェクタと、
前記ベースと前記エンドエフェクタとの間に介在し、複数のアクチュエータを備えたパラレルリンク機構と、
を含むパラレルリンクステージの制御方法であって、
複数の前記アクチュエータに共通に設けられた信号線を用いて制御信号のシリアル通信を行うことにより、個々の前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とするパラレルリンクステージの制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のパラレルリンクステージの制御方法において、
送信要求を受けた前記アクチュエータに関する前記制御信号のみを選択的に前記シリアル通信にて送出することを特徴とするパラレルリンクステージの制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のパラレルリンクステージの制御方法において、
前記アクチュエータは、サーボモータからなり、
複数の前記サーボモータの各々の回転位置を示すエンコーダ信号、および前記パラレルリンク機構の変位状態を示すセンサ信号の少なくとも一つを含む前記制御信号を前記シリアル通信により、前記サーボモータの制御側に送信することを特徴とするパラレルリンクステージの制御方法。
【請求項4】
ベースと、
エンドエフェクタと、
前記ベースと前記エンドエフェクタとの間に介在し、複数のアクチュエータを備えたパラレルリンク機構と、
複数の前記アクチュエータに共通に設けられた信号線と、
前記信号線を用いて制御信号のシリアル通信を行うことにより、個々の前記アクチュエータの動作を制御するシリアル通信制御手段と、
を含むことを特徴とするパラレルリンクステージ。
【請求項5】
請求項4記載のパラレルリンクステージにおいて、
前記シリアル通信制御手段は、
前記パラレルリンク機構の個々の前記アクチュエータ毎に設けられ、当該アクチュエータに関する前記制御信号を前記シリアル通信にて送受信するスレーブモジュールと、
複数の前記アクチュエータを外部から制御するアクチュエータ駆動部の側に設けられ、前記シリアル通信にて前記制御信号の送受信を行うマスタモジュールと、
を含むことを特徴とするパラレルリンクステージ。
【請求項6】
請求項5記載のパラレルリンクステージにおいて、
前記アクチュエータは、サーボモータからなり、
複数の前記サーボモータの各々の回転位置を示すエンコーダ信号、および前記パラレルリンク機構の変位状態を示すセンサ信号の少なくとも一つを含む前記制御信号を前記シリアル通信により、前記スレーブモジュールから前記マスタモジュールに送信することを特徴とするパラレルリンクステージ。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82784(P2010−82784A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257539(P2008−257539)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】