説明

パルス透視モードを備えたX線装置

【課題】透視開始直後から安定して好適な透視画像を得ることができるX線装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るX線装置は、時間tにおいて透視開始の指令が入力されると、管電圧制御部がパルス状管電圧Vを出力し始めるとともに、フィラメント加熱部がフィラメント電流Iを増大させてフィラメント12を加熱し、発生させたX線によって被検体の透視を行う。ここで、管電圧制御部は、該指令が入力されてからフィラメントの温度が定常の透視状態の温度TF1に到達するまでの所定の期間、パルス状管電圧Vのパルス幅を定常の透視状態のパルス幅(4ms)よりも広くなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にX線を曝射してその透視画像を得るX線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線装置は、透視対象や透視目的毎に様々な種類のものが開発されている。その1つとして、被検体に曝射するX線をパルス状とすることにより被検体の被曝量を低減することができるパルス透視モードを備えたX線装置が知られている。
【0003】
図7は、パルス透視モードを備えた従来のX線装置のブロック図である。X線装置1’は、主に、X線を発生する回転陽極型のX線管10と、該X線管10のフィラメント電流I及びパルス状管電圧Vを制御するX線管制御部20’と、被検体2を載置するテーブル3と、イメージインテンシファイア(I.I.)4等からなる系と、オペレータからの各種指令を受け付ける入力部8と、該指令に基づいて各部を制御する制御部9とを備える。X線管10の内部には、タングステン等から構成されるターゲット11とフィラメント12とが備えられている。また、X線管制御部20’は管電圧制御部21とフィラメント加熱部22とを有している。
【0004】
透視を行わない待機状態において、管電圧制御部21から出力されるパルス状管電圧Vの電圧値は0[V]である。また、フィラメント加熱部22はフィラメント12に向かって微小なフィラメント電流Iを流し、フィラメント12を予備加熱している。
【0005】
被検体2の透視は、オペレータが入力部8を介してその旨の指令を入力することによって開始される。該指令が入力されて透視状態となると、フィラメント加熱部22はフィラメント12を加熱するべくフィラメント電流Iを増大させる。これとともに、管電圧制御部21は所定のパルス幅を有するパルス状管電圧Vを出力し始める。これにより、フィラメント12から放出された熱電子がターゲット11に勢いよく衝突し、管電圧制御部21からターゲット11に管電流Iが流れるとともに、ターゲット11から被検体2に向かってX線が曝射される。そして、被検体2を透過してきたX線は、I.I.4で可視像に変換された後に適宜画像処理が行われ、モニタ7で被検体2の透視画像が観察される。
【0006】
図8に、X線装置1’の動作波形を示す。この図において、(A)はフィラメント電流I、(B)はフィラメント温度T、(C)はパルス状管電圧V、(D)は管電流I、(E)は被検体2に向かって曝射されるX線のX線量XRの波形を示す。いずれの波形においても、時間tにおいて待機状態から透視状態への切替えが行われ、時間tにおいて透視状態から待機状態への切替えが行われるものとする。
【0007】
時間0〜tの待機状態において、フィラメント12には予備加熱のための微小なフィラメント電流IF0が流れ、フィラメント12はそれに応じた温度TF0となっている。また、このとき、管電圧制御部21はパルス状管電圧Vを出力していない。したがって、待機時に被検体2に向かって曝射されるX線のX線量XRは0であるか、または極めて微量である。
【0008】
時間tにおいて透視開始の指令が入力されると、フィラメント電流IはIF0からIF1に直ちに増加する(図8(A)参照)。これとともに、管電圧制御部21は電圧値VT1のパルス状管電圧Vを出力し始める(図8(C)参照)。このとき、図8(B)に示すフィラメント温度Tは、電流IF1に応じた温度TF1にすぐには到達せず、熱慣性に従って緩やかに増加していく。したがって、管電流I及びX線量XRも、それぞれ、目標とする管電流IT1及びX線量XRに向かって緩やかに増加していく(図8(D)(E)参照)。
【0009】
すなわち、図7に示す従来のX線装置1’では、透視開始後の一定期間の間、X線量XRが不足しており、好適な透視画像を観察することができないという問題を有していた。このような問題に鑑み、従来から、透視開始直後から目標とするX線量XRを確保し、好適な透視画像を得ることを意図した各種のX線装置が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−195294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に係るX線装置では、図9に示すように、透視開始直後にフィラメント電流IをIF1までオーバーシュートさせることによってフィラメント12の温度上昇を加速させ、X線量XRが目標とするX線量XRに到達するまでの時間を短縮している。しかしながら、一般にフィラメント電流Iのオーバーシュート量を精度良く制御するのは困難であり、フィラメント12に過大な電流が流れることにより、フィラメント12が損傷したり劣化したりするおそれがあった。
【0011】
この他にも、透視開始後の一定期間の間、パルス状管電圧Vを上昇させることによりX線量XRの不足を補うようにしたX線装置や、フィラメント電流Iやパルス状管電圧Vの設定は変更せずに、画像処理部6における処理を変更することによってX線量XRの不足を補うようにしたX線装置も知られている。しかしながら、パルス状管電圧Vの上昇は、最終的に得られる透視画像のコントラストが低下するという問題があった。また、画像処理の変更は、フィラメント温度が所定の温度に到達した後に透視画像が明るくなりすぎるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、透視開始直後から安定して好適な透視画像を得ることができるX線装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、透視開始直後からフィラメント温度が所定温度に到達するまでの間、パルス状管電圧Vのパルス幅を定常の透視状態のパルス幅よりも広げることにより、被検体にX線を曝射する時間を長くすれば好適な透視画像が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明に係るX線装置は、パルス状管電圧を出力するとともにパルス幅が切替え可能な管電圧制御部と、フィラメントに所定のフィラメント電流を流して該フィラメントを発熱させるフィラメント加熱部とを有するX線管制御部を備え、透視開始の指令が入力されると、前記管電圧制御部が前記パルス状管電圧を出力し始めるとともに、前記フィラメント加熱部がフィラメント電流を増大させてフィラメントを加熱し、前記フィラメントから放出される熱電子をターゲットに衝突させて発生させたX線によって被検体の透視を行うX線装置であって、前記管電圧制御部は、前記指令が入力されてから前記フィラメントの温度が定常の透視状態の温度に到達するまでの所定の期間、前記パルス状管電圧のパルス幅を定常の透視状態のパルス幅よりも広くなるよう切替えることを特徴とする。
なお、本明細書中の用語「定常の透視状態」とは、透視状態のうち、フィラメント温度が目標とする温度(例えば、図2(B)のTF1)に到達した後の状態を意味する。一旦、定常の透視状態となった後にフィラメント温度が変動して目標とする温度を下回った場合でも、その変動が微小であれば定常の透視状態は継続しているものとする。
【0015】
上記X線装置において、前記所定の期間は、前記指令が入力されてから管電流が定常の透視状態の70%〜100%に到達するまでの間の期間、または前記指令が入力されてから前記フィラメントの温度が定常の透視状態の70%〜100%に到達するまでの間の期間とすることができる。
【0016】
また、前記所定の期間が終了する時間を予め測定及び記憶しておき、前記時間になると、前記パルス状管電圧のパルス幅を定常の透視状態のパルス幅に切替えられるようにしてもよい。
【0017】
また、前記所定の期間は、本透視の前に行われる予備透視で得られた透視画像を観察することによって事前に決定及び記憶されるようにしてもよい。
【0018】
さらに、前記所定の期間中に、前記パルス幅が段階的に狭くなるよう切替えられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、透視開始直後から安定して好適な透視画像を得ることができるX線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るX線装置の好ましい実施形態について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係るX線装置のブロック図である。このX線装置1は、被検体2に曝射するためのX線を発生する回転陽極型のX線管10と、該X線管10のフィラメント電流I及びパルス状管電圧Vを制御するX線管制御部20と、被検体2を載置するテーブル3とを備える。X線管10の内部には、タングステン等から構成されるターゲット11とフィラメント12とが備えられている。
【0022】
X線管制御部20は、管電圧制御部21と、フィラメント加熱部22と、タイマ23とを有する。このうち、管電圧制御部21は、X線管10に向けて出力するパルス状管電圧Vの電圧値及びパルス幅を任意に制御することができる。また、タイマ23は、透視開始の指令(後述)を受けた後、所定時間が経過したことを管電圧制御部21に通知する。
【0023】
この他、X線装置1は、I.I.4、カメラ5及び画像処理部6からなる系と、該系で得られた透視画像を表示するモニタ7と、オペレータからの各種指令を受け付ける入力部8と、該指令に基づいて各部を制御する制御部9とを備える。I.I.4は、被検体2を透過してきたX線のX線量XRを検出して、このX線量XRを可視像に変換する。カメラ5及び画像処理部6は、I.I.4で得られた可視像の撮影と画像処理とを行い、モニタ7に表示するための透視画像を生成する。
【0024】
また、入力部8からは、透視を開始及び終了する旨の指令と、フィラメント電流I及びパルス状管電圧Vの設定値が入力される。必要に応じて、入力部8は被検体2の種別(状態)や透視画像のコントラスト等の各種条件の入力も受け付ける。本実施例において、入力部8はフットペダルを有し、オペレータがフットペダルを踏み込むと透視開始の指令が制御部9を通して各部に伝達され、踏むのを止めると透視終了の指令が各部に伝達される。
【0025】
待機状態、すなわち入力部8のフットペダルが踏み込まれていない状態において、管電圧制御部21が出力するパルス状管電圧Vの電圧値は0[V]である。また、フィラメント加熱部22はフィラメント12に向かって微小なフィラメント電流Iを流し、フィラメント12を予備加熱している。
【0026】
フットペダルが踏み込まれて透視状態となると、フィラメント12を加熱するべくフィラメント加熱部22がフィラメント電流Iを増大させるとともに、管電圧制御部21は所定のパルス幅を有するパルス状管電圧Vを出力し始める。これにより、フィラメント12から放出された熱電子がターゲット11に勢いよく衝突し、管電圧制御部21からターゲット11に管電流Iが流れるとともに、ターゲット11から被検体2に向かってX線が曝射される。そして、被検体2を透過してきたX線はI.I.4で検出され、被検体2の透視画像が生成される。
【0027】
図2に、実施例1に係るX線装置1の動作波形を示す。この図において、(A)はフィラメント電流I、(B)はフィラメント温度T、(C)はパルス状管電圧V、(D)は管電流I、(E)は被検体2に向かって曝射されるX線のX線量XRの波形を示す。いずれの波形においても、時間tにおいて待機状態から透視状態への切替えが行われ、時間tにおいて透視状態から待機状態への切替えが行われるものとする。
【0028】
時間0〜tの待機状態において、フィラメント12には予備加熱のための微小なフィラメント電流IF0が流れ、フィラメント12はそれに応じた温度TF0となっている。また、このとき、管電圧制御部21はパルス状管電圧Vを出力していない。したがって、待機時に被検体2に向かって曝射されるX線のX線量XRは0であるか、または極めて微量である。
【0029】
時間tにおいて透視開始の指令が入力されると、フィラメント電流IはIF0からIF1に直ちに増加する(図2(A)参照)。このとき、図2(B)に示すフィラメント温度Tは熱慣性に従って緩やかに増加し、時間T(本実施例では、透視開始から2s後)において電流IF1に応じた温度TF1に到達する。したがって、管電流I及びX線量XRも、それぞれ、目標とする管電流IT1及びX線量XRに向かって緩やかに増加していく(図2(D)(E)参照)。
【0030】
前記の通り、タイマ23は、透視開始の指令が入力されてから所定期間が経過したことを管電圧制御部21に通知する。本実施例では、該指令の入力後1sが経過した時点(時間t)で1回目の通知がされ、さらに1s(合計2s)が経過した時点(時間t)で2回目の通知がされる。すなわち、本実施例では、フィラメント温度Tが所定の温度TF1に到達するまでの期間を、時間t〜tの期間と、時間t〜tの期間とに分割している。
【0031】
分割する期間の数は2つに限らず、3つ以上にすることもできる。例えば、0.5s後に1回目の通知がされ、その0.5s後に2回目の通知がされ、さらに1s(合計2s)後に3回目の通知がされるようにしてもよい。なお、期間の分割は必須ではく、定常の透視状態となる時間tにおいて1回目の通知が行われるようにしてもよいが、制御をあまり複雑化することなく好適な透視画像を得るという観点から、2〜3つの期間に分割するのが好ましい。
【0032】
所定時間を決定する方法としては種々の方法が考えられるが、本実施例では、予備透視で得られた透視画像を参照して決定される。予備透視とは、本透視の前に透視条件を決定するために行われるもので、据付調整時に人体を模擬したファントムで実際に透視を行うことで実施する。オペレータは、予備透視で得られた透視画像を見て、透視開始の指令を入力してから何s経てば所望の透視画像が得られるのかを判断する。そして、例えば2s後に所望の透視画像が得られると判断した場合には、入力部8を通して、タイマ23に「2s」を記憶させる。定常の透視状態となるまでの期間を複数の期間に分割したい場合には、通知を行う各時間の入力を行う。
【0033】
再び図2を参照して、時間tにおいて透視状態になると、管電圧制御部21は所定のパルス幅を有するパルス状管電圧Vの出力を開始する(図2(C)参照)。パルス状管電圧Vのパルス幅は、タイマ23からの通知を受ける度に段階的に狭くなっていく。
【0034】
図2(C)に示すように、本実施例では、1回目の通知を受けるまでの期間(時間t〜t)、すなわち最初の1s間はパルス幅が6ms(Duty比50%)に制御される。そして、1回目の通知を受けてから2回目の通知を受けるまでの期間(時間t〜t)は、パルス幅が5ms(Duty比50%)に制御される。その後、時間tにおいて定常状態となると、パルス幅は4ms(Duty比50%)に切替えられる。以後、管電圧制御部21は、透視終了の指令があるまで4msのパルス幅でパルス状管電圧Vを出力し続ける。
【0035】
パルス状管電圧Vのパルス幅が変化すると、それに応じて被検体2に曝射されるX線のパルス幅も変化する。つまり、本実施例において、X線のパルス幅は、時間t〜tの期間は約6msに制御され、時間t〜tの期間は約5msに制御され、定常の透視状態となった時間t以降は約4msに制御される(図2(E)参照)。
【0036】
以上をまとめると、本実施例に係るX線装置では、透視開始後の所定期間、X線のパルス幅が定常の透視状態よりも広くなるように制御される。すなわち、本実施例に係るX線装置では、フィラメント温度が目標とする温度に到達するまでの間、X線の曝射時間が定常の透視状態よりも長めに制御される。これにより、透視開始直後のX線量の不足が補われ、透視開始直後から安定して好適な透視画像を得ることができる。
【実施例2】
【0037】
図3に、実施例2に係るX線装置のブロック図を示す。このX線装置1のX線管制御部20は、タイマ23に替えて電流センサ24を有している。その他の構成については、実施例1に係るX線装置と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0038】
電流センサ24は、管電圧制御部21とターゲット11の間に配置され、管電圧制御部21からターゲット11に向かって流れる管電流Iを検知する。そして、管電流Iが所定の電流値に到達すると、電流センサ24から管電圧制御部21にその旨が通知される。
【0039】
図4(D)に示すように、本実施例では、管電流Iが所定電流IT1の80%まで上昇した際(時間t)に1回目の通知がされる。そして、時間tにおいて、管電流Iが所定電流IT1の95%まで上昇すると2回目の通知がされる。通知を受ける度に、管電圧制御部21から出力されるパルス状管電圧Vのパルス幅が段階的に狭くなっていくのは、実施例1と同様である。
【0040】
ここで、一般的に、管電流Iが定常の透視状態の70%に到達すると、定常の透視状態とほぼ遜色のない透視画像が得られることが知られている。したがって、パルス状管電圧Vのパルス幅は、管電流Iが定常の透視状態の70%〜100%に到達したときに、定常の透視状態のパルス幅に切替えるのが望ましい。
【実施例3】
【0041】
図5に、実施例3に係るX線装置のブロック図を示す。このX線装置1のX線管制御部20は、タイマ23に替えて温度センサ25を有している。その他の構成については、実施例1に係るX線装置と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0042】
温度センサ25は、フィラメント12の近傍に配置され、フィラメント温度Tを直接または間接的に検知する。そして、フィラメント温度Tが所定の温度に到達すると、温度センサ25から管電圧制御部21にその旨が通知される。
【0043】
図6(B)に示すように、本実施例では、フィラメント温度Tが所定温度TF1の80%まで上昇した際(時間t)に1回目の通知がされる。そして、時間tにおいて、フィラメント温度Tが所定温度TF1の95%まで上昇すると2回目の通知がされる。通知を受ける度に、管電圧制御部21から出力されるパルス状管電圧Vのパルス幅が段階的に狭くなっていくのは、実施例1と同様である。
【0044】
ここで、一般的に、フィラメント温度Tが定常の透視状態の70%に到達すると、定常の透視状態とほぼ遜色のない透視画像が得られることが知られている。したがって、パルス状管電圧Vのパルス幅は、フィラメント温度Tが定常の透視状態の70%〜100%に到達したときに、定常の透視状態のパルス幅に切替えるのが望ましい。
【0045】
結局、実施例2及び3に係るX線装置でも、透視開始から所定期間のX線のパルス幅が定常の透視状態よりも広くなるように制御され、これにより、透視開始直後のX線量の不足が補われ、透視開始直後から安定して好適な透視画像を得ることができる。
【0046】
さらに、実施例2及び3では、実際の管電流または実際のフィラメント温度を検知して、その結果に応じてパルス幅の切替えが行われるようになっている。したがって、フィラメントのバラツキ等によって、フィラメントの熱慣性の程度が変化した場合においても、その状況に応じてパルス状管電圧のパルス幅を切替えることができるので、X線のパルス幅をより最適に制御することができる。
【0047】
なお、実施例2及び3に係るX線装置に実施例1のタイマ23を付加することもできる。この構成では、例えば、最初の透視においては電流センサ24または温度センサ25によって管電流Iまたはフィラメント温度Tがリアルタイムに検知され、それに基づいてパルス幅の切替えが行われる。このとき、タイマ23は、透視開始の指令が入力されてからパルス幅が切替えられるまでの時間を測定及び記憶する。そして、2回目以降の透視においては、実際のフィラメント温度T等を参照することなく、タイマ23に記憶された時間に基づいてパルス幅の切替えが行われる。
【0048】
これにより、タイマ23のみを使用する単純な制御を行うだけで、2回目以降の透視においても、電流センサ24または温度センサ25を用いたのと同等のパルス幅の最適な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に係るX線装置のブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線装置の動作波形であって、(A)〜(E)はそれぞれフィラメント電流、フィラメント電圧、パルス状管電圧、管電流、X線量の動作波形である。
【図3】実施例2に係るX線装置のブロック図である。
【図4】実施例2に係るX線装置の動作波形であって、(A)〜(E)はそれぞれフィラメント電流、フィラメント電圧、パルス状管電圧、管電流、X線量の動作波形である。
【図5】実施例3に係るX線装置のブロック図である。
【図6】実施例3に係るX線装置の動作波形であって、(A)〜(E)はそれぞれフィラメント電流、フィラメント電圧、パルス状管電圧、管電流、X線量の動作波形である。
【図7】従来のX線装置のブロック図である。
【図8】従来のX線装置の動作波形であって、(A)〜(E)はそれぞれフィラメント電流、フィラメント電圧、パルス状管電圧、管電流、X線量の動作波形である。
【図9】他の従来のX線装置の動作波形であって、(A)〜(E)はそれぞれフィラメント電流、フィラメント電圧、パルス状管電圧、管電流、X線量の動作波形である。
【符号の説明】
【0050】
1 X線装置
2 被検体
3 テーブル
4 I.I.
5 カメラ
6 画像処理部
7 モニタ
8 入力部
9 制御部
10 X線管
11 ターゲット
12 フィラメント
20 X線管制御部
21 管電圧制御部
22 フィラメント加熱部
23 タイマ
24 電流センサ
25 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状管電圧を出力するとともにパルス幅が切替え可能な管電圧制御部と、フィラメントに所定のフィラメント電流を流して該フィラメントを発熱させるフィラメント加熱部とを有するX線管制御部を備え、透視開始の指令が入力されると、前記管電圧制御部が前記パルス状管電圧を出力し始めるとともに、前記フィラメント加熱部がフィラメント電流を増大させてフィラメントを加熱し、前記フィラメントから放出される熱電子をターゲットに衝突させて発生させたX線によって被検体の透視を行うX線装置であって、
前記管電圧制御部は、前記指令が入力されてから前記フィラメントの温度が定常の透視状態の温度に到達するまでの所定の期間、前記パルス状管電圧のパルス幅を定常の透視状態のパルス幅よりも広くなるよう切替えることを特徴とするX線装置。
【請求項2】
前記所定の期間が、前記指令が入力されてから管電流が定常の透視状態の70%〜100%に到達するまでの間の期間であることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項3】
前記所定の期間が、前記指令が入力されてから前記フィラメントの温度が定常の透視状態の70%〜100%に到達するまでの間の期間であることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項4】
前記所定の期間が終了する時間を予め測定及び記憶しておき、前記時間になると、前記パルス状管電圧のパルス幅を定常の透視状態のパルス幅に切替えることを特徴とする請求項2または3に記載のX線装置。
【請求項5】
前記所定の期間が、本透視の前に行われる予備透視で得られた透視画像を観察することによって事前に決定及び記憶されていることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項6】
前記所定の期間中に、前記パルス幅が段階的に狭くなるよう切替えられることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−289579(P2009−289579A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140743(P2008−140743)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】