説明

パワーステアリング装置

【課題】省エネルギーを達成できる上に、操舵者にひっかかり感を与える可能性がなくて、スムーズにフィリング良く操舵を行うことができるパワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】コントロールバルブ15は、中立位置S0で、ポンプポートPを第1負荷ポートAおよび第2負荷ポートBに連通させる一方、タンクポートTを閉鎖する。したがって、操舵輪1の切り返し時、パワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBが瞬間的にタンク32に連通することがなくて、パワーシリンダ6がスムーズに作動して、操舵者にいわゆるひっかかり感を与えることがない。圧力指令が、流動損失に関連する圧力補償値で補正されているから、寒冷時に操舵が重くなる恐れがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーステアリング装置に関し、特に、油圧式のパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパワーステアリング装置としては、操舵輪に連なる入力軸と出力軸とをトーションバーにより相対回転可能に連結し、上記入力軸と出力軸との相対回転によりコントロールバルブを切り換え作動して、油圧ポンプから、操舵アシスト力を発生するパワーシリンダへの作動油の供給を制御するものがある(特許第2735743号公報:特許文献1参照)。
【0003】
上記コントロールバルブは、中立位置では、油圧ポンプに連なるポンプポートを閉鎖し、パワーシリンダのピストンの両側の第1および第2室に連なる第1および第2負荷ポートをタンクポートに連通している。上記ポンプポートの上流側の圧力と、上記パワーシリンダの第1室の圧力と第2室の圧力とのうちの最大圧力との差圧を差圧検出器で検出し、この差圧に基づいて、油圧ポンプを駆動する電動モータを制御装置で制御している。
【0004】
そして、上記操舵輪が操作されていない車両の直進走行状態では、上記入力軸と出力軸との間に相対回転がないため、コントロールバルブは中立位置に位置して、ポンプポートを閉鎖し、第1および第2室に連なる第1および第2負荷ポートをタンクポートに連通している。そのため、上記差圧検出器の検出する差圧が設定値よりも大きくなって、制御装置は、電動モータの駆動を停止して、油圧ポンプの駆動を停止する。
【0005】
一方、上記操舵輪が操作されて、上記入力軸と出力軸との間に相対回転が生じると、その相対回転の方向および大きさに応じて、コントロールバルブは切換作動されて、ポンプポートは、第1または第2負荷ポートに接続される。そして、上記ポンプポートの上流側の圧力と、上記パワーシリンダの第1室の圧力と第2室の圧力とのうちの最大圧力との差圧が設定値よりも小さくなると、制御装置は、電動モータを介して油圧ポンプを駆動する。
【0006】
このように、上記従来のパワーステアリング装置では、コントロールバルブのポンプポートの上流側の圧力と、上記パワーシリンダの第1室の圧力と第2室の圧力とのうちの最大圧力との差圧が設定値よりも小さくなると、制御装置によって、電動モータの駆動を停止して、油圧ポンプの駆動を停止しているから、省エネルギーを達成することができる。
【0007】
しかしながら、上記従来のパワーステアリング装置では、上記コントロールバルブの中立位置で、パワーシリンダの第1室および第2室の夫々に接続された第1および第2負荷ポートがタンクポートに連通しているため、パワーシリンダの第1室および第2室の作動油がタンクポートに僅かであるが抜ける場合がある。そのため、次に、操舵輪の操作によって、コントロールバルブを中立位置から切換位置に位置させたとき、パワーシリンダの第1室または第2室を作動油で満たして圧力が立ち上がるのに時間がかかって、パワーシリンダの作動に遅れが生じ、操舵者にいわゆるひっかかり感を与える場合があるという問題がある。
【0008】
また、操舵輪の切り返し時にも、コントロールバルブは、一方の切換位置から他方の切換位置になるまでに、パワーシリンダの第1室および第2室をタンクに通じる中立位置を経るから、パワーシリンダの第1室または第2室の圧力が立ち上がるのに時間がかかって、パワーシリンダの作動に遅れが生じ、操舵者にいわゆるひっかかり感を与える場合があるという問題がある。
【特許文献1】特許第2735743号の図1および図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、省エネルギーを達成できる上に、操舵者にひっかかり感を与える可能性がなくて、スムーズにフィリング良く操舵を行うことができるパワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明のパワーステアリング装置は、
操舵輪に連なる入力軸と、
出力軸と、
上記入力軸と出力軸とを相対回転可能に連結する弾性部材と、
ピストンの両側に第1室と第2室を有すると共に、操舵アシスト力を発生するパワーシリンダと、
油圧ポンプと、
上記パワーシリンダの第1および第2室に、第1および第2負荷ポートが夫々接続される一方、ポンプポートが上記油圧ポンプに接続されると共に、タンクポートがタンクに接続され、かつ、上記入力軸と出力軸との相対回転により切換作動されるコントロールバルブと、
上記コントロールバルブのポンプポートの圧力を直接または間接に検出するポンプポート圧力センサと、
上記パワーシリンダの第1室の圧力および第2室の圧力のうちの最大の圧力を検出するため、あるいは、上記第1室の圧力および第2室の圧力の両方を検出するための負荷圧力センサと、
上記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
上記電動モータの駆動を制御する制御装置と、
を備え、
上記コントロールバルブは、
中立位置で、上記ポンプポートを、上記第1および第2負荷ポートに連通すると共に、上記タンクポートを閉鎖し、
上記制御装置は、
上記油圧ポンプから上記第1室または第2室に至るまでの作動油の流動圧力損失に関連する圧力補償値と、上記負荷圧力センサからの圧力を表す信号とに基づいて圧力指令を求め、この圧力指令と上記ポンプポート圧力センサから受けたポンプポートの圧力とに基づいて、上記電動モータを駆動する信号を作成して出力する
ことを特徴としている。
【0011】
上記構成のパワーステアリング装置によれば、車両の停止時または直進走行時において、操舵輪が中立状態にあるときは、コントロールバルブが中立位置にあって、ポンプポートと、第1負荷ポートおよび第2負荷ポートとが連通し、かつ、タンクポートが閉鎖される。
【0012】
そのため、上記コントロールバルブは中立位置では、パワーシリンダの第1室および第2室は、第1負荷ポートおよび第2負荷ポート、ポンプポートを介して油圧ポンプに接続されている一方、タンクポートは閉鎖されているから、パワーシリンダの第1室および第2室は、作動油で充満されて、かつ、第1室および第2室内の作動油がタンクに漏れる恐れがない。
【0013】
したがって、操舵輪の中立状態からの操舵によって、コントロールバルブを中立位置から切換位置に切り換えたときに、パワーシリンダの第1室および第2室は作動油で完全に満たされていて、それらから作動油が漏れている恐れがないから、パワーシリンダの作動に遅れが生じる恐れがなくて、操舵者にいわゆるひっかかり感を与える恐れがない。
【0014】
また、操舵輪の切り返し時、コントロールバルブが一方の切換位置から他方の切換位置になるまでに、中立位置を経るが、この中立位置では、第1負荷ポートおよび第2負荷ポートがポンプポートに連通され、かつ、タンクポートが閉鎖されるから、パワーシリンダの第1室および第2室内の作動油が瞬間的にタンクに漏れる恐れがない。
【0015】
したがって、操舵輪の切り返し時、パワーシリンダの第1室または第2室の圧力が迅速に立ち上がって、パワーシリンダがスムーズに作動して、操舵者にいわゆるひっかかり感を与えることがない。
【0016】
また、上記制御装置は、作動油の粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失に対応する圧力補償値と、上記負荷圧力センサからの圧力を表す信号とに基づいて圧力指令を作成する。そして、この圧力指令と、ポンプポート圧力センサからのポンプポートの圧力とに基づいて、電動モータを駆動する信号を作成する。
【0017】
このように、上記圧力指令は、作動油の粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失に対応する圧力補償値で補償されているので、冬場などの気温の低いときでも、パワーシリンダのアシスト力が小さくなることがなくて、操舵者の操舵感が重くなることがなくて、操舵感がよい。
【0018】
また、例えば、夏季などの作動油の温度が高く、作動油の粘度が低くて、流動圧力損失が小さい場合には、それに応じて、圧力補償値が小さくなるので、圧力指令が過大になることがなくて、無駄に吐出圧力が過大になることがなく、省エネルギーを達成できる。
【0019】
1実施の形態は、
作動油の粘度に関連する物理量を検出するための粘度関連物理量検出部
を備え、
上記制御装置は、
上記粘度関連物理量検出部からの出力に基づいて、上記圧力補償値を求める。
【0020】
上記実施形態によれば、上記粘度関連物理量検出部は、作動油の粘度に関連する物理量を検出すると共に、上記制御装置は、この物理量に基づいて、作動油の流動圧力損失に対応する圧力補償値を求めるので、圧力補償値を正確に求めることができる。
【0021】
1実施形態では、
上記粘度関連物理量検出部は、
上記作動油の温度を検出する油温センサ
を含む。
【0022】
上記実施形態によれば、油温センサによって、作動油の粘度に関連する作動油の温度を検出することができる。したがって、上記実施形態によれば、簡単かつ正確に、作動油の温度から作動油の粘度を推測することができる。
【0023】
また、1実施形態では、
上記粘度関連物理量検出部は、
外気温を検出する外気温センサ
を含む。
【0024】
上記実施形態によれば、外気温センサで検出した外気温に基づいて、作動油の温度、粘度を推測することが可能である。
【0025】
また、1実施形態では、
上記粘度関連物理量検出部は、
上記電動モータが一定時間に消費した電力量を演算する電力量演算部
を含む。
【0026】
上記実施形態によれば、上記電力量演算部によって、電動モータが一定時間に消費した電力量を演算し、この電力量に基づいて作動油の温度、粘度を推測して、圧力補償値を定めることができる。
【0027】
また、1実施形態では、
上記粘度関連物理量検出部は、
外気温を検出する外気温センサ
を含み、
上記制御装置は、上記電力量演算部からの電力量と、上記外気温センサから出力された外気温とから、作動油の温度を推定して、上記圧力補償値を求める。
【0028】
上記実施形態によれば、上記電力量演算部からの電力量と、上記外気温センサから出力された外気温とから、作動油の温度を推定するので、正確に作動油の温度を推定して、正確に、圧力補償値を求めることができる。
【0029】
また、1実施形態では、
上記ポンプポート圧力センサは、上記粘度関連物理量検出部を兼ね、
上記制御装置は、
上記コントロールバルブが中立位置で、かつ、作動油を流していない状態で、上記電動モータの回転速度と、上記ポンプポート圧力センサが検出したポンプポートの圧力とにより、作動油の粘度を推定する作動油粘度推定部
を有し、
この作動油粘度推定部の出力に基づいて、上記圧力補償値を求める。
【0030】
上記実施形態によれば、コントロールバルブが中立位置で、かつ、作動油を流していない状態において、漏れ量が作動油の粘度に関係するから、作動油粘度推定部によって、電動モータの回転速度と、ポンプポートの圧力とにより、簡単、安価に、作動油の粘度を推定することができる。
【0031】
また、1実施形態は、
上記電動モータの回転位置または回転角度を検出する回転位置センサ
を備え、
上記制御装置は、
上記回転位置センサの出力と、上記圧力指令と、上記ポンプポートの圧力とに基づいて、上記電動モータを駆動する信号を作成して出力する。
【0032】
上記実施形態によれば、制御装置が、電動モータの回転位置または回転角度を検出する回転位置センサの出力と、圧力指令と、ポンプポートの圧力とに基づいて、電動モータを駆動する信号を作成するので、電動モータを、同期をとって、正確に制御することができる。
【0033】
また、1実施形態では、
上記負荷圧力センサは、
上記パワーシリンダの第1室の圧力を直接または間接に検出する第1室圧力センサと、
上記パワーシリンダの第2室の圧力を直接または間接に検出する第2室圧力センサと
を含み、
上記制御装置は、
上記第1室圧力センサから受けた第1室の圧力と上記第2室圧力センサから受けた第2室の圧力との差圧の絶対値に上記圧力補償値を加えて求めた圧力指令と、上記ポンプポート圧力センサから受けたポンプポートの圧力との偏差に基づいて、上記電動モータを駆動する信号を作成して出力する。
【0034】
上記実施形態によれば、コントロールバルブは、中立位置において、ポンプポートと、第1負荷ポートおよび第2負荷ポートとが連通し、かつ、タンクポートが閉鎖されると共に、制御装置は、第1室圧力センサから受けた第1室の圧力と第2室圧力センサから受けた第2室の圧力との差圧の絶対値に圧力補償値を加えて求めた圧力指令と、ポンプポート圧力センサから受けたポンプポートの圧力との偏差に基づいて、上記電動モータを駆動する信号を作成して出力する。
【0035】
したがって、直進走行時などのコントロールバルブの中立位置では、第1室と第2室の圧力が等しくなって、上記差圧の絶対値は約零となって、圧力指令は圧力補償値に等しくなって低圧となる。したがって、省エネルギーを達成できる。
【0036】
特に、車両の運転時間の大部分は、コントロールバルブが中立位置となる直進走行または停止時であるから、このパワーステアリング装置は省エネルギー効果が大きい。
【0037】
また、上記実施形態によれば、操舵輪が切り換えられて、コントロールバルブが切換位置にあるときは、制御装置は、第1室圧力センサから受けた第1室の圧力と第2室圧力センサから受けた第2室の圧力との差圧の絶対値に、作動油の粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値を加えて圧力指令を作成し、この圧力指令に、ポンプポートの圧力が等しくなるように、電動モータを制御するから、寒冷時などにおいても、パワーシリンダのアシスト力が不足することがなくて操舵感が重くなることがなく、また、夏季などにおいても、圧力指令が過大になることがなくて、省エネルギーを達成できる。
【0038】
また、1実施形態では、
上記制御装置は、
上記負荷圧力センサからの出力に基づいて求めた上記パワーシリンダの第1室の圧力または第2室の圧力のうちの最大の圧力に、上記圧力補償値を加えて求めた圧力指令と、上記ポンプポート圧力センサから受けたポンプポートの圧力とに基づいて、上記電動モータを駆動する信号を作成して出力する。
【0039】
上記実施形態によれば、上記制御装置は、負荷圧力センサからの出力に基づいて、パワーシリンダの第1室の圧力または第2室の圧力のうちの最大の圧力に、作動油の粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値を加えて、圧力指令を作成するので、寒冷時などにおいても、パワーシリンダのアシスト力が不足することがなくて操舵感が重くなることがなく、また、夏季などにおいて、圧力指令が過大になることがなくて、省エネルギーを達成できる。
【0040】
また、1実施形態では、
上記圧力補償値は、予め定められた複数の固定値から選択された1つの固定値である。
【0041】
上記実施形態によれば、予め定められた複数の固定値から、例えば、地域、気温等に応じて、1つの固定値を選択することによって、作動油の粘度に起因する流動損失を圧力補償値で補償することができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明によれば、省エネルギーを達成できる上に、操舵者にひっかかり感を与える可能性がなくて、スムーズにフィリング良く操舵を行うことができるパワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、この発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、この発明の第1実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。
【0045】
図1に示すように、このパワーステアリング装置は、操舵輪1に連なる入力軸2と出力軸3とを、弾性部材の一例としてトーションバー5により相対回転可能に連結している。上記出力軸3は、パワーシリンダ6のピストン7に連なる。このピストン7の両端面は、第1および第2室CA,CBを画成する。
【0046】
また、上記ピストン7の一側面には、ラック8を設け、このラック8に、ピットマンアーム10の一端に設けたセクタギヤ11を噛合している。したがって、上記パワーシリンダ6の作動により、ピットマンアーム10が揺動して、図示しないリンク機構を介して、両側の車輪の向きを変更できるようになっている。
【0047】
一方、コントロールバルブ15は、トーションバー5の弾性的なねじり変形、つまり、入力軸2と出力軸3との相対回転により切換作動する。上記コントロールバルブ15は、ポンプポートP、タンクポートT、第1負荷ポートAおよび第2負荷ポートBを有する。上記コントロールバルブ15は、中立位置S0で、ポンプポートPと、第1および第2負荷ポートA,Bとを連通すると共に、タンクポートTを閉鎖し、一方の切換位置S1で、ポンプポートPと第1負荷ポートAとを連通すると共に、タンクポートTと第2負荷ポートBとを連通し、他方の切換位置S2で、ポンプポートPと第2負荷ポートBとを連通すると共に、タンクポートTと第1負荷ポートAとを連通する。
【0048】
上記コントロールバルブ15のポンプポートPに油圧ポンプ31の吐出口をポンプライン33により接続し、タンクポートTにタンク32を接続し、第1および第2負荷ポートA,Bに夫々パワーシリンダ6の第1および第2室CA,CBを第1および第2負荷ライン36,38により接続している。
【0049】
図2は、上記パワーシリンダ6、コントロールバルブ15およびトーションバー5の機械的構成を具体的に示す図である。
【0050】
図2に示すように、上記パワーシリンダ6のシリンダ部16に、ピストン7を摺動自在に嵌合して、上記シリンダ部16内を第1室CAと第2室CBとに区画している。また、上記ピストン7の一側面にはラック8を形成し、このラック8にセクタギヤ11を噛合している。このセクタギヤ11およびピットマンアーム10の一部は、上記シリンダ部16の膨出部17内に収容している。
【0051】
一方、上記ピストン7の中心には盲穴18を形成し、この盲穴18内に、出力軸の一例としてのウォームシャフト3の小径部3aを配置している。上記ピストン7の盲穴18の内周面と、ウォームシャフト3の小径部3aとの間には、図示しないが、隙間があって、ピストン7の両端面の受圧面積は等しくなっている。
【0052】
また、上記ウォームシャフト3の小径部3aとピストン7の盲穴18とは、複数のボール19を介して螺合していて、上記ウォームシャフト3の小径部3aとピストン7と複数のボール19とでボールネジ機構を構成している。したがって、上記ウォームシャフト3の回転によって、ピストン7が軸方向に移動するようになっている。
【0053】
上記ウォームシャフト3の中心の貫通穴内には、弾性部材の一例としてのトーションバー5を配置し、このトーションバー5の一端とウォームシャフト3の小径部3aの先端とをピン20により連結している。上記トーションバー5の他端には、入力軸2を固定している。
【0054】
したがって、図1に示す操舵輪1により、上記入力軸2を回転すると、上記トーションバー5が弾性的にねじられて、出力軸としてのウォームシャフト3の小径部3aが入力軸2に対して相対回転して、上記ボールネジ機構によって、ピストン7を軸方向に移動させるようになっている。
【0055】
一方、上記シリンダ部16の端部にはバルブハウジング22を固定し、このバルブハウジング22内に、ウォームシャフト3の大径部3bを回転自在に嵌合している。このウォームシャフト3の大径部3bの内周面には、スリーブ21を固定している。このスリーブ21の内側には、入力軸2の外周に固定したロータ23を回転自在に嵌合している。上記バルブハウジング22とウォームシャフト3の大径部3bとスリーブ21とロータ23とで、上記コントロールバルブ15を構成している。
【0056】
上記バルブハウジング22には、上記油圧ポンプ31(図1参照)の吐出口に接続されるポンプポートPと、図示しないタンクポートTを形成している。また、上記スリーブ21には、パワーシリンダ6の第1室CAに連通する第1負荷ポートAと、パワーシリンダ6の第2室Cに通路24,25を介して連通する第2負荷ポートBとを形成している。上記通路24,25は、第2負荷ライン38を構成している。
【0057】
上記スリーブ21には、図3(a)に示すように、ポンプポートPに通じる3個の孔Pと、第1負荷ポートAに通じる3個の孔Aと、第2負荷ポートBに通じる3個の孔Bと、タンクポートTに通じる3個の孔Tとを形成している。上記孔Aと孔Pと孔Bと孔Tとは、周方向に、この順序で、1個ずつ配列し、3つの周期をなすように配置している。
【0058】
上記コントロールバルブ15は、図3(d)に示す中立位置S0では、スリーブ21とロータ23とは図3(b)に示す位置関係になり、左操舵時の左切換位置S1では、スリーブ21とロータ23とは図3(a)に示す位置関係になり、右操舵時の右切換位置S2では、スリーブ21とロータ23とは図3(c)に示す位置関係になる。
【0059】
図2および3に示すように、上記トーションバー5の弾性ねじり変形により、上記入力軸2と出力軸としてのウォームシャフト3とが相対回転すると、ウォームシャフト3の大径部3bに固定されたスリーブ21と入力軸2に固定されたロータ23とが相対回転して、コントロールバルブ15が切換作動されるようになっている。
【0060】
上記コントロールバルブ15のポンプポートPが第1または第2負荷ポートAまたはBに切換接続されて、第1室CAまたは第2室CBに高圧の作動油が供給されると、ピストン7が作動して、ラック8、セクタギヤ11を介して、ピットマンアーム10が駆動されて、操舵アシストが行われるようになっている。
【0061】
図1を再び参照して、上記油圧ポンプ31の吐出口とコントロールバルブ15のポンプポートPとを接続するポンプライン33に、ポンプポート圧力センサ35を接続している。また、上記コントロールバルブ15の第1負荷ポートAとパワーシリンダ6の第1室CAとを接続する第1負荷ライン36に、負荷圧力センサの一例としての第1室圧力センサ37を接続すると共に、上記コントロールバルブ15の第2負荷ポートBとパワーシリンダ6の第2室CBとを接続する第2負荷ライン38に、負荷圧力センサの一例としての第2室圧力センサ39を接続している。
【0062】
上記ポンプポート圧力センサ35、第1室圧力センサ37および第2室圧力センサ39の各々が検出した圧力を表す信号は、制御装置50に出力している。
【0063】
また、上記タンク32には、粘度関連物理量検出部の一例としての油温センサ41を設けている。この油温センサ41は、タンク32内の作動油の温度を検出して、作動油の温度を表す信号を制御装置50に出力する。
【0064】
上記油圧ポンプ31を電動モータ45で駆動し、この電動モータ45の回転位置または回転角を回転位置センサ46で検出している。
【0065】
なお、上記ポンプライン33には、リリーフ弁43を接続している。
【0066】
一方、上記制御装置50は、作動油粘度推定部51と、補償部52と、差圧絶対値算出部53と、第1加合わせ点54と、第2加合わせ点55と、PI(比例積分)制御部56と、インバータ制御部57と、インバータ主回路部58とを備えている。
【0067】
上記作動油粘度推定部51は、作動油の温度と作動油の粘度との関係を示すテーブルデータ(図4のグラフに示す)をメモリ内に持っていて、油温センサ41から作動油の温度を表す信号を受けて、作動油の粘度の推定値を出力する。
【0068】
尤も、上記作動油粘度推定部51は、テーブルデータに代えて、作動油の温度と作動油の粘度との関係を表す実験式などの数式を用い、その数式に作動油の温度を代入して、作動油の粘度の推定値を求めるものであってもよい。
【0069】
上記補償部52は、作動油の粘度と、この作動油の粘度に起因する流動圧力損失に対応する圧力補償値との関係を表すテーブルデータ(図5のグラフに示す)をメモリ内に持っていて、作動油粘度推定部51から作動油の粘度の推定値を表す信号を受けて、この作動油の粘度から圧力補償値をメモリから読み出す。上記圧力補償値とは、油圧ポンプ31からパワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBに至るまでの作動油の粘度に起因する流動圧力損失に相当する値である。
【0070】
尤も、上記補償部52は、テーブルデータに代えて、作動油の粘度と、流動圧力損失に対応する圧力補償値との関係を表す理論式または実験式等の数式を用い、その数式に作動油の粘度を代入して、圧力補償値を求めるものであってもよい。
【0071】
さらに、上記作動油粘度推定部51と補償部52とを統合して、作動油の粘度を介さないで、作動油の温度から、直接に、圧力補償値を求めることができるテーブルデータ、あるいは、実験式や理論式などの数式を用いてもよい。
【0072】
一方、上記差圧絶対値算出部53は、第1室圧力センサ37から第1室CAの圧力CAPを表す信号を受けると共に、第2室圧力センサ39から第2室CBの圧力CBPを表す信号とを受けて、第1室CAの圧力CAPと第2室CBの圧力CBPとの差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を算出する。この差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)は、パワーシリンダ6のアシスト力に応じた値である。
【0073】
上記第1加合わせ点54は、上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)と、上記圧力補償値とを加算して、加算値、つまり、圧力指令を第2加合わせ点55に出力する。上記圧力補償値は、油圧ポンプ31からパワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBに至るまでの作動油の粘度に起因する流動圧力損失に相当する値であるから、上記圧力指令は、作動油の粘度に起因する流動圧力損失があっても、現在のアシスト力、つまり、差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を得ることができる所望の油圧ポンプ31の吐出圧力を意味する値である。
【0074】
上記第2加合わせ点55は、第1加合わせ点54からの圧力指令から、ポンプポート圧力センサ35から入力されたポンプライン33の現在の圧力を減算して、減算値を得る。上記圧力指令が、油圧ポンプ31の所望の吐出圧力を意味し、ポンプポート圧力センサ35が検出した圧力は現在の油圧ポンプ31の吐出圧力を意味するから、上記減算値は、現在のアシスト力を得るための油圧ポンプ31の所望の吐出圧力と現実の吐出圧力との偏差を意味する。
【0075】
上記PI制御部56は、第2加合わせ点55から偏差を表す信号を受けて、速応性を確保し、定常偏差を無くするための周知の比例積分演算を行って、回転速度指令ωを作成して、インバータ制御部57に出力する。
【0076】
上記インバータ制御部57は、上記回転位置センサ46からの回転位置信号で同期をとりながら、上記回転速度指令ωに基づいて、上記所望の吐出圧力を得るためのスイッチング信号をインバータ主回路58に出力する。上記インバータ制御部57は、回転位置センサ46からの回転位置信号で同期をとりながら、スイッチング信号を出力するので、電動モータ45を、暴走することなく、精度高く回転速度を制御できる。
【0077】
上記インバータ主回路58は、駆動トランジスタとダイオードとのペアを6個有する周知のスイッチング回路であって、上記スイッチング信号に応じてスイッチングを行って、電動モータ45を駆動する。
【0078】
上記作動油粘度推定部51と、補償部52と、差圧絶対値算出部53と、第1加合わせ点54と、第2加合わせ点55と、PI制御部56と、インバータ制御部57は、マイクロコンピュータのソフトウェアで構成してもよく、あるいは、ディジタル回路で構成してもよく、あるいは、アナログ回路で構成してもよい。
【0079】
上記構成のパワーステアリング装置は次のように動作する。
【0080】
今、図1および3において、操舵輪1が中立状態から左方向に操舵されたとすると、入力軸2は、トーションバー5を弾性ねじり変形させて、ウォームシャフト3に対して相対回転し、コントロールバルブ15は切換位置S1に位置する。そうすると、コントロールバルブ15のポンプポートPが第1負荷ポートAに連通されて、油圧ポンプ31からの作動油が、ポンプポートP、第1負荷ポートAを介して、パワーシリンダ6の第1室CAに供給されるから、ピストン7が駆動されて、操舵補助力が得られる。このとき、パワーシリンダ6の第2室CB内の作動油は、第2負荷ポートB、タンクポートTを介してタンク32に排出される。
【0081】
一方、操舵輪1が中立状態から右方向に操舵されたとすると、入力軸2は、トーションバー5を弾性ねじり変形させて、ウォームシャフト3に対して相対回転し、コントロールバルブ15は切換位置S2に位置する。そうすると、コントロールバルブ15のポンプポートPが第2負荷ポートBに連通されて、油圧ポンプ31からの作動油が、ポンプポートP、第2負荷ポートBを介して、パワーシリンダ6の第2室CBに供給されるから、ピストン7が駆動されて、操舵補助力が得られる。このとき、パワーシリンダ6の第1室CA内の作動油は、第1負荷ポートA、タンクポートTを介してタンク32に排出される。
【0082】
次に、車両の停止時または直進走行時において、操舵輪1が中立状態にあるときは、コントロールバルブ15は中立位置S0にあって、ポンプポートPと、第1負荷ポートAおよび第2負荷ポートBとが連通し、かつ、タンクポートTが閉鎖される。そのため、コントロールバルブ15の中立位置S0では、パワーシリンダ6の第1室CAおよび第2室CBが、第1負荷ポートA、第2負荷ポートBおよびポンプポートPを介して油圧ポンプ31に接続されると共に、タンクポートTが閉鎖されているから、パワーシリンダ6の第1室CAおよび第2室CBは、作動油で充満されていると共に、第1室CAおよび第2室CB内の作動油がタンク32に漏れる恐れがない。
【0083】
したがって、操舵輪1を中立状態からの操舵によって、コントロールバルブ6を中立位置S0から切換位置S1またはS2に切り換えたときに、パワーシリンダ6の第1室CAおよび第2室CBは、作動油で完全に満たされていて、それらから作動油が漏れていないから、パワーシリンダ6の作動に遅れが生じる恐れがなくて、操舵者にいわゆるひっかかり感を与える恐れがない。
【0084】
また、操舵輪1の切り返し時、コントロールバルブ15が一方の切換位置S1またはS2から他方の切換位置S2またはS1になるまでに、中立位置S0を経るが、この中立位置S0では、第1負荷ポートAおよび第2負荷ポートBがポンプポートPに連通され、かつ、タンクポートTが閉鎖されるから、パワーシリンダ6の第1室CAおよび第2室CB内の作動油が瞬間的にタンク32に漏れる恐れがない。したがって、操舵輪1の切り返し時、パワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBが瞬間的にタンク32に連通することがなくて、パワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBの圧力が迅速に立ち上がって、パワーシリンダ6がスムーズに作動して、操舵者にいわゆるひっかかり感を与えることがない。
【0085】
次に、このパワーステアリング装置の圧力制御について説明する。
【0086】
今、車両の停止時または直進走行時であって、操舵輪1が操舵されなくて中立状態にあり、コントロールバルブ15が中立位置S0にあるとする。
【0087】
このとき、上記作動油粘度推定部51は、油温センサ41から作動油の温度を表す信号を受けて、作動油の温度の上昇に応じて低くなる作動油の粘度の推定値をメモリから読み出して、補償部52に出力する。
【0088】
上記補償部52は、作動油粘度推定部51から受けた作動油の粘度に基づいて、圧力補償値をメモリから読み出す。上記圧力補償値とは、油圧ポンプ31からパワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBに至るまでの作動油の粘度に起因する流動圧力損失に対応する値であり、粘度の上昇につれて高くなる値である。
【0089】
一方、上記差圧絶対値算出部53は、第1室圧力センサ37から受けた第1室CAの圧力CAPと、第2室圧力センサ39から受けた第2室CBの圧力CBPとの差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を算出する。今、コントロールバルブ15は中立位置S0にあって、ポンプポートPが第1負荷ポートAおよび第2負荷ポートBに連通しているから、第1室CAの圧力CAP≒第2室CBの圧力CBPであり、上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)≒0であり、アシスト力は零である。
【0090】
一方、第1加合わせ点54は、上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)と補償部52からの圧力補償値とを加算して圧力指令を作成する。上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)が、略零であるから、上記圧力指令は、圧力補償値、つまり、油圧ポンプ31からパワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBに至るまでの作動油の粘度に起因する流動圧力損失に相当する値に約等しい。
【0091】
第2加合わせ点55は、第1加合わせ点54からの上記流動圧力損失に相当する圧力指令と、ポンプポート圧力センサ35から入力されたポンプライン33の現在の圧力との偏差を算出して、PI制御部56に入力する。
【0092】
上記圧力指令が、油圧ポンプ31の所望の吐出圧力を意味し、かつ、上述の如く、上記流動圧力損失に相当する圧力補償値であるから、上記偏差は、圧力補償値と現実の吐出圧力との差である。
【0093】
上記PI制御部56は、第2加合わせ点55からの偏差について、比例積分演算を行って、回転速度指令ωを作成して、インバータ制御部57に出力する。
【0094】
上記インバータ制御部57は、上記回転位置センサ46からの回転位置信号で同期をとりながら、上記回転速度指令ωに基づいて、油圧ポンプ31から上記所望の吐出圧力、つまり、流動圧力損失に対応した圧力を得るためのスイッチング信号をインバータ主回路58に出力して、油圧ポンプ31を駆動する。
【0095】
このとき、油圧ポンプ31は、コントロールバルブ15が中立位置S0で、アシスト力が不要な状態であって、作動油の粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失に相当する値の低圧である吐出圧力を発生させるだけであるから、極低速で回転していることになる。なお、コントロールバルブ15が中立位置S0であっても、僅かな漏れが油圧回路から生じている。
【0096】
このように、車両の停止時または直進走行時であって、操舵輪1が操舵されなくて、コントロールバルブ15が中立位置S0にあるときは、油圧ポンプ31は、極低速で、流動圧力損失に相当する低圧の吐出圧力を発生させるから、エネルギーを無駄に消費することがない。
【0097】
特に、車両の運転時間の大部分は、コントロールバルブ15が中立位置S0となる直進走行または停止時であるから、このパワーステアリング装置は省エネルギー効果が大きい。
【0098】
次に、操舵輪1が、例えば、左に操舵されて、コントロールバルブ15が切換位置S1にあるとする。
【0099】
このとき、作動油粘度推定部51は、油温センサ41から作動油の温度を表す信号を受けて、作動油の温度の上昇に応じて低くなる作動油の粘度の推定値をメモリから読み出して、補償部52に出力する。
【0100】
上記補償部52は、作動油粘度推定部51から受けた作動油の粘度に基づいて、圧力補償値をメモリから読み出す。上記圧力補償値とは、油圧ポンプ31からパワーシリンダ6の第1室CAまたは第2室CBに至るまでの作動油の粘度に起因する流動圧力損失に対応する値であり、粘度の上昇につれて高くなる値である。
【0101】
一方、上記差圧絶対値算出部53は、第1室圧力センサ37から受けた第1室CAの圧力CAPと、第2室圧力センサ39から受けた第2室CBの圧力CBPとの差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を算出する。この差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)は、パワーシリンダ6のアシスト力に比例した値である。
【0102】
一方、第1加合わせ点54は、上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)と補償部52からの圧力補償値とを加算して圧力指令を作成する。上記差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)が、パワーシリンダ6のアシスト力に比例した値であり、かつ、上記圧力補償値が作動油の粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失に相当する値であるから、上記圧力指令は、パワーシリンダ6のアシスト力を得るために必要な差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)に対して、粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失分である圧力補償値を加算して、補正したものである。
【0103】
第2加合わせ点55は、第1加合わせ点54からの圧力指令から、ポンプポート圧力センサ35から入力されたポンプライン33の現在の圧力との偏差を算出して、PI制御部56に入力する。
【0104】
上記圧力指令が、油圧ポンプ31の所望の吐出圧力を意味するから、上記偏差は、油圧ポンプ31の所望の吐出圧力と現実の吐出圧力との差である。
【0105】
上記PI制御部56は、第2加合わせ点55からの偏差について、比例積分演算を行って、回転速度指令ωを作成して、インバータ制御部57に出力する。
【0106】
上記インバータ制御部57は、上記回転位置センサ46からの回転位置信号で同期をとりながら、上記回転速度指令ωに基づいて、油圧ポンプ31から上記所望の吐出圧力を得るためのスイッチング信号をインバータ主回路58に出力して、油圧ポンプ31を駆動する。
【0107】
このとき、油圧ポンプ31は、パワーシリンダ6のアシスト力を得るために必要な差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)と、粘度の増大に応じて大きくなる流動圧力損失分である圧力補償値とを加算して得られた圧力指令に応じた吐出圧力になるように、回転数が制御されている。
【0108】
したがって、寒冷時などにおいて、作動油の温度が低くなって、作動油の粘度が高くなって、流動圧力損失が大きくなっても、圧力指令が、粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値で補償されているので、操舵輪1の操舵感が重くなることがなくて、操舵感がよい。
【0109】
さらに、夏期などの作動油の温度が高くて、作動油の粘度が低くて、流動圧力損失が小さい場合には、圧力指令が、粘度の低下に応じて小さくなる圧力補償値で補償されているので、油圧ポンプ31に吐出圧力が過大になることがなくて、省エネルギーが達成される。
【0110】
操舵輪1が、右に操舵されて、コントロールバルブ15が切換位置S2に位置したときの圧力制御も、操舵輪1が、左に操舵されて、コントロールバルブ15が切換位置S1に位置したときの上述の圧力制御と同様である。
【0111】
第1実施形態によれば、油温センサ41によって、作動油の粘度に関連する作動油の温度を検出しているので、簡単かつ正確に、作動油の温度から作動油の粘度を推測することができる。
【0112】
なお、上述の差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)に対する最適な圧力補償値は、作動油の粘度のみならず、油圧回路の配管長さ、操舵速度によって異なる。しかし、パワーステアリング装置の配管長さはそれ固有の固定値であるから、配管長さに関する圧力損失は定数として定めておくことができ、また、操舵速度は標準的速度であるとすることによって、上述の如く、圧力補償値を粘度のみの変数とすることが可能である。
【0113】
一例として、常温で、最大流量12L/min、最大差圧12.5MPaのパワーステアリング装置で、圧力補償値が0.5MPa以下では、操舵力が大きくなって、操舵感が重くなって悪くなり、圧力補償値が0.5MPaを越えると、操舵感が悪くなることがなかった。
【0114】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。図6において、図1に示す第1実施形態のパワーステアリング装置の構成部と同一構成部については、図1の構成部と同一参番号を付して、それらの構成および作用の詳しい説明は省略し、異なる構成部のみについて、以下に説明する。
【0115】
図6のパワーステアリング装置は、図1のパワーステアリング装置の油温センサ41および制御装置50に代えて、外気温センサ48と制御装置60を用いた点のみが、図1のパワーステアリング装置と異なる。
【0116】
上記外気温センサ48は、粘度関連物理量検出部の一例であって、このパワーステアリング装置の雰囲気温度を検出する。
【0117】
上記制御装置60は、作動油粘度推定部51、補償部52、差圧絶対値算出部53、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58を備える。これらは、図1の制御装置50の作動油粘度推定部51、補償部52、差圧絶対値算出部53、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58と同じ構成で、同じ動作を行う。
【0118】
上記制御装置60は、粘度関連物理量検出部の一例としての電力量演算部61と、上昇油温推定部62と、第3加合わせ点63とを備える。上記電力量演算部61、上昇油温推定部62および第3加合わせ点63は、例えば、マイクロコンピュータのソフトウェアまたはディジタル回路で構成される。
【0119】
上記電力量演算部61は、インバータ主回路部58から受けた電動モータ45の電圧および電流を表す信号から、図7(A)に示すように、瞬間、瞬間の電力(W)を求め、さらに、図7(B)に示すように、この電力を単位時間、例えば、30分、時間積分して、電力量(Wh)を求める。この電力量(Wh)は、電動モータ45の消費したエネルギー、つまり、油圧ポンプ31の仕事量に関連し、上記電力量が多いほど、作動油の温度が上昇する。
【0120】
上記単位時間は、このパワーステアリング装置の全体の作動油の熱容量の大小に応じて、適宜、長短に定められる。
【0121】
上記上昇油温推定部62は、電力量と上昇油温との関係を示すテーブルを予め記憶しているメモリから、電力量演算部61から受けた電力量に基づいて、上昇油温を読み出すようになっている。尤も、予め作成された実験式により、電力量演算部61から受けた電力量に基づいて、上昇油温を演算で求めるようにしてもよい。
【0122】
上記第3加合わせ点63は、外気温センサ48から受けた外気温と、上昇油温推定部62から受けた上昇油温を加算して、作動油の温度を算出して、作動油粘度推定部51に出力する。
【0123】
以下、第1実施形態と全く同様に、作動油の粘度を求め、圧力補償値を求め、差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を求め、圧力指令を求め、回転速度指令ωを求めて、電動モータ46の制御を行う。
【0124】
この第2実施形態でも、圧力指令が、粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値で補償されているので、寒冷時などにおいて、作動油の粘度が高くなって、流動圧力損失が大きくなっても、操舵輪1の操舵感が重くなることがなくて、操舵感がよい。
【0125】
また、夏期などの作動油の温度が高くて、作動油の粘度が低くて、流動圧力損失が小さい場合には、圧力指令が、粘度の低下に応じて小さくなる圧力補償値で補償されているので、油圧ポンプ31に吐出圧力が過大になることがなくて、省エネルギーが達成される。
【0126】
また、第2実施形態によれば、電力量演算部61からの電力量と、外気温センサ48から出力された外気温とから、作動油の温度を推定するので、正確に作動油の温度を推定して、正確に、圧力補償値を求めることができる。
【0127】
図8は、第2実施形態の変形例を示すブロック図である。
【0128】
この変形例では、作動油温度推定部66は、図8のグラフに示す関係を表すテーブルをメモリに予め記憶しており、外気温センサ48から受けた外気温と、電力量演算部61から受けた電力量とから、上記テーブルを参照して、直接、作動油の温度の推定値を求めることができるようになっている。
【0129】
上記第2実施形態では、電力量演算部61と、上昇油温推定部62と、第3加合わせ点63を備えていたが、これらを除去して、外気温センサ48からの外気温のみで、つまり、外気温に作動油の温度が等しいとする粗い推定をおこなってもよい。
【0130】
この場合、図示しないが、外気温センサ48の出力が直接作動油粘度推定部51に入力されることになる。
【0131】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。図9において、図1に示す第1実施形態のパワーステアリング装置の構成部と同一構成部については、図1の構成部と同一参番号を付して、それらの構成および作用の詳しい説明は省略し、異なる構成部のみについて、以下に説明する。
【0132】
図9のパワーステアリング装置は、図1のパワーステアリング装置の油温センサ41および制御装置50に代えて、制御装置70を用い、ポンプポート圧力センサ35を粘度関連物理量検出部としても機能させた点のみが、図1のパワーステアリング装置と異なる。
【0133】
上記制御装置70は、補償部52、差圧絶対値算出部53、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58を備える。これらは、図1の制御装置50の補償部52、差圧絶対値算出部53、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58と同じ構成で、同じ動作を行う。
【0134】
上記制御装置70は、作動油粘度推定部71を備える。この作動油粘度推定部71は、第1室圧力センサ37,第2室圧力センサ39およびポンプポンプポート圧力センサ35の検出した圧力が全て同じであるときに、コントロールバルブ15が中立位置S0にあると判断して、次のようにして、作動油の粘度を推定する。
【0135】
ところで、コントロールバルブ15が中立位置S0にあるときには、基本的に、漏れに相当する流量のみが流れている。したがって、電動モータ11の回転数が一定であるとき、作動油の粘度が高いと、漏れが少ないため、ポンプポートPの圧力が高くなる一方、作動油の粘度が低いと、漏れが多いため、ポンプポートPの圧力が低くなる。上記作動油粘度推定部71は、この関係を利用して、作動油の粘度を推定する。
【0136】
上記作動油粘度推定部71は、図10に示すように、コントロールバルブ15が中立位置S0にあるときにおいて、流量、つまり、電動モータ45の回転数(rpm)およびポンプポートPの圧力に対して、作動油の粘度を表すテーブルをメモリに予め記憶している。そして、上記作動油粘度推定部71は、インバータ制御部57から受ける電動モータ11の回転数を表す信号とポンプポンプポート圧力センサ35から受けるポンプポートPの圧力に基づいて、上記テーブルを参照して、作動油の粘度の推定値を求める。
【0137】
以下、第1実施形態と全く同様に、圧力補償値を求め、差圧の絶対値ABS(CAP−CBP)を求め、圧力指令を求め、回転速度指令ωを求めて、電動モータ46の制御を行う。
【0138】
この第3実施形態でも、圧力指令が、粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値で補償されているので、寒冷時などにおいて、作動油の粘度が高くなって、流動圧力損失が大きくなっても、操舵輪1の操舵感が重くなることがなくて、操舵感がよい。
【0139】
また、夏期などの作動油の温度が高くて、作動油の粘度が低くて、流動圧力損失が小さい場合には、圧力指令が、粘度の低下に応じて小さくなる圧力補償値で補償されているので、油圧ポンプ31の吐出圧力が過大になることがなくて、省エネルギーが達成される。
【0140】
また、第3実施形態によれば、コントロールバルブ15が中立位置S0で作動油を流していない状態において、漏れ量が作動油の粘度に関係するから、作動油粘度推定部71によって、電動モータ45の回転速度と、ポンプポートPの圧力とにより、簡単、安価に、作動油の粘度を推定することができる。
【0141】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。図11において、図1に示す第1実施形態のパワーステアリング装置の構成部と同一構成部については、図1の構成部と同一参番号を付して、それらの構成および作用の詳しい説明は省略し、異なる構成部のみについて、以下に説明する。
【0142】
図11のパワーステアリング装置は、図1のパワーステアリング装置の制御装置50に代えて、制御装置80を用いた点のみが、図1のパワーステアリング装置と異なる。
【0143】
上記制御装置80は、作動油粘度推定部51、補償部52、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58を備え、これらは、図1の制御装置50の作動油粘度推定部51、補償部52、第1加合わせ点54、第2加合わせ点55、PI制御部56、インバータ制御部57およびインバータ主回路部58と同じ構成で、同じ動作を行う。上記制御装置80は、制御装置50とは、差圧絶対値算出部53に代えて最大圧力選択部83を備える点のみが異なる。
【0144】
上記最大圧力選択部83は、第1室圧力センサ37から受けた第1室CAの圧力CAPと、第2室圧力センサ39から受けた第2室CBの圧力CBPとのうちで最大の圧力MAX(CAP,CBP)を選択して、この最大の圧力MAX(CAP,CBP)を第1加合わせ点54に出力する。
【0145】
上記第1加合わせ点54では、上記最大の圧力MAX(CAP,CBP)と、補償部52からの圧力補償値とを加算して圧力指令を作成し、この圧力指令を第2加合わせ点55に出力する。
【0146】
以下、第1実施形態と全く同様に、回転速度指令ωを求めて、電動モータ46の制御を行う。
【0147】
この第4実施形態でも、圧力指令が、粘度の増大に応じて大きくなる圧力補償値で補償されているので、寒冷時などにおいて、作動油の粘度が高くなって、流動圧力損失が大きくなっても、操舵輪1の操舵感が重くなることがなくて、操舵感がよい。
【0148】
また、夏期などの作動油の温度が高くて、作動油の粘度が低くて、流動圧力損失が小さい場合には、圧力指令が、粘度の低下に応じて小さくなる圧力補償値で補償されているので、油圧ポンプ31に吐出圧力が過大になることがなくて、省エネルギーが達成される。
【0149】
この第4実施形態では、第1室圧力センサ37、第2室圧力センサ39および
最大圧力選択部83を用いたが、これらを用いないで、図示しないシャトル弁で第1室CAの圧力または第2室CBの圧力のうちの最大圧力を選択するようにしてもよい。
【0150】
図示していないが、メモリに、流動損失に対応する複数の固定値を予め記憶しておき、そして、製造者、運転者などが、例えば、地域、気温等に応じて、1つの固定値を、流動損失に対応する圧力補償値として選択するようにしてもよい。そして、この圧力補償値によって、作動油の粘度に起因する流動損失を補償することができる。
【0151】
また、上記第1乃至4実施形態では、弾性部材としてトーションバー5を用いたが、コイルスプリング等を用いてもよい。
【0152】
また、図2に示す構造のパワーシリンダ6に代えて、公知の種々の構造のパワーシリンダを用いてもよいのは、勿論である。例えば、従来例(特許第2735743号)のように、ピストンロッドにラックを設け、このラックにピニオンギヤを噛合し、パワーシリンダでピニオンギヤを駆動して、操舵をアシストするものであってもよい。
【0153】
また、油圧ポンプ31としては、ギヤポンプ、ベーンポンプ等、どのようなポンプを用いてもよい。
【0154】
また、図1において、第1室圧力センサ37は、第1負荷ライン36の圧力を検出することによってパワーシリンダ6の第1室CAの圧力を間接的に検出し、第2室圧力センサ39は、第2負荷ライン38の圧力を検出することによってパワーシリンダ6の第2室CBの圧力を間接的に検出するようにしていたが、第1室圧力センサおよび第2室圧力センサを夫々第1室および第2室に直接設けて、第1室および第2室の圧力を直接検出するようにしてもよい。
【0155】
また、ポンプポート圧力センサは、ポンプポートの作動油の圧力を直接検出しないで、電動モータの45の駆動電流から、間接的に、ポンプポートの作動油の圧力を検出してもよい。
【0156】
また、電動モータ45の回転位置と、スイッチング信号との同期をとらない場合には、回転位置センサ46を省略してもよい。
【0157】
また、第1乃至3実施形態のうちの1つの実施形態のパワーステアリング装置の構成要素であって、他の実施形態のパワーステアリング装置に用いることができる構成要素は、その他の実施形態のパワーステアリング装置に用いてもよいことは勿論である。
【0158】
例えば、粘度関連物理量検出部は、第1乃至3実施形態のものを単独で用いる他、それらを種々組み合わせて用いてもよい。例えば、始動時には、図6の外気温センサ48からの信号のみで、作動油の粘度を推定し、その後は、図9の作動油粘度推定部71によって、電動モータ45の回転速度とポンプの吐出圧力とによって、作動油の粘度を推定してもよい。また、例えば、第1乃至4実施形態、変形例のうちの複数、あるいは、全ての方法で作動油の粘度を推定し、それらの粘度のうち、最大の粘度または最小の粘度を選択してもよく、あるいは、それらの粘度の平均値を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】この発明の第1実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。
【図2】この発明の第1実施形態のパワーステアリング装置のパワーシリンダの断面図である。
【図3】この発明の第1実施形態のパワーステアリング装置のコントロールバルブを説明する図であり、(a)、(b)、(c)は断面図、(d)はシンボル図である。
【図4】第1実施形態の作動油粘度推定部のテーブルデータを示す線図である。
【図5】第1実施形態の補償部テーブルデータを示す線図である。
【図6】この発明の第2実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。
【図7】電力量の演算を説明する図であり、(A)は時間−電力図、(B)時間−電力量図である。
【図8】第2実施形態の変形例の作動油温度推定部のテーブルデータを示す線図である。
【図9】この発明の第3実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。
【図10】第3実施形態の作動油粘度推定部のテーブルデータを示す線図である。
【図11】この発明の第4実施形態のパワーステアリング装置の模式図である。
【符号の説明】
【0160】
1 操舵輪
2 入力軸
3 出力軸
5 トーションバー
6 パワーシリンダ
7 ピストン
15 コントロールバルブ
31 油圧ポンプ
35 ポンプポート圧力センサ
36 第1室圧力センサ
37 第2室圧力センサ
41 油温センサ
45 電動モータ
46 回転位置センサ
48 外気温センサ
50,60,70,80 制御装置
61 電力量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪(1)に連なる入力軸(2)と、
出力軸(3)と、
上記入力軸(2)と出力軸(3)とを相対回転可能に連結する弾性部材(5)と、
ピストン(7)の両側に第1室(CA)と第2室(CB)を有すると共に、操舵アシスト力を発生するパワーシリンダ(6)と、
油圧ポンプ(31)と、
上記パワーシリンダ(6)の第1および第2室(CA,CB)に、第1および第2負荷ポート(A,B)が夫々接続される一方、ポンプポート(P)が上記油圧ポンプ(31)に接続されると共に、タンクポート(T)がタンク(32)に接続され、かつ、上記入力軸(2)と出力軸(3)との相対回転により切換作動されるコントロールバルブ(15)と、
上記コントロールバルブ(15)のポンプポート(P)の圧力を直接または間接に検出するポンプポート圧力センサ(35)と、
上記パワーシリンダ(6)の第1室(CA)の圧力および第2室(CB)の圧力のうちの最大の圧力を検出するため、あるいは、上記第1室(CA)の圧力および第2室(CB)の圧力の両方を検出するための負荷圧力センサ(37,39)と、
上記油圧ポンプ(31)を駆動する電動モータ(45)と、
上記電動モータ(45)の駆動を制御する制御装置(50,60,70,80)と、
を備え、
上記コントロールバルブ(15)は、
中立位置(S0)で、上記ポンプポート(P)を、上記第1および第2負荷ポート(A,B)に連通すると共に、上記タンクポート(T)を閉鎖し、
上記制御装置(50,60,70,80)は、
上記油圧ポンプ(31)から上記第1室(CA)または第2室(CB)に至るまでの作動油の流動圧力損失に関連する圧力補償値と、上記負荷圧力センサ(37,39)からの圧力を表す信号とに基づいて圧力指令を求め、この圧力指令と上記ポンプポート圧力センサ(35)から受けたポンプポートの圧力とに基づいて、上記電動モータ(45)を駆動する信号を作成して出力する
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
作動油の粘度に関連する物理量を検出するための粘度関連物理量検出部(41,48,61,35)
を備え、
上記制御装置(50,60,70,80)は、
上記粘度関連物理量検出部(41,48,61,35)からの出力に基づいて、上記圧力補償値を求める
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーステアリング装置において、
上記粘度関連物理量検出部は、
上記作動油の温度を検出する油温センサ(41)
を含む
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパワーステアリング装置において、
上記粘度関連物理量検出部は、
外気温を検出する外気温センサ(48)
を含む
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載のパワーステアリング装置において、
上記粘度関連物理量検出部は、
上記電動モータ(45)が一定時間に消費した電力量を演算する電力量演算部(61)
を含む
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーステアリング装置において、
上記粘度関連物理量検出部は、
外気温を検出する外気温センサ(48)
を含み、
上記制御装置(60)は、上記電力量演算部(61)からの電力量と、上記外気温センサ(48)から出力された外気温とから、作動油の温度を推定して、上記圧力補償値を求める
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項2に記載のパワーステアリング装置において、
上記ポンプポート圧力センサ(35)は、上記粘度関連物理量検出部を兼ね、
上記制御装置(70)は、
上記コントロールバルブ(15)が中立位置(S0)で、かつ、作動油を流していない状態で、上記電動モータ(45)の回転速度と、上記ポンプポート圧力センサ(35)が検出したポンプポート(P)の圧力とにより、作動油の粘度を推定する作動油粘度推定部(71)
を有し、
この作動油粘度推定部(71)の出力により上記圧力補償値を求める
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のパワーステアリング装置において、
上記電動モータ(45)の回転位置または回転角度を検出する回転位置センサ(46)
を備え、
上記制御装置(50,60,70,80)は、
上記回転位置センサ(46)の出力と、上記圧力指令と、上記ポンプポート(P)の圧力とに基づいて、上記電動モータ(45)を駆動する信号を作成して出力する
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載のパワーステアリング装置において、
上記負荷圧力センサは、
上記パワーシリンダ(6)の第1室(CA)の圧力を直接または間接に検出する第1室圧力センサ(37)と、
上記パワーシリンダ(6)の第2室(CB)の圧力を直接または間接に検出する第2室圧力センサ(39)と
を含み、
上記制御装置(50,60,70)は、
上記第1室圧力センサ(37)から受けた第1室(CA)の圧力と上記第2室圧力センサ(39)から受けた第2室(CB)の圧力との差圧の絶対値に上記圧力補償値を加えて求めた圧力指令と、上記ポンプポート圧力センサ(35)から受けたポンプポート(P)の圧力との偏差に基づいて、上記電動モータ(45)を駆動する信号を作成して出力する
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1つに記載のパワーステアリング装置において、
上記制御装置(80)は、
上記負荷圧力センサ(37,39)からの出力に基づいて求めた上記パワーシリンダ(6)の第1室(CA)の圧力または第2室(CB)の圧力のうちの最大の圧力に、上記圧力補償値を加えて求めた圧力指令と、上記ポンプポート圧力センサ(35)から受けたポンプポートの圧力との偏差に基づいて、上記電動モータ(45)を駆動する信号を作成して出力する
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項11】
請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
上記圧力補償値は、予め定められた複数の固定値から選択された1つの固定値である
ことを特徴とするパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−255869(P2009−255869A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110230(P2008−110230)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】