説明

パワーモジュールの冷却構造

【課題】パワーモジュールからの熱伝導効率を向上させて冷却性能を向上させることができるパワーモジュールの冷却構造を提供する。
【解決手段】電流が流れることで熱が発生する電子部品を搭載したパワーモジュール1を伝熱部材2に実装し、この伝熱部材2を介してパワーモジュール1の発生熱をインバータケース11に放熱する。伝熱部材2には、パワーモジュール1の実装面21の反対側に突出する膨出部22を設け、この膨出部22をインバータケース11の内面に面接触させて接着し、伝熱部材2とインバータケース11との間の接触熱抵抗を低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の熱が発生する電子部品を搭載したパワーモジュールでは、電子部品の発生熱を伝熱部材を介して冷却器側に伝えて放熱するようになっている。例えば、特許文献1には、半導体素子と伝熱ブロック(冷却器)との間に、熱伝導ディスク(伝熱部材)を介設した半導体実装モジュールが示されている。
【0003】
この場合の熱伝導ディスクは、外側二面を湾曲させて断面略三角柱状に形成し、V字状に凹設した伝熱ブロックに前記熱伝導ディスクの外側二面を線接触させ、その線接触部分を介して半導体素子の発生熱を熱伝導ディスクを介して伝熱ブロックに伝熱させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表特許 WO89/12319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来のパワーモジュールの冷却構造においては、熱伝導ディスクと伝熱ブロックとの接触は線接触となるため、面接触に比較して伝熱しにくく、冷却能力が劣るという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる従来の不具合に鑑みて、パワーモジュールからの熱伝導効率を向上させて冷却性能を向上させることができるパワーモジュールの冷却構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパワーモジュールの冷却構造にあっては、電流が流れることで発熱する電子部品を搭載したパワーモジュールを伝熱部材に取り付け、該伝熱部材を冷却器に接合することにより、前記パワーモジュールの発生熱を前記伝熱部材を介して冷却器に伝導させて放熱する。そして、前記伝熱部材に、前記実装面の反対側に向けて膨出する膨出部を設け、該膨出部を前記冷却器に面接触させた状態で伝熱部材を冷却器に接合させたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伝熱部材に設けた膨出部を冷却器に面接触させたので、これら伝熱部材と冷却器との間の接触熱抵抗が低下して熱伝導効率が向上し、パワーモジュールの冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第2の実施形態を示す断面図である。
【図4】図4は、第2の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第3の実施形態を示す断面図である。
【図6】図6は、第3の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第4の実施形態を示す断面図である。
【図8】図8は、第4の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第5の実施形態を示す断面図である。
【図10】図10は、第5の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第6の実施形態を示す断面図である。
【図12】図12は、第6の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第7の実施形態を示す断面図である。
【図14】図14は、第7の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第8の実施形態を示す断面図である。
【図16】図16は、第8の実施形態におけるパワーモジュールの取付部分を拡大して示す斜視図である。
【図17】図17は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第9の実施形態を示す要部断面図である。
【図18】図18は、本発明にかかるパワーモジュールの冷却構造の第10の実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、モータMのインバータ10に適用された場合を例に取って説明するものとするが、本発明はこれに限定されない。
[第1の実施形態]
【0011】
図1および図2は、本発明にかかるパワーモジュール1の冷却構造の第1の実施形態を示している。
【0012】
パワーモジュール1は、図示省略した半導体素子などの電流が流れることによって熱が発生する電子部品が実装されており、前記電子部品の発生熱によってパワーモジュール1が熱を帯びることになる。本実施形態では、スイッチング素子またはダイオード若しくはこれら両者が実装されてパワーモジュール1が構成されており、本実施形態では、パワーモジュール1が所定厚みを持った矩形状の薄板として構成されるが、その形状は矩形状に限定されない。そして、パワーモジュール1の発生熱は、伝熱部材2を介してインバータ10の筺体であるインバータケース11が冷却器として作用して放熱されることにより、パワーモジュール1が冷却される。
【0013】
伝熱部材2は、パワーモジュール1の発生熱をインバータケース11に伝熱する機能を有し、この伝熱部材2における実装面21にパワーモジュール1が実装される。
【0014】
インバータケース11は、外側面に多数の放熱フィン12が設けられており、インバータケース11に伝わった熱は、放熱フィン12によって大気中に放熱されて冷却される。
【0015】
ここで、本実施形態では、伝熱部材2における実装面21の反対側に向けて膨出する膨出部22を設け、この膨出部22の接合面をインバータケース11の内面に面接触させるようにしている。このとき、伝熱部材22の接合面は接着剤3によってインバータケース11に接着される。
【0016】
パワーモジュール1の取付部位は、インバータケース11の内側に設けられる凹所となる隅部13であり、膨出部2は隅部13に沿った断面形状となる。このとき、パワーモジュール1は、図1に示すように、モータMから遠ざかる側の隅部13に配置することが好ましい。
【0017】
つまり、隅部13は天壁11aと側壁11bとが成す内角が直角となっており、隅部13に沿うように膨出部2は断面が直角三角形となる三角柱状に形成されている。以下、パワーモジュール1が取り付けられる隅部13の天壁11aおよび側壁11b部分の取付面を隅部13の内面というものとする。
【0018】
このように断面直角三角形とした膨出部2は、直角部の頂点Tを稜線とする二面22a、22bが接合面となり、この接合面がインバータケース11の内面に面接触した状態で接着剤3を介して接合されている。なお、本実施形態の膨出部2の断面形状は直角二等辺三角形となっており、二面22a、22bの面積は等しくなっている。
【0019】
ところで、このようにインバータケース11の隅部13の内面形状に沿って形成された膨出部2は、頂点Tの反対側の面が実装面21となることから、実装面21に実装されたパワーモジュール1は、隅部13に対して対向配置された状態となる。
【0020】
従って、本構成では、パワーモジュール1の発生熱は、伝熱部材2を介してインバータケース11に伝熱され、そして、このインバータケース11から放熱フィン12によって大気中に放熱される。このとき、伝熱部材12の膨出部22は三角柱状に形成されて、二面22a、22bがインバータケース11の内面に面接触している。従って、その面接触した二面22a、22bからインバータケース11に伝熱されることにより、パワーモジュール1が冷却される。
【0021】
以上説明したように、第1の実施形態の冷却構造によれば、伝熱部材2に設けた膨出部22を、放熱フィン21によって放熱機能を有するインバータケース11に面接触させてある。これにより、これら伝熱部材2とインバータケース11との間の接触熱抵抗を低下することができ、パワーモジュール1の冷却性能を向上できる。
【0022】
また、膨出部22によって放熱面積が拡大するため、パワーモジュール1とインバータケース11との間の熱抵抗を略均一化でき、これにより伝熱量を効率良く分散できる。この点からも冷却性能の更なる向上を達成できる。
【0023】
更に、このように冷却性能を向上できるにもかかわらず、伝熱部材2にインバータケース11と面接触する膨出部22のみを設ければよく、その構造を簡素化できる。特に、本実施形態では、膨出部22が単に断面三角形状となる三角柱状となっているので、伝熱部材2の構造が簡単となって安価で容易に製作できる。
【0024】
更にまた、本実施形態によれば、パワーモジュール1を収納したインバータケース11を冷却器とし、伝熱部材2を三角柱状として、膨出部22をインバータケース11の隅部13に沿った形状としてある。これにより、膨出部22の二面22a、22bがインバータケース11に面接触するので、伝熱部材2とインバータケース11との間の接触熱抵抗が低下し、簡単な構造をもって冷却性能を向上できる。
【0025】
また、本実施形態によれば、三角柱状となった伝熱部材2の頂点Tの反対側の面が実装面21となるため、パワーモジュール1が隅部13に対して対向配置された状態となる。これにより、パワーモジュール1から膨出部22の二面22a、22bを介してインバータケース11の内面に至る熱抵抗を均一化できる。従って、パワーモジュール1からインバータケース11に至る伝熱量を膨出部22の二面22a、22b方向に分散でき、これにより放熱面積が拡大されて冷却性能を向上できる。
【0026】
なお、本実施形態では、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の隅部13を除く一般部分の内側に設けた凹部を前記凹所としてもよい。勿論、この場合は、その凹部の内面に、膨出部22の接合面を面接触させて接着することになる。
【0027】
また、本実施形態では、隅部13の内面を成す天壁11aと側壁11bとの内角が直角である場合を示したが、直角で無い場合にあっても本発明を適用することができる。即ち、このように直角で無い場合は、膨出部22の断面形状を、直角三角形ではなく、隅部13の内角に応じて鈍角三角形や鋭角三角形として二面22a、22bを面接触させればよい。
[第2の実施形態]
【0028】
図3および図4は、本発明の第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0029】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、伝熱部材2Aは、一対の分割体2A1,2A2からなり、これらの分割体2A1,2A2の間に前記パワーモジュール1が挟持されてなることである。
【0030】
即ち、本実施形態では1つの隅部13に対して2つの分割体2A1,2A2が設けられ、それら2つの分割体2A1,2A2でパワーモジュール1をサンドイッチ状に挟み込んでいる。そして、パワーモジュール1および伝熱部材2Aが隅部13に取り付けられる。この場合に、本実施形態ではパワーモジュール1の両面は互いに平行面として形成されている。
【0031】
本実施形態にあっても、2つの分割体2A1,2Aはそれぞれの膨出部22の断面形状が直角二等辺三角形となっており、それぞれの実装面21にパワーモジュール1の両面が実装された状態となる。そして、伝熱部材2Aを隅部13に取り付ける際には、各膨出部22の両面22a、22bのうちいずれか一方の面、本実施形態では面22aが接合面となり、隅部13を成すインバータケース11の内面に面接触して接着される。なお、この場合、伝熱部材2Aをインバータケース11に取り付ける接合面は他方の面22bであってもよい。また、2つの分割体2A1,2Aは、パワーモジュール1を挟んで対称に配置されている。
【0032】
従って、第2の実施形態の冷却構造によれば、パワーモジュール1の発生熱を伝熱部材2Aを介してインバータケース11に伝熱できる。これにより、パワーモジュール1の両面を効率良く冷却できるので、パワーモジュール1とインバータケース11との間の熱抵抗を更に低下でき、冷却性能の更なる向上を達成できる。
【0033】
また、本実施形態では、パワーモジュール1が2つの分割体2A1,2Aに挟み込まれた状態で、それら分割体2A1,2Aがインバータケース11の内面に接着されている。つまり、パワーモジュール1は、両面が2つの分割体2A1,2Aによって拘束されることになる。従って、2つの分割体2A1,2Aは、パワーモジュール1の熱膨張および熱収縮するのを抑制するので、温度変化により生ずる熱応力を緩和することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、パワーモジュール1の両面が平行で無い場合にも適用でき、この場合は、伝熱部材2Aの実装面21をパワーモジュール1の面に沿って傾斜させておけばよい。
【0035】
また、本実施形態にあっても、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の一般部内側に設けた凹部であってもよい。勿論、この場合は、その凹部の内面に、2つの分割体2A1,2Aの膨出部22に設けられた二面22a、22bのいずれか一方を面接触させて接着することになる。
[第3の実施形態]
【0036】
図5および図6は、本発明の第3の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0037】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、パワーモジュール1の面方向を隅部13を形成する内面に対して直交する方向に配置したことにある。そして、伝熱部材2Bを2つの分割体2B1,2B2から構成し、これらの分割体2B1,2B2の間にパワーモジュール1を挟持させている。
【0038】
即ち、本実施形態にあっても第1の実施形態と同様に、1つの隅部13に対して2つの分割体2B1,2B2が設けられ、それら2つの分割体2B1,2B2でパワーモジュール1をサンドイッチ状に挟み込むようになっている。また、本実施形態にあってもパワーモジュール1の両面は互いに平行面として形成されている。
【0039】
ところで、本実施形態の分割体2B1,2B2は、図6に示すように、断面がパワーモジュール1の外側形状に沿った矩形状(本実施形態では正方形)となり、かつ、所定の厚みtをもって形成されている。従って、伝熱部材2Bの膨出部22は直方体状として形成され、2つの分割体2B1,2B2における対向面がパワーモジュール1の実装面21となっている。
【0040】
また、本実施形態では、短四角柱状となった膨出部22の4つの外側面22c、22d、22e、22fのうち、隣り合う2つの面22c、22dがインバータケース11の隅部13の内面に面接触して接着される接合面となる。なお、接合面は、前記外側面22c、22d、22e、22fのうち、隣り合ういずれか2面であればよい。
【0041】
従って、第3の実施形態の冷却構造によれば、第2の実施形態と同様にパワーモジュール1の発生熱を、これの両面に配置した分割体2B1,2B2を介してインバータケース11に伝熱できる。これにより、パワーモジュール1の両面を効率良く冷却でき、冷却性能の更なる向上を達成できる。
【0042】
また、本実施形態では、パワーモジュール1の面方向を隅部13を形成する内面に対して直交する方向に配置している。これにより、パワーモジュール1が熱膨張および熱収縮した場合でも、温度変化により生ずる熱応力を緩和することができる。
【0043】
なお、本実施形態にあっても、パワーモジュール1の両面が平行で無い場合にも適用でき、この場合は、伝熱部材2Bの実装面21をパワーモジュール1の面に沿って傾斜させておけばよい。
【0044】
また、本実施形態にあっても、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の一般部内側に設けた凹部であってもよい。勿論、この場合は、2つの分割体2B1,2B2における膨出部22の4つの外側面22c、22d、22e、22fのうち、隣り合う2つの面を凹部の内面に面接触させて接着することになる。
[第4の実施形態]
【0045】
図7および図8は、本発明の第4の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0046】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、このパワーモジュール1に搭載される電子部品が、発熱量が大きな高発熱部品1Pと、この高発熱部品1Pに比較して発熱量が小さな低発熱部品1Qとを備えたことにある。この場合、電子部品は半導体素子であり、高発熱部品1Pは、例えばIGBT等のスイッチング素子であり、低発熱部品1Qは例えばダイオードである。
【0047】
そして、伝熱部材2Cは、パワーモジュール1の実装面21と、膨出部22のインバータケース11に取り付けられる接合面である二面22a、22bとの成す角度を、高発熱部品1Pが配置された側を低発熱部品1Qが配置された側よりも大きくしてある。これにより、前記高発熱部品1Pと凹所である隅部13の谷線13V(頂部)との距離を、前記低発熱部品1Qと前記谷線13V(頂部)との距離よりも小さく設定している。
【0048】
即ち、本実施形態では、伝熱部材2Cは、第1の実施形態と同様に断面が直角三角形(ただし、二等辺直角三角形では無い)の三角柱状として形成され、実装面21の傾斜方向に高発熱部品1Pと低発熱部品1Qとが並設されている。そして、第1の実施形態と同様に、膨出部22の二面22a、22bがインバータケース11の隅部13の内面に面接触して接着される。
【0049】
本実施形態では、高発熱部品1Pは実装面21の一方の面22bに近い側(図中下方)に配置され、低発熱部品1Qは実装面21の他方の面22aに近い側(図中上方)に配置されている。そして、パワーモジュール1の実装面21と、膨出部22の二面22a、22bとの成す角度は、高発熱部品1Pの搭載側をθ1とし、低発熱部品1Qの搭載側をθ2とすると、θ1>θ2としてある。
【0050】
従って、第4の実施形態の冷却構造によれば、伝熱部材2Cの膨出部22の断面形状が直角不等辺三角形となって、二面22a、22bが隅部13の内面に面接触しているので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0051】
これに加えて本実施形態では、高発熱部品1Pの搭載側の角度θ1が低発熱部品1Qの搭載側の角度θ2よりも大きくなっているので、高発熱部品1Pの搭載位置を低発熱部品1Qの搭載位置よりも隅部13(凹所)の谷線13V(頂部)により近づけることができる。これにより、高発熱部品1P側の熱量の分散効果が増大し、パワーモジュール1全体の冷却性能を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態にあっても、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の一般部内側に設けた凹部であってもよい。勿論、この場合は、その凹部の内面に、伝熱部材2Cの膨出部22の二面22a、22bを面接触させて接着することになる。このとき、実装面21と二面22a、22bとの成す角度を、高発熱部品1Pが配置された側を低発熱部品1Qが配置された側よりも大きくしておけばよい。
【0053】
また、本実施形態にあっても、隅部13の内角が直角で無い場合にあっても本発明を適用することができる。この場合は、膨出部22の断面形状を、直角三角形ではなく、隅部13の内角に応じて鈍角三角形や鋭角三角形として二面22a、22bを面接触させておけばよい。
[第5の実施形態]
【0054】
図9および図10は、本発明の第5の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0055】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、伝熱部材2Dの膨出部22の断面形状を台形状としたことにある。
【0056】
即ち、本実施形態の膨出部22は、上底が22i、下底が実装面21、側面が22g、22hとなる等脚台形の断面に形成される。この場合の脚辺に対応した側面22g、22hは、それぞれの延長面が直交するようになっており、それら両側面22g、22hは隅部13の内面に面接触して接着される接合面に形成されている。
【0057】
従って、第5の実施形態の冷却構造によれば、伝熱部材2Dの膨出部22が断面台形状となって、両側面22g、22hが隅部13の内面に面接触しているので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0058】
更に、本実施形態では、これに加えて膨出部22の断面が台形状となることにより、隅部13の谷線13V部分に空隙を設けることができる。これにより、インバータケース11をろう接して隅部13にフィレットが存在する場合にも、このフィレットを逃げて両側面22g、22hを隅部13の内面に確実に面接触させることができる。つまり、面接触が確実に行われることにより、冷却性能の向上を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態にあっても、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の一般部内側に設けた凹部であってもよい。勿論、この場合は、その凹部の内面に、伝熱部材2Dの断面台形状とした膨出部22の側面22g、22hを面接触させて接着することになる。
【0060】
また、本実施形態にあっても、隅部13の内角が直角で無い場合にあっても本発明を適用することができる。この場合は、膨出部22の断面形状は、パワーモジュール1が隅部13の谷部13Vに対向する場合はやはり等脚台形となるが、両側面22g、22hの延長面は隅部13の内角に応じた角度で交わるようにしておけばよい。これにより、それら 両側面22g、22hを隅部13の内面に面接触させて接着することができる。
[第6の実施形態]
【0061】
図11および図12は、本発明の第6の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0062】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、伝熱部材2Eの膨出部22の断面形状を多角形状、とりわけ四角形以上の多角形状としたことにある。
【0063】
即ち、本実施形態の膨出部22は、膨出する方向に向かう両側に、第1の側面22i、第2の側面22jおよび第3の側面22kを備えた断面七角形として形成されている。
【0064】
一方、インバータケース11の隅部13は、その内面が膨出部22の第2の側面22jおよび第3の側面22kに沿った断面形状に形成されている。そして、膨出部22の突出先端側の両側に配置される第2の側面22jと第3の側面22kとを、隅部13の内面に面接触させて接着する接合面に形成してある。
【0065】
従って、第6の実施形態の冷却構造によれば、断面七角形状となった膨出部22の第2の側面22jおよび第3の側面22kが、隅部13の内面に面接触しているので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0066】
更に、本実施形態では、伝達部材2Eの膨出部22の断面形状が四角形以上の多角形となっているので、断面形状が三角形や台形の場合に比較して熱抵抗をより均一化でき、冷却性能の更なる向上を達成できる。
[第7の実施形態]
【0067】
図13および図14は、本発明の第7の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0068】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、伝熱部材2Fの膨出部22は、突出先端部である隅部13との接合面を断面円弧状としたことにある。
【0069】
即ち、本実施形態の膨出部22は、実装面21から突出される所定高さの両側面22mと、これら両側面22mの先端間を結ぶ凸状の円弧面22nとによって断面が略蒲鉾状に形成されている。そして、この円弧面22nが接合面に形成されている。
【0070】
一方、インバータケース11の隅部13は、内面が膨出部22の突出先端部の円弧面22nに沿った断面形状に形成されている。そして、膨出部22の突出先端部の円弧面22nを、隅部13の内面に面接触させて接着してある。
【0071】
従って、第7の実施形態の冷却構造によれば、突出先端部の断面形状が円弧状となった膨出部22の円弧面22nを、隅部13の内面に面接触させてあるので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0072】
更に、本実施形態では、伝達部材2Fの膨出部22の断面形状は、突出先端部の外側が円弧状となっているので、多角形にした場合に比較して円弧面22nでの熱抵抗をより均一化できるため、冷却性能の更なる向上を達成できる。
[第8の実施形態]
【0073】
図15および図16は、本発明の第8の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0074】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、伝熱部材2Gの膨出部22に、パワーモジュール1の実装面21に対して交差する方向に延びるスリット23を形成したことにある。従って、このスリット23は、インバータケース11の隅部13の谷線13Vに向けて延在する。
【0075】
即ち、本実施形態の伝熱部材2Gは、第1の実施形態と同様に断面が直角三角形(この場合、二等辺直角三角形)の三角柱状として形成され、膨出部22の二面22a、22bがインバータケース11の隅部13の内面に面接触して接着されている。勿論、本実施形態では、隅部13の内面を成す天壁11aと側壁11bとが直交されている。
【0076】
そして、前述したスリット23は、断面が直角三角形となった膨出部22の頂点Tから実装面21に下ろした垂線に沿って所定深さで形成される。つまり、スリット23は、パワーモジュール1から隅部13の内面に至る熱流方向と平行な方向に形成されている。このとき、スリット23の最深部と実装面21との間には、所定厚みで肉厚が残存されている。これにより、膨出部22は、残存肉厚部を残してスリット23によって二面22a、22b方向に二分割された状態となる。勿論、これら二面22a、22bは隅部13の内面に面接触して接着される接合面に形成されている。
【0077】
従って、第8の実施形態の冷却構造によれば、伝熱部材2Gの膨出部22が断面三角形状となって、二面22a、22bが隅部13の内面に面接触しているので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0078】
更に、本実施形態では、これに加えて膨出部22に、パワーモジュール1の実装面21に対して交差(本実施形態では、直交)する方向に沿ってスリット23が延設されている。これにより、パワーモジュール1から放熱面までの熱量を妨げること無く冷却性能を確保した状態で、温度変化により生ずる熱応力をスリット23で吸収し、パワーモジュール1への熱負荷を軽減できる。
【0079】
また、本実施形態にあっても、凹所がインバータケース11の隅部13である場合を示したが、これに限ることなくインバータケース11の一般部内側に設けた凹部であってもよい。勿論、この場合は、その凹部の内面に、伝熱部材2Cの膨出部22の二面22a、22bを面接触させて接着することになる。
【0080】
更に、本実施形態にあっても、隅部13の内角が直角で無い場合にあっても本発明を適用することができる。この場合は、膨出部22の断面形状を、直角三角形ではなく、隅部13の内角に応じて鈍角三角形や鋭角三角形として二面22a、22bを面接触させておけばよい。
[第9の実施形態]
【0081】
図17は、本発明の第9の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0082】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第1の実施形態と主に異なる点は、冷却器としての冷却壁100が、凹所としてのV字状の凹部101を設けることにより山型に形成され、その凹部101に伝熱部材2Hを介してパワーモジュール1を配置したことにある。この場合の冷却壁100は、前記各実施形態に示したインバータケース11に限ることは無く、パワーモジュール1の取り付けが可能で、冷却機能を有する支持壁であればよい。
【0083】
本実施形態の凹部101は、内面の内角が直角に形成され、凹部101内に、膨出部22の断面が直角三角形に形成された伝熱部材2Hを介してパワーモジュール1が取り付けられるようになっている。勿論、伝熱部材2Hは、パワーモジュール1を実装する実装面21を有し、実装面21から断面三角形状に突出する膨出部22の二面22a、22bは、凹部101の内面に面接触して接着剤3により接着される接合面に形成されている。
【0084】
また、冷却壁100は、パワーモジュール1が取り付けられた側とは反対側が冷媒Rが流通する冷媒通路102となっている。そして、伝熱部材2Hを介してパワーモジュール1の熱が伝熱された冷却壁100は、冷媒Rと積極的に熱交換されて冷却される。
なお、本実施形態では、複数の凹部101が設けられた場合を示すが、1つの凹部101であってもよい。
【0085】
従って、第9の実施形態の冷却構造によれば、伝熱部材2Hは、膨出部22が断面三角形状に形成されて、二面22a、22bが凹部101の内面に面接触しているので、放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散が可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、各凹部101で熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を向上できる。
【0086】
また、これに加えて冷却壁100を山型に形成したので、凹部101を複数設けることができ、所定面積当たりのパワーモジュール1の搭載効率を高めることができる。
【0087】
更に、このように複数のパワーモジュール1を搭載した場合にも、本実施形態では冷却壁100に冷媒通路102が設けられていることにより、複数のパワーモジュール1によって発生する高熱を冷媒Rによって効率良く冷却できる。
【0088】
なお、本実施形態では凹部101の内角が鈍角や鋭角であっても適用することができ、この場合は、膨出部22の断面形状を凹部101の内角に沿って形成し、二面22a、22bを面接触させておけばよい。
[第10の実施形態]
【0089】
図18は、本発明の第10の実施形態を示し、第9の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0090】
本実施形態のパワーモジュール1の冷却構造が第9の実施形態と主に異なる点は、凹部101Aの断面形状が半円状に形成されたことにある。これに伴い伝熱部材2Iの膨出部22は、凹部101Aの内面形状に沿って断面半円状となり、伝熱部材2Iの実装面21とは反対側の接合面が円弧面22pとなっている。そして、この断面半円状となった凹部101Aの内面に、伝熱部材2Iの膨出部22が面接触して接着されている。
【0091】
また、本実施形態にあっても、凹部101Aを設けることにより冷却壁100Aは山型に形成されており、かつ、その冷却壁100Aのパワーモジュール1が取り付けられた側とは反対側が冷媒通路102Aとなっている。
【0092】
従って、第10の実施形態の冷却構造によれば、第9の実施形態と同様にパワーモジュール1の取付効率を高めることができる。また、伝熱部材2Iの膨出部22が断面半円状の凹部101Aに面接触しているので、第1の実施形態と同様に熱伝達経路の熱抵抗を低下して冷却性能を高めることができる。
【0093】
これに加えて本実施形態では、伝熱部材2Iが円弧面22pで凹部101Aの内面に面接触しているため、第9の実施形態と比較して放熱面積の拡大と放熱面までの伝熱量分散をより促進できる。これにより、円弧面22pでの熱抵抗をより均一化できるため、冷却性能の更なる向上を達成できる。勿論、冷媒通路102Aを流通する冷媒Rによって、冷却壁100Aを効率良く冷却できることは言うまでもない。
【0094】
ところで、本発明のパワーモジュールの冷却構造は、前述した各実施形態に例を取って説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。例えば、伝熱部材の膨出部の断面形状は、前記各実施形態に示したもの以外にも冷却器に面接触可能な形状であればよい。
【符号の説明】
【0095】
1 パワーモジュール
1P 高発熱部品
1Q 低発熱部品
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2I 伝熱部材
3 接着剤
10 インバータ
11 インバータケース(冷却器)
11a 天壁(凹所を形成する面)
11b 側壁(凹所を形成する面)
13 隅部(凹所)
13V 谷線(頂部)
21 実装面
22 膨出部
22a、22b 二面(膨出部の冷却器に取り付けられる面)
23 スリット
100、100A 冷却壁(冷却器)
101、101A V字状の凹部(凹所)
θ1、θ2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることで発熱する電子部品を搭載したパワーモジュールと、該パワーモジュールを実装面に取り付けた伝熱部材と、該伝熱部材を接合した冷却器と、を備え、前記パワーモジュールの発生熱を前記伝熱部材を介して冷却器に伝導させて放熱するパワーモジュールの冷却構造であって、
前記伝熱部材に、前記実装面の反対側に向けて膨出する膨出部を設け、該膨出部を前記冷却器に面接触させた状態で伝熱部材を冷却器に接合させたことを特徴とするパワーモジュールの冷却構造。
【請求項2】
前記冷却器は、前記パワーモジュールを収納した筺体であり、該筺体は凹所を有し、前記膨出部の接合面を前記凹所に沿った形状とし、これら接合面と凹所とを面接触させたことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項3】
前記パワーモジュールを前記凹所に対して対向配置させたことを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項4】
前記伝熱部材は、一対の分割体からなり、これらの分割体の間に前記パワーモジュールが挟持されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項5】
前記パワーモジュールの面方向を前記凹所を形成する面に対して直交する方向に配置したことを特徴とする請求項4に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項6】
前記電子部品は、発熱量が大きな高発熱部品と、該高発熱部品に比較して発熱量が小さな低発熱部品とを有しており、前記高発熱部品と前記凹所の頂部との距離を、前記低発熱部品と前記凹所の頂部との距離よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項7】
前記膨出部の断面形状は、三角形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項8】
前記膨出部の断面形状は、台形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項9】
前記膨出部の断面形状は、四角形以上の多角形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項10】
前記膨出部は、冷却器との接合面が断面円弧状となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。
【請求項11】
前記膨出部は、前記パワーモジュールの実装面に対して交差する方向に延びるスリットを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のパワーモジュールの冷却構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−69959(P2013−69959A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208546(P2011−208546)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】