説明

パワーユニット支持構造

【課題】 パワーユニット支持構造を改良することで、車体フレームの振動をより小さくする。
【解決手段】 縦置きのエンジン22を備えるパワーユニット21を、車体フレーム11に設けたマウントブラケット131で支持したパワーユニット支持構造において、マウントブラケット131を、車体フレーム11を構成する車体前後方向に延びる左右一対のセンタサイドフレーム51,51の間のほぼ車幅方向中央に配置し、センタサイドフレーム51,51の左右をクロスメンバ71,73で連結し、これらのクロスメンバ71,73に防振材としての連結部材133を介してマウントブラケット131を取付け、このマウントブラケット131にサブフレーム76を介してパワーユニット21を取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニット支持構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の駆動源の支持構造として、車体フレームの左右にゴムマウント装置を介してエンジンを取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3522834号公報
【0003】
特許文献1の図2には、左右の車体フレームFにそれぞれ支持ブラケット2f,2rを取付け、これらの支持ブラケット2f,2rにゴムマウント装置ML,MRを介してエンジンEの下部を取付けたことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンEには、クランクシャフトが回転したときのトルク変動により回転振動が発生する。このエンジンEの回転振動は、回転振動の中心から遠ざかるにつれて変位量が大きくなる。上記の支持ブラケット2f,2rは回転振動の中心(例えば、エンジンEの重心)から遠い位置にあれば、支持ブラケット2f,2rの変位量は大きくなり、車体フレームFが大きく振動することになる。
【0005】
本発明の目的は、パワーユニット支持構造を改良することで、車体フレームの振動をより小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、縦置きのエンジンを備えるパワーユニットを、車体フレームに設けた支持ブラケットで支持したパワーユニット支持構造において、支持ブラケットを、車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間のほぼ車幅方向中央に配置し、メインフレームの左右をクロスメンバで連結し、このクロスメンバに防振材を介して支持ブラケットを取付け、この支持ブラケットにパワーユニット支持サブフレームを介してパワーユニットを取付けたことを特徴とする。
【0007】
支持ブラケットを左右一対のメインフレーム間の車幅方向中央に配置したことで、左右一対のメインフレーム間にパワーユニットを配置したときに、パワーユニットのほぼ中央を支持ブラケットで支持することが可能になり、支持ブラケットがパワーユニットの回転振動の中心位置に近くなって、パワーユニットの変位量の小さな箇所を支持ブラケットで支持でき、パワーユニットから車体フレームへ振動が伝わりにくい。
【0008】
また、パワーユニットを取付けたパワーユニット支持サブフレームを支持ブラケットで支持することで、パワーユニットをほぼ車幅方向中央に容易に配置することが可能になる。
【0009】
更に、メインフレームで支持ブラケットを介してパワーユニットを支持する場合には、支持ブラケットの設計自由度がパワーユニットサイズ、メインフレーム位置によって制約を受けるが、パワーユニット支持サブフレームを用いることで、上記の制約が受けにくくなり、支持ブラケットの設計自由度が増す。更に、ゴムによって、パワーユニット支持サブフレームから左右のメインフレームに伝わる振動を吸収する。
【0010】
請求項2に係る発明は、縦置きのエンジンを備えるパワーユニットを、車体フレームに設けた支持ブラケットで支持したパワーユニット支持構造において、支持ブラケットを、車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間に配置し、且つ支持ブラケットを車体の前後に配置し、これらの前後の支持ブラケットを結んだ線の近傍にパワーユニットの重心が位置することを特徴とする。
【0011】
支持ブラケットを、左右一対のメインフレーム間に且つパワーユニットの重心近傍に設けることで、例えば、パワーユニットが重心を中心にして回転振動する場合には、重心と支持ブラケットとの距離が近接し、パワーユニットの変位の小さい箇所を支持ブラケットで支持することが可能になる。
【0012】
請求項3に係る発明は、支持ブラケットを、防振材を介してパワーユニット側に取付けたことを特徴とする。
防振材によって、パワーユニットからメインフレーム側に伝わる振動を吸収することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、パワーユニット支持サブフレームの車体への支持を車体前後方向のみとしたことを特徴とする。
車体前後方向のみでパワーユニット支持サブフレームを車体側で支持し、縦置きのエンジンにより発生する車体前後方向に延びる軸周りの回転振動を効果的に吸収する。
【0014】
請求項5に係る発明は、支持ブラケットに対して高さ方向へオフセットした位置に、パワーユニットを支持するパワーユニット支持部を設けたことを特徴とする。
パワーユニット支持部でパワーユニットのトルク反力を受けることが可能になる。
【0015】
請求項6に係る発明は、パワーユニット支持サブフレームに延出部を介して支持ブラケットを取付けたことを特徴とする。
延出部によって、パワーユニット支持サブフレーム上のパワーユニットに干渉しない位置に支持ブラケットを取付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、支持ブラケットを、車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間のほぼ車幅方向中央に配置し、メインフレームの左右をクロスメンバで連結し、このクロスメンバに防振材を介して支持ブラケットを取付け、この支持ブラケットにパワーユニット支持サブフレームを介してパワーユニットを取付けたので、パワーユニットの回転振動の中心近傍に支持ブラケットを設けることができ、パワーユニットの変位の小さい箇所でパワーユニットを支持することができて、パワーユニットから車体フレームへ伝わる振動をより小さくすることができる。
【0017】
また、パワーユニット支持サブフレームによってパワーユニットをほぼ車幅方向中央に容易に配置でき、パワーユニットを変位の小さい箇所で支持できて、車体フレームの振動を小さくすることができる。
【0018】
更に、パワーユニット支持サブフレームを用いることで、パワーユニットサイズ、メインフレーム位置の制約が受けにくくなり、支持ブラケットの設計自由度を増すことができる。更に、ゴムによって、パワーユニット支持サブフレームから左右のメインフレームに伝わる振動を吸収することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、支持ブラケットを、車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間に配置し、且つ支持ブラケットを車体の前後に配置し、これらの前後の支持ブラケットを結んだ線の近傍にパワーユニットの重心が位置するので、パワーユニットの回転振動の中心のより近い位置に支持ブラケットを設けることができ、パワーユニット回転振動の変位の小さい箇所でパワーユニットを支持することができて、車体フレームの振動をより小さくすることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、支持ブラケットを、防振材を介してパワーユニット側に取付けたので、防振材でパワーユニットの振動を吸収することができ、車体フレームの振動をより小さくすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、パワーユニット支持サブフレームの車体への支持を車体前後方向のみとしたので、縦置きのエンジンにより発生する車体前後方向に延びる軸周りの回転振動を効果的に吸収することができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、支持ブラケットに対して高さ方向へオフセットした位置にパワーユニット支持部を設けたので、パワーユニット支持部でパワーユニットのトルク反力を受けることができ、パワーユニットの支持剛性を向上させることができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、パワーユニット支持サブフレームに延出部を介して支持ブラケットを取付けたので、延出部によって、パワーユニット支持サブフレーム上のパワーユニットに干渉しない位置に支持ブラケットを取付けることができ、組付性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るパワーユニット支持構造を備えた車両の側面図であり、車両10は、車体フレーム11(フロントフレーム12、センタフレーム13及びリヤフレーム14からなる。)と、左右の前輪18,18と、センタフレーム13及びリヤフレーム14に取付けたパワーユニット21(エンジン22及び変速機23からなる。)と、エンジン22へ空気及び燃料を供給するためにエンジン22の後方に設けた吸気装置26と、エンジン22の前部から後方へ延ばした排気装置27と、リヤフレーム14の上部に傾斜可能に取付けた荷台28と、左右の後輪31,31とを備える二人乗りの四輪駆動車である。
吸気装置26は、エンジン22側に接続したスロットルボディ33と、このスロットルボディ33に接続したエアクリーナ35とを備える。
【0025】
パワーユニット21は、エンジン22のクランクシャフト(不図示。詳細は後述する。)を車体前後方向に延びるように配置した、即ち、エンジン22を縦置きとしたものである。
【0026】
ここで、37は燃料タンク、38はパワーユニット21側と客室側とを隔てる上側隔壁、39はパワーユニット21側と車体の左右縁部側とを隔てる左右一対のサイド隔壁(手前側の符号39のみ示す。)、40は上記の燃料タンク37、上側隔壁38、左右のサイド隔壁39,39で囲まれるエンジンルーム、41はフロントカバー、42はハンドル、43,44(手前側の符号43のみ示す。)はセンタフレーム13に取付けた左右のシート、46,46(手前側の符号46のみ示す。)はリヤフェンダ、47,47(手前側の符号47のみ示す。)はセンタフレーム13に立てた左右のロールバー、48,48(手前側の符号48のみ示す。)はフロントフレーム12とロールバー47,47に渡したアッパフレーム、49,49(手前側の符号49のみ示す。)はテールランプである。
【0027】
図2は本発明に係る車両の平面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、車体フレーム11のセンタフレーム13に左右一対のセンタサイドフレーム51,51を設け、これらのセンタサイドフレーム51,51にシートフレーム部材52を取付け、このシートフレーム部材52に左右のシート43,44を取付け、また、車体フレーム11のリヤフレーム14に左右一対のリヤサイドフレーム54,54を設け、これらのリヤサイドフレーム54,54間に平面視で、吸気装置26を構成するエアクリーナ本体56と、排気装置27を構成するマフラ57を配置したことを示す。
【0028】
シートフレーム部材52は、シート43,44を支持するシート支持プレート65,65と、これらのシート支持プレート65,65を連結する連結フレーム66と、各シート支持プレート65から側方に突出させた側部フレーム67とからなり、側部フレーム67は、荷台28の前部とで肘掛け(不図示)を支持する。
リヤフレーム14は、左右一対のリヤサイドフレーム54,54に荷台28を取付けた部材である。
【0029】
燃料タンク37はシート43,44の下方に且つ車幅方向に延びるように配置した部品である。
上側隔壁38は、車体左右方向の幅を左右のセンタサイドフレーム51,51の間隔とほぼ同一とし、車両前後方向の長さを平面視でほぼパワーユニット21が隠れる長さとした部材である。サイド隔壁39は、センタサイドフレーム51の側面にほぼ沿って配置した部材である。
【0030】
図3は本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部側面図であり、センタフレーム13の左右のセンタサイドフレーム51,51(手前側の符号51のみ示す。)のそれぞれの下面にフロントクロスメンバ71を渡して取付け、このフロントクロスメンバ71にエンジンマウント72を取付け、リヤフレーム14の左右のリヤサイドフレーム54,54(手前側の符号54のみ示す。)のそれぞれの下面にリヤクロスメンバ73を渡して取付け、このリヤクロスメンバ73にエンジンマウント74を取付け、これらのエンジンマウント72,74にサブフレーム76を取付け、このサブフレーム76にパワーユニット21を取付けたことを示す。
エンジンマウント72,74は同一構造のものであるが、ここでは識別のために符号を異ならせた。
【0031】
サブフレーム76は、フレーム本体78と、このフレーム本体78の前後にそれぞれ斜め上方に延びるように取付けた延出部81,82と、フレーム本体78の左右に起立するようにそれぞれ設けた起立部83,84(手前側の符号83のみ示す。)とからなり、延出部81を前側のエンジンマウント72に取付け、延出部82を後側のエンジンマウント74に取付け、起立部83,84にパワーユニット21に設けた側方突出部21a,21b(手前側の符号21aのみ示す。)を取付ける。
【0032】
車体フレーム11は、センタサイドフレーム51,51の後端部から立ちあげた左右一対のメインバーチカルフレーム86,87(手前側の符号86のみ示す。)と、これらのメインバーチカルフレーム86,87のそれぞれの上部突出部86a,87a(手前側の符号86aのみ示す。)にブラケット88,88(手前側の符号88のみ示す。)を介して連結した左右一対のリヤサイドアッパフレーム91,92(手前側の符号91のみ示す。)と、メインバーチカルフレーム86,87のそれぞれの下部突出部86b,87b(手前側の符号86bのみ示す。)にブラケット93,93(手前側の符号93のみ示す。)を介して連結した前述のリヤサイドフレーム54,54とを備える。
【0033】
ここで、95,96(手前側の符号95のみ示す。)はサブバーチカルフレーム、97,98(手前側の符号97のみ示す。)はアッパフレーム、101,102(手前側の符号101のみ示す。)はミドルフレームである。
【0034】
図4は本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部斜視図であり、車体フレーム11の右側面を構成するメインバーチカルフレーム87及びミドルフレーム102に支持台105を設け、この支持台105にパワーユニット21のトルク反力を受けるエンジンマウント106を取付け、このエンジンマウント106をブラケット107を介してパワーユニット21、詳しくは、エンジン22のシリンダ部22aに取付けたことを示す。なお、109は左右のメインバーチカルフレーム86,87に渡して取付けたアッパクロスパイプである。
起立部84は、前起立部84Fと後起立部84Rとからなる。
エンジンマウント106は、前述のエンジンマウント72,74と基本構造は同一なものである。
【0035】
図5は本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部平面図であり、サブフレーム76は、左右のセンタサイドフレーム51,51間のほぼ中央に配置したものであり、フレーム本体87(太線で示した部分である。)は、4本のフレーム部材113〜116で枠を形成し、フレーム部材115,116間にフレーム部材117を斜めに渡し、フレーム部材113に延出部81を取付け、フレーム部材114に延出部82を取付けたものである。なお、110はパワーユニット21の重心(不図示。詳細は後述する。)を通るとともに車体前後方向に延びる直線、118はエンジンマウント72,74をフロントクロスメンバ71、リヤクロスメンバ73に取付けるボルト、119はクランクシャフト(不図示。詳細は後述する。)の軸線である。
【0036】
延出部81は、エンジンマウント72を左右から挟むように支持する左延出部81L及び右延出部81Rからなる。
延出部82は、エンジンマウント74を左右から挟むように支持する左延出部82L及び右延出部82Rからなる。
【0037】
図6は本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部背面図であり、車体フレーム11の車幅方向(図の左右方向)のほぼ中央にエンジンマウント72,74(手前側の符号74のみ示す。)を設け、これらのエンジンマウント72,74でサブフレーム76を弾性支持し、このサブフレーム76の左右にそれぞれ起立部83,84(手前側の符号84のみ示す。)を設け、これらの起立部83,84にパワーユニット21の左右下部(側方突出部21a,21b)を取付け、車体フレーム11に設けた支持台105にエンジンマウント106を取付け、このエンジンマウント106をブラケット107を介してパワーユニット21の上部、即ち、エンジン22のシリンダ部22aに取付けたことを示す。
図中の120はエンジン22のクランクシャフト、125はパワーユニット21の重心125を表す。
【0038】
図7(a),(b)は本発明に係るエンジンマウントの説明図である。
(a)は側面図であり、エンジンマウント74は、リヤクロスメンバ73(図3参照)側に取付ける鋼板製のマウントブラケット131と、延出部82(図3参照)側に取付ける鋼製の内筒132と、これらのマウントブラケット131及び内筒132のそれぞれの間に設けた弾性部材からなる連結部材133と、マウントブラケット131の内面の上部及び下部から突出させた弾性部材からなる上部突出部134及び下部突出部136と、マウントブラケット131の上部に取付けた鋼板製の上部部材137とからなる。
上記エンジンマウント74は液封マウントとしてもよい。
【0039】
マウントブラケット131は、リヤクロスメンバ73に取付ける側面視L字形状のベースブラケット141と、このベースブラケット141に取付けたほぼ筒状とした外筒142とからなる。なお、141a,141aはリヤクロスメンバ73に取付けるためのボルトを通す取付穴である。
【0040】
連結部材133は、外筒142と内筒132とをハの字状に連結する2本の連結体133a,133aからなり、これらの連結体133a,133aのそれぞれの端部は内筒132の外周面を覆う環状部133bを形成する。連結部材133の材質としては、ゴムが好適である。
【0041】
上部突出部134は、内筒132が外筒142に対して上方に移動したときに環状部133bの衝突の衝撃を緩和する部分であり、材質としては、ゴムが好適である。
下部突出部136は、内筒132が外筒142に対して下方に移動したときに環状部133bの衝突の衝撃を緩和する部分であり、材質としては、ゴムが好適である。
上記の連結部材133、上部突出部134及び下部突出部136の成形は、型内で内筒132、外筒142に加硫と同時に接着して行う。
【0042】
(b)は(a)のb−b線断面図であり、連結部材133((a)参照)の環状部133bと上部突出部134との間には隙間145を有し、環状部133bと下部突出部136との間には隙間146を有する。
【0043】
外筒142は、環状壁142aと、この環状壁142の両端から立ち上げたフランジ部142b,142bとを一体に形成した部材である。
エンジンマウント74の延出部82(左延出部82L及び右延出部82R)への取付けは、左延出部82L及び右延出部82Rを内筒132の端面に当て、取付ボルト147を、右延出部82Rのボルト挿通穴82a、内筒132の中空部132a、左延出部82Lのボルト挿通穴82bに通し、ナット148にねじ込むことで行う。
【0044】
図8は図6の8−8線断面図であり、サブフレーム76へのパワーユニット21の取付構造を示す。即ち、サブフレーム76のフレーム部材116に起立部83を取付け、この起立部83を構成する前起立部83Fと後起立部83Rとの間にパワーユニット21のクランクケース21Cに一体に設けた側方突出部21aを配置し、ボルト151を、後起立部83Rに開けたボルト挿通穴83a、側方突出部21aに開けたボルト挿通穴21d、前起立部83Fに開けたボルト挿通穴83bに通し、ナット152にねじ込む。また、サブフレーム76のフレーム部材115(図5参照)に取付けた起立部84(図6参照)へのパワーユニット21の側方突出部21b(図6参照)の取付けも同様に行う。これで、サブフレーム76へのパワーユニット21の取付けが完了する。
【0045】
このように、サブフレーム76の起立部83,84にパワーユニット21の側方突出部21a,21bを結合することで、サブフレーム76でパワーユニット21を一体的に支持することができ、サブフレーム76とパワーユニット21とは一体的に振動する。
【0046】
以上に述べたエンジンマウントの作用を次に説明する。
図9(a),(b)はエンジンマウントの作用を示す作用図である。
(a)の比較例は、車体フレーム201に直接に支持ブラケット202,203を取付け、これらの支持ブラケット202,203にパワーユニット205の下部を取付けた例である。
【0047】
支持ブラケット202,203とパワーユニット205との連結部207,208からパワーユニット205の重心215までの距離をそれぞれL1,L2とすると、パワーユニット205を構成するエンジン211のクランクシャフト212の回転によりパワーユニット205が、回転中心として、例えば、重心215を中心に回転振動すると、距離L1,L2が大きいために連結部207,208の変位が大きくなり、車体フレーム201が大きく振動することになる。
【0048】
(b)の実施例(本実施形態)では、パワーユニット21の重心125とエンジンマウント74(中心点を黒丸で示す。)との距離L3は、(a)に示した距離L2,L3に比べて小さいため、例えば、パワーユニット21が重心125を中心として回転振動しても、エンジンマウント74の位置でのパワーユニット21の変位、即ち、サブフレーム76の変位は小さくなり、サブフレーム76からエンジンマウント74を介してリヤクロスメンバ73、即ち、車体フレーム11へ伝わる振動はより小さくなる。
【0049】
以上の図6で示したように、本発明は第1に、縦置きのエンジン22を備えるパワーユニット21を、車体フレーム11に設けた支持ブラケットとしてのマウントブラケット131で支持したパワーユニット支持構造において、マウントブラケット131を、車体フレーム11を構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレームとしてセンタサイドフレーム51,51の間のほぼ車幅方向中央に配置したことを特徴とする。
【0050】
マウントブラケット131を、左右一対のセンササイドフレーム51,51間のほぼ車幅方向中央に配置したので、パワーユニット21の回転振動の中心近傍にマウントブラケット131を設けることができ、パワーユニット21の変位の小さい箇所でパワーユニット21を支持することができて、パワーユニット21から車体フレーム11へ伝わる振動をより小さくすることができる。
【0051】
本発明は第2に、図6及び図9に示したように、縦置きのエンジン22を備えるパワーユニット21を、車体フレーム11に設けたマウントブラケット131で支持したパワーユニット支持構造において、マウントブラケット131を、車体フレーム11を構成する車体前後方向に延びる左右一対のセンタサイドフレーム51,51間に且つパワーユニット21の重心125近傍に設けたことを特徴とする。
【0052】
マウントブラケット131を、左右一対のセンタサイドフレーム51,51間に且つパワーユニット21の重心125近傍に設けたので、パワーユニット21の回転振動の中心のより近い位置にマウントブラケット131を設けることができ、パワーユニット21を変位の小さい箇所で支持することができて、車体フレーム11の振動をより小さくすることができる。
【0053】
本発明は第3に、図6及び図7(a)に示したように、マウントブラケット131を、防振材としての連結部材133を介してパワーユニット21側に取付けたことを特徴とする。
これにより、連結部材133でパワーユニット21の振動を吸収することができ、車体フレーム11の振動をより小さくすることができる。
【0054】
本発明は第4に、図5に示したように、左右のセンタサイドフレーム51,51をクロスメンバ(フロントクロスメンバ71及びリヤクロスメンバ73)で連結し、これらのクロスメンバ71,73にマウントブラケット131をそれぞれ取付け、このマウントブラケット131に防振材としてゴム製の連結部材133を介してパワーユニット支持サブフレームとしてのサブフレーム76を取付け、このサブフレーム76にパワーユニット21を取付けたことを特徴とする。
【0055】
これにより、サブフレーム76によってパワーユニット21をほぼ車幅方向中央に容易に配置でき、パワーユニット21を変位の小さい箇所で支持できて、車体フレーム11の振動を小さくすることができる。また、従来の縦置きエンジンの構造であっても、サブフレーム76を介すことで本方式のマウントを採用することができる。
【0056】
また、サブフレーム76を用いることで、パワーユニット21のサイズ、センタサイドフレーム51の位置の制約が受けにくくなり、マウントブラケット131の設計自由度を増すことができる。更に、ゴム製の連結部材133によって、サブフレーム76から左右のセンタサイドフレーム51、ひいては車体フレーム11に伝わる振動を吸収することができる。
【0057】
本発明は第5に、図6に示したように、マウントブラケット131に対して高さ方向へオフセットした位置に、パワーユニット21を支持するパワーユニット支持部としてのエンジンマウント106を設けたことを特徴とする。
【0058】
マウントブラケット131に対して高さ方向へオフセットした位置にエンジンマウント106を設けたので、エンジンマウント106でパワーユニット21のトルク反力を受けることができ、パワーユニット21の支持剛性を向上させることができる。
【0059】
本発明は第6に、図5に示したように、サブフレーム76に延出部81,82を介してマウントブラケット72,74を取付けたことを特徴とする。
サブフレーム76に延出部81,82を介してマウントブラケット131側を取付けたので、延出部81,82によって、サブフレーム76上のパワーユニット21に干渉しない位置にマウントブラケット131を取付けることができ、組付性を向上させることができる。
【0060】
尚、本実施形態では、図6に示したように、車体フレーム11に右側にエンジンマウント106を取付けたが、これに限らず、車体フレーム11の左側にエンジンマウント106を取付けてもよい。
【0061】
また、図8に示したように、パワーユニット21の側方突出部21a,21b(一方の符号21aのみ示す。)をサブフレーム76の起立部83,84(一方の符号83のみ示す。)にボルト151を介して取付けたが、これに限らず、側方突出部21aとボルト151との間、及び側方突出部21bとボルト151との間にそれぞれ弾性部材を介在させ、サブフレーム76に対してパワーユニット21を弾性支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のパワーユニット支持構造は、四輪車に好適であり、縦置きエンジンの前後端にブラケットを設けることでサブフレームを介さずに取付ける構造も含む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るパワーユニット支持構造を備えた車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の平面図である。
【図3】本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部側面図である。
【図4】本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部斜視図である。
【図5】本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部平面図である。
【図6】本発明に係るパワーユニット支持構造を示す要部背面図である。
【図7】本発明に係るエンジンマウントの説明図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】エンジンマウントの作用を示す作用図である。
【符号の説明】
【0064】
11…車体フレーム、21…パワーユニット、22…エンジン、51…メインフレーム(センタサイドフレーム)、76…パワーユニット支持サブフレーム(サブフレーム)、81,82…延出部、106…パワーユニット支持部(エンジンマウント)、125…パワーユニットの重心、131…支持ブラケット(マウントブラケット)、133…防振材(連結部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦置きのエンジンを備えるパワーユニットを、車体フレームに設けた支持ブラケットで支持したパワーユニット支持構造において、
前記支持ブラケットを、前記車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間のほぼ車幅方向中央に配置し、
前記メインフレームは、左右をクロスメンバで連結し、このクロスメンバに前記防振材を介して前記支持ブラケットを取付け、この支持ブラケットにパワーユニット支持サブフレームを介して前記パワーユニットを取付けたことを特徴とするパワーユニット支持構造。
【請求項2】
縦置きのエンジンを備えるパワーユニットを、車体フレームに設けた支持ブラケットで支持したパワーユニット支持構造において、
前記支持ブラケットを、前記車体フレームを構成する車体前後方向に延びる左右一対のメインフレーム間に配置し、且つ前記支持ブラケットを車体の前後に配置し、これらの前後の支持ブラケットを結んだ線の近傍に前記パワーユニットの重心が位置することを特徴とするパワーユニット支持構造。
【請求項3】
前記支持ブラケットを、防振材を介して前記パワーユニット側に取付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパワーユニット支持構造。
【請求項4】
前記パワーユニット支持サブフレームの車体への支持は車体前後方向のみであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のパワーユニット支持構造。
【請求項5】
前記支持ブラケットに対して高さ方向へオフセットした位置に、前記パワーユニットを支持するパワーユニット支持部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のパワーユニット支持構造。
【請求項6】
前記パワーユニット支持サブフレームに延出部を介して前記支持ブラケットを取付けたことを特徴とする請求項4又は請求項5記載のパワーユニット支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−38715(P2007−38715A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222276(P2005−222276)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】