説明

ヒアルロン酸生産酵母

【課題】酵母を用いたin vivoの系でヒアルロン酸を生産させ、安全面・コスト面等の点から産業上有利なヒアルロン酸製造方法と、形質転換酵母と、ヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターとを提供することを主な課題とする。
【解決手段】(1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)形質転換して得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母によりヒアルロン酸を製造する方法、ヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母およびそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1934年MEYERとPALMERらは牛の眼の硝子体から新規のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)を発見した(非特許文献1参照)。彼らは、この物質がグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンがβ1,3およびβ1,4結合した二糖の繰り返し構造を有する直鎖状の多糖であることを示した(非特許文献2参照)。
その後、1950〜1960年代に、ヒアルロン酸の生合成に関する研究がA群連鎖球菌を用いた無細胞系実験により行われ、ヒアルロン酸鎖の伸長にウリジン-5’-ジホスホ-グルクロン酸(以下、UDP−グルクロン酸またはUDP-GlcAとすることがある)およびウリジン-5’ -ジホスホ-N-アセチルグルコサミン(以下、UDP−N−アセチルグルコサミンまたはUDP-GlcNAcとすることがある)の2種類の糖ヌクレオチドを用いることにより、連鎖球菌細胞膜に局在するヒアルロン酸合成酵素の活性が示された(非特許文献3参照)。
ヒアルロン酸合成酵素を安定な活性型として、可溶化して高純度に精製することは長年の間、困難であったが、1993年に、連鎖球菌のヒアルロン酸合成酵素遺伝子(hasA)が単離され(非特許文献4参照)、それ以来、真核生物のヒアルロン酸合成酵素遺伝子のクローニングが報告され(非特許文献5〜10参照)、さらに、クロレラウィルスPBCV-1(非特許文献11参照)やパスチュレラ ムルトシダ由来(非特許文献12参照)のヒアルロン酸合成酵素遺伝子が見出され、活性型の組換え酵素が得られるようになった。
これらの研究の進展と共に、ヒアルロン酸の広範囲の生理機能が解明され、ユニークな物理学的特性と生物学的な機能が明らかにされてきた。高分子のヒアルロン酸は、変形関節症の治療や眼科用手術補助剤、癒着防止や創傷治癒促進効果等に使用されている。また、低分子のヒアルロン酸は生理活性効果があることが報告されている。そして、バイオマテリアル素材や、新たな医療用途への応用も期待されている。
これまで、ヒアルロン酸は、動物組織からの抽出または微生物発酵により生産されてきた。しかしながら、動物組織からの抽出は、例えば狂牛病におけるプリオン、ウィルス等の混入の危険性が懸念されている。また、動物細胞は、細胞の維持管理が困難で高価な培地を必要とする上に増殖速度も遅い。一方、微生物発酵は、それら生産菌の中に人間の常在細菌や動物・人間に対して病原性を持つものがあるなどの問題がある。また、原核生物である大腸菌などでは、タンパク質のプロセッシングが起こらない、インクルージョンボディ(封入体)を形成する可能性があり、プロテアーゼによる分解が生じるなどの問題がある。一方、上記の問題点を解決するため、安全性の高いBacillusを宿主とした遺伝子組み換えを用いたヒアルロン酸の生成がなされている(特許文献13)。しかし、原核生物のBacillusを宿主とした場合、ヒトやマウス等の真核生物由来のヒアルロン酸合成酵素の発現には適さないと考えられる。特許文献1に記載の発明では、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子を植物体、植物細胞に導入することによって、植物でヒアルロン酸を生産している(特許文献1)。また、酵母で発現させたDG42(XeHAS)を用いて、in vitroでヒアルロン酸を合成させた例はあるものの、未だin vivo でヒアルロン酸を生産させるには至っていない(非特許文献14)。
【特許文献1】2003 WO05/12529
【非特許文献1】Meyer, K. and Palmer, J. W. (1934) J. Biol. Chem., 107, 629-634
【非特許文献2】Weissman, B. and Meyer, K. (1954) J. Am. Chem. Soc., 76, 1753-1757
【非特許文献3】Markovitz, M., Cifonelli, J. A. and Dorfman, A. (1959) J. Biol. Chem., 234, 2343-2350
【非特許文献4】DeAngelis, P. L., Papaconstantinou, J. and Weigel, P. H. (1993) J. Biol. Chem., 268, 14568-14571
【非特許文献5】Itano, N. and Kimata, K. (1996) J. Biol. Chem., 271, 9875-9878
【非特許文献6】Itano, N. and Kimata, K. (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 222, 816-820
【非特許文献7】Spicer, A. P., Augustine, M. L. and McDonald, J. A (1996) J. Biol. Chem., 271, 23400-23406
【非特許文献8】Spicer, A. P., Olson, J. S. and McDonald, J. A. (1997) J. Biol. Chem., 272, 8957-8961
【非特許文献9】Shyjan A. M., Heldin, P., Butcher E. C., Yoshino T. and Briskin, M. J. (1998) J. Biol. Chem., 271, 23395-23399
【非特許文献10】Watanabe, K. and Yamaguchi, Y. (1996) J. Biol. Chem., 271, 22945-22948
【非特許文献11】DeAngelis, P. L., Jing, W. Graves, M. V., Burbank, D. E. and vam Etten, J. L. (1998) Science, 278, 1800-1804
【非特許文献12】DeAngelis, P. L., Jing, W. Drake, R. R. and Achyuthan, A. M. (1998) J. Biol. Chem., 273, 8454-8458
【非特許文献13】WO2003/54163(特表2005-525091)
【非特許文献14】Paul L. DeAgelis and Ann Mary Achyuthan(1996) Vol. 271, No. 39,23657-23660
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
食品や醸造の長い安全な歴史を持つ酵母内でヒアルロン酸を生産させることができれば、安全面、コスト面等の点から、産業上特に有利と考えられる。
本発明は、酵母を用いたin vivoの系でヒアルロン酸を生産させ、安全性・低コストの点から産業上有利なヒアルロン酸製造方法、形質転換酵母及びヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ヒアルロン酸合成酵素は、一般的に複数の膜貫通領域および膜結合領域を有している。ヒアルロン酸合成酵素のような膜結合型タンパク質を、外来遺伝子の導入による組換え酵素として発現させる場合、膜貫通領域および膜結合領域が正しい構造を維持できないことが多い。例えば、活性型ヒアルロン酸合成酵素は、1つのヒアルロン酸合成酵素と膜に存在するリン脂質であるカルジオリピン約14〜18分子とが複合体を形成し、ヒアルロン酸合成酵素活性に影響することが示唆されている(paul L. DeAngelis and Ann Mary Achyuthan (1996) J.Biol. Chem., 271, 23657-23660)。
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示すような手段により、上記の技術的に困難な課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、次の事項に係るものである。
1. (1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)工程(1)で得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。
2. (1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含む少なくとも1種の発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)工程(1)で得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。
3. プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする項1又は2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
4. 誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項3に記載のヒアルロン酸の製造方法。
5. プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
6. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項1または2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
7. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項1または2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
8. 糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンであることを特徴とする項2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
9. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDPグルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
10. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼおよび/またはグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼである項1〜8のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
11. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである項2〜10のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
12. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
13. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号6、8、10、12、14または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
14. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
15. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
16. 培養液の温度を4℃以上20℃以下でタンパク質を誘導生産させることを特徴とする項1〜15のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
17. 培養液中のNaCl濃度を、500mM以上にすることによってタンパク質を誘導生産させることを特徴とする項1〜16のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
18. 酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母。
19. 酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含む少なくとも1種の発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母。
20. プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする項18又は19に記載の形質転換酵母。
21. 誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項18又は19に記載の形質転換酵母。
22. プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項18から20のいずれかに記載の形質転換酵母。
23. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項18または19に記載の形質転換酵母。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
24. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項18または19に記載の形質転換酵母。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
25. 糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンであることを特徴とする項19に記載の形質転換酵母。
26. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDP-グルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする項19に記載の形質転換酵母。
27. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼである項19に記載の形質転換酵母。
28. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである項19〜27のいずれかに記載の形質転換酵母。
29. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項21〜29のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
30. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号6、8、10、12、14、または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
31. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
32. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
33. 項18〜32のいずれかに記載の形質転換酵母から得られるヒアルロン酸含有物。
34. 酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
35. 酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターまたはその組み合わせ。
36. プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする項34又は35に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
37. 誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
38. プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする項36または37に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
39. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項34または35に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
40. ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項35または36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
41. 糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンである項36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
42. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDP-グルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする項35に記載に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
43. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼである項35記載に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
44. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである項35〜43のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
45. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項35〜44のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
46. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号6、8、10、12、14または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
47. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
48. 糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
49. 項34〜48のいずれかに記載のベクターを用いて、酵母を形質転換する工程を有する、ヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母の作製方法。
50. 項1〜17のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする化粧料組成物。
51. 項1〜17のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする機能性食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、酵母を用いたin vivoの系でヒアルロン酸を生産させ、安全面・コスト面等の点から産業上有利なヒアルロン酸製造方法、形質転換酵母及びヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
遺伝子組換えにより、タンパク質を生産するための宿主系としては、現在、植物、植物培養細胞、大腸菌、酵母などの微生物、動物細胞培養、遺伝子組換え動物などが利用可能である。大腸菌はタンパク質のプロセッシングが起こらない、インクルージョンボディ(封入体)を形成する可能性があり、プロテアーゼによる分解が生じるなどの問題がある。動物細胞は、細胞の維持管理が困難で、高価な培地を必要とする上に増殖速度も遅いため、大規模生産が難しい。なおかつウィルスやガン遺伝子の混入の危険性がある。遺伝子組換え動物の場合は、維持管理の問題の他に倫理的な問題がある。
一方、酵母は、真核細胞のモデル系として遺伝子工学的技術や情報が確立されており、培養が容易なうえに、安価に大量に目的物質を生産することが可能である。また、微生物を宿主として用いた発現系では、上述のような問題があるのに対し、酵母はタンパク質の発現系として有用である。酵母はヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を有していないことから、合成されたヒアルロン酸の分解の問題が解消され、高分子量のヒアルロン酸を安定的に生産可能なことを見いだした。
また、酵母はワイン、ビール、酒、パンなど歴史的にも我々に親しみがあるものであり、安全が証明されているため感染性ウィルスの心配もない有望な物質生産系である。
【0008】
さらに、本発明者らは、低温を含む環境ストレスなどの誘導因子を用いてヒアルロン酸合成酵素を誘導発現・培養させれば、膜結合型タンパク質を正しい高次構造の維持を容易にさせ、培養コストの負荷も小さくなることも見いだした。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、誘導性プロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素遺伝子を有する発現用組換えベクターを使用してヒアルロン酸合成酵素遺伝子を発現させる。恒常性プロモーターを使用し、常温で培養した場合、ヒアルロン酸合成酵素は比較的不安定であり、形質転換酵母を培養するとヒアルロン酸合成酵素活性が一時的に高まるが、その後低下する傾向にある。ストレス応答性の誘導性プロモーターを使用した場合、例えば酵母を培地中で増殖させ、対数増殖期の途中で低温などの環境ストレスをかけてヒアルロン酸合成酵素の発現を誘導すると、安定な条件かつ酵素活性が維持され、効率よくヒアルロン酸を生産することができる。恒常性プロモーターを使用し、例えば、低温で培養する事で、ヒアルロン酸合成酵素が安定な条件で培養する事ができ、ヒアルロン酸合成酵素活性の不安定性は解消され得るが、低温条件では恒常性プロモーターの発現量が低下するため、ヒアルロン酸の生産効率が低下する傾向にある。
酵母は真核生物由来のタンパク質発現系としては有用である。
酵母では、他の生物と同様に常にタンパク質を作る構成的(constitutive)な発現系とある条件によってタンパク質をより多量に生産させる誘導(inducible)発現系がある。
構成的発現系は発現させることが簡便であるという特徴があり、誘導発現系は例えばホスト細胞に悪影響を与えるタンパク質などの生産の際に、増殖過程とタンパク質生産過程を分離するという目的でよく用いられる。また、誘導発現系の方がより強力であるケースもよく知られている。
酵母にはHSP12プロモーターのようにいろいろなストレス(外界環境の変化)に応じて誘導されるプロモーターが知られている。
低温はストレスの一種であり、HSP12の他さまざまなプロモーターを誘導する。
低温でのタンパク質生産は、低温に応答する、あるいは低温でも転写活性を維持する一部のプロモーターだけが働く環境であるために選択的で、また、生産されたタンパク質の分解が抑制され、さらにはタンパク質の高次構造形成(folding)の効率が良いというメリットがある。したがって、低温でタンパク質を生産させることで、非常に効率的にタンパク質を生産させることができる。
本発明のヒアルロン酸のように酵母が全く生産していない糖質を生産させた実例は従来になく、しかも、ヒアルロン酸のように2種類の糖が一定の順序で数十個あるいは数百個も連なった高分子物質を生産した例もない。
また、ヒアルロン酸合成酵素は、一般的に複数の膜貫通領域および膜結合領域を有している。ヒアルロン酸合成酵素のように膜結合型タンパク質を、遺伝子を発現させる宿主と異なる由来の遺伝子を発現する場合は、膜貫通領域および膜結合領域が正しい構造を維持できないことが多い。特に、活性型ヒアルロン酸合成酵素は、1つのヒアルロン酸合成酵素と膜に存在するリン脂質であるカルジオリピン約14〜18分子とが複合体を形成し、ヒアルロン酸合成酵素活性に影響することなどが示唆されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、(1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)形質転換して得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法である。
【0011】
また、(1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとを含む発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)形質転換して得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法である。
【0012】
また、上記のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする化粧料組成物である。
【0013】
また、上記のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする機能性食品である。
【0014】
さらに、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母である。
【0015】
また、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母である。
【0016】
さらに、上記の形質転換酵母から得られるヒアルロン酸含有物である。
【0017】
また、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターである。
【0018】
また、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターである。
【0019】
さらに、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターを用いて、酵母を形質転換する工程を有する、ヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母の作製方法である。
【0020】
さらに、酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターを用いて、酵母を形質転換する工程を有する、ヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母の作製方法する方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
ヒアルロン酸合成酵素
本発明の1つの好ましい実施形態においては、酵母内で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いて、酵母の形質転換を行う。
【0021】
本発明のヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質は、UDP−グルクロン酸とUDP−N-アセチルグルコサミンを基質としてグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの繰り返し構造からなるポリマー構造のヒアルロン酸を合成するものである。
本発明のヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質は、上記の性質を有していれば特に限定はされず、動物や、微生物やウイルス由来のヒアルロン酸合成酵素(以下、HASと略すことがある)等を用いることが可能である。詳しくは、ヒト、マウス、ウサギ、ニワトリ、ウシ、アフリカツメガエル等の脊椎動物由来のヒアルロン酸合成酵素や、ストレプトコッカス属、パスチュレラ属等の微生物由来のヒアルロン酸合成酵素や、クロレラウイルス等のウイルス由来のヒアルロン酸合成酵素等を用いることが可能である。
【0022】
より具体的には、クロレラウイルス PBCV-1系統由来のHAS(A98R)、ヒト由来のヒアルロン酸合成酵素(hHAS)のHAS1、HAS2およびHAS3、マウス由来のヒアルロン酸合成酵素(mHAS)のHAS1、HAS2およびHAS3、ニワトリ由来のヒアルロン酸合成酵素(gHAS)のHAS1、HAS2およびHAS3、ラット由来のヒアルロン酸合成酵素(rHAS)のHAS2、ウシ由来のヒアルロン酸合成酵素(bHAS)のHAS2、アフリカツメガエル由来のヒアルロン酸合成酵素(xHAS)のHAS1、HAS2およびHAS3、パスチュレラ ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(pmHAS)、ストレプトコッカス ピオゲネス由来のヒアルロン酸合成酵素(spHAS)、ストレプトコッカス エクイリシミリス由来のヒアルロン酸合成酵素(seHAS)等があげられる。ヒアルロン酸合成酵素(HAS)遺伝子には、HAS1、HAS2、HAS3等の各種タイプを有するものがあるが、タイプの種類は特に限定されない。
上記記載のHASであれば使用できるが、好ましくはクロレラウィルス由来のHASがよく、特に好ましくは、配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質によって示されるクロレラウィルス由来のHASがよい。
また、配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、1または数個もしくは複数個、たとえば1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるヒアルロン酸合成活性を失わない程度の変異がなされたタンパク質であっても良い。例えば、配列番号2または4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、又は、配列番号2または4で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2または4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよいが、特にこれに限定されるものではない。このような変異は、自然界において生じるほかに、人為的な変異も含む。一例として、パスチュレラ ムルトシダ由来ヒアルロン酸合成酵素は、膜結合領域および膜貫通領域と思われる約270アミノ酸を欠失してもヒアルロン酸合成酵素活性をもつことが報告されている(Jing et al., 2000, Glycobiology, 10, 883-889)。変異したアミノ酸の数は、ヒアルロン酸合成活性を失わない限り、その個数は制限されない。また、配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の一部であって、且つヒアルロン酸合成活性を有しているタンパク質であっても良い。
【0023】
本発明のヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとは、UDP−グルクロン酸とUDP−N-アセチルグルコサミンを基質としてグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの繰り返し構造からなるポリマー構造のヒアルロン酸を合成する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
本発明のヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAは、上記の性質を有していれば特に限定はされず、動物や、微生物やウイルス由来のヒアルロン酸合成酵素(以下、HASと略すことがある)遺伝子等を用いることが可能である。詳しくは、ヒト、マウス、ウサギ、ニワトリ、ウシ、アフリカツメガエル等の脊椎動物由来のヒアルロン酸合成酵素遺伝子や、ストレプトコッカス属、パスチュレラ属等の微生物由来のヒアルロン酸合成酵素遺伝子や、クロレラウイルス等のウイルス由来のヒアルロン酸合成酵素遺伝子等を用いることが可能である。
【0024】
より具体的には、クロレラウイルス PBCV-1系統由来のHAS(A98R)遺伝子、ヒト由来のヒアルロン酸合成酵素(hHAS)遺伝子のHAS1、HAS2およびHAS3、マウス由来のヒアルロン酸合成酵素(mHAS)遺伝子のHAS1、HAS2およびHAS3、ニワトリ由来のヒアルロン酸合成酵素(gHAS)遺伝子のHAS1、HAS2およびHAS3、ラット由来のヒアルロン酸合成酵素(rHAS)遺伝子のHAS2、ウシ由来のヒアルロン酸合成酵素(bHAS)遺伝子のHAS2、アフリカツメガエル由来のヒアルロン酸合成酵素(xHAS)遺伝子のHAS1、HAS2およびHAS3、パスチュレラ ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(pmHAS)遺伝子、ストレプトコッカス ピオゲネス由来のヒアルロン酸合成酵素(spHAS)遺伝子、ストレプトコッカス エクイリシミリス由来のヒアルロン酸合成酵素(seHAS)遺伝子等があげられる。ヒアルロン酸合成酵素(HAS)遺伝子には、HAS1、HAS2、HAS3等の各種タイプを有するものがあるが、タイプの種類は特に限定されない。
上記記載のHAS遺伝子であれば使用できるが、好ましくはクロレラウィルス由来のHAS遺伝子がよく、とくに好ましくは、配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNAによって示されるクロレラウィルス由来のHAS遺伝子がよい。
また、配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。
上記において、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号1または3で示される塩基配列のヒアルロン酸合成酵素と同等のヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列のみが該特定配列とハイブリット(いわゆる特異的ハイブリット)を形成し、同等の活性を有しないポリペプチドをコードする塩基配列は該特定配列とハイブリット(いわゆる非特異的ハイブリット)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0,2M NaHPO,20mM EDTA・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
該ストリンジェントな条件は、好ましくはハイストリンジェントな条件である。ハイストリンジェントな条件とは、A98Rをコードする遺伝子がハイブリダイズしない条件であれば特に限定されないが、例えば0.1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である。
糖ヌクレオチド
酵母内でヒアルロン酸を生産させるためには、ヒアルロン酸合成酵素の基質となるUDP-グルクロン酸とUDP-N-アセチルグルコサミンが十分量供給される必要がある。酵母の中でもサッカロミセス属酵母はワイン、ビール、酒、パン等の長い安全な歴史を持ち、かつ真核細胞のモデル系として遺伝子工学のための技術や情報が確立されていることから有用である。しかし、いくつかのサッカロミセス属酵母では、UDP-グルクロン酸合成経路がないことが報告されている(The Journal of Biological Chemistry 1996, Vol.271, No.39,23657-23660)。これらの糖ヌクレオチドの生産性を向上させるためには、糖ヌクレオチド合成経路に関与する酵素、すなわち、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質を、酵母内に導入することが必要となる。
さらに、本発明では、同時にヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質を酵母内に導入することにより、増加したUDP−グルクロン酸とUDP−N-アセチルグルコサミンを基質としてグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの繰り返し構造からなるポリマー構造のヒアルロン酸を合成できることを見いだした。
糖ヌクレオチド合成経路に関与する酵素
本発明においては、酵母内で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いて、酵母の形質転換を行う。
本発明の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質は、糖ヌクレオチド合成代謝経路に関与する反応を触媒する酵素であればよい。たとえば、糖ヌクレオチドとして、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルクロン酸、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルコース、UDP-ガラクトース、UDP-キシロース、GDP-フコース、GDP-マンノース、CMP-ノイラミン酸等の合成酵素活性を有するタンパク質であればよい。これらの糖ヌクレオチドでUDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルクロン酸、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルコース、UDP-ガラクトース、UDP-キシロースの合成酵素活性を有するタンパク質が好ましい。さらに好ましくは、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルクロン酸の合成酵素活性を有するタンパク質がよい。
【0026】
本発明の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質は、具体的には、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDPグルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼ等が例示される。これらの糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質からなる群より選ばれた1種以上のタンパク質を、酵母にて発現させればよい。UDP-グルコース デヒドロゲナーゼが特に好ましい。
また、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質として、少なくとも、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼを選択して、他の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質と組み合わせて酵母細胞にて発現させてもよい。
UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ以外の他の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質は、UDP-Nアセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 Nアセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、Nアセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDPグルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質等が例示される。
本発明の効果を発揮するためには、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質として、少なくとも、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼを選択すれば従来よりも優れた効果を得ることができる。より好ましくは、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ(以下UGDと略すことがある)とグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ(以下GFATと略すことがある)の両者を選択するのがよい。
UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ
本発明のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質は、UDP-グルコースを基質として、UDP-グルクロン酸を合成するものであればよい。
本発明のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質は上記の性質を有していれば特に限定はされず、真核生物由来、原核生物由来、ウイルス由来等のUGDがあげられる。真核生物由来としてはヒト、ウシ、マウス、ポプラ、サトウキビやシロイヌナズナ等のUGD、原核生物由来としては大腸菌、パスツレラ・ムルトシダや乳酸菌等のUGD、ウイルス由来としてはクロレラウイルス等のUGDを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
上記記載のUGDであれば好ましく使用できるが、より好ましくはクロレラウィルス由来またはシロイヌナズナ由来のUGDがよい。とくに好ましくは、配列番号6、8、10、12、14、または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質によって示されるクロレラウィルス由来のUGDや配列番号5、7、9、11、13、または15で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質によって示されるクロレラウィルス由来のUGDがよい。
また、配列番号6、8、10、12、14、または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を失わない程度の変異がなされたタンパク質であっても良い。例えば、配列番号6、8、10、12、14、または16で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、又は、配列番号6、8、10、12、14、または16で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号6、8、10、12、14、または16で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよいが、特にこれに限定されるものではない。このような変異は、自然界において生じるほかに、人為的な変異も含む。変異したアミノ酸の数は、UGD活性を失わない限り、その個数は特に制限されない。また、配列番号配列番号6、8、10、12、14、または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の一部であって、且つUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有しているタンパク質であっても良い。
本発明のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAは、UDP-グルコースを基質として、UDP-グルクロン酸を合成する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
本発明のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAは上記の性質を有していれば特に限定されず、真核生物、原核生物、ウイルス等のUGD遺伝子があげられる。真核生物としてはヒト、ウシ、マウス、ポプラ、サトウキビやシロイヌナズナ、原核生物としては大腸菌、パスツレラ・ムルトシダや乳酸菌、ウイルスとしてはクロレラウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
上記記載のUGD遺伝子であれば好ましく使用できるが、より好ましくはクロレラウィルス由来またはシロイヌナズナ由来のUGD遺伝子がよく、とくに好ましくは、配列番号配列番号5または7で示される塩基配列からなるクロレラウィルス由来UGD遺伝子、または配列番号9、11、13、15で示される塩基配列からなるシロイヌナズナ由来UGD遺伝子である。
また、配列番号5、7、9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。
上記において、「ストリンジェントな条件」とは配列番号5、7、9、11、13、または15で示される塩基配列のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼと同等のUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列のみが該特定配列とハイブリット(いわゆる特異的ハイブリット)を形成し、同等の活性を有しないポリペプチドをコードする塩基配列は該特定配列とハイブリット(いわゆる非特異的ハイブリット)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0,2M NaHPO,20mM EDTA・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の1例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
該ストリンジェントな条件は、好ましくはハイストリンジェントな条件である。ハイストリンジェントな条件とは、例えば0.1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である。
グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ
本発明のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質は、L−グルタミンとフルクトース−6−リン酸を基質として、グルコサミン−6−リン酸を合成するものであればよい。
本発明のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ(GFAT)活性を有するタンパク質は上記の性質を有していれば特に限定されず、真核生物由来、原核生物由来、ウイルス由来等のGFATがあげられる。真核生物としてはヒト、マウス、トウモロコシ、シロイヌナズナ、線虫や酵母、原核生物としては枯草菌や大腸菌等、ウイルスとしてはクロレラウィルスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記記載のGFATであれば好ましく使用できるが、より好ましくはクロレラウィルス由来またはシロイヌナズナ由来のGFATがよい。とくに好ましくは、配列番号18または20で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質によって示されるクロレラウィルス由来のGFATや配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質によって示されるシロイヌナズナ由来のGFATがよい。
また、配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を失わない程度の変異がなされたタンパク質であっても良い。例えば、配列番号18、20または22で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、又は、配列番号18、20または22で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号18、20または22で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよいが、特にこれに限定されるものではない。このような変異は、自然界において生じるほかに、人為的な変異も含む。変異したアミノ酸の数は、GFAT活性を失わない限り、その個数は特に制限されない。天然の変異例として、配列番号17のクロレラウイルス弘前系統のGFATと、公知のクロレラウイルスPBCV-1系統、K2系統のGFATとは、少なくともアミノ酸レベルで2%が変異している例がある。また、配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の一部であって、且つグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有しているタンパク質であっても良い。
本発明のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAは、L−グルタミンとフルクトース−6−リン酸を基質として、グルコサミン−6−リン酸を合成する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
本発明のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ(GFAT)活性を有するタンパク質をコードするDNAは上記の性質を有していれば特に限定されず、真核生物由来、原核生物由来、ウイルス由来等のGFAT遺伝子があげられる。真核生物としてはヒト、マウス、トウモロコシ、シロイヌナズナ、線虫や酵母等、原核生物としては枯草菌や大腸菌等、ウイルスとしてはクロレラウイルスが挙げられる。GFAT遺伝子には、GFAT1、GFAT2等の各種タイプを有するものがあるが、種類は特に限定されない。
【0029】
上記記載のGFAT遺伝子であれば好ましく使用できるが、より好ましくはクロレラウィルス由来またはシロイヌナズナ由来のGFAT遺伝子がよく、とくに好ましくは、配列番号17、19で示される塩基配列からなるクロレラウィルス由来GFAT遺伝子、または配列番号21で示される塩基配列からなるシロイヌナズナ由来GFAT遺伝子が好ましい。
また、配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGFAT活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。
上記において、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号5、7または9で示される塩基配列のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼと同等のグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列のみが該特定配列とハイブリット(いわゆる特異的ハイブリット)を形成し、同等の活性を有しないポリペプチドをコードする塩基配列は該特定配列とハイブリット(いわゆる非特異的ハイブリット)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0,2M NaH2PO4,20mM EDTA・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の1例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
該ストリンジェントな条件は、好ましくはハイストリンジェントな条件である。ハイストリンジェントな条件とは、例えば0.1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である。
発現用組換えベクター、および形質転換体
酵母内で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、必要に応じて外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとを含む発現用組換えベクターを用いて宿主に形質転換することによりヒアルロン酸生産能を有する酵母を得ることができる。
「外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質」とは、内在性のタンパク質とは異なり、酵母へ外部から新たに導入する外来性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質を意味する。「外部から新たに導入する」具体的は方法としては、発現用組換えベクター等を用いて形質転換すればよい。「外部から新たに導入する」遺伝子はもともと内在していた遺伝子を、外部から発現用組換えベクターを用いて形質転換することも含まれる。ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質は、今日まで酵母内に、その存在が確認されていないので、外因性と記さずとも外因性であることは自明である。
【0031】
上記のような形質転換酵母は、ヒアルロン酸を生産することが可能になる。以下、具体的に説明する。
【0032】
酵母としては、例えばサッカロミセス・セレビシエ、実験酵母、醸造用酵母、食用酵母および工業用酵母などが挙げられる。
【0033】
また、該形質転換して得られた形質転換体を培養し、該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離することにより、ヒアルロン酸を製造してもよい。
【0034】
発現用組換えベクターとしては、形質転換酵母作製のために通常用いられているベクターを用いることができる。
【0035】
このようなベクターとしては、酵母で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限はない。例えばプラスミド「pESP Vector」、「pESC Vector」、「pAUR123」、「pYES」、「pLTex321s」などを用いることができる。
【0036】
酵母を宿主として用いる場合、形質転換は、酵母に、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法などにより実施できる。酵母内で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターを導入することにより行うことができる。各DNAは、1つのプロモーターの制御下にある1つの発現ベクターにより酵母に導入されてもよく、別々のプロモーターの制御下にある1種または2種以上の発現ベクターを用いて酵母に導入してもよい。発現ベクターを導入された酵母は、例えば、ウラシル要求性等の栄養要求性を基準として選択される。また、YIp系などのベクターあるいは染色体中の任意の領域と相同なDNA配列を用いた染色体への置換・挿入型の酵母形質転換法であっても良い。
また、ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAの発現を誘導性プロモーターで制御することも考えられる。誘導性プロモーターの例を以下に記載する。
【0037】
誘導性プロモーター としては、酵母 細胞中で機能する任意の誘導性プロモーター を使用することができ、例えばガラクトースにより誘導されるGAL1プロモーター、銅により誘導されるCUP1プロモーター、熱ショックにより誘導される熱ショック蛋白質遺伝子のプロモーター、低リン酸濃度により誘導されるPHO5プロモーター等が使用可能である。さらに、酵母内でヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAをより安定に発現させるためにインスレーターの利用や目的の細胞内小器官でヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質と糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質を局在させるためにシグナルペプチドを付加したり、酵素の一部を置換および欠損させること等を行ってもよい。
低温誘導性プロモーターとは、酵母の至適培養温度におけるプロモーター活性を比較して、酵母の至適培養温度よりも低い温度で高いプロモーター活性を示すプロモーターを意味する。具体的に、低温誘導性プロモーターは、酵母の至適培養温度におけるプロモーターと比較して、酵母の至適培養温度よりも低い温度で3倍以上のプロモーター活性を示す。ここで、酵母の至適培養温度は、約30℃である。また、酵母の至適培養温度よりも低い温度とは、30℃未満の温度、例えば約10℃を意味するが、20℃以下の温度であればこの温度に限定されない。
Heat shock protein 12プロモーターはストレス誘導性プロモーターで、例えば、熱ショック、浸透圧ストレス、高濃度アルコール、高塩濃度、酸化ストレス、グルコース飢餓等により誘導される。従って、例えばHSP12プロモーターを用いた場合、該プロモーターの転写活性が増加する限り、これらのいずれのストレスによって該プロモーターの誘導によりタンパク質を生産させても良い。さらに、HSP12以外のストレス誘導性プロモーターを用いた場合にも、該プロモーターの転写活性が増加する限り、これらのいずれのストレスによって該プロモーターの誘導によりタンパク質を生産させても良い。
【0038】
プロモーターとしては、誘導性プロモーターの他に恒常性プロモーターを用いてもよい。酵母で恒常的に発現するプロモーターとしては、ADHプロモーター、TEFプロモーター、GPDプロモーター等が例示できる。
【0039】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAは、誘導性プロモーターの制御下におくのが望ましいが、恒常性プロモーター(特に低温下での発現効率があまり低下しないプロモーター)の制御下におくこともできる。糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAは、恒常性プロモーターと誘導性プロモーターのいずれの制御下においてもよい。
ヒアルロン酸の回収
任意の時点で培養を停止し、除菌後、アルコール等の有機溶剤による析出、限外濾過による脱塩等の公知精製法により高純度ヒアルロン酸を得ることができる
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質と外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質とを同時に発現させ、ヒアルロン酸生産能を獲得させた形質転換酵母より生産されたヒアルロン酸を分離又は取得する方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0040】
形質転換した酵母細胞の培養液中に蓄積されたヒアルロン酸を、公知の分離法を用い精製しても良い
例えば、形質転換した酵母中に蓄積されたヒアルロン酸を、公知の分離法を用い精製しても良い。また、形質転換酵母を乾燥させた後に粉砕して、適当な有機溶媒により抽出を行っても良い。そのヒアルロン酸を含む酵母抽出液を濾過し、酵母細胞を含まないヒアルロン酸の濾過溶液を得る。この溶液をダイアフィルトレーションによって精製し、低分子量の不純物を除去する。溶解したヒアルロン酸を含む濾過溶液を純水でダイアフィルトレーションし、濾液を連続して捨てることによりヒアルロン酸の分離が可能である。医療用の製品が必要である際には、溶液から核酸を沈殿させるという工程を更に行ってもよい。この工程は、例えば、塩化セチルピリジニウムの第4級アンモニウム化合物等の陽イオン界面活性剤を添加することによって行うことができる。
【0041】
なお、培養条件は、特に限定されず、ヒアルロン酸の原料となるUDP-GlcNAcおよびUDP-グルクロン酸の生成量が多くなるようにGlcNAcとグルクロン酸の製造原料となる糖質を多く添加した培地を使用するのが好ましい。
ヒアルロン酸の利用
本発明により取得されるヒアルロン酸は、化粧品及び医薬品の成分、又はバイオマテリアル素材等の用途に有用に利用できる。具体的には、化粧品の保湿成分、又は、関節炎や慢性リウマチ、火傷や切り傷の治療薬や目薬の成分等として、有用に利用し得る。また、皮膚の老化を防止及び/又は改善する上で有用な機能性食品として利用しても良い。
【0042】
本発明のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有する化粧料組成物を製造しても良い。例えば水溶液、油剤、乳液、懸濁液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤、粉末、顆粒、カプセル、マイクロカプセル、固形等の固形剤の形態で適用可能である。従来から公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾル剤、坐剤、注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等の種々の剤型とすることができる。これらを身体に塗布、貼付、噴霧、飲用等により適用することができる。特にこれら剤型の中で、ローション剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾル剤等が皮膚外用剤に適している。化粧料としては、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状又はクリーム状あるいは軟膏型のファンデーション、口紅、アイカラー、チークカラーといったメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料等、入浴剤、口腔化粧料、毛髪化粧料とすることができる。通常、化粧料において使用される製剤化方法にしたがって、これらの剤型として製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1 クロレラウィルス由来ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の単離方法
クロレラウィルスヒアルロン酸合成酵素遺伝子(cvHAS)をPCRにより単離するためにPCRプライマーを作製した。プライマーは、既に明らかになっているクロレラウィルスゲノム配列情報(Kutish et al, 1996, Virology, 223, 303-317)(Li et al, 1995, Virology, 212, 134-150)(Li et al, 1997, Virology, 237, 360-377)(Lu et al, 1995, Virology, 206, 339-352)(Lu et al, 1996, Virology, 216, 102-123)およびクロレラウィルス由来ヒアルロン酸合成遺伝子の同定情報(Graves et al,1999, virology, 257, 15-23)(DeAngelis et al, 1997, Science, 278, 1800-1803)を基に設計し、かつ発現ベクターへの導入に必要な制限酵素部位を付加したものを作製した。制限酵素サイトは3’側プライマーにSacI部位を付加した。
5’側プライマー(配列番号23)
5’- ATG GGT AAA AAT ATA ATC ATA ATG GTT TCG - 3’
3’側プライマー(配列番号24)
5’ - AAT TGA GCT CTC ACA CAG ACT GAG CAT TGG TAG −3’
PCRの鋳型には、クロレラウィルスCVHI1株のゲノムDNAを用いた。PCR は、DNAポリメラーゼにKOD −plus−(東洋紡績(株))を用い、94℃ 2分、(94℃ 15秒、55℃ 30秒、68℃ 2分)25サイクルの反応プログラムで行った。得られたPCR断片を、発現ベクターpLTex321sのマルチクローニングサイトのSmaI部位とSacI部位に挿入した。挿入された断片を、DNAシークエンサーによりCVHI1株由来ヒアルロン酸合成酵素遺伝子cvHAS-HI(配列番号1)のDNA配列を確認した。
実施例2 クロレラウィルス由来UDP- グルコース デヒドロゲナーゼ遺伝子の単離法
クロレラウィルスUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ遺伝子(cvUGD)をPCRにより単離するためにPCRプライマーを作製した。プライマーは、既に明らかになっているクロレラウィルスゲノム配列情報(Landstein. D et al.,Virology. 1998 Oct 25;250(2):388-96.)を基に設計し、かつ発現ベクターへの導入に必要な制限酵素部位を付加したものを作製した。制限酵素サイトは3’側プライマーにSacI部位を付加した。
5’側プライマー(配列番号25)
5’- AATTGGTACCATGTCACGA ATCGCAGTCGT - 3’
3’側プライマー(配列番号26)
5’ - AATTTCTAGATTAGTTATCGCCATATACAT−3’
PCRの鋳型には、クロレラウィルスCVHI1株のゲノムDNAを用いた。PCR は、DNAポリメラーゼにKOD−plus-東洋紡績(株))を用い、94℃ 2分、(94℃ 15秒、55℃ 30秒、68℃ 2分)25サイクルの反応プログラムで行った。得られたPCR断片を、発現ベクターpAUR123(タカラバイオ(株))のマルチクローニングサイトのKpnI部位とXbaI部位に挿入した。挿入された断片を、DNAシークエンサーによりCVHI1株由来UDP-グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子cv-UGD(配列番号7)のDNA配列を確認した。
実施例3 cvHAS-Hirosaki geneの酵母(BY4743)への形質転換
pLT321-cvHAS-HirosakiプラスミドDNAを調製し、酵母(BY4743)へYEASTMAKERTMYeast Transformation System2(CLONTECH)キットを用いて導入した。培養液を遠心分離 (5000 rpm, 1min, 4 ℃)により集菌して上清を除去し、菌体を1.0mlの0.9% NaCl溶液に再懸濁させ、 SDプレート培地(0.67% Yeast nitrogen base w/o AA、2% グルコース、0.02% アデニン硫酸塩、0.02% L-トリプトファン、0.02% L-ヒスチジン、0.03% L-リジン一塩酸塩、0.03% L-メチオニン、0.03% L-ロイシン及び2% 寒天を含む)に塗布し、3日間 30℃で培養し、pLT321-cvHAS-Hirosakiを含む酵母(cvHAS酵母)を得た。
実施例4 cvHAS-Hirosaki gene及びcvUGD geneの酵母(BY4743)への形質転換
pLT321-cvHAS-Hirosaki及びpAUR123-cvUGDプラスミドDNAを調製し、酵母(BY4743)へYEASTMAKERTMYeast Transformation System2(CLONTECH)キットを用いて導入した。培養液を遠心分離 (5000 rpm, 1min, 4 ℃)により集菌して上清を除去し、菌体を1.0mlの0.9% NaCl溶液に再懸濁させ、0.5 μg/ml Aureobasidin Aを含む SDプレート培地(0.67% Yeast nitrogen base w/o AA、2% グルコース、0.02% アデニン硫酸塩、0.02% L-トリプトファン、0.02% L-ヒスチジン、0.03% L-リジン一塩酸塩、0.03% L-メチオニン、-0.03% L-ロイシンを含む)に塗布し、3日間 30℃で培養し、pLT321-cvHAS-Hirosaki及びpAUR123-cvUGDを含む酵母(cvHAS-cvUGD酵母)を得た。
実施例5 cvHAS酵母によるヒアルロン酸生産
300μlのcvHAS酵母をpH6.5付近でコントロールした3ml/18ml容試験管 SD培地(0.67%
Yeast nitrogen base w/o AA、2% グルコース、0.02% アデニン硫酸塩、0.02% L-トリプトファン、0.02% L-ヒスチジン、0.03% L-リジン一塩酸塩、0.03% L-メチオニン、0.03% L-ロイシンを含む)に植菌し、30℃で1晩培養した。培養後、18ml容試験管を予め10℃に設定しておいた振盪培養機に移し、10℃にてさらに6日間間振盪培養(誘導)を行った。低温誘導24時間後、HA原料ありなしの条件(100 mM UDP-Nアセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)及び100 mM UDP-グルクロン酸(UDP-GlcA)を含むSD培地及び、含まないSD培地)でHA醗酵生産が可能か否かを調査した。培養液3mLを遠心分離(1,3000rpm、10分)しい、菌体と上清に分離した。上清を95℃で5分間熱し、遠心分離(1,3000rpm、10分)し、上清を粗精製液として回収した。粗精製液を水で100倍に希釈し、測定サンプルとして用いた。ヒアルロン酸の定量は、ヒアルロン酸プレート「中外」(中外診断科学株式会社)を用いて行った。その結果を図1に示す。
実施例6 cvHAS酵母、cvHAS-cvUGD酵母によるヒアルロン酸生産の比較
cvHAS酵母によるヒアルロン酸生産は実施例5参照。300μlのcvHAS-cvUGD酵母をpH6.5付近でコントロールした3ml/18ml容試験管SD培地(0.67% Yeast nitrogen base w/o AA、2% グルコース、0.02% アデニン硫酸塩、0.02% L-トリプトファン、0.02% L-ヒスチジン、0.03% L-リジン一塩酸塩、0.03% L-メチオニン、0.03% L-ロイシン及び0.5 μg/ml Aureobasidin含む:HA原料は添加しない)に植菌し、30℃で1晩培養した。培養後、18ml容試験管を予め10℃に設定しておいた振盪培養機に移し、10℃にてさらに6日間間振盪培養(誘導)を行い、HA醗酵生産が可能か否かを調査した。培養液3mLを遠心分離(1,3000rpm、10分)し、菌体と上清に分離した。上清を95℃で5分間熱し、遠心分離(1,3000rpm、10分)し、上清を粗精製液として回収した。粗精製液を水で100倍に希釈し、測定サンプルとして用いた。ヒアルロン酸の定量は、ヒアルロン酸プレート「中外」(中外診断科学株式会社)を用いて行った。その結果を図2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、酵母を用いたin vivoの系でヒアルロン酸を生産させ、安全面・コスト面等の点から産業上有利なヒアルロン酸の製造方法、形質転換酵母及びヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターとを提供することが可能となり、産業界に大きく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】cvHAS酵母、cvHAS-cvUGD酵母によるヒアルロン酸生産
【図2】cvHAS酵母、cvHAS-cvUGD酵母によるヒアルロン酸生産

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)工程(1)で得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。
【請求項2】
(1)酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含む少なくとも1種の発現用組換えベクターを用いて酵母を形質転換する工程、(2)工程(1)で得られた形質転換体を培養する工程、(3)該形質転換体により生産されたヒアルロン酸を分離する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。
【請求項3】
プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項4】
誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項3に記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項5】
プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項6】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項1または2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項7】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
【請求項8】
糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンであることを特徴とする請求項2に記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項9】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDPグルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項10】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼおよび/またはグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼである請求項1〜8のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項11】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである請求項2〜10のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項12】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項13】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号6、8、10、12、14または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項14】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項15】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項16】
培養液の温度を4℃以上20℃以下でタンパク質を誘導生産させることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項17】
培養液中のNaCl濃度を、500mM以上にすることによってタンパク質を誘導生産させることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法。
【請求項18】
酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母。
【請求項19】
酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、外因性の糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含む少なくとも1種の発現用組換えベクターを用いて形質転換されたヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母。
【請求項20】
プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする請求項18又は19に記載の形質転換酵母。
【請求項21】
誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項18又は19に記載の形質転換酵母。
【請求項22】
プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項18から20のいずれかに記載の形質転換酵母。
【請求項23】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項18または19に記載の形質転換酵母。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項24】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項18または19に記載の形質転換酵母。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
【請求項25】
糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンであることを特徴とする請求項19に記載の形質転換酵母。
【請求項26】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDP-グルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする請求項19に記載の形質転換酵母。
【請求項27】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼである請求項19に記載の形質転換酵母。
【請求項28】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである請求項19〜27のいずれかに記載の形質転換酵母。
【請求項29】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項21〜29のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項30】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号6、8、10、12、14、または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項31】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項32】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項19〜28のいずれかに記載の形質転換酵母。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項33】
請求項18〜32のいずれかに記載の形質転換酵母から得られるヒアルロン酸含有物。
【請求項34】
酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項35】
酵母中で機能し得るプロモーターの制御下にあるヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAと、糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1種のDNAとを同一又は別個のベクターに含むヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクターまたはその組み合わせ。
【請求項36】
プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする請求項34又は35に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項37】
誘導性プロモーターがストレス誘導性または低温誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項38】
プロモーターがHSP12遺伝子の培養環境ストレス誘導性の機能を有するプロモーターであることを特徴とする請求項36または37に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項39】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項34または35に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号1または3で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項40】
ヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項35または36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号2または4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒアルロン酸合成酵素活性を有するタンパク質。
【請求項41】
糖ヌクレオチドがUDP-グルクロン酸および/またはUDP-N-アセチルグルコサミンである請求項36に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項42】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、グルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン ジホスホリラーゼ、ホスホアセチルグルコサミン ムターゼ、グルコサミン-6リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1リン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、N-アセチルグルコサミン キナーゼ、ヘキソキナーゼ、N-アセチルグルコサミン デアセチラーゼ、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼ、UDP-グルコース-1リン酸 ウリジリルトランスフェラーゼ、イノシトール オキシゲナーゼ、グルクロノキナーゼ及びグルクロン酸-1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼからなる群より選ばれた1種以上のタンパク質であることを特徴とする請求項35に記載に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項43】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、UDP-グルコース デヒドロゲナーゼである請求項35記載に記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項44】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAがクロレラウイルス由来および/またはシロイヌナズナ由来のDNAである請求項35〜43のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
【請求項45】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項35〜44のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号5,7,9、11、13、または15で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項46】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号6、8、10、12、14または16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコース デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項47】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが、以下の(a)または(b)または(c)のDNAであることを特徴とする請求項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号17、19または21で示される塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)上記(a)または(b)のDNA の相補鎖。
【請求項48】
糖ヌクレオチド合成酵素活性を有するタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることを特徴とする請求項35〜45のいずれかに記載のヒアルロン酸製造のための発現用組換えベクター。
(a)配列番号18、20または22で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1または数個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタミン:フルクトース-6リン酸 アミドトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項49】
請求項34〜48のいずれかに記載のベクターを用いて、酵母を形質転換する工程を有する、ヒアルロン酸生産能を有する形質転換酵母の作製方法。
【請求項50】
請求項1〜17のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする化粧料組成物。
【請求項51】
請求項1〜17のいずれかに記載のヒアルロン酸の製造方法により得られたヒアルロン酸を有効成分として含有することを特徴とする機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−174957(P2007−174957A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376390(P2005−376390)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】