説明

ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含んで成る製剤

本発明は、治療環境においてヒストンデアセチラーゼの阻害を最大となるよう最適化するための、特異的な二相性薬物動態プロファイルを示す、バルプロ酸又はその誘導体の内服可能な医薬製剤に関する。
この特異的医薬製剤は、悪性の疾患及びヒストンの低アセチル化に誘発される疾患、即ち過アセチル化の誘導が有益な効果を発揮する疾患を例えば分化及び/又はアポトーシスを誘導させることによって治療することが出来る。
このような二相性放出パターンによって、得られた薬物動態プロファイルは、標的酵素であるHDACを最も効果的に阻害し且つそれに伴いヒストンの過アセチル化を急速且つ永続的に誘導することが可能である。
このようなプロファイルによって、所望とする標的遺伝子発現特性の効率的な制御・調整を行って、治療上の便益に貢献出来ることが確保されるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療環境においてヒストンデアセチラーゼの阻害を最大にするように最適化された特異的二相性薬物動態プロファイル(特性)を示す、内服可能なバルプロ酸又はその誘導体の新規な医薬製剤に係わる。
この特異的な医薬製剤は、悪性疾患及びヒストンの低アセチル化に関連する疾患、即ち過アセチル化の誘導が有益な効果を発揮する疾患を、例えば分化及び/又はアポトーシスを誘導することによって治療することが出来るように意図されたものである。
このような二相性放出パターンによって、生じた薬物動態プロファイルは、標的酵素であるHDACを最も効率的に阻害し而もこれに伴いヒストンの過アセチル化を急速且つ永続した態様で誘導させることが可能である。かかるプロファイルによって、所望とする標的遺伝子発現を効率的に調整することが確保され、その結果治療上の恩恵に寄与するのである。
【背景技術】
【0002】
クロマチン制御と疾患
クロマチンの局所的なリモデリングは、遺伝子の転写活性化において最も重要な工程の一つである。転写性タンパク質をDNAの鋳型(テンプレート)に接触させるためには、DNAのヌクレオソームパッケージングに動的な変化を生起させる必要がある。クロマチンのリモデリング及び遺伝子転写に影響を与える最も重要なメカニズムの一つは、ヒストン及びその他の細胞性タンパク質のアセチル化による翻訳後修飾及びそれに伴うクロマチン構造の変化である。(Davie、1998、Curr Opin Genet Dev 8、173−8;Kouzarides,1999、Curr Opin Genet Dev 9,40−8;Strahl and Allis、2000、Nature 403,41−4)。ヒストンの過アセチル化が生起した場合は、疎水性のアセチル基により惹起されたDNAに対する静電気的引力及び立体障害に変化が生じるため、ヒストンとDNAの間の相互作用が不安定化する。その結果、ヒストンのアセチル化は、ヌクレオソームを解裂崩壊させて、DNAが、転写装置と接触可能な状態になることが出来る。アセチル基の脱離は、ヒストンがDNA及び隣接したヌクレオソームとより強固に結合することを可能にし、かくして転写が抑制されたクロマチン構造を維持することを可能とする。アセチル化は、ヒストンアセチル転移酵素(HAT)活性を有する一連の酵素により媒介される。逆に、アセチル基は、特定のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)酵素によって除去される。
【0003】
これらのメカニズムの破壊は、転写の誤調節を惹起し、自己免疫性、炎症性又は例えば腫瘍化や腫瘍プログレッションなどの過増殖性の障害を含む、多種多様なヒトの疾患の原因となる可能性がある。
更に例えば転写因子のような他の分子は、アセチル化の状態に依存して、その活性及び安定性を変えるのであって、例えば、急性前骨髄性白血病(APL)に関連した融合タンパクであるPML−RARは、p53の脱アセチル化やp53の分解を媒介することによってp53を阻害し、かくしてAPL芽細胞が、p53依存性のガン監視経路を潜り抜けることが可能となるのである。
【0004】
造血前駆細胞においてPML−RARが発現すると、P53が媒介する転写活性化が抑制されることになり、遺伝毒性ストレス(X線、酸化的ストレス)によって惹起されるp53依存性アポトーシスが妨害されることになる。しかしながら、p53の機能は、HDAC阻害剤の存在下では復元されるのであって(Insinga et al.,February 2004、EMBO Journal,1−11)、このことは、p53阻害の根本原因である機構としてPML−PARによるHDACのp53への補充を活発にすること包含する。従って、例えばp53のアセチル化など、ヒストンとは異なるタンパク質のアセチル化が、HDAC阻害剤が有する抗腫瘍活性に決定的な役割を果たすのである。
【0005】
核内受容体とヒストンデアセチラーゼ
核ホルモン受容体は、リガンド依存性転写因子であり、遺伝子発現の正及び負の制御の双方を経由して発生及び恒常性維持を制御している。これらの調節プロセスの欠陥・破綻は、多くの疾患の原因の根底となり、又ガン発生において重要な役割を果たしている。T3R、RAR及びPPARを含む多くの核内受容体が、N−CoR及びSMRTのようなコリプレッサー物質とリガンド不存在下でも相互作用することが出来、それによって転写を阻害することが出来る。更には、N−CoRもまた、アンタゴ二ストによって封鎖されたプロゲステロンとエストロゲン受容体と相互作用をするとの報告がある。非常に興味深いことに、N−CoR及びSMRTは、mSin3タンパク質及びヒストンデアセチラーゼも含む大型のタンパク質複合体内に共存することが判明している(Pazin and Kadonaga、1997;Cell89、325−8)。即ち、核内受容体がリガンドに誘導されて抑制から活性化に切り替わることは、アンタゴニスト酵素活性を有するコリプレッサー複合体とコアクチベータ複合体とが交換することを反映している。
【0006】
核内受容体による遺伝子調節
HDAC活性を含有するコリプレッサー複合体は、核内受容体による抑制を媒介するだけでなく、Mad−1、BCL−6やETOなどの追加的な転写因子と相互作用する。これらタンパク質の多くは、細胞増殖や細胞分化の障害において重要な役割を果たしている。(Pazin and Kadonaga、1997;Cell 89、325−8;Huynh and Bardwell、1998、Oncogene 17、2473−84;Wang, J. et al., 1998、Proc Natl Acad Sci USA 95、10860−5)。例えばT3Rは元来、ウィルス性ガン遺伝子verbAとの相同性に基いて同定されたものであるが、このガン遺伝子は、野生型受容体とは異なりリガンドに結合するのではなく、本質的な転写のリプレッサーとして機能する。更にRARsにおける変異は、多くのヒトのガン、特に急性前骨髄性白血病(APL)及び肝細胞ガンと関連している。APLの患者においては、染色体転座の結果生じたRAR融合タンパク質が、前骨髄性白血病タンパク質(PML)又は骨髄性ジンクフィンガータンパク質(PLZF)を含む。いずれの融合タンパク質も、コリプレッサー複合体の成分と相互作用することが出来るが、レチノイン酸を追加するとコリプレッサー複合体はPML−PARから放逐されるが、他方ではPLZF−RARは構造的に相互作用する。これらの知見は、レチノイン酸による治療後にPML−PAR APLの患者が完全な軽減を達成するのに対して、PLZF−RAR APLの患者の反応は極めて貧弱であった理由を説明するものである。(Grignani et al.,1998、Nature391,811−4)。
【0007】
最近、レチノイン酸での治療後に幾度か再発を経験したPML−RARの患者が、
HDAC阻害剤であるフェニルブチレートによる治療を受け、その結果白血病が完全に治癒している(Warrell et al.、1998、J.Natl.Cancer Inst.90、1621−1625)。
【0008】
ヒストンデアセチラーゼのタンパク質ファミリー
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)及びヒストンデアセチラーゼ(HADACs)の補充が、細胞増殖及び分化において重要な役割を果たしている多くの遺伝子を動力学的に制御するうえで重要な要素であると考えられている。ヒストンH3とH4のN−末端の過アセチル化は、遺伝子の活性化と相関関係があり、一方脱アセチル化は、転写の抑制を媒介する。従って、多くの疾患が、転写因子に影響を及ぼす変異によって惹起せられる遺伝子発現の変化に関連しているのである。例えばPML−RAR、PLZF−RAR、AML−ETO、及びStat5−RARのような白血病融合タンパク質による異常な抑制は、この点に関する原型的な例である。これらの事例のすべてにおいて、染色体の転座は、転写アクチベータをリプレッサーに変化させ、これによって、HDACsの補充を経由した造血分化に重要である標的遺伝子を本質的に抑制する。同様の事象が、多くの他のタイプのガンの発病の原因になっている可能性が大いにあり得る。同様のことが、自己免疫、炎症又は過増殖性障害などについてもあてはまるとの証拠が増大している。
【0009】
哺乳類のヒストンデアセチラーゼは、3種のサブクラス(Gray及びEkstroem、2001)に分類されることが出来る。HDAC1、2、3、及び8は酵母RPD3タンパク質の相同体であって、クラスIを構成する。HDAC4、5、6、7、9、及び10は、酵母Hda1タンパク質に関連ずけられ、クラスIIを構成する。最近、酵母Sir2タンパク質の哺乳類由来相同体が幾つか、同定されており、NAD依存性であるデアセチラーゼの第三のクラスを形成する。更にHDAC11は、クラスIIの構造の特徴をもつクラスIヒストンデアセチラーゼとして分類されている。これらHDAC類は全て、多タンパク質複合体のプレトラ(plethora)のサブユニットとして細胞内に存在するように思われる。特にクラスIとクラスIIのHDAC類は、転写性のコリプレッサー、mSin3、N−CoR及びSMRTと相互作用することが明らかにされたが、これらのコリプレッサーは、HDAC類を転写因子に補充するために要求される架橋因子として機能する。
【0010】
HDAC阻害剤を用いた治療
更なる臨床研究が最近、HDAC阻害の原理に基づいてガン患者の組織的な臨床治療を開発するために開始されている。現在のところ、第II相臨床試験が、単一療法として密接に関連した酪酸誘導体であるPivanex(Titan Pharmaceuticals)を用いて終了しているが、その結果ステージIII/IVの非小細胞肺ガンにおける活性が証明された(Keer et al.、2002、ASCO、Abstract No.1253)。更に多くのHDAC阻害剤が同定されており、その内NVP−LAQ824(Novartis)及びSAHA(Aton Pharma Inc.)は、第II相臨床試験において試験されたヒドロキサム酸の構造クラスに属するものである(Marks et al.、2001、Nature Reviews Cancer 1、194−202)。別のクラスは、環状テトラペプチドから成る群であり、例えばT−細胞リンパ腫の治療を目的とした第II相臨床試験に使用され好結果を得たデプシペプタイド(FR901228−藤沢)がある(Piekarz et al.,2001、Blood 98、2865−8)。更には、ベンズアミドクラスに関連した化合物であるMS−27−275(三井製薬)は、現在血液悪性腫瘍患者に対する第I相臨床試験において試験中である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
バルプロ酸
バルプロ酸(VPA;2−プロピル−ペンタン酸)は、異なる分子作用機序に依拠した多様な生理活性を有している:
− VPAは、抗癲癇薬である。
− VPAは、催奇形性である。妊娠中に抗癲癇薬として用いられた場合、VPAは、生まれた子供に、数パーセントの先天性欠損(神経管閉鎖欠損症及びその他の奇形・形成異常)を誘発する。マウスでは、VPAは、適量を投与した場合マウス胎児の多数において催奇形性を示す。
− VPAは、核内ホルモン受容体(PPARδ)を活性化する。いくつかの別の転写因子が抑制されるだけでなく、因子の中には有意に抑制されないものもある(グルココルチコイド受容体、PPARα)。
− VPAは、時に肝毒性を惹起することがあるが、これはコエンザイムAで代謝されにくいエステル類に依存して変る。
− VPAは、HDAC類の阻害剤である。
【0012】
VPA誘導体の使用によって、これら異なる活性が、異なる分子作用機序により媒介されることを決定することが出来た。催奇形性と抗癲癇作用とは、異なる作用様式に従ったものであって、その理由は、これらの化合物について優先的に催奇形性のもの又は優先的に抗癲癇性であるものを単離することが可能であるからである(Nau et al.、1991、Pharmacol.Toxicol.69、310−321)。PPARδの活性化は、催奇形性と厳密に相関関係を有していることが判明しており(Lampen et al.、1999、Toxicol.Appl.Pharmacol.160、238−249)、PPARδ活性と催奇形性のいずれもが、VPAが持つ同一の分子活性を必要としていることが示唆されている。また、F9細胞の分化は、Lampen et al.、1999が示唆しまた分化マーカーの分析によって報告・文献化されている(Werling et al.、2001、Mol.Pharmacol.59、1269−1276)ように、PPARδの活性化と催奇形性と厳密な相関関係を有している。PPARδの活性化は、VPA及びその誘導体が持つHDAC阻害活性に由来することが示されている(WO 02/07722 A2;WO 03/024442 A2)。更には確立されたHDAC阻害剤であるTSAが、PPARδを活性化し、VPAと同一形式のF9細胞分化を誘発することも明らかにされている。これらの結果から、ただ単にPPARδの活性化だけでなくまたVPA又はVPA誘導体持つF9細胞分化と催奇形性の誘発も、HDAC阻害により惹起されるものと結論ずけられる。
【0013】
抗癲癇活性及び鎮静活性は、異なった複数の構造―活性の関係に従うものであり、かくしてHDAC阻害剤とは明確に異なった主たるVPA活性に依存することは明白である。肝毒性の機構は、よく理解されておらず、VAP−CoAエステルの形成に関連するのかどうかは、分かっていない。HDAC阻害剤は、しかしながら、CoAエステルの形成を必要としないように見える。
【0014】
ヒストンデアセチラーゼの阻害剤としてのバルプロ酸
VPAは癲癇に使用される薬剤として開発されてきた。従って、VPAは、全身的にか、経口によってか又は静脈内に投与されて、脳血液関門を通過して脳組織内の癲癇の標的領域に到達し、かくして抗癲癇の使命を果たし得ることになる。更にVPAは、多くの異なった型のヒトのガン治療に、単剤として又は全ての他の種々の坑腫瘍治療と併用して用いられた場合に有益な効果があることが分かっているが、この場合かかる抗腫瘍治療剤はそれぞれ、顕著に異なる作用様式に依拠して、HDAC活性を持つ酵素の特異的セットを阻害し、かくして分化及び/又はアポトーシスを引き起こすことになる(WO 02/07722 A2、EP1170008;WO 03/024442、EP1293205A1)。悪性疾患、自己免疫疾患又は他の炎症性又は過増殖性の障害を治療又は予防するために、VPAもまた、全身的にか経口によってか又は静脈内に投与される。更にVPAは、効果的にヒトの皮膚に浸透し、従って自己免疫疾患、炎症性疾患又はヒトの皮膚の過増殖性疾患、例えば乾癬及びヒトの皮膚ガンなどの治療又は予防に使用する場合、皮膚に局所投与して、有益な効果を発揮させることが可能である(EP application No.03014278.0)。
【0015】
ガン治療のためのテーラーメイド薬剤
経口投与を行うために、VPAは、“緩徐放出”のみならず“急速放出”投与製剤として開発されている。しかしながら、“緩徐放出”製剤を使用した場合は、長期間に亘って血中のVPA濃度の増加が遅くなり、ヒストンデアセチラーゼ活性を持つ酵素を阻害するのに必要なVPAの血漿濃度に効率的に到達することが出来ない。更には、細胞による代償的反作用が幾つか、VPA濃度の緩徐な上昇の過程で効果的な血漿濃度に到達しないうちに誘発され、その結果VPAは、ヒストンデアセチラーゼ活性を持つ酵素阻害効果が低減してしまう。一方VPAの“急速放出”製剤のみに基づく製剤は、血中のVPAの初期高濃度を招来し、その結果効果的HDAC阻害の期間が短くなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、本発明者らは、VPAの絶対的血中濃度だけでなく、治療中のおけるVPAの効果的な濃度の持続が、ヒストンデアセチラーゼ活性阻害を最大にするために非常に重要であることを証明することが出来た。所望とされ且つ最も有益な薬物動態プロファイルは、従来通暁され而も確立された医薬製剤の使用によっては得ることは出来ない。
【0017】
従って、従来確立された製剤の持つ幾つかの欠点を検討した結果、本願発明は、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含んで成る、二相性放出プロファイルを有する医薬製剤に関するものである。好ましくは、該製剤は内服製剤である。
また本願の別の局面は、(i)少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する区画部からなる急速放出成分及び(ii)少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する区画部からなる緩徐放出成分とから成る医薬製剤であって、急速放出成分の区画部が、緩徐放出成分の区画分とは異ることを特徴とする、前記医薬製剤である。
【0018】
更に本願のまた別の局面は、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含んで成る医薬製剤であって、100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてアメリカ薬局方24、方法724、装置2に従って測定した場合、該製剤中のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の10から60%が30分以内に放出され、且つヒストンデアセチラーゼ阻害剤の50から100%が6時間以内に放出されることを特徴とする、前記医薬製剤である。
本明細書において使用される“放出”なる用語は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の該医薬製剤からの放出を言う。
【0019】
本明細書において使用される“放出プロファイル(特性)”なる用語は、一定期間に亘って生起するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の放出を言う。医薬製剤のインビトロでの放出プロファイルの決定・測定方法は、当業者にとっては公知である。本願発明に従った好ましい測定方法は、100rpmにおける900mlのpH6.8緩衝液USP中でのアメリカ薬局方(USP)24、方法724、装置2である。
“二相性”の放出プロファイルは、急速放出(即座の放出)の第一相と後続する緩徐放出(持続放出)の第二相を示す。好ましくは、製剤中のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の10から60%が30分以内に放出され、また製剤中のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の50から100%が6時間以内に放出される。より好ましくは、製剤中のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の20から50%が30分以内に放出され、また製剤中のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の60から100%が6時間以内に放出される。
【0020】
本明細書において用いられる “ヒストンデアセチラーゼ阻害剤”なる用語は、ヒストンデアセチラーゼ活性を有する酵素のヒストンデアセチラーゼ活性を阻害する性能を有する物質を表す。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の阻害活性は、本願明細書の実施例1に記載したインビトロ検定定量試験により測定・決定することが出来る。IC50値は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の阻害活性の尺度として用いることが出来る。低いIC50値は、高い阻害活性を意味する;高いIC50値は、低い活性を示す。本願発明に従って使用されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼについて好ましくはIC50値が1mM以下、より好ましくは500μM以下の数値を示す。
【0021】
好ましい一つの実施態様に従えば、かかるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、即ち少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼのサブセット又は選択されたデアセチラーゼを優先的に阻害する性能を有する。本明細書において用いられる“優先的に阻害する”なる用語は、第一群のヒストンデアセチラーゼが、第二群のヒストンデアセチラーゼよりもある特定のヒストンデアセチラーゼ阻害剤によってより強度に阻害される場合を言う。通常は、第一群のヒストンデアセチラーゼを優先的に阻害するヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、前記した第一群のヒストンデアセチラーゼに関してIC50値が800μM以下より好ましくは500μM以下である。第二群のヒストンデアセチラーゼに関するIC50値は、通常800μM以上、好ましくは1mM以上である。
【0022】
第一の具体的な実施態様においては、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、即ち少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、好ましくはクラスIヒストンデアセチラーゼを阻害する性能を有する。かかる第一の実施態様に従えば、クラスIヒストンデアセチラーゼは、クラスIIヒストンデアセチラーゼよりも強度に阻害される。かかる第一の実施態様においては、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼ酵素HDAC1,2,3及び8に対してIC50値が、通常は800μM以下、好ましくは500μM以下である。更に、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クラスII酵素HDAC4,5,6,7,9及び10に対してはIC50値が通常は、800μM以上、好ましくは1mM以上である。
【0023】
第二の具体的実施態様においては、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、即ち少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クラスIIヒストンデアセチラーゼを優先的に阻害する性能を有する。かかる第二の具体的な実施態様に従えば、クラスIIヒストンデアセチラーゼは、クラスIヒストンデアセチラーゼよりも強度に阻害される。かかる第二の具体的実施態様においては、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クラスII酵素HDAC4,5,6,7,9及び10に対してIC50値が、通常は800μM以下、好ましくは500μM以下であるのに対して、クラスI酵素HDAC1,2,3及び8に対するIC50が、好ましくは800μM以上、より好ましくは1mM以上である。
【0024】
好ましいヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、バルプロ酸、バルプロ酸の薬学的に受容可能な塩類、バルプロ酸の誘導体類及びこれらの薬学的に受容可能な塩類である。最も好ましいのは、バルプロ酸及び例えばバルプロ酸ナトリウム塩などその薬学的に受容可能な塩類である。
【0025】
バルプロ酸の誘導体としては、構造式Iの化合物を含むが、これらに限定はされない:
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ独立して、選択的に一つまた数個のヘテロ原子を含みまた置換されていてもよい、線状又は分枝状の、飽和又は不飽和の、C3―25脂肪族炭化水素基であり、Rは、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ又はアルキル化されていてもよいアミノ基である]。
【0026】
及びR残基が異なる場合は、キラル化合物が生じる。通常立体異性体の一方は、他方の異性体よりも強い催奇形性を有し、かかる催奇形性の強い異性体は、より効率的にPPARδを活性化する。従ってかかる異性体は、HDACsをより強力に阻害することが期待される(WO 02/07722A2)。本願発明は、それぞれの化合物のラセミ混合物及び特に活性のより強い異性体を包含する。
【0027】
及びRの炭化水素鎖は、当該炭化水素鎖における炭素原子を置換する一つ又は数個のヘテロ原子(例えば酸素、窒素、硫黄)を含んで成っていてもよい。このことは、ヘテロ原子が相当する炭素群と同一形式の混成を有する場合は、炭素群に類似した構造が、ヘテロ原子群によってとり得る可能性がある、という事実によるものである。
及びRは、置換されていてもよい。可能な置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシ基及びアルコキシ基並びにアリール基及び複素環基を含む。
【0028】
好ましくは、R及びRは独立して、3乃至10、4乃至10又は5乃至10の炭素原子を含んで成る。またR及びRは独立して、飽和であるか又は一つの二重結合若しくは一つの三重結合を含んでいることが好ましい。特に側鎖(R)の一つは好ましくは、sp混成炭素原子を2位及び3位に含むか又は類似構造を生成するヘテロ原子を含んで成る。この側鎖は、三つの炭素原子又はヘテロ原子を含むはずのものであるが、これより長い鎖もまた、HDAC阻害する分子を生成する可能性がある。また芳香族環又はへテロ原子をRに含有させることによって、HDACタンパク質の接触性位置は、広範な結合性分子を収容するものであることは明らかであるから、HDAC阻害活性を有する化合物を生成させるものと考えられる。催奇形性を有するVPA誘導体がHDAC阻害剤となるという観察結果によって、これまで適当な抗癲癇薬としては無視されてきた化合物もまた、HDAC阻害剤と考えられている(WO02/07722 A2)。特に、但し専らこれのみではないが、Rとしてプロピニル残基を有し且つRとして7又はそれ以上の炭素原子の残基を有する化合物が検討されている(Lampen et al.、1999)。
【0029】
好ましくは、“COR”基は、カルボキシル基である。またカルボキシル基の誘導体化も、潜在的なHDAC阻害活性を有する化合物を生成させるために検討されねばならない。このような誘導体は、ハロゲン化物類(例えば塩化物など)、エステル類又はアミド類であればよい。Rがアルコキシ基である場合は、かかるアルコキシ基は、1乃至25、好ましくは1乃至10の炭素原子を含んで成る。Rが、モノー又はジ−アルキルアミノ基である場合、かかるアルキル置換基は、1乃至25、好ましくは1乃至10の炭素原子含んで成る。
【0030】
ある一つの実施態様において、R及びRは独立して、一つの二重結合又は三重結合を含んで成っていてもよい線状又は分枝状のC3−25の炭化水素鎖である。この実施態様の好ましい一例は、4−イン−VPA又はその薬学的に受容可能な塩である。
更なるヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、このような二相性放出製剤として使用され、下記のものを包含するが、これらに限定されるものではない。即ち、NVP−LAQ824、トリコスタチンA(Trichostatin A;TSA)、ヒドロキサム酸スベロイルアニリド、CBHA、ピロキサミド(Pyroxamide)、スクリプテイド(Scripaid)、CI−994、CG−1521、クラミドシン(Chlamydocin)、例えばA−161906、二環式アリール−N−ヒドロキシカルボキサミドなどのヒドロキサム酸のビアリールエステル、PXD−101、スルホンアミドヒドロキサム酸、TPX−HA類似体(CHAP)、オキサムフラチン(Oxamflatin)、トラポキシン(Trapoxin)、デプデシン(Depudecin)、HDAC阻害活性を示す微生物代謝産物、アピディシン(Apidicin)、例えばー但しこれらに限定されないーMS−27−275、ピロキサミドとその誘導体などのヒドロキサム酸誘導体、例えばー但しこれらに限定されないー酪酸及びその誘導体、例えばピバネックス(Pivanex;酪酸ピバロイルメチルエステル)などの短鎖脂肪酸類、例えばー但しこれに限定されないートラポキシンA、デプシペプタイド(FK−228)や関連ペプチド化合物などの環状テトラペプチド化合物類、タセディナリン(Tacedinaline)、MG2856、及びHDACクラスIII阻害剤,即ちSIRT阻害剤、又はHDACアイソエンザイム阻害特異性を発揮する化合物類である。
【発明の効果】
【0031】
バルプロ酸エステルの医薬製剤、投与と薬物動態プロファイル
定常状態での一日2回の経口投与に対する最適な血清プロファイルは、VPAの血清濃度を30分以内に90と200μg/mlとの間の量、より好ましくは110と180μg/mlとの間のレベルにまで急激に増加させることを特徴とする。このような血清濃度レベルは、8乃至10時間は一定のままであり、次に110μg/ml以下に低下する。しかしながら、VPAの血清濃度準位は、治療・処置の間は80μg/ml以上、より好ましくは100μg/ml以上に永続的に留まる。表示した時間は、経口投与の(の開始から)経過時間を言う。
【0032】
経口投与のための放出制御製剤においては、多回投与単位製剤が、単回単位投与製剤よりも優れている。有効成分の放出は、胃の充満の程度には依存することはなく、異なる患者においても放出のプロファイルは類似したものとなる。更には投薬ダンピングの現象を回避することが出来る。(J Butler et al.,Pharm.Technol.1998,122−138)。
VPA及びその塩類の投与のための種々の医薬組成物は、例えば非経口製剤、経口用液剤、胃液非溶解性コーティング錠剤、徐放性錠剤及び微小錠剤などが一般的に利用可能である。VPAの液性及びバルプロ酸ナトリウムの吸湿性の故に、多回投与単位製剤の処方は、技術的にやり甲斐があり、興味深い。
【0033】
上記したVPAとその塩類の所望とする血清濃度準位は、現存する製剤によって実現出来ないインビトロでの急速放出パターンと緩徐放出パターンとの組み合わせによって達成することが出来るのであって、かくして効果的にHDACの標的酵素を阻害出来る。例えばガン又はその他の過増殖性若しくは炎症性の障害をヒストンデアセチラーゼの阻害によって治療又は予防するために、所望とするVPAの血清濃度プロファイルを実現出来る、経口投与のための新規の医薬製剤に対する要求がある
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
このような要求は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えばバルプロ酸ナトリウムの二相性放出パターンを有する薬剤組成物によって好ましくは満たされる。本発明に従った医薬組成物は従って、急速放出成分と緩徐放出成分とを通常は所定の割合で含んで成るのが好ましい。ある一つの具体的な実施態様においては、かかる医薬組成物は本質的に、所定の比率での急速放出成分と緩徐放出性の成分とから成る。
急速放出成分と緩徐放出成分との比率は、好ましくは1:0.5と1:4との間、より好ましくは1:1と1:3との間である。ある一つの実施態様においては、その比率は、重量対重量基準である。また別の実施態様では、その比率は、それぞれの成分中の区画(例えば微細な錠剤)の数の比率である。
【0035】
かかる医薬製剤は、インビトロ放出が、30分以内に20乃至50%、2時間以内で25乃至65%、4時間以内で55乃至85%、また6時間以内で70乃至100%である(100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中でのアメリカ薬局方24、方法724、装置2)。このような両成分の組み合わせの吸水量は、25℃で相対湿度40%に暴露した場合24時間以内で通常5%以下である。
【0036】
急速放出成分は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)のインビトロ放出が15分で少なくとも90%であるのが好ましい(100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中でのアメリカ薬局方24、方法724、装置2)。この成分の吸水量は、25℃で相対湿度40%に暴露した場合、24時間以内で通常は5%以下である。
緩徐放出成分のインビトロ放出は、1時間以内で0乃至30%、4時間以内で20乃至60%、そして6時間以内で55乃至95%であるのが好ましい(100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中でのアメリカ薬局方24、方法724、装置2)。この成分の吸水量は、25℃で相対湿度40%に暴露した場合、24時間以内で通常5%以下である。
【0037】
緩徐放出成分は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の含量が通常は50乃至96重量%、好ましくは70乃至95%である。急速放出成分は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の含量が通常50乃至96重量%、好ましくは70乃至95%である。
【0038】
大量の薬物が投与されなければならないので、多粒子製剤が好ましい。従って、本発明の医薬製剤は、ある一つの実施態様においては、多数の区画部からなる多回単位投与製剤である。この“区画部”なる用語は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する粒子を意味する。この粒子は、一つ又はそれ以上のコーティング層を有していてもよい。かかる粒子に含有されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤は好ましくは、前記一つ又はそれ以上のコーティング層によって環境から隔離されるのが好ましい。好ましくは粒子は微細錠剤(microtablets)である。その粒子は、形状が異なっていてもよく、好ましくは球状又は両凸状である。かかる単一区画部の最大の径(例えば直径)は、通常3mm、好ましくはかかる単一区画部の径は、0.5乃至2.5mmである。
【0039】
急速放出成分は、複数の区画部を含んで成り、好ましくはかかる急速放出成分は、本質的に複数の区画部から成る。緩徐放出成分は、複数の区画部を含んで成り、好ましくは緩徐放出成分は、本質的に複数の区画部から成る。ある一つの具体的な実施態様においては、急速放出成分及び緩徐放出成分とは、複数の区画部を含んで成り、好ましくは急速放出成分及び緩徐放出成分とは、本質的に区画部から成る。
【0040】
急速放出成分の単一区画部は、緩徐放出成分の単一区画部とは異なる。
急速放出成分の単一区画部は、経口投与後にヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の放出が極めて速い。かかる単一区画部は、一般に知られた造粒法、ペレット化法又は打錠法により製造される。
純粋な物質と比較すると、優れた取扱い性は、適切な賦形剤及び製剤方法を用いることによって吸湿性低下を行うことによって達成されるのである。例えば、これらの成分は、吸湿性能の低下を実現するために適当なポリマーを用いてコーティングすることが出来る。
【0041】
緩徐放出成分の単一の区画部は、経口投与の後、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の放出が緩徐である。かかる区画部の最大径は、通常3mmであり、一般に知られた造粒法、ペレット化方法、又は打錠方法により製造される。
既に述べたように、優れた取扱い性は、純粋な薬物と比較した場合吸湿性能を低下させることによって達成されるが、かかる吸湿性能低下は、適切な賦形剤及び製剤方法を用いることによって実現される。例えば、かかる成分は、吸湿性能の低下及び緩徐放出パターンを達成するために適当なポリマーを用いてコーティングすることが出来る。
【0042】
これらの区画部は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の含有量が50乃至95重量%、好ましくは60乃至85%である。
本発明の一つの局面においては、かかる区画部は、コーティングされた微小錠剤である。通常、急速放出成分をコーティング処理した微小錠剤は、緩徐放出成分の微小錠剤とはコーティングが異なっている。
【0043】
一つの具体的な局面において、コーティングされた微小錠剤は、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)、滑剤、ポリマー及び潤滑剤からなる。好ましくはコーティングされた微小錠剤は、本質的にこれらの成分から成る。滑剤は好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸である。適当な潤滑剤は、二酸化珪素、メチル化二酸化珪素及び/又はタルクを含む。ポリマーは好ましくは、メタクリル酸アンモニウムコーポリマー、エチルセルロース及び/又はハイプロメロース(hypromellose)である。
また別の局面においては、急速放出成分のコーティングされた微小錠剤のコーティングは、少なくとも一種のポリマーと少なくとも一種の適当な可塑剤を含んで成る。かかるポリマーは好ましくは、アミノアルキルメタクレート共重合体、ポリビニルアルコール及び/又はハイプロメロースである。適当な可塑剤は、トリアセチン(Triacetin)、セバシン酸二ブチルエステル、クエン酸トリエチルエステル、ポリエチレングリコールを含む。その他の可塑剤は、文献で概観することが出来る(例えば、Lexicon der Hilfsstoffe,H.P. Fielder, Editio Cantor Verlag Aulendorf,4.Auflage 1998)。
【0044】
また更なる局面においては、緩徐放出成分のコーティングされた微小錠剤のコーティングは、少なくとも一種のポリマーと少なくとも一種の適当な可塑剤とを含んで成る。適当なポリマーは好ましくは、メタクリル酸アンモニウムコーポリマー及び/又はエチルセルロースである。
これら両成分とも、所定の割合でカプセル又は単回量投与のためのコンテナー容器に封入する。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)のカプセル又は単回量投与のためのコンテナー容器中の含量は、0.1乃至3グラム、好ましくは0.2乃至1.5グラムの範囲であればよい。
単回量投与ためのコンテナー容器は、シャセイ(sachets)又はパウチ(pouches)であってもよい。湿度に対する充分な障壁を与えるために、最小厚みが9μmのアルミニウムホイル又はその代わりに相当する特性を有するコート紙又はその他の材料から成る。
【0045】
治療のためのヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の最適量は個別に、それぞれの投与間隔で単回投与のためのカプセル又はコンテナー容器を必要量投与することにより達成・実現される。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばバルプロ酸ナトリウム)の治療に最適の量は、患者の体重に依存して異なる。
本発明は更に、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む急速放出成分をヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む緩徐放出成分とを組み合わせ、かくして区画部を含んで成る多回投与単位製剤を得ることからなる、二相性放出プロファイルを有する医薬製剤の調製方法に係わる。本発明の医薬製剤に関して本明細書において記載した様々な実施態様は、この方法を準用する。
【0046】
好ましくは、単一医薬を含有する区画部(例えば被覆された微小錠剤)は、造粒、押出し、ホットメルト、ペレット化、打錠及びコーティングなどの方法により製造される。
これら両成分は、所定の割合で混合し、カプセル又は単回投与のためのコンテナー容器に充填すればよい。或いはその代わりに、両成分は、前もって混合することなく順次カプセル又は単回投与のためのコンテナー容器に充填してもよい。カプセル又は単回投与のためのコンテナー容器のバルプロ酸ナトリウムの含量は、0.1乃至3グラム、好ましくは0.2乃至1.5グラムである。
【0047】
本発明はさらに、本明細書に記載した医薬製剤を下記する疾患・障害を治療するための医薬を製造する目的に使用する用途に係わる。即ち、エストロゲン受容体依存性乳ガン、エストロゲン受容体非依存性乳ガン、ホルモン受容体依存性前立腺ガン、ホルモン受容体非依存性前立腺ガン、脳腫瘍、腎臓ガン、大腸ガン、結腸直腸ガン、膵臓ガン、膀胱ガン、食道ガン、胃ガン、尿生殖器ガン、胃腸ガン、子宮ガン、卵巣ガン、星状膠細胞腫、膠腫、皮膚ガン、扁平上皮ガン、角化棘細胞腫、ボウエン病、皮膚T−細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞ガン、紫外線角化症;魚麟癬;ざ瘡、尋常性ざ瘡、肉腫類、カポジ肉腫、骨肉腫、頭と首のガン、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、白血病類、リンパ腫類及び/又はその他の血液細胞ガン、甲状腺耐性症候群、糖尿病、地中海貧血(サラセミア)、硬変症、原生動物感染症、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、全ての形態のリウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、非インシュリン依存性糖尿病、喘息、鼻炎、葡萄膜炎、紅斑性狼瘡、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性大腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、繊維増殖性疾患、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディ・ジョルジ症候群、グレーブス病、癲癇、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病、分裂性情動障害、躁病、脳卒中、気分不一致精神病徴候、双極性不調、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発性硬化症、激昂、心肥大、心不全、再灌流障害及び又は肥満症である。
【0048】
別の局面においては、本発明は、これら障害・疾患の一つ又はそれ以上の治療又は予防のための薬剤の製造をするためにヒストンデアセチラーゼ阻害剤を使用する方法において、該薬剤が、二相性放出プロファイルを示す薬剤組成物であることを特徴とする前記使用方法に係わる。本明細書において発明の医薬製剤に関して記載した種々の実施態様は、かかる使用方法を準用する。
本発明の更なる別の局面は、上記にて列挙した障害・疾患の一つ又はそれ以上を治療する方法であって、本明細書において既述した医薬製剤の有効量を治療を必要とする患者に投与することから成る前記治療方法である。かかる医薬製剤の有効量を投与することは、治療するべき患者の症状を改善するのに適している。本明細書において発明の医薬製剤に関して記載した種々の実施態様は、かかる治療方法を準用する。
【0049】
本発明は、HDACタンパク質の効果的に阻害する、二相性薬物動態放出プロファイルをもつ薬剤組成物を提供する。かかる製剤は、負の副作用を亢進することなく、極めて有益な特性を示す。かくして、当該化合物を当初に急速に放出する結果、投薬後間もなく細胞性HDAC活性を阻害するだけの関連薬物濃度が得られる。追加の化合物が引き続いて緩徐に放出されるため、有効治療用量を僅かに上回る血清量においてHDAC阻害が長期間維持されることが可能となる。当該化合物の濃度を治療範囲内に一定に持続させる結果、ヒストンデアセチラーゼ活性を有する標的酵素に対するVPAの効果が延長されることになる。このような効果は、例えばVPAで治療中の患者の抹消血液中のヒストン過アセチル化ヒストンなどの代用のマーカーの分析することによってモニターすることが出来る。重要なことには、VPAは、HDACクラスII(2)の酵素に対する阻害活性がより弱いのとは対照的に、HDACクラスI(1)アイソザイムを優先的に阻害することが知られている。このようなプロファイルは、HDACクラスII(2)酵素の阻害が、心毒性の副作用に関連している(Zhang et al.、Cell2002、110:479−488;Antos et al.、JBC 2003、278:28930−7)可能性があるため、大いに望まれていることである。即ち、VPAの血清濃度が薬学的に関連した濃度内に持続されるため、ヒストンデアセチラーゼ、特にクラスIアイソザイムの阻害が延長し、その結果心毒性の副作用が最少化されことになる。
【0050】
本発明において記載されたヒストンデアセチラーゼ阻害剤の医薬製剤を投与することによって、ヒストンデアセチラーゼの異常補充・回復に基く、例えば過増殖性又は炎症性の諸障害などの悪性症状及び/又は疾患に罹患した患者においてヒストンデアセチラーゼ活性を示す酵素の阻害が延長することは、このような疾患に罹患した患者に対する予防及び治療のストラテジーを最適化する一つの新規な問題解決法であることは明らかである。即ち、急速放出と緩徐放出の薬物導体プロファイルを組み合わせてなる内服用組成物を使用することは、VPA,即ちヒストンデヒストンデアセチラーゼ阻害剤をたとえば悪性腫瘍疾患又は炎症性疾患などの過増殖性障害の治療又は予防に適用するうえで極めて有益であると見なされる。
【0051】
本発明の別の実施態様においては、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤のその他の種類の投与法、例えばー但しこれらに限定されないがー本発明において記載されたヒストンデアセチラーゼ阻害剤の放出パターン及び血清濃度準位を創出することを可能ならしめるような静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与(貼付薬剤を含む)、他の経口投与、経鼻投与、腹腔内投与又は坐薬を用いた投与などを含むものである。
【実施例】
【0052】
実施例1
VPAは、ヒストン脱アセチラーゼクラスI酵素(図1)の優先的阻害剤として作用を発揮し、患者の細胞系及び末梢血細胞(図3)においてヒストン過アセチル化を誘導する。本発明のために提示された証拠は、次の特許にも関連している: 即ち、WO02/07722A2、EP 1170008; WO03/024442A2、EP1293205A1; EP出願番号第03014278.0号である。
【0053】
方法:
インビトロHDAC分析でのIC50値の測定:High5昆虫細胞中での発現により誘導された、組み換えHDACタンパク質におけるヒストン脱アセチラーゼ活性の測定は、人工基質(Fluor de Lys、Biomol)の特異的脱アセチル化に依拠し、基くものである。
【0054】
この基質の代謝回転は、フルオロメトリーにより検出し且つ数量化・定量化することが可能である。HDAC阻害剤の添加によって基質の加水分解が制約されるため、その結果フルオロメトリーのシグナルが低下する。IC50値は、用量―反応(dose−response)曲線から算出される。この検定定量法は、二つの工程に分けられる:即ち、第一の工程においては、基質(Fluor de Lys/Biomol KI−104)が、ヒストン脱アセチラーゼにより加水分解され、また第二の工程では、HDAC活性が停止されるが、蛍光基は感光液(Developer/Biomol KI−105)の添加により活性化される。組み換え型タンパク質及びHDAC阻害剤は、96ウェルプレートの各ウェル毎に合計容量として25μlとなるように反応緩衝液(Biomol KI−143)と混合する。ウエル当り25μlの基質(反応緩衝液で1:100に希釈)を加えて反応を開始させる。ヒストン脱アセチラーゼ活性を有さない陰性対照(ネガティブコントロール)及びHDAC阻害活性を有する陽性対照(ポジティブコントロール)も、同様にして処理する。反応は、15乃至60分後に感光液(反応緩衝液に1:20に希釈)50μlを加えて終了させる。更に室温で15分のインキュベーションを行った後では、蛍光シグナルは60分間安定であり、蛍光読み取り器(励起フィルター:390nm、発光フィルター:460nm)により検出可能である。組み換え型ヒストン脱アセチラーゼ類は、Buggy et al.,Cloning and characterization of a novel human histone (新規なヒトヒストン脱アセチラーゼのクローニング及び特性化)、HDAC8.Biochem J.2000 Aug 15;350 Pt 1:199−205において記載された方法に従って製造し且つ精製することが出来る。
【0055】
マウス異種移植モデル:24匹の胸腺欠損Nu/Nu−1−(Harlan)マウスに、100μlのPBS(燐酸緩衝液)中1×10のPC3前立腺ガン細胞を右脇腹(一群は8匹の動物)に注入した。腫瘍を4日間増殖させた。動物は、PBS(コントロール・対照)又はVPAを2×200mg/kg/d又は2×200mg/kg/dなる用量でそれぞれ、day 5からday 21まで投与・処置した。腫瘍容積は、3乃至4日毎に測定した。
【0056】
ウェスターンブロット:第I/II相臨床試験においてVPAの静脈内投与治療を受けている患者からVPA治療の開始前及び開始後6時間後、24時間及び48時間後に抹消血細胞を採取した。全細胞抽出物は、12%変性ポリアクリルアミドゲル上での変性SDSゲル電気泳動を実施するためにRIPA緩衝液及びタンパク質阻害剤中で細胞溶解を行うことによって調製された。アセチル化ヒストンH3及びH4及び標識タンパク質HDAC2は、抗アセチルヒストンH3抗体(Upstate、#06−942)、抗―アセチルヒストンH4抗体(クローン T25;EP特許出願第02.021984.6号)、及び抗−HDAC2抗体(SCBT、SC−7899)を用いてウェスターンブロット分析により検出した。等量負荷対照として、PVDV膜はクーマシーで染色した。
【0057】
結果:
以前の特許出願において、本発明者らはこれまでに、VPAが多くの異なった種類のヒトのガン及び他の過増殖性又は炎症性の障害の治療に、単一薬剤として又は顕著に異なる作用様式に依拠した全ての種類の他の抗腫瘍薬剤と組み合わせて使用することが出来る、という証拠を提示してきた(特許出願:WO02/07722 A2、EP 1170008;WO03/024442 A2、EP 1293205A1;EP出願第03014278.0号)。本明細書においては、本発明者らは、VPAがヒストン脱アセチラーゼクラスI酵素(図1)の優先的な阻害剤として作用を発揮し、従って患者に使用してヒストン過アセチル化及び標的タンパク質であるHDAC2(図3)の制御を誘導するに有効な、治療血清濃度に到達することが出来る証拠を示すこととする。
【0058】
図1は、VPAのHDACイソ酵素阻害特異性を調べるインビトロ定量検定法の結果を示す。High5昆虫細胞から精製された組み換え型タンパク質についてVPAの異なる投与量を用いて用量―応答曲線を作成した結果、HDAC1及び8(何れもクラスI)に対するIC50値が、それぞれ200μM及び300μMであるのに対して、HDAC6(クラスII)のIC50値は1.1mMであって、VPAが優先的にHDACクラスI酵素を阻害することが明らかとなった。これらのデータは、免疫沈降物中で単離されたヒトHDAC酵素から得られた結果によって支持されている(Goettlicher他、EMBO J。(2001)、20:6969−78)。このような免疫沈降法による検定定量試験をおこなった結果、クラスIHDAC酵素(例えばHDAC1、2、3、及び8)に対するVPA阻害IC50値が、約100μMから400μMまでの範囲に渉り、クラスII酵素(例えばHDAC5、6、及び10)に対しては約1100から2800μMまでの範囲に渉ることが判明した。このHDACクラスI酵素の優先的な阻害は、HDACクラスII酵素の阻害が心毒性の副作用に関連している可能性があるため、非常に望ましいプロファイルである(Zhang et al.、Cell、2002、110:479−488;Antos et al.、JBC、2003、278:28930−7)。
【0059】
更にはマウスPC3異種移植モデルから得られたインビボデータから、有益な抗腫瘍効果を得るためには、幾つかの閾値服用量しなければならないことが判る。図4において理解出来るように、PC−3腫瘍容積は、マウスを400mg/kg/dのVPAをで一日に2回投与・処置した場合PBSで対照として処置された腫瘍と比較して、25%以上(>25%)減少したのに対して、200mg/kg/dを一日2回投与・処置した場合抗腫瘍効果は全く認められなかった。
【0060】
表1は、第I/II相臨床試験期間中にVPAを静脈内投与した患者で得られたVPA血清濃度を示すものであるが、当該患者においては、HDAC酵素を阻害する効果的な血清濃度に到達出来ることが判る。VPAの総血清濃度が210μg/ml(ほぼ1.45mM)以上になると、神経細胞副作用が観察される。従って認容可能な治療血清濃度は、HDACクラスI酵素阻害に要求される効果的な投与量(遊離VPAの0.2mM位、概算で総VPA1.0mM)よりはるかに高くなるであろうが、それでもなおHDACクラスII酵素を阻害しないほど充分に低い値であり、かくして心毒性の副作用を回避することが出来る。
【0061】
【表1】

【0062】
表1:VPA静脈内投与による第I/II相臨床試験で得られたVPA血清濃度
この表は、クラスIHDACイソ酵素を効果的に阻害するために必要なVPA血清濃度を示す。総血清濃度がほぼ144.2μg/mlである場合、クラスI酵素阻害のIC50の濃度範囲(ほぼ0.2mM)に収まるVPAの遊離分画(すなわち血清タンパク質に結合しない)が存在する。神経細胞副作用が、総VPA血漿濃度が210μg/ml(~1.45mM)以上になると観察される。これらのデータに基いて、本発明者らは、本発明において記載したVPAの新規な薬物製剤を開発した。本製剤は、関連性・意義が最も高いHDACクラスI標的酵素の効率的な阻害を確保するものであり、これに伴って急速に且つ永続してヒストン過アセチル化を誘導し、他方ではクラスIIHDAC酵素の阻害に必要とされる血清濃度(特に遊離VPAの血清濃度)にまでは到達することはない(MW:分子量)。
【0063】
図2及び3は、第I/II相臨床試験期間中にVPAを静脈内投与した患者において得られたデータを示す。VPA治療の効果の一つのマーカーとしてのヒストン過アセチル化の誘導を、VPA治療の開始前及び開始後6時間後、24時間48時間後に患者から採取した抹消血細胞で検査した。VPAの血清中のピークレベルとヒストン過アセチル化の誘導には、明瞭な相関関係が認められた(図2)。ヒストンH3及びH4の過アセチル化及び標識タンパク質HDAC2のダウンレギュレーションは、治療血漿濃度を上回る血清濃度を示す患者において検出することが出来た(図3)。
【0064】
即ち、VPAは、種々の細胞系においてだけでなく治療環境においても、悪性腫瘍疾患又は他の過増殖性若しくは炎症性の障害の患者の治療又は予防のためのヒストン脱アセチラーゼの特異的阻害剤であるイソ酵素の一つである。
【0065】
実施例2
VPAによるHDAC阻害の最大化には、初期のピーク濃度及びそれに引き続いて治療濃度を上回る濃度を延長させ、持続させることが必要である。
【0066】
方法:
ウェスターンブロット:6ウェルのプレートに293T細胞を播種し、“急速放出”(“VPA通常”)、“緩徐放出”(“VPA遅延”)及び二相性(“VPA PEAC”)放出型を代表するスキームに従って処理した。暴露期間は、“急速放出” を代表する通常VPA製剤では6時間、VPAの遅延型“急速放出”を代表する製剤は15時間、また二相性放出型を代表するPEAC製剤では24時間と算出された。全細胞抽出物は、RIPA緩衝液中での細胞の溶解及び12%変性ポリアクリルアミドゲル上での変性SDSゲル電気泳動のためのタンパク質阻害剤とによって調製した。アセチル化ヒストンH3は、抗アセチルヒストンH3抗体(Upstate、#06−942)を用いたウェスターンブロット分析により検出した。
【0067】
SRB増殖試験: 細胞の生体量の減少は、SRB定量法によって測定した。この定量法のために、細胞を96ウェルの培養皿に、3000と8000細胞/ウェルの間の細胞密度で播種した。24時間の回復後、細胞をVPAの記載濃度の不存在又は存在下に72時間培養した。細胞は、最終のTCA濃度が10%となるように冷トリクロロ酢酸(TCA)で固定化した。摂氏4度で1時間培養した後、細胞を水で5回洗浄し、風乾した。固定化した細胞は、1%酢酸溶液に溶解した0.4%(重量/容積)スルホローダミンB(SRB)溶液で30分間染色し、次いで結合なかった染料を除去するために1%酢酸で4回洗浄した。風乾した後、結合した染料を10mMの未緩衝トリス塩基(pH10.5)で5分間で可溶化した。光学的密度(OD)は、Molecular Devices Versa Maxの整調可能微小プレート読み取り器で520乃至550nmにおいて読み取りした。それぞれの用量―応答のための4つの試験ウェルが、各細胞株当たり12の対照ウェルと平行して設定された。時間ゼロ(T;薬を加えた時間)における細胞集団密度の測定も、試験プレートに薬物を加える直前にTCAにより固定化した細胞の12の対照ウェルについて行われた。前記したように、5%FBSで固定化されまた染色された完全培地についての背景OD(即ち、完全培地プラス染料のOD及びTにおける細胞のOD)もまた、12の別個のウェルにおいて測定された。各マイクロタイタープレートからの未処理ODデータから、背景OD測定値(即ち、完全培地プラス染料のOD及びTにおける細胞のOD)を引き算して、かくして細胞の細胞性生物量の減少分を得た。
【0068】
結果:
HDAC活性及びガン細胞株の細胞増殖の双方の阻害を最大化するために、VPAの必要有効濃度を達成するだけでなく、これら濃度を可能な限り長期間維持することが重要である。図5は、クラスIHDAC酵素類について算定されたIC50値以上の濃度におけるVPAによる処理後細胞内で認められる過アセチル化度が、曝露期間が延長された場合に強度に増大・増強されることを説得力をもって示している。曝露の持続期間は、通常の“急速放出”通常VPA製剤を代表するものでは6時間と算出され、遅延された“緩徐放出”VPA製剤を代表するものでは15時間と算出され、またPEAC製剤の二相性放出パターンを代表するものは24時間と算出された。
【0069】
更には二つのガン細胞株、即ちColo320DM及びPC−3において得られた、VPAによる増殖抑制の結果から、VPAは、増殖抑制の最適化を実現するためには治療濃度における長期間投与を行わなければならないことが明らである。図6Aにおいて認められるように、細胞株の1mMVPAへの暴露は、72時間の培養期間に40時間の処理なし間隔をおいた2×8時間の処理(“8h d”)及び26時間の処理なし間隔をおいた2×20時間の処理(“20h d”)から66時間連続の処理に到るまで時間を変えて行ったところ、本発明の二相性放出の原理(“連続的”)により達成されるような血清濃度が得られた。図6Bは、増殖阻害がVPAへの曝露を延長すると共に増強されることを具体的に示している。2×8時間(“8h d”)の曝露を行ったところ、増殖阻害は26%(PC3)及び27%(Colo320DM)となるが、これに対して2×20時間(“20h d”)の曝露を行うことによって、増殖阻害が、PC3の細胞で43%またColo320DMの細胞では57%にまで増加した。最大の増殖阻害は、VPAへの連続的な曝露において認められ、PC3の細胞で57%の阻害またColo320DMの細胞において80%(連続的)の阻害であった。
【0070】
即ち、ガン、自己免疫及び抗炎症治療に使用するのに最適のVPA処方のための製剤としての必要要件は、特異的な二相性薬力学的プロファイルであって、これはHDACクラスI標的酵素を最も効率的に阻害し、それに伴ってヒストンの過アセチル化を急速且つ永続的な態様で誘導し且つ例えばガン細胞又は例えば免疫学的障害における免疫細胞などの疾病化した過増殖性細胞の増殖阻害又は分化誘導を最大限にまで誘発するために必要である。このようなプロファイルは、所望の的遺伝子及びタンパク質発現プロファイルとの効率的な調節を確保可能なものであり、かくして治療上の便益・有益さに貢献すると共にヒストン脱アセチラーゼ活性をもつ酵素の阻害が有益治療効果を発揮する、過増殖性、前癌性や悪性の疾患又は自己免疫性や炎症性の障害の治療又は予防に適しているのである。これらの疾患・障害としては、例えばー但しこれらに限定されないがー、エストロゲン受容体依存性及び非依存性の乳ガン、ホルモン受容体依存性及び非依存性の前立腺ガン、脳腫瘍、腎臓ガン、大腸及び結腸直腸のガン、膵臓ガン、膀胱ガン、食道ガン、胃ガン、尿生殖器ガン、胃腸ガン、子宮ガン、卵巣ガン、星状膠細胞腫、膠腫、皮膚ガン、扁平上皮ガン、角化棘細胞種、ボウエン病、皮膚T細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞ガン、紫外線角化症、魚麟癬、ざ瘡、尋常性ざ瘡、カポジ肉腫や骨肉腫などの肉腫、頭や首のガン、小細胞及び非小細胞肺ガン、白血病、リンパ腫及びその他の血液細胞ガン、甲状腺耐性症候群、糖尿病、地中海貧血、硬変症、原生動物感染症、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、あらゆる形態のリウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病及びインシュリン非依存性糖尿病、喘息、鼻炎、葡萄膜炎、紅斑性狼瘡症、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性大腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、繊維増殖性疾患(例えば結合織の疾患)、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディ・ジョルジ症候群、グレーブス病、癲癇、癲癇重積持続状態、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病、分裂性情動障害、躁病、脳卒中、 気分不一致精神病徴候、双極性障害、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発性硬化症、激昂、心肥大、心不全、再灌流傷害、肥満症が挙げられる。
【0071】
実施例3
所望とする溶解プロファイルを有する医薬組成物の製造
1. 微小錠剤の製造
処方(微小錠剤一錠当たりの重量)
【0072】
【表2】

注記:、乾燥後の最終製品中には最早や存在しない。
製剤1,2,3,4の調製(バッチサ-イズ:微小錠剤として1000000錠):
成分“a”を、40%の成分“b”、45%の成分“c”及び60%の成分“d”と適当な高せん断ミキサーにて混合する。得られた混合物は次いで、回転コンパクターで造粒する。得られた顆粒物は、成分“b”、“c”及び“d”の残量と回転式混和機で混和し、指定のパンチサイズの回転式打錠機で打錠し、所定の錠剤重量の微小錠剤(ミニタブレット)を得る。
【0073】
製剤5,6の調製(バッチサイズ:微小錠剤として1000000錠):
成分“a”を、55%の成分“b”、45%の成分“c”と適当な高せん断ミキサー中で混合する。得られた混合物は、“d”を“e”中に分散した分散液と共に造粒する。得られた顆粒は、乾燥し、ふるい分けし、次いで成分“b”及び“c”の残量と共に、回転式混和機で混和し、指定パンチサイズの回転式打錠機で打錠し、所定の錠剤重量の微小錠剤を得る。
【0074】
製剤7,8,9,10の調合(バッチサイズ:微小錠剤として1000000錠):
成分“a”を、70%の成分“b”、45%の成分“c”と適当な高せん断ミキサーで混合する。得られた混合物は、“d”を“e”に分散させた分散液と共に造粒する。得られた顆粒は、乾燥し、ふるい分けし、次いで成分“b”及び“c”の残量と共に、回転式混和機の中で混和し、指定パンチサイズの回転式打錠機で打錠し、所定の錠剤重量の微小錠剤を得る。
【0075】
2.緩徐放出微小錠剤の製造
処方(微小錠剤一錠当りの重量)
【0076】
【表3】

注記:、乾燥後の最終製品中には存在しない。
製剤11−20の調製(バッチサイズ:微小錠剤、1000000錠):
成分“a”を 適当なコーティング装置で“b”、“c”、“d”及び“e”の分散液でコーティングする。
【0077】
3.急速放出微小錠剤の製造
処方(微小錠剤一錠当たりの重量):
【表4】

乾燥した最終製品中には存在しない。
製剤21−28の調製(バッチサイズ:微小錠剤、1000000錠):
成分“a”は、適当なコーティング装置で “b”、“c”、“d”及び“e”の混合物でコーティングする。
【0078】
4.投与製剤の製造
処方(微小錠剤一錠当たりの重量)
【表5】

【0079】
【表6】

製剤29−48の調製:
成分“a”と “b”をカプセル又は単回投与コンテナー容器に充填する。
成分“b”は、静電現象を低減させるために0.2%の二酸化珪素と混合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】VPAは、組換え型HDAC酵素の活性を阻害する。 図1は、VPAが腫瘍に関連するクラスIHDAC酵素を優先的に阻害する(IC50は、クラスIHDAC酵素について例示するとほぼ200μMである)が、クラスIIHDAC酵素に対しては活性が弱いことを示す(IC50は、クラスII酵素HDAC8について例示するとほぼ1.1mMである)。これらのデータに関して注目すべき重要なことは、第I相臨床試験において得られた薬力学データから、ガン患者でのVPAの血清濃度が、該当するクラスIイソ酵素を成功裏に阻害するのに充分であることが明らかになったことある。これに対して、クラスIIHDAC酵素の阻害に必要なVPAの濃度は、防止・回避することが出来るのである。このことは、クラスII酵素の阻害が心毒性を惹起するものと考えられるため、非常に望ましいプロファイルである(Zhang et al.、Cell、2002、110:479−488;Antos et al.、JBC、2003、278:28930−7)。
【図2】VPAの血清中濃度とヒストン過アセチル化との間の相関関係。 図2は、進行した悪性疾患に罹患した患者に対してVPAを静脈内投与したて行った第I/II相臨床試験の結果を示す。VPA治療の薬効の標識の一つとしてのヒストン過アセチル化誘導(誘導倍率として示す)は、VPA治療の開始前及び開始後6時間、24時間及び48時間後に患者から採取した抹消血細胞で検査した。VPAの血清ピーク濃度(μg/ml単位で表示)とヒストン過アセチル化との明瞭な相関関係が、認められた。
【図3】VPAは、ヒストン過アセチル化と第I/II相臨床試験の患者からの末梢血中の標識遺伝子の調節・制御を誘導する。 図3は、VPAを静脈内投与した、第I/II相臨床試験のスコープに包含される、進行悪性疾患の患者二名(患者#1及び患者#2)から採取した抹消血細胞の溶解液について行ったウェスタンブロット分析を示す。血液試料は、VPA治療の開始前及び開始後6時間、24時間と48時間に患者から採取した。ヒストンH3及びH4の過アセチル化及び標識タンパク質HDAC2のダウンレギュレーションは、血清濃度が治療血漿濃度を上回る患者において検出することが出来た。
【図4】PC3マウス異種移植モデル。 図4は、マウスPC3異種移植モデルから得られた結果を示す。 24匹の胸腺欠損Nu/Nu-1-マウスに、100μlPBS(燐酸緩衝液)中1×10個のPC3前立腺ガン細胞を右側腹部内(1群は8匹の動物)に注入した。腫瘍を4日間増殖させた。動物にPBS(対照)、2×200mg/kg/d又は2×400mg/kg/dをそれぞれ、day5からday21に投与した。腫瘍体積を3−4日毎に測定した。この場合でもやはり、有益な抗腫瘍効果を得るためには、幾つかの閾値量を投与する必要があることが明らかになった(マウスに400mg/kg/dを一日当たり2回投与した場合、>25%まで腫瘍は減縮したが、200mg/kg/dを一日当たり2回投与したマウスにおいては、抗腫瘍効果は認められなかった)。
【図5】種々のVPA製剤により誘導されるヒストン過アセチル化。 図5は、“急速放出”(“VPA“通常””−A)、“緩徐放出” (“VPA“遅延”“−B)及び新規な二相性薬力学的プロファイル(“VPA PEAC“−C)におけるVPA血清濃度の企図された経時変化を例示するものである。“急速放出”(A)、“緩徐放出”(B)、又は新規な二相性薬力学的プロファイルPEAC(C)を代表するVPAを用いて表示した時間(hrs)に処理した293T細胞の溶解液を、抗−ヒストンH3抗体を用いたウェスタンブロッティング分析法で分析した。比較した結果、“急速放出”製剤又は“緩徐放出”製剤をそれぞれ単独で用いた場合、本明細書で記載した新規な二相性薬物製剤における双方の放出特性を組み合わせた概念である、PEACの活性と比較してヒストン過アセチル化誘発度に関しては効果は低くなる。
【図6】Colo320DM及びPC−3細胞株の間欠(インターバル)処理。 図式6Aは、Colo320DM及びPC−3細胞株のVPA処理のスケジュールを記述するものである。細胞はいずれも、1mMのVPAを用いて“急速放出”のVPA製剤の代表して処理なし間隔を40時間として2×8時間の処理を行い(“8h d”)、また“緩徐放出”製剤を代表して処理なし間隔を26時間として20時間に2回処理を行い(“20h d”)、又はPEACの概念に従った新規な二相性化合物放出プロファイルを用いて実現可能な血清濃度を代表して66時間の連続処理を行った(“連続的”)。 図式6Bは、図式6Aで述べたスケジュールに従って処理したColo320DM及びPC−3細胞株について行ったSRB試験の結果を示す。2×8時間(“8h d”)曝露を行った結果、増殖阻害は僅か26%(PC3)及び27%(Colo320DM)に留まったのに対して、一方2×20時間(“20h d”)曝露したところ、増殖阻害は、PC3の細胞では43%またColo320DMの細胞では57%にまでそれぞれ増大した。最大の増殖阻害は、長期間に亘って二相性化合物放出プロファイルを用いて達成・実現される可能性がある治療有効血清濃度を代表するVPAに連続して曝露した場合に認められており、PC3の細胞で80%またColo320DMの細胞で80%の増殖阻害であった(“連続的処理”)。
【図7】本発明に従った製剤についての典型的なインビトロ放出プロファイルを示す。 医薬製剤は、実施例3に記載した通りに製造した。インビトロ放出プロファイルは、100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてUSP24、方法724、装置2に従って測定し、決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含有する区画部からなる急速放出成分及び(ii)少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含有する区画部からなる緩徐放出成分とを含んで成る医薬製剤であって、該急速放出成分区画部が、該緩徐放出成分区画部とは異なることを特徴とする、前記医薬製剤。
【請求項2】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含んで成る医薬製剤であって、100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてアメリカ薬局方24、方法724、装置2に従って測定した場合、該製剤中のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤の10乃至60%が30分以内に放出され、また該製剤中のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤の50乃至100%が6時間以内に放出されることを特徴とする、前記医薬製剤。
【請求項3】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、選択されたヒストン脱アセチラーゼを優先的に阻害する性能を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載された医薬製剤。
【請求項4】
選択された該ヒストン脱アセチラーゼが、クラスIヒストン脱アセチラーゼであることを特徴とする、請求項3に記載された医薬製剤。
【請求項5】
選択された該ヒストン脱アセチラーゼが、クラスIIヒストン脱アセチラーゼであることを特徴とする、請求項3に記載された医薬製剤。
【請求項6】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、構造式I:
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ独立して、選択的に一つまた数個のヘテロ原子を含みまた置換されていてもよい、線状又は分枝状、飽和又は不飽和、脂肪族のC3―25の炭化水素鎖であり、Rは、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ又はアルキル化されていてもよいアミノ基である]で表される化合物又は薬学的に受容可能なその塩であることを特徴とする、請求の範囲1乃至4項の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項7】
及びRがそれぞれ独立して、選択的に一つの二重結合又は三重結合を含む、線状又は分枝状のC3―25の炭化水素鎖であることを特徴とする、請求項6に記載された医薬製剤。
【請求項8】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が4−イン−VPA又は薬学的に受容可能なその塩であることを特徴とする、請求項7に記載された医薬製剤。
【請求項9】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、バルプロ酸又は薬学的に受容可能なその塩であることを特徴とする、請求項6に記載された医薬製剤。
【請求項10】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、バルプロ酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項9に記載された医薬製剤。
【請求項11】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、ヒドロキサム酸誘導体、ベンズアミド類、ピロキサミド類及びそれらの誘導体、HDAC阻害活性を示す微生物代謝産物類、脂肪酸類及びそれらの誘導体、環状テトラペプタイド類、ペプチド化合物類、HDACクラスIII阻害剤及びSIRT阻害剤であることを特徴とする、請求項1乃至5の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項12】
少なくとも一種のヒストン脱アセチラーゼ阻害剤が、NVP−LAQ824、トリコスタチンA(Trichostatin A;TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、CBHA、ピロキサミド(Pyroxamide)、スクリプテイド(Scriptaid)、Cl−994,CG−1521、クラミドシン(Chlamidocin)、ヒドロキサム酸ビアリールエステル、A−16906、二環式アリール−N−ヒドロキシカルボキサミド類、PXD−101、スルホンアミドヒドロキサム酸、TPX−HA類似体(CHAP)、オキサムフラチン(Oxamflatin)、トラポキシン(Trapoxin)、デプデシン(Depudecin)、アピディシン(Apidicin)、MS−27−275、ピロキサミド類及びその誘導体、酪酸及びその誘導体、ピバネックス(Pivanex;酪酸ピバロイルオキシメチルエステル)、トラポキシンA(Trapoxin A)、デプシペプタイド(Depsipeptide;FK−228)及び関連ペプチド化合物類、タセディナリン(Tacedinaline)及びMG2856からなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載された医薬製剤。
【請求項13】
静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経鼻若しくは腹腔内による又は坐剤を用いた投与を目的とする、請求項1乃至12に記載された医薬製剤。
【請求項14】
急速放出成分の緩徐放出成分に対する比率が、1:0.5と1:4との間であることを特徴とする、請求項2乃至13の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項15】
インビトロ放出が、100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてアメリカ薬局方24、方法724、装置2に従って測定した場合、30分以内に20乃至50%、2時間以内に25乃至65%、4時間以内に55乃至85%、6時間以内に70乃至100%であることを特徴とする、請求項1乃至14の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項16】
100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてアメリカ薬局方24、方法724、装置2に従って測定した場合、急速放出成分のインビトロ放出が、15分以内でバルプロ酸ナトリウムの少なくとも90%でありまた緩徐放出成分のインビトロ放出が、1時間以内で0乃至30%、4時間以内で20乃至60%また6時間以内で55乃至95%であることを特徴とする、請求項2乃至15の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項17】
緩徐放出成分が、ヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を50乃至96重量%含有し且つ急速放出成分が、ヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を50乃至96重量%含有することを特徴とする、請求項2乃至16の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項18】
単一区画部の最大の寸法が3mmであることを特徴とする、複数の区画部から成る多回単位投与剤型である、請求項1乃至17の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項19】
単一区画部の寸法が0.5乃至2.5mmであることを特徴とする、請求項18に記載された医薬製剤。
【請求項20】
0.1乃至3グラムのヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含んで成ることを特徴とする、請求項1乃至19の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項21】
急速放出成分が、コーティングされた微小錠剤でありまた緩徐放出成分が、コーティングされた微小錠剤であることを特徴とする、請求項2乃至20項の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項22】
コーティングされた微小錠剤が、バルプロ酸ナトリウム、潤滑剤、ポリマー及び滑剤からなることを特徴とする、請求項21に記載された医薬製剤。
【請求項23】
潤滑剤が、硫酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸であることを特徴とする、請求項22に記載された医薬製剤。
【請求項24】
滑剤が、二酸化珪素、メチル化二酸化珪素又はタルクであることを特徴とする、請求項22又は23に記載された医薬製剤。
【請求項25】
ポリマーが、メタクリル酸アンモニウムコポリマー、エチルセルロース又はハイプロメロースであることを特徴とする、請求項22乃至24の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項26】
コーティングされた急速放出成分の微小錠剤のコーティングが、少なくとも一種のポリマー及び少なくとも一種の適当な可塑剤を含んで成ることを特徴とする、請求項21乃至25の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項27】
ポリマーが、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール又はハイプロメロースであることを特徴とする、請求項26項に記載された医薬製剤。
【請求項28】
コーティングされた緩徐放出成分の微小錠剤のコーティングが、少なくとも一種のポリマーと少なくとも一種の適当な可塑剤とを含んで成ることを特徴とする、請求項21乃至27の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項29】
ポリマーが、メタクリル酸アンモニウムコポリマー又はエチルセルロースであることを特徴とする、請求項28に記載された医薬製剤。
【請求項30】
内服用医薬製剤であることを特徴とする、請求項1乃至29の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項31】
放出プロファイルが、100rpmにおけるpH6.8緩衝液USP900ml中においてアメリカ薬局方24、方法724、装置2に従って測定されることを特徴とする、請求項1乃至30の内のいずれか一項に記載された医薬製剤。
【請求項32】
下記する疾病・障害を治療又は予防する医薬を製造するための、前記請求項の内のいずれか一項に記載された医薬製剤の使用:即ち、エストロゲン受容体依存性乳ガン、エストロゲン受容体非依存性乳ガン、ホルモン受容体依存性前立腺ガン、ホルモン受容体非依存性前立腺ガン、脳腫瘍、腎臓ガン、大腸ガン、結腸直腸ガン、膵臓ガン、膀胱ガン、食道ガン、胃ガン、尿生殖器ガン、胃腸のガン、子宮ガン、卵巣ガン、星状膠細胞腫、膠腫、皮膚ガン、扁平上皮ガン、角化棘細胞腫、ボウエン病、皮膚T細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞ガン腫、光学活性角化症;魚麟癬;ざ瘡、尋常性ざ瘡、肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、頭と首のガン、小細胞肺ガン、非小細肺ガン、白血病、リンパ腫及び/又は他の血液細胞ガン、甲状腺耐性症、糖尿病、地中海貧血、硬変症、原生動物感染症、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、全ての形態のリウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、非インシュリン依存性糖尿病、喘息、鼻炎、葡萄膜炎、紅斑性狼瘡、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性大腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、繊維増殖性障害、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディ・ジョルジ症候群、グレーブス病、癲癇、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病、分裂性情動障害、躁病、脳卒中、気分不一致精神病徴候、双極性障害、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発硬化症、激昂、心肥大、心不全、再灌流傷害及び/又は肥満症。
【請求項33】
医薬が、二相性放出プロファイルを示す医薬製剤であることを特徴とする、下記する疾病・障害を治療又は予防する該医薬を製造するためのヒストン脱アセチラーゼ阻害剤の使用:即ち、エストロゲン受容体依存性乳ガン、エストロゲン受容体非依存性乳ガン、ホルモン受容体依存性前立腺ガン、ホルモン受容体非依存性前立腺ガン、脳腫瘍、腎臓ガン、大腸ガン、結腸直腸ガン、膵臓ガン、膀胱ガン、食道ガン、胃ガン、尿生殖器ガン、胃腸ガン、子宮ガン、卵巣ガン、星状膠細胞腫、膠腫、皮膚ガン、扁平上皮ガン、角化棘細胞腫、ボウエン病、皮膚T細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞ガン腫、光学活性角化症;魚麟癬;ざ瘡、尋常性ざ瘡、肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、頭と首のガン、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、白血病、リンパ腫及び/又は他の血液細胞ガン、甲状腺耐性症、糖尿病、地中海貧血、硬変症、原生動物感染症、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、全ての形態のリウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、非インシュリン依存性糖尿病、喘息、鼻炎、葡萄膜炎、紅斑性狼瘡、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性大腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、繊維増殖性疾患、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディ・ジョルジ症候群、グレーブス病、癲癇、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病、分裂性情動障害、躁病、脳卒中、気分不一致精神病徴候、双極性障害、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発硬化症、激昂、心肥大、心不全、再灌流傷害及び/又は肥満症。
【請求項34】
医薬製剤が、特許請求の範囲1乃至31の内のいずれか一項に記載された医薬製剤であることを特徴とする、請求項33に記載された使用。
【請求項35】
医薬が、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経鼻、腹腔内又は坐剤を用いて投与されることを特徴とする、請求項32乃至34項の内のいずれか一項に記載された使用。
【請求項36】
複数の区画部からなる多回単位投与剤型を得られるようにヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含有する急速放出成分とヒストン脱アセチラーゼ阻害剤を含有する緩徐放出成分とを組み合わせて成る、二相性放出プロファイルを示す医薬製剤を調製する方法。
【請求項37】
単一薬を含む区画部が、造粒、押出し、ホットメルト、ペレット化、打錠及びコーティングの方法により調製されることを特徴とする、請求項36に記載された調製方法。
【請求項38】
急速放出成分と緩徐放出成分とが、所定の割合で混合され、次いでカプセル又は単回投与のためのコンテナーに充填されることを特徴とする、請求項36又は37項に記載された方法。
【請求項39】
急速放出成分又は緩徐放出成分が、予め混合されることなくカプセル又は単回投与のためのコンテナーに逐次・連続して充填されることを特徴とする、請求項36又は37に記載され方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−535518(P2007−535518A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509993(P2007−509993)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004739
【国際公開番号】WO2005/105055
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506361904)トポターゲット ジャーマニィ アーゲー (4)
【出願人】(504439230)デシティン アルツンアインミッテル ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】