ヒトに使用するための口腔内崩壊錠の形成方法
本発明は、ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠の製造方法に関し、その方法は、薬物を含む流動性処方物を用意するステップと、少なくとも1つのキャビティが形成されている固体エレメントを用意するステップと、固体エレメントを処方物の凍結温度より下の温度まで冷却するステップと、キャビティに流動性処方物を充填するステップ、キャビティ中に存在している間に流動性処方物から熱を、キャビティ壁を介して伝導により抽出することにより流動性処方物を固化して、固体ペレットの全表面を能動的に成形することなく薬物を含む固体ペレットを形成するステップと、固体ペレットをキャビティから取り出すステップと、固体ペレットを真空中で乾燥して口腔内崩壊錠を得るステップとを含む。本発明は、口腔内崩壊錠そのもの及び前記口腔内崩壊錠を含むパッケージにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルト・イン・マウス、ファスト・メルティング、マウス・ディソルビング、ラピッド・メルト、オロディスパーシブルまたは速溶解錠とも称される、口腔内崩壊錠(ODT)は、水を摂取しなくてもヒトの口腔内で急速に崩壊する固体剤形である。よって、ODTは、例えば嚥下の問題(特に、高齢者及び小児の患者の場合)を解消し、患者のコンプライアンスを改善し得る。ODTを口内に入れると、唾液によりODTは急速に(通常60秒以内に、好ましくは30秒以内に、好ましくは10秒以内に)崩壊し、唾液が薬物を含有するように剤形が分散する。患者は、胃に達するように唾液−物質混合物を嚥下するか、または胃に達する前に薬物の大部分(全てでなくても)が口腔、咽頭及び/または食道を通って吸収され、よって薬物の初回通過代謝が予防され、薬物のバイオアベイラビリティーが高められる。
【0003】
ODT中の活性成分として各種の薬物及び/またはその組合せ、例えば鎮痛薬及び抗炎症薬、制酸薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗細菌薬、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗マラリア薬、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗新生物薬及び免疫抑制薬、抗精神病薬、抗原虫薬、抗リウマチ薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬及び神経遮断薬、β−ブロッカー、強心剤、コルチコステロイド、咳止め薬、細胞傷害薬、鬱血除去薬、利尿薬、酵素、抗パーキンソン剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、脂質調節薬、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症薬、オピオイド系鎮痛薬、タンパク質、ペプチド、組換え薬、性ホルモン、避妊薬、殺精子薬、興奮薬等が使用され得る。
【0004】
ODT(本明細書では、「崩壊錠」とも称する)の製造方法は、例えばFarmalyocに譲渡されているUS 5,384,124から公知である。公知方法では、1つ以上の薬物を含むペーストを形成し、このペーストをポリ塩化ビニル担体エレメント中に存在する所定の形状及び大きさのキャビティ中に分配することにより、該ペーストを十分に規定された形状及び容量を有する単位用量に機械的に分割する。ペーストを分配した後、担体エレメントを凍結乾燥機に入れ、ペーストを凍結乾燥させる。こうして、各単位用量を錠剤に形成する。凍結乾燥プロセスの利点は、薬物が非常に安定な形態となるだけでなく、液体に接触すると崩壊する固体剤形が得られることである。特に、ペーストが、元々担体溶媒(用語「溶媒」には他の物質に対する担体として役立ち得る液体が含まれる)としての水を主成分としたならば、錠剤は、通常、水または水系流体(例えば、唾液)と接触すると崩壊するであろう。
【0005】
公知方法が、ライフサイエンス業界で広く使用されている(例えば、2004年7月30日に“Tablets and Capsules”中で発表された、Deepak Kaushik,Harish Dureja and T.R.Saini,Maharishi Dayanand University and Shri G.S.Institute of Technology and Scienceによる“Orally disintegrating tablets:an overview of melt−mouth tablet technologies and techniques”を参照されたい)。特に、Zydis(米国ニュージャージ州サマセットに所在のCatalent Pharma Solutions)及びLyoc(フランス国メゾン・アルフォールに所在のLaboratoires Farmalyoc)のような技術が、この公知方法を使用している。典型的には、出発のペーストまたは流動性処方物を調製し、予備成形したブリスターパックに投入する。次いで、このパック、すなわちパック中に存在する材料を凍結し、凍結乾燥にかけて水を除去する。生じた構造物は、本質的に非常に多孔性であり、唾液と接触したとき急速に崩壊する。実際、この方法は、非常に急速に崩壊し、基準の経口固体製剤と比較して十分な薬物動態特性、より良好な患者コンプライアンス及びより高いバイオアベイラビリティーを示し、副作用がより少ない錠剤が作成され得る点で、非常に有利である(Luca Dobettiによる“Fast−Melting Tablets:Developments and Technologies”,Pharmaceutical Technology Drug Delivery,2001,p.44−50を参照されたい)。知られている欠点は、錠剤の機械的安定性が比較的乏しく、製造コストが高いことである。しかしながら、これらの欠点は、使用される凍結乾燥方法のために固有であると考えられる。凍結乾燥は高価な装置を必要とし、本質的に例えば従来の圧縮技術と比較して機械的に余り安定していない錠剤しか得られない。この事実のために、公知方法は、プロセス中ずっと最終錠剤パッケージ(すなわち、ブリスターパッケージ)を担体として使用することにより実施する。このことは本質的に、この特定のパッケージと併用し得るように各製造ステップを調節しなければならないことを意味する。これにより、各種製造ステップにおける操作の自由が制限され、よって原価が更に上昇することさえある。しかしながら、凍結乾燥生成物の崩壊錠としての利点を考えれば、製造方法の固有の高い原価は、製造専門家により受け入れられている。
【0006】
ODTを得るための他の方法も、従来技術から公知であることに注目されたい。例えば、WO 93/12770及びUS 2006/0057207(いずれも、Pfizer Inc.に譲渡されている)は、凍結ペレットを密閉モールド中で圧縮することにより、錠剤を実質的にその全表面上で能動的に成形する方法を記載している。よって、この公知方法は、例えば重力及び表面張力の作用のみで受動的に得られる形状を用いることにより錠剤の形状を受動的に得る方法とは異なる。こうすると、所定の形状が管理された方法で容易に得られ得る。しかしながら、この方法は、流動性処方物がキャビティ(すなわち、密閉モールド)から漏れやすい、かなり複雑なダイ−パンチアセンブリを必要とする点で不利である。また、凍結ペレットは圧縮力を使用するためにダイまたはパンチのいずれかに粘着しがちである。実際、凍結ペレットを圧縮することにより、良好な機械的特性が得られ、このために凍結ペレットをキャビティから一体的に取り出すことができるという利点がある。
【0007】
US 5,382,437及びEP 0 450 141から、流動性処方物を室温の固体エレメントの開放キャビティに入れた後、このエレメントを凍結機中に30〜60分間入れる別の方法が公知である。流動性処方物がキャビティにうまく充填され、よってキャビティの大きさ及び形状に正確に対応する大きさ及び形状を有する凍結ペレットが得られ、また予想できるペレットの形が得られるので、この方法は有利であると見られる。しかしながら、この方法では冷却−加熱サイクルを実施しなければならず、全プロセスが比較的ゆっくりであるという欠点もある。また、キャビティに(低粘度の)流動性処方物を充填したときに、流体がキャビティから漏れるリスクもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,384,124号明細書
【特許文献2】国際公開第93/12770号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0057207号明細書
【特許文献4】米国特許第5,382,437号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0450141号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Deepak Kaushik,Harish Dureja and T.R.Saini,Maharishi Dayanand University and Shri G.S.Institute of Technology and Science、“Orally disintegrating tablets:an overview of melt−mouth tablet technologies and techniques”、Tablets and Capsules、2004年7月30日
【非特許文献2】Luca Dobetti、“Fast−Melting Tablets:Developments and Technologies”,Pharmaceutical Technology Drug Delivery,2001,p.44−50
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、基本的技術として凍結乾燥を用いて、1錠あたりの原価が著しく低く、同時に優れた崩壊特性及び十分な機械的安定性を有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を得るための方法を提供することである。
【0011】
この目的を達するために、薬物を含む流動性処方物を用意するステップと、その中に少なくとも1つのキャビティが形成されている固体エレメントを用意するステップと、固体エレメントを流動性処方物の凍結温度より下の温度まで冷却するステップと、キャビティに流動性処方物を充填するステップと、キャビティ中に存在している間に、流動性処方物から熱をキャビティ壁を介して伝導により抽出することにより流動性処方物を固化して、固体ペレットの全表面を能動的に成形することなく薬物を含む固体ペレットを形成するステップと、固体ペレットをキャビティから取り出すステップと、固体ペレットを真空中で乾燥して口腔内崩壊錠を得るステップとを含む、プリアンブルに従う方法が考案された。
【0012】
本出願人は、驚くことに、まず開放キャビティに薬物を含む流動性処方物を充填し(一緒に薬物を含む流動性処方物を形成する2つ以上の別々のサブ処方物をキャビティに充填することをも包含する);次いで重力及び表面張力(メニスカス)だけで形成される(キャビティの開放端部で)形状を有する圧縮されていない凍結ペレットで終わり得るような能動的成形ツールを適用せずに、流動性処方物を予冷したキャビティ中に単に放置することによりキャビティ中で流動性処方物を凍結して、固体ペレットを形成し;凍結ペレットをキャビティから取り出し;その後ペレットを(例えば、凍結乾燥装置において)乾燥することにより、ODTの十分な崩壊特性及び機械的特性を得ることができると同時に、製造方法の自由を著しく高め、よって1錠あたりの原価を著しく低下させる可能性を広げることを知見した。また、キャビティに充填時に、固体エレメントを処方物の凍結温度より下の温度とすることが特に有利であることを知見した。一見して、これは不利のようである。すなわち、流動性処方物が、キャビティ壁と接触すると直ちに固化し始めると、理論上キャビティの大きさ及び形状に対応しない大きさ及び形状を有する凍結ペレットが生じるので、凍結プロセスはコントロールされず、ペレットの形も予測できない。しかしながら、本出願人は、流動性処方物の凍結温度より下の温度について、流動性処方物の流れ中に存在する熱の量が冷たい固体エレメントによる熱の抽出または熱抽出の少なくとも大部分を単に相殺し得るだけなので、流体の即時凍結を相殺するのに十分に速い充填速度を見つけることができることを知見した。全般に、新規プロセスはよりコントロールしやすい。従来方法の場合、冷却−加熱サイクルを実施しなければならないのに対して、固体エレメントの温度は同一レベルで保持され得る。更に、プロセスはより速い。熱はキャビティに充填時に既に抽出されている。また、流体は、キャビティに進入後非常に速く冷え、よってすぐに高い粘度を示すので、流体がキャビティから漏れるリスクが少ない。
【0013】
新規方法は、Farmalyocから公知の最も関連ある従来技術に対して幾つかの重要な利点を有している。第1に、この新規方法では、最終錠剤包装をプロセスステップに含める必要がない。従って、標準の安価な包装を使用し得るだけでなく、製造ステップの各々を、そのタスクにとって最適化されているツールを用いて実施し得る。例えばブリスターパッケージを凍結乾燥機における錠剤用担体として使用している従来方法では、乾燥環境により(プラスチック)パッケージを介して伝達され得る熱を比較的低量に調節しなければならない。これにより、乾燥ステップ中各錠剤に対する熱負荷が著しく上昇する恐れがあり(例えば、高い局所温度)、必要なプロセス時間が著しく延長する恐れがある。本出願人は、処方物から熱をキ、ャビティ壁を介して伝導により抽出すること(処方物を凍結させるために抽出されなければならない熱の少なくとも大部分、すなわち50%より多く、好ましくは80%より多く100%までをキャビティ壁を介する伝導により抽出されることを意味する)が、高いプラスの影響を有することも知見した。これは、ペレットに対する熱負荷の従来技術の問題を解消または少なくとも緩和するだけでなく、最終ODTの機械的強度を改善し得る。公知方法では、熱の殆ど全てが、対流により抽出され、特に処方物が固化されるまで熱を抽出すべく、流動性処方物の周りを動いている窒素ガスを用いて抽出される。対流は流動性処方物を凍結させるために十分に使用し得るが、本出願人は、伝導を使用するとき流動性処方物の少なくとも一部の周りに伝熱性材料を設けることにより、冷却プロセスは速崩壊性を高レベルに維持しながら有利な機械的安定性、例えば十分な機械的強度及び/または低い脆砕性を有するペレットを与え得ることを知見した。この理由は明らかでないが、伝導による熱の抽出により、より効率的で、よって非常に速い冷却プロセスを与え、これによりペレット中の構成分子を別に配置するという事実のためであり得る。従来方法では、少量の熱しか、流動性処方物からブリスターの壁を介して抽出され得ないことに注目されたい。しかしながら、ブリスターパッケージ材料は典型的には0.1〜0.2W/mKの熱伝達係数を有するプラスチックであるので、これは本発明の意味で伝導による熱抽出として適切ではなく、このことは必然的に熱の大部分が伝導以外の他の手段(すなわち、冷たい窒素ガス流を用いる対流)により抽出されることを意味する。
【0014】
本発明の方法の別の重要な利点は、最終包装された製品中の錠剤が、錠剤を形成したモールド中に存在しないことである。従来方法では、ペレットは、モールドとして働くブリスターパッケージ中で形成される。しかしながら、ペレットが最終包装中に存在する錠剤に変換されるまで、ペレットはプロセス中ずっとモールド中に留まっている。従って、錠剤が多かれ少なかれブリスター壁に粘着し、かなりの機械的力を加えなければ取り出し得ないという高いリスクがある。このことと(従来の圧縮錠と比較して)凍結乾燥した錠剤が本質的に安定でない事実と合わせて、投与前でさえも壊れてしまう錠剤がしばしば生じる。これにより、使用されないか、或いは余りに少ない活性成分しか患者に投与されない錠剤が生ずる恐れがある。
【0015】
本発明の方法の別の重要な利点は、凍結乾燥機そのものの中で凍結ステップを行わなくてすむことである。US 5,384,124から公知の方法では、ペーストがどうしてもブリスターパッケージ中に存在しているので、凍結ステップを凍結乾燥機中で行う。しかしながら、公知の方法では、ペーストを凍結させるためにペーストから熱を抽出するのに比較的長い時間がかかる。本発明の方法では、流動性処方物を別のステップで専用キャビティにおいて固化し、その後凍結ペレットをキャビティから取り出し、追加ステップで凍結乾燥させることにより、初期の凍結を非常により効率的に実施し得る。
【0016】
本発明のなお別の実質的な利点は、固体の凍結ペレットを得るステップが利用可能な乾燥設備に依存しないことである。凍結ペレットが例えば乾燥ステップとは完全に無関係に得られるので、ペレットを別に作成し、例えば乾燥設備が利用可能になるまで保存し得る。特に、薬物が生物起源のものである場合には、この物質を含有する流動性処方物のバッチを、現在利用可能な乾燥設備とは無関係に凍結ペレットに完全に加工し得ることが重要である。また、本発明の方法を用いると、扁平な面を持たない三次元で(殆ど)球状、偏球状、「卵」様または楕円形状の錠剤を作成することができる。公知のように、球状形状に近似している形状は、本質的に機械的に強く、その形状は単位の速崩壊特性に有意な悪影響を与えない。
【0017】
従来技術から公知のダイ−パンチ方法に対して、本発明の方法は、流動性処方物がキャビティから漏れることがないという重要な利点を有している。例えば圧縮力またはペレットの表面を形成する他の能動的な成形技術を適用することによりペレットの全表面を能動的に成形することなく、流動性処方物を開放キャビティ中で凍結させるべく放置するだけなので、流動性処方物がキャビティから押し出されるリスクがない。また、ペレットを能動的に成形するために使用される部品にペレットが粘着するリスクも著しく低い。驚くことに、圧縮力を適用することなく凍結させるべく流動性処方物を単に放置することにより、ペレットは凍結乾燥のような更なる加工のためにキャビティから取り出すのに十分な機械的強度を有し得る。
【0018】
本発明は、薬物及び/またはその組合せと一緒に使用され得ることに注目されたい。前記物質の典型例は、EP 1 165 053 B1のp.5,l.37(“Analgesics and antiinflammatory agents:”)から始まり、p.7,l.25(“…fenfluramine,mazindol,pemoline.”)で終わる中に見つけることができる。他の例は、黄体ホルモンタイプの化合物(例えば、デソゲストレル、エトノゲストレル、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエルゲストロミン、ゲストデン、ノメゲストロール酢酸塩、ジエノゲスト、ドロスピレノン、またはプロゲストロゲン活性を有する他のステロイド系または非ステロイド系化合物)、エストロゲンタイプの化合物(例えば、エストラジオール、エストリオール、メストラノール、エチニル−エストラジオール、或いはエストロゲン活性を有する他のステロイド系または非ステロイド系化合物)、並びに中枢神経系の領域の化合物(例えば、アセナピン、ミルタザピン、エスミルタザピン、またはCNS活性を有する他の化合物)である。
【0019】
本発明は、幾つかの認識に基づいており、第1の認識は最終の凍結乾燥生成物は余り機械的に安定でないかもしれないが、驚くことに中間の凍結生成物は圧縮されていないにも関わらず上記欠点を持たない。これにより、中間体ペレットの機械的取り扱いに対する可能性が広がる。しかしながら、凍結ペレットは最終ブリスターパッケージの形で凍結乾燥機中に既に存在しているので、公知のFarmalyoc方法でのこうした取り扱いは無意味なものとなる。しかしながら、本出願人は、第2の見識、すなわち主に凍結乾燥機における担体として最終錠剤パッケージを使用するとき、十分な乾燥スペースが使用されない(錠剤はパッケージ中で近接関係であり得ないので、各錠剤は比較的大きなスペースを要する)という事実のために、公知方法での乾燥ステップはかなり非効率的であるという見識を得た。公知方法における凍結乾燥機の非効率的使用は、固有のものであるが、乾燥ステップで使用した担体とは異なる担体を凍結ステップのために使用することにより、凍結と乾燥ステップを分離することにより解消し得る。第3の見識は、公知方法では、凍結ステップが比較的ゆっくりであるために、元の液体処方物がほぼ平衡状態で凍結することである。こうすると、典型的には乾燥したときに、通常公知の非常に脆い最終生成物が生ずる。本出願人は、有意により速い冷却プロセスは、より非晶質様の最終生成物、よってより低い脆砕性の最終生成物を生ずる固化プロセスにつながり得ることを認識した。このことは、錠剤のより高い圧潰強度またはより低い脆砕性(米国薬局方24/NF19,1999,p.2148−2149で定義されている)として示し得る。
【0020】
本発明は、曲面、好ましくは1〜1.2の相対曲率Kを有する曲面を有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠にも関することに注目されたい。本発明の方法の重要な利点は、既存の技術に従って作成した錠剤と比較して高い機械的強度を有する錠剤が得られ得ることである。これにより、従来技術の欠点、例えば各錠剤を個別にピール・オフ・ブリスターパッケージ中に包装する必要が解消される。本発明を用いると、通常の圧出ブリスターパッケージ中にバルク包装または包装される錠剤を作成することができる。
【0021】
本発明は、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を含むパッケージにも関し、前記錠剤は、ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有しており、前記錠剤は、必須ではないが、好ましくはコンテナ中に個別に包装されており、本発明の方法を用いてキャビティ中で形成されており、前記キャビティは、錠剤を包装しているコンテナ(例えば、ブリスターパッケージのブリスター)とは異なる。先に記載したように、本発明の重要な利点は、最終包装された製品中の錠剤が、これらの錠剤を形成したモールド中に存在せず、これにより錠剤が最終パッケージ中のそのコンテナ(例えば、ブリスターパッケージのブリスター)に粘着する可能性が殆ど排除されることである。このようにほぼ排除されると、医師、DVM、患者等による錠剤の取り扱いの便利さが改善される。
【0022】
定義
錠剤は、例えば直接的な経口、直腸または非経口投与のため、または間接的な投与(例えば、溶解または分散された形態で投与すべく担体材料、特に液体と混合した後)のための固体剤形である。錠剤は、該錠剤を個別に手で取り扱うことができる点で、粉末または微粒と区別できる。錠剤の最短長は1mm、好ましくは2mm、より好ましくは4mm、典型的には(必須ではないが)4〜20mmである。
【0023】
口腔内崩壊錠は、例えば口腔内で唾液と接触すると60秒以内、好ましくは30秒以内、より好ましくは10秒以内で崩壊する凍結乾燥された錠剤である。
【0024】
凍結乾燥は、物質を含有する流動性処方物を凍結し、凍結した液体を真空下で実質的に除去することにより、前記物質の安定な調製物を作成する際に使用される方法である。
【0025】
真空は、減圧(低大気圧)下の空気または他の気体である。
【0026】
崩壊するとは、一体性を喪失させ、断片に細かくすることである。用語「崩壊する」は(分子レベルの断片を有する)溶解を包含する。
【0027】
速崩壊は、液体、特に37℃の水と接触すると始まり、60秒以内、好ましくは30秒以内、より好ましくは10秒以内で終わる崩壊を意味する。
【0028】
薬物は、(疾患を含めた)障害を治療するために、すなわち障害の予防、回復または治癒を助けるために使用され得る任意の物質である。前記物質は、例えば天然または合成ペプチドまたはタンパク質、(多)糖、または他の有機または無機分子、死滅したまたは生きている微生物、死滅したまたは生きている寄生虫等のような化学的または生物学的化合物であり得る。
【0029】
流動性処方物の凍結温度は、処方物のコンシステンシーが、液体から固体へ変態する温度、すなわち形態を変化させることなく外力に絶えることができるコンシステンシーである。
【0030】
熱伝導性材料は、少なくとも1W/mK(ワット/メートルケルビン)の熱伝達率を有する材料である。
【0031】
不接着性は、接着を阻止する能力を意味する。
【0032】
結晶性材料は平衡条件下で固化すると結晶を形成し得る材料である。
【0033】
ゲル化剤は、流体に対してゲルのコンシステンシーを付与するために流体内で分子のネットワークを形成し得る、すなわち(どんな状況下でも自由流動性液体でない)少なくとも多少の自立能を有し得る物質である。用語「ゲル化剤」は、各々が流体内で分子のネットワークを形成し得る2つ以上の異なる化合物または材料からなる物質をも包含する。
【0034】
ゲル形成性材料は、流動性処方物、特に水中4%(w/w)の濃度で、投入目的で流動性処方物を使用する温度(本発明の場合、キャビティに充填するためには室温、20℃)で24時間静止状況に放置したとき、流動性処方物中でゲルを形成する材料である。
【0035】
非ゲル形成性材料は、流動性処方物、特に水中4%(w/w)の濃度で、投入目的で流動性処方物を使用する温度(本発明の場合、キャビティに充填するためには室温、20℃)で24時間静止状況に放置したとき、流動性処方物中でゲルを形成しない材料である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図1B】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図1C】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図2】凍結ペレットを得るための装置の基本的部品を概略的に示す。
【図3】図2に図示した装置の幾つかの部品の概略平面図である。
【図4】対応するキャビティと共に充填針を概略的に示す。
【図5】本発明の方法及びシステムにおいて使用するための乾燥チャンバーを概略的に示す。
【図6】錠剤の圧潰強度を調べるための引張試験機を概略的に示す。
【図7】本発明に従う錠剤を含むパッケージを概略的に示す。
【図8】ホイルを介して圧出したときの錠剤の安定性を測定するためのデバイスを概略的に示す。
【図9a】ホイルを介して圧出された錠剤の例を概略的に示す。
【図9b】ホイルを介して圧出された錠剤の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ODTは、理想的には複数の要求、例えば錠剤の取り扱いを妨げないように非粘性であり、許容される味を有し、且つ(例えば薬物の高い血中レベルが得られ得るように)非常に急速な崩壊を与えながら、(錠剤をパッケージから容易に取り出すことができ、錠剤を患者の口に入れることができるように)手で取り扱うのに十分な機械的強度を満たし、場合により(例えば、錠剤が口腔中で崩壊し、胃に達しないように)粘膜付着性を有することを満たす。錠剤を作成するために使用される液体処方物は、場合により添加剤、例えば界面活性剤、または錠剤の特定用途のために有用な最終錠剤特性を与えるために使用され得る他の物質を含有していてもよい。前記物質の例は、着色料、甘味料または他の矯味剤もしくは味マスキング物質、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、界面活性剤、着色剤、pH調整剤、或いは錠剤の成分の残りと相容性であり、所要により意図する患者にとって医薬的に許容され得る他の物質であり得る。
【0038】
本発明の実施形態において、キャビティの容量は、ペレットの容量より小さい。従来方法では、形成しようとする錠剤の大きさ及び形状に正確に対応するキャビティ(すなわち、モールド)を選択する。しかしながら、本出願人は、驚くことに形成しようとする錠剤の容量よりも小さい容量を有するキャビティを使用し得ることを知見した。この実施形態では、ペレットは、エレメントの表面からキャビティの外に突き出ている。これは、例えば流動性処方物が冷たいエレメントと伝導的に接触させることにより迅速に冷却されるので可能になる。これにより、キャビティから突き出てさえいるペレットが確実に形成できる。この特定の実施形態の利点は、キャビティにより完全に包囲されているかまたはキャビティ中に沈んでいるペレットと比較してペレットとキャビティ間の接触表面が小さいので、ペレットをキャビティから比較的容易に取り出すことができることである。この実施形態の別の利点は、キャビティとキャビティ上のオープンスペース間の転移部位に対応して錠剤の外観が不連続となり得ることである。形成しようとするペレットがキャビティから突き出ているので、キャビティ入口でペレットの形状に不連続性が生じ得る。この不連続性は、錠剤を他の錠剤(よって、例えば会社のロゴ、アイコンまたはカラーについての代替物)と区別するために使用され得、或いは有利な機械的特性を与えるために使用され得る。
【0039】
好ましい実施形態では、キャビティの容量は、ペレットの容量の50%より小さい。この実施形態では、ペレットの半分以上がキャビティが形成されているエレメントから突き出ている。こうすると、ペレットが非常に容易に取り出せる。流動性処方物から実質的に十分な熱を抽出させるための最小容量は、約15%、好ましくは約20%である。
【0040】
本発明の方法の特定実施形態では、処方物は、室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む。結晶性担体は、流動性処方物に容易に処方され得、錠剤に対して良好な機械的特性を与えるという利点を有している。ゲル化剤を配合すると、錠剤の機械的特性が更に改善される。適当な担体材料の例は、糖、例えばマンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、トレハロース及び環状糖(例:シクロデキストリン);無機物、例えばリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びケイ酸アルミニウム;典型的には2〜12個の炭素原子を有するアミノ酸、例えばグリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン及びL−フェニルアラニンである。ゲル化剤は流体にゲルのコンシステンシーを与えるように流体内に分子のネットワークを形成し得る物質であり得る。前記物質は高分子タンパク質または他のポリマーからなり得るが、(例えば、US 6,471,758から公知のように)小分子を再結合して長鎖にすることによりネットワークを形成し得る小分子をベースとしてもよい。ゲル化剤は、大きい分子が最終錠剤に対して追加の機械的安定性を与えるという利点を有している。ゲル化剤の典型例はゼラチン、デキストリン、及び大豆、小麦及びオオバコ種子タンパク質、ガム(例:グアー、寒天、アカシア、キサンタン及びカラゲナン)、多糖、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ポリビニルピロリドン等である。
【0041】
更なる実施形態では、処方物は、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む。典型的には、ODTを得るための処方物中の結晶性担体材料の量は、3重量%より低く維持される。ゲル化剤の場合、好ましくは約4重量%の量が使用される。本出願人は、3重量%以上の結晶性担体を使用し、同時に約4重量%のゲル化剤を使用すると、驚くことに、最終錠剤の高い機械的強度及び非常に良好な崩壊特性が得られ得ることを知見した。
【0042】
実施形態では、ゲル化剤は、非ゲル形成性材料、好ましくはゼラチンのようなコラーゲン由来材料からなる。ゲル化剤は、原則液体中でゲルを形成し得るが、我々は、キャビティに充填したとき液体処方物中で完全に、または少なくとも完全にゲルを形成しないゲル化剤を選択することが有利である(このことは、流体中でゲル化剤分子のネットワークを形成する代わりに、前記温度で流動性処方物中に溶解するゲル化化合物または材料を選択することにより簡単になし得る)ことを知見した。流動性処方物の粘度が余り高くない及び/または非ニュートン挙動が小さいことを考えれば、こうすると流動性処方物の投入が簡単となる。投入後、温度を低下させるとゲル化剤はゲルを形成する。好ましい実施形態では、コラーゲン由来材料は、2×104g/molの重量平均分子量を有する(よって、15.000〜25.000g/molの実際の平均重量を有する)ゼラチンである。本出願人は、前記ゲル化剤を使用すると、余り粘性でない錠剤が生じ、ゲル化剤の分子量が比較的低いにも関わらず十分な機械的強度を保持しながら、非常に良好な崩壊特性をも有する錠剤が得られることを知見した。Gelati Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能)が、前記ゲル化剤の良好な例である。ゲル化剤強度は、慣習的にブルームと称されていることに注目されたい。0.5インチの直径を有する標準プランジャーを用いて、ゲル表面を4mm押し下げるのに必要なグラムで表示される力である。ゼラチンの場合、ゲル化剤は6.67%の濃度で使用され、ゲルは試験前17時間10℃で保持されなければならない。ブルームは、ゲルの機械的弾性と関係しており、例えばゼラチンのタイプを分類するために使用されている。通常、10〜300ブルームの範囲である。Gelati Sol Pは、約15〜25のブルーム強度を有している。
【0043】
なお別の実施形態では、ペレットの容量は、キャビティに充填するときに使用される温度及び圧力での流動性処方物の自由液滴の最大容量よりも大きい。この実施形態では、ペレットは、流動性処方物の単一自由液滴よりも大きい。この実施形態は、1つの単一自由液滴が例えば50μlくらいの大きさしかない流動性処方物に基づき、容易に手で扱うことができる大きさの錠剤を得る点で有利である。例えば、流動性処方物が溶媒(担体流体)として水を主成分とするならば、20℃の温度及び1気圧の圧力での単一自由液滴は約50μlである。この液滴を凍結し、乾燥した後、直径は約2.3mmである。これは手で扱うためにはかなり小さい。より大きい錠剤を作成することが好ましい。従来技術では、これは、最大1mlの液滴が得られ得るように流動性処方物を製剤に変換することによりなされる。しかしながら、この場合、流動性処方物にゲル様コンシステンシーを与えるために全ての種類の添加剤が必要である。これらの添加剤により、製造プロセスがより複雑になるだけでなく、添加剤は被験者患者との適合性を評価するときに考慮されなければならない。1つの単一液滴を凍結することはプロセスの点で利点を有しているが、本出願人は、複数の単一液滴の容量に相当する容量からペレットを構成すると、単に処方物中に存在させなければならない化合物が少なくてすむために、流動性処方物の成分に対する条件は余り厳格でなくなる。
【0044】
更なる実施形態では、キャビティに流動性処方物を充填する速度を、ペレットをキャビティから取り出す前に、該キャビティ中にあるペレットの部分の表面が本質的にキャビティの表面のネガティブプリントであるように選択する。ペレットの表面、少なくともキャビティに隣接している部分が、本質的にキャビティの表面のネガティブプリントである(本質的には、少なくともヒトの裸眼で目に見える限りということを意味する)ように充填速度を選択し得ることを知見した。充填速度がこの速度よりも遅いと、キャビティの表面を完全に湿らす前にキャビティに進入した流体が固化するので、不均一なペレット表面が形成されるであろう。完全に湿らすことは、申し分のない平滑なペレット、ひいては錠剤を形成するのに特に適切であることを知見しただけでなく、錠剤中にロゴまたは他の識別手段(例えば、錠剤を市場に出す業者のロゴまたは他の図形)を形成する機会を与える。このためには、キャビティ壁に図形の鏡像(ポジティブは壁の上部に適用され、ネガティブは壁に押しつけられている)を形成しなければならない。
【0045】
キャビティ中にあるペレットの部分の断面は、その入口のキャビティの断面より小さい。この実施形態では、例えば機械的力、空気圧、重力等を用いてペレットをキャビティから単に押したり引いたりすることにより、ペレットはキャビティから容易に取り出され得る。
【0046】
実施形態では、ペレットをキャビティ壁から自動的に脱離させるのを補助する手段を講ずる。自動脱離、すなわちいずれの種類の機械的介入なしに脱離させると、その対応するキャビティから取り出すときにペレットが損傷する可能性が大きく低下する。キャビティが固体エレメント中に形成されている実施形態では、固体エレメントの温度を流動性処方物の凍結温度よりも十分に低く保持することにより自動脱離が補助される。いずれの流動性処方物でも、低く、ペレットをキャビティ壁から自動脱離させるのに十分なペレットの収縮速度を生じさせる温度が見つけられ得ることが判明した。水を主成分とする流動性処方物の場合、温度は、処方物の凍結温度よりも少なくとも80°(K)低く、すなわち約−80℃でなければならない。好ましくは、差は約100〜120度から最高196度である。必要な差は、処方物の構成に依存するが、自動脱離されるまで0から上昇させることにより簡単に見つけることができる。自動脱離すると、重力を用いる(エレメントを逆さまにする)だけでペレットをキャビティから簡単に取り出し得るので、前記脱離は容易に認識され得る。別の実施形態では、自動脱離は、化学的及び/または物理的手段により粘着性表面を有するキャビティ壁を設けることにより補助される。粘着性表面を得るための一般的に公知の化学的手段は、例えばフッ素含量の高いコーティング(例えば、Teflon(登録商標))またはシリコーン含量の高いコーティングである。物理的手段は、例えば蓮の葉様構造または一般的に知られているナノピンである。粘着性表面は、ペレットを非常に浅いキャビティ中で形成し得るという追加の利点を有している。しかしながら、キャビティ壁のネガティブプリントを形成するために表面を完全に湿らすことが、本質的に難しいという欠点がある。
【0047】
ペレットに押圧力を加えることにより該ペレットをキャビティから取り出す。凍結ペレットを機械的に損傷させる固有のリスクがあるにもかかわらず、押圧力を加えると、ペレットの形状を無傷に保ちながらペレットのキャビティからの取り出しに関して優れた結果を与えることを知見した。例えば吹込ガスの流れに対する押圧力の利点は、空気流は固有の無菌性の問題を有しながら、押圧をクリーンな機械的エレメントを用いてなし得ることである。好ましい実施形態では、ペレットを接線方向の力を用いてキャビティから押し出す。余り直接的でないが、接線方向の力は、取り出しプロセスを改善しつつもペレットに対する機械的インパクトが少ないという利点があることを知見した。接線方向の力を加えることにより、ペレットはそのキャビティ中でねじれ、回転し始め、よってペレットは損傷させることなく容易に且つ信頼性をもって取り出される。
【0048】
複数のペレットを真空中で乾燥する前に、これらのペレットを詰め込んだベッドの形で配置する。この実施形態では、ペレットは単層で配置されているときには乾燥されないが、多層ベッドの一部であるように詰め込まれる。こうして、凍結乾燥機で実施され得る乾燥ステップが著しく高い効率で行われる。しかしながら、乾燥プロセスは、特にベッドを介する伝熱に依存しているので、層の数は2または3に限定される。従って、更なる実施形態では、ペレットを底壁及び側壁を有する熱伝導性コンテナ中に配置し、熱源を詰め込んだペレットの上層の上に設け、熱源は、ベッドの上層に向けられた表面を有しており、その表面は少なくとも0.4の輻射率係数を有している。その後、ペレットの乾燥を補助するように粒子に対して熱を与えるために、少なくともコンテナの底部及び前記表面を加熱しながらペレットを真空にかける。この実施形態では、ベッド中の層の数は3以上に増加させ得る。しかしながら、ペレットの単層を加えると、例えばより速い乾燥プロセスを与え、より好ましくはより良好な乾燥結果を与えるために追加の熱源を使用することが有利である。この点で、輻射率係数(通常、εとして示す)は、同じ温度の真の黒体より放射されるエネルギーに対する表面により放射されるエネルギーの比である。輻射率係数はエネルギーを吸収し、放射する能力の指標である。真の黒体はε=1を有し、実際の表面または対象物はε<1を有するであろう。輻射率は数値であり、単位を持たない。輻射率係数を少なくとも0.4を有すると、加熱された表面は粒子に対して比較的大量の熱を放射する。本発明の意味で、輻射率は表面の4つの異なる温度で、すなわち55、60、65及び70℃で調べた平均輻射率である。輻射率は、米国コネチカット州イースト・ハートフォードに所在のAdvanced Fuel Research Inc.のModel 205WBのような市販されている専用の輻射率測定装置を用いて測定され得る。しかしながら、前記装置は非常に高価である。或いは、一般的に知られているように、輻射率を測定する非常に簡単な方法は、表面及び公知の輻射率を有する表面を熱電対により測定される同一温度に加熱することである。次いで、2つの表面の温度を、標準赤外パイロメーターを用いて読み取る。2つの赤外測定値の差は、表面の輻射率の差による(Applied Optics,Vol.13,No.9,September 1974も参照されたい)。
【0049】
最終錠剤に関する限り、実施形態では、錠剤は、上記したように室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む。錠剤は、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む流動性処方物からも形成され得る。好ましくは、錠剤は、少なくとも2重量%のゲル形成性材料、例えば(好ましくは)ゼラチンのようなコラーゲン由来材料を含むゲル化剤を含む。崩壊特性を改善するために、非ゲル形成性材料、例えば(好ましくは)ゼラチンのようなコラーゲン由来材料を添加することが更に好ましい。この非ゲル形成性ゼラチンは、2×104g/molの重量平均分子量を有するゼラチンであり得る。
【0050】
本発明の具体例
本発明を以下の非限定例を用いてより詳細に説明する。
実施例1では生ワクチン成分を含むODTを得た。
実施例2では化学的薬物を含むODTを得た。
実施例3ではODTの機械的安定性を調べた。
実施例4はODTの機械的安定性を調べる代替方法である。
【0051】
図1
図1Aは、凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー100及び対応する冷却エレメント105を概略的に示す。キャビティトレー100は、6mmの厚さを有する中実スチールプレート(グレード316Lのステンレス鋼製)である。プレート中には、3列(102、103及び104)のキャビティ101が形成されている。図1Bは、第1のタイプのキャビティの例を与える。図示されているキャビティ101は2.9mmの半径r及び2.1mmの深さdの球状形状を有する。このキャビティでは、(約2.9mmの半径を有する)約100μlの容量の球状ペレット30が形成され得る。より大きな錠剤のために使用され得る別の例を、図1Bに示す。このキャビティ101’も、4.9mmの半径r及び4.0mmの深さを有する球状である。このキャビティでは、(約4.9mmの半径を有する)約500μlの容量の球状ペレット30’が形成され得る。実際、例えば(“M&M−”または“Smartie”形状としても公知の)偏球状ペレット、卵形ペレット、長円形(ツェッペリン形)ペレット等を得るためには、他の大きさ(例えば、50〜1000μl)及び形状を用意してもよい。特に、偏球状ペレットは、6.0mmの長さ及び幅、3.3mmの深さを有する偏球状キャビティにおいて約300μlの容量を投入することにより形成され得る。
【0052】
トレー100は、冷却エレメント105上に重力下に載っている(代替実施形態では、トレーを冷却エレメント105にクランプで固定してもよい)。このエレメントは、約6cmの高さを有する中空ステンレス鋼ボックスである。このボックス105は入口106及び出口107を有している。入口106を介して約−196℃の温度の液体窒素が供給され得る(矢印Aで示す)。出口107で、窒素(液体及び気体の混合物)がボックス105から去る(矢印Bで示す)。こうして、トレー100は十分に冷却されて、流動性処方物を1つ以上のキャビティ101中に分配したとき、非常に急速な固化プロセスが得られ得る。例えば流動性処方物の温度、周囲空気の温度、窒素流、及び固体ペレットの生成速度に応じて、図示されている配置でトレー100に対して−85〜−145℃の平衡温度が得られ得る。
【0053】
図2
図2は、凍結ペレットを得るための装置の基本的部品を概略的に示す。図1に図示したのと同じトレー100及び冷却エレメント105が見られ得る。正面(トレー100の下流側)には、黒色プラスチックコンテナ15が示されており、このコンテナは、該コンテナを手動で取り扱うためのハンドル16を有している。このコンテナ15は、冷却エレメント105に対して直接配置されている。コンテナは、液体窒素を使用することにより冷却されているその支持体(図示せず)を設けることにより約−45℃の温度まで冷却されている。トレー100の反対側(上流側)には、収集エレメント120が示されており、この収集エレメントは、3つのコンパートメント121、122及び123に分けられている。この収集エレメントは、トレー100の表面(収集エレメント120の底部とトレー100の表面間に約0.2mmのスペースを有する)上を方向Cに進み、凍結ペレットをそのキャビティから押し出す。その後、これらのペレットは、コンパートメント121、122及び123の各々に収集され、最終的にコンテナ15に運ばれる。ブラケット131を介して収集エレメント120に分配ユニット130が接続されている。この分配ユニットは、それぞれキャビティ列102、103及び104に対応する3本の針132、133及び134を含む。これらの針は、流動性処方物を各キャビティ中に分配するために使用される。流動性処方物は、それぞれチューブ152、153及び154を介して針の各々に供給される。
【0054】
デバイスを操作する場合、雰囲気を、乾燥窒素ガスを用いて約15℃の温度まで冷却する。周囲雰囲気の温度が比較的高いために、水を主成分とする流動性処方物が、チューブ152、153、154または針132、133及び134中で凍結するリスクなしに、該処方物を装置中及びその周りで取り扱うことができる。0℃より下に保たれている各種部品上で水が氷に結晶化するのを防止するために乾燥窒素ガスを使用する。この構成で、トレー100は、約−125℃の平衡温度を有するであろう。収集エレメント120は約−35℃の温度を有し、コンテナ15は約−45℃の温度を有するであろう。
【0055】
プロセスでは、始めに針が第1(上流側)キャビティと合致するまで、エレメント120を方向Cに移動させる。次いで、エレメント120の移動を一時的に停止し、第1の3つのキャビティに流動性処方物を充填する。終わったら、針が次の3つのキャビティと合致するまで、エレメント120を前方に移動させる。次いで、これらのキャビティに流動性処方物を充填する。このプロセスは、全てのキャビティに流動性処方物が充填されるまで続ける。次いで、エレメント120を少し(約25mm)引き上げ、トレー100の上流側部の元の位置に戻す。続いて、エレメント120を再び図示されている方向Cに前進させる。このとき、エレメントは、各キャビティ中の凍結ペレットを横切る。ペレットはそのキャビティから押し出され、それぞれコンパートメント121、122及び123中に収集される。このプロセスで、各ペレットは、そのキャビティ中に20〜90秒間とどまり得る(例えばペレットの大きさに応じて充填から押し出されるまで、ペレットが大きいほど、固化プロセスはより長い時間かかる)。同時に、エレメント120の上流で空になったキャビティを上記したように再充填させる。このプロセスは、コンテナ15が凍結ペレットで十分に一杯になるまで続ける。
【0056】
図3
図3は、図2に図示した装置の幾つかの部品の概略平面図である。この概略図では、収集エレメント120の内部配置を示す。各コンパートメント121、122及び123は、それぞれ傾斜した内壁141、142及び143を含む。これらの壁は、各々移動方向Cに対して10°の角度で傾斜している。壁は、凍結ペレットにぶつかり、ペレットをそのキャビティから押し出す。各壁が傾斜しているので、ペレットは接線方向の力で押し出される。このことは、ペレットが多かれ少なかれそのキャビティからねじり出されるという利点を有する。これによりペレットが損傷されるリスクが大きく低下するとみられる。押し出されると、ペレットは、コンパートメントの裏側に(この場合、それぞれラウンディング161、162及び163中に)収集される。(コンテナ15に隣接する)エレメント120の下流側位置で、ペレットはコンテナ15中に自動的に落ちる。
【0057】
図4
図4は、対応するキャビティと共に充填針を概略的に示す。針132はチップ232を有する。このチップ232は、該チップがキャビティ101中で形成しようとするペレット30の最上部分と合致するように、トレー100の表面に対して垂直位置を有するように配置されている。この位置からキャビティに流動性処方物が充填される。充填速度は、所望の充填プロセスが得られるように調整され得る。例えば、非常に遅い速度を選択すると、例えば流体がキャビティ壁を完全に湿らすことができないので、かなり不揃いな形状のペレットが形成されるであろう。十分に速い速度を選択すると、完全に湿らすことができる。この速度は、例えばキャビティに充填時の流体の実際の温度、キャビティ壁の温度、流体の粘度等に応じる。処方物毎に、この速度は、ルーチンの実験を実施することにより見つけられ得る。所要量の流動性処方物を充填したら、針は更に次のキャビティに移動する。しかしながら、全ての処方物が分配された時点と、針が再び移動し始める時点との間に待機時間(例えば、約0.1秒)を設けることが好ましい。これにより、投入されたペレットが機械的に乱れるのが防止され得る。この特定例では、球状ペレット30が描かれている。しかしながら、他の形状も形成され得る。いずれの場合も、チップの最適位置は、形成しようとするペレットの最上部分で直角をなしている。
【0058】
図5
図5中には、凍結乾燥機(凍結乾燥装置)が概略的に示されている。この凍結乾燥機の例は、オランダ国ブロイケレンに所在のSalm en Kippから入手可能なChrist Epsilon 2−12Dであり得る。凍結乾燥機1は、ハウジング2及び複数の棚3を含む。Epsilon 2−12Dは4+1枚の棚を含む。便宜上これらの棚のうち3枚の棚(すなわち、棚3a、3b及び3c)が図1に示されている。これらの棚の各々に、棚3を均一に加熱するために加熱エレメント5(それぞれ、参照符号5a、5b及び5cが付されている)が設けられている。処理ユニット10を使用することにより加熱がコントロールされる。ハウジングは、該ハウジング2内の圧力を十分低くするためにポンプユニット11に接続している。ハウジングの内部は、冷却ユニット12、特に凝縮器(実際、約−60℃に維持されており、昇華した氷を凝縮させるための駆動力として作用する凝縮器である)を含む冷却ユニット12を使用することにより−60℃くらいの低い温度まで冷却され得る。棚3a及び3bには、黒色PTFEプレート8及び8’がその底部に固定されて設けられている。これらのプレートの輻射率係数は0.78である。これらの黒色プレートと棚を均密に接触させることにより、これらプレートは、棚そのものと同じ温度まで実質的に加温され得る。こうして、プレート8は棚3そのものに加えた熱源として見なされ得る。
【0059】
棚の上にコンテナ15及び15’が置かれている。これらのコンテナは、熱伝導性材料(この場合、カーボンブラック入りポリエチレンテレフタレート)から作られている。コンテナは、該コンテナが載っている棚と熱伝導的に接触している。図示されている配置では、コンテナには、凍結ペレット30が充填されており、よって各コンテナに詰め込まれたペレットのベッド29が形成されている。棚を加熱することにより、粒子は、コンテナの加熱されている底壁及び側壁を介して、及びそれぞれ加熱されているプレート8及び8’からの照射により熱を受け得る。各コンテナ15は、約20〜30cmの幅及び長さ、約4cmの高さを有していることに注目されたい。コンテナに充填した後の詰め込まれたベッドの高さは、典型的には1.5〜3cmである。これにより、ベッドのアスペクト比について20/3≒7〜約30/1.5=20の典型値が導き出される。しかしながら、ペレットの単層配置も使用可能である。
【0060】
図6
図6は、錠剤の圧潰強度を調べるための引張試験機を概略的に示す。この図は、錠剤30の圧潰強度を試験するためのロードセル400を有する、LR5K Plus引張試験機(英国のLloyd Instrumentsから入手可能)の概略側面図である。このために、錠剤30が支持体300上に載っている間に、錠剤にロッド401を用いて荷重力を加える。
【0061】
図7
図7には、本発明に従う錠剤を含むパッケージ500が概略的に示されている。パッケージ500は、長方形ベース及び複数のブリスター501を含み、ブリスター中には錠剤30が収容されている。このブリスターパッケージは、長方形ベースに固定されている層(図示せず)をはぎ取って、ブリスターのそれぞれ1つを開け、それぞれの錠剤を取り出すことができるピールオフタイプであり得る。特に錠剤の機械的安定性が十分な場合には、層は、各錠剤が該層を介して圧出されるより一般的なタイプ(しばしば、アルミニウムホイル)のものであり得る。
【0062】
図8
図8は、ODTの機械的安定性を調べるための別のデバイスを概略的に示す。このデバイスを用いて、ホイルを介して圧出した後、凍結乾燥した錠剤が無傷のままである傾向を調べる。ダイ3001及び3002は13直径を有する円筒状孔を含むユニットである。5μmの厚さのアルミニウムホイル3005が、ダイの間に置かれており、ホイルが動くのを防ぐためにゴムリング3003によりカバーされている。凍結乾燥した錠剤30を、ホイル上に置き、ガラス棒4001を用い、その棒上に手で力を加えることによりホイルを介して錠剤を圧出し得る。ホイルを介して錠剤を圧出した後、完全な錠剤または錠剤の断片がダイ3002の下に集められ得る。
【0063】
図9
図9は、ホイルを介して圧出した後無傷のままである傾向を調べるための試験を実施した後の錠剤または錠剤の断片の例を示す。図9aは、5μmのホイルを介して圧出したとき無傷のままである錠剤30を示す。図9bは、同一試験にかけたときに断片化した錠剤30”を示す。
【実施例】
【0064】
実施例1
ワクチン成分を含有する錠剤を得るために、生のヒト感染性インフルエンザウイルスを卵から採取した。ウイルスを含有する尿膜液を安定化剤と混合する。この安定化剤は、WO2006/094974 A2から公知であり、特にこの特許出願の表5に記載されている(160g/lのグリシン含量)。安定化剤の添加方法も前記特許出願に記載されており、すなわちp.24の「実施例」の欄の導入部に概説されている。
【0065】
図1bに従う3列のキャビティを有するプレートを使用する。これらのキャビティの各々に、約100μlの流動性処方物を約0.3秒で分配する。処方物は、キャビティ壁に接触するとすぐに凍結し始めるであろう。しかしながら、機械的取り扱いができるように、ペレットが実質的に凍結するまでには約15秒かかる。この後、(約5.7mmの直径を有する)ペレットを、(図2及び3と共に説明したように)キャビティから押し出し、凍結乾燥コンテナ15に移す。
【0066】
(約−45℃の温度を有する)凍結ペレットを、約15のアスペクト比で詰め込んだベッドの形でコンテナ15中に配置する。その後、複数のコンテナを、予め約−35℃の温度とした凍結乾燥機(図5を参照されたい)中に入れる。凍結乾燥機を、次の凍結乾燥サイクル(表1)にかける。
【表1】
【0067】
表1から分かるように、棚に充填したコンテナを載せた後、棚を、始めは−35℃の温度で30分間保持する(「凍結」フェーズ)。これにより、凍結ペレットは−35℃の温度となる。圧力は大気圧に保つ。その後、棚の温度を、−35℃で20分間安定化させ、圧力は大気圧のままである(「作成」)。その後、圧力を10分間で0.370mbarに下げ、棚の温度は−35℃に保つ(「初期昇華」)。これらの条件下で、凍結液体は既に昇華し、それぞれ伝導及び照射による2つの熱源によりペレットに熱が供給される。しかしながら、これらの条件下での昇華速度は比較的遅い。昇華速度を上げるために、棚の温度を3時間で40℃の温度とし(「昇華1」)、この温度を16時間保つ(「昇華2」)。圧力は0.370mbarの低値に保つ。その後、圧力を更に0.021mbarに下げ、棚の温度を4℃とする。この後者のステップは1分かかる(「終了ステップ」)。その後、昇華プロセスが完了し、凍結液体の約98%がペレットを去り、これにより速崩壊錠に変換される。次いで、圧力がほぼ大気圧になるまで、約20℃の温度の乾燥窒素ガスを凍結乾燥機に供給する。これには約2分かかる。次いで、ドアを開けて錠剤を取り出すことができる。本発明の方法を用いると、凍結乾燥ペレットの均質ベッドとして目に見える、均質な凍結乾燥結果が得られ得ることが判明し得る。凍結乾燥機を開いた後、錠剤上で水の凝縮を試み、予防するために錠剤を湿った環境にかけないことが好ましい。特に、錠剤を、乾燥空気または窒素の雰囲気のクロゼット中のコンテナに充填する。コンテナに充填した後、コンテナを閉じ、更に使用するまで冷所(4〜8℃)で保存する。
【0068】
こうして、約5.5mmの平均直径を有し、その中に生ワクチン成分を含有している凍結乾燥されている、球状錠剤を得ることができる。
【0069】
錠剤は、医薬パックを提供するために使用され得る。このパックは、1つ以上の錠剤及び場合により他の成分を含有しているコンテナ(例えば、ガラスまたはプラスチック製バイアル)から構成されている。1錠を患者の舌の下に置き、錠剤が溶けるように放置することにより、錠剤中のワクチン成分をヒト被験者に投与することができる。生インフルエンザウイルスは、粘膜を介して患者の身体組織に入るであろう。
【0070】
実施例2
化学的薬物を含有する錠剤を得るために、図1Cに従って3列のキャビティを有するプレートを使用し得る。これらのキャビティの各々に、約500μlの流動性処方物を約2秒で分配する。この投入速度で、キャビティ壁は完全に湿り、よって(ペレットをキャビティから取り出す前に)キャビティ中にあるペレットの部分の表面は、キャビティの表面のネガフィブプリント(この場合、くぼみもしわもない平滑な表面)である。(ポジティブまたはネガティブ)ロゴがキャビティ中に存在していたなら、このロゴは、ペレットの表面上で目に見えるであろう。凍結ペレットを作成するために使用され得る流動性処方物の例を以下に示す。
【0071】
流動性処方物1:2重量%のアセナピン((3aS,12bS)−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンザ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロールマレエート(1:1);ORG 5222)、4重量%の加水分解ゼラチン(イギリス国ヨークシャーに所在のCrodaから入手可能)、3重量%のマンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手可能なPEARLITOL(登録商標)タイプC160)及びQS(適量、すなわち全重量を100%とするまで添加)の水。
【0072】
流動性処方物2:16重量%のSCH 530348二硫酸塩トロンビン受容体アンタゴニスト(TRA;US 7,235,567を参照されたい)、3.5重量%の加水分解ゼラチン、3重量%のマンニトール、3.73重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、1.41重量%のクエン酸一水和物及びQSの水。
【0073】
流動性処方物3:8重量%のTRA、8重量%のゼラチン(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能なSol P)、9重量%のマンニトール、3.73重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、1.41重量%のクエン酸一水和物及びQSの水。
【0074】
流動性処方物4:8重量%のTRA、8重量%のゼラチン(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能なSol P)、9重量%のマンニトール及びQSの水。
【0075】
処方物は、キャビティ壁に接触すると直ちに凍結し始めるであろう。しかしながら、ペレットの機械的取り扱いができるように実質的に凍結するまで約45秒かかる。この後、(約9.8mmの直径を有する)ペレットを、(図2及び図3と共に説明したように)キャビティから押し出し、凍結乾燥コンテナ15に運ぶ。
【0076】
(約−45℃の温度を有する)凍結ペレットを、密に詰め込んだ単層の形でコンテナ15中に配置する。次いで、複数のコンテナを前もって約−35℃の温度とした凍結乾燥機(図5を参照されたい)に入れる。凍結乾燥機を次の凍結乾燥サイクル(表2)にかける。
【表2】
【0077】
先に記載したように、「終了ステップ」後、昇華プロセスが完了し、凍結液体の約98%がペレットを去り、これにより速崩壊錠に変換する。次いで、約20℃の温度の乾燥窒素ガスを、圧力がほぼ大気圧になるまで凍結乾燥機に装入する。これは約2分かかる。次いで、ドアを開けて錠剤を取り出す。この錠剤を、乾燥空気または窒素の雰囲気のクロゼット中のコンテナに充填する。コンテナに充填後、コンテナを閉じ、更に使用するまで冷所(4〜8℃)で保存する。
【0078】
生じた錠剤を37℃の温度の水を入れたビーカー中に投入し、錠剤が本質的に完全に崩壊する(ヒトの肉眼で目に見える大きなピースがない)までにかかった時間を測定することにより前記錠剤の崩壊を試験し得る。流動性処方物1、2、3及び4を用いて作成した錠剤のすべてが、5〜10秒以内に崩壊すると見られる。
【0079】
実施例3
この実施例には、錠剤の機械的安定性を評価するための各種方法が記載されている。第1の試験は、機械的取り扱いに対する錠剤の脆弱性を試験するために一般的に使用されている錠剤脆砕性試験である。この脆砕性を明白に評価するための装置及び方法は、フランス国モアランに所在のDeltaLabから入手可能なA4113 Tablet Friability and Abrasion Testerである。他の装置及び方法も市販されている。
【0080】
錠剤の機械的安定性を特徴付けるために使用され得る別の特性の評価方法は錠剤の圧潰強度を調べることである。この試験方法の原理は、錠剤に歪みを加え、生じた力を錠剤が完全に圧潰するまで測定する。このために、Llyod Instruments(英国ハンプシャー州フェアハムに所在)のLR5K Plus引張試験機を使用し得る。本実施例では、我々はXLC 50Nロードセル(図6を参照されたい)を使用した。パンチ変位(「伸び」とも呼ぶ)速度は、10mm/分であった。力−変位プロフィールを三重に検出し、破損パターンを、試験機と一緒に供給されたNexygenソフトウェアを用いて調べた。代替として、圧潰強度を、Pharmatest PTB 300/301(ドイツ国ハインブルクに所在のPharmatestから入手可能)を用いて調べることができることに注目されたい。
【0081】
第1の実験では、一連の250μlの球状プラセボ(薬物を含有していない)錠剤を、先(実施例2)に記載した方法を用いて作成したが、ただしキャビティの大きさを半径3.9mm、深さ3.0mmに変更した。各々が異なる量のゲル化剤Gelita Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelita)及び結晶性担体マンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手したPEARLITOL(登録商標)タイプC160)を含む各種の流動性処方物を使用して、多種多様の錠剤を得た。これらの化合物とは別に、流動性処方物は水を含んでいた。表5中に各種組成を示す。
【表3】
【0082】
錠剤の圧砕強度をLlyod Instruments LR5K引張試験機を用いて評価するとき、まず荷重を伸びとともに増加させる。しばらくして、錠剤が破損(すなわち、破壊)したら、荷重の増加を停止させるかまたは低下させることさえある。破損時の最大荷重を圧砕強度と呼ぶ。錠剤の圧砕強度の測定結果を表6に示す。
【表4】
【0083】
これらの錠剤(いずれも、3重量%以上の結晶性担体及び4重量%以上のゲル化剤を含む流動性処方物をベースとする)の平均圧砕強度が比較的高いことが判明した。
【0084】
第2の実験では、一連の500μlの偏球状の、場合により薬物として(実施例2に記載されている)TRAを含有する錠剤を、先(実施例2)に記載した方法を用いて作成した、ただしキャビティの大きさを半径12.0mm、深さ3.0mmに変更した。各々が異なる量のゲル化剤Gelita Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelita)、及び異なる量のマンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手したPEARLITOL(登録商標)タイプC160)及びスクロース(α−D−グルコピラノシル−β−D−フルクトフラノシド)から構成される結晶性担体からなる各種の流動性処方物を使用した。これらの化合物とは別に、流動性処方物はQSの水を含んでいた。表7中に各種組成を示す。
【表5】
【0085】
各錠剤の圧砕強度は同一の約5Nであったと見られた。このことは、この実験において追加のスクロースも薬物も錠剤の強度に有意な影響を持たないことを意味する。従って、第1の実験で非常に良好な圧砕強度を与えることが判明していた8重量%のゼラチン及び9重量%を超えるマンニトールの量は、錠剤、特に高い機械的安定性そのものを有していなければならない錠剤にとって非常に適当であると見られる。
【0086】
実施例4
ホイルを介して圧出した後の錠剤が無傷のままである傾向を、図8と共に記載したデバイスを用いて測定した。この試験は本実施例において「圧出試験」と呼ぶ。
【0087】
異なる組成を有する錠剤を作成した。ゲル化剤を得るために、Chandrasekhar,R.,Hassan,Z.,AlHusban,F.,Smith,A.M.and Mohammed,A.R.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,72(2009)119−129が発表しているデータに沿って、2つのタイプのゼラチンの量及び比率を変えた。2つのタイプのゼラチン、すなわちSol P(非ゲル形成性ゼラチン)及びBS100(ゲル形成性ゼラチン)を使用した。後者のゼラチンはドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能である。マンニトール(PEARLITOL(登録商標)タイプC160)の量を、2つのレベルに保った。全ての錠剤が、2%(m/v)の薬物[この場合、アセナピン(実施例2を参照されたい)]を含有していた。250μlの容量の偏球状、球状、及び扁平な錠剤を作成し、圧出試験で試験した。比較のために、市販されている250μlの錠剤(「タブレット」)も試験した。この錠剤は2%の薬物、4%のタイプが不明のゲル化剤及び3%のマンニトールを含有していた。試験した後、錠剤は、図9に概略的に図示されているように無傷であるかまたは多数のピースに割れた。表8に結果を要約し、各組成、特殊形状及び容量を有する10個の錠剤を試験したときの無傷の錠剤のパーセントを示す。ODTは一般的に脆く、選択した構成で無傷のままである錠剤はないと通常理解されていることに注目されたい。しかしながら、驚くことに、本発明を用いると、5μm厚さのアルミニウムホイルを介して圧出したとき無傷のままである錠剤が作成され得ることを知見した。
【0088】
表8の結果は、圧出試験に耐えるような錠剤の形状の影響をも暗示している。偏球状及び球状の形状は、一般に扁平な錠剤に比較して優れているように見える。単位の直径に対して上または下の表面を表面湾曲させることが可能である。本発明の方法の投入原理と投入された液体がある表面張力を有している事実とを合わせて、錠剤の表面は、球状錠剤の場合には2つの半球として、偏球状錠剤の場合には2つの結合されている球状キャップとして描かれ得ることが暗示される。ペレットが、凍結乾燥中及び/または保存中に収縮するという事実のために、投入容量から錠剤の将来の寸法を適切に予測できない。キャップの寸法をその容量と相関させる広く利用されている情報を用いて、キャップの曲率半径を計算し、このキャップの曲率半径を錠剤の寸法を用いて錠剤の直径と相関させることができる。例えば、錠剤の相対曲率Kは、キャップの曲率半径(R)と錠剤の直径(D)の半分の比により定義される:
K=2R/D
相対曲率の値が高いほど、表面は扁平である。この試験で使用した球は約1.0の相対曲率Kを有していた。偏球は、約1.2の相対曲率Kを有しており、「タブレット」は不確定な大きさの相対曲率Kを有していた。1〜1.2の範囲のK値が最適であると結論づけることができる。
【表6】
【0089】
通常、約4%のゲル化剤を含む錠剤は、アルミニウムホイルを介して圧出したときに破損に対して良好な耐性を有するようである。少なくとも2重量%のゲル形成性ゼラチン(例えば、BS100)を存在させると、圧出試験において非常に良好なスコアを有する錠剤が得られ得ることも知見された。このことは、これらの錠剤におけるより高い「ネットワーク」度のためであり得る。しかしながら、ゲル化剤中の追加化合物として非ゲル形成性ゼラチン(例えば、Sol P)を有する錠剤は、より良好な崩壊特性のために好ましい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルト・イン・マウス、ファスト・メルティング、マウス・ディソルビング、ラピッド・メルト、オロディスパーシブルまたは速溶解錠とも称される、口腔内崩壊錠(ODT)は、水を摂取しなくてもヒトの口腔内で急速に崩壊する固体剤形である。よって、ODTは、例えば嚥下の問題(特に、高齢者及び小児の患者の場合)を解消し、患者のコンプライアンスを改善し得る。ODTを口内に入れると、唾液によりODTは急速に(通常60秒以内に、好ましくは30秒以内に、好ましくは10秒以内に)崩壊し、唾液が薬物を含有するように剤形が分散する。患者は、胃に達するように唾液−物質混合物を嚥下するか、または胃に達する前に薬物の大部分(全てでなくても)が口腔、咽頭及び/または食道を通って吸収され、よって薬物の初回通過代謝が予防され、薬物のバイオアベイラビリティーが高められる。
【0003】
ODT中の活性成分として各種の薬物及び/またはその組合せ、例えば鎮痛薬及び抗炎症薬、制酸薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗細菌薬、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗マラリア薬、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗新生物薬及び免疫抑制薬、抗精神病薬、抗原虫薬、抗リウマチ薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬及び神経遮断薬、β−ブロッカー、強心剤、コルチコステロイド、咳止め薬、細胞傷害薬、鬱血除去薬、利尿薬、酵素、抗パーキンソン剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、脂質調節薬、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症薬、オピオイド系鎮痛薬、タンパク質、ペプチド、組換え薬、性ホルモン、避妊薬、殺精子薬、興奮薬等が使用され得る。
【0004】
ODT(本明細書では、「崩壊錠」とも称する)の製造方法は、例えばFarmalyocに譲渡されているUS 5,384,124から公知である。公知方法では、1つ以上の薬物を含むペーストを形成し、このペーストをポリ塩化ビニル担体エレメント中に存在する所定の形状及び大きさのキャビティ中に分配することにより、該ペーストを十分に規定された形状及び容量を有する単位用量に機械的に分割する。ペーストを分配した後、担体エレメントを凍結乾燥機に入れ、ペーストを凍結乾燥させる。こうして、各単位用量を錠剤に形成する。凍結乾燥プロセスの利点は、薬物が非常に安定な形態となるだけでなく、液体に接触すると崩壊する固体剤形が得られることである。特に、ペーストが、元々担体溶媒(用語「溶媒」には他の物質に対する担体として役立ち得る液体が含まれる)としての水を主成分としたならば、錠剤は、通常、水または水系流体(例えば、唾液)と接触すると崩壊するであろう。
【0005】
公知方法が、ライフサイエンス業界で広く使用されている(例えば、2004年7月30日に“Tablets and Capsules”中で発表された、Deepak Kaushik,Harish Dureja and T.R.Saini,Maharishi Dayanand University and Shri G.S.Institute of Technology and Scienceによる“Orally disintegrating tablets:an overview of melt−mouth tablet technologies and techniques”を参照されたい)。特に、Zydis(米国ニュージャージ州サマセットに所在のCatalent Pharma Solutions)及びLyoc(フランス国メゾン・アルフォールに所在のLaboratoires Farmalyoc)のような技術が、この公知方法を使用している。典型的には、出発のペーストまたは流動性処方物を調製し、予備成形したブリスターパックに投入する。次いで、このパック、すなわちパック中に存在する材料を凍結し、凍結乾燥にかけて水を除去する。生じた構造物は、本質的に非常に多孔性であり、唾液と接触したとき急速に崩壊する。実際、この方法は、非常に急速に崩壊し、基準の経口固体製剤と比較して十分な薬物動態特性、より良好な患者コンプライアンス及びより高いバイオアベイラビリティーを示し、副作用がより少ない錠剤が作成され得る点で、非常に有利である(Luca Dobettiによる“Fast−Melting Tablets:Developments and Technologies”,Pharmaceutical Technology Drug Delivery,2001,p.44−50を参照されたい)。知られている欠点は、錠剤の機械的安定性が比較的乏しく、製造コストが高いことである。しかしながら、これらの欠点は、使用される凍結乾燥方法のために固有であると考えられる。凍結乾燥は高価な装置を必要とし、本質的に例えば従来の圧縮技術と比較して機械的に余り安定していない錠剤しか得られない。この事実のために、公知方法は、プロセス中ずっと最終錠剤パッケージ(すなわち、ブリスターパッケージ)を担体として使用することにより実施する。このことは本質的に、この特定のパッケージと併用し得るように各製造ステップを調節しなければならないことを意味する。これにより、各種製造ステップにおける操作の自由が制限され、よって原価が更に上昇することさえある。しかしながら、凍結乾燥生成物の崩壊錠としての利点を考えれば、製造方法の固有の高い原価は、製造専門家により受け入れられている。
【0006】
ODTを得るための他の方法も、従来技術から公知であることに注目されたい。例えば、WO 93/12770及びUS 2006/0057207(いずれも、Pfizer Inc.に譲渡されている)は、凍結ペレットを密閉モールド中で圧縮することにより、錠剤を実質的にその全表面上で能動的に成形する方法を記載している。よって、この公知方法は、例えば重力及び表面張力の作用のみで受動的に得られる形状を用いることにより錠剤の形状を受動的に得る方法とは異なる。こうすると、所定の形状が管理された方法で容易に得られ得る。しかしながら、この方法は、流動性処方物がキャビティ(すなわち、密閉モールド)から漏れやすい、かなり複雑なダイ−パンチアセンブリを必要とする点で不利である。また、凍結ペレットは圧縮力を使用するためにダイまたはパンチのいずれかに粘着しがちである。実際、凍結ペレットを圧縮することにより、良好な機械的特性が得られ、このために凍結ペレットをキャビティから一体的に取り出すことができるという利点がある。
【0007】
US 5,382,437及びEP 0 450 141から、流動性処方物を室温の固体エレメントの開放キャビティに入れた後、このエレメントを凍結機中に30〜60分間入れる別の方法が公知である。流動性処方物がキャビティにうまく充填され、よってキャビティの大きさ及び形状に正確に対応する大きさ及び形状を有する凍結ペレットが得られ、また予想できるペレットの形が得られるので、この方法は有利であると見られる。しかしながら、この方法では冷却−加熱サイクルを実施しなければならず、全プロセスが比較的ゆっくりであるという欠点もある。また、キャビティに(低粘度の)流動性処方物を充填したときに、流体がキャビティから漏れるリスクもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,384,124号明細書
【特許文献2】国際公開第93/12770号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0057207号明細書
【特許文献4】米国特許第5,382,437号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0450141号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Deepak Kaushik,Harish Dureja and T.R.Saini,Maharishi Dayanand University and Shri G.S.Institute of Technology and Science、“Orally disintegrating tablets:an overview of melt−mouth tablet technologies and techniques”、Tablets and Capsules、2004年7月30日
【非特許文献2】Luca Dobetti、“Fast−Melting Tablets:Developments and Technologies”,Pharmaceutical Technology Drug Delivery,2001,p.44−50
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、基本的技術として凍結乾燥を用いて、1錠あたりの原価が著しく低く、同時に優れた崩壊特性及び十分な機械的安定性を有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を得るための方法を提供することである。
【0011】
この目的を達するために、薬物を含む流動性処方物を用意するステップと、その中に少なくとも1つのキャビティが形成されている固体エレメントを用意するステップと、固体エレメントを流動性処方物の凍結温度より下の温度まで冷却するステップと、キャビティに流動性処方物を充填するステップと、キャビティ中に存在している間に、流動性処方物から熱をキャビティ壁を介して伝導により抽出することにより流動性処方物を固化して、固体ペレットの全表面を能動的に成形することなく薬物を含む固体ペレットを形成するステップと、固体ペレットをキャビティから取り出すステップと、固体ペレットを真空中で乾燥して口腔内崩壊錠を得るステップとを含む、プリアンブルに従う方法が考案された。
【0012】
本出願人は、驚くことに、まず開放キャビティに薬物を含む流動性処方物を充填し(一緒に薬物を含む流動性処方物を形成する2つ以上の別々のサブ処方物をキャビティに充填することをも包含する);次いで重力及び表面張力(メニスカス)だけで形成される(キャビティの開放端部で)形状を有する圧縮されていない凍結ペレットで終わり得るような能動的成形ツールを適用せずに、流動性処方物を予冷したキャビティ中に単に放置することによりキャビティ中で流動性処方物を凍結して、固体ペレットを形成し;凍結ペレットをキャビティから取り出し;その後ペレットを(例えば、凍結乾燥装置において)乾燥することにより、ODTの十分な崩壊特性及び機械的特性を得ることができると同時に、製造方法の自由を著しく高め、よって1錠あたりの原価を著しく低下させる可能性を広げることを知見した。また、キャビティに充填時に、固体エレメントを処方物の凍結温度より下の温度とすることが特に有利であることを知見した。一見して、これは不利のようである。すなわち、流動性処方物が、キャビティ壁と接触すると直ちに固化し始めると、理論上キャビティの大きさ及び形状に対応しない大きさ及び形状を有する凍結ペレットが生じるので、凍結プロセスはコントロールされず、ペレットの形も予測できない。しかしながら、本出願人は、流動性処方物の凍結温度より下の温度について、流動性処方物の流れ中に存在する熱の量が冷たい固体エレメントによる熱の抽出または熱抽出の少なくとも大部分を単に相殺し得るだけなので、流体の即時凍結を相殺するのに十分に速い充填速度を見つけることができることを知見した。全般に、新規プロセスはよりコントロールしやすい。従来方法の場合、冷却−加熱サイクルを実施しなければならないのに対して、固体エレメントの温度は同一レベルで保持され得る。更に、プロセスはより速い。熱はキャビティに充填時に既に抽出されている。また、流体は、キャビティに進入後非常に速く冷え、よってすぐに高い粘度を示すので、流体がキャビティから漏れるリスクが少ない。
【0013】
新規方法は、Farmalyocから公知の最も関連ある従来技術に対して幾つかの重要な利点を有している。第1に、この新規方法では、最終錠剤包装をプロセスステップに含める必要がない。従って、標準の安価な包装を使用し得るだけでなく、製造ステップの各々を、そのタスクにとって最適化されているツールを用いて実施し得る。例えばブリスターパッケージを凍結乾燥機における錠剤用担体として使用している従来方法では、乾燥環境により(プラスチック)パッケージを介して伝達され得る熱を比較的低量に調節しなければならない。これにより、乾燥ステップ中各錠剤に対する熱負荷が著しく上昇する恐れがあり(例えば、高い局所温度)、必要なプロセス時間が著しく延長する恐れがある。本出願人は、処方物から熱をキ、ャビティ壁を介して伝導により抽出すること(処方物を凍結させるために抽出されなければならない熱の少なくとも大部分、すなわち50%より多く、好ましくは80%より多く100%までをキャビティ壁を介する伝導により抽出されることを意味する)が、高いプラスの影響を有することも知見した。これは、ペレットに対する熱負荷の従来技術の問題を解消または少なくとも緩和するだけでなく、最終ODTの機械的強度を改善し得る。公知方法では、熱の殆ど全てが、対流により抽出され、特に処方物が固化されるまで熱を抽出すべく、流動性処方物の周りを動いている窒素ガスを用いて抽出される。対流は流動性処方物を凍結させるために十分に使用し得るが、本出願人は、伝導を使用するとき流動性処方物の少なくとも一部の周りに伝熱性材料を設けることにより、冷却プロセスは速崩壊性を高レベルに維持しながら有利な機械的安定性、例えば十分な機械的強度及び/または低い脆砕性を有するペレットを与え得ることを知見した。この理由は明らかでないが、伝導による熱の抽出により、より効率的で、よって非常に速い冷却プロセスを与え、これによりペレット中の構成分子を別に配置するという事実のためであり得る。従来方法では、少量の熱しか、流動性処方物からブリスターの壁を介して抽出され得ないことに注目されたい。しかしながら、ブリスターパッケージ材料は典型的には0.1〜0.2W/mKの熱伝達係数を有するプラスチックであるので、これは本発明の意味で伝導による熱抽出として適切ではなく、このことは必然的に熱の大部分が伝導以外の他の手段(すなわち、冷たい窒素ガス流を用いる対流)により抽出されることを意味する。
【0014】
本発明の方法の別の重要な利点は、最終包装された製品中の錠剤が、錠剤を形成したモールド中に存在しないことである。従来方法では、ペレットは、モールドとして働くブリスターパッケージ中で形成される。しかしながら、ペレットが最終包装中に存在する錠剤に変換されるまで、ペレットはプロセス中ずっとモールド中に留まっている。従って、錠剤が多かれ少なかれブリスター壁に粘着し、かなりの機械的力を加えなければ取り出し得ないという高いリスクがある。このことと(従来の圧縮錠と比較して)凍結乾燥した錠剤が本質的に安定でない事実と合わせて、投与前でさえも壊れてしまう錠剤がしばしば生じる。これにより、使用されないか、或いは余りに少ない活性成分しか患者に投与されない錠剤が生ずる恐れがある。
【0015】
本発明の方法の別の重要な利点は、凍結乾燥機そのものの中で凍結ステップを行わなくてすむことである。US 5,384,124から公知の方法では、ペーストがどうしてもブリスターパッケージ中に存在しているので、凍結ステップを凍結乾燥機中で行う。しかしながら、公知の方法では、ペーストを凍結させるためにペーストから熱を抽出するのに比較的長い時間がかかる。本発明の方法では、流動性処方物を別のステップで専用キャビティにおいて固化し、その後凍結ペレットをキャビティから取り出し、追加ステップで凍結乾燥させることにより、初期の凍結を非常により効率的に実施し得る。
【0016】
本発明のなお別の実質的な利点は、固体の凍結ペレットを得るステップが利用可能な乾燥設備に依存しないことである。凍結ペレットが例えば乾燥ステップとは完全に無関係に得られるので、ペレットを別に作成し、例えば乾燥設備が利用可能になるまで保存し得る。特に、薬物が生物起源のものである場合には、この物質を含有する流動性処方物のバッチを、現在利用可能な乾燥設備とは無関係に凍結ペレットに完全に加工し得ることが重要である。また、本発明の方法を用いると、扁平な面を持たない三次元で(殆ど)球状、偏球状、「卵」様または楕円形状の錠剤を作成することができる。公知のように、球状形状に近似している形状は、本質的に機械的に強く、その形状は単位の速崩壊特性に有意な悪影響を与えない。
【0017】
従来技術から公知のダイ−パンチ方法に対して、本発明の方法は、流動性処方物がキャビティから漏れることがないという重要な利点を有している。例えば圧縮力またはペレットの表面を形成する他の能動的な成形技術を適用することによりペレットの全表面を能動的に成形することなく、流動性処方物を開放キャビティ中で凍結させるべく放置するだけなので、流動性処方物がキャビティから押し出されるリスクがない。また、ペレットを能動的に成形するために使用される部品にペレットが粘着するリスクも著しく低い。驚くことに、圧縮力を適用することなく凍結させるべく流動性処方物を単に放置することにより、ペレットは凍結乾燥のような更なる加工のためにキャビティから取り出すのに十分な機械的強度を有し得る。
【0018】
本発明は、薬物及び/またはその組合せと一緒に使用され得ることに注目されたい。前記物質の典型例は、EP 1 165 053 B1のp.5,l.37(“Analgesics and antiinflammatory agents:”)から始まり、p.7,l.25(“…fenfluramine,mazindol,pemoline.”)で終わる中に見つけることができる。他の例は、黄体ホルモンタイプの化合物(例えば、デソゲストレル、エトノゲストレル、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエルゲストロミン、ゲストデン、ノメゲストロール酢酸塩、ジエノゲスト、ドロスピレノン、またはプロゲストロゲン活性を有する他のステロイド系または非ステロイド系化合物)、エストロゲンタイプの化合物(例えば、エストラジオール、エストリオール、メストラノール、エチニル−エストラジオール、或いはエストロゲン活性を有する他のステロイド系または非ステロイド系化合物)、並びに中枢神経系の領域の化合物(例えば、アセナピン、ミルタザピン、エスミルタザピン、またはCNS活性を有する他の化合物)である。
【0019】
本発明は、幾つかの認識に基づいており、第1の認識は最終の凍結乾燥生成物は余り機械的に安定でないかもしれないが、驚くことに中間の凍結生成物は圧縮されていないにも関わらず上記欠点を持たない。これにより、中間体ペレットの機械的取り扱いに対する可能性が広がる。しかしながら、凍結ペレットは最終ブリスターパッケージの形で凍結乾燥機中に既に存在しているので、公知のFarmalyoc方法でのこうした取り扱いは無意味なものとなる。しかしながら、本出願人は、第2の見識、すなわち主に凍結乾燥機における担体として最終錠剤パッケージを使用するとき、十分な乾燥スペースが使用されない(錠剤はパッケージ中で近接関係であり得ないので、各錠剤は比較的大きなスペースを要する)という事実のために、公知方法での乾燥ステップはかなり非効率的であるという見識を得た。公知方法における凍結乾燥機の非効率的使用は、固有のものであるが、乾燥ステップで使用した担体とは異なる担体を凍結ステップのために使用することにより、凍結と乾燥ステップを分離することにより解消し得る。第3の見識は、公知方法では、凍結ステップが比較的ゆっくりであるために、元の液体処方物がほぼ平衡状態で凍結することである。こうすると、典型的には乾燥したときに、通常公知の非常に脆い最終生成物が生ずる。本出願人は、有意により速い冷却プロセスは、より非晶質様の最終生成物、よってより低い脆砕性の最終生成物を生ずる固化プロセスにつながり得ることを認識した。このことは、錠剤のより高い圧潰強度またはより低い脆砕性(米国薬局方24/NF19,1999,p.2148−2149で定義されている)として示し得る。
【0020】
本発明は、曲面、好ましくは1〜1.2の相対曲率Kを有する曲面を有する、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠にも関することに注目されたい。本発明の方法の重要な利点は、既存の技術に従って作成した錠剤と比較して高い機械的強度を有する錠剤が得られ得ることである。これにより、従来技術の欠点、例えば各錠剤を個別にピール・オフ・ブリスターパッケージ中に包装する必要が解消される。本発明を用いると、通常の圧出ブリスターパッケージ中にバルク包装または包装される錠剤を作成することができる。
【0021】
本発明は、ヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を含むパッケージにも関し、前記錠剤は、ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有しており、前記錠剤は、必須ではないが、好ましくはコンテナ中に個別に包装されており、本発明の方法を用いてキャビティ中で形成されており、前記キャビティは、錠剤を包装しているコンテナ(例えば、ブリスターパッケージのブリスター)とは異なる。先に記載したように、本発明の重要な利点は、最終包装された製品中の錠剤が、これらの錠剤を形成したモールド中に存在せず、これにより錠剤が最終パッケージ中のそのコンテナ(例えば、ブリスターパッケージのブリスター)に粘着する可能性が殆ど排除されることである。このようにほぼ排除されると、医師、DVM、患者等による錠剤の取り扱いの便利さが改善される。
【0022】
定義
錠剤は、例えば直接的な経口、直腸または非経口投与のため、または間接的な投与(例えば、溶解または分散された形態で投与すべく担体材料、特に液体と混合した後)のための固体剤形である。錠剤は、該錠剤を個別に手で取り扱うことができる点で、粉末または微粒と区別できる。錠剤の最短長は1mm、好ましくは2mm、より好ましくは4mm、典型的には(必須ではないが)4〜20mmである。
【0023】
口腔内崩壊錠は、例えば口腔内で唾液と接触すると60秒以内、好ましくは30秒以内、より好ましくは10秒以内で崩壊する凍結乾燥された錠剤である。
【0024】
凍結乾燥は、物質を含有する流動性処方物を凍結し、凍結した液体を真空下で実質的に除去することにより、前記物質の安定な調製物を作成する際に使用される方法である。
【0025】
真空は、減圧(低大気圧)下の空気または他の気体である。
【0026】
崩壊するとは、一体性を喪失させ、断片に細かくすることである。用語「崩壊する」は(分子レベルの断片を有する)溶解を包含する。
【0027】
速崩壊は、液体、特に37℃の水と接触すると始まり、60秒以内、好ましくは30秒以内、より好ましくは10秒以内で終わる崩壊を意味する。
【0028】
薬物は、(疾患を含めた)障害を治療するために、すなわち障害の予防、回復または治癒を助けるために使用され得る任意の物質である。前記物質は、例えば天然または合成ペプチドまたはタンパク質、(多)糖、または他の有機または無機分子、死滅したまたは生きている微生物、死滅したまたは生きている寄生虫等のような化学的または生物学的化合物であり得る。
【0029】
流動性処方物の凍結温度は、処方物のコンシステンシーが、液体から固体へ変態する温度、すなわち形態を変化させることなく外力に絶えることができるコンシステンシーである。
【0030】
熱伝導性材料は、少なくとも1W/mK(ワット/メートルケルビン)の熱伝達率を有する材料である。
【0031】
不接着性は、接着を阻止する能力を意味する。
【0032】
結晶性材料は平衡条件下で固化すると結晶を形成し得る材料である。
【0033】
ゲル化剤は、流体に対してゲルのコンシステンシーを付与するために流体内で分子のネットワークを形成し得る、すなわち(どんな状況下でも自由流動性液体でない)少なくとも多少の自立能を有し得る物質である。用語「ゲル化剤」は、各々が流体内で分子のネットワークを形成し得る2つ以上の異なる化合物または材料からなる物質をも包含する。
【0034】
ゲル形成性材料は、流動性処方物、特に水中4%(w/w)の濃度で、投入目的で流動性処方物を使用する温度(本発明の場合、キャビティに充填するためには室温、20℃)で24時間静止状況に放置したとき、流動性処方物中でゲルを形成する材料である。
【0035】
非ゲル形成性材料は、流動性処方物、特に水中4%(w/w)の濃度で、投入目的で流動性処方物を使用する温度(本発明の場合、キャビティに充填するためには室温、20℃)で24時間静止状況に放置したとき、流動性処方物中でゲルを形成しない材料である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図1B】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図1C】凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー及び対応する冷却エレメントを概略的に示す。
【図2】凍結ペレットを得るための装置の基本的部品を概略的に示す。
【図3】図2に図示した装置の幾つかの部品の概略平面図である。
【図4】対応するキャビティと共に充填針を概略的に示す。
【図5】本発明の方法及びシステムにおいて使用するための乾燥チャンバーを概略的に示す。
【図6】錠剤の圧潰強度を調べるための引張試験機を概略的に示す。
【図7】本発明に従う錠剤を含むパッケージを概略的に示す。
【図8】ホイルを介して圧出したときの錠剤の安定性を測定するためのデバイスを概略的に示す。
【図9a】ホイルを介して圧出された錠剤の例を概略的に示す。
【図9b】ホイルを介して圧出された錠剤の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ODTは、理想的には複数の要求、例えば錠剤の取り扱いを妨げないように非粘性であり、許容される味を有し、且つ(例えば薬物の高い血中レベルが得られ得るように)非常に急速な崩壊を与えながら、(錠剤をパッケージから容易に取り出すことができ、錠剤を患者の口に入れることができるように)手で取り扱うのに十分な機械的強度を満たし、場合により(例えば、錠剤が口腔中で崩壊し、胃に達しないように)粘膜付着性を有することを満たす。錠剤を作成するために使用される液体処方物は、場合により添加剤、例えば界面活性剤、または錠剤の特定用途のために有用な最終錠剤特性を与えるために使用され得る他の物質を含有していてもよい。前記物質の例は、着色料、甘味料または他の矯味剤もしくは味マスキング物質、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、界面活性剤、着色剤、pH調整剤、或いは錠剤の成分の残りと相容性であり、所要により意図する患者にとって医薬的に許容され得る他の物質であり得る。
【0038】
本発明の実施形態において、キャビティの容量は、ペレットの容量より小さい。従来方法では、形成しようとする錠剤の大きさ及び形状に正確に対応するキャビティ(すなわち、モールド)を選択する。しかしながら、本出願人は、驚くことに形成しようとする錠剤の容量よりも小さい容量を有するキャビティを使用し得ることを知見した。この実施形態では、ペレットは、エレメントの表面からキャビティの外に突き出ている。これは、例えば流動性処方物が冷たいエレメントと伝導的に接触させることにより迅速に冷却されるので可能になる。これにより、キャビティから突き出てさえいるペレットが確実に形成できる。この特定の実施形態の利点は、キャビティにより完全に包囲されているかまたはキャビティ中に沈んでいるペレットと比較してペレットとキャビティ間の接触表面が小さいので、ペレットをキャビティから比較的容易に取り出すことができることである。この実施形態の別の利点は、キャビティとキャビティ上のオープンスペース間の転移部位に対応して錠剤の外観が不連続となり得ることである。形成しようとするペレットがキャビティから突き出ているので、キャビティ入口でペレットの形状に不連続性が生じ得る。この不連続性は、錠剤を他の錠剤(よって、例えば会社のロゴ、アイコンまたはカラーについての代替物)と区別するために使用され得、或いは有利な機械的特性を与えるために使用され得る。
【0039】
好ましい実施形態では、キャビティの容量は、ペレットの容量の50%より小さい。この実施形態では、ペレットの半分以上がキャビティが形成されているエレメントから突き出ている。こうすると、ペレットが非常に容易に取り出せる。流動性処方物から実質的に十分な熱を抽出させるための最小容量は、約15%、好ましくは約20%である。
【0040】
本発明の方法の特定実施形態では、処方物は、室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む。結晶性担体は、流動性処方物に容易に処方され得、錠剤に対して良好な機械的特性を与えるという利点を有している。ゲル化剤を配合すると、錠剤の機械的特性が更に改善される。適当な担体材料の例は、糖、例えばマンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、トレハロース及び環状糖(例:シクロデキストリン);無機物、例えばリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びケイ酸アルミニウム;典型的には2〜12個の炭素原子を有するアミノ酸、例えばグリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン及びL−フェニルアラニンである。ゲル化剤は流体にゲルのコンシステンシーを与えるように流体内に分子のネットワークを形成し得る物質であり得る。前記物質は高分子タンパク質または他のポリマーからなり得るが、(例えば、US 6,471,758から公知のように)小分子を再結合して長鎖にすることによりネットワークを形成し得る小分子をベースとしてもよい。ゲル化剤は、大きい分子が最終錠剤に対して追加の機械的安定性を与えるという利点を有している。ゲル化剤の典型例はゼラチン、デキストリン、及び大豆、小麦及びオオバコ種子タンパク質、ガム(例:グアー、寒天、アカシア、キサンタン及びカラゲナン)、多糖、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ポリビニルピロリドン等である。
【0041】
更なる実施形態では、処方物は、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む。典型的には、ODTを得るための処方物中の結晶性担体材料の量は、3重量%より低く維持される。ゲル化剤の場合、好ましくは約4重量%の量が使用される。本出願人は、3重量%以上の結晶性担体を使用し、同時に約4重量%のゲル化剤を使用すると、驚くことに、最終錠剤の高い機械的強度及び非常に良好な崩壊特性が得られ得ることを知見した。
【0042】
実施形態では、ゲル化剤は、非ゲル形成性材料、好ましくはゼラチンのようなコラーゲン由来材料からなる。ゲル化剤は、原則液体中でゲルを形成し得るが、我々は、キャビティに充填したとき液体処方物中で完全に、または少なくとも完全にゲルを形成しないゲル化剤を選択することが有利である(このことは、流体中でゲル化剤分子のネットワークを形成する代わりに、前記温度で流動性処方物中に溶解するゲル化化合物または材料を選択することにより簡単になし得る)ことを知見した。流動性処方物の粘度が余り高くない及び/または非ニュートン挙動が小さいことを考えれば、こうすると流動性処方物の投入が簡単となる。投入後、温度を低下させるとゲル化剤はゲルを形成する。好ましい実施形態では、コラーゲン由来材料は、2×104g/molの重量平均分子量を有する(よって、15.000〜25.000g/molの実際の平均重量を有する)ゼラチンである。本出願人は、前記ゲル化剤を使用すると、余り粘性でない錠剤が生じ、ゲル化剤の分子量が比較的低いにも関わらず十分な機械的強度を保持しながら、非常に良好な崩壊特性をも有する錠剤が得られることを知見した。Gelati Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能)が、前記ゲル化剤の良好な例である。ゲル化剤強度は、慣習的にブルームと称されていることに注目されたい。0.5インチの直径を有する標準プランジャーを用いて、ゲル表面を4mm押し下げるのに必要なグラムで表示される力である。ゼラチンの場合、ゲル化剤は6.67%の濃度で使用され、ゲルは試験前17時間10℃で保持されなければならない。ブルームは、ゲルの機械的弾性と関係しており、例えばゼラチンのタイプを分類するために使用されている。通常、10〜300ブルームの範囲である。Gelati Sol Pは、約15〜25のブルーム強度を有している。
【0043】
なお別の実施形態では、ペレットの容量は、キャビティに充填するときに使用される温度及び圧力での流動性処方物の自由液滴の最大容量よりも大きい。この実施形態では、ペレットは、流動性処方物の単一自由液滴よりも大きい。この実施形態は、1つの単一自由液滴が例えば50μlくらいの大きさしかない流動性処方物に基づき、容易に手で扱うことができる大きさの錠剤を得る点で有利である。例えば、流動性処方物が溶媒(担体流体)として水を主成分とするならば、20℃の温度及び1気圧の圧力での単一自由液滴は約50μlである。この液滴を凍結し、乾燥した後、直径は約2.3mmである。これは手で扱うためにはかなり小さい。より大きい錠剤を作成することが好ましい。従来技術では、これは、最大1mlの液滴が得られ得るように流動性処方物を製剤に変換することによりなされる。しかしながら、この場合、流動性処方物にゲル様コンシステンシーを与えるために全ての種類の添加剤が必要である。これらの添加剤により、製造プロセスがより複雑になるだけでなく、添加剤は被験者患者との適合性を評価するときに考慮されなければならない。1つの単一液滴を凍結することはプロセスの点で利点を有しているが、本出願人は、複数の単一液滴の容量に相当する容量からペレットを構成すると、単に処方物中に存在させなければならない化合物が少なくてすむために、流動性処方物の成分に対する条件は余り厳格でなくなる。
【0044】
更なる実施形態では、キャビティに流動性処方物を充填する速度を、ペレットをキャビティから取り出す前に、該キャビティ中にあるペレットの部分の表面が本質的にキャビティの表面のネガティブプリントであるように選択する。ペレットの表面、少なくともキャビティに隣接している部分が、本質的にキャビティの表面のネガティブプリントである(本質的には、少なくともヒトの裸眼で目に見える限りということを意味する)ように充填速度を選択し得ることを知見した。充填速度がこの速度よりも遅いと、キャビティの表面を完全に湿らす前にキャビティに進入した流体が固化するので、不均一なペレット表面が形成されるであろう。完全に湿らすことは、申し分のない平滑なペレット、ひいては錠剤を形成するのに特に適切であることを知見しただけでなく、錠剤中にロゴまたは他の識別手段(例えば、錠剤を市場に出す業者のロゴまたは他の図形)を形成する機会を与える。このためには、キャビティ壁に図形の鏡像(ポジティブは壁の上部に適用され、ネガティブは壁に押しつけられている)を形成しなければならない。
【0045】
キャビティ中にあるペレットの部分の断面は、その入口のキャビティの断面より小さい。この実施形態では、例えば機械的力、空気圧、重力等を用いてペレットをキャビティから単に押したり引いたりすることにより、ペレットはキャビティから容易に取り出され得る。
【0046】
実施形態では、ペレットをキャビティ壁から自動的に脱離させるのを補助する手段を講ずる。自動脱離、すなわちいずれの種類の機械的介入なしに脱離させると、その対応するキャビティから取り出すときにペレットが損傷する可能性が大きく低下する。キャビティが固体エレメント中に形成されている実施形態では、固体エレメントの温度を流動性処方物の凍結温度よりも十分に低く保持することにより自動脱離が補助される。いずれの流動性処方物でも、低く、ペレットをキャビティ壁から自動脱離させるのに十分なペレットの収縮速度を生じさせる温度が見つけられ得ることが判明した。水を主成分とする流動性処方物の場合、温度は、処方物の凍結温度よりも少なくとも80°(K)低く、すなわち約−80℃でなければならない。好ましくは、差は約100〜120度から最高196度である。必要な差は、処方物の構成に依存するが、自動脱離されるまで0から上昇させることにより簡単に見つけることができる。自動脱離すると、重力を用いる(エレメントを逆さまにする)だけでペレットをキャビティから簡単に取り出し得るので、前記脱離は容易に認識され得る。別の実施形態では、自動脱離は、化学的及び/または物理的手段により粘着性表面を有するキャビティ壁を設けることにより補助される。粘着性表面を得るための一般的に公知の化学的手段は、例えばフッ素含量の高いコーティング(例えば、Teflon(登録商標))またはシリコーン含量の高いコーティングである。物理的手段は、例えば蓮の葉様構造または一般的に知られているナノピンである。粘着性表面は、ペレットを非常に浅いキャビティ中で形成し得るという追加の利点を有している。しかしながら、キャビティ壁のネガティブプリントを形成するために表面を完全に湿らすことが、本質的に難しいという欠点がある。
【0047】
ペレットに押圧力を加えることにより該ペレットをキャビティから取り出す。凍結ペレットを機械的に損傷させる固有のリスクがあるにもかかわらず、押圧力を加えると、ペレットの形状を無傷に保ちながらペレットのキャビティからの取り出しに関して優れた結果を与えることを知見した。例えば吹込ガスの流れに対する押圧力の利点は、空気流は固有の無菌性の問題を有しながら、押圧をクリーンな機械的エレメントを用いてなし得ることである。好ましい実施形態では、ペレットを接線方向の力を用いてキャビティから押し出す。余り直接的でないが、接線方向の力は、取り出しプロセスを改善しつつもペレットに対する機械的インパクトが少ないという利点があることを知見した。接線方向の力を加えることにより、ペレットはそのキャビティ中でねじれ、回転し始め、よってペレットは損傷させることなく容易に且つ信頼性をもって取り出される。
【0048】
複数のペレットを真空中で乾燥する前に、これらのペレットを詰め込んだベッドの形で配置する。この実施形態では、ペレットは単層で配置されているときには乾燥されないが、多層ベッドの一部であるように詰め込まれる。こうして、凍結乾燥機で実施され得る乾燥ステップが著しく高い効率で行われる。しかしながら、乾燥プロセスは、特にベッドを介する伝熱に依存しているので、層の数は2または3に限定される。従って、更なる実施形態では、ペレットを底壁及び側壁を有する熱伝導性コンテナ中に配置し、熱源を詰め込んだペレットの上層の上に設け、熱源は、ベッドの上層に向けられた表面を有しており、その表面は少なくとも0.4の輻射率係数を有している。その後、ペレットの乾燥を補助するように粒子に対して熱を与えるために、少なくともコンテナの底部及び前記表面を加熱しながらペレットを真空にかける。この実施形態では、ベッド中の層の数は3以上に増加させ得る。しかしながら、ペレットの単層を加えると、例えばより速い乾燥プロセスを与え、より好ましくはより良好な乾燥結果を与えるために追加の熱源を使用することが有利である。この点で、輻射率係数(通常、εとして示す)は、同じ温度の真の黒体より放射されるエネルギーに対する表面により放射されるエネルギーの比である。輻射率係数はエネルギーを吸収し、放射する能力の指標である。真の黒体はε=1を有し、実際の表面または対象物はε<1を有するであろう。輻射率は数値であり、単位を持たない。輻射率係数を少なくとも0.4を有すると、加熱された表面は粒子に対して比較的大量の熱を放射する。本発明の意味で、輻射率は表面の4つの異なる温度で、すなわち55、60、65及び70℃で調べた平均輻射率である。輻射率は、米国コネチカット州イースト・ハートフォードに所在のAdvanced Fuel Research Inc.のModel 205WBのような市販されている専用の輻射率測定装置を用いて測定され得る。しかしながら、前記装置は非常に高価である。或いは、一般的に知られているように、輻射率を測定する非常に簡単な方法は、表面及び公知の輻射率を有する表面を熱電対により測定される同一温度に加熱することである。次いで、2つの表面の温度を、標準赤外パイロメーターを用いて読み取る。2つの赤外測定値の差は、表面の輻射率の差による(Applied Optics,Vol.13,No.9,September 1974も参照されたい)。
【0049】
最終錠剤に関する限り、実施形態では、錠剤は、上記したように室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む。錠剤は、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む流動性処方物からも形成され得る。好ましくは、錠剤は、少なくとも2重量%のゲル形成性材料、例えば(好ましくは)ゼラチンのようなコラーゲン由来材料を含むゲル化剤を含む。崩壊特性を改善するために、非ゲル形成性材料、例えば(好ましくは)ゼラチンのようなコラーゲン由来材料を添加することが更に好ましい。この非ゲル形成性ゼラチンは、2×104g/molの重量平均分子量を有するゼラチンであり得る。
【0050】
本発明の具体例
本発明を以下の非限定例を用いてより詳細に説明する。
実施例1では生ワクチン成分を含むODTを得た。
実施例2では化学的薬物を含むODTを得た。
実施例3ではODTの機械的安定性を調べた。
実施例4はODTの機械的安定性を調べる代替方法である。
【0051】
図1
図1Aは、凍結ペレットを得るための方法において使用するためのキャビティトレー100及び対応する冷却エレメント105を概略的に示す。キャビティトレー100は、6mmの厚さを有する中実スチールプレート(グレード316Lのステンレス鋼製)である。プレート中には、3列(102、103及び104)のキャビティ101が形成されている。図1Bは、第1のタイプのキャビティの例を与える。図示されているキャビティ101は2.9mmの半径r及び2.1mmの深さdの球状形状を有する。このキャビティでは、(約2.9mmの半径を有する)約100μlの容量の球状ペレット30が形成され得る。より大きな錠剤のために使用され得る別の例を、図1Bに示す。このキャビティ101’も、4.9mmの半径r及び4.0mmの深さを有する球状である。このキャビティでは、(約4.9mmの半径を有する)約500μlの容量の球状ペレット30’が形成され得る。実際、例えば(“M&M−”または“Smartie”形状としても公知の)偏球状ペレット、卵形ペレット、長円形(ツェッペリン形)ペレット等を得るためには、他の大きさ(例えば、50〜1000μl)及び形状を用意してもよい。特に、偏球状ペレットは、6.0mmの長さ及び幅、3.3mmの深さを有する偏球状キャビティにおいて約300μlの容量を投入することにより形成され得る。
【0052】
トレー100は、冷却エレメント105上に重力下に載っている(代替実施形態では、トレーを冷却エレメント105にクランプで固定してもよい)。このエレメントは、約6cmの高さを有する中空ステンレス鋼ボックスである。このボックス105は入口106及び出口107を有している。入口106を介して約−196℃の温度の液体窒素が供給され得る(矢印Aで示す)。出口107で、窒素(液体及び気体の混合物)がボックス105から去る(矢印Bで示す)。こうして、トレー100は十分に冷却されて、流動性処方物を1つ以上のキャビティ101中に分配したとき、非常に急速な固化プロセスが得られ得る。例えば流動性処方物の温度、周囲空気の温度、窒素流、及び固体ペレットの生成速度に応じて、図示されている配置でトレー100に対して−85〜−145℃の平衡温度が得られ得る。
【0053】
図2
図2は、凍結ペレットを得るための装置の基本的部品を概略的に示す。図1に図示したのと同じトレー100及び冷却エレメント105が見られ得る。正面(トレー100の下流側)には、黒色プラスチックコンテナ15が示されており、このコンテナは、該コンテナを手動で取り扱うためのハンドル16を有している。このコンテナ15は、冷却エレメント105に対して直接配置されている。コンテナは、液体窒素を使用することにより冷却されているその支持体(図示せず)を設けることにより約−45℃の温度まで冷却されている。トレー100の反対側(上流側)には、収集エレメント120が示されており、この収集エレメントは、3つのコンパートメント121、122及び123に分けられている。この収集エレメントは、トレー100の表面(収集エレメント120の底部とトレー100の表面間に約0.2mmのスペースを有する)上を方向Cに進み、凍結ペレットをそのキャビティから押し出す。その後、これらのペレットは、コンパートメント121、122及び123の各々に収集され、最終的にコンテナ15に運ばれる。ブラケット131を介して収集エレメント120に分配ユニット130が接続されている。この分配ユニットは、それぞれキャビティ列102、103及び104に対応する3本の針132、133及び134を含む。これらの針は、流動性処方物を各キャビティ中に分配するために使用される。流動性処方物は、それぞれチューブ152、153及び154を介して針の各々に供給される。
【0054】
デバイスを操作する場合、雰囲気を、乾燥窒素ガスを用いて約15℃の温度まで冷却する。周囲雰囲気の温度が比較的高いために、水を主成分とする流動性処方物が、チューブ152、153、154または針132、133及び134中で凍結するリスクなしに、該処方物を装置中及びその周りで取り扱うことができる。0℃より下に保たれている各種部品上で水が氷に結晶化するのを防止するために乾燥窒素ガスを使用する。この構成で、トレー100は、約−125℃の平衡温度を有するであろう。収集エレメント120は約−35℃の温度を有し、コンテナ15は約−45℃の温度を有するであろう。
【0055】
プロセスでは、始めに針が第1(上流側)キャビティと合致するまで、エレメント120を方向Cに移動させる。次いで、エレメント120の移動を一時的に停止し、第1の3つのキャビティに流動性処方物を充填する。終わったら、針が次の3つのキャビティと合致するまで、エレメント120を前方に移動させる。次いで、これらのキャビティに流動性処方物を充填する。このプロセスは、全てのキャビティに流動性処方物が充填されるまで続ける。次いで、エレメント120を少し(約25mm)引き上げ、トレー100の上流側部の元の位置に戻す。続いて、エレメント120を再び図示されている方向Cに前進させる。このとき、エレメントは、各キャビティ中の凍結ペレットを横切る。ペレットはそのキャビティから押し出され、それぞれコンパートメント121、122及び123中に収集される。このプロセスで、各ペレットは、そのキャビティ中に20〜90秒間とどまり得る(例えばペレットの大きさに応じて充填から押し出されるまで、ペレットが大きいほど、固化プロセスはより長い時間かかる)。同時に、エレメント120の上流で空になったキャビティを上記したように再充填させる。このプロセスは、コンテナ15が凍結ペレットで十分に一杯になるまで続ける。
【0056】
図3
図3は、図2に図示した装置の幾つかの部品の概略平面図である。この概略図では、収集エレメント120の内部配置を示す。各コンパートメント121、122及び123は、それぞれ傾斜した内壁141、142及び143を含む。これらの壁は、各々移動方向Cに対して10°の角度で傾斜している。壁は、凍結ペレットにぶつかり、ペレットをそのキャビティから押し出す。各壁が傾斜しているので、ペレットは接線方向の力で押し出される。このことは、ペレットが多かれ少なかれそのキャビティからねじり出されるという利点を有する。これによりペレットが損傷されるリスクが大きく低下するとみられる。押し出されると、ペレットは、コンパートメントの裏側に(この場合、それぞれラウンディング161、162及び163中に)収集される。(コンテナ15に隣接する)エレメント120の下流側位置で、ペレットはコンテナ15中に自動的に落ちる。
【0057】
図4
図4は、対応するキャビティと共に充填針を概略的に示す。針132はチップ232を有する。このチップ232は、該チップがキャビティ101中で形成しようとするペレット30の最上部分と合致するように、トレー100の表面に対して垂直位置を有するように配置されている。この位置からキャビティに流動性処方物が充填される。充填速度は、所望の充填プロセスが得られるように調整され得る。例えば、非常に遅い速度を選択すると、例えば流体がキャビティ壁を完全に湿らすことができないので、かなり不揃いな形状のペレットが形成されるであろう。十分に速い速度を選択すると、完全に湿らすことができる。この速度は、例えばキャビティに充填時の流体の実際の温度、キャビティ壁の温度、流体の粘度等に応じる。処方物毎に、この速度は、ルーチンの実験を実施することにより見つけられ得る。所要量の流動性処方物を充填したら、針は更に次のキャビティに移動する。しかしながら、全ての処方物が分配された時点と、針が再び移動し始める時点との間に待機時間(例えば、約0.1秒)を設けることが好ましい。これにより、投入されたペレットが機械的に乱れるのが防止され得る。この特定例では、球状ペレット30が描かれている。しかしながら、他の形状も形成され得る。いずれの場合も、チップの最適位置は、形成しようとするペレットの最上部分で直角をなしている。
【0058】
図5
図5中には、凍結乾燥機(凍結乾燥装置)が概略的に示されている。この凍結乾燥機の例は、オランダ国ブロイケレンに所在のSalm en Kippから入手可能なChrist Epsilon 2−12Dであり得る。凍結乾燥機1は、ハウジング2及び複数の棚3を含む。Epsilon 2−12Dは4+1枚の棚を含む。便宜上これらの棚のうち3枚の棚(すなわち、棚3a、3b及び3c)が図1に示されている。これらの棚の各々に、棚3を均一に加熱するために加熱エレメント5(それぞれ、参照符号5a、5b及び5cが付されている)が設けられている。処理ユニット10を使用することにより加熱がコントロールされる。ハウジングは、該ハウジング2内の圧力を十分低くするためにポンプユニット11に接続している。ハウジングの内部は、冷却ユニット12、特に凝縮器(実際、約−60℃に維持されており、昇華した氷を凝縮させるための駆動力として作用する凝縮器である)を含む冷却ユニット12を使用することにより−60℃くらいの低い温度まで冷却され得る。棚3a及び3bには、黒色PTFEプレート8及び8’がその底部に固定されて設けられている。これらのプレートの輻射率係数は0.78である。これらの黒色プレートと棚を均密に接触させることにより、これらプレートは、棚そのものと同じ温度まで実質的に加温され得る。こうして、プレート8は棚3そのものに加えた熱源として見なされ得る。
【0059】
棚の上にコンテナ15及び15’が置かれている。これらのコンテナは、熱伝導性材料(この場合、カーボンブラック入りポリエチレンテレフタレート)から作られている。コンテナは、該コンテナが載っている棚と熱伝導的に接触している。図示されている配置では、コンテナには、凍結ペレット30が充填されており、よって各コンテナに詰め込まれたペレットのベッド29が形成されている。棚を加熱することにより、粒子は、コンテナの加熱されている底壁及び側壁を介して、及びそれぞれ加熱されているプレート8及び8’からの照射により熱を受け得る。各コンテナ15は、約20〜30cmの幅及び長さ、約4cmの高さを有していることに注目されたい。コンテナに充填した後の詰め込まれたベッドの高さは、典型的には1.5〜3cmである。これにより、ベッドのアスペクト比について20/3≒7〜約30/1.5=20の典型値が導き出される。しかしながら、ペレットの単層配置も使用可能である。
【0060】
図6
図6は、錠剤の圧潰強度を調べるための引張試験機を概略的に示す。この図は、錠剤30の圧潰強度を試験するためのロードセル400を有する、LR5K Plus引張試験機(英国のLloyd Instrumentsから入手可能)の概略側面図である。このために、錠剤30が支持体300上に載っている間に、錠剤にロッド401を用いて荷重力を加える。
【0061】
図7
図7には、本発明に従う錠剤を含むパッケージ500が概略的に示されている。パッケージ500は、長方形ベース及び複数のブリスター501を含み、ブリスター中には錠剤30が収容されている。このブリスターパッケージは、長方形ベースに固定されている層(図示せず)をはぎ取って、ブリスターのそれぞれ1つを開け、それぞれの錠剤を取り出すことができるピールオフタイプであり得る。特に錠剤の機械的安定性が十分な場合には、層は、各錠剤が該層を介して圧出されるより一般的なタイプ(しばしば、アルミニウムホイル)のものであり得る。
【0062】
図8
図8は、ODTの機械的安定性を調べるための別のデバイスを概略的に示す。このデバイスを用いて、ホイルを介して圧出した後、凍結乾燥した錠剤が無傷のままである傾向を調べる。ダイ3001及び3002は13直径を有する円筒状孔を含むユニットである。5μmの厚さのアルミニウムホイル3005が、ダイの間に置かれており、ホイルが動くのを防ぐためにゴムリング3003によりカバーされている。凍結乾燥した錠剤30を、ホイル上に置き、ガラス棒4001を用い、その棒上に手で力を加えることによりホイルを介して錠剤を圧出し得る。ホイルを介して錠剤を圧出した後、完全な錠剤または錠剤の断片がダイ3002の下に集められ得る。
【0063】
図9
図9は、ホイルを介して圧出した後無傷のままである傾向を調べるための試験を実施した後の錠剤または錠剤の断片の例を示す。図9aは、5μmのホイルを介して圧出したとき無傷のままである錠剤30を示す。図9bは、同一試験にかけたときに断片化した錠剤30”を示す。
【実施例】
【0064】
実施例1
ワクチン成分を含有する錠剤を得るために、生のヒト感染性インフルエンザウイルスを卵から採取した。ウイルスを含有する尿膜液を安定化剤と混合する。この安定化剤は、WO2006/094974 A2から公知であり、特にこの特許出願の表5に記載されている(160g/lのグリシン含量)。安定化剤の添加方法も前記特許出願に記載されており、すなわちp.24の「実施例」の欄の導入部に概説されている。
【0065】
図1bに従う3列のキャビティを有するプレートを使用する。これらのキャビティの各々に、約100μlの流動性処方物を約0.3秒で分配する。処方物は、キャビティ壁に接触するとすぐに凍結し始めるであろう。しかしながら、機械的取り扱いができるように、ペレットが実質的に凍結するまでには約15秒かかる。この後、(約5.7mmの直径を有する)ペレットを、(図2及び3と共に説明したように)キャビティから押し出し、凍結乾燥コンテナ15に移す。
【0066】
(約−45℃の温度を有する)凍結ペレットを、約15のアスペクト比で詰め込んだベッドの形でコンテナ15中に配置する。その後、複数のコンテナを、予め約−35℃の温度とした凍結乾燥機(図5を参照されたい)中に入れる。凍結乾燥機を、次の凍結乾燥サイクル(表1)にかける。
【表1】
【0067】
表1から分かるように、棚に充填したコンテナを載せた後、棚を、始めは−35℃の温度で30分間保持する(「凍結」フェーズ)。これにより、凍結ペレットは−35℃の温度となる。圧力は大気圧に保つ。その後、棚の温度を、−35℃で20分間安定化させ、圧力は大気圧のままである(「作成」)。その後、圧力を10分間で0.370mbarに下げ、棚の温度は−35℃に保つ(「初期昇華」)。これらの条件下で、凍結液体は既に昇華し、それぞれ伝導及び照射による2つの熱源によりペレットに熱が供給される。しかしながら、これらの条件下での昇華速度は比較的遅い。昇華速度を上げるために、棚の温度を3時間で40℃の温度とし(「昇華1」)、この温度を16時間保つ(「昇華2」)。圧力は0.370mbarの低値に保つ。その後、圧力を更に0.021mbarに下げ、棚の温度を4℃とする。この後者のステップは1分かかる(「終了ステップ」)。その後、昇華プロセスが完了し、凍結液体の約98%がペレットを去り、これにより速崩壊錠に変換される。次いで、圧力がほぼ大気圧になるまで、約20℃の温度の乾燥窒素ガスを凍結乾燥機に供給する。これには約2分かかる。次いで、ドアを開けて錠剤を取り出すことができる。本発明の方法を用いると、凍結乾燥ペレットの均質ベッドとして目に見える、均質な凍結乾燥結果が得られ得ることが判明し得る。凍結乾燥機を開いた後、錠剤上で水の凝縮を試み、予防するために錠剤を湿った環境にかけないことが好ましい。特に、錠剤を、乾燥空気または窒素の雰囲気のクロゼット中のコンテナに充填する。コンテナに充填した後、コンテナを閉じ、更に使用するまで冷所(4〜8℃)で保存する。
【0068】
こうして、約5.5mmの平均直径を有し、その中に生ワクチン成分を含有している凍結乾燥されている、球状錠剤を得ることができる。
【0069】
錠剤は、医薬パックを提供するために使用され得る。このパックは、1つ以上の錠剤及び場合により他の成分を含有しているコンテナ(例えば、ガラスまたはプラスチック製バイアル)から構成されている。1錠を患者の舌の下に置き、錠剤が溶けるように放置することにより、錠剤中のワクチン成分をヒト被験者に投与することができる。生インフルエンザウイルスは、粘膜を介して患者の身体組織に入るであろう。
【0070】
実施例2
化学的薬物を含有する錠剤を得るために、図1Cに従って3列のキャビティを有するプレートを使用し得る。これらのキャビティの各々に、約500μlの流動性処方物を約2秒で分配する。この投入速度で、キャビティ壁は完全に湿り、よって(ペレットをキャビティから取り出す前に)キャビティ中にあるペレットの部分の表面は、キャビティの表面のネガフィブプリント(この場合、くぼみもしわもない平滑な表面)である。(ポジティブまたはネガティブ)ロゴがキャビティ中に存在していたなら、このロゴは、ペレットの表面上で目に見えるであろう。凍結ペレットを作成するために使用され得る流動性処方物の例を以下に示す。
【0071】
流動性処方物1:2重量%のアセナピン((3aS,12bS)−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンザ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロールマレエート(1:1);ORG 5222)、4重量%の加水分解ゼラチン(イギリス国ヨークシャーに所在のCrodaから入手可能)、3重量%のマンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手可能なPEARLITOL(登録商標)タイプC160)及びQS(適量、すなわち全重量を100%とするまで添加)の水。
【0072】
流動性処方物2:16重量%のSCH 530348二硫酸塩トロンビン受容体アンタゴニスト(TRA;US 7,235,567を参照されたい)、3.5重量%の加水分解ゼラチン、3重量%のマンニトール、3.73重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、1.41重量%のクエン酸一水和物及びQSの水。
【0073】
流動性処方物3:8重量%のTRA、8重量%のゼラチン(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能なSol P)、9重量%のマンニトール、3.73重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、1.41重量%のクエン酸一水和物及びQSの水。
【0074】
流動性処方物4:8重量%のTRA、8重量%のゼラチン(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能なSol P)、9重量%のマンニトール及びQSの水。
【0075】
処方物は、キャビティ壁に接触すると直ちに凍結し始めるであろう。しかしながら、ペレットの機械的取り扱いができるように実質的に凍結するまで約45秒かかる。この後、(約9.8mmの直径を有する)ペレットを、(図2及び図3と共に説明したように)キャビティから押し出し、凍結乾燥コンテナ15に運ぶ。
【0076】
(約−45℃の温度を有する)凍結ペレットを、密に詰め込んだ単層の形でコンテナ15中に配置する。次いで、複数のコンテナを前もって約−35℃の温度とした凍結乾燥機(図5を参照されたい)に入れる。凍結乾燥機を次の凍結乾燥サイクル(表2)にかける。
【表2】
【0077】
先に記載したように、「終了ステップ」後、昇華プロセスが完了し、凍結液体の約98%がペレットを去り、これにより速崩壊錠に変換する。次いで、約20℃の温度の乾燥窒素ガスを、圧力がほぼ大気圧になるまで凍結乾燥機に装入する。これは約2分かかる。次いで、ドアを開けて錠剤を取り出す。この錠剤を、乾燥空気または窒素の雰囲気のクロゼット中のコンテナに充填する。コンテナに充填後、コンテナを閉じ、更に使用するまで冷所(4〜8℃)で保存する。
【0078】
生じた錠剤を37℃の温度の水を入れたビーカー中に投入し、錠剤が本質的に完全に崩壊する(ヒトの肉眼で目に見える大きなピースがない)までにかかった時間を測定することにより前記錠剤の崩壊を試験し得る。流動性処方物1、2、3及び4を用いて作成した錠剤のすべてが、5〜10秒以内に崩壊すると見られる。
【0079】
実施例3
この実施例には、錠剤の機械的安定性を評価するための各種方法が記載されている。第1の試験は、機械的取り扱いに対する錠剤の脆弱性を試験するために一般的に使用されている錠剤脆砕性試験である。この脆砕性を明白に評価するための装置及び方法は、フランス国モアランに所在のDeltaLabから入手可能なA4113 Tablet Friability and Abrasion Testerである。他の装置及び方法も市販されている。
【0080】
錠剤の機械的安定性を特徴付けるために使用され得る別の特性の評価方法は錠剤の圧潰強度を調べることである。この試験方法の原理は、錠剤に歪みを加え、生じた力を錠剤が完全に圧潰するまで測定する。このために、Llyod Instruments(英国ハンプシャー州フェアハムに所在)のLR5K Plus引張試験機を使用し得る。本実施例では、我々はXLC 50Nロードセル(図6を参照されたい)を使用した。パンチ変位(「伸び」とも呼ぶ)速度は、10mm/分であった。力−変位プロフィールを三重に検出し、破損パターンを、試験機と一緒に供給されたNexygenソフトウェアを用いて調べた。代替として、圧潰強度を、Pharmatest PTB 300/301(ドイツ国ハインブルクに所在のPharmatestから入手可能)を用いて調べることができることに注目されたい。
【0081】
第1の実験では、一連の250μlの球状プラセボ(薬物を含有していない)錠剤を、先(実施例2)に記載した方法を用いて作成したが、ただしキャビティの大きさを半径3.9mm、深さ3.0mmに変更した。各々が異なる量のゲル化剤Gelita Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelita)及び結晶性担体マンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手したPEARLITOL(登録商標)タイプC160)を含む各種の流動性処方物を使用して、多種多様の錠剤を得た。これらの化合物とは別に、流動性処方物は水を含んでいた。表5中に各種組成を示す。
【表3】
【0082】
錠剤の圧砕強度をLlyod Instruments LR5K引張試験機を用いて評価するとき、まず荷重を伸びとともに増加させる。しばらくして、錠剤が破損(すなわち、破壊)したら、荷重の増加を停止させるかまたは低下させることさえある。破損時の最大荷重を圧砕強度と呼ぶ。錠剤の圧砕強度の測定結果を表6に示す。
【表4】
【0083】
これらの錠剤(いずれも、3重量%以上の結晶性担体及び4重量%以上のゲル化剤を含む流動性処方物をベースとする)の平均圧砕強度が比較的高いことが判明した。
【0084】
第2の実験では、一連の500μlの偏球状の、場合により薬物として(実施例2に記載されている)TRAを含有する錠剤を、先(実施例2)に記載した方法を用いて作成した、ただしキャビティの大きさを半径12.0mm、深さ3.0mmに変更した。各々が異なる量のゲル化剤Gelita Sol P(ドイツ国エーバーバッハに所在のGelita)、及び異なる量のマンニトール(フランス国レストレムに所在のRoquetteから入手したPEARLITOL(登録商標)タイプC160)及びスクロース(α−D−グルコピラノシル−β−D−フルクトフラノシド)から構成される結晶性担体からなる各種の流動性処方物を使用した。これらの化合物とは別に、流動性処方物はQSの水を含んでいた。表7中に各種組成を示す。
【表5】
【0085】
各錠剤の圧砕強度は同一の約5Nであったと見られた。このことは、この実験において追加のスクロースも薬物も錠剤の強度に有意な影響を持たないことを意味する。従って、第1の実験で非常に良好な圧砕強度を与えることが判明していた8重量%のゼラチン及び9重量%を超えるマンニトールの量は、錠剤、特に高い機械的安定性そのものを有していなければならない錠剤にとって非常に適当であると見られる。
【0086】
実施例4
ホイルを介して圧出した後の錠剤が無傷のままである傾向を、図8と共に記載したデバイスを用いて測定した。この試験は本実施例において「圧出試験」と呼ぶ。
【0087】
異なる組成を有する錠剤を作成した。ゲル化剤を得るために、Chandrasekhar,R.,Hassan,Z.,AlHusban,F.,Smith,A.M.and Mohammed,A.R.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,72(2009)119−129が発表しているデータに沿って、2つのタイプのゼラチンの量及び比率を変えた。2つのタイプのゼラチン、すなわちSol P(非ゲル形成性ゼラチン)及びBS100(ゲル形成性ゼラチン)を使用した。後者のゼラチンはドイツ国エーバーバッハに所在のGelitaから入手可能である。マンニトール(PEARLITOL(登録商標)タイプC160)の量を、2つのレベルに保った。全ての錠剤が、2%(m/v)の薬物[この場合、アセナピン(実施例2を参照されたい)]を含有していた。250μlの容量の偏球状、球状、及び扁平な錠剤を作成し、圧出試験で試験した。比較のために、市販されている250μlの錠剤(「タブレット」)も試験した。この錠剤は2%の薬物、4%のタイプが不明のゲル化剤及び3%のマンニトールを含有していた。試験した後、錠剤は、図9に概略的に図示されているように無傷であるかまたは多数のピースに割れた。表8に結果を要約し、各組成、特殊形状及び容量を有する10個の錠剤を試験したときの無傷の錠剤のパーセントを示す。ODTは一般的に脆く、選択した構成で無傷のままである錠剤はないと通常理解されていることに注目されたい。しかしながら、驚くことに、本発明を用いると、5μm厚さのアルミニウムホイルを介して圧出したとき無傷のままである錠剤が作成され得ることを知見した。
【0088】
表8の結果は、圧出試験に耐えるような錠剤の形状の影響をも暗示している。偏球状及び球状の形状は、一般に扁平な錠剤に比較して優れているように見える。単位の直径に対して上または下の表面を表面湾曲させることが可能である。本発明の方法の投入原理と投入された液体がある表面張力を有している事実とを合わせて、錠剤の表面は、球状錠剤の場合には2つの半球として、偏球状錠剤の場合には2つの結合されている球状キャップとして描かれ得ることが暗示される。ペレットが、凍結乾燥中及び/または保存中に収縮するという事実のために、投入容量から錠剤の将来の寸法を適切に予測できない。キャップの寸法をその容量と相関させる広く利用されている情報を用いて、キャップの曲率半径を計算し、このキャップの曲率半径を錠剤の寸法を用いて錠剤の直径と相関させることができる。例えば、錠剤の相対曲率Kは、キャップの曲率半径(R)と錠剤の直径(D)の半分の比により定義される:
K=2R/D
相対曲率の値が高いほど、表面は扁平である。この試験で使用した球は約1.0の相対曲率Kを有していた。偏球は、約1.2の相対曲率Kを有しており、「タブレット」は不確定な大きさの相対曲率Kを有していた。1〜1.2の範囲のK値が最適であると結論づけることができる。
【表6】
【0089】
通常、約4%のゲル化剤を含む錠剤は、アルミニウムホイルを介して圧出したときに破損に対して良好な耐性を有するようである。少なくとも2重量%のゲル形成性ゼラチン(例えば、BS100)を存在させると、圧出試験において非常に良好なスコアを有する錠剤が得られ得ることも知見された。このことは、これらの錠剤におけるより高い「ネットワーク」度のためであり得る。しかしながら、ゲル化剤中の追加化合物として非ゲル形成性ゼラチン(例えば、Sol P)を有する錠剤は、より良好な崩壊特性のために好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠の製造方法であって、
前記薬物を含む流動性処方物を用意するステップと、
少なくとも1つのキャビティが形成されている固体エレメントを用意するステップと、
固体エレメントを流動性処方物の凍結温度より下の温度まで冷却するステップと、
キャビティに流動性処方物を充填するステップと、
キャビティ中に存在している間に、流動性処方物から熱をキャビティ壁を介して伝導により抽出することにより、流動性処方物を固化して、固体ペレットの全表面を能動的に成形することなく薬物を含む固体ペレットを形成するステップと、
固体ペレットをキャビティから取り出すステップと、
固体ペレットを真空中で乾燥して口腔内崩壊錠を得るステップとを含む方法。
【請求項2】
キャビティの容量が、固体ペレットの容量より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キャビティの容量が、ペレットの容量の50%より小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
流動性処方物が、室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
流動性処方物が、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ゲル化剤が、非ゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
コラーゲン由来材料が、2×104g/molの重量平均分子量を有するゼラチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
固体ペレットの容量が、キャビティに充填するときに使用される温度及び圧力で、流動性処方物の自由液滴の最大容量よりも大きい、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
キャビティに流動性処方物を充填する速度を、固体ペレットをキャビティから取り出す前のキャビティ中にある固体ペレットの部分の表面が、本質的にキャビティの表面のネガティブプリントであるように選択する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
固体ペレットのキャビティ壁からの自動脱離を補助する手段を講ずる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
キャビティが、固体エレメント中に形成されており、固体エレメントの温度を流動性処方物の凍結温度より十分低く保つことにより自動脱離が補助される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固体ペレットを、底壁及び側壁を有する熱伝導性コンテナ中に配置し、熱源を詰め込まれている固体ペレットの上層の上に設け、前記熱源は、ベッドの上層に向けられており且つ少なくとも0.4の輻射率係数を有する表面を有しており、その後、固体ペレットに真空を加えながら、固体ペレットの乾燥を補助すべく粒子に熱を与えるために少なくともコンテナの底部及び前記表面を同時に加熱する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠であって、前記口腔内崩壊錠が、請求項1から12のいずれかに記載の方法により得られ得、曲面を有している、前記口腔内崩壊錠。
【請求項14】
口腔内崩壊錠が、1〜1.2の相対曲率Kを有している、請求項13に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項15】
口腔内崩壊錠が、少なくとも2重量%のゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなるゲル化剤を含む、請求項13または14に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項16】
ゲル化剤が、非ゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなる、請求項13から15のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項17】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を含むパッケージであって、前記口腔内崩壊錠が、コンテナ中に個別に包装されており、前記口腔内崩壊錠が、該口腔内崩壊錠を包装したコンテナとは異なるキャビティ中で、請求項1から12のいずれかに記載の方法を用いて形成される前記パッケージ。
【請求項1】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠の製造方法であって、
前記薬物を含む流動性処方物を用意するステップと、
少なくとも1つのキャビティが形成されている固体エレメントを用意するステップと、
固体エレメントを流動性処方物の凍結温度より下の温度まで冷却するステップと、
キャビティに流動性処方物を充填するステップと、
キャビティ中に存在している間に、流動性処方物から熱をキャビティ壁を介して伝導により抽出することにより、流動性処方物を固化して、固体ペレットの全表面を能動的に成形することなく薬物を含む固体ペレットを形成するステップと、
固体ペレットをキャビティから取り出すステップと、
固体ペレットを真空中で乾燥して口腔内崩壊錠を得るステップとを含む方法。
【請求項2】
キャビティの容量が、固体ペレットの容量より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キャビティの容量が、ペレットの容量の50%より小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
流動性処方物が、室温で固体の結晶性担体材料及びゲル化剤を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
流動性処方物が、3重量%以上の結晶性材料及び約4重量%のゲル化剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ゲル化剤が、非ゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
コラーゲン由来材料が、2×104g/molの重量平均分子量を有するゼラチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
固体ペレットの容量が、キャビティに充填するときに使用される温度及び圧力で、流動性処方物の自由液滴の最大容量よりも大きい、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
キャビティに流動性処方物を充填する速度を、固体ペレットをキャビティから取り出す前のキャビティ中にある固体ペレットの部分の表面が、本質的にキャビティの表面のネガティブプリントであるように選択する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
固体ペレットのキャビティ壁からの自動脱離を補助する手段を講ずる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
キャビティが、固体エレメント中に形成されており、固体エレメントの温度を流動性処方物の凍結温度より十分低く保つことにより自動脱離が補助される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固体ペレットを、底壁及び側壁を有する熱伝導性コンテナ中に配置し、熱源を詰め込まれている固体ペレットの上層の上に設け、前記熱源は、ベッドの上層に向けられており且つ少なくとも0.4の輻射率係数を有する表面を有しており、その後、固体ペレットに真空を加えながら、固体ペレットの乾燥を補助すべく粒子に熱を与えるために少なくともコンテナの底部及び前記表面を同時に加熱する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠であって、前記口腔内崩壊錠が、請求項1から12のいずれかに記載の方法により得られ得、曲面を有している、前記口腔内崩壊錠。
【請求項14】
口腔内崩壊錠が、1〜1.2の相対曲率Kを有している、請求項13に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項15】
口腔内崩壊錠が、少なくとも2重量%のゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなるゲル化剤を含む、請求項13または14に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項16】
ゲル化剤が、非ゲル形成性材料、好ましくはコラーゲン由来材料からなる、請求項13から15のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
【請求項17】
ヒト被験者の障害を治療するための薬物を含有するヒト被験者に対して投与するための口腔内崩壊錠を含むパッケージであって、前記口腔内崩壊錠が、コンテナ中に個別に包装されており、前記口腔内崩壊錠が、該口腔内崩壊錠を包装したコンテナとは異なるキャビティ中で、請求項1から12のいずれかに記載の方法を用いて形成される前記パッケージ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【公表番号】特表2012−525177(P2012−525177A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507725(P2012−507725)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055682
【国際公開番号】WO2010/125087
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【出願人】(512059936)エム・エス・ディー・オス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055682
【国際公開番号】WO2010/125087
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【出願人】(512059936)エム・エス・ディー・オス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】
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