説明

ヒトの成長ホルモン変異及びその使用

本発明は、自然に起こる成長ホルモン突然変異に関し;成長ホルモン機能不全について患者をスクリーニングする際の、又はそのような不規則性を処理するために適している変異体タンパク質を生産するための、成長ホルモン突然変異を検出するための方法及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然発生の成長ホルモン突然変異、及び、成長ホルモンの不規則性について、又はそのような不規則性を扱うために適当な生成された変異体の治療及び治療学について、患者をスクリーニングするときのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の身長が遺伝的な要因によって影響されることは、1世紀以上前に理解されていた。家族性の低身長は、その通常の劣性遺伝様式とともに、早くも1912年には認識されていたが、そのような家族が科学文献に適切に記録されるようになるまで、さらに4半世紀があった。劣性の遺伝的な低身長が単離された成長ホルモン(GH)の欠乏に一般に関連していたという認識は1966年にあっただけである。
【0003】
GH欠乏に関連される低身長は、出生の1/4000と1/10000の間の発生率で生じると見積もられた。これらのケースのほとんどは散発的であり突発的であるが、5%と30%との間では、その状態のために遺伝子の原因論と一致する感染した一等親血縁者を有する。GH欠乏の遺伝子の原因論の確認は、家族性の低身長の分子遺伝学の分析と、感染した個体の脳下垂体に発現する成長ホルモン(GH)での突然変異の障害の早い証明とから来た。家族性の低身長はまた、多くの他の遺伝子(例えば、POU1F1、PROP1及びGHRHR)の突然変異によって生じるかもしれないし、そして、これらの状態の異なる形態を区別することは重要である。
【0004】
成長ホルモン(GH)は、様々な効果によって骨格及び軟組織の出生後の成長を促進する多機能ホルモンである。議論はGHの直接的及び間接的な作用の相対的寄与率に関して残っている。一方で、GHの直接的な効果はさまざまな組織及び器官に示され、そして、GHレセプターはたくさんの細胞型で記録された。一方で、GHの効果の主要な部分がGH依存のインスリン様成長因子I(IGF−1)の作用で仲介されることを、かなりの量のデータが示す。IGF−1は、多くの組織、主として肝臓で生産され、骨、軟骨、及び骨格筋を含む多くの組織の増殖と成熟を高めるためにそれ自体のレセプターを通して作用する。組織の成長を促進することに加え、GHはまた、ナトリウムと水の保持率と同様に、催乳性の、催糖尿病性の、脂肪分解の、及びタンパク同化の効果を含むさまざまな他の生物学的な効果を働かせるために示された。
【0005】
GHの適当量が、幼年期中に正常な発育を維持するために必要である。GH欠乏を持っている新生児は、通常、標準の身長と体重がある。あるものは、年齢とともにしだいに遅れてくる低い直線状の出生以後の成長に関連して、小陰茎症又は空腹時低血糖症にかかるかもしれない。成長ホルモン単独欠損症(IGHD)をもつ人々では、骨格の成熟は、通常、彼らの身長の遅延と関連して遅れる。体幹の肥満、彼らの生活年齢のために予測されるより若い容貌及び遅れた第二成歯は、しばしば存在する。早期老化で見られるものと同様の皮膚変化は影響を受けた大人で見られるかもしれない。
【0006】
家族性のIGHDは、遺伝の特徴的なモードでいくつかの異なった障害からなる。GH1遺伝子座における欠陥に関連していることが知られているIGHDの形態は、今までのところ検出されている異なったタイプの基本的な障害とともに、表1に示される。
【0007】
【表1】

【0008】
これらの障害の特徴化は、これらのIGHDの形態の間で、体外から投与されたGHに対応して、臨床的な重傷度の違い、遺伝のモード、及び抗体の構成への傾向についての説明を提供することを助けた。ほとんどの場合は散発性であり、視床下部又は脳下垂体に影響する脳水腫、染色体異常、組織球増殖症、感染症、放射、中隔の目の形成不全、トラウマ、又は腫瘍を含む脳欠陥から生じると考えられる。磁気共鳴イメージ試験は、IGHDを持つ患者の約12%で視床下部又は脳下垂体の異常を検出する。
【0009】
低身長、遅れた「身長増加速度」又は発育速度、及び遅れた骨格の成熟化はGH欠乏で全て見られるが、これらのいずれもこの障害について特定されない;他の全身性疾患がそのような症状をもたらすかもしれない。この明細書中では、「身長増加速度」及び発育速度はともに、1年あたりのセンチメートルで測定されるような、対象又は患者の身長の変化率を意味するものとして解釈される。
【0010】
GH欠乏を示す刺激試験は、L−ドーパ、インスリン誘導の低血糖、アルギニン、インスリン−アルギニン、クロニジン、グルカゴン又はプロプラノロールを用いる。不十分なGHピークの応答(通常、<7〜10ng/mL)はテストによって異なる。LH、FSH、TSH及びACTHの合併の欠乏についてのテストは、脳下垂体の機能不全の範囲を測定して、最適の処理を計画するために実行されるべきである。
【0011】
組換え型由来のGHは、世界中で入手できて、皮下注射によって処方される。最適な結果を得るために、IGHDを持つ子供は、通常、彼らの診療が確立されるとすぐに、代償療法を始める。組換え型のGHの初期の投与量は体重か表面積に基づくが、使用される正確な量と管理の頻度は異なる手順の間で異なるかもしれない。投与量は思春期の間、増加する体重とともに、最大値まで増加する。その後、個々のGHの分泌の容量が再評価されている間、GH処理は一時中止されるべきである。確認されたGH欠乏を持つ人々は、成年の間、外因性のGHの低容量を受ける。
【0012】
GHで処理される状態は、(1)それが効能を証明したもの、(2)その使用が報告されているが、標準的な実施として受け入れられていないさまざまなものを含む。GH処理が効能を証明した障害は、単離されたGH欠乏又は複合下垂体ホルモン欠乏症(CPHD)とターナー症候群とに関連したGH欠乏のいずれかを含む。最初の2つの障害とともに、GH交換療法への個体の臨床的な応答は、以下に応じて変わる:(1)GH欠乏の重症度と成長へのその悪影響、処理が開始される年齢、出生時の体重、現在の体重、GHの投与量、及び(2)甲状腺ホルモン欠乏症のような関連した欠乏症の処理への認識と応答、及び(3)処理が抗GH抗体の開発によって複雑であるか否か。ターナー症候群とともに個体についての処理の結果は、彼らの低身長の重症度、彼らの染色体対、及び処理が開始された年齢に従って異なる。
【0013】
GHの使用が報告された追加の障害は、軟骨形成不全症などのある骨格の形成不全、プラダーウィリ症候群、外因性のステロイドのために2次的に生じたり、又は関節リウマチなどの慢性炎症性の病気と関連する成長抑制、慢性腎不全、極端な突発性の低身長、ラッセルシルバー症候群、及び子宮内発育遅延の治療を含む。
【0014】
分子遺伝子のレベルにおける家族性IGHDの特徴化は、いくつかの理由で重要である。関連している遺伝子座の一致性は、発育遅延の適当な重症度のみならず、さらに重要には、妥当性又は今利用できるさまざまな他の治療を示す。さらに、基本的な遺伝子障害の検出は、その状態の遺伝子の原因論を確認するために役立つ。それはまた、(1)発育遅延の重症度、及び(2)GH処理に続いて抗GH抗体の構成の可能性を予測する際に、予測の値を有するかもしれない。ある場合に、病理学的な障害に関する知識はまた、障害の遺伝の異常なモードを説明するために役立つことができ、したがって、影響される家族のカウンセリングのために重要である。最後に、機能不全(dysfunctional)(非機能(non−functional)とは対照的である)のGH分子を示すIGHDの状態の原因である突然変異の障害の特徴化は、GH構造及び機能に新しい洞察をもたらすはずである。
【0015】
細胞レベルでは、二量体になることを引き起こしながら、単一のGH分子が2個のGHレセプター分子(GHR)に結合する。2個のGH結合GHR分子の二量化は、チロシン・キナーゼJAK2に関連する信号変換のために必要であると信じられている。細胞内チロシン・キナーゼ、JAK2は、GHRの細胞質尾部に関連している。GH結合に続いて、2個のJAK2分子は、GHRの細胞質尾部で互いの及びチロシン残基の交差しているリン酸化反応をもたらす近い近接性に持って来られる。これらのホスホチロシンは、STAT5などの細胞信号伝達の仲介物のためにドッキングポイントのように作用する。そして、リン酸化レセプター尾部に結合しているSTAT5は、JAK2によるそれ自身のリン酸化をもたらすJAK2への近い近接性に運び込む。リン−STAT5は2量体になり、それがGHの観測された生物学的な効果に通じるGHに反応する遺伝子をトランス活性化するところで細胞核に転移する。最近まで、GHの信号伝達がJAK/STAT経路によって主に仲介されると思われていた。しかしながら、今や、GHはまたホスファチジルイノシトール3’−キナーゼ(PI3K)及びp42/44マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を活性化することが知られている。STAT5及びPI3K経路の活性化は、肝臓のIGF−1の生産を引き起こすことができるが、MAPK経路は、そうするように見えない。
【0016】
JACK2とMAPKの活性化は、STAT5の活性化に関わるものからのGHRの細胞質ドメインの異なる領域に依存する。STAT5の活性化は、GH誘導MAPKの活性化のために必要とされないGHRの細胞質ドメインのC末端に向かって位置されるチロシン残基534、566及び627のJAK2仲介のリン酸化を必要とする[Hansen他, J Biol Chem 271 12669−12673 (1996)]。対照的に、JAK2とMAPK経路の活性化は、細胞膜に隣接して位置される高プロリン(箱1)ドメインを含む46のアミノ酸の伸長に依存する[Sotiropoulos他, Endocrinology 135 1292−1298 (1994)]。GHR活性化に続くMAPKの活性化は、複数のメカニズムに関わって、複雑であるようにみえる。これらのメカニズムの1つは、ことによるとIRS−1[Liang他, Endocrinology 141 3328−3336 (2000)]、Gab−1[Kim他, Endocrinology 143 4856−4867 (2000)]及びEGFレセプター[Yamauchi他,Nature 390 91−96 (1997)]のような複数のドッキングタンパク質に関わって、Shc−Grb2−Sos−Ras経路[VanderKuur他, Biol Chem 270 7587−7593 (1995); VanderKuur他, Endocrinology 138 4301−4307 (1997)]のJAK2依存活性化によって仲介される。Ral及びホスホリパーゼDのSrc依存活性化に対するMAPK活性化の代わりのJAK2非依存メカニズムは最近報告された[Zhu他, J Biol Chem 277 45592−45603 (2002)]。Src活性化単独で部分的なMAPK活性のために十分であるが、GHによる完全なMAPK活性化は、JAK2及びSrcの両方の活性化を必要とする[Zhu他, J Biol Chem 277 45592−45603 (2002)]。
【0017】
GHの様々な効果は、異なった組織で異なった細胞質ドメイン又はリン酸化部位を所有するGHR分子の単独のタイプによって仲介されるかもしれないことが提案された。JAK2によって活性化されると、これらの異なった細胞質ドメインは、異なったリン酸経路、成長効果のための一つ、及び異なった代謝の効果のためのその他に通じることができる。
【0018】
GHは、下垂体前葉のソマトトロピンの細胞によって分泌された22kDaタンパク質である。X線による結晶学的研究は、up−up−down−down流でアレンジされた2組の平行なアルファらせんのコアを包括するためにGHを示した。この構造は、2つの分子内ジスルフィド連鎖(Cys53−Cys165とCys182−Cys 189)によって安定させられる。2つの成長ホルモンレセプター(GHR)分子は、GH分子で2つの構造的に異なった部位に結合し、GHRによって連続的に続行するプロセスが最初にサイト1に、次にサイト2に結合する。GHへのGHRの結合は、GHR分子の二量化を可能にする。
【0019】
部位方向の突然変異誘発が特定の残基の機能を調べることに使用されている間、GH分子のスキャン突然変異誘発性の研究は、GHとそのレセプターの間の結合相互作用の事実をもたらしている。このように、ArgによるGly120(ヒトのGHの3番目のアルファらせんにおける)の置換は、GHRが部位2に結合する損失をもたらし、これによって、GHRの二量化を妨げる。同様に、ヒトのGHタンパク質の残基Phe44は、プロラクチンレセプターを結合するために重要である。最終的に、残基Asp115、Gly119、Ala122及びLeu123は、マウスGH分子の可能性を高める成長のために重要であるように示された。
【0020】
細胞内チロシンタンパク質キナーゼJAK2との二量化したGHRの相互作用は、下流のシグナル形質導入分子のチロシンリン酸化、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの刺激、及び転写の信号変換器及び活性剤(STATタンパク質)の導入に通じる。このように、GHは、多くの異なったシグナル経路を通る複数の遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる。
【0021】
いくつかの異なったGHのイソフォームがGH1遺伝子の発現から発生される(GH1参照配列は図4に示される)。9%のGH1転写では、エキソン2が、エキソン3への代替のアクセプター接合部位45bpに接合され、その結果、アミノ酸残基32から46を削除し、通常の22kDaタンパク質に代わり20kDaイソフォームを生成する。この20kDaイソフォームは、刺激的な成長と分化ができるようにみえる。代替のアクセプタースプライス部位の選定を決めることに関わる要素は、まだ特徴付けられていないが、複合的な性質であることは明らかである。エキソン3によってコード化されたコドン32から71の不在から生じている17.5kDaイソフォームもまた、脳下垂体の腫瘍組織で微量で検出された。エキソン3及び4、又はエキソン2、3及び4を欠くスプライシング生成物は、脳下垂体の組織で報告されたが、これらは不活性なタンパク質の生成物をコード化するようにみえる。GHの24kDaグリコシル化した変異体もまた記述されている。主な22kDaイソフォームのアミノ酸配列を図5に示す。図5では、GH1遺伝子のコード領域のヌクレオチド配列、及び26のアミノ酸リーダー・ペプチドを含むタンパク質のアミノ酸配列を示す。側部の数はアミノ酸残基の数に関する。太字の側面にある垂直の矢印はエキソン境界を指定する。終始コドンはアスタリスクでマークされる。
【0022】
脳下垂体の成長ホルモン(GH1)をコード化する遺伝子は、5つの関連する遺伝子(図1)のクラスタ内で染色体17q23に位置する。この66.5kbクラスタは現在、そのまま配列された[Chen他. Genomics 4 479−497 (1989)、図4参照]。成長ホルモン遺伝子のクラスタに存在している他の遺伝子座は、2つの絨毛膜の体乳腺発育ホルモン遺伝子(CSH1及びCSH2)、絨毛膜の体乳腺発育ホルモン偽遺伝子(CSHP1)及び成長ホルモン遺伝子(GH2)である。これらの遺伝子は、長さ6から13の遺伝子間領域によって切り離され、同じ転写の方向にあり、胎盤的に発現され、下流の組織特有のエンハンサのコントロール下にある。GH2の遺伝子座は、13のアミノ酸残基でGH1誘導成長ホルモンと異なっているタンパク質をコード化する。全ての5つの遺伝子は、GH1の場合で長さ260bp、209bp、92bp及び253bpの短いイントロンによって同じ位置で中断した5つのエキソンととても似ている構造を共有する。
【0023】
GH1の遺伝子のエキソン1は、60bpの5’の非翻訳配列(代替の転写開始部位は−54に存在しているが)、コドン−26から−24及び26のアミノ酸リーダー配列の始まりに対応しているコドン−23の最初のヌクレオチドを含む。エキソン2は、リーダー・ペプチドの残りと成熟したGHの最初の31のアミノ酸をコード化する。エキソン3〜5は、アミノ酸32〜71、72〜126及び127〜191をそれぞれコード化する。エキソン5はまた、ポリアデニル化部位で終わる112bp3’非翻訳の配列をコード化する。Alu反復配列要素は、GH1のポリアデニル化部位への現在の100bp3’である。5つの関連した遺伝子は、それらの5’の隣接領域及びコード領域中で非常に相同であるが、それらは自己の3’隣接領域で分岐する。
【0024】
多くの調査がGH1遺伝子についてなされ、同じものの結果として5つの非翻訳領域のヒトGH1遺伝子プロモーター/5’の知られた多型は特定され、我々の同時継続特許出願WO03/042245に詳細にわたっている。さらに、他の調査は、GH1遺伝子における全体的な削除、GH1遺伝子におけるマイクロ的な削除及び単一の塩基対置換を記録した。GH1遺伝子の全てこれらの変異体は、我々の同時継続特許出願WO03/042245に記録され、したがって、熟練した読者は、存在するGH1変異体の性質に関して基礎的な情報のために、この特許明細書を参照される。
【0025】
これまで説明された家族性のGH欠乏に関するほとんどのケースは常染色体劣性形質として遺伝されるため、遺伝した欠乏の状態のいくつかの例が、小家族サイズのため認識されてこなかったようである。同様に、GH1遺伝子のデノボ突然変異体から生じるGH欠乏の場合は散発性として分類することができ、障害のための遺伝的な説明は、検討されることも探し出されることもないだろう。最終的に、欠乏状態を定義するために使用される評価基準に依存すると、GH欠乏の表現型及び遺伝子型の両方ともの十分な幅は決して臨床的な注意にならないだろう。これらの理由のため、GH欠乏の有病率の現在の見積もりは、不正確であるかもしれなく、したがって、母集団における本当の有病率をかなり過小評価するかもしれない。
【0026】
したがって、我々はGH1遺伝子をさらに調査した。我々の調査の結果、我々は、GHの診断と治療に影響がある新しく重要な変異体を特定した。我々の新しい変異体の特定は、ラジオイミュノアッセイベースのGH“機能テスト”への我々の現在の依存度のため、GH欠乏が診断された状態でいると示すと、我々は考える。さらに、本当の機能的な診断試験の開発の緊急の必要性をそれは示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、本発明は、次の置換を含む成長ホルモン核酸分子、GH1の単離された変異体を提供する:+1491C→G、ここで1491は1を指定される転写開始部位に対して、ヌクレオチドの位置に関する。
【0028】
本発明のさらなる構成によれば、置換Ile179Metを有するタンパク質、例えばGHタンパク質をコード化する核酸分子を含む成長ホルモン核酸分子、GH1の単離された変異体を提供する。
【0029】
特に、本発明は、上述のように定義される核酸配列を提供し、ここで、この配列はcDNA又はmRNAのようなDNA又はRNA配列である。
【0030】
したがって、本発明はまた、前述のGH1の変異体によってコード化されるアミノ酸配列を含むタンパク質(以下“GH変異体”と称する)のような変異体GH1の転写物を提供する。
【0031】
したがって、本発明のさらなる構成によれば、成長ホルモンタンパク質、GHの変異体であり、置換Ile179Metを有する単離されたポリペプチドを提供する。
【0032】
予想外に、我々の研究は、レセプター仲介の細胞信号伝達経路を独特で特異的に活性化する変異体GHを特定したことを示した。作用薬が前例のないやり方で作用するだけでなく、成長ホルモン欠乏の検出及び処置に関して極めて重要でもある。成長ホルモン欠乏を特定する試験は、とりわけ、循環する(又は内因性の)成長ホルモンが二以上のレセプター仲介の細胞信号伝達経路を活性化する能力に焦点を当てる。この詳細の我々の調査は、循環する成長ホルモンの十分な効能、及びそれに対応して任意の成長ホルモン欠乏の性質又は同定を明らかにする。
【0033】
上述の変異体の同定、又はレセプター仲介の細胞信号伝達経路の特異的な活性化に焦点を当てない成長ホルモン欠乏の調査は、循環する成長ホルモンの活性の潜在的な欠乏、したがって成長ホルモン欠乏を特定することができないだろう。
【0034】
したがって、本発明は、機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法を提供し、このスクリーニング方法は次のステップを含む:
(a) ヒトGH1遺伝子の核酸分子を含むテストサンプルを個体から得て、
(b) 前記分子を配列し、
(c) +1491C→G置換について前記配列を調査し、そして、
(d) 前記置換がどこに存在するがGHの機能不全があることを結論づける。好ましくは、テストサンプルはゲノムDNAを含み、このゲノムDNAは従来の方法によって抽出されることができる。
【0035】
本発明のスクリーニング方法では、シークエンシングステップが従来の方法、例えばGH1遺伝子の適切な領域をシークエンシングするPCRによって実行されてもよい。
【0036】
したがって、また、本発明は、機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法を提供し、このスクリーニング方法は次のステップを含む:
(a) 成長ホルモン、GH、ポリペプチドを含むテストサンプルを前記個体から得て、
(b) 前記ポリペプチドを配列し、
(c) Ile179Met置換について前記配列を調査し、そして、
(d) 前記置換がどこに存在するかがGHの機能不全があることを結論づける。
【0037】
上述のスクリーニング方法は、診療所で行われる単一の血液検査をともない、機能的なGH欠乏の早期診断に備える。この早期診断は、GH処置を早期に開始することができ、そして、GHの機能不全のいかなる有害な影響を低下させることができる。
【0038】
したがって、本発明はさらに、本発明のスクリーニング方法を行うときの使用に適したキットを提供し、このキットは:
(a) GH1遺伝子の領域+1491に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであり、この領域は置換+1491C→Gを含み、そして、
(b) (a)で特定した領域の野生型の配列に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチド、そして、選択的に、
(c) 患者のDNAの所望の領域を増幅するために、PCRを行うために適した一以上の試薬を含む。
【0039】
このような試薬は、例えば、ヌクレオチド+1491を含むGH1遺伝子のエキソンに対応するPCRプライマー、及び/又は、ここで定義されるプライマー;及び/又はTaqDNAポリメラーゼのようなPCRで使用するための他の試薬を含む。
【0040】
好ましくは、キットでのプライマー又はオリゴヌクレオチドは、変異体配列での20塩基対と野生型での20のように、25塩基対の範囲で含む。いずれのケースでも、オリゴヌクレオチドは、ゲノムの他の場所に選択された領域及び繰り返されない領域に特有であるように選択されなければならない。
【0041】
ナノテクノロジーで最初に開発された信号増幅方法(例えばQ−Dotsなど)のような、他のヌクレオチドの検出方法を使用することができた。また、単一分子検出方法を使用することができた(例えばSTMなど)。このケースでは、この発明に係るキットは、このような代わりの方法での使用のための一以上の試薬を含むこともできる。
【0042】
代わりに、この発明に係るスクリーニング方法及び対応するキットは、タンパク質/アミノ酸配列、例えばGH変異体又はGH1の変異体に特有の抗体のような、GH1の変異体又はGH変異体の存在を指示し、又は相互に関連づける一以上のいわゆる“代理マーカー”に基づくこともできる。このような“代理マーカー”は:
(a) 所定の生体分子(これに限定されないが、ヌクレオチド、タンパク質、糖、及び脂質を含む)、
(b) 化合物(これに限定されないが、薬、その代謝産物、及び他の化合物)、及び/又は、
(c) 物理特性を含み、
個体でのこれらの欠乏、存在、又は過多は測定可能であり、本発明に係るGH変異体又はGH1の変異体の存在と相互に関連づけられる。
【0043】
この発明に係るさらに、適した、代わりのスクリーニング方法は、従来のタンパク質配列方法(質量分析、マイクロアレイ分析、ピロシークエンシングなど)、及び/又は検出の抗体ベース方法(例えばELISA)によって特定可能であるGH変異体(例えば、hGHのIle179Metを含むタンパク質/ペプチド配列)を含むテストサンプルを得ること、及び一以上のそのようなタンパク質シークエンシング方法を実行することをさらに含むこともできる。
【0044】
この代わりのケースでは、この発明に係るキットは、このような代わりの方法で使用するための一以上の試薬を含むこともできる。
【0045】
本発明のさらに別の構成によれば、Ile179Met置換を含み、レセプター仲介の細胞信号伝達経路の特異的な活性化のために与える単離された成長ホルモンペプチド又はタンパク質を提供する。
【0046】
本発明のより好ましい実施の形態では、前記単離されたポリペプチド又はタンパク質変異体は、STAT5経路を活性化するが、MAPK経路の低下した活性化を示す。
【0047】
本発明のさらに別のより好ましい実施の形態では、MAPK経路の活性での前述の低下は、野生型GHタンパク質の活性に対して、70%より低く、さらにより好ましくは50%より低く、さらに主として45%以下である。
【0048】
本発明のさらに別の構成によれば、らせん4のC末端部でのアミノ酸置換を持つことで特徴付けられる単離された成長ホルモンタンパク質を提供する。さらに好ましくは、置換はGHR残基Trp169又はTrp104についての結合部位で又はその隣接部で起こる。
【0049】
本発明のさらなる構成によれば、MAPK経路を活性化する低下した能力を所有することで特徴付けられる単離された成長ホルモンポリペプチド又はタンパク質を提供する。
【0050】
本発明のより好ましい実施の形態では、前述のMAPK経路はERK経路である。
【0051】
本発明のさらなる構成によれば、機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法を提供し、このスクリーニング方法は次のステップを含む:
(a) テストサンプルを前述の個体から得て、このサンプルは個々の内因性の成長ホルモンを含み、
(b) それがレセプターを介したMAPK細胞信号伝達経路を活性化するか否か、及びどの程度活性化するかについて決定するために、前述の成長ホルモンを調べて、そして、
(c) 野生型GHについて、MAPK細胞信号伝達の低下がどこに存在するかが、GHの機能不全があることを結論づける。
【0052】
本発明のさらなる構成によれば、成長ホルモンの機能不全の診断又は適切なGH治療の発達のための前述したようなGH1(核酸)変異体又はGH(ポリペプチド/タンパク質)の変異体の使用を提供する。
【0053】
本発明のさらに別の構成によれば、本発明の単離された成長ホルモンポリペプチド又はタンパク質に特有の抗体を提供する。
【0054】
本発明はさらに、そのために薬学的に受け入れ可能なキャリアと関連して、この発明のGH1又はGH変異体を含む構成物を提供する。
【0055】
さらに、本発明は:
(a) 本発明に係る核酸分子を含むベクター、
(b) バクテリアの宿主細胞のような、ベクター(a)を含む宿主細胞、そして、
(c) 本発明に係るGH変異体を準備するためのプロセス、このプロセスは:
(1) 宿主細胞(b)を培養し、そして、
(2) 培地から、それによって生成されたGH変異体を取り出し、
(d) 培地にあり、上述したように定義される配列、ベクター、又は細胞によってコード化又は発現されたタンパク質又はアミノ酸配列を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明は、以下の実施例を参照して説明されるだろう。
【0057】
(実施例1−患者の選択―アンダルシア/バルセロナの研究)
異なる患者群はスペイン、アンダルシアで成立された。74人の思春期前の子供が、Hormone Research45のRanke[(Suppl.2)64〜66(1996)]によって定義されたように、FSS、すなわち、家族性の低身長を示すものとして、分類に基づいて選択された。そのような患者は低身長を示す少なくとも1つの遺伝上の親族がいる。研究における全ての子供の身長の偏差値(SDS)は、一般的な母集団の平均より下である−2SDSであった。全ての対象は、薬理学の刺激テストの後に、正常なGH分泌を示した(ピークGH値≧10ng/ml)。使用された薬理試験はクロニジン(34ケース)、プロパノロール(25ケース)及びインシュリン(15ケース)であった。遺伝学研究についての倫理承認は、それぞれの参加しているセンターと複数の地方の倫理委員会(Multi−Regional Ethics Committee)から得た。書面によるインフォームド・コンセントをそれぞれの参加している個人から得た。
【0058】
標準偏差スコアは、身長、ボディ・マス・インデックス、父方及び母方の身長、中間の親の身長、IGF−1とIGFBP−3のレベル、ng/mLでのピークGH分泌、及びGHBP(割合として)について計算された。これらのデータは、新規なGH1遺伝子障害が見つけられた2個体(B4とB49)について、また、研究された個体の群について群平均として表2に示される。
【0059】
【表2】

【0060】
(実施例2−GH1特有断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅)
3.2kbのGH1特有断片のPCR増幅は実施例1とコントロールに従って選ばれた患者について実行された。ゲノムDNAは標準の手順によって患者のリンパ球から抽出された。
【0061】
オリゴヌクレオチドプライマーGH1F(5’ GGGAGCCCCAGCAATGC 3’; −615から−599)及びGH1R(5’ TGTAGGAAGTCTGGGGTGC 3’; +2598から+2616)は、Expand(商標)ハイファイシステム(Roche)を用いてヒトGH1遺伝子を含む3.2kbの単一ゲノムDNA断片をPCR増幅するために、GH1特有配列に対応するようにデザインされた。
【0062】
2つの別々の薄い壁の0.65mlのPCRチューブがそれぞれの反応で使用された。最初のチューブは500ナノグラム(ng)のそれぞれのプライマー(GH1FとGH1R)と、200μMのdATP、dTTP、dCTP及びdGTPと、200ngの患者のゲノムDNAを含み、滅菌水で最終的な体積を25μlとなるようにした。第2のチューブは5μlの10×の反応バッファを含み、滅菌水で最終的な体積を24.25μlとなるようにした。両方のチューブは氷上に5分間置かれた。この時間後、0.75μlのExpand(商標)ポリメラーゼ混合物が第2のチューブに加えられ、含有物が混合され最初のチューブに移された。チューブは30秒間遠心分離され、反応混合物は30μlの軽油(Sigma)で覆われた。次に、反応混合物は、480又は9700のPCRのプログラム化できるサーマルサイクラー(Perkin Elmer)セット中に95℃で置かれた。
【0063】
次に、反応混合物は、次の条件の下で増幅された:95℃2分、その後に30サイクルの95℃30秒、58℃30秒及び68℃2分が続く。最後の20サイクルでは、68℃での伸長ステップはサイクルごとに5秒増加された。これに続いて68℃7分でのさらなるインキュベーションとなり、次に、反応はさらなる分析前に4℃に冷却された。反応の各セットでブランク(負のコントロール)がまた調整された。ブランクの反応はゲノムDNAを別として全ての試薬を含み、試薬が汚染されていないことを保証することに使用された。
【0064】
nestedPCRが実行される前に、PCR増幅が成功したか否かを評価するために、10分の1の体積(5μl)が、1.5%のアガロース・ゲルについて分析された。次に、PCR増幅が成功したこれらのサンプルは、nestedPCRのために使用する前に、100における1に希釈された。
【0065】
さらに、我々の研究では、反対の方向におけるシークエンシングのために使用される付加的なプライマーはGHBFR(5’ TGGGTGCCCTCTGGCC 3’; −262から−278)、GHSEQ1R(5’ AGATTGGCCAAATACTGG 3’; +215から+198)、GHSEQ2R(5’ GGAATAGACTCTGAGAAAC 3’; +785から+767)、GHSEQ3R(5’ TCCCTTTCTCATTCATTC 3’; +1281から+1264)、GHSEQ4(5’ CCCGAATAGACCCCGC 3’; +1745から+1730)である(+1での転写開始部位に相対的に番号付けしている;GenBank Accession No.J03071)。配列変異体を含むサンプルはpGEM−T(Promega、Madison WI)中にクローン化され、続いて、個体ごとに最低4つのクローンをシークエンスする。
【0066】
(実施例3−nested−PCR)
Nested PCRは、全体のGH1遺伝子をともにスパンする7つの重複したサブ断片を、それぞれのケースで発生させるように、実施例2で生成された断片について実行された。さらに、遺伝子座制御領域が3人の患者を除いた全てでPCR増幅(実施例5参照)された。
【0067】
最初の3.2kbのPCR生成物の7つの重複したサブ断片は、Taq Gold DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)を用いてPCR増幅された。これらの反応のために使用されたオリゴヌクレオチドは、それらの配列位置とともにGH1遺伝子参照配列から決定されるように、表6に掲載される。
【0068】
希釈された長い(3.2kb)PCR生成物の1μlのアリコートは薄い壁の0.2mlのPCRチューブ中に又は96ウェルマイクロタイタープレートの1つのウェル中に置かれた。この中に、最終的な濃度が200μMで、5μlの10×反応バッファ、500ngの適切なプライマーペア(例えば、GH1DFとGH1DR)、dATP、dTTP、dCTP及びdGTPが加えられ、滅菌水を49.8μlの体積まで、続いて0.2μlのTag Gold ポリメラーゼを加えた。
【0069】
次に、チューブ又はマイクロタイタープレートは、Primus 96 サーマルサイクル(MWG Biotech)中に置かれ、次のようにサイクルされた:12分95℃に続いて32サイクルの95℃30秒、58℃30秒及び72℃2分。これに続いて、72℃10分でさらにインキュベーションがあり、次に、反応は更なる分析の前に4℃まで冷却された。
【0070】
変性高圧液体クロマトグラフィー(DHPLC)がWAVE(商標)DNA断片分析システム(Transgenomic Inc. Crew、チェーシャー州、イギリス)について実行される前に、反応が働いているかを決めるために、反応混合物の10分の1の体積(5μl)は、0.8%のアガロース・ゲルについて分析された。ヘテロ二本鎖構成を高めるために、PCR生成物が95℃5分で、続いて50℃45分以上のゆるやかな再アニーリングで、変性された。生成物はDNAsepのカラム上にロードされ、0.1Mトリエチルアミン緩衝酢酸溶液(TEAA pH 7.0)中で、0.9ml/minの一定の流速で、2%/minの直線的なアセトニトリル(BDH Merck)の変化度で溶出された。変化度の始点及び終点はPCR生成物のサイズに応じて調整された。分析は、カラム再生と均衡化に必要である時間を含めて、増幅サンプルにつき6.5〜8.5分かかった。サンプルは、DHPLCMeltソフトウェア(http://insertion.stanford.edu/melt.html)を使用して決定される溶融温度(TM)で分析され、表3に掲載された。溶出したDNA断片はUV−C検出器(Transgenomic Inc.)によって検出された。
【0071】
【表3】

【0072】
上述の実施例1Aに従って選択された患者から得られたサンプルに関して、次の手順(実施例4と5)が実行された。
【0073】
(実施例4−GH1特有長さのPCR断片のDNAシークエンシング)
GH1特有長さのPCR断片を含むクローンは、Primus96(MWG)又は9700(Perkin Elmer)PCRサーマルサイクルでの0.2mlのチューブ又は96ウェルマイクロタイタープレートでBigDye(RTM)シークエンシングキット(Perkin Elmer)によって配列された。シークエンシングのために使用されたオリゴヌクレオチドプライマーは次のものである:
GH1S1 (5’ GTGGTCAGTGTTGGAACTGC 3’: −556から−537);
GH3DF (5’ CATGTAAGCCAAGTATTTGGCC 3’: +189から+210);
GH4DF (5’ GACTTTCCCCCGCTGTAAATAAG 3’: +541から+560):及び
GH6DF (5’ TCCCCAATCCTGGAGCCCCACTGA 3’: +1099から+1122)。
【0074】
1μgのクローン化されたDNAは、3.2pmolの適当なプライマーと4μlのBigDyeシークエンシング混合物とで最終的な体積が20μlで配列された。次に、チューブ又はマイクロタイタープレートは、サーマルサイクラーに置かれ、次のようにサイクルされた:2分96℃、続いて30サイクルの96℃30秒、50℃15秒及び60℃4分。次に、反応は、浄化の前に4℃まで冷却された。
【0075】
浄化は、完成したシークエンシング反応へ、80μlの75%のイソプロパノールを添加することによって実行された。次に、これは混合され、室温で30分間置いた。次に、反応は、14,000rpmで20分、室温で遠心分離された。次に、上清が取り除かれ、250μlの75%イソプロパノールが沈殿に加えられた。サンプルは混合され、5分、14,000rpm、室温で遠心分離された。上清は取り除かれ、ペレットが75℃で2分、乾燥された。
【0076】
次に、サンプルは、ABI Prism 377又は3100(Applied Biosystems)DNAシーケンサーで分析された。
【0077】
(実施例5−GH1遺伝子突然変異及び多型)
潜在的に病理的な重要性の3つの突然変異はバルセロナ出身の74人の家族性低身長の患者の配列分析で見つけられた:−360A→G(患者B4)、+1029でのGTC→ATC(Val 110→Ile)(患者B53;この変異はまた同時継続特許明細書no.PCT/GB01/2126に記載されている)及び+1491でのATC→ATG(Ile179→Met)(患者49)。表4参照。
【0078】
4つのIle110の対立遺伝子がコントロールサンプルで認められたため(0.025の頻度)、この変異体は一般的な母集団での多様な頻度で生じる。分子モデリングは、この置換がGHの構造に有害な効果を生じさせるかもしれないと示した;進化的に保存されたVal110残基はらせん3のN末端に疎水性のコアの一部を形成し、そのより長い側鎖とのIleによるその置換は、立体障害の原因となると予期されるだろう。この予測と一致すると、Ile110変異体は、JAK/STAT信号変換経路を活性化するために劇的に減少している能力(正常の40%)に関連付けられる。したがって、Val110→Ile置換はGH活性での減少に関連付けられ、また潜在的に身長に影響する可能性がある機能的な多型を表すようにみえる。この変異は、公平に正常な活性を持つプロモーターハプロタイプ2に関連付けられる。
【0079】
Ile179Met変異に関して:Ile179はらせん4の中心にhGHタンパク質の表面に置かれる。hGHbp/hGH2:1複合体では、Ile179は、部位1、TRP104及びTRP169の“hot−spot”の残基と直接相互作用する。したがって、メチオニン残基とのIle179の置換は、部位1での正確な立体障害を妨げ、それによって信号変換に影響を及ぼし、その結果hGHの機能でかなりの変化をもたらすことがありそうである。
【0080】
(c)コントロールでのGH1コード化配列変異の研究
コーカサス出身の合計80人の健康なイギリス人のコントロールがまた、実施例2及び3の方法を使用して、GH1遺伝子のコーディング領域内で、変異体についてスクリーニングされた。単独の個体で見つけられた静的変換の5つの例が認められた[Asp26でのGAC→GAT、Ser85でのTCG→TCC、Ser85でのTCG→TCA、Thr123でのACG→ACA及びAsn109でのAAC→AAT]。Thr123多型変異体は以前に報告された(Counts他 Endocr Genet 2 55〜60(2001))。
【0081】
さらに、3つのミスセンス置換が認められた[ACC→ATC、Thr27→Ile;AAC→GAC、Asn47→Asp;GTC→ATC、Val110→Ile、それぞれ1、1及び4つの対立遺伝子/160の対立遺伝子];Val110→Ile置換のみが、我々の同時継続特許明細書no.PCT/GB01/2126(患者66)に開示された患者研究で見つけられた。分子モデリングは、この置換がGHの構造に有害な効果を生じさせるかもしれないと示唆した;Val110はらせん3のN末端に疎水性のコアの部分を形成し、そのより長い側鎖とのIleによるその交換が立体障害の原因になるだろう。その結果、Val110→Ile置換がコントロールと患者母集団の両方にあるが、それにもかかわらず、それは身長に影響を及ぼすことができるかもしれない。他のコメントは上述の実施例5(b)のように適用される。これにもかかわらず、コントロールの母集団でのミスセンス突然変異の相対的な不足が、患者コーホートで見つけられた障害の病理学的な有意性を支持して議論する。
【0082】
(実施例6 Ile179Met変異体の生物学の活性)
HK293細胞は、実物大のヒトGHレセプター(GHR)でトランスフェクトされ、また高いGHR発現に基づいて選択されたもので(HK293Hi細胞)、GH変異体の生物学の活性を検査するために使用された[Ross他 Mol Endocrinol 11 265〜73 (1997);von Laue他 J Endocrinol 165 301〜311(2000)]。細胞は24ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)中に24時間、DMED内で置かれた:F−12(1:1)が10%FCSを含む。細胞は、一晩中、脂質ベースのトランスフェクション試薬(FuGENE6、Roche Molecular Biochemicals)を使用して、STAT5−敏感性のルシフェラーゼレポーター遺伝子構成物(Ross他、同書、von Laue他、同書)及び構成的に発現されたβ―ガラクトシダーゼ発現ベクター(pCH110;Amersham Pharmacia Biotech)と、トランスフェクション効率のために訂正するために、共同してトランスフェクトされた。次に、細胞は、GHR二量化、STAT5活性化及びルシフェラーゼ発現を許容するために、2.5×10−7Mのデキサメサゾンを含んでいる無血清のDMEM:F−12(1:1)中で知られた標準の範囲の濃度(0.1〜10nM)に希釈された変異体と野生型GHとインキュベートされた。インキュベーションの後、細胞は溶解され、ルシフェラーゼはマイクロプレートルミノメーター(Applied Biosystems)で、Promegaルシフェラーゼアッセイシステムを使用して測定された。その結果、ルシフェラーゼ発現はGHR活性化、したがってGH変異体の生物学の活性の程度の測定を提供した。実験は、4つ一組で実行され、少なくとも3回繰り返された。ルシフェラーゼアッセイデータの統計分析はその後の比較がStudent−Newman−Keulsの多重比較試験を使用して分散(ANOVA)の分析で実行された。
【0083】
(実施例7−哺乳類の細胞のGH分泌研究)
ラット脳下垂体(GC)細胞株が、全体の野生型GH1遺伝子(プロモーターハプロタイプ1の制御下)とそれらの関連付けられたハプロタイプの制御下のミスセンス変異体のための同等の構成物におよぶ3.2kbの断片を含むpGEM−Tプラスミドでトランスフェクトされた。細胞は、24ウェルプレート(ウェルあたり200,000細胞)の中にプレートされ、一晩中、15%ウマ血清と2.5%FCS(完全な培地)を含むDMEM内で培養された。細胞は、500ngのGH1プラスミドとβ―ガラクトシダーゼ発現ベクター(pCH110;Amersham Pharmacia Biotech)と、脂質ベースのトランスフェクション試薬Trf−20(Promega)を使用して共同でトランスフェクトされた。トランスフェクションは、ウェルあたり1μlのTfx−20を含む200μlの無血清培地中で1時間行われ、その後、0.5mlの完全な培地がそれぞれのウェルに加えられた。細胞は48時間培養され、培地は採取され、細胞はトランスフェクションの効率の違いを補正するためにβ―ガラクトシダーゼ・アッセイについて溶解した。培地中のGHは、ラットGHとの交差反応性(cross−activity)を示さないヒトGH IRMA(Nichols Institute Diagnostics)を用いていて変異体について定量化された。実験が行われ、データが生物活性アッセイについて説明されているように分析された。
【0084】
(実施例8―ミスセンス変異体の機能的な特徴)
成熟したタンパク質中のミスセンス突然変異は、ヒトGHのエックス線結晶構造の適当なアミノ酸基の単一の交換によってモデル化された。
【0085】
「分子モデリング」
Ile179Met変異体は、ヒトGHのエックス線結晶構造での適切なアミノ酸基の検査によって構造的に分析された(PDB:3HHR)[19]。野生型と突然変異体のGH構造は、静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用及び表面露出に関して比較された。分子のグラフィックスは、ICM分子モデル化ソフトウェア一式(Molsoft LLC,San Diego,CA)を用いて実行された(図6)。
【0086】
(実施例9−GH変異体のタンパク質分解的な消化)
トリプシン、キモトリプシン、またはプロテアーゼK(全てSigma,Poole,UK)は、野生型GHまたはIle179Met変異体(60nM)のいずれか一方を発現している昆虫細胞から採取された最終的な濃度が0.1μg/mlから100μlの培地に加えられ、その後、37℃、1時間でインキュベートされた。野生型GHについての以前の用量依存性の研究は、0.1μg/mlは3つの酵素全てによって分解が開始される濃度であると示した。1時間の処理期間の後に、10μlのトリプシンーキモトリプシン抑制剤(500μg/ml)がプロテイナーゼKの消化を停止するために加えられた。そして、それぞれの反応は、さらに15分、37℃でインキュベートされた。サンプルは、SDS−PAGEによって12%ゲルについてミニゲル装置(Bio−Rad Laboratories)を用いて分析された。1時間、37℃でインキュベートされた消化されていない野生型GH及びIle179Metの相当の量がまた、ゲルに続いた。ゲルは、以前の記載[Lewis他 J Neuroendrocinol 14 361〜367 (2002)]のようにPVDF膜上にエレクトロブロッティングされ、マウスモノクローナル抗ヒトGH抗体(Lab Vision,Fremont,CA,USA)と調査され、1:500に希釈され、抗マウスIgG−HRP共役(1:5000,Amersham Biosciences)を用いて検出され、そして、機能強化された化学ルミネセンス(ECL Plus,Amersham Biosciences)によって視覚化された。フィルムはAlpha Imager 1200 ディジタルイメージングシステム(Alpha Innotech Corp,San Leandro,CA,USA)、及び、消化されていないGHのパーセンテージとして酵素消化に続いて残っているGHの量として表された結果を用いて分析された。実験は3回繰り返され、両側t検定によって統計的に評価された。
【0087】
(実施例10−MAPキナーゼ経路の活性化)
Ile179Met変異体が野生型GHと同じ程度へのMAPキナーゼ信号変換経路を活性化する能力は、野生型GHとIle179Met変異体で3T3−F442A前脂肪細胞を刺激することによって調査された。細胞(250,000)は、10cmの培養皿にプレートされ、実験前に3日間、10%の子牛血清を含んでいるDMEM中で培養された。プレートは、PBSと洗浄され、細胞は無血清DMEM中で2回の連続した2時間のウォッシュアウト期間でインキュベートした。GHは2回目のウォッシュアウト期間の終わりで無血清DMEM中に直接的にスパイクされ、細胞は適当な時間でインキュベートした。この期間の後、培地は取り除かれ、細胞は、1mMのオルソバナジン酸ナトリウムを含む氷冷したPBSと洗浄され、1mMのオルソバナジン酸塩と1mMのPMSFを含む0.5mlのLaemmli バッファ中に溶解され、前述したように10%のゲルについてSDS−PAGEによって分析された。ゲルは、PVDF膜上にブロットされ、残基Thr202/Tyr204(Cell Signaling Technology)にリン酸化されるp42/p44のMAPキナーゼ、及び残基Tyr694/Tyr699(Upstate Biotechnology)にリン酸化されるSTAT5の活性化した(リン酸化した)形態を検出する抗体を用いて調査された。ブロットは処理され、ECL Plus(Amersham)を用いて視覚化され、イメージは上述のように分析した。レーン間の等しいタンパク質のローディングを確実にするために、ブロットが剥ぎ取られ、適宜、総MAPKまたはSTAT5(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を認識する抗体で再調査された。リン特有の及び総STAT5抗体がSTAT5a及び5bと等しく交差反応した。第2の抗体は、使用される第1の抗体に応じて(1:5000,Amersham Biosciences)、抗マウス又は抗ラビットのいずれか一方のIgG−HRP接合であった。フィルムは上述のようにデンシトメトリーをイメージ化することで分析された。リン−MAPとリン−STAT5についての結果は、同じサンプルで、総MAP又はSTAT5に関して正規化された。
【0088】
初期の研究はまた、我々の実験モデルで野生型GHによるMAPKとSTAT5活性化の経時変化を決めるために実行された。GHによるSTAT5活性化は速く、それに従って徐々に下降して5〜10分でピークであり、一方で、MAPK活性化はさらにより速い下降で10分でピークとなり、60分で活性化の基礎レベルに復帰した(図7)。したがって、10分のGH処理時間は、これは最大MAPK活性化の時間であり、最大STAT5活性化のプラトー期間にあるため、その後の研究で使用するために選択された。細胞は野生型と変異体GH(0.5〜2.0nM)の濃度の範囲で、10分間で処理され、MAPKとSTAT5の活性化が分析された(図8)。
【0089】
(実施例11−Ile179Met変異体の機能的な特徴)
疎水性の残基Ile179の進化的な保護は、19の脊椎動物からのオーソロガスGHタンパク質のClustalW複数配列調整によって調査された[Krawczak他 Gene 237 143〜151 (1999)]。
【0090】
(実施例12−レセプター結合研究)
レセプター結合研究は、実物大のヒトGHRとトランスフェクトされたHK293hi細胞を用いて実行され、高められたGHR発現(HK293hi細胞)の基礎について選択された[Ross他 Mol Endocrinol 11 265〜273 (1997);von Laue他 J.Endrocrinol 165 301〜311 (2000)]。2μgのGH(ヒト脳下垂体ヨウ素化グレード,Calbiochem,Little Chalfont,Bucks,UK)は、クロラミンT(0.7mM)を45秒で用いて、37MBq ヨウ素―125(Amersham Biosciences, Little Chalfont, Bucks, UK)と、87MBq/nmoleの特定の活性にラベル付けされ、そして、SephadexG−10カラムを用いて浄化された。細胞は、12のウェルプレート中にプレートされ(ウェルあたり300,000)、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM/F−12(1:1)中で一晩中培養された。培地は無血清DMEM/F−12中で1回洗浄され、無血清培地で3時間、37℃でプレインキュベートされ、そして、1%のウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS−BSA)で2回洗浄され、ラベル付けされたGH(200,000cpm/well)と1mlのPBS−BSA中で、Ile179MetGHの各野生型の量を変えながら、さらに3時間、室温でインキュベートされた。インキュベーション期間の最後に、細胞はPBS−BSAで2回洗浄され、1MのNaOH中で、結合した125I−GHの定量化のために可溶化された。実験(n=4)は複製のウェル中で実行され、K値はデータのスキャッチャード分析によって計算された。
【0091】
(結果)
「Ile179Met変異体の機能的特徴」
疎水性の残基Ile179の進化的な保護は、19の脊椎動物からのオーソロガスGHタンパク質のClustalWの複数配列調整によって調査された[Krawczak他 Gene 237 143〜151 (1999)]。この残基はタートル以外のすべての脊椎動物中の疎水性のバリンであり、ヒトの家系におけるIleによる置換が保護されていると示している。ヒトGHクラスタのパラロガス遺伝子との比較は、Ile179に類似の残基がCSH1、CSH2及びCSH偽遺伝子(CSHP1)におけるMetであることを明らかにした。これは、遺伝子変換によってテンプレートされた保護されたIle179Met置換と一致する。
【0092】
そして、Ile179Met置換は、ヒトGHのエックス線結晶構造での残基の交換によってモデル化された。Ile179は、らせん4のC−末端部分にあり、これは部位1結合にかかわり、ここで部分的に露光され、“hotspot”GHR残基Trp169の側鎖と疎水性相互作用を許容する。GHRとのさらなる相互作用は、Ile179の側差及びバックボーン原子と、GHR残基Lys167及びGly168のバックボーン原子との間で起こる。Ile179側鎖のメチオニンの側鎖との交換は、Trp169残基の側鎖との不利なファンデルワールス(例えば立体構造)相互作用を導入し、これらの疎水性の相互作用が置換のうえに保護されるかもしれないと示す。レセプター結合研究は、GHRのために野生型GHとIle179Met変異体との親和性を決めるために実行された。メチオニン残基の導入は、レセプター結合を変更しなかった(図9);野生型とIle179MetGH分子のK値は、それぞれ1.99nMと2.04nMであるとわかった。これは、何か違いが野生型と変異体GHの結合特徴の間に存在するならば、それらは微妙であり、静止系で計測されるようにKを変えないことを示す。アラニンスキャン突然変異誘発は、以前に、Ile179Metがレセプター親和性を決定する残基のパッチに起因すると特定された;非保護のアラニン置換は、GHR結合(0.34から0.92nMへのK増加)でのマークされた下降の結果になった[Cunningham と Wells,Science 244 1081〜1084 (1989)]。Ile179がレセプター結合の親和性に起因する事実からみて、Ile179Met変異体はGHRレセプター結合に微妙な効果を生み出すだろう。
【0093】
したがって、我々は、Ile179MetGH変異体とGHRとの間の混乱した相互作用がSTAT5とMAPK経路の減少した活性化につながることができるかについて調査した。STAT5活性化は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用いて非直接的に研究され、ウェスタンブロッティングによって活性化されたリン−STAT5のレベルを決めることで直接的に研究された。MAPK活性化はウェスタンブロッティングによる活性化されたリン−MAPKのレベルを決定することで直接的に研究された。
【0094】
Ile179Met変異体は、昆虫細胞中に発現され、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイシステム(11、12)はその信号変換活性を分析するために使用された。GHが生物学的に活性であるために、それは2つのGHR分子に結合しなければならず、それによってレセプター2量化を引き起こす。GHR2量化は、順番にリン酸化反応によって転写因子STAT5を活性化する細胞内のチロシン・キナーゼJAK2を活性化する。リン酸化されたSTAT5は2量化し、細胞核に転写し、そして、STAT5敏感性のプロモーターに結合し、それによって、GH敏感性の遺伝子の発現に切り替わる。ここで使用されたGH生物活性のアッセイは、この経路のすべてのステージが機能的であることを必要とする。Ile179Met変異体は、1nM(このアッセイシステムにおけるGHのためのおおよそのED50値)の濃度での野生型GHと比べる場合では、JAK/STAT信号変換経路(図10)を活性化する正常な(99±4%野生型)能力を現すことがわかった。この変異体は、静的なin vitroのシステムにおけるその有害な影響を表すことが単純にできなかったが、可能性はまた、JAK/STATの他に、信号変換経路に有害な効果を生み出したかもしれないと考えられた。代わりに、Ile179Met置換は、in vivoでGH折り畳み、分泌又は安定性を妥協するか、又は、まだ未定義であるGH軸での悪影響を及ぼすかもしれない。
【0095】
MAPKとSTAT5のリン酸化された(活性化された)形態に特有の抗体を使用しているウェスタンブロッティング法実験は、MAPキナーゼ及びSTAT5経路を活性化するIle179Met変異体の能力を評価するために引き受けられた。Ile179Met変異体は研究された濃度範囲中でMAPKを活性化する減少した能力を示したが、STAT5活性化中に違いはなかった(新しい図8)。GHの単一の最大限度の投与量(20nM)を用いている複数の実験からのデータの分析は、野生型によって提供されるレベルのたった45%に、MAPKを活性化するかなり減少した能力を持つと示した(野生型GHによって提供される活性化の9.76±2.52回の基礎レベルに比較して、Ile179Met変異体のための活性化の4.35±0.66回の基礎レベル;平均±SEM、n=5の別々の実験、p<0.05、スチューデントのt−検定、図8)。これは、20nMの濃度での野生型GHとしての同じレベルにSTAT5を活性化する変異体の能力と対比した(野生型での36.50回の基礎レベル対Ile179Met変異体での38.62回)。ウェスターンブロッティングデータは、野生型GHとIle179Met変異体両方のために活性の同じようなレベルを示すSTAT5敏感性のルシフェラーゼレポーター遺伝子からの結果を確認した。対照的に、MAPKの活性化は野生型GHによって引き出された半分のレベルだけで起こった。
【0096】
さらにこれらの可能性を調査するために、Ile179Met変異体の分泌がラット脳下垂体GC細胞において研究された。野生型GH1遺伝子は、GH1プロモーターハプロタイプ1のコントロールのもとで、GC細胞中にトランスフェクトされ、48時間の期間にわたって64pMの濃度で、ヒトGH(ヒトGH特有抗体を用いてELISAによって計測された)の分泌に敏感であるようにみられた。そして、Ile179Met変異体の分泌レベル(また患者B49のin cisで関連されるGH1プロモーターハプロタイプ1のコントロールのもとで)は、以前記載されたように分析され、計測されたGH分泌レベルは、野生型のパーセンテージとして表現された。分泌が野生型値の97±4%であるとわかったため、この突然変異はGH分泌について影響をほとんど又はまったく与えそうにないと推論されるだろう。
【0097】
最終的に、Ile179Met変異体はまた、野生型GHよりもタンパク質分解的切断により感受性があるかを決定するために、トリプシン、キモトリプシン及びプロテイナーゼKとともにチャレンジされた。しかしながら、GHの2つの形態の間にタンパク質の折り畳みに重要な違いはないということを野生型GHが示したように、179Met変異体は、タンパク質分解的切断に対し同様の耐性を証明した。これは、我々が以前に特定したGH変異体[Millar他 Hum Mutat 21 424〜440 (2003)]の約67%は、野生型GHに比べて、タンパク質分解に対し増加した感受性を示したという状況の中で考えられるべきである。誤った折り畳み(misfolding)の不在と一致して、ラット脳下垂体細胞からのIle179Met変異体の分泌のレベルは、野生型GHのそれから区別がつかなかった。
【0098】
我々の知識では、レセプター作用薬による細胞信号伝達経路の特異的な活性化は、全く前例がない。Ile179Met変異体と対照して、我々の実験室からの研究で以前に特定されたすべてのGH変異体は、JAK/STAT経路か両方を活性化する減少した分泌か減少した能力かに関連した[Millar他 Hum Mutat 21 424〜440 (2003)]。したがって、我々は、Ile179MetGH変異体によるGHR活性化は正常にSrcではなくJAK2、結果として完全なSTAT5活性化を活性化するが、MAPKの部分的な活性化のみをすることができることを信じる。
【0099】
STAT5の正常な活性を表しているが、低身長を示している子供のMAPKの活性化を減少されたGH変異体の特定は、MAPKがGHの作用をとりなすときに果すかもしれない役割に関するいくつかの面白い疑問を挙げる。以前の研究は、MAPKはIGF1遺伝子発現のGH導入にかかわらないと示唆した[Shoda他 Endocrinology 142 3980〜3986 (2001);Frago他、Endocrinology 143 4113〜4122 (2002)]。しかしながら、他のGH軸タンパク質をコード化する非連鎖の遺伝子座での変異体に合わせて作用している間、それでもなおこの変異体が、発端者によって表される低身長にたぶん起因したかもしれないという可能性は残っている。したがって、GHの効果を促進する成長を規制する際に、今までのところ特定されているよりMAPK経路がより大きな役割をはたすかもしれない。
【0100】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、4つのパラロガス遺伝子、すなわち、CSHP1、CSH1、GH2及びCSH2に関して、染色体17q23上のGH1遺伝子の位置を示す。
【図2】図2は、イントロン、エキソン非翻訳領域、シグナル・ペプチド、コーディング領域、及びポリAテールを示すGH1遺伝子の詳細な図である。
【図3】図3は、GH1のプロモーターとそれに関する配列多型のかなり高いレベルを示す。
【図4A】図4Aは、GH1遺伝子の参照核酸配列構造を示す。
【図4B】図4Bは、GH1遺伝子の参照核酸配列構造を示す。
【図4C】図4Cは、GH1遺伝子の参照核酸配列構造を示す。
【図4D】図4Dは、GH1遺伝子の参照核酸配列構造を示す。
【図5A】図5Aは、GH1遺伝子の核酸コード配列と対応するポリペプチド配列を示す。
【図5B】図5Bは、GH1遺伝子の核酸コード配列と対応するポリペプチド配列を示す。
【図5C】図5Cは、GH1遺伝子の核酸コード配列と対応するポリペプチド配列を示す。
【図6】図6は、対応するレセプターと相互作用する場合の成長ホルモンタンパク質の分子モデリングの図である。図は、GH残基Ile179とGHR残基Trp169の側鎖の間の厳しい相互作用を示す。Ile179残基は空間充てんモデル(space filling model)で表される。Trp169はスティックモデル(stick model)としてあらわされ、一方で、GHR残基167〜169の分子表面は緑で示される。
【図7】図7は、ERKとSTAT5の活性化の時間的経過を示す。示されたデータは、ERK(A)とSTAT5(B)の時間依存の活性化を示す、リン特有のERKとSTAT5抗体で調査されたウェスタン・ブロットである。ERKブロットは、ERK1に対応する上側のよりかすかなバンドとERK2に対応する下側の暗いバンドを示す。ブロットは、密度計測をイメージ化することで分析され、データ(総合密度値、IDV)は、全体のERK又はSTAT5について正規化され、GH処理時間(C)に対してプロットされ、GH処理に続いてERK活性化(斜線の柱)が10分でピークになり、STAT5(塗りつぶした柱)が5〜10分でピークになることを示した。
【図8】図8は、野生型(Wt、A、d)とIle179MetGH(Met、B、E)によるERK(A〜C)とSTAT5(D〜F)の容量依存(0.5〜20nM)の活性化のウェスタン・ブロット分析を示す。ブロットは、密度計測をイメージ化することで分析され、データ(総合密度値、IDV)は全体のERKとSTAT5について正規化され、研究された全ての容量で野生型GH(塗りつぶされた柱)に比べたGH変異体(斜線の柱)によるERK(C)の減少された活性化を示し、これは変異型(斜線の柱)と野生型GH(塗りつぶされた柱)の両方による同様の活性化と対比された。
【図9】図9は、野生型(三角形)とIle179Met変異体GHのGHR結合特性を示す。データはラベル付けされていない野生型と変異体GHの0.1〜20nMの容量範囲を超えて、特有の125I―ラベル付けされたGH結合(%B/Bo)の置換として表された。各ポイントは4つの別々の実験±SEMの平均である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト成長ホルモンの核酸分子、GH1の単離された変異体であって、
次の置換からなることを特徴とする変異体:
+1491 C→G、1491は1と指定される転写開始部位に対して、ヌクレオチドの位置に関連する。
【請求項2】
成長ホルモンの核酸分子、GH1の単離された変異体であって、置換Ile179Metを含むタンパク質、すなわちGHタンパク質をコード化する核酸分子からなることを特徴とする変異体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された単離された核酸分子であって、前記分子はgDNA、cDNA、又はmRNAのいずれかであることを特徴とする核酸分子。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載された核酸分子の転写物。
【請求項5】
請求項1、2、又は3に記載された核酸分子によってコード化された単離されたポリペプチド。
【請求項6】
成長ホルモンタンパク質、GHの変異体であり、置換Ile179Metを含むことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項7】
機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、このスクリーニング方法は次のステップを含むことを特徴とするスクリーニング方法:
(a) ヒトGH1遺伝子の核酸分子を含むテストサンプルを個体から得て、
(b) 前記分子を配列し、
(c) +1491C→G置換について前記配列を調査し、そして、
(d) 前記置換がどこに存在するかがGHの機能不全があることを結論づける。
【請求項8】
請求項7に記載されたスクリーニング方法において、前記配列ステップはPCR技術をともなうことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項9】
機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、このスクリーニング方法は次のステップを含むことを特徴とするスクリーニング方法:
(a) 成長ホルモン、GH、ポリペプチドを含むテストサンプルを前記個体から得て、
(b) 前記ポリペプチドを配列し、
(c) Ile179Met置換について前記配列を調査し、そして、
(d) 前記置換がどこに存在するかがGHの機能不全があることを結論づける。
【請求項10】
請求項7、8、又は9に記載されたスクリーニング方法を行うために適したキットであって、このキットは、
(a) GH1遺伝子の領域+1491に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであり、この領域は置換+1491C→Gを含み、そして、
(b) (a)で特定した領域の野生型の配列に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチド、そして、選択的に、
(c) 患者のDNAの所望の領域を増幅するために、PCRを行うために適した一以上の試薬を含むことを特徴とするキット。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか1項に記載された方法において使用に適し、及び選択的に請求項10に記載されたキットに提供されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
Ile179Met置換を含み、さらにレセプターを介した細胞信号伝達経路の特異的な活性化のために与えることを特徴とする単離された成長ホルモンポリペプチド又はタンパク質。
【請求項13】
請求項12に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質であって、
前記ポリペプチド又はタンパク質はSTAT5経路を活性化するが、低下した活性化又はMAPK経路を示すことを特徴とするポリペプチド又はタンパク質。
【請求項14】
請求項13に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質であって、
MAPK経路の活性の前記低下は、野生型GHタンパク質の活性の70%未満であることを特徴とするポリペプチド又はタンパク質。
【請求項15】
前記低下した活性は50%未満であることを特徴とする請求項14に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質。
【請求項16】
前記低下した活性は45%未満であることを特徴とする請求項13に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質。
【請求項17】
MAPキナーゼ経路を活性化する低下した能力を所有することを特徴とする単離された成長ホルモンのポリペプチド又はタンパク質。
【請求項18】
前記MAPK経路はERK経路であることを特徴とする請求項17に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質。
【請求項19】
機能不全のGHの疑いがある個体をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、次のステップを含むことを特徴とするスクリーニング方法:
(a) 個々の内因性の成長ホルモンを含む前記個体からテストサンプルを得て、
(b) それがレセプターを介したMAPK細胞信号伝達経路を活性化するか否か、及びどの程度活性化するかについて決定するために、前記成長ホルモンを調べて、そして、
(c) 野生型GHについて、MAPK細胞信号伝達の低下がどこに存在するかが、GH機能不全があると結論づける。
【請求項20】
成長ホルモン機能不全の診断又は適切な治療の発達のための請求項1から3のいずれか1項に記載された単離された核酸分子の使用。
【請求項21】
成長ホルモン機能不全の診断又は適切な治療の発達のために請求項12から18のいずれか1項に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質。
【請求項22】
請求項12から18のいずれか1項に記載された単離された成長ホルモンのポリペプチド又はタンパク質に特有である抗体。
【請求項23】
薬学的に許容できるキャリアに関連して、請求項1から3のいずれか1項に記載された核酸分子を含む薬学の構成物。
【請求項24】
薬学的に許容できるキャリアに関連して、請求項12から18のいずれか1項に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質を含む薬学の構成物。
【請求項25】
請求項1から3のいずれか1項に記載された核酸分子を含むベクター。
【請求項26】
請求項25に記載されたベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項27】
請求項12から18のいずれか1項に記載された単離されたポリペプチド又はタンパク質を準備するためのプロセスであって、
(a) 請求項26に記載された宿主細胞を培養し、そして、
(b) 前記細胞によって生産されたポリペプチド又はタンパク質を培地から取り出すことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項28】
請求項27に記載された方法によって生産されたことを特徴とするポリペプチド又はタンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−523089(P2006−523089A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506664(P2005−506664)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004775
【国際公開番号】WO2004/044002
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504043462)ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】