ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸と、その使用
ヒト因子VIl/VIlaに特異的に結合する一定の長さを有する少なくとも15のヌクレオチドから成る核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト因子VII/VIIaに特異的なリガンド、特にこのタンパクを精製、検出するためのリガンドの同定と、その医学分野での使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第VII因子(FVII)はビタミンK依存性のグリコプロテインであり、その活性形(FVIIa)はカルシウムおよび組織因子の存在下で第X因子および第IX因子を活性化して凝集プロセスに関与する。FVIIは分子量が約50kDaである406個のアミノ酸残基の単一ペプチド鎖の形で分泌される。
【0003】
従って、ビタミンK依存性のグリコプロテインであるこのFVIIaは凝固機構、従って血栓の形成に重要な役割を演じている。FVIIaには出血を起こしている組織の損害後に放出される組織因子の存在下で、第VIIIまたはIX因子が不存在の場合でも、局所的に働くことが可能であるという利点がある。そのため、FVIIaは出血によって生じるある種の凝固不調を正すために古くから使われてきた。
【0004】
第VIII因子はFVI1(血友病タイプA)または第IX因子(血友病型B)を欠失している患者やその他の凝固因子を欠失している患者、例えば遺伝性FVII欠失患者の血友病治療で使われている。また、FVIIはストローク(卒中)の処置でも推薦されている。そのためには注射可能なFVIIa濃縮物が必要である。
【0005】
FVIIa濃縮物を得る最も古い方法は分画して得た血漿タンパクからFVIlaを精製する方法である。特許文献1(欧州特許第EP 0 346 241号公報)に記載のFVIIa−濃縮(enriched)画分の製造方法ではPPSB(PプロトロンビンまたはFII(P=プロコンバーチンまたはFVII、S=スチュワート因子またはFX、B=抗血友病因子BまたはFIX)のプレ溶出液を含む、FVIIおよびFVIIaを含む血漿タンパク、その他のタンパク(例えば因子IX(FIX)、X(FX)およびIl(FIl)の分画副産物を吸着し、溶出して得られる。この方法の欠点は得られるFVIIが他の凝固因子の痕跡量を含む点にある。
【0006】
同様に、特許文献2(欧州特許第EP 0 547 932号公報)にはビタミンK依存性因子およびFVIIIを基本的に含まない高純度FVI1a濃縮物の製造方法が記載されている。この方法で得られるFVIIは純度が良いが残渣が血栓形成(thrombogenic)活性を有する。
【0007】
1980年代にヒト因子VIIをコードするDNAが単離され(Hagen et al,(1986);Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Apr. 83(8):2412-6)、対応するタンパクがBHK(ベビー・ハムスター腎臓)哺乳動物細胞で発現された(特許文献3)。
【0008】
本出願人の特許文献4(フランス特許出願第FR 06 04872号公報)にはトランスジェニック動物でのFVIIa製造方法が記載されている。この製造方法を用いるとウィルス、その他の病原による汚染に対して安全なタンパクを得ることができる。この方法はさらに、一次配列がヒト一次配列に同一であるタンパク、すなわち各種アミノ酸間の結合が全く同じタンパクを得ることができる。
【0009】
しかし、この方法で得られるものは、因子VII/VIIaの出発源にも関わらず、汚染物質を含むヒト因子VII/VIIaの濃縮組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第EP 0 346 241号公報
【特許文献2】欧州特許第EP 0 547 932号公報
【特許文献3】欧州特許第EP 0 200 421号公報
【特許文献4】フランス特許出願第FR 06 04872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヒト血漿から因子VII/VIIaを精製する方法では残留血栓形成(thrombogenic)がないか、実質的にない最終産物を得ることが特に有利である。精製された組換型ヒト因子VII/VIIaを得る方法では望ましくない細胞タンパクを含まないか、実質的に含まない最終生成物を得ることが特に重要である。特に、トランスジェニク哺乳類に由来する体液から精製したヒト因子VII/VIIa組成物では、ヒトで免疫原となる可能性のあるトランスジェニク哺乳類が天然に産生する因子VII/VIIaを含まないか、実質的に含まない最終生成物を得ることが重要である。
この目標を達成するためには上記の因子VIl/VIlaを含むサンプルから、ヒト因子VII/VIIaを精製する効率的かつ特異的な手段が必要であり、その手段は簡単で、再現性がよいことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明には、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VIIN1Iaに特異的に結合する単一鎖の核酸を提供する。
本発明はさらに、構造中に上記定義の少なくとも一つの核酸を含む、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する各種の化合物にも関するものである。
本発明はさらに、上記定義核酸または化合物と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間に形成さる錯体(複合体、コンプレックス)にも関するものである。
本発明はさらに、上記定義の核酸または化合物の複数がグラフトした固体の基質材料からなる、ヒト因子VII/VIIaを固定するための基質にも関するものである。
【0013】
本発明のさらに他の対象は、ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを上記定義の基質と接触させる段階を含む、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定する方法にある。
本発明のさらに他の対象は、下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの精製方法にある:
(a)ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを上記の核酸または基質と接触させてi)上記核酸または上記基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成させた錯体からヒト因子II/VIIaを遊離させて精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
本発明のさらに他の対象は、下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法にある:
(a)上記定義の核酸または基質と上記サンプルとを接触させ、
(b)(i)上記核酸または基質と(ii)因子VIl/VIlaとの間の錯体の形成を検出する。
本発明はさらに、上記定義の核酸の医療での予防または治療でき使用にも関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】は本発明の核酸(Mapt2)保持(folding)のモデル計算結果を示す図である。mFoldコンピュータープログラムを使用し、[図1]に示す構造を得るのに用いたものと同じパラメータすなわち下記条件を使用した:(i)直鎖の配列を有するDNA、(ii)保持温度:25°、(iii)イオン条件:[Na+]:150mM;[Mg++]:4mM、(iv)修正タイプ:オリゴマ、(v)百分比サブオプティマル(suboptimality)数):2(vi)計算保持数の上限:50、(vii)2つの塩基対間の最大距離:無制限(viii)他のパラメータのためのデフォルト値
【0015】
【図2】は基質に固定したヒト血漿第VII因子に対する本発明の各種核酸(Mapt2、Mapt3およびMapt7)の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0016】
【図3】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する各種濃度で使用したヒト血漿第VII因子の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。各曲線は図の最上部から下に向かって下記を示す:曲線1[FyII]:500nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線2[FyII]:250nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線3[FyII]:125nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線4[FVII]:62.5nM濃度での精製ヒト血漿FVII;下部曲線:それぞれ62、125、250および500nMでの精製免疫グロブリン調整物。
【0017】
【図4】は(i)基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する組換え型ヒト因子VIIの表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線と、(i)で作った固定核酸/FVII錯体に対する抗ヒトFVII単クローン抗体の結合曲線とを示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0018】
【図5】は時間的に連続的に注入したヒト血漿第VII因子による本発明の核酸(Mapt2)を固定した基質の飽和曲線。表面プラスモン共振法に従ったテスト。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。最上部の曲線:濃度500nMの精製ヒトFVIIで得た信号信号。
【0019】
【図6】は本発明の核酸(Mapt2)を固定した基質の表面プラスモン共振法に従ったテストでのヒト血漿第VII因子の結合動特性(kinetics)曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0020】
【図7】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する種々起源の第VII因子タンパクの表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0021】
【図8】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対するヒト血漿第VII因子およびウサギ組換え型第VII因子の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0022】
【図9】はPEGスペーサ鎖(このスペーサ鎖自体はビオチン分子に連結)に連結した本発明アプタマ(Mapt2)を含むヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物の構造を示す図。
【0023】
【図10】はSELEXタイプのプロセスの実行サイクルの最後に選択された、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する各種アプタマの配列を示す図。[図10]に示す配列は図の最上部から下に向かってSEQ ID番号87〜SEQ ID番号100である。
【0024】
【図11】はウサギ乳汁に産生された組換え型ヒト因子VIIを、抗ヒトFVII核酸アプタマを固定した親和性基質を用いて精製する方法の実行中に得られたクロマトグラフのプロフィルを示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:254ナノメートルでの吸光度(OD)値。
【0025】
【図12】は基質に固定したヒト血漿第VII因子に対するテストした本発明の27の核酸アプタマの表面プラスモン共振法に従った結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0026】
【図13】はテストした27のアプタマの各々の安定結合信号の固有値を示す図。X軸:テストした27の各アプタマ;Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0027】
【図14】は時間を関数とした280ナノメートルでの吸光度測定曲線。
【0028】
【図15】はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲルの画像。レーン1は出発生成物画分、レーン2は溶出画分に対応する。
【0029】
【図16】はトランスジェニクウサギの乳汁中に産生させた組換え型ヒト因子VIIに対する固定したアプタマMapt2の結合曲線を表す図。矢印は各注射時間に対応し、[図16]の左から右に向かってそれぞれ下記の時間を表す:1:組換え型因子VIIの注射;2:1M-NaClを含む緩衝液の注射;3:2M-NaClを含む緩衝液の注射;4:3M-NaClを含む緩衝液の注射;5:50mMのトリス、10mM-EDTA緩衝の注射、X軸:時間(秒で表示);Y軸:応答信号(任意の単位(RU)で表示)。
【0030】
【図17】はトランスジェニクウサギの乳汁中に産生させた組換え型ヒト因子VIIに対する固定したアプタマMapt2の結合曲線を表す図。矢印は各注射時間に対応し、[図17]の左から右に向かってそれぞれ下記を表す:1:50%プロピレングリコール;2:10mM-EDTA。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、寸法が小さく、安価に合成できる、ヒト因子VIl/VIlaに特異的に結合することができる新規な手段を提供する。本発明のこの手段は、ヒト因子VII/VIIaの精製、ヒト因子VII/VIIaの検出、凝固不全(疾患)の予防または治療を目的とする医薬品の活性成分としての使用を含めた、上記手段が使われる全ての分野の用途で使用できる。
【0032】
より詳細には、以下で詳細に説明する共通した多くの構造上の特徴を有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合することができる単一鎖の核酸のファミリーを本発明者は見出した。
【0033】
以下で詳細に説明するように、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合することができる単一鎖の核酸、好ましくはDNA型のの核酸から成り、この核酸はそのヌクレオチド配列によって与えられる一定の構造上の特徴から、因子VII/VIIaに対する結合する上記結合特性を核酸に与える空間コンフォメーションを取ることができる。本発明の核酸はこのタイプの分子に対して当業者が一般的に使用している用語であるヌクレオチド「アプタマ(aアプタマ)」とよぶことができる。
【0034】
血液の凝固経路に関係する各種タンパクの結合可能なすることができる核酸(nucleic)アプタマは従来技術で公知で、Willebrand因子を介して結合するアプタマ(特許文献5)、アルファトロンビンを結合するアプタマ(特許文献2)またはトロンビン(非特許文献1)、第IX因子/IXaを結合するアプタマ(非特許文献2〜3、特許文献6、7)、ヒト因子VII/VIIaに結合する核酸アプタマ(特許文献6、7)、
【0035】
【特許文献5】国際特許第WO2008/150495号公報
【特許文献6】欧州特許第EP1972693号公報
【非特許文献1】Zhao et aI., 2008, Anal Chem,Vol. 80(19):7586-7593
【非特許文献2】Subash et al., 2006, Thromb Haemost, Vol. 95:767-771;
【非特許文献3】Howard et al., 2007, Atherioscl Thromb Vasc Biol, Vol. 27:722-727
【特許文献7】国際特許第WO 2002/096926号公報
【特許文献8】米国特許第US 7,312,325号明細書
【0036】
ヒト因子VII/VIIaに結合する核酸アプタマは非特許文献4、5にも記載されている。
【非特許文献4】Rusconi et al., 2000, Thromb Haemost, Vol. 84(5):841-848;
【非特許文献5】Layzer et al., 2007, Spring, Vol. 17: 1-11
【0037】
本発明の一つの対象は、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸にある。
【0038】
本明細書ではヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する単一鎖の核酸は「核酸アプタマ」「「アプタマ」「ヒト因子VII/VIIaに結合するアプタマ」または『抗−ヒトFVII/VIIaアプタマ」ともよばれる。
【0039】
「ヒト因子VII/VIIa」という用語は天然起源のヒト因子VII/VIIaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIaを含む。
【0040】
「ヒト因子VII/VIIa」はアミノ酸配列に関係して考慮する。すなわちタンパクがグリコシレート化されているか非グリコシレート化であるかとは独立しており、タンパクがグリコシレート化されている場合、グリコシル化のタイプは考慮しない。
【0041】
また、以下で詳細に示すように、本発明のヒト因子VIl/VIlaに特異的に結合する核酸の実施例では、5'末端から3'末端に下記:(i)〜(iii)の連続した配列を含む共通した構造上の特徴を有している:(i)長さが約20個のヌクレオチドの不変な特定ヌクレオチド配列、(ii)長さが40〜50個の可変なヌクレオチド配列、それに続く(iii)長さが約20個のヌクレオチドの不変な特定ヌクレオチド配列。可変なヌクレオチド配列(ii)は互いに非常に強いヌクレオチド配列同一性を有することができる。
【0042】
従って、本発明者は、(i)共通した構造上の特徴と(ii)共通した機能上の特徴との間の関係の存在を示すことができる、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合可能な核酸アプタマのファミリーを構築した。
【0043】
構造上の観点からは、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する上記の核酸または核酸アプタマのファミリーは下記の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを有する:
5'−[SEQID番号1]x−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]y−3' (I)
(ここで、
「SEQID番号X」はSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の核酸から成る群の中から選択される核酸から成り、
「x」は0〜1に等しい整数であり、
「y」は0〜1に等しい整数である)
【0044】
本発明のいくつかの実施例では、SEQID番号Xの酸は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50ヌクレオチドの長さを有する。
【0045】
本発明の他の実施例では、SEQID番号Xの酸は43、44、45、46、47、48または49ヌクレオチドの長さを有する。
【0046】
本発明の他の実施例では、SEQID番号Xの酸は43,44または45ヌクレオチドの長さを有するのが好ましい。
【0047】
既に述べたように、式(I)の核酸は長さが少なくとも15のヌクレオチドである。
【0048】
本発明のいくつかの実施例では、式(I)の核酸は長さが少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72、73、74、75、76、77、78、79、80または81ヌクレオチドであり、これは各長さを特定した核酸を含む。
【0049】
式(I)のアプタマを得る方法の実施例では連続した選抜段階でヒト因子VII/VIIaに特異的に結合す上記核酸のファミリーを構築し、可変配列SEQID番号Xを構造的にフレーミンクするSEQID番号1およびSEQID番号2を5'末端および3'末端に有する核酸アプタマのセットおよびサブセットを連続した各選抜サイクルで単離し、特徴付ける。
【0050】
本発明の核酸アプタマの主たるファミリーでは可変配列SEQID番号Xの全てが互いに少なくとも40%のヌクレオチド配列同一性を有する。このことは配列SEQID番号Xでは、ヒト因子VII/VIIaへの結合特性を保持するための構造上の制約はこれらの核酸アプタマの5'末端および3'末端に位置した配列に対する構造上制約よりも少ないことを意味している。
【0051】
整数「x」で、整数「y」が1に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−1)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]−3' (I−1)
【0052】
整数「x」が1に等しく、整数「y」が0に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−2)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号1]−[SEQID番号X]−3' (I−2)
【0053】
整数「x」が0で、整数「y」が0に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−3)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号X]−3' (I−3)
【0054】
従って、上記の核酸アプタマは配列SEQID番号3〜SEQID番号85番およびSEQID87〜SEQID番号100の核酸から成る群の中から選択される核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する核酸を含む。
【0055】
一般に、第二のヌクレオチドまたは核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有する第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%,51%,52%,53%,54%,55%,56%,57%,58%,59%,60%,61%,62%,63%,64%,65%,66%,67%,68%,69%,70%,71%,72%,73%,74%,75%,76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%または100%のヌクレオチド同一性を有する。
【0056】
配列SEQID番号Xを有する本発明の核酸のいくつかの実施例では、この配列SEQID番号XがSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の中の少なくとも1つと少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有する配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する核酸から成る群の中から選択される。
【0057】
配列SEQID番号Xを有する本発明の核酸のいくつかの実施例では、この配列SEQID番号Xが、配列SEQID番号3〜SEQID番号85番およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも1つと少なくとも41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%,56%,57%,58%,59%,60%,61%,62%,63%,64%,65%,66%,67%,68%,69%,70%,71%,72%,73%,74%,75%,76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有する核酸からなる群の中から選択される。
【0058】
上記のことから、本発明は上記定義の式(I)のシリーズの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する単一鎖の核酸のファミリーを含む。
【0059】
本発明で2つの核酸間の「百分比同一性」は整列した2つの配列を比較窓を介して最適な方法で比較し決定される。
【0060】
従って、比較窓中にあるヌクレオチド配列の一部は、2つの配列間で最適なアランメントが得られるように、参照配列(付加または欠失がない)と比較して付加または欠失(例えばギャップ)を有する。
【0061】
「百分比同一性」の計算方法では、比較した2つの配列で全く同じ核酸塩基が得られた位置の数を求め、2つの核酸塩基間で同一性のある位置の数を比較窓中の位置の全数で割り、得られた結果に100を掛けることで、2つの配列の百分比ヌクレオチド同一性を求める。
【0062】
比較用の最適配列アランメントは公知のアルゴリズムを使用したコンピュータで実行できる。
【0063】
百分比配列同一性はCLUSTAL Wソフトウェア(バージョン1.82)を使用して決定するのが好ましい。その設定パラメータは以下の通り:
(1)CPU MODE=ClustaIW mp;
(2)ALIGNMENT=「full」;
(3)OUTPUT FORMAT=「aln w/numbers」;
(4)OUTPUT ORDER=「alignment」;
(5)COLOR ALIGNMENT=「no」;
(6)KTUP(word sizw)=「default」;
(7)WINDOW LENGTH=「default」;
(8)SCORE TYPE=「percent」;
(9)TOPDIAG=「default」;
(10)PAIRGAP=「default」;
(11)PHYLOGENETIC TREE/TREE TYPE=「none」;
(12)MATRIX=「default」;
(13)GAP OPEN=「default」;
(14)END GAPS=「default」;
(15)GAP EXTENSION=「default」;
(16)GAP DISTANCES=「default」;
(17)TREE TYPE=「分岐図」
(18)TREE GRAPH DISTANCES=「hide」。
【0064】
[図1]に示した本発明の核酸の構造をベースにして当業者は配列SEQID番号Xの可能な特定配列を有限数のヌクレオチドコレクションの中から簡単に決定することができる。
【0065】
例えば、本発明の核酸アプタマのいくつかの実施例では、当業者は上記の式(I)の核酸アプタマの上記構造上の定義を基礎として、例えば、適当な命令セットとメモリーをロードしたデジタルコンピュータを用いて配列SEQID番号Xに対して可能な全ての配列を自動的に、簡単に発生させることができる。当業者はそれから必要に応じて上記デジタルコンピュータを用いて、(i)空間構造モデルが[図1]の核酸アプタマと類似または同一な配列と(ii)[図1]の核酸アプタマの構造とは異なる核酸アプタマのそれとをそれぞれ自動的に決定することができる。
【0066】
[図1]の核酸アプタマと類似または同じ空間構造を有する核酸アプタマは、この核酸アプタマに関して上記で記載した連続したループとステムとを有するものを含む。
【0067】
当業者は式(I)の核酸の空間構造を決定するために、そのヌクレオチド配列の説明を基礎にしてZukerに記載のコンピュータープログラムmFold(登録商標)を用いて構造モデルを作ることができる(2003、Nucleic Acids Research, Vol. 231(13):3406-3413)。これは下記ウエブアドレスからも利用できる:http://mfold.bioinfo.rDi.edu/.)
【0068】
コンピュータープログラムmFoldは[図1]に示す構造を得るのに用いたパラメータと同じもの、すなわち下記条件を用いるのが好ましい:
(i)直鎖配列のDNA、
(ii)フォールディング温度:25℃
(iii)イオン条件:[Na+]:150mM;[Mg++]:4mM
(iv)修正タイプ:オリゴマ
(v)百分比サブオプティマル数:2
(vi)計算保持数の上限:50
(vii)2つの塩基対間の最大距離:無制限
(viii)他のパラメータのためのデフォルト値の使用。
【0069】
次いで当業者は(i)[図1]のアプタマの構造モデルと(ii)作成した式(I)のアプタマの構造モデルとを比較する段階を実行し、構造モデルが[図1]に示すアプタマと類似または同じであるれば、札性した式(I)のアプタマを選択する。
【0070】
いずれにせよ、新たに発生させた式(I)のアプタマの選択抜がポジティブであることを確認するために当業者は例えば本明細書に記載の説明、特に実施例に記載の特定方法に従ってヒト因子VII/VIIa結合特性を検査することができる。
【0071】
本発明の核酸アプタマのいくつかの好ましい実施例では、核酸アプタマは式(I)の核酸と少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含み、それは式(I)の核酸と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの15の連続したヌクレオチドを含むアプタマを含む。
【0072】
式(I)の核酸の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の中の少なくとも1つと少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有し、これには配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも1つと少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有する配列が含まれる。
【0073】
式(I)の核酸の他の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される。
【0074】
式(I)の核酸の他の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3、5、6、10、11、14、15、16、17、19、20、23、24、25、27、28、29、30、32、33、34、35、36、37、38、39および40から成る群の中から選択される。
【0075】
本発明では、ヒト因子VIl/VIlaに結合する核酸はヒト因子VII/VIIaと接触した時にヒト因子VII/VIIaと錯体を形成することができる単一鎖の核酸から成る。
【0076】
従って、ヒト因子VII/VIIaと結合した核酸は、核酸なおよびタンパクパートナーをそれぞれ接触させる前段階後に検出可能なヒト因子VII/VIIaとの錯体を含む。
【0077】
ヒト因子VII/VIIaと結合した核酸が形成する錯体の検出は当業者に公知の方法、例えば実施例に示すBiacore(登録商標)を含む表面プラスモン共振検出技術を用いて簡単に実行できる。また、当業者は実施例に示すようなELISA型の従来法によって核酸とヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を簡単に検出することもできる。
【0078】
実施例に示るように、式(I)の核酸は任意の種類のヒト因子VII/VIIaと強い結合能を有している。特に、式(I)の核酸は天然のヒト因子VllNllaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIaに結合する。
【0079】
いかなる理論に拘束されるものではないが、実施例が示す結果は、本発明の式(I)の核酸は一定の種類のグリコシル化(glycosylation)を有するヒト因子VII/VIIaに結合する強い能力を有すると考えられる。換言すれば、式(I)の核酸はヒト・血漿を含む天然由来の因子VII/VIIaだけでなく、トランスジェニック動物、好ましくは血漿で天然に産出しされるヒト因子VII/VIIaのグリコシル化のタイプとはグリコシル化の種類が異るウサギを含む種々の生物種のトランスジェニク哺乳類で生産した組換え型ヒト因子VIl/VIlaにも効果的に結合できると考えられる。
【0080】
本発明でヒト因子VII/VIIaに「特異的に」結合する核酸はヒト以外の哺乳類のゲノムによってコードされる因子VII/VIIa、例えばウサギ・因子VII/VIIaを含む他のタンパクに結合する能力よりも大きな結合能力をヒト因子VII/VIIaに対して有する核酸から成る。
【0081】
本発明では、第1の核酸は第2の核酸よりヒト因子VII/VIIaに結合する能力が大きい。すなわち、結合を検出する上記の方法の任意の一つを使用した時に、同じテスト条件下で、第1の核酸で得られる結合信号の値は第2の核酸で得られるものに比較し統計学的に大きい。例えば、Biacore(登録商標)法を用いた結合検出法では、第1の核酸のヒト因子VII/VIIaに結合する能力は第2の核酸のそれより強く、計測単位とは無関係に、第1の核酸の共振信号値は第2の核酸で測定される信号値より統計学的に大きな共振が得られる。2つの別々の「統計学的」な計測値で両者の間に使用した結合検出方法の測定誤差より大きな違いがある。
【0082】
実施例に示すように、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の核酸のキャパシティがテストされた。
【0083】
一般に、式(I)の核酸はヒト因子VII/VIIaに対する解離定数値が最大で500nM、多くの場合最大で200nMである。
【0084】
式(I)の核酸はヒト以外の哺乳類由来の任意の因子VII/VIIaとの結合能力よりも大きなヒト因子VllNllaに対する結合能力を有することが示された。特に、式(I)の核酸は天然または組換え型を含む任意タイプのヒト因子VII/VIIaに結合する強い能力を有するにもかかわらず、ウサギ因子VII/VIIaを含むヒト以外の哺乳類のゲノムによってコードされる因子VII/VIIに結合する能力はゼロか、弱い。
【0085】
式(I)の核酸のこの有利な特徴は実施例、特に配列SEQID番号Xが配列SEQID番号85を含む式(I)の核酸を含む配列SEQID番号86の核酸で示されている。そのPEGおよびビオチンとの結合後の構造は[図9]に示してある。
【0086】
すなわち、配列SEQID番号86の式(I)の核酸では、Biacoree(登録商標)法に従って測定したヒト因子VII/VIlaへの結合能力(解離定数Kdで表す)の値は約100nMである。さらに、式(I)のこの核酸はヒト血漿因子VII/VIIaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIa、例えばトランスジェニクウサギで産生したものの両方に結合する能力を有し、その値は同じ程度である。
【0087】
さらに、式(I)の核酸とヒト因子VII/VIIaとの間の錯体は化学量論である。すなわち、錯体化したヒト因子VII/VIIaの分子数に対する式(I)の核酸の分子数の比はほぼ1:1、特に1:1である。
【0088】
従って、本発明の他の観点から、ヒト因子VII/VIIaに「特異的に」結合する式(I)の核酸のキャパシティは、ヒト因子VII/VIIaおよび非ヒト因子VII/VIIaにたいするそれぞれの解離定数Kdの比として表すこともできる。
【0089】
本発明の他の特徴から、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する式(I)の核酸のキャパシティは、下記の条件(A)で表すことができる:
ヒトKd/非ヒトKd<0.01 (A)
(ここで、
「ヒトKd」は式(I)での核酸のヒト因子VII/VIIaに対する解離定数(モル単位表示)であり、
「非ヒトKd」は式(I)の核酸のヒト以外の因子VII/VIIaに対する解離定数で、同じモル単位で表示される。
【0090】
従って、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸では、ヒトKd/非ヒトKd比が0.01以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.001以下である。
【0091】
ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の式(I)の核酸のの特徴から、本発明のアプタマ核酸はヒト因子VII/VIIaとヒト以外の哺乳類に由来する非ヒト因子VII/VIIa、例えばウサギ・因子VII/VIIaとを区別するのに有利に使用できる。
【0092】
特に、本発明の式(I)の核酸は、ヒト以外の哺乳類に由来する因子VII/VIIaを含む材料から出発しか錯体からヒト因子VII/VIIaを精製する手段として遊離に使用することがができる。特に、式(I)の核酸は、ヒト因子VII/VIIaに対してトランスジェニクであるウサギからのバイオ液体(ウサギが天然に産生する因子VII/VIIaを含む)の組換え型因子VII/VIIaを精製する手段で使用できる。
【0093】
実施例に示すように、式(I)の核酸の他の特徴は、ヒト因子VII/VIIaとの錯体がこの錯体を金属カチオン−キレート剤と培養することによってヒト因子VII/VIIaを遊離する能力にある。特に、式(I)の核酸と錯体を形成した因子VII/VIIaの分子はEDTAのような金属カチオン−キレート剤と接触すると錯体からリリースされる。
【0094】
従って、本発明の他の観点から、ヒト因子VII/VIIaに対する式(I)の核酸の結合は、金属カチオン−キレート剤との接触、例えばEDTAとのに接触によって分離(解離)できる。
【0095】
本発明の式(I)の核酸のこの追加の特徴は、ヒト因子VII/VIIaを精製する手段としての上記核酸を使用する上で特に有利である。特に、この種の精製用途では、式(I)の核酸との錯体として固定されたヒト因子VII/VIIaを金属カチオン−キレート剤と接触させるか培養することで精製した形で簡単に回収でき、ヒト因子VII/VIIaを少なくとも部分的に変成する公知の物質の使用、例えば尿素の使用や酸性条件の使用は不要である。
【0096】
ヒト因子VII/VIIaを精製する手段としての使用では、本発明の式(I)の核酸を固体基質に固定(immobilize)するのが好ましい。この固体基質には固体粒子、クロマトグラフィ基質、その他が含まれる。核酸を各種固体基質上に固定する方法は当業者に周知である。
【0097】
固体基質はアガロースまたはセルロースまたは合成ゲル、例えばアクリルアミド、メタクリレートまたはポリスチレン誘導体のゲルのアフィニティークロマトグラフィカラムまたは表面プラスモン共振に適したチップ、ポリアミドのようなメンブレン、ポリアクリロニトリルまたはポリエステル・メンブレンまたは磁気またはパラマグネティクビーズすることができる。
【0098】
ヒト因子VII/VIIaを精製する手段として使用する本発明の式(I)の核酸はその化学構造中にスペーサ手段を含み、さらに必要に応じて固体基質上に固定するための手段を含むのが好ましい。
【0099】
従って、本発明は下記の式(II)を特徴とするヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物にも関するものである:
[SPAC]−[NUCL] (Il)、
(ここで、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaと特異的に結合する核酸を表す。
【0100】
上記化合物はヒト因子VII/VIIaを精製する手段の特定実施例を構成する。
【0101】
「スペーサ鎖」(式(Il)の化合物では[SPAC])で表示)は公知の任意のタイプにすることができる。このスペーサ鎖の機能は核酸[NUCL]を上記化合物が固定されている固体基質の表面から物理的に離し、
すことにある。核酸[NUCL]が固定される固体基質の表面に対して相対的に動けるようすることにある。このスペーサ鎖は固体基質が式(I)の核酸にあまり近付きすぎて核酸とそれに接触されるヒト因子VII/VIIa分子との間の結合が妨げる立体障害を制限または防ぐ役目をする。
【0102】
式(II)の化合物でのスペーサ鎖は核酸[NUCL]の5'末端または3'末端に結合されるのが好ましい。
【0103】
スペーサ鎖はアプタマの一端と固体基質とに結合されるのが好ましい。スペーサとのこの構造はアプタマを固体基質上に直接固定しないという利点がある。スペーサ鎖は非特異性のオリゴヌクレオチドまたはポリエチレングリコール(PEG)であるのが好ましい。スペーサ鎖が非特異性のオリゴヌクレオチドから成る場合、そのオリゴヌクレオチドは長さが少なくとも5つのヌクレオチド、好ましくは長さが5〜15のヌクレオチドから成るのが好ましい。
【0104】
スペーサ鎖がポリエチレングリコールから成る式(II)の化合物の実施例の場合、このスペーサ鎖はPEG(C18)タイプのポリエチレングリコールを含む。
【0105】
アプタマを固体基質に直接またはスペーサ鎖に固定する場合、核酸[NUCL]を種々の化学基、例えば核酸を共有結合で固定する基、例えばチオール、アミンまたは固体基質に存在する化学基と反応可能な他の任意の基で化学的に修正することができる。他の実施例では、スペーサ鎖はそれ自身を固体基質に固定することができる。この場合、必要に応じてスペーサを適切な化学基で変成することができる。他の実施例では可動基質上に核酸アプタマを有する化合物を固定させる化合物にスペーサ鎖を結合させる。
【0106】
従って、本発明は下記の式(III)であることを特徴とするヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物に関するものである:
[FIX]−[SPAC]−[NUCL] (III)
(ここで、
[FIX]は基質上に固定するための化合物を表し、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドからなるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【0107】
上記の式(III)の化合物はヒト因子VII/VIIaを精製する手段の実施例を構成する。
式(Il)または式(III)のヒト因子VII/VIIaを精製する手段は固体基質に結合された形であるのが好ましい。
式(III)の化合物で、化合物[FIX]は(i)固体基質の表面材料と一つ以上の共有結合を形成することができる化合物および(ii)弱い非共有結合、例えば水素結合、静電気力またはファンデルワールス力によって固体基質を拘束できる化合物の中から選択される化合物から成る。
【0108】
化合物[FIX]の第1の種類は二官能性カップリング剤、例えばグルタールアルデヒド、SlAB、その他のSMCCを含む。
【0109】
SlABは下記式(I)の化合物で、下記文献に記載されている:
【非特許文献6】Hermanson G.T. 1996, Bioconjugate techniques, San Diego: Academic Press, pp 239-242
【0110】
【0111】
化合物SlABは酢酸沃素およびスルホ−NHSエステル基を有する2つの反応基を有し、それぞれアミノ基およびスルフヒドリル基と反応する。
【0112】
化合物SMCCは下記文献に記載されている。
【非特許文献7】Samoszuk M.K. et al. 1989, Antibody, Immunoconjugates Radiopharm., 2(1): 37-46
【0113】
【0114】
化合物SMCCはそれぞれスルホ−NHSエステル基およびマレイミド基から成る2つの反応基を有し、それぞれアミノ基およびスルフヒドリル基と反応する。
【0115】
化合物[FIX]の第2の種類は固体基質に存在すアビジンまたはストレプトアビジン分子に非共有結合で結合可能なビオチンを含む。
【0116】
他の実施例では、スペーサ鎖を介して固体基質に固定した後アプタマを変成し、その遊離末端(スペーサに結合されてない末端)を例えば化学的に変成されたヌクレオチドにすることができる(例えば2'−O−メチルまたは2'−フルオロピリミジン、2'−リボプリン、ホスホアミディテ、逆ヌクレオチドまたは化学基(PEG、ポリ陽イオン、コレステロール)。これに限定されるものではない)。これらの変成でアプタマを酵素分解から保護することができる。
【0117】
固体基質はアガロースからまたはセルロースまたは合成ゲルから誘導されるゲルから成るアフィニティークロマトグラフィカラム、アクリルアミド、メタクリレートまたはポリスチレン誘導体、表面プラスモン共振に適したチップ、メンブレン、例えばポリアミド、ポリアクリロニトリルまたはポリエステルのメンブレンまたは磁気ビーズまたは正磁気ビーズにすることができる。
【0118】
本発明は下記(i)と(ii)との間の錯体にも関するものである:
(i)式(I)の核酸、式(II)の化合物および式(III)の化合物から選択される物質、そして、
(ii)ヒト因子VII/VIIa
【0119】
本発明の他の対象は、各々が核酸アプタマから成る(または含む)複数の分子がグラフトされている固体基質材料から成ることを特徴とするヒト因子VII/VIIaを固定化するための基質にある。上記分子は(a)式(I)の核酸、(b)式(II)の化合物および(c)式(III)の化合物である。
【0120】
上記基質は、ヒト因子VII/VIIaを固定する必要のある全ての用途で使用でき、これには因子VII/VIIaを精製するための用途と、ヒト因子VII/VIIaを検出するための用途とが含まれる。
【0121】
ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の核酸アプタマを固定する基質の製造方法は実施例に示してある。本発明実施例では本発明のアプタマをヒトFVII/VIIaを捕捉するための薬剤として従ってよされ、サンプル中のヒトFVII/VIIaを精製または検出することができる。
【0122】
従って、本発明は、ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを式(I)の核酸、式(II)の化合物および式(III)の化合物の中から選択される物質を予め固定した固体基質と接触させる段階を含む、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定する方法にも関するものである。この方法は求められる技術対象に従って式(I)の核酸の分子と錯体を形成した固定されたヒト因子VII/VIIaの分子を回収する追加の段階を含むことができる。因子VII/VIIaを回収するこの追加の段階は式(I)の核酸と因子VII/VIIaとの錯体を金属カチオン−キレート剤、例えばEDTAと接触させてる段階から成る。
【0123】
従って、本発明の他の対象は、下記(a)と(b)の工程から成るヒト因子VII/VIIaの精製方法にある:
(a)ヒト因子VII/VIIaから成っているサンプルを式(I)の核酸、式(II)の化合物または式(III)の化合物または上記定義の固体基質と接触させて、(i)上記の核酸または基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間に錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成された錯体からヒト因子VII/VIIaを遊離させて、精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
【0124】
アプタマが固定された固体基質を使用するアフィニティークロマトグラフィによるタンパク精製方法を実行する際には当業者は下記文献に記載の方法を参照できる。
【非特許文献8】Romig et al. 1999, J Chomatogr B Biomed Sci Apl, Vol. 731(2): 275-284
【0125】
段階(a)でMgCl2濃度が低い緩衝液(バッファー)またはMgCl2を含まない緩衝液を使用したきに第VII因子の捕獲条件が改善されることが実施例は示している。
【0126】
「MgCl2濃度が低いMgCl2濃度が低い」とは最終MgCl2濃度が1mM以下である緩衝液を意味する。
【0127】
MgCl2濃度が1mM以下である緩衝液はMgCl2濃度が0.5mM以下、0.1mM以下、0.05mM以下および0.01mM以下、好ましくは0mMである緩衝液を含む。
【0128】
本発明の特定実施例の方法では、段階(a)の次で段階(b)の前に段階(a')を有する。この段階(a')は洗浄緩衝液で親和性基質を洗浄する段階から成る。好ましくは段階(a')で親和性基質を洗浄する間にイオン強度を増加させる。すなわち、段階(a)で使用した緩衝液のイオン強度と比較してイオン強度を増加させた洗浄緩衝液を使用する。段階(a')で使用する洗浄緩衝液のイオン強度は段階(a)で使用するイオン強度より2〜500倍大きいのが好ましい。好ましくは、段階(a')で使用する洗浄緩衝液のイオン強度を段階(a)で使用するイオン強度より100〜500倍、好ましくは200〜500倍大きくする。
【0129】
本発明実施例では、段階(a')の洗浄で高いイオン強度を有する洗浄緩衝液、特に、高いNaCl濃度を有する緩衝液を使用することで、親和性基質に対する第VII因子の結合性に影響を及ぼさずに、検出可能な方法で、非特異的に親和性基質に結合している物質を効果的に除去することができることが示されている。
【0130】
最終NaCl濃度が少なくとも1Mである洗浄緩衝液を段階(a')で使用するのが好ましい。
【0131】
本発明では最終NaCl濃度が少なくとも1Mである洗浄緩衝液は最終NaCl濃度が少なくとも1.5M、2M、2.5Mまたは少なくとも3M1Mである洗浄緩衝液を含む。
【0132】
本発明方法の段階(a')で使用する洗浄緩衝液の最終NaCl濃度は最大で3.5Mであるのが好ましい。本発明方法の段階(a')で使用する洗浄緩衝液の最終NaCl濃度は1.5〜3.5の間、好ましくは2〜3.5間、好ましくは2.5〜3.5の間、例えば3〜3.5の間にするのが有利である。
【0133】
本発明実施例ではさらに、段階(a')の。高い疎水性の洗浄緩衝液、特に高濃度のプロピレングリコールを使用することで、親和性基質に対する第VII因子の結合性に影響を及ぼさずに、検出可能な方法で、親和性基質に非特異的に結合した物質を効果的に除去することができるたとが示された。
【0134】
従って、段階(a')では少なくとも20%(v/v)の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液を使用するのが好ましい。
【0135】
本発明では、少なくとも20%の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液は、(洗浄緩衝液の全容積に対する)容積で少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または少なくとも60%の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液を含む。
【0136】
段階(a’)で使用する洗浄緩衝液は最大で50%の最終プロピレングリコール含量を有するのが好ましい。段階(a’)で使用する洗浄緩衝液は20%〜50%の間、好ましくは30%〜50%の間の最終プロピレングリコール含量を有するのが好ましい。
【0137】
本発明の特定実施例では、段階(a’)で使用する洗浄緩衝液はNaClとプロピレングリコールとを含む。
【0138】
精製法の実施例では、段階(b)を親和性基質を二価のイオン性キレート剤、好ましくはEDTAを含む溶出緩衝液と接触させて実行する。
【0139】
溶出緩衝液は例えば少なくとも1mMかつ最大で30mMの最終EDTA濃度を含むことができる。
【0140】
「少なくとも1mM」とは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10mMを含む。
【0141】
「最大で30mM」は29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14,13、12またはllmMを含む。
【0142】
本発明の核酸アプタマう有する親和性基質と、この親和性基質でヒト因子VIIを精製する方法は実施例に示してある。
【0143】
一般に、本発明のアプタマが固定さる固体基質は、濾過基質、チップ用シリコン基質、メンブレン等用に一般的な構造および組成を有する任意の基質を含む。特に、固体基質は樹脂、アフィニティークロマトグラフィカラム樹脂、ポリマビーズ、磁気ビーズ、その他を含む。特に、固体基質はガラスまたは金属、例えば鋼、金、銀、アルミニウム、銅、珪素、ガラスまたはセラミックをベースにした材料を含む。特に、固体基質はポリマー材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ弗化ビニリデンおよびこれらの組合せを含む。
【0144】
固体基質は付着、結合、錯体形成、固定化またはアプタマとの相互作用を容易にする材料で被覆されていてもよい。
【0145】
本発明の実施例では、固体基質は表面を金の層、カルボキシメチル化処理した層、デキストラン、ストレプトアビジン、コラーゲン、アビジン、その他の層で被覆されたガラススライドにすることができる。
【0146】
本発明のアプタマは付着コーテング、例えば上記の共有結合の生成または非共有結合(例えば水素結合、静電気力、ファンデルワールス力、その他)による会合反応によって固体基質上に固定できる。
【0147】
本発明で「親和性基質」とは本発明で定義の核酸アプタマが固定された固体材料から作られた基質を意味する。
【0148】
本発明の実施例にはアプタマが非共有結合によって固定された固体基質が基されている。
【0149】
本発明実施例にはストレプトアビジン分子の層で被覆されたガラススライドと、非共役ビオチン/ストレプトアビジン会合で基質上に固定された、ビオチン分子と共役した本発明のアプタマを有する固体基質が記載されている。
【0150】
本発明実施例は、ストレプトアビジン分子の層で被覆されたポリスチレン材料から成る固体基質と、非共役ビオチン/ストレプトアビジン会合で基質上に固定されたビオチン分子に本発明のアプタマが共役結合したものが記載されている。
【0151】
本発明実施例では、本発明アプタマは下記文献に記載のようにアフィニティークロマトグラフィ、通電クロマトグラフィおよびキャピラリ電気泳動に適した固体基質に固定することができる。
【非特許文献9】Ravelet et al. 2006, J Chromatogr A, Vol. 117(1): 1-10
【非特許文献10】Connor et al. 2006, J Chromatogr A, Vol. 111(2): 115-119
【非特許文献11】Cho et al. 2004, Electrophoresis, Vol.25(21-22) : 3730-3739
【非特許文献12】Zhao et al. 2008, Anal Chem, Vol. 80(10): 3915-3920
【0152】
長さが少なくとも15ヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する式(I)のアプタマまたは式(Il)の化合物または式(III)の化合物はヒトFVII/VIIaを捕捉するための薬剤として検出または治療および装置で有利に使用できる。
【0153】
本発明のさらに他の観点から、本発明は下記(a)と(b)の工程から成る、サンプル中のヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法にも関するものである:
(a)(i)式(I)の核酸または式(II)の化合物または式(III)の化合物またはこれらの核酸または化合物の分子が固定されている固体基質を(ii)サンプルと接触し、
(b)(i)式(I)の核酸、式(II)の化合物または式(III)の化合物または上記基質と(ii)因子VII/VIIaとの間に形成された錯体を検出する。
【0154】
本発明の実施例には、固体基質に予め固定した本発明のアプタマとヒトFVII/VIIaとを検出する方法の実施例が記載されている。
【0155】
本発明の検査方法を実行する場合に使用する固体基質は、ヒト因子VII/VIIaの精製方法に関して上記した固体基質から選択できる。
【0156】
ヒト因子VII/VIIaを検出する方法の実行または装置では、当業者は特下記文献に記載の方法を使用できる。
【特許文献9】欧州特許第EP1972693号公報
【特許文献10】国際特許第WO2008/038696号公報
【特許文献11】国際特許第WO2008/025830号公報
【特許文献12】国際特許第WO2007/0322359号公報
【0157】
本発明実施例では(i)上記核酸または固体基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する段階(b)が、実施例に記載のように、表面プラスモン共振信号を測定して行われる。
【0158】
本発明の他の実施例では、ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する段階(b)が、が形成されているであろう錯体をヒト因子VII/VIIaリガンドと接触させ、そのリガンドを検出する。本発明実施例では、酵素(実施例ではワサビペルオキシダーゼ)でラベル化したモノクローナルまたはポリクローナルの抗ヒトFVllNlIa抗体を、ELISA型のアッセイで従来から使用されているように、ヒト因子の検出リガンドとして用いる。
【0159】
ヒト・因子VII/VIIaを含むまたは含む多能性のあるサンプルはヒト因子VII/VIIaを含む液体試料にすることができ、ヒト因子VII/VIIaとヒト以外の哺乳類からの因子VII/VIIaの分子を含む液体試料を含むのが有利である。上記精製方法または検査方法の実施例では、サンプルは生物学的溶液、例えば体液、細胞、細胞物質、組織、組織材料、器官または全器官から成る。
【0160】
精製方法または検査方法の実施例では、前記サンプルは動物由来の液体の生物学的溶液、例えば血液、血液誘導物、哺乳動物乳汁または哺乳類の乳汁誘導物から成る。このサンプルは血漿、血漿凍結賃源物、精製乳汁またはその誘導物から成ることができる。
【0161】
精製方法または検査方法の実施例では、前記サンプルはヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク動物由来のものである。この溶液は哺乳類の乳汁またはヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク哺乳類からの乳汁の誘導物であるのが好ましい。本発明でトランスジェニック動物は(i)ヒトヒト以外の哺乳類、例えばウシ、ヤギ、ウサギ、ブタ、サル、ラットまたはハツカネズミ、(ii)鳥類、(iii)昆虫、例えば蚊、ハエまたはカイコを含む。本発明の好ましい実施例でのヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク動物はヒト以外のトランスジェニク哺乳類、好ましくはヒト因子VIINlIa用トランスジェニク雌ウサギ(doe rabbits)。トランスジェニク哺乳類はトランスジェニク哺乳類の乳汁中にトランスジェニクタンパクを発現する特定プロモータの制御下にあるヒト因子VII/VIIaをコードする核酸を含む発現カセットをゲノムに挿入して、乳腺中に組換え型因子VII/VIIaを生産するのが好ましい。
【0162】
トランスジェニック動物の乳汁中にヒト因子VII/VIIaを生産する方法は下記工程から成ることができる:乳汁中に天然に分泌されるタンパクのプロモータの制御下にあるヒト因子VIINlIaをコードする遺伝子(例えばカゼイン・プロモータ、β−カゼイン・プロモータ、ラクトアルブミン・プロモータ、βラクトグロブリン・プロモータまたはWAPプロモータ)を有するDNA分子をヒト以外の哺乳類の胎児に一体化し、その胎児を同じ生物種の哺乳動物の雌下に置く。胎児から哺乳類が十分に成長すると、哺乳類から乳汁分泌が誘発され、それから乳汁を集める。この乳汁はヒト因子VII/VIIaを含む。
【0163】
ヒト以外の哺乳動物の雌の乳汁中でタンパクを調製する方法の例は下記文献に記載されている。
【特許文献13】欧州特許第EP0の527063号公報
【0164】
この特許の方法で本発明のタンパクを生産することができる。WAP(ホエー酸性タンパク)プロモータはWAP遺伝子のプロモータを含む配列を導入して調整できる。このプラスミドはWAPプロモータの制御下に置かれた異種遺伝子を受けることが可能な状態で調製できる。上記プロモータおよび本発明のタンパクをコードする遺伝子を含むプラスミドを用い、ウサギ胎児の雄の前核へマイクロインジェクションしてトランスジェニクウサギを得ることができる。それから胎児をホルモン調節した雌の輸卵管に移植する。トランスジェンの存在は得られた若いトランスジェニクウサギから抽出したDNAを用してサザン法によって確認される。動物の乳汁濃度は特定の放射性免疫アッセイで評価される。
【0165】
ヒト以外の哺乳動物雌の乳汁中でタンパクを調製する方法はかの文献にも記載されている。例えば特許文献14(トランスジェニクなハツカネズミ)および特許文献15(トランスジェニク哺乳類のフォンビルブラント因子の生産)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【特許文献14】米国特許第US7,045,676号明細書
【特許文献15】欧州特許第EP1739170号公報
【0166】
本発明の他の態様によって、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸は、例えばVIl因子/組織因子錯体の形成を抑制することによって因子VIlaによる因子Xの活性化を阻止する必要のある生理的状況下でインビボで使用できる。
【0167】
換言すれば、本明細書に定義のアプタマ核酸は医薬品の血液凝固阻止剤活性成分として予防的または治療的に使用できる。
【0168】
特に、現在の説明において定義したアプタマ核酸が、予防であるか治療の血液凝固阻止剤活性成分として、特に、静脈血栓症、動脈の血栓症、ポスト−外科の血栓症、冠状動脈バイパス・グラフト鎖(CABG)と関連がある無秩序、行程、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、腫瘍を含む凝固無秩序の処置のために使われることができる転移、軽いまたは激しい炎症反応、腐敗菌激突、低血圧、急性呼吸不全症候群(ARDS)、肺のembohsms、播種性血管内凝固(DIC)、脈管のreste番号ses、プレートレット鉱床、心筋梗塞、脈管形成、そして、血栓症を開発する危険を有する人類または女性のあらゆる病気予防の処置。
【0169】
本発明の一つの対象は、長さが少なくとも15個のヌクレオチドである本明細書で定義したヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸と、一種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬品組成物にある。
【0170】
医薬品組成物中での本発明の抗ヒトFVII/FVIIaアプタマ核酸の量は、患者にこの活性成分の有効量を投与できるように調節される。本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマの投与量は医師または薬剤師が容易に決定できる。一般に、投与される活性成分の量は年齢、医学条件および患者の性、病気の程度、病気の進行度に応じて当業者が容易に決定できる。
【0171】
一般に、医薬品組成物は抗ヒトFVII/VIIaアプタマの量が単位供与量で1ナノグラムから100ミリグラム、好ましくは100ナノグラムから10ミリグラムとなる量である。
【0172】
一般に、本発明の医薬品は組成物の全重量に対して0.01重量%から99.9重量%までの抗FVII/VIIaアプタマまたは複数の抗FVII/VIIaアプタマの組合せと、99.9重量%から0.01重量%までの賦形剤または賦形剤の組合せとからなる。
【0173】
本発明の他の実施例では、医薬品組成物は1種、2種、3種、4種、5種または6種の別々の抗FVII/VIIaアプタマの組合せから成る。
【0174】
本発明の医薬品組成物の調製では当業者はレミントンハンドブックを参照することができる。
【0175】
本発明の医薬品組成物は非経口、局所投与で予防的または治療で使用できる。従って、本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマは投与に適した形、例えば液体の形に調製されるか、凍結乾燥にすることができる。本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマの医薬品組成物は薬学的に許容される賦形剤および/またはビヒクル(好ましくは水溶性)を含むことができる。薬学的に許容される多くの賦形剤および/またはビヒクル、生理学的条件を再生するの必要な薬剤、例えば水、緩衝水、食塩水、グリシン溶液およびこれの誘導体、例えば、緩衝剤およびpH調整剤、界面活性剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化カルシウム等使用できるが、これらに限定さるものではない。医薬品組成物は当業者に周知の方法で殺菌できる。一般に、本発明の医薬品組成物を生産するには当業者は下記文献を参照することができる。
【非特許文献13】European Pharmacopeiaの最新版、例えば2005年1月発行のEuropean Pharmacopeia第5版および2007年6月発行のEuropean Pharmacopeia第6版
【0176】
活性成分としてアプタマを含む医薬品組成物の生産のために当業者は下記文献を参照できる。
【特許文献16】国際特許第WO2007/058801号公報
【特許文献17】国際特許第WO2005/084412号公報
【特許文献18】国際特許第WO2004/047742号公報
【特許文献19】国際特許第WO2008/150495号公報
【0177】
本発明の医薬品組成物の実施例では、抗ヒトFVII/VIIaアプタマ活性成分を単独で用いるか、一種以上の他の薬学的に活性な分子、例えば一種以上の他の血液凝固阻止剤活性成分と一緒に使用できる。
【0178】
本発明はさらに、長さが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸の、医薬品としての使用にも関するものである。
【0179】
本発明はさらに、長さのが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸の、凝固不全の治療用医薬品の生産での用にも関するものである。
【0180】
本発明はさらに、長さのが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸のも、凝固不全の治療での使用にも関するものである。
【0181】
本発明の他の対象は、上記定義の組成物を凝固不全の予防または治療を必要とする患者に抗ヒトVII/VIIaアプタマ医薬品を投与する段階を有する凝固不全の予防または治療方法にある、
【0182】
一般に、本発明定義の抗ヒトVII/VIIaアプタマ剤の一日当たりの投与量は80kgの体重の患者で1ナノグラムから10ミリグラムまで、好ましくは100ナノグラムから100ミリグラムである。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0183】
実施例1
基質上に固定したヒト因子VIl/VIlaによる本発明アプタマ核酸の捕獲
血漿由来の精製されたヒト因子VII/VIIa分子を固定した固体基質を製造した。NHS−EDCで活性化したカルボキシメチルデキストランにヒト第VII因子を固定した。これはFVII/VIIa中に存在するフリーなアミンと結合する。すなわち、ヒト因子VIl/VIlaが2743RU(1RUは単位mm2当たり生成物が約1pg固定されることに対応する)の固定化度で固定した。
【0184】
本発明の核酸アプタマ(純度:99%)(それぞれMapt2アプタマ(SEQID番号86)、Mapt3アプタマ(SEQID番号41)およびMapt7アプタマ(SEQID番号58)をランニング緩衝液液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)中に希釈して3つのアプタマ・サンプルを得た。
【0185】
各サンプルは固定されたヒトFVIIを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入して、固定したヒトFVIIアプタマを分離させた。このチップを用いて固定したヒトFVIIとテストした各アプタマMapt2、Mapt3およびMapt7との間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したヒトFVIIへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図2])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
得られた結果はテストした全ての核酸アプタマがヒト血漿第VII因子に大きな親和性で結合したことを示している。
【0186】
実施例2
基質に固定した本発明のアプタマ核酸によるヒト因子VII/VIIaの捕獲
配列SEQID番号86の本発明核酸アプタマ分子(「Mapt2」)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端を化学的に変成してPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖に連結した。それから、アプタマに連結した末端とは反対側のスペーサ鎖の遊離末端にビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
次いで、上記アプタマ化合物と接触させて、基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子との間の非共役会合によって上記固体基質を配列SEQID番号86の核酸を固定する。
Mapt2アプタマは983RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0187】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が62、125、250および500nMのサンプルを得る。別に、多可免疫グロブリン(TegeIine(登録商標)、LFB(フランス)から市販)の調節物をランニング緩衝液(50mMトリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して多可免疫グロブリンP濃度が62、125、250および500nMのサンプルを得る。
【0188】
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入してアプタマからFVIIHPを分離させた。このチップを用いて固定したFVll HPまたは多原子価の免疫グロブリンと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図3])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例はMapt2アプタマは固定したときに大きな親和性でFVII HPに結合することを示してしいる。Mapt2アプタマは多価免疫グロブリンには結合しない。
【0189】
実施例3
基質に固定した本発明のアプタマ核酸によるヒト因子FVII/FVIIaの捕獲
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは424.9RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0190】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が500nMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVll HPと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図4])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。
【0191】
固定したアプタマに結合した生成物が本当にFVIIであることを確認するために、注射の順番は(i)500nMのFVII HP、(ii)抗FVIIモノクローナル抗体1μM(シグマ社、Ref Clone番号MC1476/E.A.8.1)を同じチップで実行した。注射および解析条件は上記と同一である。アプタマが実際にFVIIを保持している場合、FVIIに対して抗体が結合した結果として抗FVIIモノクローナル抗体の注射でRU信号が増加することが反映されなければならな。コントロールとして抗体単独を注入した。RU信号が増加し、アプタマがFVIIを認識することを明らかに示している(図4)。
記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例の結果は、アプタマは固定したときに、FVIIHPに特異的に結合することを示し、大きな親和性を有し、観測した信号本当にアプタマ上のFVIIの保持によるものである。
【0192】
実施例4
Mapt2アプタマ/ヒト血漿FVIIストイキオメトリ
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは983RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0193】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が1μMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で700秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVll HPと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図5])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
【0194】
この実施例の結果は、注射時間中にMapt2アプタマに結合するヒトFVIIの量が増加することと、注射時間(700秒)が終ってもヒトFVII分子によるアプタマのサイトの飽和にはまだ達しないこととを示している。この結果は固体基質の表面に固定されたMapt2アプタマ分子の大部分がヒトFy11と結合できることを示している。
これらの結果は、アプタマがその標的に結合することができるコンフォメーションはこの形のアプタマの大多数に対して十分に安定していることを示し、このコンフォメーションは固定化によって悪く変化したり悪くさらないことを示している。
これらの結果はさらに、Mapt2/ヒトFVII結合ストイキオメトリは約1/1であることを示している。
【0195】
Mapt2/ヒトFVII結合の場合、最高信号は下記で得られる:
[MWFVII/MWMapt2]*固定化レベル*stoichio
(ここで、
MWFVIIはヒトFVIIの分子量を表し、50kDaに等しく、
MWMapt2はMapt2の分子量を表し、27kDaに等しく、
固定化のレベルはこの例では983.3であり、
stoichioはMapt2/FVIIストイキオメトリを表し、1に等しい)
上記の式で得られる最高信号値:1820RU
【0196】
ヒト因子VIIの分子を結合したMapt2アプタマの百分比は式:測定信号/予想信号から計算される。
(ここで、測定信号は124RUに等しく、予想信号は1820RUに等しい)
上記の式では、注射の終わりにヒトFVIIの分子と結合したMapt2アプタマ分子の百分比は62%である。
【0197】
実施例5
Mapt2アプタマのヒト血漿FVIIに結合するキネティクス
配列SEQID番号86の本発明核酸アプタマ(Mapt2)の分子がが固定した固体基質を製造する。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは425RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0198】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が125、250(2倍)、500nMおよび1000mMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
ヒト血漿FVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合キネティクス曲線をBiacore(登録商標)の専用モジュール制御Software(バージョン1.2)で計算した。固定したMapt2アプタマのヒト・血漿FVIIへの結合キネティクス曲線を[図6]に示した。
このMapt2アプタマのヒトFVIIへの結合キネティクスの計算結果から下記が決定できる:
(1)Mapt2の解離定数Kdは99.9nMである、
(2)Mapt2の会合定数Ka(6.25×103M-1s-1)は6.25×10-4s-1である。
【0199】
実施例6
EDTAによる組換え型ヒトFVllの溶出
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
また、ビオチン化抗−FVIIポリクローナル抗体分子を固定した固体基質も製造した。
Mapt2アプタマまたは抗ヒトFVIIポリクローナル抗体を有する固体基質はELISAアッセイ用96−ウエルプレートから成る。
【0200】
抗ヒトFVIIポリクローナル抗体はワサビ(hrseradish)ペルオキシダーゼでラベル化して視覚化して使用した。アッセイ条件の詳細は以下の通り:
(1) プレート:ビオビンストレプタビディン(Biobind Streptavidin)被覆(Thermo ref:95029293)緩衝:
(2) 固定化:50mMトリス、150mM-NaCl、0.1%Tween20/pH=7.5
(3) Ca2+/Mg2+洗浄:50mMトリス、50mM-NaCl、10mM-CaCl2、4mM-MgCl2(0.1%Tween20/pH=7.4
(4) EDTA洗浄:注射水中の10mM-EDTA+0.1%Tween20
(5) リガンド:Eurogentec社が化学合成で得たMapt2、固定化濃度は200nM、容積=100μl、外界温度で1時間
(6) 対照リガンド:FVIIアフィニティークロマトグラフィに精製した抗FVIIポリクローナル抗体(R&D System Ref:BAF2338)
固定化濃度 200nM:容積=100μl、外界温度で1時間
(7)サンプル:ウサギで生産したトランスジェニクなヒトFVII、1%BSAで安定化、バッチ:479186。濃度=100nM、堆積容積=100μl、外界温度で1時間15分
(8) 視覚化抗体:Asserachromから供給のVII:Agキット(diagnostica Stago):サプライヤーの推薦に従って調製。容積=100μl、外界温度で45分
(9) 視覚化:1ウエル当たりOPD+H2O2溶液100μl
(10) 反応停止:H2S04(1ウエル当たり50μl)
(11) 読取:492ナノメートル。
492ナノメートルでのODで表した結果を[表l]に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
この実施例の結果はヒトFy11とMapt2アプタマとの結合のみがEDTAで溶出することを示す。
【0203】
実施例7
各種のヒト第VII因子へのアプタマの結合
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマの分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは4326RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。Mapt2を固定した固体基質の一部を「活性セル」とよぶ。同じ方法でこの固体基質の独立した部分にいくつかの核酸分子またはその他を4069RUの固定化度で固定した。これを「対照セル」と呼ぶ。
下記の各種ヒト第VII因子を使用した:
(1)Acset精製法に従って得たヒト血漿FVII、
(2)ウサギで作った組換え型ヒトFVII、
(3)ヤギで作った組換え型ヒトFVII、
(4)組換え型ヒトFVII(Novoseven(登録商標)から市販)
【0204】
各サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含む同じ活性セル(固体基質)上へ順次注入した。コントロール(対照)にはランニング緩衝液のみを含むブランクを注入した。上記の固定した核酸、その他を含む対照セルに同じサンプルを注入するとバックグラウンドノイズに対応する信号が得られる。この信号を活性セルで得られた信号から引いた。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。それから溶出緩衝液(15mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒間注入してFVIIをアプタマから分離した。このチップを用いてFVIIと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図7])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。結果は[図7]に示した。
この実施例の結果から、アプタマは固定することによってヒト血漿第VII因子およびウサギおよびヤギを含む種々のトランスジェニック(遺伝子導入実験)動物で作った組換え型ヒト因子VIIを含む極めて多種のヒト第VII因子に特異的に結合するが示された。
【0205】
実施例8
ヒト因子VIIへのアプタマの特異的結合
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端を化学的に変成してPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖に連結した。それから、アプタマに連結した末端とは反対側のスペーサ鎖の遊離末端にビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは4326RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
Mapt2を固定した固体基質の一部を「活性セル」とよぶ。同じ方法でこの固体基質の独立した部分にいくつかの核酸分子またはその他を4069RUの固定化度で固定した。これを「対照セル」と呼ぶ。
下記の各種ヒト第VII因子を使用した:
(1)Acset精製法に従って得たヒト・血漿FVII、
(2)アメリカのDiagnostica社から市販の組換え型ウサギFVII(ref 4O7RAB、バッチ番号:080818)
【0206】
各サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含む同じ活性セル(固体基質)上へ順次注入した。コントロール(対照)にはランニング緩衝液のみを含むブランクを注入した。上記の固定した核酸、その他を含む対照セルに同じサンプルを注入するとバックグラウンドノイズに対応する信号が得られる。この信号を活性セルで得られた信号から引いた。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。それから溶出緩衝液(15mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒間注入してヒト・ウサギFVIIをアプタマから分離した。このチップを用いてFVIIと固定したアプタとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図8])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例の結果から、上記アプタマは固定するとヒトFVII/VIIaに極めて特異的に結合し、ウサギFVII/VIIaには結合しないことが示された。
【0207】
実施例9
親和性基質の製造方法
ストレプトアビジン(streptavidin)(streptavidin−agarose-Novagen、登録商標)を表面にグラフトしたマトリックスから成る固体基質材料から親和性基質を調製した。
1ml容積のゲルをカラム(i.d.11mm)から成る容器に入れた。貯蔵溶剤を除去するためにゲルを精製水で洗浄した。ゲルの特徴は以下の通り:
(1)ビオチン吸着能:≧85ナノモル/1mlゲル
(2)機能テスト:ATで30分間のコースでビオチン標識化したトロンビンのキャプチャー>99%、
(3その他のテスト:プロテアーゼ無し、エンド/エクソヌクレアーゼ無し、にRNase無し
(3)防腐剤:100mMリン酸ナトリウムpH7.5+NaN3 0.02
【0208】
充填カラム(ゲル・ベッド高さ=1cm)の出口に254nmのUVフィルターと記録装置とを備えた吸光度検出器を接続した。
配列SEQID番号86のビオチン標識化した抗ヒトFVII核酸アプタマを精製水中に0.5mg/0.187mlの最終濃度(すなわち最終モル濃度=0.1mM)で可溶化した。核酸アプタマ溶液を標準サイクルに従って95℃で活性化して固体基質材料上にアプタマを固定化した。
核酸アプタマ溶液を4.8mlの精製水で、次に1.5mlのMe++緩衝液(5×濃度)で予備希釈した。
吸光度検出器を1AUFS(吸光度単位フルスケール)に合わせ、254nmでこの溶液のODを0.575U254で記録した。
ビオチン標識化した核酸アプタマ溶液は予備パックしたストレプトアビジン−アダロースゲル上へ注入し、ペリスタル型ポンプで2.5ml/分の流速で再循環させた(すなわちゲル(入口/出口 I/O)上での接触時間=24秒)。上記条件での254nmでのODは直ちに0.05AU254(すなわち理論的なカップリング値の91%)に到達した。すなわち1ミリリットルのゲル当たり0.455mgの核酸アプタマで安定する。
4mM−MgCl2+10mM−CaCl2緩衝液で洗浄し、次いで2M−NaClで洗浄して固体基質材料上にグラフトしたストレプトアビジン分子に特異的に結合していない核酸アプタマを除去した。
【0209】
実施例10
組換え型ヒト因子VIIの精製方法
上記のアプタマ親和性基質を下記文献に記載の方法で調製した精製されたFVll/FVllaを使用してテストした。
【特許文献20】国際特許第W02008/099077号公報
【0210】
被精製サンプルの製造
出発材料の生物物質は組換え型ヒトFVIIを含むトランスジェニクウサギ乳汁である。発現カセットはβ−カゼイン遺伝子プロモータの制御下にあるヒトFVIIトランスジーンから成る。簡単に言うと、140ミリリットルの乳汁を出生後の日4〜日12の間の初乳汁分泌を2匹のウサギから集め、集めた乳汁のアミド分解(amidolytic)FVII(生物学的に活性化されたFVII)の平均タイター値は928lU/mlである。乳汁は−80℃の温度で保存した。
テスト時にはウサギ乳汁を水浴中で37℃の温度で解凍し、クエン酸ナトリウム溶液で希釈してpH7.5での最終クエン酸塩濃度を62g/lにした。このクエン酸ナトリウム処理で燐酸カルシウム(phosphocalcic)カゼインミセルを不安定できる。乳汁のリピドリッチなタンパク溶液は一連の濾過器(それぞれ(i)15〜0.5μm気孔率閾値の深型濾過器と(i)0.2μmメンブランフィルタ)で精製する。
【0211】
198lU/mIのFVIIタイター(すなわち36mgのトランスジェニクFyII)を有する濾過後の溶液の容積360mlを16ml容積のMEP-HyperCelクロマトグラフィ・ゲル(Pall BioSepra)で予備精製した。この捕獲ゲルを用いることでカゼインを含む乳タンパクの95%を除去でき、しかも、FVIIの初期量の60%を保持できる。
上記段階の終わりに得られた17.5mgの低純度FVII(〜5%)は容積20mlのQ-sepharoseXL(登録商標)(GE Healthcare)を使用したイオン交換クロマトグラフィで精製する。ヒトFVIIは、78ml容積の5mM−塩化カルシウムを含む緩衝液で溶出する。アミド分解(amidolytic)FVII濃度は337lU/mlすなわち0.17mgのFVII/mlで、280nm、ε1%=13でODで測定した全タンパクは0.18mg/ml、と見積もられる。従って、FVII純度は94%。
【0212】
ウサギ乳汁由来の残留タンパクをこの段階でFVIIから分離するのは、構造上類似性、例えばGLA−domainまたはEGFdomainタンパクのため、あるいは物理化学的な類似性(イオン電荷および/または分子寸法が類似)のため、難しい。従来方法では直交法(ヒドロキシアパタイトゲルとサイズ排除クロマトグラフィ分離の組合せ)によって純度を99.95%まで改良できる。
しかし、人間で繰り返して注射する場合には、遺伝子組換えタンパクで許容される外来タンパクに対する負荷は50ppmを超えてはならない。すなわち純度>99.995%でなければならない。この純度はアフィニティーマトリックスでの精製だけで達成できるように見える。
【0213】
本発明の親和性基質での組換え型ヒトFVIIの精製段階
上記段階の終わりに得られた精製されたヒトFVII溶液の6mlの容積(FVIIの1.1mg)を用いて本発明の親和性基質で高純度の組換え型ヒトFVIIに精製する段階を行う。上記段階で得られたFVII溶液う4mM−MgCl2、10mM−CaCl2、pH7.5に予備調節し、アプタマ−アガロースゲル(親和性基質)上にペリスタル型ポンプで0.1ml/分の流速で注入する(すなわち、親和性基質との接触時間10分)(I/O)。
注射後、ゲルを50mMトリス+50mM−NaCl+4mMMgCl2+10mMCaCl2、pH7.5緩衝液で洗浄する。10mlの非吸着溶液を回収する。FVIIは50mMトリス+10mM−EDTA、pH7.5緩衝液で溶出させる。溶出ピークの収集はODプロフィルに従って実行する。モル計算から親和性基質に固定された核酸アプタマの量は17ナノモルで、これはFVII分子とのモル−モル相互作用で、FVIIの0.9mgの親和性基質の絶対キャパシティに対応する。
【0214】
[図11]は254nmでの吸光度値(OD)を連続モニターしたウサギ乳汁中に産生された組換え型ヒトFVIIのクロマトグラフィ・プロフィルを示す。この[図11]で注射(1)後の吸収曲線の屈曲(2)は組換え型ヒトFVIIと親和性基質の飽和開始を示す。時間(3)で組換え型ヒトFVIIの注射を停止する。[図1]の直線状時間のスケールを示すと、注射開始時間(1)と注射終了時間(2)との間の持続時間は10分である。親和性基質は上記凝固タンパクで飽和し続け、(i)親和性基質の抗FVII核酸アプタマと(ii)被精製組成物中に最初に含まれていた組換え型ヒトFVII分子との間に錯体が形成される。被精製組成物をカラムに送り、カラムを緩衝液で洗浄する(洗浄段階6)。その後、時間(4)で10mMの最終EDTA濃度から成る緩衝液を注入して溶出段階を実行する。吸収ピークは核酸アプタマ/組換え型FVII錯体から組換え型ヒトFVIIが開放されたことを示している。組換え型ヒトFVIIの分子は迅速にリリースされ、従って、少容積である点に注意されたい。従って、本発明の親和性基質によって組換え型ヒトFVIIタンパクの高濃度の溶出溶液が得られる。時間(5)で50mMトリス緩衝液を用いて親和性基質を再生させる段階を実行する。(7)で見られる吸光度ピークは再生段階で親和性基質から開放された物質に対応する。
【0215】
親和性基質の動的結合能
下記の[表2]に示すテスト結果は0.45〜0.49mg/mlの親和性マトリックスすなわちバイオアベイラブル(bioavailable)なリガンドの50〜55%の動的結合能を示す。EDTAで約5%の動的溶出が計算される。
【0216】
【表2】
【0217】
親和性基質の特異的分離能
親和性基質の特異性をウサギ乳タンパクに特異的なELISAアッセイで評価した。結果は[表3]に示した。
【0218】
【表3】
【0219】
[表3]の結果は、トランスジェニクなヒトFVIIの純度を98.3%〜99.95%とすると、アプタマ−アガロースによる除去の平均値2log10が得られることを示す。これはヒトFVIIに対するアプタマの特異性を示し、残利希有ウサギ乳タンパクとの相互作用はほとんどないことを示す。
溶出前に2M−NaClおよび/またはプロピレングリコールまたは50%エチレングリコール溶液で中間洗浄すると結果はより良くなる(これらの条件ではFVIIは溶出されない)。
実施例10の結果は、アプタマ−アガロースゲル上での親和性基質がリガンド1mg当たり少なくとも1mgのFVIIの動的結合能の優れた特徴を有することを示し、溶出収率は少なくとも75%である。また、純度の明らかな改良(〜99.95%)、残留ウサギ乳タンパクRMPの除去2log10からも特異性は確認できる。最適化していない2つのテストで最終レベルは約500ppmになる。
【0220】
実施例11
基質に固定したヒト因子VII/VIIaによる本発明アプタマ核酸の捕獲
血漿由来の精製されたヒト因子VII/VIIa分子を固定した固体基質を製造した。
FVII/VIIa中に存在するフリーのアミンを結合するNHS−EDCで活性化したしカルボキシメチルデキストランにヒト第VII因子を固定した。すなわち、ヒト因子VII/VIIaを2525RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定した。
本発明の一連の27の核酸アプタマ(純度:99%)(アプタマに従って43〜66の長さを有するヌクレオチド)をランニング緩衝液(50mMトリス、50で希釈するた‖mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.5)して3つのアプタマサンプルを得る。
テストされる各アプタマをランニング緩衝液に最終濃度1μMで注入した。各サンプルは固定されたヒトFVIIを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVIIとテストしたすアプタとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図El])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。結果は[図12][図13]に示した。
【0221】
[図12]は表面プラスモン共振法に従ったテストでの基質に固定したヒト・血漿第VII因子に対する本発明の一連の27の核酸アプタマの結合曲線を示す。X軸:時間(秒);Y軸:共振信号(任意単位)。
[図13]はテストした27のアプタマの各々の安定結合の信号値を示す。X軸:テストした27のアプタマ;Y軸:共振信号(任意単位)。
ヒト因子VIIに対する親和性の差によるアプタマの4つグループが観測される。Mapt2「コア配列」は低親和性グループに属する。ファミリー2の1つの代表は他より高い親和性を有する。このアプタマをMapt2.2と呼び、下記の「コア配列」を有する:
5'CCGCACGCTACGCGCATGAACCCGCGCACACGACTTGAAGTAGC3' (SEQID番号33)
しかし、得られた結果はテストした全ての核酸アプタマがヒト・血漿第VII因子に有意な親和性を有することを示している。
【0222】
実施例12
ヒト血漿第VII因子の精製方法
A.材料と方法
A.1 アフィニティークロマトグラフィ基質
「Mapt−2コア」アプタマを固定した親和性ゲル材料を、アプタマとビオチンとの間にスペーサ鎖無しに、ビオチンに直接結合した。アプタマは5'−末端ビオチンでストレプトアビジンゲル(供給元Nivagen)に固定した。理論リガンド濃度は0.4mg/ml:XK16カラム(GE)にパックした容積1ml。
使用したアプタマは配列SEQID番号20のアプタマである。この出発生成物は第VII因子の切詰め不純物および劣化第VII因子の形の不純物を含む。劣化第VII因子はガンマ−カルボキシル化で変性された第VII因子の形を含む。
【0223】
A.3 精製プロトコル
ゲル平衡化:0.050M−トリス−HCl、0.010M CaCl2、0.05mM MgCl2、pH7.5、
溶出: 0.020Mトリス−HCl、0.010M EDTA、pH7.5、
98%まで精製した240μgのヒト・血漿FVIIを平衡化緩衝液中に流速0.5ml/分で注入した。保持されなかったピークの検出後、2カラム容積の溶出緩衝液を注入した。タンパクのピークは280nm波長で吸光度値を測定して検出した。
【0224】
B.結果
結果は[図14]および[図15]に示す。
[図14]は時間を関数とする280nmで測定した吸光度曲線。[図14]のピーク番号1はカラムに保持されなかった出発生成物の分画に対応する。ピーク番号2は溶出分画に対応する。
出発生成物および溶出生成物硝酸銀染色したSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析して不純物が除去されたことを視覚化した。[図15]はこのゲルを表す。レーン番号1は出発生成物分画に対応し、レーン番号2は溶出分画に対応する。出発生成物の純度にもかかわらず、溶出画分は汚染物または劣化物を含まない点に注意されたい。
[図14]および[図15]の結果は配列SEQID番号20のアプタマはヒトFVIIに結合でき、EDTAの存在下で特異的に溶出できることを示している。
【0225】
実施例13
アプタマのウサギFVIIへの結合の非存在
A.材料と方法
A.1 アフィニティークロマトグラフ基質
5'−末端にスペーサ鎖を介して配列SEQID番号86のアプタマを固定したストレプトアビジンゲル(供給元Nivagen)に固定した。理論リガンド濃度は0.35mg/ml:容積1ml。使用したアプタマは配列SEQID番号86のアプタマである。
A.2 出発生成物
ウサギ・血漿から精製して得たウサギFVIIがリッチなヒドロキシアパタイト溶出液、接触時間10分、流速0.5ml/分。
A.3 精製プロトコル
ゲル平衡化:0.050Mトリス−HCl、0.010M CaCl2、0.05mM MgSO3、pH7.5、
溶出:0.050Mトリス−HCl 0.010M EDTA、pH7.5
36μgを10分間の接触時間でゲルに注入する。溶出は2mlの溶出緩衝液を注入して実行した。タンパクのピークは280nmの波長での吸光度値を測定して検出した。
【0226】
A.4 タンパクおよび第VII因子に関する画分の分析プロトコル
各画分はそのアミド分解活性をStagoキット(因子VIIa StatClotキット)を使用して発色アッセイによって分析した(供給元の推薦に従った)。アミド分解活性を各画分に含まれるFVIIのμgに換算した。
B.結果
結果は[表4]に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
[表4]の結果は配列SEQID番号86のMapt−2アプタマが固定した親和性ゲルにはウサギ第VII因子は保持されないことを示している。
【0229】
実施例14
Biacore(NaCl耐性)上でのアプタマとヒト因子VIIとの相互作用のプロトコルの特定実施例
A.材料と方法
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは3772RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
トランスジェニクなウサギ乳汁から得た精製したトランスジェニクヒトFVII(FVII HPTG、純度:98%)をランニング緩衝液(50mMトリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して200mMのFVII濃度のサンプルを得た。
【0230】
サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含むチップ(固体基質)上へ注入した。次いで、NaCl濃度を増大させた緩衝液を固体基質上に注入した(1M−Nalから3M−NaClき濃度を3シリーズ注入)。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。3つの緩衝液の3シリーズの注入後、溶出緩衝液(10mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒間注入してFVII HPTGをアプタマからから分離した。
解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
トランスジェニクなヒトFVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合曲線はBiacore(登録商標)の専用モジュール制御ソフトウェア(バージョン1.2)で計算した。
ヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合結果から、ヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合はNaClを含む緩衝液の注入によって有害な程度には変更されないということが分かる。
B.結果
結果は[図16]に示してある。
【0231】
実施例15
Biacore(プロピレングリコール耐性)上でのヒト因子VIIとアプタマとの相互作用のためのプロトコルの特定実施例
A.材料と方法
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは5319RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0232】
トランスジェニクウサギ乳汁から得た精製したトランスジェニクヒトFVII(FVII HPTG、純度:98%)をランニング緩衝液(50mMトリス、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して200mMのFVII濃度のサンプルを得た。このサンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用で固定したMapt2アプタマを含むチップ(固体基質)上へ注入した。次に、50%のプロピレングリコールを含む緩衝液を固体基質上へ注入した。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行された。50%プロピレングリコールを含む緩衝液を注入後、溶出緩衝液(10mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒間で注入して、FVII HPTGをアプタマから除去した。
解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
トランスジェニクヒトFVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合曲線はBiacore(登録商標)の専用モジュール制御ソフトウェア(バージョン1.2)で計算した。
このヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合結果から、ヒトFVIIへのMapt2アプタマの結合はプロピレングリコールを含む緩衝液注入によって有害な程度に変化しないことが分かる。
【0233】
B.結果
結果は[図17]に示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト因子VII/VIIaに特異的なリガンド、特にこのタンパクを精製、検出するためのリガンドの同定と、その医学分野での使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第VII因子(FVII)はビタミンK依存性のグリコプロテインであり、その活性形(FVIIa)はカルシウムおよび組織因子の存在下で第X因子および第IX因子を活性化して凝集プロセスに関与する。FVIIは分子量が約50kDaである406個のアミノ酸残基の単一ペプチド鎖の形で分泌される。
【0003】
従って、ビタミンK依存性のグリコプロテインであるこのFVIIaは凝固機構、従って血栓の形成に重要な役割を演じている。FVIIaには出血を起こしている組織の損害後に放出される組織因子の存在下で、第VIIIまたはIX因子が不存在の場合でも、局所的に働くことが可能であるという利点がある。そのため、FVIIaは出血によって生じるある種の凝固不調を正すために古くから使われてきた。
【0004】
第VIII因子はFVI1(血友病タイプA)または第IX因子(血友病型B)を欠失している患者やその他の凝固因子を欠失している患者、例えば遺伝性FVII欠失患者の血友病治療で使われている。また、FVIIはストローク(卒中)の処置でも推薦されている。そのためには注射可能なFVIIa濃縮物が必要である。
【0005】
FVIIa濃縮物を得る最も古い方法は分画して得た血漿タンパクからFVIlaを精製する方法である。特許文献1(欧州特許第EP 0 346 241号公報)に記載のFVIIa−濃縮(enriched)画分の製造方法ではPPSB(PプロトロンビンまたはFII(P=プロコンバーチンまたはFVII、S=スチュワート因子またはFX、B=抗血友病因子BまたはFIX)のプレ溶出液を含む、FVIIおよびFVIIaを含む血漿タンパク、その他のタンパク(例えば因子IX(FIX)、X(FX)およびIl(FIl)の分画副産物を吸着し、溶出して得られる。この方法の欠点は得られるFVIIが他の凝固因子の痕跡量を含む点にある。
【0006】
同様に、特許文献2(欧州特許第EP 0 547 932号公報)にはビタミンK依存性因子およびFVIIIを基本的に含まない高純度FVI1a濃縮物の製造方法が記載されている。この方法で得られるFVIIは純度が良いが残渣が血栓形成(thrombogenic)活性を有する。
【0007】
1980年代にヒト因子VIIをコードするDNAが単離され(Hagen et al,(1986);Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Apr. 83(8):2412-6)、対応するタンパクがBHK(ベビー・ハムスター腎臓)哺乳動物細胞で発現された(特許文献3)。
【0008】
本出願人の特許文献4(フランス特許出願第FR 06 04872号公報)にはトランスジェニック動物でのFVIIa製造方法が記載されている。この製造方法を用いるとウィルス、その他の病原による汚染に対して安全なタンパクを得ることができる。この方法はさらに、一次配列がヒト一次配列に同一であるタンパク、すなわち各種アミノ酸間の結合が全く同じタンパクを得ることができる。
【0009】
しかし、この方法で得られるものは、因子VII/VIIaの出発源にも関わらず、汚染物質を含むヒト因子VII/VIIaの濃縮組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第EP 0 346 241号公報
【特許文献2】欧州特許第EP 0 547 932号公報
【特許文献3】欧州特許第EP 0 200 421号公報
【特許文献4】フランス特許出願第FR 06 04872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヒト血漿から因子VII/VIIaを精製する方法では残留血栓形成(thrombogenic)がないか、実質的にない最終産物を得ることが特に有利である。精製された組換型ヒト因子VII/VIIaを得る方法では望ましくない細胞タンパクを含まないか、実質的に含まない最終生成物を得ることが特に重要である。特に、トランスジェニク哺乳類に由来する体液から精製したヒト因子VII/VIIa組成物では、ヒトで免疫原となる可能性のあるトランスジェニク哺乳類が天然に産生する因子VII/VIIaを含まないか、実質的に含まない最終生成物を得ることが重要である。
この目標を達成するためには上記の因子VIl/VIlaを含むサンプルから、ヒト因子VII/VIIaを精製する効率的かつ特異的な手段が必要であり、その手段は簡単で、再現性がよいことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明には、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VIIN1Iaに特異的に結合する単一鎖の核酸を提供する。
本発明はさらに、構造中に上記定義の少なくとも一つの核酸を含む、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する各種の化合物にも関するものである。
本発明はさらに、上記定義核酸または化合物と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間に形成さる錯体(複合体、コンプレックス)にも関するものである。
本発明はさらに、上記定義の核酸または化合物の複数がグラフトした固体の基質材料からなる、ヒト因子VII/VIIaを固定するための基質にも関するものである。
【0013】
本発明のさらに他の対象は、ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを上記定義の基質と接触させる段階を含む、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定する方法にある。
本発明のさらに他の対象は、下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの精製方法にある:
(a)ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを上記の核酸または基質と接触させてi)上記核酸または上記基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成させた錯体からヒト因子II/VIIaを遊離させて精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
本発明のさらに他の対象は、下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法にある:
(a)上記定義の核酸または基質と上記サンプルとを接触させ、
(b)(i)上記核酸または基質と(ii)因子VIl/VIlaとの間の錯体の形成を検出する。
本発明はさらに、上記定義の核酸の医療での予防または治療でき使用にも関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】は本発明の核酸(Mapt2)保持(folding)のモデル計算結果を示す図である。mFoldコンピュータープログラムを使用し、[図1]に示す構造を得るのに用いたものと同じパラメータすなわち下記条件を使用した:(i)直鎖の配列を有するDNA、(ii)保持温度:25°、(iii)イオン条件:[Na+]:150mM;[Mg++]:4mM、(iv)修正タイプ:オリゴマ、(v)百分比サブオプティマル(suboptimality)数):2(vi)計算保持数の上限:50、(vii)2つの塩基対間の最大距離:無制限(viii)他のパラメータのためのデフォルト値
【0015】
【図2】は基質に固定したヒト血漿第VII因子に対する本発明の各種核酸(Mapt2、Mapt3およびMapt7)の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0016】
【図3】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する各種濃度で使用したヒト血漿第VII因子の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。各曲線は図の最上部から下に向かって下記を示す:曲線1[FyII]:500nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線2[FyII]:250nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線3[FyII]:125nM濃度での精製ヒト血漿FVII;曲線4[FVII]:62.5nM濃度での精製ヒト血漿FVII;下部曲線:それぞれ62、125、250および500nMでの精製免疫グロブリン調整物。
【0017】
【図4】は(i)基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する組換え型ヒト因子VIIの表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線と、(i)で作った固定核酸/FVII錯体に対する抗ヒトFVII単クローン抗体の結合曲線とを示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0018】
【図5】は時間的に連続的に注入したヒト血漿第VII因子による本発明の核酸(Mapt2)を固定した基質の飽和曲線。表面プラスモン共振法に従ったテスト。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。最上部の曲線:濃度500nMの精製ヒトFVIIで得た信号信号。
【0019】
【図6】は本発明の核酸(Mapt2)を固定した基質の表面プラスモン共振法に従ったテストでのヒト血漿第VII因子の結合動特性(kinetics)曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0020】
【図7】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対する種々起源の第VII因子タンパクの表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0021】
【図8】は基質に固定した本発明の核酸(Mapt2)に対するヒト血漿第VII因子およびウサギ組換え型第VII因子の表面プラスモン共振法に従ったテストでの結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0022】
【図9】はPEGスペーサ鎖(このスペーサ鎖自体はビオチン分子に連結)に連結した本発明アプタマ(Mapt2)を含むヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物の構造を示す図。
【0023】
【図10】はSELEXタイプのプロセスの実行サイクルの最後に選択された、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する各種アプタマの配列を示す図。[図10]に示す配列は図の最上部から下に向かってSEQ ID番号87〜SEQ ID番号100である。
【0024】
【図11】はウサギ乳汁に産生された組換え型ヒト因子VIIを、抗ヒトFVII核酸アプタマを固定した親和性基質を用いて精製する方法の実行中に得られたクロマトグラフのプロフィルを示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:254ナノメートルでの吸光度(OD)値。
【0025】
【図12】は基質に固定したヒト血漿第VII因子に対するテストした本発明の27の核酸アプタマの表面プラスモン共振法に従った結合曲線を示す図。X軸:時間(秒で表示);Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0026】
【図13】はテストした27のアプタマの各々の安定結合信号の固有値を示す図。X軸:テストした27の各アプタマ;Y軸:共振信号(任意の共振単位で表示)。
【0027】
【図14】は時間を関数とした280ナノメートルでの吸光度測定曲線。
【0028】
【図15】はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲルの画像。レーン1は出発生成物画分、レーン2は溶出画分に対応する。
【0029】
【図16】はトランスジェニクウサギの乳汁中に産生させた組換え型ヒト因子VIIに対する固定したアプタマMapt2の結合曲線を表す図。矢印は各注射時間に対応し、[図16]の左から右に向かってそれぞれ下記の時間を表す:1:組換え型因子VIIの注射;2:1M-NaClを含む緩衝液の注射;3:2M-NaClを含む緩衝液の注射;4:3M-NaClを含む緩衝液の注射;5:50mMのトリス、10mM-EDTA緩衝の注射、X軸:時間(秒で表示);Y軸:応答信号(任意の単位(RU)で表示)。
【0030】
【図17】はトランスジェニクウサギの乳汁中に産生させた組換え型ヒト因子VIIに対する固定したアプタマMapt2の結合曲線を表す図。矢印は各注射時間に対応し、[図17]の左から右に向かってそれぞれ下記を表す:1:50%プロピレングリコール;2:10mM-EDTA。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、寸法が小さく、安価に合成できる、ヒト因子VIl/VIlaに特異的に結合することができる新規な手段を提供する。本発明のこの手段は、ヒト因子VII/VIIaの精製、ヒト因子VII/VIIaの検出、凝固不全(疾患)の予防または治療を目的とする医薬品の活性成分としての使用を含めた、上記手段が使われる全ての分野の用途で使用できる。
【0032】
より詳細には、以下で詳細に説明する共通した多くの構造上の特徴を有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合することができる単一鎖の核酸のファミリーを本発明者は見出した。
【0033】
以下で詳細に説明するように、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合することができる単一鎖の核酸、好ましくはDNA型のの核酸から成り、この核酸はそのヌクレオチド配列によって与えられる一定の構造上の特徴から、因子VII/VIIaに対する結合する上記結合特性を核酸に与える空間コンフォメーションを取ることができる。本発明の核酸はこのタイプの分子に対して当業者が一般的に使用している用語であるヌクレオチド「アプタマ(aアプタマ)」とよぶことができる。
【0034】
血液の凝固経路に関係する各種タンパクの結合可能なすることができる核酸(nucleic)アプタマは従来技術で公知で、Willebrand因子を介して結合するアプタマ(特許文献5)、アルファトロンビンを結合するアプタマ(特許文献2)またはトロンビン(非特許文献1)、第IX因子/IXaを結合するアプタマ(非特許文献2〜3、特許文献6、7)、ヒト因子VII/VIIaに結合する核酸アプタマ(特許文献6、7)、
【0035】
【特許文献5】国際特許第WO2008/150495号公報
【特許文献6】欧州特許第EP1972693号公報
【非特許文献1】Zhao et aI., 2008, Anal Chem,Vol. 80(19):7586-7593
【非特許文献2】Subash et al., 2006, Thromb Haemost, Vol. 95:767-771;
【非特許文献3】Howard et al., 2007, Atherioscl Thromb Vasc Biol, Vol. 27:722-727
【特許文献7】国際特許第WO 2002/096926号公報
【特許文献8】米国特許第US 7,312,325号明細書
【0036】
ヒト因子VII/VIIaに結合する核酸アプタマは非特許文献4、5にも記載されている。
【非特許文献4】Rusconi et al., 2000, Thromb Haemost, Vol. 84(5):841-848;
【非特許文献5】Layzer et al., 2007, Spring, Vol. 17: 1-11
【0037】
本発明の一つの対象は、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸にある。
【0038】
本明細書ではヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する単一鎖の核酸は「核酸アプタマ」「「アプタマ」「ヒト因子VII/VIIaに結合するアプタマ」または『抗−ヒトFVII/VIIaアプタマ」ともよばれる。
【0039】
「ヒト因子VII/VIIa」という用語は天然起源のヒト因子VII/VIIaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIaを含む。
【0040】
「ヒト因子VII/VIIa」はアミノ酸配列に関係して考慮する。すなわちタンパクがグリコシレート化されているか非グリコシレート化であるかとは独立しており、タンパクがグリコシレート化されている場合、グリコシル化のタイプは考慮しない。
【0041】
また、以下で詳細に示すように、本発明のヒト因子VIl/VIlaに特異的に結合する核酸の実施例では、5'末端から3'末端に下記:(i)〜(iii)の連続した配列を含む共通した構造上の特徴を有している:(i)長さが約20個のヌクレオチドの不変な特定ヌクレオチド配列、(ii)長さが40〜50個の可変なヌクレオチド配列、それに続く(iii)長さが約20個のヌクレオチドの不変な特定ヌクレオチド配列。可変なヌクレオチド配列(ii)は互いに非常に強いヌクレオチド配列同一性を有することができる。
【0042】
従って、本発明者は、(i)共通した構造上の特徴と(ii)共通した機能上の特徴との間の関係の存在を示すことができる、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合可能な核酸アプタマのファミリーを構築した。
【0043】
構造上の観点からは、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する上記の核酸または核酸アプタマのファミリーは下記の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを有する:
5'−[SEQID番号1]x−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]y−3' (I)
(ここで、
「SEQID番号X」はSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の核酸から成る群の中から選択される核酸から成り、
「x」は0〜1に等しい整数であり、
「y」は0〜1に等しい整数である)
【0044】
本発明のいくつかの実施例では、SEQID番号Xの酸は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50ヌクレオチドの長さを有する。
【0045】
本発明の他の実施例では、SEQID番号Xの酸は43、44、45、46、47、48または49ヌクレオチドの長さを有する。
【0046】
本発明の他の実施例では、SEQID番号Xの酸は43,44または45ヌクレオチドの長さを有するのが好ましい。
【0047】
既に述べたように、式(I)の核酸は長さが少なくとも15のヌクレオチドである。
【0048】
本発明のいくつかの実施例では、式(I)の核酸は長さが少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72、73、74、75、76、77、78、79、80または81ヌクレオチドであり、これは各長さを特定した核酸を含む。
【0049】
式(I)のアプタマを得る方法の実施例では連続した選抜段階でヒト因子VII/VIIaに特異的に結合す上記核酸のファミリーを構築し、可変配列SEQID番号Xを構造的にフレーミンクするSEQID番号1およびSEQID番号2を5'末端および3'末端に有する核酸アプタマのセットおよびサブセットを連続した各選抜サイクルで単離し、特徴付ける。
【0050】
本発明の核酸アプタマの主たるファミリーでは可変配列SEQID番号Xの全てが互いに少なくとも40%のヌクレオチド配列同一性を有する。このことは配列SEQID番号Xでは、ヒト因子VII/VIIaへの結合特性を保持するための構造上の制約はこれらの核酸アプタマの5'末端および3'末端に位置した配列に対する構造上制約よりも少ないことを意味している。
【0051】
整数「x」で、整数「y」が1に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−1)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]−3' (I−1)
【0052】
整数「x」が1に等しく、整数「y」が0に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−2)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号1]−[SEQID番号X]−3' (I−2)
【0053】
整数「x」が0で、整数「y」が0に等しい場合、本発明の核酸アプタマは下記の式(I−3)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドから成る核酸を含む:
5'−[SEQID番号X]−3' (I−3)
【0054】
従って、上記の核酸アプタマは配列SEQID番号3〜SEQID番号85番およびSEQID87〜SEQID番号100の核酸から成る群の中から選択される核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する核酸を含む。
【0055】
一般に、第二のヌクレオチドまたは核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有する第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%,51%,52%,53%,54%,55%,56%,57%,58%,59%,60%,61%,62%,63%,64%,65%,66%,67%,68%,69%,70%,71%,72%,73%,74%,75%,76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%または100%のヌクレオチド同一性を有する。
【0056】
配列SEQID番号Xを有する本発明の核酸のいくつかの実施例では、この配列SEQID番号XがSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の中の少なくとも1つと少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有する配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する核酸から成る群の中から選択される。
【0057】
配列SEQID番号Xを有する本発明の核酸のいくつかの実施例では、この配列SEQID番号Xが、配列SEQID番号3〜SEQID番号85番およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも1つと少なくとも41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%,56%,57%,58%,59%,60%,61%,62%,63%,64%,65%,66%,67%,68%,69%,70%,71%,72%,73%,74%,75%,76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有する核酸からなる群の中から選択される。
【0058】
上記のことから、本発明は上記定義の式(I)のシリーズの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する単一鎖の核酸のファミリーを含む。
【0059】
本発明で2つの核酸間の「百分比同一性」は整列した2つの配列を比較窓を介して最適な方法で比較し決定される。
【0060】
従って、比較窓中にあるヌクレオチド配列の一部は、2つの配列間で最適なアランメントが得られるように、参照配列(付加または欠失がない)と比較して付加または欠失(例えばギャップ)を有する。
【0061】
「百分比同一性」の計算方法では、比較した2つの配列で全く同じ核酸塩基が得られた位置の数を求め、2つの核酸塩基間で同一性のある位置の数を比較窓中の位置の全数で割り、得られた結果に100を掛けることで、2つの配列の百分比ヌクレオチド同一性を求める。
【0062】
比較用の最適配列アランメントは公知のアルゴリズムを使用したコンピュータで実行できる。
【0063】
百分比配列同一性はCLUSTAL Wソフトウェア(バージョン1.82)を使用して決定するのが好ましい。その設定パラメータは以下の通り:
(1)CPU MODE=ClustaIW mp;
(2)ALIGNMENT=「full」;
(3)OUTPUT FORMAT=「aln w/numbers」;
(4)OUTPUT ORDER=「alignment」;
(5)COLOR ALIGNMENT=「no」;
(6)KTUP(word sizw)=「default」;
(7)WINDOW LENGTH=「default」;
(8)SCORE TYPE=「percent」;
(9)TOPDIAG=「default」;
(10)PAIRGAP=「default」;
(11)PHYLOGENETIC TREE/TREE TYPE=「none」;
(12)MATRIX=「default」;
(13)GAP OPEN=「default」;
(14)END GAPS=「default」;
(15)GAP EXTENSION=「default」;
(16)GAP DISTANCES=「default」;
(17)TREE TYPE=「分岐図」
(18)TREE GRAPH DISTANCES=「hide」。
【0064】
[図1]に示した本発明の核酸の構造をベースにして当業者は配列SEQID番号Xの可能な特定配列を有限数のヌクレオチドコレクションの中から簡単に決定することができる。
【0065】
例えば、本発明の核酸アプタマのいくつかの実施例では、当業者は上記の式(I)の核酸アプタマの上記構造上の定義を基礎として、例えば、適当な命令セットとメモリーをロードしたデジタルコンピュータを用いて配列SEQID番号Xに対して可能な全ての配列を自動的に、簡単に発生させることができる。当業者はそれから必要に応じて上記デジタルコンピュータを用いて、(i)空間構造モデルが[図1]の核酸アプタマと類似または同一な配列と(ii)[図1]の核酸アプタマの構造とは異なる核酸アプタマのそれとをそれぞれ自動的に決定することができる。
【0066】
[図1]の核酸アプタマと類似または同じ空間構造を有する核酸アプタマは、この核酸アプタマに関して上記で記載した連続したループとステムとを有するものを含む。
【0067】
当業者は式(I)の核酸の空間構造を決定するために、そのヌクレオチド配列の説明を基礎にしてZukerに記載のコンピュータープログラムmFold(登録商標)を用いて構造モデルを作ることができる(2003、Nucleic Acids Research, Vol. 231(13):3406-3413)。これは下記ウエブアドレスからも利用できる:http://mfold.bioinfo.rDi.edu/.)
【0068】
コンピュータープログラムmFoldは[図1]に示す構造を得るのに用いたパラメータと同じもの、すなわち下記条件を用いるのが好ましい:
(i)直鎖配列のDNA、
(ii)フォールディング温度:25℃
(iii)イオン条件:[Na+]:150mM;[Mg++]:4mM
(iv)修正タイプ:オリゴマ
(v)百分比サブオプティマル数:2
(vi)計算保持数の上限:50
(vii)2つの塩基対間の最大距離:無制限
(viii)他のパラメータのためのデフォルト値の使用。
【0069】
次いで当業者は(i)[図1]のアプタマの構造モデルと(ii)作成した式(I)のアプタマの構造モデルとを比較する段階を実行し、構造モデルが[図1]に示すアプタマと類似または同じであるれば、札性した式(I)のアプタマを選択する。
【0070】
いずれにせよ、新たに発生させた式(I)のアプタマの選択抜がポジティブであることを確認するために当業者は例えば本明細書に記載の説明、特に実施例に記載の特定方法に従ってヒト因子VII/VIIa結合特性を検査することができる。
【0071】
本発明の核酸アプタマのいくつかの好ましい実施例では、核酸アプタマは式(I)の核酸と少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含み、それは式(I)の核酸と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの15の連続したヌクレオチドを含むアプタマを含む。
【0072】
式(I)の核酸の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の中の少なくとも1つと少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有し、これには配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも1つと少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または100%のヌクレオチド同一性を有する配列が含まれる。
【0073】
式(I)の核酸の他の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される。
【0074】
式(I)の核酸の他の好ましい実施例では、配列SEQID番号Xは配列SEQID番号3、5、6、10、11、14、15、16、17、19、20、23、24、25、27、28、29、30、32、33、34、35、36、37、38、39および40から成る群の中から選択される。
【0075】
本発明では、ヒト因子VIl/VIlaに結合する核酸はヒト因子VII/VIIaと接触した時にヒト因子VII/VIIaと錯体を形成することができる単一鎖の核酸から成る。
【0076】
従って、ヒト因子VII/VIIaと結合した核酸は、核酸なおよびタンパクパートナーをそれぞれ接触させる前段階後に検出可能なヒト因子VII/VIIaとの錯体を含む。
【0077】
ヒト因子VII/VIIaと結合した核酸が形成する錯体の検出は当業者に公知の方法、例えば実施例に示すBiacore(登録商標)を含む表面プラスモン共振検出技術を用いて簡単に実行できる。また、当業者は実施例に示すようなELISA型の従来法によって核酸とヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を簡単に検出することもできる。
【0078】
実施例に示るように、式(I)の核酸は任意の種類のヒト因子VII/VIIaと強い結合能を有している。特に、式(I)の核酸は天然のヒト因子VllNllaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIaに結合する。
【0079】
いかなる理論に拘束されるものではないが、実施例が示す結果は、本発明の式(I)の核酸は一定の種類のグリコシル化(glycosylation)を有するヒト因子VII/VIIaに結合する強い能力を有すると考えられる。換言すれば、式(I)の核酸はヒト・血漿を含む天然由来の因子VII/VIIaだけでなく、トランスジェニック動物、好ましくは血漿で天然に産出しされるヒト因子VII/VIIaのグリコシル化のタイプとはグリコシル化の種類が異るウサギを含む種々の生物種のトランスジェニク哺乳類で生産した組換え型ヒト因子VIl/VIlaにも効果的に結合できると考えられる。
【0080】
本発明でヒト因子VII/VIIaに「特異的に」結合する核酸はヒト以外の哺乳類のゲノムによってコードされる因子VII/VIIa、例えばウサギ・因子VII/VIIaを含む他のタンパクに結合する能力よりも大きな結合能力をヒト因子VII/VIIaに対して有する核酸から成る。
【0081】
本発明では、第1の核酸は第2の核酸よりヒト因子VII/VIIaに結合する能力が大きい。すなわち、結合を検出する上記の方法の任意の一つを使用した時に、同じテスト条件下で、第1の核酸で得られる結合信号の値は第2の核酸で得られるものに比較し統計学的に大きい。例えば、Biacore(登録商標)法を用いた結合検出法では、第1の核酸のヒト因子VII/VIIaに結合する能力は第2の核酸のそれより強く、計測単位とは無関係に、第1の核酸の共振信号値は第2の核酸で測定される信号値より統計学的に大きな共振が得られる。2つの別々の「統計学的」な計測値で両者の間に使用した結合検出方法の測定誤差より大きな違いがある。
【0082】
実施例に示すように、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の核酸のキャパシティがテストされた。
【0083】
一般に、式(I)の核酸はヒト因子VII/VIIaに対する解離定数値が最大で500nM、多くの場合最大で200nMである。
【0084】
式(I)の核酸はヒト以外の哺乳類由来の任意の因子VII/VIIaとの結合能力よりも大きなヒト因子VllNllaに対する結合能力を有することが示された。特に、式(I)の核酸は天然または組換え型を含む任意タイプのヒト因子VII/VIIaに結合する強い能力を有するにもかかわらず、ウサギ因子VII/VIIaを含むヒト以外の哺乳類のゲノムによってコードされる因子VII/VIIに結合する能力はゼロか、弱い。
【0085】
式(I)の核酸のこの有利な特徴は実施例、特に配列SEQID番号Xが配列SEQID番号85を含む式(I)の核酸を含む配列SEQID番号86の核酸で示されている。そのPEGおよびビオチンとの結合後の構造は[図9]に示してある。
【0086】
すなわち、配列SEQID番号86の式(I)の核酸では、Biacoree(登録商標)法に従って測定したヒト因子VII/VIlaへの結合能力(解離定数Kdで表す)の値は約100nMである。さらに、式(I)のこの核酸はヒト血漿因子VII/VIIaおよび組換え型ヒト因子VII/VIIa、例えばトランスジェニクウサギで産生したものの両方に結合する能力を有し、その値は同じ程度である。
【0087】
さらに、式(I)の核酸とヒト因子VII/VIIaとの間の錯体は化学量論である。すなわち、錯体化したヒト因子VII/VIIaの分子数に対する式(I)の核酸の分子数の比はほぼ1:1、特に1:1である。
【0088】
従って、本発明の他の観点から、ヒト因子VII/VIIaに「特異的に」結合する式(I)の核酸のキャパシティは、ヒト因子VII/VIIaおよび非ヒト因子VII/VIIaにたいするそれぞれの解離定数Kdの比として表すこともできる。
【0089】
本発明の他の特徴から、ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する式(I)の核酸のキャパシティは、下記の条件(A)で表すことができる:
ヒトKd/非ヒトKd<0.01 (A)
(ここで、
「ヒトKd」は式(I)での核酸のヒト因子VII/VIIaに対する解離定数(モル単位表示)であり、
「非ヒトKd」は式(I)の核酸のヒト以外の因子VII/VIIaに対する解離定数で、同じモル単位で表示される。
【0090】
従って、本発明のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸では、ヒトKd/非ヒトKd比が0.01以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.001以下である。
【0091】
ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の式(I)の核酸のの特徴から、本発明のアプタマ核酸はヒト因子VII/VIIaとヒト以外の哺乳類に由来する非ヒト因子VII/VIIa、例えばウサギ・因子VII/VIIaとを区別するのに有利に使用できる。
【0092】
特に、本発明の式(I)の核酸は、ヒト以外の哺乳類に由来する因子VII/VIIaを含む材料から出発しか錯体からヒト因子VII/VIIaを精製する手段として遊離に使用することがができる。特に、式(I)の核酸は、ヒト因子VII/VIIaに対してトランスジェニクであるウサギからのバイオ液体(ウサギが天然に産生する因子VII/VIIaを含む)の組換え型因子VII/VIIaを精製する手段で使用できる。
【0093】
実施例に示すように、式(I)の核酸の他の特徴は、ヒト因子VII/VIIaとの錯体がこの錯体を金属カチオン−キレート剤と培養することによってヒト因子VII/VIIaを遊離する能力にある。特に、式(I)の核酸と錯体を形成した因子VII/VIIaの分子はEDTAのような金属カチオン−キレート剤と接触すると錯体からリリースされる。
【0094】
従って、本発明の他の観点から、ヒト因子VII/VIIaに対する式(I)の核酸の結合は、金属カチオン−キレート剤との接触、例えばEDTAとのに接触によって分離(解離)できる。
【0095】
本発明の式(I)の核酸のこの追加の特徴は、ヒト因子VII/VIIaを精製する手段としての上記核酸を使用する上で特に有利である。特に、この種の精製用途では、式(I)の核酸との錯体として固定されたヒト因子VII/VIIaを金属カチオン−キレート剤と接触させるか培養することで精製した形で簡単に回収でき、ヒト因子VII/VIIaを少なくとも部分的に変成する公知の物質の使用、例えば尿素の使用や酸性条件の使用は不要である。
【0096】
ヒト因子VII/VIIaを精製する手段としての使用では、本発明の式(I)の核酸を固体基質に固定(immobilize)するのが好ましい。この固体基質には固体粒子、クロマトグラフィ基質、その他が含まれる。核酸を各種固体基質上に固定する方法は当業者に周知である。
【0097】
固体基質はアガロースまたはセルロースまたは合成ゲル、例えばアクリルアミド、メタクリレートまたはポリスチレン誘導体のゲルのアフィニティークロマトグラフィカラムまたは表面プラスモン共振に適したチップ、ポリアミドのようなメンブレン、ポリアクリロニトリルまたはポリエステル・メンブレンまたは磁気またはパラマグネティクビーズすることができる。
【0098】
ヒト因子VII/VIIaを精製する手段として使用する本発明の式(I)の核酸はその化学構造中にスペーサ手段を含み、さらに必要に応じて固体基質上に固定するための手段を含むのが好ましい。
【0099】
従って、本発明は下記の式(II)を特徴とするヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物にも関するものである:
[SPAC]−[NUCL] (Il)、
(ここで、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaと特異的に結合する核酸を表す。
【0100】
上記化合物はヒト因子VII/VIIaを精製する手段の特定実施例を構成する。
【0101】
「スペーサ鎖」(式(Il)の化合物では[SPAC])で表示)は公知の任意のタイプにすることができる。このスペーサ鎖の機能は核酸[NUCL]を上記化合物が固定されている固体基質の表面から物理的に離し、
すことにある。核酸[NUCL]が固定される固体基質の表面に対して相対的に動けるようすることにある。このスペーサ鎖は固体基質が式(I)の核酸にあまり近付きすぎて核酸とそれに接触されるヒト因子VII/VIIa分子との間の結合が妨げる立体障害を制限または防ぐ役目をする。
【0102】
式(II)の化合物でのスペーサ鎖は核酸[NUCL]の5'末端または3'末端に結合されるのが好ましい。
【0103】
スペーサ鎖はアプタマの一端と固体基質とに結合されるのが好ましい。スペーサとのこの構造はアプタマを固体基質上に直接固定しないという利点がある。スペーサ鎖は非特異性のオリゴヌクレオチドまたはポリエチレングリコール(PEG)であるのが好ましい。スペーサ鎖が非特異性のオリゴヌクレオチドから成る場合、そのオリゴヌクレオチドは長さが少なくとも5つのヌクレオチド、好ましくは長さが5〜15のヌクレオチドから成るのが好ましい。
【0104】
スペーサ鎖がポリエチレングリコールから成る式(II)の化合物の実施例の場合、このスペーサ鎖はPEG(C18)タイプのポリエチレングリコールを含む。
【0105】
アプタマを固体基質に直接またはスペーサ鎖に固定する場合、核酸[NUCL]を種々の化学基、例えば核酸を共有結合で固定する基、例えばチオール、アミンまたは固体基質に存在する化学基と反応可能な他の任意の基で化学的に修正することができる。他の実施例では、スペーサ鎖はそれ自身を固体基質に固定することができる。この場合、必要に応じてスペーサを適切な化学基で変成することができる。他の実施例では可動基質上に核酸アプタマを有する化合物を固定させる化合物にスペーサ鎖を結合させる。
【0106】
従って、本発明は下記の式(III)であることを特徴とするヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物に関するものである:
[FIX]−[SPAC]−[NUCL] (III)
(ここで、
[FIX]は基質上に固定するための化合物を表し、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドからなるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【0107】
上記の式(III)の化合物はヒト因子VII/VIIaを精製する手段の実施例を構成する。
式(Il)または式(III)のヒト因子VII/VIIaを精製する手段は固体基質に結合された形であるのが好ましい。
式(III)の化合物で、化合物[FIX]は(i)固体基質の表面材料と一つ以上の共有結合を形成することができる化合物および(ii)弱い非共有結合、例えば水素結合、静電気力またはファンデルワールス力によって固体基質を拘束できる化合物の中から選択される化合物から成る。
【0108】
化合物[FIX]の第1の種類は二官能性カップリング剤、例えばグルタールアルデヒド、SlAB、その他のSMCCを含む。
【0109】
SlABは下記式(I)の化合物で、下記文献に記載されている:
【非特許文献6】Hermanson G.T. 1996, Bioconjugate techniques, San Diego: Academic Press, pp 239-242
【0110】
【0111】
化合物SlABは酢酸沃素およびスルホ−NHSエステル基を有する2つの反応基を有し、それぞれアミノ基およびスルフヒドリル基と反応する。
【0112】
化合物SMCCは下記文献に記載されている。
【非特許文献7】Samoszuk M.K. et al. 1989, Antibody, Immunoconjugates Radiopharm., 2(1): 37-46
【0113】
【0114】
化合物SMCCはそれぞれスルホ−NHSエステル基およびマレイミド基から成る2つの反応基を有し、それぞれアミノ基およびスルフヒドリル基と反応する。
【0115】
化合物[FIX]の第2の種類は固体基質に存在すアビジンまたはストレプトアビジン分子に非共有結合で結合可能なビオチンを含む。
【0116】
他の実施例では、スペーサ鎖を介して固体基質に固定した後アプタマを変成し、その遊離末端(スペーサに結合されてない末端)を例えば化学的に変成されたヌクレオチドにすることができる(例えば2'−O−メチルまたは2'−フルオロピリミジン、2'−リボプリン、ホスホアミディテ、逆ヌクレオチドまたは化学基(PEG、ポリ陽イオン、コレステロール)。これに限定されるものではない)。これらの変成でアプタマを酵素分解から保護することができる。
【0117】
固体基質はアガロースからまたはセルロースまたは合成ゲルから誘導されるゲルから成るアフィニティークロマトグラフィカラム、アクリルアミド、メタクリレートまたはポリスチレン誘導体、表面プラスモン共振に適したチップ、メンブレン、例えばポリアミド、ポリアクリロニトリルまたはポリエステルのメンブレンまたは磁気ビーズまたは正磁気ビーズにすることができる。
【0118】
本発明は下記(i)と(ii)との間の錯体にも関するものである:
(i)式(I)の核酸、式(II)の化合物および式(III)の化合物から選択される物質、そして、
(ii)ヒト因子VII/VIIa
【0119】
本発明の他の対象は、各々が核酸アプタマから成る(または含む)複数の分子がグラフトされている固体基質材料から成ることを特徴とするヒト因子VII/VIIaを固定化するための基質にある。上記分子は(a)式(I)の核酸、(b)式(II)の化合物および(c)式(III)の化合物である。
【0120】
上記基質は、ヒト因子VII/VIIaを固定する必要のある全ての用途で使用でき、これには因子VII/VIIaを精製するための用途と、ヒト因子VII/VIIaを検出するための用途とが含まれる。
【0121】
ヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する本発明の核酸アプタマを固定する基質の製造方法は実施例に示してある。本発明実施例では本発明のアプタマをヒトFVII/VIIaを捕捉するための薬剤として従ってよされ、サンプル中のヒトFVII/VIIaを精製または検出することができる。
【0122】
従って、本発明は、ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを式(I)の核酸、式(II)の化合物および式(III)の化合物の中から選択される物質を予め固定した固体基質と接触させる段階を含む、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定する方法にも関するものである。この方法は求められる技術対象に従って式(I)の核酸の分子と錯体を形成した固定されたヒト因子VII/VIIaの分子を回収する追加の段階を含むことができる。因子VII/VIIaを回収するこの追加の段階は式(I)の核酸と因子VII/VIIaとの錯体を金属カチオン−キレート剤、例えばEDTAと接触させてる段階から成る。
【0123】
従って、本発明の他の対象は、下記(a)と(b)の工程から成るヒト因子VII/VIIaの精製方法にある:
(a)ヒト因子VII/VIIaから成っているサンプルを式(I)の核酸、式(II)の化合物または式(III)の化合物または上記定義の固体基質と接触させて、(i)上記の核酸または基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間に錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成された錯体からヒト因子VII/VIIaを遊離させて、精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
【0124】
アプタマが固定された固体基質を使用するアフィニティークロマトグラフィによるタンパク精製方法を実行する際には当業者は下記文献に記載の方法を参照できる。
【非特許文献8】Romig et al. 1999, J Chomatogr B Biomed Sci Apl, Vol. 731(2): 275-284
【0125】
段階(a)でMgCl2濃度が低い緩衝液(バッファー)またはMgCl2を含まない緩衝液を使用したきに第VII因子の捕獲条件が改善されることが実施例は示している。
【0126】
「MgCl2濃度が低いMgCl2濃度が低い」とは最終MgCl2濃度が1mM以下である緩衝液を意味する。
【0127】
MgCl2濃度が1mM以下である緩衝液はMgCl2濃度が0.5mM以下、0.1mM以下、0.05mM以下および0.01mM以下、好ましくは0mMである緩衝液を含む。
【0128】
本発明の特定実施例の方法では、段階(a)の次で段階(b)の前に段階(a')を有する。この段階(a')は洗浄緩衝液で親和性基質を洗浄する段階から成る。好ましくは段階(a')で親和性基質を洗浄する間にイオン強度を増加させる。すなわち、段階(a)で使用した緩衝液のイオン強度と比較してイオン強度を増加させた洗浄緩衝液を使用する。段階(a')で使用する洗浄緩衝液のイオン強度は段階(a)で使用するイオン強度より2〜500倍大きいのが好ましい。好ましくは、段階(a')で使用する洗浄緩衝液のイオン強度を段階(a)で使用するイオン強度より100〜500倍、好ましくは200〜500倍大きくする。
【0129】
本発明実施例では、段階(a')の洗浄で高いイオン強度を有する洗浄緩衝液、特に、高いNaCl濃度を有する緩衝液を使用することで、親和性基質に対する第VII因子の結合性に影響を及ぼさずに、検出可能な方法で、非特異的に親和性基質に結合している物質を効果的に除去することができることが示されている。
【0130】
最終NaCl濃度が少なくとも1Mである洗浄緩衝液を段階(a')で使用するのが好ましい。
【0131】
本発明では最終NaCl濃度が少なくとも1Mである洗浄緩衝液は最終NaCl濃度が少なくとも1.5M、2M、2.5Mまたは少なくとも3M1Mである洗浄緩衝液を含む。
【0132】
本発明方法の段階(a')で使用する洗浄緩衝液の最終NaCl濃度は最大で3.5Mであるのが好ましい。本発明方法の段階(a')で使用する洗浄緩衝液の最終NaCl濃度は1.5〜3.5の間、好ましくは2〜3.5間、好ましくは2.5〜3.5の間、例えば3〜3.5の間にするのが有利である。
【0133】
本発明実施例ではさらに、段階(a')の。高い疎水性の洗浄緩衝液、特に高濃度のプロピレングリコールを使用することで、親和性基質に対する第VII因子の結合性に影響を及ぼさずに、検出可能な方法で、親和性基質に非特異的に結合した物質を効果的に除去することができるたとが示された。
【0134】
従って、段階(a')では少なくとも20%(v/v)の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液を使用するのが好ましい。
【0135】
本発明では、少なくとも20%の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液は、(洗浄緩衝液の全容積に対する)容積で少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または少なくとも60%の最終プロピレングリコール含量を有する洗浄緩衝液を含む。
【0136】
段階(a’)で使用する洗浄緩衝液は最大で50%の最終プロピレングリコール含量を有するのが好ましい。段階(a’)で使用する洗浄緩衝液は20%〜50%の間、好ましくは30%〜50%の間の最終プロピレングリコール含量を有するのが好ましい。
【0137】
本発明の特定実施例では、段階(a’)で使用する洗浄緩衝液はNaClとプロピレングリコールとを含む。
【0138】
精製法の実施例では、段階(b)を親和性基質を二価のイオン性キレート剤、好ましくはEDTAを含む溶出緩衝液と接触させて実行する。
【0139】
溶出緩衝液は例えば少なくとも1mMかつ最大で30mMの最終EDTA濃度を含むことができる。
【0140】
「少なくとも1mM」とは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10mMを含む。
【0141】
「最大で30mM」は29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14,13、12またはllmMを含む。
【0142】
本発明の核酸アプタマう有する親和性基質と、この親和性基質でヒト因子VIIを精製する方法は実施例に示してある。
【0143】
一般に、本発明のアプタマが固定さる固体基質は、濾過基質、チップ用シリコン基質、メンブレン等用に一般的な構造および組成を有する任意の基質を含む。特に、固体基質は樹脂、アフィニティークロマトグラフィカラム樹脂、ポリマビーズ、磁気ビーズ、その他を含む。特に、固体基質はガラスまたは金属、例えば鋼、金、銀、アルミニウム、銅、珪素、ガラスまたはセラミックをベースにした材料を含む。特に、固体基質はポリマー材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ弗化ビニリデンおよびこれらの組合せを含む。
【0144】
固体基質は付着、結合、錯体形成、固定化またはアプタマとの相互作用を容易にする材料で被覆されていてもよい。
【0145】
本発明の実施例では、固体基質は表面を金の層、カルボキシメチル化処理した層、デキストラン、ストレプトアビジン、コラーゲン、アビジン、その他の層で被覆されたガラススライドにすることができる。
【0146】
本発明のアプタマは付着コーテング、例えば上記の共有結合の生成または非共有結合(例えば水素結合、静電気力、ファンデルワールス力、その他)による会合反応によって固体基質上に固定できる。
【0147】
本発明で「親和性基質」とは本発明で定義の核酸アプタマが固定された固体材料から作られた基質を意味する。
【0148】
本発明の実施例にはアプタマが非共有結合によって固定された固体基質が基されている。
【0149】
本発明実施例にはストレプトアビジン分子の層で被覆されたガラススライドと、非共役ビオチン/ストレプトアビジン会合で基質上に固定された、ビオチン分子と共役した本発明のアプタマを有する固体基質が記載されている。
【0150】
本発明実施例は、ストレプトアビジン分子の層で被覆されたポリスチレン材料から成る固体基質と、非共役ビオチン/ストレプトアビジン会合で基質上に固定されたビオチン分子に本発明のアプタマが共役結合したものが記載されている。
【0151】
本発明実施例では、本発明アプタマは下記文献に記載のようにアフィニティークロマトグラフィ、通電クロマトグラフィおよびキャピラリ電気泳動に適した固体基質に固定することができる。
【非特許文献9】Ravelet et al. 2006, J Chromatogr A, Vol. 117(1): 1-10
【非特許文献10】Connor et al. 2006, J Chromatogr A, Vol. 111(2): 115-119
【非特許文献11】Cho et al. 2004, Electrophoresis, Vol.25(21-22) : 3730-3739
【非特許文献12】Zhao et al. 2008, Anal Chem, Vol. 80(10): 3915-3920
【0152】
長さが少なくとも15ヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する式(I)のアプタマまたは式(Il)の化合物または式(III)の化合物はヒトFVII/VIIaを捕捉するための薬剤として検出または治療および装置で有利に使用できる。
【0153】
本発明のさらに他の観点から、本発明は下記(a)と(b)の工程から成る、サンプル中のヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法にも関するものである:
(a)(i)式(I)の核酸または式(II)の化合物または式(III)の化合物またはこれらの核酸または化合物の分子が固定されている固体基質を(ii)サンプルと接触し、
(b)(i)式(I)の核酸、式(II)の化合物または式(III)の化合物または上記基質と(ii)因子VII/VIIaとの間に形成された錯体を検出する。
【0154】
本発明の実施例には、固体基質に予め固定した本発明のアプタマとヒトFVII/VIIaとを検出する方法の実施例が記載されている。
【0155】
本発明の検査方法を実行する場合に使用する固体基質は、ヒト因子VII/VIIaの精製方法に関して上記した固体基質から選択できる。
【0156】
ヒト因子VII/VIIaを検出する方法の実行または装置では、当業者は特下記文献に記載の方法を使用できる。
【特許文献9】欧州特許第EP1972693号公報
【特許文献10】国際特許第WO2008/038696号公報
【特許文献11】国際特許第WO2008/025830号公報
【特許文献12】国際特許第WO2007/0322359号公報
【0157】
本発明実施例では(i)上記核酸または固体基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する段階(b)が、実施例に記載のように、表面プラスモン共振信号を測定して行われる。
【0158】
本発明の他の実施例では、ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する段階(b)が、が形成されているであろう錯体をヒト因子VII/VIIaリガンドと接触させ、そのリガンドを検出する。本発明実施例では、酵素(実施例ではワサビペルオキシダーゼ)でラベル化したモノクローナルまたはポリクローナルの抗ヒトFVllNlIa抗体を、ELISA型のアッセイで従来から使用されているように、ヒト因子の検出リガンドとして用いる。
【0159】
ヒト・因子VII/VIIaを含むまたは含む多能性のあるサンプルはヒト因子VII/VIIaを含む液体試料にすることができ、ヒト因子VII/VIIaとヒト以外の哺乳類からの因子VII/VIIaの分子を含む液体試料を含むのが有利である。上記精製方法または検査方法の実施例では、サンプルは生物学的溶液、例えば体液、細胞、細胞物質、組織、組織材料、器官または全器官から成る。
【0160】
精製方法または検査方法の実施例では、前記サンプルは動物由来の液体の生物学的溶液、例えば血液、血液誘導物、哺乳動物乳汁または哺乳類の乳汁誘導物から成る。このサンプルは血漿、血漿凍結賃源物、精製乳汁またはその誘導物から成ることができる。
【0161】
精製方法または検査方法の実施例では、前記サンプルはヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク動物由来のものである。この溶液は哺乳類の乳汁またはヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク哺乳類からの乳汁の誘導物であるのが好ましい。本発明でトランスジェニック動物は(i)ヒトヒト以外の哺乳類、例えばウシ、ヤギ、ウサギ、ブタ、サル、ラットまたはハツカネズミ、(ii)鳥類、(iii)昆虫、例えば蚊、ハエまたはカイコを含む。本発明の好ましい実施例でのヒト因子VII/VIIa用トランスジェニク動物はヒト以外のトランスジェニク哺乳類、好ましくはヒト因子VIINlIa用トランスジェニク雌ウサギ(doe rabbits)。トランスジェニク哺乳類はトランスジェニク哺乳類の乳汁中にトランスジェニクタンパクを発現する特定プロモータの制御下にあるヒト因子VII/VIIaをコードする核酸を含む発現カセットをゲノムに挿入して、乳腺中に組換え型因子VII/VIIaを生産するのが好ましい。
【0162】
トランスジェニック動物の乳汁中にヒト因子VII/VIIaを生産する方法は下記工程から成ることができる:乳汁中に天然に分泌されるタンパクのプロモータの制御下にあるヒト因子VIINlIaをコードする遺伝子(例えばカゼイン・プロモータ、β−カゼイン・プロモータ、ラクトアルブミン・プロモータ、βラクトグロブリン・プロモータまたはWAPプロモータ)を有するDNA分子をヒト以外の哺乳類の胎児に一体化し、その胎児を同じ生物種の哺乳動物の雌下に置く。胎児から哺乳類が十分に成長すると、哺乳類から乳汁分泌が誘発され、それから乳汁を集める。この乳汁はヒト因子VII/VIIaを含む。
【0163】
ヒト以外の哺乳動物の雌の乳汁中でタンパクを調製する方法の例は下記文献に記載されている。
【特許文献13】欧州特許第EP0の527063号公報
【0164】
この特許の方法で本発明のタンパクを生産することができる。WAP(ホエー酸性タンパク)プロモータはWAP遺伝子のプロモータを含む配列を導入して調整できる。このプラスミドはWAPプロモータの制御下に置かれた異種遺伝子を受けることが可能な状態で調製できる。上記プロモータおよび本発明のタンパクをコードする遺伝子を含むプラスミドを用い、ウサギ胎児の雄の前核へマイクロインジェクションしてトランスジェニクウサギを得ることができる。それから胎児をホルモン調節した雌の輸卵管に移植する。トランスジェンの存在は得られた若いトランスジェニクウサギから抽出したDNAを用してサザン法によって確認される。動物の乳汁濃度は特定の放射性免疫アッセイで評価される。
【0165】
ヒト以外の哺乳動物雌の乳汁中でタンパクを調製する方法はかの文献にも記載されている。例えば特許文献14(トランスジェニクなハツカネズミ)および特許文献15(トランスジェニク哺乳類のフォンビルブラント因子の生産)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【特許文献14】米国特許第US7,045,676号明細書
【特許文献15】欧州特許第EP1739170号公報
【0166】
本発明の他の態様によって、長さが少なくとも15個のヌクレオチドであるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸は、例えばVIl因子/組織因子錯体の形成を抑制することによって因子VIlaによる因子Xの活性化を阻止する必要のある生理的状況下でインビボで使用できる。
【0167】
換言すれば、本明細書に定義のアプタマ核酸は医薬品の血液凝固阻止剤活性成分として予防的または治療的に使用できる。
【0168】
特に、現在の説明において定義したアプタマ核酸が、予防であるか治療の血液凝固阻止剤活性成分として、特に、静脈血栓症、動脈の血栓症、ポスト−外科の血栓症、冠状動脈バイパス・グラフト鎖(CABG)と関連がある無秩序、行程、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、腫瘍を含む凝固無秩序の処置のために使われることができる転移、軽いまたは激しい炎症反応、腐敗菌激突、低血圧、急性呼吸不全症候群(ARDS)、肺のembohsms、播種性血管内凝固(DIC)、脈管のreste番号ses、プレートレット鉱床、心筋梗塞、脈管形成、そして、血栓症を開発する危険を有する人類または女性のあらゆる病気予防の処置。
【0169】
本発明の一つの対象は、長さが少なくとも15個のヌクレオチドである本明細書で定義したヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸と、一種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬品組成物にある。
【0170】
医薬品組成物中での本発明の抗ヒトFVII/FVIIaアプタマ核酸の量は、患者にこの活性成分の有効量を投与できるように調節される。本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマの投与量は医師または薬剤師が容易に決定できる。一般に、投与される活性成分の量は年齢、医学条件および患者の性、病気の程度、病気の進行度に応じて当業者が容易に決定できる。
【0171】
一般に、医薬品組成物は抗ヒトFVII/VIIaアプタマの量が単位供与量で1ナノグラムから100ミリグラム、好ましくは100ナノグラムから10ミリグラムとなる量である。
【0172】
一般に、本発明の医薬品は組成物の全重量に対して0.01重量%から99.9重量%までの抗FVII/VIIaアプタマまたは複数の抗FVII/VIIaアプタマの組合せと、99.9重量%から0.01重量%までの賦形剤または賦形剤の組合せとからなる。
【0173】
本発明の他の実施例では、医薬品組成物は1種、2種、3種、4種、5種または6種の別々の抗FVII/VIIaアプタマの組合せから成る。
【0174】
本発明の医薬品組成物の調製では当業者はレミントンハンドブックを参照することができる。
【0175】
本発明の医薬品組成物は非経口、局所投与で予防的または治療で使用できる。従って、本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマは投与に適した形、例えば液体の形に調製されるか、凍結乾燥にすることができる。本発明の抗ヒトFVII/VIIaアプタマの医薬品組成物は薬学的に許容される賦形剤および/またはビヒクル(好ましくは水溶性)を含むことができる。薬学的に許容される多くの賦形剤および/またはビヒクル、生理学的条件を再生するの必要な薬剤、例えば水、緩衝水、食塩水、グリシン溶液およびこれの誘導体、例えば、緩衝剤およびpH調整剤、界面活性剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化カルシウム等使用できるが、これらに限定さるものではない。医薬品組成物は当業者に周知の方法で殺菌できる。一般に、本発明の医薬品組成物を生産するには当業者は下記文献を参照することができる。
【非特許文献13】European Pharmacopeiaの最新版、例えば2005年1月発行のEuropean Pharmacopeia第5版および2007年6月発行のEuropean Pharmacopeia第6版
【0176】
活性成分としてアプタマを含む医薬品組成物の生産のために当業者は下記文献を参照できる。
【特許文献16】国際特許第WO2007/058801号公報
【特許文献17】国際特許第WO2005/084412号公報
【特許文献18】国際特許第WO2004/047742号公報
【特許文献19】国際特許第WO2008/150495号公報
【0177】
本発明の医薬品組成物の実施例では、抗ヒトFVII/VIIaアプタマ活性成分を単独で用いるか、一種以上の他の薬学的に活性な分子、例えば一種以上の他の血液凝固阻止剤活性成分と一緒に使用できる。
【0178】
本発明はさらに、長さが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸の、医薬品としての使用にも関するものである。
【0179】
本発明はさらに、長さのが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸の、凝固不全の治療用医薬品の生産での用にも関するものである。
【0180】
本発明はさらに、長さのが少なくとも15個のヌクレオチドである上記定義のヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸のも、凝固不全の治療での使用にも関するものである。
【0181】
本発明の他の対象は、上記定義の組成物を凝固不全の予防または治療を必要とする患者に抗ヒトVII/VIIaアプタマ医薬品を投与する段階を有する凝固不全の予防または治療方法にある、
【0182】
一般に、本発明定義の抗ヒトVII/VIIaアプタマ剤の一日当たりの投与量は80kgの体重の患者で1ナノグラムから10ミリグラムまで、好ましくは100ナノグラムから100ミリグラムである。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0183】
実施例1
基質上に固定したヒト因子VIl/VIlaによる本発明アプタマ核酸の捕獲
血漿由来の精製されたヒト因子VII/VIIa分子を固定した固体基質を製造した。NHS−EDCで活性化したカルボキシメチルデキストランにヒト第VII因子を固定した。これはFVII/VIIa中に存在するフリーなアミンと結合する。すなわち、ヒト因子VIl/VIlaが2743RU(1RUは単位mm2当たり生成物が約1pg固定されることに対応する)の固定化度で固定した。
【0184】
本発明の核酸アプタマ(純度:99%)(それぞれMapt2アプタマ(SEQID番号86)、Mapt3アプタマ(SEQID番号41)およびMapt7アプタマ(SEQID番号58)をランニング緩衝液液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)中に希釈して3つのアプタマ・サンプルを得た。
【0185】
各サンプルは固定されたヒトFVIIを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入して、固定したヒトFVIIアプタマを分離させた。このチップを用いて固定したヒトFVIIとテストした各アプタマMapt2、Mapt3およびMapt7との間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したヒトFVIIへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図2])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
得られた結果はテストした全ての核酸アプタマがヒト血漿第VII因子に大きな親和性で結合したことを示している。
【0186】
実施例2
基質に固定した本発明のアプタマ核酸によるヒト因子VII/VIIaの捕獲
配列SEQID番号86の本発明核酸アプタマ分子(「Mapt2」)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端を化学的に変成してPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖に連結した。それから、アプタマに連結した末端とは反対側のスペーサ鎖の遊離末端にビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
次いで、上記アプタマ化合物と接触させて、基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子との間の非共役会合によって上記固体基質を配列SEQID番号86の核酸を固定する。
Mapt2アプタマは983RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0187】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が62、125、250および500nMのサンプルを得る。別に、多可免疫グロブリン(TegeIine(登録商標)、LFB(フランス)から市販)の調節物をランニング緩衝液(50mMトリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して多可免疫グロブリンP濃度が62、125、250および500nMのサンプルを得る。
【0188】
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入してアプタマからFVIIHPを分離させた。このチップを用いて固定したFVll HPまたは多原子価の免疫グロブリンと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図3])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例はMapt2アプタマは固定したときに大きな親和性でFVII HPに結合することを示してしいる。Mapt2アプタマは多価免疫グロブリンには結合しない。
【0189】
実施例3
基質に固定した本発明のアプタマ核酸によるヒト因子FVII/FVIIaの捕獲
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは424.9RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0190】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が500nMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で60秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVll HPと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図4])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。
【0191】
固定したアプタマに結合した生成物が本当にFVIIであることを確認するために、注射の順番は(i)500nMのFVII HP、(ii)抗FVIIモノクローナル抗体1μM(シグマ社、Ref Clone番号MC1476/E.A.8.1)を同じチップで実行した。注射および解析条件は上記と同一である。アプタマが実際にFVIIを保持している場合、FVIIに対して抗体が結合した結果として抗FVIIモノクローナル抗体の注射でRU信号が増加することが反映されなければならな。コントロールとして抗体単独を注入した。RU信号が増加し、アプタマがFVIIを認識することを明らかに示している(図4)。
記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例の結果は、アプタマは固定したときに、FVIIHPに特異的に結合することを示し、大きな親和性を有し、観測した信号本当にアプタマ上のFVIIの保持によるものである。
【0192】
実施例4
Mapt2アプタマ/ヒト血漿FVIIストイキオメトリ
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは983RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0193】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が1μMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で700秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVll HPと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図5])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
【0194】
この実施例の結果は、注射時間中にMapt2アプタマに結合するヒトFVIIの量が増加することと、注射時間(700秒)が終ってもヒトFVII分子によるアプタマのサイトの飽和にはまだ達しないこととを示している。この結果は固体基質の表面に固定されたMapt2アプタマ分子の大部分がヒトFy11と結合できることを示している。
これらの結果は、アプタマがその標的に結合することができるコンフォメーションはこの形のアプタマの大多数に対して十分に安定していることを示し、このコンフォメーションは固定化によって悪く変化したり悪くさらないことを示している。
これらの結果はさらに、Mapt2/ヒトFVII結合ストイキオメトリは約1/1であることを示している。
【0195】
Mapt2/ヒトFVII結合の場合、最高信号は下記で得られる:
[MWFVII/MWMapt2]*固定化レベル*stoichio
(ここで、
MWFVIIはヒトFVIIの分子量を表し、50kDaに等しく、
MWMapt2はMapt2の分子量を表し、27kDaに等しく、
固定化のレベルはこの例では983.3であり、
stoichioはMapt2/FVIIストイキオメトリを表し、1に等しい)
上記の式で得られる最高信号値:1820RU
【0196】
ヒト因子VIIの分子を結合したMapt2アプタマの百分比は式:測定信号/予想信号から計算される。
(ここで、測定信号は124RUに等しく、予想信号は1820RUに等しい)
上記の式では、注射の終わりにヒトFVIIの分子と結合したMapt2アプタマ分子の百分比は62%である。
【0197】
実施例5
Mapt2アプタマのヒト血漿FVIIに結合するキネティクス
配列SEQID番号86の本発明核酸アプタマ(Mapt2)の分子がが固定した固体基質を製造する。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは425RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0198】
血漿から精製したヒトFVII(FVII HP、純度:99%)をランニング緩衝液(50mM−トリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈してFVII HP濃度が125、250(2倍)、500nMおよび1000mMのサンプルを得る。
各サンプルはビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定されたMapt2アプタマを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
ヒト血漿FVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合キネティクス曲線をBiacore(登録商標)の専用モジュール制御Software(バージョン1.2)で計算した。固定したMapt2アプタマのヒト・血漿FVIIへの結合キネティクス曲線を[図6]に示した。
このMapt2アプタマのヒトFVIIへの結合キネティクスの計算結果から下記が決定できる:
(1)Mapt2の解離定数Kdは99.9nMである、
(2)Mapt2の会合定数Ka(6.25×103M-1s-1)は6.25×10-4s-1である。
【0199】
実施例6
EDTAによる組換え型ヒトFVllの溶出
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
また、ビオチン化抗−FVIIポリクローナル抗体分子を固定した固体基質も製造した。
Mapt2アプタマまたは抗ヒトFVIIポリクローナル抗体を有する固体基質はELISAアッセイ用96−ウエルプレートから成る。
【0200】
抗ヒトFVIIポリクローナル抗体はワサビ(hrseradish)ペルオキシダーゼでラベル化して視覚化して使用した。アッセイ条件の詳細は以下の通り:
(1) プレート:ビオビンストレプタビディン(Biobind Streptavidin)被覆(Thermo ref:95029293)緩衝:
(2) 固定化:50mMトリス、150mM-NaCl、0.1%Tween20/pH=7.5
(3) Ca2+/Mg2+洗浄:50mMトリス、50mM-NaCl、10mM-CaCl2、4mM-MgCl2(0.1%Tween20/pH=7.4
(4) EDTA洗浄:注射水中の10mM-EDTA+0.1%Tween20
(5) リガンド:Eurogentec社が化学合成で得たMapt2、固定化濃度は200nM、容積=100μl、外界温度で1時間
(6) 対照リガンド:FVIIアフィニティークロマトグラフィに精製した抗FVIIポリクローナル抗体(R&D System Ref:BAF2338)
固定化濃度 200nM:容積=100μl、外界温度で1時間
(7)サンプル:ウサギで生産したトランスジェニクなヒトFVII、1%BSAで安定化、バッチ:479186。濃度=100nM、堆積容積=100μl、外界温度で1時間15分
(8) 視覚化抗体:Asserachromから供給のVII:Agキット(diagnostica Stago):サプライヤーの推薦に従って調製。容積=100μl、外界温度で45分
(9) 視覚化:1ウエル当たりOPD+H2O2溶液100μl
(10) 反応停止:H2S04(1ウエル当たり50μl)
(11) 読取:492ナノメートル。
492ナノメートルでのODで表した結果を[表l]に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
この実施例の結果はヒトFy11とMapt2アプタマとの結合のみがEDTAで溶出することを示す。
【0203】
実施例7
各種のヒト第VII因子へのアプタマの結合
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマの分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは4326RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。Mapt2を固定した固体基質の一部を「活性セル」とよぶ。同じ方法でこの固体基質の独立した部分にいくつかの核酸分子またはその他を4069RUの固定化度で固定した。これを「対照セル」と呼ぶ。
下記の各種ヒト第VII因子を使用した:
(1)Acset精製法に従って得たヒト血漿FVII、
(2)ウサギで作った組換え型ヒトFVII、
(3)ヤギで作った組換え型ヒトFVII、
(4)組換え型ヒトFVII(Novoseven(登録商標)から市販)
【0204】
各サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含む同じ活性セル(固体基質)上へ順次注入した。コントロール(対照)にはランニング緩衝液のみを含むブランクを注入した。上記の固定した核酸、その他を含む対照セルに同じサンプルを注入するとバックグラウンドノイズに対応する信号が得られる。この信号を活性セルで得られた信号から引いた。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。それから溶出緩衝液(15mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒間注入してFVIIをアプタマから分離した。このチップを用いてFVIIと固定したアプタマとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図7])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。結果は[図7]に示した。
この実施例の結果から、アプタマは固定することによってヒト血漿第VII因子およびウサギおよびヤギを含む種々のトランスジェニック(遺伝子導入実験)動物で作った組換え型ヒト因子VIIを含む極めて多種のヒト第VII因子に特異的に結合するが示された。
【0205】
実施例8
ヒト因子VIIへのアプタマの特異的結合
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。
固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端を化学的に変成してPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖に連結した。それから、アプタマに連結した末端とは反対側のスペーサ鎖の遊離末端にビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子およびアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは4326RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
Mapt2を固定した固体基質の一部を「活性セル」とよぶ。同じ方法でこの固体基質の独立した部分にいくつかの核酸分子またはその他を4069RUの固定化度で固定した。これを「対照セル」と呼ぶ。
下記の各種ヒト第VII因子を使用した:
(1)Acset精製法に従って得たヒト・血漿FVII、
(2)アメリカのDiagnostica社から市販の組換え型ウサギFVII(ref 4O7RAB、バッチ番号:080818)
【0206】
各サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含む同じ活性セル(固体基質)上へ順次注入した。コントロール(対照)にはランニング緩衝液のみを含むブランクを注入した。上記の固定した核酸、その他を含む対照セルに同じサンプルを注入するとバックグラウンドノイズに対応する信号が得られる。この信号を活性セルで得られた信号から引いた。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。それから溶出緩衝液(15mM−EDTA)を30μl/分の流速で30秒間注入してヒト・ウサギFVIIをアプタマから分離した。このチップを用いてFVIIと固定したアプタとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図8])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
この実施例の結果から、上記アプタマは固定するとヒトFVII/VIIaに極めて特異的に結合し、ウサギFVII/VIIaには結合しないことが示された。
【0207】
実施例9
親和性基質の製造方法
ストレプトアビジン(streptavidin)(streptavidin−agarose-Novagen、登録商標)を表面にグラフトしたマトリックスから成る固体基質材料から親和性基質を調製した。
1ml容積のゲルをカラム(i.d.11mm)から成る容器に入れた。貯蔵溶剤を除去するためにゲルを精製水で洗浄した。ゲルの特徴は以下の通り:
(1)ビオチン吸着能:≧85ナノモル/1mlゲル
(2)機能テスト:ATで30分間のコースでビオチン標識化したトロンビンのキャプチャー>99%、
(3その他のテスト:プロテアーゼ無し、エンド/エクソヌクレアーゼ無し、にRNase無し
(3)防腐剤:100mMリン酸ナトリウムpH7.5+NaN3 0.02
【0208】
充填カラム(ゲル・ベッド高さ=1cm)の出口に254nmのUVフィルターと記録装置とを備えた吸光度検出器を接続した。
配列SEQID番号86のビオチン標識化した抗ヒトFVII核酸アプタマを精製水中に0.5mg/0.187mlの最終濃度(すなわち最終モル濃度=0.1mM)で可溶化した。核酸アプタマ溶液を標準サイクルに従って95℃で活性化して固体基質材料上にアプタマを固定化した。
核酸アプタマ溶液を4.8mlの精製水で、次に1.5mlのMe++緩衝液(5×濃度)で予備希釈した。
吸光度検出器を1AUFS(吸光度単位フルスケール)に合わせ、254nmでこの溶液のODを0.575U254で記録した。
ビオチン標識化した核酸アプタマ溶液は予備パックしたストレプトアビジン−アダロースゲル上へ注入し、ペリスタル型ポンプで2.5ml/分の流速で再循環させた(すなわちゲル(入口/出口 I/O)上での接触時間=24秒)。上記条件での254nmでのODは直ちに0.05AU254(すなわち理論的なカップリング値の91%)に到達した。すなわち1ミリリットルのゲル当たり0.455mgの核酸アプタマで安定する。
4mM−MgCl2+10mM−CaCl2緩衝液で洗浄し、次いで2M−NaClで洗浄して固体基質材料上にグラフトしたストレプトアビジン分子に特異的に結合していない核酸アプタマを除去した。
【0209】
実施例10
組換え型ヒト因子VIIの精製方法
上記のアプタマ親和性基質を下記文献に記載の方法で調製した精製されたFVll/FVllaを使用してテストした。
【特許文献20】国際特許第W02008/099077号公報
【0210】
被精製サンプルの製造
出発材料の生物物質は組換え型ヒトFVIIを含むトランスジェニクウサギ乳汁である。発現カセットはβ−カゼイン遺伝子プロモータの制御下にあるヒトFVIIトランスジーンから成る。簡単に言うと、140ミリリットルの乳汁を出生後の日4〜日12の間の初乳汁分泌を2匹のウサギから集め、集めた乳汁のアミド分解(amidolytic)FVII(生物学的に活性化されたFVII)の平均タイター値は928lU/mlである。乳汁は−80℃の温度で保存した。
テスト時にはウサギ乳汁を水浴中で37℃の温度で解凍し、クエン酸ナトリウム溶液で希釈してpH7.5での最終クエン酸塩濃度を62g/lにした。このクエン酸ナトリウム処理で燐酸カルシウム(phosphocalcic)カゼインミセルを不安定できる。乳汁のリピドリッチなタンパク溶液は一連の濾過器(それぞれ(i)15〜0.5μm気孔率閾値の深型濾過器と(i)0.2μmメンブランフィルタ)で精製する。
【0211】
198lU/mIのFVIIタイター(すなわち36mgのトランスジェニクFyII)を有する濾過後の溶液の容積360mlを16ml容積のMEP-HyperCelクロマトグラフィ・ゲル(Pall BioSepra)で予備精製した。この捕獲ゲルを用いることでカゼインを含む乳タンパクの95%を除去でき、しかも、FVIIの初期量の60%を保持できる。
上記段階の終わりに得られた17.5mgの低純度FVII(〜5%)は容積20mlのQ-sepharoseXL(登録商標)(GE Healthcare)を使用したイオン交換クロマトグラフィで精製する。ヒトFVIIは、78ml容積の5mM−塩化カルシウムを含む緩衝液で溶出する。アミド分解(amidolytic)FVII濃度は337lU/mlすなわち0.17mgのFVII/mlで、280nm、ε1%=13でODで測定した全タンパクは0.18mg/ml、と見積もられる。従って、FVII純度は94%。
【0212】
ウサギ乳汁由来の残留タンパクをこの段階でFVIIから分離するのは、構造上類似性、例えばGLA−domainまたはEGFdomainタンパクのため、あるいは物理化学的な類似性(イオン電荷および/または分子寸法が類似)のため、難しい。従来方法では直交法(ヒドロキシアパタイトゲルとサイズ排除クロマトグラフィ分離の組合せ)によって純度を99.95%まで改良できる。
しかし、人間で繰り返して注射する場合には、遺伝子組換えタンパクで許容される外来タンパクに対する負荷は50ppmを超えてはならない。すなわち純度>99.995%でなければならない。この純度はアフィニティーマトリックスでの精製だけで達成できるように見える。
【0213】
本発明の親和性基質での組換え型ヒトFVIIの精製段階
上記段階の終わりに得られた精製されたヒトFVII溶液の6mlの容積(FVIIの1.1mg)を用いて本発明の親和性基質で高純度の組換え型ヒトFVIIに精製する段階を行う。上記段階で得られたFVII溶液う4mM−MgCl2、10mM−CaCl2、pH7.5に予備調節し、アプタマ−アガロースゲル(親和性基質)上にペリスタル型ポンプで0.1ml/分の流速で注入する(すなわち、親和性基質との接触時間10分)(I/O)。
注射後、ゲルを50mMトリス+50mM−NaCl+4mMMgCl2+10mMCaCl2、pH7.5緩衝液で洗浄する。10mlの非吸着溶液を回収する。FVIIは50mMトリス+10mM−EDTA、pH7.5緩衝液で溶出させる。溶出ピークの収集はODプロフィルに従って実行する。モル計算から親和性基質に固定された核酸アプタマの量は17ナノモルで、これはFVII分子とのモル−モル相互作用で、FVIIの0.9mgの親和性基質の絶対キャパシティに対応する。
【0214】
[図11]は254nmでの吸光度値(OD)を連続モニターしたウサギ乳汁中に産生された組換え型ヒトFVIIのクロマトグラフィ・プロフィルを示す。この[図11]で注射(1)後の吸収曲線の屈曲(2)は組換え型ヒトFVIIと親和性基質の飽和開始を示す。時間(3)で組換え型ヒトFVIIの注射を停止する。[図1]の直線状時間のスケールを示すと、注射開始時間(1)と注射終了時間(2)との間の持続時間は10分である。親和性基質は上記凝固タンパクで飽和し続け、(i)親和性基質の抗FVII核酸アプタマと(ii)被精製組成物中に最初に含まれていた組換え型ヒトFVII分子との間に錯体が形成される。被精製組成物をカラムに送り、カラムを緩衝液で洗浄する(洗浄段階6)。その後、時間(4)で10mMの最終EDTA濃度から成る緩衝液を注入して溶出段階を実行する。吸収ピークは核酸アプタマ/組換え型FVII錯体から組換え型ヒトFVIIが開放されたことを示している。組換え型ヒトFVIIの分子は迅速にリリースされ、従って、少容積である点に注意されたい。従って、本発明の親和性基質によって組換え型ヒトFVIIタンパクの高濃度の溶出溶液が得られる。時間(5)で50mMトリス緩衝液を用いて親和性基質を再生させる段階を実行する。(7)で見られる吸光度ピークは再生段階で親和性基質から開放された物質に対応する。
【0215】
親和性基質の動的結合能
下記の[表2]に示すテスト結果は0.45〜0.49mg/mlの親和性マトリックスすなわちバイオアベイラブル(bioavailable)なリガンドの50〜55%の動的結合能を示す。EDTAで約5%の動的溶出が計算される。
【0216】
【表2】
【0217】
親和性基質の特異的分離能
親和性基質の特異性をウサギ乳タンパクに特異的なELISAアッセイで評価した。結果は[表3]に示した。
【0218】
【表3】
【0219】
[表3]の結果は、トランスジェニクなヒトFVIIの純度を98.3%〜99.95%とすると、アプタマ−アガロースによる除去の平均値2log10が得られることを示す。これはヒトFVIIに対するアプタマの特異性を示し、残利希有ウサギ乳タンパクとの相互作用はほとんどないことを示す。
溶出前に2M−NaClおよび/またはプロピレングリコールまたは50%エチレングリコール溶液で中間洗浄すると結果はより良くなる(これらの条件ではFVIIは溶出されない)。
実施例10の結果は、アプタマ−アガロースゲル上での親和性基質がリガンド1mg当たり少なくとも1mgのFVIIの動的結合能の優れた特徴を有することを示し、溶出収率は少なくとも75%である。また、純度の明らかな改良(〜99.95%)、残留ウサギ乳タンパクRMPの除去2log10からも特異性は確認できる。最適化していない2つのテストで最終レベルは約500ppmになる。
【0220】
実施例11
基質に固定したヒト因子VII/VIIaによる本発明アプタマ核酸の捕獲
血漿由来の精製されたヒト因子VII/VIIa分子を固定した固体基質を製造した。
FVII/VIIa中に存在するフリーのアミンを結合するNHS−EDCで活性化したしカルボキシメチルデキストランにヒト第VII因子を固定した。すなわち、ヒト因子VII/VIIaを2525RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定した。
本発明の一連の27の核酸アプタマ(純度:99%)(アプタマに従って43〜66の長さを有するヌクレオチド)をランニング緩衝液(50mMトリス、50で希釈するた‖mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.5)して3つのアプタマサンプルを得る。
テストされる各アプタマをランニング緩衝液に最終濃度1μMで注入した。各サンプルは固定されたヒトFVIIを含む同じチップ(固体基質)上に順次注入した。コントロール(対照)はランニング緩衝液液のみを含むブランクを注入して得た。全ての注射は30μl/分の速度で60秒間で実行した。注射後、120秒でランニング緩衝液液をチップ上へ全て同じ速度で注入した。それから溶出緩衝液(5mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒かけて注入してアプタマからFVII HPを分離させた。このチップを用いてFVIIとテストしたすアプタとの間の相互作用の形成および分断を表面プラスモン共振(SPR)によってリアル・タイムで調べた。固定したアプタマへの結合は装置で記録した共振単位(RU)信号の増加に反映される([図El])。その解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。結果は[図12][図13]に示した。
【0221】
[図12]は表面プラスモン共振法に従ったテストでの基質に固定したヒト・血漿第VII因子に対する本発明の一連の27の核酸アプタマの結合曲線を示す。X軸:時間(秒);Y軸:共振信号(任意単位)。
[図13]はテストした27のアプタマの各々の安定結合の信号値を示す。X軸:テストした27のアプタマ;Y軸:共振信号(任意単位)。
ヒト因子VIIに対する親和性の差によるアプタマの4つグループが観測される。Mapt2「コア配列」は低親和性グループに属する。ファミリー2の1つの代表は他より高い親和性を有する。このアプタマをMapt2.2と呼び、下記の「コア配列」を有する:
5'CCGCACGCTACGCGCATGAACCCGCGCACACGACTTGAAGTAGC3' (SEQID番号33)
しかし、得られた結果はテストした全ての核酸アプタマがヒト・血漿第VII因子に有意な親和性を有することを示している。
【0222】
実施例12
ヒト血漿第VII因子の精製方法
A.材料と方法
A.1 アフィニティークロマトグラフィ基質
「Mapt−2コア」アプタマを固定した親和性ゲル材料を、アプタマとビオチンとの間にスペーサ鎖無しに、ビオチンに直接結合した。アプタマは5'−末端ビオチンでストレプトアビジンゲル(供給元Nivagen)に固定した。理論リガンド濃度は0.4mg/ml:XK16カラム(GE)にパックした容積1ml。
使用したアプタマは配列SEQID番号20のアプタマである。この出発生成物は第VII因子の切詰め不純物および劣化第VII因子の形の不純物を含む。劣化第VII因子はガンマ−カルボキシル化で変性された第VII因子の形を含む。
【0223】
A.3 精製プロトコル
ゲル平衡化:0.050M−トリス−HCl、0.010M CaCl2、0.05mM MgCl2、pH7.5、
溶出: 0.020Mトリス−HCl、0.010M EDTA、pH7.5、
98%まで精製した240μgのヒト・血漿FVIIを平衡化緩衝液中に流速0.5ml/分で注入した。保持されなかったピークの検出後、2カラム容積の溶出緩衝液を注入した。タンパクのピークは280nm波長で吸光度値を測定して検出した。
【0224】
B.結果
結果は[図14]および[図15]に示す。
[図14]は時間を関数とする280nmで測定した吸光度曲線。[図14]のピーク番号1はカラムに保持されなかった出発生成物の分画に対応する。ピーク番号2は溶出分画に対応する。
出発生成物および溶出生成物硝酸銀染色したSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析して不純物が除去されたことを視覚化した。[図15]はこのゲルを表す。レーン番号1は出発生成物分画に対応し、レーン番号2は溶出分画に対応する。出発生成物の純度にもかかわらず、溶出画分は汚染物または劣化物を含まない点に注意されたい。
[図14]および[図15]の結果は配列SEQID番号20のアプタマはヒトFVIIに結合でき、EDTAの存在下で特異的に溶出できることを示している。
【0225】
実施例13
アプタマのウサギFVIIへの結合の非存在
A.材料と方法
A.1 アフィニティークロマトグラフ基質
5'−末端にスペーサ鎖を介して配列SEQID番号86のアプタマを固定したストレプトアビジンゲル(供給元Nivagen)に固定した。理論リガンド濃度は0.35mg/ml:容積1ml。使用したアプタマは配列SEQID番号86のアプタマである。
A.2 出発生成物
ウサギ・血漿から精製して得たウサギFVIIがリッチなヒドロキシアパタイト溶出液、接触時間10分、流速0.5ml/分。
A.3 精製プロトコル
ゲル平衡化:0.050Mトリス−HCl、0.010M CaCl2、0.05mM MgSO3、pH7.5、
溶出:0.050Mトリス−HCl 0.010M EDTA、pH7.5
36μgを10分間の接触時間でゲルに注入する。溶出は2mlの溶出緩衝液を注入して実行した。タンパクのピークは280nmの波長での吸光度値を測定して検出した。
【0226】
A.4 タンパクおよび第VII因子に関する画分の分析プロトコル
各画分はそのアミド分解活性をStagoキット(因子VIIa StatClotキット)を使用して発色アッセイによって分析した(供給元の推薦に従った)。アミド分解活性を各画分に含まれるFVIIのμgに換算した。
B.結果
結果は[表4]に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
[表4]の結果は配列SEQID番号86のMapt−2アプタマが固定した親和性ゲルにはウサギ第VII因子は保持されないことを示している。
【0229】
実施例14
Biacore(NaCl耐性)上でのアプタマとヒト因子VIIとの相互作用のプロトコルの特定実施例
A.材料と方法
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは3772RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
トランスジェニクなウサギ乳汁から得た精製したトランスジェニクヒトFVII(FVII HPTG、純度:98%)をランニング緩衝液(50mMトリス、50mM−NaCl、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して200mMのFVII濃度のサンプルを得た。
【0230】
サンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって固定したMapt2アプタマを含むチップ(固体基質)上へ注入した。次いで、NaCl濃度を増大させた緩衝液を固体基質上に注入した(1M−Nalから3M−NaClき濃度を3シリーズ注入)。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行した。注射の後、120秒間、ランニング緩衝液はチップ上へ同じ流速で注入した。3つの緩衝液の3シリーズの注入後、溶出緩衝液(10mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒間注入してFVII HPTGをアプタマからから分離した。
解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
トランスジェニクなヒトFVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合曲線はBiacore(登録商標)の専用モジュール制御ソフトウェア(バージョン1.2)で計算した。
ヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合結果から、ヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合はNaClを含む緩衝液の注入によって有害な程度には変更されないということが分かる。
B.結果
結果は[図16]に示してある。
【0231】
実施例15
Biacore(プロピレングリコール耐性)上でのヒト因子VIIとアプタマとの相互作用のためのプロトコルの特定実施例
A.材料と方法
配列SEQID番号86の本発明の核酸アプタマ分子(Mapt2)を固定した固体基質を製造した。固体基質に結合する前にMapt2アプタマの5'末端に化学的にPEG(C18)の4つの分子から成るスペーサ鎖を連結した。また、アプタマに連結した末端の反対側のスペーサ鎖の遊離末端にはビオチン分子を連結した。
固定したストレプトアビジン分子を含む固体基質は提供された(Series S sensor ChipSA.GE)。
基質のストレプトアビジン分子とアプタマ化合物のビオチン分子間の非共役会合によって配列SEQID番号86の核酸を固定するために上記の固体基質をアプタマ化合物と接触させた。
Mapt2アプタマは5319RU(1RUは単位mm2当たり固定した生成物が約1pgに対応)の固定化度で固定された。
【0232】
トランスジェニクウサギ乳汁から得た精製したトランスジェニクヒトFVII(FVII HPTG、純度:98%)をランニング緩衝液(50mMトリス、10mM−CaCl2、4mM−MgCl2、pH7.4)で希釈して200mMのFVII濃度のサンプルを得た。このサンプルをビオチン−ストレプトアビジン相互作用で固定したMapt2アプタマを含むチップ(固体基質)上へ注入した。次に、50%のプロピレングリコールを含む緩衝液を固体基質上へ注入した。全ての注射は30μl/分の流速で60秒間で実行された。50%プロピレングリコールを含む緩衝液を注入後、溶出緩衝液(10mM−EDTA)を30μl/分の流速で75秒間で注入して、FVII HPTGをアプタマから除去した。
解析はRPS Biacore T100装置(GE)で実行した。記録された相互作用のモデリングはBiaevaluationソフトウェア(GE)を使用して実行した。
トランスジェニクヒトFVIIに対する固定したMapt2アプタマの結合曲線はBiacore(登録商標)の専用モジュール制御ソフトウェア(バージョン1.2)で計算した。
このヒトFVIIに対するMapt2アプタマの結合結果から、ヒトFVIIへのMapt2アプタマの結合はプロピレングリコールを含む緩衝液注入によって有害な程度に変化しないことが分かる。
【0233】
B.結果
結果は[図17]に示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含むヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸:
5'−[SEQID番号1]x−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]y−3' (I)
(ここで、
「SEQID番号X」はSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される核酸から成り、
「x」は0または1の整数であり、
「y」は0または1の整数である)
【請求項2】
配列SEQID番号Xが、SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも一つと少なくとも40%、好ましくは少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有する核酸から成る群の中から選択される請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
配列SEQID番号Xが、SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも一つと少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
SEQID番号86を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
条件(A)によって発現されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する能力を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸:
ヒトKd/非ヒトKd<0.01 (A)
(ここで、
「ヒトKd」は、モル単位で計算される、ヒト因子VII/VIIaの式(I)の核酸の解離定数、
「非ヒトKd」は、同じモル単位で計算される、非ヒト因子VII/VIIaの式(I)の核酸の解離定数)
【請求項7】
最大で500nM、好ましくは最大で200nMのヒト因子VII/VIIaの解離定数値を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
上記のヒト因子VII/VIIaとの結合が金属カチオン−キレート化剤と接触した時に解離できる請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
下記の式(II)で表されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物:
[SPAC]−[NUCL] (II)
(ここで、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は請求項1に記載の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続しヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【請求項10】
下記の式(III)で表されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物:
[FIX]−[SPAC]−[NUCL] (III)
(ここで、
[FIX]は基質に固定化するための化合物を表し、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は請求項1に記載の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続しヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【請求項11】
(i)請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9〜10のいずれか一項に記載の化合物と、(ii)ヒト因子VII/VIIaとの錯体。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9〜10のいずれか一項に記載の化合物の複数がグラフトされる固体基質から成る、ヒト因子VII/VIIaを固定化するための基質。
【請求項13】
ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを請求項12に記載の基質と接触する段階を有する、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定化する方法。
【請求項14】
下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの精製方法:
(a)ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9または10の化合物または請求項12に記載の基質と接触させてi)上記核酸または上記化合物または上記基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成させた錯体からヒト因子II/VIIaを遊離させて精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
【請求項15】
親和性基質を洗浄用緩衝剤で洗浄する段階(a')を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
下記の(a)と(b)の工程を含むサンプル中のヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法:
(a)上記サンプルを請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9または10に記載の化合物または請求項12に記載の基質と接触させ、
(b)(i)上記核酸または上記化合物または上記基質と(ii)上記因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸と、薬学的に許容される少なくとも一種の賦形剤とから成る医薬品組成物。
【請求項18】
医薬品として使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸の凝固疾患を処置するための医薬品製造での使用。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸の疾患処置での使用。
【請求項1】
下記の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含むヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸:
5'−[SEQID番号1]x−[SEQID番号X]−[SEQID番号2]y−3' (I)
(ここで、
「SEQID番号X」はSEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される核酸から成り、
「x」は0または1の整数であり、
「y」は0または1の整数である)
【請求項2】
配列SEQID番号Xが、SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも一つと少なくとも40%、好ましくは少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有する核酸から成る群の中から選択される請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
配列SEQID番号Xが、SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100から成る群の中から選択される請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
SEQID番号3〜SEQID番号85およびSEQID番号87〜SEQID番号100の少なくとも一つと少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
SEQID番号86を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
条件(A)によって発現されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する能力を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸:
ヒトKd/非ヒトKd<0.01 (A)
(ここで、
「ヒトKd」は、モル単位で計算される、ヒト因子VII/VIIaの式(I)の核酸の解離定数、
「非ヒトKd」は、同じモル単位で計算される、非ヒト因子VII/VIIaの式(I)の核酸の解離定数)
【請求項7】
最大で500nM、好ましくは最大で200nMのヒト因子VII/VIIaの解離定数値を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
上記のヒト因子VII/VIIaとの結合が金属カチオン−キレート化剤と接触した時に解離できる請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
下記の式(II)で表されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物:
[SPAC]−[NUCL] (II)
(ここで、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は請求項1に記載の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続しヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【請求項10】
下記の式(III)で表されるヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する化合物:
[FIX]−[SPAC]−[NUCL] (III)
(ここで、
[FIX]は基質に固定化するための化合物を表し、
[SPAC]はスペーサ鎖を表し、
[NUCL]は請求項1に記載の式(I)の核酸と少なくとも40%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドの少なくとも15の連続しヌクレオチドを有するヒト因子VII/VIIaに特異的に結合する核酸を表す)
【請求項11】
(i)請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9〜10のいずれか一項に記載の化合物と、(ii)ヒト因子VII/VIIaとの錯体。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9〜10のいずれか一項に記載の化合物の複数がグラフトされる固体基質から成る、ヒト因子VII/VIIaを固定化するための基質。
【請求項13】
ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを請求項12に記載の基質と接触する段階を有する、基質上にヒト因子VII/VIIaを固定化する方法。
【請求項14】
下記の(a)と(b)の工程を含むヒト因子VII/VIIaの精製方法:
(a)ヒト因子VII/VIIaを含むサンプルを請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9または10の化合物または請求項12に記載の基質と接触させてi)上記核酸または上記化合物または上記基質と(ii)ヒト因子VII/VIIaとの間の錯体を形成し、
(b)段階(a)で形成させた錯体からヒト因子II/VIIaを遊離させて精製されたヒト因子VII/VIIaを回収する。
【請求項15】
親和性基質を洗浄用緩衝剤で洗浄する段階(a')を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
下記の(a)と(b)の工程を含むサンプル中のヒト因子VII/VIIaの存在を検出する方法:
(a)上記サンプルを請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸または請求項9または10に記載の化合物または請求項12に記載の基質と接触させ、
(b)(i)上記核酸または上記化合物または上記基質と(ii)上記因子VII/VIIaとの間の錯体の形成を検出する。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸と、薬学的に許容される少なくとも一種の賦形剤とから成る医薬品組成物。
【請求項18】
医薬品として使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸の凝固疾患を処置するための医薬品製造での使用。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸の疾患処置での使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−517825(P2012−517825A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550635(P2011−550635)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050291
【国際公開番号】WO2010/094899
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(509342935)エルエフベー ビオテクノロジーズ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050291
【国際公開番号】WO2010/094899
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(509342935)エルエフベー ビオテクノロジーズ (9)
【Fターム(参考)】
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