ヒト疾患に関連する変異体タンパク質の分解能を改善するための材料及び方法
【課題】ミスフォールディングタンパク質の分解を強化することによって、タンパク質の立体構造に関連する疾病(PCD)の治療若しくは予防に有用性を発揮する新規な組成物及び方法の提供。
【解決手段】有効量のオートファジータンパク質分解を強化する化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。一実施形態では、当該化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログを阻害する。更に他の実施形態において、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール、又は7−環をロックした11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【解決手段】有効量のオートファジータンパク質分解を強化する化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。一実施形態では、当該化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログを阻害する。更に他の実施形態において、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール、又は7−環をロックした11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、米国仮特許出願第60/675143号(2005年4月27日に出願)及び第60/723288号(2005年10月3日に出願)の優先権を主張し、これら各々の全開示内容を本願明細書に参照により援用する。
【0002】
(連邦の支援により行われた本発明の権利に関する声明)
本発明は国立眼研究所により、承認番号EYO1 6070−01として支援されたものである。したがって、政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、ヒト疾患に関連する変異体タンパク質の分解能を改善するための新規な材料及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質は、生物学的機能を提供するためはそれらの正しい三次元立体構造にフォールディングされなければならない。ポリペプチドの天然の立体構造はそのアミノ酸配列の一次構造としてコードされ、アミノ酸配列の単一の突然変異により、タンパク質のその適当な形態を採る能力が損なわれることさえあり得る。タンパク質が正しくフォールディングされなければ、生物学的及び臨床的効果が得られない。タンパク質凝集及びミスフォールディングは、多くのヒト疾患(例えば常染色体優性色素性網膜炎、アルツハイマー病、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、腎生成尿崩症及びプリオン媒介による感染症)の主要な原因となる。他のタンパク質−フォールディング障害(例えば常染色体優性色素性網膜炎、加齢と関連する黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病)においては、ミスフォールドタンパク質が細胞障害性を有するため、病理学的な症状となって表れる。
【0005】
ミスフォールディングタンパク質は、ERにおける品質をコントロールするシステムにより認識され、プロテアソームによる消化の標的とされる。プロテアソーム経路以外の、他タンパク質分解の機構として、オートファジーが存在する。オートファジーは、アミノ酸飢餓などの様々な細胞内及び細胞外からのストレス、ミスフォールディングタンパク質の凝集及び傷害を受けた細胞小器官の蓄積により刺激されうるが、オートファジーは通常非選択的な方式により行われると考えられる。ハンチントン舞踏病に関連する凝集性のポリグルタミン及びポリアラニンで膨張したタンパク質はオートファジーによって分解を受け、またオートファジーの抑制は、ハエ及びマウスのハンチントン舞踏病モデルにおいて、変異体ハンティングトンタンパク質の毒性を減少させた例が報告されている。またオートファジーはERにおける、蓄積タンパク質の除去に貢献することも報告されている。オートファジーを増加させる方法が利用できるならば、それによりミスフォールディングタンパク質の除去を強化し、それらの蓄積と関連した細胞障害性効果を除去することも可能になると考えられる。ミスフォールディングタンパク質の細胞障害性効果を軽減し、ニューロン機能を維持する方法に対する緊急なニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ミスフォールディングタンパク質の分解を強化することによって、タンパク質の立体構造に関連する疾病(PCD)の治療若しくは予防に有用性を発揮する新規な組成物及び方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は広義には、患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関する。当該方法は、有効量のオートファジータンパク質分解を強化する化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。一実施形態では、当該化合物(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、FTI−277又はそのアナログ)は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する。他の実施形態では、PCDは、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群のうちの1つ以上である。更に別の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢関連黄斑変性(例えば湿潤性若しくは乾燥性)、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜分離症、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。更に他の実施態様では、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックした11−シス−レチナールの異性体を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。別の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)の眼性タンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、有効量のオートファジータンパク質分解強化化合物を患者に投与することを含んでなる。
【0008】
別の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)の色素性網膜炎又は黄斑変性の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物を投与することと、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、その場合、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物を同時若しくは各々14日以内で、患者の色素性網膜炎又は黄斑変性の治療若しくは予防に十分な量を投与する。
【0009】
別の態様では、本発明はタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関するものであり、当該PCDはα1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルド疾患のうちの1つ以上であり、当該方法は患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量のオートファジー強化化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。
【0010】
一実施形態では、本発明は更に、患者がPCDを有するとして確認するステップを含んでなる。更に別の実施形態では、本発明は細胞におけるミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞のレベル又は発現を測定するステップを含んでなる。
【0011】
一実施形態では、PCDは嚢胞性線維症であり、当該方法は更に、抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡大薬、ドルナーゼ及びイブプロフェンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0012】
更に別の実施形態では、PCDはハンチントン舞踏病であり、当該方法は更にハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0013】
更に別の実施形態では、PCDはパーキンソン病であり、当該方法は更にレボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンゼラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0014】
更に別の実施形態では、PCDはアルツハイマー病であり、当該方法は更にドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0015】
更に別の実施形態では、PCDは腎生成尿崩症であり、当該方法は更にクロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0016】
更に別の実施形態では、当該方法は更に、以下から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニン。
【0017】
別の態様では、本発明は細胞(例えば眼細胞、神経単位、上皮細胞)内におけるミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法の提供に関するものであり、当該方法は当該細胞を有効量のオートファジー強化化合物と接触させることを含んでなる。
【0018】
一実施形態では、当該方法は更に、細胞(例えば哺乳類細胞(例えばヒト細胞)、in vitro若しくはin vivoにおいて)におけるミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞のレベル又は発現を測定するステップを含んでなる。
【0019】
更に別の実施形態では、当該方法は更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナール異性体と眼細胞を接触させることを含んでなる。
【0020】
更に別の実施形態では、細胞は、凝集体又はフィブリルを形成する変異体タンパク質(例えばオプシン、ミオシリン、リポフスシン、β−H3タンパク質)を含む。
【0021】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中にmTOR阻害剤又はそのアナログを含有するPCDの治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0022】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中に有効量のオートファジー強化化合物の中を含有する眼性PCDの治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0023】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中に有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のオートファジー阻害剤を含有する色素性網膜炎若しくは加齢に関連する黄斑変性の治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0024】
更に他の態様では、本発明は眼性PCDの中の治療用のキットであって、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のラパマイシン若しくはそのアナログを含有するキットの提供に関する。
【0025】
更に他の態様では、本発明は色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用キットの提供に関し、当該キットは、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のラパマイシン若しくはそのアナログを含有する。
【0026】
更に他の態様では、本発明はPCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現させている細胞と候補化合物とを接触させることと、コントロール細胞と比較した試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0027】
更に他の態様では、本発明は色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と、11−シス−レチナール(例えば7−環がロックされた11−シス−レチナールの異性体)又は9−シス−レチナールと、候補化合物とを接触させ、コントロール細胞と比較した試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0028】
更に他の態様では、本発明はPCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現させている細胞と候補化合物とを接触させることと、コントロール細胞との比較において試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質は突然変異を有する。他の実施形態では、ミスフォールドタンパク質はオプシン(例えばP23H突然変異を含むオプシン)である。
【0029】
更に別の実施形態では、オートファジーの増加は、タンパク質の濃度をモニターすること、オートファジーマーカーの発現をモニターすること、又は自食胞の数をモニターすることによって測定できる。
【0030】
更に他の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法はラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する有効量の化合物を投与することを含んでなる。一実施形態では、化合物はラパマイシン又はそのアナログと組み合わせて投与するか、又はFTI−277又はそのアナログと組み合わせて投与する。
【0031】
更に別の実施形態では、PCDはα1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患のうちの1つ以上から選択される。
【0032】
他の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位なドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。他の実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール(9−シス−レチナール)、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【0033】
別の態様では、本発明は、患者(例えばヒト患者)の色素性網膜炎の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、患者にラパマイシン又はFTI−277と、ラパマイシン又はFTI−277生物学的活性を強化する化合物を投与することを含んでなる。一実施形態では、当該方法は更に、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、その場合、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物を同時若しくは各々14日以内で、患者の色素性網膜炎の治療若しくは予防に十分な量を投与する。
【0034】
更に他の態様では、本発明は、患者(例えばヒト患者)のタンパク質形態障害(PCD)を治療若しくは予防する方法の提供に関し、当該方法は、ラパマイシン又はFTI−277又はそのアナログを、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物と組み合わせて投与することを含んでなり、その場合、ラパマイシン又はFTI−277、及び当該化合物の有効量を各々投与し、患者のPCDを治療若しくは予防する。
【0035】
更に他の態様では、本発明は、細胞中のミスフォールドタンパク質の分解を促進する方法の提供に関し、当該方法は、細胞(例えば眼細胞、神経細胞、上皮細胞)と、ラパマイシン、FTI−277若しくはそのアナログの有効量、及びラパマイシン若しくはFTI−277の生物学的活性を強化する化合物とを接触させることを含んでなり、その場合、ラパマイシン若しくはFTI−277、及び当該化合物を、タンパク質の分解を促進させるのに十分な量で各々投与する。一実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体と、細胞とを接触させることを含んでなる。
【0036】
更に他の態様では、本発明は、眼性PCDの治療用の医薬組成物の提供に関し、当該組成物は薬学的に許容できる賦形剤中にラパマイシン、FTI−277若しくはそのアナログ、及びラパマイシン若しくはFTI−277の生物学的活性を強化する化合物を含んでなり、その場合、ラパマイシン又はFTI−277、及び当該化合物は患者(例えばヒト患者)のPCDの治療若しくは予防に十分な量で各々存在する。
【0037】
更に他の態様では、本発明は、PCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、オートファジーエンハンサーの有無において、候補化合物と接触させることと、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0038】
更に他の態様では、本発明は、色素性網膜炎を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドオプシンタンパク質を発現する細胞を、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、ラパマイシン若しくはFTI−277、並びに候補化合物と接触させ、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0039】
更に他の態様では、本発明は、嚢胞性線維症を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドCFTRタンパク質を発現する細胞を、候補化合物及びラパマイシン若しくはFTI−277と接触させ、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0040】
上記のいずれかの態様における各種実施形態では、PCDは、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルド疾患のうちの1つ以上から選択される。
【0041】
他の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性(湿潤型若しくは乾燥型)、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardtの疾患、常染色体優位なドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。
【0042】
上記のいずれかの態様における別の実施形態では、化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳におけるRasホモログ(Rheb)の富化を阻害する。
【0043】
上記のいずれかの態様における好ましい一実施形態では、眼性PCDは、色素性網膜炎又は黄斑変性(例えば加齢に関連する黄斑変性(乾燥型若しくは湿潤型)である。
【0044】
上記のいずれかの態様における更に別実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール(9−シス−レチナール)、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者(例えば哺乳類(例えばヒト))に投与することを含んでなる。
【0045】
上記のいずれかの態様における好ましい実施態様では、当該患者は、タンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異(例えば突然変異はオプシンP23H突然変異、又はCFTRΔF508突然変異など)を有する。
【0046】
上記の態様における他の実施形態では、当該分解ミスフォールドタンパク質に対して選択的である。
【0047】
上記のいずれかの態様における更に他の実施形態では、本発明の方法に有用な化合物は、ラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、FTI−277又はかかる化合物のアナログである。
【0048】
更に他の実施例において、当該方法は更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【0049】
更に別の実施形態では、当該化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する。
【0050】
上記のいずれかの態様における中の各種実施形態では、患者(例えばヒト又は獣医患者)は、タンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異(例えばオプシンP23H突然変異)を含んでなる。
【0051】
更に他の実施形態では、当該分解ミスフォールドタンパク質に対して選択的である。他の実施態様では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物は各々24時間以内、3日以内若しくは5日以内に投与される。
【0052】
上記のいずれかの態様の他の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び化合物は同時に投与される。
【0053】
他の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物は眼に、例えば眼内投与される。更に別の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び当該化合物は、その長期放出を提供する組成物(例えば微小球体、ナノ球体又はナノエマルジョン)に各々添加される。
【0054】
更に別の実施形態では、長期放出は薬剤輸送手段を介して行われる。更に別の実施形態では、当該方法は更にビタミンAサプリメントを投与することを含んでなる。
【0055】
上記のいずれかの態様における更に他の実施形態では、オートファジーの増加は、タンパク質の濃度をモニターすること、オートファジーマーカーの発現をモニターすること、又は自食胞の数をモニターすることによって測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
定義
「哺乳類におけるラパマイシンの標的(mTOR)」とは、GenBank Accession番号P42345に対する少なくとも85%又は95%の同一性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0057】
「mTORを阻害」とは、mTORと関連する少なくとも1つの生物学的活性が少なくとも10%減少することを意味する。典型的な「mTORの生物学的活性」としては、mTORキナーゼ活性、細胞のオートファジーの誘導、細胞周期進行の調節、DNA組換え及びDNA損傷の検出が挙げられる。mTOR及びS6キナーゼのリン酸化を阻害する化合物もまた、mTORの生物学的活性を阻害する。
【0058】
「脳内で富化されるRasホモログ(rheb)」とは、GenBank Accession番号NP_005605に対する少なくとも85%又は95%の同一性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0059】
「rhebを阻害」をは、mTORと関連する少なくとも1つの生物学的活性が少なくとも10%減少することを意味する。典型的な「rheb生物学的活性」としては、オートファジーの誘導、mTORのリン酸化、グアニンヌクレオチド結合活性及びGTPアーゼ活性が挙げられる。
【0060】
「タンパク質高次構造的な疾患」とは、病態がミスフォールドタンパク質の存在に関連する疾患又は障害を意味する。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質が細胞、組織又は器官の中の通常の生物学的活性を妨げるときに、タンパク質高次構造的な疾患が生じる。
【0061】
「ラパマイシンの生物学的活性」とは、オートファジーの強化、mTOR抑制、Tリンパ球増殖の抑制、リンホカイン分泌の抑制、イースト細胞増殖の抑制、タンパク質分解の強化、又は細胞若しくは生物体にラパマイシンを投与することによる他のあらゆる効果を指す。
【0062】
「オートファジータンパク質分解」とは、オートファジーによって実質的に生じる分解のことを意味する。
【0063】
「アナログ」とは、対象化合物と構造的な関連性を有し、実質的に対象化合物と同じ機能を有する化合物を意味する。対象化合物の誘導体又は代謝物質をアナログと称する場合もある。
【0064】
「強化する」の用語は、最低10%、15%、25%、50%、75%又は100%の明確な変化を意味する。
【0065】
「ミスフォールディングタンパク質」とは、参照タンパク質と比較してその三次構造に影響を及ぼすほどの変異を有するタンパク質を意味する。典型的なミスフォールディングタンパク質としては、オプシンの変異形態(例えばP23Hオプシン)、すなわちオプシン参照配列(例えばGenBank Accession番号NM_000539及びNP_000530)と比較し変異した配列有する形態、並びにヒトCFTR(例えばΔF508突然変異)、すなわちCFTR参照配列(例えばGenBank Accession番号AAA35680、NP_000483、P13569)と比較し変異した配列を有する形態の変異形態が挙げられる。
【0066】
「微小球体」という用語は、生理活性物質が取り込まれている実質的に球面のコロイド構造を意味する。微小球体は、一般に約0.5μM〜約500μMの範囲の粒子径分布を有する。直径1ミクロン以下の構造である場合、「ナノ球体」という対応する用語を用いることもある。
【0067】
「ナノエマルジョン」とは、小さい脂質構造を含有する水中油型分散体を意味する。一例として、ナノエマルジョンは約0.5〜5ミクロンの平均粒子径の液滴を有する油相を含んでなる。
【0068】
「減少する」という用語は、少なくとも10%、25%、50%、75%又は100%の負の変化を意味する。「選択的な分解」とは、優先してミスフォールディングタンパク質を分解させ、正しくフォールディングされたタンパク質は実質的に影響を受けないことを意味する。多くの実施形態では、45%未満、35%、25%、15%、10%又は5%の正しくフォールディングされたタンパク質が分解する。
【0069】
本発明の用語「治療する」、「治療」、「処置すること」などの用語は、障害及び/又はそれに関連する症状を軽減若しくは改善することを意味する。いうまでもなく、障害又は症状を治療するということは、障害、条件又はそれに関連する徴候が必ずしも完全に除去される必要はないが、もちろん完全に除去されてもよい。本発明の用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的処置」は、障害又は症状を有しないが、当該障害又は症状に罹るおそれのある患者における罹患率を低下させることを指す。
【0070】
本発明は、インビボにおけるミスフォールディングタンパク質の分解の強化に有用である組成物及び方法に関する。本発明は広義には、本発明(例えばラパマイシン、FTI−277、並びにそのアナログ及び異型)の化合物が変異体タンパク質の分解を強化するという発見に基づく。好適なことに、変異体タンパク質は特異的に分解する一方で、その野生型はそのレベルがほとんど不変である。ミスフォールディングタンパク質は通常の細胞機能を妨害し、細胞毒性を生じさせることもあり、更にヒトタンパク質形態障害(PCD)に結果としてなる。PCDとしては、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)が挙げられる。組成物及び本発明の方法は特に眼性PCD(色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性(乾湿形)緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン、Best黄斑ジストロフィー及び角膜ジストロフィーなど)の予防又は治療に有用である。本発明の組成物は、PCDの治療、影響を受けた細胞死の遅延、PCDによって生じる兆候の緩和、又はPCDの発症の防止に使用できる。
【0071】
オートファジーエンハンサー
オートファジーは、細胞質の細胞成分を分解するための、進化的に保存された機構であって、飢餓細胞における細胞生存メカニズムとして機能する。オートファジーの間、細胞質の要素は細胞膜により封入され自食胞を形成し、最終的にはリソソームと融合しその内容物を分解させる。
【0072】
PCDの治療には、オートファジーエンハンサーを独立に用いてもよく、又は11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体と組み合わせて用いてもよい。オートファジーエンハンサーのラパマイシンは、特に嚢胞性線維症及びミスフォールディングタンパク質又はタンパク質凝集に関連する他の障害の治療、並びに色素性網膜炎及び他の眼性疾患の治療に有用である。本発明の方法において有用なオートファジーエンハンサーとしては、ラパマイシン、FTI−277及びその塩類若しくはアナログが挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
ラパマイシン
ラパマイシン(Rapamune(登録商標)、シロリムス、ワイエス)は、Steptomyces hygroscopicusが産生する環状ラクトンである。ラパマイシンは、Tリンパ球活性化及び増殖を阻害する免疫抑制剤である。ラパマイシンは、哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)(細胞周期の進行に必要とされるキナーゼ)に結合し、阻害する。mTORキナーゼ活性の抑制は、Tリンパ球増殖及びリンホカイン分泌をブロックする。
【0074】
ラパマイシンの構造的及び機能的アナログとしては、モノ−及びジアクリル化されたラパマイシン誘導体(米国特許第4316885号)、ラパマイシン水溶性プロドラッグ(米国特許第4650803号)、カルボン酸エステル類(国際公開第92/05179号)、カルバメート(米国特許第5118678号)、アミドエステル類(米国特許第5118678号)、ビオチンエステル類(米国特許第5504091号)、フッ化エステル類(米国特許第5100883号)、アセタール(米国特許第5151413号)、シリルエーテル(米国特許第5120842号)、二環式誘導体(米国特許第5120725号)、ラパマイシン二量体(米国特許第5120727号)、O−アリール、O−アルキル、O−アルケニル及びO−アルキニル誘導体(米国特許第5258389号)、及びdeuteratedされたラパマイシン(米国特許第6503921号)が挙げられる。他のラパマイシンのアナログとしては、CCI−779(Wyeth Ayerst社製)、タクロリムス、ピメクロリムス、AP20840(Ariad Pharmaceutics社製)、AP23841(Ariad Pharmaceutics)、ABT−578(アボットラボラトリーズ社製)、SAR943(32−デオキソラパマイシン、Eynottら、Immunology.109(3):461−7(2003)及びエベロリムス(SDZ RAD)が挙げられる。エベロリムス(40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(CERTICAN、ノバルティス))はラパマイシンに構造的に類似する免疫抑制マクロライドである。その他のラパマイシンアナログは、米国特許番号5202332号及び第5169851号に記載されている。ラパマイシンは現在液体及び錠剤による経口投与に利用されている。RAPAMUNE(商標)液は1mg/mLのラパマイシンを含有し、投与前に水又はオレンジジュースで希釈する。1又は2mgのラパマイシンを含有する錠剤も市販されている。ラパマイシンは好ましくは一日一回服用する。経口投与の後、急速かつ完全に吸収される。通常は、患者へのラパマイシンの投与量は患者の症状に従って変化が、標準的な推奨される投与量を幾つか以下に記す。ラパマイシンの初回投与量は6mgである。続く維持投与量は典型的には2mg/日である。あるいは、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg又は25mgの初回投与量、並びに1mg、3mg、5mg、7mg又は10mg/日の維持投与量で実施してもよい。体重40kg未満の患者において、ラパマイシン投与量は通常体表面積に基づいて調整され、通常は3mg/m2/日の初回投与量及び1mg/m2/日の維持投与量が採用される。
【0075】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤はファルネシル化を阻害し、それはタンパク質の翻訳後修飾であって、修飾タンパク質の疎水性を増加させ、細胞膜表面への局所化を促進する。細胞膜へのこの局在化は通常、ファルネシル化タンパク質の通常の機能に必要である。ファルネシルアクセプター部分は、目標タンパク質のカルボキシ末端に存在する4つのアミノ酸配列として、様々なタンパク質において同定されている。この4つのアミノ酸配列は−C−A−A−Xとして同定され、式中、「C」はシステイン残基であり、「A」は任意の脂肪族アミノ酸であり、「X」はあらゆるアミノ酸を指す。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTIs)(例えばFTI−277)は、Ras及び他のファルネシル化されたタンパク質(例えばRheb)の翻訳後脂質修飾を阻害する。下で更に詳細に記載するように、FTI−277はmTORを不活性化することによって細胞のオートファジーを誘発する、典型的なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である。mTORは、アミノ酸に応答して、AKT/PKBの下流の目標として、オートファジーを負に制御する。この発見に一部基づき、ファルネシルトランスフェラーゼを阻害する他の薬剤も本発明の方法において有用である。
【0076】
本発明の方法で有用なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、従来技術において周知であり、例えば米国特許第7022704号、第6936431号、第6800636号、第6790633号、第6740661号、第6737410号、第6576639号、第6528523号、第6498152号、第6440974号、第6432959号、第6410541号、第6399615号、第6372747号、第6362188号などに記載されている。他の実施形態として、3−メルカプトピロリジン FTIsが、例えば米国特許第6946468号に記載されている。5置換されたテトラロン FTIsが、例えば米国特許第6943183号に記載されている。二環式阻害剤が、米国特許第6528535号に記載されている。また、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤としてのトリアゾールが、例えば米国特許出願公開第2005/0234117号に記載されている。本発明の方法で有用な他の典型的なFTIsは、米国特許出願公開第2006/0079530号、第2005/0148609号、2005/0059672号及び2005/0020516号、並びに以下の科学雑誌:Santucciら、Cancer Control 10:384−387(2003)、Megnin−Chanetら、BMC Pharmacology、2:2、2002、BMS−214662、及びアッペルスら、(Oncologist、10:565−578(2005)に記載されている。典型的なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、R115777、GGTI−2166、BMS−214664(Santucciら、Cancer Control 10:384−387、2003)、RPR−130401(Megnin−Chanetら、BMC Pharmacology、2:2、2002)、BMS−214662(ブリストル−マイヤーズスクイブ、プリンストン、NJ)、L778123(メルク社、ホワイトハウスステーション、NJ)、チピファルニブ(実験名、R115777、ザルネストラ(商標)、Ortho Biotech Products、L.P.、ブリッジウォーター、NJ)、ロナファルニブ(実験名、SCH66336、Sarasar(商標)、シェーリング−Plough社、Kenilworth、NJ)、FTI−277(Calbiochem、EMD Biosciences、サンディエゴ)、及びL744832(バイオモルインターナショナルL.P.、プリマスミーティング、PA)などが挙げられる。
【0077】
FTIsの臨床投与量は通常、一日当たり100μg〜10,000mgの間である。公知技術のいかなる方法によって投与してもよい。特にチピファニブは21日間、1日2回、150、200、300、400、500及び600mgの投与量で経口投与する。ロナファニブは1日2回、100、200、300及び400mgの投与量で、持続的な計画において経口投与する。BMS−214662は通常、100mg/m2、200mg/m2において3週に1回1時間の注入、275mg/m2及び300mg/m2において24時間の注入により投与する。あるいは、BMS−214662は週間スケジュールにおいて300mg/m2、及び週間スケジュールにおいて102mg/m2で投与する。81mg/m2のBMS−214662の連日投与は、本発明の方法においても有用である。FTIsを投与する他の形式は従来技術において周知であり、例えばアッペルスらの文献(Oncologist、10:565−578(2005)に記載されている。
【0078】
眼性タンパク質高次構造に起因する障害
本発明の組成物はまた、特に実質的に全ての眼性のタンパク質高次構造的な障害(PCD)の治療に有用である。かかる障害は、眼内のタンパク質凝集体又はフィブリルとしてのミスフォールディングタンパク質の蓄積を特徴とする。本発明の組成物は正しくフォールディングされたタンパク質濃度に影響を及ぼさずに、選択的なミスフォールディングタンパク質の分解を強化する。色素性網膜炎は、オプシン(例えばP23Hオプシン)(GenBank Accession番号NM_000539及びNP_000530)のミスフォールディング、並びに、炭酸脱水酵素IV(CA4)(GenBank Accession番号NM_000717及びNP_000708)(レベロら、4月27日Proc Natl Acad Sci USA.2004、101(17):6617−22)の突然変異を伴う典型的な眼性PCDである。CA4は、ヒトの眼内の脈絡毛細管において高発現するグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーされたタンパク質である。R14W突然変異はCA4タンパク質のミスフォールディングをもたらし、この突然変異を有する患者は常染色体優性色素性網膜炎を患う。CA4ポリペプチド変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、CA4ポリペプチドの突然変異と関連した常染色体優性色素性網膜炎の治療に有用である。
【0079】
Xリンク若年性網膜分離(RS)は他の眼性PCDである。RSは男性の少年期の黄斑変性の主な原因である。RS1(NM_000330、NP_000321)の突然変異又は網膜分離は、Xリンク網膜分離(男性の一般の、開始前半黄斑変性)の原因となり、網膜の内側層の分裂及び視野の重大な損失をもたらす。RS1の突然変異は、タンパク質フォールディング(3月18日、J Biol Chem.2005、280(11):10721−30)を崩壊させる。RS1の変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、網膜分離の治療に有用である。
【0080】
緑内障は、ミオシリンの突然変異と関連する眼性PCDである。ミオシリンは多くのヒト器官(目を含む)において、偏在して発現する未知の機能の分泌型糖タンパク質である。この突然変異により、ミオシリンタンパク質が緑内障の1つの形態として形成され、世界的な失明の主要な原因となる。変異体ミオシリンは、不溶性の凝集体(Aroca−Aguilarら、6月3日、Biol Chem.2005、280(22):21043−51、 GenBank Accession番号:NMJ300261及びNP_000252)として、トランスフェクション細胞の細胞質網状構造に蓄積する。ミオシリンの変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、ミオシリン関連緑内障の治療に有用である。
【0081】
Stargardt様黄斑変性は、ELO VL4の突然変異と関連する眼性PCDである。ELO VL4(長鎖脂肪酸4の伸長)はELOファミリータンパク質のメンバーであって、非常に長い鎖長の脂肪酸の生合成に関連するものである。ELO VL4の突然変異は、常染色体優性Stargardt様黄斑変性(STGD3/adMD)患者において同定されている。ELOVL4変異体タンパク質は、トランスフェクション細胞中で、顕著に凝集体として蓄積する(Graysonら、J Biol Chem.2005 Jul21、Epub)(GenBank Accession番号:NM_022726及びNP_073563)。変異形態ELO VL4の低下を強化する本発明の組成物は、Stargardt様黄斑変性の治療に有用である。
【0082】
Malattia Leventinese(mL)及びDoyneハネコムレチナールジストロフィー(DHRD)は、網膜色素上皮(RPE)の下に蓄積するドルーゼンとして公知の黄色沈着物によって特徴づけられる2つの常染色体優性PCDsに関連する。EFEMP1は網膜ドルーゼン形成において一定の役割を果たし、黄斑変性の病因に関連する(Stoneら、Nat Genet.1999 Jun;22(2):199−202)(GenBank Accession番号:NM_004105及びNP_004096)。変異体EFEMP1は細胞中でミスフォールディングされ、保持される。変異体形EFEMP1の分解を強化する本発明の組成物は、常染色体優位なドルーゼンの治療に有用である。
【0083】
最高の黄斑ジストロフィーはVMD2(hBEST1)の突然変異によって生じる常染色体優位なPCDであり、それはベストロフィンをコードする(Gomezら、DNA Seq.2001 Dec;12(5−6):431−5)(GenBank Accession Nos:NM_004183及びNP_004174)。ベストロフィンの突然変異によって、おそらくタンパク質ミスフォールディングが生じる。正しくフォールディングされたベストロフィンの変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、Bestの黄斑ジストロフィーの治療に有用である。
【0084】
5q31リンク角膜ジストロフィーは、角膜のタンパク質沈着物の年齢依存的な累積によって特徴づけられる常染色体優位なPCDsであり、視覚障害をもたらす。BIGHS遺伝子(GenBank Accession No:NM_000358)(またTGFBI(トランスフォーミング成長因子β誘導)とも呼ばれる)における突然変異は、この全症状群の原因となる。Arg−124及び他の残基の置換は、コードされたタンパク質(GenBank Accession番号NP_000349)の異なる凝集経路を介した角膜特異的な堆積をもたらし、角膜組織のタンパク質のターンオーバーの変化をもたらす。正しくフォールディングされたTGFBIタンパク質の変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、5q31リンク角膜ジストロフィーの治療に有用である。
【0085】
治療法
本発明は、選択的にミスフォールドタンパク質の分解を強化することによる、PCD疾患及び/又は障害若しくは症状(例えば細胞毒性)の治療方法の提供に関する。当該方法は、患者(例えば哺乳類、例えばヒト)に本願明細書に記載の化合物(ラパマイシンのようなmTOR阻害剤、FTI−277のようなファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤)を含有する医薬組成物の治療的有効量を投与することを含んでなる。ゆえに、一実施形態は、タンパク質形態疾患又は障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者の治療方法に関する。当該方法は、本願明細書の化合物の治療的な量を哺乳類に投与し、疾患又は障害を治療するのに十分な条件下で疾患又は障害又はその兆候を治療することを含んでなる。
【0086】
本発明の方法は、本願明細書に記載の化合物又はかかる効果を生じさせる本願明細書に記載の組成物を、患者(かかる治療が必要と診断された患者を含む)に有効量を投与することを含む。患者かかる治療を必要とするか否かを診断することは、患者又は健康管理専門家の判断に基づいて行ってもよく、それは主観的(例えば意見)若しくは客観的(例えば試験又は診断法によって測定可能)であってもよい。
【0087】
本発明(予防治療を含む)の治療法は、それを必要とする哺乳類(例えば動物若しくはヒト、特にヒト)患者に、本願明細書の化合物の治療的有効量を投与することを含んでなる。かかる治療を、疾患又は障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者(特にヒト)に施すのが好適である。「罹患しやすい」患者の決定は、診断試験又は患者又は医師の意見(例えば遺伝子検査、酵素又はタンパク質標識、マーカー(本明細書で定義される)、家族歴など)によって、客観的若しくは主観的な判定によって行ってもよい。本発明の化合物を、タンパク質フォールディング(ミスフォールディングを含む)が関連しうる他のいかなる障害の治療に用いてもよい。一実施形態では、本発明は治療経過をモニターする方法を提供する。当該方法は、タンパク質フォールディング(ミスフォールディングを含む)に関連する疾患、障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者における臨床マーカー(例えば本願明細書に化合物により調節され、本願明細書に詳述されるいかなる目標、タンパク質又はそのインジケータなど)、又は臨床的数値(例えばスクリーン、アッセイ)を測定することを含んでなり、当該患者に治療的有効量の本発明の化合物を投与し、当該疾患又はその兆候を治療することを特徴とする。当該方法で測定されるマーカーのレベルを、適切なコントロール、又は他の罹患患者のマーカーによる周知のレベルと比較して、患者の疾患状況を決定することができる。好ましい実施態様において、患者のマーカーの第2のレベルは第1のレベルの測定より後の時点で測定され、2つのレベルを比較して疾患の原因又は治療の有効性をモニターできる。好ましい具体的実施態様では、患者における治療前のマーカーのレベルは、本発明によって治療を開始する前に測定される、この処理前のマーカーのレベルは、治療開始後の患者のマーカーのレベルと比較し、処理の有効性を決定することができる
【0088】
医薬組成物
本発明は薬学的に許容できる担体と共に化合物を含有する医薬剤を特徴とし、当該化合物はミスフォールドタンパク質を選択的に分解させる。かかる調製物は治療及び予防用途に用いられる。一実施形態では、当該医薬組成物は、ミスフォールドタンパク質の分解を強化する化合物と、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールとの組み合わせを含有する。11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール並びに当該化合物は、一緒に投与してもよく、又は別々に投与してもよい。本発明の化合物は、医薬組成物の一部として投与してもよい。組成物は無菌でなければならず、患者への投与に適する単位重量若しくは単位体積当たりのポリペプチドの治療的有効量を含有する必要がある。本発明の組成物及び組合せは製薬パックの一部であってもよく、化合物の各々は個々の投与量で存在する。
【0089】
本願明細書に記載されている式の化合物を含んでなる本発明の化合物は、その薬学的に許容できる誘導体又はプロドラッグも包含されると定義される。「薬学的に許容できる誘導体又はプロドラッグ」とは、本発明の化合物のあらゆる薬学的に許容できる塩、エステル、エステルの塩又は他の誘導体であって、患者への投与の際、本発明の化合物を(直接又は間接的に)提供することができるもの意味する。特に好適な誘導体及びプロドラッグは、かかる化合物が哺乳類に(例えば、経口投与の化合物を血液により直ちに吸収させることによって)投与されるときに本発明の化合物の生物学的利用能を増加させるもの、又は、親化合物と比較し、生物学的区画(例えば脳又はリンパ系)への親化合物の送達を強化するものを指す。好ましいプロドラッグには、水溶性又は腸膜による能動輸送を強化する基が本願明細書に記載の式の構造中に追加された誘導体が包含される。例えば、Alexander,J.ら、Journal of Medicinal Chemistry 1988,31,318−322;Bundgaard,H.Design of Prodrugs;Elsevier:Amsterdam,1985、pp1−92;Bundgaard,H.;Nielsen,N.M.Journal of Medicinal Chemistry 1987,30,451−454;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;Harwood Academic Publ.:Switzerland,1991、pp113−191;Digenis,G.A.ら、Handbook of Experimental Pharmacology 1975,28,86−112;Friis,G.J.;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;2ed.;Overseas Publ.:Amsterdam,1996、pp351−385;Pitman,I.H.Medicinal Research Reviews 1981,1,189−214;Sinkula,A.A.;Yalkowsky.Journal of Pharmaceutical Sciences 1975,64,181−210;Verbiscar,A.J.;Abood,L.G Journal of Medicinal Chemistry 1970,13,1176−1179;Stella,V.J.;Himmelstein,K.J.Journal of Medicinal Chemistry 1980,23,1275−1282;Bodor,N.;Kaminski,J.J.Annual Reports in Medicinal Chemistry 1987,22,303−313を参照。
【0090】
本発明の化合物は、選択的な生物学的特性を強化するために適当な機能を追加する修飾を行ってもよい。かかる修飾は従来技術において周知で、目的の生物学的区画(例えば血液、リンパ系、神経システム)への生物学的浸透の増加、経口投与の有効性の増加、可溶性の増加による注射投与への適合、代謝の変調による放出速度の調整を可能にするものが挙げられる。
【0091】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩類は、薬学的に許容できる無機及び有機の酸及び塩基に由来するものが包含される。好適な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゾアート、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファ酸塩、アンファスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプタノエート、グリコール酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタノン酸塩、ヘキサノン酸塩、塩酸塩、ハイドロ臭化物、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカノン酸塩などが挙げられる。他の酸(例えば蓚酸)でそれ自身薬学的に許容できるものでない場合であっても、本発明の化合物及びその薬学的に許容できる酸性付加塩を得る際の中間体として、有用な塩類の調製に使用することができる。適当な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN−(アルキル)4+塩類が挙げられる。本発明にはまた、本願明細書に開示される化合物のいかなる塩基性窒素含有基の第4級形態が包含される。水若しくは油に可溶性若しくは分散可能な生成物を、かかる第4級化によって得ることができる。
【0092】
予防若しくは治療的な投与に使用される本発明の医薬組成物は無菌である必要がある。無菌性はγ線照射、除菌膜(例えば0.2μm膜)による濾過によって容易に得られ、又は当業者に公知の他の適切な手段で無菌処理を行ってもよい。治療的なポリペプチド組成物は、一般に無菌のアクセスポート(例えば皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグ又はバイアル)を有する容器に充填される。これらの組成物は通常、水溶液として、又は再調製のための凍結乾燥製剤として、単回投与又は複数回投与用の容器(例えば密閉されたアンプル又はバイアル)中に保存される。
【0093】
化合物は任意に、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせてもよい。本明細書中で使用される用語「薬学的に許容できる賦形剤」とは、ヒトへの投与に適する1つ以上の適合性を有する固体若しくは液体の充填材、希釈剤又は封入用物質を意味する。用語「担体」は有機若しくは無機の、天然若しくは合成された成分であって、それを活性成分と組み合わせることによって投与を容易にする成分を意味する。医薬成分を本発明の分子と共に混合してもよいが、各々が相互に反応し、所望の薬効を実質的に弱めることのない態様で混合するのが好ましい。賦形剤は、好ましくは例えば等張性及び化学安定性を増強する物質を添加物として微量含有させる。かかる材料は、採用された投与量及び濃度で受容者に対する中毒性を有さず、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、及び他の有機酸若しくはそれらの塩類などのバッファー、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)、重炭酸塩、炭酸塩、並びに他の有機塩基及びそれらの塩類、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、低分子量(例えば約10未満の残基)ポリペプチド(例えばポリアルギニン、ポリリシン、ポリグルタミン酸塩及びポリアスパラギン酸塩、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコール(PPGs)及びポリエチレングリコール(PEGs))、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン又はアルギニン)、単糖類、二糖類及び他の炭水化物(セルロース又はその誘導体、グルコース、マンノース、蔗糖、デキストラン)、硫化炭水化物誘導体(ヘパリン、コンドロイチン硫酸又はデキストラン硫酸)、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及びマンガンイオンなどの二価金属イオン)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸、EDTAなど)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、反イオン(例えばナトリウム又はアンモニウム)、及び/又は非イオン系界面活性剤(例えばポリソルベート又はポロキサマー)。安定化剤、抗菌物質、不活性ガス、流体及び栄養を含む補充液(すなわちリンゲルのブドウ糖)、電解質補充液などの他の添加剤を、通常使用される量で含有させてもよい。上記の通り組成物を有効量で投与してもよい。有効量は、投与様式、治療対象となる具体的な症状及び所望の結果に依存する。更に症状のステージ、患者の年齢及び体調、複合治療の性質(もしあらば)、並びに医師に周知の各種の要因に依存しうる。治療的用途の場合、医学的に望ましい結果を提供するのに十分な量で用いられる。
【0094】
タンパク質形態疾患又は障害を有する患者の場合、有効量とは、細胞内の正しくフォールディングされたタンパク質のレベルを上昇させるのに十分な量である。ミスフォールドタンパク質に関連する患者又は障害を有する疾患の場合、有効量とは、病理と関係している症状を安定化、遅延又は軽減させるのに十分な量である。通常、本発明の化合物の投与量は、1日あたり約0.01mg/kg〜1日あたり約1000mg/kgである。約50〜約2000mg/kgの投与量が適切であると考えられる。特定の投与形態(例えば静脈内投与)の場合、低用量でなされる。初回投与量で患者の反応が不十分である場合、患者に許容される程度まで、高用量(又は異なる局所的な投与経路による高い効果を有する投与量)を使用してもよい。1日当たりの多回投与量は、本発明の組成物の適当な全身レベルを提供するために考察される。様々な投与経路を利用できる。本発明の方法は、一般的に、医学的に許容できるいかなる投与様式を使用して実施してもよく、それは臨床的に容認できない副作用を引き起こすことのない活性化合物の有効レベルを提供するいかなる形式をも意味する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は眼内に投与される。他の投与様式としては、経口、直腸、局所、眼内、バッカル、膣内、脳室内、気管内、鼻腔内、経皮、インプラント内若しくはインプラント上又は非経口経路が挙げられる。「非経口」という用語には、皮下、クモ膜下腔内、静脈、腹膜内、筋肉内又は注入が包含される。本発明の組成物を含有する組成物は、生理的流体、例えば硝子体内ユーモアに添加してもよい。CNS投与の場合、手術又は注入による破壊を有する血液脳バリアにおける治療薬の転送を促進し、一過的に粘着力接触を溶く薬をCNS脈管構造内皮細胞と接触させ、化合物のかかる細胞間の移動を容易にするなど、様々な技術を利用できる。予防治療の場合、投与計画と同様に患者への便宜上の理由から、経口投与が好ましい。
【0095】
患者の投与による副作用が生じない限り、本発明の中の医薬組成物は要望通り1つ以上の添加されたタンパク質(血漿タンパク質、プロテアーゼ及び他の生物学的材料など)を更に任意に含有させてもよい。適切なタンパク質又は生物学的材料は公知で、当業者が利用できる任意の精製方法によって、ヒト又は哺乳類の血漿から得られる。例えば、組換え組織培養の上澄、抽出液又は溶解物、ウイルス、イースト、バクテリア等(標準的な組み換えDNA技術に従って、ヒト又は哺乳類の血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたもの)、又は流体(例えば血液、牛乳、リンパ、尿等)又は標準的なトランスジェニック技術に従ってヒト血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたトランスジェニック動物が挙げられる。
【0096】
本発明の中の医薬組成物は、製剤のpHを例えば約5.0〜約8.0の範囲で、生理的pHを反映する所定レベルに維持するために、1つ以上のpH緩衝化合物を含有させてもよい。水溶液製剤において使用するpH緩衝化合物は、アミノ酸若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン及びグリシン))であってもよい。あるいは、pH緩衝化合物は、例えば製剤のpHを約5.0〜約8.0などの所定レベルで維持し、カルシウムイオンをキレート化しない薬剤が好ましい。かかるpH緩衝化合物例としては、限定されないがイミダゾール及び酢酸イオンが挙げられる。製剤のpHを所定レベルに維持するために、pH緩衝化合物を適切な量で添加させてもよい。
【0097】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の浸透圧調整剤(すなわち受容者個人の血流及び血球が許容できるレベルに製剤の浸透特性(例えばオスモル濃度及び/又は浸透圧)を調節する化合物)を含有させてもよい。浸透圧調整剤はカルシウムイオンをキレート化しない物質であってもよい。浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節する公知又は当業者が利用できるいかなる化合物であってもよい。当業者は、本発明の製剤用に用いる浸透圧調整剤の適合性を経験的に決定してもよい。適切なタイプの浸透圧調整剤の例としては、限定されないが、塩(例えば塩化ナトリウム及びナトリウム酢酸塩)、糖(例えば蔗糖、ブドウ糖及びマンニトール)、アミノ酸(例えばグリシン)、及びこれらの物質の1つ以上及び/又は物質のタイプの混合物が挙げられる。1つ以上の浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節するのに十分ないかなる濃度で添加してもよい。
【0098】
本発明の化合物を含有する組成物として、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及び/又はマンガンイオン)を含有させてもよい。組成物を安定化させ、受容者個人に悪影響を与えないいかなる多価金属イオンを使用してもよい。当業者であれば、これらの2つの基準に基づいて経験的に適切な金属イオンを決定でき、またかかる金属イオンの適切な供給源は公知で、無機及び有機塩が挙げられる。
【0099】
本発明の中の医薬組成物は、水を含まない液体製剤であってもよい。含まれる1つ以上の活性薬剤に安定性がもたらされるならば、いかなる適切な非水性液体を使用してもよい。好ましい非水性の液体は、親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリジメチルシロキサン(PMS)、エチレングリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG300及びPEG400、及びプロピレングリコール、例えばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000が挙げられる。
【0100】
本発明の医薬組成物は、水性/非水性液体製剤の混合物でもあってもよい。使用される水性/非水性液体製剤の混合物は、含まれる化合物に安定性を提供するものであれば、いかなる適切な非水性液体製剤(例えば上記のそれら)を、いかなる水性液体製剤(例えば上記のそれら)に添加して用いてもよい。好ましくは、かかる製剤の非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、DMSO、PMS、エチレン、グリコール(例えばPEG200、PEG300及びPEG400)、及びプロピレングリコール(例えばPPG425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000)が挙げられる。
【0101】
適切な安定な製剤は、凍結状態若しくは非凍結状態での活性薬剤の保存を可能にする。安定な液体製剤は、組成物の特性に応じて、−70℃以下の温度で保存でき、また0℃のより高い温度でも保存でき、又は約0.1℃〜42℃の温度で保存することもできる。タンパク質及びポリペプチドは、pH、温度及び治療有効性に影響を及ぼすことがありえる多数の他の因子の変化に影響されることは当業者に一般に公知である。
【0102】
他の輸送システムとしては、放出調節、遅延放出又は徐放性輸送システムが挙げられる。かかるシステムは本発明の組成物の繰り返し投与を回避でき、患者及び医師の便宜を増加させる。徐放性輸送システムの多くのタイプが利用でき、当業者に公知である。例えばポリマーベースシステム(例えばポリ乳酸(米国特許第3773919号、欧州特許番号58481)、ポリ(ラクチド−グリコリド)コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリD−(−)−3、−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタミン酸(Sidman、K.R.ら、Biopolymers 22:547−556)の中の共重合体、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)又はエチレン酢酸ビニルなどのポリヒドロキシ酪酸、を含む(Langer、R.ら、J.Biomed.Mater.Res.15:267−277、Langer、R.Chem.Tech.12:98−105及びポリ無水物が挙げられる。持続性組成物の他の例としては、成形された物品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)の形態の半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。輸送システムは非ポリマーシステムであってもよく、例えば、コレステロール、コレステロールエステルのようなステロール及び脂肪酸又は中性脂肪(脂質モノ、ジ及びトリグリセリドなど)、ヒドロゲル放出システム(例えば生体再吸収性ヒドロゲル(すなわちキチン質ヒドロゲル又はキトサンヒドロゲル)の生物学的誘導体))、sylasticなシステム、ペプチドベースのシステム、ワックスコーティング、従来の結合剤及び添加剤を使用した圧縮錠剤、部分的に融合したインプラントなどが挙げられる。具体例としては、限定されないが、(a)米国特許第4452775号、第4667014号、第4748034号及び第5239660号に記載のような、マトリックス中に薬剤が含有される形の浸食システム、及び(b)米国特許第3832253号及び第3854480号に記載のような、活性成分がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システムなどが挙げられる。
【0103】
本発明の方法及び組成物に使用可能な輸送システムの他のタイプは、コロイド分散体システムである。コロイド分散体システムとしては、油中水型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームなどの脂質ベースのシステムが挙げられる。リポソームは人工膜容器であり、インビボ若しくはインビトロでの輸送媒体として有用である。大きな単一ラメラ小胞(LUV)(0.2〜4.0μmのサイズで調節可能)は水性の内部に高分子をカプセル化でき、生物学的に活性な形態で細胞に輸送できる(Fraley,R.,及びPapahadjopoulos,D.,Trends Biochem.Sci.6:77−80)。リポソームを特異的なリガンド(例えば単クローン抗体、糖、糖脂質又はタンパク質)と結合させ、特定の組織を標的とするリポソームとすることができる。例えば、リポソームはLIPOFECTIN(商標)及びLIPOFECTACE(商標)としてギブコBRLから市販され、それはカチオン脂質(例えば臭化(DDAB)N−[1−(2、3ジオールエチルオキシ)−プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム)から形成される。リポソームの調製方法は公知技術で、例えばドイツ共和国特許第3218121号、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:3688−3692(1985)、Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4030−4034(1980)、欧州特許第52322号、第36676号、第88046号、第143949号、第142641号、日本国特許出願第83−118008号、米国特許第4485045号及び第4544545号、及び欧州特許第102324号などの多くの刊行物に記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis、G.、Trends Biotechnol.、3:235−241でレビューされている。
【0104】
担体の他のタイプは、哺乳類の受容者へのインプラントに適する生物学的適合性の微粒子又はインプラント材である。この方法に従って有用である典型的なバイオ浸食するようなインプラントは、国際出願番号PCT/US/03307号(国際公開第95/24929号、「Polymeric Gene Delivery System」)に記載されている。国際出願番号PCT/US/03307号では、適当なプロモータ制御下の外生遺伝子を含有する、生物学的適合性、好ましくは生分解性の重合マトリックスを記載している。重合マトリックスは、患者の外生遺伝子又は遺伝子産物の徐放性を提供するために用いることができる。
【0105】
高分子マトリックスは、好ましくは微小球体などの微粒子(薬剤が固体高分子マトリックスの全体にわたって分散)又はマイクロカプセル(薬剤が重合シェルの中心において保存される)の形である。例えば、薬剤を含有する前述のポリマーのマイクロカプセルは米国特許第5075109号に記載されている。薬剤を含有する高分子マトリックスの他の形としては、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント及びステントが挙げられる。高分子マトリックス手段のサイズ及び組成は、マトリックスが導入される組織の好ましい放出動力学となるような態様で選択される。高分子マトリックスの寸法は更に、採用する輸送方法に従って選択される。好ましくは、エアゾールを使用する場合、高分子マトリックス及び組成物は界面活性剤担体中に含有される。高分子マトリックス組成物は、好ましい分解速度を有する態様で選択され、バイオ接着剤としての、輸送効率を更に増加させる材料から形成される。あるいは、分解しないが、拡散による長期間にわたる放出が得られる態様でマトリックス組成物を選択してもよい。輸送システムは局所的、部位特異的輸送に適している生物学的適合性の微小球体であってもよい。かかる微小球体は、Chickering、D.E.ら、Biotechnol.Bioeng.、52:96−101、Mathiowitz、E.ら、Nature 386:410−414において開示される、。
【0106】
生分解性、及び生分解可能な重合マトリックスを用いて、本発明の組成物を患者に輸送してもよい。かかるポリマーは、天然若しくは合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、所望の放出時間に基づいて通常、2、3時間のオーダーから1年のオーダーまでで選択される。通常は、2、3時間から3〜12ヵ月の間の放出時間が最も望ましい。ポリマーは任意に、その重量に対して最高約90%の水を吸収できるヒドロゲルの形であり、更に、任意に多価イオン又は他のポリマーと架橋する。
【0107】
生分解可能な輸送システムの形成に使用できる典型的な合成ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、フタル酸酢酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸塩)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸塩)、ポリ(イソブチルアクリル酸塩)、ポリ(オクタデシルアクリル酸塩)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸塩)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、及び乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)及びポリ(ラクチド−コカプロラクトン)、及び、アルギン酸塩及びその他多糖類(デキストラン及びセルロース)、コラーゲン、その化学誘導体(置換、化学基(例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化)の付加、及び当業者に耕地の他の修飾による)、アルブミン及び他の親水性タンパク質、ゼイン及びプロラミン及び疎水性タンパク質、それらの共重合体及び混合物などの天然ポリマーが挙げられる。通常これらの材料は、酵素による加水分解、インビボでの水への曝露、表面浸食又はバルク浸食のいずれかによって分解する。
【0108】
肺上皮への輸送方法
一実施形態では、例えば嚢胞性線維症の治療の場合、直接肺上皮に本発明の化合物を投与することは望ましく、望ましい投与経路は肺エアゾールである。肺輸送を目的とする薬は、水性製剤として、ハロゲン化炭化水素推進体の懸濁液又は溶液として、又は乾燥粉として投与できる。水性製剤は油圧若しくは超音波原子化を使用した液体ネビュライザによってエアロゾル化する必要があり、推進体に基づくシステムでは適切なメーターで測られた加圧投与吸入器を必要とし、乾燥粉では効果的に薬物を分散させることができる乾燥粉吸入装置を必要とする。水性及び他の非加圧液体システムの場合、様々なネビュライザ(小容量ネビュライザなど)を使用し、製剤をエアロゾル化できる。圧縮器駆動ネビュライザはジェット技術を採用し、圧縮空気を使用して液体エアゾールを生成させる。超音波ネビュライザはピエゾ電気結晶の振動の形としての機械的エネルギーに依存し、呼吸できる液滴を生成させる。推進用被駆動吸入器は、各動作の際、秤量された薬物投与量を放出する。薬物は懸濁液又は適切な推進体中の成分溶液として処方される。乾燥粉吸入器は通常、薬投与量を分配するために装置内に吸引した空気のバーストを利用する。例えば、かかる装置は米国特許第4807814号及び第5785049号に記載されている。肺への薬物輸送は、口腔及び咽喉へのエアゾール吸入によりなされる。約2〜約5ミクロンの直径を有する粒子は、上部から中部の肺領域(気道経由)に到達するのには十分小さいが、肺胞に到達するにはサイズが大きい。更に小さい粒子(すなわち約0.5〜約2ミクロン)により肺胞領域に到達できる。また約0.5ミクロンより小さい直径を有する粒子を肺胞領域に堆積させてもよいが、非常に小さい粒子は吐かれることがありうる。エアゾール輸送システムの調製方法は当業者に周知である。米国特許第4512341号、第4566452号、第4746067号、第5008048号、第6796303号及び米国特許出願公開第2002/0102294号を参照。当業者であれば、過度の実験を行うことなしに、肺エアゾールを調製する際の様々なパラメータ及び条件を直ちに調節できる。
【0109】
眼輸送方法
本発明の組成物(例えばオートファジーエンハンサー、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI−277など)))は、特に眼性タンパク質形態疾患(例えば緑内障、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィー)の治療に適している。
【0110】
1つの方法において、本発明の組成物は、目の硝子体への直接のインプラントに適する眼科用装置により投与される。本発明の組成物を、例えば米国特許第5672659号及び第5595760号記載の徐放性組成物において提供してもよい。かかる装置により、有害な局所及び全身性の副作用の危険性を伴うことなく、目の治療に様々な組成物の制御徐放が提供される。現在の眼への輸送方法の課題は、インプラント期間を延長するために、そのサイズを最小化すると共に、眼内装置又はインプラントに含まれる薬剤の量を最大にすることである。米国特許5378475号、第6375972号及び第6756058号、並びに米国特許出願公開第2005/0096290号及び第2005/01269448号を参照。かかるインプラントは、生分解可能及び/又は生物学的適合性のインプラントであってもよく、又は生分解性でないインプラントであってもよい。生分解可能な眼インプラントは、例えば米国特許出願公開第2005/0048099号に記載されている。インプラントは活性薬剤浸透性であっても浸透性でなくともよく、目の眼房、例えば前眼房又は後眼房に挿入してもよく、又は強膜、トランス脈絡膜空間又は無血管の硝子体領域外部にインプラントしてもよい。あるいは、本発明の組成物の貯蔵材として機能するコンタクトレンズを、薬物輸送に使用してもよい。好ましい実施態様において、インプラントを例えば強膜などの無血管領域に設け、それにより例えば目の中の眼内空間及び黄斑などの所望の部位への薬剤の強膜経由の拡散を行わせる。更にまた、強膜経由の拡散を行う部位は、好ましくは黄斑に近接する部位である。組成物の輸送のためのインプラントの例としては、米国特許第3416530号、第3828777号、第4014335号、第4300557号、第4327725号、第4853224号、第4946450号、第4997652号、第5147647号、第5164188号、第5178635号、第5300114号、第5322691号、第5403901号、第5443505号、第5466466号、第5476511号、第5516522号、第5632984号、第5679666号、第5710165号、第5725493号、第5743274号、第5766242号、第5766619号、第5770592号、第5773019号、第5824072号、第5824073号、第5830173号、第5836935号、第5869079号、第5902598号、第5904144号、第5916584号、第6001386号、第6074661号、第6110485号、第6126687号、第6146366号、第6251090号及び第6299895号、並びに国際公開第01/30323号及び第01/28474号において記載されている装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない(いずれも全開示内容が本願明細書に援用される)。
【0111】
例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:徐放性薬剤輸送システムであって、所望の局所的若しくは全身の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに有効な量の薬剤を含む内側貯蔵部を含んでなるシステム。薬品を通過させないインナーチューブ。第1および第2の端部を有し、少なくとも一部の内側貯蔵部を被覆する前記インナーチューブ。自身の重量を保持できる態様でサイズを設定され、材料を選択された前記インナーチューブ。インナーチューブ第1端部に設けられる非浸透性部材。インナーチューブ第1端部を通って貯蔵部から薬剤が通過するのを防止する前記非浸透性部材。インナーチューブ第2端部に設けられる浸透性部材。インナーチューブ第2端部を通って貯蔵部から薬剤が拡散する浸透性部材。目の部位に本発明の化合物を投与する方法。目の硝子体に本発明の化合物輸送する徐放性手段、又は本発明の化合物を目の部位に投与する移植可能な徐放性装置をインプラントする処理を含んでなる前記方法。徐放性薬剤輸送手段であって、a)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの第1薬剤の治療上有効量を含有する薬剤コアと、b)薬剤コアを保持して内部区画を画定する、薬剤を基本的に通過させない少なくとも1つのユニタリーカップであって、ユニタリーカップの開いた頂端部の少なくとも若干の部分の周辺に、少なくとも1つの中断された溝を有する開いた頂端部を含んでなるユニタリーカップと、c)薬剤を浸透させる浸透性プラグであって、当該浸透性プラグがユニタリーカップの開いた頂端部に設けられ、当該溝が当該浸透性プラグと相互作用してその位置に保持し、開いた頂端部を閉口させ、当該薬剤コアから、浸透性プラグを通して薬剤を透過させ、ユニタリーカップの開いた頂端部から放出させる浸透性プラグと、d)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの治療上有効量の第2薬剤、又は、徐放性薬剤輸送手段であって、所望の可溶性及びポリマーコーティング層を有する有効量の薬剤を含有する内核、薬品が浸透するポリマー層を含んでなり、ポリマーコーティング層が完全に内核を被覆する前記徐放性薬剤輸送手段。
【0112】
他の眼への輸送方法は、眼への、好ましくは網膜色素上皮細胞及び/又はブルッフ膜を本発明の化合物の標的とする、リポソームの使用が挙げられる。例えば、化合物は上記のリポソーム法と組合せてもよく、この化合物/リポソーム複合体は所望の眼組織又は細胞に化合物を輸送するために静脈注射により眼性PCD患者に注射される。網膜色素上皮細胞又はブルッフ膜の付近に直接リポソーム複合体を注入することにより、眼性PCDの若干の形態に対する、複合体のターゲティングが可能となる。具体的な実施態様では、当該化合物は眼内での遅延輸送(例えばVITRASERT又はENVISION)を介して投与される。具体的な実施態様では、当該化合物を、後部結膜下注入によって輸送する。他の具体的な実施態様では、本発明の組成物を含有するミクロエマルジョン粒子は、ブルッフ膜、網膜色素上皮細胞又はその両方からの脂質取り込みを通じて眼組織に輸送される。ナノ粒子は、血清半減期が長い、封入された薬剤の効能を高めることが知られているコロイド担体システムである。ポリアルキルシアノアクリレート(PACAs)ナノ粒子は、現在臨床的に開発されているポリマー性コロイド薬剤輸送システムであり、Stellaら、J.Pharm.Sci.,2000.89:p.1452−1464;Briggerら、Int.J.Pharm.,2001.214:p.37−42;Calvoら、Pharm.Res.,2001.18:p.1157−1166及びLiら、Biol.Pharm.Bull.,2001.24:p.662−665に記載されている。生分解可能なポリ(ヒドロキシル酸)、例えばポリ(乳酸)(PLA)とポリ(ラクチックコグリコリド)(PLGA)の共重合体が生物学的若しくは医学的用途で広範囲に用いられ、臨床応用におけるFDA認可を受けている。更に、PEG−PLGAナノ粒子は、(i)封入される薬剤が、全担体システムの相当に高重量フラクション(ローディング)を含んでなること、(ii)薬剤の量が、カプセル化プロセスの第一段階において使用したうちの相当に高いレベルで最終担体に組み込まれる(高い取り込み効率)こと、(iii)担体が凍結乾燥可能で、溶液中で凝集を起こさずに再構成される能力を有すること、(iv)担体が生分解可能であること、(v)担体システムが小型であること、(vi)担体が粒子の安定性を強化することなど、多くの望ましい担体としての機能を有する。
【0113】
ナノ粒子は、公知技術のいかなる生分解可能なシェルを使用して完全に合成される。一実施形態では、ポリマー、例えばポリ(乳酸)(PLA)又はポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)が用いられる。かかるポリマーは、生物学的適合性及び生分解性を有し、望ましくはナノ粒子の光化学物質有効性及び循環寿命を増加させるために修飾される。一実施形態では、ポリマーの末端のカルボン酸基(COOH)を修飾し、粒子の負電荷を増加させ、それにより負に荷電した核酸アプタマーとの相互作用を制限する。ナノ粒子はポリエチレングリコール(PEG)によっても修飾され、同様に循環の際の粒子の半減期及び安定性を増加させる。あるいは、COOH基をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルに変換させ、アミン修飾アプタマーとの共有結合コンジュゲーションを行わせてもよい。
【0114】
本発明の組成物及び方法に有用な生物学的適合性のポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(イソデシルメタクリル酸)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸)ポリビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)及びこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、本発明のナノ粒子はPEG−PLGAポリマーを含有する。
【0115】
本発明の組成物は、局所的に輸送されてもよい。局所輸送の場合、眼輸送において承認されるいかなる薬学的に許容できる賦形剤中に組成物を添加してもよい。好ましくは、組成物は目への点眼の形で輸送される。若干の用途では、組成物の輸送は、角膜を経由して目の内部に化合物を拡散させることにより行う。
【0116】
当業者であれば、眼性PCDの治療に本発明の化合物を使用する場合の最高の治療計画を容易に決定できると認識する。これは実験を行う程のことではなく、むしろ最適化の問題であり、医療現場において日常的に行われることである。ヌードマウスのインビボ試験により、投与量及び輸送療法を最適化するための治療開始の時期が明らかにされる。注入の頻度は、マウスによる試験の結果を踏まえ、最初は週一度である。しかしながら、この頻度は、特定の患者の最初の臨床試験及びニーズを踏まえて、毎日〜2週間に一度〜1ヶ月に一度の頻度で適宜調節できる。
【0117】
本発明の組成物(オートファジーエンハンサー、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばFTI−277)))のヒトへの投与量は、マウスで使用する化合物量から推定することにより容易に決定できる。すなわち当業者であれば、動物モデルと比較してヒトの投与量を適宜修正することは公知技術であり、ルーチンワークであると認識する。具体的な実施態様では、投薬量は約1mg化合物/Kg体重〜約5000mg化合物/Kg体重の間、又は約5mg/Kg体重〜約4000mg/Kg体重、又は約10mg/Kg体重〜約3000mg/Kg体重、又は約50mg/Kg体重〜約2000mg/Kg体重、又は約100mg/Kg体重〜約1000mg/Kg体重、又は約150mg/Kg体重〜約500mg/Kg体重などの範囲で調節できる。他の実施態様では、この投与量は例えば1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/Kg体重であってもよい。他の実施態様では、高い投与量を使用することもあり、かかる投与量としては約5mg化合物/Kg体重〜20mg化合物/Kg体重の範囲であってもよい。他の実施態様では、投与量は8、10、12、14、16若しくは18mg/Kg体重であってもよい。ラパマイシンが使用される場合、1mg、2mg、3mg、5mg、7mg、10mg、15mg、20mg又は25mg/日の投与量を採用してもよい。もちろん、この投与量は上方若しくは下方へ調整でき、特定の患者の最初の臨床試験の結果及びニーズに応じて、適宜治療プロトコルに従って行うことができる。
【0118】
スクリーニングアッセイ
本願明細書に述べられるように、ミスフォールディングタンパク質によって細胞の通常の生物学的機能が妨げられ、PCDが生じる。多くの場合、タンパク質凝集体中のミスフォールディングタンパク質の蓄積は細胞傷害及び細胞毒性を生じさせる。有用な化合物はかかるタンパク質の分解を強化し、それにより細胞毒性を改善する。多くの方法を利用し、かかる化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを行ってもよい。1つの方法としては、野生型タンパク質形態をとれない変異体タンパク質を細胞で発現(インヴィトロ又はインビボ)させ、細胞と候補化合物を接触させ、オートファジーに対する化合物の効果を、従来技術において公知若しくは本願明細書に記載されている任意の方法を使用してアッセイすることにより行う。オートファジー強化化合物は、任意の標準的方法(例えば免疫測定法)を使用して、ミスフォールドタンパク質のレベルの減少を測定することにより、細胞毒性の減少を測定することにより、自食胞の存在下でオートファジーマーカー(例えば非リン酸化されたmTOR又はS6キナーゼ)の中のレベルの増加を測定することにより同定される。化合物と接触しなかったコントロール細胞と比較して、接触させた細胞に存在するミスフォールディングタンパク質の量を減少させる化合物は、本発明の方法において有用であるとみなされる。ミスフォールドタンパク質の量の減少は、例えば、細胞内タンパク質凝集の減少、細胞毒性の減少、又は前記タンパク質のレベルの減少を測定することによってアッセイすることができる。好ましくは、ミスフォールドタンパク質は選択的に分解される。関連する方法においで、当該スクリーンはラパマイシン、FTI−277、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又はそのアナログ若しくは誘導体の存在下で実施する。有用な化合物は、少なくとも10%、15%又は20%、又は好ましくは25%、50%若しくは75%、又は最も好ましくは少なくとも100%、200%、300%又は400%の割合でミスフォールディングタンパク質の量を減少させる。
【0119】
必要に応じて、同定された化合物の有効性をPCDを有する動物モデル(例えば色素性網膜炎、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌(例えばp53突然変異関連の癌)及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)の動物モデル)を用いてアッセイしてもよい。
【0120】
ラパマイシン活性のエンハンサーのスクリーニング
本発明はPCDの治療のためのオートファジー強化方法に関する。ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物は、ミスフォールディングタンパク質の分解を強化すると考えられる。したがって、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的効果を強化するとして同定された化合物は本発明の方法に有用である。一実施形態では、ラパマイシンの生物学的活性を強化する小分子は、酵母細胞の小分子標的の識別ストラテジーを使用して確認される。ラパマイシンは、野生型酵母細胞の成長を阻害する。酵母細胞増殖に対する抑制効果を強化する化合物は、ルーチン的な手法(例えば遺伝子の化学修飾スクリーニング)を使用して確認できる。かかるスクリーニング法は従来技術において公知であり、Huangら、PNAS 101:16594−16599,2004記載されている。ラパマイシン処理は栄養飢餓反応の状態を誘導し、しばしば成長抑制をもたらす。遺伝子の化学修飾を使用して、酵母菌サッカロミセスセレビジエのラパマイシン効果を増強(例えば少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、85%、90%又は95%増加)する、小分子ラパマイシンエンハンサー(SMERs)をスクリーニングする。ビオチン化されたSMERsを有するプロテオームチップを徹底的に解析することにより、ラパマイシンの細胞内での活性を修飾する推定の細胞内目標タンパク質が同定される。一実施形態では、ラパマイシンを候補化合物の有無において酵母細胞の培養培地に添加する。酵母細胞を培養液中に維持し、酵母細胞の増殖を監視する(例えば吸光度を使用)。ラパマイシンとの組合せで酵母細胞増殖を減少させる化合物をSMERと同定する。かかる化合物は、オートファジー強化においてそれ単独で、又はラパマイシンと組み合わせるのが有用であると考えられる。必要に応じて、オートファジーへのSMERの効果を、本願明細書(例えばオートファジーマーカーの増加、オートファジー小嚢の増加、ミスフォールドタンパク質の分解強化)に記載されているか又は従来技術において公知の任意の方法を使用してアッセイしてもよい。
【0121】
試験化合物及び抽出
一般に、ミスフォールディングタンパク質の量を減少させ、又はかかるタンパク質の細胞における選択的な分解を増加させることを可能にする化合物は、天然若しくは合成(又は半合成)抽出物の大規模なライブラリー、又は公知技術の方法による化学ライブラリーから同定する。創薬及び医薬開発の分野における当業者であれば、試験抽出物若しくは化合物の正確な供給源は、本発明の1つ以上のスクリーニング方法においてそれ程重要ではないと理解する。したがって、実質的に全ての化学抽出物又は化合物を、本願明細書に記載の方法を使用してスクリーニングできる。かかる抽出物又は化合物の例としては、植物、菌類、原核生物若しくは動物細胞からの抽出物、培養液及び合成化合物質、並びに既存の化合物の修飾物が挙げられるが、これらに限定されない。多くの方法を利用して、いかなる数の化合物のランダム若しくは誘導された合成物(例えば半合成又は完全合成)を生成でき、それには糖質、脂質、ペプチド及び核酸ベースの化合物が挙げられるがこれに限定されない。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates社(メリマック、N.H.)及びAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から市販されている。あるいは、細菌、菌類、植物及び動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが多くの供給源から市販されており、例えばBiotics社(サセックス、英国)、Xenova(Slough、英国)、Harber Branch Oceangraphics Institute(フィートピアス、Fla)及びPharmaMar USA(ケンブリッジ、マサチューセッツ)が挙げられる。更に、標準的な抽出及び分画法によって、天然及び合成的に生成されたライブラリーを、必要に応じて、従来技術において公知の方法に従って作成してもよい。更に、必要に応じていかなるライブラリー又は化合物も、標準的な化学的、物理的、生化学方法を使用して直ちに修飾できる。
【0122】
更に、創薬若しくは医薬開発の当業者であれば、容易に既知物質同定方法(例えば、分類学上の同定、生物学的同定及び化学的同定、又はそれらのあらゆる組み合わせ)、又はミスフォールドタンパク質の修正においてそれらの活性が公知の同定物又は既知の材料の繰り返しの除去方法を、必要に応じて使用する必要がある
【0123】
粗抽出物がミスフォールドタンパク質の形態を修正することがわかれば、陽性のリード抽出物を更に分画することにより、観察された効果をもたらす化学成分を単離することが必要となる。すなわち、抽出、分画及び精製プロセスの課題は、粗抽出物中における化学物質の慎重な解析及び同定であり、それにより正しくフォールディングされたタンパク質の収率が上昇する。かかる不均一な抽出物の分画及び精製方法は、従来技術において周知である。必要に応じて、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集に関連するいかなる病理の治療に有用な薬剤であると示される化合物を、公知技術の方法に従って化学的に修飾してもよい。
【0124】
併用療法
PCD(色素性網膜炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患))の治療に有用な本発明の組成物は、必要に応じて、公知のいかなる標準的な治療方法との組合せで投与されてもよい。色素性網膜炎の場合、標準的な治療方法としてはビタミンAサプリメントの使用が挙げられる。パーキンソン病の場合、標準的な治療としては、レボドパ/カルビドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンセラジド、リスライド、メルレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピジベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラートなどのドーパミン受容体アゴニストの1つ以上の投与が挙げられ、他の標準的治療方法としては、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用が挙げられる。ハンチントン舞踏病の場合、標準的治療方法としてはハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10のうちの1つ以上の投与が挙げられる。アルツハイマー病の場合、標準的治療方法としては、ドネペジル(アリセプト)、トリバスチグミン(エクセロン)、ガランタミン(ラザジン)及びタクリン(コグネックス)のうちの1つ以上の投与が挙げられる。腎生成尿崩症の場合、標準的な治療方法としては、クロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。嚢胞性線維症の場合、標準的な治療方法としては、粘液溶解剤(例えばドルナーゼα)、気管支拡張剤(例えばアルブテロール)及び感染症治療用の抗生物質のうちの1つ以上の投与が挙げられる。癌の場合、標準的治療方法としては、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。
【0125】
キット
本発明は、PCD若しくはその徴候の治療若しくは予防用のキットを提供する。一実施形態では、当該キットは、ラパマイシン又はそのアナログの有効量を含有する製薬パックを含んでなる。他の実施態様では、当該キットはラパマイシン及び11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを含んでなる。他の実施形態では、当該キットはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、FTI−277)の有効量を含んでなる。好ましくは、組成物は単位用量形態で調製される。幾つかの実施形態では、当該キットは、治療的もしくは予防的な組成物を含有させる無菌容器を含んでなり、かかる容器は、従来技術において公知のボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック又は他の適切な容器の形態であってもよい。かかる容器は、薬剤の保持に適するプラスチック、ガラス、ラミネートペーパー、金属箔又は他の材料で作製してもよい。
【0126】
必要に応じて、本発明の組成物又はそれらの組み合わせと、PCDに罹患若しくは罹患するおそれのある患者にそれらを投与する際の説明書とを併せて包含させてもよい。説明書には通常、PCDの治療若しくは予防用の化合物の使用に関する情報が記載されている。他の実施態様では、説明書には、少なくとも化合物又は化合物の組合せの説明、PCD又はその徴候の治療のための投与計画及び投与方法、注意事項、警告事項、指示、禁止事項、過剰投与に関する情報、逆作用、動物における薬理学、臨床研究結果、及び/又は参照のうちの1つ以上が記載されている。説明書は、容器(存在する場合)に、又は容器に貼り付けるラベルに直接印刷してもよく、又はシート、パンフレット、カード又はフォルダとして容器に梱包してもよい。
【0127】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者に理解されるように、下で提供される具体的な構成は多様に変化させることもできるが、それらは化合物又はその組み合わせによる重要な特性を維持しつつ、上記の発明と整合する態様であることが条件となる。
【実施例】
【0128】
色素性網膜炎(RP)は、rod光受容体を死に至らしめる遺伝性網膜障害の異質なグループを含むPCDである。光受容体の死因は、色素性網膜炎に罹患する患者の周辺視野の連続的な損失であるため、夜盲及びそれに続くトンネル視に至る。常染色体優性色素性網膜炎(ADRP)患者の20〜25%にはロドプシン遺伝子の突然変異があり、最も一般的な突然変異がP23Hである。P23H突然変異は、11−シス−レチナールとの結合ができないミスフォールドオプシンタンパク質をもたらす。ミスフォールドP23Hタンパク質は細胞中で保持され、凝集体を形成する(Salibaら、2002.JCS 115:2907−2918;Illingら、2002.JBC 277:34150−34160)。この凝集の挙動により、タンパク質高次構造的な障害(PCD)として、P23Hを含む若干のRP突然変異が分類される。
【0129】
嚢胞性線維症の膜内外コンダクタンス調節物質(CFTR)をコードする遺伝子の欠陥は嚢胞性線維症を引き起こし、それもまた他のPCDである。嚢胞性線維症は白人において最も一般的な致死遺伝病であり、米国には約30000人の嚢胞性線維症患者が存在する。CFTRはCl−チャネルを形成し、それは多くの器官(腸、膵臓、肺、汗腺及び腎臓など)の上皮Cl−輸送システムにおける必須の構成要素である。腸のCF分泌腺において、CFは側底膜上のNa+−K+−2CFによる共同輸送により細胞内に取り込まれ、頂側膜上のCFTRを通って放出され、水がそれに続いて浸透する。CFTRをコードする遺伝子の欠陥によるそのCF輸送能力低下、又は細胞表面での発現レベルの低下により、嚢胞性線維症が生じる。塩化物イオン輸送のこの欠陥は、気道分泌物の不適切なクリアランス、及び細菌感染に対する感染性の増加に至る。嚢胞性線維症はマルチシステムの障害であるが、呼吸不全が主要な死因として依然として存在する。
【0130】
以下の実施例は、変異体オプシン又はCFTRタンパク質の分解を特異的に強化する化合物の同定のための、変異体タンパク質の使用を例示するが、本発明はこれらに限定されない。細胞におけるミスフォールディングオプシン又はミスフォールディングCFTRの選択的分解(例えばオートファジー分解)を強化するのに有用であると同定された化合物は、色素性網膜炎又は嚢胞性線維症の治療にそれぞれ有用である。かかる化合物はあらゆるミスフォールディングタンパク質の分解も強化すると考えられ、通常、実質的に全てのタンパク質高次構造的な障害の治療に有用であると考えられる。以下の実験の実施に有用な方法はNoorwezら、Journal of Biological Chemistry 279:16278−16284(2004)に記載され、全開示内容が本願明細書に援用される。
【0131】
実施例1:ミスフォールディングタンパク質の分解のオートファジー誘導結果
P23H若しくは野生型オプシンを発現するHEK293テトラサイクリン誘導可能な安定細胞株を使用して、アミノ酸飢餓又はラパマイシン曝露によりマクロオートファジーを誘導した。図1Aは、オートファジーを、アミノ酸飢餓のみ(レーン4〜6)、又はラパマイシン添加(レーン7〜9)、アミノ酸飢餓とラパマイシン曝露の組合せ(レーン10〜12)により誘発された野生型オプシンの、イムノブロットによる分解プロフィールを示す。図1Bのグラフは、野生型オプシンの比較量を時間経過で比較した実験結果であり、野生型オプシンのレベルがオートファジー誘導後の12時間にわたり基本的に不変であったことを証明するものである。対照的に、オートファジーがこれらの方法(図1C)のいずれかによって細胞において誘発されるとき、P23Hオプシンの量は急速に減少した。P23Hオプシン(図1D)の分解プロフィールは、オートファジーがアミノ酸飢餓により誘発されるとき、33%のミスフォールディングオプシンが12時間(図1D、正方形)以内に分解したことを示す。オートファジーがラパマイシンにより誘発されるとき、46%のタンパク質が6時間の処理(図1D、三角形)で分解した。アミノ酸飢餓とラパマイシン処理(図1D、円)を組み合わせたとき、分解は更に強化され、ほぼ52%のミスフォールディングオプシンは2時間以内に分解し、81%が12時間後に分解した。
【0132】
実施例2:オートファジーはミスフォールディングタンパク質を特異的に分解する
この効果がプロテアソームの抑制により調節されるか否か、又はオートファジーのみにより媒介されるか否かを解析するため、オートファジーが誘発された細胞において、プロテアソーム阻害剤又はオートファジー阻害剤の存在下でP23H分解が生じるか否かを解析した。3−メチルアデニン、オートファジー阻害剤及びMG132(プロテアソーム阻害剤)を、オートファジー誘導時に細胞培養培地に添加した。図1Fは、アミノ酸飢餓細胞において3−MAがP23Hの分解を阻害することを示す。図1Gは、プロテアソーム阻害剤MG132がP23Hオプシン分解(図1D)に影響を及ぼさなかったことを示す。これらの試験は、オートファジーがミスフォールディングされたP23Hオプシンを特異的に分解することを示す。
【0133】
実施例3:ラパマイシンはミスフォールディングタンパク質のオートファジーを強化する
過去の試験では、11−シスレチナールはP23Hオプシンのフォールディング及び安定化を補助する薬理学的シャペロンとして機能することが示されている。11−シスレチナールの投与により、大部分のP23Hタンパク質プールが細胞表面に至り、11−シス−レチナールと結合してロドプシンを形成する。11−シスレチナールをオートファジー誘発時に投与した場合、P23H分解のレベルは変化しなかった(図1E、レーン4−6)。にもかかわらず、眼性PCDの治療のための、ラパマイシンとの組合せによる11−シス−レチナールの投与が臨床効果を強化するということは、11−シス−レチナールが正しくフォールディングされたタンパク質の濃度を上昇さ、ラパマイシンがあらゆる残留ミスフォールディングタンパク質の分解を強化するためであると考えられる。
【0134】
培地中のロドプシン濃度は、アミノ酸補充の有無にかかわらず同様であった(図1E、レーン1−3、レーン4−6)。アミノ酸飢餓の間、11−シスレチナールで処理した細胞のP23Hタンパク質の分解プロフィールを、野生型オプシン発現細胞又は11−シスレチナールに曝露しなかったP23Hオプシン発現細胞の分解プロフィールと比較した。11−シス−レチナールの存在下でのP23Hタンパク質分解は、野生型オプシン発現細胞又は11−シスレチナール非存在下のP23Hタンパク質発現細胞と比較し、中間の分解プロフィールを示した。
【0135】
興味深いことに、ラパマイシンのみによる処理は、それのみか、又は細胞へのアミノ酸飢餓との組合せで投与したかに関わらず、P23Hロドプシンの急速な分解を誘発した(図1E、レーン7−9、10−12)。11−シスレチナールの存在下で、P23Hの分解プロフィールは、通常の条件下で培養した細胞(図1F、ダイヤモンド)、又はアミノ酸飢餓培地の場合と同様であった(図1F、正方形)。ラパマイシンが11−シス−レチナール非存在下で投与した場合、分解の強化が観察された(図1F、三角形)。P23Hタンパク質の約33%が12時間以内に分解した。ラパマイシンをアミノ酸飢餓細胞に投与した場合、ロドプシン分解の更なる強化は観察されなかった。事実、アミノ酸飢餓細胞に対するラパマイシンの投与は、ラパマイシン処理のみの場合の効果と類似していた。ほぼ31%のP23Hタンパク質が12時間以内に分解した(図1F、円)。すなわち、ラパマイシンにより選択的に誘発されるオートファジーは、11−シスレチナールの存在下でP23Hタンパク質分解を強化した。
【0136】
実施例4:オートファジー誘導はmTORリン酸化特性の変化を誘発する
mTORは哺乳類のラパマイシン標的であり、オートファジー細胞においてmTORレベルは特徴的に減少する。オートファジーが上記の方法により誘発されることを確認するために、アミノ酸飢餓細胞及びラパマイシン曝露細胞におけるmTORリン酸化を解析した。予想通り、リン酸化mTORの量の減少が、アミノ酸飢餓細胞及びラパマイシン曝露細胞に対するオートファジー誘導の後で観察された。オートファジー誘導は、11−シス−レチナール投与された細胞と同様に、野生型又はP23Hオプシンを発現する細胞において観察された。このリン酸化の増加はmTORに特異的であった。その理由は、フォールディングしないタンパク質への応答(UPR)によって上方制御されるシャペロンであるBip及びカルネキシン、及び熱ショックへの応答(HSR)によって上方制御される細胞質シャペロンHsp70の細胞レベルが、オートファジー条件下で不変であったためである。これらのシャペロンの量は、アミノ酸飢餓又はラパマイシン処理により誘発されるオートファジー後の一定時間において維持された(図1H、1I)。
【0137】
オートファジーがミスフォールディングタンパク質の一般的な分解機構であるか否かを解析するため、変異型の嚢胞性線維症の膜内外コンダクタンス調節装置(CFTR)タンパク質のオートファジー分解を解析した。CFTRは、上皮細胞の頂端膜で発現するcAMP活性化型塩素イオンチャネルである。CFTRはP23Hオプシンと同様に多領域にわたる膜タンパク質である。かかる多領域タンパク質は多くのαへリックス膜貫通部分を有する。CFTRの突然変異により、それが機能する原形質膜における、その形成、プロセシング及び配置に影響が及ぶ。
【0138】
野生型CFTR(図2A)及び変異体CFTRΔF508(図2C)タンパク質を、BHK安定細胞系において発現させた。オートファジーは、アミノ酸飢餓、ラパマイシン処理又はラパマイシン処理及びアミノ酸飢餓の組合せを用いて、野生型又は変異体CFTRタンパク質発現細胞において誘発させた(図2A)。オートファジー誘導が野生型CFTRタンパク質濃度(図2B)に影響を及ぼさない一方で、ΔF508タンパク質(図2D)は、アミノ酸飢餓、ラパマイシン処理又はその両方(図2C)によって、オートファジー誘導に応答して急速な分解を受けた。分解プロフィールではアミノ酸飢餓が12時間(図2D、三角形)以内にΔF508タンパク質の約34%を分解することを示し、その一方で、ラパマイシン処理では50%のタンパク質が12時間(図2D、正方形)後に分解された。アミノ酸飢餓がラパマイシン処理と組み合わされるときに分解がより顕著であった。変異体タンパク質の中の約75%が6時間以内に分解し、80%が処理の12時間後に分解した(図2D、円)。これらの観察から、オートファジーが選択的にミスフォールディングΔF508タンパク質を分解することが示唆される。mTORリン酸化は、野生型若しくは変異型CFTRタンパク質発現細胞のオートファジー誘導後に減少した。シャペロンであるBip、カルネキシン及びhsp70のレベルの違いは観察されなかった。図2E及び2FはmTOR脱リン酸化(図2E)、並びにラパマイシンの有無による、通常の培地又はアミノ酸飢餓培地で培養した細胞中のカルネキシン、カルレティキュリン、Hsp70又はBipタンパク質発現を示すイムノブロットである。
【0139】
実施例5:オートファジー誘導後にミスフォールディングタンパク質と共局在化するオートファジーマーカー
オートファジー誘導は、電子顕微鏡検査を使用して細胞の自食胞(AVs)の存在を確認することによってモニターできる。通常の培地においてP23H細胞は若干のAVsを含むが、細胞をアミノ酸飢餓培地でインキュベートした場合、かかる自食胞の数が著しく増加する(図5)。
【0140】
ミスフォールディングタンパク質が自食胞マーカーと共局在化するか否かを解析するため、野生型オプシン発現細胞(図3A)若しくは変異体P23Hオプシン(図3B)発現細胞を、Atg7、LC3及びLamp1オートファジーマーカーに関して染色した。細胞を、オートファジー誘導後にオプシン特異的、及び自食胞マーカー特異的な抗体とインキュベートした。野生型タンパク質は、いかなる自食胞マーカー(図3A)とも共局在化しなかった。野生型オプシンタンパク質は細胞膜に存在し、その一方でP23Hは細胞内凝集体を形成した。同じオートファジーマーカーを、野生型(図4A)又は変異型ΔF508 CFTRタンパク質(図4B)発現BHK細胞において解析した。これらの細胞において、ΔF508 CFTRタンパク質は目視できる程の凝集体が形成されなかった。野生型CFTRタンパク質は細胞内と同様に細胞膜でも観察され(図4A)、その一方でΔF508はER(図4B)において保持された。図5A〜5Cは、P23H凝集、リソソーム及びオートファジー細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【0141】
Atg7による免疫蛍光染色による斑点状の染色が示され、両方の変異体タンパク質が共局在化していることを示す。P23HによるAtg7の共局在化を図3Bに示し、ΔF508による共局在化を図4Bに示す。Atg8染色によっても、両方の変異体タンパク質による共局在化が示された。Atg8では特徴的な斑状の染色が示され、P23Hミスフォールディングタンパク質凝集体との共局在化を示すものである(図3B)。Atg8染色はまた、ERにおけるΔF508タンパク質の保持を示す(図4B)。これらの観察は更に、変異型多領域タンパク質(例えばP32H及びΔF508)の分解におけるオートファジーの役割を裏付ける。
【0142】
要約すると、オートファジー経路は、野生型タンパク質にはごくわずかな影響しか及ぼさないが、ミスフォールディングした多領域タンパク質(例えばP23H及びΔF508)を特異的に分解する。この結果は変異体タンパク質の発現に用いが細胞系の選択には無関係であったが、その理由としては、野生型及び変異型オプシンタンパク質はヒト胚腎臓細胞系において発現されるが、野生型及び変異型CFTRタンパク質は乳児ハムスター腎臓細胞系において発現されることが挙げられる。
【0143】
電子顕微鏡検査を使用して自食胞を観察した。二重膜自食胞数の増加が、P23Hオプシン発現細胞において観察された。オートファジー誘導後に、これらの細胞中にP23Hオプシンの大型の凝集体又は小型の散乱した凝集体が含まれていた。暗い酸性ホスファターゼ染色されたリソソームが、AV及び凝集体に関連して観察された。1つの特定の理論に拘束されないが、これは、ミスフォールディングオプシン分解に対するリソソーム経路の役割を示唆するものと考えられる。自食胞マーカーは、ミスフォールディングP23Hオプシン及びΔF508タンパク質と共局在化する。Atg7は、AVsの形成に必要な、E1ユビキチン活性化酵素に類似するタンパク質をコードする、鍵となるオートファジー遺伝子である。Atg7は、Atg8(微小管関連タンパク質軽鎖3)の脂質へのコンジュゲートを促進し、AVsの膜を分離させ、それらの形成を促進する。Atg8は初期及び後期の自食胞の膜に存在する。P23H及びΔF508タンパク質と共局在化するAtg7及びAtg8の別々の染色により、ミスフォールディングタンパク質の分解におけるAVsの役割が示唆される。
【0144】
実施例6:ラパマイシン処理は、色素性網膜炎の網膜機能を強化する
P23H突然変異を有する変異型マウスオプシンを発現するトランスジェニックマウスは、色素性網膜炎患者において観察される病態生理学的変化に類似する急速な漸進性の光受容体の分解を受ける。P23H異型の変異体マウスによるインビボ試験では、ラパマイシン処理により3ヵ月(図6)にわたり網膜機能がレスキューされることが示された。
【0145】
実施例7:ラパマイシンは黄斑変性の網膜機能を強化する
リポフスシン成分として網膜色素上皮細胞(RPE)に蓄積するビスレチノイドフルオロフォアは、劣性Stargardt疾患(黄斑変性の初期の形態)におけるRPE細胞の損失の原因となると考えられ、加齢に関連する黄斑変性の病因に関係するとも考えられている。黄斑変性のマウスモデルにおけるインビボ試験は、ラパマイシン処理が、Stargardt疾患に関連する1つの不完全なABCR遺伝子のコピーを有するAbcr異型の変異体マウスの網膜機能をレスキューすることを示す(図7)。ABCR遺伝子は端タンパク質(RmP)(ディスク状の光受容器外側部分の端において発現するATP結合カセット輸送体)をコードする。
【0146】
実施例8:FTI277はP23Hロドプシンの急速な分解を誘発した
ファネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤のFTI277、メチル{N−[2−フェニル−4−N[2(R)−アミノ−3−メルカプトプロピルアミノ]ベンゾイル]}−メチオニン酸(Calbiochem社製)による処理により、ラパマイシンと同様のP23Hロドプシンの急速な分解が誘導された(図8)。ラパマイシンと同様に、FTI277がオートファジーを強化し、FTI277がタンパク質形態疾患の治療に有用であることが示唆される。
【0147】
実施例9:FTI−277はP23Hオプシンの分解を刺激する
変異体オプシンのレベルに対するFTI−277の効果を試験するため、P23Hオプシン発現HEK293細胞を、異なる濃度のFTI−277(1、5、10及び50μM)でインキュベートした。50μMのP23Hオプシンの時間経過に伴う分解が観察された。FTI−277の効果は、10μM(図9A)では検出されなかった。ラパマイシンと比較し、70%のP23Hオプシンがラパマイシン処理の12時間後に分解し、その一方で、FTI−277では同じ時間の経過において、P23Hオプシンの50%の分解が観察された(図9B)。
【0148】
実施例10:FTI−277はUPR/HSRを誘発しない
FTI−277処理後の、カルネキシン及びカルレティキュリン、未フォールディングタンパク質への応答(UPR)と関連するERシャペロンのレベル、又は熱ショック反応(HSR)と関連する細胞質シャペロンであるHsp70及びHsp90のレベルを解析した。FTI−277は2つの反応のどちらのレベルにも影響を及ぼさず、P23HオプシンのFTI−277誘発された分解がUPR及びHSRとは無関係であることが示唆された(図10)。
【0149】
実施例11:FTI−277処理はmTOR/S6Kシグナリングをブロックする
FTI−277はmTor及びS6キナーゼのリン酸化を効果的に阻害し、この薬剤がRheb活性を抑制することが予想された(図11A、B)。リン酸化されたmTOR及びS6キナーゼが、アミノ酸及び血清を供給した細胞において観察された。ラパマイシン処理と同様に、FTI−277はmTORの脱リン酸化を誘発し、それはアミノ酸及び血清飢餓(図11A)との組合せで更に強化された。同様に、S6キナーゼのリン酸化は、FTI−277又はラパマイシン(図11B)で処理した細胞において激減した。対照的に、HEK293細胞のAktリン酸化の刺激はFTI−277処理による影響を受けず、Bassoら、J.Biol.Chem.280,31101−31108(2005)と同様の、MAPKのわずかなリン酸化の増加が観察されたにもかかわらず、Ras活性が影響を受けないことを示唆するものであった。
【0150】
実施例12:FTI−277処理後の、P23HオプシンのAtg7及びAtg8との共局在化
ラパマイシンにより誘発されたP23Hオプシンの分解がオートファジーにより媒介された場合には、FTI−277分解も同様にオートファジーにより媒介されることが示唆される。P23Hオプシン凝集と、周知の自食胞マーカー、Atg7及びAtg8との関係を、免疫蛍光顕微鏡検査により解析した。これらのマーカーは通常、完全培地(図12A及び12B)で培養した無処理細胞ではP23Hオプシンと共に共局在化しない。FTI−277処理によるP23Hオプシンと両方のマーカーの共局在化の劇的な増加が観察された(図12A及び図12B)。P23Hオプシン凝集に関連するAtg7及びAtg8の局在化を、共焦顕微鏡検査によりより詳細に観察した(図12C)。Atg7のドットは、P23Hオプシン凝集と共にクラスターを形成し、またP23Hオプシンと共局在化している。同様に、P23Hオプシン凝集とのAtg8ドットの共局在化が若干強化され、一方、残りのドットは凝集体の周辺に存在した。凝集体の周辺におけるAtg7及びAtg8タンパク質の存在は、P23Hオプシンの分解におけるオートファジーの役割を裏付けるものである。
【0151】
実施例13:FTI−277によるオートファジーの誘導
これらの結果は、FTI−277がオートファジーを活性化させることを示す。そこで、FTI−277に対するオートファジー応答を、リソトラッカー(lysotracker)を使用して細胞のリソソーム自食胞の数及びサイズを観察し、解析した。ラパマイシン又はFTI−277(図13A)で細胞を処理したときのリソソーム数及びサイズ変化を観察した。次に、電子顕微鏡検査を利用し、P23Hオプシンを発現する、無処理及びFTI−277処理されたHEK293細胞のオートファジー応答を評価した。リソトラッカーで観察されるように、FTI−277処理された細胞には、リソソーム酸性ホスファターゼを含有する多くの大型の自食胞が存在した(図13B)。更に、これらの自食胞は多くの細胞質凝集体を取り込む途中であるように見えた(図13B)。形態を定量化した後、FTI−277処理された細胞において、無処置の細胞と比較してAVsの数が4〜6倍増加していた(図13C)。これらのデータは、FTI−277がHEK293細胞のオートファジー応答を促進することを示唆する。
【0152】
GFP−LC3を安定発現するHuH7肝癌細胞(オートファジーマーカー)に対するFTI−277の効果も解析した。Fed細胞において、GFP−LC3は細胞質全体にわたって広く観察された。これらの細胞をFTI−277で処理したとき、多数の構造へのGFP−LC3局所化は、その自食胞の凝集及びオートファジーの開始と一致した(図14)。これらの試験は、FTI−277で処理した細胞においてオートファジーが劇的に上方制御されることを証明する。P23Hオプシンを発現するHEK293細胞におけるオートファジーの誘導を、オートファジーをブロックするPI3−キナーゼ阻害剤、3−メチルアデニン(3MA)を使用して解析した。FTI−277の存在下での3MA処理によりオプシンの分解がブロックされた。細胞をFTI−277のみで処理した場合は、この効果は観察されなかった(図15A)。P23Hオプシン分解がオートファジーであることを更に裏付けるために、プロテアソーム阻害剤 MG132を使用した。P23Hオプシン分解はFTI−277のみと同様に、FTI−277及びMG132の存在下で類似の動力学を示し、この経路におけるプロテアソームの分解の役割が制限されたことを示唆する(図15B)。
【0153】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTIs)を、Ras腫瘍性タンパク質の活性をブロックする態様に設計した。Rasの活性は、ファルネシル化(ファルネシルイソプレノイド膜アンカーをタンパク質に結合させる翻訳後修飾)に依存する。ファルネシルトランスフェラーゼは、さまざまなタンパク質基質のシステイン残基上へのファルネシル二リン酸からの15−カーボンイソプレニル脂質の転移を触媒する。
【0154】
ファルネシルトランスフェラーゼは、基質のカルボキシル端末CAAXボックスを認識する。Rhebはグアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、GTPアーゼでもある。Rhebタンパク質は、GTPの認識及び加水分解に関係する短いG1−G5ボックス配列を有する(Bourneら、(1990)Nature 348,125−132)。また、Rhebタンパク質はファネシル化に必要とされるCAAX(CSVM)モティーフを末端に有する。哺乳動物細胞において、S6Kを活性化させるRhebの能力が確認されている。この機能はファルネシル化に依存する。なぜなら、CAAXのモティーフを欠くRheb変異体はS6Kを活性化させることができないからである(Castroら、J.Biol.Chem.278,32493−32496,2003;Teeら、Curr.Biol.13,1259−1268,2003)。更に、FTIs(FTI−277など)はRhebの完全なプレニル化ブロックすることが確認されている(Bassoら、J.Biol.Chem.280,31101−31108,2005)。Rhebはゲラニルゲラニル化を受けない。FTIsの他の標的が、Rheb以外にも存在する。試験では、ファルネシル化が阻害されるときにそれらがゲラニルゲラニル化を受けるため、K−Ras4Bなどのタンパク質がFTIsに対する抵抗性を有することが示されている。これらの試験は、Rhebが、ファルネシル化の対象となる他のタンパク質よりも、FTIsの特異的な標的であることを示唆する。更に、Aktリン酸化はFTI−277に影響を受けず、FTI−277がRas活性に影響を及ぼさないことを示唆するものである。Rhebは、インシュリン/TOR/S6Kシグナリング経路の構成要素である(Castroら、J.Biol.Chem.278、39921−39930、2003;Tabancayら、J.Biol.Chem.278、39921−39930、2003;Teeら、Curr.Biol.13、1259−1268 24、2003;Inokiら、Genes Dev.17、1829−1834、2003;Garamiら、Mol.Cell 11、1457−1466、2003)。本願明細書に記載のように、Rhebの阻害と整合したFTI−277によるmTOR及びS6Kの脱リン酸化が観察された。細胞においてラパマイシンによるオートファジーが誘発されるとき、同様のmTOR及びS6Kのリン酸化の減少が観察された。mTORを阻害する以外にも、これらの結果は、細胞においてオートファジーがFTI−277処理により誘発されうることを示し、それによりmTORの上流における更なるRhebがブロックされる(図16)。
【0155】
50μMのFTI−277によるP23Hオプシン発現細胞の処理により、ラパマイシン処理と同様に変異体オプシンの分解が誘発された。自食胞マーカーAtg7及びAtg8に対する抗体を使用した免疫蛍光試験により、これらの細胞のオートファジーの誘導が確認された。Atg7は、AVsの形成に必要な、E1ユビキチン活性化酵素に類似するタンパク質をコードする、鍵となるオートファジー遺伝子である(Tanidaら、(2001)J.Biol.Chem.276,1701−1706。Atg7は、Atg8(微小管関連タンパク質軽鎖3)の脂質へのコンジュゲートを促進し、AVsの膜を分離させ、それらの形成を促進する(Ohsumiら、Nat.Rev.MoI.Cell Biol.2,211−216,2001;Kabeyaら、J.Cell Sd.117,2805−2812,2004)。両方のマーカーは、P23Hオプシンと共局在化した。更に、FTI−277で処理したとき、電子顕微鏡検査を使用して超微細構造試験を行った結果、細胞のAVsの発現増加が観察された。若干の顕微鏡写真において、細胞質の凝集体を取り込むAVsも観察された。更に、形態分析により、FTI−277処理した細胞のAVsの6倍の増加が観察され、すなわちこれらの細胞のオートファジーが確実に誘導されていることが示唆された。
【0156】
要約すると、これらのデータは、オートファジー経路が、ラパマイシンによるmTORのブロックのみならず、小分子ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばFTI−277)を使用した、mTORの上流における構成要素の調節によっても刺激されうることを示唆する。他のFTIsと同様に、FTI−277はRhebのファルネシル化を減少させ、それによりこのGタンパク質を不活性化する。これらの試験結果は、様々なタンパク質高次構造的な障害(PCDs)の治療のためのFTIsの使用可能性を示唆するものである。なぜなら、オートファジーは変異型、凝集タンパク質の分解に関係しており、それらのタンパク質はパーキンソン病(Cuervoら、Science 305,1292−1295,2004)、ハンチントン舞踏病(Ravikumarら、Nat.Genet.36,585−595,2004)などの様々な神経変性疾患に関係するからである。細胞培養及びマウスモデルにおいて、ハンチントン舞踏病(Ravikumarら、Nat.Genet.36,585−595,2004)及び常染色体優性色素性網膜炎(ADRP)へのオートファジー刺激により、凝集体の蓄積が低下する。また、現在おこなわれている癌の臨床試験(第二相及びIII)へのFTIsの使用により、ヒト及び試験動物に対してこの化合物は毒性を有さないことが保証される。FTI薬は、特にオートファジーによるタンパク質凝集体の除去を強化する際の、ラパマイシンに変わる治療手段ともなりうる。
【0157】
上記の実験は、以下の材料及び方法を使用して実施した。
【0158】
哺乳動物細胞の培養
野生型及びP23Hオプシンは、HEK293テトラサイクリン誘導可能な安定細胞系において発現させた。細胞は、熱で不活性化したウシ胎児血清(シグマ)10%、抗生物質−抗真菌物質含有溶液(Invitrogen、サンディエゴ、CA)、ブラスチシジン(Cayla、トゥールーズ、フランス)、ゼオシン(Invitrogen、サンディエゴ、CA)を含有する高濃度グルコースダルベッコ修飾イーグル培地(Invitrogen、サンディエゴ、CA)中で、5.0%のCO2の存在下、37℃で培養した。細胞のオプシン合成は、テトラサイクリン(1μg/ml)の添加により誘導した。安定してC末端HAエピトープ(CFTR−HA)を有する野生型及びΔF508 CFTR異型を発現する乳児ハムスター腎臓(BHK)細胞系を使用した(Sharmaら、J.Cell Biol.2004164(6):923−33)。細胞はDMEM/F12(Invitrogen社、サンディエゴ、CA)1:1培地で、5.0%のCO2の存在下、37℃で10%のFBSを添加して培養した。
【0159】
HuH7肝癌細胞は、Invitrogen社(サンディエゴ、カリフォルニア)から購入した脂質最適化キット、PerFect lipid(pFx−3)を使用して、pGFP−LC3(Ogawaら、Science307(5710):727−731,2005)で安定にトランスフェクションした。PFX−3を、製造業者のプロトコル(Invitrogen社製)に従い使用した。0.5mg/mlのG418の存在下でコロニーを形成させ、単離し、増幅し、更に蛍光顕微鏡検査及びウエスタンブロット法により、GFP−LC3発現を解析した。
【0160】
オートファジーの誘導
細胞をアミノ酸飢餓培地若しくはラパマイシン(50mM)処理、又はその両方の条件下でインキュベートすることによりオートファジーを誘発した。オートファジー誘導条件下で、2、6又は12時間細胞をインキュベートした。所定の時点で細胞を、プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤ミックスのタブレット(Roche Molecular Biochemicals、マンハイム、ドイツ))の存在下で、1%のn−ドデシル−β−マルトース配糖体(DM)(anatrace、Maumee、OH)で4℃で1時間溶解させた。4Cで30分間、ベックマン超遠心分離機を使用し、36,000回転/分で細胞を遠心分離した。溶解物を回収し、イムノブロッティングを実施した。
【0161】
SDSゲル電気泳動及びイムノブロッティング
細胞可溶化物を、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、イモビロン−NC(ミリポア、ビルリカ、MA)ニトロセルロース膜に転写した。膜をPBST(0.1%のトリトンX−100(pH7.4)を含むPBS)で1:1希釈された市販のブロッキングバッファー(Li−Cor、リンカーン、ネブラスカ)にて1時間室温でインキュベートし、示された一次抗体で1時間インキュベーションした。ブロット膜をPBSTでそれぞれ5分間3回洗浄し、近赤外線染料(IRDye800)とコンジュゲートさせた二次抗体(Rockland Immunochemicals社、Gilbertsville、PA)で1時間インキュベートした。最後に、膜を再度PBSTで3回洗浄し、Odyssey infrareスキャナ(Li−Cor、リンカーン、ネブラスカ)でスキャンした。イムノブロットの定量化は、Licorソフトウェアを使用して実施した。オプシン、HA−タグ(Covance Princeton、NJ)、mTOR、リン酸化mTOR(Upstate Charlottesville、VA)、カルネキシン、hsp70(Stressgen、ビクトリア、BC、CA)、チューブリン(Sigma Chemical、セントルイス、ミズーリ)、Bip(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)、1D4(ブリティッシュコロンビア大学)、Akt、リン酸化Akt、S6K、リン酸化S6K、MAPK及びリンMAPK(Cell Signaling Technology、ベヴァリー、MA)を認識する一次抗体を使用した。
【0162】
免疫蛍光法
細胞をガラスカバーグラス上で培養し、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。50mM NH4Clでクエンチした後、細胞をPBSで洗浄し、室温で1時間、示された一次抗体とインキュベートした。細胞を5回PBSで洗浄し、1時間二次抗体(TRITC及びFITCとのコンジュゲート)とインキュベートした。細胞を再度洗浄し、DAPIを含有するVectashieldに取り付けた。一次抗体として、LC3、LAMP−1、Atg7(ダン博士)、オプシン、Atg720、Atg8及びHA−タグを認識する抗体を使用した。更に細胞を、Zeiss Axiophot顕微鏡を使用して観察した。
【0163】
リソストラッカー(Molecular Probe社)による染色を、37℃で生細胞にも適用した。共焦イメージングを、Leica TCS SP2 AOBS Spectral Confocal Microscopeを使用して×63の倍率で実施した。
【0164】
マウスモデル
abcr +/−マウス(Mataら、Investigative Ophthalmology and Visual Science.2001;42:1685−1690)を使用した。
【0165】
P23Hオプシンタンパク質を発現するマウス(Liuら、Journal of Cell Science 110,2589−2597(1997))を使用した。
【0166】
インビボでのラパマイシン処理
4ヵ月齢となったabcr +/−マウスを、毎週20mg/kgのラパマイシンで処理した。ラパマイシンを腹腔内注射により投与した。
【0167】
21日齢となった異型のP23Hトランスジェニックマウスを、週一度ラパマイシンで処理した。
【0168】
網電図記録法
ERGの前にマウスを24時間暗順応させた。ケタミン及びキシロアジンの混合物を用い、マウスを麻酔した。投与量を重量として測定した。マウスの目をプロパラカインを点眼して麻痺し、Ak−dilateを用いて広げた。更にマウスを装置(UTAS−E 2000)に固定し、電極を後肢に挿入し、他の電極を首に挿入し、一対の電極を、各目からのERGの記録に用いた。ベースライン測定の後、ERGを20、10及び0dBで測定した。毎月ERGを測定し、B波の振幅を測定した。
【0169】
FTI−277処理
FTI−277(Calbiochem社製)を50μMで使用した。テトラサイクリンの洗浄除去後、細胞を0、2、6及び12時間処理し、更にプロテアーゼ阻害剤(完全プロテアーゼ阻害剤ミックスの錠剤(Roche Molecular Biochemicals社製))の存在下で、1%/i−ドデシル−P−マルトシド(DM)(Anatrace社製)を含むリン酸バッファー中で4℃で1時間溶解させた。オートファジーのポジティブコントロールとして、細胞をラパマイシン(50nM)で処理し、更にテトラサイクリンを洗浄除去した。溶解物を4℃で10分間ベックマン超遠心分離機で36,000回転/分で遠心分離した。上澄みを回収し、イムノブロッティングを実施した。3−メチルアデニン(3MA)(オートファジーをブロックする)(10mM)(Sigma Chemical(セントルイス、ミズーリ)、及びMG132(25μM)(Sigma Chemical(セントルイス、ミズーリ)も使用した。
【0170】
電子顕微鏡検査
P23Hオプシン発現細胞を、24ウエルプレート中のACLARシート上で培養した。オプシン産生は48時間のテトラサイクリンの添加により誘導し、テトラサイクリン除去の後、細胞を6時間FTI−277で処理した。PBSによる洗浄後、細胞を2%のパラホルムアルデヒド、2%グルタルアルデヒド/0.1Mナトリウムカコジル酸バッファー(pH7.4)で4℃にて30分間固定し、前述したようにCMPアーゼ細胞化学的解析のために処理した。AVsの形態の定量化は、Image Jソフトウェアを使用して1つの条件あたり20の電子顕微鏡写真を撮影し、T−検定を行い、0.05以下のP値(2尾の有意水準)を有意とした(星印で示す)。
【0171】
他の実施態様
前述の説明から、本願明細書に記載されている本発明を、様々な用途及び条件に適合させるように適宜変更及び修飾を行ってもよいことは自明である。かかる実施態様は添付の特許請求の範囲にも含まれる。
【0172】
本願明細書に列記した変更可能な定義に関する、全ての要素の説明には、いかなる1つの部材又は列記した部材のいかなる組合せ(又は部分的な組合せ)としての定義も包含される。本願明細書に記載の実施態様には、いかなる1つの実施態様又はその他のいかなる実施態様若しくはその部分との組合せが包含される。
【0173】
本願明細書において記載した全ての特許及び刊行物は、あたかもそれらの特許及び刊行物が具体的及び個別的に参照により援用されると明記された場合と同程度に、参照により本願明細書に援用される。
【0174】
参照
S.M.Noorwezら、Journal of Biological Chemistry 279:16278−16284(2004)
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】図1A〜1Iは、オートファジーにより、野生型(WT)オプシンと比較してミスフォールディングP23Hオプシンが選択的に分解されることを示す。図1A、1C及びIEは、HEK−293細胞を安定に野生型オプシン(図1A)又はP23Hオプシン(図1C)でトランスフェクションし、ラパマイシンで処理又はアミノ酸飢餓でオートファジーを誘発したときの、オプシンタンパク質発現のイムノブロットを示す。図1Eは、更に11−シスレチナールで処理したP23Hオプシン発現細胞を示す。時間経過によるオートファジー誘導を示す。図1B、1D、及び1Eは、11−シスレチナール(図1F)によってレスキューされた野生型オプシン(図1B)、P23Hオプシン(図1D)及びP23Hオプシンの時間経過による分解プロフィールを示すグラフである。以下の記号は、それぞれ以下の条件を意味する:アミノ酸含有培地(◆)、アミノ酸飢餓培地(■)、ラパマイシン含有培地(▲)及びラパマイシン含有アミノ酸飢餓培地(●)。図1G、1H、及び1Iはイムノブロットを示す。図1Gは、野生型及びP23H発現細胞のオートファジー誘導の間における、mTORの脱リン酸化を示す。図1H及び1Iは、P23H(図1H)を発現する細胞、又は11−シス−レチナール(図1I)でも処理されたP23H発現細胞における、オートファジー条件下でのBip、カルネキシン及びHsp70シャペロンタンパク質の発現を示す。
【図2】図2A〜2Fは、オートファジーが野生型よりもΔF508を優先的に分解することを示す。図2A及び2Cは、安定して野生型CFTR(図2A)若しくはΔF508(図2C)を発現するBHK細胞における、アミノ酸飢餓(レーン4−6)、ラパマイシン50mM処理(レーン7−9)若しくはその両方(レーン10−12)の後の、HAタグ付加CFTRの発現を示すイムノブロットである。図2B及び2Dは、野生型CFTR(図2B)及びΔF508(図2D)の時間経過による分解プロフィールを示すグラフである。以下の記号は、それぞれ以下の条件を意味する:アミノ酸含有培地(◆)、アミノ酸飢餓培地(▲)、ラパマイシン含有培地(■)及びラパマイシン含有アミノ酸飢餓培地(●)。図2Eは、野生型CFTR及びΔF508を発現する細胞のオートファジー誘導後の、mTOR脱リン酸化を示すイムノブロットである。図2Fは、野生型CFTR又はΔF508を発現する細胞における、オートファジー条件下でのBip、カルネキシン及びHsp70シャペロンタンパク質の制御を示す。
【図3】図3A〜3Bは、野生型オプシン(図3A)又はP23Hオプシン(図3B)を発現するHEK−293細胞のオートファジーマーカーの免疫蛍光染色を示す顕微鏡写真。染色は、オートファジーマーカーがP23Hオプシンのミスフォールドによる凝集により局在化することを示す。通常条件下若しくはアミノ酸性飢餓条件下における、オートファジーマーカー(左パネル)Atg7、LC3及びLAMP−1によるオプシン(中央パネル)の共局在化を示す。
【図4】図4A及び4Bは、野生型CFTR(図4A)若しくはΔF508(図4B)を発現するBHK細胞におけるオートファジーマーカー及びCFTRの免疫蛍光染色を示す顕微鏡写真。オートファジーマーカーは、ERに保持されるΔF508 CFTRタンパク質によって共局在化する。通常条件下若しくはアミノ酸性飢餓条件下における、オートファジーマーカー(左パネル)Atg7、LC3及びLAMP−1による、HAタグ付きCFTR(中央パネル)の中の共局在化を示す。
【図5】図5A〜5Cは3つの細胞の電子顕微鏡写真を示す。図5Aは、ロドプシンで染色され、イムノゴールド標識した細胞内のP23Hの凝集を示す。図5B及びCは、オートファジー細胞のリソソーム及び自食胞を示す。
【図6】ラパマイシン処理が色素性網膜炎のP23Hマウスモデルにおいて網膜機能を強化することを示す棒グラフである。コントロール−P23H1及びP23H2は、1コピーのP23Hオプシンを発現するトランスジェニックマウスである。Rap−P23HA及びBとは、1コピーのP23Hオプシンを発現し、ラパマイシンで処理されたトランスジェニックマウスである。WT−1、2及び3とは野生型コントロールマウスである。Rap−WTA及びBとはラパマイシンに曝露させた野生型コントロールマウスである。各バーは単一のマウスでのERGアッセイを意味する。
【図7】ラパマイシン処理が黄斑変性のマウスモデルにおいて網膜機能を強化することを示す棒グラフである。各バーは単一のマウスでのERGアッセイを意味する。
【図8】ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤FTI277で処理したP23H発現細胞における、P23Hタンパク質の分解を示すウエスタンブロットである。チューブリンのウエスタンブロットを、ロード量のコントロールとして示す。用語「Fed」とはアミノ酸及び血清を含有する培地を有する培養組織条件を意味し、用語「F+R」とはFed+ラパマイシン処理を意味し、用語「F+FTI277」とはFed+10μM又は50μM FTI277処理を示す。チューブリンのウエスタンブロットを、ロード量のコントロールとして示す。
【図9】図9A〜9Bは、FTI−277処理がP23Hオプシンの分解をもたらすことを示す。図9Aは、12時間の時間経過における、FTI−277によるRheb抑制に続くP23Hオプシンレベルを示すイムノブロットである。P23Hオプシンを発現する細胞を、10μM(レーン8−10)若しくは50μM(レーン11−13)FTI−277で処理した。ラパマイシン(レーン5−7)処理をポジティブコントロールとして使用した。アミノ酸及び血清を供給したコントロールも使用した(レーン2−4)。チューブリンをロード量のコントロールとして示す。図9Bは、ラパマイシンとFTI−277(50μM)による処理後、2時間、6時間及び12時間における、P23Hを発現する細胞中でのオプシンイムノブロットの分解プロフィール(バンドのピクセル強度に基づく)の比較を示すグラフである。
【図10】カルネキシン、カルレティキュリン、Hsp70及びHsp90レベルを示す一組のイムノブロットである。この試験は、時間依存的な様式による、アンフォールディングタンパク質の反応及び熱ショック反応に対する、FTI−277処理の効果を分析した結果であり、オートファジーではUPR及びHSRが除外されることを示す。
【図11】図11A〜11Cは、S6K及びmTORのFTI−277ブロックリン酸化を示す一組のイムノブロットである。図11Aは、S6Kのリン酸化状態が、ラパマイシン及びFTI−277処理後2時間以内に検出されることを示す。図11Bは、mTORのリン酸化状態が12時間の時間経過における、アミノ酸及び血清飢餓と組み合わせたラパマイシン、FTI−277及びFTI−277の使用により検出されることを示す。
【図12】図12A〜12Cは、自食胞標識のFTI−277処理に続く免疫共局在化を示す一連の顕微鏡写真である。図12AはAtg7染色を示し、図12BはAtg8染色を示す。これらの標識を用い、P23Hオプシン凝集体による共局在化がFTI−277処理に続いて行われることを観察した。アミノ酸を供給し、ラパマイシン処理した細胞をコントロールとして使用した。図12Cは、FTI−277で処理した細胞の共焦イメージングを示す。共焦イメージングにより、自食胞標識Atg7、Atg8及びP23Hオプシン凝集体との間での明瞭な細胞内局在化が示された。自食胞抗体はTRITC標識し(左)、オプシンをFITC標識(右)した。
【図13】図13A〜13Cは、FTI−277処理による細胞のオートファジー反応を示す。図13Aは、lysotrackerを使用して、FTI−277処理に続く細胞のリソソーム経路の上方制御を観察する標識とすることを示す。図13Bは、FTI−277による細胞の処理後6時間において実施した、電子顕微鏡写真超微細構造分析を示す。細胞は、オートリソソームと同様にリソソームを視覚化するためにcMPaseを細胞化学的に処理した。図13Cは、FTI−277処理後2時間及び6時間にて実施した、形態測定分析の結果を示すグラフである。アミノ酸及び血清コントロールと共にFTI−277で処理したときのオートファジー誘導の比較を示す。
【図14】FTI−277処理後のHuH7細胞におけるGFP−LC3の過剰発現を示す共焦分析である。
【図15】図15A及び15Bは、FTI−277で誘導されるオートファジーを示す。図15Aは、オートファジー阻害剤3MAによる細胞の処理に続いて実施した2つのイムノブロットを示す。3MAは、FTI−277により誘導されるP23Hオプシンの分解を阻害した。アミノ酸及び血清飢餓された細胞(一番上のレーン)を、24時間のP23Hオプシンの蓄積を観察するコントロールとして使用した。同様に、3MA(軽灰色のバー)の存在下で、FTI−277処理によりP23Hオプシンの分解が阻害された。オプシンの最大蓄積は、FTI−277処理のみ(暗灰色のバー)と比較して、3MA処置後12時間の細胞で観察された。図15Bは、プロテアソーム阻害剤(MG132)で、Fed(軽灰色のバー)及びFTI−277(ダークグレイのバー)処理条件の下で12時間処理したP23Hオプシン発現細胞を示し、MG132が飢餓の間、ミスフォールディングP23Hオプシンの分解を阻害しないことを示す。
【図16】FTI−277及びラパマイシンによる抑制部位を示す、インシュリン/TOR/S6K経路のブロック線図である。PBキナーゼの活性化によりAktのリン酸化がなされる。TSC1/2はRhebを活性化させるGAPとして機能し、それにより次々にmTORをリン酸化する。mTOPの抑制により細胞のオートファジーが誘導される。FTI−277によるRhebのポテンシャル抑制は、ラパマイシンによるmTORの抑制と同様にオートファジーを誘導する。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、米国仮特許出願第60/675143号(2005年4月27日に出願)及び第60/723288号(2005年10月3日に出願)の優先権を主張し、これら各々の全開示内容を本願明細書に参照により援用する。
【0002】
(連邦の支援により行われた本発明の権利に関する声明)
本発明は国立眼研究所により、承認番号EYO1 6070−01として支援されたものである。したがって、政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、ヒト疾患に関連する変異体タンパク質の分解能を改善するための新規な材料及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質は、生物学的機能を提供するためはそれらの正しい三次元立体構造にフォールディングされなければならない。ポリペプチドの天然の立体構造はそのアミノ酸配列の一次構造としてコードされ、アミノ酸配列の単一の突然変異により、タンパク質のその適当な形態を採る能力が損なわれることさえあり得る。タンパク質が正しくフォールディングされなければ、生物学的及び臨床的効果が得られない。タンパク質凝集及びミスフォールディングは、多くのヒト疾患(例えば常染色体優性色素性網膜炎、アルツハイマー病、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、腎生成尿崩症及びプリオン媒介による感染症)の主要な原因となる。他のタンパク質−フォールディング障害(例えば常染色体優性色素性網膜炎、加齢と関連する黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病)においては、ミスフォールドタンパク質が細胞障害性を有するため、病理学的な症状となって表れる。
【0005】
ミスフォールディングタンパク質は、ERにおける品質をコントロールするシステムにより認識され、プロテアソームによる消化の標的とされる。プロテアソーム経路以外の、他タンパク質分解の機構として、オートファジーが存在する。オートファジーは、アミノ酸飢餓などの様々な細胞内及び細胞外からのストレス、ミスフォールディングタンパク質の凝集及び傷害を受けた細胞小器官の蓄積により刺激されうるが、オートファジーは通常非選択的な方式により行われると考えられる。ハンチントン舞踏病に関連する凝集性のポリグルタミン及びポリアラニンで膨張したタンパク質はオートファジーによって分解を受け、またオートファジーの抑制は、ハエ及びマウスのハンチントン舞踏病モデルにおいて、変異体ハンティングトンタンパク質の毒性を減少させた例が報告されている。またオートファジーはERにおける、蓄積タンパク質の除去に貢献することも報告されている。オートファジーを増加させる方法が利用できるならば、それによりミスフォールディングタンパク質の除去を強化し、それらの蓄積と関連した細胞障害性効果を除去することも可能になると考えられる。ミスフォールディングタンパク質の細胞障害性効果を軽減し、ニューロン機能を維持する方法に対する緊急なニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ミスフォールディングタンパク質の分解を強化することによって、タンパク質の立体構造に関連する疾病(PCD)の治療若しくは予防に有用性を発揮する新規な組成物及び方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は広義には、患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関する。当該方法は、有効量のオートファジータンパク質分解を強化する化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。一実施形態では、当該化合物(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、FTI−277又はそのアナログ)は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する。他の実施形態では、PCDは、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群のうちの1つ以上である。更に別の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢関連黄斑変性(例えば湿潤性若しくは乾燥性)、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜分離症、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。更に他の実施態様では、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックした11−シス−レチナールの異性体を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。別の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)の眼性タンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、有効量のオートファジータンパク質分解強化化合物を患者に投与することを含んでなる。
【0008】
別の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)の色素性網膜炎又は黄斑変性の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物を投与することと、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、その場合、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物を同時若しくは各々14日以内で、患者の色素性網膜炎又は黄斑変性の治療若しくは予防に十分な量を投与する。
【0009】
別の態様では、本発明はタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関するものであり、当該PCDはα1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルド疾患のうちの1つ以上であり、当該方法は患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量のオートファジー強化化合物を患者(例えばヒト患者)に投与することを含んでなる。
【0010】
一実施形態では、本発明は更に、患者がPCDを有するとして確認するステップを含んでなる。更に別の実施形態では、本発明は細胞におけるミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞のレベル又は発現を測定するステップを含んでなる。
【0011】
一実施形態では、PCDは嚢胞性線維症であり、当該方法は更に、抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡大薬、ドルナーゼ及びイブプロフェンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0012】
更に別の実施形態では、PCDはハンチントン舞踏病であり、当該方法は更にハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0013】
更に別の実施形態では、PCDはパーキンソン病であり、当該方法は更にレボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンゼラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0014】
更に別の実施形態では、PCDはアルツハイマー病であり、当該方法は更にドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0015】
更に別の実施形態では、PCDは腎生成尿崩症であり、当該方法は更にクロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンから選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。
【0016】
更に別の実施形態では、当該方法は更に、以下から選択される1つ以上の薬剤を投与することを含んでなる。酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニン。
【0017】
別の態様では、本発明は細胞(例えば眼細胞、神経単位、上皮細胞)内におけるミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法の提供に関するものであり、当該方法は当該細胞を有効量のオートファジー強化化合物と接触させることを含んでなる。
【0018】
一実施形態では、当該方法は更に、細胞(例えば哺乳類細胞(例えばヒト細胞)、in vitro若しくはin vivoにおいて)におけるミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞のレベル又は発現を測定するステップを含んでなる。
【0019】
更に別の実施形態では、当該方法は更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナール異性体と眼細胞を接触させることを含んでなる。
【0020】
更に別の実施形態では、細胞は、凝集体又はフィブリルを形成する変異体タンパク質(例えばオプシン、ミオシリン、リポフスシン、β−H3タンパク質)を含む。
【0021】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中にmTOR阻害剤又はそのアナログを含有するPCDの治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0022】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中に有効量のオートファジー強化化合物の中を含有する眼性PCDの治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0023】
更に他の態様では、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤中に有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のオートファジー阻害剤を含有する色素性網膜炎若しくは加齢に関連する黄斑変性の治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0024】
更に他の態様では、本発明は眼性PCDの中の治療用のキットであって、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のラパマイシン若しくはそのアナログを含有するキットの提供に関する。
【0025】
更に他の態様では、本発明は色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用キットの提供に関し、当該キットは、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び有効量のラパマイシン若しくはそのアナログを含有する。
【0026】
更に他の態様では、本発明はPCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現させている細胞と候補化合物とを接触させることと、コントロール細胞と比較した試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0027】
更に他の態様では、本発明は色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と、11−シス−レチナール(例えば7−環がロックされた11−シス−レチナールの異性体)又は9−シス−レチナールと、候補化合物とを接触させ、コントロール細胞と比較した試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0028】
更に他の態様では、本発明はPCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現させている細胞と候補化合物とを接触させることと、コントロール細胞との比較において試験細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質は突然変異を有する。他の実施形態では、ミスフォールドタンパク質はオプシン(例えばP23H突然変異を含むオプシン)である。
【0029】
更に別の実施形態では、オートファジーの増加は、タンパク質の濃度をモニターすること、オートファジーマーカーの発現をモニターすること、又は自食胞の数をモニターすることによって測定できる。
【0030】
更に他の態様では、本発明は患者(例えばヒト患者)のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法はラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する有効量の化合物を投与することを含んでなる。一実施形態では、化合物はラパマイシン又はそのアナログと組み合わせて投与するか、又はFTI−277又はそのアナログと組み合わせて投与する。
【0031】
更に別の実施形態では、PCDはα1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患のうちの1つ以上から選択される。
【0032】
他の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位なドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。他の実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール(9−シス−レチナール)、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【0033】
別の態様では、本発明は、患者(例えばヒト患者)の色素性網膜炎の治療若しくは予防方法の提供に関し、当該方法は、患者にラパマイシン又はFTI−277と、ラパマイシン又はFTI−277生物学的活性を強化する化合物を投与することを含んでなる。一実施形態では、当該方法は更に、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、その場合、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物を同時若しくは各々14日以内で、患者の色素性網膜炎の治療若しくは予防に十分な量を投与する。
【0034】
更に他の態様では、本発明は、患者(例えばヒト患者)のタンパク質形態障害(PCD)を治療若しくは予防する方法の提供に関し、当該方法は、ラパマイシン又はFTI−277又はそのアナログを、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物と組み合わせて投与することを含んでなり、その場合、ラパマイシン又はFTI−277、及び当該化合物の有効量を各々投与し、患者のPCDを治療若しくは予防する。
【0035】
更に他の態様では、本発明は、細胞中のミスフォールドタンパク質の分解を促進する方法の提供に関し、当該方法は、細胞(例えば眼細胞、神経細胞、上皮細胞)と、ラパマイシン、FTI−277若しくはそのアナログの有効量、及びラパマイシン若しくはFTI−277の生物学的活性を強化する化合物とを接触させることを含んでなり、その場合、ラパマイシン若しくはFTI−277、及び当該化合物を、タンパク質の分解を促進させるのに十分な量で各々投与する。一実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体と、細胞とを接触させることを含んでなる。
【0036】
更に他の態様では、本発明は、眼性PCDの治療用の医薬組成物の提供に関し、当該組成物は薬学的に許容できる賦形剤中にラパマイシン、FTI−277若しくはそのアナログ、及びラパマイシン若しくはFTI−277の生物学的活性を強化する化合物を含んでなり、その場合、ラパマイシン又はFTI−277、及び当該化合物は患者(例えばヒト患者)のPCDの治療若しくは予防に十分な量で各々存在する。
【0037】
更に他の態様では、本発明は、PCDを有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、オートファジーエンハンサーの有無において、候補化合物と接触させることと、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0038】
更に他の態様では、本発明は、色素性網膜炎を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドオプシンタンパク質を発現する細胞を、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、ラパマイシン若しくはFTI−277、並びに候補化合物と接触させ、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0039】
更に他の態様では、本発明は、嚢胞性線維症を有する患者(例えばヒト患者)の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロでミスフォールドCFTRタンパク質を発現する細胞を、候補化合物及びラパマイシン若しくはFTI−277と接触させ、コントロール細胞との比較において細胞のオートファジーの増加を測定し、接触させた細胞のオートファジーが増加した場合に、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを含んでなる。
【0040】
上記のいずれかの態様における各種実施形態では、PCDは、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルド疾患のうちの1つ以上から選択される。
【0041】
他の実施形態では、PCDは、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性(湿潤型若しくは乾燥型)、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardtの疾患、常染色体優位なドルーゼン及びBestの黄斑ジストロフィーから選択される1つ以上の眼性PCDである。
【0042】
上記のいずれかの態様における別の実施形態では、化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳におけるRasホモログ(Rheb)の富化を阻害する。
【0043】
上記のいずれかの態様における好ましい一実施形態では、眼性PCDは、色素性網膜炎又は黄斑変性(例えば加齢に関連する黄斑変性(乾燥型若しくは湿潤型)である。
【0044】
上記のいずれかの態様における更に別実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール(9−シス−レチナール)、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者(例えば哺乳類(例えばヒト))に投与することを含んでなる。
【0045】
上記のいずれかの態様における好ましい実施態様では、当該患者は、タンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異(例えば突然変異はオプシンP23H突然変異、又はCFTRΔF508突然変異など)を有する。
【0046】
上記の態様における他の実施形態では、当該分解ミスフォールドタンパク質に対して選択的である。
【0047】
上記のいずれかの態様における更に他の実施形態では、本発明の方法に有用な化合物は、ラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、FTI−277又はかかる化合物のアナログである。
【0048】
更に他の実施例において、当該方法は更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール、又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を患者に投与することを含んでなる。
【0049】
更に別の実施形態では、当該化合物は、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する。
【0050】
上記のいずれかの態様における中の各種実施形態では、患者(例えばヒト又は獣医患者)は、タンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異(例えばオプシンP23H突然変異)を含んでなる。
【0051】
更に他の実施形態では、当該分解ミスフォールドタンパク質に対して選択的である。他の実施態様では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物は各々24時間以内、3日以内若しくは5日以内に投与される。
【0052】
上記のいずれかの態様の他の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び化合物は同時に投与される。
【0053】
他の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール及び当該化合物は眼に、例えば眼内投与される。更に別の実施形態では、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び当該化合物は、その長期放出を提供する組成物(例えば微小球体、ナノ球体又はナノエマルジョン)に各々添加される。
【0054】
更に別の実施形態では、長期放出は薬剤輸送手段を介して行われる。更に別の実施形態では、当該方法は更にビタミンAサプリメントを投与することを含んでなる。
【0055】
上記のいずれかの態様における更に他の実施形態では、オートファジーの増加は、タンパク質の濃度をモニターすること、オートファジーマーカーの発現をモニターすること、又は自食胞の数をモニターすることによって測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
定義
「哺乳類におけるラパマイシンの標的(mTOR)」とは、GenBank Accession番号P42345に対する少なくとも85%又は95%の同一性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0057】
「mTORを阻害」とは、mTORと関連する少なくとも1つの生物学的活性が少なくとも10%減少することを意味する。典型的な「mTORの生物学的活性」としては、mTORキナーゼ活性、細胞のオートファジーの誘導、細胞周期進行の調節、DNA組換え及びDNA損傷の検出が挙げられる。mTOR及びS6キナーゼのリン酸化を阻害する化合物もまた、mTORの生物学的活性を阻害する。
【0058】
「脳内で富化されるRasホモログ(rheb)」とは、GenBank Accession番号NP_005605に対する少なくとも85%又は95%の同一性を有するポリペプチド配列を意味する。
【0059】
「rhebを阻害」をは、mTORと関連する少なくとも1つの生物学的活性が少なくとも10%減少することを意味する。典型的な「rheb生物学的活性」としては、オートファジーの誘導、mTORのリン酸化、グアニンヌクレオチド結合活性及びGTPアーゼ活性が挙げられる。
【0060】
「タンパク質高次構造的な疾患」とは、病態がミスフォールドタンパク質の存在に関連する疾患又は障害を意味する。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質が細胞、組織又は器官の中の通常の生物学的活性を妨げるときに、タンパク質高次構造的な疾患が生じる。
【0061】
「ラパマイシンの生物学的活性」とは、オートファジーの強化、mTOR抑制、Tリンパ球増殖の抑制、リンホカイン分泌の抑制、イースト細胞増殖の抑制、タンパク質分解の強化、又は細胞若しくは生物体にラパマイシンを投与することによる他のあらゆる効果を指す。
【0062】
「オートファジータンパク質分解」とは、オートファジーによって実質的に生じる分解のことを意味する。
【0063】
「アナログ」とは、対象化合物と構造的な関連性を有し、実質的に対象化合物と同じ機能を有する化合物を意味する。対象化合物の誘導体又は代謝物質をアナログと称する場合もある。
【0064】
「強化する」の用語は、最低10%、15%、25%、50%、75%又は100%の明確な変化を意味する。
【0065】
「ミスフォールディングタンパク質」とは、参照タンパク質と比較してその三次構造に影響を及ぼすほどの変異を有するタンパク質を意味する。典型的なミスフォールディングタンパク質としては、オプシンの変異形態(例えばP23Hオプシン)、すなわちオプシン参照配列(例えばGenBank Accession番号NM_000539及びNP_000530)と比較し変異した配列有する形態、並びにヒトCFTR(例えばΔF508突然変異)、すなわちCFTR参照配列(例えばGenBank Accession番号AAA35680、NP_000483、P13569)と比較し変異した配列を有する形態の変異形態が挙げられる。
【0066】
「微小球体」という用語は、生理活性物質が取り込まれている実質的に球面のコロイド構造を意味する。微小球体は、一般に約0.5μM〜約500μMの範囲の粒子径分布を有する。直径1ミクロン以下の構造である場合、「ナノ球体」という対応する用語を用いることもある。
【0067】
「ナノエマルジョン」とは、小さい脂質構造を含有する水中油型分散体を意味する。一例として、ナノエマルジョンは約0.5〜5ミクロンの平均粒子径の液滴を有する油相を含んでなる。
【0068】
「減少する」という用語は、少なくとも10%、25%、50%、75%又は100%の負の変化を意味する。「選択的な分解」とは、優先してミスフォールディングタンパク質を分解させ、正しくフォールディングされたタンパク質は実質的に影響を受けないことを意味する。多くの実施形態では、45%未満、35%、25%、15%、10%又は5%の正しくフォールディングされたタンパク質が分解する。
【0069】
本発明の用語「治療する」、「治療」、「処置すること」などの用語は、障害及び/又はそれに関連する症状を軽減若しくは改善することを意味する。いうまでもなく、障害又は症状を治療するということは、障害、条件又はそれに関連する徴候が必ずしも完全に除去される必要はないが、もちろん完全に除去されてもよい。本発明の用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的処置」は、障害又は症状を有しないが、当該障害又は症状に罹るおそれのある患者における罹患率を低下させることを指す。
【0070】
本発明は、インビボにおけるミスフォールディングタンパク質の分解の強化に有用である組成物及び方法に関する。本発明は広義には、本発明(例えばラパマイシン、FTI−277、並びにそのアナログ及び異型)の化合物が変異体タンパク質の分解を強化するという発見に基づく。好適なことに、変異体タンパク質は特異的に分解する一方で、その野生型はそのレベルがほとんど不変である。ミスフォールディングタンパク質は通常の細胞機能を妨害し、細胞毒性を生じさせることもあり、更にヒトタンパク質形態障害(PCD)に結果としてなる。PCDとしては、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)が挙げられる。組成物及び本発明の方法は特に眼性PCD(色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性(乾湿形)緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン、Best黄斑ジストロフィー及び角膜ジストロフィーなど)の予防又は治療に有用である。本発明の組成物は、PCDの治療、影響を受けた細胞死の遅延、PCDによって生じる兆候の緩和、又はPCDの発症の防止に使用できる。
【0071】
オートファジーエンハンサー
オートファジーは、細胞質の細胞成分を分解するための、進化的に保存された機構であって、飢餓細胞における細胞生存メカニズムとして機能する。オートファジーの間、細胞質の要素は細胞膜により封入され自食胞を形成し、最終的にはリソソームと融合しその内容物を分解させる。
【0072】
PCDの治療には、オートファジーエンハンサーを独立に用いてもよく、又は11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体と組み合わせて用いてもよい。オートファジーエンハンサーのラパマイシンは、特に嚢胞性線維症及びミスフォールディングタンパク質又はタンパク質凝集に関連する他の障害の治療、並びに色素性網膜炎及び他の眼性疾患の治療に有用である。本発明の方法において有用なオートファジーエンハンサーとしては、ラパマイシン、FTI−277及びその塩類若しくはアナログが挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
ラパマイシン
ラパマイシン(Rapamune(登録商標)、シロリムス、ワイエス)は、Steptomyces hygroscopicusが産生する環状ラクトンである。ラパマイシンは、Tリンパ球活性化及び増殖を阻害する免疫抑制剤である。ラパマイシンは、哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)(細胞周期の進行に必要とされるキナーゼ)に結合し、阻害する。mTORキナーゼ活性の抑制は、Tリンパ球増殖及びリンホカイン分泌をブロックする。
【0074】
ラパマイシンの構造的及び機能的アナログとしては、モノ−及びジアクリル化されたラパマイシン誘導体(米国特許第4316885号)、ラパマイシン水溶性プロドラッグ(米国特許第4650803号)、カルボン酸エステル類(国際公開第92/05179号)、カルバメート(米国特許第5118678号)、アミドエステル類(米国特許第5118678号)、ビオチンエステル類(米国特許第5504091号)、フッ化エステル類(米国特許第5100883号)、アセタール(米国特許第5151413号)、シリルエーテル(米国特許第5120842号)、二環式誘導体(米国特許第5120725号)、ラパマイシン二量体(米国特許第5120727号)、O−アリール、O−アルキル、O−アルケニル及びO−アルキニル誘導体(米国特許第5258389号)、及びdeuteratedされたラパマイシン(米国特許第6503921号)が挙げられる。他のラパマイシンのアナログとしては、CCI−779(Wyeth Ayerst社製)、タクロリムス、ピメクロリムス、AP20840(Ariad Pharmaceutics社製)、AP23841(Ariad Pharmaceutics)、ABT−578(アボットラボラトリーズ社製)、SAR943(32−デオキソラパマイシン、Eynottら、Immunology.109(3):461−7(2003)及びエベロリムス(SDZ RAD)が挙げられる。エベロリムス(40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(CERTICAN、ノバルティス))はラパマイシンに構造的に類似する免疫抑制マクロライドである。その他のラパマイシンアナログは、米国特許番号5202332号及び第5169851号に記載されている。ラパマイシンは現在液体及び錠剤による経口投与に利用されている。RAPAMUNE(商標)液は1mg/mLのラパマイシンを含有し、投与前に水又はオレンジジュースで希釈する。1又は2mgのラパマイシンを含有する錠剤も市販されている。ラパマイシンは好ましくは一日一回服用する。経口投与の後、急速かつ完全に吸収される。通常は、患者へのラパマイシンの投与量は患者の症状に従って変化が、標準的な推奨される投与量を幾つか以下に記す。ラパマイシンの初回投与量は6mgである。続く維持投与量は典型的には2mg/日である。あるいは、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg又は25mgの初回投与量、並びに1mg、3mg、5mg、7mg又は10mg/日の維持投与量で実施してもよい。体重40kg未満の患者において、ラパマイシン投与量は通常体表面積に基づいて調整され、通常は3mg/m2/日の初回投与量及び1mg/m2/日の維持投与量が採用される。
【0075】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤はファルネシル化を阻害し、それはタンパク質の翻訳後修飾であって、修飾タンパク質の疎水性を増加させ、細胞膜表面への局所化を促進する。細胞膜へのこの局在化は通常、ファルネシル化タンパク質の通常の機能に必要である。ファルネシルアクセプター部分は、目標タンパク質のカルボキシ末端に存在する4つのアミノ酸配列として、様々なタンパク質において同定されている。この4つのアミノ酸配列は−C−A−A−Xとして同定され、式中、「C」はシステイン残基であり、「A」は任意の脂肪族アミノ酸であり、「X」はあらゆるアミノ酸を指す。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTIs)(例えばFTI−277)は、Ras及び他のファルネシル化されたタンパク質(例えばRheb)の翻訳後脂質修飾を阻害する。下で更に詳細に記載するように、FTI−277はmTORを不活性化することによって細胞のオートファジーを誘発する、典型的なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である。mTORは、アミノ酸に応答して、AKT/PKBの下流の目標として、オートファジーを負に制御する。この発見に一部基づき、ファルネシルトランスフェラーゼを阻害する他の薬剤も本発明の方法において有用である。
【0076】
本発明の方法で有用なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、従来技術において周知であり、例えば米国特許第7022704号、第6936431号、第6800636号、第6790633号、第6740661号、第6737410号、第6576639号、第6528523号、第6498152号、第6440974号、第6432959号、第6410541号、第6399615号、第6372747号、第6362188号などに記載されている。他の実施形態として、3−メルカプトピロリジン FTIsが、例えば米国特許第6946468号に記載されている。5置換されたテトラロン FTIsが、例えば米国特許第6943183号に記載されている。二環式阻害剤が、米国特許第6528535号に記載されている。また、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤としてのトリアゾールが、例えば米国特許出願公開第2005/0234117号に記載されている。本発明の方法で有用な他の典型的なFTIsは、米国特許出願公開第2006/0079530号、第2005/0148609号、2005/0059672号及び2005/0020516号、並びに以下の科学雑誌:Santucciら、Cancer Control 10:384−387(2003)、Megnin−Chanetら、BMC Pharmacology、2:2、2002、BMS−214662、及びアッペルスら、(Oncologist、10:565−578(2005)に記載されている。典型的なファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、R115777、GGTI−2166、BMS−214664(Santucciら、Cancer Control 10:384−387、2003)、RPR−130401(Megnin−Chanetら、BMC Pharmacology、2:2、2002)、BMS−214662(ブリストル−マイヤーズスクイブ、プリンストン、NJ)、L778123(メルク社、ホワイトハウスステーション、NJ)、チピファルニブ(実験名、R115777、ザルネストラ(商標)、Ortho Biotech Products、L.P.、ブリッジウォーター、NJ)、ロナファルニブ(実験名、SCH66336、Sarasar(商標)、シェーリング−Plough社、Kenilworth、NJ)、FTI−277(Calbiochem、EMD Biosciences、サンディエゴ)、及びL744832(バイオモルインターナショナルL.P.、プリマスミーティング、PA)などが挙げられる。
【0077】
FTIsの臨床投与量は通常、一日当たり100μg〜10,000mgの間である。公知技術のいかなる方法によって投与してもよい。特にチピファニブは21日間、1日2回、150、200、300、400、500及び600mgの投与量で経口投与する。ロナファニブは1日2回、100、200、300及び400mgの投与量で、持続的な計画において経口投与する。BMS−214662は通常、100mg/m2、200mg/m2において3週に1回1時間の注入、275mg/m2及び300mg/m2において24時間の注入により投与する。あるいは、BMS−214662は週間スケジュールにおいて300mg/m2、及び週間スケジュールにおいて102mg/m2で投与する。81mg/m2のBMS−214662の連日投与は、本発明の方法においても有用である。FTIsを投与する他の形式は従来技術において周知であり、例えばアッペルスらの文献(Oncologist、10:565−578(2005)に記載されている。
【0078】
眼性タンパク質高次構造に起因する障害
本発明の組成物はまた、特に実質的に全ての眼性のタンパク質高次構造的な障害(PCD)の治療に有用である。かかる障害は、眼内のタンパク質凝集体又はフィブリルとしてのミスフォールディングタンパク質の蓄積を特徴とする。本発明の組成物は正しくフォールディングされたタンパク質濃度に影響を及ぼさずに、選択的なミスフォールディングタンパク質の分解を強化する。色素性網膜炎は、オプシン(例えばP23Hオプシン)(GenBank Accession番号NM_000539及びNP_000530)のミスフォールディング、並びに、炭酸脱水酵素IV(CA4)(GenBank Accession番号NM_000717及びNP_000708)(レベロら、4月27日Proc Natl Acad Sci USA.2004、101(17):6617−22)の突然変異を伴う典型的な眼性PCDである。CA4は、ヒトの眼内の脈絡毛細管において高発現するグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーされたタンパク質である。R14W突然変異はCA4タンパク質のミスフォールディングをもたらし、この突然変異を有する患者は常染色体優性色素性網膜炎を患う。CA4ポリペプチド変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、CA4ポリペプチドの突然変異と関連した常染色体優性色素性網膜炎の治療に有用である。
【0079】
Xリンク若年性網膜分離(RS)は他の眼性PCDである。RSは男性の少年期の黄斑変性の主な原因である。RS1(NM_000330、NP_000321)の突然変異又は網膜分離は、Xリンク網膜分離(男性の一般の、開始前半黄斑変性)の原因となり、網膜の内側層の分裂及び視野の重大な損失をもたらす。RS1の突然変異は、タンパク質フォールディング(3月18日、J Biol Chem.2005、280(11):10721−30)を崩壊させる。RS1の変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、網膜分離の治療に有用である。
【0080】
緑内障は、ミオシリンの突然変異と関連する眼性PCDである。ミオシリンは多くのヒト器官(目を含む)において、偏在して発現する未知の機能の分泌型糖タンパク質である。この突然変異により、ミオシリンタンパク質が緑内障の1つの形態として形成され、世界的な失明の主要な原因となる。変異体ミオシリンは、不溶性の凝集体(Aroca−Aguilarら、6月3日、Biol Chem.2005、280(22):21043−51、 GenBank Accession番号:NMJ300261及びNP_000252)として、トランスフェクション細胞の細胞質網状構造に蓄積する。ミオシリンの変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、ミオシリン関連緑内障の治療に有用である。
【0081】
Stargardt様黄斑変性は、ELO VL4の突然変異と関連する眼性PCDである。ELO VL4(長鎖脂肪酸4の伸長)はELOファミリータンパク質のメンバーであって、非常に長い鎖長の脂肪酸の生合成に関連するものである。ELO VL4の突然変異は、常染色体優性Stargardt様黄斑変性(STGD3/adMD)患者において同定されている。ELOVL4変異体タンパク質は、トランスフェクション細胞中で、顕著に凝集体として蓄積する(Graysonら、J Biol Chem.2005 Jul21、Epub)(GenBank Accession番号:NM_022726及びNP_073563)。変異形態ELO VL4の低下を強化する本発明の組成物は、Stargardt様黄斑変性の治療に有用である。
【0082】
Malattia Leventinese(mL)及びDoyneハネコムレチナールジストロフィー(DHRD)は、網膜色素上皮(RPE)の下に蓄積するドルーゼンとして公知の黄色沈着物によって特徴づけられる2つの常染色体優性PCDsに関連する。EFEMP1は網膜ドルーゼン形成において一定の役割を果たし、黄斑変性の病因に関連する(Stoneら、Nat Genet.1999 Jun;22(2):199−202)(GenBank Accession番号:NM_004105及びNP_004096)。変異体EFEMP1は細胞中でミスフォールディングされ、保持される。変異体形EFEMP1の分解を強化する本発明の組成物は、常染色体優位なドルーゼンの治療に有用である。
【0083】
最高の黄斑ジストロフィーはVMD2(hBEST1)の突然変異によって生じる常染色体優位なPCDであり、それはベストロフィンをコードする(Gomezら、DNA Seq.2001 Dec;12(5−6):431−5)(GenBank Accession Nos:NM_004183及びNP_004174)。ベストロフィンの突然変異によって、おそらくタンパク質ミスフォールディングが生じる。正しくフォールディングされたベストロフィンの変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、Bestの黄斑ジストロフィーの治療に有用である。
【0084】
5q31リンク角膜ジストロフィーは、角膜のタンパク質沈着物の年齢依存的な累積によって特徴づけられる常染色体優位なPCDsであり、視覚障害をもたらす。BIGHS遺伝子(GenBank Accession No:NM_000358)(またTGFBI(トランスフォーミング成長因子β誘導)とも呼ばれる)における突然変異は、この全症状群の原因となる。Arg−124及び他の残基の置換は、コードされたタンパク質(GenBank Accession番号NP_000349)の異なる凝集経路を介した角膜特異的な堆積をもたらし、角膜組織のタンパク質のターンオーバーの変化をもたらす。正しくフォールディングされたTGFBIタンパク質の変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、5q31リンク角膜ジストロフィーの治療に有用である。
【0085】
治療法
本発明は、選択的にミスフォールドタンパク質の分解を強化することによる、PCD疾患及び/又は障害若しくは症状(例えば細胞毒性)の治療方法の提供に関する。当該方法は、患者(例えば哺乳類、例えばヒト)に本願明細書に記載の化合物(ラパマイシンのようなmTOR阻害剤、FTI−277のようなファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤)を含有する医薬組成物の治療的有効量を投与することを含んでなる。ゆえに、一実施形態は、タンパク質形態疾患又は障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者の治療方法に関する。当該方法は、本願明細書の化合物の治療的な量を哺乳類に投与し、疾患又は障害を治療するのに十分な条件下で疾患又は障害又はその兆候を治療することを含んでなる。
【0086】
本発明の方法は、本願明細書に記載の化合物又はかかる効果を生じさせる本願明細書に記載の組成物を、患者(かかる治療が必要と診断された患者を含む)に有効量を投与することを含む。患者かかる治療を必要とするか否かを診断することは、患者又は健康管理専門家の判断に基づいて行ってもよく、それは主観的(例えば意見)若しくは客観的(例えば試験又は診断法によって測定可能)であってもよい。
【0087】
本発明(予防治療を含む)の治療法は、それを必要とする哺乳類(例えば動物若しくはヒト、特にヒト)患者に、本願明細書の化合物の治療的有効量を投与することを含んでなる。かかる治療を、疾患又は障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者(特にヒト)に施すのが好適である。「罹患しやすい」患者の決定は、診断試験又は患者又は医師の意見(例えば遺伝子検査、酵素又はタンパク質標識、マーカー(本明細書で定義される)、家族歴など)によって、客観的若しくは主観的な判定によって行ってもよい。本発明の化合物を、タンパク質フォールディング(ミスフォールディングを含む)が関連しうる他のいかなる障害の治療に用いてもよい。一実施形態では、本発明は治療経過をモニターする方法を提供する。当該方法は、タンパク質フォールディング(ミスフォールディングを含む)に関連する疾患、障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者における臨床マーカー(例えば本願明細書に化合物により調節され、本願明細書に詳述されるいかなる目標、タンパク質又はそのインジケータなど)、又は臨床的数値(例えばスクリーン、アッセイ)を測定することを含んでなり、当該患者に治療的有効量の本発明の化合物を投与し、当該疾患又はその兆候を治療することを特徴とする。当該方法で測定されるマーカーのレベルを、適切なコントロール、又は他の罹患患者のマーカーによる周知のレベルと比較して、患者の疾患状況を決定することができる。好ましい実施態様において、患者のマーカーの第2のレベルは第1のレベルの測定より後の時点で測定され、2つのレベルを比較して疾患の原因又は治療の有効性をモニターできる。好ましい具体的実施態様では、患者における治療前のマーカーのレベルは、本発明によって治療を開始する前に測定される、この処理前のマーカーのレベルは、治療開始後の患者のマーカーのレベルと比較し、処理の有効性を決定することができる
【0088】
医薬組成物
本発明は薬学的に許容できる担体と共に化合物を含有する医薬剤を特徴とし、当該化合物はミスフォールドタンパク質を選択的に分解させる。かかる調製物は治療及び予防用途に用いられる。一実施形態では、当該医薬組成物は、ミスフォールドタンパク質の分解を強化する化合物と、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールとの組み合わせを含有する。11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール並びに当該化合物は、一緒に投与してもよく、又は別々に投与してもよい。本発明の化合物は、医薬組成物の一部として投与してもよい。組成物は無菌でなければならず、患者への投与に適する単位重量若しくは単位体積当たりのポリペプチドの治療的有効量を含有する必要がある。本発明の組成物及び組合せは製薬パックの一部であってもよく、化合物の各々は個々の投与量で存在する。
【0089】
本願明細書に記載されている式の化合物を含んでなる本発明の化合物は、その薬学的に許容できる誘導体又はプロドラッグも包含されると定義される。「薬学的に許容できる誘導体又はプロドラッグ」とは、本発明の化合物のあらゆる薬学的に許容できる塩、エステル、エステルの塩又は他の誘導体であって、患者への投与の際、本発明の化合物を(直接又は間接的に)提供することができるもの意味する。特に好適な誘導体及びプロドラッグは、かかる化合物が哺乳類に(例えば、経口投与の化合物を血液により直ちに吸収させることによって)投与されるときに本発明の化合物の生物学的利用能を増加させるもの、又は、親化合物と比較し、生物学的区画(例えば脳又はリンパ系)への親化合物の送達を強化するものを指す。好ましいプロドラッグには、水溶性又は腸膜による能動輸送を強化する基が本願明細書に記載の式の構造中に追加された誘導体が包含される。例えば、Alexander,J.ら、Journal of Medicinal Chemistry 1988,31,318−322;Bundgaard,H.Design of Prodrugs;Elsevier:Amsterdam,1985、pp1−92;Bundgaard,H.;Nielsen,N.M.Journal of Medicinal Chemistry 1987,30,451−454;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;Harwood Academic Publ.:Switzerland,1991、pp113−191;Digenis,G.A.ら、Handbook of Experimental Pharmacology 1975,28,86−112;Friis,G.J.;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;2ed.;Overseas Publ.:Amsterdam,1996、pp351−385;Pitman,I.H.Medicinal Research Reviews 1981,1,189−214;Sinkula,A.A.;Yalkowsky.Journal of Pharmaceutical Sciences 1975,64,181−210;Verbiscar,A.J.;Abood,L.G Journal of Medicinal Chemistry 1970,13,1176−1179;Stella,V.J.;Himmelstein,K.J.Journal of Medicinal Chemistry 1980,23,1275−1282;Bodor,N.;Kaminski,J.J.Annual Reports in Medicinal Chemistry 1987,22,303−313を参照。
【0090】
本発明の化合物は、選択的な生物学的特性を強化するために適当な機能を追加する修飾を行ってもよい。かかる修飾は従来技術において周知で、目的の生物学的区画(例えば血液、リンパ系、神経システム)への生物学的浸透の増加、経口投与の有効性の増加、可溶性の増加による注射投与への適合、代謝の変調による放出速度の調整を可能にするものが挙げられる。
【0091】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩類は、薬学的に許容できる無機及び有機の酸及び塩基に由来するものが包含される。好適な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゾアート、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファ酸塩、アンファスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプタノエート、グリコール酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタノン酸塩、ヘキサノン酸塩、塩酸塩、ハイドロ臭化物、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカノン酸塩などが挙げられる。他の酸(例えば蓚酸)でそれ自身薬学的に許容できるものでない場合であっても、本発明の化合物及びその薬学的に許容できる酸性付加塩を得る際の中間体として、有用な塩類の調製に使用することができる。適当な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN−(アルキル)4+塩類が挙げられる。本発明にはまた、本願明細書に開示される化合物のいかなる塩基性窒素含有基の第4級形態が包含される。水若しくは油に可溶性若しくは分散可能な生成物を、かかる第4級化によって得ることができる。
【0092】
予防若しくは治療的な投与に使用される本発明の医薬組成物は無菌である必要がある。無菌性はγ線照射、除菌膜(例えば0.2μm膜)による濾過によって容易に得られ、又は当業者に公知の他の適切な手段で無菌処理を行ってもよい。治療的なポリペプチド組成物は、一般に無菌のアクセスポート(例えば皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグ又はバイアル)を有する容器に充填される。これらの組成物は通常、水溶液として、又は再調製のための凍結乾燥製剤として、単回投与又は複数回投与用の容器(例えば密閉されたアンプル又はバイアル)中に保存される。
【0093】
化合物は任意に、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせてもよい。本明細書中で使用される用語「薬学的に許容できる賦形剤」とは、ヒトへの投与に適する1つ以上の適合性を有する固体若しくは液体の充填材、希釈剤又は封入用物質を意味する。用語「担体」は有機若しくは無機の、天然若しくは合成された成分であって、それを活性成分と組み合わせることによって投与を容易にする成分を意味する。医薬成分を本発明の分子と共に混合してもよいが、各々が相互に反応し、所望の薬効を実質的に弱めることのない態様で混合するのが好ましい。賦形剤は、好ましくは例えば等張性及び化学安定性を増強する物質を添加物として微量含有させる。かかる材料は、採用された投与量及び濃度で受容者に対する中毒性を有さず、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、及び他の有機酸若しくはそれらの塩類などのバッファー、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)、重炭酸塩、炭酸塩、並びに他の有機塩基及びそれらの塩類、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、低分子量(例えば約10未満の残基)ポリペプチド(例えばポリアルギニン、ポリリシン、ポリグルタミン酸塩及びポリアスパラギン酸塩、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコール(PPGs)及びポリエチレングリコール(PEGs))、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン又はアルギニン)、単糖類、二糖類及び他の炭水化物(セルロース又はその誘導体、グルコース、マンノース、蔗糖、デキストラン)、硫化炭水化物誘導体(ヘパリン、コンドロイチン硫酸又はデキストラン硫酸)、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及びマンガンイオンなどの二価金属イオン)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸、EDTAなど)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、反イオン(例えばナトリウム又はアンモニウム)、及び/又は非イオン系界面活性剤(例えばポリソルベート又はポロキサマー)。安定化剤、抗菌物質、不活性ガス、流体及び栄養を含む補充液(すなわちリンゲルのブドウ糖)、電解質補充液などの他の添加剤を、通常使用される量で含有させてもよい。上記の通り組成物を有効量で投与してもよい。有効量は、投与様式、治療対象となる具体的な症状及び所望の結果に依存する。更に症状のステージ、患者の年齢及び体調、複合治療の性質(もしあらば)、並びに医師に周知の各種の要因に依存しうる。治療的用途の場合、医学的に望ましい結果を提供するのに十分な量で用いられる。
【0094】
タンパク質形態疾患又は障害を有する患者の場合、有効量とは、細胞内の正しくフォールディングされたタンパク質のレベルを上昇させるのに十分な量である。ミスフォールドタンパク質に関連する患者又は障害を有する疾患の場合、有効量とは、病理と関係している症状を安定化、遅延又は軽減させるのに十分な量である。通常、本発明の化合物の投与量は、1日あたり約0.01mg/kg〜1日あたり約1000mg/kgである。約50〜約2000mg/kgの投与量が適切であると考えられる。特定の投与形態(例えば静脈内投与)の場合、低用量でなされる。初回投与量で患者の反応が不十分である場合、患者に許容される程度まで、高用量(又は異なる局所的な投与経路による高い効果を有する投与量)を使用してもよい。1日当たりの多回投与量は、本発明の組成物の適当な全身レベルを提供するために考察される。様々な投与経路を利用できる。本発明の方法は、一般的に、医学的に許容できるいかなる投与様式を使用して実施してもよく、それは臨床的に容認できない副作用を引き起こすことのない活性化合物の有効レベルを提供するいかなる形式をも意味する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は眼内に投与される。他の投与様式としては、経口、直腸、局所、眼内、バッカル、膣内、脳室内、気管内、鼻腔内、経皮、インプラント内若しくはインプラント上又は非経口経路が挙げられる。「非経口」という用語には、皮下、クモ膜下腔内、静脈、腹膜内、筋肉内又は注入が包含される。本発明の組成物を含有する組成物は、生理的流体、例えば硝子体内ユーモアに添加してもよい。CNS投与の場合、手術又は注入による破壊を有する血液脳バリアにおける治療薬の転送を促進し、一過的に粘着力接触を溶く薬をCNS脈管構造内皮細胞と接触させ、化合物のかかる細胞間の移動を容易にするなど、様々な技術を利用できる。予防治療の場合、投与計画と同様に患者への便宜上の理由から、経口投与が好ましい。
【0095】
患者の投与による副作用が生じない限り、本発明の中の医薬組成物は要望通り1つ以上の添加されたタンパク質(血漿タンパク質、プロテアーゼ及び他の生物学的材料など)を更に任意に含有させてもよい。適切なタンパク質又は生物学的材料は公知で、当業者が利用できる任意の精製方法によって、ヒト又は哺乳類の血漿から得られる。例えば、組換え組織培養の上澄、抽出液又は溶解物、ウイルス、イースト、バクテリア等(標準的な組み換えDNA技術に従って、ヒト又は哺乳類の血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたもの)、又は流体(例えば血液、牛乳、リンパ、尿等)又は標準的なトランスジェニック技術に従ってヒト血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたトランスジェニック動物が挙げられる。
【0096】
本発明の中の医薬組成物は、製剤のpHを例えば約5.0〜約8.0の範囲で、生理的pHを反映する所定レベルに維持するために、1つ以上のpH緩衝化合物を含有させてもよい。水溶液製剤において使用するpH緩衝化合物は、アミノ酸若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン及びグリシン))であってもよい。あるいは、pH緩衝化合物は、例えば製剤のpHを約5.0〜約8.0などの所定レベルで維持し、カルシウムイオンをキレート化しない薬剤が好ましい。かかるpH緩衝化合物例としては、限定されないがイミダゾール及び酢酸イオンが挙げられる。製剤のpHを所定レベルに維持するために、pH緩衝化合物を適切な量で添加させてもよい。
【0097】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の浸透圧調整剤(すなわち受容者個人の血流及び血球が許容できるレベルに製剤の浸透特性(例えばオスモル濃度及び/又は浸透圧)を調節する化合物)を含有させてもよい。浸透圧調整剤はカルシウムイオンをキレート化しない物質であってもよい。浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節する公知又は当業者が利用できるいかなる化合物であってもよい。当業者は、本発明の製剤用に用いる浸透圧調整剤の適合性を経験的に決定してもよい。適切なタイプの浸透圧調整剤の例としては、限定されないが、塩(例えば塩化ナトリウム及びナトリウム酢酸塩)、糖(例えば蔗糖、ブドウ糖及びマンニトール)、アミノ酸(例えばグリシン)、及びこれらの物質の1つ以上及び/又は物質のタイプの混合物が挙げられる。1つ以上の浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節するのに十分ないかなる濃度で添加してもよい。
【0098】
本発明の化合物を含有する組成物として、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及び/又はマンガンイオン)を含有させてもよい。組成物を安定化させ、受容者個人に悪影響を与えないいかなる多価金属イオンを使用してもよい。当業者であれば、これらの2つの基準に基づいて経験的に適切な金属イオンを決定でき、またかかる金属イオンの適切な供給源は公知で、無機及び有機塩が挙げられる。
【0099】
本発明の中の医薬組成物は、水を含まない液体製剤であってもよい。含まれる1つ以上の活性薬剤に安定性がもたらされるならば、いかなる適切な非水性液体を使用してもよい。好ましい非水性の液体は、親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリジメチルシロキサン(PMS)、エチレングリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG300及びPEG400、及びプロピレングリコール、例えばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000が挙げられる。
【0100】
本発明の医薬組成物は、水性/非水性液体製剤の混合物でもあってもよい。使用される水性/非水性液体製剤の混合物は、含まれる化合物に安定性を提供するものであれば、いかなる適切な非水性液体製剤(例えば上記のそれら)を、いかなる水性液体製剤(例えば上記のそれら)に添加して用いてもよい。好ましくは、かかる製剤の非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、DMSO、PMS、エチレン、グリコール(例えばPEG200、PEG300及びPEG400)、及びプロピレングリコール(例えばPPG425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000)が挙げられる。
【0101】
適切な安定な製剤は、凍結状態若しくは非凍結状態での活性薬剤の保存を可能にする。安定な液体製剤は、組成物の特性に応じて、−70℃以下の温度で保存でき、また0℃のより高い温度でも保存でき、又は約0.1℃〜42℃の温度で保存することもできる。タンパク質及びポリペプチドは、pH、温度及び治療有効性に影響を及ぼすことがありえる多数の他の因子の変化に影響されることは当業者に一般に公知である。
【0102】
他の輸送システムとしては、放出調節、遅延放出又は徐放性輸送システムが挙げられる。かかるシステムは本発明の組成物の繰り返し投与を回避でき、患者及び医師の便宜を増加させる。徐放性輸送システムの多くのタイプが利用でき、当業者に公知である。例えばポリマーベースシステム(例えばポリ乳酸(米国特許第3773919号、欧州特許番号58481)、ポリ(ラクチド−グリコリド)コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリD−(−)−3、−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタミン酸(Sidman、K.R.ら、Biopolymers 22:547−556)の中の共重合体、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)又はエチレン酢酸ビニルなどのポリヒドロキシ酪酸、を含む(Langer、R.ら、J.Biomed.Mater.Res.15:267−277、Langer、R.Chem.Tech.12:98−105及びポリ無水物が挙げられる。持続性組成物の他の例としては、成形された物品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)の形態の半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。輸送システムは非ポリマーシステムであってもよく、例えば、コレステロール、コレステロールエステルのようなステロール及び脂肪酸又は中性脂肪(脂質モノ、ジ及びトリグリセリドなど)、ヒドロゲル放出システム(例えば生体再吸収性ヒドロゲル(すなわちキチン質ヒドロゲル又はキトサンヒドロゲル)の生物学的誘導体))、sylasticなシステム、ペプチドベースのシステム、ワックスコーティング、従来の結合剤及び添加剤を使用した圧縮錠剤、部分的に融合したインプラントなどが挙げられる。具体例としては、限定されないが、(a)米国特許第4452775号、第4667014号、第4748034号及び第5239660号に記載のような、マトリックス中に薬剤が含有される形の浸食システム、及び(b)米国特許第3832253号及び第3854480号に記載のような、活性成分がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システムなどが挙げられる。
【0103】
本発明の方法及び組成物に使用可能な輸送システムの他のタイプは、コロイド分散体システムである。コロイド分散体システムとしては、油中水型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームなどの脂質ベースのシステムが挙げられる。リポソームは人工膜容器であり、インビボ若しくはインビトロでの輸送媒体として有用である。大きな単一ラメラ小胞(LUV)(0.2〜4.0μmのサイズで調節可能)は水性の内部に高分子をカプセル化でき、生物学的に活性な形態で細胞に輸送できる(Fraley,R.,及びPapahadjopoulos,D.,Trends Biochem.Sci.6:77−80)。リポソームを特異的なリガンド(例えば単クローン抗体、糖、糖脂質又はタンパク質)と結合させ、特定の組織を標的とするリポソームとすることができる。例えば、リポソームはLIPOFECTIN(商標)及びLIPOFECTACE(商標)としてギブコBRLから市販され、それはカチオン脂質(例えば臭化(DDAB)N−[1−(2、3ジオールエチルオキシ)−プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム)から形成される。リポソームの調製方法は公知技術で、例えばドイツ共和国特許第3218121号、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:3688−3692(1985)、Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4030−4034(1980)、欧州特許第52322号、第36676号、第88046号、第143949号、第142641号、日本国特許出願第83−118008号、米国特許第4485045号及び第4544545号、及び欧州特許第102324号などの多くの刊行物に記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis、G.、Trends Biotechnol.、3:235−241でレビューされている。
【0104】
担体の他のタイプは、哺乳類の受容者へのインプラントに適する生物学的適合性の微粒子又はインプラント材である。この方法に従って有用である典型的なバイオ浸食するようなインプラントは、国際出願番号PCT/US/03307号(国際公開第95/24929号、「Polymeric Gene Delivery System」)に記載されている。国際出願番号PCT/US/03307号では、適当なプロモータ制御下の外生遺伝子を含有する、生物学的適合性、好ましくは生分解性の重合マトリックスを記載している。重合マトリックスは、患者の外生遺伝子又は遺伝子産物の徐放性を提供するために用いることができる。
【0105】
高分子マトリックスは、好ましくは微小球体などの微粒子(薬剤が固体高分子マトリックスの全体にわたって分散)又はマイクロカプセル(薬剤が重合シェルの中心において保存される)の形である。例えば、薬剤を含有する前述のポリマーのマイクロカプセルは米国特許第5075109号に記載されている。薬剤を含有する高分子マトリックスの他の形としては、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント及びステントが挙げられる。高分子マトリックス手段のサイズ及び組成は、マトリックスが導入される組織の好ましい放出動力学となるような態様で選択される。高分子マトリックスの寸法は更に、採用する輸送方法に従って選択される。好ましくは、エアゾールを使用する場合、高分子マトリックス及び組成物は界面活性剤担体中に含有される。高分子マトリックス組成物は、好ましい分解速度を有する態様で選択され、バイオ接着剤としての、輸送効率を更に増加させる材料から形成される。あるいは、分解しないが、拡散による長期間にわたる放出が得られる態様でマトリックス組成物を選択してもよい。輸送システムは局所的、部位特異的輸送に適している生物学的適合性の微小球体であってもよい。かかる微小球体は、Chickering、D.E.ら、Biotechnol.Bioeng.、52:96−101、Mathiowitz、E.ら、Nature 386:410−414において開示される、。
【0106】
生分解性、及び生分解可能な重合マトリックスを用いて、本発明の組成物を患者に輸送してもよい。かかるポリマーは、天然若しくは合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、所望の放出時間に基づいて通常、2、3時間のオーダーから1年のオーダーまでで選択される。通常は、2、3時間から3〜12ヵ月の間の放出時間が最も望ましい。ポリマーは任意に、その重量に対して最高約90%の水を吸収できるヒドロゲルの形であり、更に、任意に多価イオン又は他のポリマーと架橋する。
【0107】
生分解可能な輸送システムの形成に使用できる典型的な合成ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、フタル酸酢酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸塩)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸塩)、ポリ(イソブチルアクリル酸塩)、ポリ(オクタデシルアクリル酸塩)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸塩)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、及び乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)及びポリ(ラクチド−コカプロラクトン)、及び、アルギン酸塩及びその他多糖類(デキストラン及びセルロース)、コラーゲン、その化学誘導体(置換、化学基(例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化)の付加、及び当業者に耕地の他の修飾による)、アルブミン及び他の親水性タンパク質、ゼイン及びプロラミン及び疎水性タンパク質、それらの共重合体及び混合物などの天然ポリマーが挙げられる。通常これらの材料は、酵素による加水分解、インビボでの水への曝露、表面浸食又はバルク浸食のいずれかによって分解する。
【0108】
肺上皮への輸送方法
一実施形態では、例えば嚢胞性線維症の治療の場合、直接肺上皮に本発明の化合物を投与することは望ましく、望ましい投与経路は肺エアゾールである。肺輸送を目的とする薬は、水性製剤として、ハロゲン化炭化水素推進体の懸濁液又は溶液として、又は乾燥粉として投与できる。水性製剤は油圧若しくは超音波原子化を使用した液体ネビュライザによってエアロゾル化する必要があり、推進体に基づくシステムでは適切なメーターで測られた加圧投与吸入器を必要とし、乾燥粉では効果的に薬物を分散させることができる乾燥粉吸入装置を必要とする。水性及び他の非加圧液体システムの場合、様々なネビュライザ(小容量ネビュライザなど)を使用し、製剤をエアロゾル化できる。圧縮器駆動ネビュライザはジェット技術を採用し、圧縮空気を使用して液体エアゾールを生成させる。超音波ネビュライザはピエゾ電気結晶の振動の形としての機械的エネルギーに依存し、呼吸できる液滴を生成させる。推進用被駆動吸入器は、各動作の際、秤量された薬物投与量を放出する。薬物は懸濁液又は適切な推進体中の成分溶液として処方される。乾燥粉吸入器は通常、薬投与量を分配するために装置内に吸引した空気のバーストを利用する。例えば、かかる装置は米国特許第4807814号及び第5785049号に記載されている。肺への薬物輸送は、口腔及び咽喉へのエアゾール吸入によりなされる。約2〜約5ミクロンの直径を有する粒子は、上部から中部の肺領域(気道経由)に到達するのには十分小さいが、肺胞に到達するにはサイズが大きい。更に小さい粒子(すなわち約0.5〜約2ミクロン)により肺胞領域に到達できる。また約0.5ミクロンより小さい直径を有する粒子を肺胞領域に堆積させてもよいが、非常に小さい粒子は吐かれることがありうる。エアゾール輸送システムの調製方法は当業者に周知である。米国特許第4512341号、第4566452号、第4746067号、第5008048号、第6796303号及び米国特許出願公開第2002/0102294号を参照。当業者であれば、過度の実験を行うことなしに、肺エアゾールを調製する際の様々なパラメータ及び条件を直ちに調節できる。
【0109】
眼輸送方法
本発明の組成物(例えばオートファジーエンハンサー、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI−277など)))は、特に眼性タンパク質形態疾患(例えば緑内障、色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィー)の治療に適している。
【0110】
1つの方法において、本発明の組成物は、目の硝子体への直接のインプラントに適する眼科用装置により投与される。本発明の組成物を、例えば米国特許第5672659号及び第5595760号記載の徐放性組成物において提供してもよい。かかる装置により、有害な局所及び全身性の副作用の危険性を伴うことなく、目の治療に様々な組成物の制御徐放が提供される。現在の眼への輸送方法の課題は、インプラント期間を延長するために、そのサイズを最小化すると共に、眼内装置又はインプラントに含まれる薬剤の量を最大にすることである。米国特許5378475号、第6375972号及び第6756058号、並びに米国特許出願公開第2005/0096290号及び第2005/01269448号を参照。かかるインプラントは、生分解可能及び/又は生物学的適合性のインプラントであってもよく、又は生分解性でないインプラントであってもよい。生分解可能な眼インプラントは、例えば米国特許出願公開第2005/0048099号に記載されている。インプラントは活性薬剤浸透性であっても浸透性でなくともよく、目の眼房、例えば前眼房又は後眼房に挿入してもよく、又は強膜、トランス脈絡膜空間又は無血管の硝子体領域外部にインプラントしてもよい。あるいは、本発明の組成物の貯蔵材として機能するコンタクトレンズを、薬物輸送に使用してもよい。好ましい実施態様において、インプラントを例えば強膜などの無血管領域に設け、それにより例えば目の中の眼内空間及び黄斑などの所望の部位への薬剤の強膜経由の拡散を行わせる。更にまた、強膜経由の拡散を行う部位は、好ましくは黄斑に近接する部位である。組成物の輸送のためのインプラントの例としては、米国特許第3416530号、第3828777号、第4014335号、第4300557号、第4327725号、第4853224号、第4946450号、第4997652号、第5147647号、第5164188号、第5178635号、第5300114号、第5322691号、第5403901号、第5443505号、第5466466号、第5476511号、第5516522号、第5632984号、第5679666号、第5710165号、第5725493号、第5743274号、第5766242号、第5766619号、第5770592号、第5773019号、第5824072号、第5824073号、第5830173号、第5836935号、第5869079号、第5902598号、第5904144号、第5916584号、第6001386号、第6074661号、第6110485号、第6126687号、第6146366号、第6251090号及び第6299895号、並びに国際公開第01/30323号及び第01/28474号において記載されている装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない(いずれも全開示内容が本願明細書に援用される)。
【0111】
例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:徐放性薬剤輸送システムであって、所望の局所的若しくは全身の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに有効な量の薬剤を含む内側貯蔵部を含んでなるシステム。薬品を通過させないインナーチューブ。第1および第2の端部を有し、少なくとも一部の内側貯蔵部を被覆する前記インナーチューブ。自身の重量を保持できる態様でサイズを設定され、材料を選択された前記インナーチューブ。インナーチューブ第1端部に設けられる非浸透性部材。インナーチューブ第1端部を通って貯蔵部から薬剤が通過するのを防止する前記非浸透性部材。インナーチューブ第2端部に設けられる浸透性部材。インナーチューブ第2端部を通って貯蔵部から薬剤が拡散する浸透性部材。目の部位に本発明の化合物を投与する方法。目の硝子体に本発明の化合物輸送する徐放性手段、又は本発明の化合物を目の部位に投与する移植可能な徐放性装置をインプラントする処理を含んでなる前記方法。徐放性薬剤輸送手段であって、a)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの第1薬剤の治療上有効量を含有する薬剤コアと、b)薬剤コアを保持して内部区画を画定する、薬剤を基本的に通過させない少なくとも1つのユニタリーカップであって、ユニタリーカップの開いた頂端部の少なくとも若干の部分の周辺に、少なくとも1つの中断された溝を有する開いた頂端部を含んでなるユニタリーカップと、c)薬剤を浸透させる浸透性プラグであって、当該浸透性プラグがユニタリーカップの開いた頂端部に設けられ、当該溝が当該浸透性プラグと相互作用してその位置に保持し、開いた頂端部を閉口させ、当該薬剤コアから、浸透性プラグを通して薬剤を透過させ、ユニタリーカップの開いた頂端部から放出させる浸透性プラグと、d)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの治療上有効量の第2薬剤、又は、徐放性薬剤輸送手段であって、所望の可溶性及びポリマーコーティング層を有する有効量の薬剤を含有する内核、薬品が浸透するポリマー層を含んでなり、ポリマーコーティング層が完全に内核を被覆する前記徐放性薬剤輸送手段。
【0112】
他の眼への輸送方法は、眼への、好ましくは網膜色素上皮細胞及び/又はブルッフ膜を本発明の化合物の標的とする、リポソームの使用が挙げられる。例えば、化合物は上記のリポソーム法と組合せてもよく、この化合物/リポソーム複合体は所望の眼組織又は細胞に化合物を輸送するために静脈注射により眼性PCD患者に注射される。網膜色素上皮細胞又はブルッフ膜の付近に直接リポソーム複合体を注入することにより、眼性PCDの若干の形態に対する、複合体のターゲティングが可能となる。具体的な実施態様では、当該化合物は眼内での遅延輸送(例えばVITRASERT又はENVISION)を介して投与される。具体的な実施態様では、当該化合物を、後部結膜下注入によって輸送する。他の具体的な実施態様では、本発明の組成物を含有するミクロエマルジョン粒子は、ブルッフ膜、網膜色素上皮細胞又はその両方からの脂質取り込みを通じて眼組織に輸送される。ナノ粒子は、血清半減期が長い、封入された薬剤の効能を高めることが知られているコロイド担体システムである。ポリアルキルシアノアクリレート(PACAs)ナノ粒子は、現在臨床的に開発されているポリマー性コロイド薬剤輸送システムであり、Stellaら、J.Pharm.Sci.,2000.89:p.1452−1464;Briggerら、Int.J.Pharm.,2001.214:p.37−42;Calvoら、Pharm.Res.,2001.18:p.1157−1166及びLiら、Biol.Pharm.Bull.,2001.24:p.662−665に記載されている。生分解可能なポリ(ヒドロキシル酸)、例えばポリ(乳酸)(PLA)とポリ(ラクチックコグリコリド)(PLGA)の共重合体が生物学的若しくは医学的用途で広範囲に用いられ、臨床応用におけるFDA認可を受けている。更に、PEG−PLGAナノ粒子は、(i)封入される薬剤が、全担体システムの相当に高重量フラクション(ローディング)を含んでなること、(ii)薬剤の量が、カプセル化プロセスの第一段階において使用したうちの相当に高いレベルで最終担体に組み込まれる(高い取り込み効率)こと、(iii)担体が凍結乾燥可能で、溶液中で凝集を起こさずに再構成される能力を有すること、(iv)担体が生分解可能であること、(v)担体システムが小型であること、(vi)担体が粒子の安定性を強化することなど、多くの望ましい担体としての機能を有する。
【0113】
ナノ粒子は、公知技術のいかなる生分解可能なシェルを使用して完全に合成される。一実施形態では、ポリマー、例えばポリ(乳酸)(PLA)又はポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)が用いられる。かかるポリマーは、生物学的適合性及び生分解性を有し、望ましくはナノ粒子の光化学物質有効性及び循環寿命を増加させるために修飾される。一実施形態では、ポリマーの末端のカルボン酸基(COOH)を修飾し、粒子の負電荷を増加させ、それにより負に荷電した核酸アプタマーとの相互作用を制限する。ナノ粒子はポリエチレングリコール(PEG)によっても修飾され、同様に循環の際の粒子の半減期及び安定性を増加させる。あるいは、COOH基をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルに変換させ、アミン修飾アプタマーとの共有結合コンジュゲーションを行わせてもよい。
【0114】
本発明の組成物及び方法に有用な生物学的適合性のポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(イソデシルメタクリル酸)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸)ポリビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)及びこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、本発明のナノ粒子はPEG−PLGAポリマーを含有する。
【0115】
本発明の組成物は、局所的に輸送されてもよい。局所輸送の場合、眼輸送において承認されるいかなる薬学的に許容できる賦形剤中に組成物を添加してもよい。好ましくは、組成物は目への点眼の形で輸送される。若干の用途では、組成物の輸送は、角膜を経由して目の内部に化合物を拡散させることにより行う。
【0116】
当業者であれば、眼性PCDの治療に本発明の化合物を使用する場合の最高の治療計画を容易に決定できると認識する。これは実験を行う程のことではなく、むしろ最適化の問題であり、医療現場において日常的に行われることである。ヌードマウスのインビボ試験により、投与量及び輸送療法を最適化するための治療開始の時期が明らかにされる。注入の頻度は、マウスによる試験の結果を踏まえ、最初は週一度である。しかしながら、この頻度は、特定の患者の最初の臨床試験及びニーズを踏まえて、毎日〜2週間に一度〜1ヶ月に一度の頻度で適宜調節できる。
【0117】
本発明の組成物(オートファジーエンハンサー、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばFTI−277)))のヒトへの投与量は、マウスで使用する化合物量から推定することにより容易に決定できる。すなわち当業者であれば、動物モデルと比較してヒトの投与量を適宜修正することは公知技術であり、ルーチンワークであると認識する。具体的な実施態様では、投薬量は約1mg化合物/Kg体重〜約5000mg化合物/Kg体重の間、又は約5mg/Kg体重〜約4000mg/Kg体重、又は約10mg/Kg体重〜約3000mg/Kg体重、又は約50mg/Kg体重〜約2000mg/Kg体重、又は約100mg/Kg体重〜約1000mg/Kg体重、又は約150mg/Kg体重〜約500mg/Kg体重などの範囲で調節できる。他の実施態様では、この投与量は例えば1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/Kg体重であってもよい。他の実施態様では、高い投与量を使用することもあり、かかる投与量としては約5mg化合物/Kg体重〜20mg化合物/Kg体重の範囲であってもよい。他の実施態様では、投与量は8、10、12、14、16若しくは18mg/Kg体重であってもよい。ラパマイシンが使用される場合、1mg、2mg、3mg、5mg、7mg、10mg、15mg、20mg又は25mg/日の投与量を採用してもよい。もちろん、この投与量は上方若しくは下方へ調整でき、特定の患者の最初の臨床試験の結果及びニーズに応じて、適宜治療プロトコルに従って行うことができる。
【0118】
スクリーニングアッセイ
本願明細書に述べられるように、ミスフォールディングタンパク質によって細胞の通常の生物学的機能が妨げられ、PCDが生じる。多くの場合、タンパク質凝集体中のミスフォールディングタンパク質の蓄積は細胞傷害及び細胞毒性を生じさせる。有用な化合物はかかるタンパク質の分解を強化し、それにより細胞毒性を改善する。多くの方法を利用し、かかる化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを行ってもよい。1つの方法としては、野生型タンパク質形態をとれない変異体タンパク質を細胞で発現(インヴィトロ又はインビボ)させ、細胞と候補化合物を接触させ、オートファジーに対する化合物の効果を、従来技術において公知若しくは本願明細書に記載されている任意の方法を使用してアッセイすることにより行う。オートファジー強化化合物は、任意の標準的方法(例えば免疫測定法)を使用して、ミスフォールドタンパク質のレベルの減少を測定することにより、細胞毒性の減少を測定することにより、自食胞の存在下でオートファジーマーカー(例えば非リン酸化されたmTOR又はS6キナーゼ)の中のレベルの増加を測定することにより同定される。化合物と接触しなかったコントロール細胞と比較して、接触させた細胞に存在するミスフォールディングタンパク質の量を減少させる化合物は、本発明の方法において有用であるとみなされる。ミスフォールドタンパク質の量の減少は、例えば、細胞内タンパク質凝集の減少、細胞毒性の減少、又は前記タンパク質のレベルの減少を測定することによってアッセイすることができる。好ましくは、ミスフォールドタンパク質は選択的に分解される。関連する方法においで、当該スクリーンはラパマイシン、FTI−277、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又はそのアナログ若しくは誘導体の存在下で実施する。有用な化合物は、少なくとも10%、15%又は20%、又は好ましくは25%、50%若しくは75%、又は最も好ましくは少なくとも100%、200%、300%又は400%の割合でミスフォールディングタンパク質の量を減少させる。
【0119】
必要に応じて、同定された化合物の有効性をPCDを有する動物モデル(例えば色素性網膜炎、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌(例えばp53突然変異関連の癌)及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)の動物モデル)を用いてアッセイしてもよい。
【0120】
ラパマイシン活性のエンハンサーのスクリーニング
本発明はPCDの治療のためのオートファジー強化方法に関する。ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物は、ミスフォールディングタンパク質の分解を強化すると考えられる。したがって、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的効果を強化するとして同定された化合物は本発明の方法に有用である。一実施形態では、ラパマイシンの生物学的活性を強化する小分子は、酵母細胞の小分子標的の識別ストラテジーを使用して確認される。ラパマイシンは、野生型酵母細胞の成長を阻害する。酵母細胞増殖に対する抑制効果を強化する化合物は、ルーチン的な手法(例えば遺伝子の化学修飾スクリーニング)を使用して確認できる。かかるスクリーニング法は従来技術において公知であり、Huangら、PNAS 101:16594−16599,2004記載されている。ラパマイシン処理は栄養飢餓反応の状態を誘導し、しばしば成長抑制をもたらす。遺伝子の化学修飾を使用して、酵母菌サッカロミセスセレビジエのラパマイシン効果を増強(例えば少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、85%、90%又は95%増加)する、小分子ラパマイシンエンハンサー(SMERs)をスクリーニングする。ビオチン化されたSMERsを有するプロテオームチップを徹底的に解析することにより、ラパマイシンの細胞内での活性を修飾する推定の細胞内目標タンパク質が同定される。一実施形態では、ラパマイシンを候補化合物の有無において酵母細胞の培養培地に添加する。酵母細胞を培養液中に維持し、酵母細胞の増殖を監視する(例えば吸光度を使用)。ラパマイシンとの組合せで酵母細胞増殖を減少させる化合物をSMERと同定する。かかる化合物は、オートファジー強化においてそれ単独で、又はラパマイシンと組み合わせるのが有用であると考えられる。必要に応じて、オートファジーへのSMERの効果を、本願明細書(例えばオートファジーマーカーの増加、オートファジー小嚢の増加、ミスフォールドタンパク質の分解強化)に記載されているか又は従来技術において公知の任意の方法を使用してアッセイしてもよい。
【0121】
試験化合物及び抽出
一般に、ミスフォールディングタンパク質の量を減少させ、又はかかるタンパク質の細胞における選択的な分解を増加させることを可能にする化合物は、天然若しくは合成(又は半合成)抽出物の大規模なライブラリー、又は公知技術の方法による化学ライブラリーから同定する。創薬及び医薬開発の分野における当業者であれば、試験抽出物若しくは化合物の正確な供給源は、本発明の1つ以上のスクリーニング方法においてそれ程重要ではないと理解する。したがって、実質的に全ての化学抽出物又は化合物を、本願明細書に記載の方法を使用してスクリーニングできる。かかる抽出物又は化合物の例としては、植物、菌類、原核生物若しくは動物細胞からの抽出物、培養液及び合成化合物質、並びに既存の化合物の修飾物が挙げられるが、これらに限定されない。多くの方法を利用して、いかなる数の化合物のランダム若しくは誘導された合成物(例えば半合成又は完全合成)を生成でき、それには糖質、脂質、ペプチド及び核酸ベースの化合物が挙げられるがこれに限定されない。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates社(メリマック、N.H.)及びAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から市販されている。あるいは、細菌、菌類、植物及び動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが多くの供給源から市販されており、例えばBiotics社(サセックス、英国)、Xenova(Slough、英国)、Harber Branch Oceangraphics Institute(フィートピアス、Fla)及びPharmaMar USA(ケンブリッジ、マサチューセッツ)が挙げられる。更に、標準的な抽出及び分画法によって、天然及び合成的に生成されたライブラリーを、必要に応じて、従来技術において公知の方法に従って作成してもよい。更に、必要に応じていかなるライブラリー又は化合物も、標準的な化学的、物理的、生化学方法を使用して直ちに修飾できる。
【0122】
更に、創薬若しくは医薬開発の当業者であれば、容易に既知物質同定方法(例えば、分類学上の同定、生物学的同定及び化学的同定、又はそれらのあらゆる組み合わせ)、又はミスフォールドタンパク質の修正においてそれらの活性が公知の同定物又は既知の材料の繰り返しの除去方法を、必要に応じて使用する必要がある
【0123】
粗抽出物がミスフォールドタンパク質の形態を修正することがわかれば、陽性のリード抽出物を更に分画することにより、観察された効果をもたらす化学成分を単離することが必要となる。すなわち、抽出、分画及び精製プロセスの課題は、粗抽出物中における化学物質の慎重な解析及び同定であり、それにより正しくフォールディングされたタンパク質の収率が上昇する。かかる不均一な抽出物の分画及び精製方法は、従来技術において周知である。必要に応じて、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集に関連するいかなる病理の治療に有用な薬剤であると示される化合物を、公知技術の方法に従って化学的に修飾してもよい。
【0124】
併用療法
PCD(色素性網膜炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患))の治療に有用な本発明の組成物は、必要に応じて、公知のいかなる標準的な治療方法との組合せで投与されてもよい。色素性網膜炎の場合、標準的な治療方法としてはビタミンAサプリメントの使用が挙げられる。パーキンソン病の場合、標準的な治療としては、レボドパ/カルビドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンセラジド、リスライド、メルレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピジベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラートなどのドーパミン受容体アゴニストの1つ以上の投与が挙げられ、他の標準的治療方法としては、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用が挙げられる。ハンチントン舞踏病の場合、標準的治療方法としてはハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10のうちの1つ以上の投与が挙げられる。アルツハイマー病の場合、標準的治療方法としては、ドネペジル(アリセプト)、トリバスチグミン(エクセロン)、ガランタミン(ラザジン)及びタクリン(コグネックス)のうちの1つ以上の投与が挙げられる。腎生成尿崩症の場合、標準的な治療方法としては、クロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。嚢胞性線維症の場合、標準的な治療方法としては、粘液溶解剤(例えばドルナーゼα)、気管支拡張剤(例えばアルブテロール)及び感染症治療用の抗生物質のうちの1つ以上の投与が挙げられる。癌の場合、標準的治療方法としては、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。
【0125】
キット
本発明は、PCD若しくはその徴候の治療若しくは予防用のキットを提供する。一実施形態では、当該キットは、ラパマイシン又はそのアナログの有効量を含有する製薬パックを含んでなる。他の実施態様では、当該キットはラパマイシン及び11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを含んでなる。他の実施形態では、当該キットはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、FTI−277)の有効量を含んでなる。好ましくは、組成物は単位用量形態で調製される。幾つかの実施形態では、当該キットは、治療的もしくは予防的な組成物を含有させる無菌容器を含んでなり、かかる容器は、従来技術において公知のボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック又は他の適切な容器の形態であってもよい。かかる容器は、薬剤の保持に適するプラスチック、ガラス、ラミネートペーパー、金属箔又は他の材料で作製してもよい。
【0126】
必要に応じて、本発明の組成物又はそれらの組み合わせと、PCDに罹患若しくは罹患するおそれのある患者にそれらを投与する際の説明書とを併せて包含させてもよい。説明書には通常、PCDの治療若しくは予防用の化合物の使用に関する情報が記載されている。他の実施態様では、説明書には、少なくとも化合物又は化合物の組合せの説明、PCD又はその徴候の治療のための投与計画及び投与方法、注意事項、警告事項、指示、禁止事項、過剰投与に関する情報、逆作用、動物における薬理学、臨床研究結果、及び/又は参照のうちの1つ以上が記載されている。説明書は、容器(存在する場合)に、又は容器に貼り付けるラベルに直接印刷してもよく、又はシート、パンフレット、カード又はフォルダとして容器に梱包してもよい。
【0127】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者に理解されるように、下で提供される具体的な構成は多様に変化させることもできるが、それらは化合物又はその組み合わせによる重要な特性を維持しつつ、上記の発明と整合する態様であることが条件となる。
【実施例】
【0128】
色素性網膜炎(RP)は、rod光受容体を死に至らしめる遺伝性網膜障害の異質なグループを含むPCDである。光受容体の死因は、色素性網膜炎に罹患する患者の周辺視野の連続的な損失であるため、夜盲及びそれに続くトンネル視に至る。常染色体優性色素性網膜炎(ADRP)患者の20〜25%にはロドプシン遺伝子の突然変異があり、最も一般的な突然変異がP23Hである。P23H突然変異は、11−シス−レチナールとの結合ができないミスフォールドオプシンタンパク質をもたらす。ミスフォールドP23Hタンパク質は細胞中で保持され、凝集体を形成する(Salibaら、2002.JCS 115:2907−2918;Illingら、2002.JBC 277:34150−34160)。この凝集の挙動により、タンパク質高次構造的な障害(PCD)として、P23Hを含む若干のRP突然変異が分類される。
【0129】
嚢胞性線維症の膜内外コンダクタンス調節物質(CFTR)をコードする遺伝子の欠陥は嚢胞性線維症を引き起こし、それもまた他のPCDである。嚢胞性線維症は白人において最も一般的な致死遺伝病であり、米国には約30000人の嚢胞性線維症患者が存在する。CFTRはCl−チャネルを形成し、それは多くの器官(腸、膵臓、肺、汗腺及び腎臓など)の上皮Cl−輸送システムにおける必須の構成要素である。腸のCF分泌腺において、CFは側底膜上のNa+−K+−2CFによる共同輸送により細胞内に取り込まれ、頂側膜上のCFTRを通って放出され、水がそれに続いて浸透する。CFTRをコードする遺伝子の欠陥によるそのCF輸送能力低下、又は細胞表面での発現レベルの低下により、嚢胞性線維症が生じる。塩化物イオン輸送のこの欠陥は、気道分泌物の不適切なクリアランス、及び細菌感染に対する感染性の増加に至る。嚢胞性線維症はマルチシステムの障害であるが、呼吸不全が主要な死因として依然として存在する。
【0130】
以下の実施例は、変異体オプシン又はCFTRタンパク質の分解を特異的に強化する化合物の同定のための、変異体タンパク質の使用を例示するが、本発明はこれらに限定されない。細胞におけるミスフォールディングオプシン又はミスフォールディングCFTRの選択的分解(例えばオートファジー分解)を強化するのに有用であると同定された化合物は、色素性網膜炎又は嚢胞性線維症の治療にそれぞれ有用である。かかる化合物はあらゆるミスフォールディングタンパク質の分解も強化すると考えられ、通常、実質的に全てのタンパク質高次構造的な障害の治療に有用であると考えられる。以下の実験の実施に有用な方法はNoorwezら、Journal of Biological Chemistry 279:16278−16284(2004)に記載され、全開示内容が本願明細書に援用される。
【0131】
実施例1:ミスフォールディングタンパク質の分解のオートファジー誘導結果
P23H若しくは野生型オプシンを発現するHEK293テトラサイクリン誘導可能な安定細胞株を使用して、アミノ酸飢餓又はラパマイシン曝露によりマクロオートファジーを誘導した。図1Aは、オートファジーを、アミノ酸飢餓のみ(レーン4〜6)、又はラパマイシン添加(レーン7〜9)、アミノ酸飢餓とラパマイシン曝露の組合せ(レーン10〜12)により誘発された野生型オプシンの、イムノブロットによる分解プロフィールを示す。図1Bのグラフは、野生型オプシンの比較量を時間経過で比較した実験結果であり、野生型オプシンのレベルがオートファジー誘導後の12時間にわたり基本的に不変であったことを証明するものである。対照的に、オートファジーがこれらの方法(図1C)のいずれかによって細胞において誘発されるとき、P23Hオプシンの量は急速に減少した。P23Hオプシン(図1D)の分解プロフィールは、オートファジーがアミノ酸飢餓により誘発されるとき、33%のミスフォールディングオプシンが12時間(図1D、正方形)以内に分解したことを示す。オートファジーがラパマイシンにより誘発されるとき、46%のタンパク質が6時間の処理(図1D、三角形)で分解した。アミノ酸飢餓とラパマイシン処理(図1D、円)を組み合わせたとき、分解は更に強化され、ほぼ52%のミスフォールディングオプシンは2時間以内に分解し、81%が12時間後に分解した。
【0132】
実施例2:オートファジーはミスフォールディングタンパク質を特異的に分解する
この効果がプロテアソームの抑制により調節されるか否か、又はオートファジーのみにより媒介されるか否かを解析するため、オートファジーが誘発された細胞において、プロテアソーム阻害剤又はオートファジー阻害剤の存在下でP23H分解が生じるか否かを解析した。3−メチルアデニン、オートファジー阻害剤及びMG132(プロテアソーム阻害剤)を、オートファジー誘導時に細胞培養培地に添加した。図1Fは、アミノ酸飢餓細胞において3−MAがP23Hの分解を阻害することを示す。図1Gは、プロテアソーム阻害剤MG132がP23Hオプシン分解(図1D)に影響を及ぼさなかったことを示す。これらの試験は、オートファジーがミスフォールディングされたP23Hオプシンを特異的に分解することを示す。
【0133】
実施例3:ラパマイシンはミスフォールディングタンパク質のオートファジーを強化する
過去の試験では、11−シスレチナールはP23Hオプシンのフォールディング及び安定化を補助する薬理学的シャペロンとして機能することが示されている。11−シスレチナールの投与により、大部分のP23Hタンパク質プールが細胞表面に至り、11−シス−レチナールと結合してロドプシンを形成する。11−シスレチナールをオートファジー誘発時に投与した場合、P23H分解のレベルは変化しなかった(図1E、レーン4−6)。にもかかわらず、眼性PCDの治療のための、ラパマイシンとの組合せによる11−シス−レチナールの投与が臨床効果を強化するということは、11−シス−レチナールが正しくフォールディングされたタンパク質の濃度を上昇さ、ラパマイシンがあらゆる残留ミスフォールディングタンパク質の分解を強化するためであると考えられる。
【0134】
培地中のロドプシン濃度は、アミノ酸補充の有無にかかわらず同様であった(図1E、レーン1−3、レーン4−6)。アミノ酸飢餓の間、11−シスレチナールで処理した細胞のP23Hタンパク質の分解プロフィールを、野生型オプシン発現細胞又は11−シスレチナールに曝露しなかったP23Hオプシン発現細胞の分解プロフィールと比較した。11−シス−レチナールの存在下でのP23Hタンパク質分解は、野生型オプシン発現細胞又は11−シスレチナール非存在下のP23Hタンパク質発現細胞と比較し、中間の分解プロフィールを示した。
【0135】
興味深いことに、ラパマイシンのみによる処理は、それのみか、又は細胞へのアミノ酸飢餓との組合せで投与したかに関わらず、P23Hロドプシンの急速な分解を誘発した(図1E、レーン7−9、10−12)。11−シスレチナールの存在下で、P23Hの分解プロフィールは、通常の条件下で培養した細胞(図1F、ダイヤモンド)、又はアミノ酸飢餓培地の場合と同様であった(図1F、正方形)。ラパマイシンが11−シス−レチナール非存在下で投与した場合、分解の強化が観察された(図1F、三角形)。P23Hタンパク質の約33%が12時間以内に分解した。ラパマイシンをアミノ酸飢餓細胞に投与した場合、ロドプシン分解の更なる強化は観察されなかった。事実、アミノ酸飢餓細胞に対するラパマイシンの投与は、ラパマイシン処理のみの場合の効果と類似していた。ほぼ31%のP23Hタンパク質が12時間以内に分解した(図1F、円)。すなわち、ラパマイシンにより選択的に誘発されるオートファジーは、11−シスレチナールの存在下でP23Hタンパク質分解を強化した。
【0136】
実施例4:オートファジー誘導はmTORリン酸化特性の変化を誘発する
mTORは哺乳類のラパマイシン標的であり、オートファジー細胞においてmTORレベルは特徴的に減少する。オートファジーが上記の方法により誘発されることを確認するために、アミノ酸飢餓細胞及びラパマイシン曝露細胞におけるmTORリン酸化を解析した。予想通り、リン酸化mTORの量の減少が、アミノ酸飢餓細胞及びラパマイシン曝露細胞に対するオートファジー誘導の後で観察された。オートファジー誘導は、11−シス−レチナール投与された細胞と同様に、野生型又はP23Hオプシンを発現する細胞において観察された。このリン酸化の増加はmTORに特異的であった。その理由は、フォールディングしないタンパク質への応答(UPR)によって上方制御されるシャペロンであるBip及びカルネキシン、及び熱ショックへの応答(HSR)によって上方制御される細胞質シャペロンHsp70の細胞レベルが、オートファジー条件下で不変であったためである。これらのシャペロンの量は、アミノ酸飢餓又はラパマイシン処理により誘発されるオートファジー後の一定時間において維持された(図1H、1I)。
【0137】
オートファジーがミスフォールディングタンパク質の一般的な分解機構であるか否かを解析するため、変異型の嚢胞性線維症の膜内外コンダクタンス調節装置(CFTR)タンパク質のオートファジー分解を解析した。CFTRは、上皮細胞の頂端膜で発現するcAMP活性化型塩素イオンチャネルである。CFTRはP23Hオプシンと同様に多領域にわたる膜タンパク質である。かかる多領域タンパク質は多くのαへリックス膜貫通部分を有する。CFTRの突然変異により、それが機能する原形質膜における、その形成、プロセシング及び配置に影響が及ぶ。
【0138】
野生型CFTR(図2A)及び変異体CFTRΔF508(図2C)タンパク質を、BHK安定細胞系において発現させた。オートファジーは、アミノ酸飢餓、ラパマイシン処理又はラパマイシン処理及びアミノ酸飢餓の組合せを用いて、野生型又は変異体CFTRタンパク質発現細胞において誘発させた(図2A)。オートファジー誘導が野生型CFTRタンパク質濃度(図2B)に影響を及ぼさない一方で、ΔF508タンパク質(図2D)は、アミノ酸飢餓、ラパマイシン処理又はその両方(図2C)によって、オートファジー誘導に応答して急速な分解を受けた。分解プロフィールではアミノ酸飢餓が12時間(図2D、三角形)以内にΔF508タンパク質の約34%を分解することを示し、その一方で、ラパマイシン処理では50%のタンパク質が12時間(図2D、正方形)後に分解された。アミノ酸飢餓がラパマイシン処理と組み合わされるときに分解がより顕著であった。変異体タンパク質の中の約75%が6時間以内に分解し、80%が処理の12時間後に分解した(図2D、円)。これらの観察から、オートファジーが選択的にミスフォールディングΔF508タンパク質を分解することが示唆される。mTORリン酸化は、野生型若しくは変異型CFTRタンパク質発現細胞のオートファジー誘導後に減少した。シャペロンであるBip、カルネキシン及びhsp70のレベルの違いは観察されなかった。図2E及び2FはmTOR脱リン酸化(図2E)、並びにラパマイシンの有無による、通常の培地又はアミノ酸飢餓培地で培養した細胞中のカルネキシン、カルレティキュリン、Hsp70又はBipタンパク質発現を示すイムノブロットである。
【0139】
実施例5:オートファジー誘導後にミスフォールディングタンパク質と共局在化するオートファジーマーカー
オートファジー誘導は、電子顕微鏡検査を使用して細胞の自食胞(AVs)の存在を確認することによってモニターできる。通常の培地においてP23H細胞は若干のAVsを含むが、細胞をアミノ酸飢餓培地でインキュベートした場合、かかる自食胞の数が著しく増加する(図5)。
【0140】
ミスフォールディングタンパク質が自食胞マーカーと共局在化するか否かを解析するため、野生型オプシン発現細胞(図3A)若しくは変異体P23Hオプシン(図3B)発現細胞を、Atg7、LC3及びLamp1オートファジーマーカーに関して染色した。細胞を、オートファジー誘導後にオプシン特異的、及び自食胞マーカー特異的な抗体とインキュベートした。野生型タンパク質は、いかなる自食胞マーカー(図3A)とも共局在化しなかった。野生型オプシンタンパク質は細胞膜に存在し、その一方でP23Hは細胞内凝集体を形成した。同じオートファジーマーカーを、野生型(図4A)又は変異型ΔF508 CFTRタンパク質(図4B)発現BHK細胞において解析した。これらの細胞において、ΔF508 CFTRタンパク質は目視できる程の凝集体が形成されなかった。野生型CFTRタンパク質は細胞内と同様に細胞膜でも観察され(図4A)、その一方でΔF508はER(図4B)において保持された。図5A〜5Cは、P23H凝集、リソソーム及びオートファジー細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【0141】
Atg7による免疫蛍光染色による斑点状の染色が示され、両方の変異体タンパク質が共局在化していることを示す。P23HによるAtg7の共局在化を図3Bに示し、ΔF508による共局在化を図4Bに示す。Atg8染色によっても、両方の変異体タンパク質による共局在化が示された。Atg8では特徴的な斑状の染色が示され、P23Hミスフォールディングタンパク質凝集体との共局在化を示すものである(図3B)。Atg8染色はまた、ERにおけるΔF508タンパク質の保持を示す(図4B)。これらの観察は更に、変異型多領域タンパク質(例えばP32H及びΔF508)の分解におけるオートファジーの役割を裏付ける。
【0142】
要約すると、オートファジー経路は、野生型タンパク質にはごくわずかな影響しか及ぼさないが、ミスフォールディングした多領域タンパク質(例えばP23H及びΔF508)を特異的に分解する。この結果は変異体タンパク質の発現に用いが細胞系の選択には無関係であったが、その理由としては、野生型及び変異型オプシンタンパク質はヒト胚腎臓細胞系において発現されるが、野生型及び変異型CFTRタンパク質は乳児ハムスター腎臓細胞系において発現されることが挙げられる。
【0143】
電子顕微鏡検査を使用して自食胞を観察した。二重膜自食胞数の増加が、P23Hオプシン発現細胞において観察された。オートファジー誘導後に、これらの細胞中にP23Hオプシンの大型の凝集体又は小型の散乱した凝集体が含まれていた。暗い酸性ホスファターゼ染色されたリソソームが、AV及び凝集体に関連して観察された。1つの特定の理論に拘束されないが、これは、ミスフォールディングオプシン分解に対するリソソーム経路の役割を示唆するものと考えられる。自食胞マーカーは、ミスフォールディングP23Hオプシン及びΔF508タンパク質と共局在化する。Atg7は、AVsの形成に必要な、E1ユビキチン活性化酵素に類似するタンパク質をコードする、鍵となるオートファジー遺伝子である。Atg7は、Atg8(微小管関連タンパク質軽鎖3)の脂質へのコンジュゲートを促進し、AVsの膜を分離させ、それらの形成を促進する。Atg8は初期及び後期の自食胞の膜に存在する。P23H及びΔF508タンパク質と共局在化するAtg7及びAtg8の別々の染色により、ミスフォールディングタンパク質の分解におけるAVsの役割が示唆される。
【0144】
実施例6:ラパマイシン処理は、色素性網膜炎の網膜機能を強化する
P23H突然変異を有する変異型マウスオプシンを発現するトランスジェニックマウスは、色素性網膜炎患者において観察される病態生理学的変化に類似する急速な漸進性の光受容体の分解を受ける。P23H異型の変異体マウスによるインビボ試験では、ラパマイシン処理により3ヵ月(図6)にわたり網膜機能がレスキューされることが示された。
【0145】
実施例7:ラパマイシンは黄斑変性の網膜機能を強化する
リポフスシン成分として網膜色素上皮細胞(RPE)に蓄積するビスレチノイドフルオロフォアは、劣性Stargardt疾患(黄斑変性の初期の形態)におけるRPE細胞の損失の原因となると考えられ、加齢に関連する黄斑変性の病因に関係するとも考えられている。黄斑変性のマウスモデルにおけるインビボ試験は、ラパマイシン処理が、Stargardt疾患に関連する1つの不完全なABCR遺伝子のコピーを有するAbcr異型の変異体マウスの網膜機能をレスキューすることを示す(図7)。ABCR遺伝子は端タンパク質(RmP)(ディスク状の光受容器外側部分の端において発現するATP結合カセット輸送体)をコードする。
【0146】
実施例8:FTI277はP23Hロドプシンの急速な分解を誘発した
ファネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤のFTI277、メチル{N−[2−フェニル−4−N[2(R)−アミノ−3−メルカプトプロピルアミノ]ベンゾイル]}−メチオニン酸(Calbiochem社製)による処理により、ラパマイシンと同様のP23Hロドプシンの急速な分解が誘導された(図8)。ラパマイシンと同様に、FTI277がオートファジーを強化し、FTI277がタンパク質形態疾患の治療に有用であることが示唆される。
【0147】
実施例9:FTI−277はP23Hオプシンの分解を刺激する
変異体オプシンのレベルに対するFTI−277の効果を試験するため、P23Hオプシン発現HEK293細胞を、異なる濃度のFTI−277(1、5、10及び50μM)でインキュベートした。50μMのP23Hオプシンの時間経過に伴う分解が観察された。FTI−277の効果は、10μM(図9A)では検出されなかった。ラパマイシンと比較し、70%のP23Hオプシンがラパマイシン処理の12時間後に分解し、その一方で、FTI−277では同じ時間の経過において、P23Hオプシンの50%の分解が観察された(図9B)。
【0148】
実施例10:FTI−277はUPR/HSRを誘発しない
FTI−277処理後の、カルネキシン及びカルレティキュリン、未フォールディングタンパク質への応答(UPR)と関連するERシャペロンのレベル、又は熱ショック反応(HSR)と関連する細胞質シャペロンであるHsp70及びHsp90のレベルを解析した。FTI−277は2つの反応のどちらのレベルにも影響を及ぼさず、P23HオプシンのFTI−277誘発された分解がUPR及びHSRとは無関係であることが示唆された(図10)。
【0149】
実施例11:FTI−277処理はmTOR/S6Kシグナリングをブロックする
FTI−277はmTor及びS6キナーゼのリン酸化を効果的に阻害し、この薬剤がRheb活性を抑制することが予想された(図11A、B)。リン酸化されたmTOR及びS6キナーゼが、アミノ酸及び血清を供給した細胞において観察された。ラパマイシン処理と同様に、FTI−277はmTORの脱リン酸化を誘発し、それはアミノ酸及び血清飢餓(図11A)との組合せで更に強化された。同様に、S6キナーゼのリン酸化は、FTI−277又はラパマイシン(図11B)で処理した細胞において激減した。対照的に、HEK293細胞のAktリン酸化の刺激はFTI−277処理による影響を受けず、Bassoら、J.Biol.Chem.280,31101−31108(2005)と同様の、MAPKのわずかなリン酸化の増加が観察されたにもかかわらず、Ras活性が影響を受けないことを示唆するものであった。
【0150】
実施例12:FTI−277処理後の、P23HオプシンのAtg7及びAtg8との共局在化
ラパマイシンにより誘発されたP23Hオプシンの分解がオートファジーにより媒介された場合には、FTI−277分解も同様にオートファジーにより媒介されることが示唆される。P23Hオプシン凝集と、周知の自食胞マーカー、Atg7及びAtg8との関係を、免疫蛍光顕微鏡検査により解析した。これらのマーカーは通常、完全培地(図12A及び12B)で培養した無処理細胞ではP23Hオプシンと共に共局在化しない。FTI−277処理によるP23Hオプシンと両方のマーカーの共局在化の劇的な増加が観察された(図12A及び図12B)。P23Hオプシン凝集に関連するAtg7及びAtg8の局在化を、共焦顕微鏡検査によりより詳細に観察した(図12C)。Atg7のドットは、P23Hオプシン凝集と共にクラスターを形成し、またP23Hオプシンと共局在化している。同様に、P23Hオプシン凝集とのAtg8ドットの共局在化が若干強化され、一方、残りのドットは凝集体の周辺に存在した。凝集体の周辺におけるAtg7及びAtg8タンパク質の存在は、P23Hオプシンの分解におけるオートファジーの役割を裏付けるものである。
【0151】
実施例13:FTI−277によるオートファジーの誘導
これらの結果は、FTI−277がオートファジーを活性化させることを示す。そこで、FTI−277に対するオートファジー応答を、リソトラッカー(lysotracker)を使用して細胞のリソソーム自食胞の数及びサイズを観察し、解析した。ラパマイシン又はFTI−277(図13A)で細胞を処理したときのリソソーム数及びサイズ変化を観察した。次に、電子顕微鏡検査を利用し、P23Hオプシンを発現する、無処理及びFTI−277処理されたHEK293細胞のオートファジー応答を評価した。リソトラッカーで観察されるように、FTI−277処理された細胞には、リソソーム酸性ホスファターゼを含有する多くの大型の自食胞が存在した(図13B)。更に、これらの自食胞は多くの細胞質凝集体を取り込む途中であるように見えた(図13B)。形態を定量化した後、FTI−277処理された細胞において、無処置の細胞と比較してAVsの数が4〜6倍増加していた(図13C)。これらのデータは、FTI−277がHEK293細胞のオートファジー応答を促進することを示唆する。
【0152】
GFP−LC3を安定発現するHuH7肝癌細胞(オートファジーマーカー)に対するFTI−277の効果も解析した。Fed細胞において、GFP−LC3は細胞質全体にわたって広く観察された。これらの細胞をFTI−277で処理したとき、多数の構造へのGFP−LC3局所化は、その自食胞の凝集及びオートファジーの開始と一致した(図14)。これらの試験は、FTI−277で処理した細胞においてオートファジーが劇的に上方制御されることを証明する。P23Hオプシンを発現するHEK293細胞におけるオートファジーの誘導を、オートファジーをブロックするPI3−キナーゼ阻害剤、3−メチルアデニン(3MA)を使用して解析した。FTI−277の存在下での3MA処理によりオプシンの分解がブロックされた。細胞をFTI−277のみで処理した場合は、この効果は観察されなかった(図15A)。P23Hオプシン分解がオートファジーであることを更に裏付けるために、プロテアソーム阻害剤 MG132を使用した。P23Hオプシン分解はFTI−277のみと同様に、FTI−277及びMG132の存在下で類似の動力学を示し、この経路におけるプロテアソームの分解の役割が制限されたことを示唆する(図15B)。
【0153】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTIs)を、Ras腫瘍性タンパク質の活性をブロックする態様に設計した。Rasの活性は、ファルネシル化(ファルネシルイソプレノイド膜アンカーをタンパク質に結合させる翻訳後修飾)に依存する。ファルネシルトランスフェラーゼは、さまざまなタンパク質基質のシステイン残基上へのファルネシル二リン酸からの15−カーボンイソプレニル脂質の転移を触媒する。
【0154】
ファルネシルトランスフェラーゼは、基質のカルボキシル端末CAAXボックスを認識する。Rhebはグアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、GTPアーゼでもある。Rhebタンパク質は、GTPの認識及び加水分解に関係する短いG1−G5ボックス配列を有する(Bourneら、(1990)Nature 348,125−132)。また、Rhebタンパク質はファネシル化に必要とされるCAAX(CSVM)モティーフを末端に有する。哺乳動物細胞において、S6Kを活性化させるRhebの能力が確認されている。この機能はファルネシル化に依存する。なぜなら、CAAXのモティーフを欠くRheb変異体はS6Kを活性化させることができないからである(Castroら、J.Biol.Chem.278,32493−32496,2003;Teeら、Curr.Biol.13,1259−1268,2003)。更に、FTIs(FTI−277など)はRhebの完全なプレニル化ブロックすることが確認されている(Bassoら、J.Biol.Chem.280,31101−31108,2005)。Rhebはゲラニルゲラニル化を受けない。FTIsの他の標的が、Rheb以外にも存在する。試験では、ファルネシル化が阻害されるときにそれらがゲラニルゲラニル化を受けるため、K−Ras4Bなどのタンパク質がFTIsに対する抵抗性を有することが示されている。これらの試験は、Rhebが、ファルネシル化の対象となる他のタンパク質よりも、FTIsの特異的な標的であることを示唆する。更に、Aktリン酸化はFTI−277に影響を受けず、FTI−277がRas活性に影響を及ぼさないことを示唆するものである。Rhebは、インシュリン/TOR/S6Kシグナリング経路の構成要素である(Castroら、J.Biol.Chem.278、39921−39930、2003;Tabancayら、J.Biol.Chem.278、39921−39930、2003;Teeら、Curr.Biol.13、1259−1268 24、2003;Inokiら、Genes Dev.17、1829−1834、2003;Garamiら、Mol.Cell 11、1457−1466、2003)。本願明細書に記載のように、Rhebの阻害と整合したFTI−277によるmTOR及びS6Kの脱リン酸化が観察された。細胞においてラパマイシンによるオートファジーが誘発されるとき、同様のmTOR及びS6Kのリン酸化の減少が観察された。mTORを阻害する以外にも、これらの結果は、細胞においてオートファジーがFTI−277処理により誘発されうることを示し、それによりmTORの上流における更なるRhebがブロックされる(図16)。
【0155】
50μMのFTI−277によるP23Hオプシン発現細胞の処理により、ラパマイシン処理と同様に変異体オプシンの分解が誘発された。自食胞マーカーAtg7及びAtg8に対する抗体を使用した免疫蛍光試験により、これらの細胞のオートファジーの誘導が確認された。Atg7は、AVsの形成に必要な、E1ユビキチン活性化酵素に類似するタンパク質をコードする、鍵となるオートファジー遺伝子である(Tanidaら、(2001)J.Biol.Chem.276,1701−1706。Atg7は、Atg8(微小管関連タンパク質軽鎖3)の脂質へのコンジュゲートを促進し、AVsの膜を分離させ、それらの形成を促進する(Ohsumiら、Nat.Rev.MoI.Cell Biol.2,211−216,2001;Kabeyaら、J.Cell Sd.117,2805−2812,2004)。両方のマーカーは、P23Hオプシンと共局在化した。更に、FTI−277で処理したとき、電子顕微鏡検査を使用して超微細構造試験を行った結果、細胞のAVsの発現増加が観察された。若干の顕微鏡写真において、細胞質の凝集体を取り込むAVsも観察された。更に、形態分析により、FTI−277処理した細胞のAVsの6倍の増加が観察され、すなわちこれらの細胞のオートファジーが確実に誘導されていることが示唆された。
【0156】
要約すると、これらのデータは、オートファジー経路が、ラパマイシンによるmTORのブロックのみならず、小分子ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばFTI−277)を使用した、mTORの上流における構成要素の調節によっても刺激されうることを示唆する。他のFTIsと同様に、FTI−277はRhebのファルネシル化を減少させ、それによりこのGタンパク質を不活性化する。これらの試験結果は、様々なタンパク質高次構造的な障害(PCDs)の治療のためのFTIsの使用可能性を示唆するものである。なぜなら、オートファジーは変異型、凝集タンパク質の分解に関係しており、それらのタンパク質はパーキンソン病(Cuervoら、Science 305,1292−1295,2004)、ハンチントン舞踏病(Ravikumarら、Nat.Genet.36,585−595,2004)などの様々な神経変性疾患に関係するからである。細胞培養及びマウスモデルにおいて、ハンチントン舞踏病(Ravikumarら、Nat.Genet.36,585−595,2004)及び常染色体優性色素性網膜炎(ADRP)へのオートファジー刺激により、凝集体の蓄積が低下する。また、現在おこなわれている癌の臨床試験(第二相及びIII)へのFTIsの使用により、ヒト及び試験動物に対してこの化合物は毒性を有さないことが保証される。FTI薬は、特にオートファジーによるタンパク質凝集体の除去を強化する際の、ラパマイシンに変わる治療手段ともなりうる。
【0157】
上記の実験は、以下の材料及び方法を使用して実施した。
【0158】
哺乳動物細胞の培養
野生型及びP23Hオプシンは、HEK293テトラサイクリン誘導可能な安定細胞系において発現させた。細胞は、熱で不活性化したウシ胎児血清(シグマ)10%、抗生物質−抗真菌物質含有溶液(Invitrogen、サンディエゴ、CA)、ブラスチシジン(Cayla、トゥールーズ、フランス)、ゼオシン(Invitrogen、サンディエゴ、CA)を含有する高濃度グルコースダルベッコ修飾イーグル培地(Invitrogen、サンディエゴ、CA)中で、5.0%のCO2の存在下、37℃で培養した。細胞のオプシン合成は、テトラサイクリン(1μg/ml)の添加により誘導した。安定してC末端HAエピトープ(CFTR−HA)を有する野生型及びΔF508 CFTR異型を発現する乳児ハムスター腎臓(BHK)細胞系を使用した(Sharmaら、J.Cell Biol.2004164(6):923−33)。細胞はDMEM/F12(Invitrogen社、サンディエゴ、CA)1:1培地で、5.0%のCO2の存在下、37℃で10%のFBSを添加して培養した。
【0159】
HuH7肝癌細胞は、Invitrogen社(サンディエゴ、カリフォルニア)から購入した脂質最適化キット、PerFect lipid(pFx−3)を使用して、pGFP−LC3(Ogawaら、Science307(5710):727−731,2005)で安定にトランスフェクションした。PFX−3を、製造業者のプロトコル(Invitrogen社製)に従い使用した。0.5mg/mlのG418の存在下でコロニーを形成させ、単離し、増幅し、更に蛍光顕微鏡検査及びウエスタンブロット法により、GFP−LC3発現を解析した。
【0160】
オートファジーの誘導
細胞をアミノ酸飢餓培地若しくはラパマイシン(50mM)処理、又はその両方の条件下でインキュベートすることによりオートファジーを誘発した。オートファジー誘導条件下で、2、6又は12時間細胞をインキュベートした。所定の時点で細胞を、プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤ミックスのタブレット(Roche Molecular Biochemicals、マンハイム、ドイツ))の存在下で、1%のn−ドデシル−β−マルトース配糖体(DM)(anatrace、Maumee、OH)で4℃で1時間溶解させた。4Cで30分間、ベックマン超遠心分離機を使用し、36,000回転/分で細胞を遠心分離した。溶解物を回収し、イムノブロッティングを実施した。
【0161】
SDSゲル電気泳動及びイムノブロッティング
細胞可溶化物を、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、イモビロン−NC(ミリポア、ビルリカ、MA)ニトロセルロース膜に転写した。膜をPBST(0.1%のトリトンX−100(pH7.4)を含むPBS)で1:1希釈された市販のブロッキングバッファー(Li−Cor、リンカーン、ネブラスカ)にて1時間室温でインキュベートし、示された一次抗体で1時間インキュベーションした。ブロット膜をPBSTでそれぞれ5分間3回洗浄し、近赤外線染料(IRDye800)とコンジュゲートさせた二次抗体(Rockland Immunochemicals社、Gilbertsville、PA)で1時間インキュベートした。最後に、膜を再度PBSTで3回洗浄し、Odyssey infrareスキャナ(Li−Cor、リンカーン、ネブラスカ)でスキャンした。イムノブロットの定量化は、Licorソフトウェアを使用して実施した。オプシン、HA−タグ(Covance Princeton、NJ)、mTOR、リン酸化mTOR(Upstate Charlottesville、VA)、カルネキシン、hsp70(Stressgen、ビクトリア、BC、CA)、チューブリン(Sigma Chemical、セントルイス、ミズーリ)、Bip(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)、1D4(ブリティッシュコロンビア大学)、Akt、リン酸化Akt、S6K、リン酸化S6K、MAPK及びリンMAPK(Cell Signaling Technology、ベヴァリー、MA)を認識する一次抗体を使用した。
【0162】
免疫蛍光法
細胞をガラスカバーグラス上で培養し、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。50mM NH4Clでクエンチした後、細胞をPBSで洗浄し、室温で1時間、示された一次抗体とインキュベートした。細胞を5回PBSで洗浄し、1時間二次抗体(TRITC及びFITCとのコンジュゲート)とインキュベートした。細胞を再度洗浄し、DAPIを含有するVectashieldに取り付けた。一次抗体として、LC3、LAMP−1、Atg7(ダン博士)、オプシン、Atg720、Atg8及びHA−タグを認識する抗体を使用した。更に細胞を、Zeiss Axiophot顕微鏡を使用して観察した。
【0163】
リソストラッカー(Molecular Probe社)による染色を、37℃で生細胞にも適用した。共焦イメージングを、Leica TCS SP2 AOBS Spectral Confocal Microscopeを使用して×63の倍率で実施した。
【0164】
マウスモデル
abcr +/−マウス(Mataら、Investigative Ophthalmology and Visual Science.2001;42:1685−1690)を使用した。
【0165】
P23Hオプシンタンパク質を発現するマウス(Liuら、Journal of Cell Science 110,2589−2597(1997))を使用した。
【0166】
インビボでのラパマイシン処理
4ヵ月齢となったabcr +/−マウスを、毎週20mg/kgのラパマイシンで処理した。ラパマイシンを腹腔内注射により投与した。
【0167】
21日齢となった異型のP23Hトランスジェニックマウスを、週一度ラパマイシンで処理した。
【0168】
網電図記録法
ERGの前にマウスを24時間暗順応させた。ケタミン及びキシロアジンの混合物を用い、マウスを麻酔した。投与量を重量として測定した。マウスの目をプロパラカインを点眼して麻痺し、Ak−dilateを用いて広げた。更にマウスを装置(UTAS−E 2000)に固定し、電極を後肢に挿入し、他の電極を首に挿入し、一対の電極を、各目からのERGの記録に用いた。ベースライン測定の後、ERGを20、10及び0dBで測定した。毎月ERGを測定し、B波の振幅を測定した。
【0169】
FTI−277処理
FTI−277(Calbiochem社製)を50μMで使用した。テトラサイクリンの洗浄除去後、細胞を0、2、6及び12時間処理し、更にプロテアーゼ阻害剤(完全プロテアーゼ阻害剤ミックスの錠剤(Roche Molecular Biochemicals社製))の存在下で、1%/i−ドデシル−P−マルトシド(DM)(Anatrace社製)を含むリン酸バッファー中で4℃で1時間溶解させた。オートファジーのポジティブコントロールとして、細胞をラパマイシン(50nM)で処理し、更にテトラサイクリンを洗浄除去した。溶解物を4℃で10分間ベックマン超遠心分離機で36,000回転/分で遠心分離した。上澄みを回収し、イムノブロッティングを実施した。3−メチルアデニン(3MA)(オートファジーをブロックする)(10mM)(Sigma Chemical(セントルイス、ミズーリ)、及びMG132(25μM)(Sigma Chemical(セントルイス、ミズーリ)も使用した。
【0170】
電子顕微鏡検査
P23Hオプシン発現細胞を、24ウエルプレート中のACLARシート上で培養した。オプシン産生は48時間のテトラサイクリンの添加により誘導し、テトラサイクリン除去の後、細胞を6時間FTI−277で処理した。PBSによる洗浄後、細胞を2%のパラホルムアルデヒド、2%グルタルアルデヒド/0.1Mナトリウムカコジル酸バッファー(pH7.4)で4℃にて30分間固定し、前述したようにCMPアーゼ細胞化学的解析のために処理した。AVsの形態の定量化は、Image Jソフトウェアを使用して1つの条件あたり20の電子顕微鏡写真を撮影し、T−検定を行い、0.05以下のP値(2尾の有意水準)を有意とした(星印で示す)。
【0171】
他の実施態様
前述の説明から、本願明細書に記載されている本発明を、様々な用途及び条件に適合させるように適宜変更及び修飾を行ってもよいことは自明である。かかる実施態様は添付の特許請求の範囲にも含まれる。
【0172】
本願明細書に列記した変更可能な定義に関する、全ての要素の説明には、いかなる1つの部材又は列記した部材のいかなる組合せ(又は部分的な組合せ)としての定義も包含される。本願明細書に記載の実施態様には、いかなる1つの実施態様又はその他のいかなる実施態様若しくはその部分との組合せが包含される。
【0173】
本願明細書において記載した全ての特許及び刊行物は、あたかもそれらの特許及び刊行物が具体的及び個別的に参照により援用されると明記された場合と同程度に、参照により本願明細書に援用される。
【0174】
参照
S.M.Noorwezら、Journal of Biological Chemistry 279:16278−16284(2004)
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】図1A〜1Iは、オートファジーにより、野生型(WT)オプシンと比較してミスフォールディングP23Hオプシンが選択的に分解されることを示す。図1A、1C及びIEは、HEK−293細胞を安定に野生型オプシン(図1A)又はP23Hオプシン(図1C)でトランスフェクションし、ラパマイシンで処理又はアミノ酸飢餓でオートファジーを誘発したときの、オプシンタンパク質発現のイムノブロットを示す。図1Eは、更に11−シスレチナールで処理したP23Hオプシン発現細胞を示す。時間経過によるオートファジー誘導を示す。図1B、1D、及び1Eは、11−シスレチナール(図1F)によってレスキューされた野生型オプシン(図1B)、P23Hオプシン(図1D)及びP23Hオプシンの時間経過による分解プロフィールを示すグラフである。以下の記号は、それぞれ以下の条件を意味する:アミノ酸含有培地(◆)、アミノ酸飢餓培地(■)、ラパマイシン含有培地(▲)及びラパマイシン含有アミノ酸飢餓培地(●)。図1G、1H、及び1Iはイムノブロットを示す。図1Gは、野生型及びP23H発現細胞のオートファジー誘導の間における、mTORの脱リン酸化を示す。図1H及び1Iは、P23H(図1H)を発現する細胞、又は11−シス−レチナール(図1I)でも処理されたP23H発現細胞における、オートファジー条件下でのBip、カルネキシン及びHsp70シャペロンタンパク質の発現を示す。
【図2】図2A〜2Fは、オートファジーが野生型よりもΔF508を優先的に分解することを示す。図2A及び2Cは、安定して野生型CFTR(図2A)若しくはΔF508(図2C)を発現するBHK細胞における、アミノ酸飢餓(レーン4−6)、ラパマイシン50mM処理(レーン7−9)若しくはその両方(レーン10−12)の後の、HAタグ付加CFTRの発現を示すイムノブロットである。図2B及び2Dは、野生型CFTR(図2B)及びΔF508(図2D)の時間経過による分解プロフィールを示すグラフである。以下の記号は、それぞれ以下の条件を意味する:アミノ酸含有培地(◆)、アミノ酸飢餓培地(▲)、ラパマイシン含有培地(■)及びラパマイシン含有アミノ酸飢餓培地(●)。図2Eは、野生型CFTR及びΔF508を発現する細胞のオートファジー誘導後の、mTOR脱リン酸化を示すイムノブロットである。図2Fは、野生型CFTR又はΔF508を発現する細胞における、オートファジー条件下でのBip、カルネキシン及びHsp70シャペロンタンパク質の制御を示す。
【図3】図3A〜3Bは、野生型オプシン(図3A)又はP23Hオプシン(図3B)を発現するHEK−293細胞のオートファジーマーカーの免疫蛍光染色を示す顕微鏡写真。染色は、オートファジーマーカーがP23Hオプシンのミスフォールドによる凝集により局在化することを示す。通常条件下若しくはアミノ酸性飢餓条件下における、オートファジーマーカー(左パネル)Atg7、LC3及びLAMP−1によるオプシン(中央パネル)の共局在化を示す。
【図4】図4A及び4Bは、野生型CFTR(図4A)若しくはΔF508(図4B)を発現するBHK細胞におけるオートファジーマーカー及びCFTRの免疫蛍光染色を示す顕微鏡写真。オートファジーマーカーは、ERに保持されるΔF508 CFTRタンパク質によって共局在化する。通常条件下若しくはアミノ酸性飢餓条件下における、オートファジーマーカー(左パネル)Atg7、LC3及びLAMP−1による、HAタグ付きCFTR(中央パネル)の中の共局在化を示す。
【図5】図5A〜5Cは3つの細胞の電子顕微鏡写真を示す。図5Aは、ロドプシンで染色され、イムノゴールド標識した細胞内のP23Hの凝集を示す。図5B及びCは、オートファジー細胞のリソソーム及び自食胞を示す。
【図6】ラパマイシン処理が色素性網膜炎のP23Hマウスモデルにおいて網膜機能を強化することを示す棒グラフである。コントロール−P23H1及びP23H2は、1コピーのP23Hオプシンを発現するトランスジェニックマウスである。Rap−P23HA及びBとは、1コピーのP23Hオプシンを発現し、ラパマイシンで処理されたトランスジェニックマウスである。WT−1、2及び3とは野生型コントロールマウスである。Rap−WTA及びBとはラパマイシンに曝露させた野生型コントロールマウスである。各バーは単一のマウスでのERGアッセイを意味する。
【図7】ラパマイシン処理が黄斑変性のマウスモデルにおいて網膜機能を強化することを示す棒グラフである。各バーは単一のマウスでのERGアッセイを意味する。
【図8】ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤FTI277で処理したP23H発現細胞における、P23Hタンパク質の分解を示すウエスタンブロットである。チューブリンのウエスタンブロットを、ロード量のコントロールとして示す。用語「Fed」とはアミノ酸及び血清を含有する培地を有する培養組織条件を意味し、用語「F+R」とはFed+ラパマイシン処理を意味し、用語「F+FTI277」とはFed+10μM又は50μM FTI277処理を示す。チューブリンのウエスタンブロットを、ロード量のコントロールとして示す。
【図9】図9A〜9Bは、FTI−277処理がP23Hオプシンの分解をもたらすことを示す。図9Aは、12時間の時間経過における、FTI−277によるRheb抑制に続くP23Hオプシンレベルを示すイムノブロットである。P23Hオプシンを発現する細胞を、10μM(レーン8−10)若しくは50μM(レーン11−13)FTI−277で処理した。ラパマイシン(レーン5−7)処理をポジティブコントロールとして使用した。アミノ酸及び血清を供給したコントロールも使用した(レーン2−4)。チューブリンをロード量のコントロールとして示す。図9Bは、ラパマイシンとFTI−277(50μM)による処理後、2時間、6時間及び12時間における、P23Hを発現する細胞中でのオプシンイムノブロットの分解プロフィール(バンドのピクセル強度に基づく)の比較を示すグラフである。
【図10】カルネキシン、カルレティキュリン、Hsp70及びHsp90レベルを示す一組のイムノブロットである。この試験は、時間依存的な様式による、アンフォールディングタンパク質の反応及び熱ショック反応に対する、FTI−277処理の効果を分析した結果であり、オートファジーではUPR及びHSRが除外されることを示す。
【図11】図11A〜11Cは、S6K及びmTORのFTI−277ブロックリン酸化を示す一組のイムノブロットである。図11Aは、S6Kのリン酸化状態が、ラパマイシン及びFTI−277処理後2時間以内に検出されることを示す。図11Bは、mTORのリン酸化状態が12時間の時間経過における、アミノ酸及び血清飢餓と組み合わせたラパマイシン、FTI−277及びFTI−277の使用により検出されることを示す。
【図12】図12A〜12Cは、自食胞標識のFTI−277処理に続く免疫共局在化を示す一連の顕微鏡写真である。図12AはAtg7染色を示し、図12BはAtg8染色を示す。これらの標識を用い、P23Hオプシン凝集体による共局在化がFTI−277処理に続いて行われることを観察した。アミノ酸を供給し、ラパマイシン処理した細胞をコントロールとして使用した。図12Cは、FTI−277で処理した細胞の共焦イメージングを示す。共焦イメージングにより、自食胞標識Atg7、Atg8及びP23Hオプシン凝集体との間での明瞭な細胞内局在化が示された。自食胞抗体はTRITC標識し(左)、オプシンをFITC標識(右)した。
【図13】図13A〜13Cは、FTI−277処理による細胞のオートファジー反応を示す。図13Aは、lysotrackerを使用して、FTI−277処理に続く細胞のリソソーム経路の上方制御を観察する標識とすることを示す。図13Bは、FTI−277による細胞の処理後6時間において実施した、電子顕微鏡写真超微細構造分析を示す。細胞は、オートリソソームと同様にリソソームを視覚化するためにcMPaseを細胞化学的に処理した。図13Cは、FTI−277処理後2時間及び6時間にて実施した、形態測定分析の結果を示すグラフである。アミノ酸及び血清コントロールと共にFTI−277で処理したときのオートファジー誘導の比較を示す。
【図14】FTI−277処理後のHuH7細胞におけるGFP−LC3の過剰発現を示す共焦分析である。
【図15】図15A及び15Bは、FTI−277で誘導されるオートファジーを示す。図15Aは、オートファジー阻害剤3MAによる細胞の処理に続いて実施した2つのイムノブロットを示す。3MAは、FTI−277により誘導されるP23Hオプシンの分解を阻害した。アミノ酸及び血清飢餓された細胞(一番上のレーン)を、24時間のP23Hオプシンの蓄積を観察するコントロールとして使用した。同様に、3MA(軽灰色のバー)の存在下で、FTI−277処理によりP23Hオプシンの分解が阻害された。オプシンの最大蓄積は、FTI−277処理のみ(暗灰色のバー)と比較して、3MA処置後12時間の細胞で観察された。図15Bは、プロテアソーム阻害剤(MG132)で、Fed(軽灰色のバー)及びFTI−277(ダークグレイのバー)処理条件の下で12時間処理したP23Hオプシン発現細胞を示し、MG132が飢餓の間、ミスフォールディングP23Hオプシンの分解を阻害しないことを示す。
【図16】FTI−277及びラパマイシンによる抑制部位を示す、インシュリン/TOR/S6K経路のブロック線図である。PBキナーゼの活性化によりAktのリン酸化がなされる。TSC1/2はRhebを活性化させるGAPとして機能し、それにより次々にmTORをリン酸化する。mTOPの抑制により細胞のオートファジーが誘導される。FTI−277によるRhebのポテンシャル抑制は、ラパマイシンによるmTORの抑制と同様にオートファジーを誘導する。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記PCDが嚢胞性線維症である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記加齢に関連する黄斑変性が湿潤型又は乾燥型である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
更に患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる、請求項8記載の方法。
【請求項12】
患者の眼性タンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記加齢に関連する黄斑変性が湿潤型又は乾燥型である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
更に患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる、請求項12記載の方法。
【請求項21】
患者の色素性網膜炎又は黄斑変性を治療若しくは予防する方法であって、
a)患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物を投与することと、
b)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び当該化合物が、同時に又は各々14日以内に、患者の色素性網膜炎又は黄斑変性を治療若しくは予防するのに十分な量で投与される方法。
【請求項22】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
11−シス−レチナールが7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記患者がタンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異を有する、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記突然変異がオプシンにおける突然変異である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記オプシンがP23H突然変異を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記分解がミスフォールドタンパク質特異的である、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が各々5日以内に投与される、請求項1から26のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が各々24時間以内に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が同時に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が眼に投与される、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記投与が眼内に行われる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が、それらを長期放出させる組成物に各々添加される、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が微小球体、ナノ球体又はナノエマルジョンである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記長期放出が薬剤輸送手段を介して行われる、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記方法がビタミンAサプリメントを投与することを更に含んでなる、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、前記患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量のオートファジー強化化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項41】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項40記載の方法。
【請求項46】
PCDを有する患者を同定するステップを更に含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項47】
更に細胞内のミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞の発現レベルを測定するステップを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記PCDが嚢胞性線維症であり、前記方法が更に抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡大、ドルナーゼ及びイブプロフェンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項49】
前記PCDがハンチントン舞踏病であり、前記方法が更にハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項50】
前記PCDがパーキンソン病であり、前記方法が更にレボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベネセラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項51】
前記PCDがアルツハイマー病であり、当該方法が更にドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項52】
前記PCDが腎生成尿崩症であり、前記方法が更にクロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項53】
前記PCDが癌であり、前記方法が、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンからなる群から選択される薬剤を投与することを更に含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項54】
細胞中におけるミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法であって、細胞とオートファジーを強化する有効量の化合物とを接触させることを含んでなる方法。
【請求項55】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項54の方法。
【請求項56】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項54記載の方法。
【請求項57】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項54記載の方法。
【請求項58】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
PCDを有する患者を同定するステップを更に含んでなる、請求項57記載の方法。
【請求項60】
更に細胞内のミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞の発現レベルを測定するステップを含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項61】
前記細胞が眼細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項62】
前記方法が更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体と眼細胞とを接触させることを含んでなる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記細胞が上皮細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項64】
前記細胞が凝集体又はフィブリルを形成する変異体タンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が変異体オプシンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項66】
前記細胞が変異体ミオシリンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が変異体リポフスシンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が変異体β−H3タンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項69】
前記細胞がインビトロの細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項70】
前記細胞がインビボの細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が哺乳類の細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項72】
前記細胞がヒト細胞である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
薬学的に許容できる賦形剤中にmTOR阻害剤又はそのアナログを含有する、PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項74】
薬学的に許容できる賦形剤中にオートファジー強化化合物の有効量を含有する、眼性PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項75】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項73又は74記載の組成物。
【請求項76】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項73又は74記載の方法。
【請求項77】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項73又は74記載の方法。
【請求項78】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項73又は74記載の方法。
【請求項79】
前記組成物が更に11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量を含んでなる、請求項74記載の方法。
【請求項80】
薬学的に許容できる賦形剤中に11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びオートファジー阻害剤の有効量を含有する、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用の医薬組成物。
【請求項81】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びラパマイシン又はそのアナログの有効量を含有する、眼性PCDの治療用のキット。
【請求項85】
11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びラパマイシン又はそのアナログの有効量を含んでなる、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用のキット。
【請求項86】
PCDを有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物を接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項87】
色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、
(i)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び
(ii)候補化合物と接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項88】
11−シス−レチナールが11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物を接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項90】
前記ミスフォールドタンパク質が突然変異を有する、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項91】
前記ミスフォールドタンパク質がオプシンである、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項92】
前記オプシンがP23H突然変異を含んでなる、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項93】
前記オートファジーの増加がタンパク質の濃度をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項94】
前記オートファジーの増加がオートファジーマーカーの発現をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項95】
前記オートファジーの増加が自食胞の数をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項96】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項97】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログとの組み合わせで投与される、請求項96記載の方法。
【請求項98】
前記化合物がFTI−277又はそのアナログとの組み合わせで投与される、請求項96記載の方法。
【請求項99】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項96記載の方法。
【請求項100】
前記PCDが嚢胞性線維症である、請求項96記載の方法。
【請求項101】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項96記載の方法。
【請求項102】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項96記載の方法。
【請求項103】
前記方法が更に、患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体を投与することを含んでなる、請求項96記載の方法。
【請求項104】
患者の色素性網膜炎の治療若しくは予防方法であって、
a)患者にラパマイシン及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物を投与することと、
b)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び当該化合物を、患者の色素性網膜炎を治療若しくは予防するのに十分な量で各々同時又は14日以内に投与する方法。
【請求項105】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該方法がラパマイシン又はそのアナログを、ラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物と組み合わせて投与することを含んでなり、ラパマイシン及び当該化合物が患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量で各々投与される方法。
【請求項106】
細胞ミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法であって、当該細胞と、ラパマイシン又はそのアナログの有効量及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物とを接触させることを含んでなり、ラパマイシン及び当該化合物がタンパク質の分解を強化するのに十分な量で各々投与される方法。
【請求項107】
前記細胞が眼細胞である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記方法が更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体と細胞とを接触させることを含んでなる、請求項106記載の方法。
【請求項109】
ラパマイシン又はそのアナログ、及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物を薬学的に許容できる賦形剤中に含有し、ラパマイシン及び当該化合物が患者のPCDの治療又は予防に十分な量で各々存在する、眼性PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項110】
PCDを有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物をオートファジーエンハンサーの有無において接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項111】
色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドされたオプシンタンパク質を発現する細胞を
(i)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールな及びラパマイシン、及び
(ii)候補化合物と接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項112】
嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドCFTRタンパク質を発現する細胞と、候補化合物及びラパマイシンとを接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項1】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記PCDが嚢胞性線維症である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記加齢に関連する黄斑変性が湿潤型又は乾燥型である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
更に患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる、請求項8記載の方法。
【請求項12】
患者の眼性タンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記加齢に関連する黄斑変性が湿潤型又は乾燥型である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
更に患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる、請求項12記載の方法。
【請求項21】
患者の色素性網膜炎又は黄斑変性を治療若しくは予防する方法であって、
a)患者にオートファジータンパク質分解を強化する化合物を投与することと、
b)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び当該化合物が、同時に又は各々14日以内に、患者の色素性網膜炎又は黄斑変性を治療若しくは予防するのに十分な量で投与される方法。
【請求項22】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
11−シス−レチナールが7−環をロックされた11−シス−レチナールの異性体である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記患者がタンパク質フォールディングに影響を及ぼす突然変異を有する、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記突然変異がオプシンにおける突然変異である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記オプシンがP23H突然変異を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記分解がミスフォールドタンパク質特異的である、請求項1から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が各々5日以内に投与される、請求項1から26のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が各々24時間以内に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が同時に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が眼に投与される、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記投与が眼内に行われる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び化合物が、それらを長期放出させる組成物に各々添加される、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が微小球体、ナノ球体又はナノエマルジョンである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記長期放出が薬剤輸送手段を介して行われる、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記方法がビタミンAサプリメントを投与することを更に含んでなる、請求項31から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、前記患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量のオートファジー強化化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項41】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項40記載の方法。
【請求項46】
PCDを有する患者を同定するステップを更に含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項47】
更に細胞内のミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞の発現レベルを測定するステップを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記PCDが嚢胞性線維症であり、前記方法が更に抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡大、ドルナーゼ及びイブプロフェンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項49】
前記PCDがハンチントン舞踏病であり、前記方法が更にハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項50】
前記PCDがパーキンソン病であり、前記方法が更にレボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベネセラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項51】
前記PCDがアルツハイマー病であり、当該方法が更にドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項52】
前記PCDが腎生成尿崩症であり、前記方法が更にクロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項53】
前記PCDが癌であり、前記方法が、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンからなる群から選択される薬剤を投与することを更に含んでなる、請求項40記載の方法。
【請求項54】
細胞中におけるミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法であって、細胞とオートファジーを強化する有効量の化合物とを接触させることを含んでなる方法。
【請求項55】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項54の方法。
【請求項56】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項54記載の方法。
【請求項57】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項54記載の方法。
【請求項58】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
PCDを有する患者を同定するステップを更に含んでなる、請求項57記載の方法。
【請求項60】
更に細胞内のミスフォールドタンパク質、オートファジーマーカー又は自食胞の発現レベルを測定するステップを含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項61】
前記細胞が眼細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項62】
前記方法が更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体と眼細胞とを接触させることを含んでなる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記細胞が上皮細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項64】
前記細胞が凝集体又はフィブリルを形成する変異体タンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が変異体オプシンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項66】
前記細胞が変異体ミオシリンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が変異体リポフスシンタンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が変異体β−H3タンパク質を含んでなる、請求項54記載の方法。
【請求項69】
前記細胞がインビトロの細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項70】
前記細胞がインビボの細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が哺乳類の細胞である、請求項54記載の方法。
【請求項72】
前記細胞がヒト細胞である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
薬学的に許容できる賦形剤中にmTOR阻害剤又はそのアナログを含有する、PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項74】
薬学的に許容できる賦形剤中にオートファジー強化化合物の有効量を含有する、眼性PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項75】
前記化合物が哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害するか、又は脳内で富化されたRasホモログ(Rheb)を阻害する、請求項73又は74記載の組成物。
【請求項76】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項73又は74記載の方法。
【請求項77】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項73又は74記載の方法。
【請求項78】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項73又は74記載の方法。
【請求項79】
前記組成物が更に11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量を含んでなる、請求項74記載の方法。
【請求項80】
薬学的に許容できる賦形剤中に11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びオートファジー阻害剤の有効量を含有する、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用の医薬組成物。
【請求項81】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記化合物がファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤がFTI−277である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びラパマイシン又はそのアナログの有効量を含有する、眼性PCDの治療用のキット。
【請求項85】
11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールの有効量、及びラパマイシン又はそのアナログの有効量を含んでなる、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性の治療用のキット。
【請求項86】
PCDを有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物を接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項87】
色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、
(i)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び
(ii)候補化合物と接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項88】
11−シス−レチナールが11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物を接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項90】
前記ミスフォールドタンパク質が突然変異を有する、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項91】
前記ミスフォールドタンパク質がオプシンである、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項92】
前記オプシンがP23H突然変異を含んでなる、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項93】
前記オートファジーの増加がタンパク質の濃度をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項94】
前記オートファジーの増加がオートファジーマーカーの発現をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項95】
前記オートファジーの増加が自食胞の数をモニターすることにより測定される、請求項86から89のいずれか1項記載の方法。
【請求項96】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、ラパマイシン又はFTI−277の生物学的活性を強化する化合物の有効量を投与することを含んでなる方法。
【請求項97】
前記化合物がラパマイシン又はそのアナログとの組み合わせで投与される、請求項96記載の方法。
【請求項98】
前記化合物がFTI−277又はそのアナログとの組み合わせで投与される、請求項96記載の方法。
【請求項99】
前記PCDが、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項96記載の方法。
【請求項100】
前記PCDが嚢胞性線維症である、請求項96記載の方法。
【請求項101】
前記PCDが色素性網膜炎、加齢に関連する黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項96記載の方法。
【請求項102】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性である、請求項96記載の方法。
【請求項103】
前記方法が更に、患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体を投与することを含んでなる、請求項96記載の方法。
【請求項104】
患者の色素性網膜炎の治療若しくは予防方法であって、
a)患者にラパマイシン及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物を投与することと、
b)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールを投与することを含んでなり、11−シス−レチナール又は9−シス−レチナール、及び当該化合物を、患者の色素性網膜炎を治療若しくは予防するのに十分な量で各々同時又は14日以内に投与する方法。
【請求項105】
患者のタンパク質形態障害(PCD)の治療若しくは予防方法であって、当該方法がラパマイシン又はそのアナログを、ラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物と組み合わせて投与することを含んでなり、ラパマイシン及び当該化合物が患者のPCDの治療若しくは予防に十分な量で各々投与される方法。
【請求項106】
細胞ミスフォールドタンパク質の分解を強化する方法であって、当該細胞と、ラパマイシン又はそのアナログの有効量及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物とを接触させることを含んでなり、ラパマイシン及び当該化合物がタンパク質の分解を強化するのに十分な量で各々投与される方法。
【請求項107】
前記細胞が眼細胞である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記方法が更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの7−環をロックされた異性体と細胞とを接触させることを含んでなる、請求項106記載の方法。
【請求項109】
ラパマイシン又はそのアナログ、及びラパマイシンの生物学的活性を強化する化合物を薬学的に許容できる賦形剤中に含有し、ラパマイシン及び当該化合物が患者のPCDの治療又は予防に十分な量で各々存在する、眼性PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項110】
PCDを有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドタンパク質を発現する細胞と候補化合物をオートファジーエンハンサーの有無において接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、PCDを有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項111】
色素性網膜炎を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドされたオプシンタンパク質を発現する細胞を
(i)11−シス−レチナール又は9−シス−レチナールな及びラパマイシン、及び
(ii)候補化合物と接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、色素性網膜炎又は加齢に関連する黄斑変性を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項112】
嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物の同定方法であって、
a)インビトロでミスフォールドCFTRタンパク質を発現する細胞と、候補化合物及びラパマイシンとを接触させることと、
b)コントロール細胞と比較して細胞のオートファジーの増加を測定することを含んでなり、接触させた前記細胞のオートファジーの増加を、嚢胞性線維症を有する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【公表番号】特表2008−539276(P2008−539276A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509194(P2008−509194)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016368
【国際公開番号】WO2006/116716
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016368
【国際公開番号】WO2006/116716
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
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