説明

ヒト組み換えエンドオリゴペプチダーゼA(hEOPA)をコードするメッセンジャーRNAの1次構造[AF217798]およびそのたんぱく質配列[AAF24516]の決定方法;ヒトEOPA遺伝子の決定方法およびヒト組み換えEOPAの生成方法;マウスで多クローン性抗−EOPA抗体類の生成方法;hEOPAの生化学的およびたんぱく分解特性を決定するための合成基質類の標準化および使用方法;EOPA触媒活性または“溶解性受容体”として作用するオリゴペプチド類と相互作用できるEOPAの能力に対して、阻害活性を表す阻害薬類および抗体類の同定および生成方法;中枢神経系の先天性、感染性および退行性病状におけるこのたんぱく質の同定方法、および免疫学的プロセスでEOPAの役割の決定方法;中枢神経系の先天性、感染性および/または退行性疾病の診断または治療、病状の好転を伴う予防のために用いられる免疫化学的および/または酵素診断方法;酵素作用の阻害薬として、および/または神経学的、精神医科学的および退行性病状の治療において有用な他の細胞内たんぱく質類との結合を妨げる阻害薬類として作用する、EOPAの活性中心とリガンド類との相互作用性の使用

本発明は、ヒト組み換えエンドオリゴペプチダーゼA(endooligopeptidase A;hEOPA)、hEOPAをコードするポリヌクレオチド(原核生物類および、ヒトを含む真核生物類でhEOPAを発現させる。);hEOPAのたんぱく分解活性を決定するための、またはペプチド類“溶解性受容体”としてまたはシャペロンとしての活性を評価するための、合成基質類の使用;他のたんぱく質との相互作用および複合体形成を妨げることができる、作用物質類、競合物質類および拮抗物質類として、オリゴペプチド結合活性の特異的抗体および阻害薬の使用およびその製造方法に関する。本発明はまた、中枢神経系の先天性、感染性および退行性病状における診断および/または使用、および精神医学的障害、認知障害、および行動機能障害に対し、天然、組み換え、化学的修飾または遺伝子組み換え形態の、そのたんぱく質の使用にも関する。本発明はまた、神経学的病状および組織の退行変性の治療のために抗体類およびそれらの誘導体類を含む、リガンドとEOPAとの相互作用の阻害薬類および競合物質類の使用を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト組み換えエンドオリゴペプチダーゼA(endooligopeptidase A;hEOPA)、hEOPAをコードするポリヌクレオチド(原核生物類および、ヒトを含む真核生物類でhEOPAを発現させる。);hEOPAのたんぱく分解活性を決定するための、またはペプチド類“溶解性受容体”としてまたはシャペロンとしての活性を評価するための、合成基質類の使用;多たんぱく質(multiprotein)複合体類の形成および他のたんぱく質との相互作用に影響を与えられる、作用物質類、競合物質類および拮抗物質類として作用できるオリゴペプチド−リガンド活性の特異的抗体および阻害薬の使用およびその製造方法に関する。本発明はまた、中枢神経系の先天性、感染性および退行性病状における診断および/または使用、および精神医学的障害、認知障害、および行動機能障害に対し、天然、組み換え、化学的修飾または遺伝子組み換え形態の、そのたんぱく質の使用にも関する。本発明はまた、神経学的病状および組織の退行変性の治療のために抗体類およびそれらの誘導体類を含む、EOPAに対するリガンドの相互作用の阻害薬類および競合物質類の使用を提案する。
【0002】
より詳しくは、本発明は中枢神経系(CNS)で発現されるたんぱく質に関する。本発明によれば、そのたんぱく質は、ペプチド類基質に対したんぱく分解活性を呈し、それらと、オリゴペプチド類および/または細胞内たんぱく質類との相互作用を可能にするたんぱく質の構造を示し、神経細胞移動、神経突起生成、介在ニューロン性情報伝達(例えば、シナプス形成のための情報伝達)、抗原提示および生体内変化および/または生理活性ペプチドの保護(シャペロン活性)または生理活性ペプチド類の調節たんぱく質相互作用(“溶解性受容体”活性)のような重要な生理学的作用を決めることができる。
【0003】
本発明の目的を達成するために、このようなたんぱく質をコードするメッセンジャーRNAの1次構造、およびヒトEOPAのたんぱく質配列の1次構造を決定する特定の方法を提案する。
【0004】
同様に、本発明はEOPA遺伝子の1次構造、並びにその転写および発現を制御する調節因子の1次構造を決定する方法を提供する。
【0005】
さらに、EOPAの主な特異性は、基質加水分解(たんぱく分解活性)および活性中心でペプチド類との相互作用(シャペロンまたは“溶解性受容体”−様活性)に係り、活性複合体類の形成に影響を与え、中枢神経系の細胞性プロセスで作用することができ、活性生成物の製造を可能とするということが明らかになった。それはまた、合成または天然特異的阻害薬類の生成および/または使用(それは試験管内、生体外、または生体内で用いられる。)に関連し、EOPAの生理学的または病理学的役割に影響を与える。
【0006】
本発明の更なる目的は、EOPAの触媒活性を阻害し、かつ組織および生物学的体液でEOPAを特異的に認識することができる特異的抗体を作製することにある。
【0007】
本発明の更なる別の目的は、EOPAをコードするポリヌクレオチド、各々の組み換えたんぱく質、またはそれに対して生成された抗体を用い、ヒトおよび動物の別個の組織、器官および体液でこのたんぱく質の分布様式を決定することにある。
【0008】
他の目的として、本発明は、腫瘍組織または細胞で;全能性細胞(幹細胞)および神経細胞で、分化過程、軸索の形成過程、またはシナプス性結合の形成過程で;および(特に、神経組織および平滑筋の)退行性病理学的過程またはそれの修復過程で、このたんぱく質の発現および分泌を決定する方法を提供する。
【0009】
本発明による幾つかの目的は後述する分化過程により得られ、また特性決定された。
【背景技術】
【0010】
ヒトEOPAをコードするcDNAは、Stratagene社(La Jolla,USA)から購入したヒト脳皮質cDNAライブラリーから単離した。ウサギEOPAをコードするcDNA配列に由来した放射活性標識プローブを用いるハイブリダイゼーションにより前記単離されたcDNAをスクリーニングした後、同定し、そのcDNAおよびそれに相応するたんぱく質をGenbankデータバンクへそれぞれAcc.No.AF015037およびAAB99905として寄託した。本発明者らによる文献(Hayashi et al.,2000)参照。
【発明の開示】
【0011】
ヒトEOPAをコードするcDNAのクローニングおよびその推定アミノ酸配列の分析
長さ約2.2kbの前記cDNAの配列が完全に決定され、そのcDNAおよびたんぱく質の配列はGenbankへそれぞれAcc.No.AF217798およびAAF24516として寄託された。
【0012】
哺乳動物のEOPAおよびそれに相応するたんぱく質配列をコードするメッセンジャーRNAの1次構造を決定するために、
(a)グアニジンイソチオシアニド−フェノール−クロロフォルム抽出法を用いるか、または商品名Trizol(GibcoBRL)を用いて、幾つかの動物組織から総RNAを単離し;
(b)予め充填されたオリゴーdTセルロースカラムまたはサスペンション中の樹脂を用い、総RNAからメッセンジャーRNAを精製し;
(c)変性アガロースゲル(1〜2.5%のホルムアルデヒドを含む。)中で電気泳動により、前記メッセンジャーRNAの質を分析し、エチジウムブロマイド、または“Syber Green”(Molecular Dynamics)のような他の核酸色素で染色し、フォトドキュメンテーション(photodocumentation)し、特定のプローブ(ノーザンブラット)とのハイブリッダイゼーション後分析を行い;
(d)メッセンジャーRNAを逆転写させ、それに相応する二本鎖cDNA(これはプラスミドベクター、コスミドまたはファージベクターヘクローニングされ、“インビトロ”増幅される。)を生成させ;
(e)EOPA特異的活性の検出により、または特異的抗−EOPA抗体を用いる、ハイブリダイゼーション、免疫選択により、EOPAをコードするcDNA挿入断片を同定および選択し;
(f)PCR(“ポリメラーゼ連鎖反応”)により、または細菌内でこのcDNAを含むベクターを増幅させることにより、そのcDNA挿入断片を増幅および単離させ、次いでベクターからこのcDNAを放出させる制限酵素で消化させ;
(g)または、メッセンジャーまたは総RNAおよび特異的オリゴヌクレオチド類を用いる、直接PCR増幅(RT−PCR−逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)により、選択されたcDNAを増幅させ;
(h)そのcDNAが完全に配列決定され、特異的ソフトウェアおよびデータバンクを用いる相同性分析を含め、1次および2次構造を分析し、各々の推定アミノ酸配列を決定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
組み換えEOPAの発現
組み換えEOPAは、例えば培養物中の真核細胞、細菌、イースト、バキュロウイルスなどのような非相同的系を用いて発現され得る。細菌内での組み換えEOPAの生成は、ベクターの転写開示信号(開示メチオニンを含む。)が用いられるように、EOPAをコードするcDNAをインフレームで(in frame)発現ベクター(例えば、pProEx−HTc)内へサブクローンした後行われた。大腸菌(Escherichia coli)は、電気泳動または“熱ショック”処理を行うことによって、その構造体により形質移入または形質転換され、かつ各々の組み換えたんぱく質の発現はIPTG(イソプロピル−チオ−ガラクトシダーゼ)の添加により誘導された。発現されたたんぱく質は、アンカーたんぱく質またはポリーヒスチジン配列標識(標的たんぱく質の同定および精製プロセスを助ける。)を有する、組み変えまたは融合たんぱく質として生成された。
【0014】
前記のように得られた組み換えたんぱく質は、脳に存在する天然たんぱく質で見られるものと等しい生化学的および免疫学的特徴を示した。
【0015】
組み換えEOPA(特に、細菌内での)の生成は、
(a)アンカーたんぱく質またはオリゴペプチド配列標識を有する融合たんぱく質として、または組み換え分子としてEOPAが生成されるように、EOPAをコードする、単離されたcDNAをプラスミド発現ベクター内へインフレームでクローンし;
(b)組み換えまたは融合たんぱく質を生成するために、発現ベクター内にインフレームでクローンされたEOPAをコードするcDNA挿入断片を含む、前記プラスミドベクター構造体で宿主細菌(Escherichia coli菌株DH5α、BL21(DE3)など)を形質転換させ(ここで、形質転換は、これらの方法に対しそれぞれ適切なプロトコールを用い、前もって用意された細菌の熱ショック処理または電気泳動処理により行われ得る。);
(c)前記形質転換された細菌を、560〜600nm(波長)での吸光度値が約0.6になるまでに、適切な培地(通常、選沢用の適切な抗生物質を含むLB培地を用いる。)中の生育により増幅させ(その際に、標的たんぱく質の生成は、発現誘導化合物、例えばIPTG(イソプロピル−チオガラクトシダーゼ)を、最終濃度0.5〜1mMになるまで添加し、振盪機内で30〜37℃でインキュベートすることによって誘導される。);
(e)たんぱく質が融合たんぱく質として得られる場合に、ポリヒスチジン融合物に対し固定ニッケル、またはGST(グルタチオンーS−転移酵素)との融合物に対しグルタチオン−セファロース樹脂を含む、アフィニティーカラムを用い、他の可溶性細菌たんぱく質(不純物)から前記たんぱく質を分離し;次いで特異的なプロテアーゼ(例えば、トロンビン、因子X,エンテロキナーゼなど)との消化(その消化部位は、アンカーたんぱく質と選択される組み換えたんぱく質との間に導入される。)を介してアンカーたんぱく質またはポリペプチドを除去し、組み換えたんぱく質を得;
(f)ポリアクリルアミドゲル(SDS/PAGE)での電気泳動、ウエスタンブロット、質量分析法、および天然および合成ペプチド基質を用いて、酵素反応速度により特異活性を決定する方法により、組み換えたんぱく質の純度および質を評価することからなる。
【0016】
ヒトEOPAの遺伝子配列の決定
EOPAをコードするヒト遺伝子の全配列は、公開されているデータベースに完全にアクセス可能なヒトゲノムの配列分析により決定された。EOPA遺伝子は9エキソンおよび10イントロンからなり、約40kbの長さを有する。この遺伝子は、p53遺伝子(約0.7cMにより単離される。)の位置に比較的に近接したクロモソーム17p12.9に位置し、かつ遺伝子LIS1が位置したクロモソーム17(17p13.3)と同じアーム(arm)上に位置する。EOPA遺伝子の上流領域(プロモーターを含む。)で、幾つかの転写調節因子の結合部位、例えばAP1,cMyb,SP1,nMyc,cMycなどが見られた。
【0017】
EOPAをコードする遺伝子のプロモーター領域の分析
ウサギEOPAをコードする遺伝子のプロモーター領域を分析して、この酵素の発現を調節する幾つかの主転写因子を同定した。得られた構造物に対し測定されたルシフェラーゼ活性に基づき、位置−725〜位置−648の領域は、グリオーマ(C6細胞株)でEOPAの発現を強く抑制する転写因子により認識される(原型がん遺伝子c−mybの生成物により認識され得る)一つ以上の部位を有する。Thiele et al.,1988参照。さらに、この研究は、ヒトEOPA遺伝子がその上流領域、即ち位置−980〜位置−310でこの遺伝子を陽性的に調節する認識部位を有しているのを示す。C6細胞株だけを用いて実施した本研究の以外に、得られた結果は、ヒトおよびウサギの両方のEOPA遺伝子は、上流領域に対し低い類似性を示すにもかかわらず、グリオーマ(ここで、酵素触媒活性測定結果、低いEOPA様ペプチダーゼ活性が観察された。)で陰性的に調節されることが分かった。一方、分析されたEOPA遺伝子のプロモーター領域の断片は、研究の対象になった細胞株、例えばC6細胞でこの遺伝子発現の活性化因子として作用する転写因子に対する認識部位を含んでいるように思われる。
【0018】
myb遺伝子部類は細胞の増殖および分化にかかわる遺伝子の転写を調節するがん遺伝子類として記載されている。Ness(1999)参照。この部類は三つの別個の遺伝子、即ちA−myb,B−mybおよびc−mybからなる。Nomura et al.,1988;Oh et al.,1999参照。c−mybの良く知られている特性のうち、それが、骨髄性細胞および赤血球細胞の分化を阻害し、従って遮断された未熟細胞の連続的な分化を可能とする生存因子(survive factor)であることは注目すべきである。Weston, 1998参照。数多くのグループは、c−myb遺伝子と、幾つかの腫瘍細胞株との関係、および神経細胞の正常的な作用との関係を提案してきた。Welter et al.,1990およびGozes et al.,1987参照。しかしながら、c−myb遺伝子の生理学的な作用はまだ解明されていない。
【0019】
抗−触媒活性を持つ抗−EOPA抗体の生成および類似の作用を持つたんぱく質を識別する能力
免疫化のために、細菌、とりわけ大腸菌で発現された活性の組み換えEOPA、または精製された天然EOPAを用い、レット、マウスおよびウサギで多クローン性抗体を生成させた。7〜8週齢の、体重18〜22gのオスのBalb−Cマウスを、精製された天然ヒトEOPA、または触媒活性の組み換え酵素で免疫化した。4回の免疫化それぞれにおいて、水酸化アルミニウム、[Al(OH)]上に吸収された形態の、精製されたたんぱく質2μgまたは組み換えたんぱく質3μgを毎週皮内へ注射した。最後の免疫化が終わってから1週間後、血液サンプルを収集し、血精を−20℃で保存した。適切な抗原を用い抗血精力価をELISAにより評価した。得られた血清の抗−触媒活性は、消光蛍光(quenched fluorescence)ペプチド類基質を用いてHPLCまたは蛍光分析法により評価した。抗血清は、使用する前に、混入されている任意のペプチダーゼ活性を除去するために、55℃で5分間予熱した。抗体の使用を標準化するテストの結果から、抗−EOPA抗体を組み換えEOPAと共に37℃で30分間インキュベートすると最大阻害効率に達し、かつ他の組織オリゴペプチダーゼ、例えばチメットオリゴペプチダーゼ(TOP)および神経溶解素(NL)とのインキュウベートの際はいかなる阻害活性も示さなかったため、この阻害は特異的であることが分かった。この抗体を用いると、また動物および細胞株に存在している、機能的には類似しているが相同ではない酵素類(例えば、TOPおよびNL)からEOPAの活性を識別することができた。
【0020】
EOPAの生化学的特徴およびたんぱく分解特性
9〜13アミノ酸残基からなる、ブラジキニン、ニューロテンシンおよびオピオイドペプチド類のような天然ペプチド基質類を用いる反応速度分析は、我々の研究室でEOPAを発見および特性決定するのに欠くことのできないものであった。論文(Camergo et al.,1994)の抄録参照。1990年以後、我々は、この酵素の特性を標準化し、費用を単純化しかつ減少させ、もっと信頼できるEOPAの反応速度特性を明かすために、消光蛍光(quenched fluorescence)を有する天然基質に由来したペプチド基質類の開発に取り組んできた。Juliano et al.,1990参照。用いられた、消光蛍光(qf)を持つこのペプチド基質類は、ペプチドのアミノ末端にラジカルAbz(オルト−アミノ安息香酸)を、ペプチドのカルボキシル末端にEDDnp、[N−(2,4−ジニトロフェニル)エチレンジアミン]を有する。これらのペプチド類のアミノ酸残基は次のような一文字の略語として示される。
G−グリシン N−アスパラギン
A−アラニン Q−グルタミン
P−プロリン D−アスパラギン酸
V−バリン E−グルタミン酸
I−イソロイシン K−リシン
L−ロイシン R−アルギニン
S−セリン F−フェニルアラニン
T−トレオニン H−ヒスチジン
W−トリプトファン Y−チロシン
【0021】
現在、EOPA活性を決定するために選択されるペプチドはAbz−GFAPFRQ−EDDnpである。このような天然EOPAの特性決定方法を組み換え酵素に適用し、天然EOPAにより得られた結果を完璧に再現した。Hayashi et al.,2000参照。この酵素分析法は、消光蛍光(これは、EOPA、TOPおよびNLのような幾つかの組織オリゴペプチダーゼの特性を決定するのに用いられる。)を持つ、幾つかのペプチド基質類をテストするのに幅広く使用されてきた。Oliveira et al.,2001参照。
【0022】
天然たんぱく質およびその組み換え形態は7〜13アミノ酸残基のペプチド類を選択的に加水分解し、それらの等電点は5.22〜5.55である。reviewed by Medeiros,1992参照。この酵素はブラジキニンのPhe−Serボンドを特異的に加水分解し(Camergo et al.,1973)、そして神経溶解素のArg−Argボンドを特異的に加水分解し(Camergo et al.,1983)、配列中にエンケファリンを含む、幾つかのオピオイドペプチド類から[Met]−または[Leu]−エンケファリンを放出する。(Camargo et al.,1985;1987)参照。よって、これらの生理活性ペプチド類が生体内変化に関与する可能性が示唆される。
【0023】
EOPAは、チオルにより活性化され、EDTAに不感性の、約40kDaの分子量を示すエンドペプチダーゼであり、他のサイトゾルたんぱく質と結合し、より大きい分子量を持つ複合体を生成することができる。この最後の特性は、動物組織のサイトゾル、とりわけレット脳のサイトゾルに対し、分子量が知られている標準物質を用い目盛りを決めたSuperose12カラム(Amersham Bioscience)を用いて、ゲルろ過させることにより検証された。流出液中に存在するたんぱく質は、抗−EOPA抗体を用い、酵素活性、ウエスタンブロット分析およびELISAを測定することによってモニターされた。
【0024】
EOPAの阻害薬
当分野に技術によれば、反応速度分析の結果から、EOPAは、還元剤ジチオトレイトール(DTT)により活性化され、またシステイニルプロテアーゼの古典的阻害薬である、5’−ジチオ−ビス−(2−ニトロ案息香酸塩)(DTNB)およびp−クロロメルクリ案息香酸塩(PCMB)のようなチオル試薬により阻害されるため、チオルにより活性化される酵素であることが知られている。Oliveira et al.,1976;Camargo et al.,1983;Hayashi et al.,1996 and 2000参照。後で、チオル−反応性基Npys(S−(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)で標識された酵素基質類(ダイノルフィンの誘導体類)の模倣化合物類を用いて、触媒部位に近接した、重要なシステイン残基の存在が確認された。Gomes et al.,1993;Hyayshi et al.,1996参照。このEOPAの重要なシステイン残基は部位特異的阻害薬と非可逆的に反応したため、この酵素がシステインプロテアーゼであるという仮説が実証された。
【0025】
従って、EOPAは、EDTAに不感性で、チオル依存性を有するエンドオリゴペプチダーゼである。しかし、それは、金属プロテアーゼ、例えばJA2を阻害するように特別に設計された化合物類により阻害され得るが(Shrimpton et al.,2000)、Jiracekらにより合成されたホスフィン酸塩ペプチド阻害薬により阻害されない(1995)。このJA2阻害薬は、TOPに特異的な阻害薬であるcFPの構造を変更することによって得られたが、その後すぐに両方の化合物が約17nMの類似したKiをもって、EOPAの活性を阻害するということが本発明者らによって証明された。
【0026】
JA2および抗−EOPA抗体によるエンドオリゴペプチダーゼの阻害
【表1】

*Shrimpton et al.,2000
【0027】
レット組織でのEOPAの分布
別個のレット組織および細胞でのEOPAの発現は、生化学的および免疫学的方法、また特異的触媒活性の評価/数量化、免疫組織化学、“インサイチュ”ハイブリダイゼーションおよびノーダンブロット分析を意味する分子生物学的技法を用いて分析された。これらの分析を用いると、脳でのEOPAの高い発現度を検証し、皮質、海馬、小脳およびマイルネト(Meynert)の基底核の幾つかの層で主に強いハイブリダーゼーション信号を示すことができた。よって、これらの部位で特異的なメッセンジャーRNAの転写レベルがより高いということが分かった。
【0028】
さらに、免疫組織化学による組織および細胞分布研究の結果から、中枢神経系、および既に知られているように[Leu]−エンケファリンが豊かな、脊椎動物の網膜の神経細胞の軸索および細胞体でオピオイドペプチド類およびそれらの前駆体類とEOPAとの共存が証明された。Oliveira et al.,1990;Paik et al.,1992;Ferro et al.,1991;Hayashi et al.,2000参照。またEOPAが、他のペプチドメッセンジャー代謝酵素のように、細胞外空間へ分泌されるという証拠が存在する。
【0029】
たんぱく分解活性を測る分析の対象となった組織(脳、精巣、心臓、骨髄、肝臓、肺、骨格筋、および腎臓)のうち、我々は腎臓のサイトゾルが最も低いEOPAおよび神経溶解素活性レベルを示すということに注目した。一方、チメット(thimet)オリゴペプチダーゼ(TOP)はこの組織での総活性の32%を構成し、基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpが用いられた場合に、この酵素は偏在的分布を示した。一般的に、EOPAおよびチメットオリゴペプチダーゼの酵素活性は、脳と腎臓のサイトゾルを除いたほとんどの組織のサイトゾルで均一に分布した。
【0030】
EOPAは脳のサイトゾルで優先的に見られるが、それはこの組織で観察された総オリゴペプチダーゼ活性の60%に達する。チメットオリゴペプチダーゼの活性はこのサイトゾルで検出されなかったが、このサイトゾルで観察された活性の20%は神経溶解素に起因し、また20%はこの基質を加水分解する他のサイトゾル酵素の活性に起因したものであった。
【0031】
以上のように同定された特性をよりよく証明するために(本発明の目的でもある。)、前記の表は、サイトゾルのエンドオリゴペプチダーゼによる蛍光基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpの加水分解の百分率として、抗−EOPA抗血清の特異的活性により決定されたEOPAの分布を示している。
【0032】
さらに、これは、図1にも、基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpに対するエンドオリゴペプチダーゼの活性の百分率として示されている。
【0033】
図2は、“インサイチュ”ハイブリダイゼーションに対するEOPA分布研究で、用いられたプローブの作製に用いられる断片が分離されるヒトEOPAをコードするcDNAの全配列を図解する。
【0034】
サイトゾルのエンドオリゴペプチダーゼによる、蛍光基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpの加水分解の百分率
【表2】

*TOPおよびNLの酵素活性は、TOPおよびNLにそれぞれ特異的なホスフィン酸塩阻害薬、Z−(L,D)−F−ψ−(POCH)−(L,D)−A−R−MおよびP−F−ψ−(POCH)−L−P−NHによるサイトゾルペプチダーゼの阻害の百分率から推定された。Jiracek et al.,1995参照。
【0035】
神経細胞および黒色腫におけるEOPAの発現
多能性幹細胞から“インビトロ”神経細胞の分化は、胚発生の初期段階に関与する分子メカニズムの基本研究に対するモデルとして広く受け入れられてきた。EOPAの機能および発現に関する研究には、“インビトロ”神経細胞の分化過程に対するモデルとして、マウスの胚性癌腫に由来したB19細胞株が用いられてきた。胚盤胞の中央層に由来した胚性幹細胞は、遺伝子発現の調節を研究するのに用いられてきた。これらはまた、神経細胞退行に対する治療剤として、およびパーキンソン病の治療に用いられるドーパミン作用性移植片に対し、可能性のある候補薬物である。胚性癌腫細胞は、通常、胚の組織の新生物から得られ、培養物で容易に操作される。これらは幹細胞のように行動し、エピブラスト(epiblast)の内層で見られる細胞と類似した遺伝子発現パターンを示し、また培養物で、典型的な内皮性、中胚葉性または外胚葉性細胞を作り出すことができる。Martin 1980参照。マウスの胚性癌腫に由来した全能性P19細胞(McBurney et al.,1982)は分化モデルとして、また別個の分化経路に対し非可逆的なコミットメント(commitment)に必要な因子を同定するための研究において用いられた。非分化P19細胞は高い増殖速度を特徴とし、高密度の付着細胞またはサスペンション中の細胞を持つ両方の培養物は分化過程を誘導する。この過程はまた化学的因子、たとえばレチノイン酸またはDMSOによりトリガーされ得る。例えば、10−7Mのレチノイン酸の存在下で、P19細胞は神経外胚葉細胞へ分化することが知られている。(Jones−Villeneuve et al.,1982)。
【0036】
付着を防ぐためのプロトコールで、細胞凝集体はサスペンション中に5日間維持され、次のような細胞タイプを形成した:7日目に神経細胞が現れ、10日目に星状細胞およびグリア細胞が見られた。従って、天然での変化および化学的誘導物質の濃度での変化は、P19細胞を、平滑筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞または星状細胞を形成させる多重の分化経路へ誘導することができる。Edward and McBurney,1983参照。本発明者らにより行われた研究で、軸索突起の形成が観察される際に、レチノイン酸で処理した後約8日目に、胚性小体および神経細胞分化細胞でEOPAメッセンジャーRNAの発現が増加された。この研究の目的は、EOPAの生理学的役割と、神経細胞の分化過程で遺伝子およびたんぱく質の調節のメカニズムを明かすことにある。
【0037】
PC12細胞株は、神経細胞の表現型へ誘導する、神経成長因子(NGF)に可逆的に反応し、可塑物(plastic)に対する付着性が劣るレット腫瘍(移植可能なレットクロム親和性細胞腫)に由来し、成長し小さなクラスターを形成する傾向がある。Greene et al.,1976参照。標準条件下で培養物中に維持されると、これらの細胞は,生物学的および形態学的特徴において、胎児副腎のクロム親和性細胞に類似する。これらは二つの方法で分化し得る:1)グルココルチコイド類に応答してクロム親和性様細胞へ、および2)NGFまたは繊維亜細胞成長因子(FGF)のような神経栄養性因子に応答して交感神経細胞へ。さらに、これらの細胞は幾つかの生理活性ペプチド類、例えばエンケファリン類、ダイノルフィン(dynorphin)類およびニューロテンシン類を発現する。
【0038】
これらの特徴により、この細胞株は神経ペプチド類の生体内変化に関与する酵素の研究のための実験的モデルとして適している。以前、我々は、EOPAのたんぱく分解活性はこれらの細胞のサイトゾルに存在し、この活性はcAMPの添加に応答して調整されるが、FGF処理には応答しないということを証明した。
【0039】
一方、これらの細胞をFGFで処理すると、神経細胞表現型へ分化させることができ、並びに軸索の伸長が観察され得る。その後、これらの細胞に存在するEOPAは神経細胞の末端へ移動するが、これは細胞伸長部の形成、または他の細胞との接続部の形成において、この酵素の潜在的な役割を示唆する。これらの細胞においてこのたんぱく質の実際の役割を明かすための努力がなされてきた。
【0040】
EOPAの生理学的役割を研究するための新たな生物学的モデルを考案するために、神経細胞への幹細胞の分化過程を標準化した。
【0041】
胚性幹細胞(ES)は、 胚盤胞の内部細胞集団に由来した未分化細胞であり、かつ多能性を有するものとして知られている。Evans and Kaufman, 1981;Martin,1981参照。多能性は、生物体内で正常の発達を回復することを可能にするES細胞の注目すべき能力であり、また生殖系を含む別個の組織を生成することを可能にする。特定条件下で培養すると、幹細胞は、数回の細胞分割が起こる間に、数多くの継代を経ても、未分化形態で維持され得る。一方、これらの細胞が導入され、“インビトロ”分化プログラムを開示することができる。例えば、サスペンション中に培養される際に、幹細胞は、胚様体(移植前胚児に類似する。)と呼ばれる分化細胞の凝集体を自発的に形成する。形態学的、免疫組織学的、および分子分析を行なった結果、幾つかの、別個の胚性細胞株は胚様体、例えば造血細胞、神経細胞、内皮細胞および筋細胞で見られる。これらの幹細胞の特性は、初期胚芽発達に対する“インビトロ”モデルとしてこれらの細胞を使用する動機付けとなり、この故に、例えば次のような重要な問題に答えるための強力なツールでもある:胚発生時に神経細胞における核移動の過程でEOPAの実際の役割は何か、およびこの過程でEOPAの触媒活性の重要性は何か、および未分化細胞および神経細胞の前駆体細胞および成熟した神経細胞でEOPAはどのような細胞内分布を有するのか。
【0042】
未分化胚性幹細胞(USP−1細胞株)を次のような培地で培養した:15%ウシ胎児血清、100mg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミン、1%の非必須アミノ酸、10−4Mのモノチオグリセロール、およびLIF(白血病阻害因子)を含むDMEM(最終濃度1、000ユニット/ml)。未分化幹細胞の培養物を全て、前もって照射されたマウスの繊維亜細胞(Neo Mef2)の1次培養物上で維持させた。胚様体(ここで、750細胞はペトリ皿上で20μlの培地ドロップ中に、37℃で4日間、5%炭素ガス下に維持された。)が形成された後に、分化が行なわれる。(この期間に、細胞は胚様体と知られている細胞凝集体を形成する。)胚様体が形成された後、細胞を、前記培地を含有し、LIFを含有しない、0.1〜0.5μMのレチノイン酸(神経細胞分化の誘導するための試薬として用いられる。)を含む、新たな皿へ移した。次いで、この培養物を4日間分化誘導物質と共に維持させた。その時点で、上記誘導物質を除去し、細胞培養物を、0.22%ゲラチンで予め処理した新たな皿(グラススライドを含む。)へ移し、ここで細胞を、前記したような条件下で、神経細胞用の基礎培地(neurobasal mediun)(ウシ胎児血清を低濃度で含む、神経細胞培養のための特別な培地)を用い4日間さらに培養した。神経細胞用の基礎培地で細胞を維持させることによって、神経細胞の前駆体細胞および成熟した神経細胞を選択した。幹細胞の分化が終了したら、共焦点顕微鏡を用い分化された細胞を数え、かつ撮影した。
【0043】
神経細胞へ分化した細胞集団は、前述したプロトコールに従い得られ、これらの神経細胞の分化および成熟プロセスでEOPA触媒活性阻害の影響を調べるために、その神経細胞を阻害薬JA2で処理した後分析を行った。神経細胞の前駆体細胞をこの阻害薬で処理すると、軸索突起の形成が阻害され、従って細胞の異常分化が誘導された。それによって特徴付けが行われた。
【0044】
胚発生時中枢神経系の形成におけるEOPAの役割
EOPAの非−たんぱく分解作用の今の観点は、それが“高次コイル”構造、例えば、Lis1およびDisclを持つ構造を通じて他のサイトゾルたんぱく質類と相互作用するということである。Lis1は、広く反復されるモチーフを有するWD−40たんぱく質部類に属し(Neer et al.,1994参照)、幾つかの細胞機能を一緒に遂行する機能性仕組みを維持する細胞内たんぱく質として作用する。Hatakeyama et al.,1999;Kitagawa et al.,1999;Sidow et al.,1999参照 。Lis1およびDisc1とEOPAとの相互作用は胚発生時に中枢神経系の形成および生体機能,例えば細胞内輸送、神経突起生成、核の運動性および神経組織の可塑性において欠くことのできないものである。相互作用異常は滑脳症およびMiller−Diecker症候群のような神経学的疾病を引き起こす。Reiner et al.,1993;Cardoso et al.,2002参照。最近、EOPAの関与を示す他の病状として報告されたのは精神分裂症である。精神分裂病患者はEOPAに結合しない、切断型または突然変異型Disc1を生成し、このような異常はこの疾病のトリガーに関連しているように思われる。Ozeki et al.,2003;Taylor et al.,2003参照。
【0045】
新生児レットまたは胚の脳薄片を用いる“インサイチュ”ハイブリダイゼーション研究で、EOPAメッセンジャーRNAの転写レベルの増加が、主に新生児の、5〜10日齢の胚の皮質で見られた。
【0046】
さらに、発明者らは別個の動物、たとえばヒト、ウサギ、マウスおよびレット(ここで、同一のたんぱく質がまたNude−LまたはNude−様またはNude2と呼ばれる。)で発現されるEOPAの“高次コイル”ドメインの高度に進化された保存部(high evolutionary conservation)を同定および証明した。Niethammer et al.,2000;Sasaki et al.,2000;Sweeney et al.,2001参照。
【0047】
らせん状構造,および他のたんぱく質と相互作用できる能力は,核移動および神経細胞移動と関係があり、それは胚発生時に主に生じる細胞移動プロセスでこの構造の重大な作用を示唆する。
【0048】
我々の結果から、レットから単離されたEOPAに相同のたんぱく質 (Nude2,Genbank Acc.No.NM_133320)およびマウスから単離されたEOPAに相同なたんぱく質(Nude−L,Genbank Acc.No.AF323918)はまた,EOPAに対し既に用いられたペプチド基質類が用いられる場合、EOPA特異的阻害薬によりたんぱく分解活性を遮断することに加えて、EOPA様ペプチダーゼ活性を示すことが分かった。これらのたんぱく質は、高度に保存されたN−末端ドメインを示し、“高次コイル”構造の存在およびより多様なC−末端ドメイン
を特徴とし、進化的スケールで、例えばアスペルギルスのように離れた生物ですら保存された配列の断片を示す、新たなたんぱく質部類を構成するように思われる。[GenBank Acc.No.AF015037](Sweeney et al.,2001;Kitagawa e cols.,2000)
【0049】
EOPAの組織特異的発現は、レポーターたんぱく質、GFP(Green Fluorescent Protein)の発現を調節するウサギEOPA遺伝子のプロモーター領域を用いる分析を通じてカエル胚で見られた。レポーター遺伝子のる転写における第一の徴候はステージ13〜15の胚で見られ、かつ胚がそれ以上維持されない約ステージ40まで続くことができた。この実験で、研究された遺伝子の発現を調節する転写因子は、プロモーター領域に存在する特定の配列と相互作用し、標的たんぱく質が主に発現されるべき発達ステージおよび組織を指示するレポーターたんぱく質の発現をトリガーする。従って、これらの研究で、EOPAは神経胚形成時に神経細胞チューブを形成する最初の段階で、並びに神経細胞の外胚葉および小脳で主に発現された。後ほど、胚の尾部を形成する、骨格筋細胞の特定の標識がまた見られた。
【0050】
これらの結果はまた、白皮症のツメガエル(Xenopus laevis)の胚を用いて行われた、総量“インサイチュ”ハイブリダイゼーション分析により確認された。ここで、約ステージ19の胚の背面部位の前側―後側軸に沿って、EOPA相同性メッセンジャーRNAの存在を確認した。このような染色部位は神経細胞組織、より正確的には、脊髄に向かって広がりかつ神経冠を含む菱脳および前脳を含むのが明らかである。さらに、EOPA遺伝子の同型接合性の有害な突然変異が生育不可能であることを考えて、“インビトロ”で転写された特定のメッセンジャーRNAを注射することによってEOPAをツメガエルで超発現させる分析が行われた。その結果、EOPAの過剰発現は神経系の正常の形成を妨げるのが証明された。より小さくかつ置き違えられた目、および動物の脳の深刻な奇形が観察された。それらは注射された側上での異常ラミネーションを示唆する。
【0051】
抗原提示プロセスでのEOPAの役割
オピオイドペプチド類はまた免疫調節薬であることが既に知られており(Blalock,1989)、免疫系の細胞でEOPAの存在を考えると、免疫系でこの酵素に対する役割を提案することができる。Paik et al.,1992参照。MHCIにより提示された抗原の大きさが、これらのエンドオリゴペプチダーゼと結合するのに必要とされるペプチド類の大きさ(7〜13アミノ酸残基)と一致するという、これらのデータおよび観察に基づき(Engelhard、1994)、本発明者らは、自己および非自己の選択プロセスに関与する可能性を調べることにした。MHCI抗原提示プロセスでのチメットオリゴペプチドダーゼの関与は本発明者らにより既に明らかになっていた。その理由はMHCIにより提示されるエピトップ類は7〜13アミノ酸残基を有するオリゴペプチド類であり、それらはまたこの酵素に対する競合的阻害薬であるからである。“インビトロ”で組み換えEOPAを用いた場合、EOPAとTOPとの特異性において微妙な差はあるものの、類似な結果が再現された。我々は、抗原提示細胞でオリゴペプチダーゼ阻害薬の追加後リンフォプロリフェレーション(linfoproliferation)レベルの低下は主にEOPAの阻害に起因し、それはこの酵素がMHCI抗原提示系経路に関与し得るのを示唆するということを見出した。神経組織でのMHCIの発現は感染性および退行性プロセス、および中枢神経系の可塑性に関連するため、このペプチダーゼの調節またはEOPAのシャペロン活性は、EOPAの特定の阻害薬により影響を受けるのが明らかである、これらのプロセスとの関連性を説明することができる。Piehl and Lidman,2001;Huh et al.,2000参照。
【0052】
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【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpに対するエンドオリゴペプチダーゼの活性を百分率として示す。
【図2】図2は、“インサイチュ”ハイブリダイゼーションに対するEOPA分布研究で、用いられたプローブの製作に用いられる断片が分離されるヒトEOPAをコードするcDNAの全配列を図解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換えエンドオリゴペプチダーゼA(EOPA)およびそのたんぱく質配列をコードするメッセンジャーRNAの1次構造の決定方法であって、そのたんぱく質配列は特にヒトに由来し、
(a)グアニジンイソチオシアネートーフェノール−クロロフォルム抽出法を用いるか、または商品名Trizol(GibcoBRL)のような特定の試薬を用いて、幾つかの動物組織から総RNAを単離し;
(b)予め充填されたオリゴ−dTセルロースカラムまたはサスペンション中の樹脂を用い総RNAからメッセンジャーRNAを精製し;
(c)変性アガロースゲル(1〜2.5%のフォルムアルデヒドを含む)中での電気泳動により、得られたメッセンジャーRNAの質を分析し、次いでエチジウムブロマイド、または他の核酸色素で染色し、フォトドキュメンテーションし、ハイブリダイゼーションにより分析(ノーザンブラット分析)を行い;
(d)得られたメッセンジャーRNAを逆転写させ、相補的cDNA鎖を合成し;
(e)得られた二本鎖cDNAを、その“インビトロ”増幅を可能とする、プラスミドベクター、コスミドまたはファージベクターへクローンさせ;
(f)ハイブリダイゼーション、特異的抗−EOPA抗体を用いる免疫選択、またはEOPA特異的活性の検出により、EOPAのcDNAを同定および選択し;
(g)PCR(“ポリメラーゼ連鎖反応”)により、または細菌内にこのcDNAを含むベクターで形質転換された細菌を増幅させることにより、標的cDNAを増幅および単離し、次いでcDNA挿入断片を単離するために、適切な制限酵素類で消化させることからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記(c)記載の核酸色素が、“サイバーグリーン”(“Syber Green”、Molecular Dynamics)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記(f)記載のcDNAの増幅が、EOPAをコードするcDNAを含むベクターで形質転換された細菌を増幅させることにより行なわれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記(f)記載のcDNA挿入断片の増幅が、総RNAまたはメッセンジャーRNAおよび特定のオリゴヌクレオチド類を用いる直接PCR増幅、またはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)により行なわれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記(e)記載の、EOPAのcDNAの同定および選択が、ハイブリダイゼーション、または特異的抗−EOPA抗体を用いる免疫−選択により行なわれ、
(a)cDNAライブラリーを増幅させ、各々のクローンの遺伝子物質および/またはたんぱく質物質を毛細管現象によりニトロセルロース膜へ移し;
(b)放射線標識されているかまたはされていない、最終段階で得られた膜およびプローブを用いハイブリダイゼーション分析を行なうか、または特異的抗体を用い陽性クローンを同定し;
(c)用いられたプローブまたは抗体に対し陽性のクローンを同定し、後ほどの増幅のために、単離されたこれらのクローンを収集し、各々のcDNA挿入断片を配列決定することからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
EOPAをコードするcDNAを適切な制限酵素で消化させて得た、前記(f)記載の約600塩基対の断片が、“インサイチュ”ハイブリダイゼーションによる脳でのEOPAの分布分析に用いられたプローブの合成に用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
用いられた制限酵素が、EcoRIおよびXbaIであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
cDNA挿入断片が、各々のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を決定するために完全に配列決定され、そのアミノ酸配列の1次および2次構造がまた分析され;さらにその決定された配列がまた、特殊データバンクに寄託された相同配列をサーチするために用いられることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物に由来した各々のたんぱく質およびその核の1次構造を決定するために特に用いられることを特徴とする請求項1から8記載の方法。
【請求項10】
約600塩基対の断片を含むことを特徴とする、EOPAをコードするcDNA挿入断片。
【請求項11】
cDNA挿入断片を完全に配列決定することによって、核の1次構造および推定アミノ酸配列を決定することができ、従ってこのたんぱく質の配列の1次構造および2次構造を分析することを可能とすることを特徴とする請求項10記載のcDNA挿入断片。
【請求項12】
全長を完全に配列決定することによって、特殊データバンクに寄託された他の配列との相同性分析を可能とすることを特徴とする請求項10および11記載のcDNA挿入断片。
【請求項13】
“インサイチュ”ハイブリダイゼーションによる脳でのEOPAの分布分析に用いられるプローブの合成に用いられることを特徴とする請求項10記載のcDNA挿入断片の使用。
【請求項14】
請求項1に従って単離および同定されたcDNAを用い、特に細菌を用いる、ヒト組み換えEOPAの生成方法であって、
(a)EOPAが、アンカーたんぱく質類またはオリゴペプチド類に結合された融合たんぱく質類として、または組み換え分子として生成されるように、EOPAをコードする、同定および単離されたcDNAを発現ベクター内へインフレーム(in frame)でサブクローンし;
b)前記(a)記載の、インフレームでクローンされたEOPAをコードするcDNA挿入断片を含む、前記プラスミドベクター構造体、即ち発現ベクターで宿主細菌(Escherichia coli菌株DHαまたはBL21(DE3)、またはその類似菌株)を形質転換させ;
c)前記形質転換された細菌を、560〜600nm(波長)での吸光度値が約0.6になるまでに、選択用抗生物質を含むLB培地のような適切な培地で、生育により増幅させ;
d)IPTG(イソプロピル−チオガラクトシダーゼ)のような誘導物質を最終濃度約0.1〜1mMになるまで添加し、振盪しながら30または37℃でインキュベートすることによって標的たんぱく質を生成し;
e)遠心分離により発現された標的たんぱく質を含む細菌を収集し、それを−20℃で貯蔵するかまたはすぐに処理し、その際に超音波または機械的な圧力によりそれを崩壊させ、細菌細胞質に存在する組み換えまたは融合たんぱく質を放出し;
f)アフィニティーカラム、電気泳動または液体クロマトグラフィーを用い融合たんぱく質を回収および精製し;
g)ポリアクリルアミドゲル(SDS/PAGE)での電気泳動、UV/vis検出器を備えたHPLC、ウエスタンブロット、質量分析、および/または天然および/または合成ペプチド基質類を用いて酵素反応速度により特異的活性を決定する方法により、組み換えたんぱく質の純度および質を評価する
ことからなる方法。
【請求項15】
前記(a)記載のEOPAをコードする、同定および単離されたcDNAが、請求項1から9記載の方法で得られることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記(a)記載のサブクローニングにより、精製を促す、組み換えEOPA、またはアンカーたんぱく質またはポリペプチドとの融合たんぱく質の形態のEOPAの発現が可能になることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記(b)記載の宿主細菌(Escherichia coli)が、DHα菌株またはBL21(DE3)菌株またはその類似菌株であることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記(c)記載の宿主細菌(Escherichia coli)が、DHα菌株またはBL21(DE3)菌株またなその類似菌株であることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記(c)記載の培地が、選択用抗生物質を含むLBであることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記(d)記載の発現の導入が、誘導物質IPTG(イソプロプル−チオガラクトシダーゼ)を添加することによって行われることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記(e)記載の細菌ペレットの処理において、細菌細胞質に存在する融合たんぱく質または組み換えたんぱく質を放出させるために、超音波または機械的な圧力により、細菌を破裂させ;発現されたたんぱく質はアフィニティーカラム、電気泳動または液体クロマトグラフィーにより精製され得ることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項22】
前記(e)記載の細菌が、大腸菌(Escherichia coli)菌株DHαまたはBL21(DE3)、またなその類似菌株であることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項23】
宿主細胞の形質転換が、これらの各々の方法に対し、前もって適切に製造された細菌の電気泳動処理または熱ショック処理により行われ得ることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項24】
融合たんぱく質として発現された組み換えたんぱく質が、ポリ−ヒスチジン融合物に対し固定化ニッケルを、またはGST(グルタチオン−S−転移酵素)との融合物に対しグルタチオン−セファロース樹脂を含むアフィニティーカラムを用い、他の可溶性細菌たんぱく質類(不純物)から分離され得ることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項25】
融合たんぱく質として発現された組み換えたんぱく質が、プロテアーゼによる消化によりアンカーたんぱく質またはポリペプチドから分離され得、アンカーと組み換えたんぱく質との間に共通認識配列が前もって挿入されていることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
用いられるプロテアーゼが、トロンビン、因子Xおよびエンテロキナーゼであることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
EOPA遺伝子が、Lis1遺伝子と同じクロモソーム(17p13.3)で、p53位置(約0.7cM距離)に比較的に近接したクロモソーム17p12.9に位置し、約40kbを含み、9エキソンおよび10イントロンからなり;転写調節因子に対する複数の認識部位が遺伝子のプロモーター領域で見られる、EOPA遺伝子の1次構造の決定方法。
【請求項28】
AP1,cMyb,SP1,nMyc,cMycのような転写調節因子に対する推定結合部位が、プロモーター領域を含むEOPA遺伝子の上流領域で同定されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
ヒトEOPA遺伝子の全配列が、特殊データバンクでアクセス可能なヒトゲノム全配列の分析により決定されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項30】
ヒトEOPA遺伝子の完全な1次構造が、請求項1から9記載の方法により決定されることを特徴とする請求項27から29記載の方法。
【請求項31】
Lis1遺伝子と同じクロモソーム(17p13.3)で、p53位置(約0.7cM距離)に比較的に近接したクロモソーム17p12.9に位置し、約40kbを含み、9エキソンおよび10イントロンからなり;転写調節因子に対する複数の認識部位が遺伝子のプロモーター領域で見られるヒトEOPA遺伝子。
【請求項32】
転写調節因子が、AP1,cMyb,SP1,nMyc,cMycであることを特徴とする請求項31記載の遺伝子。
【請求項33】
ヒトEOPAの1次構造に係ることを特徴とする請求項31および32記載の遺伝子。
【請求項34】
天然EOPAのアミノ酸配列の単離、精製および決定方法であって、
(a)1:3の割合[重量:体積]で0.25Mのde sacaroseを含む10mMのTris−HCl(pH7.5)バッファ中に新しい組織を均質化し;
(b)そのサンプルに対し,25,000xgで15分、そして100,000xgで1時間超遠心分離を行い;
(c)変性条件でポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS/PAGE)によりサイトゾル分画(上清)を分析し、BradfordまたはLaemmliの方法によりたんぱく質を定量し、特異的抗体を用いウエスタンブロットを行い;
(d)流速0.25ml/分の、0.5MのNaClを含む20mMのTris−HCl(pH7.4)バッファを用いる液体クロマトグラフィーシステム(Akta−Amersham Biosciences)と結合されているSuperoseカラムを用い、ゲルろ過クロマトグラフィーによりサイトゾル分画を分別し;
(e)前記バッファ中に溶解された標準たんぱく質を用い予め目盛りを決めたカラムに基づき、相対的分子量を決定し;
(f)消光蛍光ペプチド類、またはHPLCシステム類および天然ペプチド基質類を用いて、その特異的酵素活性を蛍光定量法により決定することによって天然EOPAを含む分画を同定し;
(g)0.5MのNaClを含む20mMのTris−HCl(pH7.4)バッファを用いるUV検出器に結合されているHPLCシステムを用いて天然EOPAを精製し、純粋なEOPAに相応するピークを手動に収集し、前記EOPAは凍結乾燥により濃縮され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析されることからなる方法。
【請求項35】
前記(a)で均質化される新しい組織が、脳に由来したものであることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記(g)で見られた純粋な天然EOPAに相応するHPLCのピークが、約40kDaの単一のバンドを示すことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項37】
天然EOPAの精製が、抗−EOPA抗体のN−末端の共有結合に対し、予め活性化されたCHセファロース4b樹枝を用いて製造された免疫親和性カラム類により行われ得ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項38】
純粋な天然EOPAが、20mMのNaClを含む、50mMのTris−HCl(pH8.0)バッファ中の2M NaIを用いて、その活性形態で輸出され得ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項39】
EOPAの1次配列が、質量分析法により決定され得、ここでデータは先ず割合(m/z)をスキャンすることにより、4重線(quadrupolo)(ES−MS)から得られ得、配列決定は、第1の4重線で特性決定されたプロトン化イオンを持つペプチド類を選択することにより、第2の4重線(ES−MS/MS)を用いて行われ得、次いで衝突誘導解離(CID)により断片化が行われ得ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項40】
質量分析計(ES−MS/MS)が、陽イオン化モードで作動し、データ収集用ソフトウェアを用い、エレクトロスプレーイオンソースを備えていることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項41】
配列決定が、質量分析計(LC−ESMS/MS)に結合されたHPLCシステムにより行われ得ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項42】
たんぱく質のアミノ末端が、エドマン分解法により配列決定され得るか、またはアミノ酸組成分析から推定され得ることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項43】
1次配列が、質量分析法により決定され得、ここでデータは先ず割合(m/z)をスキャンすることにより、4重線(ES−MS)から得られ得、配列決定は、第1の4重線で特性決定されたプロトン化イオンを持つペプチド類を選択することにより、第2の4重線(ES−MS/MS)を用いて行われ得、次いで衝突誘導解離(CID)により断片化が行われ得ることを特徴とする、天然EOPAのアミノ酸配列。
【請求項44】
純粋な天然EOPAに相応するHPLCピークが、約40kDの単一バンドを示すことを特徴とする、天然EOPAを含む分画。
【請求項45】
多クローン性抗−EOPA抗体類の生成方法であって、その抗体は特にマウスで生成された抗−ヒトEOPA多クローン性抗体類であり、
(a)動物の脳に由来した精製された天然EOPAで免疫化することにより、または細菌で生成される活性組み換えたんぱく質を用いることにより、多クローン性抗体類を生成し;
(b)7〜8週齢の、体重18〜22gのBalb−CまたはHighIIIマウスを免疫化し;
(c)4回の免疫化それぞれにおいて、水酸化アルミニウム、[Al(OH)]または不完全フロインドアジュバント上に吸収された形態の、精製されたたんぱく質2μgまたは組み換えたんぱく質3μgを毎週または毎月の間隔で皮内注射し;
(d)最後の免疫化が終わってから1週間または1ヶ月後、血液サンプルを収集し、血精は−20℃で保存され得;
(e)適切な抗原を用い、抗血精の力価をELISAおよびウエスタンブロットにより評価し;
(e)基質として天然ペプチドブラジキニンまたは蛍光基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpを用い(その分割はHPLCおよび/または蛍光定量法によりモニターされる)抗−EOPA抗血清を評価し、抗−血清の、EOPAペプチダーゼ活性遮断能力を検証することからなる方法。
【請求項46】
EOPAに対する多クローン性抗体の生成が、マウスで生成された抗−ヒトEOPAに対し特異的であることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項47】
請求項45および46記載の方法により得られることを特徴とする抗−EOPA多クローン性抗体。
【請求項48】
天然ペプチドおよび/または合成蛍光基質類を用いる反応速度分析が行われることを特徴とする、EOPAの生化学的特性およびたんぱく分解特性の決定方法。
【請求項49】
天然および組み換えたんぱく質の両方が、正確に同じ酵素的および生化学的特性を示すことを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
EOPAが、チオルにより活性化され、EOPAに不感性で、約40kDaの分子量を示し、70kDaより高い分子量の複合体類を生成する他のサイトゾルたんぱく質類と結合された状態で見られる、エンドペプチダーゼであることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項51】
天然EOPAおよび各々の組み換えたんぱく質が、7〜13アミノ酸残基のペプチド類を選択的に加水分解することができ、両方とも5.22〜5.50の等電点を有することを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項52】
天然および組み換えたんぱく質の両方が、ブラジキニンのPhe−SerボンドおよびニューロテンシンのArg−Argボンドを特異的に加水分解し、それらの配列にエンケファリン類を含む幾つかのオピオイドペプチド類から[Met]−または[Leu]−エンケファリン類を放出することを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項53】
EOPAの基質類が、幾つかの神経ペプチド類又はこれらの誘導体類であり、分割可能なペプチドボンドを予測するために基質と酵素との相互作用のサブサイトを決定することはできないということを示し、EOPAのたんぱく分解作用のための基質の大きさと立体配置との厳密な関連性が証明されることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項54】
EOPAが、還元剤ジチオトレイトル(DTT)により活性化され、かつチオル化合物類のようなシステイニルプロテアーゼの古典的阻害薬により阻害されるため、チオル−依存的酵素である、EOPA阻害薬類の同定方法。
【請求項55】
チオル化合物類がp−クロローメルクリ案臭香酸塩(PCMB)および5’−ジチオービス−(2−ニトロ案息香酸塩)(DTNB)であることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
チオル−反応性基[Npys](S−(3−ニトロ−2−ピリジン−スルフェニル)で標識された、ジノルフィンの誘導体類のような、この酵素基質の模倣化合物を用いて、部位特異的阻害薬と非可逆的に反応する、触媒部位に近接した重要なシステイン残基の存在を同定することを特徴とする請求項54および55記載の方法。
【請求項57】
酵素の反応性SH基が、部位特異的阻害薬に存在するチオル反応性基[Npys](S−(3−ニトロ−2−ピリジン−スルフェニル)と非可逆的に反応することは、この酵素がシステイニルプロテアーゼであることを示唆することを特徴とする請求項54および55記載の方法。
【請求項58】
EOPAが、EDTAに不感性で、かつチオルにより活性化されたエンドオリゴペプチダーゼであることを特徴とする請求項54および55記載の方法。
【請求項59】
EOPAが、チメットオリゴペプチダーゼ(TOP)に特異的なcFPから合成された誘導体である、JA2(N−[1(R,S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル]−A−α−アミノ酪酸-Y−p−アミノ案臭香酸塩)およびcFP(N−[1(R,S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル]のような金属プロテア−ゼ阻害薬類により阻害されることを特徴とする請求項54および55記載の方法。
【請求項60】
両方の化合物(JA2およびcFP)がまた、類似のKi(〜17nM)をもって、EOPAの触媒活性を阻害することを特徴とする請求項54および55記載の方法。
【請求項61】
請求項48記載の方法に基づき行われることを特徴とする請求項54から60に記載の方法。
【請求項62】
チオルにより活性化され、かつEDTAに不感性で、約40kDaの分子量を示し、70kDaより高い分子量の複合体類を生成する他のサイトゾルたんぱく質類と結合された形態で見られる、エンドペプチダーゼであること特徴とする組み換えたんぱく質。
【請求項63】
7〜13アミノ酸残基のペプチド類を選択的に加水分解することができ、それらの両方が5.22〜5.50の等電点を有することを特徴とする請求項62記載のたんぱく質。
【請求項64】
ブラジキニンのPhe−SerボンドおよびニューロテンシンのArg−Argボンドを特異的に加水分解し、また配列中にエンケファリン類を含む幾つかのオピオイドペプチド類から[Met]−または[Leu]−エンケファリン類を放出することを特徴とする請求項62および63記載の方法。
【請求項65】
還元剤ジチオトレイトル(DTT)により活性化され、かつチオル化合物類のようなシステイニルプロテアーゼの古典的阻害薬により阻害されるため、チオル−依存的酵素であることを特徴とする請求項62から64記載のたんぱく質。
【請求項66】
触媒部位に近接した重要なシステイン残基を示すことを特徴とする請求項62から65記載のたんぱく質。
【請求項67】
抗−EOPA抗体類が、EOPA触媒活性の特異的な阻害薬類(他のペプチダーゼ類、とりわけTOPおよびNLを阻害しない)であり、オリゴペプチド類およびたんぱく質類との相互作用過程を妨げる、EOPAに対する多クローン性抗体類の使用方法。
【請求項68】
請求項45記載の、マウスで生成された抗−ヒトEOPA抗体を用いることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
特異的たんぱく分解活性、免疫組織化学、“インサイチュ”ハイブリダイゼーションおよび/またはノーザンブロットを定量することによりEOPAの分布を決定し得る、EOPAに対する多クローン性抗体の使用方法。
【請求項70】
請求項45記載の、マウスで生成された抗−ヒトEOPA抗体を用いることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項71】
特異的たんぱく質活性を定量することにより分析される複数の組織のうち、腎臓サイトゾルがEOPAの最低のオリゴペプチダーゼ活性を示す一方;チメットオリゴペプチダーゼ(TOP)が、基質Abz−GFAPFRQ−EDDnpが用いられる際に、その組織の総オリゴペプチダーゼ活性の60%を担当することを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項72】
分析される組織類が、脳、精巣、心臓、骨髄、肝臓、肺、骨格筋および腎臓であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
EOPAおよびTOP(チメットオリゴペプチダーゼ)活性が、脳と腎臓を除いて、通常、分析される組織のサイトゾル中に均質に分布されていることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項74】
EOPAが、レット脳のサイトゾルに優先的に分布し、総オリゴペプチダーゼ活性の60%を占めることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項75】
チメットオリゴペプチダーゼ(TOP)活性が、レット脳のサイトゾルで検出されないことを特徴とする請求項74記載の方法。
【請求項76】
EOPAを除いて、このサイトゾルの活性の20%が、NLの活性に起因し、その他の20%が、基質を加水分解する、他の非同定サイトゾル酵素類の作用に起因することを特徴とする請求項74記載の方法。
【請求項77】
EOPAの分布がまた、“インサイチュ”ハイブリダイゼーション分析により決定され、EOPAが脳でより強く発現されることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項78】
EOPAの発現が、脳でより強く、従って皮質、海馬、小脳およびマイルネト(Meynert)の基底核の複数の層でより高い発現レベルを示すことを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項79】
組織および細胞分布に関する免疫組織学的研究で、オピオイドペプチド類およびそれらの前駆体とEOPAとの共存が、中枢神経系で、[Leu]−エンケファリンが豊かな脊椎動物の網膜の神経細胞の軸索および細胞体で同定されることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項80】
EOPAが、他のペプチドメッセンジャー代謝酵素類と類似した形態で、細胞外空間へ分泌されることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項81】
新生児レット類または胚芽類の脳薄片を用いる“インサイチュ”ハイブリダイゼーション研究で、約5日から10日で、主に新生児胚芽の皮質でEOPAをコードするメッセンジャーRNAの転写レベルの増加が表れることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項82】
EOPAが、胚発生時に中枢神経系の形成過程で重大な役割を果たすことを特徴とする、中枢神経系の先天性、感染性および退行性疾病の同定方法。
【請求項83】
同定されたEOPAが、“高次コイル”ドメインの高度に進化された保存を示し、ヒト、ウサギ、マウスおよびレットのような別個の動物で発現されることを特徴とする請求項82記載の方法。
【請求項84】
同定されたEOPAが、異なる複数の動物で発現され、またNude−LまたはNude2として命名されることを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項85】
EOPAの“高次コイル”ドメインが、らせん構造を表し、核および神経細胞の移動に係り、並びに胚発生時に起こる細胞移動過程で重要な機能を果たすことを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項86】
EOPAに相同で、レットから単離されたたんぱく質(Nude2,Genbank Acc. No.NM_133320)、およびEOPAに相同で、マウスから単離されたたんぱく質(Nude−L,GenBank Acc. No.AF323918)がまた、ヒト、ウサギおよびレットEOPAの特異的阻害薬によりたんぱく分解活性を遮断する以外に、EOPAの特性を決定するために用いられる基質に対しオリゴペプチダーゼ活性を示すことを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項87】
培養細胞類でEOPAの役割および分布の決定方法であって、細胞培養物でEOPAの役割の検出および決定が分析により行われ、この分析は、レチノイン酸で処理した後8日目に、軸索突起が形成される際に、分化細胞および肺性小体でEOPAのメッセンジャーRNAの発現増加を同定し、かつ分化プロセスのトリガーリングの調節因子を同定するために、かつ“インビトロ”分化のモデルとして、マウスの胚性癌腫に由来した全能性p19細胞を用いることを特徴とする方法。
【請求項88】
EOPA発現が、神経細胞の分化プロセスでたんぱく質および遺伝子レベルで調節され得ることを特徴とする請求項87記載の方法。
【請求項89】
EOPAたんぱく分解活性が、レット腫瘍(移植可能なレットクロム親和性細胞腫)に由来したPC12細胞類のサイトゾルで主に見られ、そのオリゴペプチダーゼ活性が、FGFまたはレチノイン酸のような化合物類で処理することによりおよび/またはcAMPにより調節されることを特徴とする請求項87記載の方法。
【請求項90】
P12細胞をFGFで処理すると、これらの細胞は神経細胞の表現型へ分化し、軸索のアウットグロースの形成および核周囲(perinucleus)のサイトゾルから軸索突起端へEOPA局在部の移動が表れ、それは細胞間接続部形成および細胞伸長プロセスにおけるEOPAの役割を示唆することを特徴とする請求項87記載の方法。
【請求項91】
MHCIと結合されているエピトップ類の大きさが、EOPAに結合しやすい阻害薬類/ペプチド基質類に必要とされる大きさ(例えば、7〜13アミノ酸残基)と類似していることを特徴とする、免疫学的プロセスでEOPAの役割の決定方法。
【請求項92】
エピトップ類が、この酵素の競合的阻害薬類および/またはEOPAと他の細胞性たんぱく質との結合を調節するリガンド類として行動し;EOPAがまた免疫系の細胞、とりわけ大食細胞類およびリンパ球類で見られるため、EOPAに親和性を示す、オピオイドペプチド類および他の生理活性ペプチド類が中枢神経系および免疫系で同様に作用し得ることを特徴とする請求項91記載の方法。
【請求項93】
神経組織でMHCIの発現が、感染性および退行性プロセス、および中枢神経系の可塑性に係り;ペプチダーゼおよびシャペロン活性の制御またはEOPAのペプチド受容性活性の制御が、直接にEOPAの特異的リガンド類(基質類、阻害薬類および調節物質類)に係ることを特徴とする請求項91記載の方法。
【請求項94】
中枢神経系(CNS)の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法であって、それらの病状の予防および治療のための診断方法でEOPAまたはその断片類の配列を用いる方法。
【請求項95】
請求項61記載のEOPAの同定法に基づく、請求項94記載の方法。
【請求項96】
神経学的、精神医学的、および行動病状の治療、および組織退行のプロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、これらの疾病の予防および治療でEOPAの特異的リガンド類が用いられることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項54および55記載の阻害薬類の同定法に基づく、請求項96記載の方法。
【請求項98】
神経学的、精神医学的、および行動病状の治療、および組織退行のプロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、EOPAのたんぱく分解、シャペロンおよび/または溶解性受容体活性を妨げる、阻害薬類、抗体類および競合物質類化合物が、それらの疾病の診断、予防および治療に用いられ得ることを特徴とする方法。
【請求項99】
請求項54および55記載の阻害薬類の同定方法、および請求項94記載の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法に基づく、請求項98記載の方法。
【請求項100】
神経学的疾病の治療、および組織退行プロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、EOPA阻害薬類の開発が、一般の化合物類または天然毒素類に基づく構造モデルを用いて行われ得ることを特徴とする方法。
【請求項101】
動物毒素で特異的に見られることを特徴とする請求項100記載の方法。
【請求項102】
請求項54および55記載のEOPA阻害薬類の同定方法、および請求項94記載の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法に基づく、請求項100および101記載の方法。
【請求項103】
神経学的疾病の治療、および組織退行のプロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、これらの化合物が、これらの疾病の診断、予防および/または治療に用いられる以外に、EOPAによる神経ペプチド類の不活性化または生体内変化のプロセスを妨げる薬物類または製剤類中に用いられ得ることを特徴とする方法。
【請求項104】
請求項54および55記載の阻害薬類の同定方法、および請求項94記載の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法に基づく、請求項103記載の方法。
【請求項105】
神経学的疾病の治療、および組織退行のプロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、EOPA活性部位から他のペプチド類を転座させるペプチド阻害薬類が用いられることを特徴とする方法。
【請求項106】
請求項54および55記載の阻害薬類の同定方法、および請求項94記載の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法に基づく、請求項105記載の方法。
【請求項107】
神経学的疾病の治療、および組織退行のプロセスのための阻害薬類、競合物質類およびそれらの誘導体類の使用方法であって、リンフォプロリフェレーション(linfoproliferation)のプロセス、またはMHCIが中枢神経系の感染性、退行性および可塑性などに関与し得る任意の他の役割を妨げる阻害薬類を用いることにより、EOPAのたんぱく分解/シャペロン活性を調節することが可能であることを特徴とする方法。
【請求項108】
請求項54および55記載の阻害薬類の同定方法、および請求項94記載の先天性、感染性および退行性疾病の診断、予防または治療法の開発方法に基づく、請求項107記載の方法。
【請求項109】
中枢神経系の先天性、感染性および退行性疾病の診断および/または治療のための、その病状の進行を予防およびモニターするための、免疫化学的および/または酵素的診断方法であって、EOPAのたんぱく分解活性およびEOPAの他の分子特性との相互作用が、阻害薬類および/または基質類により、または免疫グロブリン類を含めて、EOPAに結合する他の分子類により調節されることを特徴とする方法。
【請求項110】
EOPAのペプチダーゼ活性が、天然および合成ペプチド基質類を用いる反応速度分析により決定され得ることを特徴とする、請求項109記載の方法。
【請求項111】
神経学的、精神医学的および神経退行性病状の治療方法であって、EOPAが核および神経細胞の移動プロセスおよび胚発生時に起こる中枢神経系の形成に係ることを特徴とする方法。
【請求項112】
免疫組織化学によるEOPAの組織および細胞での分布が、中枢神経系で、より詳しくは神経細胞の軸索および細胞体で、EOPAとオピオイドペプチド類およびそれらの前駆体類との共存を示すことを特徴とす請求項111記載の方法。
【請求項113】
EOPA分布が、“インサイチュ”ハイブリダイゼーション分析により決定され、従って脳でEOPAのより高い発現が見られることを特徴とする請求項111記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−524983(P2006−524983A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557687(P2004−557687)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/BR2003/000189
【国際公開番号】WO2004/053052
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505212577)
【Fターム(参考)】