説明

ヒンジ装置

【課題】付勢部材によりリッドを開方向に付勢しつつ、全開状態になる際のリッドのばたつきを抑えるヒンジ装置を提供する。
【解決手段】ヒンジ装置100において、固定部40は被固定体に固定される。可動部20は、開閉動作をする。連結部50は、固定部40に可動部20を回動自在に連結する。コイルバネ30は、可動部20を開方向へ付勢する。コイルバネ30は、可動部20にスライド可能に接触して可動部20を付勢する作用片と、固定部40に係着される係着片とを有する。ヒンジ装置100は、可動部20が作用片から付勢力を受ける作用点と可動部20の回動軸との距離が、閉状態から全開状態になるにつれて短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉動作をする可動部を備えるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコンソールボックスにおいて、リッドと収納箱はヒンジ装置により連結される。たとえば特許文献1には、コンソールボックスにおけるリッドの取付構造が開示されており、リッドを取付けるためのヒンジは、ボックス本体部に固定されるヒンジブラケットと、ヒンジシャフトと、リッドが固定され、ヒンジシャフトに回転可能に支持されるヒンジアームと、ヒンジシャフトに挿通された状態で、ヒンジアームを介してリッドを開放する方向へ付勢するスプリングと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−151982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、コンソールボックスが開かれる際、リッドはスプリングによって開方向に付勢されつつ回転し、全開状態になるときにボックス本体部に当たってリッドの回転が止まる。このときスプリングの付勢力によりリッドがボックス本体部から大きく跳ね返ったり、ばたついたりするおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、付勢部材によりリッドを開方向に付勢しつつ、全開状態になる際のリッドのばたつきを抑えるヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のヒンジ装置は、被固定体に固定される固定部と、開閉動作をする可動部と、固定部に可動部を回動自在に連結する連結部と、可動部を開方向へ付勢する付勢部材と、を備える。付勢部材は、可動部にスライド可能に接触して可動部を付勢する作用片と、固定部に係着される係着片と、を有する。このヒンジ装置は、可動部が作用片から付勢力を受ける作用点と可動部の回動軸との距離が、閉状態から全開状態になるにつれて短くなる。
【0007】
この態様によると、付勢部材が可動部を開方向に付勢することで、可動部の開方向への操作を補助することができる。また、作用点と回動軸との距離が短くなるに応じて、可動部を付勢するトルクが弱まるため、可動部が全開状態となったときの可動部のばたつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、付勢部材によりリッドを開方向に付勢しつつ、全開状態になる際のリッドのばたつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るコンソールボックスの斜視図である。
【図2】実施形態に係るヒンジ装置の可動部、連結部および固定部の斜視図である。
【図3】(a)は実施形態に係るコイルバネの斜視図であり、(b)はコイルバネの一部を拡大した斜視図である。
【図4】実施形態に係るヒンジ装置の正面図である。
【図5】実施形態に係るヒンジ装置の裏面図である。
【図6】実施形態に係るヒンジ装置の側面図である。
【図7】実施形態に係る可動部に対する作用点と第1回動軸との最短距離とリッドの開度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。
【0011】
図1は、実施形態に係るコンソールボックス10の斜視図である。コンソールボックス10は、たとえば車両の運転席と助手席の間に配置される。コンソールボックス10は、リッド12、収納箱14およびヒンジ装置100を備える。ヒンジ装置100は、リッド12を収納箱14に対して回動自在に支持する。図1では、収納箱14が全開である状態を示す。リッド12は、全開状態において自立可能であってよい。リッド12により収納箱14の開口14aに蓋をすると、閉状態となる。
【0012】
ヒンジ装置100は、可動部20、コイルバネ30、固定部40および連結部50を備える。固定部40は、被固定体である収納箱14に固定される。可動部20は、リッド12に固定され、リッド12の開閉動作に連動する。連結部50は可動部20を固定部40に回動自在に連結する。連結部50は固定部40に対する可動部20の回動軸を構成する。可動部20、連結部50および固定部40は、樹脂材料により一体に形成される。コイルバネ30は、可動部20を開方向へ付勢する付勢部材として機能する。
【0013】
図2は、実施形態に係るヒンジ装置100の可動部20、連結部50および固定部40の斜視図である。
【0014】
可動部20は、可動基板部22、第1開口部24、第2開口部26、コイルバネ30の作用片がスライドするスライド部28を有する。可動基板部22はリッド12にねじ止めされて固定される。第1開口部24および第2開口部26は同じ第1方向に延在するスリットとして形成される。
【0015】
スライド部28は、第1開口部24および第2開口部26に挟まれた位置に配設され、第1方向に延在する。第1方向は可動部20の回動軸の方向に直交し、第1開口部24、第2開口部26およびスライド部28は並行に設けられる。スライド部28は、可動基板部22の表面より突出した凸形に形成される。係止部25は、コイルバネ30の作用片を係止し、スライド部28のスライド面に凹形に形成される。スライド部28のスライド面は、コイルバネ30の作用片がスライドする面である。
【0016】
固定部40は、固定基板部41、バネ配設部42、連通口44およびバネ支持部48を有する。固定基板部41は、収納箱14にねじ止めされて固定される。バネ配設部42は、コイルバネ30の外周に応じて円弧形状に形成される。バネ配設部42は、連結部50の軸方向(以下、単に「軸方向」という場合がある)に沿って延在する。バネ支持部48は、バネ配設部42の内側の端部に突起形状に形成され、互いに軸方向に向き合って突出している。バネ配設部42の一端部には連通口44が形成される。
【0017】
連結部50は、可動部20および固定部40の間に形成され、可動部20および固定部40より薄肉に形成され、弾性を有する。連結部50の最も薄い箇所およびその近傍が、可動部20の第1回動軸となる。この連結部50により、新たにシャフトを設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。
【0018】
図3(a)は実施形態に係るコイルバネ30の斜視図である。図3(b)はコイルバネ30の一部を拡大した斜視図である。コイルバネ30は、作用片32、係着片34およびバネ本体部36を有する。バネ本体部36は、コイル状に巻回され、ねじれに応じて付勢力を発生する。係着片34は、バネ本体部36の一端から延出し、固定部40のバネ受け部に係着される。
【0019】
作用片32は、バネ本体部36の他端から棒状に延出する。作用片32は、バネ本体部36が有する第2回動軸を回動中心として回動可能であり、可動部20のスライド部28にスライド可能に接触して可動部20を付勢する。作用片32は、延出した末端にフック形端部38を有する。
【0020】
図3(b)に示すように、フック形端部38は、作用片32の先端から順に3箇所折れ曲がっており、第1曲折点38a、第2曲折点38bおよび第3曲折点38cを有する。
先端から第1曲折点38aまでに第1腕部38fが形成され、第1曲折点38aにより第1腕部38fから直交して折れ曲がって、第1曲折点38aおよび第2曲折点38bの間に腹部38dが形成される。フック形端部38の腹部38dは軸方向に延びている。フック形端部38の腹部38dはスライド部28に接触し、コイルバネ30が可動部20に作用する作用点となる。
【0021】
第2曲折点38bにより腹部38dから直交して折れ曲がって、第2曲折点38bから第3曲折点38cの間に第2腕部38eが形成される。第1腕部38fおよび第2腕部38eは、腹部38dの両端からそれぞれ延出し、同じ第2方向に延びるように対向する。第1腕部38fおよび第2腕部38eは、腹部38dに直交する。
【0022】
図4は、実施形態に係るヒンジ装置100の正面図を示す。図5は、実施形態に係るヒンジ装置100の裏面図を示す。ヒンジ装置100の正面は、ヒンジ装置100のコンソールボックス10への組み付け後に視認可能な箇所であり、ヒンジ装置100の裏面は、コンソールボックス10に密着して視認できない箇所である。なお図4および図5に示す可動部20は少し傾斜した状態である。
【0023】
バネ本体部36の両端はバネ支持部48に外挿されて支持されている。バネ本体部36は正面から視認するとバネ配設部42に覆われた状態である。係着片34は、固定部40のバネ受け部46に係着され、作用片32が受けた力を固定部40から受ける。
【0024】
作用片32は、連通口44から出て、フック形端部38の腹部38dがスライド部28に当接している。スライド部28は、作用片32のスライド方向に沿って延在する。腹部38dはスライド部28のスライド面をスライドする。作用片32のスライド方向は軸方向に直交する。
【0025】
図4および図5では、全開状態のヒンジ装置100を示しており、係止部25に作用片32のフック形端部38が係止された状態を示す。これにより、フック形端部38がぶれることなく全開状態を維持することができる。また、リッド12が全開状態となったときのばたつきを抑えることができる。
【0026】
フック形端部38は、第1腕部38fおよび第2腕部38eでスライド部28を挟持するように、スライド部28に引っ掛けられている。これにより、車体に振動が発生した場合等に、フック形端部38がスライド部28からはずれる可能性を低減することができる。第1腕部38fが第2開口部26に遊嵌され、第2腕部38eが第1開口部24に遊嵌される。これによりスライド部28をスライド面から深く引っ掛けることができ、フック形端部38がスライド部28からはずれる可能性をより低減することができる。
【0027】
図6は、実施形態に係るヒンジ装置100の側面図である。図6では、全開状態および閉状態のヒンジ装置100を示す。可動部20が固定部40に対して略直角に曲がった状態が閉状態であり、可動部20が固定部40に対して立設した状態が全開状態である。
【0028】
固定部40は、収納箱14に固定され、裏面から突出する固着部49は収納箱14に固着される。固定基板部41は収納箱14により略鉛直に保持される。固定部40の裏面には段部47が形成され、段部47は収納箱14に形成された角に係合される。
【0029】
連結部50は可動部20および固定部40より薄肉に形成されており、第1回動軸52が可動部20の回動中心となる。
【0030】
閉状態において可動部20は第1回動軸52から曲がっている。閉状態ではコイルバネ30に予めセット荷重が付与されており、コイルバネ30はフック形端部38の腹部38dを作用点として、可動部20を開方向(図中の時計回り方向)に付勢する。フック形端部38の腹部38dは、スライド部28の平らなスライド面に接触している。
【0031】
閉状態において可動部20は第1回動軸52から曲がっており、ユーザのリッド12を開方向に動かす作用に応じて第1回動軸52で回転して全開状態となる。リッド12および可動部20はコイルバネ30により開方向に付勢されるため、ユーザが開くのに必要な力を軽減することができる。リッド12は閉状態から全開状態になるまでに約90度回転する。
【0032】
作用片32は、バネ本体部36が有する第2回動軸を支点として回動する。第2回動軸は、バネ本体部36上にあり、連結部50と異なる軸上に配設される。
【0033】
リッド12およびヒンジ装置100が全開状態となるときに、リッド12が全開位置で収納箱14などから閉方向の反力を受けてばたつくおそれがある。全開状態となったときのリッド12のばたつきを抑えるには、リッド12に加わる開方向への力を全開状態になるにつれて徐々に小さくすることが好ましい。ここで閉状態から全開状態になるに従って、バネ本体部36のねじれが小さくなるためコイルバネ30の付勢力は減少する。さらに実施形態においてヒンジ装置100は、可動部20と作用片32とが接触する作用点と連結部50の第1回動軸52との最短距離が、閉状態から全開状態になるにつれて短くなるように定められる。またヒンジ装置100は、可動部20と作用片32とが接触する作用点と連結部50の第1回動軸52との最短距離が、閉状態より全開状態のほうが短くなるように定められる。この作用点と第1回動軸52との最短距離とリッド12の開度との関係を以下に示す。
【0034】
図7は、実施形態に係る可動部20の回転動作を模式的に示す図である。リッド12が閉状態S1のとき、固定部40と可動部20が直交した状態である。一方、リッド12が全開状態S2のとき、可動部20が立った状態である。
【0035】
図7では、閉状態S1から全開状態S2までの作用点(腹部38d)の軌跡60を示し、軌跡60の回転中心はバネ本体部36の第2回動軸である。また、軌跡62は、閉状態S1での腹部38dと可動部20の接触点と第1回動軸52との距離を一定に保っており、軌跡62の回動中心は第1回動軸52である。軌跡62と第1回動軸52との最短距離は、閉状態S1のときの最短距離D1と同じである。所定の可動部20の回転角における軌跡60と軌跡62との距離差は、閉状態S1から全開状態S2までに腹部38dがスライドした距離とほぼ同じである。
【0036】
閉状態S1のときの最短距離D1は、全開状態S2のときの最短距離D2より長い。ここで、可動部20はコイルバネ30の付勢力により回転方向にトルクを受け、そのトルクは最短距離およびコイルバネ30の付勢力に比例する。したがって、閉状態S1から全開状態S2になるにつれて最短距離が短くなっていくため、最短距離に比例して可動部20にコイルバネ30が付与するトルクが減少する。これにより、全開状態となる直前の可動部20に開方向に付与するトルクを小さくすることができ、リッド12のばたつきを抑えることができる。
【0037】
全開状態となった場合のコイルバネ30の付勢力はゼロに設定されてよい。これにより、全開状態となったときのリッド12のばたつきをより抑えることができる。
【0038】
全開状態となったとき、フック形端部38の腹部38dはスライド面から係止部25に落ち込む。この落ち込みにより、全開状態となったときのクリック感を生じさせることができる。
【0039】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0040】
たとえば、コイルバネ30の代わりに板バネを用いてもよい。この板バネはコイルバネ30と同様に、一端が固定部40に係着され、他端が可動部20にスライド可能に設けられる。
【符号の説明】
【0041】
10 コンソールボックス、 12 リッド、 14 収納箱、 20 可動部、 22 可動基板部、 24 第1開口部、 25 係止部、 26 第2開口部、 28 スライド部、 30 コイルバネ、 32 作用片、 34 係着片、 36 バネ本体部、 38 フック形端部、 40 固定部、 41 固定基板部、 42 バネ配設部、 44 連通口、 46 バネ受け部、 47 段部、 48 バネ支持部、 49 固着部、 50 連結部、 52 第1回動軸、 100 ヒンジ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定体に固定される固定部と、
開閉動作をする可動部と、
前記固定部に前記可動部を回動自在に連結する連結部と、
前記可動部を開方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記可動部にスライド可能に接触して前記可動部を付勢する作用片と、前記固定部に係着される係着片と、を有し、
前記可動部が前記作用片から付勢力を受ける作用点と前記可動部の回動軸との距離が、閉状態から全開状態になるにつれて短くなることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記可動部は、全開状態において前記作用片を係止する係止部を有することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記可動部は、前記作用片がスライド可能に接触するスライド部を有し、
前記係止部は、前記スライド部のスライド面に凹形に形成されることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記スライド部は、前記作用片のスライド方向に沿って延在し、前記可動部に凸形に形成され、
前記作用片は、フック形端部を有し、
前記フック形端部は、前記スライド部に引っ掛けられていることを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62733(P2012−62733A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209987(P2010−209987)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】