説明

ヒンジ

【課題】連結する対象物から取り外す、あるいは付勢部材を交換するといった作業を伴わずに付勢部材の付勢力を容易に調整することが可能なヒンジを提供する。
【解決手段】ヒンジ100に、複合機1の本体2に固定される下部固定部材110と、下部固定部材110に対する位置を変更可能かつ固定可能に下部固定部材110に支持されるカム部材180と、下部固定部材110に回動可能に連結されるとともに複合機1の原稿圧着板3に固定される第二ウイング部材と、第二ウイング部材に支持されつつカム部材180に接近する方向およびカム部材180から離間する方向に移動可能な第一スライダ40と、第一スライダ40をカム部材180に接近する方向に付勢することにより第一スライダ40をカム部材180に当接させる一対のバネ60・60と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を具備するとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。
原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものであり、一般的には原稿圧着板の端部がヒンジにより事務機器の本体の上面の端部に回動可能に連結される。
【0003】
このような原稿圧着板は、原稿を原稿読み取り部に密着させるためにある程度の重量を要する。また、原稿圧着板が原稿自動送り装置(Auto Document Feeder;ADF)を具備する場合、原稿圧着板の重量は更に増大する。
従って、従来の事務機器の本体と原稿圧着板とを連結するヒンジは、事務機器の本体に固定される取り付け部材と、原稿圧着板に固定される支持部材と、これらの部材の間に配置されるバネと、を具備し、当該バネの付勢力で原稿圧着板の重量を支えることにより、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持し、ひいては作業者が原稿圧着板を回動(開閉)させて原稿読み取り部へ原稿を載置する作業を容易にしている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
また、事務機器の分野では、消費者のニーズに応じて(α)「原稿圧着板に原稿自動送り装置を備えているもの」と(β)「原稿圧着板に原稿自動送り装置を備えていないもの」の両方を製造する場合がある。
この場合、(α)および(β)の事務機器の本体側の装置構成はほとんど同じであるが、原稿自動送り装置の重量はかなり重い(原稿圧着板の重量に対して無視できない)。
そのため、(α)および(β)の間では原稿圧着板(あるいは、原稿圧着板および原稿自動送り装置を合わせたもの)の自重に起因してヒンジに作用する回転力(トルク)が大きく異なる。
従って、同一のヒンジで(α)および(β)の両方の場合について「原稿圧着板(あるいは、原稿圧着板および原稿自動送り装置を合わせたもの)の自重に起因してヒンジに作用する回転力」および「バネの付勢力に起因してヒンジに作用する回転力」のバランスをとる、ひいては事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持することは困難である。
【0005】
上記問題を解消する方法の一つとしては、付勢力が異なる二種類のバネを用意し、当該二種類のバネの一方を(α)に対応するヒンジに組み込み、他方を(β)に対応するヒンジに組み込む方法が考えられる。
しかし、この方法では、事務機器を製造する現場において事務機器の仕様(原稿自動送り装置の有無)に応じてヒンジに異なる種類のバネを組み込む作業を行う必要があり、バネを組み込む作業が煩雑になる。
また、事務機器を製造する現場において管理しなければならない部品の数(種類)が増え、管理が煩雑になる(管理コストが上昇する)。
【0006】
また、事務機器の使用者(購入者)が、事務機器の使用状況の変化等の理由から、原稿自動送り装置を後で購入し、事務機器に組み付ける(事務機器の仕様を(β)から(α)に変更する)場合もある。
このような場合には、ヒンジを事務機器から取り外し、ヒンジを分解して別の種類のバネを組み込む(バネを交換する)作業を要し、非常に煩雑である。
【0007】
上記問題を解消する方法として、バネの付勢力を調整する機構(付勢力調整機構)をヒンジに備える方法が考えられる。このような機構を備えるヒンジとしては、特許文献2から特許文献4に記載のヒンジが知られている。
【0008】
特許文献2に記載のヒンジ(原稿圧着板開閉装置)は、事務機器の本体に取り付けられる取り付け部材と、取り付け部材に回動可能に取り付けられるとともに原稿圧着板を指示する支持部材と、取り付け部材と支持部材との間にスライド可能に設けられた一対のスライダと、一対のスライダに収容されるとともに一対のスライダを取り付け部材および支持部材にそれぞれ押し付けて原稿圧着板を開成方向に回転付勢するコンプレッションスプリングと、を備え、一対のスライダの少なくとも一方にコンプレッションスプリングの弾力を調節する弾力調節手段を設け、弾力調節手段は、一方のスライダ内に回転可能に設けられるとともにコンプレッションスプリング内に延びるアジャスト部を有する操作プレートと、操作プレートのアジャスト部に軸方向に移動可能に設けられて軸周りに回転しないとともにコンプレッションスプリングの端部が当接するアジャストプレートと、操作プレートに設けられるとともに一方のスライダに設けられた貫通孔から外部に露出される操作部とを有する。
作業者が特許文献2に記載のヒンジ(原稿圧着板開閉装置)の一方のスライダの外部から貫通孔に工具あるいは指を差しこんで操作部を操作することにより、操作プレートが回転し、実質的には操作プレートのアジャスト部に螺装されるアジャストプレートがコンプレッションスプリングの長手方向(伸長・収縮する方向)に移動する。
その結果、取り付け部材に対して支持部材がある回動角度を成すときのコンプレッションスプリングの全長が変化し、ひいてはコンプレッションスプリングの弾力が調整される。
【0009】
特許文献3に記載のヒンジ(ヒンジ装置)は、装置本体に取り付けられる取り付け部材と、取り付け部材にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられるとともに原稿圧着板を支持する支持部材と、支持部材と取り付け部材との間に弾設されたコンプレッションスプリングと、コンプレッションスプリングの内部に収装され取り付け部材と支持部材の自由端側との間の一方又は双方にその基部を揺動可能に取り付けたダンパーとから成り、ダンパーに軸方向に移動可能にアジャストプレートを取り付け、アジャストプレートと支持部材あるいは取り付け部材との間にコンプレッションスプリングを弾設する。
作業者が特許文献3に記載のヒンジ(ヒンジ装置)のダンパーを工具等を用いて回転させることにより、ダンパーが回転し、実質的にはダンパーに螺装されるアジャストプレートがコンプレッションスプリングの長手方向(伸長・収縮する方向)に移動する。
その結果、取り付け部材に対して支持部材がある回動角度を成すときのコンプレッションスプリングの全長が変化し、ひいてはコンプレッションスプリングの弾力が調整される。
【0010】
特許文献4に記載のヒンジは、自動原稿給送装置に固定される可動部材と、装置本体に固定されるとともに可動部材に回転可能に連結される不動部材と、可動部材に収容された一対のハウジング(スライダ)と、一対のハウジングの間に配置されるバネと、可動部材に対する一方のハウジングの位置を規制する調整ネジと、を備える。
調整ネジは可動部材に螺装されており、工具を用いて調整ネジを回転させることにより可動部材に対する一方のハウジングの位置(バネの長手方向における位置)が変化する。
その結果、不動部材に対して可動部材がある回動角度を成すときのバネの全長が変化し、ひいてはバネの弾力が調整される。
【0011】
特許文献2から特許文献4に記載のヒンジは、いずれも実質的には「バネの一端部」と「バネの一端部を支持する部材」との間に「別の部材(バネの付勢力を調整する機構を成す部材)」を配置し、「別の部材」を「バネの一端部を支持する部材」に螺装し、「別の部材」が「バネの一端部を支持する部材」に対して相対的に回転することにより「別の部材」が「バネの一端部を支持する部材」に対して移動し、ひいてはバネの全長を変化させる。
特許文献2から特許文献4に記載のヒンジは、ヒンジを事務機器等の対象物から取り外す、あるいはバネを交換するといった作業を伴わずにバネの付勢力を調整することが可能である。
【0012】
しかし、特許文献2から特許文献4に記載のヒンジにおける付勢力調整機構は、バネの経年劣化によるバネの付勢力の変化を微調整する、あるいはヒンジを構成する部材の組み立て精度等に起因するバネの付勢力のバラツキを微調整する等、バネの付勢力を微調整することを目的とする。
そのため、原稿圧着板に具備されるADFの有無に応じてバネの付勢力を大幅に変更する場合には適用できない。あるいは、仮に適用できたとしても、「別の部材」を「バネの一端部を支持する部材」に対して相当に大きな角度分だけ(例えば数回転、十数回転分等)回転させなければならず、作業が煩雑になる。
【0013】
また、特許文献2から特許文献4に記載のヒンジの場合、バネがヒンジに取り付けられている間は常にバネの弾力(付勢力)が「別の部材」と「バネの一端部を支持する部材」とが螺合する部分(ネジ山)に作用する。
そのため、「別の部材」を「バネの一端部を支持する部材」に対して相対回転させるために要する力が大きい。
【0014】
特許文献5に記載のヒンジ(ヒンジ装置)は、相対的に回動自在となるよう回転軸で連結される第1、第2の取り付け部材と、一端が第1の取り付け部材に軸承されるとともに他端が第2の取り付け部材に軸承され取り付け部材の回動動作に応じて伸縮かつ揺動自在の緩衝部材と、緩衝部材の少なくとも一端に連結され緩衝部材の揺動運動に応じて回転する回転部材と、回転部材に接して緩衝部材の揺動運動を制動するフリクション部材と、を備える。
また、第1、第2の取り付け部材のうち回転部材を支持するものには、実質的には一対の長孔からなる一対のスリット状軸受けが形成された部材(押し台26)が回動可能に支持される。回転部材の両端部はそれぞれ一対のスリット状軸受けに回転可能かつスリット状軸受けの長手方向に移動可能に係止される。
一対のスリット状軸受けが形成された部材が第1、第2の取り付け部材のうち回転部材を支持するものに対して回動することにより、回転部材の軸線とフリクション部材の軸線とを結ぶ線と一対のスリット状軸受けの長手方向の成す角度(θ2)が変化し、第1の取り付け部材に対して第2の取り付け部材がある回動角度を成すときのバネ(緩衝部材)の全長が変化し、ひいてはバネの弾力が調整される。
【0015】
しかし、特許文献5に記載のヒンジは、第1、第2の取り付け部材が相対的に回動するときに緩衝部材(バネ)が揺動し、第1、第2の取り付け部材の外部に突出する。
ヒンジの回動角度に応じてヒンジの外部に突出する部材があることは、他の部材等との干渉を防止する観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−212910号公報
【特許文献2】特開2009−58790号公報
【特許文献3】特開2004−101620号公報
【特許文献4】特開2002−202640号公報
【特許文献5】特開平10−220093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、連結する対象物(第一連結対象物および第二連結対象物)から取り外す、あるいは付勢部材を交換するといった作業を伴わずに付勢部材の付勢力を容易に調整することが可能なヒンジを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0019】
即ち、請求項1においては、
第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材に対する位置を変更可能かつ固定可能に前記第一ウイング部材に支持されるカム部材と、
前記第一ウイング部材に回動可能に連結されるとともに第二連結対象物に固定される第二ウイング部材と、
前記第二ウイング部材に支持されつつ前記カム部材に接近する方向および前記カム部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記カム部材に接近する方向に付勢することにより前記スライド部材を前記カム部材に当接させる付勢部材と、
を具備するものである。
【0020】
請求項2においては、
前記カム部材は、
両端部が前記第一ウイング部材に形成された一対の第一長孔に貫装され、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対して所定の移動方向に移動可能に支持され、一対の第二長孔が形成され、前記一対の第二長孔には前記当接部材が貫装される移動部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記移動部材の前記移動方向における位置である移動位置を変更するとともに前記移動部材を前記第一ウイング部材に固定することが可能な移動位置調整部材と、
を具備し、
前記一対の第一長孔の長手方向、前記一対の第二長孔の長手方向および前記移動方向はいずれも前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸の軸線方向に対して垂直であり、
前記一対の第二長孔の長手方向は前記移動方向に対して傾斜し、
前記一対の第一長孔の長手方向は前記一対の第二長孔の長手方向に対して傾斜するものである。
【0021】
請求項3においては、
前記移動位置調整部材は、
前記第一ウイング部材または前記移動部材の一方に螺装され、
前記第一ウイング部材または前記移動部材の他方に前記移動位置調整部材の軸線方向に相対移動不能かつ前記移動位置調整部材の軸線周りに回転可能に支持され、
前記移動位置調整部材の軸線方向は前記移動方向に対して平行である。
【0022】
請求項4においては、
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備するものである。
【0023】
請求項5においては、
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねるものである。
【0024】
請求項6においては、
前記カム部材は、
一端部が前記第一ウイング部材に回動可能に連結される一対のアーム部材と、
両端部が前記一対のアーム部材の他端部に支持され、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記一対のアーム部材の回動角度であるアーム角度を変更可能かつ固定可能に前記一対のアーム部材を前記第一ウイング部材に固定するアーム角度調整部材と、
を具備するものである。
【0025】
請求項7においては、
前記アーム角度調整部材は、
前記第一ウイング部材において前記一対のアーム部材の回動中心から等距離となる位置に形成される複数のウイング側貫通孔のうちのいずれかに貫装されるとともに、前記一対のアーム部材に形成されるアーム部材側貫通孔に貫装されるピンである。
【0026】
請求項8においては、
前記第一ウイング部材には、前記第一ウイング部材に対する前記一対のアーム部材の回動軸を中心とする円弧状の支持面が形成され、
前記当接部材は前記支持面に当接するものである。
【0027】
請求項9においては、
前記支持面は前記アーム軸を中心とする円弧状の長孔である支持孔の内周面であり、
前記当接部材は前記支持孔に貫装されるものである。
【0028】
請求項10においては、
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備するものである。
【0029】
請求項11においては、
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねるものである。
【0030】
請求項12においては、
前記カム部材は、
両端部が前記第一ウイング部材に支持されるとともに、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記当接部材のカム軸周りの回転角度を変更することが可能であるとともに変更後の前記カム軸周りの回転角度を固定可能な回転角度変更部材と、
を具備し、
前記カム軸は第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸に平行であるものである。
【0031】
請求項13においては、
前記回転角度変更部材は前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に着脱可能に嵌装され、
前記当接部材は前記回転角度変更部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装され、前記回転角度変更部材に形成された係止面と前記嵌合孔の内周面である嵌合面とが当接することにより、前記回転角度変更部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度で相対回転不能に前記第一ウイング部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装されたとき、前記当接部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度ごとに前記第一ウイング部材に対して異なる位置に配置されるものである。
【0032】
請求項14においては、
前記回転角度変更部材および前記当接部材は、一体的に成形されるものである。
【0033】
請求項15においては、
前記回転角度変更部材は前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に着脱可能に嵌装され、
前記当接部材は、前記回転角度変更部材が前記嵌合孔に嵌装されたときの前記カム軸に平行な軸線方向を有するとともに前記カム軸からずれた別の軸周りに回転可能に前記回転角度変更部材に軸支され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装され、前記回転角度変更部材に形成された係止面と前記嵌合孔の内周面である嵌合面とが当接することにより、前記回転角度変更部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度で相対回転不能に前記第一ウイング部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に固定されたとき、前記当接部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度ごとに前記第一ウイング部材に対して異なる位置に配置されるものである。
【0034】
請求項16においては、
前記当接部材は前記カム軸周りに回転可能に前記第一ウイング部材に軸支され、
前記回転角度変更部材は、
前記当接部材に相対回転不能に固定されるウォームホイールと、
前記第一ウイング部材に回転可能に軸支され、前記ウォームホイールに噛合するウォームと、
を具備するものである。
【0035】
請求項17においては、
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備するものである。
【0036】
請求項18においては、
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねるものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、連結する対象物から取り外す、あるいは付勢部材を交換するといった作業を伴わずに付勢部材の付勢力を容易に調整することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るヒンジの第一実施形態から第四実施形態を具備する複合機を示す右側面図。
【図2】本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す斜視図。
【図3】本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面図。
【図4】本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面断面図。
【図5】本発明に係るヒンジの第一実施形態の下部固定部材を示す斜視図。
【図6】本発明に係るヒンジの第一実施形態から第四実施形態の中間部材を示す斜視図。
【図7】本発明に係るヒンジの第一実施形態から第四実施形態の上部固定部材を示す斜視図。
【図8】本発明に係るヒンジの第一実施形態から第四実施形態の第一スライダを示す斜視図。
【図9】本発明に係るヒンジの第一実施形態から第四実施形態の第二スライダを示す斜視図。
【図10】本発明に係るヒンジの第一実施形態のカム部材を示す斜視図。
【図11】本発明に係るヒンジの第一実施形態の当接部材を示す斜視図。
【図12】本発明に係るヒンジの第一実施形態の移動部材を示す斜視図。
【図13】(a)本発明に係るヒンジの第一実施形態の移動位置調整ネジを示す斜視図、(b)本発明に係るヒンジの第一実施形態のナットを示す斜視図。
【図14】(a)当接部材が前下方に移動したときの本発明に係るヒンジの第一実施形態のカム部材を示す右側面断面図、(b)当接部材が後上方に移動したときの本発明に係るヒンジの第一実施形態のカム部材を示す右側面断面図。
【図15】閉じているときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面断面図。
【図16】メンテナンスを行うときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面断面図。
【図17】本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面図。
【図18】本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面断面図。
【図19】本発明に係るヒンジの第二実施形態の下部固定部材を示す斜視図。
【図20】本発明に係るヒンジの第二実施形態のカム部材を示す斜視図。
【図21】(a)本発明に係るヒンジの第二実施形態の一対のアーム部材、アーム軸部材、および当接部材を示す斜視図、(b)本発明に係るヒンジの第二実施形態のアーム角度調整ピンを示す斜視図。
【図22】(a)当接部材が前下方に移動したときの本発明に係るヒンジの第二実施形態のカム部材を示す右側面断面図、(b)当接部材が後上方に移動したときの本発明に係るヒンジの第二実施形態のカム部材を示す右側面断面図。
【図23】閉じているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面断面図。
【図24】メンテナンスを行うときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面断面図。
【図25】本発明に係るヒンジの第二実施形態における下部固定部材の別実施形態を示す右側面断面図。
【図26】本発明に係るヒンジの第三実施形態を示す右側面図。
【図27】本発明に係るヒンジの第三実施形態を示す右側面断面図。
【図28】本発明に係るヒンジの第三実施形態の下部固定部材を示す斜視図。
【図29】本発明に係るヒンジの第三実施形態のカム部材を示す斜視図。
【図30】本発明に係るヒンジの第三実施形態および第四実施形態の当接部材を示す斜視図。
【図31】(a)本発明に係るヒンジの第三実施形態および第四実施形態の当接部材を示す正面図、(b)本発明に係るヒンジの第三実施形態および第四実施形態の当接部材を示す右側面図。
【図32】本発明に係るヒンジの第三実施形態の嵌合部材を示す斜視図。
【図33】(a)本発明に係るヒンジの第三実施形態の左側の嵌合部材を示す正面図、(b)本発明に係るヒンジの第三実施形態の左側の嵌合部材を示す右側面図。
【図34】(a)当接部材が前下方に移動したときの本発明に係るヒンジの第三実施形態のカム部材を示す右側面断面図、(b)当接部材が前上方に移動したときの本発明に係るヒンジの第三実施形態のカム部材を示す右側面断面図。
【図35】閉じているときの本発明に係るヒンジの第三実施形態を示す右側面断面図。
【図36】メンテナンスを行うときの本発明に係るヒンジの第三実施形態を示す右側面断面図。
【図37】本発明に係るヒンジの第四実施形態を示す右側面図。
【図38】本発明に係るヒンジの第四実施形態を示す右側面断面図。
【図39】本発明に係るヒンジの第四実施形態の下部固定部材を示す斜視図。
【図40】本発明に係るヒンジの第四実施形態のカム部材を示す斜視図。
【図41】本発明に係るヒンジの第四実施形態の軸支部材を示す斜視図。
【図42】(a)本発明に係るヒンジの第四実施形態の軸支部材を示す正面図、(b)本発明に係るヒンジの第四実施形態の軸支部材を示す右側面図。
【図43】本発明に係るヒンジの第四実施形態のウォームホイールを示す斜視図。
【図44】(a)本発明に係るヒンジの第四実施形態のウォームホイールを示す正面図、(b)本発明に係るヒンジの第四実施形態のウォームホイールを示す左側面図。
【図45】本発明に係るヒンジの第四実施形態のウォームを示す斜視図。
【図46】(a)当接部材が前下方に移動したときの本発明に係るヒンジの第四実施形態のカム部材を示す右側面図、(b)当接部材が前上方に移動したときの本発明に係るヒンジの第四実施形態のカム部材を示す右側面図。
【図47】閉じているときの本発明に係るヒンジの第四実施形態を示す右側面断面図。
【図48】メンテナンスを行うときの本発明に係るヒンジの第四実施形態を示す右側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では図1を用いて事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
複合機1は本体2および原稿圧着板3を具備する。
また、複合機1はヒンジ100、ヒンジ200、ヒンジ300、ヒンジ400のうちのいずれかを具備する。
【0040】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置および後述するADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0041】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0042】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0043】
以下で詳述するヒンジ100、ヒンジ200、ヒンジ300およびヒンジ400はいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0044】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(図1および図15参照)。
【0045】
以下では、図1から図16を用いて本発明に係るヒンジの第一実施形態であるヒンジ100について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
図2から図4、および図10に示す如く、ヒンジ100は下部固定部材110、中間部材20、第一回動ピン71、一対の軸受け74・74、上部固定部材30、第二回動ピン72、受圧ピン73、第一スライダ40、第二スライダ50、一対のバネ60・60およびカム部材180を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する。
【0046】
図5に示す下部固定部材110は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
本実施形態の下部固定部材110は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
下部固定部材110は底板111、左側板112L、右側板112Rおよび背板116を具備する。
【0047】
底板111は下部固定部材110の下部を成す板状の部材である。底板111は上下一対の板面を有する。底板111の形状は平面視で前後方向にやや長い概ね長方形である。
【0048】
底板111の前端部かつ左右中央部となる部分には貫通孔111aが形成される。貫通孔111aは底板111の上下一対の板面を貫通する。
【0049】
底板111の後半部かつ左半部となる部分には係合孔111bが形成される。係合孔111bは底板111の上下一対の板面を貫通する。係合孔111bは第一の貫通孔と当該第一の貫通孔よりも直径が小さい第二の貫通孔とが前後に連なった形状を有する。
【0050】
本実施形態では、複合機1の本体2の上面後部から上方に突出した係合突起(不図示)を係合孔111bに係合し、ネジ(不図示)を貫通孔111aに貫装し、当該ネジを本体2の上面後部に形成されたネジ孔に螺装することにより、底板111、ひいては下部固定部材110が本体2に固定される(図1参照)。
【0051】
左側板112Lは下部固定部材110の左側部を成す板状の部材である。左側板112Lは左右一対の板面を有する。左側板112Lは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。左側板112Lの下端部は底板111の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板111および左側板112Lが形成される)。
【0052】
左側板112Lの後上端部には貫通孔113Lが形成される。貫通孔113Lは左側板112Lの左右一対の板面を貫通する。
【0053】
左側板112Lにおいて貫通孔113Lの前下方となる部分には第一長孔114Lが形成される。第一長孔114Lは左側板112Lの左右一対の板面を貫通する。第一長孔114Lは側面視で後上方から前下方に延びた形状を有する(第一長孔114Lの長手方向は後上方から前下方へ向かう方向となる)。
【0054】
左側板112Lにおいて貫通孔113Lの後下方となる部分には貫通孔115Lが形成される。貫通孔115Lは左側板112Lの左右一対の板面を貫通する。貫通孔115Lの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0055】
右側板112Rは下部固定部材110の右側部を成す板状の部材である。右側板112Rは左右一対の板面を有する。右側板112Rは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。右側板112Rの下端部は底板111の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板111および右側板112Rが形成される)。
【0056】
右側板112Rの後上端部には貫通孔113Rが形成される。貫通孔113Rは右側板112Rの左右一対の板面を貫通する。
【0057】
右側板112Rにおいて貫通孔113Rの前下方となる部分には第一長孔114Rが形成される。第一長孔114Rは右側板112Rの左右一対の板面を貫通する。第一長孔114Rは後上方から前下方に延びた形状を有する(第一長孔114Rの長手方向は後上方から前下方へ向かう方向となる)。
【0058】
第一長孔114Rの長手方向は第一長孔114Lの長手方向に対して平行である。
また、第一長孔114Lおよび第一長孔114Rは側面視で一致する(重なる)。
【0059】
右側板112Rにおいて貫通孔113Rの後下方となる部分には貫通孔115Rが形成される。貫通孔115Rは右側板112Rの左右一対の板面を貫通する。貫通孔115Rの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0060】
背板116は下部固定部材110の後部を成す板状の部材である。背板116は前後一対の板面を有する。背板116の形状は正面視で左右方向にやや長い概ね長方形である。
背板116の下端部は底板111の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板111および背板116が形成される)。
【0061】
背板116の左端部には左側方に突出する突起部117Lが形成され、背板116の右端部には右側方に突出する突起部117Rが形成される。
突起部117Lが貫通孔115Lに貫装されるとともに突起部117Rが貫通孔115Rに貫装されることにより、下部固定部材110は強固な構造体を成す。
【0062】
背板116の上下略中央部かつ左右略中央部となる部分には、貫通孔118が形成される。貫通孔118は背板116の前後一対の板面を貫通する。
【0063】
図6に示す中間部材20は天板21、左側板22L、右側板22R、左鍔板27L、右鍔板27Rおよび後鍔板28を具備する。
本実施形態の中間部材20は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
【0064】
天板21は中間部材20の上部を成す板状の部材である。天板21は上下一対の板面を有する。天板21の形状は前後方向にやや長い概ね長方形である。
【0065】
左側板22Lは中間部材20の左側部を成す板状の部材である。左側板22Lは左右一対の板面を有する。左側板22Lの形状は前後方向にやや長い概ね長方形である。左側板22Lの上端部は天板21の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板21および左側板22Lが形成される)。
【0066】
左側板22Lの後端部(一端部)かつ上端部となる部分には貫通孔23Lが形成される。貫通孔23Lは左側板22Lの左右一対の板面を貫通する。
左側板22Lの前端部(他端部)かつ上端部となる部分には貫通孔24Lが形成される。貫通孔24Lは左側板22Lの左右一対の板面を貫通する。
左側板22Lの後半部かつ貫通孔23Lの前方となる部分には突起25Lが形成される。突起25Lは側面視で左右方向に長い長方形状の突起であり、左側板22Lの上端部から上方に(天板21の上方に)突出する。
左側板22Lの前端部(他端部)かつ貫通孔24Lの下方となる部分には切り欠き26Lが形成される。切り欠き26Lは後述する受圧ピン73が左側板22Lに干渉することを防止する。
【0067】
右側板22Rは中間部材20の右側部を成す板状の部材である。右側板22Rは左右一対の板面を有する。右側板22Rの形状は前後方向にやや長い概ね長方形である。右側板22Rの上端部は天板21の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板21および右側板22Rが形成される)。
【0068】
右側板22Rの後端部(一端部)かつ上端部となる部分には貫通孔23Rが形成される。貫通孔23Rは右側板22Rの左右一対の板面を貫通する。
右側板22Rの前端部(他端部)かつ上端部となる部分には貫通孔24Rが形成される。貫通孔24Rは右側板22Rの左右一対の板面を貫通する。
右側板22Rの後半部かつ貫通孔23Rの前方となる部分には突起25Rが形成される。突起25Rは側面視で左右方向に長い長方形状の突起であり、右側板22Rの上端部から上方に(天板21の上方に)突出する。
右側板22Rの前端部(他端部)かつ貫通孔24Rの下方となる部分には切り欠き26Rが形成される。切り欠き26Rは後述する受圧ピン73が右側板22Rに干渉することを防止する。
【0069】
左鍔板27Lは上下一対の板面を有するとともに前後方向に細長い板状の部材である。
左鍔板27Lの左端部は左側板22Lの下端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、左側板22Lおよび左鍔板27Lが形成される)。
【0070】
右鍔板27Rは上下一対の板面を有するとともに前後方向に細長い板状の部材である。
右鍔板27Rの右端部は右側板22Rの下端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、右側板22Rおよび右鍔板27Rが形成される)。
左鍔板27Lの右端面および右鍔板27Rの左端面は間隔を空けて対向する。
【0071】
後鍔板28は前後一対の板面を有するとともに左右に細長い板状の部材である。
後鍔板28の下端部は天板21の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板21および後鍔板28が形成される)。
【0072】
図2から図4、および図10に示す第一回動ピン71は本発明に係る「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第二ウイング部材を第一ウイング部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、本発明に係るスライド規制部材の実施の一形態を兼ねる。
第一回動ピン71は一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。
第一回動ピン71の外周面の両端部(一対の端面の近傍となる部分)には、第一回動ピン71の周方向に沿ってリング状の溝が形成される。
【0073】
図4および図10に示す一対の軸受け74・74は概ねリング状(薄い円筒形状)の部材であり、第一回動ピン71を下部固定部材110に回転可能に軸支する。
一対の軸受け74・74はそれぞれ下部固定部材110の左側板112Lに形成された貫通孔113Lおよび右側板112Rに形成された貫通孔113Rに嵌装される。
本実施形態の軸受け74・74は樹脂材料からなるが、これを金属材料からなるボールベアリングに置換しても良い。
【0074】
図2から図5、および図10に示す如く、第一回動ピン71は、左から右に向かって中間部材20の左側板22Lに形成された貫通孔23L、下部固定部材110の左側板112Lに形成された貫通孔113Lに嵌装された軸受け74の貫通孔、下部固定部材110の右側板112Rに形成された貫通孔113Rに嵌装された軸受け74の貫通孔、および中間部材20の右側板22Rに形成された貫通孔23Rの順に貫装される。
その結果、中間部材20は第一回動ピン71を介して下部固定部材110に回動可能に連結される。
なお、図示せぬEリングが第一回動ピン71の外周面の両端部に形成されたリング状の溝に嵌装されることにより、第一回動ピン71は中間部材20および下部固定部材110から脱落しない。
【0075】
本実施形態では、第一回動ピン71の右端部には第一回動ピン71の軸線方向に平行な平面である「ピン側係合面」が形成され、かつ、中間部材20の右側板22Rに形成された貫通孔23Rには「中間部材側係合面」が形成される。
その結果、第一回動ピン71を貫通孔23Rに貫装したときには「ピン側係合面」が「中間部材側係合面」に係合し、第一回動ピン71は中間部材20に対して相対回転することができない。
従って、中間部材20が下部固定部材110に対して回動するとき、第一回動ピン71は中間部材20と一体的に回動する。
【0076】
図7に示す上部固定部材30は天板31、左側板32L、右側板32Rおよび後鍔板35を具備する。
本実施形態の上部固定部材30は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
【0077】
天板31は上部固定部材30の上部を成す板状の部材である。天板31は上下一対の板面を有する。天板31の形状は前後方向にやや長い概ね長方形である。
天板31の左半部には貫通孔31a・31bが形成され、天板31の右半部には貫通孔31c・31dが形成される。貫通孔31a・31b・31c・31dは天板31は上下一対の板面を貫通する。
【0078】
左側板32Lは上部固定部材30の左側部を成す板状の部材である。左側板32Lは左右一対の板面を有する。左側板32Lの形状は概ね前後方向にやや長い長方形の後下部を斜めに切除した形状である。左側板32Lの上端部は天板31の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板31および左側板32Lが形成される)。
【0079】
左側板32Lの前端部(一端部)かつ上下略中央部となる部分には貫通孔33Lが形成される。貫通孔33Lは左側板32Lの左右一対の板面を貫通する。
左側板32Lの前端部(一端部)かつ貫通孔33Lの下方となる部分には貫通孔34Lが形成される。貫通孔34Lは左側板32Lの左右一対の板面を貫通する。
【0080】
右側板32Rは上部固定部材30の右側部を成す板状の部材である。右側板32Rは左右一対の板面を有する。右側板32Rの形状は概ね前後方向にやや長い長方形の後下部を斜めに切除した形状である。右側板32Rの上端部は天板31の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板31および右側板32Rが形成される)。
【0081】
右側板32Rの前端部(一端部)かつ上下略中央部となる部分には貫通孔33Rが形成される。貫通孔33Rは右側板32Rの左右一対の板面を貫通する。
右側板32Rの前端部(一端部)かつ貫通孔33Rの下方となる部分には貫通孔34Rが形成される。貫通孔34Rは右側板32Rの左右一対の板面を貫通する。
【0082】
後鍔板35は前後一対の板面を有するとともに左右に細長い板状の部材である。
後鍔板35の下端部は天板31の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、天板31および後鍔板35が形成される)。
【0083】
本実施形態では、貫通孔31a・31b・31c・31dにそれぞれネジを貫装し、これらのネジを原稿圧着板3の下面後端部に形成されたネジ孔に螺装することにより、上部固定部材30が原稿圧着板3に固定される。
【0084】
図2から図4に示す第二回動ピン72は上部固定部材30を中間部材20に回動可能に連結する回動軸を成す部材である。
第二回動ピン72は一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。
第二回動ピン72の外周面の両端部(一対の端面の近傍となる部分)には、第二回動ピン72の周方向に沿ってリング状の溝が形成される。
【0085】
図2、図3、図4、図6および図7に示す如く、第二回動ピン72は、左から右に向かって上部固定部材30の左側板32Lに形成された貫通孔33L、中間部材20の左側板22Lに形成された貫通孔24L、中間部材20の右側板22Rに形成された貫通孔24R、上部固定部材30の右側板32Rに形成された貫通孔33R、の順に貫装される。
その結果、上部固定部材30は第二回動ピン72を介して中間部材20に回動可能に連結される。
なお、図示せぬEリングが第二回動ピン72の外周面の両端部に形成されたリング状の溝に嵌装されることにより、第二回動ピン72は上部固定部材30および中間部材20から脱落しない。
【0086】
図8に示す第一スライダ40は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
第一スライダ40は後面の下半部を成すカム当接面41、後面の上半部を成す回動ピン支持面42、上面43、下面44、左面45、右面46および前面47を有する概ね直方体形状(塊状)の部材である。本実施形態の第一スライダ40は樹脂材料からなる。
第一スライダ40にはバネ受け穴48L・48Rが形成される。バネ受け穴48L・48Rはそれぞれ前面47の左半部および前面47の右半部に開口する穴である。バネ受け穴48L・48Rはいずれも内周面および底面を有する。
【0087】
図4、図6、図8、図15および図16に示す如く、第一スライダ40は中間部材20の内部(より詳細には、天板21の下側の板面、左側板22Lの右側の板面、右側板22Rの左側の板面、左鍔板27Lの上側の板面および右鍔板27Rの上側の板面により囲まれる空間)に収容される。
第一スライダ40が中間部材20の内部に収容されたとき、第一スライダ40の上面43は天板21の下側の板面に当接し、第一スライダ40の左面45は左側板22Lの右側の板面に当接し、右面46は右側板22Rの左側の板面に当接し、下面44の左端部は左鍔板27Lの上側の板面に当接し、下面44の右端部は右鍔板27Rの上側の板面に当接する。
従って、中間部材20の内部に収容された第一スライダ40は、中間部材20に対して前後方向(より詳細には、中間部材20の長手方向であって、後で詳述するカム部材180に接近する方向およびカム部材180から離間する方向)に移動(摺動)することは可能である。
また、中間部材20の内部に収容された第一スライダ40は、中間部材20に対して左右方向および上下方向(中間部材20の長手方向に垂直な方向)に移動すること、並びに中間部材20に対して相対回転することはできない。
このように、中間部材20の内部に収容された第一スライダ40は、中間部材20に支持されつつ(左鍔板27Lと右鍔板27Rとの隙間から脱落することなく)、中間部材20の長手方向に移動(摺動)することが可能である。
【0088】
図9に示す第二スライダ50は胴体部51およびカバー部59を具備する部材である。
本実施形態の第二スライダ50は樹脂材料からなる。
胴体部51は前面を成す受圧ピン支持面52、上面53、下面54、左面55、右面56および後面57を有する概ね直方体形状(塊状)の部分である。
【0089】
胴体部51にはバネ受け穴58L・58Rが形成される。バネ受け穴58L・58Rはそれぞれ後面57の左半部および後面57の右半部に開口する穴である。バネ受け穴58L・58Rはいずれも内周面および底面を有する。
【0090】
カバー部59は上下一対の板面を有する板状の部分である。本実施形態の胴体部51およびカバー部59は一体的に成形され、カバー部59の前端部は胴体部51の後端部かつ下端部となる部分に繋がっている。
【0091】
図4、図6、図9、図15および図16に示す如く、第二スライダ50は中間部材20の内部であって第一スライダ40よりも前方となる位置(中間部材20の長手方向において第二回動ピン72寄りとなる位置)に収容される。
第二スライダ50が中間部材20の内部に収容されたとき、第二スライダ50の上面53は天板21の下側の板面に当接し、左面55は左側板22Lの右側の板面に当接し、右面56は右側板22Rの左側の板面に当接し、下面54の左端部は左鍔板27Lの上側の板面に当接し、下面54の右端部は右鍔板27Rの上側の板面に当接する。
従って、中間部材20の内部に収容された第二スライダ50は、中間部材20に対して前後方向(より詳細には、中間部材20の長手方向であって、後で詳述するカム部材180に接近する方向およびカム部材180から離間する方向)に移動(摺動)することは可能である。
また、中間部材20に対して左右方向および上下方向(中間部材20の長手方向に垂直な方向)に移動すること、並びに中間部材20に対して相対回転することはできない。
このように、中間部材20の内部に収容された第二スライダ50は、中間部材20に支持されつつ(左鍔板27Lと右鍔板27Rとの隙間から脱落することなく)、中間部材20の長手方向に移動(摺動)することが可能である。
【0092】
図2から図4に示す受圧ピン73は一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。
受圧ピン73の外周面の両端部(一対の端面の近傍となる部分)には、受圧ピン73の周方向に沿ってリング状の溝が形成される。
【0093】
図2、図3、図4および図7に示す如く、受圧ピン73を上部固定部材30の左側板32Lに形成された貫通孔34Lおよび右側板32Rに形成された貫通孔33Rに貫装することにより、受圧ピン73は上部固定部材30に軸支される。
なお、図示せぬEリングが受圧ピン73の外周面の両端部に形成されたリング状の溝に嵌装されることにより、受圧ピン73は上部固定部材30から脱落しない。
【0094】
本実施形態では、「中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの」が本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態に相当する。
言い換えれば、本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態は、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を具備する。
【0095】
図2、図4および図10に示すカム部材180は本発明に係るカム部材の実施の一形態である。
図10に示す如く、本実施形態のカム部材180は当接部材181、一対の軸受け182・182、移動部材183、移動位置調整ネジ189およびナット190を具備する。
【0096】
図11に示す当接部材181は本発明に係る当接部材の実施の一形態である。
本実施形態の当接部材181は一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。
当接部材181の外周面の中途部は当接面181aを成す。当接部材181の外周面の両端部(第二回動ピン72の一対の端面の近傍となる部分)には、当接部材181の周方向に沿ってリング状の溝181b・181bが形成される。
【0097】
図2、図4および図10に示す一対の軸受け182・182は当接部材181を下部固定部材110に回転可能に軸支するための部材である。
本実施形態の一対の軸受け182・182は樹脂材料からなる。一対の軸受け182・182の形状は概ねリング状(円筒形状)である。
【0098】
図4、図5および図10に示す如く、一対の軸受け182・182はそれぞれ下部固定部材110の左側板112Lに形成された第一長孔114Lおよび右側板112Rに形成された第一長孔114Rに嵌装される。
【0099】
第一長孔114L・114Rの幅(より厳密には、「第一長孔114L・114Rの長手方向に垂直な方向」における第一長孔114L・114Rの幅)は一対の軸受け182・182の外径(直径)よりもわずかに大きい。
また、一対の軸受け182・182の内径(一対の軸受け182・182にそれぞれ形成された貫通孔の直径)は当接部材181の外径(直径)よりもわずかに大きい。
従って、当接部材181の両端部をそれぞれ「第一長孔114Lに嵌装された軸受け182」および「第一長孔114Rに嵌装された軸受け182」に貫装したとき、「当接部材181および一対の軸受け182・182を合わせたもの」は、一対の軸受け182・182がそれぞれ第一長孔114L・114Rに嵌装された状態(ひいては、当接部材181の両端部が第一長孔114L・114Rに貫装された状態)を保持しつつ、第一長孔114L・114Rの長手方向に移動(摺動)することが可能である。
また、当接部材181は一対の軸受け182・182、ひいては下部固定部材110に対して当接部材181の軸線周りに相対的に回転することが可能である。
【0100】
当接部材181の両端部をそれぞれ「第一長孔114Lに嵌装された軸受け182」および「第一長孔114Rに嵌装された軸受け182」に貫装したとき、当接部材181の軸線方向は第一回動ピン71の軸線方向(本実施形態では、左右方向)に対して平行である。
また、「当接部材181および一対の軸受け182・182を合わせたもの」が第一長孔114L・114Rの長手方向に移動(摺動)するとき、当接部材181の軸線方向が第一回動ピン71の軸線方向に対して平行な状態が保持される。
【0101】
図12に示す移動部材183は本発明に係る移動部材の実施の一形態である。
移動部材183は背板184、左側板185L、右側板185R、底板187およびナット188を具備する。
本実施形態の移動部材183は、一枚の金属板を適宜折り曲げることにより背板184、左側板185L、右側板185Rおよび底板187を合わせたものに相当する部材を形成し、当該部材の所定の位置に溶接でナット188を固定することにより得られる。
【0102】
背板184は移動部材183の後部を成す板状の部材である。背板184は前後一対の板面を有する。背板184の形状は概ね左右方向にやや長い長方形である。
背板184の左右中央部かつ下半部となる部分には貫通孔184aが形成される(図4参照)。貫通孔184aは背板184の前後一対の板面を貫通する。
【0103】
左側板185Lは移動部材183の左側部を成す板状の部材である。左側板185Lは左右一対の板面を有する。左側板185Lの形状は概ね上下方向にやや長い長方形であって前上端部および前下端部の隅が丸く切除された形状である。左側板185Lの後端部は背板184の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、背板184および左側板185Lが形成される)。
【0104】
左側板185Lには第二長孔186Lが形成される。第二長孔186Lは左側板185Lの一対の板面を貫通する。第二長孔186Lは側面視で上下方向に延びた形状を有する(第二長孔186Lの長手方向は上下方向に対して平行となる)。
【0105】
右側板185Rは移動部材183の右側部を成す板状の部材である。右側板185Rは左右一対の板面を有する。右側板185Rの形状は概ね上下方向にやや長い長方形であって前上端部および前下端部の隅が丸く切除された形状である。右側板185Rの後端部は背板184の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、背板184および右側板185Rが形成される)。
【0106】
右側板185Rには第二長孔186Rが形成される。第二長孔186Rは右側板185Rの一対の板面を貫通する。第二長孔186Rは側面視で上下方向に延びた形状を有する(第二長孔186Lの長手方向は上下方向に対して平行となる)。
第二長孔186Lおよび第一長孔186Rは側面視で一致する(重なる)。
【0107】
底板187は移動部材183の下部を成す板状の部材である。底板187は上下一対の板面を有する。底板187の形状は概ね左右方向にやや長い長方形である。底板187の後端部は背板184の下端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、背板184および底板187が形成される)。
【0108】
ナット188は一対の端面および六つの側面を有する概ね薄い六角柱状の部材である。ナット188には一対の端面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面には雌ネジが形成される。
ナット188は溶接により背板184の前側の板面に固定される。背板184に固定されたナット188の貫通孔は、背板184に形成された貫通孔184aに正面視で一致する(重なる)。
【0109】
図2、図4および図10に示す如く、移動部材183は下部固定部材110の内部(より詳細には、底板111、左側板112L、右側板112Rおよび背板116により囲まれる空間)に配置される。
移動部材183が下部固定部材110の内部に配置されたとき、左側板185Lに形成された第二長孔186Lおよび右側板185Rに形成された第二長孔186Rには当接部材181が貫装される。
【0110】
移動部材183が下部固定部材110の内部に配置されたとき、左側板185Lの左側の板面は下部固定部材110の左側板112Lの右側の板面に当接し、右側板185Rの右側の板面は下部固定部材110の右側板112Rの左側の板面に当接する。
従って、移動部材183は下部固定部材110に対して移動部材183の左右方向に移動することができない。
また、移動部材183は下部固定部材110に対して相対回転(より厳密には、軸線方向が前後方向に平行となる軸周りの相対回転)することができない。
【0111】
第二長孔186L・186Rの幅(より厳密には、「第二長孔186L・186Rの長手方向に垂直な方向(本実施形態では、前後方向)」における第二長孔186L・186Rの幅)は当接部材181の外径(直径)よりもわずかに大きい。
従って、当接部材181は、第二長孔186L・186Rに貫装された状態を保持しつつ、移動部材183に対して第二長孔186L・186Rの長手方向(本実施形態では、上下方向)に相対的に移動(摺動)することが可能である。
【0112】
図13の(a)に示す移動位置調整ネジ189は本発明に係る移動位置調整部材の実施の一形態である。
本実施形態の移動位置調整ネジ189は胴体部189aおよび頭部189bを具備する。
【0113】
胴体部189aは概ね円柱形状の部分である。胴体部189aの外周面には雄ネジが形成される。
頭部189bは概ね円盤形状の部分である。頭部189bは胴体部189aの一端部(後端部)に繋がっている。頭部189bの外径(直径)は胴体部189aの外径(直径)よりも大きい。頭部189bの後端面には工具を頭部189bに対して相対回転不能に係合するための係合孔189cが形成される。
【0114】
図13の(b)に示すナット190は一対の端面および六つの側面を有する概ね薄い六角柱状の部材である。ナット190には一対の端面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面には雌ネジが形成される。
【0115】
図4および図14の(a)に示す如く、移動位置調整ネジ189の胴体部189aは下部固定部材110の背板116に形成された貫通孔118に後方から前方に向かって貫装される。
ナット190は貫通孔118に貫装された移動位置調整ネジ189の胴体部189aに螺装される。
このとき、胴体部189aに螺装されたナット190の後端面から移動位置調整ネジ189の頭部189bの前端面までの距離は、下部固定部材110の背板116の厚さ(背板116の前後一対の板面間の距離)よりもわずかに大きくなるように設定される。
また、頭部189bの外径(直径)およびナット190の外径(ナット190の外接円の直径)は貫通孔118の内径(直径)よりも大きい。
従って、移動位置調整ネジ189は、下部固定部材110に対して移動位置調整ネジ189の軸線周り(本実施形態の場合、前後方向に平行な軸周り)に回転することが可能である。
また、移動位置調整ネジ189は、下部固定部材110に対して移動位置調整ネジ189の軸線方向(本実施形態の場合、前後方向)および軸線に垂直な方向(本実施形態の場合、上下方向および左右方向)に相対的に移動すること、並びに、移動位置調整ネジ189の軸線に垂直な軸周りに回転すること(下部固定部材110に対して傾斜すること)はできない。
【0116】
移動位置調整ネジ189の胴体部189aは、下部固定部材110の内部に配置された移動部材183の背板184に形成された貫通孔184aに貫装され、背板184に固定されたナット188に螺装される。
このように、移動位置調整ネジ189は移動部材183を下部固定部材110に支持し、固定する。
【0117】
図10に示す如く、当接部材181は四つの長孔(一対の第一長孔114L・114R、および一対の第二長孔186L・186R)に貫装され、これら四つの長孔の内周面に当接している。
図14の(a)に示す如く、当接部材181が下部固定部材110に対して固定されたとき、当接部材181は「当接部材181の軸線(中心線)が一対の第一長孔114L・114Rの幅方向における中心線C1および一対の第二長孔186L・186Rの幅方向における中心線C2の交点と重なる位置」に配置される。
【0118】
一対の第一長孔114L・114Rの幅方向における中心線C1は、一対の第一長孔114L・114Rの長手方向に平行な直線であって、一対の第一長孔114L・114Rの内周面のうち互いに対向する「一対の第一長孔114L・114Rの長手方向に垂直な部分」から等距離となる位置を通る直線である。
一対の第二長孔186L・186Rの幅方向における中心線C2は、一対の第二長孔186L・186Rの長手方向に平行な直線であって、一対の第二長孔186L・186Rの内周面のうち互いに対向する「一対の第二長孔186L・186Rの長手方向に垂直な部分」から等距離となる位置を通る直線である。
【0119】
本実施形態では「一対の第一長孔114L・114Rの長手方向」と「一対の第二長孔186L・186Rの長手方向」とが異なる(平行ではない)。
そのため、移動位置調整ネジ189により移動部材183が下部固定部材110に固定されたとき、中心線C1および中心線C2の交点が定まり、ひいては当接部材181が下部固定部材110に対して配置される位置(固定される位置)も定まる。
【0120】
図4、図15および図16に示す一対のバネ60・60は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
一対のバネ60・60はいずれも金属製の巻きバネであり、圧縮バネ(外力が加えられていないときよりも全長が短くなるように収縮された状態で使用されるバネ)である。
【0121】
一対のバネ60・60は中間部材20の内部(より詳細には、天板21の下側の板面、左側板22Lの右側の板面、右側板22Rの左側の板面、左鍔板27Lの上側の板面および右鍔板27Rの上側の板面により囲まれる空間)に収容される。
【0122】
一対のバネ60・60のうち、一方のバネ60の一端部は第一スライダ40に形成されたバネ受け穴48Lに挿入され、バネ受け穴48Lの底面に当接する。
また、一方のバネ60の他端部は第二スライダ50に形成されたバネ受け穴58Lに挿入され、バネ受け穴58Lの底面に当接する。
【0123】
一対のバネ60・60のうち、他方のバネ60の一端部は第一スライダ40に形成されたバネ受け穴48Rに挿入され、バネ受け穴48Rの底面に当接する。
また、他方のバネ60の他端部は第二スライダ50に形成されたバネ受け穴58Rに挿入され、バネ受け穴58Rの底面に当接する。
【0124】
一対のバネ60・60が発生する付勢力、すなわち、圧縮される方向に弾性変形した一対のバネ60・60が元の形状(外力が作用していないときの形状)に戻ろうとする力(弾性力)により、第一スライダ40は中間部材20の長手方向のうちカム部材180に接近する方向に付勢され、第二スライダ50は中間部材20の長手方向のうち受圧ピン73に接近する方向に付勢される。
【0125】
そのため、図4に示す如く、第一スライダ40のカム当接面41はカム部材180の当接部材181の当接面181aに当接するとともに、第二スライダ50の受圧ピン支持面52が受圧ピン73の外周面に当接する。
結果として、一対のバネ60・60が発生する付勢力により、中間部材20(ひいては本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態)は下部固定部材110に対して開く方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢され、上部固定部材30は中間部材20に対して閉じる方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢される。
【0126】
本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲にあるとき(0°≦θ≦φ°のとき)、上部固定部材30に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ100を閉じようとする回転力(中間部材20を下部固定部材110に対して右側面視で時計回りに回動させようとする回転力)と、一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ100を開こうとする回転力(中間部材20を下部固定部材110に対して右側面視で反時計回りに回動させようとする回転力)と、が概ね平衡するように、第一スライダ40のカム当接面41の形状等が予め定められる。
このように構成することにより、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲において作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には、回動角度θが保持される。
【0127】
また、本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるとき(φ°<θ≦90°のとき)、第一スライダ40の回動ピン支持面42が第一回動ピン71の外周面に当接し、第一スライダ40がカム部材180に接近する方向に移動することが規制されるとともに、第一スライダ40のカム当接面41がカム部材180の当接部材181の当接面181aから離間する。
本実施形態の第一回動ピン71の軸線方向に垂直な面における断面形状は円形であるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲で変化しても、(厳密には中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度が変化しない限りにおいて)中間部材20に対する第一スライダ40の位置、ひいては一対のバネ60・60の全長(一対のバネ60・60が発生する付勢力)は変化しない。
【0128】
従って、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるときには、(厳密には一対のバネ60・60の付勢力に起因して第一スライダ40の回動ピン支持面42と第一回動ピン71の外周面との当接部分には摩擦力が作用するが)実質的には一対のバネ60・60の付勢力が第一スライダ40を介してカム部材180に作用しなくなり、ひいては一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ100を開こうとする回転力(中間部材20を下部固定部材110に対して右側面視で反時計回りに回動させようとする回転力)がヒンジ100に作用しなくなる。
なお、φの値は後述するカム部材180による一対のバネ60・60の付勢力の調整の結果、多少変動する場合がある。
【0129】
以下では、図14を用いてカム部材180による一対のバネ60・60の付勢力の調整について説明する。
【0130】
図14の(a)に示す如く、移動部材183が比較的(図14の(b)に示す場合に比べて)前方に配置されているとき、一対の第一長孔114L・114Rの幅方向における中心線C1および一対の第二長孔186L・186Rの幅方向における中心線C2の交点は「第一長孔114L・114Rの前下端部寄りかつ一対の第二長孔186L・186Rの下端部寄りとなる位置」に配置される。
そのため、当接部材181は「第一長孔114L・114Rの前下端部寄りかつ一対の第二長孔186L・186Rの下端部寄りとなる位置」に配置される。
【0131】
本実施形態の移動位置調整ネジ189の胴体部189aの外周面に形成されている雄ネジは右ネジであるため、移動位置調整ネジ189を背面視で時計回りに回転させた場合には、移動位置調整ネジ189の胴体部189aに螺装されているナット188、ひいては移動部材183は後方に移動し、図14の(a)に示す状態から図14の(b)に示す状態に移行する。
【0132】
図14の(a)に示す状態から図14の(b)に示す状態に移行するとき、移動部材183とともに中心線C2も後方に移動する。
そのため、中心線C1および中心線C2の交点は「一対の第一長孔114L・114Rの後上端部寄りかつ一対の第二長孔186L・186Rの上端部寄りとなる位置」に移動する。
従って、当接部材181は一対の第一長孔114L・114Rおよび一対の第二長孔186L・186Rに貫装された状態を保持しつつ、「一対の第一長孔114L・114Rの後上端部寄りかつ一対の第二長孔186L・186Rの上端部寄りとなる位置」に移動する。
このように、移動位置調整ネジ189を背面視で時計回りまたは反時計回りに回転させることにより、下部固定部材110(ひいては、中間部材20を下部固定部材110に回動可能に連結する回動軸である第一回動ピン71)に対する当接部材181の位置を変更(調整)することが可能である。
【0133】
図14の(a)に示す状態と図14の(b)に示す状態とでは、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ(ひいては、下部固定部材110に対する中間部材20の回動角度)が同じ場合における「当接部材181に当接する第一スライダ40の中間部材20に対する相対的な位置(ひいては一対のバネ60・60の全長)」が異なる。
すなわち、移動位置調整ネジ189を回転させて下部固定部材110に対する移動部材183の前後方向における位置を変更(調整)することにより、下部固定部材110に対する当接部材181の位置を変更(調整)し、ひいては一対のバネ60・60の付勢力を変更(調整)することが可能である。
【0134】
以上の如く、ヒンジ100は、
複合機1の本体2に固定される下部固定部材110と、
下部固定部材110に対する位置を変更可能かつ固定可能に下部固定部材110に支持されるカム部材180と、
下部固定部材110に回動可能に連結されるとともに複合機1の原稿圧着板3に固定される第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)と、
第二ウイング部材に支持されつつカム部材180に接近する方向およびカム部材180から離間する方向に移動可能な第一スライダ40と、
第一スライダ40をカム部材180に接近する方向に付勢することにより第一スライダ40をカム部材180に当接させる一対のバネ60・60と、
を具備する。
【0135】
このように構成することにより、ヒンジ100を複合機1の本体2および原稿圧着板3から取り外す、あるいは一対のバネ60・60を交換するといった作業を伴わずに一対のバネ60・60の付勢力を容易に調整することが可能である。
【0136】
また、ヒンジ100のカム部材180は、
両端部が下部固定部材110に形成された一対の第一長孔114L・114Rに貫装され、中途部には第一スライダ40(のカム当接面41)に当接する面である当接面181aが形成される当接部材181と、
下部固定部材110に対して所定の移動方向(本実施形態の場合、前後方向)に移動可能に支持され、一対の第二長孔186L・186Rが形成され、一対の第二長孔186L・186Rには当接部材181が貫装される移動部材183と、
下部固定部材110に対する移動部材183の移動方向における位置である移動位置(本実施形態の場合、下部固定部材110に対する移動部材183の前後方向における位置)を変更するとともに移動部材183を下部固定部材110に固定することが可能な移動位置調整ネジ189と、
を具備する。
このように構成することにより、移動位置調整ネジ189を回転させるだけで一対のバネ60・60の付勢力を調整することが可能である。
【0137】
なお、本発明に係るカム部材が確実に動作する(本発明に係る移動部材および当接部材が確実に移動する)ためには、一対の第一長孔の長手方向、一対の第二長孔の長手方向および移動部材の移動方向の三つの方向の幾何学的な関係が以下の(A)、(B)および(C)の要件を満たすことが望ましい。
【0138】
(A)一対の第一長孔の長手方向(本実施形態の場合、図14に示す中心線C1の長手方向)、一対の第二長孔の長手方向(本実施形態の場合、図14に示す中心線C2の長手方向)および移動方向(本実施形態の場合、前後方向)はいずれも第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)に対して垂直であることが望ましい。
【0139】
(B)一対の第一長孔の長手方向が移動部材の移動方向に対して傾斜することが望ましい。
ここで、「一対の第二長孔の長手方向が移動部材の移動方向に対して傾斜する」とは、一対の第二長孔の長手方向が移動部材の移動方向に対して平行ではないことを指す。
【0140】
(B)の要件が満たされない場合、すなわち、仮に一対の第二長孔の長手方向が移動部材の移動方向に対して平行である場合には、移動部材が移動方向に移動しても「一対の第一長孔の幅方向における中心線および一対の第二長孔の幅方向における中心線の交点」が移動方向に移動しない。
従って、当接部材が移動部材に対して一対の第二長孔に沿って相対移動することにより、結果としては当接部材が第一ウイング部材に対しては相対移動しない事態が起こり得る。
【0141】
(C)一対の第一長孔の長手方向が一対の第二長孔の長手方向に対して傾斜することが望ましい。
ここで、「一対の第一長孔の長手方向が一対の第二長孔の長手方向に対して傾斜する」ことは、一対の第一長孔の長手方向が一対の第二長孔の長手方向に対して平行ではないことを指す。
【0142】
(C)の要件が満たされない場合、すなわち、仮に一対の第一長孔の長手方向が一対の第二長孔の長手方向に対して平行である場合には、「一対の第一長孔の幅方向における中心線および一対の第二長孔の幅方向における中心線の交点」が一義的に定まらない。
【0143】
なお、本発明にかかるヒンジにおいて「移動部材の移動方向における移動量」に対して「第一ウイング部材に対する当接部材の移動量」を大きくしたい場合には、(i)一対の第二長孔の長手方向を移動部材の移動方向に対して垂直、または垂直に近い角度に設定することが望ましく、(ii)一対の第一長孔の長手方向を一対の第二長孔の長手方向に対して平行に近い角度に設定することが望ましい。
【0144】
また、ヒンジ100が具備する第一回動ピン71は、
原稿圧着板3が複合機1の本体2に対して閉じているときを基準として第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)が第一ウイング部材(本実施形態の場合、下部固定部材110)に対して開く方向に所定の角度以上回動したとき(本実施形態の場合、回動角度θがφ°よりも大きくなったとき)に第一スライダ40に当接することにより、第一スライダ40がカム部材180に接近する方向に移動することを規制し、第一スライダ40をカム部材180から離間させる。
このように構成することにより、ヒンジ100の第二ウイング部材をヒンジ100の第一ウイング部材に対して回動させることにより回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、カム部材180には一対のバネ60・60の付勢力が作用しなくなる。
従って、回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、移動位置調整ネジ189を回転させ、移動部材183を移動方向(本実施形態の場合、前後方向)に移動させることにより当接部材181を下部固定部材110に対して移動させる作業が容易となる(移動位置調整ネジ189を回転させる作業を行う場合に大きな力を要さない)。
【0145】
本実施形態では回動角度θがφ°よりも大きいときに第一回動ピン71が第一スライダ40に当接し、第一スライダ40がカム部材180から離間するが、本発明においてスライド規制部材がスライド部材に当接するときの「所定の角度」は本発明に係るヒンジの用途等に応じて適宜選択されることが望ましい。
【0146】
本実施形態では、第一回動ピン71が「第二連結対象物が第一連結対象物に対して閉じているときを基準として第二ウイング部材が第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときにスライド部材に当接することにより、スライド部材がカム部材に接近する方向に移動することを規制し、スライド部材をカム部材から離間させる」機能を果たすが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、上記機能を果たす専用の部材を別途本発明に係るヒンジに設けても良い。
ただし、部品点数を削減する観点、あるいはヒンジを小型化する観点からは、「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸」が上記機能を果たす部材(スライド規制部材)を兼ねることが望ましい。
【0147】
また、本実施形態では移動位置調整ネジ189は移動部材183に螺装され、下部固定部材110に「移動位置調整ネジ189の軸線方向(移動位置調整ネジ189が移動部材183に螺装されるときの回転軸の長手方向)に相対移動不能」かつ「移動位置調整ネジ189の軸線周りに回転可能」に支持されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る移動位置調整部材は、「第一ウイング部材または移動部材の一方」に螺装され、「第一ウイング部材または移動部材の他方(移動位置調整部材が螺装されなかった方の部材)」に移動位置調整部材の軸線方向に相対移動不能かつ移動位置調整部材の軸線周りに回転可能に支持されれば良い。
なお、本実施形態では、移動位置調整ネジ189の軸線方向は移動部材183の移動方向(本実施形態では、前後方向)に対して平行である。
【0148】
本実施形態では、ナット190を移動位置調整ネジ189に螺装することにより、移動位置調整ネジ189を下部固定部材110に「移動位置調整ネジ189の軸線方向に相対移動不能」かつ「移動位置調整ネジ189の軸線周りに回転可能」に支持したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ナット190に代えてEリングを用意し、当該リングを移動位置調整ネジ189の胴体部189aの中途部に形成したリング状の溝に嵌装しても良い。
【0149】
以下では図1、および図17から図25を用いて本発明に係るヒンジの第二実施形態であるヒンジ200について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ200は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
以下では便宜上、ヒンジ200を構成する各部材のうち「図1から図16に示すヒンジ100と同じ形状の部材」については、図1から図16に示すヒンジ100において対応する部材と同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0150】
図17、図18および図20に示す如く、ヒンジ200は下部固定部材210、中間部材20、第一回動ピン71、一対の軸受け74・74、上部固定部材30、第二回動ピン72、受圧ピン73、第一スライダ40、第二スライダ50、一対のバネ60・60およびカム部材280を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ200の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ200を構成する各部材の形状を説明する(図1および図23参照)。
【0151】
図19に示す下部固定部材210は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。本実施形態の下部固定部材210は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
下部固定部材210は底板211、左側板212L、右側板212Rおよび背板219を具備する。
【0152】
底板211は下部固定部材210の下部を成す板状の部材である。底板211は上下一対の板面を有する。底板211の形状は平面視で概ね前後方向にやや長い長方形である。
【0153】
底板211の前端部かつ左右中央部となる部分には貫通孔211aが形成される。貫通孔211aは底板211の上下一対の板面を貫通する。
【0154】
底板211の後半部かつ左半部となる部分には係合孔211bが形成される。係合孔211bは底板211の上下一対の板面を貫通する。係合孔211bは第一の貫通孔と当該第一の貫通孔よりも直径が小さい第二の貫通孔とが前後に連なった形状を有する。
【0155】
本実施形態では、複合機1の本体2の上面後部から上方に突出した係合突起(不図示)を係合孔211bに係合し、ネジ(不図示)を貫通孔211aに貫装し、当該ネジを本体2の上面後部に形成されたネジ孔に螺装することにより、底板211、ひいては下部固定部材210が本体2に固定される(図1参照)。
【0156】
左側板212Lは下部固定部材210の左側部を成す板状の部材である。左側板212Lは左右一対の板面を有する。左側板212Lは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。左側板212Lの下端部は底板211の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板211および左側板212Lが形成される)。
【0157】
左側板212Lの後上端部には貫通孔213Lが形成される。貫通孔213Lは左側板212Lの左右一対の板面を貫通する。
【0158】
左側板212Lにおいて貫通孔213Lの後下方となる部分には貫通孔214Lが形成される。貫通孔214Lは左側板212Lの左右一対の板面を貫通する。貫通孔214Lの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0159】
左側板212Lの後下端部には貫通孔215Lが形成される。貫通孔215Lは左側板212Lの左右一対の板面を貫通する。
【0160】
左側板212Lにおいて貫通孔213Lの前下方かつ貫通孔215Lの上方となる部分には円弧状長孔216Lが形成される。円弧状長孔216Lは本発明に係る支持孔の実施の一形態である。円弧状長孔216Lは左側板212Lの左右一対の板面を貫通する。
円弧状長孔216Lは側面視で貫通孔215Lを中心とする円周に沿って延びた形状を有する(円弧状長孔216Lの側面視形状は貫通孔215Lを中心とする円弧状である)。
円弧状長孔216Lの内周面は本発明に係る支持面の実施の一形態である。
【0161】
左側板212Lにおいて貫通孔215Lおよび円弧状長孔216Lにより挟まれる部分には一対の貫通孔217L・218Lが形成される。一対の貫通孔217L・218Lは本発明に係る複数のウイング側貫通孔の実施の一形態である。
一対の貫通孔217L・218Lは左側板212Lの左右一対の板面を貫通する。
一対の貫通孔217L・218Lは側面視で貫通孔215Lを中心とする同一の円周上に所定の間隔を空けて配置される。言い換えれば、一対の貫通孔217L・218Lは左側板212Lにおいて貫通孔215Lから互いに等距離となる位置に形成される。
より詳細には、右側面視で貫通孔215Lを中心として貫通孔217Lが20°だけ反時計回りに回転した位置に貫通孔218Lが配置される。
【0162】
右側板212Rは下部固定部材210の右側部を成す板状の部材である。右側板212Rは左右一対の板面を有する。右側板212Rは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。右側板212Rの下端部は底板211の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板211および右側板212Rが形成される)。
【0163】
右側板212Rの後上端部には貫通孔213Rが形成される。貫通孔213Rは右側板212Rの左右一対の板面を貫通する。
【0164】
右側板212Rにおいて貫通孔213Rの後下方となる部分には貫通孔214Rが形成される。貫通孔214Rは右側板212Rの左右一対の板面を貫通する。貫通孔214Rの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0165】
右側板212Rの後下端部には貫通孔215Rが形成される。貫通孔215Rは右側板212Rの左右一対の板面を貫通する。
【0166】
右側板212Rにおいて貫通孔213Rの前下方かつ貫通孔215Rの上方となる部分には円弧状長孔216Rが形成される。円弧状長孔216Rは本発明に係る支持孔の実施の一形態である。円弧状長孔216Rは右側板212Rの左右一対の板面を貫通する。
円弧状長孔216Rは側面視で貫通孔215Rを中心とする円周に沿って延びた形状を有する(円弧状長孔216Rの側面視形状は貫通孔215Rを中心とする円弧状である)。
円弧状長孔216Rの内周面は本発明に係る支持面の実施の一形態である。
【0167】
右側板212Rにおいて貫通孔215Rおよび円弧状長孔216Rにより挟まれる部分には一対の貫通孔217R・218Rが形成される。一対の貫通孔217R・218Rは本発明に係る複数のウイング側貫通孔の実施の一形態である。
一対の貫通孔217R・218Rは右側板212Rの左右一対の板面を貫通する。
一対の貫通孔217R・218Rは側面視で貫通孔215Rを中心とする同一の円周上に所定の間隔を空けて配置される。言い換えれば、一対の貫通孔217R・218Rは右側板212Rにおいて貫通孔215Rから互いに等距離となる位置に形成される。
より詳細には、右側面視で貫通孔215Rを中心として貫通孔217Rが20°だけ反時計回りに回転した位置に貫通孔218Rが配置される。
【0168】
背板219は下部固定部材210の後部を成す板状の部材である。背板219は前後一対の板面を有する。背板219の形状は正面視で概ね上下方向にやや長い長方形である。
背板219の下端部は底板211の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板211および背板219が形成される)。
【0169】
背板219の左端部には左側方に突出する突起部219Lが形成され、背板219の右端部には右側方に突出する突起部219Rが形成される。
突起部219Lが貫通孔214Lに貫装されるとともに突起部219Rが貫通孔214Rに貫装されることにより、下部固定部材210は強固な構造体を成す。
【0170】
図19および図20に示す如く、貫通孔213L・213Rにそれぞれ軸受け74・74を嵌装し、軸受け74・74に第一回動ピン71を貫装することにより、第一回動ピン71は軸受け74・74を介して下部固定部材210に回転可能に軸支される。
【0171】
図17、図18および図20に示すカム部材280は本発明に係るカム部材の実施の一形態である。カム部材280は下部固定部材210に支持される。
図20に示す如く、本実施形態のカム部材280は一対のアーム部材281L・281R、アーム軸部材285、一対の軸受け286・286、当接部材287、一対の軸受け288・288およびアーム角度調整ピン289を具備する。
【0172】
図21の(a)に示す一対のアーム部材281L・281Rは本発明に係る一対のアーム部材の実施の一形態である。
本実施形態の一対のアーム部材281L・281Rはいずれも左右一対の板面を有する細長い金属製の板材からなり、その両端部を丸めた(両端部の隅を丸く切除した)ものである。
【0173】
アーム部材281Lの一端部(下端部)には貫通孔282Lが形成される。貫通孔282Lはアーム部材281Lの左右一対の板面を貫通する。
アーム部材281Lの他端部(上端部)には貫通孔283Lが形成される。貫通孔283Lはアーム部材281Lの左右一対の板面を貫通する。
アーム部材281Lの中途部にはネジ孔284Lが形成される。ネジ孔284Lは本発明に係るアーム部材側貫通孔の実施の一形態である。ネジ孔284Lはアーム部材281Lの左右一対の板面を貫通する。ネジ孔284Lの内周面には雌ネジが形成される。
【0174】
アーム部材281Rの一端部(下端部)には貫通孔282Rが形成される。貫通孔282Rはアーム部材281Rの左右一対の板面を貫通する。
アーム部材281Rの他端部(上端部)には貫通孔283Rが形成される。貫通孔283Rはアーム部材281Rの左右一対の板面を貫通する。
アーム部材281Rの中途部には貫通孔284Rが形成される。貫通孔284Rは本発明に係るアーム部材側貫通孔の実施の一形態である。貫通孔284Rはアーム部材281Rの左右一対の板面を貫通する。
【0175】
アーム軸部材285は下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動軸を成す部材である。本実施形態のアーム軸部材285は金属材料からなり、一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。
アーム軸部材285の外周面の両端部(アーム軸部材285の一対の端面の近傍となる部分)には、アーム軸部材285の周方向に沿ってリング状の溝が形成される。
【0176】
図18および図20に示す一対の軸受け286・286(厳密には、一対の軸受け286・286のうち、右側の軸受け286は不図示)はアーム軸部材285を下部固定部材210に回転可能に軸支するための部材である。
本実施形態の一対の軸受け286・286は樹脂材料からなる。一対の軸受け286・286の形状は概ねリング状(円筒形状)である。
一対の軸受け286・286は下部固定部材210の左側板212Lに形成された貫通孔215Lおよび右側板212Rに形成された貫通孔215Rに嵌装される(図19および図20参照)。
【0177】
図20に示す如く、アーム軸部材285は貫通孔215Lに嵌装された軸受け286および貫通孔215Rに嵌装された軸受け286に貫装される。
その結果、アーム軸部材285は一対の軸受け286・286を介して下部固定部材210に回転可能に軸支される。
図20および図21に示す如く、下部固定部材210に軸支されたアーム軸部材285の左端部はアーム部材281Lの貫通孔282Lに貫装され、下部固定部材210に軸支されたアーム軸部材285の右端部はアーム部材281Rの貫通孔282Rに貫装される。
その結果、一対のアーム部材281L・281Rの一端部(下端部)が下部固定部材210に回動可能に連結される。
なお、アーム軸部材285の両端部に形成されたリング状の溝にEリング(不図示)が嵌装されることにより、一対のアーム部材281L・281Rがアーム軸部材285、ひいては下部固定部材210から脱落することはない。
【0178】
図21の(a)に示す当接部材287は本発明に係る当接部材の実施の一形態である。
本実施形態の当接部材287は金属材料からなり、一対の端面および外周面を有する概ね円柱形状の部材である。当接部材287の外周面の中途部は当接面287aを成す。
当接部材287の外周面の両端部(当接部材287の一対の端面の近傍となる部分)には、当接部材287の周方向に沿ってリング状の溝が形成される。
【0179】
図18および図20に示す一対の軸受け288・288(厳密には、一対の軸受け288・288のうち、右側の軸受け288は不図示)は当接部材287を一対のアーム部材281L・281R、ひいては下部固定部材210に回転可能に軸支するための部材である。
本実施形態の一対の軸受け288・288は樹脂材料からなる。一対の軸受け288・288の形状は概ねリング状(円筒形状)である。
一対の軸受け288・288は下部固定部材210の左側板212Lに形成された円弧状長孔216Lおよび右側板212Rに形成された円弧状長孔216Rに嵌装される(図19および図20参照)。
【0180】
図20に示す如く、当接部材287は円弧状長孔216Lに嵌装された軸受け288および円弧状長孔216Rに嵌装された軸受け288に貫装される。
また、図20および図21に示す如く、下部固定部材210に軸支された当接部材287の左端部はアーム部材281Lの貫通孔283Lに貫装され、下部固定部材210に軸支された当接部材287の右端部はアーム部材281Rの貫通孔283Rに貫装される。
その結果、当接部材287は一対のアーム部材281L・281Rの他端部(上端部)に回転可能に軸支される。
また、一対のアーム部材281L・281Rがアーム軸部材285を中心として回動するとき、当接部材287は一対の軸受け288・288を介して一対の円弧状長孔216L・216Rの内周面に当接しつつ、一対の円弧状長孔216L・216Rに沿って移動することが可能である。
なお、当接部材287の両端部に形成されたリング状の溝にEリング(不図示)が嵌装されることにより、当接部材287が一対のアーム部材281L・281R、ひいては下部固定部材210から脱落することはない。
【0181】
図21の(b)に示すアーム角度調整ピン289は本発明に係るアーム角度調整部材の実施の一形態である。
本実施形態のアーム角度調整ピン289は金属材料からなり、胴体部289aおよび頭部289cを具備する。
胴体部289aは概ね円柱形状の部分である。胴体部289aの外周面の一端部(左端部)には雄ネジ289bが形成される。
頭部289cは概ね円盤形状の部分である。本実施形態の胴体部289aは他端部(右端部)に繋がっている(胴体部289aおよび頭部289cは一体的に成形される)。
【0182】
図19および図20に示す如く、アーム角度調整ピン289が右から左に向かってアーム部材281Rに形成された貫通孔284R、下部固定部材210の右側板212Rに形成された貫通孔217R、および下部固定部材210の左側板212Lに形成された貫通孔217Lに貫装され、かつアーム部材281Lに形成されたネジ孔284Lに螺装されることにより、一対のアーム部材281L・281Rが下部固定部材210に対して回動不能に固定され、ひいては当接部材287が下部固定部材210に対して移動不能に固定される。
このとき、当接部材287は一対の円弧状長孔216L・216Rの前下端部となる位置に配置される。
【0183】
図18に示す如く、一対のバネ60・60が発生する付勢力、すなわち、圧縮される方向に弾性変形した一対のバネ60・60が元の形状(外力が作用していないときの形状)に戻ろうとする力(弾性力)により、第一スライダ40は中間部材20の長手方向のうちカム部材280に接近する方向に付勢され、第二スライダ50は中間部材20の長手方向のうち受圧ピン73に接近する方向に付勢される。
【0184】
そのため、図18に示す如く、第一スライダ40のカム当接面41はカム部材280の当接部材287の当接面287aに当接するとともに、第二スライダ50の受圧ピン支持面52が受圧ピン73の外周面に当接する。
結果として、一対のバネ60・60が発生する付勢力により、中間部材20(ひいては本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態)は下部固定部材210に対して開く方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢され、上部固定部材30は中間部材20に対して閉じる方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢される。
【0185】
本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲にあるとき(0°≦θ≦φ°のとき)、上部固定部材30に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ200を閉じようとする回転力と、一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ200を開こうとする回転力と、が概ね平衡するように、第一スライダ40のカム当接面41の形状等が予め定められる。
このように構成することにより、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲において作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には、回動角度θが保持される。
【0186】
また、本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるとき(φ°<θ≦90°のとき)、第一スライダ40の回動ピン支持面42が第一回動ピン71の外周面に当接し、第一スライダ40がカム部材280に接近する方向に移動することが規制されるとともに、第一スライダ40のカム当接面41がカム部材280の当接部材287の当接面287aから離間する。
本実施形態の第一回動ピン71の軸線方向に垂直な面における断面形状は円形であるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲で変化しても、(厳密には中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度が変化しない限りにおいて)中間部材20に対する第一スライダ40の位置、ひいては一対のバネ60・60の全長(一対のバネ60・60が発生する付勢力)は変化しない(図24参照)。
【0187】
従って、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるときには、(厳密には一対のバネ60・60の付勢力に起因して第一スライダ40の回動ピン支持面42と第一回動ピン71の外周面との当接部分には摩擦力が作用するが)実質的には一対のバネ60・60の付勢力が第一スライダ40を介してカム部材280に作用しなくなり、ひいては一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ200を開こうとする回転力がヒンジ200に作用しなくなる。
なお、φの値は後述するカム部材280による一対のバネ60・60の付勢力の調整の結果、多少変動する場合がある。
【0188】
以下では、図22を用いてカム部材280による一対のバネ60・60の付勢力の調整について説明する。
【0189】
図22の(a)に示す如く、アーム角度調整ピン289が右から左に向かってアーム部材281Rに形成された貫通孔284R、下部固定部材210の右側板212Rに形成された貫通孔217R、および下部固定部材210の左側板212Lに形成された貫通孔217Lに貫装され、かつアーム部材281Lに形成されたネジ孔284Lに螺装されたとき、アーム角度調整ピン289は一対のアーム部材281L・281Rを前下方に向かって回動した位置で下部固定部材210に対して回動不能に固定し、ひいては当接部材287を下部固定部材210に対して移動不能に固定することが可能である。
このとき、当接部材287は一対の円弧状長孔216L・216Rの前下端部となる位置に配置される。
【0190】
アーム角度調整ピン289が貫通孔284R、貫通孔217R、貫通孔217L、貫通孔218R、貫通孔218Lのいずれにも貫装されず、かつネジ孔284Lに螺装されないとき、すなわちアーム角度調整ピン289が下部固定部材210および一対のアーム部材281L・281Rから引き抜かれているとき、一対のアーム部材281L・281Rはアーム軸部材285を中心として下部固定部材210に対して回動することが可能である。
このとき、当接部材287は一対の円弧状長孔216L・216Rに貫装された状態を保持しつつ、一対の円弧状長孔216L・216Rの長手方向に沿って移動することが可能である。
【0191】
本実施形態では、アーム角度調整ピン289を下部固定部材210および一対のアーム部材281L・281Rから引き抜き、一対のアーム部材281L・281Rを後上方に向かって回動させ(右側面視で反時計回りに回動させ)、アーム角度調整ピン289を下部固定部材210および一対のアーム部材281L・281Rに差しこむことにより、図22の(a)に示す状態から図22の(b)に示す状態に移行する。
【0192】
図22の(b)に示す如く、アーム角度調整ピン289が右から左に向かってアーム部材281Rに形成された貫通孔284R、下部固定部材210の右側板212Rに形成された貫通孔218R、および下部固定部材210の左側板212Lに形成された貫通孔218Lに貫装され、かつアーム部材281Lに形成されたネジ孔284Lに螺装されたとき、アーム角度調整ピン289は一対のアーム部材281L・281Rを後上方に向かって回動した位置で下部固定部材210に対して回動不能に固定し、ひいては当接部材281を下部固定部材210に対して移動不能に固定することが可能である。
このとき、当接部材287は一対の円弧状長孔216L・216Rの後上端部となる位置に配置される。
【0193】
このように、アーム角度調整ピン289を下部固定部材210および一対のアーム部材281L・281Rから引き抜くことにより、下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動角度(アーム角度)を変更(調整)することが可能であり、ひいては下部固定部材210に対する当接部材287の位置を変更(調整)することが可能である。
また、アーム角度調整ピン289を下部固定部材210および一対のアーム部材281L・281Rに差しこむことにより、一対のアーム部材281L・281Rを下部固定部材210に対して回動不能に固定し(下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動角度(アーム角度)を保持し)、ひいては下部固定部材210に対する当接部材287の位置を固定することが可能である。
【0194】
図22の(a)に示す状態と図22の(b)に示す状態とでは、下部固定部材210に対する当接部材287の位置が異なるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ(ひいては、下部固定部材210に対する中間部材20の回動角度)が同じ場合における「当接部材287に当接する第一スライダ40の中間部材20に対する相対的な位置(ひいては一対のバネ60・60の全長)」が異なる。
すなわち、下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動角度(アーム角度)を変更(調整)することにより、下部固定部材210に対する当接部材287の位置を変更(調整)し、ひいては一対のバネ60・60の付勢力を変更(調整)することが可能である。
【0195】
以上の如く、ヒンジ200は
複合機1の本体2に固定される下部固定部材210と、
下部固定部材210に対する位置を変更可能かつ固定可能に下部固定部材210に支持されるカム部材280と、
下部固定部材210に回動可能に連結されるとともに原稿圧着板3に固定される第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)と、
第二ウイング部材に支持されつつカム部材280に接近する方向およびカム部材280から離間する方向に移動可能な第一スライダ40と、
第一スライダ40をカム部材280に接近する方向に付勢することにより第一スライダ40をカム部材280に当接させる一対のバネ60・60と、
を具備する。
このように構成することにより、ヒンジ200を複合機1の本体2および原稿圧着板3から取り外す、あるいは一対のバネ60・60を交換するといった作業を伴わずに一対のバネ60・60の付勢力を容易に調整することが可能である。
【0196】
また、ヒンジ200のカム部材280は、
一端部(下端部)が下部固定部材210に回動可能に連結される一対のアーム部材281L・281Rと、
両端部(左端部および右端部)が一対のアーム部材281L・281Rの他端部(上端部)に支持され、中途部には第一スライダ40に当接する面である当接面287aが形成される当接部材287と、
下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動角度(アーム角度)を変更可能かつ固定可能に一対のアーム部材281L・281Rを下部固定部材210に固定するアーム角度調整ピン289と、
を具備する。
このように構成することにより、下部固定部材210に対して一対のアーム部材281L・281Rを回動させるだけで一対のバネ60・60の付勢力を容易に調整することが可能である。
【0197】
また、ヒンジ200が具備する第一回動ピン71は、
原稿圧着板3が複合機1の本体2に対して閉じているときを基準として第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)が第一ウイング部材(本実施形態の場合、下部固定部材210)に対して開く方向に所定の角度以上回動したとき(本実施形態の場合、回動角度θがφ°よりも大きくなったとき)に第一スライダ40に当接することにより、第一スライダ40がカム部材280に接近する方向に移動することを規制し、第一スライダ40をカム部材280から離間させる。
このように構成することにより、ヒンジ200の第二ウイング部材をヒンジ200の第一ウイング部材に対して回動させることにより回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、カム部材280には一対のバネ60・60の付勢力が作用しなくなる。
従って、回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、下部固定部材210に対して一対のアーム部材281L・281Rを回動させることにより当接部材287を下部固定部材210に対して移動させる作業が容易となる(下部固定部材210に対して一対のアーム部材281L・281Rを回動させる作業を行う場合に大きな力を要さない)。
【0198】
本実施形態では回動角度θがφ°よりも大きいときに第一回動ピン71が第一スライダ40に当接し、第一スライダ40がカム部材280から離間するが、本発明においてスライド規制部材がスライド部材に当接するときの「所定の角度」は本発明に係るヒンジの用途等に応じて適宜選択されることが望ましい。
【0199】
また、ヒンジ200が具備するアーム角度調整ピン289は、
下部固定部材210において一対のアーム部材281L・281Rの回動中心(本実施形態の場合、貫通孔215L・215R)から等距離となる位置に形成される貫通孔217L・218Lのうちのいずれかおよび貫通孔217R・218Rのうちのいずれか(貫通孔217L・217Rの組み合わせ、または、貫通孔218L・218Rの組み合わせ)に貫装されるとともに、一対のアーム部材281L・281Rに形成されるネジ孔284Lおよび貫通孔284Rに貫装される(厳密には、アーム角度調整ピン289はネジ孔284Lには螺装されることにより貫装される)。
このように構成することにより、簡素な構造で一対のアーム部材281L・281Rを回動可能に固定することが可能である。
【0200】
本実施形態では、下部固定部材210には二組の「複数のウイング側貫通孔」、すなわち貫通孔217L・218Lの組および貫通孔217R・218Rの組が形成され、一対のアーム部材281L・281Rには計二つの「アーム部材側貫通孔」、すなわちネジ孔284Lおよび貫通孔284Rが形成されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジの下部固定部材に少なくとも一組の「複数のウイング側貫通孔」が形成され、かつ、本発明に係るヒンジの一対のアームの少なくとも一方に一つ以上の「アーム部材側貫通孔」が形成されれば良い。
なお、本実施形態では「複数のウイング側貫通孔」に含まれるウイング側貫通孔の個数は二つであるが、本発明はこれに限定されず、「複数のウイング側貫通孔」に含まれるウイング側貫通孔の個数が三つ以上であっても良い。
【0201】
本実施形態では本発明に係るアーム部材側貫通孔の実施の一形態であるネジ孔284Lの内周面に雌ネジを形成し、アーム角度調整ピン289の胴体部289aの一端部に雄ネジ289bを形成し、アーム角度調整ピン289がネジ孔284Lに螺装されることによりアーム角度調整ピン289が下部固定部材210から脱落することを防止しているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、アーム角度調整ピン289の胴体部289aの一端部に形成された雄ネジ289bを廃止し、当該一端部をアーム角度調整ピン289の軸線方向に延長し、延長されたアーム角度調整ピン289の胴体部289aの一端部に周方向に延びたリング状の溝を形成し、当該溝にEリングを嵌装することにより、アーム角度調整ピン289が下部固定部材210から脱落しないようにしても良い。
【0202】
また、ヒンジ200の下部固定部材210には一対の円弧状長孔216L・216Rが形成され、当接部材287が一対の円弧状長孔216L・216Rに貫装されることにより、一対の円弧状長孔216L・216Rの内周面が当接部材287の外周面に当接する。
このように構成することにより、当接部材287は一対のアーム部材281L・281Rを介して下部固定部材210に支持されるだけでなく、下部固定部材210に直接的に支持されるので、カム部材280の強度(剛性)が増し、当接部材287の位置が安定する。
【0203】
本実施形態では一対の円弧状長孔216L・216Rの内周面が当接部材287の外周面に当接することにより当接部材287が下部固定部材210に直接的に支持されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図25に示す如く、下部固定部材210に対する一対のアーム部材281L・281Rの回動軸を中心とする円弧状の支持面290Lを下部固定部材210に形成し、支持面290Lが当接部材287の外周面に当接しても良い。
【0204】
以下では図1、および図26から図36を用いて本発明に係るヒンジの第三実施形態であるヒンジ300について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ300は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
以下では便宜上、ヒンジ300を構成する各部材のうち「図1から図16に示すヒンジ100と同じ形状の部材」については、図1から図16に示すヒンジ100において対応する部材と同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0205】
図26、図27および図29に示す如く、ヒンジ300は下部固定部材310、中間部材20、第一回動ピン71、一対の軸受け74・74、上部固定部材30、第二回動ピン72、受圧ピン73、第一スライダ40、第二スライダ50、一対のバネ60・60およびカム部材380を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ300の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ300を構成する各部材の形状を説明する(図1および図35参照)。
【0206】
図28に示す下部固定部材310は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。本実施形態の下部固定部材310は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
下部固定部材310は底板311、左側板312L、右側板312Rおよび背板3169を具備する。
【0207】
底板311は下部固定部材310の下部を成す板状の部材である。底板311は上下一対の板面を有する。底板311の形状は平面視で概ね左右方向にやや長い長方形である。
【0208】
底板311の前端部かつ左右中央部からわずかに左寄りとなる部分には貫通孔311aが形成される。貫通孔311aは底板311の上下一対の板面を貫通する。
【0209】
底板311の後半部かつ左右中央部からわずかに左寄りとなる部分には係合孔311bが形成される。係合孔311bは底板311の上下一対の板面を貫通する。係合孔311bは第一の貫通孔と当該第一の貫通孔よりも直径が小さい第二の貫通孔とが前後に連なった形状を有する。
【0210】
本実施形態では、複合機1の本体2の上面後部から上方に突出した係合突起(不図示)を係合孔311bに係合し、ネジ(不図示)を貫通孔311aに貫装し、当該ネジを本体2の上面後部に形成されたネジ孔に螺装することにより、底板311、ひいては下部固定部材310が本体2に固定される(図1参照)。
【0211】
左側板312Lは下部固定部材310の左側部を成す板状の部材である。左側板312Lは左右一対の板面を有する。左側板312Lは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。左側板312Lの下端部は底板311の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板311および左側板312Lが形成される)。
【0212】
左側板312Lの後上端部には貫通孔313Lが形成される。貫通孔313Lは左側板312Lの左右一対の板面を貫通する。
【0213】
左側板312Lにおいて貫通孔313Lの後下方となる部分には貫通孔314Lが形成される。貫通孔314Lは左側板312Lの左右一対の板面を貫通する。貫通孔314Lの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0214】
左側板312Lにおいて貫通孔313Lの前下方となる部分には嵌合孔315Lが形成される。嵌合孔315Lは本発明に係る嵌合孔の実施の一形態である。嵌合孔315Lは左側板312Lの左右一対の板面を貫通する。
本実施形態の嵌合孔315Lは側面視で中心が一致するとともに45°だけ位相(回転角度)がずれた二つの正方形を重ねた形状を有する(嵌合孔315Lの側面視形状は中心が一致するとともに45°だけ位相(回転角度)がずれた二つの正方形を重ねた形状である)。嵌合孔315Lの内周面は本発明に係る嵌合面の実施の一形態である。
【0215】
右側板312Rは下部固定部材310の右側部を成す板状の部材である。右側板312Rは左右一対の板面を有する。右側板312Rは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。右側板312Rの下端部は底板311の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板311および右側板312Rが形成される)。
【0216】
右側板312Rの後上端部には貫通孔313Rが形成される。貫通孔313Rは右側板312Rの左右一対の板面を貫通する。
【0217】
右側板312Rにおいて貫通孔313Rの後下方となる部分には貫通孔314Rが形成される。貫通孔314Rは右側板312Rの左右一対の板面を貫通する。貫通孔314Rの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0218】
右側板312Rにおいて貫通孔313Rの前下方となる部分には嵌合孔315Rが形成される。嵌合孔315Rは本発明に係る嵌合孔の実施の一形態である。嵌合孔315Rは右側板312Rの左右一対の板面を貫通する。
本実施形態の嵌合孔315Rは側面視で中心が一致するとともに45°だけ位相(回転角度)がずれた二つの正方形を重ねた形状を有する(嵌合孔315Rの側面視形状は中心が一致するとともに45°だけ位相(回転角度)がずれた二つの正方形を重ねた形状である)。嵌合孔315Rの内周面は本発明に係る嵌合面の実施の一形態である。
【0219】
背板316は下部固定部材310の後部を成す板状の部材である。背板316は前後一対の板面を有する。背板316の形状は正面視で概ね長方形である。
背板316の下端部は底板311の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板311および背板316が形成される)。
【0220】
背板316の左端部には左側方に突出する突起部316Lが形成され、背板316の右端部には右側方に突出する突起部316Rが形成される。
突起部316Lが貫通孔314Lに貫装されるとともに突起部316Rが貫通孔314Rに貫装されることにより、下部固定部材310は強固な構造体を成す。
【0221】
図28および図29に示す如く、貫通孔313L・313Rにそれぞれ軸受け74・74を嵌装し、軸受け74・74に第一回動ピン71を貫装することにより、第一回動ピン71は軸受け74・74を介して下部固定部材310に回転可能に軸支される。
【0222】
図26、図27および図29に示すカム部材380は本発明に係るカム部材の実施の一形態である。カム部材380は下部固定部材310に支持される。
図29に示す如く、本実施形態のカム部材380は当接部材381および左右一対の嵌合部材382・382を具備する。
【0223】
図30および図31に示す当接部材381は本発明に係る当接部材の実施の一形態である。当接部材381は胴体部381aおよび一対の固定部381c・381cを具備する。
本実施形態の当接部材381は金属材料からなり、胴体部381aおよび一対の固定部381c・381cが一体的に成形される。
【0224】
胴体部381aは一対の端面および外周面を有し、左右方向に延びた(軸線方向が左右方向に平行となる)概ね円柱形状の部分である。胴体部381aの外周面の中途部(本実施形態の場合、胴体部381aの外周面のうち一対の端面の近傍となる部分を除いた部分)は当接面381bを成す。
【0225】
一対の固定部381c・381cは側面視正方形かつ左右方向にやや長い直方体形状の部分である。一対の固定部381c・381cはそれぞれ胴体部381aの両端部(左端部および右端部)に繋がっている。
図31の(b)に示す如く、側面視で一対の固定部381c・381cの中心O2は胴体部381aの中心O1に対して後上方にずれている。
【0226】
左右一対の嵌合部材382・382は本発明に係る回転角度変更部材の実施の一形態である。
本実施形態の左右一対の嵌合部材382・382は樹脂材料からなる。
左右一対の嵌合部材382・382のうち、左側の嵌合部材382の形状は右側の嵌合部材382の形状に対して左右対称である。
以下では図32および図33を用いて左右一対の嵌合部材382・382のうち左側の嵌合部材382について説明し、右側の嵌合部材382については詳細な説明を省略する。
【0227】
左側の嵌合部材382は胴体部382aおよびフランジ部382cを具備する。
左側の嵌合部材382における胴体部382aは左右方向に薄い直方体形状の部分であり、側面視で正方形の右面、平面視で前後方向に長い長方形の上面および下面、並びに、正面視で上下方向に長い前面および後面を有する(左側の胴体部382aには、右面、上面、下面、前面および後面が形成される。)。
本実施形態では、左側の嵌合部材382における胴体部382aの上面、下面、前面および後面がいずれも係止面382b・382b・382b・382bを成す。係止面382b・382b・382b・382bは本発明に係る係止面の実施の一形態である。
【0228】
左側の嵌合部材382の胴体部382aの側面視における一辺の長さは、下部固定部材310に形成された嵌合孔315Lの側面視における二つの正方形の一辺の長さよりもわずかに小さく、右側の嵌合部材382の胴体部382aの側面視における一辺の長さは、下部固定部材310に形成された嵌合孔315Rの側面視における二つの正方形の一辺の長さよりもわずかに小さい。
従って、左側の嵌合部材382(の胴体部382a)を嵌合孔315Lに着脱可能に嵌装することが可能であり、右側の嵌合部材382(の胴体部382a)を嵌合孔315Rに着脱可能に嵌装することが可能である。
【0229】
左側の嵌合部材382におけるフランジ部382cは左右一対の盤面および外周面を有する薄い円盤形状の部分である。左側の嵌合部材382におけるフランジ部382cは左側の嵌合部材382における胴体部382aの右側に繋がっている。
図33の(b)に示す如く、本実施形態では、側面視で胴体部382aの中心とフランジ部382cの中心とが一致し、これらの一致した中心が嵌合部材382の中心O4を成す。また、側面視でフランジ部382cの直径は胴体部382aの外接円の直径よりも大きい。
【0230】
左側の嵌合部材382には固定孔382dが形成される。固定孔382dは左側の嵌合部材382を左右方向に貫通する(胴体部382aの右面からフランジ部382cの左側の盤面まで貫通する)。固定孔382dの側面視形状は正方形である。
図33の(b)に示す如く、側面視で固定孔382dの中心O3は左側の嵌合部材382の中心O4の前下方にずれている。
【0231】
左側の嵌合部材382の固定孔382dの側面視における一辺の長さは、当接部材381の左側の固定部381cの側面視における一辺の長さよりもわずかに大きく、右側の嵌合部材382の固定孔382dの側面視における一辺の長さは、当接部材381の右側の固定部381cの側面視における一辺の長さよりもわずかに大きい。
【0232】
図28および図29に示す如く、当接部材381を下部固定部材310の一対の嵌合孔315L・315Rを貫通する位置に配置し、当接部材381の左側の固定部381cを左側の嵌合部材382の固定孔382dに嵌装しつつ左側の嵌合部材382の胴体部382aを下部固定部材310の嵌合孔315Lに嵌装し、当接部材381の右側の固定部381cを右側の嵌合部材382の固定孔382dに嵌装しつつ右側の嵌合部材382の胴体部382aを下部固定部材310の嵌合孔315Rに嵌装することにより、当接部材381の左右の両端部はそれぞれ左右一対の嵌合部材382・382を介して下部固定部材310に支持される。
【0233】
当接部材381の左側の固定部381cが左側の嵌合部材382の固定孔382dに嵌装されたとき、当接部材381の左側の固定部381cの上面、下面、前面および後面はそれぞれ左側の嵌合部材382の固定孔382dの四つの平面からなる内周面に当接する。
その結果、当接部材381は当接部材381の軸(本実施形態の場合、左右方向に平行な軸)周りに相対回転不能に左側の嵌合部材382に固定される。
【0234】
当接部材381の右側の固定部381cが右側の嵌合部材382の固定孔382dに嵌装されたとき、当接部材381の右側の固定部381cの上面、下面、前面および後面はそれぞれ右側の嵌合部材382の固定孔382dの四つの平面からなる内周面に当接する。
その結果、当接部材381は当接部材381の軸周りに相対回転不能に右側の嵌合部材382に固定される。
【0235】
左側の嵌合部材382の胴体部382aが下部固定部材310の嵌合孔315Lに嵌装されたとき、左側の嵌合部材382の四つの係止面382b・382b・382b・382bが下部固定部材310の嵌合孔315Lの内周面に当接する。
その結果、左側の嵌合部材382は左側の嵌合部材382の軸(本実施形態の場合、左右方向に平行な軸)周りに相対回転不能に下部固定部材310に支持される。
【0236】
右側の嵌合部材382の胴体部382aが下部固定部材310の嵌合孔315Rに嵌装されたとき、右側の嵌合部材382の四つの係止面382b・382b・382b・382bは下部固定部材310の嵌合孔315Rの内周面に当接する。
その結果、左側の嵌合部材382は左側の嵌合部材382の軸(本実施形態の場合、左右方向に平行な軸)周りに相対回転不能に下部固定部材310に支持される。
【0237】
このように、当接部材381は、左右一対の嵌合部材382・382を介して、カム軸(本実施形態では、嵌合孔315Lの中心および嵌合孔315Rの中心を通る軸)周りに相対回転不能に下部固定部材310に固定される。
【0238】
図31の(b)、図33の(b)および図34の(a)に示す如く、当接部材381が左右一対の嵌合部材382・382を介してカム軸周りに相対回転不能に下部固定部材310に固定されたとき、嵌合部材382の中心O4はカム軸に一致する。
また、側面視で当接部材381の一対の固定部381c・381cの中心O2は一対の嵌合部材382・382の固定孔382d・382dの中心O3に一致し、胴体部381aの中心O1は嵌合部材382の中心O4に対して前下方にずれた位置に配置される。
【0239】
図27に示す如く、一対のバネ60・60が発生する付勢力、すなわち、圧縮される方向に弾性変形した一対のバネ60・60が元の形状(外力が作用していないときの形状)に戻ろうとする力(弾性力)により、第一スライダ40は中間部材20の長手方向のうちカム部材380に接近する方向に付勢され、第二スライダ50は中間部材20の長手方向のうち受圧ピン73に接近する方向に付勢される。
【0240】
そのため、図27に示す如く、第一スライダ40のカム当接面41はカム部材380の当接部材381の当接面381bに当接するとともに、第二スライダ50の受圧ピン支持面52が受圧ピン73の外周面に当接する。
結果として、一対のバネ60・60が発生する付勢力により、中間部材20(ひいては本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態)は下部固定部材310に対して開く方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢され、上部固定部材30は中間部材20に対して閉じる方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢される。
【0241】
本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲にあるとき(0°≦θ≦φ°のとき)、上部固定部材30に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ300を閉じようとする回転力と、一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ300を開こうとする回転力と、が概ね平衡するように、第一スライダ40のカム当接面41の形状等が予め定められる。
このように構成することにより、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲において作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には、回動角度θが保持される。
【0242】
また、本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるとき(φ°<θ≦90°のとき)、第一スライダ40の回動ピン支持面42が第一回動ピン71の外周面に当接し、第一スライダ40がカム部材380に接近する方向に移動することが規制されるとともに、第一スライダ40のカム当接面41がカム部材380の当接部材381の当接面381bから離間する。
本実施形態の第一回動ピン71の軸線方向に垂直な面における断面形状は円形であるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲で変化しても、(厳密には中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度が変化しない限りにおいて)中間部材20に対する第一スライダ40の位置、ひいては一対のバネ60・60の全長(一対のバネ60・60が発生する付勢力)は変化しない(図36参照)。
【0243】
従って、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるときには、(厳密には一対のバネ60・60の付勢力に起因して第一スライダ40の回動ピン支持面42と第一回動ピン71の外周面との当接部分には摩擦力が作用するが)実質的には一対のバネ60・60の付勢力が第一スライダ40を介してカム部材380に作用しなくなり、ひいては一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ300を開こうとする回転力がヒンジ300に作用しなくなる。
なお、φの値は後述するカム部材380による一対のバネ60・60の付勢力の調整の結果、多少変動する場合がある。
【0244】
以下では、図34を用いてカム部材380による一対のバネ60・60の付勢力の調整について説明する。
【0245】
図34の(a)および(b)に示す如く、下部固定部材310に形成された左右一対の嵌合孔315L・315Rにそれぞれ嵌装される左右一対の嵌合部材382・382の下部固定部材310に対する位相(カム軸を中心とする回転角度)を変更することにより、左右一対の嵌合部材382・382を介して下部固定部材310に支持される当接部材381の位置を変更することが可能である。
本実施形態の場合、隣り合う位相間で45°だけずれた、異なる8つの位相(カム軸を中心とする回転角度)で当接部材381を支持することが可能である。
【0246】
図34の(a)に示す状態と図34の(b)に示す状態とでは、下部固定部材310に対する当接部材381の位置が異なるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ(ひいては、下部固定部材310に対する中間部材20の回動角度)が同じ場合における「当接部材381に当接する第一スライダ40の中間部材20に対する相対的な位置(ひいては一対のバネ60・60の全長)」が異なる。
すなわち、嵌合孔315L・315Rにそれぞれ嵌装される左右一対の嵌合部材382・382の下部固定部材310に対する位相(回転角度)を変更することにより、下部固定部材310に対する当接部材381の位置を変更(調整)し、ひいては一対のバネ60・60の付勢力を変更(調整)することが可能である。
【0247】
以上の如く、ヒンジ300は、
複合機1の本体2に固定される下部固定部材310と、
下部固定部材310に対する位置を変更可能かつ固定可能に下部固定部材310に支持されるカム部材380と、
下部固定部材310に回動可能に連結されるとともに複合機1の原稿圧着板3に固定される第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)と、
第二ウイング部材に支持されつつカム部材380に接近する方向およびカム部材380から離間する方向に移動可能な第一スライダ40と、
第一スライダ40をカム部材380に接近する方向に付勢することにより第一スライダ40をカム部材380に当接させる一対のバネ60・60と、
を具備する。
このように構成することにより、ヒンジ300を複合機1の本体2および原稿圧着板3から取り外す、あるいは一対のバネ60・60を交換するといった作業を伴わずに一対のバネ60・60の付勢力を容易に調整することが可能である。
【0248】
また、ヒンジ300のカム部材380は、
両端部が下部固定部材310に(本実施形態の場合、一対の嵌合部材382・382を介して)支持されるとともに、中途部には第一スライダ40(のカム当接面41)に当接する面である当接面381bが形成される当接部材381と、
「下部固定部材310に対する当接部材381のカム軸」周りの回転角度を変更することが可能であるとともに変更後のカム軸周りの回転角度を固定可能な一対の嵌合部材382・382と、
を具備し、
「下部固定部材310に対する当接部材381のカム軸」は、下部固定部材310に対する第二ウイング部材の回動軸(本実施形態の場合、第一回動ピン71)に平行な軸であり、嵌合孔315L・315Rの中心を通る直線がこれに相当する。
このように構成することにより、一対の嵌合部材382・382が一対の嵌合孔315L・315Rに嵌装されたときの下部固定部材310に対する回転角度(カム軸周りの回転角度)を変更するだけで下部固定部材310に対する当接部材381の位置を変更することが可能である。
【0249】
また、ヒンジ300の一対の嵌合部材382・382は下部固定部材310に形成された一対の嵌合孔315L・315Rに着脱可能に嵌装され、
当接部材381は、一対の嵌合部材382・382に固定され、
一対の嵌合部材382・382が一対の嵌合孔315L・315Rに嵌装され、一対の嵌合部材382・382に形成された係止面382b・382b・・・と一対の嵌合孔315L・315Rの内周面(嵌合面)とが当接することにより、一対の嵌合部材382・382はカム軸(本実施形態では嵌合孔315L・315Rの中心を通る直線)周りの二以上の異なる回転角度で(本実施形態では、45°ずつずれた八つの異なる回転角度で)相対回転不能に下部固定部材310に固定され、
一対の嵌合部材382・382が一対の嵌合孔315L・315Rに嵌装されたとき、当接部材381はカム軸周りの二以上の異なる回転角度ごと(本実施形態では、45°ずつずれた八つの異なる回転角度ごと)に下部固定部材310に対して異なる位置に配置される。
このように構成することにより、ヒンジ300は一対の嵌合部材382・382を一対の嵌合孔315L・315Rに着脱するだけで(部品等を交換せずに)下部固定部材310に対する当接部材381の位置を容易に変更することが可能である。
【0250】
本実施形態では、当接部材381は一対の嵌合部材382・382に固定される(当接部材381は嵌合部材382・382に対して相対回転不能に支持される)が、本発明はこれに限定されない。
例えば、当接部材が回転角度変更部材に回転可能に軸支され、回転角度変更部材に対する当接部材の回転軸がカム軸に対してオフセットされていても(回転角度変更部材に対する当接部材の回転軸の軸線方向がカム軸の軸線方向に対して平行かつずれていても)よい。
【0251】
なお、当接部材が実質的に回転体形状(例えば、円柱形状等)である場合には、当該当接部材の中心軸がカム軸に対してオフセットされていることを要する。これは、以下の理由による。
実質的に回転体形状を有する当接部材の中心軸がカム軸に対してオフセットされている場合、回転角度変更部材のカム軸周りの回転角度が変更されることにより第一ウイング部材に対する当接部材の位置を変更することが可能である。
これに対して、実質的に回転体形状を有する当接部材の中心軸がカム軸に対してオフセットされていない(当該当接部材の中心軸がカム軸に一致する)場合、回転角度変更部材のカム軸周りの回転角度が変更されても当接部材は自己の中心軸を中心として回転するだけであるため、実質的には第一ウイング部材に対する当接部材の位置が変更されないこととなる。
【0252】
本実施形態のカム部材380は一対の嵌合部材382・382を具備するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、一対の嵌合部材382・382のうちの一つを省略し、当接部材381の両端部のうち省略された嵌合部材382に対応する方の端部を下部固定部材310にカム軸周りに回転可能に軸支しても良い。
【0253】
本実施形態の当接部材381および一対の嵌合部材382・382はそれぞれ別体であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、当接部材および回転角度変更部材が一体的に成形されても良い。
ただし、当接部材および回転角度変更部材が一体的に成形される場合には、回転角度変更部材に対応する部分が第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装された状態と嵌装されない状態(嵌合孔から引き抜かれた状態)とを切り替え可能とするために、当接部材および回転角度変更部材に対応する部分の大きさおよび形状を適宜選択する必要がある。例えば、カム軸の軸線方向から見て当接部材に対応する部分が回転角度変更部材に対応する部分に隠れるような形状としても良い。
【0254】
また、ヒンジ300が具備する第一回動ピン71は、
原稿圧着板3が複合機1の本体2に対して閉じているときを基準として第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)が第一ウイング部材(本実施形態の場合、下部固定部材310)に対して開く方向に所定の角度以上回動したとき(本実施形態の場合、回動角度θがφ°よりも大きくなったとき)に第一スライダ40に当接することにより、第一スライダ40がカム部材380に接近する方向に移動することを規制し、第一スライダ40をカム部材380から離間させる。
このように構成することにより、ヒンジ300の第二ウイング部材をヒンジ300の第一ウイング部材に対して回動させることにより回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、カム部材380には一対のバネ60・60の付勢力が作用しなくなる。
従って、回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、一対の嵌合部材382・382を一対の嵌合孔315L・315Rに嵌装するときのカム軸周りの回転角度を変更することにより当接部材381を下部固定部材310に対して移動させる作業が容易となる(一対の嵌合部材382・382を一対の嵌合孔315L・315Rから引き抜き、カム軸周りの回転角度を変更して一対の嵌合孔315L・315Rに嵌装する作業を行う場合に大きな力を要さない)。
【0255】
本実施形態では回動角度θがφ°よりも大きいときに第一回動ピン71が第一スライダ40に当接し、第一スライダ40がカム部材380から離間するが、本発明においてスライド規制部材がスライド部材に当接するときの「所定の角度」は本発明に係るヒンジの用途等に応じて適宜選択されることが望ましい。
【0256】
本実施形態では係止面382b・382b・・・が形成される部分である一対の嵌合部材382・382の胴体部382aをカム軸の長手方向から見た形状(側面視形状)は正四角形であり、嵌合面(嵌合孔315L・315Rの内周面)が形成される部分である嵌合孔315L・315Rをカム軸の長手方向から見た形状(側面視形状)は中心が一致するとともに45°だけ位相(回転角度)がずれた二つの正方形を重ねた形状であるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、嵌合部材に三角柱状の部分を形成するとともに当該三角柱状の部分の三つの側面を係止面と成し、第一ウイング部材に当該三角柱状の部分を嵌装することが可能な正三角形の貫通孔を形成してこれを嵌合孔としても良い。
【0257】
以下では図1、図30、図31、および図37から図48を用いて本発明に係るヒンジの第四実施形態であるヒンジ400について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ400は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
以下では便宜上、ヒンジ400を構成する各部材のうち「図1から図16に示すヒンジ100と同じ形状の部材」については、図1から図16に示すヒンジ100において対応する部材と同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0258】
図37、図38および図40に示す如く、ヒンジ400は下部固定部材410、中間部材20、第一回動ピン71、一対の軸受け74・74、上部固定部材30、第二回動ピン72、受圧ピン73、第一スライダ40、第二スライダ50、一対のバネ60・60およびカム部材480を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ400の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ400を構成する各部材の形状を説明する(図1および図47参照)。
【0259】
図39に示す下部固定部材410は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。本実施形態の下部固定部材410は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
下部固定部材410は底板411、左側板412L、右側板412R、背板416、前軸支板417および後軸支板418を具備する。
【0260】
底板411は下部固定部材410の下部を成す板状の部材である。底板411は上下一対の板面を有する。底板411の形状は平面視で概ね左右方向にやや長い長方形である。
【0261】
底板411の前端部かつ左右中央部からわずかに左寄りとなる部分には貫通孔411aが形成される。貫通孔411aは底板411の上下一対の板面を貫通する。
【0262】
底板411の後半部かつ左右中央部からわずかに左寄りとなる部分には係合孔411bが形成される。係合孔411bは底板411の上下一対の板面を貫通する。係合孔411bは第一の貫通孔と当該第一の貫通孔よりも直径が小さい第二の貫通孔とが前後に連なった形状を有する。
【0263】
本実施形態では、複合機1の本体2の上面後部から上方に突出した係合突起(不図示)を係合孔411bに係合し、ネジ(不図示)を貫通孔411aに貫装し、当該ネジを本体2の上面後部に形成されたネジ孔に螺装することにより、底板411、ひいては下部固定部材410が本体2に固定される(図1参照)。
【0264】
左側板412Lは下部固定部材410の左側部を成す板状の部材である。左側板412Lは左右一対の板面を有する。左側板412Lは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。左側板412Lの下端部は底板411の左端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板411および左側板412Lが形成される)。
【0265】
左側板412Lの後上端部には貫通孔413Lが形成される。貫通孔413Lは左側板412Lの左右一対の板面を貫通する。
【0266】
左側板412Lにおいて貫通孔413Lの後下方となる部分には貫通孔414Lが形成される。貫通孔414Lは左側板412Lの左右一対の板面を貫通する。貫通孔414Lの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0267】
左側板412Lにおいて貫通孔413Lの前下方となる部分には貫通孔415Lが形成される。貫通孔415Lは左側板412Lの左右一対の板面を貫通する。
【0268】
右側板412Rは下部固定部材410の右側部を成す板状の部材である。右側板412Rは左右一対の板面を有する。右側板412Rは側面視で概ね前下がりの階段の如き形状を有する。右側板412Rの下端部は底板411の右端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板411および右側板412Rが形成される)。
【0269】
右側板412Rの後上端部には貫通孔413Rが形成される。貫通孔413Rは右側板412Rの左右一対の板面を貫通する。
【0270】
右側板412Rにおいて貫通孔413Rの後下方となる部分には貫通孔414Rが形成される。貫通孔414Rは右側板412Rの左右一対の板面を貫通する。貫通孔414Rの形状は側面視で上下方向に細長い長方形である。
【0271】
右側板412Rにおいて貫通孔413Rの前下方となる部分には貫通孔415Rが形成される。貫通孔415Rは右側板412Rの左右一対の板面を貫通する。
【0272】
背板416は下部固定部材410の後部を成す板状の部材である。背板416は前後一対の板面を有する。背板416の形状は正面視で概ね長方形である。
背板416の下端部は底板411の後端部に繋がっている(一枚の金属板を直角に折り曲げることにより、底板411および背板416が形成される)。
【0273】
背板416の左端部には左側方に突出する突起部416Lが形成され、背板416の右端部には右側方に突出する突起部416Rが形成される。
突起部416Lが貫通孔414Lに貫装されるとともに突起部416Rが貫通孔414Rに貫装されることにより、下部固定部材410は強固な構造体を成す。
【0274】
前軸支板417は右側板412Rにおいて貫通孔415Rの前下方となる位置に形成され、右側板412Rの右側方に突出する板状の部材である。前軸支板417は前後一対の板面を有する。前軸支板417の正面視形状は上下方向にやや長い長方形である。
前軸支板417の左端部は右側板412Rに繋がっている(一枚の金属板に適宜切り込みを形成し、切り込みで囲まれた部分をその他の部分に対して直角に折り曲げることにより、右側板412Rおよび前軸支板417が形成される)。
前軸支板417には軸支孔417aが形成される。軸支孔417aは前軸支板417の前後一対の板面を貫通する。
【0275】
後軸支板418は右側板412Rにおいて貫通孔415Rの後下方となる位置に形成され、右側板412Rの右側方に突出する板状の部材である。後軸支板418は前後一対の板面を有する。後軸支板418の正面視形状は上下方向にやや長い長方形である。
後軸支板418の左端部は右側板412Rに繋がっている(一枚の金属板に適宜切り込みを形成し、切り込みで囲まれた部分をその他の部分に対して直角に折り曲げることにより、右側板412Rおよび後軸支板418が形成される)。
後軸支板418には軸支孔418aが形成される。軸支孔418aは後軸支板418の前後一対の板面を貫通する。
本実施形態では、正面視で軸支孔417aおよび軸支孔418aが重なる(一致する)。
【0276】
図39および図40に示す如く、貫通孔413L・413Rにそれぞれ軸受け74・74を嵌装し、軸受け74・74に第一回動ピン71を貫装することにより、第一回動ピン71は軸受け74・74を介して下部固定部材410に回転可能に軸支される。
【0277】
図37、図38および図40に示すカム部材480は本発明に係るカム部材の実施の一形態である。カム部材480は下部固定部材410に支持される。
図40に示す如く、本実施形態のカム部材480は当接部材481、軸支部材482、ウォームホイール483およびウォーム484を具備する。
【0278】
図30および図31に示す当接部材481は本発明に係る当接部材の実施の一形態である。当接部材481は胴体部481aおよび一対の固定部481c・481cを具備する。
本実施形態の当接部材481は金属材料からなり、胴体部481aおよび一対の固定部481c・481cが一体的に成形される。
【0279】
胴体部481aは一対の端面および外周面を有し、左右方向に延びた概ね円柱形状の部分である。胴体部481aの外周面の中途部(本実施形態の場合、胴体部481aの外周面のうち一対の端面の近傍となる部分を除いた部分)は当接面481bを成す。
【0280】
一対の固定部481c・481cは側面視正方形かつ左右方向にやや長い直方体形状の部分である。一対の固定部481c・481cはそれぞれ胴体部481aの両端部に繋がっている。
図31の(b)に示す如く、側面視で一対の固定部481c・481cの中心O2は胴体部481aの中心O1に対して後上方にずれている。
【0281】
図41および図42に示す軸支部材482は胴体部482aおよびフランジ部482bを具備する。
本実施形態の軸支部材482は樹脂材料からなり、胴体部482aおよびフランジ部482bが一体的に成形される。
胴体部482aは右側の盤面および外周面を有する左右方向に薄い円盤形状の部分である。胴体部482aの外径(直径)は貫通孔415Lよりもわずかに小さい。
フランジ部482bは左右一対の盤面および外周面を有する左右方向に薄い円盤形状の部分である。フランジ部482bの外径(直径)は貫通孔415Lよりも大きい。
フランジ部482bは胴体部482aの左側に繋がっており、側面視で胴体部482aの中心およびフランジ部482bの中心は一致し(重なり)、これらの一致した中心が当接部材481の中心O6を成す(図42の(b)参照)。
軸支部材482には固定孔482cが形成される。固定孔482cは軸支部材482を左右方向に貫通する(胴体部482aの右側の盤面からフランジ部482bの左側の盤面まで貫通する)。固定孔482cの側面視形状は正方形である。
図42の(b)に示す如く、側面視で固定孔482cの中心O5は軸支部材482の中心O6の前下方にずれている。
図40に示す如く、軸支部材482の胴体部482aを下部固定部材410の貫通孔415Lに右方向に向かって嵌装することにより、軸支部材482は下部固定部材410に回転可能に軸支される。
また、軸支部材482が貫通孔415Lに嵌装されたとき、フランジ部482bの右側の盤面が左側板412Lの左側の板面に当接するので、下部固定部材410に対する軸支部材482の左右方向の移動が規制される。
【0282】
軸支部材482の固定孔482cの側面視における一辺の長さは、当接部材481の左側の固定部481cの側面視における一辺の長さよりもわずかに大きい。
【0283】
図43および図44に示すウォームホイール483は本発明に係るウォームホイールの実施の一形態である。
本実施形態のウォームホイール483は歯車部483aおよび軸支部483bを具備する。本実施形態のウォームホイール483は金属材料からなり、歯車部483aおよび軸支部483bが一体的に成形される。
歯車部483aはウォームホイール483のうち、ハス歯歯車としての機能を果たす部分である。歯車部483aは左右一対の盤面を有し、歯車部483aの外周部には複数のハス歯が形成される。歯車部483aの外径(ハス歯の頂点を結んだ円周の直径)は貫通孔415Rよりも大きい。
軸支部483bは左側の盤面および外周面を有する左右方向に薄い円盤形状の部分である。軸支部483bの外径(直径)は貫通孔415Rよりもわずかに小さい。
軸支部483bは歯車部483aの左側に繋がっており、側面視で歯車部483aの中心および軸支部483bの中心は一致し(重なり)、これらの一致した中心がウォームホイール483の中心O8を成す(図44の(b)参照)。
ウォームホイール483には固定孔483cが形成される。固定孔483cはウォームホイール483を左右方向に貫通する(歯車部483aの右側の盤面から軸支部483bの左側の盤面まで貫通する)。固定孔483cの側面視形状は正方形である。
図44の(b)に示す如く、側面視で固定孔483cの中心O7はウォームホイール483の中心O8の前下方にずれている。
図40に示す如く、ウォームホイール483の軸支部483bを下部固定部材410の貫通孔415Rに左方向に向かって嵌装することにより、ウォームホイール483は下部固定部材410に回転可能に軸支される。
また、ウォームホイール483が貫通孔415Rに嵌装されたとき、歯車部483aの左側の盤面が右側板412Rの右側の板面に当接するので、下部固定部材410に対するウォームホイール483の左右方向の移動が規制される。
【0284】
ウォームホイール483の固定孔483cの側面視における一辺の長さは、当接部材481の右側の固定部481cの側面視における一辺の長さよりもわずかに大きい。
【0285】
図39および図40に示す如く、当接部材481を下部固定部材410の一対の貫通孔415L・415Rを貫通する位置に配置し、当接部材481の左側の固定部481cを軸支部材482の固定孔482cに嵌装しつつ軸支部材482の胴体部482aを下部固定部材410の貫通孔415Lに嵌装し、当接部材481の右側の固定部481cをウォームホイール483の固定孔483cに嵌装しつつウォームホイール483の軸支部483bを下部固定部材410の貫通孔415Rに嵌装することにより、当接部材481の左右の両端部は軸支部材482およびウォームホイール483を介して下部固定部材410に支持される。
より詳細には、当接部材481は軸支部材482およびウォームホイール483を介して下部固定部材410に「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」周りに回転可能に軸支される。
なお、本実施形態では、「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」は、貫通孔415L・415Rを通る直線、並びに、下部固定部材410に軸支された軸支部材482の中心O6および下部固定部材410に軸支されたウォームホイール483の中心O8を通る直線に一致する。
【0286】
当接部材481の左右の固定部481c・481cがそれぞれ固定孔482cおよび固定孔483cに嵌装されたとき、左右の固定部481c・481cの外周を成す四つの面はそれぞれ固定孔482cおよび固定孔483cの内周面に当接する。
そのため、軸支部材482およびウォームホイール483は、当接部材481に対して相対回転不能に固定される(当接部材481、軸支部材482およびウォームホイール483は一体的に回転する)。
【0287】
図45に示すウォーム484は本発明に係るウォームの実施の一形態である。
ウォーム484は胴体部484aおよび頭部484bを具備する。本実施形態のウォーム484は金属材料からなり、胴体部484aおよび頭部484bが一体的に成形される。
【0288】
胴体部484aは前後一対の端面および外周面を有し、前後方向に平行な軸線を有する概ね円柱形状の部分である。胴体部484aの外周面には螺旋状のネジ溝が形成される。
なお、本実施形態の胴体部484aの外周面に形成される螺旋状のネジ溝は左ネジであり、かつネジ溝のねじり角度は安息角(摩擦角)よりも小さい。
胴体部484aの外周面の後端部には、ネジ溝とは別にリング状の溝が形成される。
【0289】
頭部484bは胴体部484aの前端部に繋がる薄い円柱形状の部分である。
頭部484bの中心線は胴体部484aの中心線に一致し、これらの一致した中心線がウォーム484の軸線を成す。本実施形態ではウォーム484の軸線は前後方向に平行である。
頭部484bの前側の端面には工具(ドライバー等)を相対回転不能に嵌装するための穴が形成される。
【0290】
図39および図40に示す如く、ウォーム484の胴体部484aを下部固定部材410の前軸支板417に形成された軸支孔417aおよび後軸支板418に形成された軸支孔418aに貫装することにより、ウォーム484は下部固定部材410に(ウォーム484の軸線周りに)回転可能に軸支される。
【0291】
ウォーム484の胴体部484aを軸支孔417aおよび軸支孔418aに貫装し、頭部484bの後端面が前軸支板417の前側の板面に当接したとき、ウォーム484の胴体部484aの外周面においてネジ溝が形成された部分は前軸支板417および後軸支板418により挟まれた位置に配置される。
【0292】
ウォーム484の胴体部484aの外周面の後端部に形成されたリング状の溝は、後軸支板418の後側の板面の後方に配置される。当該リング状の溝にEリング(不図示)を嵌装することにより、ウォーム484は下部固定部材410に対して前後方向に(ウォーム484の軸線方向に)移動不能に支持される。
【0293】
図40および図46に示す如く、ウォーム484が下部固定部材410に回転可能に軸支されたとき、ウォームホイール483の歯車部483aの外周部に形成された複数のハス歯はウォーム484の胴体部484aに形成されたネジ溝に噛合する。
【0294】
本実施形態では、ウォームホイール483およびウォーム484を合わせたものが本発明に係る回転角度変更部材としての機能を果たす。
すなわち、ウォームホイール483およびウォーム484を合わせたものは本発明に係る回転角度変更部材の実施の一形態である。
【0295】
図38に示す如く、一対のバネ60・60が発生する付勢力、すなわち、圧縮される方向に弾性変形した一対のバネ60・60が元の形状(外力が作用していないときの形状)に戻ろうとする力(弾性力)により、第一スライダ40は中間部材20の長手方向のうちカム部材480に接近する方向に付勢され、第二スライダ50は中間部材20の長手方向のうち受圧ピン73に接近する方向に付勢される。
【0296】
そのため、図38に示す如く、第一スライダ40のカム当接面41はカム部材480の当接部材481の当接面481bに当接するとともに、第二スライダ50の受圧ピン支持面52が受圧ピン73の外周面に当接する。
結果として、一対のバネ60・60が発生する付勢力により、中間部材20(ひいては本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態)は下部固定部材410に対して開く方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢され、上部固定部材30は中間部材20に対して閉じる方向(本実施形態では、右側面視で反時計回りとなる方向)に回動するように付勢される。
【0297】
本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲にあるとき(0°≦θ≦φ°のとき)、上部固定部材30に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ400を閉じようとする回転力と、一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ400を開こうとする回転力と、が概ね平衡するように、第一スライダ40のカム当接面41の形状等が予め定められる。
このように構成することにより、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが0°からφ°までの範囲において作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には、回動角度θが保持される。
【0298】
また、本実施形態では、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるとき(φ°<θ≦90°のとき)、第一スライダ40の回動ピン支持面42が第一回動ピン71の外周面に当接し、第一スライダ40がカム部材480に接近する方向に移動することが規制されるとともに、第一スライダ40のカム当接面41がカム部材480の当接部材481の当接面481bから離間する。
本実施形態の第一回動ピン71の軸線方向に垂直な面における断面形状は円形であるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲で変化しても、(厳密には中間部材20に対する上部固定部材30の回動角度が変化しない限りにおいて)中間部材20に対する第一スライダ40の位置、ひいては一対のバネ60・60の全長(一対のバネ60・60が発生する付勢力)は変化しない(図48参照)。
【0299】
従って、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θがφ°から90°までの範囲にあるときには、(厳密には一対のバネ60・60の付勢力に起因して第一スライダ40の回動ピン支持面42と第一回動ピン71の外周面との当接部分には摩擦力が作用するが)実質的には一対のバネ60・60の付勢力が第一スライダ40を介してカム部材480に作用しなくなり、ひいては一対のバネ60・60の付勢力に起因してヒンジ400を開こうとする回転力がヒンジ400に作用しなくなる。
なお、φの値は後述するカム部材480による一対のバネ60・60の付勢力の調整の結果、多少変動する場合がある。
【0300】
以下では、図46を用いてカム部材480による一対のバネ60・60の付勢力の調整について説明する。
【0301】
図46の(a)に示す状態でウォーム484の頭部484bに形成された穴に工具を嵌装してウォーム484を正面視で反時計回りに回転させた場合、ウォーム484に噛合するウォームホイール483は右側面視でカム軸周りに反時計回りに回転する。
その結果、当接部材481はウォームホイール483とともに右側面視でカム軸周りに反時計回りに回転し、図46の(a)に示す状態に移行する。
【0302】
図46の(a)に示す状態と図46の(b)に示す状態とでは、下部固定部材410に対する当接部材481の位置が異なるため、複合機1の本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ(ひいては、下部固定部材410に対する中間部材20の回動角度)が同じ場合における「当接部材481に当接する第一スライダ40の中間部材20に対する相対的な位置(ひいては一対のバネ60・60の全長)」が異なる。
すなわち、ウォーム484をウォーム484の軸線周りに回転させることにより、下部固定部材410に対する当接部材481の位置を変更(調整)し、ひいては一対のバネ60・60の付勢力を変更(調整)することが可能である。
【0303】
以上の如く、ヒンジ400は、
複合機1の本体2に固定される下部固定部材410と、
下部固定部材410に対する位置を変更可能かつ固定可能に下部固定部材410に支持されるカム部材480と、
下部固定部材410に回動可能に連結されるとともに複合機1の原稿圧着板3に固定される第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)と、
第二ウイング部材に支持されつつカム部材480に接近する方向およびカム部材480から離間する方向に移動可能な第一スライダ40と、
第一スライダ40をカム部材480に接近する方向に付勢することにより第一スライダ40をカム部材480に当接させる一対のバネ60・60と、
を具備する。
このように構成することにより、ヒンジ400を複合機1の本体2および原稿圧着板3から取り外す、あるいは一対のバネ60・60を交換するといった作業を伴わずに一対のバネ60・60の付勢力を容易に調整することが可能である。
【0304】
また、ヒンジ400のカム部材480は、
両端部が下部固定部材410に支持されるとともに、中途部には当接面481bが形成される当接部材481と、
「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」周りの回転角度を変更することが可能であるとともに変更後の「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」周りの回転角度を固定可能な回転角度変更部材(本実施形態では、ウォームホイール483およびウォーム484を合わせたもの)と、
を具備し、
「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」は下部固定部材410に対する第二ウイング部材の回動軸(本実施形態の場合、第一回動ピン71)に平行であり、貫通孔415L・415Rを通る直線、並びに、下部固定部材410に軸支された軸支部材482の中心O6および下部固定部材410に軸支されたウォームホイール483の中心O8を通る直線に一致する。
また、ヒンジ400の当接部材481は「下部固定部材410に対する当接部材481のカム軸」周りに回転可能に下部固定部材410に軸支され、
ヒンジ400における回転角度変更部材は、
当接部材481に相対回転不能に固定されるウォームホイール483と、
下部固定部材410に回転可能に軸支され、ウォームホイール483に噛合するウォーム484と、
を具備する。
このように構成することにより、ウォーム484を回転させるだけで下部固定部材410に対する当接部材481の位置を変更することが可能である。
【0305】
本実施形態では、ウォームホイール483がウォーム484に直接的に噛合するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ウォームホイール483およびウォーム484に噛合する別の歯車を設けても良い。この場合、当該別の歯車の歯数を適宜選択することによりウォームホイール483およびウォーム484の間の減速比を変更することが可能である。
また、別の歯車として複数の傘歯車等を用いることにより、ウォーム484の軸線方向をウォームホイール483の回転軸(カム軸)に対して垂直な方向とは異なる方向に設定することも可能である。
【0306】
また、ヒンジ400が具備する第一回動ピン71は、
原稿圧着板3が複合機1の本体2に対して閉じているときを基準として第二ウイング部材(本実施形態では、中間部材20、上部固定部材30、第二スライダ50、第二回動ピン72および受圧ピン73を合わせたもの)が第一ウイング部材(本実施形態の場合、下部固定部材410)に対して開く方向に所定の角度以上回動したとき(本実施形態の場合、回動角度θがφ°よりも大きくなったとき)に第一スライダ40に当接することにより、第一スライダ40がカム部材480に接近する方向に移動することを規制し、第一スライダ40をカム部材480から離間させる。
このように構成することにより、ヒンジ400の第二ウイング部材をヒンジ400の第一ウイング部材に対して回動させることにより回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、カム部材480には一対のバネ60・60の付勢力が作用しなくなる。
従って、回動角度θがφ°よりも大きくなったときには、ウォーム484を回転させることにより当接部材481を下部固定部材410に対して移動させる作業が容易となる(ウォーム484を回転させる作業を行う場合に大きな力を要さない)。
【0307】
本実施形態では回動角度θがφ°よりも大きいときに第一回動ピン71が第一スライダ40に当接し、第一スライダ40がカム部材480から離間するが、本発明においてスライド規制部材がスライド部材に当接するときの「所定の角度」は本発明に係るヒンジの用途等に応じて適宜選択されることが望ましい。
【符号の説明】
【0308】
1 複合機
2 本体(第一連結対象物)
3 原稿圧着板(第二連結対象物)
20 中間部材(第二ウイング部材の一部)
30 上部固定部材(第二ウイング部材の一部)
40 第一スライダ(スライド部材)
50 第二スライダ(第二ウイング部材の一部)
60・60 バネ(付勢部材)
71 第一回動ピン(回動軸)
72 第二回動ピン(第二ウイング部材の一部)
73 受圧ピン(第二ウイング部材の一部)
110 下部固定部材(第一ウイング部材)
114L・114R 一対の第一長孔
180 カム部材
181 当接部材
181a 当接面
183 移動部材
186L・186R 一対の第二長孔
189 移動位置調整ネジ(移動位置調整部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材に対する位置を変更可能かつ固定可能に前記第一ウイング部材に支持されるカム部材と、
前記第一ウイング部材に回動可能に連結されるとともに第二連結対象物に固定される第二ウイング部材と、
前記第二ウイング部材に支持されつつ前記カム部材に接近する方向および前記カム部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記カム部材に接近する方向に付勢することにより前記スライド部材を前記カム部材に当接させる付勢部材と、
を具備する、
ヒンジ。
【請求項2】
前記カム部材は、
両端部が前記第一ウイング部材に形成された一対の第一長孔に貫装され、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対して所定の移動方向に移動可能に支持され、一対の第二長孔が形成され、前記一対の第二長孔には前記当接部材が貫装される移動部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記移動部材の前記移動方向における位置である移動位置を変更するとともに前記移動部材を前記第一ウイング部材に固定することが可能な移動位置調整部材と、
を具備し、
前記一対の第一長孔の長手方向、前記一対の第二長孔の長手方向および前記移動方向はいずれも前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸の軸線方向に対して垂直であり、
前記一対の第二長孔の長手方向は前記移動方向に対して傾斜し、
前記一対の第一長孔の長手方向は前記一対の第二長孔の長手方向に対して傾斜する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記移動位置調整部材は、
前記第一ウイング部材または前記移動部材の一方に螺装され、
前記第一ウイング部材または前記移動部材の他方に前記移動位置調整部材の軸線方向に相対移動不能かつ前記移動位置調整部材の軸線周りに回転可能に支持され、
前記移動位置調整部材の軸線方向は前記移動方向に対して平行である、
請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備する、
請求項2または請求項3に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねる、
請求項4に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記カム部材は、
一端部が前記第一ウイング部材に回動可能に連結される一対のアーム部材と、
両端部が前記一対のアーム部材の他端部に支持され、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記一対のアーム部材の回動角度であるアーム角度を変更可能かつ固定可能に前記一対のアーム部材を前記第一ウイング部材に固定するアーム角度調整部材と、
を具備する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記アーム角度調整部材は、
前記第一ウイング部材において前記一対のアーム部材の回動中心から等距離となる位置に形成される複数のウイング側貫通孔のうちのいずれかに貫装されるとともに、前記一対のアーム部材に形成されるアーム部材側貫通孔に貫装されるピンである、
請求項6に記載のヒンジ。
【請求項8】
前記第一ウイング部材には、前記第一ウイング部材に対する前記一対のアーム部材の回動軸を中心とする円弧状の支持面が形成され、
前記当接部材は前記支持面に当接する、
請求項6または請求項7に記載のヒンジ。
【請求項9】
前記支持面は前記アーム軸を中心とする円弧状の長孔である支持孔の内周面であり、
前記当接部材は前記支持孔に貫装される、
請求項8に記載のヒンジ。
【請求項10】
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備する、
請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項11】
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねる、
請求項10に記載のヒンジ。
【請求項12】
前記カム部材は、
両端部が前記第一ウイング部材に支持されるとともに、中途部には前記スライド部材に当接する面である当接面が形成される当接部材と、
前記第一ウイング部材に対する前記当接部材のカム軸周りの回転角度を変更することが可能であるとともに変更後の前記カム軸周りの回転角度を固定可能な回転角度変更部材と、
を具備し、
前記カム軸は第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸に平行である、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項13】
前記回転角度変更部材は前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に着脱可能に嵌装され、
前記当接部材は前記回転角度変更部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装され、前記回転角度変更部材に形成された係止面と前記嵌合孔の内周面である嵌合面とが当接することにより、前記回転角度変更部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度で相対回転不能に前記第一ウイング部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装されたとき、前記当接部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度ごとに前記第一ウイング部材に対して異なる位置に配置される、
請求項12に記載のヒンジ。
【請求項14】
前記回転角度変更部材および前記当接部材は、一体的に成形される、
請求項13に記載のヒンジ。
【請求項15】
前記回転角度変更部材は前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に着脱可能に嵌装され、
前記当接部材は、前記回転角度変更部材が前記嵌合孔に嵌装されたときの前記カム軸に平行な軸線方向を有するとともに前記カム軸からずれた別の軸周りに回転可能に前記回転角度変更部材に軸支され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に形成された嵌合孔に嵌装され、前記回転角度変更部材に形成された係止面と前記嵌合孔の内周面である嵌合面とが当接することにより、前記回転角度変更部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度で相対回転不能に前記第一ウイング部材に固定され、
前記回転角度変更部材が前記第一ウイング部材に固定されたとき、前記当接部材は前記カム軸周りの二以上の異なる回転角度ごとに前記第一ウイング部材に対して異なる位置に配置される、
請求項12に記載のヒンジ。
【請求項16】
前記当接部材は前記カム軸周りに回転可能に前記第一ウイング部材に軸支され、
前記回転角度変更部材は、
前記当接部材に相対回転不能に固定されるウォームホイールと、
前記第一ウイング部材に回転可能に軸支され、前記ウォームホイールに噛合するウォームと、
を具備する、
請求項12に記載のヒンジ。
【請求項17】
前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して閉じているときを基準として前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部に対して開く方向に所定の角度以上回動したときに前記スライド部材に当接することにより、前記スライド部材が前記カム部材に接近する方向に移動することを規制し、前記スライド部材を前記カム部材から離間させるスライド規制部材を具備する、
請求項12から請求項16までのいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項18】
前記スライド規制部材は、
前記第一ウイング部材に対する前記第二ウイング部材の回動軸を兼ねる、
請求項17に記載のヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2011−175130(P2011−175130A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39729(P2010−39729)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】