説明

ヒンバシン類似体の合成において使用される{[5−(3−フルオロフェニル)−ピリジン−2−イル]メチル}ホスホン酸ジエチルの合成

【課題】トロンビン受容体アンタゴニストとして有用なヒンバシン類似体の合成中間体として有用であるホスホン酸エステルの新規調製方法の提供。
【解決手段】下記スキーム


[式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基等を示し、R11は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基等を示し、Xは、Cl、Br、またはIであり、Xは、ClおよびBrから選択され、PdLは、パラジウム金属担持触媒等である。L−誘導体化試薬は、特定のアルコール官能基を、任意の脱離基に変換する部分である。]によって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本願は、それら自体トロンビン受容体アンタゴニストとして有用なヒンバシン(himbacine)類似体の合成に有用である{[5−(3−フルオロフェニル)−ピリジン−2−イル]アルキル}ホスホン酸ジアルキル化合物の調製における新規方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2006年1月12日出願の同時係属中の米国特許出願第11/331,324号に記載のように(本明細書では「’324出願」とする)、ヒンバシン類似体は、トロンビン受容体アンタゴニストとして有用である。トロンビンは、異なる細胞型において様々な活性を有することが知られている。トロンビン受容体は、ヒト血小板、血管平滑筋細胞、内皮細胞、および線維芽細胞などの様々な細胞型に存在することが知られている。トロンビン受容体アンタゴニストは、血栓障害、炎症性障害、アテローム硬化性障害、および線維増殖性障害、ならびに例えばその開示が参照によって組み込まれる特許文献1に記載のように、トロンビンおよびその受容体が病理学的役割を担う他の障害の処置に有用となり得る。血栓障害、炎症性障害、アテローム硬化性障害、および線維増殖性障害の処置に有用なトロンビン受容体アンタゴニストのさらなる例、ならびにこれらの化合物の合成は、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献2(本明細書では「’437出願」とする)に記載されている。
【0003】
同定されている1つのトロンビン受容体アンタゴニストは、化合物11の構造を有する、ヒンバシン由来の、経口投与で生体利用可能な化合物である。
【0004】
【化1】

これおよび類似のヒンバシン類似体トロンビン受容体アンタゴニストの合成方法は、特許文献1および特許文献2に開示されており、トロンビン受容体アンタゴニストの使用方法は、特許文献3に開示されており、特定のヒンバシン類似体の重硫酸塩の合成は、特許文献4に開示されており、それらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0005】
本明細書で先に述べた’324出願に記載のように、化合物11は、化合物15:
【0006】
【化2】

から、スキームIに従って化合物16を用いた処理によって合成することができる。
【0007】
【化3】

化合物15は、化合物1:
【0008】
【化4】

(式中、RおよびRは、互いに独立に、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、およびヘテロアリール基からなる群から選択される)から、参照によって本明細書に組み込まれる、同時係属中の’324出願に示される合成スキームに従う4つのステップで、順に調製される。
【0009】
同時係属中の’324出願には、以下のスキームIIに従う化合物16の調製が記載されている。
【0010】
【化5】

スキームIIに関して、Lは、ハロゲン、エステル、スルホン酸エステル、およびリン酸エステルから選択される脱離基であり、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアリールアルキル基から選択され、R11は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される。’324出願に記載のように、化合物16の調製のためのスキームでは、炭酸ナトリウムでの最初の処理によってピリジルアルコール遊離塩基が放出され、その後このアルコールが反応してヒドロキシル基が脱離基(L)に変換することによって、化合物36を化合物37に変換し、該脱離基(L)を亜リン酸エステル試薬で置き換えて、対応するホスホン酸エステルを形成することができる。したがって’324出願に記載のように、好ましくは、化合物37は、化合物36から単離したアルコール中間体の溶液を、ヒドロキシル官能基を脱離基に変換する試薬と共に加熱することによって調製され、該脱離基はジオルガノ−亜リン酸エステル化合物で置き換えることができる。好ましくは、Lはハロゲン、好ましくはClであり、好ましくはアルコールを、ハロゲン化試薬、例えばPBr、PCl、PCl、および塩化チオニル、好ましくは塩化チオニルで処理し、その後炭酸ナトリウムでこの反応をクエンチし、生成物をトルエン中に抽出することによって調製される。
【0011】
トルエン抽出物中に含有される化合物37は、強塩基、例えば金属アルキル、例えばリチウムアルキルおよび金属アミド、例えばリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下、化合物37の溶液をジオルガノ亜リン酸エステルと反応させることによって化合物38に変換する。
【0012】
化合物38の化合物16への変換は、化合物38をボロネートと反応させることによって行われ、この反応はパラジウム触媒によって触媒される。使用される触媒は、均一触媒、例えばパラジウムホスフィン、例えばパラジウムトリストリフェニルホスフィン、およびパラジウムトリスオルト−トリルホスフィン(tolyphosphine)、ならびにアミン触媒、例えばビスパラジウムトリスビピリジン、または不均一触媒、例えばカーボンブラック上に担持されたパラジウムであってよい。
【0013】
様々なトロンビン受容体アンタゴニストの調製において非常に重要な中間体である化合物16の合成について、’345出願で提示されているスキームでは、4つのステップのうち2つで中間体の単離または抽出が必要とされ、1つのステップでは強力な塩基と、水に反応しやすいジオルガノ−亜リン酸エステル化合物が利用される。さらに、未単離の化合物38をボロネートと反応させて化合物16を形成するスキームIIに示されるステップは、可変の結果をもたらし、それによってスキームIIの方法は、商業的量の材料の調製への使用には望ましくないものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,063,847号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0216437号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0192753号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0176418号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(課題)
前述のことを考慮すると、トロンビン受容体アンタゴニストの調製にとって非常に重要な化合物の調製に有用な合成スキームが必要とされている。特に必要なのは、より安全な材料を利用し、商業規模の調製に適するバッチサイズに実際的に拡大する反応ステップおよび方法を提供し、中間体および生成物の単離および精製ならびに生成物の収率改善のための装置を最小限しか必要としない合成スキームである。これらおよび他の目的および/または利点は、本発明によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
一実施形態では、本発明は、トロンビン受容体アンタゴニスト化合物として有用なヒンバシン類似体の合成に有用である{[5−(3−フルオロフェニル)−ピリジン−2−イル]メチル}ホスホン酸ジアルキル化合物(化合物116の構造を有する化合物)の容易な新規製造方法である。
【0017】
【化6】

式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択され、該方法は、
(a)式137Aの(5−ハロ−ピリジン−2−イル)−メタノールを、
【0018】
【化7】

ハロゲン化試薬と反応させて、化合物137の式の化合物を生成するステップ
【0019】
【化8】

(式中、Xは、出現する毎に同じであり、ClまたはBrから選択され、Xは、Cl、Br、またはIから独立に選択される)、
(b)化合物137を式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させて、
【0020】
【化9】

化合物138を生成するステップ
【0021】
【化10】

(式中、Rは先に定義の通りである)、
(c)化合物138をHX(Xは、ClおよびBrから選択される)で処理して、対応する式138Aのハロゲン化水素酸塩を沈殿させるステップ、
【0022】
【化11】

および
(d)ステップ「c」で得られたハロゲン化水素酸塩を、必要に応じてパラジウム触媒の存在下、式Bの構造の3−フルオロフェニルボロネート化合物と反応させて
【0023】
【化12】

(式中、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される)、化合物116を生成するステップを含む。
【0024】
好ましくは、ステップ「c」で使用されるハロゲン化試薬は、OSCl、PCl、PCl、POCl、OSCl、(OCCl)、OSBr、PBr、PBr、POBr、OSBr、(OCBr)から選択される塩素化剤(したがってXはClである)または臭素化剤(したがってXはBrである)から選択され、より好ましくは、ハロゲン化試薬は塩化チオニルである(したがってXはClである)。好ましくは、ステップ「b」で使用される亜リン酸エステル化合物は、亜リン酸トリアルキルであり、より好ましくは亜リン酸トリエチルである。好ましくは、ステップ「d」で使用されるボロネート化合物は、3−フルオロ−フェニル−ボロン酸である。ステップ「d」の反応で触媒が使用される場合、好ましくは、触媒はカーボンブラック上に担持されたパラジウムである。好ましくは、ステップ「d」では触媒が使用される。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、化合物116の構造の化合物の調製のための本発明の方法は、以下のスキームIIIに示される、化合物11の構造を有するトロンビン受容体アンタゴニストの調製のためのより大きな反応スキームの一部分である。
【0026】
【化13】

式中、ハロゲン化試薬は、OSCl、PCl、PCl、POCl、OSCl、(OCCl)から選択される塩素化剤(XはClである)およびOSBr、PBr、PBr、POBr、OSBr、(OCBr)から選択される臭素化剤(XはBrである)から選択され、Xは、出現する毎に同じであり、選択されるハロゲン化試薬を基にClまたはBrから選択され、Xは、Cl、Br、またはIであり、Xは、ClおよびBrから選択され、Rは、好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する、直鎖、分岐、または環式のアルキルであり、より好ましくはC−であり、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択され、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される。幾つかの実施形態では、ハロゲン化試薬は、好ましくは塩化チオニルであり、XおよびXは、好ましくはClであり、Xは好ましくはBrである。幾つかの実施形態では、R9は好ましくはC−である。幾つかの実施形態では、使用される亜リン酸エステル化合物は、好ましくは亜リン酸トリアルキル、より好ましくは亜リン酸トリエチルである。好ましくは、使用されるボロネート化合物は、3−フルオロ−フェニル−ボロン酸である。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
化合物11の構造を有する化合物の製造方法であって
【化29】


(式中、R1は、1〜約4個の炭素原子のアルキル基である)、
(a)式137Aの(5−ハロ−ピリジン−2−イル)−メタノールを
【化30】


(式中、Xは、Cl、Br、またはIから独立に選択される)、
ハロゲン化試薬と反応させて、化合物137の式の化合物を生成するステップ
【化31】


(式中、Xは、出現する毎に同じであり、ClまたはBrから選択され、Xは、先に定義の通りである)、
(b)化合物137を式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させて
【化32】


(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、化合物138を生成するステップ
【化33】


(式中、Rは先に定義の通りである)、
(c)化合物138をHX(Xは、ClおよびBrから選択される)で処理して、対応する式138Aのハロゲン化水素酸塩を沈殿させるステップ、
【化34】


ならびに
(d)ステップ「c」で得られたハロゲン化水素酸塩を、必要に応じてパラジウム触媒の存在下、式Bの構造の3−フルオロフェニルボロネート化合物と反応させて
【化35】


(式中、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される)、化合物116を生成するステップ
を含む、化合物の製造方法。
(項目2)
化合物11の構造を有する化合物の製造方法であって
【化36】


(式中、R1は、1〜約4個の炭素原子のアルキル基である)、
(a)(5−ブロモ−2−メトキシ−ピリジン)を、OSCl、PCl、PClから選択される塩素化剤と反応させて、化合物137の式の化合物を生成するステップ、
【化37】


(b)化合物137を式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させて、
【化38】


化合物138を生成するステップ
【化39】


(式中、Rは、出現する毎に個別に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、
(c)化合物138をHClで処理して、対応する塩酸塩を得るステップ、
(d)ステップ「c」で得られた塩酸塩を、必要に応じてパラジウム触媒の存在下、3−フルオロフェニルボロン酸と反応させて、化合物116の構造を有する化合物を生成するステップ、
【化40】


および
(e)ステップ「d」で形成された化合物116を、化合物15の構造の化合物と反応させて、
【化41】


化合物11を得るステップ
を含む、化合物の製造方法。
(項目3)
ステップ「b」で使用した亜リン酸エステル化合物が亜リン酸トリアルキルである、項目2に記載の方法。
(項目4)
ステップ「b」で使用した亜リン酸エステルが亜リン酸トリエチルである、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
化合物116の構造の化合物の製造方法であって
【化42】


(式中、Rは、出現する毎に個別に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、
化合物139の構造を有する塩酸塩化合物(Rは先に定義の通りである)を、
【化43】


パラジウム触媒の存在下、3−フルオロフェニルボロン酸と反応させるステップを含む、化合物の製造方法。
(項目6)
化合物139が、
(a)化合物137の構造の塩酸塩を、
【化44】


式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させるステップ
【化45】


(式中、Rは、出現する毎に個別に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、
および
(b)ステップ「a」で得られた反応生成物をHClで処理して、化合物139を得るステップ
によって提供される、項目5に記載の方法。
(項目7)
ステップ「a」で使用した亜リン酸エステル化合物が亜リン酸トリアルキルである、項目5および6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
ステップ「a」で使用した亜リン酸トリアルキルが亜リン酸トリエチルである、項目7に記載の方法。
(項目9)
「処理」ステップ「b」の後、構造139のホスホン酸エステル塩酸塩化合物を含有する反応混合物に反溶媒を添加することによって、ステップ「b」で形成されたホスホン酸エステル塩酸塩を沈殿させるステップをさらに含む、項目5から8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記パラジウム触媒が、カーボンブラック上に担持されたパラジウム金属である、項目1から9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記パラジウム触媒が可溶性パラジウム触媒である、項目1から9のいずれかに記載の方法。
(項目12)
化合物116の構造の化合物の製造方法であって
【化46】


(式中、Rは、出現する毎に個別に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、
A.式137Aの(5−ハロ−ピリジン−2−イル)−メタノールを、
【化47】


(式中、Xは、Cl、Br、またはIから独立に選択される)
ハロゲン化試薬と反応させて、化合物137の式の化合物を生成するステップ
【化48】


(式中、Xは、出現する毎に同じであり、ClまたはBrから選択され、Xは、先に定義の通りである)、
(b)化合物137を式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させて
【化49】


(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、化合物138を生成するステップ
【化50】


(式中、Rは先に定義の通りである)、
(c)化合物138をHX(Xは、ClおよびBrから選択される)で処理して、対応する式138Aのハロゲン化水素酸塩を沈殿させるステップ
【化51】


(式中、Rは先に定義の通りである)、および
(d)ステップ「c」で得られたハロゲン化水素酸塩を、必要に応じてパラジウム触媒の存在下、式Bの構造の3−フルオロフェニルボロネート化合物と反応させて
【化52】


(式中、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される)、化合物116を生成するステップ
を含む、化合物の製造方法。
(項目13)
化合物116の構造の化合物の製造方法であって
【化53】


(式中、Rは、出現する毎に個別に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、
(a)式137Aの(5−ハロ−ピリジン−2−イル)−メタノールを
【化54】


(式中、Xは、Cl、Br、またはIから独立に選択される)、Xハロゲン化試薬と反応させて、化合物137の式の化合物を生成するステップ
【化55】


(式中、Xは、出現する毎に同じであり、ClまたはBrから選択され、Xは、先に定義の通りである)、
(b)化合物137を式Aの構造の亜リン酸エステル化合物と反応させて
【化56】


(Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアリールアルキル基から選択される)、化合物138を生成するステップ
【化57】


(式中、Rは先に定義の通りである)、
(c)化合物138をHX(Xは、ClおよびBrから選択される)で処理して、対応する式138Aのハロゲン化水素酸塩を沈殿させるステップ
【化58】


(式中、Rは先に定義の通りである)、ならびに
(d)ステップ「c」で得られたハロゲン化水素酸塩を、式138AのXを式B’の3−フルオロフェニル部分で置き換えることができる有機金属化合物と反応させて、
【化59】


化合物116を生成するステップ
を含む、化合物の製造方法。
(項目14)
ステップ「d」で使用した有機金属化合物が、フルオロアリール−アルキルボラン、フルオロアリール−ハロボラン、ならびにフルオロアリール亜鉛試薬、フルオロアリールアルミニウム試薬、フルオロアリールマグネシウム試薬、およびフルオロアリールスズ試薬からなる群から選択される、項目13に記載の方法。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様および利点は、以下の説明によって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
以下の定義および用語は本明細書で使用されるが、そうでなければ当業者に公知であるものである。他に指定される場合を除き、この定義は本明細書および特許請求の範囲全体に適用される。化学名、一般名、および化学構造を交換可能に使用して、同じ構造を説明することができる。用語がそのまま使用されるか、または他の用語と併用されるかに関わらず、別段の指定が無い限りこれらの定義が適用される。したがって、「アルキル」という定義は、「アルキル」ならびに「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルコキシ」などの「アルキル」部分に適用される。
【0029】
それとは反対のことが別段知られていないか、指定されていないか、または示されていない限り、多重用語置換基(組み合わさって単一部分を同定する2つ以上の用語)の、対象となる構造への結合点は、その多重用語置換基の最後の名称の用語を介する。例えば、シクロアルキルアルキル置換基は、置換基の後者の「アルキル」部分を介して標的構造に結合する(例えば、構造−アルキル−シクロアルキル)。
【0030】
式中に1回より多く出現する各変数の実体は、別段の指定が無い限り、その変数についての定義から独立に選択することができる。
【0031】
それとは反対のことが指定されていないか、示されていないか、または別段知られていない限り、共有結合化合物について化学式に示される全ての原子は、通常の原子価を有する。したがって、水素原子、二重結合、三重結合、および環構造を、一般化学式に明示する必要はない。
【0032】
二重結合は、適切な場合には、化学式中の原子周りの丸括弧の存在によって表すことができる。例えば、カルボニル官能基、−CO−は、化学式中、−C(O)−または−C(=O)−によって表すこともできる。当業者は、共有結合分子中の二重結合(および三重結合)の存在または非存在を決定することができる。例えば、カルボキシル官能基を、−COOH、−C(O)OH、−C(=O)OH、または−COHによって同等に表し得ることは容易に理解される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、硫黄、または酸素原子を意味する。同じ基の中の多数のヘテロ原子は、同じでも異なっていてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖または分岐であってよく、鎖中に1〜約24個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖中に1〜約15個の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基は、鎖中に1〜約6個の炭素原子を含む。「低級アルキル」は、鎖中に1〜6個の炭素原子のアルキル基を意味する。「分岐」とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、直鎖アルキル鎖に結合していることを意味する。アルキルは、ハロ、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)(アルキルは、同じでも異なっていてもよい)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルからなる群から独立に選択される1つまたは複数の置換基によって置換され得る。適切なアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、およびシクロプロピルメチルが含まれる。
【0035】
「アルケニル」は、共役でも非共役でもよい、鎖中に1つまたは複数の二重結合を含む脂肪族炭化水素基(直鎖または分岐の炭素鎖)を意味する。有用なアルケニル基は、鎖中に2〜約15個の炭素原子、好ましくは鎖中に2〜約12個の炭素原子、より好ましくは鎖中に2〜約6個の炭素原子を含むことができる。アルケニル基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、およびアルコキシからなる群から独立に選択される1つまたは複数の置換基によって置換され得る。適切なアルケニル基の非限定的な例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブテニル、およびn−ペンテニルが含まれる。
【0036】
アルキルまたはアルケニル鎖が、他の2つの変数を結合し、したがって二価となる場合、それぞれ、アルキレンおよびアルケニレンという用語が使用される。
【0037】
「アルコキシ」は、アルキル基が先に記載される通りのアルキル−O−基を意味する。有用なアルコキシ基は、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含むことができる。適切なアルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、およびイソプロポキシが含まれる。アルコキシのアルキル基は、エーテル酸素を介して隣接部分に結合する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、好ましくは3〜15個の炭素原子、より好ましくは3〜8個の炭素原子を有する、非置換または置換の、化学的に可能な安定な飽和非芳香族炭素環を意味する。シクロアルキル炭素環基は飽和であり、1〜2個のシクロアルキル、芳香族、複素環式または複素環式芳香族環と縮合、例えばベンゾ縮合されていてもよい。シクロアルキルは、安定な構造をもたらす任意の環内炭素原子で結合することができる。好ましい炭素環は、5〜6個の炭素を有する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが含まれる。
【0039】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖でも分岐でもよく、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、鎖中に約2〜約10個の炭素原子、より好ましくは鎖中に約2〜約6個の炭素原子を含む。分岐とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、直鎖アルキニル鎖に結合していることを意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例には、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、およびデシニルが含まれる。アルキニル基は、同じでも異なっていてもよい1つまたは複数の置換基によって置換され得、各置換基は、アルキル、アリール、およびシクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、1〜2個の芳香族環を有する、置換または非置換の、芳香族の単環式または二環式の化学的に可能な炭素環系を意味する。アリール部分は、一般に6〜14個の炭素原子を有し、アリール部分の利用可能で置換可能な全ての炭素原子は、可能な結合点として企図される。代表的な例には、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが含まれる。所望ならば、炭素環部分は、モノ〜ペンタハロ、アルキル、トリフルオロメチル、フェニル、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノなどの1〜5個、好ましくは1〜3個の部分で置換され得る。
【0041】
「ヘテロアリール」は、約5〜約14個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を有し、その環系中の、原子の1つまたは複数が、炭素以外の原子、例えば窒素、酸素、または硫黄である、単環式または多環式芳香族環系を意味する。単環式および多環式(例えば、二環式)ヘテロアリール基は、非置換であってもよく、または複数の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、より好ましくは1、2、または3個の置換基(例えば、モノ〜ペンタハロ、アルキル、トリフルオロメチル、フェニル、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノなど)で置換されていてもよい。一般に、ヘテロアリール基は、5または6個の原子の化学的に可能な環式基、または9または10個の原子の化学的に可能な二環式基を表し、その少なくとも1つは炭素であり、芳香族の特徴をもたらすのに十分な数のπ電子を有する、炭素環に割り込む少なくとも1つの酸素、硫黄、または窒素原子を有する。代表的なヘテロアリール(複素環式芳香族)基は、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、イソオキサゾリル基、1,3,5−トリアジニル基、およびインドリル基である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「複素環」または「ヘテロサイクル」という用語は、環中、複数の炭素原子および1つまたは複数のヘテロ原子からなる、非置換または置換の、飽和、不飽和、または芳香族の化学的に可能な環を意味する。複素環は、単環式であっても多環式であってもよい。単環式環は、好ましくは環構造中に3〜8個の原子、より好ましくは5〜7個の原子を含有する。2個の環からなる多環式環系は、好ましくは6〜16個の原子、最も好ましくは10〜12個の原子を含有する。3個の環からなる多環式環系は、好ましくは13〜17個の原子、最も好ましくは14または15個の原子を含有する。各複素環は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する。別段の指定が無い限り、ヘテロ原子は、窒素、硫黄、および酸素原子からなる群からそれぞれ独立に選択することができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「Hal」、「ハロ」、「ハロゲン」、および「ハロゲン化物」という用語は、クロロ原子基、ブロモ原子基、フルオロ原子基、またはヨード原子基を意味する。塩化物、臭化物、およびフッ化物が好ましいハロゲン化物である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「炭酸塩」という用語は、重炭酸塩を含むと理解される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、同じ数および同じ種類の原子、ひいては同じ分子量を有するが、原子の配列または構造に関して異なっている2つ以上の分子の1つを意味すると理解される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピマー化」という用語は、ある異性体から別の異性体への変換を意味すると理解され、ここで2つの異性体間で異なるのは、結合したHの相対位置である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「沈殿」という用語は、固体として溶液から出てくることを意味すると理解される。沈殿は、不溶性塩の「インサイチュ」形成、または溶媒の溶解度特性の変化と等しく適用される。溶媒の溶解度特性の変化の例には、溶液の冷却、および十分な量の「反溶媒」の溶液への添加により、沈殿化合物が混合溶媒中での溶解度を低減されることが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「動力学的分割」という用語は、溶液中の同じ化合物の第1の異性体から第2の異性体への変換が、第2の異性体の沈殿によって溶液から第2の異性体が減少することによって熱力学的に行われるプロセスを意味すると理解される。
【0049】
以下の略語が定義される。EtOHはエタノール、Meはメチル、Etはエチル、Buはブチル、n−Buはノルマル−ブチル、t−Buはtert−ブチル、OAcはアセテート、KOt−Buはカリウムtert−ブトキシド、NBSはN−ブロモスクシンイミド、NMPは1−メチル−2−ピロリジノン、DMAPは4−ジメチルアミノピリジン、THFはテトラヒドロフラン、DBUは1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、DMAはN,N−ジメチルアセトアミド、n−BuNBrはテトラブチルアンモニウムブロミド、n−BuNOHはテトラブチルアンモニウム水酸化物、n−BuNHSOは硫酸水素テトラブチルアンモニウム、および「equiv.」または「eq.」は当量を意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「n」という用語は、それより後に列挙された範囲を包含する値を有する整数と理解される。したがって「nは0および4の間である」および「nは0〜4の範囲である」は両方、nが、0、1、2、3、または4の値のいずれかを有し得ることを意味する。
【0051】
前述のように、同時係属中の米国特許出願第11/331,324号(本明細書では、「’324出願」)には、トロンビン受容体阻害剤として見込みのある活性を有する化合物11の構造の化合物の合成が記載されている。
【0052】
【化14】

スキームIVおよびVで以下に示されるように、’324出願には、参照によって本明細書に組み込まれる、化合物11および関連化合物の合成が、詳細に記載されている。
【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

化合物11の合成において非常に重要な中間体は、化合物16および関連するホスホン酸エステルの構造を有する化合物である(本明細書では、便宜上、時に化合物116の構造を有する化合物と呼ぶ)。驚くべきことに、本発明者らは、化合物116の構造を有する化合物の合成方法を発見しており、その方法は、’324出願に記載の化合物116の構造を有する化合物の調製方法よりも活性ではない試薬を使用し、各合成ステップの単位操作を容易にするものである。特に、5−ハロピリジン−2−イル−メチルホスホン酸エステル(139)の単離、および化合物137の化合物138への変換におけるトリオルガノ亜リン酸エステルホスホン酸化剤の選択によって、収率、特異性、および生成物純度の改善が実現する。さらにこれらの方法ステップを利用して、本発明の方法は、出発ピリジルアルコールを基にした、化合物116の構造を有する化合物の全収率をさらに増大し、’324出願に記載の方法の全収率60%と比較して、本発明の方法の全収率は75%である。
【0055】
本発明の全反応スキームは、スキームVIに概略的に示されている。
【0056】
【化17】

式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアリールアルキル基から選択され、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択され、Xは、Cl、Br、またはIであり、Xは、ClおよびBrから選択され、PdLは、パラジウム金属担持触媒または可溶性不均一パラジウム触媒である。L−誘導体化試薬は、ハロゲン化試薬(したがってLはハロゲンである)、例えば塩素化剤、例えばOSCl、PCl、PCl、POCl、OSCl、(OCCl)(したがってLはClである)、および臭素化剤、例えばOSBr、PBr、PBr、POBr、OSBr、(OCBr)(したがってLはBrである)であってよい。理解されるように、L−誘導体化試薬は、アルコール官能基を任意の脱離基に変換する部分であってもよく、該脱離基は、化合物137Dを化合物138Dに変換するために使用されるホスホン酸化剤(トリオルガノ−亜リン酸エステル)、例えばスルホニルエステル(例えば、ベンゼンスルホニル塩化物L−誘導体化試薬によって提供される)、スルホン酸エステル、および同時係属中の’324出願(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のL−誘導体化試薬によって置き換えることができる。
【0057】
反応スキームVIの全てのステップは、個々に実施することができ、各段階で調製された中間体は単離されるが、本発明の反応スキームでは、ハロゲン化物からホスホン酸エステル(化合物138)に変換する次のステップで使用するために、後処理後に得られた中間体化合物137を、反応媒体中で「インサイチュ」利用することが有利である。
【0058】
反応スキームVIの各ステップを、次に論じる。
【0059】
本発明の方法の第1ステップは、ピリジルヒドロキシアルキルを、対応するホスホノ−アルキルに変換することである。これをスキームVIでは、化合物136を構造138の化合物に変換する第1ステップとして示す。スキームVIの第1のステップでは、[(5−(ハロ)−2−ヒドロキシメチル]−ピリジンのアルコール官能基(ここで「ハロ」は、臭素、塩素、およびヨウ素から選択される)を、溶液中で、上記のL−誘導体化試薬、例えば塩素化剤、例えばOSCl、PCl、PCl、POCl、OSCl、(OCCl)(したがってLはClである)、臭素化剤、例えばOSBr、PBr、PBr、POBr、OSBr、(OCBr)(したがってLはBrである)、およびスルホン化剤(したがって、Lはスルホニルエステルである)と反応させて、対応する5−ブロモ−2−(L)メチル−ピリジン、好ましくは5−ブロモ−2−(ハロ)メチル−ピリジン(ここで「ハロ」は、好ましくはCl、Br、およびIである)を提供する。前述のL−誘導体化試薬のいずれも本発明の方法に適しているが、塩化チオニルを使用するのが好ましい。本明細書で特に言及されない他のL−誘導体化試薬も、本発明の方法で使用できることが理解される。任意の適切な溶媒系、好ましくは中程度の極性の非プロトン性溶媒を含む溶媒系、例えばトルエンとアセトニトリル(MeCN)との混合物を使用することができる。約0℃〜約70℃、より好ましくは約20℃〜約50℃の温度範囲、より好ましくは約45℃で反応を実施することが好ましい。好ましくは、アルコール基体の最初の濃度は、約0.5M〜約0.9Mである。好ましくは、アルコール基体に対して少なくとも1.5倍過剰の塩素化剤が使用される。
【0060】
アルコールが完全に消費されるまで、反応を実施することが好ましい。例えば、HPLCまたはガスクロマトグラフィー技術によって、アルコールの完全な変換について反応を監視することができる。反応の最後に、必要に応じて反応混合物を水性塩基でクエンチする。反応が大規模で実施される場合には、その反応をクエンチすることが特に好ましい。クエンチのステップが反応に含まれる場合、好ましくは、炭酸カリウム溶液を使用して反応がクエンチされる。反応の完了後、反応混合物の有機層を分離し、洗浄し、濃縮する。
【0061】
このように得られた濃縮物を、適切な装置に入れ、式Aの構造(式中、Rは、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアリールアルキル基から選択される)を有するトリオルガノ−亜リン酸エステル化合物と混合する。
【0062】
【化18】

好ましくは、Rは、全ての存在について同じであり、アルキル、より好ましくは直鎖アルキル、より好ましくはエチルである。
【0063】
反応混合物を、反応を実施するための温度、好ましくは約130℃〜約150℃の温度に加熱し維持する。反応混合物を、十分な時間(好ましくはメチル−L誘導体化基体(化合物137D、例えば塩素化L−誘導体化試薬が使用される場合、塩化メチル基体)が完全に変化するまで)、適切な温度に維持した後、反応混合物を冷却し、塩酸で処理して、ホスホン酸エステル(化合物138D)を対応する塩酸塩(化合物139D)に変換する。好ましくは、反応混合物の温度は、この処理の間約20℃未満に維持される。HCl処理は、任意の従来の手段を使用して、例えばHClガスを気泡として反応混合物に通すことによって、またはHCl溶液で混合物を処理することによって実施できるが、反応混合物をHCl溶液、好ましくはHCl/イソプロパノール溶液と一緒に撹拌することによって処理することが好都合である。
【0064】
塩が形成された後、反応混合物から沈殿し始める。ヘプタンを添加して塩の沈殿を完了させ、反応混合物から回収される塩の収率を改善する。この添加の間、反応混合物を約20℃未満の温度に維持することが好ましい。次いで、真空濾過によってホスホン酸エステルハロゲン化水素酸塩(化合物139D)を反応混合物から回収し、洗浄し、真空乾燥して、化合物116の合成で使用する。
【0065】
スキームVIの最後のステップでは、式Bの化合物の構造の3−フルオロフェニルボロネートと反応させることによって、化合物116を、ホスホン酸エステル塩酸塩から合成する。
【0066】
【化19】

式中、R11は、出現する毎に独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアリールアルキル基、ならびに水素から選択される。
【0067】
いずれの3−フルオロフェニルボロネートも、(5−ハロ−ピリド−2−イル)−メチルホスホン酸エステルの塩化合物(139D)と反応することができることが理解されるが、3−フルオロボロン酸(したがって、出現する毎にR11はHである)を使用することが好ましい。この反応は、1つは水性であり1つは有機性(好ましくは酢酸イソブチル)の2相反応媒体中で実施することが好ましい。したがって、この反応は、パラジウム担持触媒、例えばカーボンブラック上に担持されたパラジウム、例えばDegussa5%Pd/CタイプE105CA/Wでスラリー化されたボロン酸水溶液を提供することによって実施される。ホスホン酸エステル塩酸塩(化合物139D)の変換は、HPLCアッセイにより追跡することができる。HPLC分析が出発ホスホン酸エステルの完全な変換を示すまで、反応条件を維持することが好ましい。反応中、反応混合物を約70℃〜約80℃の温度に維持することが好ましい。約0.5M〜約1.0Mの濃度で存在する出発ホスホン酸エステル(化合物139D)を用いて反応を開始し、少なくとも1.3倍過剰のボロネート試薬を使用することが好ましい。反応混合物の後処理は、混合物を塩基性のpH、好ましくは約pH11〜約pH13のpHに調整し、分割によって有機層を分離し、バッチを2%のNaCl水溶液で洗浄することによってプロセスの不純物を除去し、有機層を濃縮することによって、過剰のボロン酸を除去することを含む。後処理中、反応混合物を約20℃〜約30℃の温度に維持することが好ましい。反溶媒沈殿によって、例えば溶液から生成物が沈殿するまで有機相を十分な量のヘプタンで処理して、生成物である化合物116を得る。
【0068】
スキームIVに関して、式116の中間体化合物は、式139dの中間体化合物を、ボロネートの代わりの他の有機金属反応物質と、例えばそれに限定されるものではないが、フルオロアリール−アルキルボラン、フルオロアリール−ハロボラン、フルオロアリール亜鉛試薬、フルオロアリールアルミニウム試薬、フルオロアリールマグネシウム試薬、およびフルオロアリールスズ試薬、ならびに次式で表される他の有機金属試薬と反応させることによって調製できることが理解される。
【0069】
【化20】

式中、「M」は、化合物138のXハロゲンを3−フルオロアリール部分で置き換えることができる有機金属試薬である。
【0070】
出発アルコールである5−ブロモ−2−ヒドロキシメチル−ピリジン、化合物136は、5−ブロモ−2メチル−ピリジン−N−オキシドから調製することができる。この合成は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる同時係属中の’324出願に詳細に開示されている。本発明の方法は、様々に置換されたヒドロキシメチルピリジン、ならびに他の任意の手段によって得られる5−ブロモ−2ヒドロキシメチル−ピリジンを使用して実施できることが理解される。
【0071】
以下は、[5−(3−フルオロ−フェニル)−ピリジン−2−イルメチル]−ホスホン酸ジエチルエステル(化合物16)の例示的調製を示すが、これは本発明を限定することなく例示するものである。
【実施例】
【0072】
以下の溶媒および試薬は、丸括弧内のそれらの略語によって呼ぶことができる。
酢酸エチル:EtOAc
メタノール:MeOH
イソプロパノール:IPA
第3ブチル−メチルエーテル:TBME
ナトリウムビストリメチルシリルアミド:NaHMDS
トリエチルアミン:TEA
トリフルオロ酢酸:TFA
第3級−ブトキシカルボニル:t−BOC
テトラヒドロフラン:THF
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド:LiHMDS
モル:mol.
HPLC−高圧液体クロマトグラフィー
(実施例1 [5−(3−フルオロ−フェニル)−ピリジン−2−イルメチル]−ホスホン酸ジエチルエステルの調製)
【0073】
【化21】

反応容器に、ホスホン酸エステル化合物139(式中、Rは、全ての存在についてエチル−である)(100g、0.29mol)、5%Pd/C50%湿潤(5.0g)、3−フルオロフェニルボロン酸(61g、0.44mol)、および炭酸ナトリウム(100g、0.94mol)を入れた。酢酸イソ−ブチル600mlを入れ、混合物を撹拌した。水400mlを入れ、撹拌した混合物を、HPLCアッセイが反応の完了を示すまでの少なくとも3時間、70〜80℃に加熱した。完了時に、反応混合物を25℃に冷却し、濾過してPd/C触媒を除去した。触媒ケーキを、酢酸イソ−ブチル200ml(濾液/バッチと混合した)および水100ml(破棄)で洗浄した。25%の水酸化ナトリウム溶液を使用して、バッチをpH11〜13に調整した。この方法の間、反応混合物を20℃〜30℃の温度に維持した。有機層を分離し、撹拌しながら水500mlで洗浄した。25%の水酸化ナトリウム溶液を使用して、バッチのpHを、pH11〜pH13のpH値に調整した。この処理を通して、温度を約20℃〜約30℃の値に維持した。
【0074】
洗浄後、各層を分離し、2%の塩酸ナトリウム溶液300mlを用いて、10〜15分間撹拌しながら有機層を洗浄した。各層が分離し、有機層のHPLCアッセイは、不純物が所望のレベルに低減したことを示した。Darco(10g)を有機層に添加した。得られたスラリーを1時間撹拌し、次いで濾過して脱色剤を除去した。濾過ケーキを酢酸イソ−ブチル200mlで洗浄し(濾液/バッチと混合した)、そのバッチを40℃〜50℃で減圧下で約200mlに濃縮し、次いで15℃〜25℃の温度に冷却した。ヘプタン(1000ml)を2.5〜3時間かけて冷却濃縮物に入れ、約15℃〜25℃の温度に維持した。混合物を3時間かけて−15℃〜−5℃の温度に冷却し、同じ温度で1時間撹拌した。結晶固体を濾過し、ヘプタン200mlで洗浄し、真空下、約25℃〜35℃の温度で終夜乾燥して70.37g(75%)を得た。MP 61℃〜63℃。
【0075】
【化22】

(実施例1A [(5−ブロモ−ピリジン−2−イルメチル)−ホスホン酸ジエチルエステル]塩酸塩の調製)
【0076】
【化23】

5−ブロモ−2−ヒドロキシメチル−ピリジン(BHMP、50.0g、266mmol)のトルエン(100mL)およびMeCN(150mL)溶液に、塩化チオニル(35.0mL、57.1g、479mmol)を添加した。この反応混合物を45℃で4時間撹拌した。トルエン(250mL)を反応混合物に添加し、反応混合物を0℃に冷却した。20%の炭酸カリウム溶液(450ml)で反応をクエンチし、30℃未満の温度に維持した。反応混合物を10分間撹拌し、各層を分割した。有機層を水(100mL)で一度洗浄し、有機層を減圧下で濃縮して体積約200mLにした。濃縮した粗溶液を蒸留装置に移した。室温で、粗濃縮溶液に亜リン酸トリエチル(200mL、1144mmol)を添加し、反応が完了するまで、反応混合物を145℃に加熱した。加熱期間中にとばされた反応混合物の留分を収集した(約200mL)。加熱の12時間後、反応混合物を0℃に冷却した。イソプロパノール中5〜6NのHCl溶液(150mL)を、冷却反応混合物に1時間かけてゆっくり添加し、内部温度を5℃未満に維持した。次いでヘプタン(350mL)を1時間かけて混合物に添加し、得られたスラリーをさらに1時間撹拌した。固体生成物を真空濾過で収集し、10%IPA/ヘプタンで洗浄し、真空下、室温で乾燥して、生成物81g(89%)を得た。MP 118℃〜120℃。
【0077】
【化24】

(出発材料:5−ブロモ−2−ヒドロキシメチルピリジンの調製)
実施例1で先に使用した出発アルコール(5−ブロモ−2ヒドロキシメチルピリジン)を、2ステップで調製した。
【0078】
ステップI
【0079】
【化25】

0℃の5−ブロモ−2−メチルピリジンN−オキシド(10.0g、5.32mmol)のEtOAc(50.0ml)溶液に、トリフルオロ酢酸無水物(9.8ml、6.92mmol)を滴加すると同時に、温度を50℃未満に維持した。添加の完了後、混合物を75℃〜80℃の温度に加熱し、少なくとも1時間撹拌した。5−ブロモ−2−メチルピリジンN−オキシドが最初の値の5%未満で存在したら、混合物のHPLCアッセイは、反応が完了したことを示した。
【0080】
完了時に、混合物を50℃未満に冷却し、MeOH(10.0ml)を添加した。混合物を50℃で少なくとも1時間加熱した。溶液を真空下で濃縮し、MeOHをEtOAc(40.0ml)で置き換えることによって除去し、体積30mlに濃縮した。この濃縮物にトルエン(20.0ml)を添加し、溶液を2時間にわたり−10℃に冷却した。結晶固体を濾過し、冷却トルエンで洗浄し、真空下、35℃で終夜乾燥して生成物10.1g(63%)を得た。MP 89℃〜92℃。
【0081】
【化26】

ステップII
【0082】
【化27】

TBME(100ml)中の化合物36(10.0g、33.1mmol)のスラリーを、20%の炭酸カリウム溶液(20ml)で処理して、1時間室温で撹拌した。各層を分離し、有機層を水で洗浄した。こうして得た溶液を、体積約10mLに濃縮し、ヘプタン20mLを45〜50℃で添加した。溶液を20〜25℃に冷却し、追加のヘプタン20mLを入れた。反応物を20〜25℃で2時間撹拌し、濾過した。生成物を、真空下、15〜25℃で終夜乾燥して、生成物5.0g(80%)を得た。
【0083】
【化28】

本発明の先の説明は例示的なものであり、限定的なものではないことが意図される。本明細書に記載の実施形態における様々な変更形態または改変形態を当業者は思いつくことができる。本発明の範囲または精神から逸脱することなく、これらの変更形態を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−197307(P2012−197307A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−137925(P2012−137925)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2009−518298(P2009−518298)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】