説明

ヒータ制御装置及びその制御方法並びにその制御プログラム

【課題】コストを抑え、かつ、速やかに複数のPTC素子を通電すること。
【解決手段】現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出部20と、電流算出部20によって算出された第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、第2PTCヒータの第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で第2PTCヒータの第2PTC素子を通電状態にする切替制御部21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータに用いて好適なヒータ制御装置及びその制御方法並びにその制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気ヒータの一形態であるPTCヒータは、正温度特性を持つ抵抗素子であるPTC素子に直流電源を通電させることにより発熱を得る構造である(例えば、特許文献1)。PTCヒータは、温度上昇に伴い抵抗値が急激に上昇するタイミングが存在し、単純な直流電源の通電により一定の温度を保持できるため制御構造が簡素化できる等の理由により広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2006−162099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PTCヒータは、図7で示すようにPTC素子の温度上昇に伴って電気抵抗値が一旦下がる(PTC素子温度Tmin、縦軸Rminのタイミング)ことにより、図8に示すように通電後に電流が極大となる突入電流が発生するので、突入電流の最大値に耐えうる部材にするためにコストが増大するという問題があった。また、PTCヒータが複数のPTC素子を備える場合に、速やかに通電させるべく複数のPTC素子を同時にオン状態にすると、突入電流も重畳され電流制限値を超過してしまうため、1つずつ順次オン状態にしなければならず、速やかに通電させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コストを抑え、かつ、速やかに複数のPTC素子を通電させることのできるヒータ制御装置及びその制御方法並びにその制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置であって、現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出手段と、前記電流算出手段によって算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御手段と、を具備するヒータ制御装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、現在通電状態にされている第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされた場合に新たな第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて算出される第3電流値が、最大許容電流値未満か否かが判定され、最大許容電流値未満となるまで第2PTC素子は非通電状態に保持されて通電が待機され、最大許容電流値未満で第2PTCヒータの第2PTC素子を通電状態にする。
このように、第2PTC素子に対して、現在の電流値(第1電流値)と新たに通電された場合に流れると推定される電流値(第2電流値)とに基づいて算出される第3電流値が、最大許容電流値未満と判定されるまで通電されることがないので、ヒータユニットは最大許容電流値を超えて駆動させることがなく、突入電流を制限できる。
【0008】
また、第3電流値が最大許容電流値未満となった場合に第2PTC素子が非通電状態から通電状態に切り替えられることにより、第2PTC素子が通電状態にされるまでの時間が最短となるので、ヒータユニット全体として、速やかに通電が完了する。さらに、所定の最大許容電流値と比較しながら通電状態と非通電状態とを切り替えるので、最大電流を超過しないよう過剰に部材を増やす、或いは、最大電流に耐えうる高価な部材を使用する等の対処の必要がなく、基板パターン幅の縮小による小型化、ケーブル(HV電線)径の小径化、保護ヒューズ定格の小容量化等、機器全体の小型化及びコストダウンとなる。
【0009】
上記ヒータ制御装置における複数の前記PTCヒータのうち、消費電力が大きい前記PTCヒータから順に、通電状態にする前記PTCヒータとして選定する選定手段を備えることとしてもよい。
消費電力が大きいPTCヒータほど大きい突入電流が発生するので、消費電力の大きいPTCヒータから順に通電状態とすることで、例えば、順次通電していく中で最後に最大許容電流値を大幅に超過してしまう等の状況を防ぐことができる。
【0010】
上記ヒータ制御装置の前記切替制御手段は、前記PTC素子にそれぞれ対応するスイッチング素子を設け、該スイッチング素子のオンとオフとの切り替えにより、前記PTC素子の通電と非通電とを切り替えることが好ましい。
これにより、簡便にPTC素子の通電と非通電とを切り替えることができる。
【0011】
上記ヒータ制御装置において、前記PTC素子と直列に追加抵抗を設けることとしてもよい。
このように、PTC素子に対して直列に追加抵抗を設けることにより、PTC素子温度を上昇させた場合に生じるPTC素子抵抗値の極小値の値を嵩上げすることができるので、突入電流を低減することができる。また、通常の抵抗をPTC素子と直列に接続した場合、キュリー温度においては接続した抵抗は無視できるほど小さいため、出力を低下させずに抵抗の極小値のみを嵩上げして突入電流を低減できる。
【0012】
上記ヒータ制御装置において、前記追加抵抗の抵抗値は、最大電圧を前記最大許容電流値で除算した第1算出値から、前記PTC素子の抵抗の極小値を減算した第2算出値よりも大きい値となるよう設定されることが好ましい。
最大許容電流値に基づいて追加抵抗値を算出することにより、ヒータユニットに流れる電流は、最大許容電流値を超えることがない。
【0013】
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置の制御方法であって、現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出過程と、算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御過程と、を有するヒータ制御装置の制御方法を提供する。
【0014】
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置の制御プログラムであって、現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出処理と、算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御処理と、をプログラムに実行させるためのヒータ制御装置の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、コストを抑え、かつ、速やかに複数のPTC素子を通電できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るオンオフ制御部が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図3】PTCヒータを順次通電した場合の電流の傾向を示した例である。
【図4】PTCヒータを順次通電した場合の電流の傾向を示したその他の例である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るヒータ制御装置の概略構成図である。
【図6】極小抵抗値が追加抵抗によって嵩上げされた様子を示す図である。
【図7】従来のPTCヒータのPTC素子の温度特性を示した図である。
【図8】従来のPTCヒータのPTC素子の通電時の電流波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るヒータ制御装置及びその制御方法並びにその制御プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
本実施形態においては、PTC素子を有するPTCヒータを3個備えるヒータユニットが車載用PTCヒータとして用いられる場合を想定し、本実施形態のヒータ制御装置が車載用PTCヒータに適用されることとして説明する。
図1は、車載用PTCヒータに適用したヒータ制御装置10の概略構成図である。
【0018】
本実施形態において、ヒータユニット1は、PTCヒータ2a,2b,2cを備えており、各PTCヒータ2a,2b,2cにはそれぞれPTC素子3a,3b,3cが設けられている。以下、特に明記しない場合には、PTCヒータはPTCヒータ2、PTC素子はPTC素子3として記述する。なお、本実施形態においては、ヒータユニット1に設けられるPTCヒータは3個であることとして説明するが、PTCヒータの個数は少なくとも2個あればよく、特に限定されない。
【0019】
また、本実施形態においては、PTCヒータ2a,2b,2cの消費電力の大きさをそれぞれ4kW,3kW,2kWであることとして説明するが、PTCヒータ2の消費電力の大きさはこれに限定されない。
さらに、現在通電状態のPTCヒータ2を第1PTCヒータとし、次に通電状態にされる新たなPTCヒータ2を第2PTCヒータとする。本実施形態においては、消費電力の大きなPTCヒータ2から順に通電することとして説明するので、先に通電されている第1PTCヒータをPTCヒータ2aとし、第2PTCヒータをPTCヒータ2bとして説明する。
【0020】
図1に示されるように、PTCヒータ2a,2b,2cの上流側はそれぞれヒータ制御装置10を介して直流電源装置のプラス側である端子Aと接続され、下流側はそれぞれヒータ制御装置10を介して直流電源装置のマイナス側である端子Bと接続されている。
ヒータ制御装置10は、オンオフ制御部11、スイッチング素子12a,12b,12c、電流検出部13、及び電圧検出部14を備えている。以下特に明記しない場合には、スイッチング素子はスイッチング素子12として記述する。
【0021】
スイッチング素子12a,12b,12cは、それぞれPTCヒータ2a,2b,2cに対応づけて設けられている。また、スイッチング素子12a,12b,12cは、オンオフ制御部11と接続されており、オンオフ制御部11から出力される制御信号に基づいて、PTCヒータ2a,2b,2cの通電と非通電とを切り替えるべくオンオフが制御される。
電流検出部13は、設けられた経路上の電流値を計測し、計測された電流値の情報をオンオフ制御部11に出力する。
電圧検出部14は、直流電源装置のプラス側に設けられ、ヒータユニット1の電圧値を計測し、計測された電圧値の情報をオンオフ制御部11に出力する。
【0022】
図2は、オンオフ制御部11が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、オンオフ制御部11は、電流算出部(電流算出手段)20、切替制御部(切替制御手段)21、選定部(選定手段)22、及び対応情報23を備えている。
対応情報23は、各PTCヒータ2に対する、各PTC素子3の極小抵抗値Rminの情報と、消費電力の情報とが対応づけられている。
電流算出部20は、現在通電状態であるPTCヒータ2a(第1PTCヒータ)のPTC素子3a(第1PTC素子)に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たなPTCヒータ2b(第2PTCヒータ)のPTC素子3b(第2PTC素子)に流れると推定される第2電流値とに基づいて、突入電流推定値(第3電流値)を算出する。
【0023】
具体的には、電流算出部20は、電流検出部13から取得した電流値を、現在通電状態であるPTCヒータ2a(第1PTCヒータ)のPTC素子3a(第1PTC素子)に流れる第1電流値Inowとする。また、電流算出部20は、電圧検出部14によって検出された高電圧検出値Vhvを、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの極小抵抗値Rminによって除算し、その結果を第2電流値Inxtとして算出する。ここで、極小抵抗値Rminは、PTCメーカの仕様に基づいて規定される値であり、また、誤差を含む場合がある。
さらに、電流算出部20は、第1電流値Inowと第2電流値Inxtとの和を算出し、これをヒータユニット1にかかる最大電流値である突入電流推定値(第3電流値)Irushとする(以下(1)式参照)。
第1電流値Inow+第2電流値Inxt=突入電流推定値Irush (1)
【0024】
切替制御部21は、電流算出部20によって算出された突入電流推定値(第3電流値)Irushが、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、PTCヒータ2b(第2PTCヒータ)のPTC素子3b(第2PTC素子)を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満となった場合にPTCヒータ2b(第2PTCヒータ)のPTC素子3b(第2PTC素子)を通電状態にする。ここで、最大許容電流値Imaxは、要求仕様等に基づいて予め規定される値であり、例えば、25アンペア(A)である。
【0025】
選定部22は、複数のPTCヒータ2のうち、消費電力が大きいPTCヒータ2から順に、通電状態にするPTCヒータ2として選定する。具体的には、上述した対応情報23を読み出し、消費電力が大きいPTCヒータ2から順に通電状態にするPTCヒータ2として選定する。本実施形態においては、第1に通電状態にするPTCヒータ2をPTCヒータ2aとし、第2に通電状態にするPTCヒータ2をPTCヒータ2bとし、第3に通電状態にするPTCヒータをPTCヒータ2cとして説明する。
【0026】
次に、上述したヒータ制御装置10における制御方法について、図1から図4を用いて説明する。
時刻T1において、車載用PTCヒータの要求電力が要求電力I(例えば、4kW)から要求電力II(例えば、7kW)となった場合に、スイッチング素子12aがオン状態にされるとPTC素子3aがオン状態となり、PTCヒータ2aが通電される。PTCヒータ2aが通電され突入電流が流れることにより、ヒータユニット1に流れる電流は電流値I1がピークとなり、徐々に落ち着いていく。このとき、オンオフ制御部11の選定部22によって、対応情報23が参照され、現在使用しているPTCヒータ2aの次に消費電力の大きなPTCヒータ2としてPTCヒータ2bが選定される。
【0027】
電流算出部20において、電流検出部13から電流計測値が取得されると、その計測値を第1電流値Inowとする。また、電流算出部20において、電圧検出部14によって計測された高電圧検出値Vhvを、次に消費電力の大きなPTCヒータ2として選定されたPTCヒータ2bの抵抗最小値Rminによって除算することにより、次にPTCヒータ2bに流れると推定される電流値である第2電流値Inxt(=Vhv/Rmin)が算出される。
【0028】
さらに、電流算出部20において、第1電流値Inowと第2電流値Inxtとの和が、突入電流推定値Irush(=Inow+Inxt)として算出されるとともに、突入電流推定値Irushが最大許容電流値Imaxより小さいか否かが判定される。判定の結果、突入電流推定値Irush<最大許容電流値Imaxとなるまでは、第2PTC素子3bは通電が待機される。時刻T2において、突入電流推定値Irush<最大許容電流値Imaxとなった場合、切替制御部21によってPTCヒータ2bを通電させるべくスイッチング素子12bがオフ状態からオン状態に切り替えられ、PTC素子3bがオン状態にされる。
【0029】
そうすると、図3に示すように、PTCヒータ2bの通電によって突入電流が発生した場合であっても、最大許容電流値Imaxを超過することなく、ヒータユニット1に流れる電流は電流値I2がピークとなり、徐々に落ち着いていく。時刻T3において、ヒータユニット1に流れる電流値が安定し、要求電力が要求電力IIを供給して安定することとなる。
【0030】
出力電力が要求電力を満たしているか否かが判定され、要求電力を満たしている場合には、本処理を終了する。満たしていない場合には、上述した処理を繰り返し、ヒータユニット1に流れる電流値が最大許容電流値Imaxを超過しないよう監視しつつ、ヒータユニット1の出力電力が要求電力を満たすよう制御する。このような処理を繰り返すことにより、図4に示されるように、規定の最大許容電流値Imax未満で稼働させ、かつ、最短で所望の出力電力を提供することができる。
【0031】
上述した実施形態に係るヒータ制御装置においては、上記処理の全て或いは一部を別途ソフトウェアを用いて処理する構成としてもよい。この場合、ヒータ制御装置は、CPU、RAM等の主記憶装置、及び上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述のヒータ制御装置と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0032】
以上説明してきたように、本実施形態に係るヒータ制御装置及び方法並びにプログラムによれば、現在通電状態にされている第1PTC素子(PTC素子3a)に流れる第1電流値と、次に通電状態にされた場合に新たな第2PTC素子(PTC素子3b)に流れると推定される第2電流値とに基づいて算出される第3電流値(突入電流推定値)が、最大許容電流値未満か否かが判定され、最大許容電流値未満となるまで第2PTC素子(PTC素子3b)は非通電状態に保持されて通電が待機され、最大許容電流値未満で第2PTCヒータ(PTCヒータ2b)の第2PTC素子(PTC素子3b)を通電状態にする。
このように、第2PTC素子に対して、現在の電流値(第1電流値)と新たに通電された場合に流れると推定される電流値(第2電流値)とに基づいて算出される第3電流値が、最大許容電流値未満と判定されるまで通電されることがないので、ヒータユニット1は最大許容電流値Imaxを超えて駆動させることがなく、突入電流を制限できる。
【0033】
また、第3電流値が最大許容電流値未満となった場合に、第2PTC素子(PTC素子3b)が非通電状態から通電状態に切り替えられることにより、第2PTC素子(PTC素子3b)が通電状態にされるまでの時間が最短となるので、ヒータユニット全体として、速やかに通電が完了する。さらに、所定の最大許容電流値Imaxと比較しながら通電状態と非通電状態とを切り替えるので、最大電流を超過しないよう過剰に部材を増やす、或いは、最大電流に耐えうる高価な部材を使用する等の対処の必要がなく、基板パターン幅の縮小による小型化、ケーブル(HV電線)径の小径化、保護ヒューズ定格の小容量化等、機器全体の小型化及びコストダウンとなる。
【0034】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態にかかるヒータ制御装置が第1の実施形態と異なる点は、各PTCヒータに対して負荷抵抗を設ける点である。以下、本実施形態のヒータ制御装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0035】
図5は、車載用PTCヒータに適用したヒータ制御装置10´の概略構成図である。
図5に示されるように、ヒータ制御装置10´は、PTCヒータ2a,2b,2cに対して直列に、それぞれ追加抵抗15a,15b,15cを設ける。以下特に明記しない場合には、追加抵抗は追加抵抗15として説明する。
追加抵抗15は、例えば、通常のニクロム電線等で形成されたものを用い、以下(2)式に示すように、最大電圧値を最大許容電流値Imaxで除算し、さらに、PTC素子の極小抵抗値を減算した値よりも大きくなるように設定する。
追加抵抗>最大電圧値/最大許容電流値Imax−極小抵抗値Rmin (2)
【0036】
また、追加抵抗15の大きさは、以下の(3)式に示されるように、最大許容電流値Imax以下とするための抵抗値(=定格電圧/最大許容電流値)に、PTC素子の極小抵抗値Rminを減算したものより大きくし、かつ、キュリー温度における抵抗値Rcよりも十分小さい値とし、PTC素子単独での温度特性をできるだけ変化させないようにすることが好ましい。
定格電圧/最大許容電流値Imax−極小抵抗値Rmin<追加抵抗値<<PTC素子のキュリー温度における抵抗値Rc (3)
【0037】
このように、PTC素子に対して直列に追加抵抗15を設け、PTC素子温度を上昇させた場合に生じるPTC素子の極小抵抗値Rmin(PTC素子の極小値)の値を嵩上げすることにより(図6参照)、合成抵抗が大きくなり突入電流を低減させることができる。また、通常の抵抗をPTC素子と直列に接続した場合、キュリー温度においては接続した抵抗は無視できるほど小さいので、出力を低下させずに抵抗の極小値のみを嵩上げして突入電流を低減できる。
【0038】
なお、本実施形態においては、図5に示されるように、PTCヒータ2a,2b,2cに対して直列に、それぞれ追加抵抗15a,15b,15cを設けることとして説明していたが、追加抵抗15の設け方はこれに限定されない。例えば、最も大きな消費電力となるPTCヒータ2aに対してのみ直列に追加抵抗15aを設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2,2a,2b,2c PTCヒータ
3,3a,3b,3c PTC素子
10,10´ ヒータ制御装置
11 オンオフ制御部
12,12a,12b,12c スイッチング素子
13 電流検出部
15,15a,15b,15c 追加抵抗
20 電流算出部(電流算出手段)
21 切替制御部(切替制御手段)
22 選定部(選定手段)
23 対応情報
Inow 第1電流値
Imax 最大許容電流値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置であって、
現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出手段と、
前記電流算出手段によって算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御手段と、
を具備するヒータ制御装置。
【請求項2】
複数の前記PTCヒータのうち、消費電力が大きい前記PTCヒータから順に、通電状態にする前記PTCヒータとして選定する選定手段を備える請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記切替制御手段は、前記PTC素子にそれぞれ対応するスイッチング素子を設け、該スイッチング素子のオンとオフとの切り替えにより、前記PTC素子の通電と非通電とを切り替える請求項1または請求項2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記PTC素子と直列に追加抵抗を設ける請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
前記追加抵抗の抵抗値は、最大電圧を前記最大許容電流値で除算した第1算出値から、前記PTC素子の抵抗の極小値を減算した第2算出値よりも大きい値となるよう設定される請求項4に記載のヒータ制御装置。
【請求項6】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置の制御方法であって、
現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出過程と、
算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御過程と、
を有するヒータ制御装置の制御方法。
【請求項7】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置の制御プログラムであって、
現在通電状態である第1PTCヒータの第1PTC素子に流れる第1電流値と、次に通電状態にされる新たな第2PTCヒータの第2PTC素子に流れると推定される第2電流値とに基づいて、第3電流値を算出する電流算出処理と、
算出された前記第3電流値が、所定の最大許容電流値未満であると判定されるまで、前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を非通電状態に保持し、所定の最大許容電流値未満で前記第2PTCヒータの前記第2PTC素子を通電状態にする切替制御処理と、
をプログラムに実行させるためのヒータ制御装置の制御プログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−37812(P2013−37812A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171153(P2011−171153)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】